説明

(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部用洗浄液及びこれを利用した洗浄方法

本発明は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部用洗浄液組成物及びこれを利用した洗浄方法に関するものであって、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属水酸化物5乃至50重量%、水溶性アミノ酸0.01乃至1重量%、N,N´−メチレンビスアクリルアミド0.001乃至0.05重量%、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.001乃至0.05重量%を含む水溶液の洗浄液組成物を使用して(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部を洗浄することにより、装置内から完全除去が困難であった重合体及び粘着物を容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部用洗浄液組成物及びこれを利用した洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に「メタクリル酸」及び「アクリル酸」を総称する用語として「(メタ)アクリル酸」という用語を使用しているが、本発明でもこれと同一な意味として「(メタ)アクリル酸」という用語を使用する。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステルは、一般的に、強酸の存在下でアルカノールと(メタ)アクリル酸のエステル化過程を経て製造される。通常、(メタ)アクリル酸の合成は、多数の蒸留管(蒸留カラム)と抽出装置及びこれらを備えた撹拌器内で行われるが、この時の熱交換は、主として板型(plate-type)や管束(tube-bundle)型又は螺旋形の熱交換器や循環蒸発器を通じて行われる。
【0004】
(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルを製造する従来の方法における問題点は、光又は熱の影響下でラジカル重合が起こるということであり、特に、エステル化過程ではこのような望ましくない重合を避け、所望のエステル化速度を得るために最適の温度を制御しなければならない面倒さが伴っていた。このような問題点は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの精製過程においても同様に現れるので、反応装置部分のうちで高温のボイラーと低温のボイラーを分離しなければならず、必要に応じて適正範囲内の温度でのエステルの分離が行わなければならなかった。
【0005】
さもなければ、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルの望ましくない重合が起こる危険性が高く、実際に、工程装置中の、導管、ポンプ、蒸発器、熱交換器、および凝縮器などの工場装置部に、このような高分子重合物が沈着して汚染を起こしている。
【0006】
このような望ましくない重合を抑制するためには、反応過程中や反応物の配合時に重合抑制剤(重合禁止剤)を添加することができるが、事実上反応装置内部のすべての重合を抑制するのは経験上や理論上不可能であることが知られている。したがって、今まで大部分の(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造過程は、数週乃至数十週間の運転期間を経た後で運転を中断し、不要な重合が起こった部分を人為的に洗浄した後で運転を再開している。
【0007】
また、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリレートがマイケル反応(Michael reaction)を起こして形成した粘度の高く、分子量の大きい高分子化合物が工程装置に沈着するのも運転上の大きな問題点であった。このように沈着した高分子化合物は、人手で除去したり、適当な溶媒を使用して除去する方法が使用されてきた。しかし、このような除去方法は環境汚染の問題を起こすなど、効率や費用の側面から複雑な問題を招く。
【0008】
通常、ジメチルホルムアミド、ジブチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、スルホラン、N−メチルピロリドンなどの有機溶媒を使用して工程装置を洗浄してきたが、このような有機溶媒を使用する方法は、人手で洗浄する方法のように洗浄後にも残在物が完全に洗浄されず、生産性が低下し、生産量も減少するため、生産効率の損失となってきた。
【0009】
このように、従来の洗浄液を使用して循環洗浄を実施する場合、高分子化合物を完全に洗浄できないと、アルカリ金属水酸化物水溶液の使用と乾燥の後であっても工場の再稼働時に副反応が始まる周期が短くなり、再び高分子化合物が生成されるという短所があった。
【0010】
したがって、従来の洗浄物質、方法又は工程の問題点を克服し、改善された(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部用洗浄剤及び洗浄方法の開発が切実に要求されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アルカリ金属水酸化物水溶液、水溶性アミノ酸、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、及びアゾビスイソブチロニトリルを含有する(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部用洗浄液組成物及びこれを利用した洗浄方法を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属水酸化物5乃至50重量%、水溶性アミノ酸0.01乃至1重量%、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.001乃至0.05重量%、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.001乃至0.05重量%を含む水溶液である洗浄液組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、(a)製造工程中生成した(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを工場装置部から除去する段階、(b)前記工場装置部を水で洗浄した後、前記洗浄液組成物で洗浄する段階、及び(c)前記工場装置部を再び水で1回以上洗浄し、前記工場装置部から前記(b)で用いた洗浄液組成物を除去する段階、を含む(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部の洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の洗浄液組成物は、反応塔又は連結された工場装置部で発見された高分子物の粘度を減少させて、反応塔内部又は付属工場装置部中の洗浄が容易でない部分に残っている重合体シードを、急速に高分子化合物に変換して洗浄液組成物で洗浄放出されるようにするだけでなく、沈着していた高分子粘着物も粘度が低くなりながら洗浄液組成物に膨潤されて、化学的、機械的に洗浄液組成物で洗浄放出できるようにすることにより、装置内から完全除去が困難であった重合体及び粘着物を容易に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者は、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルがアミノ酸と適当な温度でマイケル重合反応を起こし、洗浄直前に高分子物に生成されることができずに運転が中止された状態で工場装置部中の狭小な部分に除去されずに残っているオリゴマー又は二量体が洗浄と運転開始後に再び高分子物に成長することに着眼して、アルカリ金属水酸化物と共に適当な濃度のアミノ酸を添加することにより、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造工程中に形成される重合体と沈着物のような固体物質の発生及び付着を防止する洗浄液組成物を開発して本発明を完成するに至った。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の洗浄組成物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属水酸化物5乃至50重量%、水溶性アミノ酸0.01乃至1重量%、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.001乃至0.05重量%、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.001乃至0.05重量%を含む水溶液であるのが好ましい。
【0017】
前記洗浄液組成物において、アルカリ金属水酸化物が5重量%未満であると洗浄効果が微々たるものであり、50重量%を超えると、洗浄液組成物の沸点(b.p)が増加してスチーム加熱が難しくなることがある。また、前記水溶性アミノ酸が0.01重量%未満であるか、N,N’−メチレンビスアクリルアミドが0.001重量%未満であるか、又はアゾビスイソブチロニトリルの含有量が0.001重量%未満であると、それらを添加した効果が微々たるものであり、水溶性アミノ酸が1重量%を超えたり、N,N’−メチレンビスアクリルアミドが0.05重量%を超えたり、又はアゾビスイソブチロニトリルの含有量が0.05重量%を超えると、含有量の増加に応じた洗浄効果の増加が微々たるものであり、費用が増加する。
【0018】
前記洗浄液組成物のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、セリン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ジヨードチロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン、β−アラニン、アミノブチル酸、オルニチン、シトルリン、ホモセリン、トリヨードチロシン、チロキシン、ジオキシフェニルアラニン又はこれらの混合物であってよい。
【0019】
洗浄工程時に使用される前記洗浄液組成物の温度は10乃至150℃であり、特に60乃至100℃であるのが好ましい。
【0020】
洗浄すべき前記工場装置部は、反応器、蒸留カラム、抽出装置、熱交換器、蒸発器、凝縮器、管又はポンプなど工場単位体を構成し連結する全ての部分である。より詳しくは、洗浄すべき工場装置部は、最初反応が開始される時に注入された原料や(メタ)アクリル酸エステルを製造したり準備する過程で生成したエステル化物、特に、(メタ)アクリル酸とアルカノールが反応して生成した物質が沈積した部分であり、例えば、反応器、蒸留塔、抽出装置、熱交換器、蒸発器、凝縮器、管束、導管など、工程単位体を構成し連結する部分である。
【0021】
蒸留塔の上部と蒸発器との間の洗浄管が含まれている蒸留装置は特に洗浄されなければならない工場装置部であり、これは、洗浄液組成物であるアルカリ金属水酸化物が(メタ)アクリレート高分子物のエステル官能基の部分で加水分解を起こして、アルカノール系の物質に変化させて分離し出すからである。このような化学的過程を通して、望ましくない高分子化合物が工場装置部から除去される。
【0022】
アルカリ金属水酸化物水溶液を利用して、蒸留装置から高分子化合物を洗浄放出するためには、洗浄管が、洗浄液組成物を蒸留塔に付属されている蒸発器内部から蒸留塔上部によく移動させるように適切に加熱されて使用されなければならない。この洗浄管は、蒸留塔の上部や塔内のトレイが洗浄液組成物によってよく洗浄されるようにする役割を果たす。
【0023】
このように工場装置部から分離されて除去された高分子化合物又は分解された高分子物は、洗浄過程中の相分離、蒸留又はストリッピングを通じて再び分解され分離される。この時、水溶性傾向の大きなアルカノールは、蒸留や空気又はスチームを利用したストリッピングを通じて洗浄液組成物から分離され、水溶性傾向の小さなアルカノールは、2次相分離を通じて洗浄液組成物から分離される。また、アルカノールが含まれている廃水はストリッピング過程を経てアルカノールをリサイクルすることとなり、数回使用された洗浄液組成物も回収されて再使用可能であるが、アルカリ金属水酸化物の濃度が5%未満に低下した場合には再使用を中止すべきである。
【0024】
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造過程中に生成される副反応生成物である高分子化合物は、その根源の特性上、双性イオン(zwitter ion)から出発した両性の高分子物であり、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルがアミノ酸基を含有すれば、エステル基の酸加水分解作用が起きるようになる。
【0025】
通常、反応塔内部で生じるこのような高分子化合物は、多数の陽イオンと陰イオンが絡まっている構造を有するので、アルカリ金属水酸化物水溶液又は純粋な水を含む洗浄液組成物を通過させると収縮と膨潤を繰り返すようになる。このような過程でアミノ酸を添加すれば、アミノ酸特有の両親媒性官能基の影響により、高分子化合物に沈着されずに残っている高分子シード(Polymer seed)が急速に高分子物に結合して、工程の再稼働時に起きるかも知れない副反応の危険要因を事前に予め除去することができる。
【0026】
本発明の洗浄方法をより具体的に説明する。
本発明の(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部の洗浄方法は、(a)製造工程中生成した(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを工場装置部から除去する段階、(b)前記工場装置部を水で洗浄した後、本発明の洗浄液組成物で洗浄する段階、及び(c)前記工場装置部を再び水で1回以上洗浄し、前記工場装置部から前記洗浄液組成物を除去する段階を含む。
【0027】
(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造過程に使用される工場装置部の必須装置部分である蒸留塔の加熱器と蒸留塔の本体自体、そして副反応物である高分子物によって詰まり易い熱交換器などは、一般的に処理液の排水、水洗浄、水蒸気蒸留、アルカリ性蒸気蒸留などの措置を通じて洗浄が行われるが、いずれの種類の洗浄液組成物を投入しても、還流容器の液位は、洗浄のためにスイッチングをする前に低くしなければならない。この時、洗浄しない装置は予め分離しなければならず、まず、装置と連結部内の処理液を排水した後、処理水で洗浄する。カラムは汚染された程度によって蒸気蒸留やアルカリ性蒸気蒸留によって洗浄する。タンクと容器類は通常は水洗浄によって洗浄されるが、汚染の程度が激しいときは、蒸気沸騰やアルカリ蒸気沸騰を行う。この時、水で洗浄をする場合には、各装置部に結合されているポンプ吸入管を介して処理水を供給し、そのポンプを使用して運搬ラインを洗浄する。洗浄された水はカラムやタンクを通じて又は直接廃水容器に捨てる。
【0028】
従来のアルカリ洗浄液組成物を使用し、蒸気又はアルカリ性蒸気蒸留方式を使用して洗浄した方法は次の通りである。一旦、洗浄液組成物の排水と水洗浄を完了した後、連結された各種ラインを洗浄し、処理水ライン、アルカリ性溶液ライン、廃水ライン中に残っている全ての液を除去する。この方法をより詳しく説明すれば、処理水を正常運転基準に塔底に満たした後、蒸気を塔底の加熱器に供給したり直接注入する。次に、注入ラインや還流ラインに処理水を供給し、蒸留塔を水蒸気蒸留状態に到達させる。次いで、塔底液を正常液位に維持しながら廃水容器に回収させるが、通常、この時に処理水を4%(重量比)の従来の水酸化ナトリウム水溶液に置き変え、蒸留速度を減少させる。
【0029】
本発明は窮極的に、この時に使用される4%(重量比)のアルカリ性水溶液、特に水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用するアルカリ性水溶液に水溶性アミノ酸、N,N’−メチレンビスアクリルアミド及びアゾビスイソブチロニトリルを添加して、洗浄の効果を高めたものである。
【0030】
このように洗浄液組成物を使用して3乃至5時間予熱した後、洗浄のための運転をする間には塔底液を廃水容器に捨て、同時に注入ラインや還流ラインに処理水を供給して塔底液のpHが9以下になるまで洗浄する。この過程を繰り返して塔底液と蒸留水のpHが9以下になれば、処理水でカラムを再び洗浄して冷却した後、すべての注入ラインとコラムから排水する。
【0031】
蒸留塔の本体の部分だけでなく、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造過程に使用される工場装置部の廃熱ボイラーは、通常、スリッププレートを利用して他の装置から廃熱ボイラーを分離した後、チューブサイド(Tube side)に従来の4%(重量比)のアルカリ水溶液を満たし、シェルサイド(Shell side)に蒸気を供給して、チューブサイド溶液を循環させ、この循環する洗浄液組成物が70乃至80℃になるようにする方法で洗浄されてきた。
【0032】
本発明は、この時に使用される従来のアルカリ水溶液、特に水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを用いたアルカリ水溶液洗浄液組成物に対して、これに、水溶性アミノ酸、N,N’−メチレンビスアクリルアミド及びアゾビスイソブチロニトリルを添加した本発明の洗浄液組成物を使用して洗浄の効果を高めた。通常、蒸気を注入した後15乃至20時間が過ぎた後に洗浄が完了するが、洗浄が完了した後にも副反応物が残っている場合が一般的である。このような残存固体物はモータ動力ブラシで除去しているが、本発明の実施によって洗浄を実施した場合にはこのような残在物が著しく減少することが確認できた。
【0033】
以下、本発明の理解のために好ましい実施例を説明するが、下記の実施例は本発明を例示するだけのものであり、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるわけではない。
【0034】
<実施例1>
5重量%の水酸化ナトリウム、0.1重量%のL−リシン(L-lysine)、0.001重量%のN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBAA)、そして0.001重量%のアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を水に加えて全体100重量%となるようにし、これを攪拌し溶解して、本発明の洗浄液組成物を製造した。
前記洗浄液組成物を、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの製造過程に使用される工場装置部の洗浄過程中に適用して、洗浄液組成物を85℃に維持しながらpH9の状態で2時間蒸気洗浄した後、蒸留塔実験を行った。
【0035】
<実施例2>
L−リシンの代わりに0.1重量%のグリシンを添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で洗浄液組成物を製造し、これを利用して実施例1と同一の方法で工場装置部を洗浄した後、蒸留塔実験を行った。
【0036】
<実施例3>
L−リシンの代わりに0.1重量%のβ−アラニンを添加したことを除いては、実施例1と同一の方法で洗浄液組成物を製造し、これを利用して実施例1と同一な方法で工場装置部を洗浄した後、蒸留塔実験を行った。
【0037】
<比較例1>
5重量%の水酸化ナトリウムを含む水溶液を洗浄液組成物として使用したことを除いては、実施例1と同一の方法で工場装置部を洗浄した後、蒸留塔実験を行った。
蒸留塔実験の結果、比較例1の洗浄液組成物で蒸留塔を洗浄した後、6ヶ月の間運転した場合には、工場装置部内の原料を除去して運転カラムを分解した時、副反応により生成した高分子粘着物の量が多かった。しかし、本発明の実施例1乃至3により製造された洗浄液組成物を利用して蒸留塔を洗浄した後、再び6ヶ月の間運転を行った場合には、高分子粘着物の量が著しく減少したことが確認できた。
また、蒸留塔に付属した(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステルの生産のための工場装置部もまた本発明の洗浄液組成物で洗浄した結果、装置内の狭い部分で除去し難かった粘着物の量が著しく減少し、完全に除去されなかった粘着物もまたその膨潤性が増加して粘度が落ちることにより、洗浄の容易性が増大したことが確認できた。
【0038】
<実験例1>
洗浄効果比較−生成した高分子粘着物の量の比較
本発明の洗浄液組成物と従来の洗浄液組成物の洗浄効果の比較のために、比較例1の洗浄液組成物を使用した後に6ヶ月の間蒸留塔を運転した後と、本発明の実施例1乃至3の洗浄液組成物を使用した後に6ヶ月の間蒸留塔を運転した後の、代表的に慢性的に高分子粘着物が形成される水分離塔の原料注入口の部分に生成した高分子粘着物の量を比較し、図1(Fig.1)に示した。
【0039】
図1(Fig.1)において、(a)は、洗浄の効果を確認する前の基準時点である、運転期間6ヶ月以前に生成されていた205蒸留塔注入部の内壁に形成されたポリマーの量、(b)は、比較例1の洗浄液組成物で洗浄した後に6ヶ月が経過した後の205蒸留塔注入部の内壁に形成されたポリマーの量、(c)は、実施例1の洗浄液組成物で洗浄した後に6ヶ月が経過した後の205蒸留塔注入部の内壁に形成されたポリマーの量、(d)は、実施例2の洗浄液組成物で洗浄した後に6ヶ月が経過した後の205蒸留塔注入部の内壁に形成されたポリマーの量、(e)は、実施例3の洗浄液組成物で洗浄した後に6ヶ月が経過した後の205蒸留塔注入部の内壁に形成されたポリマーの量を示す。
その結果、従来の洗浄液組成物で洗浄を実施した後には、6ヶ月前に生成されていた高分子粘着物の量が6ヶ月の間運転後にもほとんど変化がなかったが、本発明の洗浄液組成物で洗浄を実施した後に蒸留塔を運転し、装置部を切開して壁面に生成した高分子粘着物の量を比較した場合には、従来の洗浄液組成物より遥かに少量の高分子粘着物しか形成されていなかった。
【0040】
<実験例2>
洗浄効果比較−生成した高分子粘着物の粘度比較
本発明の洗浄液組成物と従来の洗浄液組成物の洗浄効果の比較のために、比較例1の洗浄液組成物を使用した後に6ヶ月の間蒸留塔を運転した後と、本発明の実施例1乃至3の洗浄液組成物を使用した後に6ヶ月の間蒸留塔を運転した後の、水分離塔の原料注入口の部分に生成した高分子粘着物の粘度を比較して、図2に示した。
【0041】
図2の各(a)乃至(e)は実験例1と同一である。
その結果、比較例1の洗浄液組成物で洗浄を実施した後には、6ヶ月前に生成されていた高分子粘着物の粘度が6ヶ月の間運転後にもほとんど変化がなかったが、本発明の実施例1乃至3の洗浄液組成物で洗浄を実施した後に蒸留塔を運転し、後装置部を切開して壁面に生成した高分子粘着物の粘度を比較した場合には、比較例1の洗浄液組成物より粘度が遥かに低かった。
したがって、本発明の洗浄液組成物は、従来の洗浄液組成物では除去できなかった高分子シードを除去することにより、結果的に運転間に発生し得る高分子粘着物形成の原因を事前に防止できる効果がある。
【0042】
以上、好ましい実施例を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、添付された特許請求の範囲から一歩進んで、本発明の本質と範囲を超えない範囲で多様な変形と置換が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、実施例1乃至3の洗浄液組成物と比較例1の洗浄液組成物を蒸留塔実験した後、塔内に沈積した高分子粘着物の量を比較した図である。
【図2】実施例1乃至3の洗浄液組成物と比較例1の洗浄液組成物を蒸留塔実験した後、塔内に沈積した高分子粘着物の粘度を比較した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属水酸化物5乃至50重量%、水溶性アミノ酸0.01乃至1重量%、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.001乃至0.05重量%、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.001乃至0.05重量%を含む水溶液である、洗浄液組成物。
【請求項2】
(a)製造工程中生成した(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルを工場装置部から除去する段階;
(b)前記工場装置部を水で洗浄した後、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群より選択される1種以上のアルカリ金属水酸化物5乃至50重量%、水溶性アミノ酸0.01乃至1重量%、N,N’−メチレンビスアクリルアミド0.001乃至0.05重量%、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.001乃至0.05重量%を含む水溶液の洗浄液組成物で洗浄する段階;
(c)前記工場装置部を再び水で1回以上洗浄し、前記工場装置部から前記洗浄液組成物を除去する段階;
を含む、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルの製造のための工場装置部の洗浄方法。
【請求項3】
前記アミノ酸が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、セリン、システイン、シスチン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、ジヨードチロシン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン、プロリン、オキシプロリン、β−アラニン、アミノブチル酸、オルニチン、シトルリン、ホモセリン、トリヨードチロシン、チロキシン、ジオキシフェニルアラニン、及びこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄液組成物の温度が10乃至150℃であることを特徴とする、請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記工場装置部が、反応器、蒸留カラム、抽出装置、熱交換器、蒸発器、凝縮器、管又はポンプであることを特徴とする、請求項2に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−503504(P2007−503504A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524591(P2006−524591)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001437
【国際公開番号】WO2005/111187
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】