説明

(メタ)アクリル酸エステルの製造方法およびそれを用いた硬化性樹脂組成物

【課題】本発明の課題は、短時間で効率良く、(メタ)アクリル酸エステルを製造するための製造方法を提供する
【解決手段】多価アルコールを酸触媒と重合禁止剤とが共存する反応系に、マイクロ波を照射して加熱して(メタ)アクリル酸エステル化反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。マイクロ波照射による製造方法により、プラスチック基材に対する密着性が良好な当該アクリル酸エステルの製造を可能にするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、接着剤、印刷インキ、表面保護コート等の分野において用いられる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法およびそれを用いた硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法としては、(メタ)アクリル酸とアルコールとの脱水エステル化反応や、(メタ)アクリル酸アルキルとアルコールとのエステル交換反応、あるいは(メタ)アクリル酸クロリドとアルコールとの反応が一般的に行われている。これらのうち、特に脱水エステル化反応は、反応原料である(メタ)アクリル酸が安価であることや、製造可能な(メタ)アクリル酸エステルが多様であることから、比較的有用な製造方法である。これらの製造方法では、加熱手段として外部からの熱源で伝熱する手法が取られている。しかし、この加熱方法では、加熱が不均一であったり、反応時間を10時間以上要したりする為、製造効率が悪い。また、(メタ)アクリル酸とアルコールとの脱水エステル化反応では、反応によって生成する水を有機溶媒との共沸混合物のかたちで系外に除去しながら、エステル化反応を完結させることによって製造されている。
【0003】
特に、3個以上の水酸基を有するポリオールと、(メタ)アクリル酸とを反応させてなる(メタ)アクリル酸エステルの製造は、一般にモノオールと(メタ)アクリル酸とを反応させてなる(メタ)アクリル酸エステルの製造に比べて、長時間、あるいは、より高い温度での反応が必要となる。このような条件下でエステル化反応が行われると、(メタ)アクリル酸エステル製造時に特有の副反応が進行するという問題がある。
【0004】
そのため効率的な反応進行のために、外部からの熱源による伝熱的な手法に代えて、マイクロ波エネルギーを加熱手段として使用することが検討されており、特許文献1および特許文献2にはマイクロ波エネルギーを使用した(メタ)アクリル酸エステルの製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献1では、反応に於ける脱水方法として、気体または気体混合物の導入や物理吸着について記載されている。
【0006】
また、特許文献2では、無溶剤での合成やエステル化触媒として、スルホン酸置換イオン交換樹脂の使用や反応形態として連続合成などが記載されている。
【0007】
しかし、マイクロ波エネルギーを用いた(メタ)アクリル酸エステル製造時における、溶媒の種類と生成物の収率の関係や、得られた(メタ)アクリル酸エステルの塗膜物性に関しては、十分な検討がなされているとは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−119216号公報
【特許文献2】特開2006−151923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、大気下において、マイクロ波を照射して加熱し、(メタ)アクリル酸と、多価アルコールとを縮合反応して(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法において、反応時間を大幅に短縮することで生成物を高効率で得ることができ、また得られた生成物の着色が少なく、副生成物が少ないことを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルを製造するための製造方法を提供することにある。さらには、活性エネルギー線によって硬化し、プラスチック基材との密着性が良好な硬化性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、大気圧下にて、(メタ)アクリル酸と、多価アルコールを酸触媒および重合禁止剤と溶剤が共存する反応系において、マイクロ波を照射して加熱して(メタ)アクリル酸エステル化反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、溶剤がマイクロ波エネルギーに不活性である上記(メタ)アクリル酸エステル製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、溶剤の沸点が90〜120℃である上記(メタ)アクリル酸エステル製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、上記製造方法で製造されてなる(メタ)アクリル酸エステルに関する。
【0015】
また、本発明は、上記(メタ)アクリル酸エステルと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法では、マイクロ波エネルギーによって、溶媒共存下で、(メタ)アクリル酸と多価アルコールからエステル化反応を行っており、反応温度領域も水との共沸可能な温度領域としていることから、短時間で高効率の(メタ)アクリル酸エステルを製造することが出来、製造コスト削減につながる。さらに、(メタ)アクリル酸エステルの着色を抑制することが出来る。その上、得られた(メタ)アクリル酸エステルは、プラスチック基材に対する密着性があるため、塗料、接着剤、及び、印刷インキ、表面保護コートの分野などの分野で用いることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、詳細にわたって本発明を説明する。
【0018】
本発明の、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、大気圧下にて、(メタ)アクリル酸と多価アルコールを、酸触媒、重合禁止剤、および溶剤が共存する反応系において、マイクロ波を照射することにより加熱して、(メタ)アクリル酸エステル化反応の生成物を得ることである。
【0019】
前記、多価アルコールは、ジオール、トリオール、4個以上の水酸基を有するポリオールが挙げられる。
【0020】
ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールのエチレンオキサイド付加物、ネオペンチルグリコールのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジメチロール等が挙げられる。
【0021】
トリオールの具体例としては、例えば、グリセリン、グリセリンのエチレンオキサイド付加物、グリセリンのプロピレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパンのプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0022】
ポリオールの具体例としては、例えば、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリト
ール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、並びにこれらポリオールの
エチレンオキサイド付加物、ポリオールのプロピレンオキサイド付加物、トリス−2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0023】
これらの多価アルコールのうち、常温(10〜30℃)で固体のポリオールが好ましく、具体的には、トリメチロールプロパン(融点:58℃)ジトリメチロールプロパン(融点:105〜115℃)、ジペンタエリスリトール(融点:210〜220℃)、ペンタエリスリトール(融点:260℃)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(融点:250〜320℃)等が挙げられる。
【0024】
このうち、多価アルコールがペンタエリスリトールの1〜3量体を主成分とするものが
好ましく、更にジペンタエリスリトールを80重量%以上含有するものが好ましい。
【0025】
前記、(メタ)アクリル酸はアクリル酸、または、メタクリル酸であり、これらは、目的とするエステルがアクリル酸エステルであるか、メタクリル酸エステルであるかによって選択される。
【0026】
これらの、(メタ)アクリル酸の使用量は多価アルコールのモル当量に対して、1〜1.5倍当量であればよく、重合防止や製造コストの削減の点から1〜1.2倍であるのが望ましい。
【0027】
上記反応においては、得られる(メタ)アクリル酸エステルの重合を防止する目的で、反応液に重合防止剤を添加することができる。このような重合防止剤としては、例えば、酸化第一銅、酸化第二銅、塩化第一銅、塩化第二銅などの無機重合防止剤、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、t−ブチルヒドロキノン、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−t−ブチル−p−クレゾール、パラベンゾキノン、2,5−ジフェニルパラベンゾキノン、フェノチアジン、ジフェニルアミンなどの有機重合防止剤が使用される。この中では、製品の貯蔵時、及び使用時に着色の少ない重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル、無機重合防止剤がより好適に使用される。さらに好適に用いられる重合禁止剤としては、塩化第二銅である。これらの重合防止剤の使用量は、反応液に対して、100〜2000質量ppm程度の範囲であればよい。また、これらの重合禁止剤は、1 種を単独で使用しても又は2 種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0028】
前記、酸触媒としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応の触媒として知られている慣用の酸触媒を何れも好適に使用することができる。そのような酸触媒は、有機又は無機の強酸であり、特に限定されないが、鉱酸及びそれらの部分中和塩、ヘテロポリ酸、有機スルホン酸、ハロゲン化酢酸、ルイス酸、有機スルホン酸を担持した酸性ゼオライト、有機スルホン酸を担持した活性炭である。これらの酸触媒の使用量は、反応液に対して、0.01〜10質量%の範囲であればよい。また、これらの重合禁止剤は、1 種を単独で使用しても又は2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0029】
鉱酸の具体例としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0030】
ヘテロポリ酸の具体例としては、タングステン酸、モリブデン酸、タングストケイ酸、モリブドケイ酸、タングストリン酸、モリブドリン酸等が挙げられる。
【0031】
有機スルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0032】
ハロゲン化酢酸の具体例としては、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸等が挙げられる。
【0033】
ルイス酸の具体例としては、フッ化ホウ素、塩化ホウ素、塩化アルミニウム、二塩化スズ、四塩化スズ等が挙げられる。
【0034】
また、有機スルホン酸を担持した酸性ゼオライトの具体例としては、モルデナイト型、X型、Y型、β型、ZSM−5型等が挙げられる。
【0035】
これらの酸触媒のうち、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、有機スルホン酸を担持した活性炭が好ましい。
【0036】
これらの酸触媒は、1種のものを単独で使用してもよく、2種以上を混合物するなどして組み合わせて使用してもよい。
【0037】
本発明で用いる溶剤としては、マイクロ波エネルギーを吸収しない、または吸収しにくい非極性溶剤である。
【0038】
ここで、マイクロ波エネルギーを吸収しない、または吸収しにくい溶剤としては、非特許文献(B. L. Hayes, Microwave Synthesis: Chemistry at the Speed of Light, CEM Publishing, Mattews NC, 2002.)より、マイクロ波周波数、2450MHz、25℃における各種溶剤の誘電損失(tanδ)の値から、各種溶剤に対するマイクロ波のエネルギーを吸収しやすさが規定されている。
【0039】
その中において、一般的にtanδが0.1以下の溶剤がマイクロ波を吸収しない、または吸収しにくい溶剤として、以下の非特許文献(C. Oliver Kappe,Controlled Microwave Heating in Modern organicSynthesis)で記述されおり、具体的にはクロロベンゼン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0040】
溶剤として好ましくは、溶剤の沸点が80℃〜120℃の溶剤である。具体的にはベンゼン、トルエン、シクロヘキサンが挙げられ、さらに好ましくは、トルエン、シクロヘキサンである。
【0041】
溶剤の使用量は、前記多価アルコールと(メタ)アクリル酸との合計量に対して、0.1〜10当量倍(重量比)が好ましく、0.5〜1.0当量倍が好ましい。
【0042】
これら溶剤が好ましい理由としては、マイクロ波エネルギーを吸収しない、または、吸収しにくい非極性溶剤を用いることによって、反応基質である多価アルコールや(メタ)アクリル酸のマイクロ波の吸収を阻害することがなく、効率的な反応となることが挙げられる。その上、エステル化反応では、この反応で生成される水と共沸混合物を形成する溶剤が使用され、水を共沸させて脱水を促進する有機溶剤が使用されることが望ましい。
【0043】
さらに、沸点が、80℃より低い沸点の溶剤では、生成した水との共沸によって(メタ)アクリル酸エステル化反応が遅くなることや、収率の低下する恐れがある。また、120℃を超える高沸点溶剤では、(メタ)アクリル酸または、生成された(メタ)アクリル酸エステルの熱重合が起きる恐れや得られた生成物の着色が懸念される。
【0044】
本発明のエステル化の反応温度は、使用される原料および目的によって適宜設定されるが、反応時間の短縮と重合防止の観点から80〜120℃が好ましく、90℃〜110℃がさらに好ましい。また、反応開始から目的物単離までを通じて(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルが熱重合するのを防ぐために必要に応じて空気バブリングをすることが出来る。
【0045】
本発明のマイクロ波としては、水の加熱に用いられる周波数である、300MHz〜3000MHzを用いることができる。マイクロ波の周波数として、好ましくは800MHz〜1000MHzである。さらに好ましくは、896±10MHz、915±25MHz、2375±50MHz、2450±50MHz、5800±75MHz、24125±125MHzであり、特に好ましくは、日本における指定周波数帯である、2450±50MHz、5800±75MHz、24125±125MHzが挙げられる。
【0046】
マイクロ波発生装置は、商業用に利用されている周波数を発生させるものを使用でき、シングルモード、マルチモード、マグネトロン型、キャビティ型等の制約はない。例えば、発振周波数2450±30MHz、出力電力760Wのマイクロ波反応装置μリアクター(四国計測工業(株)社製)を用いることができる。
【0047】
本発明の反応時間は(メタ)アクリル酸エステル製造における、反応系から生成される水分量によって反応終了を確認するが、1〜3時間が好ましい。生成される水分量は多価アルコールと(メタ)アクリル酸の仕込み量から容易に計算することが出来る。
【0048】
本発明では、アルカリ水溶液を用いて中和処理を常法に従って行われることが好ましい。この常法としては、例えば、反応液にアルカリ成分としてアルカリ水溶液が添加された後に攪拌及び混合される方法が挙げられる。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液が挙げられる。この場合、アルカリ成分の量は、通常反応液の酸分に対してモル比で1.0倍以上であり、好ましくは1.1〜1.5倍である。この添加量が反応液の酸分に対してモル比で1.0倍未満の場合には、酸分の中和が不十分となる場合がある。アルカリ水溶液の濃度は、1〜25重量%が好ましい。攪拌及び混合の時間は5分〜60分が好ましい。
【0049】
本発明では、イオン交換水を用いて水洗処理を常法に従って行われる。常法としては、(メタ)アクリル酸エステル化反応で得られた反応液、もしくは、前記中和処理後の有機層に水が添加されて攪拌および混合される方法が挙げられる。
【0050】
前記、中和処理と水洗処理工程は反応終了後のどの時点で行われるかは、使用される成分及び目的に応じて適宜選択される。
【0051】
本発明では、前記中和処理、または水洗処理後、生成された(メタ)アクリル酸エステルを含有する有機層が得られ、次いでこの有機層から有機溶剤が公知の方法除去されることにより、(メタ)アクリル酸エステルを得ることができる。
【0052】
この有機溶剤を除去する工程では、(メタ)アクリル酸エステルの熱重合を抑えるために、有機層に酸素や空気が供給されたり、重合禁止剤が添加されたりすると共に、温度が80℃以下に維持され、更に処置が減圧下で行われる。(メタ)アクリル酸エステルは、必要に応じて精留により精製される。この工程において使用される重合禁止剤は、前述に記載したの通り重合禁止剤が用いられる。重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸エステルの生成量に対して、400〜500ppm加えることができる。
【0053】
本発明の組成物では、光重合開始剤を使用する。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類。アセトフェノン、2,2’−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1’−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノン類。2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類。2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類。アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類。ベンゾフェノン、4,4’−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類。2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,60トリメチルベンゾイル)―フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類等が挙げられる。これらは単独または2種以上の混合物として使用出来る。
【実施例】
【0054】
(メタ)アクリル酸エステルを製造した例を製造例1〜12に示す。 以下に実施例及び比較例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実施例1
(製造工程1)エステル化反応工程
大気下、500ml三口フラスコに、ジペンタエリスリトール6.23g(24.5mmol) アクリル酸13.78g(191.0mmol)、塩化銅(II)・無水和物0
.1g(0.74mmol)、メタンスルホン酸0.8g(9.49mmol)を仕込んだ。フラスコに撹拌装置、光ファイバー温度計、揮発物を系外に出す管を設け、ディーンスターク型冷却装置により揮発分を回収できるようにし、更に系内にエアーポンプによりエアーを導入する管を設けて副生成する水およびその揮発物を系外へ出やすくした。これをマイクロ波反応装置μReactor(四国計測工業(株) 社製)に設置し、反応温度を100℃に保つように設定して撹拌を行いながら30分間マイクロ波の照射を行った。その後、反応系中のジペンタエリスリトールが溶解した後に、溶剤であるシクロヘキサンを10mlを追加し、反応で生じる水はシクロヘキサンと共沸させ、ディーンスターク型冷却装置で除去して、エステル化を進めた。更に同じ方法でマイクロ波の照射を60分間実施した。合計90分間照射後に反応液をサンプリングし、NMRより99.0% の割合で、反応が進行していることが明らかとなった。
【0056】
(製造工程2)後処理工程:
(i)上記(1)で得られた反応液30gを30℃に冷却した後、トルエン20gを加えて希釈し、純水50g加えて5分間攪拌して水洗した後、30分間静置して、水相(下層)と有機溶媒溶液相(上層)に層分離させ、下層の水相を除去した。
(ii)次いで、有機溶媒溶液相に10%水酸化ナトリウム水溶液25g加えて5分間撹拌して有機溶媒溶液相に含まれる酸成分を中和した後、30分間静置して、水相(下層)と有機溶媒溶液相(上層)に層分離させ、下層の水相を除去して有機溶媒溶液相を回収したところ50gであった。更に、20%水酸化ナトリウム水溶液10gを加えて液温を30℃に維持しながら1時間撹拌して不純物の除去を行った。次いで、30分間静置して、水相(下層)と有機溶媒溶液相(上層)に層分離させ、下層を分取して除去した。これにより回収した有機溶媒溶液相に、洗浄のために蒸留水100gを加えて充分攪拌した後に静置し、分離した水相(下層)を除去し、上層の有機溶媒溶液相を回収した。
(iii)上記(ii)で回収した有機溶媒溶液相に、ハイドロキノンモノメチルエーテル( M Q )500ppmを添加して、オイルバスの温度を80℃に設定し、酸素を含む窒素ガスを吹き込みながら、減圧下に、トルエンの濃度が1質量%以下になるまで蒸留処理(脱溶媒処理)して、化合物1を得た。表1に反応条件を示す。また、得られた生成物について結果を表2に示す。
【0057】
実施例2〜10
【0058】
上記に示す(製法工程1)と(製造工程2)によって、表1に示す反応条件によって製造した。なお、(メタ)アクリル酸、多価アルコール、と酸触媒、重合禁止剤、溶剤の使用量については、製造工程1と同一の条件によって実施例2〜10では、それぞれ化合物2〜10を製造した。表1に反応条件を示す。また、化合物と結果を表2に示す。
【0059】
比較例1
実施例1において、反応系中のジペンタエリスリトールが溶解した後に、溶剤を使用せずにエステル化を進める以外は、実施例1と同様に比較例2化合物を製造した。、また結果を表2に示す。
【0060】
比較例2
実施例1において、加熱源として、マイクロ波反応装置の代わりに、100℃に設定されたオイルバスで三つ口フラスコを加熱して、エステル化反応を開始すること以外は、実施例1と同様に、比較例2化合物を製造した。また結果を表2に示す。
【0061】
表1
【表1】

【0062】
表2
【表2】

【0063】
表2から明らかなように、本発明の製造方法はいずれも、比較例1および2で作成した製造方法よりも、短時間で反応が進行し、目的物の着色や、生成物の収率が高いことが明らかとなり、マイクロ波エネルギーに不活性で、且つ生成した水と共沸な溶剤を共存させることによって生成物を高収率で得ることが出来ることが分かった。
【0064】
また、下記実施例及び比較例に示す硬化性組成物の配合、塗工条件、および、性能評価は以下に示す方法で行った。
【0065】
実施例11
(硬化性樹脂組成物の配合)
実施例1で得た化合物1:39.1重量部と、BYK355:0.2重量部、ダイドーキュア174:2.0重量部をトルエン58.7重量部に混合し、硬化性樹脂組成物1を得た。
(塗工物の作成)
上記の条件で配合して得られた樹脂組成物をバーコーター(No.6)を用い、易接着ポリエステルフィルム(A−4100)に塗布し、100℃の乾燥炉中に1分間放置後、空気雰囲気下で照度200W/cm2の高圧水銀灯で10cmの距離から2.7m/分のコンベアスピードで紫外線を照射し、硬化皮膜(3μm)を有するフィルムを得た。硬化物について、耐擦傷性、鉛筆硬度、密着性(塗工後初期)を評価した。結果を表3に示す。
【0066】
実施例12
(硬化性樹脂組成物の配合)
実施例5で得た化合物1:39.1重量部と、BYK355:0.2重量部、ダイドーキュア174:2.0重量部をトルエン58.7重量部に混合し、硬化性樹脂組成物2を得た。
(塗工物の作成)
上記の条件で配合して得られた硬化性樹脂組成物を実施例11と同様の条件で塗工し、硬化皮膜(3μm)を有するフィルムを得た。硬化物について、耐擦傷性、鉛筆硬度、密着性(塗工後初期)を評価した。結果を表3に示す。
【0067】
比較例3
(硬化性樹脂組成物の配合)
比較例2で得た化合物1:39.1重量部と、BYK355:0.2重量部、ダイドーキュア174:2.0重量部をトルエン58.7重量部に混合し、硬化性樹脂組成物3を得た。
(塗工物の作成)
上記の条件で配合して得られた硬化性樹脂組成物を実施例11と同様の条件で塗工し、硬化皮膜(3μm)を有するフィルムを得た。硬化物について、耐擦傷性、鉛筆硬度、密着性(塗工後初期)を評価した。結果を表3に示す。
【0068】
(性能評価)
1)耐擦傷性
スチールウール#0000上に、500g/cm2の荷重をかけて10往復させ、傷の状況を目視で判定した。
○:傷なし
×:傷発生
【0069】
2)鉛筆硬度
JIS K5400に準ずる。
具体的には、鉛筆引っかき試験機を用いて、上記組成の塗工フィルムの鉛筆硬度を測定した。詳しくは、測定する硬化皮膜を有するPETフィルム上に、鉛筆を45度の角度で、1kgの荷重をかけ、5mm程度ひっかき、傷の付き具合を確認した。5回測定を行った。
5/5:5回中5回とも傷なし
0/5:5回中全て傷発生
【0070】
3)密着性
JIS K5600に準ずる。
具体的には、耐候試験前の各塗膜にカッターで碁盤目(100目)にキズを入れ、セロハンテープ(ニチバン社製24mm幅)を密着させた後、垂直方向にはがし、塗膜が剥離せずに残存した碁盤目の数で5段階評価した。
5;100残/100
4;80〜99残/100
3;50〜79残/100
2;30〜49残/100
1;0〜30残/100
【0071】
表3
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0072】
以上のように本発明で示された方法により、短時間で高効率に(メタ)アクリル酸エステルを製造することが出来る。それにより得られた(メタ)アクリル酸エステルは、塗料、接着剤、印刷インキ、表面保護コート、レジスト材料等の用途に有効な硬化性樹脂組成物用の原料として、更にはその他の用途に有効に使用することが出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下にて、(メタ)アクリル酸と、多価アルコールを酸触媒および重合禁止剤と溶剤が共存する反応系において、マイクロ波を照射して加熱して(メタ)アクリル酸エステル化反応させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
溶剤がマイクロ波エネルギーに不活性である請求項1記載の(メタ)アクリル酸エステル製造方法。
【請求項3】
溶剤の沸点が90〜120℃である請求項2記載の(メタ)アクリル酸エステル製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の製造方法で製造されてなる(メタ)アクリル酸エステル。
【請求項5】
請求項4記載の(メタ)アクリル酸エステルと、光重合開始剤とを含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−82646(P2013−82646A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222559(P2011−222559)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】