説明

(Z)−3−[2−ブトキシ−3’−(3−ヘプチル−1−メチルウレイド)ビフェニル−4−イル]−2−メトキシアクリル酸の合成方法

本発明は、式(I)を有する(Z)-3-[2-ブトキシ-3'-(3-ヘプチル-1-メチル-ウレイド)-ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸の合成方法、一般式(XII)を有する反応中間体の合成方法、ならびに、R2がメチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、および4-トリル基から選択される前記式(XII)の化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】

の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸の合成のための、一般式(XII):
【化2】

の反応中間体を経由する新規な方法に関する。
【0002】
式(I)の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸は、PPAR(ペルオキシソーム増殖活性化受容体)の受容体モジュレーターである。
【背景技術】
【0003】
式(I)の化合物の合成は、国際公開第2007/049158号に8段階で記載されている。この合成は、図1に示すとおりである
【0004】
(第1段階):3-ヒドロキシ安息香酸(V)を、ヨウ化ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムの存在下でヨウ素化して、4-ヨード-3-ヒドロキシ安息香酸(VI)を得る。
【化3】

【0005】
(第2段階):4-ヨード-3-ヒドロキシ安息香酸(VI)を、硫酸の存在下、メタノールでエステル化して、3-ヒドロキシ-4-ヨード安息香酸メチル(VII)を得る。
【化4】

【0006】
(第3段階): 3-ヒドロキシ-4-ヨード安息香酸メチル(VII)と、ヨウ化ブチルとを、炭酸カリウムの存在下で反応させると、3-ブトキシ-4-ヨード安息香酸メチル(VIII)が得られる。
【化5】

【0007】
(第4段階):次いで、化合物(VIII)を、水素化ホウ素リチウムを用いて還元して、(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)メタノール(IX)を得る。
【化6】

【0008】
(第5段階):二酸化マンガンを用いて(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)メタノール(IX)を酸化すると、3-ブトキシ-4-ヨードベンズアルデヒド(X)が得られる。
【化7】

【0009】
(第6段階):水素化ナトリウムの存在下、3-ブトキシ-4-ヨードベンズアルデヒド(X)と、 (ジエトキシホスホリル)メトキシ酢酸メチル(XI)との間のWittig反応を行うと、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(II)と、(E)-3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(II’)との60/40の比の混合物が得られる。純粋な(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(II)は、シリカゲルクロマトグラフィーの後で得られる。
【化8】

【0010】
(第7段階):Suzuki型のパラジウムカップリング反応を、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(II)と3-(1-メチル-3-ヘプチルウレイド)フェニルボロン酸(III)との間で実施して、(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸メチル(IV)を得る。
【化9】

【0011】
(第8段階):(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸メチル(IV)を、水酸化ナトリウムを用いて鹸化反応させると、(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)が得られる。
【化10】

【0012】
この合成ルートの第一の不利点は、市販の化合物(V)と、(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)との間の8段階の長い直線型の反応シークエンスの利用である。直線型の合成は、工業的なスケールへの適用には常に不利である。工業的なスケールに適用するためには、より良い収率が求められるため、収束型合成が好まれる。
【0013】
さらに、二酸化マグネシウムの使用も、それにより生じる産業廃棄物に関連する欠点を有する。
【0014】
最後に、第6段階における3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチルの(Z)および(E)異性体の分離には、シリカゲルクロマトグラフィー技術が採用されるが、この分離を工業的方法に移行させることは困難である。
【0015】
さらに、この方法における中間体(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヨードフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(II)は、無色のオイルであり、工業的なスケールに移行させる場合には単離が問題となり得る。
【0016】
最後に、上述した合成ルートにおける(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)の精製には、3回のシリカゲルクロマトグラフィー操作の利用が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2007/049158号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明は、上述した問題を、式(I) の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸の簡易化した合成方法であって、より段階数が少なく、より経済的であり、工業的合成に採用することができる方法を提供することによって解決することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の主題である(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)の合成のための新規な方法は、図2に示すとおり、最も長いもので4段階の直線型シークエンスを含む、収束型の合成方法であるため、上述した問題を解決することができる。
【0020】
この新規な方法により、 (Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)の合成における反応中間体としての式(XIIa)の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸を3段階で合成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、国際公開第2007/049158号に8段階で記載されている式(I)の化合物の合成方法である。
【図2】図2は、本発明による式(I)の化合物の合成方法である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の方法の各段階は、以下のとおりである。
(本発明の第1段階):
第1段階では、本新規な合成方法は、(メトキシ(アルコキシカルボニル)メチル)トリフェニルホスホニウムハライド (XVII) [Tetrahedron, 1994, 50, 7543-7556に記載された方法にしたがって調製されるもの]と、3-ブトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(XV) [市販の3-ブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(XVI)とアルカリ金属ブトキシド(例えば、ナトリウムブトキシドなど)との間のカップリング反応、例えば、銅(I)塩またはパラジウム錯体の存在下、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)など)中、例えば60℃〜150℃の温度でのカップリング反応によって調製されるもの(Synth Commun., 1990, 20, 2659に類似の反応が記載されている)]との間のWittig反応を利用する。このWittig反応は、有機アミン(例えば、トリエチルアミンなど)の存在下、非プロトン性溶剤(例えば、テトラヒドロフラン(THF)など)中で行うことができ、一般式(XIV)の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸アルキル(式中、Rは、アルキル基を表す)を得ることができる。この方法により、国際公開第2007/049158号に記載の合成ルートとは対照的に、とりわけ、(Z)異性体(95%より高い純度のもの)を得ることが可能になり、シリカゲルでのZ/E異性体の分離操作を全て省くことが可能になる。
【化11】

【0023】
(本発明の第2段階):
(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸アルキル(XIV)を、例えば、無水トリフルオロメタンスルホン酸、メシルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、またはトシルクロライドと、有機塩基(例えば、トリエチルアミンなど)の存在下、溶媒(例えば、ジクロロメタンなど)中で反応させて、それぞれ、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIa)、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(メタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIb)、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(フェニルスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIc)、または(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリルスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIId)を得る。
【化12】

【0024】
(本発明の第3段階):
エステル(XIII)、例えば、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIa)を、塩基(例えば、水酸化リチウムなど)を用いて、溶媒(例えば、THFなど)中、水の存在下で鹸化することによって、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIa)を得ることが可能になる。
【0025】
同様に、エステル(XIIIb)、(XIIIc)、または(XIIId)から出発する鹸化によって、それぞれ、酸(XIIb)、(XIIc)、または(XIId)が結果として得られる。
【化13】

【0026】
(本発明の第4段階):
本発明の主題である方法の第4段階は、例えば、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIa)と、3-ヘプチル-1-メチル-1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ウレア(IIIb):
【化14】

またはこれに対応するボロン酸(IIIa):
【化15】

との間の、好ましくはパラジウムまたはニッケルで触媒されるカップリング反応によって、(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)を合成することからなる。
【0027】
化合物(IIIb)は、特に、国際公開第2007/049158号に記載されているとおりに調製することができる。すなわち、以下のとおりである。
【0028】
a− 1-(3-ブロモフェニル)-3-ヘプチル-1-メチルウレア:
(3-ブロモフェニル)メチルアミンを、以下のとおりに合成する:
150 g(500 mmol)のtert-ブチル(3-ブロモフェニル)-N-メチルカルバメートを、600 mlのジクロロメタンおよび383 ml(5 mol)のトリフルオロ酢酸に加える。この反応媒体を、周囲温度にて24時間撹拌し、次いで、飽和炭酸ナトリウム水溶液で処理し、ジクロロメタンで抽出する。有機相を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させる。99 g(100%)の(3-ブロモフェニル)メチルアミンが得られる。
【0029】
次いで:
3.2 ml(20 mmol)のヘプチルイソシアネートを、こうして調製した2.5 g(13 mmol)の(3-ブロモフェニル)メチルアミンの10 mlテトラヒドロフラン溶液(2 mlのトリエチルアミンの存在させたもの)に添加する。この反応混合物を、周囲温度にて12時間攪拌する。この反応を、2 mlの水を添加することによって停止させた後、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、残渣を、ヘプタン/酢酸エチル(70/30)混合液で溶出させるシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーによって精製する。3.4 g(77%)の1-(3-ブロモフェニル)-3-ヘプチル-1-メチルウレアが固体形態で得られる。
【0030】
b− 3-ヘプチル-1-メチル-1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ウレア:
4.0 g(15.5 mmol)のビス(ピナコロラト)ジボロンを、380 mg(0.5 mmol)の((ジフェニルホスフィノ)フェロセン)パラジウムジクロライドの存在下、3.4 g(10 mmol)の1-(3-ブロモフェニル)-3-ヘプチル-1-メチルウレアと3.0 g(31 mmol)の酢酸カリウムとの15 mlのジメチルホルムアミド中の混合物に添加する。この混合物を、90℃にて3時間撹拌する。反応を、50 mlの水を添加することによって停止させ、次いで、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、残渣を、ヘプタン/酢酸エチル(70/30)混合液で溶出させるシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーによって精製する。2.5 g(64%)の3-ヘプチル-1-メチル-1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ウレア(IIIb)が、オイルの形態で得られる。
【0031】
化合物(IIIa)は、部分的には同様に、国際公開第2007/049158号に記載されているとおりに合成することができる。すなわち、以下のとおりである。
a− 1-(3-ブロモフェニル)-3-ヘプチル-1-メチルウレア:
上述した方法と同じ。
【0032】
b− 3-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)フェニルボロン酸:
1.1 Lのテトラヒドロフラン中の1-(3-ブロモフェニル)-3-ヘプチル-1-メチルウレア113 g(345 mmol)、1.6 Mのメチルリチウムのジエチルエーテル溶液127 ml(380 mmol)、1.7 Mのtert-ブチルリチウムのペンタン溶液530 ml(760 mmol)、およびホウ酸トリメチル97 nl(904 mmol)を反応させると、粗生成残渣を酢酸エチル/ヘプタン(50/50)混合液で溶出させるシリカゲルカラムによるクロマトグラフィーによって精製し、酢酸エチル/ヘプタン混合液から結晶化させた後で、36 g(36%)の3-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)フェニルボロン酸(IIIa)がピンク色の粉末の形態で得られる。
【0033】
同様に、酸(XIIb)、(XIIc)、または(XIId)(式(XII)の酸において、R2が、メチル基、フェニル基、またはトリル基である酸)から出発するカップリング反応から、式(I)の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸が得られる。
【0034】
式(I)の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸は、ジイソプロピルエーテルから再結晶することによって精製する。この技術は、工業的スケールに移行させることができる。
【化16】

【0035】
この最終段階のカップリング条件は、当業者によく知られている。この条件は、本発明の文脈において、従来のカップリング条件(Suzukiら、Synth. Commun., 1981, 11, 513、またはSharp, M.J.、Tet. Lett., 1985, 26, 5997を参照)を用いても、最適化された条件(例えば、Littke, A.F.ら、J. Am. Chem. Soc., 2000, 122 (17), 4020-4028を参照)を用いてもよい。後述する実施態様に、選択した非排他的な条件を示す。
【0036】
本発明において、アルキルは、炭素原子1個〜4個を含む、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素鎖を指す。好ましくは、このような基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、およびt-ブチル基から選択される。
【0037】
本発明において、アルコキシは、炭素原子1個〜4個を含む、直鎖状または分枝鎖状の飽和炭化水素鎖によって置換された酸素原子を指す。
【0038】
本発明において、アルコキシカルボニルは、上述により定義したアルコキシによって置換されたカルボニルを指す。
【0039】
本発明において、ハロゲンは、塩素、フッ素、臭素、またはヨウ素原子を指す。
【0040】
本発明は、本発明の方法において採用される、以下のさまざまな反応中間体にも関する:
【0041】
− 一般式(XII)のスルホネート類であって、R2が、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはトリル基から選択され、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIa)、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(メタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIb)、(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(フェニルスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIc)、および(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリルスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIId)で表されるスルホネート類。
【化17】

【0042】
− 一般式(XIII)のスルホネート類であって、Rが、アルキル基を表し、R2が、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはトリル基であり、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIa)、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(メタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIb)、(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(フェニルスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIIc)、または(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリルスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸アルキル(XIIId)で表されるスルホネート類。
【化18】

【0043】
− アルキル(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリレート(XIV) であって、Rが、アルキル基を表すもの。
【化19】

【0044】
本発明の他の特徴および利点は、例示として制限することを意図することなく提供する以下の手順を読むことによってより明確になるであろう。
【実施例】
【0045】
[出発物質の合成]
3-ブトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒド(XV)の合成
2.16 g(93.9 mmol)のナトリウムを、15 mlのn-ブタノール中、110℃にて3時間溶解させる。20 mlのジメチルホルムアミドを周囲温度で添加し、次いで、この媒体を数回脱気する。3.4 g(34.1 mmol)の塩化銅(I)を周囲温度で添加した後、反応媒体を10分間撹拌する。6.2 g(31 mmol)の3-ブロモ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドを添加した後、反応媒体を120℃にて2時間撹拌する。この反応混合物を、周囲温度に冷却した後、2M塩酸溶液50mlを添加することによって反応を停止させる。この媒体を、250 mlの酢酸エチルで抽出する。溶媒を蒸発させた後、残渣をシリカゲルパッチ(2 cm)に通して濾過する(溶離液:ヘプタン/酢酸エチル=8/2)。溶媒を蒸発させた後、5.55 gの橙色オイルが得られる。このオイルを、ペンタンで結晶化させる。濾過後、4.8 gの3-ブトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドが褐色固体の形態で得られる。収率80%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 0.99 (t, J = 8 Hz, 3H, CH3); 1.52 (hex, J = 8 Hz, 2H, CH2); 1.85 (pent, J = 8 Hz, 2H, CH2); 4.14 (t, J = 8 Hz, 2H, CH2); 6.24 (s, 1H, ArH); 7.05 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.42 (m, 2H, ArH + OH); 9.83 (s, 1H, CHO).
【0046】
(メトキシ(メトキシカルボニル)メチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(XVII)の合成
25 g(0.186 mol)のジメトキシ酢酸メチルを、27 ml(0.215 mol)の酢酸クロライドに、周囲温度で添加する。0.1 g(0.2 mol%)のヨウ素を添加し、次いで、反応混合物を55℃にて16時間撹拌する。過剰の酢酸クロライドを減圧下で蒸発させた後、残渣を100 mlのジクロロメタンに溶解させる。49 g(0.204 mol)のトリフェニルホスフィンを添加し、次いで、反応混合物を37℃にて3時間撹拌する。溶媒を蒸発させた後、残渣をジイソプロピルエーテルから結晶化させる。70 gの(メトキシ(メトキシカルボニル)メチル) トリフェニルホスホニウムクロライドが得られる。収率88%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) 3.61 (s, 3H, OCH3); 3.90 (s, 3H, OCH3); 7.66 (m, 6H, ArH), 7.77 (m, 3H, ArH); 8.01 (m, 6H, ArH); 8.71 (d, J = 13 Hz, 1H, CH).
【0047】
[本方法の段階]
(第1段階):(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチル(XIV)
4.0 g(20.6 mmol)の3-ブトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドおよび13.25 g(30.9mmol)の(メトキシ(メトキシカルボニル)メチル) トリフェニルホスホニウムクロライドを、40 mlのテトラヒドロフランに懸濁させる。6 ml(42 mmol)のトリエチルアミンを添加した後、この反応媒体を40℃にて16時間撹拌する。反応媒体を、濾過し、次いで、溶媒を蒸発させる。50 mlのジエチルエーテルを添加し、混合物を周囲温度で10分間撹拌した後、濾過する。溶媒を蒸発させた後、残渣をヘプタン/酢酸エチル(8/2)に溶解させて取り出した後、シリカパッチ(2 cm)を通して濾過する。溶媒を蒸発させた後、5.3 gの(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチルが得られる。収率92%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 0.91 (t, J = 8 Hz, 3H, CH3); 1.42 (hex, J = 8 Hz, 2H, CH2); 1.75 (pent, J = 8 Hz, 2H, CH2); 3.66 (s, 3H, OCH3); 3.78 (s, 3H, OCH3); 4.00 (t, J = 8 Hz, 2H, CH2); 5.79 (s, 1H, CH=); 6.84 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH), 6.88 (s, 1H, ArH); 7.13 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.39 (s, 1H, OH).
【0048】
(第2段階):(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ) フェニル)アクリル酸メチル(XIIIa)
2.6 g(9.27 mmol)の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸メチルを、25 mlのジクロロメタンに溶解させ、次いで、2 mlのトリエチルアミンを添加する。1.67 ml(10.2 mmol)の無水トリフルオロメタンスルホン酸を、0℃にてゆっくりと添加する。この反応混合物を、0℃にて2時間撹拌する。反応を、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて停止させる。この媒体を、酢酸エチルで抽出する。有機相を合わせて、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、シリカパッチ(1 cm)を通して濾過する。溶媒を蒸発させる。3.57 gの(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸メチルが得られる。収率93%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 0.91 (t, J = 7 Hz, 3H, CH3); 1.46 (hex, J = 7 Hz, 2H, CH2); 1.76 (pent, J = 7 Hz, 2H, CH2); 3.73 (s, 3H, OCH3); 3.80 (s, 3H, OCH3); 4.00 (t, J = 7 Hz, 2H, CH2); 6.83 (s, 1H, CH=); 7.11 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.20 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.45 (s, 1H, ArH)
【0049】
(第3段階):(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XIIa)
1.53 g(36.3 mmol)の水酸化リチウム一水和物を、7.5 g(18.2 mmol)の(Z)-2-メトキシ-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)アクリル酸メチルのテトラヒドロフラン/水の10/1混合液50 ml中の溶液に添加する。この反応混合物を、68℃にて5時間撹拌する。この反応混合物を、2N塩酸溶液でpH=1に下がるまで酸性にする。反応混合物を、100 mlのヘプタン/酢酸エチル(1/2)混合液で2回抽出する。この有機相を合わせた後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、残渣を30 mlのペンタンに溶解して取り出し、4.7 gの(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸が白色固体の形態で得られる。収率63%。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 1.00 (t, J = 7 Hz, 3H, CH3); 1.56 (hex, J = 7 Hz, 2H, CH2); 1.86 (pent, J = 7 Hz, 2H, CH2); 3.86 (s, 3H, OCH3); 4.10 (t, J = 7 Hz, 2H, CH2); 7.07 (s, 1H, CH=); 7.23 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.33 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.56
【0050】
(第4段階):(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸(I)
87.0 g(2.2 mmol)の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル)-2-メトキシアクリル酸(XII)、981 mg(2.61 mmol)の3-ヘプチル-1-メチル-1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル]ウレア(III) [国際公開第2007/049158号にしたがって調製したもの]、14 mg(3 mol%)の酢酸パラジウム、および46 mg(6 mol%)のジクロロヘキシルビフェニルホスフィンを、8 mlのジメチルホルムアミドに溶解し、2Mリン酸カリウム溶液1.5 mlを添加し、媒体を数回脱気する。この反応混合物を、90℃にて2時間撹拌する。反応を2M塩酸溶液で停止させ、次いで、混合物を酢酸エチルで抽出する。有機相を塩化ナトリウム溶液で洗浄した後、Na2SO4で乾燥する。溶媒を蒸発させた後、残渣を10 mlのヘプタン/AcOEt(1/1)で溶解させて取り出す。シリカパッチ(1 cm)を通して濾過を行う。溶媒を蒸発させる。残渣をペンタンから結晶化させる。この固体を、イソプロピルエーテル/ヘプタンから再結晶させる。510 mgの(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸が固体形態で得られる。収率47%。融点99℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): 0.85 (t, J = 7 Hz, 3H, CH3); 0.95 (t, J = 7 Hz, 3H, CH3); 1.24 (m, 8H, CH2); 1.42 (m, 4H, CH2); 1.78 (m, 2H, CH2); 3.18 (td, J = 7 Hz, J = 6 Hz, 2H, NCH2); 3.33 (s, 3H, NCH3); 3.89 (s, 3H, OCH3); 4.05 (t, J = 7 Hz, 2H, OCH2); 4.46 (t, J = 6 Hz, 1H, NH); 7.17 (s, 1H, =CH); 7.23 (d, J = 8 Hz, 1H, ArH); 7.35-7.54 (m, 6H, ArH).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の(Z)-3-[2-ブトキシ-3’-(3-ヘプチル-1-メチルウレイド)ビフェニル-4-イル]-2-メトキシアクリル酸の合成方法であって、
【化1】

一般式(XII):
【化2】

(式中、R2は、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはトリル基を表す)
のスルホネートを、式(IIIb):
【化3】

の3-ヘプチル-1-メチル-1-[3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキソボロラン-2-イル) フェニル]ウレアまたはこれに対応する式(IIIa):
【化4】

のボロン酸と反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記反応を、パラジウム触媒またはニッケル触媒の存在下で実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(XII):
【化5】

のスルホネートを、一般式(XIII):
【化6】

(式中、Rは、アルキル基を表す)
のエステルの鹸化によって得ることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(XIII):
【化7】

のエステルを、一般式(XIV):
【化8】

の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸アルキルと、無水トリフルオロメタンスルホン酸、メシルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、およびトシルクロライドから選択される化合物との反応によって得ることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
一般式(XIV):
【化9】

の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸アルキルを、式(XV):
【化10】

の3-ブトキシ-4-ヒドロキシベンズアルデヒドと、式(XVII):
【化11】

の(メトキシ(アルコキシカルボニル)メチル)トリフェニルホスホニウムハライドとの間のWittig反応によって得ることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
一般式(XII):
【化12】

(式中、R2は、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはトリル基を表す)
の化合物。
【請求項7】
一般式(XIII):
【化13】

(式中、Rは、アルキル基を表し、Rは、メチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、またはトリル基を表す)
の化合物。
【請求項8】
一般式(XIV):
【化14】

(式中、Rは、アルキル基を表す)
の(Z)-3-(3-ブトキシ-4-ヒドロキシフェニル)-2-メトキシアクリル酸アルキル化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−526798(P2010−526798A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506971(P2010−506971)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050706
【国際公開番号】WO2008/139121
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】