説明

鼻から胃への、および口から胃への給送装置、それを備えたシステム、その方法および使用

本発明は、医療用デバイスの分野に関連している。とりわけ本発明は、消化管から呼吸器系への誤嚥を防ぐまたは著しく低減する拡張可能手段を備えた経腸的な給送装置に関連している。さらなる側面において、本発明は、前記経腸的な給送装置を備えたシステム、その方法および使用に関連している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用デバイスの分野に関連している。とりわけ本発明は、消化管から呼吸器系への誤嚥を防ぐまたは著しく低減する拡張可能手段を備えた経腸的な給送装置に関連している。さらなる側面において、本発明は、拡張可能手段を有する給送チューブを備えたシステム、その方法および使用に関連している。
【背景技術】
【0002】
肺換気が行われている入院中の患者および緊急の挿管処理(迅速導入)を必要とする患者は、胃食道の内容物の逆流への危険が増加した状態にある。これらの人々は、重大な病気だけでなく院内感染などの二次的過程からも、長期の滞在期間(LOS)または死という危険にさらされている。肺炎は、重症患者における2番目に一般的な院内感染であり、重症患者全てのうちの27%を襲っている(非特許文献1)。また肺炎は、ヨーロッパにおける重症患者の感染の半分の原因になっている(非特許文献2)。院内の肺炎の86%は、機械的な換気に関連しており、換気装置関連肺炎(VAP)と呼ばれている。米国内で年間250,000〜300,000件のケースが生じており、これは、病院への入院1,000回につき5〜10件という発生率となっている(非特許文献3)。換気装置関連肺炎によってもたらされる死亡率への独立の寄与が、近年示されている(非特許文献4)。VAPに帰すことができる死亡率は、50%という高さであることが報告されてきた(非特許文献5)。換気装置関連肺炎は、機械的な換気および集中治療室での滞在の継続期間を増加させることにより、重大な病的状態を引き起こす(非特許文献6)。
【0003】
死亡率の他にも、VAPの経済問題は、集中治療室の滞在期間が4日から13日に滞在したことを含んでおり、また、VAPに関連するコストの増分は、一診断あたり5,000〜20,000ドルと見積もられてきた(非特許文献7)。
【0004】
成長期の身体における形跡は、機能している消化器官)がある場合、栄養物が主として経腸経路を介して管理されるべきであると主張している。なぜなら、病的状態のため、その他の給送モードに関連しているからである。さらに、経腸栄養法は、現在、ICUにおける栄養物のサポートを提供するために最も広く用いられている様式である(非特許文献8)。経腸給送の好ましい効果は、より良い基体利用、粘膜減退の防止、および、経腸細菌叢、整合性および免疫適格の保存を含んでいる(非特許文献9)。従って、医者の間で、可能な限り経腸経路を介して患者に給送することに盛んに関心が注がれてきた。腹部外科手術、腰の骨折、やけどおよび外傷に関連する重大な病人を調べた先行研究は、早期の経腸給送の有益な効果を示した(非特許文献10)。しかしながら、重症の医療患者は、患者の栄養上の必要性を満たすための早期の給送が、より大きな害を生じさせ、また感染症の多大な複雑化に関連していた、ということを示している(非特許文献11)。
【0005】
VAPの病因において、口腔へのバクテリアの定着、およびその後の気管内チューブに沿っての口咽頭の流動物の誤嚥は、枢要なことであり、そして、防がれるべきである(非特許文献12)。しかしながら、経腸栄養物の搬送のために用いられる挿管および鼻から胃に通したチューブの配置および維持に関連する感染症の危険、組織の損傷および誤嚥は、全ての患者が十分な予防処置の利益を得るわけではないということを示している。胃におけるバクテリアの定着、および胃食道の誤嚥は、VAPの病因における主要なものとなっている(非特許文献13)。胃食道の誤嚥は、鼻から胃に通したチューブの存在およびあおむけになった身体の姿勢によって容易化される(非特許文献14)。放射性のラベルがつけられた経腸給送を用いた実験的研究は、胃の内容物の気管内誤嚥が、患者があおむけに配置された場合の方がやや横になった(semi recumbent)姿勢の場合よりも頻繁に生じるということを主張している(非特許文献15)。これらの知見に基づいて、疾病管理センターは、機械的に肺換気が行われている、やや横になった患者の治療を、VAPを予防する方法として提案した(非特許文献16)。
【0006】
臨床医は、予防の技術を通して、VAPの発生を除去するまたは最小にすることに焦点を当てることができる。遅くに着手したVAPの発生はほとんど影響されないが、早期に着手したVAPの発生は、患者をやや横になった姿勢に配置するなどの単純な方法によって低減され得る。しかし、明らかに単純な予防方法は、管理するのが容易ではない。健康管理チームのコンプライアンス率は、不十分であり、かつ、30〜64%の間で変化する(非特許文献17)。肺換気が行われている患者において、呼吸用の経路が胃腸の逆流により汚染されることを防ぐという医療の試みが、従来技術において知られている。以下の簡潔なレビューにより理解されるように、様々な技術的な解決策が提案されてきた。
【0007】
US2008/0171963は、胃のチューブを介して給送され、または投薬され、そしてやや横になった姿勢で配置された患者の胃の流動物の誤嚥を防ぐ装置に関連している。当該装置は、前記患者に固定された角度センサと、患者が所定の角度を超えて傾いている場合に胃のチューブにおける流れを停止することができる電気制御回路と、を備えており、これによって、誤嚥の危険を減少させることができる。しかしながら、US2008/0171963は、患者がやや横になった姿勢でなくあおむけの姿勢で配置されなければならない全ての場合において不適切なものとなっている。
【0008】
WO01/24860は、略楕円形の拡張可能なマスクリングを含む咽頭のマスクを備えた人口気管装置に関連している。拡張可能なマスクは、喉頭の入口と食道との間の連絡を妨げるよう拡張されるときに、胃の内容物の逆流を防ぐよう喉頭部の入口を封止的に覆う。胃のチューブは、マスクが喉頭部の入口を封止的に覆うときに、食道に面しているマスクの表面への流動物の流れの経路を提供する。しかしながら、この膨張性の喉頭の咽頭マスクは、口腔から胃への唾液の自然な流れを遮断している。さらに、拡張可能なエレメントによって食道の側壁に及ぼされる圧力は、不可逆性の損傷を上皮組織に生じさせ得るので、喉頭の咽頭マスクは、長い期間にわたっては適用され得ない。
【0009】
WO2009/027864は、経腸給送の間に胃−食道−咽頭の逆流が生じるのを低減するよう役立つ経腸給送ユニットに関連している。当該ユニットは、胃の中に配置された胃センサと、食道の中に配置された封止エレメントと、を備えている。胃センサが胃への圧力増加を報告する時、食道は、胃の内容物の逆流を避けるため封止される。しかしながら、食道経路の完全な封止は、そのことが唾液の嚥下を防ぐので、問題のあることである。また、堆積した唾液は、気管系の中へ誤って方向転換されるかもしれない。さらに、食道の側壁への高い圧力の長い時間にわたる出現は、上皮組織に深刻な損傷を生じさせるかもしれない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US2008/0171963
【特許文献2】WO01/24860
【特許文献3】WO2009/027864
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Richards, M. J., J. R. Edwards, D. H. Culver, R. P. Gaynes, et al. 1999. Nosocomial infections in medical intensive care units in the United States, Crit. Care Med. 27:887-892
【非特許文献2】Vincent JL, Bihari DJ, Suter PM, Bruining HA, White J, Nicolas- Chanoin MH, et al. The prevalence of nosocomial infection in intensive care units in Europe. Results of the European Prevalence of Infection in intensive Care (EPIC) study. EPIC International Advisory Committee. JAMA. 1995; 274:639-44
【非特許文献3】McEachern, R., and G. D. Campbell, Jr. 1998. Hospital-acquired pneumonia: epidemiology, etiology, and treatment. Infect. Dis. Clin. N. Am. 12:761-779
【非特許文献4】Papazian L, Bregeon F, Thirion X, Gregoire R, Saux P, Denis JP, et al. Effect of ventilator-associated pneumonia on mortality and morbidity. Am JRespir Crit Care Med. 1996; 154:91-7.
【非特許文献5】Baker, A. M., J. W. Meredith, and E. F. Haponik. 1996. Pneumonia in intubated trauma patients. Microbiology and outcomes. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 153:343-349
【非特許文献6】Fagon JY, Chastre J, Vuagnat A, Trouillet JL, Novara A, Gibert C. Nosocomial pneumonia and mortality among patients in intensive care units, JAMA. 1996; 275:866-9.
【非特許文献7】Boyce, J. M., G. Potter-Bynoe, L. Dziobek, and S. L. Solomon. 1991. Nosocomial pneumonia in Medicare patients. Hospital costs and reimbursement patterns under the prospective payment system. Arch. Intern. Med. 151:1109-1114
【非特許文献8】Weissman C: Nutrition in the intensive care unit. Critical Care 3:R67- R75, 1999.
【非特許文献9】Hadfield, RJ, Sinclair, DG, Houldsworth, PE, et al Effects of enteral and parenteral nutrition on gut mucosal permeability in the critically ill. Am JRespir Crit Care Med 1995;152:1545-1548
【非特許文献10】Marik, PE, Zaloga, GP Early enteral nutrition in acutely ill patients: a systematic review. Crit Care Med 2001; 29:2264-2270
【非特許文献11】Ibrahim, EH, Mehringer, L, Prentice, D, et al Early versus late enteral feeding of mechanically ventilated patients: results of a clinical trial. JPEN J Parenter Enteral Nutr 2002; 26:174-181
【非特許文献12】Johanson WG Jr, Pierce AK, Sanford JP, et al: Nosocomial respiratory infections with gram-negative bacilli: The significance of colonization of the respiratory tr ct. Ann Intern Med 1972; 77(5):701-706.
【非特許文献13】Bonten MJ, Gaillard CA, de Leeuw PW, et al: Role of colonization of the upper intestinal tract in the pathogenesis of ventilatorassociated pneumonia [see comments]. Clin. Infect. Dis. 1997; 24(3):309-319
【非特許文献14】Ibanez J, Penafiel A, Raurich JM, et al: Gastroesophageal reflux in intubated patients receiving enteral nutrition: effect of supine and semirecumbent positions. JPEN J. ParenterEnteral Nutr 1992; 16(5):419-422
【非特許文献15】Torres A, Serra-Batlles J, Ros E, et al: Pulmonary aspiration of gastric contents in patients receiving mechanical ventilation: The effect of body position. Ann Intern Med 1992; 116(7): 540-543
【非特許文献16】Centers for Disease Control and Prevention. Guidechannels for prevention of nosocomial pneumonia. MMWR Morb Mortal WkIy Rep 1997; 46(RR-l):l-79
【非特許文献17】Cook, D. J., S. D. Walter, R. J. Cook, L. E. Griffith, G. H. Guyatt, D. Leasa, R. Z. Jaeschke, and C. Brun-Buisson. 1998. Incidence of and risk factors for ventilator-associated pneumonia in critically ill patients. Ann. Intern. Med. 129:433-440
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、消化管から呼吸器系への誤嚥を防止または低減するための、訓練された介護者によって配置可能な装置への要求が存在している。
【0013】
従って、経腸経路を介して患者への給送を必要に応じて可能にする装置であって、消化管から呼吸器系への胃食道の逆流を防ぎ、または著しく低減する装置を提供することが、本発明の課題である。
【0014】
経腸経路を介して患者への給送を必要に応じて可能にする装置であって、唾液、鼻咽頭および中咽頭の分泌物の嚥下を可能にする装置を提供することが、本発明のその他の課題である。
【0015】
上皮食道組織を損傷させることなく経腸経路を介して患者への給送を必要に応じて可能にする装置を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0016】
経腸経路を介して患者への給送を必要に応じて可能にする装置であって、食道における流動物および生物上の分泌物の通過を制御および監視することができる装置を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0017】
経腸的に給送される患者における嘔吐事象を著しく低減するための方法を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0018】
経腸給送を必要とする患者の食道の中への、給送チューブの挿入および的確な配置のための方法を提供することが、本発明のさらなる課題である。
【0019】
本発明のさらなる目的および利点は、以下の説明により明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の側面において、本発明は、細長い柔軟な中空エレメントからなる経腸的な給送装置であって、中空エレメントは、
a)少なくとも1つの給送孔を有する遠位部分と、
b)細長い柔軟な中空エレメントのまわりに局在させられ、少なくとも3つの拡張可能手段を有する中央部分と、
c)食物コネクタと、各拡張可能手段のための少なくとも1つの流動物コネクタと、を有し、さらに任意に位置決めマーカーを有する近位部分と、を備え、
各流動体コネクタは、独立した流動物搬送チャネルを介して拡張可能手段の1つに流体)接続されており、
食物コネクタは、食物搬送チャネルを介して給送孔に流体接続されている、経腸的な給送装置に関連している。
【0021】
経腸的な給送装置の細長い柔軟な中空エレメントは、シリコン、ラテックス、PVCおよびポリウレタンなどの生体適合性のある柔軟な材料からなっており、または、剛体のまたは半剛体の、相互接続された生体適合性のあるエレメントからなっている。放射線不透過性のマーカーが、細長い柔軟な中空エレメントの壁部の中に埋め込まれていてもよい。拡張可能手段は、膨張させられたとき、円形または円筒形の形状を有しており、また、互いに0〜10mmだけ離れており、好ましくは約0mmだけ離れている。給送装置の遠位部分は、少なくとも1つの拡張可能手段を備えていても良く、また近位部分は、位置決めマーカーを備えていてもよい。さらに、本発明による給送装置は、センサエレメント、刺激エレメント、吸引エレメント、散水エレメント(sprinkling element)からなる一群から選択された少なくとも1つのエレメントを備えていてもよい。
【0022】
第2の側面において、本発明は、細長い柔軟な中空エレメントからなる経腸的な給送装置であって、中空エレメントは、
a)少なくとも1つの給送孔と、拡張可能手段とを有する遠位部分と、
b)中央部分と、
c)食物コネクタ、膨張機構、少なくとも1つの解放バルブ、および少なくとも1つの圧力センサを有する近位部分と、を備え、
膨張機構、解放バルブおよび圧力センサは、流動物搬送チャネルを介して拡張可能手段に流体接続されており、
食物コネクタは、食物搬送チャネルを介して給送孔に流体接続されている、経腸的な給送装置に関連している。
【0023】
第3の側面において、本発明は、対象者の食道の中への流動物の動きを制御するシステムであって、システムは、
a)本発明の第1の側面に記載の経腸的な給送装置と、
b)制御および監視ユニットと、
c)給送ポンプを有する給送ユニットと、
d)プロセッサ、メモリ、入力デバイス、ディスプレイおよび専用ソフトウェアを有する処理ユニットと、を備え、
処理ユニットは、単一エレメントまたは複数の独立したエレメントとして設けられている、システムに関連している。
【0024】
制御および監視ユニットは、典型的には、加圧された流動物を提供するよう適合された第1流体システムと、真空空間を提供するよう適合された第2流体ユニットと、電気式および/または空気圧バルブ一式と、圧力センサ一式と、を備えている。さらに、制御およびモニタは、センサ、バイオセンサ、吸引システムおよび散水システムからなる一群から選択される1つまたは2つ以上の構成要素を備えていてもよい。
【0025】
第4の側面において、本発明は、経腸給送される患者における、消化管からの誤嚥を低減するための方法であって、方法は、
a)本発明の第3の側面に記載のシステムを提供する工程と、
b)患者の食道のシステムに設けられる経腸的な給送装置を位置決めする工程と、
c)栄養液を患者に給送する工程と、
d)給送装置の拡張可能手段に対する蠕動波を模擬し、これによって、胃腸の流動物を胃に戻すよう押し込み、そして、中咽頭の流動物の通過を可能にする工程と、を備えた方法に関する。
【0026】
この方法において、システムにより模擬される蠕動波は、食道の自然な蠕動運動に同期されていてもよい。
【0027】
第5の側面において、本発明は、嘔吐事象の間に経腸給送される患者の中咽頭に到達する胃腸の流動物の量を低減するための方法であって、方法は、
a)本発明の第3の側面に記載のシステムを提供する工程と、
b)患者の食道のシステムに設けられる経腸的な給送装置を位置決めする工程と、
c)栄養液を患者に給送する工程と、
d)食道への胃腸の流動物の量が上昇しているかどうかを決定する工程と、
e)任意ではあるが、経腸的な給送装置の全ての拡張可能手段を膨張させ、これによって、患者の食道を封止し、胃腸の流動物を胃に方向転換させる工程と、を備えた方法に関する。
【0028】
第6の側面において、本発明は、患者の食道において、位置決めマーカーをその近位部分に備えた第1の側面による経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、方法は、
a)拡張可能手段の各々の内側において流動物の圧力を個々に測定するための手段(例えば、上記記載の制御および監視ユニット)を提供する工程と、
b)給送装置の全ての拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
c)患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ装置を挿入する工程と、
d)拡張可能手段の1つを膨張させる工程と、
e)圧力測定手段が、膨張させられている拡張可能手段の内側の圧力が所定の閾値よりも上まで上昇したことを示すまで、給送装置をゆっくりと引き戻す工程と、
f)拡張可能手段を収縮させる工程と、
g)任意ではあるが、給送装置を所定の距離だけゆっくりとさらに引き戻す工程と、を備えた方法に関する。
【0029】
第7の側面において、本発明は、患者の食道において、放射線不透過性マーカーを備えた第1の側面による経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、方法は、
a)給送装置の全ての拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
b)X線画像化システムを提供する工程と、
c)患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ装置を挿入する工程と、
d)患者の食道において、放射線不透過性マーカーの位置を監視するためにX線画像化システムを用いる工程と、
e)放射線不透過性マーカーが、中央部分における近位の拡張可能手段が竜骨の下方約5cmに配置されているということを示すまで、患者の食道において装置を動かす工程と、を備えた方法に関する。
【0030】
第8の側面において、本発明は、患者の食道において、第2の側面に記載の経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、方法は、
a)給送装置の拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
b)患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ装置を挿入する工程と、
c)膨張機構を作動させることによって拡張可能手段を膨張させる工程と、
d)圧力センサが、拡張可能手段の内側の圧力が所定の閾値よりも上まで上昇したことを示すまで、給送装置をゆっくりと引き戻す工程と、
e)解放バルブを介して拡張可能手段を収縮させる工程と、を備えた方法に関する。
【0031】
本発明における上述の、またはその他の特徴および利点の全ては、本発明の好ましい形態における以下の実例となる、かつ非限定的な説明により、付随する図を参照してさらに理解される。図において、同一の符号は、同一のエレメントを示すために異なる図において時折使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明による装置の一形態を示す図。
【図2A】図2Aは、本発明による装置の一形態を示す斜視図。
【図2B】図2Bは、本発明による装置の一形態を示す断面図。
【図2C】図2Cは、本発明による装置の一形態を示す断面図。
【図2D】図2Dは、本発明による装置の一形態を示す断面図。
【図3A】図3Aは、本発明による装置のその他の形態を示す斜視図。
【図3B】図3Bは、本発明による装置のその他の形態を示す断面図。
【図3C】図3Cは、本発明による装置のその他の形態を示す断面図。
【図3D】図3Dは、本発明による装置のその他の形態を示す断面図。
【図3E】図3Eは、本発明による装置のその他の形態を示す断面図。
【図4】図4は、3つの拡張可能手段および刺激エレメントのための2つの任意の場所を備えた本発明による装置の一形態を示す図。
【図5】図5は、拡張可能エレメントを備えた、本発明による装置の一形態の中央部分の一部を示す拡大長手方向断面図。
【図6】図6は、本発明によるシステムの一形態であって、患者の食道の内腔への流動物の搬送の制御およびモニタを可能とする形態を示す図。
【図7】図7は、本発明によるシステムの制御および監視ユニットの一形態を示す図。
【図8A】図8Aは、本発明によるシステムに含まれるソフトウェアの一形態によるグラフィカル・ユーザー・インターフェースからの典型的な表示画面を示す図。
【図8B】図8Bは、本発明によるシステムに含まれるソフトウェアの一形態によるグラフィカル・ユーザー・インターフェースからの典型的な表示画面を示す図。
【図9】図9は、患者の食道の中へ的確に配置された本発明による装置の遠位および中央部分の拡大長手方向断面図。前記装置の近傍で循環する胃腸および中咽頭の流動物も示されている。
【図10A】図10Aは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図10B】図10Bは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図10C】図10Cは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図10D】図10Dは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図10E】図10Eは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図10F】図10Fは、胃腸の逆流を防ぎながら、中咽頭の流動物を嚥下することを可能にする、経腸的に患者に給送するための工程を例示的に示している。
【図11A】図11Aは、経腸的に給送される患者が嘔吐するのを防ぐための方法における様々な段階を示す図。
【図11B】図11Bは、経腸的に給送される患者が嘔吐するのを防ぐための方法における様々な段階を示す図。
【図12A】図12Aは、本発明による装置の、患者の食道の内側への的確な位置決めのために用いられる方法の工程を例示的に示す図。
【図12B】図12Bは、本発明による装置の、患者の食道の内側への的確な位置決めのために用いられる方法の工程を例示的に示す図。
【図12C】図12Cは、本発明による装置の、患者の食道の内側への的確な位置決めのために用いられる方法の工程を例示的に示す図。
【図12D】図12Dは、本発明による装置の、患者の食道の内側への的確な位置決めのために用いられる方法の工程を例示的に示す図。
【図12E】図12Eは、本発明による装置の、患者の食道の内側への的確な位置決めのために用いられる方法の工程を例示的に示す図。
【図13】図13は、拡張可能エレメント、患者の食道における位置決めを容易化するための手動ポンプ、および圧力計を有する給送チューブを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1の側面は、患者の胃の中へ直接的に栄養液を投与することができ、消化管から呼吸器系への誤嚥の危険を著しく低減し(本発明者によると、少なくとも事例の50%の低減として見積もられている)、かつ、消化器系の上側部分における、胃の中への生物学的流動体(例えば、唾液、鼻咽頭分泌物および中咽頭分泌物)の嚥下を可能とする、経腸的な給送装置に関する。本発明の装置は、好ましくは、使い捨てできるものからなっている。
【0034】
図1の参照によると、本発明の給送装置1は、細長い柔軟な中空エレメント2、近位部分3、中央部分4および遠位部分5を備えている。典型的には、細長い柔軟なエレメント2は、生体適合性のある柔軟な材料からなる単一のピースから、または、剛体のまたは半剛体の相互接続された生体適合性のある複数の部品から構成されている。これによって、柔軟なエレメント2は、エレメント2が患者の食道に安全に導入され得るように曲げられるようになっている。本発明の装置の特定の形態において、エレメント2は、シリコン、ラテックス、PVCまたはポリウレタンなどの柔軟で生体適合性のある高分子材料からなっている。任意ではあるが、エレメント2は、微生物の定着または生物学的流動物による劣化を防ぐ1つまたは2つ以上の保護層によって覆われていてもよい。エレメント2の直径は、典型的には2mm〜10mmの間となっており、また、その長さは約30mm(早産児、新生児)から約150mm(大人)の間となっている。
【0035】
給送装置1の遠位部分5は、1つまたは2つ以上の給送孔6を備えており、給送孔6は、エレメント2の端部における中央位置またはエレメント2の端部の横方向近傍における中央位置に配置されている。これらの孔6が、エレメント2の中空の導管を介して胃の中へ栄養液を搬送することを可能にする。任意には、患者の食道の中への給送装置1の位置決めを容易にするため、または、後に説明されるように圧力センサとして機能するため、少なくとも1つの拡張可能なエレメントがチューブ2の遠位端部のまわりに配置されていてもよい。
【0036】
給送装置1の中央部分4は、柔軟なエレメント2を囲む少なくとも3つの拡張可能手段7a,7b,7cを備えていてもよい。拡張可能手段7a,7b,7cは、その内部へ流動物を導入または排出することにより膨張または収縮され得る。使用される流動物は、患者にとって安全であり、かつ好ましくは、気体または液体の形態であり、例えば空気または水である必要がある(ここで、用語「流動物」は、医療上受容可能な任意の気体または液体を指定するよう用いられる)。拡張可能手段7a,7b,7cは、典型的には、柔軟で生体適合性のある膜から構成されている。この膜は、0.1mmから1mmの間の厚みを有しており、また、エレメント2の側壁に取り付けられている。収縮させられているとき、拡張可能手段7a,7b,7cは、エレメント2の側壁に対して横たわっており、エレメント2の直径を1mmより小さいところまで広げている。膨張させられているとき、拡張可能手段7a,7b,7cは、約20mmの直径に到達しており、これによって、食道の内腔の封止を可能にしている。本発明による装置の特定の形態によれば、拡張可能手段7a,7b,7cは、中央部分4の様々な位置に配置されていてもよいが、2つの連続する拡張可能手段は10mm以下で、好ましくは0mmで離されている。膨張させられているとき、拡張可能手段7a,7b,7cは、いくつかの形状を有していてもよいが、好ましくは円形状または円筒形状を有している。後者の場合、前記円筒形の側部の長さは、典型的には約10mmと30mmとの間になっており、側部は食道の上皮に面している。
【0037】
給送装置1の近位部分3は、少なくとも3つの流動物コネクタ8a,8b,8cにより終端されている。各流動物コネクタ8a,8b,8cは、柔軟なエレメント2の内側において、拡張可能手段7a,7b,7cの中へ、または拡張可能手段7a,7b,7cから流動物を搬送するよう適合された3つの独立した流動物搬送チャネル9a,9b,9cによって延長されている(図2A−2D)。さらに、近位部分4は、少なくとも1つの食物コネクタ10を備えている。食物コネクタ10は、柔軟なエレメント2の内側において、食物搬送チャネル11により延長されている。食物搬送チャネル11は、遠位部分5に配置された孔6を介して患者の胃37へ栄養液を搬送するよう適合されている(図2A−2D)。
【0038】
図2Aを参照すると、本発明による給送装置1の一つの特定の形態が示されている。この形態は、細長い柔軟なエレメント2、3つの拡張可能手段7a,7b,7c、3つの流動物コネクタ8a,8b,8c、食物コネクタ10および複数の放射線不透過性のマーカー12を備えている。放射線不透過性のマーカー12は、エレメント2の壁の内側に埋め込まれている。好ましくは、マーカー12は、X線のモニタのもとで、患者の食道の内側での給送装置1の的確な位置決めを確実にするため、近位部分3および遠位部分5に埋め込まれている。
【0039】
図2Bは、図2Aに示す線B−Bに沿って見られた、給送装置1の近位部分3の断面図である。ここでは、3つの流動物搬送チャネル9a,9b,9cおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認される。
【0040】
図2Cは、図2Aに示す線C−Cに沿って見られた、給送装置1の中央部分4の断面図である。ここでは、3つの流動物搬送チャネル9a,9b,9cおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認され、また、エレメント2を囲む拡張可能手段7aが視認される。
【0041】
図2Dは、図2Aに示す線D−Dに沿って見られた、給送装置1の遠位部分5の断面図である。ここでは、食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認される。
【0042】
図3Aを参照すると、本発明による給送装置1のその他の形態が示されている。この形態は、細長い柔軟なエレメント2、4つの拡張可能手段7a,7b,7c,7d、4つの流動物コネクタ8a,8b,8c,8dおよび食物コネクタ10を備えている。放射線不透過性のマーカーは、この特定の形態においては必ずしも必要ではなく、給送チューブにおける的確な位置決めは、装置の遠位部分5上に配置された拡張可能手段7dおよび前記装置の近位部分3上に配置された位置決めマーカー19により可能となる。
【0043】
図3Bは、図3Aに示す線B−Bに沿って見られた、給送装置1の近位部分3の断面図である。ここでは、4つの流動物搬送チャネル9a,9b,9c,9dおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認される。
【0044】
図3Cは、図3Aに示す線C−Cに沿って見られた、給送装置1の中央部分4の断面図である。ここでは、4つの流動物搬送チャネル9a,9b,9c,9dおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認され、また、エレメント2を囲む拡張可能手段7aが視認される。
【0045】
図3Dは、図3Aに示す線D−Dに沿って見られた、給送装置1の遠位部分5の断面図である。ここでは、流動物搬送チャネル9dおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認される。
【0046】
図3Eは、図3Aに示す線E−Eに沿って見られた、給送装置1の遠位部分5の断面図である。ここでは、流動物搬送チャネル9dおよび食物搬送チャネル11がエレメント2の内側に視認され、また、エレメント2を囲む拡張可能手段7dが視認される。
【0047】
本発明による装置のいくつかの形態では、全体的に電気的エレメントが使われていないが、本発明による装置のその他の形態は、機械的、光学的、電気的、化学的または生物学的信号に基づくセンサおよび/または刺激エレメントを備えていてもよく、または、それらの組み合わせを備えていてもよい。センサエレメントは、好ましくは、チャネルの内部、拡張可能手段の上、拡張可能手段の内側、または柔軟なエレメントの側壁上に配置される。センサエレメントは、食道内部の圧力、pHなどの内部のパラメータを測定するために用いられ得る。刺激エレメントは、好ましくは、拡張可能手段の上または柔軟なエレメントの側壁上に配置される。刺激エレメントは、例えば、電気的、化学的または機械的な刺激信号を利用することにより食道の蠕動波を刺激するために用いられ得る。刺激エレメント42は、例えば、拡張可能手段7aの前に配置され得る。患者の食道13への装置1の挿入の後、刺激エレメント42は、上側の食道のレベル43に、または咽頭/口蓋垂44の隣に、または必要であればその両方に局在させられ得る(図4参照)。
【0048】
理想的には、センサエレメントおよび刺激エレメントは、センサエレメントにより集められるデータに刺激を連係させるため、相互接続されている。さらに、電気的ワイヤを追加することなく周囲環境と通信するため、受理および/または放射エレメントが含まれていてもよい。
【0049】
本発明の給送装置は、患者の胃の中へ直接的に栄養液を投与することができるだけでなく、独立して膨張または収縮され得る拡張可能手段により、食道の内腔における流動物の移動を制御することもできる。拡張可能手段は、膨張させられるとき、食道における流動物の流れを遮断するよう利用される。また収縮させられるとき、拡張可能手段は、食道における流動物の流れを自由にすることができる。拡張しているとき(すなわち、収縮した状態から膨張した状態になるとき)、拡張可能手段は、食道上皮と拡張する膜との間の空間に位置する流動物に圧力を及ぼし、これによって、流動物を前記空間から押し出す。同期されるとき、拡張可能手段の順次的な膨張/収縮は、蠕動波を模擬することができ、これによって、食道に収容されている流動物を所定の方向へ動かすことができる。
【0050】
図5は、患者の食道13に配置され、3つの拡張可能手段7a,7b,7cを備えた給送装置1の中央部分4の拡大長手方向断面図を示している。拡張可能手段7a,7b,7cは、エレメント2の外壁と拡張可能な膜の内側の側部との間に形成された空間に流動物を注入することにより膨張させられている。流動物は、各拡張可能手段7a,7b,7cに、対応する流動物搬送チャネル9a,9b,9cを介して別個に注入される。膨張しているとき、拡張可能手段7a,7b,7cは、円筒形状または円形状を有し、かつ、食道上皮36に(10mmHg〜50mmHgの範囲内の)低い圧力を及ぼし、これによって、食道13を封止し、そして胃腸の流動物34および中咽頭の流動物35を遮断する。2つの膨張した拡張可能手段の間に位置する死容積14は、可能な限り小さくなっている(典型的には0mm〜10mmの間になっている)べきである。なぜなら、それらは、流動物を捕捉することができ、これによって、周囲組織に痛みを起こさせるからである。捕捉された流動物から死容積14を洗浄するため、本発明の装置は、拡張可能手段の間に配置されたスプリンクラーまたは吸引エレメントをさらに含んでいてもよい。
【0051】
本発明のさらなる側面は、患者に栄養液を提供すること、胃腸の逆流の発生を回避するまたは著しく低減すること、および、中咽頭を通過する流動物および分泌物が嚥下されるのを可能にすることに適したシステムに関する
【0052】
図6を参照すると、本発明のシステム15の一形態が示されている。この形態は、患者の食道13への流動物の通過を制御および監視することができる。システム15は、医療スタッフの介入を必要としない「スタンドアローン」モード、または、システム15の各動作が医療スタッフによって制御され得る「インタラクティブ」モードで動作することができる。
【0053】
システム15は、鼻または口の経路を介して食道13へ導入される(上述の)給送装置1を備えている。給送装置1の遠位部分5の端部は、患者の胃37の中に位置決めされており、また、中央部分4の拡張可能手段7a,7b,7cは、好ましくは竜骨の5cm下に配置されている。患者の食道の中への装置1の正確な位置決めのための方法は、以下により詳細に説明される。給送装置1の流動物コネクタ8a,8b,8cは、制御および監視ユニット16に接続され、また食物コネクタ10は、給送ユニット17に接続される。図6に示されているシステムはまた、プロセッサ、メモリ、入力デバイスおよびディスプレイを備えた処理ユニット18を含んでおり、前記ユニット18は、制御および監視ユニット16に接続されている。処理ユニット18は、単一のスタンドアローンのエレメント(例えばタッチスクリーン付のラップトップ、パーム・パイロット)として設けられていてもよく、または、複数の独立したエレメント(例えばPC)として設けられていてもよい。任意には、処理ユニット18は同時に、患者の医療上の状態を診断および/または監視するために用いられる医療システムに接続されていてもよい。典型的には、給送ユニット17は、給送装置1を介して患者に送られる栄養液の量を制御する給送ポンプを備えている。
【0054】
制御および監視ユニット16は、各拡張可能手段7a,7b,7cの本体部の内側における流動物の圧力を個々に制御および監視することができる。さらに、拡張可能手段が膨張させられるとき、制御および監視ユニット16は、拡張可能手段の外面に印加される外部の圧力を感知することができる。そのような外部の圧力が印加されるとき、拡張可能手段における内部の圧力の著しい増加が観察される。従って、食道上皮に直接に接している、膨張させられた拡張可能手段に及ぼされる圧力の変化に基づいて、制御および監視ユニット16により、食道13の蠕動運動が見積もられ得る。
【0055】
処理ユニット18は、制御および監視ユニット16からのデータをリアルタイムで収集し、記録し、そして処理する。ソフトウェアが処理ユニット18に包含されており、また重大な情報を解析し、そしてソフトウェアは、重大な情報を患者の介護スタッフにディスプレイ上で示すよう利用される。システム15は、全ての拡張可能手段7を同時に収縮させることができ、かつ緊急の場合(1つまたは2つ以上の拡張可能手段における圧力の制御外の増加)に用いられ得る自動または手動のターンオフエレメントを含んでいてもよい。
【0056】
図7を参照すると、本発明によるシステムの制御および監視ユニット16の一形態が示されている。図7に示されている制御および監視ユニット16は、拡張可能手段7の膨張および収縮を制御するため、2つの平行な流体システムと、一式の電気式または空気圧バルブとを備えている。第1流体システムは、拡張可能手段の本体部の内側で拡張可能手段を膨張させるために注入され得る高度に圧縮された流動物を提供する。一方、第2流体システムは、流動物を前記本体部から排出するために用いられ得る真空空間を生成し、これによって、拡張可能手段を収縮させる。実際には、拡張可能手段の本体部に印加される流動物の圧力は、両方の流体システムの均衡のとれた動作から生じる。
【0057】
図7において黒線で示されている第1流体システムは、圧力ポンプ20と、高圧容器バルブ22と、中間感度圧力容器センサ24と、圧力容器26と、流量バルブ28と、を備えている。図7において破線で示されている第2流体システムは、真空バルブ21と、真空容器バルブ23と、中間感度真空容器センサ25と、真空容器27と、を備えている。圧力ポンプ20および真空バルブ21は、制御および監視ユニット16と一体の部分からなっていてもよく、または、本発明のシステム15が利用される医療インフラ(病院、救急車など)の一部分となっていてもよい。各拡張可能手段7における圧力は、第1流体システムに接続された膨張バルブ30、および、第2流体システムに接続された収縮バルブ29の同時の動作により制御される。このようにして、各拡張可能手段7における流動物の圧力が、正確に(約1mmHgの感度で)制御され、また、迅速に(約5mmHg/sで)変化され得る。各拡張可能手段7において、圧力センサ31aおよび予備圧力センサ31bが設けられており、これらのセンサは、拡張可能手段の内側における流動体の圧力をリアルタイムで報告する。さらに、緊急の場合に利用され、迅速に流動物の圧力を減少させるとともに拡張可能手段7を収縮させるため、各拡張可能手段7に安全解放バルブ32が設けられている。
【0058】
流体システムおよびバルブの動作は、処理ユニット18に接続されたコントローラ33を介して行われる。制御および監視ユニット16は、拡張可能手段7全ての膨張および収縮を、並列にまたは所定の順序で制御および/または監視し、かつ各拡張可能手段7における圧力を独立に制御するよう設計されている。例えば、拡張可能手段の膨張/収縮の適切なタイミングにより、後述するように蠕動波が模擬され得る。
【0059】
任意には、制御および監視ユニット16は、センサおよび/またはバイオセンサ、例えばpHセンサおよび免疫センサなどと、吸引システムと、および/または散水システムと、をさらに備えていてもよい。吸引システムおよび散水システムは、エレメント2を介して進むとともに食道の内腔に配置された少なくとも1つの孔を有する1つまたは2つ以上の導管に接続されている。この孔は、エレメント2の側壁のどの場所に配置されていてもよいが、好ましくは、中央部分4の2つの拡張可能手段の間に位置する死容積14の正面に配置されている(図5参照)。吸引システムは、患者の食道を循環する流動物を吸引またはサンプリングするために使用され得る。また任意には、吸引システムは、解析のために、サンプリングされた流動物を制御および監視ユニット16に配置されたセンサ/バイオセンサへ移動させる。散水システムは、給送装置1を、その近傍で(例えば死容積14において)捕捉されてきた生物的な流動物から洗浄するために用いられ得る。および/または散水システムは、本発明の装置により模擬される蠕動波の間に胃の方向において流動物の通過を加速させることができる。
【0060】
図8Aおよび図8Bを参照すると、本発明によるシステムのソフトウェアの一形態によるグラフィカル・ユーザー・インターフェースからの典型的な2つの表示画面が示されている。第1のスクリーン(図8A)は、使用者に、本発明のシステムの様々な構成要素の状態に関するリアルタイムの情報を提供している。この情報は、経腸装置の挿管または抜管の間および標準的に機能している間のシステムの状態を追跡するためにとりわけ重要となる。第1のスクリーンは、例えば以下のことを示している。
・各拡張可能手段における実際の圧力;
・前記圧力が各拡張可能手段に印加されてからの経過時間;
・各拡張可能手段における、圧力に対する時間を示す二次元グラフ;
・拡張可能手段を手動で膨張/収縮させるためのボタン;
・第1流体システムによりもたらされる全ての圧力;
・第2流体システムにより生成される全ての真空。
【0061】
第2のスクリーン(図8B)は、経腸的な給送装置に局在する拡張可能手段に関連する複数のパラメータの設定を可能とし、また、蠕動波を模擬するために拡張可能手段の膨張/収縮事象に同期することを可能にする。第2のスクリーン(図8B)は、例えば、各拡張可能手段における以下のパラメータの設定を可能にする。
・運転圧力;
・警報圧力;
・緊急圧力;
・サイクル期間;
・誤差管理設定;
・洗浄設定;
・サイクル計画(T1,T2,R1,F1,最大圧力)。
【0062】
なお、図7,図8Aおよび図8Bに示される制御および監視ユニットおよび表示スクリーンの記載は、本発明の原理を説明するためだけの目的で提供されているものである、ということが留意される。システムのこれらの構成要素の多数のその他の形態が発明者によって意図されており、また当業者は、本発明を実行するのに適した形態を容易に設計することができる。
【0063】
図9は、患者の食道13の中へ配置された本発明による装置の遠位部分5および中央部分4を拡大して示している。栄養液41が、柔軟なエレメント2の中に囲まれた食物搬送チャネル11を介して胃37へもたらされ、そして、3つの拡張可能手段7a,7b,7cが収縮させられる。患者は、通常、仰向けの姿勢で配置されており、このため、中咽頭へ向かう流動物34の胃腸の逆流の危険を増加させている。同時に、患者が嚥下するとき、中咽頭の流動物35が、中咽頭から胃に向かって下って移動する。本発明のその他の側面は、胃腸の流動物34を胃の中に押し込むための方法に関連しており、また、患者が栄養液41を給送されている間に中咽頭の流動物の通過を可能とすることに関連している。当該方法は、本発明の装置1の中央部分4に配置された拡張可能手段7を用いる2つの連続した蠕動波を模擬することからなっている。図10A〜10Fに示されているように、少なくとも3つの拡張可能手段が、蠕動波を効率的に模擬するために必要となっている。
【0064】
第1の段階において(図10A)、全ての拡張可能手段7は収縮させられており、また、細長いエレメント2の外壁上に横たえられている。これによって、流動物の自然な流れが可能となっている。
【0065】
第2の段階において、拡張可能手段7aの膜が食道上皮36に当接するまで、第1の拡張可能手段7aが最大圧力まで膨張させられる(図10B)。この段階により、内腔の封止が生じ、そして、胃腸の流動物34および中咽頭の流動物35の両方の通過を回避する。
【0066】
第3の段階(図10C)において、拡張可能手段7bは、適度な速度で(典型的には3から10秒で)最大の圧力まで膨張させられる。柔軟なエレメント2と食道上皮36との間の空間が低減されるので、胃腸の流動物34が胃の方向において押し戻される。中咽頭の流動物35は、膨張させられたままの拡張可能手段7aによって遮断されたままである。
【0067】
第4の段階(図10D)において、拡張可能手段7cは、適度な速度で(典型的には3から10秒で)最大の圧力まで膨張させられ、そして、胃腸の流動物34が胃に向かってさらに押し戻される。この段階において、拡張可能手段7aを収縮させることによって第2の蠕動波もまた始動され、そして、中咽頭の流動物35が、胃の方向において前進可能となる。
【0068】
第5の段階(図10E)において、中央の拡張可能手段7bが収縮させられ、一方、第1の拡張可能手段7aが膨張させられる。これによって、食道において中咽頭の流動物35を下方に押し込むことができる。拡張可能手段7cは、胃腸の流動物34の残りを遮断するよう膨張させられたままである。
【0069】
最後の段階(図10F)において、拡張可能手段7bが膨張させられ、一方、最後の拡張可能手段7cが収縮させられる。これによって、中咽頭の流動物35が通過できるようになる。
【0070】
拡張可能手段によって食道上皮に及ぼされる最大の圧力は、任意ではあるが、本発明による患者への給送装置の正確な位置決めの後に医療スタッフによって調整されてもよい、ということが留意される。この最大の圧力は、前記患者の性別、年齢および診察経歴に応じて変わってもよく、また、使用前の本発明によるシステムの処理ユニットにおいて決定され保存されてもよい。さらに、装置の有効性を改善するため、システムにより模擬される蠕動波は、自然な食道の蠕動に同期されていてもよい。この目的のため、刺激エレメントが、本発明の装置に配置されていてもよく、また、電気的、化学的または機械的な信号を食道の筋肉に提供し、そして自然な蠕動運動を始動するために用いられてもよい。自然な、模擬された蠕動波の同期は、胃の方向において、様々な食道の流動物における最適な排出を導くことができる。
【0071】
示されているように、上述の方法は、食道における胃腸の流動物の進行を遮断し、胃腸の流動物の胃への方向転換を可能とし、また、患者によって自然に分泌された中咽頭の流動物の嚥下を可能とする。この方法は、従来技術に対する様々な利点を有している。低く、かつ断続的な圧力のみが食道上皮に及ぼされ、それが、虚血および静脈性鬱血の危険を低減する。胃腸の流動物は、拡張可能手段により遮断されるだけでなく、本発明の装置により模擬された蠕動波により胃に向けて押し戻される。中咽頭の流動物は、大抵、自然に嚥下され得る。本発明のシステムにより生成される蠕動波は、食道の自然な蠕動運動に同期され得る。本発明のシステムは、例えば、給送ポンプによる栄養液の搬送に同期して、特定の時間で蠕動を模擬するモードにおいて前もってプログラムされていてもよく、または、可変の期間および周波数を有する自動的なサイクルを達成するモードにおいて前もってプログラムされていてもよい。両方の物理療法の組み合わせもまた可能である。
【0072】
さらに、本発明による方法は、嘔吐事象の間に経腸的に給送される患者の中咽頭に到達する胃腸の流動物の量を低減することができる。図11Aおよび11Bに示されているように、この方法は、好ましくは、中央部分4に配置された拡張可能手段7a,7b,7cの一群を備えた本発明の給送装置を用いる。本発明の給送装置は、装置の遠位部分5に配置された更なる拡張可能手段7dを備えている。胃37の中に延びる遠位端部とともに、給送装置が患者の食道の中に正確に位置決めされた後、拡張可能手段7dが、下部食道括約筋(LES)38の上方に配置され、また、最大の圧力の約半分に膨張させられ(半膨張)、そして、流動物のセンサとして用いられる。上述のように、各拡張可能手段の本体部における流動物の圧力(内部圧力)は、制御および監視ユニット16に配置された圧力センサ31によりリアルタイムで監視されている。外部圧力が拡張可能手段7dに及ぼされるとき、処理ユニット18によって報告される内部圧力の著しい増加が誘起される。従って、半膨張させられた拡張可能手段7dと食道上皮36との間の胃腸の流動物34の通過が、検出され報告され得る。
【0073】
標準状態において、拡張可能手段7a,7b,7cはいずれも、上述のような蠕動波を生成するよう収縮させられ、または用いられる。嘔吐物39が胃37から吐き出されて拡張可能手段7dに到達するとき、事象が、制御および監視ユニット16によって検出される。拡張可能手段7dは、その後、流動物の通過を可能とするよう完全に収縮させられ、また、拡張可能手段7a,7b,7cが、食道の内腔を封止するよう即座に膨張させられる。嘔吐物は、重力によって胃に向けて送り戻され、そして数秒後(典型的には10秒)、拡張可能手段7a,7b,7c,7dの初期の構成が復元される。
【0074】
さらに、本発明のその他の側面は、経腸給送を必要とする患者の食道の中に本発明の給送装置を位置決めする方法に関連している。一つの形態において、本発明の装置の正確な位置決めは、給送装置に取り付けられた特定のマーカー(X線による位置決めのための放射線不透過性のマーカーなど)を配置することができる外部装置の補助により達成される。当該マーカーは、典型的には、細長い柔軟な中空エレメントの側壁の中に埋め込まれている。その他の形態において、給送装置の位置決めは、図12A−12Eに示されているように実施される。この形態のため、本発明の給送装置1に、遠位部分5に配置された拡張可能手段7dが備えられていてもよい。挿入に先立って、給送装置に備えられた全ての拡張可能手段7が収縮させられる(図12A)。給送装置は、その後、口の経路または鼻の経路を介して、装置の近位部分3に配置された位置決めマーカー19が患者の口または鼻(口か鼻かは、装置の挿入経路に依存している)に到達するまで、患者の食道13に挿入される。この段階において、すべての遠位部分5は、患者の胃37に導入されている。拡張可能手段7dは、その後、最大の圧力で膨張させられ、そして給送装置1は、拡張可能手段7dの本体部の内側における圧力の著しい増加が拡張可能手段7dに接続された圧力センサ(図示せず)によって観察されるまで、中咽頭の方向において低速で引き戻される。観察された圧力の増加は、拡張可能手段7dが下部食道括約筋(LES)38に到達したということを意味しており、そのとき、給送装置は正確な位置にある。一旦正確に位置決めされると、拡張可能手段7dが収縮させられ、そして、給送装置1の使用の準備が整う。
【0075】
後者の位置決め方法は、遠位端部に局在している第4の拡張可能手段7dの補助無しで実施されてもよい、ということが留意される。この場合、給送装置1の中央部分4に配置された拡張可能手段7a,7b,7cのうちの1つがセンサとして用いられ、また、中央部分4の一部が遠位部分5とともに胃の中に導入される。その後、拡張可能手段のうちの1つが最大の圧力で膨張させられ、そして、給送装置1は、選択された拡張可能手段の本体部の内側における圧力の著しい増加が観察されるまで、中咽頭の方向において低速で引き戻される。その後、膨張させられた拡張可能手段が収縮させられ、そして、装置は、所定の距離(典型的には数センチメーター)だけ中咽頭の方向においてさらに引き戻される。
【0076】
本発明の装置における単純化されたバージョンが図13に示されている。それは、
a)細長い柔軟な中空エレメント2であって、その遠位部分に1つの拡張可能手段7が配置されてきた、エレメント2と、
b)流動物搬送チャネル9に接続され、前記拡張可能手段の内部の本体部を終端している膨張機構40(例えば手動ポンプ)と、
c)前記流動物搬送チャネルに接続された解放バルブ32と、
d)前記中空エレメント2の内側で食物搬送チャネル11によって延長され、少なくとも1つの孔6によって前記中空エレメント2の遠位端部を終端している食物コネクタ10と、
e)圧力センサ31と、を備えている。
【0077】
この特定の形態において、制御および監視ユニット16は、膨張機構40と、解放バルブ32と、圧力センサ31と、を備えている。
【0078】
本発明の形態が例示的な方法で説明されてきたが、本発明は特許請求の範囲を超えることなく様々な変形、修正および適合とともに実行され得る、ということが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い柔軟な中空エレメントを備えた経腸的な給送装置であって、
中空エレメントは、
a)少なくとも1つの給送孔を有する遠位部分と、
b)細長い柔軟な中空エレメントのまわりに局在させられ、少なくとも3つの拡張可能手段を有する中央部分と、
c)食物コネクタと、各拡張可能手段のための少なくとも1つの流動物コネクタと、を有し、さらに任意に位置決めマーカーを有する近位部分と、を備え、
各流動体コネクタは、独立した流動物搬送チャネルを介して拡張可能手段の1つに流体接続されており、
食物コネクタは、食物搬送チャネルを介して給送孔に流体接続されている、経腸的な給送装置。
【請求項2】
前記細長い柔軟な中空エレメントは、生体適合性のある柔軟な材料からなる単一のピースからなっており、または、剛体のまたは半剛体の、相互接続された生体適合性のある複数のエレメントからなっている、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項3】
前記生体適合性のある柔軟な材料は、シリコン、ラテックス、PVCおよびポリウレタンからなる一群から選択される、請求項2に記載の経腸的な給送装置。
【請求項4】
前記拡張可能手段は、膨張させられるとき円形または円筒形の形状を有する、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項5】
前記各拡張可能手段は、約0〜10mmの所定距離だけ離されている、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項6】
前記遠位部分は、少なくとも1つの拡張可能手段をさらに備えている、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項7】
放射線不透過性のマーカーが、前記細長い柔軟な中空エレメントの壁部の中に埋め込まれている、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項8】
センサエレメント、刺激エレメント、吸引エレメント、散水エレメントからなる一群から選択された少なくとも1つのエレメントをさらに備えている、請求項1に記載の経腸的な給送装置。
【請求項9】
細長い柔軟な中空エレメントを備えた経腸的な給送装置であって、
中空エレメントは、
a)少なくとも1つの給送孔と、拡張可能手段とを有する遠位部分と、
b)中央部分と、
c)食物コネクタ、膨張機構、少なくとも1つの解放バルブ、および少なくとも1つの圧力センサを有する近位部分と、を備え、
膨張機構、解放バルブおよび圧力センサは、流動物搬送チャネルを介して拡張可能手段に流体接続されており、
食物コネクタは、食物搬送チャネルを介して給送孔に流体接続されている、経腸的な給送装置。
【請求項10】
対象者の食道の中への流動物の動きを制御するシステムであって、
前記システムは、
a)請求項1に記載の経腸的な給送装置と、
b)制御および監視ユニットと、
c)給送ポンプを有する給送ユニットと、
d)プロセッサ、メモリ、入力デバイス、ディスプレイおよび専用ソフトウェアを有する処理ユニットと、を備え、
前記処理ユニットは、単一エレメントまたは複数の独立したエレメントとして設けられている、システム。
【請求項11】
前記制御および監視ユニットは、加圧された流動物を提供するよう適合された第1流体システムと、真空空間を提供するよう適合された第2流体ユニットと、電気式および/または空気圧バルブ一式と、圧力センサ一式と、を備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御および監視ユニットは、センサ、バイオセンサ、吸引システムおよび散水システムからなる一群から選択される1つまたは2つ以上の構成要素を備えている、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
経腸給送される患者における、消化管からの誤嚥を低減するための方法であって、
前記方法は、
a)請求項10に記載のシステムを提供する工程と、
b)患者の食道の前記システムに設けられる経腸的な給送装置を位置決めする工程と、
c)栄養液を前記患者に給送する工程と、
d)前記給送装置の拡張可能手段に対する蠕動波を模擬し、これによって、胃腸の流動物を胃に戻すよう押し込み、そして、中咽頭の流動物の通過を可能にする工程と、を備えた方法。
【請求項14】
システムにより模擬される前記蠕動波が、食道の自然な蠕動運動に同期される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
嘔吐事象の間に経腸給送される患者の中咽頭に到達する胃腸の流動物の量を低減するための方法であって、
前記方法は、
a)請求項10に記載のシステムを提供する工程と、
b)前記患者の食道の前記システムに設けられる経腸的な給送装置を位置決めする工程と、
c)栄養液を前記患者に給送する工程と、
d)食道への胃腸の流動物の量が上昇しているかどうかを決定する工程と、
e)任意ではあるが、前記経腸的な給送装置の全ての拡張可能手段を膨張させ、これによって、前記患者の食道を封止し、胃腸の流動物を胃に方向転換させる工程と、を備えた方法。
【請求項16】
患者の食道において、請求項1に記載の経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、
前記方法は、
a)拡張可能手段の各々の内側において流動物の圧力を個々に測定するための手段を提供する工程と、
b)前記給送装置の全ての拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
c)前記位置決めマーカーが前記患者の口または鼻に到達するまで、前記患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ前記装置を挿入する工程と、
d)前記拡張可能手段の1つを膨張させる工程と、
e)前記圧力測定手段が、前記膨張させられている拡張可能手段の内側の圧力が所定の閾値よりも上まで上昇したことを示すまで、前記給送装置をゆっくりと引き戻す工程と、
f)拡張可能手段を収縮させる工程と、
g)任意ではあるが、給送装置を所定の距離だけゆっくりとさらに引き戻す工程と、を備えた方法。
【請求項17】
患者の食道において、請求項7に記載の経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、
前記方法は、
a)前記装置の全ての拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
b)X線画像化システムを提供する工程と、
c)前記患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ前記装置を挿入する工程と、
d)前記患者の食道において、前記放射線不透過性マーカーの位置を監視するためにX線画像化システムを用いる工程と、
e)前記放射線不透過性マーカーが、中央部分における近位の拡張可能手段が竜骨の下方約5cmに配置されているということを示すまで、患者の食道において前記装置を動かす工程と、を備えた方法。
【請求項18】
患者の食道において、請求項9に記載の経腸的な給送装置を位置決めする方法であって、
前記方法は、
a)前記装置の拡張可能手段が収縮されていることを決定する工程と、
b)前記患者の鼻または口の経路を介して患者の食道の中へ装置を挿入する工程と、
c)前記膨張機構を作動させることによって前記拡張可能手段を膨張させる工程と、
d)前記圧力センサが、前記拡張可能手段の内側の圧力が所定の閾値よりも上まで上昇したことを示すまで、給送装置をゆっくりと引き戻す工程と、
e)解放バルブを介して前記拡張可能手段を収縮させる工程と、を備えた方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−529766(P2011−529766A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521683(P2011−521683)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000745
【国際公開番号】WO2010/016054
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(511030862)ランガード、リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】LUNGUARD LTD.
【Fターム(参考)】