説明

黒色複合樹脂粒子粉末、並びに該黒色複合樹脂粒子粉末を用いた塗料、樹脂組成物及びソフトフィール塗料

【課題】 本発明は、ハンドリング性に優れると共に、黒色度の高い黒色複合樹脂粒子粉末及び該黒色複合樹脂粒子粉末を配合してなる、黒色度と貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ハンドリング性に優れると共に、黒色度の高い黒色複合樹脂粒子粉末は、樹脂粒子粉末と無機粒子粉末とを混合し、樹脂粒子粉末の粒子表面を無機粒子粉末によって被覆し、次いで、無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合し、無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、更に、表面改質剤によって被覆された樹脂粒子粉末とカーボンブラックとを混合し、表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面にカーボンブラックを付着させることで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面が、無機粒子、表面改質剤及びカーボンブラックの順で被覆された、ハンドリング性に優れると共に、黒色度の高い黒色複合樹脂粒子粉末及び該黒色複合樹脂粒子粉末を配合してなる、黒色度と貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、様々な特殊塗料が開発されており、ソフトフィール塗料もその一つである。ソフトフィール塗料は、各種プラスチック材料の表面にコーティングすることで、スエード調の柔らかな感触が得られる塗料で、ソフトで高級感のある製品に仕上がるのが特徴であり、車を始めとしてコンピュータやマウス、カメラといった家電製品などのプラスチック部分等に使われている。
【0003】
ソフトフィール塗料の着色材としては、従来、有機系顔料、無機系顔料、染料等が用いられており、黒色顔料としては、一般的に、カーボンブラック、黒色無機顔料、黒色顔料や染料で着色された樹脂粒子が使用されている。
【0004】
その中でもカーボンブラックは、各種黒色顔料の中では最も黒色度が優れており、上記ソフトフィール塗料のみならず、その他各種塗料用、印刷インク用、化粧品用、ゴム・樹脂組成物用等の着色剤として古くから汎用されている。
【0005】
カーボンブラックを用いて得られた塗膜や樹脂組成物は、耐酸性や耐老化性に優れているが、カーボンブラックは粒子サイズが平均粒子径0.005〜0.05μm程度の微粒子であるため、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難であり、また、かさ密度が0.1g/cm程度とかさ高い粉末であると共に流動性が悪いため、取り扱いが困難で、作業性が悪いものであった。
【0006】
近年、ハンドリング性と黒色度に優れると共に、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散性が改善された黒色粒子粉末が強く要求されており、これに対応して、樹脂粒子と無機・有機顔料とを複合化させた黒色着色剤が提案されている。
【0007】
これまでに、黒色顔料で着色された樹脂粒子に関しては、本件出願人も流動性、着色力及び耐光性に優れる黒色粒子として、樹脂粒子表面をカーボンブラックで被覆した黒色複合粒子を開発し、既に特許出願を行っている(特許文献1)。
【0008】
また、樹脂中に配合する導電性フィラーとして、絶縁性の有機物粒子と該有機物粒子の表面にメカノケミカル反応により複合化されている導電性微粒子とを有する導電複合粒子(特許文献2)が開示されている。
【0009】
また、懸濁重合等の反応中に顔料を添加して得られる着色樹脂球状微粒子(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−300350号公報
【特許文献2】特開2009−140865号公報
【特許文献3】特開2002−201336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
塗膜や樹脂組成物等に使用される黒色着色剤には、高い黒色度と優れたハンドリング性とが要求される。しかしながらカーボンブラックは、優れた黒色度を有する一方、微粒子であるため分散性が悪く、かさ密度が大きいためハンドリング面でも問題が多い。また、特許文献1に記載の黒色顔料や染料で着色された黒色複合粒子粉末は、ハンドリング性に優れているが、後出比較例に示す通り、黒色度の点で不十分である。同様に、特許文献2に記載の樹脂粒子とカーボンブラックとをメカノケミカル的に複合化したものや、特許文献3及び4に記載の懸濁重合等の反応中に顔料を添加して得られる着色樹脂粒子もまた、黒色度に劣るものである。
【0012】
上記のように、現在までのところ、ハンドリング性に優れると共に、十分に高い黒色度を有する、樹脂粒子粉末と黒色顔料からなる黒色複合樹脂粒子粉末は得られていない。
【0013】
そこで、本発明は、ハンドリング性に優れると共に、高い黒色度を有する黒色複合樹脂粒子粉末及び黒色度と貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0015】
即ち、本発明は、樹脂粒子粉末の粒子表面に複数の被覆層を備える複合粒子粉末からなり、前記複数の被覆層が、無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックの順に樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されてなることを特徴とする黒色複合樹脂粒子粉末(本発明1)。
【0016】
また本発明は、無機粒子粉末が体質顔料であることを特徴とする本発明1の黒色複合樹脂粒子粉末である(本発明2)。
【0017】
また本発明は、無機粒子粉末の屈折率が樹脂粒子の屈折率に対して±0.3の範囲であることを特徴とする本発明1又は本発明2の黒色複合樹脂粒子粉末である(本発明3)。
【0018】
また本発明は、本発明1から本発明3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料である(本発明4)。
【0019】
また本発明は、本発明1から本発明3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明5)。
【0020】
また本発明は、本発明1から本発明3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を用いて得られるソフトフィール塗料である(本発明6)。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末は、樹脂粒子粉末の粒子表面が、無機粒子、表面改質剤及びカーボンブラックの順で被覆されることにより、高い黒色度を有すると共に、ハンドリング性に優れるため、ソフトフィール塗料をはじめとする各種塗料・樹脂組成物の着色剤として好適である。
【0022】
本発明に係る塗料及び樹脂組成物は、上記黒色複合樹脂粒子粉末を着色顔料として用いることから、分散性並びに貯蔵安定性に優れた塗料及び樹脂組成物として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0024】
先ず、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末について述べる。
【0025】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末は、樹脂粒子粉末の粒子表面が無機粒子粉末によって被覆されていると共に、該無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子表面が表面改質剤によって被覆されており、更に、該表面改質剤被覆表面にカーボンブラックが付着している複合粒子粉末からなる。
【0026】
本発明における樹脂粒子としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれをも用いることができる。具体的には、熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フッ素樹脂、繊維素系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アリル樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミド等を用いることができる。樹脂粒子は要求される特性や用途に応じて選択すればよいが、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂である。
【0027】
樹脂粒子の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。得られる黒色複合樹脂粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度(平均粒子径/平均最短径)(以下、「球形度」という。)が1.0以上2.0未満の球状又は粒状粒子が好ましく、より好ましくは球形度が1.0〜1.8である。
【0028】
樹脂粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、得られる黒色複合樹脂粒子粉末の用途に応じて適宜選べばよい。殊に、得られる黒色複合樹脂粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.05〜200μm、更により好ましくは0.1〜100μmである。この場合、平均粒子径が300μmを超えると、得られる黒色複合樹脂粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0029】
樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、樹脂粒子粉末の粒子表面への無機粒子粉末による均一な被覆処理、表面改質剤による均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理を考慮すると、0.005〜700m/gが好ましい。殊に、得られた黒色複合樹脂粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、より好ましくは0.01〜500m/g、更により好ましくは0.01〜400m/gである。この場合、BET比表面積値が0.005m/g未満となると、得られる黒色複合樹脂粒子が粗大粒子となり、着色力が低下するため好ましくない。
【0030】
本発明における樹脂粒子粉末の流動性は、形状等によっても異なるが、一般的には55以上を有している。殊に、粒子形状が球状のものは、高い流動性を有しており、その場合、60以上である。
【0031】
本発明における無機粒子粉末としては特に限定されないが、得られる黒色複合樹脂粒子粉末の黒色度を考慮すれば、体質顔料であることが好ましく、より好ましくは樹脂粒子の屈折率に対して無機粒子粉末の屈折率が±0.3の範囲である無機粒子粉末である。
【0032】
体質顔料としては、具体的には、シリカ粉、ホワイトカーボン、微粉ケイ酸、珪藻土等のシリカ微粒子並びにクレー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、タルク、二酸化チタン、酸化亜鉛及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0033】
無機粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、多面体状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、鱗片状及び板状等のいずれの形状であってもよいが、球状もしくは粒状であることが好ましい。
【0034】
無機粒子粉末の粒子サイズは、芯粒子である樹脂粒子のサイズに応じて適宜選択すればよく、無機粒子に対する樹脂粒子の粒径比(樹脂粒子の平均粒子径/無機粒子の平均粒子径)が10以上であることが好ましく、より好ましくは50以上、更により好ましくは100以上である。無機粒子に対する樹脂粒子の粒径比が10未満の場合には、樹脂粒子に対して被覆する無機粒子の粒子径が大きすぎるため、均一なコーティングが困難となり、得られる黒色複合樹脂粒子粉末の黒色度が低下するため好ましくない。無機粒子に対する樹脂粒子の粒径比の上限値は20,000である
【0035】
本発明における表面改質剤としては、樹脂粒子の粒子表面に形成された無機粒子粉末の被覆層にカーボンブラックを付着できるものであれば何を用いてもよく、好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤等の一種又は二種以上であり、より好ましくはアルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤、オルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系の各種カップリング剤である。
【0036】
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0037】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0038】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0039】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0040】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0041】
表面改質剤の被覆量は、表面改質剤被覆樹脂粒子粉末に対して各表面改質剤が含有する金属の元素換算で0.02〜5.0重量%が好ましく、より好ましくは0.03〜4.0重量%、最も好ましくは0.05〜3.0重量%である。また、金属を含有しない界面活性剤等の場合は、表面改質剤被覆樹脂粒子粉末に対してC換算で0.01〜15.0重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜12.5重量%、最も好ましくは0.03〜10.0重量%である。
【0042】
上記下限値未満の場合には、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.01重量部以上のカーボンブラックを付着させることが困難である。上記上限値を超える場合には、樹脂粒子粉末100重量部に対してカーボンブラックを0.01〜500重量部付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0043】
付着処理に用いるカーボンブラックは、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びアセチレンブラック等のカーボンブラック粒子粉末を用いることができる。
【0044】
カーボンブラックの付着量は、樹脂粒子粉末の表面積によっても異なるが、樹脂粒子粉末100重量部に対して0.01〜500重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜400重量部、更により好ましくは0.1〜300重量部である。
【0045】
0.01重量部未満の場合には、樹脂粒子の粒子表面を被覆するカーボンブラックが少なすぎるため、本発明の目的とする高い着色力を有する黒色複合樹脂粒子粉末を得ることが困難となる。500重量部を超える場合には、カーボンブラックの付着量が多いためカーボンブラックが脱離しやすくなり、その結果、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中における分散性が低下する。
【0046】
本発明に係る黒色複合粒子の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である樹脂粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有している。
【0047】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、針状、紡錘状、米粒状、フレーク状、板状及び不定形等のいずれの形状であってもよい。本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を塗料又は樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、球形度が1.0以上2.0未満の球状又は粒状が好ましく、より好ましくは1.0〜1.8である。
【0048】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の粒子サイズは、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは平均粒子径が0.01μm〜1cmである。
【0049】
殊に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、黒色複合樹脂粒子粉末の平均粒子径は、好ましくは0.01〜300μm、より好ましくは0.05〜200μm、更により好ましくは0.1〜100μmである。平均粒子径が300μmを超える場合、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。また、平均粒子径が0.01μm未満の場合には、塗料ビヒクル中又は樹脂組成物中への分散が困難となる場合がある。
【0050】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末のBET比表面積値は、特に制限はなく、用途に応じて適宜選べばよいが、好ましくは0.005〜700m/gである。
【0051】
殊に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を塗料及び樹脂組成物等の着色材として用いる場合には、黒色複合樹脂粒子粉末のBET比表面積値は0.005〜700m/gが好ましく、より好ましくは0.01〜500m/g、更により好ましくは0.01〜400m/gである。BET比表面積値が0.005m/g未満の場合、粗大粒子となって着色力が低下し、塗料及び樹脂組成物等の着色材としては好ましくない。BET比表面積値が700m/gを超える場合には、塗料ビヒクル中や樹脂組成物中への分散が困難となる。
【0052】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の黒色度は、後出評価方法において、ΔL値が0.4以上であることが好ましく、より好ましくは0.6以上、更により好ましくは0.8以上である。ΔL値が0.4未満である場合には、従来技術と対比して黒色度が改良されているとは言い難く、黒色度が劣るものである。
【0053】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の着色力は、後出評価方法により105%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、更により好ましくは115%以上である。
【0054】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の流動性は、粒子表面に流動性の悪いカーボンブラックを付着させても芯粒子である樹脂粒子粉末の流動性を維持しており、55以上を有している。殊に、粒子形状が球状のものは、60以上を有しており、好ましくは65以上である。
【0055】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末のカーボンブラックの脱離の程度は、後出評価方法における目視観察において、黒色複合樹脂粒子粉末から脱離して再凝集するカーボンブラックの個数が、黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりにつき30個未満が好ましい。より好ましくは、黒色複合樹脂粒子粉末から脱離して再凝集するカーボンブラックの個数が、黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりにつき10個未満であり、更により好ましくは黒色複合樹脂粒子粉末から脱離して再凝集するカーボンブラックの個数が、黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりにつき5個未満である。カーボンブラックの脱離の程度が黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりにつき30個未満であれば、脱離したカーボンブラックにより塗料ビヒクル中や樹脂組成物中での均一な分散が阻害されず、均一な色相を得ることができる。
【0056】
次に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を配合した塗料について述べる。
【0057】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を配合した塗料は、貯蔵安定性がΔE値で1.2以下が好ましく、より好ましくは1.0以下である。また、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を塗膜にした場合、塗膜の透過率は、後述する評価方法において、10.0%以下、好ましくは9.0%以下であり、光学濃度は、後述する評価方法において、2.00以上、好ましくは2.03以上である。
【0058】
本発明に係る塗料中における黒色複合樹脂粒子粉末の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは1.0〜100重量部である。
【0059】
塗料構成基材としては、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0060】
樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0061】
溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0062】
水系塗料用溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0063】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0064】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0065】
次に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を用いて着色した樹脂組成物について述べる。
【0066】
本発明に係る樹脂組成物中における黒色複合樹脂粒子粉末の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0067】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、黒色複合樹脂粒子粉末と周知の熱可塑性樹脂と共に、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0068】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0069】
添加剤の量は、黒色複合樹脂粒子粉末と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0070】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と黒色複合樹脂粒子粉末をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、樹脂組成物中に黒色複合樹脂粒子粉末を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0071】
次に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を用いて得られるソフトフィール塗料について述べる。
【0072】
本発明に係るソフトフィール塗料は、溶剤系ソフトフィール塗料、水系ソフトフィール塗料のいずれでもでもよく、スエード調、ラバータッチ等のソフトな感触を得ることのできる模様塗料である。
【0073】
本発明に係るソフトフィール塗料の構成基材としては、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末、樹脂及び溶剤、必要により、硬化促進剤、充填剤、難燃剤、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗酸化剤、消泡剤、レべリング剤、体質顔料、界面活性剤等の各種添加剤が配合される。
【0074】
なお、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末をソフトフィール塗料用着色材として用いる場合には、樹脂粒子粉末としてウレタン樹脂を用いることが好ましい。ウレタン樹脂を用いることで、よりソフトな感触を得ることができる。
【0075】
次に、本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の製造法について述べる。
【0076】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末は、樹脂粒子粉末と無機粒子粉末とを混合し、樹脂粒子粉末の粒子表面を無機粒子粉末によって被覆し、次いで、無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子粉末と表面改質剤とを混合し、無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、更に、表面改質剤によって被覆された樹脂粒子粉末とカーボンブラックとを混合し、表面改質剤被覆樹脂粒子の粒子表面にカーボンブラックを付着させ、必要に応じて加熱乾燥及び/又は分級することで得ることができる。
【0077】
樹脂粒子粉末の粒子表面への無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックによる被覆は、樹脂粒子粉末と無機粒子粉末、表面改質剤又は表面改質剤の溶液及びカーボンブラックをこの順序で添加して機械的に混合攪拌すればよい。
【0078】
樹脂粒子粉末と無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックを混合攪拌するための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機及びボール型混練機がより効果的に使用できる。
【0079】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル、回転ミル、サンドグラインダ等があり、好ましくは振動ミルである。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
【0080】
なお、樹脂粒子粉末の粒子表面を無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックによって被覆する際に、添加する無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックは、分割添加もしくは徐添加してもよい。
【0081】
カーボンブラックを付着後、乾燥・加熱処理を行う場合の加熱温度は、40℃以上であり、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上である。加熱温度の上限値は、樹脂粒子粉末のガラス転移点である。加熱処理を行う場合の加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、より好ましくは30分〜3時間である。
【0082】
分級処理を行う場合、手法としては、乾式分級、湿式分級及びふるい分け等のいずれでもよいが、工業的な観点から、分級操作を乾式で行うことのできる乾式分級及びふるい分けが好ましい。
【0083】
なお、表面改質剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。
【0084】
<作用>
本発明において最も重要な点は、樹脂粒子粉末の粒子表面が無機粒子粉末によって被覆されていると共に、該無機粒子粉末によって被覆されている樹脂粒子表面が表面改質剤によって被覆されており、更に、該表面改質剤被覆表面にカーボンブラックが付着している複合粒子粉末からなる黒色複合樹脂粒子粉末は、高い黒色度を有しているという事実である。
【0085】
本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末の黒色度が優れている理由について、本発明者は、樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されたカーボンブラック及び無機粒子粉末の被覆層によって光が吸収されるためと考えている。また、樹脂粒子粉末に対する無機粒子粉末の屈折率を±0.3以内とすることにより、無機粒子粉末の被覆層を透過した光が樹脂粒子表面で反射しない(樹脂粒子の屈折率よりも無機粒子の屈折率が低い場合)、もしくは反射しにくくなるため、樹脂粒子中を透過する際に光が吸収され、より一層粒子内部で光の吸収が起きるため、より黒色度の高い粒子粉末を得ることが可能となったと考えている。
【実施例】
【0086】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0087】
粒子の平均粒子径は、電子顕微鏡を用いて写真撮影を行い、そこに示された粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0088】
球形度は、平均粒子径(平均最長径)と平均最短径との比で示した。
【0089】
比表面積は、「モノソーブMS−11」(カンタクロム株式会社製)を用いて、BET法により測定した値で示した。
【0090】
樹脂粒子粉末、カーボンブラック及び黒色複合樹脂粒子粉末の流動性は、「パウダテスタ」(ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、安息角(度)、圧縮度(%)、スパチュラ角(度)、凝集度の各粉体特性値を測定し、該各測定値を同一基準の数値に置き換えた各々の指数を求め、各々の指数を合計した流動性指数で示した。流動性指数が100に近いほど、流動性が優れていることを意味する。
【0091】
黒色複合樹脂粒子粉末の黒色度は、試料3.75gと艶消しペースト(商品名:アクセルS #100 08:藤倉応用化工株式会社製)17.5g及びシンナー7.5gとを3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで30分間混合分散した。得られた後、艶消し塗料をキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片を作製し、該塗布片について、「X−Rite 939」(エックスライト株式会社製)を用いてL値を測色した。
【0092】
次いで、黒色複合樹脂粒子粉末のリファレンス試料として、黒色複合樹脂粒子粉末と同様の割合で無機粒子粉末、カーボンブラック及び樹脂粒子粉末とを単に混合した混合粒子粉末を用いて、上記と同様にして塗布片を作製し、各塗布片のL値を測色し、リファレンス試料のL値からL値を引いた値をΔL値とした。
【0093】
樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されている無機粒子粉末の被覆量は、各無機粒子粉末に含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0094】
前記無機粒子粉末の被覆層上に形成されている表面改質剤の被覆量は、各表面改質剤に含有されている金属について、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、次の様な手順で測定することにより求めた。あらかじめ、無機粒子粉末で被覆された樹脂粒子粉末の単位重量当たりに含有されている金属量を測定しておき、次いで、無機粒子粉末と表面改質剤によって被覆された樹脂粒子粉末の金属量を測定し、単位重量当たりの金属量の変化量から、表面改質剤の付着量を求めた。
【0095】
黒色複合樹脂粒子粉末に付着しているカーボンブラックの被覆量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用い、次の様な手順で炭素量を測定することにより求めた。あらかじめ、無機粒子粉末と表面改質剤で被覆された樹脂粒子粉末の単位重量当たりのカーボン量を測定しておき、次いで、黒色複合樹脂粒子粉末のカーボン量を測定し、単位重量当たりのカーボン量の変化量から、カーボンブラックの付着量を求めた。
【0096】
黒色複合樹脂粒子粉末に付着しているカーボンブラックの脱離の程度は、下記方法により、目視によって5段階で評価した。5が複合粒子の粒子表面からのカーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0097】
被測定粒子粉末2gとエタノール20mlとを3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで60分間混合分散した後、回転数10,000rpmで15分間遠心分離を行い、被測定粒子粉末と溶剤部分とを分離した。得られた被測定粒子粉末を60℃で5時間乾燥させ、電子顕微鏡写真または光学顕微鏡写真に示される視野の中に存在する、脱離して再凝集したカーボンブラックの個数を目視で観察し、樹脂粒子粉末とカーボンブラックを、無機粒子粉末及び表面改質剤を介さず単に混合しただけの混合粒子粉末の電子顕微鏡写真又は光学顕微鏡写真と比較して5段階で評価した。
【0098】
1:樹脂粒子粉末とカーボンブラックを、無機粒子粉末及び表面改質剤を介さず単に混合した場合と同程度。
2:黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりに30個以上50個未満。
3:黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりに10個以上30個未満。
4:黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりに5個以上10個程度。
5:黒色複合樹脂粒子粉末100個当たりに5個未満。
【0099】
黒色複合樹脂粒子粉末の着色力は、まず下記に示す方法に従って作製した原色エナメルと展色エナメルのそれぞれを、キャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布して塗布片を作製し、該塗布片について、「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いてL値を測色し、その差をΔLp値とした。
【0100】
次いで、黒色複合樹脂粒子粉末の標準試料として、黒色複合樹脂粒子粉末と同様の割合で無機粒子粉末、カーボンブラック及び樹脂粒子粉末とを単に混合した混合粒子粉末を用いて、上記と同様にして原色エナメルと展色エナメルの塗布片を作製し、各塗布片のL値を測色し、その差をΔLs値とした。
【0101】
得られた黒色複合樹脂粒子粉末のΔLp値と標準試料のΔLs値を用いて下記式(1)に従って算出した値を着色力(%)として示した。
【0102】
着色力(%)=100+{(ΔLs値−ΔLp値)×10}・・・(1)
【0103】
原色エナメルの作製:
上記試料粉体3gとアミノアルキッド樹脂16g及びシンナー10gとを配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで60分間混合分散した後、アミノアルキッド樹脂50gを追加し、更に5分間ペイントシェーカーで分散させて、原色エナメルを作製した。
【0104】
展色エナメルの作製:
上記原色エナメル12gとアミラックホワイト(二酸化チタン分散アミノアルキッド樹脂)40gとを配合し、ペイントシェーカーで15分間混合分散して、展色エナメルを作製した。
【0105】
塗料の貯蔵安定性は、後述する処方によって調製した各塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS−G−3141)に150μmの厚みで塗布、乾燥して製造した塗膜のL値、a値及びb値と、該塗料を25℃において1週間静置して得られた塗料を冷間圧延鋼板に塗布、乾燥して製造した塗膜のL値、a値及びb値を「分光測色計 CM−3610d」(ミノルタ株式会社製)を用いて測定し、下記式(2)に従って得られたΔE値で示した。
【0106】
ΔE値=((ΔLd+(Δa+(Δb1/2・・・(2)
ΔLd値: 比較する塗膜の静置前後のL値の差
Δa値: 比較する塗膜の静置前後のa値の差
Δb値: 比較する塗膜の静置前後のb値の差
【0107】
黒色複合樹脂粒子粉末を用いた塗料の透過率を測定するための塗膜は下記の方法で作製した。試料0.1gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化して透明フィルム上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製した。透過率は、「島津分光光度計、UV−2100(PC)S」(島津製作所株式会社製)を用いて透過率を測定し、550nmの波長における透過率で示した。
【0108】
黒色複合樹脂粒子粉末を用いた溶剤系塗料の光学濃度を測定するための塗膜は下記の方法で作製した。試料0.25gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製した。光学濃度は、「X−Rite 939」(エックスライト株式会社製)を用いて測定した。
【0109】
次に、実施例及び比較例を示す。
【0110】
芯粒子1〜7:
芯粒子粉末として表1に示す特性を有する樹脂粒子粉末を用意した。なお、PMMAは、ポリメチルメタクリレートの略である。
【0111】
【表1】

【0112】
無機粒子1〜5:
無機粒子粉末として表2に示す諸特性を有する無機粒子粉末を用意した。
【0113】
【表2】

【0114】
カーボンブラックA〜C:
カーボンブラックとして表3に示す諸特性を有するカーボンブラックを用意した。
【0115】
【表3】

【0116】
実施例1−1
<黒色複合樹脂粒子粉末の製造>
樹脂粒子粉末(芯粒子1)(種類:ポリウレタン、粒子形状:球状、平均粒子径:15.22μm、球形度:1.06、BET比表面積値:1.86m/g、屈折率:1.56、流動性:83)560gを振動ミル「MB1」(メディア:φ1/4インチのクロム剛球 10kg)(製品名、中央化工機株式会社製)に投入し、次いで、無機粒子1(種類:シリカ、粒子形状:球状、平均粒子径:15nm、BET比表面積値:203.8m/g、屈折率:1.45)56gを添加し、回転数1200rpm、振幅6mmで30分間混合攪拌を行った。
【0117】
次いで、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:GENIOSIL GF91:旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)28gを添加し、引き続き、30分間混合攪拌を行った。
【0118】
次に、カーボンブラックA(種類:チャンネルブラック、粒子形状:粒状、平均粒子径:11nm、BET比表面積値:324.7m/g)56gを添加し、更に60分間混合攪拌を行い実施例1−1の黒色複合樹脂粒子粉末を得た。
【0119】
得られた黒色複合樹脂粒子粉末は、平均粒子径が15.55μm、球形度が1.05の球状粒子粉末であった。BET比表面積値は12.01m/g、流動性は83、黒色度L値は1.5、着色力は116%、カーボンブラックの脱離の程度は5であった。無機粒子粉末の被覆量はSi換算で4.21重量%(樹脂粒子粉末100重量部に対して約10重量部に相当する)であり、3−アミノプロピルトリエトキシシランの被覆量はSi換算で0.54重量%、付着しているカーボンブラックの量は、C換算で8.01重量%(樹脂粒子粉末100重量部に対して約10重量部に相当する)であった。
【0120】
電子顕微鏡写真観察の結果、無機粒子粉末及びカーボンブラックがほとんど認められないことから、無機粒子粉末及びカーボンブラックのほぼ全量が樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆もしくは付着していることが認められた。
【0121】
実施例1−2〜1−8及び比較例1−1:
無機粒子粉末による被覆工程における無機粒子の種類、添加量、表面改質剤による被覆工程における添加物の種類、添加量及びカーボンブラックの付着工程におけるカーボンブラックの種類、添加量を変化させた以外は、前記実施例1と同様にして黒色複合樹脂粒子粉末を得た。
【0122】
このときの製造条件を表4に、得られた黒色複合樹脂粒子粉末の諸特性を表5に示した。
【0123】
【表4】

【0124】
【表5】

【0125】
実施例2−1
<黒色複合樹脂粒子粉末を含む塗料の製造>
前記実施例1−1で得た黒色複合樹脂粒子粉末10gとアミノアルキッド樹脂及びシンナーとを下記割合で配合して3mmφガラスビーズ90gと共に140mlのガラスビンに添加し、次いで、ペイントシェーカーで90分間混合分散し、ミルベースを作製した。
【0126】
黒色複合樹脂粒子粉末 3.8重量部、
アミノアルキッド樹脂 20.3重量部、
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
シンナー 12.7重量部。
【0127】
前記ミルベースを用いて、下記割合となるようにアミノアルキッド樹脂を配合し、ペイントシェーカーで更に15分間混合分散して、黒色複合樹脂粒子粉末を含む塗料を得た。
【0128】
ミルベース 36.8重量部、
アミノアルキッド樹脂 63.3重量部。
(アミラックNo.1026:関西ペイント株式会社製)
【0129】
前記塗料を冷間圧延鋼板(0.8mm×70mm×150mm)(JIS G−3141)に150μmの厚みで塗布・乾燥した。実施例2−1の塗料の貯蔵安定性はΔE値で0.5であった。
【0130】
また、実施例1−1で得た黒色複合樹脂粒子粉末0.1gを用いて、前述の方法で別途透過率測定用の塗膜を作製した。その塗膜の透過率は6.9%であった。
【0131】
また、実施例1−1で得た黒色複合樹脂粒子粉末0.25gを用いて、前述の方法で別途光学濃度測定用の塗膜を作製した。その塗膜の光学濃度は2.25であった。
【0132】
実施例2−2〜2−7及び比較例2−1
黒色粒子粉末の種類を種々変化させた以外は、前記実施例2−1と同様にして塗料を得た。また塗膜の透過率及び光学濃度は、実施例2−1と同様の方法で評価した。
【0133】
このときの製造条件、塗膜の諸特性を表6に示した。本発明に係る黒色複合樹脂粒子粉末を用いて得られた塗料は貯蔵安定性に優れると共に、これを塗膜にすることで、比較例に示す黒色粒子粉末を使用した場合と比較して、透過率が低下し、光学濃度が上昇した。
【0134】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂粒子粉末の粒子表面に複数の被覆層を備える複合粒子粉末からなり、前記複数の被覆層が、無機粒子粉末、表面改質剤及びカーボンブラックの順に樹脂粒子粉末の粒子表面に被覆されてなることを特徴とする黒色複合樹脂粒子粉末。
【請求項2】
無機粒子粉末が体質顔料であることを特徴とする請求項1記載の黒色複合樹脂粒子粉末。
【請求項3】
無機粒子粉末の屈折率が樹脂粒子の屈折率に対して±0.3の範囲であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の黒色複合樹脂粒子粉末。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の黒色複合樹脂粒子粉末を用いて得られるソフトフィール塗料。


【公開番号】特開2011−21126(P2011−21126A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168160(P2009−168160)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】