説明

(メタ)アクリレート化合物、液晶組成物、光学異方性膜、及び光学異方性膜の製造方法

【課題】光学異方性膜等の光学材料の作製に有用な新規な(メタ)アクリレート化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物である。式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し;A1及びA2はそれぞれ独立に炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表し;Y1及びY2はそれぞれ独立に−CO−O−、又は−O−CO−を表し;X1は炭素原子数5以上のアルキル基を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の(メタ)アクリレート化合物、これを含有する液晶組成物、光学異方性膜及びその製造方法に関する。本発明の光学異方性膜は、各種位相差フィルム(光学補償フィルム)として液晶ディスプレイなどの画像表示装置に組み込んで使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が広く普及してきている。特に液晶表示装置に位相差フィルムあるいは光学補償フィルムが用いられることによって、視野角依存性が改良されて急速に普及してきている。液晶表示装置は液晶の駆動方式の違いから、いくつかの種類に分類することができる。代表的なものとしては、TNモード、STNモード、VAモード、IPSモード、OCBモードなどが挙げられるが、視野角特性を改良するフィルムはこれら液晶の駆動方式によってその光学異方性が異なっている(非特許文献1)。光学異方性を有するフィルムは、主にポリマーフィルムの延伸、又は液晶材料の配向及び固定化によって作製されている。延伸されたポリマーフィルムは異方性を発現するが、異方性の発現性が小さく、所望の光学特性を得るために膜厚を厚くする必要があり、それを用いた液晶表示装置の厚みが厚くなってしまう傾向がある。
【0003】
一方、液晶材料を配向させて、その配向状態を固定化する方法によれば、薄膜のフィルムを作製することができ、液晶表示装置の薄型化の観点で有利である。
液晶性高分子を用いて作製された補償板等が報告されている(特許文献1〜3)。液晶性高分子を利用して補償板等を作製する方法では、液晶性高分子の溶液を配向処理された基板上に塗布した後、高分子液晶が液晶相を呈する温度で熱処理することにより所望の配向を得、その後、温度を低下させてガラス状態にして、その配向状態を固定化している。該方法では、室温で簡便に固定化できるメリットはあるが、液晶相で均一配向が得られ難いという欠点がある。
【0004】
低分子液晶を用いた作製方法としては、2官能液晶性アクリレート化合物を用いた光学異方性材料の作製方法が報告されている(例えば、特許文献4)。この技術は、低分子の2官能液晶性アクリレート化合物又は組成物を配向させた後、光重合を行って配向状態を固定化するものである。前記液晶性高分子を用いる方法と比べて均一配向状態が得られ易いという点では有利である。しかし、従来の2官能液晶性アクリレート化合物を用いると、液晶相を示す温度で配向させた後、室温にて暫く放置すると、結晶化が進行してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開平3−28822号公報
【特許文献2】特開平4−55813号公報
【特許文献3】特開平5−27235号公報
【特許文献4】特開平3−140921号公報
【非特許文献1】月刊ディスプレイ Vol 11、No.4、45ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年大型の液晶表示装置が普及するに伴って、視野角特性を改良するフィルムにおいても、大面積にわたって光学性能が均一なフィルムを迅速に製造できることが求められている。従って、液晶を利用した光学異方性膜等の光学材料の作製方法においては、液晶の均一な配向状態が迅速に得られること、及び得られた配向状態を室温にて固定化できることが、重要である。
従って、本発明は、光学異方性膜等の光学材料の作製に有用な新規な(メタ)アクリレート化合物、及び液晶組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、液晶に添加することにより、その配向性及び硬化性などの特性を低下させることなく、液晶状態を室温まで過冷却しても結晶化を抑制することができる、(メタ)アクリレート化合物を提供することを課題とする。
また、本発明は、配向性及び硬化性が良好であるとともに、液晶状態を室温まで過冷却しても結晶化を生じない(又は結晶化を生じたとしてもその程度が小さい)液晶組成物、及び該組成物から形成された光学異方性膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し;A1及びA2はそれぞれ独立に炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表し;Y1及びY2はそれぞれ独立に−CO−O−、又は−O−CO−を表し;X1は炭素原子数5以上のアルキル基を表す。]
【0007】
[2] A1及びA2が炭素原子数2〜18のメチレン基である[1]の(メタ)アクリレート化合物。
[3] A1及びA2が炭素原子数2〜18のメチレン基、Y1が−CO−O−、及びY2が−O−CO−である[1]の(メタ)アクリレート化合物。
[4] [1]〜[3]のいずれかの(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種、及び液晶化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする液晶組成物。
【0008】
[5]前記液晶化合物が、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される化合物から選択されることを特徴とする[4]の液晶組成物。
【化2】

[式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し;Y3及びY4はそれぞれ独立に−CO−O−又は−O−CO−を表し;mは3又は4を表す。]
【化3】

[式中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ、下記式(4)で表される基、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ジオキサン−2,5−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−シクロへキシレン、又は任意の水素がフッ素及び/又は塩素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、但しQ1、Q2及びQ3の少なくとも1つは下記式(4)で表される基であり;p、q及びrはそれぞれ、0又は1であり、但し、これらの合計は1〜3であり;R5は−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、−N=C=O、−N=C=S、−F、−Cl又は炭素原子数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、1つの水素は(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CF2−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、又はCO−で置き換えられてもよく;R6は、水素又はメチルであり;Z1、Z2及びZ3はそれぞれ、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−(CH24−、−CH=CH−、−CF=CF−、又はC≡C−であり;sは0〜10の整数であり;tは0又は1である。]
【化4】

[式中、2つのX2は独立して水素、フッ素、又は炭素原子数1〜8のアルキル基である。]
【0009】
[6] [4]又は[5]の液晶組成物からなる光学異方性膜。
[7] [4]又は[5]の液晶組成物を配向させる配向工程、及び光照射により前記液晶組成物の重合を開始させてその配向状態を固定する固定工程、を含む光学異方性膜の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学異方性膜等の光学材料の作製に有用な新規な(メタ)アクリレート化合物、及びそれを含有する液晶組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、液晶材料中に添加することにより、その配向性及び硬化性などの特性を低下させることなく、液晶状態を室温まで過冷却しても結晶化を抑制することができる、(メタ)アクリレート化合物を提供することができる。
また、本発明によれば、配向性及び硬化性が良好であるとともに、液晶状態を室温まで過冷却しても結晶化を生じない液晶組成物、及び該組成物から形成された光学異方性膜を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[(メタ)アクリレート化合物]
本発明は、下記一般式(1)で表されるの(メタ)アクリレート化合物に関する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリレート化合物」の用語は、メタクリレート化合物及びアクリレート化合物の双方を含み意味で用いる。
【0013】
【化5】

【0014】
前記一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、A1及びA2はそれぞれ炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表す。A1及びA2は、炭素原子数2〜18のメチレン基であることが好ましい。
【0015】
1及びY2はそれぞれ−CO−O−又は−O−CO−を表す。Y1は−CO−O−であり、Y2は−O−CO−であるのが好ましい。
【0016】
1は炭素原子数5以上のアルキル基を表す。炭素原子数は5〜32が好ましく、5〜24がより好ましく、5〜18がさらに好ましい。アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよく、また、X1中の水素原子が他の基に置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がさらに好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がよりさらに好ましい。X1は無置換であることが最も好ましい。
【0017】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
【化6】

【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
【化10】

【0023】
【化11】

【0024】
【化12】

【0025】
【化13】

【0026】
【化14】

【0027】
【化15】

【0028】
【化16】

【0029】
【化17】

【0030】
前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物は、種々の反応を利用して合成することができる。例えば、ハイドロキノンを出発原料として、Friedel-Craftsアシル化反応、及びそれに続く還元反応により、一方のOHに対してオルト位(他方のOHに対してメタ位)にX1を導入することにより下記中間体(A):
【化18】

を得、この中間体(A)と、下記試薬(B1)及び下記試薬(B2):
【化19】

とのエステル化を、混合酸無水物法による反応や、試薬(B1)及び(B2)と塩化チオニルとの反応による酸クロリド化を経由した反応等で進行させることで、合成することができる。試薬(B1)及び(B2)は、特開2002−97170号公報に記載の芳香族カルボン酸の製造方法に従って合成することができる。
【0031】
前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物は、光学異方性膜等の光学材料の作製に利用することができる。
【0032】
[液晶組成物]
本発明は、前記式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種と、液晶化合物の少なくとも1種とを含有する液晶組成物に関する。上記一般式(1)で示される(メタ)アクリレート化合物は棒状の液晶化合物に対して、その配向性や硬化性を大きく損なうことなく、室温における結晶化を抑制できる。特に、下記一般式(2)又は(3)で示される重合性液晶化合物に対して効果が高い。以下、下記一般式(2)及び(3)について詳述する。
【0033】
【化20】

【0034】
一般式(2)中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、Y3及びY4はそれぞれ独立に−CO−O−、又は−O−CO−を示し、mは3又は4を示す。
【0035】
【化21】

【0036】
一般式(3)において、Q1、Q2及びQ3の少なくとも1つは、式(4)で表されるフルオレン基である。そして、p、q及びrは独立して0又は1であり、そしてこれらの合計は1〜3である。
【0037】
【化22】

一般式(4)中の2つのX2は、独立して水素、フッ素又は炭素原子数1〜8のアルキルである。
【0038】
従って、化合物(3)は、より具体的には式(3−1)〜式(3−6)で示される。
【0039】
【化23】

【0040】
これらの式において、Q1〜Q3、R5、R6、Z1〜Z3、s及びtは、式(3)におけるこれらの記号とそれぞれ同様に定義され、X2は式(4)におけるX2と同様に定義される。
【0041】
式(3)中のQ1、Q2及びQ3は、式(4)で表されるフルオレン基でない場合は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ジオキサン−2,5−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−シクロへキシレン、又は任意の水素がフッ素及び/又は塩素で置き換えられた1,4−フェニレンである。
【0042】
フルオレン基以外のQ1、Q2又はQ3の好ましい例は、1,4−シクロへキシレン、2,2−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、3,3−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイルなどである。これらのうち更に好ましい例は、1,4−シクロへキシレン、2,2−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、3,3−ジフルオロ−1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、3−フルオロ−1,4−フェニレン、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレン、及び3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレンである。
【0043】
式(3)中のR6は水素又はメチルであり、tは0又は1である。即ち、式(3)の右側の末端基は、tが0のときビニルオキシ又はイソプロペニルオキシであり、tが1のときアクリロイルオキシ又はメタクリロイルオキシである。重合反応性を考慮した場合、R6が水素であることが好ましい。
【0044】
式(3)中のZ1、Z2及びZ3は独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−(CH24−、−CH=CH−、−CF=CF−、又はC≡C−である。Z1、Z2又はZ3が−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH=CH−、又はC≡C−であるときには、化合物(3)は広い温度範囲で液晶相を示す。Z1、Z2又はZ3が−CF2O−又はOCF2−であるときには、化合物(3)は比較的小さい粘度を有する。そして、式(3)中のsは0〜10の整数である。sが0のとき、式(3)中の末端基(RT)に接続するZ1、Z2又はZ3は単結合である。
【0045】
【化24】

【0046】
式(3)中のR5は、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、−N=C=O、−N=C=S、−F、−Cl、又は炭素原子数1〜20のアルキルである。このアルキルにおいて、1つの水素は(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CF2−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、又はCO−で置き換えられてもよい。但し、連続する複数の−CH2−が、−O−、−S−、−COO−、−OCO−、又はCO−で置き換えられた基は好ましくない。R5の好ましい例は、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、炭素原子数1〜10の直鎖のアルキル、炭素原子数1〜10の直鎖のアルコキシ、炭素原子数2〜10の直鎖のアルコキシアルキル、及びこれらのアルキル、アルコキシ及びアルコキシアルキルにおいて1つの水素が(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられた基である。この1つの水素が(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられた基の例は、式(LT)で示される基である。
【0047】
【化25】

【0048】
式(LT)において、R7は水素又はメチルであり、t1は0又は1であり、s1は2〜10の整数である。
【0049】
5の更に好ましい具体例は、−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、式(LT−1)で表される基、式(LT−2)で表される基などである。これらの中で特に好ましい基は、アルキル、アルコキシ、式(LT−1)で表される基及び式(LT−2)で表される基である。
【0050】
【化26】

【0051】
これらの式におけるs1は2〜10の整数である。
【0052】
5が式(LT)で表される基である化合物の好ましい例は、下記の式で表される化合物である。
【0053】
【化27】

【0054】
この式において、Q1及びQ3は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−シクロへキシレン、又は任意の水素がフッ素及び/又は塩素で置き換えられた1,4−フェニレンである。R6及びR7は独立して水素又はメチルである。Z1及びZ2は、独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−(CH24−、−CH=CH−、−CF=CF−、又はC≡C−である。s及びs1は独立して2〜10の整数である。t及びt1は独立して0又は1である。2つのX2は独立して水素又はメチルである。
【0055】
5が式(LT−1)で表される基である化合物の好ましい例、及びR5が式(LT−2)で表される基である化合物の好ましい例を次に示す。
【0056】
【化28】

【0057】
これらの式において、Q1及びQ3は、独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、又は任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンである。s及びs1は独立して2〜10の整数である。2つのX2は独立して水素又はメチルである。
【0058】
一般式(3)で表されるフルオレン誘導体は、特開2003−238491号公報に記載の方法により製造することができる。
【0059】
以下に、一般式(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
【化29】

【0061】
【化30】

【0062】
【化31】

【0063】
【化32】

【0064】
【化33】

【0065】
【化34】

【0066】
【化35】

【0067】
【化36】

【0068】
【化37】

【0069】
【化38】

【0070】
【化39】

【0071】
【化40】

【0072】
本発明の液晶組成物中、液晶化合物100質量部に対して、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物を10〜400質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは20〜200質量部、特に好ましくは50〜100質量部である。(メタ)アクリレート化合物が10質量部未満である場合には、室温での結晶化抑制効果が発現し難く、一方、400質量部を超える場合には、液晶性が発現しないという懸念があるため好ましくない。
【0073】
光学異方性膜の形成に利用される態様では、本発明の液晶組成物中には、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等の種々の添加剤を添加することができる。
(空気界面配向制御剤)
液晶組成物を配向させると、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶組成物に含まれる液晶化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができ、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数6〜40の置換もしくは無置換の脂肪族基、又は炭素原子数6〜40の置換もしくは無置換の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1つ以上有する化合物が好ましく、分子内に2つ以上有する化合物がさらに好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
【0074】
空気界面側の配向制御用添加剤の含有量としては、本発明の液晶組成物(固形分)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がさらに好ましく、0.1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0075】
(ハジキ防止剤)
本発明の液晶組成物中には、塗布時のハジキを防止するための材料を添加することができる。該材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、本発明の液晶組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
本発明の液晶組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの含有量は、本発明の液晶組成物(固形分)に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0076】
(重合開始剤)
本発明の液晶組成物中には重合開始剤を添加することができる。重合開始剤の例には、熱重合開始剤及び光重合開始剤が含まれる。熱重合反応を進行させると、変形及び変質する場合もあるので、光重合反応又は電子線照射による重合反応を進行させて、光学異方性膜等を作製するのが好ましい。その観点では、本発明の液晶組成物は、光重合開始剤を含有しているのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、液晶組成物(固形分)の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0077】
(重合性モノマー)
本発明の液晶組成物中には、重合性のモノマーを添加することができる。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、前記式(1)の化合物及び液晶化合物と相溶性を有し、液晶組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの含有量は、液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0078】
[光学異方性膜]
本発明は、本発明の液晶組成物から形成される光学異方性膜にも関する。該光学異方性膜は、例えば、液晶組成物を配向させる配向工程、及びその配向状態に固定する固定化工程により作製することができる。配向状態の固定化は、重合反応を進行させることにより行うのが好ましく、上記した通り、光照射によって重合を開始させるのが好ましい。特に本発明の液晶組成物は、液晶転移温度以上で配向させた後、室温まで低下させても、前記式(1)の化合物の存在により、結晶化するのが抑制されているので、光照射、即ち、重合の開始を室温にて行えるというメリットがある。
【0079】
本発明の光学異方性膜の作製方法の一例を以下に説明するが、これに限定されるものではない。
まず、本発明の液晶組成物を塗布液として調製する。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステル及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
前記塗布溶剤の含有量は、本発明の液晶組成物中、1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0080】
次に、調製した塗布液を表面に塗布して、液晶相転移温度以上に維持して、液晶組成物を配向させる。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0081】
液晶分子が均一に配向した状態を実現するためには、前記塗布液を塗布する表面は、ラビング処理などの配向処理が施されているのが好ましく、配向膜のラビング処理面に塗布するのが好ましい。但し、棒状液晶化合物の光軸方向を膜面の法線方向と一致する方向に配向(ホメオトロピック配向)させる態様では、配向膜がなくても均一な配向状態を達成できる。また、添加剤の種類を選択することでも、配向膜がなくても、均一な配向状態を達成できる場合がある。
配向膜は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどを主成分として含む膜の表面をラビング処理することで作製することができる。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。その他、配向膜として、無機化合物の斜方蒸着による方法、マイクログルーブを有する層を形成する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積等の方法により作製することもできる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
【0082】
次に、液晶組成物に光照射して、重合反応を開始させ、配向状態を固定して光学異方性膜を作製する。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0083】
光重合反応の進行時の温度条件については特に制限はない。反応を促進するためには、加熱条件下で光照射を実施するのが好ましいであろう。一方、先述したように、光学異方性膜の生産性を上げるために、光照射及び重合反応の進行を室温で行うことも好ましい。特に、本発明の液晶組成物は、配向状態にある温度から室温に冷却する場合に、前記式(1)の化合物の存在により結晶化が抑制されているという特徴があるので、室温で光照射を行い重合を進行させる態様において、特に効果が高い。
【0084】
なお、本明細書において「配向状態が固定化された状態」とは、その配向が保持された状態、より具体的には、液晶組成物に流動性が無く、また、電場、磁場などの外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものである。通常の条件下で使用される用途では、0℃〜50℃の温度範囲で配向を保持するのが好ましく、より過酷な条件下で使用される用途では、−30℃〜70℃の温度範囲で配向を保持するのが好ましい。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性膜が形成された際には、本発明の液晶組成物は液晶性を示す必要はない。例えば、液晶化合物として重合性基を有する化合物を用いているので、結果的に熱、光等で反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性を失っているのが一般的である。
【0085】
本発明の光学異方性膜の厚さは用途などに応じて異なるが、一般的には、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜15μmであることがさらに好ましい。
【実施例】
【0086】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
[実施例1]
[A−1の製造]
下記スキームにしたがって、例示化合物A−1を製造した。
【0087】
【化41】

【0088】
の合成)
300mLの三口フラスコに、ハイドロキノン11g(0.1モル)、塩化バレロイル18.1g(0.15モル)、ニトロベンゼン120mLを入れ、氷浴上で冷却しながら、無水塩化アルミニウム32.0g(0.24モル)を添加した。氷浴を取り除き、室温にて10分間攪拌した後、窒素気流下、100℃にて1時間攪拌した。室温まで冷却後、反応物を氷水にゆっくり加え、酢酸エチルにより抽出した。有機層を5%重曹水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液の順で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒より再結晶を行い、化合物を白色結晶として11.9g得た(収率61.2%)。
【0089】
の合成)
内容量300mLのオートクレーブに、化合物を5.8g(0.030モル)、パラジウム−炭素(10%)0.7g、氷酢酸60mLを入れ、内温45℃、水素圧50kg/cm2にて反応を行った。窒素置換し、内温を室温に戻した後、反応液をろ過し、パラジウム−炭素を除いた。ヘキサン250mLに注ぎ、析出物をろ過により取り出し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物を白色結晶として4.6g得た(収率85%)。
【0090】
の合成)
1Lの三口フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート28.8g(0.200モル)、ジメチルアセトアミド200mLを入れ、5℃以下に冷却した。メタンスルホニルクロリド22.9g(0.200モル)、トリエチルアミン20.21g(0.200モル)を滴下により添加した。室温にて1時間攪拌した後、析出物をろ過により除き、ろ液に4−ヒドロキシベンズアルデヒド27.6g(0.200モル)、炭酸カリウム47.0g(0.340モル)を添加し、100℃にて2時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液に水300mLを加え、酢酸エチルにより抽出した。有機層を1M塩酸水溶液、水、飽和塩化ナトリウム水溶液の順で洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物を白色結晶として32.2g得た(収率73%)。
【0091】
の合成)
1Lの三口フラスコに、化合物を22.02g(0.100モル)、アセトニトリル370mLを入れた。室温にて攪拌しながら、リン酸二水素ナトリウム・二水和物4.37g(0.028モル)を溶解した水溶液(30mL)、32.5%過酸化水素溶液(16.7mL,0.160モル)、80%亜塩素酸ナトリウム14.7g(0.130モル)を溶解した水溶液(65mL)、及びテトラn-ブチルアミン硫酸水素塩0.34g(0.001モル)を順に添加した。50℃にて2時間加熱攪拌し、室温まで冷却した反応液を水2Lに注ぎ、析出物をろ過で取り出し、乾燥した。得られた固体をアセトニトリルより再結晶し、化合物を白色結晶として21.7g得た(収率92.0%)。
【0092】
(A−1の合成)
200mLの三口フラスコに、化合物を7.56g(0.032モル)、テトラヒドロフラン80mLを入れ、10℃以下に冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、メタンスルホニルクロリド3.67g(0.032モル)、及びジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)を順に滴下により加えた。室温にて1時間攪拌した後、10℃以下に冷却し、化合物を2.88g(0.016モル)、ジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)、及びジメチルアミノピリジン10mgを順に加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出して飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して所望の化合物(A−1)を白色結晶として8.94g得た。(収率90.6%)得られたA−1のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0093】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.84(3H、t)
1.15−1.30(4H、m)
1.53−1.68(2H、m)
2.58(2H、t)
4.32(4H、t)
4.58(4H、t)
5.87(2H、dd)
6.18(2H、dd)
6.47(2H、dd)
6.93−7.02(4H、m)
7.08−7.24(3H、m)
8.12−8.18(4H、m)
【0094】
[実施例2]
[A−25の製造]
下記スキームにしたがって、例示化合物A−25を製造した。
【0095】
【化42】

【0096】
の合成)
200mLの三口フラスコに、ハイドロキノン11g(0.1モル)、n−カプリル酸21.7g(0.15モル)を入れ、50℃に加熱して、BF3ガス9.5g(0.14モル)を導入し、100℃にて1時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物を5%重曹水溶液300mLに注ぎ、室温にて30分攪拌した。析出物をろ過により取り出し、メタノールより再結晶を行い、化合物を白色結晶として5.5g得た(収率23.3%)。
【0097】
の合成)
内容量300mLのオートクレーブに、化合物を5.0g(0.021モル)、パラジウム−炭素(10%)0.7g、氷酢酸50mLを入れ、内温45℃、水素圧50kg/cm2にて反応を行った。窒素置換し、内温を室温に戻した後、反応液をろ過し、パラジウム−炭素を除いた。ヘキサン200mLに注ぎ、析出物をろ過により取り出し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物を白色結晶として3.8g得た(収率81.4%)。
【0098】
(A−25の合成)
200mLの三口フラスコに、化合物(特開2002−97170号公報に記載の化合物)を8.46g(0.032モル)、テトラヒドロフラン80mLを入れ、10℃以下に冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、メタンスルホニルクロリド3.67g(0.032モル)、及びジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)を順に滴下により加えた。室温にて1時間攪拌した後、10℃以下に冷却し、化合物を3.5g(0.016モル)、ジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)、及びジメチルアミノピリジン10mgを順に加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出して飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して所望の化合物(A−25)を白色結晶として10.2g得た。(収率89.2%)得られたA−25のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0099】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.84(3H、t)
1.12−1.37(10H、m)
1.53−1.68(2H、m)
1.81−2.00(8H、m)
2.58(2H、t)
4.10(4H、t)
4.26(4H、t)
5.85(2H、dd)
6.15(2H、dd)
6.46(2H、dd)
6.94−7.01(4H、m)
7.08−7.20(3H、m)
8.12−8.18(4H、m)
【0100】
[実施例3]
[A−30の製造]
下記スキームにしたがって、例示化合物A−30を製造した。
【化43】

【0101】
の合成)
300mLの三口フラスコに、ハイドロキノン27.5g(0.25モル)、1−オクタデセン63.0g(0.25モル)を入れ、窒素気流下180℃に加熱して、塩化亜鉛34.0g(0.25モル)を添加し、200℃にて4時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物をn-ヘキサン3Lで抽出した。抽出物に亜硫酸ナトリウムを加え攪拌、ろ過後、減圧下にて濃縮した。減圧蒸留(沸点220〜222℃,0.3mmHg)を行い、化合物を30.7g得た(収率34%)。
【0102】
(A−30の合成)
A−25と同様の処方にて、化合物 8.46g(0.032モル)、及び化合物 5.80g(0.016モル)より、所望の化合物(A−30)を白色結晶として12.0g得た。(収率87.7%)得られたA−30のNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0103】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.82(3H、t)
1.12−1.48(31H、m)
1.54−1.63(2H、m)
1.81−2.00(8H、m)
2.55−2.61(1H、m)
4.11(4H、t)
4.27(4H、t)
5.85(2H、dd)
6.15(2H、dd)
6.46(2H、dd)
6.92−7.00(4H、m)
7.06−7.19(3H、m)
8.12−8.18(4H、m)
【0104】
[実施例4]
[A−25を含む液晶組成物からなる薄膜の作製]
ガラス基板に、ポリイミド(SE−130、日産化学(株)製)をコーティングして、一方向にラビングして配向膜を形成した。SE−130の厚みは0.1μmであった。このラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、70℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、棒状液晶化合物が欠陥なく水平配向していることが分かった。液晶化合物の層の厚みは1.5μmであった。
【0105】
(塗布液)
・下記液晶化合物 L−1(一般式(2)で表される化合物) 80質量部
・前記化合物 A−25 20質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・下記空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0106】
【化44】

【0107】
【化45】

【0108】
[比較例1]
[A−25を含まない液晶組成物からなる薄膜の作製]
上記のラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、70℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、一部結晶化が生じており、欠陥となっていた。また、目視観察によっても、一部白濁し、ヘイズを生じていることが確認された。
【0109】
(塗布液)
・液晶化合物 L−1 100質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0110】
[実施例5]
[A−1を含む液晶組成物からなる薄膜の作製]
ラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、85℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、棒状液晶化合物が欠陥なく水平配向していることが分かった。液晶化合物の層の厚みは1.4μmであった。
【0111】
(塗布液)
・液晶化合物 例示化合物No.77(一般式(3)で表される化合物) 70質量部
・前記化合物 A−1 30質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・クロロホルム 937質量部
【0112】
【化46】

【0113】
[比較例2]
[A−1を含まない液晶組成物からなる薄膜の作製]
ラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、100℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、一部結晶化が生じており、欠陥となっていた。また、目視観察によっても、一部白濁し、ヘイズを生じていることが確認された。
【0114】
(塗布液)
・液晶化合物 例示化合物No.77 100質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0115】
[実施例6]
[A−30を含む液晶組成物からなる薄膜の作製]
ラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、79℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、棒状液晶化合物が欠陥なく水平配向していることが分かった。液晶化合物の層の厚みは1.5μmであった。
【0116】
(塗布液)
・下記液晶化合物 L−2(一般式(2)で表される化合物) 80質量部
・前記化合物 A−30 20質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0117】
【化47】

【0118】
[比較例3]
[A−30を含まない液晶組成物からなる薄膜の作製]
ラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液をスピンコートし、80℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、一部結晶化が生じており、欠陥となっていた。また、目視観察によっても、一部白濁し、ヘイズを生じていることが確認された。
【0119】
(塗布液)
・液晶化合物 L−2 100質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0120】
[比較例4]
[比較化合物R−1を含む組成物からなる薄膜の作製]
ラビングを施したSE−130の薄膜を設けた基板上に、下記塗布液Aをスピンコートし、70℃の恒温槽に入れ、5分後に取り出した。室温まで放冷後、室温にて300mJ/cm2の紫外線を照射した。偏光顕微鏡でその配向状態を観察すると、一部結晶化が生じており、欠陥となっていた。また、目視観察によっても、一部白濁し、ヘイズを生じていることが確認された。
一方、R−1の比率を高めた塗布液Bを用いてスピンコートにより薄膜を形成した場合には、室温にて等方性液体となり、液晶性を示さなかった。
【0121】
【化48】

【0122】
(塗布液A)
・液晶化合物 L−1 80質量部
・比較化合物 R−1 20質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0123】
(塗布液B)
・液晶化合物 L−1 20質量部
・比較化合物 R−1 80質量部
・イルガキュア907(重合開始剤)(長瀬産業(株)) 3.0質量部
・ジエチルチオキサントン 1.0質量部
・空気界面配向制御剤 V−1 0.15質量部
・2−メトキシ−1−メチルエチル アセテート 415質量部
【0124】
上記の実施例4〜6と比較例1〜4との結果から、本発明の(メタ)アクリレート化合物を添加することにより、液晶性・配向性を劣化させることなく液晶組成物が室温で結晶化するのを抑制し、室温における光重合適性を改善できることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

[式中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し;A1及びA2はそれぞれ独立に炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表し;Y1及びY2はそれぞれ独立に−CO−O−、又は−O−CO−を表し;X1は炭素原子数5以上のアルキル基を表す。]
【請求項2】
1及びA2が炭素原子数2〜18のメチレン基である請求項1に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
1及びA2が炭素原子数2〜18のメチレン基、Y1が−CO−O−、及びY2が−O−CO−である請求項1に記載の(メタ)アクリレート化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種、及び液晶化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする液晶組成物。
【請求項5】
前記液晶化合物が、下記一般式(2)又は下記一般式(3)で表される化合物から選択されることを特徴とする請求項4に記載の液晶組成物。
【化2】

[式中、R3及びR4はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し;Y3及びY4はそれぞれ独立に−CO−O−又は−O−CO−を表し;mは3又は4を表す。]
【化3】

[式中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ、下記式(4)で表される基、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ジオキサン−2,5−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−シクロへキシレン、又は任意の水素がフッ素及び/又は塩素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、但しQ1、Q2及びQ3の少なくとも1つは下記式(4)で表される基であり;p、q及びrはそれぞれ、0又は1であり、但し、これらの合計は1〜3であり;R5は−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、−N=C=O、−N=C=S、−F、−Cl又は炭素原子数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、1つの水素は(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CF2−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、又はCO−で置き換えられてもよく;R6は、水素又はメチルであり;Z1、Z2及びZ3はそれぞれ、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−(CH24−、−CH=CH−、−CF=CF−、又はC≡C−であり;sは0〜10の整数であり;tは0又は1である。]
【化4】

[式中、2つのX2は独立して水素、フッ素、又は炭素原子数1〜8のアルキル基である。]
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液晶組成物からなる光学異方性膜。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の液晶組成物を配向させる配向工程、及び光照射により前記液晶組成物の重合を開始させてその配向状態を固定する固定工程、を含む光学異方性膜の製造方法。

【公開番号】特開2009−184974(P2009−184974A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27082(P2008−27082)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】