説明

黒カビおよび白カビ耐性を有する抗菌性および抗真菌性添加剤

繊維状材料および建築材料において黒カビおよび白カビの増殖に対する抵抗性を付与する天然由来添加物であって、植物種の群、たとえばフトモモ科(Myrtacea)、ミカン科(Rutaceaea)、ショウガ科(Zingiberaceae)およびシソ科(Labiatae)の属から抽出された添加物、および特異的な種、たとえば以下の群:メラレウカ・クインクエネルビア(Melaleucaquinquenervia)、メラレウカ・エリシフォリア(Melaleucaericifolia)、メラレウカ・アルターニフォリア(Melaleucaalternifolia)、メラレウカ・レウカデンドロン(Melaleucaleucadendron)、シトラス・レチキュラータ(Citrusreticulata)およびオリガヌム・ウルガレ(Origanum vulgare)に由来する精油の1以上を含む添加物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に建築材料、より具体的には黒カビおよび白カビ耐性をそれに提供するように建築材料に組み入れることができる添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
黒カビおよび白カビの増殖をもたらす可能性のある繁殖しやすい土台を少なくとも部分的に妨げるため、最近、建築材料は無機成分材料を使用する傾向にある。例えば、同一出願人による米国特許6,524,679号では、そこで示された方法に従って作製された石膏プラスターボードと接触することになる水または他の液体の吸収およびウィッキングを回避するために、下地の塗型材として無作為に配向した無機繊維を含む材料を利用している。2004年10月19日に出願され、公報2005/0121131号の下で公表された米国特許出願番号10/968,680号、2005年4月12日に公表された米国特許6,878,321号、および米国特許6,524,679号の、同一出願人による特許は、本明細書において記述および請求された本発明のための付加的な背景を提供する。
【0003】
例えば、上記の特許および出願によって示されるように、なかでも石膏壁用ボードの1つまたは複数の部分に高分子添加剤を含めることにより、撥水石膏ボードにも使用されている。
【0004】
より最近では、添加剤は、石膏壁用ボードまたはジョイントコンパウンドのような建築材料に対してもまた提供されてきている。これらの添加剤は、黒カビおよび白カビの増殖のための状態が優位な場合、例えば濡れた状態または湿潤状態においては、黒カビおよび白カビの増殖を積極的に阻害するように導入される。ロングによる米国特許3,998,944号は、紙で表面を仕上げた石膏パネルにおいて黒カビ増殖を積極的に阻害するための、キノリンオラートの重金属塩を使用する化学薬品を記述し、ビーラマスネニらによる米国特許6,893,752号は、石膏パネルにおいて黒カビ増殖を積極的に阻害するための、石膏中に埋め込まれたピリチオン塩のような合成化学薬品を使用する化学薬品を記述している。
【0005】
他の黒カビおよび白カビの成長抑制物質は、ジョイントコンパウンドでの使用に対してよく知られている。例えば、デオドハスらによる米国特許6,663,979号は、防腐剤として合成殺生物剤の有効濃度での使用を教示している。
【0006】
しかしながら、これらのすべての先行技術の方法および系は、高価であり環境上不利益となりうる合成抗菌化合物または合成抗真菌化合物(それらのいくつかは殺虫剤または農薬として使用される)に依存している。これらは、ピリチオン(1-ヒドロキシピリジン-2-チオン)、メチルクロロイソチアゾリノンまたはメチルイソチアゾリノンを含んでおり、これらは全て、長期にわたり様々な黒カビおよび白カビ種の増殖を有意に阻害するのに効果的な量を提供するのに比較的高い濃度を要求する化合物である。先行技術において教示されたような合成農薬の化合物は、特に微量濃度にさえ感受性のある個人に対して、それらの使用に関連した健康リスクを潜在的にもたらす可能性があり、その個人においてそのような微量濃度は生理反応を引き起こしうる。さらに、気密性の高い密閉をもたらす新しい建築の最新の遮断方法により、室内環境が空気を再循環させることで室内環境に浸透する任意の化学物質が微量レベルであっても、時間を経るとより濃縮されるようになることもありうる。
【0007】
必要であると考えられるものは、様々な黒カビおよび白カビの種の増殖を阻害する非常に低濃度において効果的な化合物または化合物群であり、その化合物は天然に産生され、再生可能な資源であり、および建築材料の中への容易なとり込みまたは繊維状材料上への塗布のために提供することができ、ならびにその化合物は長い期間にわたりそれらの抗菌性および抗真菌性の特質を保持することができるものである。付加的な化学物質の濃度の減少および天然に由来する化合物の使用は、添加剤の費用とともに、感受性の高い個人で起こり得る生理的反応を減少させる手段としてさらに望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本明細書において記述および請求されるものは、建築の間におよび建築後に、通常は繊維状材料においてまたは建築材料において増殖することが一般に知られている黒カビおよび白カビの種のいくつかの種および広範囲の種の増殖を、少量で有意に阻害するのに効果的でありえる、既知の植物種の油から抽出された天然および有機的に由来する化合物群である。好ましい実施形態において、抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性特質の提供に効果的な化合物は、フトモモ科(Myrtacea)、ミカン科(Rutacea)、ショウガ科(Zingiberaceae)およびシソ科(Labiatea)から採用された、いくつかの植物種からの油または濃縮物に由来する。メラレウカ属、特にメラレウカ・クインクエネルビア(Melaleucaquinquenervia)に由来する精油は、以下でより詳細に記述されるように、強力な黒カビおよび白カビ成長抑制物質を有し、特にいくつかのテルペンおよびリナロールを含むそれから由来する化合物を有することが見出された。
【0009】
本発明の抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性化合物、ならびに油中で発見された化合物の組み合わせの使用は、前述の同一の出願人および発明者による米国特許6,524,679号および6,878,321号において、ならびに米国公表特許出願番号2005/0159057号および2005/0121131号において記述されるような、ガラス繊維強化石膏(「GRG」)ボードの表面層におけるとり込みのためのこれら化合物の標的と併用して、最も効果的に使用されうることが更に見出された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本明細書において記述され請求されるものは、ウイルス、細菌および真菌の増殖の制御に効果的な量における添加物組成の適用によって黒カビおよび白カビの増殖に対する耐性を増進する建築添加剤を繊維状材料または建築材料へ導入する方法、および建築添加剤で使用される繊維状材料または建築材料であり、添加剤はフトモモ科、ミカン科およびショウガ科およびシソ科の植物科から成る群から選択された、1つまたは複数の天然に由来する精油を含む。より具体的には、精油は、好ましくは、メラレウカ・クインクエネルビア(Melaleucaquinquenervia)、メラレウカ・エリシフォリア(Melaleucaericifolia)、メラレウカ・レウカデンドロン(Melaleucaeucadendron)、メラレウカ・アルターニフォリア(Melaleucaalternifolia)、シトラス・レチキュラータ(Citrusreticulata)、オリガヌム・ウルガレ(Origanum vulgare)の植物種からなる群から選択された天然に由来するものである。
【0011】
以下、本明細書の記載及び請求の範囲に記載した発明について、図面を用いて詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
細菌、ウイルスおよび/または真菌の増殖を阻害するために発見された化合物は、以下により詳細に論じられ、2つの石膏ボード10、110の他の好ましい構造は図1および図2において示される。これらのボード10および110は、本発明の化合物を石膏の1つまたは複数の層中に組み入れるか、またはこのボードの前面および裏面の表面に配置された石膏の層を対象にする。本発明の化合物を利用する石膏ボードの製造において使用される方法および製造装置は、公知の型のいずれであってもよい。前述の米国特許6,878,321号および6,524,679号によってそれぞれ教示されるように、GRGの製造において利用される好ましい方法および装置は、ボードにおける抗菌特性および抗菌特性だけでなく、層間剥離を阻害し、撥水特性を提供することが好ましい。
【0013】
図1において説明される好ましいGRGボード構造に関連して、所望の特性が下記に述べられているが、化合物は実際に、紙で表面を仕上げた石膏ボードパネル、石膏ボードジョイントコンパウンド、コンクリートボード、セメントボード、繊維状石膏およびパネル、下張り、シージングボード、耐湿性ボード、X型ボード、断熱ボード、軸ライナ、下端ボード、下地ボード、コアボード、天井ボード、GRGを含む石膏ガラスマットボードを制限なしに含む広範囲の建築材料のいずれとも共に利用することができ、合板または紙で覆われたウォールボード、組込構造、ウォールボード継目のカバーで使用されるテープの上に、および他の建築材料中にまたはその建築材料上でさらに適用されてもよい。さらに、GRGと共に有利に使用されて、その表面で濃厚スラリー層へ組み入れられたが、石膏ボード構造の全体にわたって分配された場合、すなわち、図2中に示すように、コア石膏層または単一層構造を有するボード中に含む場合、本発明の化合物は効果的となりえる。もちろん本発明の化合物の表面層を対象とすることは、黒カビおよび白カビの増殖が最も容易に予測される表面層において効果的に化合物を濃縮することより、製造コストの考慮から好ましい。
【0014】
図1に示すように、米国特許6,878,321号および6,524,679号によって教示された方法に従って作製された多層ボード10は、中心部コア層12および2つの表面層14、16を含む。図1中に示すように、表面層14、16の各々は、後述の単一層石膏ボードの場合には一般に紙を含み、またはランダムに配向した無機繊維のマットもしくはシート15を有する、構造的な塗型シートを含む。マット繊維は、必ずしも縮尺どおりに示されず、ボード10内のそれらの配置は本発明の一体部分ではない。異なる公知のボード構造のより詳細な考察のために、例えば前述の米国特許6,878,321号が参照される。好ましい実施形態は、上述された同一出願人による特許および特許出願の1つまたは複数に記述される他の改良を含んでもよい。
【0015】
図1中に示すように、繊維マット15はさらにボード10の機械縁24を提供するために上方へ折りたたまれ、濃厚石膏の表面層26はその上に配置され、その中の濃厚石膏層に本発明による抗菌性化合物、抗真菌性化合物を混入する。
【0016】
単一石膏層ボード110が図2中に示される第2の他のボード構造において、塗型材はさらに無機繊維メッシュであるが、多層構造の代わりに、石膏の単一コア層112は、前面および背面のそれぞれ114、116の両方で配置された2枚の分離された無機繊維メッシュマット115に面する。この種の構造において、石膏層112は単一層構造であり、面114、116までの石膏層の全体にわたって配置されて、例えば米国特許6,524,679号または他において確認されたポリビニルアルコールまたはポリ酢酸ビニルのような1つまたは複数の添加剤を含んでもよい。石膏ボードパネル110のこの他の実施形態は、本発明の抗菌性/抗真菌性の添加組成物を含む必須の添加剤材料を導入するが、本発明者は、例えばこれについて前述の同一出願人による公表特許出願米国特許公報2005/0121131号中で、特異的な添加剤を指定された層への対象とすることは、必要とされる場所でのみ添加剤が保持され、同時に建築材料の必要とされない領域にそれらを省くという二重の利益を提供することについて言及している。
【0017】
本明細書及び請求の範囲に記載される本発明の抗菌性および抗真菌性添加剤の内容において、石膏ボード10の機械縁面24(図1参照)で濃厚スラリー層24を含む面で濃厚石膏層へのみ添加剤を向けることが必須であると考えられる。面14、16、24は、湿気または静水(その1つが黒カビおよび白カビ増殖の前提条件である)と最も接触しやすいことが認識される。したがって、表面層へ抗菌性/抗真菌性添加剤を向けることが最も好まれる。それらが必要とされる層に対してのみに添加剤を提供することによる費用の削減は、前述の米国特許公報2005/0121131号中に十分に記述されおり、参照はこれらの利益のより完全な考察について向けられる。
【0018】
ここで図3を参照すると、本発明に記載の抗菌性、抗ウイルス性および抗真菌性の組成物が個別の線維の面を覆うように、個別の線維82が本発明に記載の添加組成により覆われることを特徴とする、繊維状材料スワッチ80の拡大図が示される。あるいは、天然に由来する精油またはその誘導体が混入する被覆組成物は、任意の使用について利用することができる繊維状材料上を覆う。例えば、本発明の組成物は、多くの材料、例えば紙シート、布地、金属繊維などのいずれかの産生において使用される紙または布地の繊維へ導入されてもよく、その繊維に対して黒カビおよび白カビに対する耐性の望ましい特質を与えることが必須である。これらの材料の黒カビおよび白カビに対する耐性について具体的には調べられていないが、他の型の繊維状材料に対して適用された場合、本発明の化合物は、試験された建材以外の製品に対してもまたそれらの特質を与える可能性が最も高い。さらに、本発明の精油は、黒カビまたは白カビの増殖をもたらす状態に暴露されると予想できる、建築材料中、例えば塗料または他の被覆または被膜に使用される他の組成物に対しても加えられてもよい。これらは、例えば限定なしで、建築物表面ためのグラウト、タイル被覆剤、ペンキおよび他の仕上げ被覆剤、および壁、天井、フロアー面などを覆うために使用することができるワックスまたは他の乳剤を含んでもよい。
【0019】
上述した本発明の添加剤利用の有効性は、検査によって証明された。広範囲の組成物は、黒カビおよび白カビの増殖に対する耐性に対して効果的に有効成分を提供するように、精油の具体例の性能を証明するために調べられ、その結果は容易に判読可能な書式にて以下で一覧にされている。下記の各々の実施例では、所定の比率での活性のある添加剤油を含むようにして、特定のボードの製造用の同一の手順に従っている。
【0020】
検査ボードは、本発明と殆ど関係しない小さな変更を行いながら、本質的には前述の米国特許6,524,679号および6,878,321号中に記述される様式で作製された。製造方式に対する1つの違いは、ボード成形操作時に石膏スラリー混合物へ添加剤を導入することであった。理想的には、および本検査体制で行われたように、抗菌性/抗真菌性添加剤は、上述したように、ボードの濃厚スラリー層を形成した石膏スラリーへのみ加えられた。抗菌性/抗真菌性添加剤は、濃厚スラリー層の石膏および水の全重量と比較して、2つの異なる濃度、1つは約0.11重量パーセントでおよび他方は0.055重量パーセントで、ボード10の表層14、16、24に対して予定された濃厚スラリーへ精油の形式で加えられた。それを濃厚石膏スラリーの中へ完全に混合し、次に、前述の米国特許6,524,679号中に記述されるように、マット15の隙間の中へしみ込ませ、次にコアスラリー層12と結合させた。次にボードは、記述された従来の様式で、それらの最終形状へ形成され、乾燥され、切断され、黒カビおよび白カビの増殖を防ぐために様々な精油の有効性を測定するために4週間にわたって検査された。
【0021】
検査手順は、すべてのボードに対して本質的に同一であり、上に記述されたように、調べられた各々のボード(対照を除いて)は、ボードの形成に先立って濃厚スラリー層中に添加剤として精油の1つを有している。切断および乾燥といった最終的なボード製造工程を完了し、最初にボードを通常3"×3"のサンプルに切断し、印を付け、盲検で検査した。すなわち検査チームは、どのボードがどの非菌性/非真菌性添加剤を有するのかわからず、実際はボードのいずれかが本添加剤を有するかどうかでさえ知らなかった。
【0022】
各々のボードサンプルは、管理された条件下の73.5°±3.5°の標準室温、および約50%の相対湿度で、4日間それらを保存することによって予め調整された。
【0023】
次にボードサンプルを、25%ピートモス(pH値がおよそ6.8で制御されている土壌)を含む以前に滅菌された土壌からなる培養培地の上にわずかな距離で垂直に吊り下げられた。土壌は、囲まれた試験チャンバーにおいて、オーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidiumpullulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillusniger)およびペニシリウム属(Penicillium)を含む黒カビおよび白カビのいくつかの種の活発な胞子を含む培養培地で接種した。試験チャンバーは再循環空気供給を含んでおり、各々のサンプルの正面および裏面の一週間毎の黒カビ測定が行なわれる間以外は、条件は全4週(28日)の期間にわたって一定に維持された。検査期間の試験チャンバーにおいて、検査期間の4週間、条件は90°±2°Fの一定温度でおよび97%の相対湿度で維持された。ポンデローサパインサップウッドまたは石膏ボードパネルのいずれかの1つまたは複数の対照試料を、後述するように、検査ボードと同じ条件下で対照試料として検査した。
【0024】
検査基準及び検査手順についてはASTM D 3273であり、黒カビおよび白カビの量の測定についてはASTM D 3274であった。検査は、ボード表面上の黒カビおよび白カビ増殖の程度を測定するために高倍率顕微鏡下での検査を含んでいた。28日の検査時期中に黒カビおよび白カビをできるだけ積極的に増殖させる環境の中での黒カビおよび白カビ増殖の至適条件を維持するために、検査チャンバーは他の場合には閉鎖して、チャンバーの外側の環境から密閉した。
【0025】
黒カビおよび白カビ増殖の測定は、ボード表面の変色の量を評価するために、ボード前面および背面の拡大視野調査によってASTM D 3274基準下で実施された。表面の拡大された領域の目視検査および0〜10等級が、黒カビおよび白カビ増殖の量に基づいて評価され、ここで10が増殖は無いことを意味し、7は変色によって確認される30%の被覆率を意味し、5は50%の被覆率を意味し、3は70%の被覆率を意味し、0は黒カビおよび白カビの被覆が全体にわたることを意味する。
【0026】
結果は検査されたサンプルの各々に対して以下で一覧にされ、特定の順序では表にされていない。各々の実施例は、異なる濃度で2つの個別のボードサンプルを各々検査した。対照サンプルの結果は実施例5において表にされている。
【0027】
以下の表1は、実施例1(異なる濃度でのチョウジ油(Syzygiumaromaticum))を用いた結果であり、表2は、実施例2(パルマローザ油(Cymbopogonmartiniii))を用いた結果であり、表3は、実施例3(桂皮(Cinnamonum verum))を用いた結果であり、表4は、実施例4(チモール油(Thymus vulgaris))を用いた結果であり、表5は、実施例5(コントロール)を用いた結果であり、表6は、実施例6(ゼラニウム(Pelargoniumgraveolens))を用いた結果であり、表7は、実施例7(マンダリン油(Citrusreticulate))を用いた結果であり、表8は、実施例8(オレガノ油(Origanum vulgare))を用いた結果であり、表9は、実施例9(シナモン・リーフ(Cinnamonum verum))を用いた結果であり、表10は、実施例10(ティーツリー油(Melaleucaalternifolia))を用いた結果であり、表11は、実施例11(ニアウリまたはパンクツリー油(Melaleucaquinquenervia))を用いた結果であり、表12は、実施例12(実施例1,6,10,11の油の混合)を用いた結果である。なお、実施例11において、サンプル11Aは、不注意で失われてしまったものである。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】

【0036】
【表9】

【0037】
【表10】

【0038】
【表11】

【0039】
【表12】

【0040】
上記の天然に由来する油のいくつかは、検査されたいずれかの濃度または両方の濃度(0.055重量パーセントおよび0.11重量パーセント)で、黒カビおよび白カビの増殖を制御するのに効果的であることが示された。添加剤は2つの濃度レベルでのみ濃厚スラリーの中へ注入された。規定の添加剤の2つの濃度のみが、確認された添加剤の有効性を測定するために検査されたが、他の天然に由来する添加剤が上で検査された実施例と同じまたはそれ以上効果的であることを、当業者であれば容易に想到しえる。添加剤の費用、可能性のある環境的および生理的な影響力、製造工程に対する効果、および/または黒カビおよび白カビの増殖を制御する相対能力を含む異なる考慮を検討する場合、追加試験により、異なる濃度の範囲がより有利であると立証されるかもしれない。
【0041】
現在まで検査された特定の添加剤は、それらがほとんどの人々に対して大抵は環境上安全な天然に存在する化合物であるので、合成的に製造された化学物質に対する感受性の副作用を生ずることなく、特に上記の実施例において利用された微量濃度で、環境適合性を含む多くの望ましい特性を有することが示された。さらに、黒カビおよび白カビの増殖に対する望ましい耐性を提供する費用は、化学的製造および化学的合成、環境効果用の検査、ならびに石膏ボードパネルの製造工程への可能な修飾を要求する公知の合成化学添加物よりもかなり減少する。濃度の減少は、製造原価を有意に減少させるだけでなく、化学物質への感受性の問題がもしあれば、レベルを減少させる。精油は天然に既存の植物に由来し、その植物いくつかは現在では米国で不要な侵入生物種と考えられるので、精油の一般的な利用可能性により、添加剤の費用をさらに減少させる可能性が考えられる。この場合には、精油の抽出は、油の由来する侵入植物種の集団を減少させるという要望によってさらに促進されてもよい。
【0042】
したがって、追加の種および精油添加剤は、上で記述されるように、他の同様の精油または異なる精油が建築材料の中で有利に使用されることの証明が当業者の念頭に浮かんでもよく、上で使用される実施例は、黒カビおよび白カビのその上での増殖に対する耐性を提供する建築材料中に、またはその建築材料上に天然に存在する精油の使用であるとして広く言及される、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明は、請求項の記載及びその均等の範囲によってのみ限定される。
【0043】
記述されたように、本発明の化合物は、高分子添加剤と併用してまたはその添加剤なしで、比較的濃厚でないコア石膏層12を本質的に覆う表面である濃厚スラリー層14、16でのみ導入されてもよい。
【0044】
所望の抗菌性および抗真菌性の特質を提供する好ましい添加剤は、メラレウカ属やマンダリン属などを含む植物種のいくつかの分類群から得られた精油である。本発明の有機油は、他の検査された添加剤で発見された化合物群に類似するいくつかの事例において、個別の化合物のいくつかの群および範囲を含む。化合物のどれが望ましい特質を提供する有効成分であるのか、決定的な結論には達していない。しかしながら、異なる精油の抗菌性および抗菌性の検査に由来するデータから、いくつかの化合物の組み合わせは、特異的な黒カビおよび/または白カビ種の増殖を阻害するのに最も効果的な成分化合物の特異的な1つにより、一般的な細菌/真菌の大多数と対抗するために効果的な活性を提供すると考えられている。特異的な黒カビまたは白カビ培養に対する特異的な化合物が最も効果的である、より明確な相関性については、追加試験が待望される。
【0045】
細菌/真菌増殖を阻害する特質について検査された、いくつかの油中の成分化合物の分析から、いくつかのテルペン化合物、および、具体的には、モノテルペン、モノテルペンアルコール、テルペンオキシド、リモネン、リナロールおよび1,8シネオールは、最も効果的な成分を提供すると考えられると信じられている。これらの化合物のどれもすべての黒カビおよび白カビ培養と闘うのに効果的であると考えられないが、いくつかのまたは化合物の組み合わせは、黒カビおよび白カビの最も一般的な型に対して効果的であると考えられる。さらに石膏ボード中の添加剤の例示的な処方に関連して上で記述されるように、石膏スラリーに比例した精油の濃度が百万分率(ppm)で測定されたように、非常に低濃度で効果的であることが発見された。
【0046】
データから明らかなように、細菌および真菌の両方の増殖を阻害するだろうと決定された精油の中で最も効果的なものは、メラレウカ属に由来した油であり、最も効果的なものは、一般にニアウリまたはパンクトリーとしてもまた公知であるメラレウカ・クインクエネルビアであることが発見された。この種はオーストラリアのような場所の沼沢地方に固有であり、最近では、この植物が侵入植物種と考えられるフロリダで不要種となった。
【0047】
この植物種に由来した油の性質を測定するための正式のまたは明確な研究は確立されていないが、当分野の文献はメラレウカ・クインクエネルビアに由来する精油の組成物が、セスキテルペン;モノテルペンアルコール:リナロール;セスキテルペンアルコール:トランスネロリドール(81-82%)、ファルネソール;テルペンオキシド:1,8シネオールを含むことを示している。
【0048】
抗菌性および抗真菌性の精油の第2の好ましい実施形態によれば、柑橘類の木の油は、建築材料上の望まれない黒カビおよび白カビの増殖の抑制において活性があることが明らかにされた。これらの油が由来する植物学の科はミカン科または柑橘類科であり、文献は検査された特定の植物であるシトラス・レチキュラータの油中の有効成分として、モノテルペン:リモネン(65〜94%);モノテルペンアルコール;エステル;アルデヒド;クマリンを提供する。さらに、フラボノイド、カロテノイド、ステロイドを含む。
【0049】
黒カビおよび白カビの増殖を積極的に抑制することが検査を介して明らかにされた天然に産生された第3の油は、メラレウカ属の他のメンバーの、時にはティートリーと呼ばれるメラレウカ・アルターニフォリアである。文献は、ティートリーからの精油については、モノテルペン(3〜20%);α-ピネンおよびβ-ピネン、ミルセン;セスキテルペン;モノテルペンアルコール(45〜50%):テルペンオキシドの組成を示している。
【0050】
黒カビおよび白カビの増殖を積極的に抑制すると考えられる天然に産生された第4の油は、メラレウカ属の他のメンバーの、時にはロザリナと呼ばれるメラレウカ・エリシフォリアである。文献は、ロザリナからの精油について、テルペンアルコール(41〜62%);リナロール;α-テルペネオール、モノテルペンおよびセスキテルペン(13〜35%);α-ピネン;パラシメン、リモネン;γ-テルピネン、アロマンドレン、ビリディフロレンの組成を示す。
【0051】
追加の他の添加剤、例えばまだ検査されていないか、または恐らくまだ発見されてさえいない天然に由来する他の油は、当業者に示唆されてもよい。これらのまだ公知でない種からの精油は本発明の相当物と考えられてもよい。
【0052】
本明細書における本発明は、図1〜3の実施形態に関して記述および説明されたが、本発明の抗菌性および抗真菌性の建築材料の特徴が、本発明の技術的範囲から外れることがない限り、適宜変更することができることは言うまでもない。例えば、様々な材料の寸法、大きさおよび形は、ジョイントコンパウンド混合物中の乾燥した成分としての使用を含む特異的な適用に適合するために変更されてもよい。同様に、上述したように、建築パネルは異なる形または寸法において形成されてもよい。したがって、本明細書において説明および記述された具体的な実施形態は、本発明の説明を目的としたものであり、技術的範囲をなんら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による1つまたは複数の発明の抗菌性および抗真菌性の化合物を含む、多層石膏ボードのその表面層の少なくとも1つの横断面図である。
【図2】本発明による抗菌性および抗真菌性石膏ボードの第2の他の実施形態に従う多層石膏ボードの横断面図である。
【図3】本発明による抗菌性および抗真菌性の組成物を含むか、またはそれによって塗られている繊維状材料の代表的な部分の詳細図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌および真菌の増殖を制御するのに効果的な量の添加剤を添加することにより黒カビおよび白カビの増殖に耐性を有し、建築で使用される建築材料であって、
前記添加剤は、フトモモ科(Myrtacea)、ミカン科(Rutaceaea)、ショウガ科(Zingiberaceae)およびシソ科(Labiatae)の植物科より成る群から選ばれる1又は複数の天然に由来する精油を含む、
建築材料。
【請求項2】
前記添加剤は、メラレウカ・クインクエネルビア(Melaleucaquinquenervia)、メラレウカ・エリシフォリア(Melaleucaericifolia)、メラレウカ・アルターニフォリア(Melaleucaalternifolia)、メラレウカ・レウカデンドロン(Melaleucaleucadendron)、シトラス・レチキュラータ(Citrusreticulata)およびオリガヌム・ウルガレ(Origanum vulgare)の植物種より成る群から選ばれる1又は複数の天然に由来する精油を含む、
請求項1に記載の建築材料。
【請求項3】
前記建築材料は、ジョイントコンパウンドを含む、
請求項1に記載の建築材料。
【請求項4】
前記建築材料は、石膏ボードを含む、
請求項1に記載の建築材料。
【請求項5】
前記建築材料は、壁ボードを含む、
請求項1に記載の建築材料。
【請求項6】
請求項1に記載の建築材料であって、
抗菌性/抗真菌性添加剤は、総建築材料組成物の0.01〜5.00重量パーセントまでの範囲で効果的な量で含まれる、
請求項1に記載の建築材料。
【請求項7】
前記抗菌性/抗真菌性添加剤は、総建築材料組成物の0.055〜1.0重量パーセントの範囲で効果的な量で含まれる、
請求項6に記載の建築材料。
【請求項8】
前記抗菌性/抗真菌性添加剤は、総建築材料組成物のおよそ0.11重量パーセントで効果的な量で含まれる、
請求項6に記載の建築材料。
【請求項9】
前記抗菌性/抗真菌性添加剤は、総建築材料組成物の0.01〜1.00重量パーセントの範囲で効果的な量で含まれる、
請求項2に記載の建築材料。
【請求項10】
水、石膏および黒カビおよび白カビの増殖耐性に効果的な量で抗菌性/抗真菌添加剤を含むスラリー材料を混合する方法であって、
a)前記添加剤がフトモモ科、ミカン科、ショウガ科およびシソ科の植物科からなる天然に由来する油の群から選択されるステップと、
b)建築製品において混合スラリー添加剤組成物を利用するステップと、
を含む、建築材料に黒カビおよび白カビの増殖に対する耐性を与える方法。
【請求項11】
前記抗菌性/抗真菌性添加剤が、メラレウカ・クインクエネルビア、メラレウカ・アルターニフォリア、メラレウカ・エリシフォリア、メラレウカ・レウカデンドロン、シトラス・レチキュラータおよびオリガヌム・ウルガレからなる植物種の群から選択される1又は複数の化合物に由来する油である、
請求項10に記載の建築材料に黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項12】
前記混合スラリー添加剤組成物は、石膏ボードパネルを形成することにより利用される、
請求項10に記載の建築材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項13】
前記混合スラリー添加剤組成物は、石膏ボードパネルの表層として形成することにより利用される、
請求項10に記載の建築材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項14】
前記混合スラリー添加剤組成物は、ジョイントコンパウンド混合物において利用される、
請求項10に記載の建築材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項15】
前記混合スラリー添加剤組成物は、ジョイントコンパウンド、ジョイントテープ、ガラス強化石膏ボード、紙で表面を仕上げた石膏ボード、コンクリートボード、下張り、軸ライナ、下端ボード、下地ボード、コアボード、天井ボード、木材ボードから成る建築材料の群より選ばれる、
請求項10に記載の建築材料に対して黒カビおよび白カビの耐性を与える方法。
【請求項16】
繊維状材料における黒カビおよび白カビの増殖耐性に効果的な量で抗菌性/抗真菌添加剤を含む組成物を混合する方法であって、
1)前記添加剤がフトモモ科、ミカン科、ショウガ科およびシソ科の植物科から天然に由来する油の群から選択されるステップと、
b)前記添加剤組成物を繊維状材料に適用するステップと、
を含む、繊維状材料に対して黒カビおよび白カビ増殖耐性を与える方法。
【請求項17】
前記添加剤組成物は、繊維状材料の表面の上に添加剤組成物を含む層として適用される、
請求項16に記載の繊維状材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項18】
前記添加剤組成物は、添加剤組成物として繊維状材料に対して適用される、
請求項16に記載の繊維状材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項19】
前記添加剤組成物は、添加剤組成物として繊維状材料の上に覆われたカバー材に対して適用される、
請求項16に記載の繊維状材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項20】
前記添加剤組成物は、浸漬被覆方法、スプレー被覆方法またはフロー被覆方法から成る方法のうちの1つによって被覆として適用される、
請求項19に記載の繊維状材料に対して黒カビおよび白カビ耐性を与える方法。
【請求項21】
繊維状材料上に適用された物質の組成物であって、
メラレウカ・クインクエネルビア、メラレウカ・エリシフォリア、メラレウカ・アルターニフォリア、メラレウカ・レウカデンドロン、シトラス・レチキュラータおよびオリガヌム・ウルガレからなる植物種の群に由来した精油から選択される1つまたは複数の添加剤を含む組成物。

【公表番号】特表2009−506031(P2009−506031A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527915(P2008−527915)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/026063
【国際公開番号】WO2007/024342
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(508120260)ビーピービー リミテッド (5)
【Fターム(参考)】