説明

黒色インク組成物、インクジェット記録方法及び着色体

【課題】高濃度水溶液等を長期間保存した場合でも安定であり、印字された画像の濃度が高く、高濃度溶液を印字した画像にブロンジングを生じず、該画像の堅牢性に優れた黒色の記録画像を与える黒色インク組成物の提供。
【解決手段】少なくとも、下記式(1)で表される色素(I)又はその塩を、色素として含有する黒色インク組成物。


[式中、破線で表される環A乃至Dはベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、基Eはアルキレン、Xは、スルホ置換アニリノ基等、Yはアミノ基等である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも下記式(1)で表される色素(I)又はその塩を、色素として含有する黒色インク組成物、該インク組成物を用いたインクジェット記録方法及び該インク組成物によって着色された着色体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種のカラー記録方法の中でも代表的方法の一つであるインクジェットプリンターによる記録方法は、インクの小滴を発生させ、これを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させ記録を行うものである。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが接触しないため音の発生が少なく静かであり、また小型化、高速化が容易という特長の為、近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。従来、万年筆、フェルトペン等のインク及びインクジェット記録用インクとしては、水溶性色素を水性媒体中に溶解した水性インクが使用されており、これらの水溶性インクにおいてはペン先やインク吐出ノズルでのインクの目詰まりを防止すべく一般に水溶性有機溶剤が添加されている。この為、これらのインクにおいては、十分な濃度の記録画像を与えること、ペン先やノズルの目詰まりを生じないこと、被記録材上での乾燥性がよいこと、滲みが少ないこと、保存安定性に優れること、印刷画像においてブロンズ性が起こりにくいこと等が要求され、それ故に水溶性色素には特に水への溶解度が高いこと、インクに添加される水溶性有機溶剤への溶解度が高いことが要求される。更に、形成される画像には耐水性、耐光性、耐酸化性ガス性、耐湿性等の画像堅牢性が求められている。
【0003】
耐酸化性ガス性とは、通常耐ガス性等とも呼ばれるが、これは空気中に存在する酸化作用を持つガスが記録紙中で色素と反応し、印刷された画像を変退色させるという現象に対する耐性のことである。この種の作用を持つ酸化性ガスとしては、オゾンガス、NOx,SOx等が挙げられるが、これらの酸化性ガスのうちでもオゾンガスは、インクジェット記録画像の変退色現象を促進させる主原因物質とされており、これらの耐酸化性ガス性の程度を知る為の加速試験にはオゾンガスが用いられている。このような酸化性ガスによる変退色現象はインクジェット画像に特徴的なものであるため、耐酸化ガス性、特に耐オゾンガス性の向上はより重要な課題となっている。特に、写真画質インクジェット専用紙の表面に設けられるインク受容層には、インクの乾燥を早め、また高画質でのにじみを少なくする為に、白色無機顔料等による多孔質の材料を用いているものが多く、このような記録紙上でオゾンガスによる画像の変退色が顕著に見られる。
【0004】
今後、インクジェット記録を用いた印刷方法の使用分野を拡大すべく、インクジェット記録用に用いられるインク組成物及びそれによって着色された着色体には、耐水性、耐光性、耐湿性、耐オゾンガス性等の各種堅牢性の更なる向上が強く求められている。
【0005】
種々の色相のインクが種々の色素から調製されているが、それらのうち黒色インクは、文字情報をプリントする用途のみならず、カラー画像においても用いられる重要なインクである。しかし、濃色域と淡色域とが共にニュートラルな色相で、且つ色濃度が高く、さらに、色相の光源依存性が小さい良好な黒色を呈する色素の開発は技術的に困難な点が多く、多大な研究開発が行われているがまだ十分な性能を有するものが少ない。その為、一般には複数の多様な色素を混合して黒色インクを調製することが行われている。しかし、複数の色素を混合してインクを調製すると、単一の色素でインクを調製した場合に比べて、1)メディア(被記録材)によって色相が異なる、2)光やオゾンガスによる色素の分解によって特に変色が大きくなる、等の問題がある。
【0006】
印刷物の各種耐久性が良好なインクジェット用黒色インク組成物としては、例えば特許文献1に開示された、3種類の色素を配合したニュートラルな色相を有する黒色インク組成物が提案されている。このインク組成物は色相が黒色として非常に良好であり、印刷物の画像堅牢性についても大きく改良がなされたインク組成物とされる。
また特許文献3にはフタロシアン系色素を配合した黒色インク組成物も提案されている。このインク組成物は色相が黒色として非常に良好であり、印刷物の画像堅牢性についても従来のものより改良がなされているが、これらのインク組成物は共に、耐光性と耐オゾンガス性について更なる改善が要望されており、未だ市場の要求を充分に満足するには至っていない。
【0007】
【特許文献1】WO2007/077931号
【特許文献2】WO2006/001274号
【特許文献3】特開2003−73596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、濃色及び淡色印刷時のいずれにおいても色味のないニュートラルな黒〜グレー色を呈し、印字された画像の濃度が高く、メディア毎の色相に変化が無く、印字後の耐水性、耐光性、耐湿性等の各種堅牢性、特に耐オゾンガス性と耐光性に非常に優れた黒色の記録画像を与え、且つ長期間保存した場合でも安定な水性黒色インク組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、少なくとも特定の下記式(1)で表される色素(I)又はその塩を、色素として含有するインク組成物が前記課題を解決するものであることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、
1)
少なくとも、下記式(1)で表される色素(I)又はその塩を、色素として含有する黒色インク組成物、
【0010】
【化1】

【0011】
[式(1)中、
破線で表される環A乃至Dの4つの環は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、平均値で含窒素へテロ環が0.2以上3.0以下であり、残りがベンゼン環であり、
基Eはアルキレンを表し、
Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基又はホスホノ置換アニリノ基であり、該3種類のアニリノ基は、さらにスルホ基;カルボキシ基;ホスホノ基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;アルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;ジアリールアミノ基;アセチルアミノ基;ウレイド基;アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;アルキルスルホニル基;及びアルキルチオ基;より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を有していてもよく、
Yはヒドロキシ基又はアミノ基を表し、
a及びbの和は、平均値で0から3.7であり、
cは平均値で0.1から3.8であり、
且つa、b、cの総和は平均値で1.0から3.8である。]、
2)
式(1)における破線で表される環A乃至Dの4つの環が、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、平均値で含窒素へテロ環が1.0以上3.0以下であり、残りがベンゼン環である、上記1)に記載の黒色インク組成物、
3)
少なくとも色素(I)又はその塩を色素として含有し、さらに、下記式(2)で表される色素(II)又はその塩、又は下記式(3)で表される色素(III)又はその塩のいずれか1種を、色素として含有する上記1)又は2)に記載の黒色インク組成物、
【0012】
【化2】

【0013】
[式(2)中、
基Aはフェニル基であり、カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;シアノ基;ニトロ基;スルファモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;及び、非置換、又は、ヒドロキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルキルスルホニル基;よりなる群から選択される置換基を有し、
基B及び基Cはパラフェニレン基であり、カルボキシ基;スルホ基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;よりなる群から選択される置換基を有し、
1は、非置換、又はカルボキシ置換C1−C4アルキル基;非置換、又はスルホ置換フェニル基;又はカルボキシ基;を、
2は、シアノ基;カルバモイル基;又はカルボキシ基;を、
3およびR4は、それぞれ独立して水素原子;メチル基;塩素原子;又はスルホ基;を、それぞれ表す。]、
【0014】
【化3】

【0015】
[式(3)中、
aは、水素原子;ヒドロキシ基;カルボキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基又はヒドロキシC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルコキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ置換C1−C5アルキルアミノ基;ビス−(カルボキシ置換C1−C5アルキル)アミノ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルカノイルアミノ基;非置換、又は、ベンゼン環がカルボキシ基、スルホ基及びアミノ基よりなる群から選択される基で置換されたフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子;又はウレイド基;を、
Zはカルボキシ基又はスルホ基を有する脂肪族アミノ基を、それぞれ表す。]、
4)
少なくとも色素(I)又はその塩、色素(II)又はその塩、色素(III)又はその塩の3種の色素を、色素として含有する上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
5)
式(1)で表される色素(I)又はその塩において、環A乃至Dにおける含窒素ヘテロ環がピラジン環である、上記1)乃至4)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
6)
式(1)で表される色素(I)又はその塩において、
Xが、スルホ基;カルボキシ基;ヒドロキシ基;非置換C1−C4アルコキシ基;ニトロ基;ハロゲン原子;より成る群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていてもよい、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基の3種のアニリノ基のいずれかである、上記1)乃至5)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
7)
式(3)で表される色素(III)又はその塩が、下記式(7)で表される色素又はその塩である、上記2)乃至6)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
【0016】
【化7】

【0017】
[式(7)中、Zは式(3)におけるのと同じ意味を有する。]、
8)
インク中に含有する色素の総質量中、色素(I)が50〜80質量%、色素(II)が5〜30質量%、色素(III)が5〜25質量%である上記4)乃至7)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
9)
上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法、
10)
被記録材が、情報伝達用シートである上記9)に記載のインクジェット記録方法、
11)
情報伝達用シートが、普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである上記10)に記載のインクジェット記録方法、
12)
上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物により着色された着色体、
13)
着色がインクジェットプリンターによりなされた上記12)に記載の着色体、
14)
上記1)乃至8)のいずれか一項に記載の黒色インク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター、
に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色変化等もなく、貯蔵安定性が良好である。また、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用、筆記用具用インクとして用いられ、インクジェット専用紙に記録した場合の記録画像の色相がニュートラルであり、色素濃度が低いインクとした場合でも黒色の印字物が得られる、また印字濃度が高く、耐水性、耐光性、耐湿性等の各種の堅牢性、特に耐オゾンガス性及び耐光性に優れており、色相の光源依存性も小さい。またマゼンタ、シアン及びイエロー色素と共に用いることで耐光性及び耐水性に優れたフルカラーのインクジェット記録が可能である。このように本発明のインク組成物はインクジェット記録用黒色インクとして極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。尚、本明細書において特に断りが無いかぎり、スルホ基及びカルボキシ基等の酸性官能基は遊離酸の形で表し、また「色素又はその塩」は、記載が煩雑となるのを避けるため、便宜上、「色素」と簡略して記載し、該色素又はその塩のいずれをも含むものとする。
【0020】
本発明の黒色インク組成物は、少なくとも上記式(1)で表される色素(I)を、色素として含有することを特徴とする。該インク組成物中の色素として色素(I)のみを含有しても良いが、よりニュートラルで高品質な黒色を得る目的で、任意の調色色素を配合しても良い。
調色色素としては、公知の任意の色素を選択することができるが、本発明のインク組成物には、色素(I)に加えて、少なくとも上記式(2)で表される色素(II)又は上記式(3)で表される色素(III)のいずれか1種を含有するのが好ましく、その両者を含有するのがより好ましい。
【0021】
よりニュートラルで高品質な黒色を表現する目的で、本発明の黒色インク組成物中に、上記色素(I)、色素(II)及び色素(III)の3種の色素を含有させる場合には、該インク組成物中に含有する色素の総質量中において、色素(I)が50〜80質量%、好ましくは55〜75質量%、より好ましくは60〜70質量%である。色素(II)は5〜30質量%であり、好ましくは15〜25質量%である。色素(III)5〜25質量%であり、好ましくは10〜20質量%である。
【0022】
更なる微細な調色等を目的として、本発明のインク組成物には上記色素(I)乃至(III)以外の他の色素を、本発明の効果を阻害しない範囲でさらに加えてもよい。他の色素を加える場合、加え得る他の色素の量の範囲は、該色素を加える目的等により異なるため、一概に決めることは困難である。しかし、おおよその目安として、インク組成物中に含有する色素の総質量において、色素(I)乃至(III)の合計が70〜99質量%、これら以外の色素が合計で1〜30質量%程度がよい。なお、上記の通り、色素(I)乃至(III)以外の他の色素は、本発明のインク組成物には加えなくてもよい。
【0023】
上記式(1)で表される色素(I)について記載する。
上記式(1)中、破線で表される環A乃至Dの4つの環は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、平均値で含窒素へテロ環が0.2以上3.0以下であり、残りがベンゼン環である。
【0024】
前記破線で表される環A乃至Dにおける、含窒素ヘテロ環としては、例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン等の、含窒素6員複素芳香環が挙げられ、ピリジン又はピラジンが好ましく、ピラジンがより好ましい。これらの環は、複数の種類が混在、例えば環Aがピリジンで、環Bがピラジン等であっても良いが、1分子中における環A乃至Dの含窒素ヘテロ環は、同一の種類である方が好ましい。
上記の色素(I)は、実質的に混合物であるため、環A乃至Dのうち、平均値で含窒素へテロ環が0.2以上3.0以下であり、残りはベンゼン環である。従って、環A乃至Dのうち、ベンゼン環は、4.0−「含窒素へテロ環の平均値」で計算することができる。すなわち、該ベンゼン環は、平均値で1.0以上3.8以下である。該平均値としては、通常、小数点以下2桁目を四捨五入する。ニュートラルで高品質な黒色を表現する目的で、該含窒素へテロ環は、通常0.2以上3.0以下、好ましくは1.0以上2.8以下、より好ましくは1.0以上2.6以下である。
含窒素ヘテロ環の数が増えるにしたがって耐オゾンガス性は向上するが、ブロンジングは生じやすくなる傾向にあり、含窒素ヘテロ環の個数は耐オゾンガス性とブロンジング性を考慮しながら、適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。
【0025】
上記式(1)中、基Eにおけるアルキレンとしては、通常C2−C12アルキレンがあげられ、好ましくはC2−C6、より好ましくはC2−C4、さらに好ましくはC2アルキレンがあげられる。具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン等が挙げられる。好ましいもの等は、これらの中から上記の炭素数の範囲のものである。
【0026】
上記式(1)中、Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基又はホスホノ置換アニリノ基であり、該3種類のアニリノ基は、さらにスルホ基;カルボキシ基;ホスホノ基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;アルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;ジアリールアミノ基;アセチルアミノ基;ウレイド基;アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;アルキルスルホニル基;及びアルキルチオ基;より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を有していてもよい。これらのうち、該3種類のアニリノ基がさらに置換基を有する場合の好ましい置換基としては、スルホ基;カルボキシ基;ヒドロキシ基;非置換C1−C4アルコキシ基;ニトロ基;ハロゲン原子;より成る群から選択される1種又は2種の置換基が挙げられる。該3種類のアニリノ基が、さらに置換基を有する場合、該置換基の種類は、通常1乃至3、好ましくは1乃至2、より好ましくは1である。また、該置換基の数は、通常1乃至3、好ましくは1乃至2、より好ましくは1である。該3種類のアニリノ基の好ましい具体例としては、2−スルホアニリノ、3−スルホアニリノ、4−スルホアニリノ等のスルホ置換アニリノ基;2,5−ジスルホアニリノ等のスルホ基がさらに1つ置換したスルホ置換アニリノ基;4−エトキシ−2−スルホアニリノ、2−メチル−5−スルホアニリノ、2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホアニリノ、2−クロロ−5−スルホアニリノ、3−カルボキシ−4−ヒドロキシ−5−スルホアニリノ、2−ヒドロキシ−5−ニトロ−3−スルホアニリノ、4−アセチルアミノ−2−スルホアニリノ、4−アニリノ−3−スルホアニリノ、2,5−ジクロロ−4−スルホアニリノ等の、スルホ置換アニリノ基に、上記の群から選択される1乃至2種類及び1乃至2の置換基数の置換基を有するもの;2−カルボキシアニリノ基等のカルボキシ置換アニリノ基;3−カルボキシ−4−ヒドロキシアニリノ基、3,5−ジカルボキシアニリノ、2−カルボキシ−4−スルファモイルアニリノ基等の、カルボキシ置換アニリノ基に、上記の群から選択される1乃至2種類及び置換基数の置換基を有するもの;3−ホスホノアニリノ基等のホスホノ置換アニリノ基;等が挙げられる。該3種類のアニリノ基としては、スルホ置換アニリノ基又はカルボキシ置換アニリノ基が好ましく、スルホ置換アニリノ基がより好ましい。
該3種類のアニリノ基が、さらに置換基を有する場合、好ましい置換基はスルホ、カルボキシ又はヒドロキシであり、より好ましくはスルホ又はカルボキシ、さらに好ましくはスルホである。
【0027】
Yはヒドロキシ基又はアミノ基を表し、アミノ基が好ましい。
【0028】
上記式(1)中、a及びbの和は、平均値で0から3.7であり、cは平均値で0.1から3.8であり、且つa、b、cの総和は平均値で1.0から3.8である。
a、b及びcで、それぞれその置換数を表されるスルホ基、非置換スルファモイル基及び置換スルファモイル基の3種類の置換基は、破線で表される環A乃至Dがベンゼン環の場合にのみ、該環A乃至Dに置換することができ、破線で表される環A乃至Dが含窒素へテロ環の場合には置換しない。
aで置換数を表されるスルホ基と、bで置換数を表される非置換スルファモイル基は、本発明の色素の分析手段として通常用いるLC−Massでの質量分析では区別することが非常に困難である。このため、本明細書においては該スルホ基及び該非置換スルファモイル基は置換数の和を範囲として示す。
a及びbの和は、通常0から3.7、好ましくは0.8−3.7、より好ましくは1.8−3.6、さらに好ましくは2.8−3.5である。
cは、通常0.1−3.8、好ましくは0.1−3.0、より好ましくは0.2−2.0、さらに好ましくは0.3−1.0である。
cの数が増えるに従ってブロンジングは生じ難くなるが、耐オゾンガス性は低下する傾向にあるため、cの数はブロンジング性と耐オゾンガス性とを考慮しながら、適宜調節し、バランスの良い比率を選択すれば良い。
【0029】
上記式(1)で表される色素(I)は、一般にアザフタロシアニン又はポルフィラジン等と呼称され、中心金属が銅であるものは、インクジェット記録用のシアン色素として使用できることが広く知られている。しかし、銅の誘導体を色素として使用した場合、一般に彩度が高くなり過ぎるため、低彩度でニュートラルな黒色の色相を調整するのは困難となる。これに対して、中心金属をニッケルとした場合には、彩度がより0に近くなり、目的とする黒色の色相を表現する場合に好適に使用できる。
また、式(1)における環A乃至Dを上記の範囲で含窒素ヘテロ環、好ましくはピラジン環、及び中心金属をニッケルとする組合せにより、さらに彩度が0に近くなるため、この組合せは中心金属が銅であるものよりも、黒色の色相を表現する場合、さらに好適に使用できる。
【0030】
色素(I)の調色色素として好ましいものの1つが、上記式(2)で表される色素(II)である。
式(2)で表される色素(II)は互変異性体の存在することが知られている。どのような互変異性体であっても色素(II)として用いることができ、上記式(2)の中に含まれる。
【0031】
上記式(2)中、基Aはフェニル基であり、カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;シアノ基;ニトロ基;スルファモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;及び、非置換、又は、ヒドロキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルキルスルホニル基;よりなる群から選択される置換基を有し、
基B及び基Cはパラフェニレン基であり、カルボキシ基;スルホ基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;よりなる群から選択される置換基を有し、
1は、非置換、又はカルボキシ置換C1−C4アルキル基;非置換、又はスルホ置換フェニル基;又はカルボキシ基;を、
2は、シアノ基;カルバモイル基;又はカルボキシ基;を、
3およびR4は、それぞれ独立して水素原子;メチル基;塩素原子;又はスルホ基;を、それぞれ表す。
【0032】
上記基A、基B、基Cの置換基における非置換C1−C4アルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のものが挙げられ、直鎖又は分岐鎖が好ましく、直鎖がより好ましい。具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル等の直鎖のもの;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の分岐鎖のもの;シクロプロピル等の環状のもの;等が挙げられる。
【0033】
上記基A、基B、基Cの置換基における非置換C1−C4アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。具体例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ等の直鎖のもの;イソプロポキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
【0034】
上記基A、基B、基Cの置換基におけるヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。該選択される基の数は、通常1又は2、好ましくは1である。具体例としては例えば、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシ置換のもの;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、n−プロポキシブトキシ、イソプロポキシエトキシ、イソプロポキシブトキシ等のアルコキシ置換のもの;3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホ置換のもの;カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ等のカルボキシ置換のもの;2−ヒドロキシエトキシエトキシ等の、上記の中から選択される2種類の基が置換したもの;等が挙げられる。
【0035】
上記基Aの置換基における非置換C1−C4アルキルスルホニル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖が好ましい。具体例としては、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル等の直鎖のもの;イソプロピルスルホニル等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
上記基Aの置換基におけるヒドロキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルキルスルホニル基としては直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、具体例としては、ヒドロキシエチルスルホニル、2−ヒドロキシプロピルスルホニル等のヒドロキシ置換のもの;2−スルホエチルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル等のスルホ置換のもの;2−カルボキシエチルスルホニル、3−カルボキシプロピルスルホニル等のカルボキシ置換のもの;等が挙げられる。
【0036】
上記基Aにおける好ましい置換基としては、シアノ、カルボキシ、スルホ、スルファモイル、メチルスルホニル、2−ヒドロキシエチルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル、ニトロ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ等であり、より好ましくは、シアノ、カルボキシ、スルホ、スルファモイル、メチルスルホニル、ヒドロキシエチルスルホニル、3−スルホプロピルスルホニル、ニトロであり、さらに好ましくは、カルボキシ、スルホである。
【0037】
上記基Bおよび基Cにおける好ましい置換基としては、カルボキシ、スルホ、メチル、メトキシ、エチル、エトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ、カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ等であり、より好ましくは、スルホ、メチル、メトキシ、2−ヒドロキシエトキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、カルボキシメトキシであり、さらに好ましくは、スルホ、メチル、メトキシ、3−スルホプロポキシである。
【0038】
上記R1における非置換C1−C4アルキル基としては、好ましいもの等を含めて上記基A、基B及び基Cの置換基における非置換C1−C4アルキル基と同じでよい。R1におけるカルボキシ置換C1−C4アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖が好ましい。具体例としては、2−カルボキシエチル、カルボキシメチル、3−カルボキシプロピル等が挙げられる。
【0039】
上記R1におけるスルホ置換フェニル基としては、例えば、3−スルホフェニル、4−スルホフェニル、2,4−ジスルホフェニル、3,5−ジスルホフェニル等の、スルホが1乃至2置換したフェニル基が挙げられる。
【0040】
上記R1における好ましいものは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、カルボキシメチル、フェニル、4−スルホフェニル、カルボキシであり、より好ましくは、メチル、n−プロピル、カルボキシメチル、4−スルホフェニルであり、さらに好ましくは、メチル、n−プロピルである。
【0041】
上記R1とR2における好ましい組み合わせは、R1がメチルでR2がシアノ、又はR1がメチルでR2がカルバモイルである。
【0042】
上記R3およびR4におけるより好ましいものは、水素原子、メチル、スルホであり、好ましいR3とR4の組み合わせは、R3が水素原子でR4がスルホ;又はR3がスルホでR4が水素原子;である。
【0043】
色素(I)の調色色素として好ましいものの1つが、上記式(3)で表される色素(III)である。
上記式(3)において、Raは、水素原子;ヒドロキシ基;カルボキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基又はヒドロキシC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルコキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ置換C1−C5アルキルアミノ基;ビス−(カルボキシ置換C1−C5アルキル)アミノ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルカノイルアミノ基;非置換、又は、ベンゼン環がカルボキシ基、スルホ基及びアミノ基よりなる群から選択される基で置換されたフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子;又はウレイド基;を、Zはカルボキシ基又はスルホ基を有する脂肪族アミノ基を、それぞれ表す。
【0044】
上記Rにおける非置換C1−C4アルキル基としては、上記式(2)における基Aの置換基が非置換C1−C4アルキル基である場合と、好ましいもの等を含めて同じでよい。
におけるヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキル基の具体例としては、2−ヒドロキシエチル等のヒドロキシ置換のもの;メトキシエチル、エトキシエチル、n−プロポキシエチル、イソプロポキシエチル、n−ブトキシエチル、sec−ブトキシエチル、tert−ブトキシエチル等のアルコキシ置換のもの;等が挙げられる。
【0045】
上記Rにおける非置換C1−C4アルコキシ基としては、上記基A、基B、基Cの置換基における非置換C1−C4アルコキシ基と、好ましいもの等を含めて同じでよい。
におけるヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基又はヒドロキシC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルコキシ基としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシ置換のもの;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ等のアルコキシ置換のもの;2−ヒドロキシエトキシエトキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシ置換のもの;等が挙げられる。
【0046】
上記Rにおける非置換C1−C4アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n−ブチルアミノ、イソブチルアミノ等の非置換モノアルキルアミノ基;N,N−ジメチルアミノ、N,N−ジエチルアミノ、N,N−ジ(n−プロピル)アミノ、N,N−ジ(イソプロピル)アミノ等の非置換ジアルキルアミノ基;等が挙げられる。
におけるヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキルアミノ基の例としては、ヒドロキシエチルアミノ、2−ヒドロキシプロピルアミノ、3−ヒドロキシプロピルアミノ等のモノ(ヒドロキシ置換アルキル)アミノ基;ビス(ヒドロキシエチル)アミノ等のビス(ヒドロキシ置換アルキル)アミノ基;メトキシエチルアミノ、エトキシエチルアミノ等のモノ(C1−C4アルコキシ置換アルキル)アミノ基;ビス(メトキシエチル)アミノ、ビス(2−エトキシエチル)アミノ等のビス(C1−C4アルコキシ置換アルキル)アミノ基;等が挙げられる。
【0047】
上記Rにおけるカルボキシ置換C1−C5アルキルアミノ基としては、カルボキシメチルアミノ、カルボキシエチルアミノ、カルボキシプロピルアミノ、カルボキシ−n−ブチルアミノ、カルボキシ−n−ペンチルアミノなどが挙げられる。
【0048】
上記Rにおけるビス(カルボキシC1−C5アルキル)アミノ基の例としてはビス(カルボキシメチル)アミノ、ビス(カルボキシエチル)アミノ、ビス(カルボキシプロピル)アミノ等が挙げられる。
【0049】
上記Rにおける非置換C1−C4アルカノイルアミノ基としては、アセチルアミノ、n−プロピオニルアミノ、イソプロピオニルアミノ等が挙げられる。
におけるヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルカノイルアミノ基としては、ヒドロキシアセチルアミノ、2−ヒドロキシ−n−プロピオニルアミノ、3−ヒドロキシ−n−プロピオニルアミノ、2−ヒドロキシ−n−ブチリルアミノ、3−ヒドロキシ−n−ブチリルアミノ等のヒドロキシ置換のもの;2−メトキシ−n−プロピオニルアミノ、3−メトキシ−n−プロピオニルアミノ、2−メトキシ−n−ブチリルアミノ、3−メトキシ−n−ブチリルアミノ等のアルコキシ置換のもの;等が挙げられる。
【0050】
上記Rにおけるベンゼン環がカルボキシ基、スルホ基及びアミノ基よりなる群から選択される基で置換されたフェニルアミノ基としては、カルボキシフェニルアミノ、ビスカルボキシフェニルアミノ等のカルボキシ置換のもの;スルホフェニルアミノ等のスルホ置換のもの;アミノフェニルアミノ、ジアミノフェニルアミノ等のアミノ置換のもの;ジアミノスルホフェニルアミノ等のスルホとアミノがそれぞれ置換したもの;等が挙げられる。該置換基の数は、通常1乃至4、好ましくは1乃至3、より好ましくは1又は2である。
【0051】
上記のうち、好ましいRaはC1−C4アルキル基であり、メチル基がより好ましい。
【0052】
上記Zにおけるカルボキシ基又はスルホ基を有する脂肪族アミノ基としては、スルホC1−C5アルキルアミノ基;カルボキシC1−C5アルキルアミノ基;ジ(スルホC1−C5アルキル)アミノ基;ジ(カルボキシC1−C5アルキル)アミノ基;などの、カルボキシ基もしくはスルホ基を有する、モノC1−C5アルキルアミノ基又は、ジ(C1−C5アルキル)アミノ基が挙げられる。より好ましい脂肪族アミノ基の炭素数は1又は2である。好ましい具体例としては、スルホエチルアミノ等のスルホC1−C5アルキルアミノ基;ジ(カルボキシメチル)アミノ等のジ(カルボキシC1−C5アルキル)アミノ基;が挙げられ、なかでもスルホエチルアミノ等のスルホC1−C5アルキルアミノ基がより好ましく、スルホC1−C3アルキルアミノ基がさらに好ましい。
【0053】
上記式(3)で表される色素(III)のうち、好ましいものが上記式(7)で表される色素である。
式(7)中、Zは上記式(3)におけるのと同じ意味を有し、好ましいもの等を含めて同じでよい。
上記式(7)で表される色素(III)として最も好ましい色素は、下記式(10)で表される色素である。
【0054】
【化10】

【0055】
上記式(1)乃至(10)における環A乃至D、基E、X、Y、a乃至cの数、基A乃至C、Ra及びZにおいて、好ましいもの同士を組合せたものはより好ましく、より好ましいもの同士を組合せたものはさらに好ましい。さらに好ましいもの同士の組合せ等についても同様である。
【0056】
各色素(I)乃至(III)の塩としては、無機又は有機陽イオンの塩が挙げられる。そのうち無機塩の具体例としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびアンモニウム塩が挙げられ、好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩およびアンモニウム塩であり、又、有機の陽イオンの塩としては例えば下記式(11)で示される4級アンモニウムイオンがあげられるがこれらに限定されるものではない。また遊離酸、その互変異性体、およびそれらの各種の塩が混合物であってもよい。例えばナトリウム塩とアンモニウム塩の混合物、遊離酸とナトリウム塩の混合物、リチウム塩、ナトリウム塩およびアンモニウム塩の混合物など、いずれの組み合わせを用いても良い。塩の種類によって溶解性などの物性値が異なる場合も有り、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩などを含む場合にはその比率を変化させたりすることにより目的に適う物性を有する混合物を得ることもできる。また、色素(I)乃至(III)が同じ塩である必要は無く、それぞれが別の塩であっても構わない。
【0057】
【化11】

【0058】
上記式(11)においてZ1、Z2、Z3、Z4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
式(11)におけるZ1、Z2、Z3、Z4のアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられ、ヒドロキシアルキル基の具体例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられ、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられ、これらのうちヒドロキシエトキシC1−C4アルキルが好ましい。特に好ましいものとしては水素原子;メチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシC1−C4アルキル基が挙げられる。
【0059】
式(11)として好ましい化合物のZ1、Z2、Z3、及びZ4の組み合わせの具体例を下記表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
上記式(1)で表される色素(I)の製造方法を記載する。
まず、下記式(12)で表される化合物を合成する。下記式(12)で表される化合物は、例えば触媒及びニッケル化合物の存在下、含窒素へテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体とを反応させる事により得られる。含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の反応のモル比を変えることにより環A乃至Dの含窒素ヘテロ環の数とベンゼン環の数を調整することが可能である。
例えば環A乃至Dの4つの環のうち、0.2〜3.0個が含窒素ヘテロ環であり、残りがベンゼン環の場合には、その含有割合に応じて、含窒素へテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の使用割合をそれぞれ、0.05〜0.75モルの割合の範囲で、両者の合計が1モルとなる割合で使用することにより、目的とする化合物を得ることができる。
例えば、含窒素へテロ環が1.0で、ベンゼン環が3.0の場合、含窒素へテロ環ジカルボン酸誘導体を0.25モル、フタル酸誘導体を0.75モルの割合で使用すれば、平均値として目的とする環がそれぞれ導入された化合物を得ることができる。
含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体としては、隣接する2つの位置にそれぞれカルボキシ基、又はカルボキシと等価とされる反応性の基(酸アミド基、イミド基、酸無水物基及びカルボニトリル基等)を有する6員含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体が挙げられる。
具体的にはキノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸等のジカルボン酸化合物、無水キノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸無水物、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物等の酸無水物、2,3−ピラジンジカルボキシアミド等のアミド化合物、ピラジン−2,3−ジカルボン酸モノアミド等のジカルボン酸モノアミド化合物、2,3−ピラジンジカルボン酸イミド等の酸イミド化合物、ピリジン−2,3−ジカルボニトリル、ピラジン−2,3−ジカルボニトリル等のジカルボニトリル化合物があげられる。またフタル酸誘導体としては、フタル酸、無水フタル酸、フタルアミド、フタラミン酸、フタルイミド、フタロニトリル、1,3−ジイミノイソインドリン及び2−シアノベンズアミド等があげられる。
【0062】
下記式(12)で表される化合物の合成方法には一般的にニトリル法とワイラー法と呼ばれる2つがあり、反応条件等が異なる。
ニトリル法とはピリジン−2,3−ジカルボニトリル、ピラジン−2,3−ジカルボニトリル、フタロニトリル等のジカルボニトリル化合物を原料とし、目的とする化合物を合成する方法である。
それに対し、ワイラー法はフタル酸、キノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸等のジカルボン酸化合物、無水フタル酸、無水キノリン酸、3,4−ピリジンジカルボン酸無水物、2,3−ピラジンジカルボン酸無水物等の酸無水物化合物、フタルアミド、ピリジン−2,3−ジカルボキシアミド等のジカルボキシアミド化合物、フタラミック酸、ピラジン−2,3−ジカルボン酸モノアミド等のジカルボン酸モノアミド化合物、フタルイミド、キノリン酸イミド等の酸イミド化合物を原料に用いる。またワイラー法では尿素の添加が必須であり、尿素の使用量は含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の総計1モルに対し5〜100倍モル量である。
【0063】
【化12】

【0064】
[式(12)中、破線で表される環A乃至Dは、前記式(1)におけるのと同じ意味を表す。]
【0065】
反応は溶媒の存在下に行われ、ニトリル法においては溶媒としては沸点100℃以上、より好ましくは130℃以上の有機溶媒が用いられる。該有機溶媒として、例えば、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ニトロベンゼン、キノリン、スルホラン及び尿素等が挙げられる。
また、ワイラー法においては、溶媒として沸点150℃以上、より好ましくは180℃以上の非プロトン性有機溶媒が用いられる。例えば、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、ニトロベンゼン、キノリン、スルホラン及び尿素等である。
溶媒の使用量は含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の総計の1〜100質量倍である。
【0066】
触媒としては、以下のものが使用できる。
ニトリル法においてはキノリン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、トリブチルアミン、アンモニア、N,N−ジメチルアミノエタノール等のアミン類、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコラート類があげられる。
またワイラー法においてはモリブデン酸アンモニウム及びホウ酸等があげられる。
触媒の添加量は、含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の総計1モルに対し、0.001〜1倍モルである。
【0067】
ニッケル化合物としては、金属ニッケル、ニッケルのハロゲン化物、カルボン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、アセチルアセトナート、錯体等が挙げられる。例えば、塩化ニッケル、臭化ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート等が挙げられる。
ニッケル化合物の使用量は、含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とフタル酸誘導体の総計1モルに対し、0.15〜0.35倍モルである。
【0068】
ニトリル法では反応温度は通常100〜200℃であり、好ましくは130〜170℃である。
一方、ワイラー法では反応温度は150〜300℃であり、好ましくは170〜220℃である。
反応時間は反応条件により変わるが通常1〜40時間である。反応終了後、目的物を濾取、洗浄及び乾燥する事により、上記式(12)で表される化合物が得られる。
【0069】
前記式(12)における破線で表される環A乃至Dのうち、いずれも平均値で2.0がピラジン環で、残り2.0がベンゼン環で表される化合物、すなわちニッケルジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンを例にあげて、合成方法を更に詳細に説明する。
【0070】
スルホラン溶媒中、2,3−ピラジンジカルボン酸(0.5モル)、無水フタル酸(0.5モル)、塩化銅(II)(0.25モル)、リンモリブデン酸アンモニウム(0.004モル)、尿素(6モル)を200℃、5時間反応させることにより、目的とするニッケルジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンが得られる。2,3−ピラジンジカルボン酸、無水フタル酸、金属化合物、溶媒及び触媒等の種類や使用量により反応性は異なり上記に限定されるものではない。
【0071】
また、上記合成法で合成した場合、主成分はニッケルジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンであり、前記式(12)における破線で表される環A乃至Dのうち、いずれも平均値で、1.0がピラジン環で、残り3.0がベンゼン環で表されるニッケルトリベンゾ(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンと、同様に3.0がピラジン環で、残り1.0がベンゼン環で表されるニッケルベンゾトリス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンとが生成し、また、少量ではあるがニッケルテトラキス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジン及びニッケルフタロシアニン(ニッケルテトラベンゾポルフィラジン)も生成する。従って、上記の平均値とは、これらの混合物の総量における平均値である。
【0072】
上記のニッケルジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジンの合成方法に準じて、原料である2,3−ピラジンジカルボン酸の代わりに、他の含窒素へテロ環の誘導体を用いることにより、同様に、2つが該含窒素ヘテロ環で、残り2つがベンゼン環の化合物を得ることができる。破線で表される環A乃至Dにおける、含窒素へテロ環と、ベンゼン環との比率が異なるものについても、上記の比率でそれぞれの原料を使用することにより、目的とする比率の化合物を得ることができる。
【0073】
次に、下記式(13)で表される化合物は、上記式(12)で表される化合物をクロロスルホン酸中でクロロスルホニル化すること;又は、式(12)で表される化合物を、硫酸又は発煙硫酸中でスルホ化した後、クロロ化剤で該スルホ基をクロロスルホニル基へ変換すること;等の常法により得られる。このようにして得られるクロロスルホニル基又はスルホ基は、1つのベンゼン環上に、通常1つ導入されるので、これらの基の導入される数はベンゼン環の数以内である。従って、上記式(13)におけるクロロスルホニル基の数(n)は、式(13)で表される化合物のベンゼン環の数に応じて1.0以上3.8以下である。
下記式(13)で表される化合物のその他の合成方法としては、予めスルホ基を有するスルホフタル酸等のフタル酸誘導体とキノリン酸等の含窒素ヘテロ環ジカルボン酸誘導体とを縮合閉環させた後、スルホ基をクロロスルホニル基へ変換する方法等が挙げられる。
【0074】
【化13】

【0075】
上記式(13)中、破線で表される環A乃至Dは、上記式(1)と同じ意味を有し、nは平均値で1.0以上3.8以下である。
【0076】
上記のクロロスルホニル化を行う場合、通常クロロスルホン酸を溶媒として反応を行う。クロロスルホン酸の使用量は、通常上記式(12)で表される化合物の3〜20重量倍であり、好ましくは5〜10重量倍である。反応温度については、通常100〜150℃であり、好ましくは120〜150℃である。反応時間については反応温度等の反応条件により異なるが、通常1〜10時間である。しかしながらこの反応条件でクロロスルホニル化反応を行った場合、クロロスルホニル化が不十分であり、得られる化合物はクロロスルホニル基と、塩素原子が導入されないか又はクロロスルホニル基が加水分解を受けるか等により生じるスルホ基の混合物となる。このためクロロスルホン酸を単独で使用せず、塩化チオニル等のクロル化剤を更に添加してクロロスルホニル化反応を行うのが好ましい。
添加する該クロル化剤の量は、理論上導入されるクロロスルホニル基の数に対して、0.5〜10当量、好ましくは0.5〜5当量程度がよい。該クロル化剤としては塩化チオニル、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン及びオキシ塩化リン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
クロロスルホニル化反応は上記の通り、クロロスルホン酸以外の溶媒は用いなくてよい。しかし用いる場合には、硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸、ベンゼン、トルエン、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
次に、上記式(13)で表される化合物と、下記式(5)で表される有機アミンとを、アンモニア又はアンモニア発生源の存在下に水溶媒中で、おおよそpH8〜10、5〜70℃、1〜20時間反応させる事により、目的の上記式(1)で表される色素(I)が得られる。本明細書においてアンモニア発生源とは、例えば種々のアンモニウム塩等のように、中和又は加熱等の操作により、アンモニアを発生する化合物をいう。反応に用いるアンモニア又はアンモニア発生源としては例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の中和によりアンモニアを発生するアンモニウム塩;尿素等の加熱によりアンモニアを発生するもの;アンモニア水;アンモニアガス;等が挙げられる。好ましくはアンモニア水又は中和によりアンモニアを発生する化合物、より好ましくはアンモニア水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、上記式(13)で表される化合物、下記式(5)で表される有機アミン及びアンモニア又はアンモニア発生源との反応は通常、水中又は含水溶媒中、好ましくは水中で行なわれる。
【0078】
【化5】

【0079】
上記式(5)中、基E、X及びYは、上記式(1)におけるのと同じ意味を有する。
【0080】
上記式(5)で表される有機アミンの使用量は、上記式(13)で表される化合物1モルに対して、通常、上記式(1)におけるcの数の1倍モル以上であるが、該有機アミンの反応性や、該有機アミンの導入反応の条件により異なり、一概にいうことは困難である。
通常は上記cの数の1〜3倍モル、好ましくは1〜2倍モル程度である。cの数が大きくなるほど、該導入反応に用いる上記式(5)で表される有機アミンの使用倍数はより大きくする必要がある。
【0081】
上記式(5)で表される有機アミンは公知の方法で製造することができる。
例えば、Xに対応するアニリン類0.95〜1.1モルと、ハロゲン化シアヌル、例えば2,4,6−トリクロロ−S−トリアジン(シアヌルクロライド)1モルとを水中で、おおよそpH3〜7、5〜40℃、2〜12時間の条件下に反応させて、1次縮合物を得る。
次いで、Yがアミノ基の場合には、得られた1次縮合物1モルと、アンモニア0.95〜2.0モルとを、おおよそpH4〜10、5〜80℃、0.5〜12時間の条件下に反応させることにより2次縮合物を得る。
またYがヒドロキシ基の場合には、1次縮合物の反応液に、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物を添加し、おおよそpH4〜10、5〜80℃、0.5〜12時間の条件下に反応させることにより2次縮合物を得る。
次いで、得られた2次縮合物1モルと、基Eに対応するアルキレンジアミン類1〜50モルとを、おおよそpH9〜12、5〜90℃、0.5〜8時間の条件下に反応させることにより、上記式(5)で表される化合物が得られる。縮合の際のpH調整には通常、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩などがあげられる。なお、縮合の順序は各種化合物の反応性に応じ適宜定められ、上記に限定されない。
【0082】
前記式(1)で表される色素(I)は一部、2価の連結基(L)を介してニッケルポルフィラジン環(Pz)が2量体(例えばPz−L−Pz)又は3量体を形成した不純物が副生し、反応生成物中に混入することもある。
【0083】
上記Lで表される2価の連結基としては−SO2−、−SO2−NH−SO2−などがあり、3量体の場合にはこれら2つのLが組み合わされた副生成物が形成される場合も有る。しかしながら、これらの副生成物は微量であり、本発明の黒色インク組成物が有する効果に影響を与えるほどは混入しないため、特に除去することなくそのまま本発明の色素(I)として使用できる。
【0084】
こうして得られた本発明の色素(I)は酸析又は塩析後、濾過等により分離することが出来る。塩析は例えば酸性〜アルカリ性、好ましくはpH1〜11の範囲で塩析を行うことが好ましい。塩析の際の温度は特に限定されないが、通常40〜80℃、好ましくは50〜70℃に加熱後、塩化ナトリウム等を加えて塩析するのが好ましい。
【0085】
本発明の前記式(1)で表される色素(I)における、環A乃至D、基E、X及びYの具体例を表2に示すが、これらに限定されるものではない。なお表2中、「2,3−ピラジノ」とは、環A乃至Dにおける含窒素へテロ環が1,4−ピラジン環であり、該1,4−ピラジン環が、2及び3位で縮環していること;「2,3−ピリド」とは、同様に含窒素へテロ環がピリジン環であり、該ピリジン環が2及び3位で縮環していること;「ベンゾ」とは、環A乃至Dにおけるベンゼン環であること;を、それぞれ意味する。
【0086】
【表2】

【0087】
上記式(2)で表される色素(II)の合成方法は特許文献1に記載されている。また、化合物の好適な具体例としては下記表3から6に記載のもの等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
上記式(3)で表される色素(III)の合成方法は、特許文献2に記載されている。
【0093】
本発明のインク組成物は、前述のように色素(I)を、色素として含有することを特徴とする。好ましくは色素(II)又は(III)を含有し、色素(II)及び(III)の両者を含有することがより好ましい。色素(II)及び(III)の各々は、上記した特定の条件を満たす範囲でそれぞれ単独の色素でも良いし、それぞれが複数の色素の混合物であっても良い。本発明のインク組成物中に含有する色素の総質量は、インク組成物の総質量に対して、通常0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、より好ましくは2〜8質量%の比率であり、色素以外の残部は水を主要な媒体とする。
【0094】
本発明のインク組成物には、さらに水溶性有機溶剤を例えば0〜30質量%、インク調製剤を例えば0〜10質量%含有していても良く、水溶性有機溶剤は含有するのが好ましい。また、所望により調色等の目的で更に他の色素を上記の範囲で含んでも良い。なお、インク組成物のpHとしては、保存安定性を向上させる点で、pH5〜11が好ましく、pH7〜10がより好ましい。また、インク組成物の表面張力としては、25〜70mN/mが好ましく、25〜60mN/mがより好ましい。さらに、インク組成物の粘度としては、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。本発明のインク組成物のpH、表面張力は後記するようなpH調整剤、界面活性剤で適宜調整することが可能である。
【0095】
本発明のインク組成物は、前記色素(I)を、必要に応じて他の調色用等の色素と共に、水又は含水の水溶性有機溶剤(水と混和可能な有機溶剤)に溶解し、必要に応じインク調製剤を添加したものである。このインク組成物をインクジェットプリンター用のインクとして使用する場合、色素(I)は、金属陽イオンの塩化物、硫酸塩等の無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましい。その無機不純物含有量の目安は、おおよそ色素の総質量に対して1質量%以下程度である。無機不純物の少ない色素を製造するには、例えば逆浸透膜による通常の方法又は色素の乾燥品あるいはウェットケーキをメタノール等のアルコール及び水の混合溶媒中で撹拌し、析出物を濾過分離して、乾燥するなどの方法で脱塩処理すればよい。同様に色素(II)、(III)及びその他の加えることが可能な調色色素についても無機不純物の含有量が少ないものを用いるのが好ましく、該不純物の含有量の目安や適用できる脱塩処理の方法等は色素(I)と同様である。
【0096】
前記インク組成物の調製において、水溶性有機溶剤は、インクの粘度を調整する為、インクの乾燥性を調整する為、印刷後の記録媒体や記録媒体表面のインク受容層への浸透性を調整する為などの目的で使用される。用いうる水溶性有機溶剤の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール又は第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ヒドロキシエチル−2−ピロリドン又はN−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール又はジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴ又はポリ−アルキレングリコール又はチオグリコール;トリメチロールプロパン、グリセリン又はヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン又はジメチルスルホキシド等があげられる。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0097】
なお、上記の水溶性有機溶剤にはトリメチロールプロパン等のように、常温で固体の物質も含まれているが、これらは固体であっても水溶性を示し、水に溶解させた場合には水溶性有機溶剤と同じ目的で使用することができるため、便宜上、本明細書においては水溶性有機溶剤の範疇に記載する。
【0098】
前記インク組成物の調製において適宜用いられるインク調製剤は、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、色素溶解剤、酸化防止剤および/又は界面活性剤などがあげられる。以下にこれらの薬剤について説明する。
【0099】
防黴剤の具体例としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらはインク組成物中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
【0100】
防腐剤の例としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系又は無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物の具体例としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられ、ピリジンオキシド系化合物の具体例としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられ、イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤の具体例として、無水酢酸ソーダ、ソルビン酸ソーダ又は安息香酸ナトリウム等があげられる。
【0101】
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを例えば5〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基などが挙げられる。
【0102】
キレート試薬の具体例としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム又はウラシル二酢酸ナトリウムなどがあげられる。
【0103】
防錆剤の具体例としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール又はジシクロヘキシルアンモニウムナイトライトなどがあげられる。
【0104】
水溶性紫外線吸収剤の例としては、例えばスルホ化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物又はトリアジン系化合物が挙げられる。
【0105】
水溶性高分子化合物の具体例としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン又はポリイミン等があげられる。
【0106】
色素溶解剤の具体例としては、例えばε−カプロラクタム、エチレンカーボネート又は尿素などが挙げられる。
酸化防止剤の例としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤の例としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類又は複素環類等が挙げられる。
【0107】
界面活性剤の例としては、例えばアニオン系、カチオン系、ノニオン系などの公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤の例としてはアルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸およびその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸塩又はジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体又はポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。
両性界面活性剤の具体例としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、又はイミダゾリン誘導体などがある。
ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどのアセチレンアルコール系;その他の具体例として例えば、日信化学社製、商品名サーフィノール104、105、82、465、オルフィンSTGなどが挙げられる。
これらのインク調製剤は、単独もしくは混合して用いられる。
【0108】
本発明のインク組成物は前記各成分を任意の順序で混合、撹拌することによって得られる。得られたインク組成物は、所望により、狭雑物を除く為にメンブランフィルター等で濾過を行ってもよい。また、インク組成物としての黒の色相を調整するため、上記の色素(II)及び(III)以外に、種々の色相を有する他の色素を混合してもよい。その場合は、他の色相を有する黒色や、イエロー、オレンジ、ブラウン、スカーレット、レッド、マゼンタ、バイオレット、ブルー、ネイビー、シアン、グリーン、その他の色の色素を混合して用いることができる。
【0109】
本発明のインク組成物は、各種分野において使用することができるが、筆記用水性インク、水性印刷インク、情報記録インク等に好適であり、インクジェット用インクとして用いることが特に好ましく、後述する本発明のインクジェット記録方法において好適に使用される。
【0110】
次に、本発明のインクジェット記録方法について説明する。本発明のインクジェット記録方法は、前記本発明のインク組成物を用いて記録を行うことを特徴とする。本発明のインクジェット記録方法においては、前記インク組成物、又はこれを含有する水性組成物をインクとして用いて受像材料(被記録材)に記録を行うが、その際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
公知の方法、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、すなわちバブルジェット(登録商標)方式;等を採用することができる。
なお、前記インクジェット記録方法には、フォトインクと称する、インク中の色素濃度(色素含有量)の低いインクを、小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相でインク中の色素濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;および無色透明のインクを用いる方式なども含まれる。
【0111】
本発明の着色体は、少なくとも色素(I)を色素として含有するインク組成物により着色されたものであり、より好ましくはインクジェットプリンターを用いるインクジェット記録方法により、本発明のインク組成物によって着色されたものである。
着色されうるものとして特に制限はないが、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート、繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等)、皮革、カラーフィルター用基材等が挙げられ、情報伝達用シートが好ましい。
情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたものが好ましい。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること;又は多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックスなどのインク中の色素を吸収し得る多孔性白色無機物を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;などにより設けられる。このようなインク受容層を設けた情報伝達用シートは、通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。
【0112】
上記の情報伝達用シートのうち、特に多孔性白色無機物を表面に塗工したシートに記録した画像は、オゾンガスによって変退色が大きくなることが知られている。しかし本発明のインク組成物は耐オゾンガス性が優れているため、このような被記録材へインクジェット記録した際に、特に大きな効果を発揮する。
その様な多孔性白色無機物を表面に塗工したシートの具体例としては、キヤノン株式会社製、商品名 プロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー又はマットフォトペーパー;セイコーエプソン株式会社製、商品名 写真用紙<光沢>、PMマット紙、写真用紙クリスピア<高光沢>;日本ヒューレット・パッカード株式会社製、商品名 アドバンスフォトペーパー;富士フィルム株式会社製、画彩写真仕上げPro;等として市販品が入手可能である。
【0113】
本発明のインクジェット記録方法で普通紙や上記の情報伝達用シート等の被記録材に記録するには、例えば上記のインク組成物を含有する容器をインクジェットプリンターの所定の位置にセットし、通常の方法で被記録材に記録すればよい。
本発明のインクジェット記録方法は、本発明の黒色のインク組成物と、例えば公知のマゼンタ、シアン、イエロー、及び必要に応じて、グリーン、ブルー(又はバイオレット)及びレッド(又はオレンジ)などの各色のインク組成物とのインクセットとして併用することもできる。
各色のインク組成物は、それぞれの容器に注入され、その各容器を本発明の黒色のインク組成物を含有する容器と同様にインクジェットプリンターの所定の位置にセットしてインクジェット記録に使用される。
【0114】
本発明のインク組成物は長期間保存しても固体の析出、物性の変化、および色相の変化等を生じないため、貯蔵安定性が良好である。
又、本発明のインク組成物は、インクジェット記録用、筆記具用として用いることが可能である。
さらに情報伝達用シート、特にインクジェット専用紙に記録した場合、その記録画像の印字濃度が高く、加えて記録画像の耐久性、特に耐オゾンガス性、および耐光性が優れている。
【実施例】
【0115】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例中「部」及び「%」とあるのは、特別の記載のない限り質量基準である。
又、下記の各式において、スルホ等の官能基は便宜上、遊離酸の形で表記する。
また以下に記載するpH値および反応温度は、いずれも反応系内における測定値を示す。
また合成した色素の最大吸収波長(λmax)はpH7〜8の水溶液中で300nmから800nmの範囲で測定し、測定した色素については実施例中に測定値を記載した。
なお、上記式(1)、(12)及び(13)で表される化合物は、上記の通り実質的に混合物である。しかし、煩雑さを避けるため、これらに対応する構造式を記載する場合には、該混合物を構成する化合物の1つを代表構造式として記載する。
【0116】
実施例1
(1)
下記式(14)で表される化合物の合成:上記式(5)において、Xが2,5−ジスルホアニリノ、Yがアミノ、基Eがエチレンである化合物。
【0117】
【化14】

【0118】
氷水2000部中にロータットOH104−K(ライオン株式会社製、界面活性剤)7.2部、塩化シアヌル239.9部を投入し30分間攪拌した。次にアニリン−2,5−ジスルホン酸モノナトリウム塩(小西化学株式会社製の市販品をそのまま使用、純度91.2%)411.6部を投入し、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加によりpH2.7〜3.0を保持しながら10〜15℃で1時間、27〜30℃で2時間反応を行った。次に反応液を10℃以下に冷却した後、25%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH7.0〜7.5に調整した。この反応液に28%アンモニア水118.4部添加し10〜15℃、pH9.5〜10.0で3時間反応した。その後、濃塩酸を添加し、pH6.0〜7.0に調整した。次いで氷2000部を添加して0℃に冷却し、エチレンジアミン780部を5℃以下の温度で滴下した。その後、10〜15℃に昇温し、同温度で1時間反応した。続いて濃塩酸を滴下し、pH0.9〜1.0に調整した。この間、温度が上昇しない様に氷を添加しながら10〜15℃の温度を保持した。更に氷を添加し10℃以下にした。この時、液量は13000部であった。この反応液に塩化ナトリウム2600部(対液20%)を加え、1時間攪拌し固体を析出させた。析出した固体を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液3000部で洗浄することによりウェットケーキを743.0部得た(目的物の含有量:59.3%、HPLC純度:93.3%)。
【0119】
(2)
下記式(15)で表される、前記式(12)における環A乃至Dのうち、2.0がピラジン環で残り2.0がベンゼン環である混合物の合成。
【0120】
【化15】

【0121】
四つ口フラスコに、スルホラン250部、無水フタル酸14.8部、ピラジン−2,3−ジカルボン酸16.8部、尿素72.0部、塩化ニッケル(II)・6水和物12.1部、モリブデン酸アンモニウム1.0部を加え、200℃まで昇温し、同温度で5時間反応した。反応終了後75℃へ冷却し、メタノール200部を加えて析出した固体を濾過分取した。得られた固体をメタノール250部、温水500部で順次洗浄し、ウェットケーキ31.0部を得た。得られたウェットケーキ全量を5%塩酸500部中に加え、60℃に昇温し、同温度で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分取し、さらに水300部で洗浄し、ウェットケーキを得た。得られたウェットケーキ全量を10%アンモニア水500部中に加え、25〜30℃で1時間攪拌した。析出固体を濾過分取し、水300部で洗浄し、ウェットケーキ22.88部を得た。得られたウェットケーキを80℃で乾燥することにより、目的とする混合物の緑青色固体12.9部を得た。
【0122】
(3)
下記式(16)で表される、前記式(13)における環A乃至Dのうち2.0がピラジン環、残り2.0がベンゼン環であり、nが2.0である混合物。
【0123】
【化16】

【0124】
クロロスルホン酸48.4部中に攪拌しながら60℃以下で、上記実施例1(2)で得られたニッケルジベンゾビス(2,3−ピラジノ)ポルフィラジン6.1部を徐々に仕込み、145℃で4時間反応を行った。次に反応液を70℃まで冷却し、塩化チオニル17.9部を30分間かけて滴下た後、80℃で3時間反応を行った。反応液を30℃以下に冷却し、氷水500部中にゆっくりと注ぎ、析出している固体を濾過分取し、冷水200部で洗浄することにより、目的とする混合物のウェットケーキ37.0部を得た。
【0125】
(4)
下記式(17)で表される本発明の色素(I)の合成:前記式(1)における環A乃至Dのうち、2.0がピラジン環、残り2.0がベンゼン環であり、基Eがエチレン、Xが2,5−ジスルホアニリノ、Yがアミノである混合物(表2におけるNo.2−1の混合物)。
【0126】
【化17】

【0127】
氷水200部中に、上記実施例1(3)で得られた上記式(16)で表される混合物のウェットケーキ37.0部を加えて懸濁液を得た。一方、アンモニア水3.0部、及び温水100部に、実施例1(1)で得られた式(14)の化合物20.5部を溶解し、この溶液を上記の式(16)を含有する懸濁液に加えた。この液を、28%アンモニア水の添加によりpH9.0〜9.3に保持し、17〜20℃で6時間反応を行った後、60℃に昇温した。この時の液量は600部であった。この液に塩化ナトリウム120部(対液20%)を加え、35%塩酸を添加してpH1.0に調整し、固体を析出させた。析出固体を濾過分取し、20%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ33.4部を得た。得られたウェットケーキを水に溶解させ、25%水酸化ナトリウムにてpH9.0に調整後、水を添加し全量を400部に調整した後、60℃に昇温した。塩化ナトリウム80部(対液20%)、及び35%塩酸を添加してpHを1.0に調整し、固体を析出させた。析出固体を濾過分取し、15%塩化ナトリウム水溶液100部で洗浄し、ウェットケーキ43.0部を得た。得られたウェットケーキ43.0部を20%含水メタノール430部中に加え、60℃で1時間攪拌した後、析出固体を濾過分取し、メタノール100部で洗浄後、乾燥することにより、本発明の色素(I)である目的化合物のナトリウム塩の緑青色固体21.0部を得た。この色素は、水に対して100g/L以上の溶解度を示した。また、水溶液中でのλmaxは606nmであった。
【0128】

特許文献1の実施例2−6に記載の方法を追試することにより、下記式(18)で表される色素(II)を、同様に特許文献2の合成例4に記載の方法を追試することにより、前記式(10)で表される色素(III)をそれぞれ得た。なお、上記の通り、該色素(II)及び(III)は、本発明の黒色インク組成物における色素(I)の調色色素として好ましく用いられる。
【0129】
【化18】

【0130】
(A)インクの調製
実施例2
下記表7に記載の各成分を混合することにより本発明のインク組成物を調製し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過する事によりインクジェット用のインクを得た。また水はイオン交換水を使用した。尚、インク組成物のpHがpH=8〜10になるように1.0%水酸化ナトリウムで調整し、総量100.0部となるように水を加えた。このインクの調製を実施例2とする。得られたインクは、貯蔵中に、また長期間保存後においても沈殿分離が生ぜず物性の変化は生じなかった。
【0131】
表7
実施例1で得られた色素 :色素(I) 3.25部
式(18)で表される色素:色素(II) 1.0部
式(10)で表される色素:色素(III) 0.75部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
界面活性剤 0.1部
(商品名サーフィノール104 日信化学社製)
水+水酸化ナトリウム 75.9部
計 100.0部
【0132】
比較例1
比較対象のインクとして、下記表8に記載の各成分を混合することにより、特許文献1の実施例3−2に記載の組成比のインクを調製した。このインクの調製を比較例1とする。比較例1のインクは、本発明のインクと比較して、調色色素である色素(II)及び(III)は同一であり、色素(I)のみを下記式(19)で表される色素に置き換えたものである。なお、メンブランフィルターを用いた濾過、及びインクのpH調整については上記実施例2と同様に行った。また、下記式(19)で表される色素は、特許文献1の合成例1を追試することにより得た。
【0133】
表8
式(19)で表される色素 1.3部
式(18)で表される色素:色素(II) 2.35部
式(10)で表される色素:色素(III) 1.35部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
界面活性剤 0.1部
(商品名サーフィノール104 日信化学社製)
水+水酸化ナトリウム 75.9部
計 100.0部
【0134】
【化19】

【0135】
比較例2
特許文献3の実施例1に記載のインク組成物を参考に下記表9に記載の各成分を混合することにより、比較用のインクを調製した。この比較用インクの調製を比較例2とする。比較例2のインクが含有する3種類の色素は、いずれも本発明の色素(I)乃至(III)とは異なるが、本発明と同様に、該文献によればインクジェット記録に適する色相を有し、且つ記録物の堅牢度が強いブラックの水性インク組成物及びそれに適するブラック色素の提供を目的としたものとされる。また、比較例2のインクは、実施例2のインクと同様にインク調製剤である界面活性剤0.1部を新たに添加し、これに伴い「水+水酸化ナトリウム」の量を76.0部から75.9部に減量した以外は、特許文献3の実施例1に記載のインク組成物と同じ組成を有する。なお、メンブランフィルターを用いた濾過、及びインクのpH調整については上記実施例2と同様に行った。
【0136】
表9
C.I.Direct Blue 199 2.1部
特許文献3の式(1)の色素 1.8部
特許文献3の式(3)の色素 1.1部
グリセリン 5.0部
尿素 5.0部
N−メチル−2−ピロリドン 4.0部
イソプロピルアルコール 3.0部
ブチルカルビトール 2.0部
界面活性剤 0.1部
(商品名サーフィノール104 日信化学社製)
水+水酸化ナトリウム 75.9部
計 100.0部
【0137】
(B)インクジェット記録
上記で得た実施例及び各比較例のインクを使用し、Canon社製インクジェットプリンター、商品名PIXUS iP4100により、光沢紙1(セイコーエプソン社製、商品名 写真用紙クリスピア<高光沢> KA420SCK)、光沢紙2(セイコーエプソン社製、商品名 写真用紙<光沢> KA420PSK)の2種の被記録材(情報伝達用シート)にインクジェットプリントを行った。印刷の際は、反射濃度が数段階の階調で得られるように画像パターンを作り、濃黒色から淡いグレーの印刷物を得た。
【0138】
(C)記録画像の評価
実施例2、比較例1及び比較例2のインクを用いて得られた各記録画像は、耐オゾンガス性及び耐光性のそれぞれに対して、試験前後の画像のブラックの色差ΔEについて測定を行った。
色差ΔEの測定は、試験前の記録画像の黒色の反射濃度Dk値が0.9〜1.6の範囲の濃度階調部分を測色することにより行った。尚、測色光源はD65を、濃度フィルターはDIN、視野角は2°とした。色差ΔEの算出については、CIEのL*、a*、b*を測定し、下記式を用いて色差ΔEを算出した。なお、ΔL*、Δa*及びΔb*は、それぞれ試験前後のL*、a*及びb*の差を意味する。

ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)21/2

試験結果は以下の基準で評価し、結果を下記表10に示した。なお、ΔEは小さい方が、より優れた結果を意味する。
【0139】
1)耐オゾンガス性試験
スガ試験機社製、商品名 オゾンウェザオメーターを用いてオゾン濃度を40ppm、湿度50%RH、温度23℃の条件下で各プリント画像を8時間放置した。試験終了後、上記の測色機を用いて測色し、各プリント画像の試験前後の色差ΔEを求めた。試験結果は、以下の基準で評価を行った。
○:ΔEが10未満
△:ΔEが10以上で20未満
×:ΔEが20以上
【0140】
2)耐光性試験
スガ試験機(株)社製、商品名 低温キセノンウェザオメーターXL75を用い、10万Lux照度、湿度60%RH、温度24℃の条件で上記の各プリント画像に対して96時間照射を行った。試験終了後、上記の測色機を用いて測色し、各プリント画像の試験前後の色差ΔEを求めた。試験結果は、以下の基準で評価を行った。
○:ΔEが5未満
△:ΔEが5以上で10未満
×:ΔEが10以上
【0141】
表10
耐オゾンガス性 耐光性
光沢紙1
実施例1 ○ ○
比較例1 × △
比較例2 × △
光沢紙2
実施例1 ○ ○
比較例1 × △
比較例2 × △
【0142】
表10の結果より明らかなように、いずれの比較例と比較しても、実施例1の記録画像は耐オゾンガス性及び耐光性に優れ、特に耐オゾンガス性に優れることが判明した。
以上の結果から、少なくとも特定の上記式(1)で表される色素(I)を、好ましくは特定の上記式(2)で表される色素(II)及び式(3)で表される色素(III)を調色色素として含有する本発明の黒色インク組成物により得られた記録画像の堅牢度はインクジェットプリント画像に要求される耐オゾンガス性と耐光性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のインク組成物はインクジェット記録用、筆記用具用ブラックインクとして好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記式(1)で表される色素(I)又はその塩を、色素として含有する黒色インク組成物、
【化1】

[式(1)中、
破線で表される環A乃至Dの4つの環は、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、平均値で含窒素へテロ環が0.2以上3.0以下であり、残りがベンゼン環であり、
基Eはアルキレンを表し、
Xは、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基又はホスホノ置換アニリノ基であり、該3種類のアニリノ基は、さらにスルホ基;カルボキシ基;ホスホノ基;スルファモイル基;カルバモイル基;ヒドロキシ基;アルコキシ基;アミノ基;アルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;ジアリールアミノ基;アセチルアミノ基;ウレイド基;アルキル基;ニトロ基;シアノ基;ハロゲン原子;アルキルスルホニル基;及びアルキルチオ基;より成る群から選択される1種又は2種以上の置換基を有していてもよく、
Yはヒドロキシ基又はアミノ基を表し、
a及びbの和は、平均値で0から3.7であり、
cは平均値で0.1から3.8であり、
且つa、b、cの総和は平均値で1.0から3.8である。]。
【請求項2】
式(1)における破線で表される環A乃至Dの4つの環が、それぞれ独立にベンゼン環又は含窒素ヘテロ環であり、平均値で含窒素へテロ環が1.0以上3.0以下であり、残りがベンゼン環である、請求項1に記載の黒色インク組成物。
【請求項3】
少なくとも色素(I)又はその塩を色素として含有し、さらに、下記式(2)で表される色素(II)又はその塩、又は下記式(3)で表される色素(III)又はその塩のいずれか1種を、色素として含有する請求項1又は2に記載の黒色インク組成物、
【化2】

[式(2)中、
基Aはフェニル基であり、カルボキシ基;スルホ基;塩素原子;シアノ基;ニトロ基;スルファモイル基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;及び、非置換、又は、ヒドロキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルキルスルホニル基;よりなる群から選択される置換基を有し、
基B及び基Cはパラフェニレン基であり、カルボキシ基;スルホ基;非置換C1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される置換基を有するC1−C4アルコキシ基;よりなる群から選択される置換基を有し、
1は、非置換、又はカルボキシ置換C1−C4アルキル基;非置換、又はスルホ置換フェニル基;又はカルボキシ基;を、
2は、シアノ基;カルバモイル基;又はカルボキシ基;を、
3およびR4は、それぞれ独立して水素原子;メチル基;塩素原子;又はスルホ基;を、それぞれ表す。]、
【化3】

[式(3)中、
aは、水素原子;ヒドロキシ基;カルボキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキル基;非置換、又は、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基又はヒドロキシC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルコキシ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルキルアミノ基;カルボキシ置換C1−C5アルキルアミノ基;ビス−(カルボキシ置換C1−C5アルキル)アミノ基;非置換、又は、ヒドロキシ基又はC1−C4アルコキシ基によって置換されたC1−C4アルカノイルアミノ基;非置換、又は、ベンゼン環がカルボキシ基、スルホ基及びアミノ基よりなる群から選択される基で置換されたフェニルアミノ基;スルホ基;ハロゲン原子;又はウレイド基;を、
Zはカルボキシ基又はスルホ基を有する脂肪族アミノ基を、それぞれ表す。]。
【請求項4】
少なくとも色素(I)又はその塩、色素(II)又はその塩、色素(III)又はその塩の3種の色素を、色素として含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の黒色インク組成物。
【請求項5】
式(1)で表される色素(I)又はその塩において、環A乃至Dにおける含窒素ヘテロ環がピラジン環である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の黒色インク組成物。
【請求項6】
式(1)で表される色素(I)又はその塩において、
Xが、スルホ基;カルボキシ基;ヒドロキシ基;非置換C1−C4アルコキシ基;ニトロ基;ハロゲン原子;より成る群から選択される1種又は2種の置換基で置換されていてもよい、スルホ置換アニリノ基、カルボキシ置換アニリノ基、又はホスホノ置換アニリノ基の3種のアニリノ基のいずれかである、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の黒色インク組成物。
【請求項7】
式(3)で表される色素(III)又はその塩が、下記式(7)で表される色素又はその塩である、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の黒色インク組成物、
【化7】

[式(7)中、Zは式(3)におけるのと同じ意味を有する。]。
【請求項8】
インク中に含有する色素の総質量中、色素(I)が50〜80質量%、色素(II)が5〜30質量%、色素(III)が5〜25質量%である請求項4乃至7のいずれか一項に記載の黒色インク組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の黒色インク組成物をインクとして用い、該インクのインク滴を記録信号に応じて吐出させて被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
【請求項10】
被記録材が、情報伝達用シートである請求項9に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
情報伝達用シートが、普通紙又は多孔性白色無機物を含有するインク受容層を有するシートである請求項10に記載のインクジェット記録方法。
【請求項12】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の黒色インク組成物により着色された着色体。
【請求項13】
着色がインクジェットプリンターによりなされた請求項12に記載の着色体。
【請求項14】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の黒色インク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンター。

【公開番号】特開2010−7019(P2010−7019A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170625(P2008−170625)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】