鼻腔拡張用補助具
【課題】術者や被検者に負担を強いることなく、確実に鼻腔内に薬剤を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔内を拡張させることのできる鼻腔拡張用補助具を提供する。
【解決手段】鼻腔内に挿入して鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具100であって、棒状の芯体1と、芯体1の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、第一のバルーン部材の外側に設けられ第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材15とを備えた。鼻腔拡張用補助具100は、流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される第二のバルーン部材15表面に薬剤を滲出させる機能を有する。
【解決手段】鼻腔内に挿入して鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具100であって、棒状の芯体1と、芯体1の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、第一のバルーン部材の外側に設けられ第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材15とを備えた。鼻腔拡張用補助具100は、流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される第二のバルーン部材15表面に薬剤を滲出させる機能を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内を拡張する鼻腔拡張用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
上部消化管の内視鏡は、口腔を通じて内視鏡挿入部を体腔内に挿入する経口挿入を行うものが一般的に用いられている。しかし、内視鏡挿入部が咽喉を通過する際に、舌根に内視鏡挿入部が触れることによる咽喉反射あるいは嘔吐反応が生じ、不快感を伴うものになる。そして、被検者はマウスピースを口に装着した状態で内視鏡挿入部を挿入するため、術者との会話が困難となる。
【0003】
そこで近年においては、内視鏡挿入部の細径化が図られ、内視鏡の挿入経路として前述した口腔のみならず、経鼻的に挿入する方式が採用されている。内視鏡挿入部を鼻腔から挿入すると、嘔吐感を生じることが少なく、被検者の負担を軽減できる。また、術者との会話や呼吸が楽に行える利点から、今後は経鼻挿入式の内視鏡検査が増大することが予想される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、内視鏡挿入部を鼻腔内に挿入する際に、この挿入部が異物として作用して敏感な鼻腔粘膜を刺激することになり、被検者に負担を与えることがある。そこで、挿入部を挿入する前の段階で、鼻腔内の挿入経路のうち、特に最も狭い個所、つまり中鼻道(または下鼻道)を経て後鼻孔に至る経路を拡張させ、さらに刺激に対する感度を低下させる処置を施している。この処置では、例えば、複数の異なる径を有する可撓性チューブを、径の小さいものから大きいものを順に麻酔薬や血管収縮剤を含ませながら鼻腔内に挿入し、鼻腔内を徐々に拡張させている。
【0005】
ところが、このような方式は手間がかかり、術者や被検者への負担が増える要因になっている。また、鼻腔に挿入する可撓性チューブは、麻酔薬や血管収縮剤を鼻腔内に行き渡らせるために回動しながら挿入する等の操作が面倒なもので、しかも、鼻腔内の狭い部分に薬剤が塗れなかったり、狙った箇所以外にも麻酔薬や血管収縮剤が及ぶことがある。
【特許文献1】特開2006−326063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、術者や被検者に負担を強いることなく、確実に鼻腔内に薬剤を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔内を拡張させることのできる鼻腔拡張用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記構成を有する。
鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鼻腔拡張用補助具によれば、術者や被検者に負担を強いることなく、確実に鼻腔内に薬剤を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔内を拡張できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、鼻腔拡張用補助具について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明する鼻腔拡張用補助具の全体構成図である。
鼻腔拡張用補助具100は、鼻腔内に挿入して鼻腔を拡げる用途に供せられる。内視鏡を挿入する鼻腔内の狭い部分の拡張、鼻腔内の狭い部分への薬剤塗布、狭い部分以外への薬剤塗布を、拡径可能な二重バルーンを備えることで実現している。なお、本明細書中、「拡径」とは補助具が膨らむことを意味し、「拡張」とは鼻腔が拡がることを意味する。
【0010】
鼻腔拡張用補助具100は、シリコン、ラテックス、ポリエチレン等の軟性弾性体からなる棒状の芯体1を有する。芯体1の一端(基端)にはコネクタ部3が連設され、コネクタ部3はエア供給ポンプ5からの接続チューブ7が着脱自在な接続部9を備える。エア供給ポンプ5は、例えば弾性材料からなる袋体部を把持することにより、内部空気を接続チューブ7へ圧送する取扱いが容易な簡素なポンプであってもよく、その他にシリンジ等を用いたポンプであってもよい。
【0011】
鼻腔拡張用補助具100は、空気などの気体を注入流体として用いることで、処置室等の環境内雰囲気が簡便に利用でき、また、鼻腔内壁からの反力を受けての圧縮をソフトに行うことが可能となり、鼻腔拡張時の痛みがより生じ難くなる。なお、気体の種類としては空気に限ることなく、医療施設で準備可能で人体に害とならない気体であれば使用可能である。
【0012】
また、簡素なポンプ以外にも、電動式のエア供給ポンプ5を使用してもよい。その場合は、エア供給ポンプ5による拡径で過剰にバルーンが膨張しないように、所定の一定圧で開放される安全弁やバルーンの一定以上の拡径を規制する拘束部材等を設けることが好ましい。
【0013】
さらに、注入流体としては、空気等の気体の他、生理食塩水や油などの適宜な液体を用いることもできる。液体は圧力によって殆ど収縮しないことから、鼻腔拡張動作の圧力制御をより正確に行える。
【0014】
図2は図1のA−A断面図である。
芯体1には、外周を覆って設けられ内部に上記エア供給ポンプ5から送気される空気を供給することで、所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材(以下、「拡張用バルーン」と称す)13が設けられる。拡張用バルーン13の外側には、鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材(以下、「薬剤供給用バルーン」と称す)15が設けられる。
【0015】
拡張用バルーン13は、挿入側の先端が閉じられたチューブ状であり、芯体1に外挿されて、基端が芯体1の外周に密着して塞がれる。薬剤供給用バルーン15は、挿入側の先端が閉じられ、拡張用バルーン13に外挿されて、基端が拡張用バルーン13の基端若しくは芯体1に直接密着して塞がれる。したがって、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間には間隙が形成されて、二重バルーン構造を形成する。これら、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15は、シリコン、ラテックス、ポリエチレン等の軟性弾性体を用いて形成され、薬剤供給用バルーン15は、拡張用バルーン13より軟質な材料で形成される。
【0016】
拡張用バルーン13は、軟性弾性体であるが、拡径後に軸線に沿って径を一定に保持できる程度の硬さを有している。これは、柔らかすぎると局所的に膨らんで、全体として内視鏡が挿通できる程の鼻腔拡張がなされないためである。薬剤供給用バルーン15は、使用前の初期状態では、例えば外径φ3mm程度であり、拡径状態で外径φ6mm程度となる。これにより、内視鏡に対する鼻腔拡張の前処置が可能となる。
【0017】
本構成では、鼻腔拡張用補助具100を軸線まわりに回動させることなく挿入できるもので、簡単に鼻腔への装着が可能となる。しかも、差し替えする必要もなく、一旦挿入したら、挿入したままの状態で鼻腔を拡張できる。
【0018】
薬剤は、基本的に薬剤供給用バルーン15の外周に予め塗布しておくことができるが、バルーンが膨らんで自動的に滲出するようにしてもよい。すなわち、この鼻腔拡張用補助具100は、エアの供給により拡張用バルーン13を拡径する際に、拡張用バルーン13の拡径に伴い伸張される薬剤供給用バルーン15の表面に薬剤を滲出させる機能を有する。鼻腔内を拡張させる拡張用バルーン13の拡張動作と同時に、薬剤供給用バルーン15の表面から薬剤を滲み出させる構成とすることで、薬剤供給のための操作を省力化でき、迅速な前処置が可能となる。
【0019】
ここで、薬剤を滲み出させる構成について説明する。
図2に示すように、芯体1の外周には、内側の拡張用バルーン13と外側の薬剤供給用バルーン15が配置される。拡張用バルーン13は、鼻腔拡張用であり軸方向に沿って所定の均一径に拡がるように、厚めのゴム材料等からなる。薬剤供給用バルーン15は、鼻腔内への薬剤塗布用であり、使用前の状態では外周面を折り畳んで襞17を形成している。折り畳まれた襞17の裏側には薬剤(麻酔薬)21が充填されている。つまり、薬剤21は、折り畳まれた襞17に覆われており、襞17に覆われた薬剤21は、薬剤供給用バルーン15の伸張時に、襞17が伸ばされることで、襞17の隙間から表出する。また、薬剤供給用バルーン15の外表面19には、血管収縮剤や潤滑剤等の薬剤(図示せず)が塗布される。潤滑剤は薬剤供給用バルーン15にコーティングされるものであってもよく、例えばポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、シリコン樹脂等が用いられる。
【0020】
上記のように、拡径時に必要となる薬剤供給用バルーン15の円周長は、円周方向に上層、下層に重なり合って折り畳まれた襞17となり、その結果、拡張前に小径での薬剤供給用バルーン15の収納が可能となっている。また、襞17の下層と隣接する襞17の上層との間に薬剤充填空間が確保でき、かつその薬剤充填空間を、薬剤供給用バルーン15の所望部位での拡径によって容易に開放させ、薬剤21を目的部位のみに確実に塗布できるようになっている。襞17については、一度伸びたら戻らない構造が好ましく、例えばプリーツ(pleat)構造がよい。プリーツ構造であれば、挿入時には径が小さく、かつ邪魔にならない構成にできる。なお、襞17は、折り畳まれた状態でゼラチン等により固着させておくことが好ましく、その場合には、鼻腔内への挿入時に襞17が不意に開くことなく、挿入後に体液や呼気に含まれる水蒸気により緩み、伸ばされることになる。
【0021】
薬剤21は、麻酔薬、血管収縮剤の少なくともいずれかを含む。麻酔薬としては、例えばキシロカイン等を用いることができる。麻酔薬血管収縮剤としては、例えば、0.025〜0.5%のフェニレフリン、または塩酸オキシメタゾリン(ネオシネフリンまたはアフリン)を用いることができる。麻酔薬が塗布されると、敏感な鼻腔粘膜で生じやすい痛みが緩和される。血管収縮剤が塗布されると、血管収縮により鼻腔内を拡張でき、また、出血を抑えることができる。
【0022】
図3は芯体基端に設けられたコネクタ部の拡大断面図である。
芯体1には、エア流路23が形成され、接続チューブ7との間のコネクタ部3に逆止弁25が設けられている。逆止弁25は、芯体1内のエア流路23からの逆流を阻止する。エア流路23は、拡張用バルーン13と芯体1との固定部27の近傍で、芯体1と拡張用バルーン13の間に開口する。また、エア流路23には細径取り出し流路29が分岐され、細径取り出し流路29は拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の固定部31の近傍で、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間にエア取り出し流路35を通じて開口する。また、エア流路23の基端は、コネクタ部3の後端面で開口し、その後端面に貼着されるシール33にて塞がれている。
【0023】
エア供給ポンプ5(図1参照)からのエアは、エア流路23に接続され芯体1の側面を貫通するエア取り出し流路35を通じて拡張用バルーン13と芯体1との間の空間37に供給される。また、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間の空間39にもその一部が細径取り出し流路29を通じて供給される。なお、鼻腔拡張用補助具100の抜き取り時には、エア供給ポンプ5を停止し、またはエア供給ポンプ5との接続を断ち、例えばシール33を剥がしたり、破ったりすることでエア流路23を大気解放し、バルーンを縮径する。
【0024】
図4(a)は拡径前の鼻腔拡張用補助具の斜視図、(b)は拡径後の鼻腔拡張用補助具の斜視図である。
鼻腔拡張用補助具100は、エア供給前の初期の状態では、図4(a)に示すように、拡張用バルーン部材13および薬剤供給用バルーン部材15が共に萎んだ縮径状態となっている。このときの薬剤供給用バルーン部材15の最外径dは3mm程度(例えば2mm〜4mm)とされ、人体の鼻腔孔より小径となっている。鼻腔には、入口部に相当し比較的通路径の狭い狭孔部と、比較的通路径の広い広孔部とが存在し、外鼻孔は狭孔部、広孔部、咽頭部を介して上部消化管へ通じている。この3mm程度に縮径された鼻腔拡張用補助具100は、上記狭孔部に対しても円滑に挿入することができる。そして、鼻腔拡張用補助具100の体腔内への挿入後、拡張用バルーン部材13および薬剤供給用バルーン部材15にエアが供給されると、外側に配置された薬剤供給用バルーン15の外径Dが非挿入状態で所定の一定の太さに拡径され、図4(b)に示すように襞17が消失するか、あるいは襞17の折り畳まれた量が減少する。なお、図4(b)は鼻腔へ挿入していないときの拡径状況を示している。また、拡径時における拡張用バルーン部材13は、6mm程度(例えば4mm〜8mm)の太さに拡径される。
ここで、拡径時における拡張用バルーン13の外径は、4mmより小さい場合は、拡張用バルーン13による拡径量が増加させる必要があり、十分な鼻腔拡張が行えない場合が生じる。また、8mmを超える場合は、内径サイズに個人差がある人体の鼻腔に対して鼻腔拡張用補助具100を汎用的に使用することができない。
上記の通り、薬剤供給用バルーン15の最外径は、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15の非拡径時には人体の鼻腔孔より小径にされ、双方の拡径時には体腔内への非挿入状態で、拡張用バルーン13が人体の鼻腔孔よりも大きく拡径される。そして、拡径時の拡張用バルーン13の最外径は、体腔内への非挿入状態で非拡径時の最外径の少なくとも2倍にまで拡径可能となっており、鼻腔を押し広げての鼻腔拡張を確実に行える。
【0025】
図5(a)は鼻腔内に挿入された鼻腔拡張用補助具の拡径前の状況を表す断面図、(b)は拡径後の薬剤塗布状況を表す断面図である。
鼻腔拡張用補助具100は、図5(a)に示すように、縮径状態で鼻腔41の狭孔部43に挿入される。この挿入状態で拡径することにより、最初に、鼻腔に拡張用バルーン13が強く押し当てられ、狭孔部43が外側へ押し拡げられる。そして、柔軟性を有する薬剤供給用バルーン15が複雑な内部空間を有する鼻腔41内の隅々45,47にまで拡がり、薬剤を広い範囲に塗布する。すなわち、拡張用バルーン13の強い腰で押し拡げるとともに、薬剤供給用バルーン15の柔軟な膜の広がりにより薬剤の塗布を広範に行う。
【0026】
次に、薬剤を微小襞に保持させる変形例を説明する。
図6(a)は微少襞に薬剤を保持させた薬剤供給用バルーンの要部拡大断面図、(b)はその拡径時の要部拡大断面図である。
鼻腔拡張用補助具は、前述の薬剤供給用バルーン15の表面に薬剤(血管収縮剤や潤滑剤)21を塗布するが、これら薬剤21は外周面に塗布する以外にも、例えば、図6(a)に示すように、薬剤供給用バルーン15の表面に蛇腹状の微小な襞(凹凸)49を多数形成して、この凹凸49間に薬剤21を充填しておくことでもよい。図6(b)に示すように、薬剤供給用バルーン15が拡径し、凹凸49が拡がると、薬剤21が表出することとなる。このような微少な凹凸49は、上記の襞17に代えて設けてもよく、襞17と併設してもよい。襞17と凹凸49を併設する構成では、襞17同士の間に充填する薬剤21と、凹凸49に充填する薬剤21を異種のものにすることができる。
【0027】
次に、薬剤の充填構造の他の例を説明する。
図7は鼻腔拡張用補助具の他の構成例を表す拡大断面図である。なお、図3に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
この鼻腔拡張用補助具200の構成における薬剤21は、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に充填されている。拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15は、前述のように独立して拡径するものとは異なり、双方が一体的に拡径する。本構成では、拡張用バルーン13と芯体1との間にエア供給して固定部27,31より先端側のバルーンを膨らますと、拡張用バルーン13が軸方向に沿って所定の一定径に拡径され、充填薬剤21を介して薬剤供給用バルーン15も伸張される。エアは、逆止弁25にて逆流が阻止されるので、しぼみが防止され、膨らんだ状態に維持される。この状態で、密閉空間内の充填薬剤21に所定の圧力が加えられることになる。
【0028】
ここで、図8(a)に図7のB−B断面の拡径前の断面図、(b)にその拡径後の断面図を示した。
拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に薬剤21を充填した上記構成においては、薬剤供給用バルーン15に、表裏を貫通する多数の微細孔51を有する。微細孔51は、図8(a)に示すバルーンの非拡張時には閉鎖され、薬剤充填空間を密閉状態とする。つまり、薬剤21を漏洩させない保持が可能となる。一方、拡張用バルーン13の伸張に伴って薬剤供給用バルーン15が伸張すると、図8(b)に示すように、微細孔51が開口して表裏を連通し、薬剤21が薬剤供給用バルーン15の表面に滲出する。なお、縮退時には再び微細孔51が閉塞して表裏の連通を遮断する。
【0029】
このように、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に薬剤21を充填し、薬剤供給用バルーン15に微細孔51を設けた構成によれば、薬剤供給用バルーン15が拡径されると、微細孔51が開いて内部の薬剤21が薬剤供給用バルーン15の表面に滲み出し、接触した鼻腔41内への塗布が可能となる。一方、鼻腔拡張用補助具100の引き抜き時には、微細孔51が閉じられ、残余の薬剤21が流出しなくなり、薬剤21の過剰塗布が防止される。
【0030】
次に、上記構成の鼻腔拡張用補助具の変形例を説明する。
図9は薬剤の後注入を可能とした鼻腔拡張用補助具の要部断面図である。なお、図3に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
この鼻腔拡張用補助具300は、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間の空間に接続される薬剤注入口53を有し、この薬剤注入口53から薬剤21を追加供給する薬剤供給手段であるシリンジ55を備えている。
【0031】
薬剤21は、鼻腔拡張用補助具300の挿入時に必要な他、鼻腔41が拡張するまで時間のかかる場合に、挿入後、所定時間後に追加注入が必要となる場合がある。この構成例は、エア供給により拡径した状態で、薬剤21の追加供給を可能にしたものである。拡張用バルーン13の外側で、薬剤供給用バルーン15の内側の空間に薬剤供給チューブ57を薬剤注入口53を介して接続し、その空間に薬剤21を追加供給する。
【0032】
シリンジ55には薬剤21を貯留しておき、必要なタイミングで薬剤21を鼻腔拡張用補助具300に必要な量だけ送液して鼻腔内へ供給する。これにより、鼻腔内への薬剤21の供給が不足した場合に、薬剤21を追加供給することができる。また、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に予め装填された薬剤とは異なる他種類の薬剤21(混合可能な薬剤)を、必要なタイミングで追加供給することもできる。例えば、最初に拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に血管収縮剤を充填しておき、鼻腔挿入後にこの血管収縮剤を滲出させ、その後に麻酔薬を追加供給することでもよい。
【0033】
この構成によれば、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に充填された薬剤21が塗布により減少したとき、シリンジ55から薬剤注入口53へ薬剤21を必要に応じて追加補給させることができる。
【0034】
次に、異種の薬剤を選択的に供給可能にした構成を説明する。
図10(a)は薬剤の2系統注入を可能とする構成例の断面図、(b)はその側面図である。
この鼻腔拡張用補助具400は、前述の鼻腔拡張用補助具300の薬剤注入経路をさらに1系統増やした構成としている。つまり、異なる薬剤を異なる場所から注入可能な構成としている。図10(a)に示すように、薬剤供給用バルーン15を、直径方向の両端部で拡張用バルーン13に接着する接合部59,59を、芯体1の軸線方向に沿って形成する。これにより、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間の空間を第一の空間61と第二の空間63に二分割することができる。薬剤供給用バルーン15にはそれぞれの空間61,63に連通する薬剤注入口53,53を設ける。
【0035】
このような分離構造とすることで、シリンジ等からの薬剤供給チューブ57を介して、異なる種類の薬剤21を任意のタイミングで鼻腔内へ供給することができ、例えば最初に装填された薬剤21が不足する場合に、追加して供給することが簡単に行え、しかも選択的に薬剤21を供給できる。なお、図10には2系統の例を示したが、これに限らず、任意の複数系統に構成してもよい。
【0036】
次に、鼻腔拡径用の拡径ポケットを複数備えた鼻腔拡張用補助具の構成を説明する。
図11は鼻腔拡張用補助具に複数のエア供給ポンプを接続した例を示す構成図である。
鼻腔拡張用補助具500は、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15と、芯体1とを、芯体1の軸線方向に沿った複数ラインの接合部59にて接合して芯体1の周方向に複数の拡径ポケット65を画成している。この構成では、複数の拡径ポケット65の少なくともいずれかに対して、前述の拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に充填する薬剤種類を、他の拡径ポケット65と異ならせることができる。
【0037】
そして、各拡径ポケット65がそれぞれ個別に膨らむように構成する。例えば、エア供給ポンプ5を複数(図例では2つ)設けて、複数の拡径ポケット65がそれぞれ個別に膨らむようにする。勿論、1つのエア供給ポンプ5を分流させてもよい。例えば、円周方向に8つに分割した8つの拡径ポケット65を設け、交互に位置する4つずつ2グループの拡径ポケット65群に、1つのエア供給ポンプ5をそれぞれに接続した2系統とすることができる。円周方向に6つの拡径ポケット65を設け、交互に位置する3つずつ2グループの拡径ポケット65群に、1つのエア供給ポンプ5をそれぞれに接続した2系統であってもよい。
【0038】
図12は図11に示す各拡径ポケットが膨らんだ状態を表す斜視図である。
複数の拡径ポケット65を有する構成では、各エア供給ポンプ5からエアが供給され、それぞれの拡径ポケット65がストライプ状に膨らみ、薬剤供給用バルーン15が周方向にわたって略均等な外径となって拡径される。円周方向に配置された複数の拡径ポケット65に異なる薬剤21が充填されれば、所望の拡径ポケット65を選択的に拡径することにより、所望の薬剤21のみを鼻腔41の拡張と同時に塗布することができる。薬剤供給用バルーン15を周方向に分割することによる鼻腔拡張作用への影響は、円周方向の分割数を増やせば少なくすることができる。
【0039】
ここで、拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造の一例について説明する。
図13は拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造を表したコネクタ部近傍の拡大断面図である。
同図に示すように、8つの拡径ポケット(65Aのみ図示)を、4つずつ2グループの拡径ポケット群に分けて2系統とする場合、芯体1には、軸線に沿う方向に2つのエア流路23A,23Bを形成する。これらエア流路23A,23Bのうち一方を1グループの拡径ポケット65A群に連通し、他方を2グループの拡径ポケット65B群に連通する。
【0040】
図14(a)は図13のC−C断面図、(b)は図13のD−D断面図である。
8つの拡径ポケットを、4つずつ2グループの拡径ポケット群に分けて2系統とする場合、芯体1には、図14(a)に示すように、エア流路23Aに連通する直径方向十字状のエア取り出し流路35Aと、図14(b)に示すように、エア流路23Bに連通する直径方向十字状のエア取り出し流路35Bを形成する。エア取り出し流路35Aの4つの開口は、1グループの拡径ポケット65A群に連通させる。エア取り出し流路35Bの4つの開口は、2グループの拡径ポケット65B群に連通させる。これのように十字状のエア取り出し流路35A,35Bにてエア流路23を分配することで経路を簡単に形成できる。
【0041】
次に、各拡径ポケットを独立して膨らませることで、薬剤を順次鼻腔内に供給する手順の一例を説明する。ここでは、円周方向に6つの拡径ポケットを設け、交互に位置する3つずつ2グループの拡径ポケット群に、1つのエア供給ポンプをそれぞれに接続した2系統の構成例を用いて説明する。
図15(a)は血管収縮剤が装填された拡径ポケットを拡径した断面図、(b)は麻酔薬が装填された拡径ポケットを拡径した断面図である。
2系統の拡径ポケット65(1グループの拡径ポケット65A群、2グループの拡径ポケット65B群)を有する鼻腔拡張用補助具500Aにてバルーンを拡径するには、図15(a)に示すように、例えば血管収縮剤である薬剤21が装填された1グループの拡径ポケット65A群に対してエア供給を行い、拡径ポケット65A群から血管収縮剤を鼻腔41内に先に供給する。
【0042】
この状態で、2グループの拡径ポケット65B群は縮径したままで維持され、充填された薬剤21も保持されたままとなる。拡径ポケット65A群に充填した薬剤21の塗布が終了したなら、次いで、図15(b)に示すように、2グループの拡径ポケット65B群を膨らます。これにより、拡径ポケット65A群から麻酔剤を鼻腔41内に供給する。このように複数種の薬剤21を順次、任意のタイミングで供給できる。
【0043】
したがって、上記の鼻腔拡張用補助具100,200,300,400,500,500Aによれば、術者や被検者に負担を強いることなく、鼻腔41内に薬剤21を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔41内を拡張させることができる。
【0044】
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーンにより鼻腔内が拡張され、さらに第二のバルーンにより薬剤が鼻腔内の広範囲に塗布される。
【0045】
(2) (1)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、該第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される前記第二のバルーン部材表面に薬剤を滲出させる機能を有する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材が伸張されることで、第二のバルーン部材表面に薬剤が滲出して鼻腔内に塗布される。
【0046】
(3) (2)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に薬剤が充填され、
前記第二のバルーン部材が、表裏を貫通する多数の微細孔を有し、該第一のバルーン部材の伸張時には前記微細孔が開口して表裏を連通して前記薬剤を滲出させ、縮退時には前記微細孔が閉塞して表裏の連通を遮断する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材に多数の微細孔が形成されることで、第二のバルーン部材の伸張時に、この微細孔を通じて薬剤を滲出させることができ、縮退時には薬剤の滲出させない構造にできる。
【0047】
(4) (2)または(3)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と、前記第二のバルーン部材とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して前記芯体の周方向に複数の拡径ポケットを画成し、該複数の拡径ポケットの少なくともいずれかに対して、前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に充填する薬剤の種類を他の拡張ポケットと異ならせた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、複数の拡径ポケットを画成して、それぞれの拡径ポケットに異なる種類の薬剤を充填することで、複数種の薬剤を選択的に鼻腔内に塗布することが可能となる。
【0048】
(5) (4)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材と前記芯体とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して、前記複数の拡径ポケットを画成した鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、複数の拡径ポケットを選択的に拡径できるので、複数種の薬剤を任意のタイミングで鼻腔内に塗布することができる。
【0049】
(6) (2)〜(5)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間の空間に接続される薬剤注入口を有し、該薬剤注入口から前記薬剤を追加供給する薬剤供給手段を備えた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、薬剤を追加供給することにより、鼻腔内に必要な量を必要なときに塗布することが可能になる。
【0050】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第二のバルーン部材の外周面を折り畳んだ襞を形成し、隣接する前記襞同士の隙間に薬剤が塗布された鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、襞と襞との間に薬剤を塗布することで、拡径前の挿入時には薬剤が表出せず、挿入後の拡径時に初めて薬剤を表出させることができる。
【0051】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記薬剤が、麻酔薬、血管収縮剤のいずれかを含む鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、麻酔薬の塗布により感覚を鈍らせて被検者の負担を軽減でき、血管収縮剤の塗布により、鼻腔の拡張作用を増大できる。
【0052】
(9) (1)〜(8)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体が空気である鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーンを空気により拡径させることで、処置室等の環境内雰囲気で簡単に実施でき、しかも、気体であることにより圧縮が可能となり、鼻腔拡張をソフトに行うことができる。
【0053】
(10) (1)〜(9)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時には前記第二のバルーン部材の最外径が人体の鼻腔孔より小径であり、拡径時には前記第一のバルーン部材が体腔内への非挿入状態で人体の鼻腔孔よりも大きく拡径する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、拡径前の鼻腔拡張用補助具を鼻腔内に円滑に挿入でき、かつ拡径後に鼻腔を確実に拡張させることができる。
【0054】
(11) (10)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時において、前記第二のバルーン部材の最外径が2mm〜4mmにされた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材の最大径が鼻腔孔より小径の2mm〜4mmに形成されることで、人体の鼻腔拡張への利用に汎用性が維持されて、常に安定した鼻腔内への挿入が可能となる。
【0055】
(12) (10)または(11)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材の最外径が、体腔内への非挿入状態で前記非拡径時の最外径の少なくとも2倍に拡径可能な鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーン部材の最外径を、非拡径時の最外径のサイズから、少なくとも2倍にまで拡径させることができ、鼻腔孔を確実に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態を説明するための鼻腔拡張用補助具の全体構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】芯体基端に設けられたコネクタ部の拡大断面図である。
【図4】(a)は拡径前の鼻腔拡張用補助具の斜視図、(b)は拡径後の鼻腔拡張用補助具の斜視図である。
【図5】(a)は鼻腔内に挿入された鼻腔拡張用補助具の拡径前の状況を表す断面図、(b)は拡径後の薬剤塗布状況を表す断面図である。
【図6】(a)は微少襞に薬剤を保持させた薬剤供給用バルーンの要部拡大断面図、(b)はその拡径時の要部拡大断面図である。
【図7】鼻腔拡張用補助具の他の構成例を表す拡大断面図である。
【図8】(a)は図7のB−B断面の拡径前の断面図、(b)はその拡径後の断面図である。
【図9】薬剤の後注入を可能とした鼻腔拡張用補助具の要部断面図である。
【図10】(a)は薬剤の2系統注入を可能とする他の構成例の断面図、(b)はその側面図である。
【図11】鼻腔拡張用補助具に複数のエア供給ポンプを接続した例を示す構成図である。
【図12】図11に示す拡径ポケットが膨らんだ状態を表す斜視図である。
【図13】拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造を表したコネクタ部近傍の拡大断面図である。
【図14】(a)は図13のC−C断面図、(b)は図13のD−D断面図である。
【図15】(a)は血管収縮剤が装填された拡径ポケットを拡径した断面図、(b)は麻酔薬が装填された拡径ポケットを拡径した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 芯体
13 拡張用バルーン(第一のバルーン部材)
15 薬剤供給用バルーン(第二のバルーン部材)
17 襞
21 薬剤
41 鼻腔
51 微細孔
53 薬剤注入口
55 シリンジ(薬剤供給手段)
65 拡径ポケット
100、200,300,400,500,500A 鼻腔拡張用補助具
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻腔内を拡張する鼻腔拡張用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
上部消化管の内視鏡は、口腔を通じて内視鏡挿入部を体腔内に挿入する経口挿入を行うものが一般的に用いられている。しかし、内視鏡挿入部が咽喉を通過する際に、舌根に内視鏡挿入部が触れることによる咽喉反射あるいは嘔吐反応が生じ、不快感を伴うものになる。そして、被検者はマウスピースを口に装着した状態で内視鏡挿入部を挿入するため、術者との会話が困難となる。
【0003】
そこで近年においては、内視鏡挿入部の細径化が図られ、内視鏡の挿入経路として前述した口腔のみならず、経鼻的に挿入する方式が採用されている。内視鏡挿入部を鼻腔から挿入すると、嘔吐感を生じることが少なく、被検者の負担を軽減できる。また、術者との会話や呼吸が楽に行える利点から、今後は経鼻挿入式の内視鏡検査が増大することが予想される(例えば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、内視鏡挿入部を鼻腔内に挿入する際に、この挿入部が異物として作用して敏感な鼻腔粘膜を刺激することになり、被検者に負担を与えることがある。そこで、挿入部を挿入する前の段階で、鼻腔内の挿入経路のうち、特に最も狭い個所、つまり中鼻道(または下鼻道)を経て後鼻孔に至る経路を拡張させ、さらに刺激に対する感度を低下させる処置を施している。この処置では、例えば、複数の異なる径を有する可撓性チューブを、径の小さいものから大きいものを順に麻酔薬や血管収縮剤を含ませながら鼻腔内に挿入し、鼻腔内を徐々に拡張させている。
【0005】
ところが、このような方式は手間がかかり、術者や被検者への負担が増える要因になっている。また、鼻腔に挿入する可撓性チューブは、麻酔薬や血管収縮剤を鼻腔内に行き渡らせるために回動しながら挿入する等の操作が面倒なもので、しかも、鼻腔内の狭い部分に薬剤が塗れなかったり、狙った箇所以外にも麻酔薬や血管収縮剤が及ぶことがある。
【特許文献1】特開2006−326063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、術者や被検者に負担を強いることなく、確実に鼻腔内に薬剤を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔内を拡張させることのできる鼻腔拡張用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記構成を有する。
鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鼻腔拡張用補助具によれば、術者や被検者に負担を強いることなく、確実に鼻腔内に薬剤を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔内を拡張できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、鼻腔拡張用補助具について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明する鼻腔拡張用補助具の全体構成図である。
鼻腔拡張用補助具100は、鼻腔内に挿入して鼻腔を拡げる用途に供せられる。内視鏡を挿入する鼻腔内の狭い部分の拡張、鼻腔内の狭い部分への薬剤塗布、狭い部分以外への薬剤塗布を、拡径可能な二重バルーンを備えることで実現している。なお、本明細書中、「拡径」とは補助具が膨らむことを意味し、「拡張」とは鼻腔が拡がることを意味する。
【0010】
鼻腔拡張用補助具100は、シリコン、ラテックス、ポリエチレン等の軟性弾性体からなる棒状の芯体1を有する。芯体1の一端(基端)にはコネクタ部3が連設され、コネクタ部3はエア供給ポンプ5からの接続チューブ7が着脱自在な接続部9を備える。エア供給ポンプ5は、例えば弾性材料からなる袋体部を把持することにより、内部空気を接続チューブ7へ圧送する取扱いが容易な簡素なポンプであってもよく、その他にシリンジ等を用いたポンプであってもよい。
【0011】
鼻腔拡張用補助具100は、空気などの気体を注入流体として用いることで、処置室等の環境内雰囲気が簡便に利用でき、また、鼻腔内壁からの反力を受けての圧縮をソフトに行うことが可能となり、鼻腔拡張時の痛みがより生じ難くなる。なお、気体の種類としては空気に限ることなく、医療施設で準備可能で人体に害とならない気体であれば使用可能である。
【0012】
また、簡素なポンプ以外にも、電動式のエア供給ポンプ5を使用してもよい。その場合は、エア供給ポンプ5による拡径で過剰にバルーンが膨張しないように、所定の一定圧で開放される安全弁やバルーンの一定以上の拡径を規制する拘束部材等を設けることが好ましい。
【0013】
さらに、注入流体としては、空気等の気体の他、生理食塩水や油などの適宜な液体を用いることもできる。液体は圧力によって殆ど収縮しないことから、鼻腔拡張動作の圧力制御をより正確に行える。
【0014】
図2は図1のA−A断面図である。
芯体1には、外周を覆って設けられ内部に上記エア供給ポンプ5から送気される空気を供給することで、所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材(以下、「拡張用バルーン」と称す)13が設けられる。拡張用バルーン13の外側には、鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材(以下、「薬剤供給用バルーン」と称す)15が設けられる。
【0015】
拡張用バルーン13は、挿入側の先端が閉じられたチューブ状であり、芯体1に外挿されて、基端が芯体1の外周に密着して塞がれる。薬剤供給用バルーン15は、挿入側の先端が閉じられ、拡張用バルーン13に外挿されて、基端が拡張用バルーン13の基端若しくは芯体1に直接密着して塞がれる。したがって、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間には間隙が形成されて、二重バルーン構造を形成する。これら、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15は、シリコン、ラテックス、ポリエチレン等の軟性弾性体を用いて形成され、薬剤供給用バルーン15は、拡張用バルーン13より軟質な材料で形成される。
【0016】
拡張用バルーン13は、軟性弾性体であるが、拡径後に軸線に沿って径を一定に保持できる程度の硬さを有している。これは、柔らかすぎると局所的に膨らんで、全体として内視鏡が挿通できる程の鼻腔拡張がなされないためである。薬剤供給用バルーン15は、使用前の初期状態では、例えば外径φ3mm程度であり、拡径状態で外径φ6mm程度となる。これにより、内視鏡に対する鼻腔拡張の前処置が可能となる。
【0017】
本構成では、鼻腔拡張用補助具100を軸線まわりに回動させることなく挿入できるもので、簡単に鼻腔への装着が可能となる。しかも、差し替えする必要もなく、一旦挿入したら、挿入したままの状態で鼻腔を拡張できる。
【0018】
薬剤は、基本的に薬剤供給用バルーン15の外周に予め塗布しておくことができるが、バルーンが膨らんで自動的に滲出するようにしてもよい。すなわち、この鼻腔拡張用補助具100は、エアの供給により拡張用バルーン13を拡径する際に、拡張用バルーン13の拡径に伴い伸張される薬剤供給用バルーン15の表面に薬剤を滲出させる機能を有する。鼻腔内を拡張させる拡張用バルーン13の拡張動作と同時に、薬剤供給用バルーン15の表面から薬剤を滲み出させる構成とすることで、薬剤供給のための操作を省力化でき、迅速な前処置が可能となる。
【0019】
ここで、薬剤を滲み出させる構成について説明する。
図2に示すように、芯体1の外周には、内側の拡張用バルーン13と外側の薬剤供給用バルーン15が配置される。拡張用バルーン13は、鼻腔拡張用であり軸方向に沿って所定の均一径に拡がるように、厚めのゴム材料等からなる。薬剤供給用バルーン15は、鼻腔内への薬剤塗布用であり、使用前の状態では外周面を折り畳んで襞17を形成している。折り畳まれた襞17の裏側には薬剤(麻酔薬)21が充填されている。つまり、薬剤21は、折り畳まれた襞17に覆われており、襞17に覆われた薬剤21は、薬剤供給用バルーン15の伸張時に、襞17が伸ばされることで、襞17の隙間から表出する。また、薬剤供給用バルーン15の外表面19には、血管収縮剤や潤滑剤等の薬剤(図示せず)が塗布される。潤滑剤は薬剤供給用バルーン15にコーティングされるものであってもよく、例えばポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、シリコン樹脂等が用いられる。
【0020】
上記のように、拡径時に必要となる薬剤供給用バルーン15の円周長は、円周方向に上層、下層に重なり合って折り畳まれた襞17となり、その結果、拡張前に小径での薬剤供給用バルーン15の収納が可能となっている。また、襞17の下層と隣接する襞17の上層との間に薬剤充填空間が確保でき、かつその薬剤充填空間を、薬剤供給用バルーン15の所望部位での拡径によって容易に開放させ、薬剤21を目的部位のみに確実に塗布できるようになっている。襞17については、一度伸びたら戻らない構造が好ましく、例えばプリーツ(pleat)構造がよい。プリーツ構造であれば、挿入時には径が小さく、かつ邪魔にならない構成にできる。なお、襞17は、折り畳まれた状態でゼラチン等により固着させておくことが好ましく、その場合には、鼻腔内への挿入時に襞17が不意に開くことなく、挿入後に体液や呼気に含まれる水蒸気により緩み、伸ばされることになる。
【0021】
薬剤21は、麻酔薬、血管収縮剤の少なくともいずれかを含む。麻酔薬としては、例えばキシロカイン等を用いることができる。麻酔薬血管収縮剤としては、例えば、0.025〜0.5%のフェニレフリン、または塩酸オキシメタゾリン(ネオシネフリンまたはアフリン)を用いることができる。麻酔薬が塗布されると、敏感な鼻腔粘膜で生じやすい痛みが緩和される。血管収縮剤が塗布されると、血管収縮により鼻腔内を拡張でき、また、出血を抑えることができる。
【0022】
図3は芯体基端に設けられたコネクタ部の拡大断面図である。
芯体1には、エア流路23が形成され、接続チューブ7との間のコネクタ部3に逆止弁25が設けられている。逆止弁25は、芯体1内のエア流路23からの逆流を阻止する。エア流路23は、拡張用バルーン13と芯体1との固定部27の近傍で、芯体1と拡張用バルーン13の間に開口する。また、エア流路23には細径取り出し流路29が分岐され、細径取り出し流路29は拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の固定部31の近傍で、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間にエア取り出し流路35を通じて開口する。また、エア流路23の基端は、コネクタ部3の後端面で開口し、その後端面に貼着されるシール33にて塞がれている。
【0023】
エア供給ポンプ5(図1参照)からのエアは、エア流路23に接続され芯体1の側面を貫通するエア取り出し流路35を通じて拡張用バルーン13と芯体1との間の空間37に供給される。また、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間の空間39にもその一部が細径取り出し流路29を通じて供給される。なお、鼻腔拡張用補助具100の抜き取り時には、エア供給ポンプ5を停止し、またはエア供給ポンプ5との接続を断ち、例えばシール33を剥がしたり、破ったりすることでエア流路23を大気解放し、バルーンを縮径する。
【0024】
図4(a)は拡径前の鼻腔拡張用補助具の斜視図、(b)は拡径後の鼻腔拡張用補助具の斜視図である。
鼻腔拡張用補助具100は、エア供給前の初期の状態では、図4(a)に示すように、拡張用バルーン部材13および薬剤供給用バルーン部材15が共に萎んだ縮径状態となっている。このときの薬剤供給用バルーン部材15の最外径dは3mm程度(例えば2mm〜4mm)とされ、人体の鼻腔孔より小径となっている。鼻腔には、入口部に相当し比較的通路径の狭い狭孔部と、比較的通路径の広い広孔部とが存在し、外鼻孔は狭孔部、広孔部、咽頭部を介して上部消化管へ通じている。この3mm程度に縮径された鼻腔拡張用補助具100は、上記狭孔部に対しても円滑に挿入することができる。そして、鼻腔拡張用補助具100の体腔内への挿入後、拡張用バルーン部材13および薬剤供給用バルーン部材15にエアが供給されると、外側に配置された薬剤供給用バルーン15の外径Dが非挿入状態で所定の一定の太さに拡径され、図4(b)に示すように襞17が消失するか、あるいは襞17の折り畳まれた量が減少する。なお、図4(b)は鼻腔へ挿入していないときの拡径状況を示している。また、拡径時における拡張用バルーン部材13は、6mm程度(例えば4mm〜8mm)の太さに拡径される。
ここで、拡径時における拡張用バルーン13の外径は、4mmより小さい場合は、拡張用バルーン13による拡径量が増加させる必要があり、十分な鼻腔拡張が行えない場合が生じる。また、8mmを超える場合は、内径サイズに個人差がある人体の鼻腔に対して鼻腔拡張用補助具100を汎用的に使用することができない。
上記の通り、薬剤供給用バルーン15の最外径は、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15の非拡径時には人体の鼻腔孔より小径にされ、双方の拡径時には体腔内への非挿入状態で、拡張用バルーン13が人体の鼻腔孔よりも大きく拡径される。そして、拡径時の拡張用バルーン13の最外径は、体腔内への非挿入状態で非拡径時の最外径の少なくとも2倍にまで拡径可能となっており、鼻腔を押し広げての鼻腔拡張を確実に行える。
【0025】
図5(a)は鼻腔内に挿入された鼻腔拡張用補助具の拡径前の状況を表す断面図、(b)は拡径後の薬剤塗布状況を表す断面図である。
鼻腔拡張用補助具100は、図5(a)に示すように、縮径状態で鼻腔41の狭孔部43に挿入される。この挿入状態で拡径することにより、最初に、鼻腔に拡張用バルーン13が強く押し当てられ、狭孔部43が外側へ押し拡げられる。そして、柔軟性を有する薬剤供給用バルーン15が複雑な内部空間を有する鼻腔41内の隅々45,47にまで拡がり、薬剤を広い範囲に塗布する。すなわち、拡張用バルーン13の強い腰で押し拡げるとともに、薬剤供給用バルーン15の柔軟な膜の広がりにより薬剤の塗布を広範に行う。
【0026】
次に、薬剤を微小襞に保持させる変形例を説明する。
図6(a)は微少襞に薬剤を保持させた薬剤供給用バルーンの要部拡大断面図、(b)はその拡径時の要部拡大断面図である。
鼻腔拡張用補助具は、前述の薬剤供給用バルーン15の表面に薬剤(血管収縮剤や潤滑剤)21を塗布するが、これら薬剤21は外周面に塗布する以外にも、例えば、図6(a)に示すように、薬剤供給用バルーン15の表面に蛇腹状の微小な襞(凹凸)49を多数形成して、この凹凸49間に薬剤21を充填しておくことでもよい。図6(b)に示すように、薬剤供給用バルーン15が拡径し、凹凸49が拡がると、薬剤21が表出することとなる。このような微少な凹凸49は、上記の襞17に代えて設けてもよく、襞17と併設してもよい。襞17と凹凸49を併設する構成では、襞17同士の間に充填する薬剤21と、凹凸49に充填する薬剤21を異種のものにすることができる。
【0027】
次に、薬剤の充填構造の他の例を説明する。
図7は鼻腔拡張用補助具の他の構成例を表す拡大断面図である。なお、図3に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
この鼻腔拡張用補助具200の構成における薬剤21は、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に充填されている。拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15は、前述のように独立して拡径するものとは異なり、双方が一体的に拡径する。本構成では、拡張用バルーン13と芯体1との間にエア供給して固定部27,31より先端側のバルーンを膨らますと、拡張用バルーン13が軸方向に沿って所定の一定径に拡径され、充填薬剤21を介して薬剤供給用バルーン15も伸張される。エアは、逆止弁25にて逆流が阻止されるので、しぼみが防止され、膨らんだ状態に維持される。この状態で、密閉空間内の充填薬剤21に所定の圧力が加えられることになる。
【0028】
ここで、図8(a)に図7のB−B断面の拡径前の断面図、(b)にその拡径後の断面図を示した。
拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に薬剤21を充填した上記構成においては、薬剤供給用バルーン15に、表裏を貫通する多数の微細孔51を有する。微細孔51は、図8(a)に示すバルーンの非拡張時には閉鎖され、薬剤充填空間を密閉状態とする。つまり、薬剤21を漏洩させない保持が可能となる。一方、拡張用バルーン13の伸張に伴って薬剤供給用バルーン15が伸張すると、図8(b)に示すように、微細孔51が開口して表裏を連通し、薬剤21が薬剤供給用バルーン15の表面に滲出する。なお、縮退時には再び微細孔51が閉塞して表裏の連通を遮断する。
【0029】
このように、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に薬剤21を充填し、薬剤供給用バルーン15に微細孔51を設けた構成によれば、薬剤供給用バルーン15が拡径されると、微細孔51が開いて内部の薬剤21が薬剤供給用バルーン15の表面に滲み出し、接触した鼻腔41内への塗布が可能となる。一方、鼻腔拡張用補助具100の引き抜き時には、微細孔51が閉じられ、残余の薬剤21が流出しなくなり、薬剤21の過剰塗布が防止される。
【0030】
次に、上記構成の鼻腔拡張用補助具の変形例を説明する。
図9は薬剤の後注入を可能とした鼻腔拡張用補助具の要部断面図である。なお、図3に示した部材と同一の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
この鼻腔拡張用補助具300は、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間の空間に接続される薬剤注入口53を有し、この薬剤注入口53から薬剤21を追加供給する薬剤供給手段であるシリンジ55を備えている。
【0031】
薬剤21は、鼻腔拡張用補助具300の挿入時に必要な他、鼻腔41が拡張するまで時間のかかる場合に、挿入後、所定時間後に追加注入が必要となる場合がある。この構成例は、エア供給により拡径した状態で、薬剤21の追加供給を可能にしたものである。拡張用バルーン13の外側で、薬剤供給用バルーン15の内側の空間に薬剤供給チューブ57を薬剤注入口53を介して接続し、その空間に薬剤21を追加供給する。
【0032】
シリンジ55には薬剤21を貯留しておき、必要なタイミングで薬剤21を鼻腔拡張用補助具300に必要な量だけ送液して鼻腔内へ供給する。これにより、鼻腔内への薬剤21の供給が不足した場合に、薬剤21を追加供給することができる。また、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に予め装填された薬剤とは異なる他種類の薬剤21(混合可能な薬剤)を、必要なタイミングで追加供給することもできる。例えば、最初に拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に血管収縮剤を充填しておき、鼻腔挿入後にこの血管収縮剤を滲出させ、その後に麻酔薬を追加供給することでもよい。
【0033】
この構成によれば、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間に充填された薬剤21が塗布により減少したとき、シリンジ55から薬剤注入口53へ薬剤21を必要に応じて追加補給させることができる。
【0034】
次に、異種の薬剤を選択的に供給可能にした構成を説明する。
図10(a)は薬剤の2系統注入を可能とする構成例の断面図、(b)はその側面図である。
この鼻腔拡張用補助具400は、前述の鼻腔拡張用補助具300の薬剤注入経路をさらに1系統増やした構成としている。つまり、異なる薬剤を異なる場所から注入可能な構成としている。図10(a)に示すように、薬剤供給用バルーン15を、直径方向の両端部で拡張用バルーン13に接着する接合部59,59を、芯体1の軸線方向に沿って形成する。これにより、拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15との間の空間を第一の空間61と第二の空間63に二分割することができる。薬剤供給用バルーン15にはそれぞれの空間61,63に連通する薬剤注入口53,53を設ける。
【0035】
このような分離構造とすることで、シリンジ等からの薬剤供給チューブ57を介して、異なる種類の薬剤21を任意のタイミングで鼻腔内へ供給することができ、例えば最初に装填された薬剤21が不足する場合に、追加して供給することが簡単に行え、しかも選択的に薬剤21を供給できる。なお、図10には2系統の例を示したが、これに限らず、任意の複数系統に構成してもよい。
【0036】
次に、鼻腔拡径用の拡径ポケットを複数備えた鼻腔拡張用補助具の構成を説明する。
図11は鼻腔拡張用補助具に複数のエア供給ポンプを接続した例を示す構成図である。
鼻腔拡張用補助具500は、拡張用バルーン13および薬剤供給用バルーン15と、芯体1とを、芯体1の軸線方向に沿った複数ラインの接合部59にて接合して芯体1の周方向に複数の拡径ポケット65を画成している。この構成では、複数の拡径ポケット65の少なくともいずれかに対して、前述の拡張用バルーン13と薬剤供給用バルーン15の間に充填する薬剤種類を、他の拡径ポケット65と異ならせることができる。
【0037】
そして、各拡径ポケット65がそれぞれ個別に膨らむように構成する。例えば、エア供給ポンプ5を複数(図例では2つ)設けて、複数の拡径ポケット65がそれぞれ個別に膨らむようにする。勿論、1つのエア供給ポンプ5を分流させてもよい。例えば、円周方向に8つに分割した8つの拡径ポケット65を設け、交互に位置する4つずつ2グループの拡径ポケット65群に、1つのエア供給ポンプ5をそれぞれに接続した2系統とすることができる。円周方向に6つの拡径ポケット65を設け、交互に位置する3つずつ2グループの拡径ポケット65群に、1つのエア供給ポンプ5をそれぞれに接続した2系統であってもよい。
【0038】
図12は図11に示す各拡径ポケットが膨らんだ状態を表す斜視図である。
複数の拡径ポケット65を有する構成では、各エア供給ポンプ5からエアが供給され、それぞれの拡径ポケット65がストライプ状に膨らみ、薬剤供給用バルーン15が周方向にわたって略均等な外径となって拡径される。円周方向に配置された複数の拡径ポケット65に異なる薬剤21が充填されれば、所望の拡径ポケット65を選択的に拡径することにより、所望の薬剤21のみを鼻腔41の拡張と同時に塗布することができる。薬剤供給用バルーン15を周方向に分割することによる鼻腔拡張作用への影響は、円周方向の分割数を増やせば少なくすることができる。
【0039】
ここで、拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造の一例について説明する。
図13は拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造を表したコネクタ部近傍の拡大断面図である。
同図に示すように、8つの拡径ポケット(65Aのみ図示)を、4つずつ2グループの拡径ポケット群に分けて2系統とする場合、芯体1には、軸線に沿う方向に2つのエア流路23A,23Bを形成する。これらエア流路23A,23Bのうち一方を1グループの拡径ポケット65A群に連通し、他方を2グループの拡径ポケット65B群に連通する。
【0040】
図14(a)は図13のC−C断面図、(b)は図13のD−D断面図である。
8つの拡径ポケットを、4つずつ2グループの拡径ポケット群に分けて2系統とする場合、芯体1には、図14(a)に示すように、エア流路23Aに連通する直径方向十字状のエア取り出し流路35Aと、図14(b)に示すように、エア流路23Bに連通する直径方向十字状のエア取り出し流路35Bを形成する。エア取り出し流路35Aの4つの開口は、1グループの拡径ポケット65A群に連通させる。エア取り出し流路35Bの4つの開口は、2グループの拡径ポケット65B群に連通させる。これのように十字状のエア取り出し流路35A,35Bにてエア流路23を分配することで経路を簡単に形成できる。
【0041】
次に、各拡径ポケットを独立して膨らませることで、薬剤を順次鼻腔内に供給する手順の一例を説明する。ここでは、円周方向に6つの拡径ポケットを設け、交互に位置する3つずつ2グループの拡径ポケット群に、1つのエア供給ポンプをそれぞれに接続した2系統の構成例を用いて説明する。
図15(a)は血管収縮剤が装填された拡径ポケットを拡径した断面図、(b)は麻酔薬が装填された拡径ポケットを拡径した断面図である。
2系統の拡径ポケット65(1グループの拡径ポケット65A群、2グループの拡径ポケット65B群)を有する鼻腔拡張用補助具500Aにてバルーンを拡径するには、図15(a)に示すように、例えば血管収縮剤である薬剤21が装填された1グループの拡径ポケット65A群に対してエア供給を行い、拡径ポケット65A群から血管収縮剤を鼻腔41内に先に供給する。
【0042】
この状態で、2グループの拡径ポケット65B群は縮径したままで維持され、充填された薬剤21も保持されたままとなる。拡径ポケット65A群に充填した薬剤21の塗布が終了したなら、次いで、図15(b)に示すように、2グループの拡径ポケット65B群を膨らます。これにより、拡径ポケット65A群から麻酔剤を鼻腔41内に供給する。このように複数種の薬剤21を順次、任意のタイミングで供給できる。
【0043】
したがって、上記の鼻腔拡張用補助具100,200,300,400,500,500Aによれば、術者や被検者に負担を強いることなく、鼻腔41内に薬剤21を供給しつつ簡単にかつ迅速に鼻腔41内を拡張させることができる。
【0044】
以上説明したように、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーンにより鼻腔内が拡張され、さらに第二のバルーンにより薬剤が鼻腔内の広範囲に塗布される。
【0045】
(2) (1)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、該第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される前記第二のバルーン部材表面に薬剤を滲出させる機能を有する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材が伸張されることで、第二のバルーン部材表面に薬剤が滲出して鼻腔内に塗布される。
【0046】
(3) (2)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に薬剤が充填され、
前記第二のバルーン部材が、表裏を貫通する多数の微細孔を有し、該第一のバルーン部材の伸張時には前記微細孔が開口して表裏を連通して前記薬剤を滲出させ、縮退時には前記微細孔が閉塞して表裏の連通を遮断する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材に多数の微細孔が形成されることで、第二のバルーン部材の伸張時に、この微細孔を通じて薬剤を滲出させることができ、縮退時には薬剤の滲出させない構造にできる。
【0047】
(4) (2)または(3)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と、前記第二のバルーン部材とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して前記芯体の周方向に複数の拡径ポケットを画成し、該複数の拡径ポケットの少なくともいずれかに対して、前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に充填する薬剤の種類を他の拡張ポケットと異ならせた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、複数の拡径ポケットを画成して、それぞれの拡径ポケットに異なる種類の薬剤を充填することで、複数種の薬剤を選択的に鼻腔内に塗布することが可能となる。
【0048】
(5) (4)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材と前記芯体とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して、前記複数の拡径ポケットを画成した鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、複数の拡径ポケットを選択的に拡径できるので、複数種の薬剤を任意のタイミングで鼻腔内に塗布することができる。
【0049】
(6) (2)〜(5)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間の空間に接続される薬剤注入口を有し、該薬剤注入口から前記薬剤を追加供給する薬剤供給手段を備えた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、薬剤を追加供給することにより、鼻腔内に必要な量を必要なときに塗布することが可能になる。
【0050】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第二のバルーン部材の外周面を折り畳んだ襞を形成し、隣接する前記襞同士の隙間に薬剤が塗布された鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、襞と襞との間に薬剤を塗布することで、拡径前の挿入時には薬剤が表出せず、挿入後の拡径時に初めて薬剤を表出させることができる。
【0051】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記薬剤が、麻酔薬、血管収縮剤のいずれかを含む鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、麻酔薬の塗布により感覚を鈍らせて被検者の負担を軽減でき、血管収縮剤の塗布により、鼻腔の拡張作用を増大できる。
【0052】
(9) (1)〜(8)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体が空気である鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーンを空気により拡径させることで、処置室等の環境内雰囲気で簡単に実施でき、しかも、気体であることにより圧縮が可能となり、鼻腔拡張をソフトに行うことができる。
【0053】
(10) (1)〜(9)のいずれか1つの鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時には前記第二のバルーン部材の最外径が人体の鼻腔孔より小径であり、拡径時には前記第一のバルーン部材が体腔内への非挿入状態で人体の鼻腔孔よりも大きく拡径する鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、拡径前の鼻腔拡張用補助具を鼻腔内に円滑に挿入でき、かつ拡径後に鼻腔を確実に拡張させることができる。
【0054】
(11) (10)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時において、前記第二のバルーン部材の最外径が2mm〜4mmにされた鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第二のバルーン部材の最大径が鼻腔孔より小径の2mm〜4mmに形成されることで、人体の鼻腔拡張への利用に汎用性が維持されて、常に安定した鼻腔内への挿入が可能となる。
【0055】
(12) (10)または(11)の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材の最外径が、体腔内への非挿入状態で前記非拡径時の最外径の少なくとも2倍に拡径可能な鼻腔拡張用補助具。
この鼻腔拡張用補助具によれば、第一のバルーン部材の最外径を、非拡径時の最外径のサイズから、少なくとも2倍にまで拡径させることができ、鼻腔孔を確実に拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態を説明するための鼻腔拡張用補助具の全体構成図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】芯体基端に設けられたコネクタ部の拡大断面図である。
【図4】(a)は拡径前の鼻腔拡張用補助具の斜視図、(b)は拡径後の鼻腔拡張用補助具の斜視図である。
【図5】(a)は鼻腔内に挿入された鼻腔拡張用補助具の拡径前の状況を表す断面図、(b)は拡径後の薬剤塗布状況を表す断面図である。
【図6】(a)は微少襞に薬剤を保持させた薬剤供給用バルーンの要部拡大断面図、(b)はその拡径時の要部拡大断面図である。
【図7】鼻腔拡張用補助具の他の構成例を表す拡大断面図である。
【図8】(a)は図7のB−B断面の拡径前の断面図、(b)はその拡径後の断面図である。
【図9】薬剤の後注入を可能とした鼻腔拡張用補助具の要部断面図である。
【図10】(a)は薬剤の2系統注入を可能とする他の構成例の断面図、(b)はその側面図である。
【図11】鼻腔拡張用補助具に複数のエア供給ポンプを接続した例を示す構成図である。
【図12】図11に示す拡径ポケットが膨らんだ状態を表す斜視図である。
【図13】拡径ポケットを複数有する場合のエアの供給構造を表したコネクタ部近傍の拡大断面図である。
【図14】(a)は図13のC−C断面図、(b)は図13のD−D断面図である。
【図15】(a)は血管収縮剤が装填された拡径ポケットを拡径した断面図、(b)は麻酔薬が装填された拡径ポケットを拡径した断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 芯体
13 拡張用バルーン(第一のバルーン部材)
15 薬剤供給用バルーン(第二のバルーン部材)
17 襞
21 薬剤
41 鼻腔
51 微細孔
53 薬剤注入口
55 シリンジ(薬剤供給手段)
65 拡径ポケット
100、200,300,400,500,500A 鼻腔拡張用補助具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
【請求項2】
請求項1記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、該第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される前記第二のバルーン部材表面に薬剤を滲出させる機能を有する鼻腔拡張用補助具。
【請求項3】
請求項2記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に薬剤が充填され、
前記第二のバルーン部材が、表裏を貫通する多数の微細孔を有し、該第一のバルーン部材の伸張時には前記微細孔が開口して表裏を連通して前記薬剤を滲出させ、縮退時には前記微細孔が閉塞して表裏の連通を遮断する鼻腔拡張用補助具。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と、前記第二のバルーン部材とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して前記芯体の周方向に複数の拡径ポケットを画成し、該複数の拡径ポケットの少なくともいずれかに対して、前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に充填する薬剤の種類を他の拡張ポケットと異ならせた鼻腔拡張用補助具。
【請求項5】
請求項4記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材と前記芯体とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して、前記複数の拡径ポケットを画成した鼻腔拡張用補助具。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間の空間に接続される薬剤注入口を有し、該薬剤注入口から前記薬剤を追加供給する薬剤供給手段を備えた鼻腔拡張用補助具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第二のバルーン部材の外周面を折り畳んだ襞を形成し、隣接する前記襞同士の隙間に薬剤が塗布された鼻腔拡張用補助具。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記薬剤が、麻酔薬、血管収縮剤のいずれかを含む鼻腔拡張用補助具。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体が空気である鼻腔拡張用補助具。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時には前記第二のバルーン部材の最外径が人体の鼻腔孔より小径であり、拡径時には前記第一のバルーン部材が体腔内への非挿入状態で人体の鼻腔孔よりも大きく拡径する鼻腔拡張用補助具。
【請求項11】
請求項10記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時において、前記第二のバルーン部材の最外径が2mm〜4mmにされた鼻腔拡張用補助具。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材の最外径が、体腔内への非挿入状態で前記非拡径時の最外径の少なくとも2倍に拡径可能な鼻腔拡張用補助具。
【請求項1】
鼻腔内に挿入して該鼻腔を拡げる鼻腔拡張用補助具であって、
棒状の芯体と、
該芯体の外周を覆って設けられ内部に流体を供給することで所定の一定径に拡がる第一のバルーン部材と、
該第一のバルーン部材の外側に設けられ前記第一のバルーン部材より軟質な材料で形成されて前記鼻腔内に薬剤を塗布する第二のバルーン部材と、
を備えた鼻腔拡張用補助具。
【請求項2】
請求項1記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体の供給により第一のバルーン部材を拡径する際に、該第一のバルーン部材の拡径に伴い伸張される前記第二のバルーン部材表面に薬剤を滲出させる機能を有する鼻腔拡張用補助具。
【請求項3】
請求項2記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に薬剤が充填され、
前記第二のバルーン部材が、表裏を貫通する多数の微細孔を有し、該第一のバルーン部材の伸張時には前記微細孔が開口して表裏を連通して前記薬剤を滲出させ、縮退時には前記微細孔が閉塞して表裏の連通を遮断する鼻腔拡張用補助具。
【請求項4】
請求項2または請求項3記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と、前記第二のバルーン部材とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して前記芯体の周方向に複数の拡径ポケットを画成し、該複数の拡径ポケットの少なくともいずれかに対して、前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間に充填する薬剤の種類を他の拡張ポケットと異ならせた鼻腔拡張用補助具。
【請求項5】
請求項4記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材と前記芯体とを、該芯体の軸線方向に沿って接合して、前記複数の拡径ポケットを画成した鼻腔拡張用補助具。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材と前記第二のバルーン部材との間の空間に接続される薬剤注入口を有し、該薬剤注入口から前記薬剤を追加供給する薬剤供給手段を備えた鼻腔拡張用補助具。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第二のバルーン部材の外周面を折り畳んだ襞を形成し、隣接する前記襞同士の隙間に薬剤が塗布された鼻腔拡張用補助具。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記薬剤が、麻酔薬、血管収縮剤のいずれかを含む鼻腔拡張用補助具。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記流体が空気である鼻腔拡張用補助具。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時には前記第二のバルーン部材の最外径が人体の鼻腔孔より小径であり、拡径時には前記第一のバルーン部材が体腔内への非挿入状態で人体の鼻腔孔よりも大きく拡径する鼻腔拡張用補助具。
【請求項11】
請求項10記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一および第二のバルーン部材の非拡径時において、前記第二のバルーン部材の最外径が2mm〜4mmにされた鼻腔拡張用補助具。
【請求項12】
請求項10または請求項11記載の鼻腔拡張用補助具であって、
前記第一のバルーン部材の最外径が、体腔内への非挿入状態で前記非拡径時の最外径の少なくとも2倍に拡径可能な鼻腔拡張用補助具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−154919(P2010−154919A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334226(P2008−334226)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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