説明

黒酢健康食品とその製造方法

【課題】黒酢のもつ脂質代謝改善作用,赤血球変形機能改善作用,抗アレルギー作用,血圧調節作用,血糖調節作用等に加えて、日本人が欠乏しやすいカルシウムと鉄の補給作用を有する健康食品を提供する。
【解決手段】黒酢エキスと、カルシウムと、ヘム鉄とを含んでなることを特徴とする黒酢健康食品であって、カルシウムは特に卵殻カルシウムを用い、黒酢エキス70〜75質量%,卵殻カルシウム20〜25質量%,ヘム鉄3〜5質量%からなることを特徴とする黒酢健康食品及びその製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒酢エキスと、カルシウムと、ヘム鉄とを含んでなることを特徴とする健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
黒酢は、約200年前、鹿児島県福山地方で造り始められた、米,米麹,及び水を壷の中で糖化、アルコール発酵、酢酸発酵の三段階を経た伝統的製法で造られているものをいう。この黒酢には、脂質代謝改善作用、赤血球変形機能改善作用、抗アレルギー作用、血圧調節作用、血糖調節作用などがあるとされている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
黒酢を用いた健康増進作用をもつものとして、玄米黒酢エキスを用いた血液流動性改善組成物及びその製造方法が出願されている(例えば、特許文献1参照。)。
この発明は、玄米黒酢エキスに、梅肉エキスを添加したものであり、玄米黒酢エキスに赤血球変形機能改善作用と、白血球粘着能を抑制する効果があるとともに、梅肉エキスに血小板凝集能を抑制する効果があることから、両者の混合物が血液の流動性を改善することを期待したものである。
【0004】
黒酢に対し、分岐デキストリン,可溶性でんぷん,マルトデキストリン,エリスロデキストリン又はアミロデキストリンから選択される1又は2以上のデキストリンを添加し、乾燥処理をした黒酢乾燥食品が登録されている(例えば、特許文献2参照。)。この黒酢乾燥食品は、粉末チーズ,ふりかけ,粉状調味料,錠剤,顆粒状の健康食品等への添加剤として利用することができる。
【0005】
また、黒酢と、グルコサミンと、コンドロイチン硫酸と、ヒアルロン酸とを含んでなる健康食品が出願されている(例えば、特許文献3参照。)。
この発明は、関節痛などの症状を効果的に緩和するとともに、健康増進を図ることができる健康食品を提供することを目的とする。
【0006】
さらに、黒酢モロミ粕を有効成分として含有する錠剤も出願されている(例えば、特許文献4参照。)。この発明は、黒酢モロミ粕が、栄養補助食品として効果が期待できることから、家畜飼料等に利用されるのみであった黒酢モロミ粕を有効利用することを目的とするものである。
【0007】
【特許文献1】特開2003−73296号公報
【特許文献2】特開2000−152775号公報,特許3579269号公報
【特許文献3】特開2004−166616号公報
【特許文献4】特開2005−132814号公報
【非特許文献1】「鹿児島県の伝統食品」 蟹江松雄 他、平成13年3月 P18春苑堂書店
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
黒酢のもつ生理活性を利用した発明は種々発表されているが、日本人に多くみられるカルシウムと鉄の不足を補うことを目的とするものはなかった。
本発明は、黒酢が、カルシウム及び鉄の吸収を促進する効果があることを研究の結果見出したことによりなされたもので、本発明は黒酢本来の生理活性作用とともに、カルシウム及び鉄の補給を十分にするためなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の第1は、黒酢エキスと、カルシウムとヘム鉄とを含んでなることを特徴とする黒酢健康食品である。黒酢エキスが、カルシウム及び鉄の体内吸収を促進することを利用したものである。黒酢エキスは、醸造された黒酢を減圧濃縮し、凍結乾燥した後粉末化するか、あるいは、減圧濃縮し、流動状態にあるものを、噴霧乾燥して作られる。カルシウムは卵殻カルシウムのほか、乳酸カルシウム,ミルクカルシウムのほか、炭酸カルシウム等の無機カルシウム化合物でもよい。
鉄分の補給にあたって、硫酸第一鉄などの化学合成品は刺激性があるためと、腸からの吸収率が低いことから、刺激性がなく、吸収率の高いヘム鉄を利用することとした。
【0010】
(2)本発明の第2は、カルシウムが卵殻カルシウムであることを特徴とする前項(1)記載の黒酢健康食品である。
従来よりカルシウム強化に用いられてきた食品添加物、例えば乳酸カルシウム,塩化カルシウム等は、そのカルシウム特有の風味が強く残るため、そのような欠点の少ない卵殻カルシウムを用いることとした。また、一般には廃棄されている卵殻の有効利用を図るためでもある。
【0011】
(3)本発明の第3は、黒酢エキス70〜75質量%,卵殻カルシウム20〜25質量%,ヘム鉄3〜5質量%とからなることを特徴とする前項(1)又は(2)記載の黒酢健康食品である。
黒酢の効果を十分発揮させるためには70質量%以上が必要であり、黒酢が75質量%より多くなると、カルシウム及びヘム鉄の配合割合が低くなりすぎるため、黒酢配合割合は75質量%迄とした。
卵殻カルシウムの配合割合は、少なくとも20質量%以上がカルシウムの効果を発揮するために必要であり、25質量%を越えると黒酢及びヘム鉄の配合割合が下がりすぎるおそれが生じるからである。
また、ヘム鉄の配合割合を3〜5質量%としたのは、少なくとも質量%が鉄分の補給上必要であることと、5質量%をこえると黒酢及びカルシウムの配合割合が下がりすぎるおそれが生じるからである。
【0012】
(4)本発明の第4は、黒酢を減圧濃縮したものをろ過し、米粉を包合させてから凍結乾燥し粉砕して得られた黒酢エキスに、カルシウムとヘム鉄とを配合することを特徴とする黒酢健康食品の製造方法である。カルシウムは、カルシウム強化に用いられてきた食品添加物、例えば乳酸カルシウム、塩化カルシウム等は、そのカルシウム特有の風味が強く残るため、そのような欠点の少ない卵殻カルシウムを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、黒酢本来の脂質代謝改善作用,赤血球変形機能改善作用,抗アレルギー作用,血圧調節作用及び血糖調節作用のほか、カルシウム及び鉄の補給作用の強化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の黒酢健康食品の原料である黒酢エキスは、図1に示す工程で製造される。
図1において、黒酢原料は鹿児島県福山地方で生産されたものを使用する。
減圧濃縮は、通常20倍程度に濃縮する。ろ過後、米粉を包合させ、凍結乾燥後粉砕し、粉末状の黒酢エキスとする。
【0015】
図2で、カプセル充填した黒酢健康食品の製造工程を示した。カプセル内容物原料の配合は、表1に示すとおりである。
【0016】
【表1】

カプセル被包材は、食品用ハードカプセルでプルランクリア2号(カプスケル社製)を用いた。
【0017】
次に、表2,表3,表4,表5に財団法人日本食品分析センターによるカプセル内容物の分析試験結果を示した。
【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】
【表4】

【0021】
【表5】

【0022】
(黒酢健康食品によるダイエット実験)
この実験では、餌作製時にサンプルの栄養素を考慮して餌の組成を定め、ダイエット実験を行った。
実験動物は5週齢の正常ラットを入手し、温度24℃,12時間の明暗サイクルの条件下で飼育した。2日間の予備飼育後、体重別に群分けをし、それぞれの餌を摂食させた。30日間飼育実験を行い、飼育期間中体重を5日おきに測定した。飼育期間終了後解剖を行い臓器重量の測定、血液性状を調べた。
【0023】
(飼料組成)
飼料組成は、通常の餌にコレステロールを添加した高コレステロールの餌を作成した。テスト区は黒酢健康食品粉末を2.5%,5%それぞれ添加し、計3群とした。黒酢健康食品にはタンパク質、脂質、糖質が含まれているためそれぞれを換算し、コントロールと同じになるように飼料を作成した。飼料の配合を表6に示した。(%は質量%,以下同様)
【0024】
【表6】

【0025】
体重は実験開始から終了まで、5日おきに測定した。体重測定結果のグラフを図3に示す。
コントロール区に比べ粉末2.5%,粉末5%区では5日目以降より体重が減少する傾向が見られた。
【0026】
総摂食量を実験開始から終了までについて図4に示す。
コントロール,粉末2.5%,粉末5%区では総摂食量はほぼ同じであった。
【0027】
実験終了後に解剖を行い、各臓器重量,脂肪組織重量を測定した結果を図5に示す。
肝臓…粉末5%区で増加傾向がみられた。
脾臓,腎臓…コントロール区,テスト区において変化はみられなかった。
盲腸…粉末2.5%,粉末5%の順で減少する傾向がみられた。
副睾丸周辺脂質,腎周辺脂質…コントロール区に比べ、粉末区で減少傾向がみられた。
【0028】
実験終了後、心臓採血で血液を採血した。得られた血液から血清を調製し、中性脂肪、コレステロールを測定した。
血清中性脂肪のグラフを図6に示す。コントロール区に比べ粉末区で血清中性脂肪の減少傾向がみられた。
【0029】
図7に、HDL,LDLの量を示す。HDL+LDLは総コレステロールを示す。総コレステロール量はコントロールに比べ、粉末2.5%区,粉末5%で有意に減少した。またその中でもLDLコレステロールの減少がみられた。
まとめとして、黒酢健康食品粉末を添加した区は、コントロール区と比較し、体重減少,脂肪組織重量低下,血清中総コレステロール量低下(LDLコレステロール低下)、血清中性脂肪量の低下がみられた。これらの実験結果より、黒酢健康食品は、高コレステロール摂取によって生じるコレステロール上昇や中性脂肪の上昇を抑制する傾向があることが示された。
【0030】
(アンケート集計結果)
黒酢健康食品を飲用している人にアンケートを発送し、平成17年4月7日現在で1312件の回答があった。
(1)1日の飲用量について質問したところ、1粒が639人,2粒が418人,3粒が98人等となった。
(2)体調の変化を実感された期間については、1ヶ月未満が132人,1ヶ月以上が216人,3ヶ月以上が254人,6ヶ月以上が151人,1年以上が125人等となった。
(3)体調の変化について質問では、風邪を引きにくくなった…415人,疲れにくくなった…405人,健康・元気が出る…218人,血圧・血糖値が安定した…131人,体重が減った…81人,肩こり・頭痛の改善…44人,コレステロール値の安定・低下…27人,目覚めがよくなった…24人,冷え症の改善…22人,体の調子がよい…6人,肌の調子がよくなった…14人,花粉症の改善…9人,二日酔いが軽くなった…7人,中性脂肪が下がった…7人,変化なし…50人等の回答があった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】黒酢エキスの製造フローシートである。
【図2】黒酢健康食品の製造フローシートである。
【図3】黒酢健康食品の飼料配合における体重変化を示す図である。
【図4】黒酢健康食品の飼料配合における総摂取量を示す図である。
【図5】黒酢健康食品の飼料配合における各臓器重量,脂肪組織重量を示す図である。
【図6】黒酢健康食品の飼料配合における血清中性脂肪を示す図である。
【図7】黒酢健康食品の飼料配合における血清HDL,LDLコレステロールを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒酢エキスと、カルシウムと、ヘム鉄とを含んでなることを特徴とする黒酢健康食品。
【請求項2】
カルシウムが卵殻カルシウムであることを特徴とする請求項1記載の黒酢健康食品。
【請求項3】
黒酢エキス70〜75質量%,卵殻カルシウム20〜25質量%,ヘム鉄3〜5質量%とからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の黒酢健康食品。
【請求項4】
黒酢を減圧濃縮したものをろ過した後、米粉を包合させてから凍結乾燥し粉砕して得られた黒酢エキスに、カルシウムとヘム鉄とを配合することを特徴とする黒酢健康食品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−29020(P2007−29020A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218322(P2005−218322)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(398013554)株式会社健康家族 (9)
【Fターム(参考)】