説明

(E)4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリルの結晶形

本発明はTMC278の多形相I、その使用及び製造に関する。本発明はさらに、この多形相を含んでなる製薬学的調剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、TMC278の結晶形、その使用及び製造に関する。本発明はさらに、この結晶形を含んでなる製薬学的調剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因として知られるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の処置は、大きな医学的挑戦であり続けている。現在利用できる薬剤治療にはヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)、HIV−プロテアーゼ阻害剤(PIs)、融合阻害剤ならびにもっと最近のCCR5及びインテグラーゼ阻害剤が含まれる。
【0003】
これらの薬剤のそれぞれはHIVの抑制に有効であるが、単独で用いられると耐性突然変異体の発現に直面する。これは、通常は異なる活性側面を有するいくつかの抗−HIV薬の組み合わせ治療の導入に導いた。特に「HAART」(高度に活性な抗−レトロウイルス治療)の導入は、抗−HIV治療における顕著な向上を生じ、HIV−関連罹病率及び死亡率の劇的な低下に導いた。しかしながら、現在利用できる組み合わせ治療のいずれも、完全にHIVを根絶することはできない。HAARTでさえ、多くの場合、処方される治療への服用不遵守(non−compliance)のために、耐性の発現に直面し得る。これらの場合、その成分の1つを他の種類の1つで置き換えることにより、HAARTを再度有効とすることができる。HAART組み合わせは、正しく適用されれば、ウイルスがもうAIDSの発病を引き起こし得ないレベルまで、最高で何十年の多年に及んでウイルスを抑制することができる。
【0004】
HAARTにおいて頻繁に用いられるHIV薬の1つの種類はNNRTIsの種類であり、その複数が現在市販されており、いくつかの他のものが開発の種々の段階にある。現在開発中のNNRTIは、R278474又はTMC278としても既知の、一般的にリルピビリン(rilpivirine)と呼ばれる化合物4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]−アミノ]−2−ピリミジニル]−アミノ]−ベンゾニトリルである。この化合物は野生型HIVに対するのみでなく、突然変異したその変異体の多くに対しても顕著な活性を示す。化合物TMC278、その薬理学的活性ならびにその製造のための複数の方法は、特許文献1に記載されている。この引用文献に記載されているTMC278は結晶形で存在し、この形を下記でTMC278の「多形相II」と呼ぶ。本発明はTMC278の別の多形相に関し、それを下記でTMC278の「多形相I」と呼ぶ。TMC278の多形相Iは以前に記載されてはおらず、下記で概述される通り、有益な性質を有する結晶形である。
【0005】
活性の次に、薬物動態学的側面は、いずれの与えられる薬剤の有効性においても重要な役割を果たす。これは今度は、患者において薬剤の治療的に有効な濃度に達するのに必要な投薬量(dosing)に影響する薬剤のバイオアベイラビリティーと符合する。低いバイオアベイラビリティーを有する薬剤は、より高い投薬量で投与される必要があり、それにより副作用の危険を増す。より高い投薬量はさらにより大きな投薬形態物又は投与の頻度の増加あるいは両方と関係がある。これらの因子は、抗−HIV処置への指示順守(adherence)及び付随するその有効性に影響し得る。不適切な処置は、今度は突
然変異HIV株の発現の危険を増す。
【0006】
TMC278は水中で比較的低い溶解度を有し、低いバイオアベイラビリティーを生ずる。予期に反し、今回、TMC278の新規な結晶形が、酸性水性媒体中で向上した固有溶解速度(intrinsic dissolution rate)及びより高い溶解度を有することが見出された。これらの性質はバイオアベイラビリティーの点で有益であり、新規な結晶形を固体の投薬形態物における適用のため、そして水性分散液のようなある種の液体の投薬形態物における適用のためにも魅力的なものとする。液体の投薬形態物は、非経口的投与のための調剤において用途を見出すことができる。
【0007】
さらに、多形相混合物の組成はバッチ毎に変り得るか、あるいは時間を経て(in time)変り得、それによりその活性成分の性質を変化させる故に、活性成分の特定の多形相の使用が薦められ得る。臨床及び安定性研究の間に多形相が一定に保たれないと、用いられるか又は測定される正確な投薬量は、1つのロットから次のロットに比較可能であり得ない。人間における使用のために製薬学的化合物が製造されると、製造法が同じ形態(form)を用いることならびに各投薬量中に同じ量の薬剤が含まれることを保証するために、各投薬形態物中で送達される多形相を認識することが重要である。従って、単一の多形相又はいずれかの既知の多形相の組み合わせが存在することを確証することが必要である。
【0008】
現在用いられている抗−HIV薬は、比較的高い投薬量の頻繁な投与を必要とする。投与されるべき投薬形態物の数及び/又は体積は、通常「薬剤負荷量(pill burden)」と呼ばれる。高い薬剤負荷量は、患者に、処方される投薬管理に従い損ないさせ、そにより処置の有効性を低下させるのみでなく、耐性突然変異体を発現させもする。従って、高い薬剤負荷量を避け、頻繁な投薬を必要としない比較的小さい寸法の投薬形態物の投与を含む抗−HIV治療が必要である。1週間、1ヶ月又はもっと長い期間ような長い時間間隔で施すことができる抗−HIV治療を提供することがさらに望ましい。
【0009】
現在の治療は、HIVを完全に根絶することを可能にせず、HIVに感染した人は他者を感染させる継続的な危険を呈している。初期感染の後、AIDSの第1の症状の発病までに長期間を要する。人々は感染したまま、その影響を経験せず、そによりウイルスを他者にさらに移す危険に気付かずに、何年も生存し得る。従って、HIV感染者と接触している者が感染する切迫した危険の故に、HIV伝染の予防は重要である。これは特に感染患者に医療を与える者、例えば医師、看護士又は歯科医の場合にそうである。危険にある者の別の群は、特に母乳育児に代わるものがあまり明白でない未開発国における、母親が感染したか又は感染する危険にある母乳で育てられている乳児である。従って、HIVの伝染に対する有効な予防を与える適用の容易な手段が必要である。そのような予防手段の提供は、本発明のさらなる目的である。
【0010】
本発明の主題であるTMC278の結晶形をマイクロ−もしくはナノ粒子に調製することができ、それはHIV感染の処置ならびにHIVの伝染の予防におけるデポ調剤として働く。薬剤物質のナノ粒子は、例えば特許文献2に記載されて既知である。TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子調剤を1週間かもしくはそれより長い時間間隔で断続的に投与し、HIVの増殖を抑制するのに十分な血漿レベルを生ずることができることが見出された。それにより投与の回数が減らされ、それは薬剤負荷量及び患者の薬剤コンプライアンスの点で有益である。そのようなマイクロ−もしくはナノ粒子調剤は、HIVの長期処置又は予防において用途を見出すことができる。
【0011】
TMC278の多形相Iは、その有益な性質のために、マイクロ−もしくはナノ粒子調剤における使用に特に適している。そのような調剤は、投与される与えられる量のTMC
278に関して、より高い血漿レベルを生ずると期待される。さらに、より迅速に所望の血漿レベルに達するであろう。高い安全性の余裕(safety margins)が望まれる場合、比較的高い血漿レベルが必要であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/16306号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第A−0 499 299号明細書
【発明の概要】
【0013】
図の記述
図1:赤外分光測定、KBr分散系 TMC278多形相I。
図2:TMC278多形相Iの粉末X−線回折(XRD)パターン。
図3:示差走査熱量測定(DSC):TMC278多形相I。
図4:TMC278多形相Iの溶解プロット。
図5:赤外分光測定,KBr分散系 TMC278多形相II。
図6:TMC278多形相IIの粉末XRDパターン。
図7:DSC:TMC278多形相II。
図8:TMC278多形相IIの溶解プロット。
【0014】
発明の概略
本発明は、リルピビリンとも呼ばれるTMC278の特定の結晶形、すなわち(E)4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル、すなわちTMC278の多形相Iに関する。この多形相は、実施例で言及する物理化学的パラメーターにより特徴付けられる。
【0015】
本発明は、さらに、この結晶形の製造方法に関する。さらなる側面において、本発明は、活性成分としてTMC278の多形相I及び製薬学的に許容され得る担体を含んでなる固体の製薬学的組成物に関する。
【0016】
本発明は、さらに、表面改質剤が表面に吸着し、製薬学的に許容され得る水性担体中に懸濁されたマイクロ−もしくはナノ粒子の形態におけるTMC278の多形相の治療的に有効な量を含んでなる、筋肉内又は皮下注入による投与のためのマイクロ−もしくはナノ粒子製薬学的組成物に関する。
【0017】
本発明はさらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は、本明細書に特定されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の抗−HIV有効量を、筋肉内もしくは皮下注入により該患者に投与することを含んでなる。他の側面において、該方法は長期処置のためであり、組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔で間欠的に投与されるか又は投与されるべきである。あるいはまた、本発明は、HIV感染の処置用の薬剤の製造のための、本明細書で特定されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用に関する。あるいは、該使用は長期処置のためであり、組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔で間欠的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0018】
本発明はさらに、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防方法に関し、該方法は本明細書で特定されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物のHIV感染の予防において有効な量を、筋肉内もしくは皮下注入により該患者に投与することを含んでなる。他の側面において、該方法は長期処置のためであり、組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔で間欠的に投与されるか又は投与さ
れるべきである。あるいはまた本発明は、HIVに感染する危険にある患者におけるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための、本明細書で特定されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用に関する。あるいは、該使用は長期処置のためであり、組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔で間欠的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0019】
さらに別の製薬学的組成物、処置もしくは予防方法ならびにこれらの組成物に基づく薬剤の製造のための使用は、下記に記載され且つ本発明の一部であるものとする。
【0020】
本発明の記述
本明細書で用いられる場合、化合物の多形相は、同じ化学的本質であるが、異なる結晶配置にあるものを指す。
【0021】
本発明の主題であるTMC278の結晶形Iを「TMC278のI形」、「TMC278の多形相I」又は他の類似の表現により呼ぶこともでき、それは下記に概述される物理化学的パラメーターにより特徴付けられる。TMC278の第2の多形相は本明細書でII形と称され、国際公開第03/16306号パンフレットの方法を用いてこの化合物を合成する時に得られる形である。それを「TMC278のII形」、「TMC278の多形相II」又は類似の用語により呼ぶこともできる。
【0022】
TMC278の化学構造を式:
【0023】
【化1】

【0024】
により示すことができる。TMC278はシアノエチル部分の二重結合において2つの立体化学的配置、すなわちE(Entgegen)配置(E−異性体)及びZ(Zusammen)配置(Z−異性体)で存在する。他にことわらなければ、TMC278という用語又は類似の用語はE−異性体、特に実質的にZ−異性体を含まないE−異性体を指す。本明細書でE−異性体に言及する場合は常に、純粋なE−異性体又はE−異性体が主に存在するE−及びZ−異性体の異性体混合物、すなわち70%より多く又は特に80%より多くのE−異性体、さらに特定的に90%より多くのE−異性体を含有する異性体混合物を意味する。特に興味深いのは、実質的にZ−異性体を含まないE−異性体である。これに関し、実質的に含まないは、全くもしくはほとんどZ−異性体を含まないE−Z−混合物、例えば90%、特に95%又は98%かもしくは99%もの多くのE−異性体を含有する異性体混合物を指す。
【0025】
TMC278はHIV阻害剤、特に人間における後天性免疫不全症候群(AIDS)の病因論的作因(aetiological agent)であるHIV−1の阻害剤である。TMC278は薬剤耐性及び多剤耐性HIV株に対する活性、特に1種もしくはそれより多い非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、特にエファビレンツ(efavirenz)、ネビラピン(nevirapine)及びデラビルジン(delavirdine)への獲得耐性を有するHIV株に対する活性を示す。TMC278は、血小板減少症、カポジ肉腫ならびに痴呆及び進行性構語障害、運動失調及び見当識障害のような症状を生ず
る進行性脱髄を特徴とする中枢神経系の感染、末梢ニューロパシー、進行性全身性リンパ節症(PGL)及びAIDS−関連症候群(ARC)を含むHIV感染と関連する他の状態の処置において用途を見出すことができる。
【0026】
本発明の主題であるTMC278の多形相Iは、HIVに感染した者の処置において、ならびにHIV感染の予防において有用である。それを、HIVに関連する上記で言及した状態の処置及び予防において用いることもできる。従って本発明は、人間におけるHIV感染の処置方法又は人間におけるHIV感染の予防方法にも関し、それはTMC278の多形相Iの治療的に有効な量を、必要な人間に投与することを含んでなる。あるいはまた本発明は、人間におけるHIV感染に関連する疾患の処置方法に関し、それはTMC278の多形相Iの治療的に有効な量を、必要な人間に投与することを含んでなる。
【0027】
TMC278の多形相Iは、多形相IIと比較して、比較的低いpHにおける向上した溶解度及び向上した固有溶解速度を示す。TMC278の劣った溶解度を考えると、これらの性質はバイオアベイラビリティーに有益に働き、有効な血漿レベルがより容易に得られ、活性成分をその抗ウイルス作用を及ぼすためにより利用可能なものとするであろう。従って、TMC278の多形相Iは、胃液のような比較的酸性の媒体中でより良く再吸収されるであろう。
【0028】
TMC278をケトン溶媒、例えばジC1−4アルキルケトン、例えば2−ブタノン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン及び特にアセトン中に溶解し、それを還流温度まで加熱し、この溶液を特に0℃より低く冷却することにより、TMC278の多形相Iを調製することができる。溶媒を除去すると結晶が得られ、それを乾燥することができる。出発材料TMC278は、国際公開第03/16306号パンフレットに記載されている通りに製造することができる。C1−4アルキルという用語は、1〜4個の炭素原子の直鎖状もしくは分枝鎖状飽和炭化水素を指す。
【0029】
本発明は、製薬学的に許容され得る担体及び活性成分としてTMC278の多形相Iの治療的に有効な量を含んでなる固体の製薬学的組成物にも関する。組成物は、錠剤又はカプセルのような固体の投薬形態物あるいは懸濁剤の形態にあることができる。活性成分としてのTMC278の多形相Iの有効量を、製薬学的に許容され得る担体と緊密な混合物において合わせることにより、本発明の製薬学的組成物を調製することができる。製薬学的組成物は、好ましくは経口的投与に適した単位投薬形態物、例えば錠剤及びカプセルに調製される。担体は、例えば湿潤剤、充填剤、希釈剤、滑り剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤のような通常の製薬学的媒体ならびに風味料、甘味料及び着色料のような場合による賦形剤のいずれも含んでなることができる。錠剤は場合によりフィルム−コーティングされていることができる。注入可能な懸濁剤を調製することもでき、その場合には適した液体担体、懸濁化剤などを用いることができる。
【0030】
単位投薬形態における製薬学的組成物は、約5〜約500mg又は約10mg〜約250mg又は約20mg〜約200mg又は約25mg〜約150mgの範囲内、例えば約25mg、約50mg、約75mg、約100mg又は約150mgである量でTMC278の多形相Iを含有することができる。興味深いのは:
(a)5〜50%のTMC278の多形相I;
(b)0.01〜5%の湿潤剤;
(c)40〜92%の希釈剤;
(d)0〜10%のポリマー;
(e)2〜10%の崩壊剤;
(f)0.1〜5%の滑り剤;
(g)0.1〜1.5%の滑沢剤
を含んでなる本明細書で特定される製薬学的組成物である。
【0031】
TMC278の多形相Iをさらにマイクロ−もしくはナノ粒子懸濁剤に転換することができ、それを限られた回数の薬剤投与しか必要としないHIV感染の長期処置ならびにHIV感染の長期予防において用いることができる。これは薬剤負荷量ならびに処方される投薬管理への患者のコンプライアンスの点で有益である。
【0032】
「HIV感染の予防」という用語は、患者がHIVに感染するのを予防するか又は避けることに関する。感染の源はHIVを含有する材料、特にHIVを含有する体液、例えば血液又は精液あるいはHIVに感染している他の患者のように種々であり得る。HIV感染の予防は、HIVを含有する材料から又はHIVに感染した者から未感染の人へのウイルスの伝染の予防に関するか、あるいはウイルスが未感染の人の体内に入るのを妨げることに関する。HIVウイルスの伝染は、性的伝染によるか又は血液試料を扱うかもしくはは輸血の場合の感染患者の血液との接触、例えば感染患者に医療を与える医療スタッフによるようなHIV転移のいずれの既知の原因によることもできる。それは例えばHIV感染細胞を用いて実験室実験を行なう場合の感染細胞との接触によることもあり得る。
【0033】
本明細書で用いられる場合、「HIV感染の処置」という用語は、HIVに感染している患者の処置に関する。「HIV感染の処置」という用語は、上記で挙げたHIV感染と関連する疾患の処置にも関する。「HIV感染の処置」、「抗−HIV治療」という用語ならびに類似の用語は、HIVのウイルス負荷(特定の体積の血清中のウイルスRNAのコピーの数として表される)を減少させる処置を指す。処置が有効であるほど、ウイルス負荷は低い。好ましくは、ウイルス負荷は可能な限り低いレベルまで、例えばml当たり約200コピーより低い、特にml当たり約100コピーより低い、さらに特定的にml当たり50コピーより低い、可能ならウイルスの検出限界より低いレベルまで下げられるべきである。1、2又は3桁ものウイルス負荷の低下(例えば約10〜約10又はそれより大きい、例えば約10のオーダー(order)における低下)は、処置の有効性の指標である。抗−HIV処置の有効性を測定するための他のパラメーターはCD4カウントであり、それは正常の成人においてμl当たり500〜1500個の細胞の範囲である。低くなったCD4カウントはHIV感染の指標であり、μl当たり約200個の細胞より低くなるとAIDSが発症し得る。例えばμl当たり約50、100、200個か又はそれより多くの細胞でのCD4カウントの増加も、抗−HIV処置の有効性の指標である。CD4カウントは、特にμl当たり約200個の細胞より高いか又はμl当たり約350個の細胞より高いレベルまで増加するべきである。ウイルス負荷又はCD4カウントあるいは両方を用いて、HIV感染の程度を診断することができる。
【0034】
「HIVの有効な処置」という用語及び類似の用語は、上記の通りウイルス負荷を低下させるか、CD4カウントを増加させるか、又は両方である処置を指す。「HIVの有効な予防」という用語及び類似の用語は、HIVを含有する材料又はHIV感染患者のようなHIV感染の源と接触している集団において、新しく感染する患者の相対的数が減少する状況を指す。例えばHIV感染者及び非−感染者の混合集団において、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物を用いて処置された非−感染者と未処置の非−感染者を比較する時に、新しく感染した者の相対的数が減少しているかどうかを測定することにより、有効予防を測定することができる。この減少は、与えられる集団における時間を経ての感染及び非−感染者の数の統計的分析により測定することができる。
【0035】
「治療的に有効な量」、「HIV感染の予防において有効な量」という用語及び類似の用語は、有効な血漿レベルを生ずる活性成分TMC278の量を指す。「有効な血漿レベル」を用いて、HIV感染の有効な処置又は有効な予防を与えるHIV阻害剤TMC27
8の血漿レベルを意味する。「患者」という用語は、特に人間に関する。
【0036】
「マイクロ−もしくはナノ粒子」という用語は、マイクロメーター又はナノメーター範囲内の粒子を指す。1つの態様において、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は、ナノ粒子形態におけるTMC278の多形相Iを含んでなる。本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子の平均有効粒度は約50μmより小さいか、又は約20μmより小さいか、又は約10μmより小さいか、又は約1000nmより小さいか、又は約500nmより小さいか、又は約400nmより小さいか、又は約300nmより小さいか、又は約200nmより小さいことができる。平均有効粒度の下限は低いことができ、例えば約100nmのように低いか又は約50nmのように低いことができる。1つの態様において、平均有効粒度は約50nm〜約50μm又は約50nm〜約20μm又は約50nm〜約10μm又は約50nm〜約1000nm、約50nm〜約500nm又は約50nm〜約300nm又は約100nm〜約250nm又は約125nm〜約175nmの範囲内、例えば約130nm又は約150nmである。
【0037】
本明細書で用いられる場合、平均有効粒度という用語はその通常の意味を有し、当該技術分野において既知の粒度測定法、例えば沈降フィールドフローフラクショネーション、光子相関分光分析(photon correlation spectroscopy)、レーザー回折又はディスク遠心分離(disk centrifugation)により測定され得る。本明細書で言及される平均有効粒度を、粒子の体積分布と関連付けることができる。その場合、「約50μmより小さい有効平均粒度」により、粒子の体積の少なくとも50%が50μmの有効平均より小さい粒度を有することを意味し、言及される他の有効粒度に同じことが当てはまる。類似のやり方で、平均有効粒度を粒子の重量分布と関連付けることができるが、通常これは平均有効粒度に関する値と同じか又は大体同じ値を生ずるであろう。
【0038】
TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は長期間に及ぶ活性成分TMC278の放出を与え、従ってそれらを持続もしくは遅延放出組成物あるいはデポ調剤とも呼ぶことができる。投与の後、そのような組成物は体内に留まり且つ一定してTMC278を放出し、長期間、患者の系内に活性成分を保ち、それにより抗−HIV処置又はHIV感染の予防を与える。投与されると、TMC278の血漿レベルは大体安定であり、すなわちそれらは限られた余裕内で変動する。血漿レベルは大体定常状態モードあるいは大体ゼロ次の放出速度に達する。ある場合には、投与後に初期血漿濃度ピークがあり得る。
【0039】
本明細書で用いられる場合、「長期間」という用語を用い、1週間〜1年もしくは2年の範囲内であることができる期間(又は時間)、あるいは1〜2週間又は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内の期間、あるいは1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月又は3〜6ヶ月又は6ヶ月〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内の期間を意味する。
【0040】
活性成分、TMC278の血漿レベルは閾値より高くなければならない。治療的適用の場合、該閾値は、TMC278がHIV感染の有効な処置を与える最低の血漿レベルである。HIV感染の予防の場合、該閾値は、HIV感染の伝染の予防においてTMC278が有効である最低の血漿レベルである。
【0041】
例えば「HIV感染の長期予防」又は「HIV感染の長期処置」あるいは類似の用語と関連して用いられる「長期」を用い、1週間〜1年もしくは2年の範囲内又はそれより長く、例えば5もしくは10年であることができる期間を意味する。特にHIV感染の処置の場合、そのような期間は1〜数年のオーダーで(in the order of)長いであろう。特に予防の場合、そのような期間は比較的短く、例えば1週間〜1年である
こともできる。
【0042】
TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子組成物を種々の時間間隔で投与することができる。HIV感染の予防において用いる場合、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物を1回又は限られた回数のみ、例えば2、3、4、5もしくは6回又はそれより多数回投与することができる。感染の危険がある期間のような限られた期間の間、予防が必要である場合に、これを薦めることができる。
【0043】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物を上記の時間間隔で、例えば1週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内又は6ヶ月〜12ヶ月の範囲内の時間間隔で、例えば2週間毎に1回又は1ヶ月毎に1回又は3ヶ月毎に1回投与することができる。他の態様において、時間間隔は1〜2週間又は2〜3週間又は3〜4週間の範囲内であるか、あるいは時間間隔は1〜2ヶ月又は2〜3ヶ月又は3〜4ヶ月又は3〜6ヶ月又は6ヶ月〜12ヶ月又は12ヶ月〜24ヶ月の範囲内である。時間間隔は少なくとも1週間であることができるが、数週間、例えば2、3、4、5又は6週間、あるいは1ヶ月又は2、3、4、5もしくは6ヶ月又はそれより長く、例えば9もしくは12ヶ月であることもできる。さらにコンプライアンスを向上させるために、週に1回のスケジュールで組成物が投与される場合には、週のある決まった曜日に、あるいは1ヶ月に1回のスケジュールの場合には月のある決まった日に彼らの薬剤を摂取するように、患者を指導することができる。
【0044】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の各投与の間の時間間隔の長さは、多様であることができる。例えば該時間間隔を血漿レベルの関数として選ぶことができる。TMC278の血漿レベルが低すぎるとみなされる場合、間隔はより短いことができるか、あるいはTMC278の血漿レベルが高すぎるとみなされる場合、間隔はより長いことができる。本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物を、中間の追加の投与なしで等しい時間間隔で投与することができる。同じ長さの時間間隔を有することは、投与スケジュールが単純である、例えば投与が週の同じ曜日に、又は月の同じ日に行なわれるという利点を有する。
【0045】
投与されるTMC278の投薬量(又は量)は、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物中のTMC278の量あるいは与えられる組成物の投与量に依存する。より高い血漿レベルが望まれる場合、より高いTMC278濃度の組成物又は与えられる組成物のより多くのいずれかあるいは両方を投与することができる。より低い血漿レベルが望まれる場合には、これが逆に適用される。多様な時間間隔及び多様な投薬量の組み合わせを選んで、ある所望の血漿レベルに達することもできる。投与されるTMC278の投薬量(又は量)は、投与の頻度(すなわち各投与の間の時間間隔)にも依存する。通常、投与があまり頻繁でない場合、投薬量はより高いであろう。
【0046】
投薬管理は、HIV感染の予防が意図されているか又はその処置が意図されているかにも依存する。治療の場合、投与されるTMC278の投薬量又は投薬の頻度あるいは両方は、TMC278の血漿濃度が最低血漿レベル(又はCmin)より高く保たれるように選ばれる。「最低血漿レベル」という用語は、HIVの有効な処置を与えるTMC278の血漿レベルを指す。特に、TMC278の血漿レベルは、約10ng/mlの最低血漿レベルより高いか、又は約13.5ng/mlより高いか、又は約15ng/mlより高いか、又は約20ng/mlより高いか、又は約40ng/mlより高いか、あるいはもっと高い、例えば約50ng/mlより高いか、又は約90ng/mlより高いか、又は約270ng/mlより高いか、又は約540ng/mlより高いレベルに保たれる。あるいはTMC278の血漿レベルをある範囲内に、特に上記のレベルから選ばれる最低血漿レベルから始まって上記のレベルから選ばれる、ならびに500ng/ml及び100
0ng/mlから選ばれるもっと高い血漿レベルで終わる範囲内、例えば約10ng/ml〜約20ng/ml、約20ng/ml〜約90ng/ml、約90ng/ml〜約270ng/ml、約270ng/ml〜約540ng/ml、約540ng/ml〜約1000ng/mlに保つことができる。
【0047】
HIV予防の場合、「最低血漿レベル」(又はCmin)という用語は、HIV感染の有効な予防を与えるTMC278の最低血漿レベルを指す。HIV予防のために、TMC278の血漿レベルを、治療に関連して上記で挙げた最低血漿レベルより高いレベルに保つことができるか、あるいはもっと低いレベルに、例えば約4ng/ml又は約5ng/ml又は約8ng/mlより高いレベルに保つことができる。TMC278の血漿レベルを、安全性の余裕を持つためにいくらかより高いレベルに保つことができる。そのようなより高いレベルは約50ng/mlかもしくはそれより高くから始まる。TMC278の血漿レベルを、治療に関連して上記で上げた範囲内であるレベルに保つことができるが、ここで下限は約4ng/ml又は約5ng/ml又は約8ng/mlの血漿レベルを含む。
【0048】
TMC278の利点は、有意な副作用なしで比較的高い血漿レベルまでそれを用いることができることである。TMC278の最高血漿濃度(Cmax)は比較的高いレベルに、最高で約500ng/ml又は約1000ng/mlにさえ達することができる。1つの態様において、投与されるべきTMC278の量及び投与の頻度は、血漿濃度が長期間、最高血漿レベル(又は上記で特定したCmax)と最低血漿レベル(又は上記で特定したCmin)の間に含まれるレベルに保たれるように選ばれる。
【0049】
ある場合には、TMC278の血漿レベルを比較的低いレベルに、例えば本明細書で特定される最低血漿レベルに可能な限り近いレベルに保つことが望ましいかも知れない。これは、投与の頻度及び/又は各投与で投与されるTMC278の量を減少させることを可能にするであろう。予防の場合には、TMC278の血漿レベルを比較的低いレベルに保つことができる。他の場合には、TMC278の血漿レベルを比較的より高いレベルに保つのが望ましいかも知れず、例えば最低の血漿レベルは、本明細書で言及される特定のレベルのような、HIVの有効な処置を与えるTMC278の最低血漿レベルに等しいことができる。
【0050】
予防の場合、投与されるべき投薬量は、約0.2mg/日〜約50mg/日又は0.5mg/日〜約50mg/日又は約1mg/日〜約10mg/日又は約2mg/日〜約5mg/日、例えば約3mg/日に基づいて計算されねばならない。1週間毎の投薬量を計算するために、これらの量に7を乗じなければならず、1ヶ月毎の投薬量のために、これらの量に30を乗じなければならない。他の投薬管理のための投薬量は、1日の投薬量に各投与の間の日数を乗じることにより、容易に計算され得る。治療のためには、投薬量はいくらかより高くなければならず、約1mg/日〜約150mg/日又は約2mg/日〜約100mg/日又は約5mg/日〜約50mg/日又は約10mg/日〜約25mg/日、例えば約15mg/日に基づいて計算されるべきである。対応する1週間又は1ヶ月の投薬量は、上記に示した通りに計算することができる。予防における適用のために、治療的適用の場合と同じ投薬量を用いることができる。
【0051】
1つの態様において、本発明の組成物中のマイクロ−又はナノ粒子は、主にTMC278の多形相I及び表面改質剤を含んでなり、それらの合わされた量は、マイクロ−又はナノ粒子の少なくとも約50%又は少なくとも約80%又は少なくとも約90%又は少なくとも約95%又は少なくとも約99%を構成することができる。
【0052】
本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子は、それらの表面上に吸着し、湿潤剤としてなら
びに懸濁剤の安定剤として働く表面改質剤を有する。
【0053】
適した表面改質剤は、種々の賦形剤、例えばゼラチン、カゼイン、レシチン、負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態(例えばホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノサイト、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸(phosphatic acid)及びそれらの塩、例えばアルカリ金属塩、例えばそれらのナトリウム塩、例えば卵ホスファチジルグリセロールナトリウム、例えばLipoidTM EPGの商品名の下に入手可能な製品)、アラビアゴム、ステアリン酸、ベンズアルコニウムクロリド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばマクロゴルエーテル、例えばセトマクロゴル 1000、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンステアレート、コロイド二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、胆汁塩、例えばタウロコール酸ナトリウム、デソキシタウロコール酸ナトリウム、デソキシコール酸ナトリウム;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マグネシウムアルミネートシリケート、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるポロキサマー、例えばPluronicTM F68、F108及びF127;チロキサポル(tyloxapol);ビタミン E−TGPS(α−トロフェリルポリエチレングリコールスクシネート、特にα−トコフェリルポリエチレングリコール 1000 スクシネート);ポロキサミン、例えばエチレンジアミンへのエチレンオキシドとプロピレンオキシドの逐次付加(sequential addition)から誘導される四官能基性ブロックコポリマーであるTetronicTM 908(T908);デキストラン;レシチン;ナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステル、例えばAerosol OTTM(AOT)の商品名の下に販売されている製品;ラウリル硫酸ナトリウム(DuponolTM P);TritonTM X−200の商品名の下に入手可能なアルキルアリールポリエーテルスルホネート;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(TweenTM 20、40、60及び80);脂肪酸のソルビタンエステル(SpanTM 20、40、60及び80又はArlacelTM 20、40、60及び80);ポリエチレングリコール(例えばCarbowaxTM 3550及び934の商品名の下に販売されているもの);スクロースステアレート及びスクロースジステアレート混合物、例えばCrodestaTM F110又はCrodestaTM SL−40の商品名の下に入手可能な製品;ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド(CTAC);ポリビニルピロリドン(PVP)から選ばれることができる。望ましければ、2種もしくはそれより多い表面改質剤を組み合わせて用いることができる。
【0054】
特定的な表面改質剤は、ポロキサマー、α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及び負に帯電したリン脂質の塩又はその酸形態から選ばれる。さらに特定的に、表面改質剤はPluronicTM F108、ビタミン E TGPS、TweenTM 80及びLipoidTM EPGから選ばれる。これらの表面改質剤の1種もしくはそれより多くを用いることができる。PluronicTM F108はポロキサマー 338に相当し、それはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーであり、それは一般に、式HO−[CHCHO]−[CH(CH)CHO]−[CHCHO]−Hに従い、ここでx、y及びzの平均値はそれぞれ128、54及び128である。ポロキサマー338の他の商品名はHodag NonionicTM 1108−F及びSynperonicTM PE/F108である。1つの態様において、表面改質剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びホスファチジルグリセロール塩(特に卵ホスファチジルグリセロールナトリウム)の組み合わせを含んでなる。
【0055】
TMC278の多形相I対表面改質剤の相対的な量(w/w)は変り得るが、1:2〜
約20:1の範囲内、特に1:1〜約10:1の範囲内、例えば約4:1であることができる。
【0056】
TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子は、機械的手段による粒度縮小化(ナノ化)により調製され得る。好ましくは超微粉砕された形態におけるTMC278の多形相Iを表面改質剤の存在下で水性分散媒中に導入し、磨砕媒体を適用して粒度を所望の有効粒度に減じる。本発明の粒子の調製のための一般的な方法は、
(a)超微粉砕された形態でTMC278の多形相Iを得;
(b)超微粉砕されたTMC278を液体媒体に加えて予備混合物/予備分散系を形成し;そして
(c)予備混合物を磨砕媒体の存在下で機械的手段に供して、平均有効粒度を減じる
ことを含んでなる。
【0057】
超微粉砕された形態のTMC278の多形相Iは、当該技術分野において既知の方法を用いて調製される。予備分散系中のTMC278活性薬剤の平均有効粒度は、篩別分析により決定される約100μmより小さいことができる。平均有効粒度が約100μmより大きい場合、それを好ましくは約100μmより小さく減じる。超微粉砕されたTMC278の多形相Iを、次いで水性媒体に加え、予備分散系を形成することができる。
【0058】
TMC278の多形相Iの有効平均粒度を減じるために適用される機械的手段は、ZrOビーズのようなビーズを用いるローラーミル又は類似の手段を含んでなる。寸法縮小は、TMC278化合物を有意に分解しない温度、好ましくは30〜40℃より低温、例えば周囲温度で、必要なら冷却を用いて行なわれる。
【0059】
本発明に従うマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は、製薬学的に許容され得る水性担体、例えば場合により懸濁化剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤、等張化剤のような他の製薬学的に許容され得る成分と混合されていることができる無菌水を含有する。
【0060】
適した緩衝剤及びpH調整剤は、分散系を中性から非常にわずかに塩基性(pH8.5まで)、好ましくは7〜7.5のpH範囲内とするのに十分な量で用いられなければならない。特定的な緩衝剤は弱酸の塩である。加えることができる緩衝剤及びpH調整剤は、これらの混合物を含んで酒石酸、マレイン酸、グリシン、乳酸ナトリウム/乳酸、アスコルビン酸、クエン酸ナトリウム/クエン酸、酢酸ナトリウム/酢酸、重炭酸ナトリウム/炭酸、コハク酸ナトリウム/コハク酸、安息香酸ナトリウム/安息香酸、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸ナトリウム/炭酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、ベンゼンスルホン酸、ベンゾエートナトリウム/酸(benzoate sodium/acid)、ジエタノールアミン、グルコノデルタラクトン、塩酸、臭化水素、リシン、メタンスルホン酸、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、トロメタミン、グルコン酸、グリセリン酸、グルタル酸(gluratic acid)、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミンから選ばれることができる。
【0061】
防腐剤は抗微生物剤及び酸化防止剤を含んでなり、それらは安息香酸、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、クロルブトル、ガレート、ヒドロキシベンゾエート、EDTA、フェノール、クロロクレゾール、メタクレゾール、ベンズエトニウムクロリド、ミリスチル−γ−ピコリニウムクロリド、フェニル水銀アセテート及びチメロサルより成る群から選ばれることができる。ラジカル掃去剤にはBHA、BHT、ビタミン E及びパルミチン酸アスコルビルならびにそれらの混合物が含まれる。酸素掃去剤にはアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、L−システイン、アセチルシステイン、メチオニン、チオグリセロール、アセ
トンナトリウムビサルファイト、イソアスコルビン酸、ヒドロキシプロピルシクロデキストリンが含まれる。キレート化剤にはクエン酸ナトリウム、ナトリウムEDTA及びリンゴ酸が含まれる。
【0062】
等張化剤(isotonizing agent)又は等張剤(isotonifier)は、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の等張性を保証するために存在することができ、糖類、例えばグルコース、デスキトロース、スクロース、フルクトース、トレハロース、ラクトース;多価糖アルコール、好ましくは三価もしくはそれより高い糖アルコール、例えばグリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールが含まれる。あるいはまた、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム又は他の適した無機塩を用いて溶液を等張にすることができる。これらの等張剤を単独で又は組み合わせて用いることができる。懸濁剤は、簡便には0〜10%(w/v)、特に0〜6%の等張化剤を含んでなる。興味深いのは非イオン性等張剤、例えばグルコースであり、それは、電解質がコロイドの安定性に影響し得るからである。
【0063】
TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の粘度は、注入による投与を可能にするのに十分に低く、約75mPa.sより低いか又は60mPa.sより低くなければならない。
【0064】
好ましくは、本発明のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物は、注入される体積を最小に保つために、許容され得る限り多くのTMC278の多形相I、特に3〜40%(w/v)又は3〜30%(w/v)又は3〜20%(w/v)又は10〜30%(w/v)のTMC278の多形相Iを含んでなる。1つの態様において、マイクロ−もしくはナノ粒子組成物は約10%(w/v)又は約20%(w/v)又は約30%(w/v)のTMC278の多形相Iを含有する。
【0065】
1つの態様において、水性懸濁剤は、組成物の合計体積に基づく重量により:
(a)3%〜50%(w/v)又は10%〜40%(w/v)又は10%〜30%(w/v)のTMC278の多形相I;
(b)0.5%〜10%又は0.5%〜2%(w/v)の湿潤剤;
(c)0%〜10%又は0%〜5%又は0%〜2%又は0%〜1%の1種もしくはそれより多い緩衝剤;
(d)0%〜10%又は0%〜6%(w/v)の等張化剤、
(e)0%〜2%(w/v)の防腐剤;及び
(f)100%とするのに十分な注入用水
を含んでなることができる。
【0066】
場合により懸濁剤に、pHを約pH7の値にする量の酸又は塩基を加えることができる。適した酸又は塩基は、生理学的に許容され得るもののいずれか、例えばHCl、HBr、硫酸、アルカリ金属水酸化物、例えばNaOHである。
【0067】
本発明におけるようなTMC278の多形相Iの投与は、HIV感染の処置に十分であり得るが、複数の場合に他のHIV阻害剤、例えば他の種類のHIV阻害剤、特にNRTIs、PIs、融合阻害剤、インテグラーゼ阻害剤及びCCR5−阻害剤から選ばれるものを共−投与するのが良いかも知れない。
【0068】
ある場合には、HIV感染の処置は、TMC278の多形相Iのマイクロ−もしくはナノ粒子組成物のみ、すなわちさらに別のHIV阻害剤の共−投与なしのモノテラピー(monotherapy)としての投与に限られ得る。例えばウイルス負荷が比較的低い場合、例えばウイルス負荷が約200コピー/mlより低い、特に約100コピー/mlよ
り低い、さらに特定的に50コピー/mlより低い、特別にウイルスの検出限界より低い場合に、この選択肢を薦めることができる。1つの態様において、維持療法と呼ぶことができるこの型のモノテラピーは、血漿中のウイルス負荷が前記で挙げた低いウイルスレベルに達するまでのある期間の間のHIV薬の組み合わせを用いる、特にHAART組み合わせのいずれかを用いる初期処置の後に適用される。
【0069】
さらに別の側面において、本発明は、HIVに感染している患者の維持療法用の薬剤の製造のための、抗−ウイルス的に有効な量のTMC278の多形相Iを含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用に関し、ここで組成物は1週間〜1年又は1週間〜2年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内である時間間隔あるいは本明細書で言及される他の時間間隔のいずれかで間欠的に投与されるか又は投与されるべきである。
【0070】
本発明はHIVに感染した患者の長期処置のための方法も提供し、該方法は
(a)HIV阻害剤の組み合わせを用いる該患者の処置;及び続く
(b)本明細書で特定されるTMC278の多形相Iの抗−ウイルス的に有効な量を含んでなるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の間欠的投与
を含んでなり、ここで組成物は1週間〜1年又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲の時間間隔あるいは本明細書で言及される他の時間間隔のいずれかで投与される。
【0071】
本発明は、HIV感染の処置又は予防における薬剤として用いるための、本明細書に記載されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物ならびにHIV感染の予防又は処置用の薬剤の製造のための、本明細書に記載されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用にも関する。本発明はさらに、HIVに感染した患者の処置方法に関し、該方法は本明細書に記載されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の治療的に有効な量を投与することを含んでなる。
【0072】
TMC278の多形相Iを単独で、又は他の抗ウイルス薬、特に抗−レトロウイルス薬と組み合わせて用いることができる。かくして本発明は、抗−HIV処置における同時、個別もしくは逐次的使用のための組み合わせ調製物として(a)TMC278の多形相I及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗レトロウイルス性化合物を含有する製品にも関する。種々の薬剤を、製薬学的に許容され得る担体と一緒に単一の調製物において組み合わせることができる。かくして本発明は、製薬学的に許容され得る担体ならびに(a)TMC278の多形相Iの治療的に有効な量及び(b)1種もしくはそれより多い他の抗レトロウイルス薬を含んでなる製薬学的組成物にも関する。
【0073】
該他の抗レトロウイルス性化合物は、スラミン(suramine)、ペンタミジン(pentamidine)、チモペンチン(thymopentin)、カスタノスペルミン(castanospermine)、デキストラン(デキストランサルフェート)、フォスカルネト−ナトリウム(トリナトリウムホスホノホルメート);ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTIs)、例えばジドブジン(zidovudine)(AZT)、ジダノシン(didanosine)(ddI)、ザルシタビン(zalcitabine)(ddC)、ラミブジン(lamivudine)(3TC)、スタブジン(stavudine)(d4T)、エムトリシタビン(emtricitabine)(FTC)、アバカビル(abacavir)(ABC)、アムドキソビル(amdoxovir)(DAPD)、エルブシタビン(elvucitabine)(ACH−126,443)、AVX 754((−)−dOTC)、フォジブジン チドキシル(fozivudine tidoxil)(FZT)、ホスファジド(phosphazide)、HDP−990003、KP−1461、MIV−210、ラシビル(racivir)(PSI−5004)、UC−781など;非−ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)、例えばデラビルジン(delavirdine)(DLV)、エファビレンツ
(efavirenz)(EFV)、ネビラピン(nevirapine)(NVP)、ダピビリン(dapivirine)(TMC120)、エトラビリン(etravirine)(TMC125)、DPC−082、(+)−カラノリド A、BILR−355など;ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(NtRTIs)、例えばテノフォビル(tenofovir)((R)−PMPA)及びテノフォビルジソプロキシルフマレート(tenofovir disoproxil fumarate)(TDF)など;ヌクレオチド−競合性逆転写酵素阻害剤(NcRTIs)、例えば国際公開第2004/046143号パンフレットの化合物;トランス−活性化タンパク質の阻害剤、例えばTAT−阻害剤、例えばRO−5−3335、BI−201など;REV阻害剤;プロテアーゼ阻害剤、例えばリトナビル(ritonavir)(RTV)、サクイナビル(saquinavir)(SQV)、ロピナビル(lopinavir)(ABT−378又はLPV)、インジナビル(indinavir)(IDV)、アムプレナビル(amprenavir)(APV又はVX−478)、TMC126、ネルフィナビル(nelfinavir)(NFV又はAG−1343)、アタザナビル(atazanavir)(BMS 232,632)、ダルナビル(darunavir)(TMC114)、フォサムプレナビル(fosamprenavir)(GW433908又はVX−175)、ブレカナビル(brecanavir)(GW−640385、VX−385)、P−1946、PL−337、PL−100、チプラナビル(tipranavir)(TPV又はPNU−140690)、AG−1859、AG−1776、Ro−0334649など;融合阻害剤(例えばエンフビルチド(enfuvirtide)(T−20))、付着阻害剤(attachment inhibitors)及び共−受容体阻害剤を含むエントリー阻害剤(entry inhibitors),後者はCCR5アンタゴニスト(例えばアンクリビロク(ancriviroc)、CCR5mAb004、マラビロク(maraviroc)(UK−427,857)、PRO−140、TAK−220、TAK−652、ビクリビロク(vicriviroc)(SCH−D、SCH−417,690))及びCXR4アンタゴニスト(例えばAMD−070、KRH−27315)を含み、エントリー阻害剤の例はPRO−542、TNX−355、BMS−488,043、BlockAide/CRTM、FP 21399、hNM01、ノナカイン(nonakine)、VGV−1である;成熟阻害剤は例えばPA−457である;ウイルスインテグラーゼの阻害剤、例えばラルテグラビル(raltegravir)(MK−0518)、エルビテグラビル(elvitegravir)(JTK−303又はGS−9137)、BMS−538,158;リボザイム;イムノモジュレーター;モノクローナル抗体;遺伝子治療;ワクチン;siRNAs;アンチセンスRNAs;殺微生物剤;亜鉛−フィンガー阻害剤のようないずれの抗レトロウイルス性化合物も含んでなる。
【0074】
本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えばYを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まないことができる。必要なら、「実質的に」という用語を本発明の定義から省略することができる。数値と結び付けられた「約」という用語は、数値の範囲内のその通常の意味を有するものとする。必要なら、「約」という用語を数値±10%又は±5%又は±2%又は±1%により置き換えることができる。本明細書で挙げるすべての引用文献は、引用することによりその記載事項全体が本明細書の内容となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】赤外分光測定,KBr分散系 TMC278多形相I。
【図2】TMC278多形相Iの粉末X−線回折(XRD)パターン。
【図3】示差走査熱量測定(DSC):TMC278多形相I。
【図4】TMC278多形相Iの溶解プロット。
【図5】赤外分光測定,KBr分散系 TMC278多形相II。
【図6】TMC278多形相IIの粉末XRDパターン。
【図7】DSC:TMC278多形相II。
【図8】TMC278多形相IIの溶解プロット。
【発明を実施するための形態】
【0076】
実施例
【実施例1】
【0077】
TMC278の多形相Iの調製
約4.2gのTMC278を500mlの2−プロパノン中に攪拌しながら溶解し、透明な溶液が得られるまで、溶液を還流温度まで加熱することにより、TMC278の多形相Iを調製した。この透明な溶液を濾過した後、それをエタノールとドライアイス(固体CO)の浴上で0℃より低く冷却した。沈殿が得られるまで溶媒を蒸発させた。得られる結晶を、真空下に室温で終夜乾燥した。
【実施例2】
【0078】
赤外(IR)分光測定 KBr分散系
TMC278の多形相Iをアルカリハライドと混合し、圧縮してペレットとした。
装置: Nicolet Magna 560TM Fourier Tr
ansform IR(FTIR)分光光度計
走査回数: 32
分解能: 1cm−1
波長領域: 4000−400cm−1
ベースライン修正: あり
検出器: KBrウインドウを有するDTGS
ビームスプリッター:KBr上のGe
アルカリハライド: KBr
【0079】
約3348、3274、2217、2209、1477及び1334cm−1における典型的な吸収帯を有するFTIRスペクトルにより、TMC278の多形相Iを特性化した。追加の吸収帯は3190、1611、1523、1509、1102、970、963、829及び820cm−1において観察された。図1を参照されたい。
【0080】
約3316、2223、2215、1483及び1325cm−1における典型的な吸収帯を有するFTIRスペクトルにより、TMC278の多形相IIを特性化した。追加の吸収帯は3201、1617、1516、1505、1303、1106及び967cm−1において観察された。図5を参照されたい。
【0081】
吸収帯に関して上記であげた値はすべて、±2cm−1である。
【実施例3】
【0082】
粉末XRD
発生器PW3040を有するPhilips X’PertPRO MPD回折計PW3050/60上でX−線粉末回折(XRPD)分析を行なった。測定器にはCu LFF X−線管PW3373/00が備えられていた。TMC278の多形相Iを、ゼロバックグラウンド試料ホルダー上に広げた。
【0083】
測定器パラメーターは以下の通りであった:
発生器電圧: 45kV
発生器アンペア数: 40mA
幾何学(geometry):Bragg−Brentano
ステージ: スピナーステージ(spinner stage)
測定条件は以下の通りであった:
走査モード: 連続的
走査範囲: 3−50°2θ
ステップサイズ: 0.01675°/ステップ
カウンティング時間: 60.59秒/ステップ
スピナー回転時間: 1秒
放射線の型: CuKα
放射線波長: 1.54056Å
【0084】
入射ビーム路
プログラム発散スリット(program.divergence slit):
15mm
ソーラースリット(Soller slit): 0.04rad
ビームマスク: 15mm
散乱防止スリット(anti scatter slit):1°
ビームナイフ: +

回折ビーム路
長散乱防止シールド(long anti scatter shield):

ソーラースリット: 0.04rad
Niフィルター: +
検出器: X’Celerator
【0085】
2−シータの位置9.0°±0.2°、14.3°±0.2°、17.1°±0.2°及び24.2°±0.2°における主な回折ピークにより、TMC278の多形相Iを特性化した。2−シータの位置11.3°±0.2°、19.1°±0.2°及び27.6°±0.2°におけるX−線粉末回折ピークにより、TMC278の多形相Iをさらに特性化した。図6を参照されたい。
【0086】
2−シータの位置17.6°±0.2°、21.0°±0.2°、25.8°±0.2°及び27.9°±0.2°における主な回折ピークにより、TMC278の多形相IIを特性化した。2−シータの位置8.5°±0.2°、12.4°±0.2°、12.9°±0.2°及び24.8°±0.2°におけるX−線粉末回折ピークにより、TMC278の多形相IIをさらに特性化した。図6を参照されたい。
【0087】
XRDスペクトル中のピークは、複数の理由のために、最も重要には試料の処理歴のために、強度の変動を示し得る。
【実施例4】
【0088】
示差走査熱量測定(DSC)
約3mgのTMC278の多形相Iを、標準的なアルミニウムのTA−Instrumentsの試料皿中に移した。試料皿を適した覆いで密閉し、RCS冷却装置が備えられたTA−Instruments Q1000 MTDSC上でDSC曲線を記録した。以下のパラメーターを用いた:
初期温度: 25℃
加熱速度: 10℃/分
最終的な温度: 280℃
窒素流: 30ml/分
【0089】
TMC278の多形相Iの融解は257.5℃(最大ピーク)に起こり、融解熱は122J/gであった。図3を参照されたい。
【0090】
TMC278の多形相IIの融解は243.2℃(最大ピーク)に起こり、融解熱は153J/gであり、多形相IIから多形相Iへの多形転移が続く。転移が起こるために、DSCはTMC278の多形相組成の決定に適していなかった。図7を参照されたい。
【実施例5】
【0091】
固有溶解(intrinsic dissolution)
パドルとしてのUSP溶解装置2及びポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)錠剤ホルダーが備えられたHanson Research SR6TM 溶解試験ステーションを用いた。溶液中のTMC278の濃度の決定のためにUV分光測定を用いた。Agilent 8453TM分光光度計上で2mlのキュベットを用い、UV分析を行なった。単一成分測定である単一成分分析(SCA)を用い、266nmにおける単一波長測定を記録した。
【0092】
錠剤化
約125mgの化合物を、0.8cmの直径を有する型中に量り込んだ。Specaプレスを用い、錠剤化のために1トンの圧力を加えて錠剤を作製した。錠剤の表面積は0.5026cmであった。錠剤をPTFE錠剤ホルダーに接着した。
【0093】
UV分析のための参照溶液
21.8mgのTMC278を25mlのメスフラスコ中に量り込んだ。生成物を1:1.5のテトラヒドロフラン/メタノール混合物中に溶解した。1mlのアリコートを200mlのメスフラスコ中に移し、0.01N HClを用いて標線まで希釈した。参照溶液の濃度は0.4364mg/mlであった。
【0094】
溶解
錠剤を有する錠剤ホルダーをUSP2溶解浴中に置いた。容器は500mlの0.01N HCl/メタノール 1:1を含有し、サーモスタットで37℃に制御された。パドルを150rpm(分当たりの回転)の回転速度で用いた。10分毎に試料を採取し、UV分光測定を用いて濃度を決定した。0分と60分の間の測定点につき、傾斜を計算した。傾斜をmg%/分として表した。mg/(cmx分)として表される固有溶解速度(IDR)を計算した。
【0095】
固有溶解
TMC278の多形相Iの平均固有溶解速度は0.3362であった。TMC278の多形相Iの溶解プロットを図4に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
多形相IIの平均固有溶解速度は0.2886であった。TMC278の多形相IIの溶解プロットを図8に示す。
【0098】
【表2】

【0099】
溶解度
以下の表は、緩衝液pH4、緩衝液pH2及び0.01N HCl中におけるTMC278の多形相Iの溶解度を示す。
【0100】
【表3】

【0101】
緩衝液pH4、緩衝液pH2及び0.01N HCl中におけるTMC278の多形相IIの溶解度を以下の表に示す。
【0102】
【表4】

【実施例6】
【0103】
TMC278の多形相Iのナノ懸濁剤の調製
250mlのガラスビン及び磨砕媒体として用いられるZrOビーズを、オートクレーブ中で滅菌する。5グラムの薬剤物質を、60mlの注入用水中の1.25gのPluronic F108の溶液と一緒に、250mlのガラスビン中に入れる。500μmの平均粒度を有する300gのZrO−ビーズを加え、ビンをローラーミル上に置く。懸濁液を100rpmで72時間、超微粉砕する。磨砕プロセスの最後に、濃厚な(concentrated)ナノ懸濁剤をシリンジで取り出し、バイアル中に充填する。得られる調剤は、以下の表中の調剤1である。HPLC/UVにより、濃度の決定を行う。ml当たり25mgのTMC278の最終的な濃度まで希釈を行なう。得られる懸濁剤を光から保護する。
【0104】
類似の方法を用い、調剤2、3及び4を調製する。水酸化ナトリウム1N溶液を用いてこれらを約7のpHまで滴定する。調剤2、3及び4では、LipoidTM EPGをTweenTM 80中で可溶化する。
【0105】
【表5】

【0106】
以下の研究は、雄のビーグル犬において、ナノ懸濁剤(調剤1、上記を参照されたい)を5mg/kgにおいて1回、筋肉内(IM)又は皮下注入した後の、TMC278の血漿動態学を比較している。
【0107】
研究の開始時に8〜16kgの範囲の体重を有する4匹の健康な雄のビーグル犬を用いる。耳のいれずみの数字により犬を同定する。2匹の犬に、左及び右大腿二頭筋において筋肉内に(IM)投薬する。2匹の犬に、左及び右胸部において皮下に(SC)投薬する。すべての処置グループにおいて、注入体積は2x0.1ml/kgである。20G針を用いる。
【0108】
すべての犬から、0日において0時間(投薬前)、投薬後20分、1時間、3時間、8時間及び24時間に、ならびにさらに2日、3日、6日、8日、10日、13日、16日、20日、23日、27日、29日、36日、43日、50日、57日、64日、71日、78日、85日及び92日において大体午前8時に、3mlの血液試料を左頸静脈から採取する。血液試料をEDTA(EDTA Vacuette Greiner,Cat.No.454086,Greiner Labortechnik N.V.)上に置いた。血液試料採取から2時間以内に、試料を室温で約1900xgにおいて10分間遠心し、血漿を分離させ、すぐに血漿を第2の管中に移し、遠心の開始から2時間後以内にフリーザー中で保存する。実証された(validated)LC−MS/MS−法により、血漿試料をTMC278に関して個々に分析する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)4−[[4−[[4−(2−シアノエテニル)−2,6−ジメチルフェニル]アミノ]−2−ピリミジニル]アミノ]ベンゾニトリル、すなわちTMC278の多形相I。
【請求項2】
2−シータの位置9.0°±0.2°、14.3°±0.2°、17.1°±0.2°及び24.2°±0.2°におけるX−線粉末回折ピークにより特性化される請求項1の多形相。
【請求項3】
さらに2−シータの位置11.3°±0.2°、19.1°±0.2°及び27.6°±0.2°におけるX−線粉末回折ピークにより特性化される請求項2の多形相。
【請求項4】
TMC278をケトン中に溶解し、溶液を還流温度に加熱し、そしてこの溶液を冷却することにより多形相を製造する請求項1〜3のいずれかの多形相の製造方法。
【請求項5】
活性成分としてTMC278の多形相I及び製薬学的に許容され得る担体を含んでなる固体の製薬学的組成物。
【請求項6】
表面に吸着した表面改質剤を有し、製薬学的に許容され得る水性担体中に懸濁されたマイクロ−もしくはナノ粒子の形態でTMC278の多形相Iを含んでなるTMC278の多形相Iの治療的に有効な量を含んでなる、筋肉内又は皮下注入による投与のためのマイクロ−もしくはナノ粒子製薬学的組成物。
【請求項7】
HIV感染の処置用の薬剤の製造のための請求項6に記載のマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用。
【請求項8】
HIVに感染する危険にある者におけるHIV感染の予防用の薬剤の製造のための本明細書に特定されるマイクロ−もしくはナノ粒子組成物の使用。
【請求項9】
1週間〜1年又は1週間〜2年の範囲内である時間間隔で間欠的に組成物が投与されるかもしくは投与されるべきである請求項7又は8の使用。
【請求項10】
1週間〜1ヶ月の範囲内又は1ヶ月〜3ヶ月の範囲内又は3ヶ月〜6ヶ月の範囲内である時間間隔で組成物が投与されるかもしくは投与されるべきである請求項7又は8の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−533148(P2010−533148A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515519(P2010−515519)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/059054
【国際公開番号】WO2009/007441
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509350217)
【Fターム(参考)】