説明

1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類の製造及びその中枢神経系の疾患及び障害の治療及び予防用医薬製剤を製造するための使用

本発明は、1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類の群から選択される化合物、その薬理学的に許容し得る塩及び溶媒和物、これらの製造方法及びこれらの生体アミン又はその他の神経伝達物質の神経化学平衡の障害によって引き起こされる中枢神経系(CNS)の疾患、損傷及び障害の治療及び予防用医薬組成物を製造するための使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類の群から選択される化合物、その薬理学的に許容し得る塩及び溶媒和物、これらの製造方法及び製造用中間体並びにこれらの生体アミン又はその他の神経伝達物質の神経化学平衡の障害によって引き起こされる中枢神経系(CNS)の疾患、損傷及び障害の治療及び予防用医薬組成物を製造するための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
CNSにおける中枢神経伝達物質系の一部である生体アミン(セロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミン)及びその他の神経伝達物質並びにこれらの受容体の定常状態の不規則性は、種々の精神疾患、精神損傷及び精神障害(例えば、鬱病、精神分裂症、鬱病行動など)の原因であり得る。神経伝達物質濃度の障害によって引き起こされるCNSにおける病理学的変化は、生体アミン及び/又はある種の神経伝達物質の不均衡な(過度に大きい又は過度に小さい)合成、貯蔵、放出、代謝及び/又は再吸収における不規則性に起因して生じ得る。
【0003】
精神障害の病因の理解に向けられた研究の結果は、セロトニン平衡における障害が種々の疾患において重要な役割を果たすことを明らかにしている。鬱病の症状がモノアミン、特にセロトニン(5-HT)及びノルアドレナリンの神経伝達の低下に結び付けられたモノアミン欠乏仮説は、最初の解釈の一つであり、これは神経化学試験によって及びモノアミン作動性神経伝達を高める物質を用いた患者の首尾よい治療によっても確認された(Expert Opin. Investig. Drugs, 2003, 12, 531-543)。セロトニン作動系及びノルアドレンアリン作動系の他に、CNS機能障害における極めて重要な役割は、ドーパミン作動系によっても果たされる。これらの神経伝達物質系の正確な役割及び相互作用についての理解は、多数の受容体サブタイプ及びその薬理学的複雑性によってどちらかといえば困難になっている。従って、例えばドーパミン作動性神経伝達は5-HT2A受容体によって調節されることが観察されており(L. G. Spampinato, J. Neurochem., 2000, 74, 693-701)、従って5-HT2A受容体もまた、病理における重要な役割がドーパミン作動系の機能の障害によって果たされる疾患及び障害(精神病及び種々の依存症)の治療における標的受容体であり得る。
【0004】
グルタミン酸受容体は、中枢神経系(CNS)の主要な興奮性神経伝達物質の一つとして興奮性シナプス伝達の媒介において重要な役割を果たす。σ1受容体リガンドが中枢神経伝達物質系、例えばグルタミン酸作動性/NMDAが介在する神経伝達を調節できることが、広く認められている(F.P. Monnet, G. Debonnel、J.-L. Junien, C. de Montigny, Eur. J. Pharmacol., 1990, 179, 441-145)。多くの薬理学的作用及び生理学的作用は、σ1受容体に起因している。これらの作用としては、小胞体におけるIP3受容体及びカルシウムシグナル伝達の調節、細胞骨格アダプタータンパク質の可動化、神経成長因子によって誘発される神経突起出芽の調節、神経伝達物質放出及びニューロン発射の調節、調節性サブユニットとしてのカリウムチャネルの調節、精神刺激薬によって誘発される遺伝子発現の改変並びに拡延性抑制の遮断が挙げられる。行動の面で、σ1受容体は、学習及び記憶、精神刺激薬によって誘発される感作、コカインによって誘発される条件付け場所嗜好性、精神分裂病及び疼痛知覚に関与する。従って、σ1受容体は、少なくとも部分的に、生物系においてシグナル伝達について過剰感作状態を作り出す細胞内増幅器であると仮説が立てられる。
【0005】
病理学的CNS障害の治療について、特に精神障害の治療において、最も頻繁に施用される医薬としての重要な役割が、その構造によって、多環式化合物である物質〔ベンゾジアゼピン類、三環式及び四環式抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、セロトニン再吸収の選択的阻害剤など〕に与えられる。
【0006】
薬物療法における新しい分野が、新規な四環式抗うつ薬ミアンセリンを導入することによって開かれた(Claghorn, J.;Lesem, M. D., Prog. Drug Res., 1996, 46, 243-262;Sperling, W.;Demling, J. Drugs Today, 1997, 33, 95-102)。CNSにおける神経化学平衡の障害の治療において薬理作用を示す多数の四環式誘導体が、文献に開示されている。国際公開第WO99/19317号パンフレット、同第WO97/38991号パンフレット及び米国特許第6,511,976号明細書には、テトラヒドロフラン環を含有する四環式誘導体の製造及びその抗精神病作用、心臓血管作用及び胃運動促進作用を有する物質としての使用が記載されている。米国特許第4,145,434号明細書には、ジベンゾ(シクロヘプタ−、オキセピノ−、チエピノ−)ピロリジン及びジベンゾピロリジノアゼピン誘導体の製造並びにその可能性のある(potential)CNS作用を有する物質としての使用が記載されている。ある種の1,2-ジアザジベンゾアゼピン類の製造及び抗うつ作用が、欧州特許第0063525号明細書に記載されている。また、ある種の四環式イソオキサゾリジン誘導体の製造及び可能性のある抗不安作用が、開示されている(Drugs Fut., 2002, 27, Suppl. A: C41;Drugs Fut., 2002, 27, Suppl. A: P182, 国際公開第WO96/14320号、同第WO96/14321号パンフレット)。オキセピン環を含有する四環式構造にピペリジン環を導入すると、抗うつ作用を示す分子Org-4428の生成がもたられた(Sperling, W.;Demling, J. Drugs Today, 1997, 33, 95-102)。分子Org-5222は、オキセピン核に縮合したピロリジン環を含有し、可能性のある抗不安薬及び抗精神病薬として記載されている(Sperling、W.; Demling, J. Drugs Today, 1997, 33, 95-102)。また、抗炎症作用をもつ新規な一群の化合物として1,3-ジアザ-ジベンゾ[e,h]アズレン類の幾つかの誘導体及びその塩も知られている(米国特許第3,711,489号明細書、米国特許第4,198,421号明細書及びカナダ国特許第967,573号明細書)。
【0007】
アシル アルキルオキシカルボニル基、フェニル基又は置換フェニル基などの置換基を有するテトラヒドロピラゾール群の2-置換ジベンゾアズレンもまた知られている(Gansser C. et al., Ann. Pharm., 1984, 41: 465-471;又はOlivera R. et al., Tetrahedron Letters, 2000, 41: 4353-4356, 4357-4360)。さらに、アルキル基(Kawashiha K. Takeda, Kenkyusho Ho, 1978, 37: 6-11, Fishou D. et al., Tetrahedron 1984, 40: 5121-5133)、フェニル基又は置換フェニル基(仏国特許第2,504,140号明細書、欧州特許第0063525号明細書)で置換されたピラゾール及びイソオキサゾール群のジベンゾアゼピン類の例が知られている。
【0008】
しかし、病理学的CNS障害の治療、特に精神障害の治療に使用される従来公知の医薬は、広範な副作用に関係している。従って、CNSの疾患及び障害の安全で効果的な治療に対する要求がある。
【0009】
本発明の主題を表す式Iで示される1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類の群から選択される新規化合物、その製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物並びにこれらを含有してなる医薬組成物は、これまでに記載されていない。
【0010】
さらにまた、本発明の主題を表す化合物がCNSの疾患及び障害の治療に有効であることは記載されていない。従って、神経化学平衡の障害によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷及び障害の治療及び予防用医薬組成物を製造するための1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類並びにその製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物の使用は、これまでに開示されていないし、示唆もされていない。
【発明の開示】
【0011】
技術的課題の解決
式Iで示される1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類の群から選択される化合物は、CNSに作用する従来公知の四環式化合物(国際公開第WO99/19317号、同第WO97/38991号パンフレット;Sperling, W.;Demling, J. Drugs Today, 1997, 33, 95-102)がその構造に少なくとも1個の飽和環を含有するのに対して、第四の環としてイソオキサゾール環を含有することから、CNSに作用する従来公知の四環式化合物とは不飽和四環式構造により構造的に異なり、さらにまた有用な薬理学的性質及び物理化学的性質によって区別される。
【0012】
本発明の主題である式Iで示される化合物、かかる化合物の異性体、その製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物並びにこれらを含有してなる医薬化合物は、これまでに記載されていないと考えられる。また、本発明の主題を表す化合物は、CNSの疾患及び障害の治療に有効であることはこれまでに記載されていない。
【0013】
本発明は、一般式I

{式中、XはCHを意味するか又はO、S、S(=O)、S(=O)及びNRからなる群から選択される異種原子を意味し(但し、Rは水素原子であるか又はC〜C-アルキル基、C〜C-アルカノイル基、C〜C-アルコキシカルボニル基、C〜C10-アリールアルキルオキシカルボニル基、C〜C10-アロイル基、C〜C10-アリールアルキル基、C〜C-アルキルシリル基及びC〜C10-アルキルシリルアルキルオキシアルキル基からなる群から選択される置換基である);
Y及びZは、互いに独立して、利用できる炭素原子に結合された1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、C〜C-アルキル基、C〜C-アルケニル基、C〜C-アルキニル基、ハロ-C〜C-アルキル基、ヒドロキシ基、C〜C-アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、C〜C-アルカノイル基、アミノ基、アミノ-C〜C-アルキル基、C〜C-アルキルアミノ基、N-(C〜C-アルキル)アミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)アミノ基、チオール基、C〜C-アルキルチオ基、スルホニル基、C〜C-アルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜C-アルキルスルフィニル基、カルボキシ基、C〜C-アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される置換基を意味し;
は、水素原子、ハロゲン原子;場合によりハロゲン原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基及びC〜Cアルキルスルフィニル基からなる群から選択される1個、2個、3個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基;場合により1個、2個、3個又はそれ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルケニル基;C〜Cアルキニル基;6〜10個の炭素原子と交互二重結合とを有する単環式又は二環式アリール基〔前記の基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく且つ利用できる炭素原子により直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に結合されることができる〕;4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基の意義を有する単環式又は二環式ヘテロアリール基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基で置換されていてもよい〕;O、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記複素環式基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニルで置換されていてもよい〕;ヒドロキシ基;ヒドロキシ-C〜Cアルケニル基;ヒドロキシ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルコキシ基;チオール基;チオ-C〜Cアルケニル基;チオ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルキルチオ基;アミノ基;N-(C〜Cアルキル)アミノ基;N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基;C〜Cアルキルアミノ基;アミノ-C〜Cアルケニル基;アミノ-C〜Cアルキニル基;アミノ-C〜Cアルコキシ基;C〜Cアルカノイル基;C〜C10アロイル基;オキソ-C〜Cアルキル基;C〜Cアルカノイルオキシ基;カルボキシ基;場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基;場合により置換されていてもよいC〜C10アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基;N-(C〜Cアルキル)カルバモイル基;N,N-ジ(C〜C-アルキル)カルバモイル基;シアノ基;シアノ-C〜Cアルキル基;スルホニル基;C〜Cアルキルスルホニル基;スルフィニル基;C〜Cアルキルスルフィニル基;ニトロ基を意味するか、
あるいは式II

〔式中、R及びRは、同時に又は互いに独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、前記の意義を有するアリール基の意義を有するか、あるいはNと一緒になって場合により置換されていてもよい複素環式基又はヘテロアリール基の意義を有し[但し、複素環式基はO、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基であり且つ前記複素環式基は、場合によりハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜Cアルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく、またヘテロアリール基は4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基であり且つ前記ヘテロアリール基はハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよい];
mは1〜3の整数の意義を有し;
Qは酸素原子又は硫黄原子の意義を有する〕で表される置換基を意味する}
で示される1−アザ−2−オキサ−ジベンゾ[e,h]アズレン類から選択される化合物並びにその製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物、並びに生体アミン又はその他の神経伝達物質の神経化学平衡の障害によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷及び障害を治療及び予防するための有効量の前記の化合物の1種又はそれ以上を含有する医薬組成物に関する。
【0014】
XがNRの意義を有する場合には、Rは、水素又はC〜Cアルキル基(好ましくは、メチル基又はエチル基)、C〜Cアルカノイル基(好ましくは、ホルミル基又はアセチル基)、C〜Cアルコキシカルボニル基(好ましくは、メトキシカルボニル基又はtert-ブトキシカルボニル基)、C〜C10アリールアルキルオキシカルボニル基(好ましくは、ベンジルオキシカルボニル基)、C〜C10アロイル基(好ましくは、ベンゾイル基)、C〜C10アリールアルキル基(好ましくは、ベンジル基)、C〜Cアルキルシリル基(好ましくは、トリメチルシリル基)又はC〜C10アルキルシリルアルコキシアルキル基(好ましくは、トリメチルシリルエトキシメチル基)から選択される基である。
【0015】
とRがN原子と一緒になってヘテロアリール基又は複素環式基の意義を有する場合には、これは、かかるヘテロアリール基又は複素環式基が窒素原子で置換された炭素原子を少なくとも1個有し、該窒素原子を介して基が分子の残部に連結されることを意味する。かかる基の例は、モルホリン−4−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピロリジン−1−イル基、イミダゾール−1−イル基又はピペラジン−1−イル基である。
【0016】
本発明の一つの具体的態様において、式Iで示される好ましい化合物は、XがO又はS原子を表す化合物である。
【0017】
本発明の別の具体的態様において、式Iで示される好ましい化合物は、Y及びZが、互いに独立して、利用できる炭素原子に結合された1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基であって、水素原子、弗素原子、塩素原子、臭素原子、C〜C-アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基又はイソプロピル基)、ハロ-C〜C-アルキル基(好ましくは、トリフルオロメチル基)、ヒドロキシ基、C〜C-アルコキシ基(好ましくはメトキシ基)、トリフルオロメトキシ基、C〜C-アルカノイル基(好ましくは、ホルミル基又はアセチル基)、アミノ基、アミノ-C〜C-アルキル基(好ましくは、アミノメチル基)、N-(C〜C-アルキル)アミノ基(好ましくは、N-メチル基又N-エチル基)、N,N-ジ(C〜C-アルキル)アミノ基(好ましくは、ジメチル基又はジエチル基)、チオール基、C〜C-アルキルチオ基(好ましくはメチルチオ基)、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基を意味する化合物である。
【0018】
本発明のさらに別の具体的態様において、式Iで示される好ましい化合物は、Rが、水素原子、ハロゲン原子;場合によりハロゲン原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基からなる群から選択される1個、2個、3個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基;6〜10個の炭素原子と交互二重結合とを有する単環式又は二環式アリール基〔前記の基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基からなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく且つ炭素原子により直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して利用できる分子の残部に結合されることができる〕;4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基の意義を有する単環式又は二環式ヘテロアリール基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基で置換されていてもよい〕;O、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記複素環式基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基で置換されていてもよい〕;ヒドロキシ基;C〜Cアルコキシ基;チオール基;C〜Cアルキルチオ基;アミノ基;N-(C〜Cアルキル)アミノ基;N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基;アミノ-C〜Cアルコキシ基;C〜Cアルカノイル基;C〜C10アロイル基;C〜Cアルカノイルオキシ基;場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基;場合により置換されていてもよいC〜C10アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基;N-(C〜Cアルキル)カルバモイル基;N,N-ジ(C〜C-アルキル)カルバモイル基;シアノ基;シアノ-C〜Cアルキル基;ニトロ基の意義を有するか、
あるいは式II

(式中、R及びRは、同時に又は互いに独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、前記の意義を有するアリール基の意義を有するか、あるいはNと一緒になってモルホリン-4-イル基、ピペリジン-1-イル基、ピロリジン-1-イル基、イミダゾール-1-イル基及びピペラジン-1-イル基からなる群から選択される複素環式基又はヘテロアリール基の意義を有し;mは1〜3の整数の意義を有し;Qは酸素原子の意義を有する)
で表される置換基の意義を有する化合物である。
【0019】
本発明のさらに別の具体的態様において、式Iで示される具体的に好ましい化合物は、
3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
11−クロロ−3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−メチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
ジメチル−[2−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;及び
ジメチル−[3−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミンである。
【0020】
“ハロ”、“hal”又は“ハロゲン”という用語は、ハロゲン原子に関し、これは弗素、塩素、臭素又はヨウ素原子(最も好ましくは塩素又は臭素原子)であり得る。
【0021】
“アルキル”という用語は、アルカンから誘導される基の意義を有するアルキル基に関し、該基は直鎖、分岐鎖又は環状であってもよいし、あるいは直鎖と環状基との組み合わせであってもよいし、分岐鎖と環状基との組み合わせであってもよい。好ましい直鎖又は分岐アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルである。好ましい環状アルキルは、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0022】
“ハロアルキル”という用語は、少なくとも1個のハロゲン原子で置換されていなければならないアルキル基に関する。最も頻度の高いハロアルキルは、例えばクロロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル又は1,2-ジクロロプロピルである。
【0023】
“アルケニル”という用語は、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよいし、あるいは直鎖と環状基との組み合わせ及び分岐鎖と環状基との組み合わせであってもよいが、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素基の意義を有するアルケニル基を示す。最も頻度の高いアルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル又はシクロヘキセニルである。
【0024】
“アルキニル”という用語は、直鎖又は分岐鎖であり且つ少なくとも1個、多くても2個の炭素−炭素三重結合を含有する炭化水素基の意義を有するアルキニル基を示す。最も頻度の高いアルキニルは、例えばエチニル、プロピニル又はブチニルである。
【0025】
“アルコキシ”という用語は、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基に関する。かかる基の例は、メトキシ基、プロポキシ基、プロパ-2-オキシ基、ブトキシ基、ブタ-2-オキシ基又はメチルプロパ-2-オキシ基である。
【0026】
“アリール”という用語は、芳香族環の意義を有する基、例えばフェニル基、及び縮合芳香族環に関する。アリールは、少なくとも6個の炭素原子を有する1個の環を含有するか、又は全体で10個の炭素原子を有する2個の環を含有し且つ炭素原子同士の間に交互二重(共有)結合を有する。最も頻度の高いアリールは、例えばフェニル又はナフチルである。一般的に、アリール基は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基、例えばメチレン基又はエチレン基を介して利用できる炭素原子によって分子の残部に結合されていてもよい。
【0027】
“ヘテロアリール”という用語は、4〜12個の炭素原子を有する単環式又は二環式の環の芳香族基又は部分芳香族基の意義を有する基に関し、これらの炭素原子の少なくとも1個は異種原子、例えばO、S又はN原子であり、且つ利用できる窒素原子又は炭素原子が直接結合又は前記のC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に結合する該芳香族基の部位である。この種の例は、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリニル又はトリアジニルである。
【0028】
“複素環”という用語は、異種原子、例えばO、S又はN原子を少なくとも1個含有する5員又は6員の完全飽和又は部分不飽和複素環式基に関し、その利用できる窒素原子又は炭素原子が、分子の残部に直接結合又は前記のC〜Cアルキレン基を介して結合する該芳香族基の部位である。最も頻度の高い例は、モルホリニル、ピペリジル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピラジニル又はイミダゾリルである。
【0029】
“アルカノイル”基という用語は、直鎖のアシル基、例えばホルミル基、アセチル基又はプロパノイル基に関する。
【0030】
“アロイル”基という用語は、芳香族アシル基、例えばベンゾイル基に関する。
【0031】
“場合により置換されていてもよいアルキル”という用語は、場合により1個、2個、3個又はそれ以上の置換基でさらに置換されていてもよいアルキル基に関する。かかる置換基は、ハロゲン原子(好ましくは、弗素原子又は塩素原子)、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基(好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基)、チオール基、C〜Cアルキルチオ基(好ましくは、メチルチオ基又はエチルチオ基)、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基(好ましくは、N-メチルアミノ基又はN-エチルアミノ基)、N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基(好ましくは、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基)、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル基又はエチルスルホニル基)、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基(好ましくは、メチルスルフィニル基)であり得る。
【0032】
“場合により置換されていてもよいアルケニル”という用語は、場合により1個、2個又は3個のハロゲン原子で置換されていてもよいアルケニル基に関する。かかる置換基は、例えば2-クロロエテニル基、1,2-ジクロロエテニル基又は2-ブロモ-プロペン-1-イル基であり得る。
【0033】
“場合により置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール又は複素環”という用語は、場合により1個又は2個の置換基で置換されていてもよいアリール基、ヘテロアリール基又は複素環式基に関する。前記置換基は、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子又は弗素原子)、C〜Cアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基又はイソプロピル基)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基(好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基)、チオール基、C〜Cアルキルチオ基(好ましくは、メチルチオ基又はエチルチオ基)、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基(好ましくは、N-メチルアミノ基又はN-エチルアミノ基)、N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基(好ましくは、N,N-ジメチルアミノ基又はN,N-ジエチルアミノ基)、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基(好ましくは、メチルスルホニル基又はエチルスルホニル基)、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基(好ましくは、メチルスルフィニル基)であり得る。
【0034】
具体的な置換基の性質に応じて、前記の式Iで示される化合物は、幾何異性体を有し得且つ鏡像異性体又はジアステレオマーが存在し得るような不斉中心を1個又はそれ以上有し得る。本発明はまた、かかる異性体及びその混合物、例えばラセミ化合物に関する。
【0035】
本発明はまた、前記の式Iで示される具体的な化合物の可能な全ての互変異性体に関する。
【0036】
以下で使用される場合には、“式Iで示される化合物”又は“本発明の化合物”という用語は、製薬学的に許容し得る付加塩及び溶媒和物を包含することも意味する。
【0037】
“塩”という用語は、酸付加塩又は遊離塩基の塩を包含することができる。製薬学的に許容し得る酸付加塩を形成するのに使用し得る酸の例としては、毒性のない無機酸、例えば硝酸、リン酸、硫酸、又は臭化水素酸、ヨウ化水素酸、弗化水素酸、亜リン酸から誘導される塩、並びに毒性のない有機酸、例えば脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸、並びに酢酸、マレイン酸、コハク酸、又はクエン酸から誘導される塩が挙げられるが、これらに限定されない。このような塩の非限定的な例としては、ナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられるが、これらに限定されない。また、アミノ酸の塩、例えばアルギン酸塩など及びグルコン酸塩、ガラクロン酸塩も考慮される(例えば、Berge S. M. et al., “Pharmaceutical Salts”, J. of Pharma. Sci., 1977;66:1参照)。
【0038】
前記の塩基性化合物の酸付加塩は、遊離塩基の形を、塩を生成するのに十分な量の所望の酸と慣用の方法で接触させることによって調製される。遊離塩基の形は、塩を塩基と接触させ、得られた遊離塩基を慣用の方法で単離することによって再生し得る。遊離塩基の形は、ある種の物理的性質、例えば極性溶媒への溶解度においてそれぞれの塩と多少異なるが、その塩は本発明の目的のそれぞれの遊離塩基と均等である。
【0039】
製薬学的に許容し得る塩基付加塩は、金属又はアミン、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属又は有機アミンを用いて形成し得る。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム 、カルシウムなどである。適当なアミンの例は、N,N´-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、及びプロカインである。
【0040】
前記の酸性化合物の塩基付加塩は、遊離酸の形を、塩を生成するのに十分な量の所望の塩基と慣用の方法で接触させることによって調製される。遊離酸の形は、塩を酸と接触させ、得られた遊離酸を慣用の方法で単離することによって再生し得る。
【0041】
本発明の好ましい製薬学的に許容し得る塩は、式Iで示される化合物の塩であり、例えばC〜C-アルキルハライド(好ましくは、臭化メチル、塩化メチル)との塩(四級アンモニウム塩)、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸又は硫酸)との塩、又は有機酸(酒石酸、酢酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、メタンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸)との塩が挙げられる。
【0042】
式Iで示される化合物又はその塩によって形成される製薬学的に許容し得る溶媒和物は、水和物、エタノレートなど(最も頻繁には水和物)である。
【0043】
本発明の組成物に関連して使用される“製薬学的に許容し得る”という語句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合に生理学的に許容し得且つ典型的には都合の悪い反応を生じないような組成物の分子部分及びその他の成分を示す。好ましくは、本明細書で使用される“製薬学的に許容し得る”という用語は、連邦政府又は州政府の監督官庁によって承認されるか又は哺乳動物、さらに具体的にはヒトに使用するための米国薬局方又はその他の一般的に認められている薬局方に掲載されることを意味する。
【0044】
本発明の別の目的は、次の方法:
a)化合物Ia:

(式中、記号X、Y及びZは前記の意義を有し、Lは脱離基の意義を有する)
を、場合により選択されたアルコール、チオアルコール又はアミンと縮合させるか又は式IIa:

(式中、全ての基及び記号は前記の意義を有する)
で示される化合物と縮合させる;
b)式Ib:

(式中、全ての記号は前記の意義を有する)
で示される化合物を、式IIb:

(式中、R及びR並びに記号mは前記の意義を有し且つ記号Lは適当な脱離基の意義を有する)
で示される化合物と縮合させる
ことによる式Iで示される化合物の製造方法に関する。これらの反応に適した脱離基としては、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭素化物又はヨウ素化物)が挙げられる。
【0045】
製造方法
a) 本発明の方法による式Iで示される化合物は、式Ia(式中、Lは脱離基の意義を有する)で示される化合物を、場合により選択されたアルコール、チオアルコール又はアミンと反応させるか、あるいは式IIa(式中、Qは酸素、窒素又は硫黄原子の意義を有する)で示される化合物と反応させることによって製造される。この縮合反応は、類似の化合物の製造について開示された方法に従って最も都合よく実施し得る(Menozzi G et al., J. Heterocyclic., Chem., 1997, 34:963-968又は国際公開第WO01/87890号パンフレット)。この反応は、2相系(好ましくは、50%NaOH/トルエンを用いて)で、場合によっては相間移動触媒(好ましくは、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルブロミド)の存在下で、20℃〜100℃の温度で1〜24時間行う。反応混合物の処理後に、形成された生成物を再結晶で又はシリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで単離する。
【0046】
式Iaで示される出発化合物(最も頻繁にはハロゲン化物)は、類似の化合物について記載の方法に従って反応工程図Iに示される反応順序で製造し得る(Talley J. J. et al., J. Med. Chem., 2000, 43:775-777)。
【0047】
反応工程図I

上記の反応順序に必要なヒドロキシルアミンは、文献により公知である化合物であるか又はアルコール−水性媒体中でNaOAcの存在下で、ケトン

にNHOH・HClを作用させることによって製造される。
【0048】
出発アルコール、チオアルコール又は式IIaで示される化合物は、商業的に入手できる物質であるか又は類似の化合物の製造について記載の方法に従って製造される。
【0049】
b)式Iで示される化合物は、本発明の方法に従って式Ibで示される化合物を、場合によって選択されるハロゲン化物と又は式IIb(式中、Lは脱離基の意義を有する)で示される化合物と縮合させることによって製造し得る。この縮合反応は、飽和炭素原子上の親核置換反応(文献に記載されている)であり、方法a)に記載の方法と同様にして実施される。
【0050】
出発化合物、すなわち式Ibで示されるアルコールは、文献に記載の方法で、式Iaで示されるハロゲン化物に、水、アンモニア又は硫化水素を作用させることによって製造し得る。場合によって選択される出発ハロゲン化物又は式IIbで示される出発化合物は、既知であるか、又は類似の化合物の製造について記載されている方法に従って製造される。
【0051】
前記の反応の他に、式Iで示される化合物は、式Iで示される別の先に製造された化合物の変換によって製造し得、本発明はこのような化合物及び方法を含むと理解されるべきである。このような変換の例は、鎖の伸長において得られる選択されたリンイリド酸とアルデヒド基との反応及び国際公開第WO01/87890号パンフレットに開示のようにカルボニル又はエステル基によるアルケニル置換基の形成である。これらの反応は、溶媒、例えばベンゼン、トルエン又はヘキサン中で高められた温度で(最も頻繁には溶媒の沸点で)実施される。
【0052】
変換のさらに一般的な例は、例えばビルスマイヤーアシル化などの方法による式Iで示される化合物のホルミル化又はn-BuLiとジメチルホルムアミドとの反応である。これらの方法の反応条件は、文献において知られている。
【0053】
ニトリル基、アミド基又はエステル基を有する式Iで示される化合物の加水分解により、カルボキシル基を有する化合物を製造し得る。この化合物は新規な官能基を有するその他の化合物、例えばエステル類、アミド類、ハロゲン化物、無水物、アルコール類又はアミン類の製造に適した中間体である。
【0054】
酸化反応又は還元反応は、式Iで示される化合物の置換基の変換の別の可能性がある。最も頻繁に使用される酸化剤は、過酸化物(過酸化水素、m-クロロ過安息香酸又は過酸化ベンゾイル)あるいは過マンガン酸イオン、クロム酸イオン又は過塩素酸イオンである。従って、例えば重クロム酸ピリジニル又はクロロクロム酸ピリジニルによるアルコール基の酸化によって、アルデヒド基が形成され、この基はさらに酸化することによってカルボキシル基に転化させ得る。
【0055】
アルキルチオ基の選択的酸化によって、アルキルスルフィニル基又はアルキルスルホニル基を製造し得る。
【0056】
ニトロ基を有する化合物の還元によって、アミノ化合物の製造が可能になる。この反応は、接触水素添加の通常の条件下で行なわれるか又は電気化学的に行なわれる。パラジウム担持炭素を使用する接触水素添加により、アルケニル置換基を、アルキル置換基に転化させ得るし、又はニトリル基をアミノアルキル基に転化させ得る。
【0057】
式Iで示される化合物の芳香属構造の種々の置換は、標準的な置換反応によって又は個々の官能基の通常の変換によって導入し得る。このような反応の例は、芳香族置換、アルキル化、ハロゲン化、ヒドロキシル化、及び置換基の酸化又は還元である。試薬及び反応条件は、文献により知られている。従って、例えば芳香族置換によって、ニトロ基が濃 硝酸及び硫酸の存在下で導入される。ハロゲン化アシル又はハロゲン化アルキルを使用することによって、アシル基又はアルキル基の導入が可能になる。反応は、フリーデル−クラフト反応の条件で、ルイス酸、例えば三塩化アルミニウム又は三塩化鉄の存在下で実施される。ニトロ基の還元により、アミノ基が得られ、これはジアゾ化反応によって適当な出発基に転化させ、これは次の基H、CN、OH、Halの一つで置換し得る。
【0058】
化学反応において好ましくない相互作用を防止するために、ある種の基、例えばヒドロキシ基、アミノ基、チオ基又はカルボキシ基を保護する必要がある場合が多い。この目的には、多数の保護基を使用し得〔Green TW, Wuts PGH, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons, 1999〕、従ってその選択、使用及び除去は、化学合成において慣用の方法である。
【0059】
アミノ基又はアルキルアミノ基の都合のよい保護基は、例えばアルカノイル基(アセチル基)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基又はtert-ブトキシカルボニル基);アリールメトキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基)、アロイル基(ベンゾイル基)又はアルキルシリル基(トリメチルシリル基又はトリメチルシリルエトキシメチル基)である。保護基を除去する条件は、この基の選択及び特徴に依存する。従って、例えば、アシル基、例えばアルカノイル基、アルコキシカルボニル基又はアロイル基は、塩基(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)の存在下で除去し得、tert-ブトキシカルボニル基又はアルキルシリル基(トリメチルシリル基)は適当な酸(塩酸、硫酸、リン酸又はトリフルオロ酢酸)を用いて除去し得、これに対してアリールメトキシカルボニル基(ベンジルオキシカルボニル基)は、パラジウム担持炭素のような触媒を使用して水素添加することによって除去し得る。
【0060】
本発明の化合物は、生体アミン、例えばセロトニン、ノルエピネフリン及びドーパミンの神経化学平衡が妨げられており且つある種の神経伝達物質の不均衡な(過度に多い又は過度に少ない)合成、貯蔵、放出、代謝及び/又は再吸収における不規則性によって生じ得る疾患及び障害の治療に特に有効である。
【0061】
本発明の化合物がセロトニン受容体、特に5−HT2A及び5−HT2C、並びにσ1受容体に対して顕著な結合親和性を示し且つ高度な選択性を有することが知見された。
【0062】
本発明の一つの具体的態様において、式Iで示される化合物あるいはその塩又は溶媒和物は、1μMよりも小さいIC50として表される濃度で及び1μMよりも小さいK値を有する濃度で5−HT2A及び5−HT2Cセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0063】
本発明の別の具体的態様において、式Iで示される化合物あるいはその塩又は溶媒和物は、約200nMよりも小さいIC50として表される濃度で及び約100nMよりも小さいK値を有する濃度で5−HT2Aセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0064】
本発明のさらに別の具体的態様において、式Iで示される化合物あるいはその塩又は溶媒和物は、約200nMよりも小さいIC50として表される濃度で及び約100nMよりも小さいK値を有する濃度で5−HT2Cセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0065】
本発明の化合物がσ1受容体に対して顕著な結合親和性を有することが知見された。
【0066】
本発明の一つの具体的態様において、式Iで示される化合物あるいはその塩又は溶媒和物は、1μMよりも小さいIC50として表される濃度で及び1μMよりも小さいK値を有する濃度でσ1受容体に対して結合親和性を示す。
【0067】
本発明の別の具体的態様において、式Iで示される化合物あるいはその塩又は溶媒和物は、約200nMよりも小さいIC50として表される濃度で及び約100nMよりも小さいK値を有する濃度でσ1受容体に対して結合親和性を示す。
【0068】
セロトニン受容体は、(幾つかのその他の神経伝達物質、例えばドーパミン及び/又は受容体の活性化に関与することによって直接的に又は間接的に)一連のCNS障害の病態生理学において重要であることから、本発明の化合物は、生体アミン及びその受容体が重要な役割を果たす疾患、損傷及び障害の治療及び予防用の医薬製剤の製造に使用し得る。
【0069】
本発明の化合物の前記で説明した都合のよい生物学的性質からみて、治療有効量の式Iで示される化合物の投与は、σ1受容体並びに5−HT2A及び5−HT2Cセロトニン受容体に対する選択性の向上により、少ない副作用に関連したCNS疾患及び障害の有効な治療方法を提供する。
【0070】
一般的に、本発明の化合物は、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬として又は片頭痛治療薬として使用される医薬製剤の製造に使用し得る。
【0071】
また、本発明の化合物は、中枢神経系の神経化学平衡の障害の結果である疾患及び障害、例えば鬱病及び穏やかな鬱病、不安、双極性障害、睡眠障害、性障害、精神病、境界型精神病、精神分裂病、片頭痛、人格障害及び強迫性障害、対人恐怖症又は不安発作、幼児の器質性精神障害、高齢者の攻撃性、記憶障害及び人格障害、依存症、肥満症、過食症及び類似の障害、いびき及び月経前トラブルの治療及び予防用の医薬製剤の製造に使用し得る。
【0072】
同様に、これらの本発明の化合物は、外傷、脳卒中、神経変性疾患、心臓血管障害(例えば、高血圧、血栓形成、梗塞)及び類似の疾患によって並びに胃腸障害によって引き起こされるCNS損傷の治療及び予防用の医薬製剤の製造に使用し得る。
【0073】
本発明の活性物質及びその製薬学的に許容し得る塩又は溶媒和物の有効量は、一般式Iで示される化合物の効果、CNSの疾患及び障害の性質及び重症度並びに治療する患者の体重に依存し、0.001〜10 mg/kg体重であり得る。いずれの場合にも、平均体重70kgの成人の単位用量は、一般式Iで示される化合物あるいはその製薬学的に許容し得る塩又は溶媒和物0.07〜1000 mgであると解釈される。単位用量は、1日に1回又は数回、例えば1日に2回、3回又は4回、最も頻繁には1日に1〜3回投与し得る。
【0074】
本発明は、さらに具体的には、セロトニン受容体、σ受容体、アドレナリン作動性受容体、ドーパミン受容体又はムスカリン性受容体に結合する及び/又は1種又はそれ以上の生体アミン(セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン)の再吸収の阻害剤として作用する有効量の化合物に関する。
【0075】
また、本発明は、毒性のない有効量の本発明の化合物と製薬学的に許容し得る担体又は溶媒とを含有する医薬製剤に関する。
【0076】
前記医薬製剤は、有効成分として治療有効量のある一定の物質を製薬学的に許容し得る担体と混合することによって得られ、所定の投与経路に応じ種々の形態を有し得る。これらの医薬製剤は特に、経口、舌下、直腸、経皮又は非経口投与経路に関する。
【0077】
医薬製剤は、慣用の製薬補助剤及び製造経路を使用して製造し得る。経口投与形態は、シロップ剤、カプセル剤、錠剤及び同様の形態であり得、この場合の通常の固形担体は、不活性物質、例えばラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、マンニトールなどであり、また通常の液状経口補助剤としては、エタノール、グリセリン、水などが挙げられる。全ての補助剤は、場合により崩壊剤、希釈剤、造粒剤、湿潤剤、結合剤などと慣用の方法を使用することによって混合し得る。非経口形態は、水又は幾つかのその他の滅菌担体を使用することによって製造し得る。経口製剤の製造に一般的な液状担体、例えば水、グリコール、油類、アルコールなどの幾つかを使用する場合には、製剤はシロップ剤、エマルジョン剤、軟ゼラチンカプセル剤又は滅菌注射液、例えばアンプルの形態、あるいは非水性液体懸濁液の形態であり得る。経口製剤の製造に固体担体、例えばデンプン、ショ糖、カオリン、湿潤剤、結合剤、崩壊剤などを使用する場合には、製剤は散剤、カプセル剤、錠剤、硬質ゼラチンカプセル剤であり得るし又はカプセル剤において投与し得る顆粒剤の形態であり得、固形担体の量は変化させ得る(最も頻繁には1mg〜1g)。簡単に使用できることから、錠剤及びカプセル剤が、固形担体を使用する最も都合のよい経口製剤である。非経口製剤については、担体は主に滅菌水であるが、その他の成分も溶解度を上げるために製剤に含有させ得る。注射剤溶液の製造については、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液又はこれらの混合物が使用される。注射剤溶液はまた、活性成分の遅延放出用の成分も含有し得る。この目的に使用し得る都合のよい油類は、例えばアラキン油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、長鎖脂肪酸の合成グリセロールエステル又は前記の幾つかの油類の混合物である。注射剤懸濁液は、使用する適当な液状担体を懸濁剤と混合するような方法で製造し得る。経皮投与に都合のよい製剤においては、担体としては、活性物質及び/又は適当な湿潤剤の浸透を高める物質であると理解され、皮膚に対して有害な効果を生じない任意の起源の適当な添加剤と組み合わせ得る。前記の添加剤は、皮膚投与を容易にし得及び/又は所定の製剤の製造に使用し得、種々の方法、例えば経皮的に、スポットオンで、又は軟膏の形態で施用し得る。
【0078】
本発明の化合物の溶解性及び/又は安定性を高めるために、α-、β-又はγ-シクロデキストリン又はこれらの誘導体、特にヒドロキシアルキル置換シクロデキストリン、すなわち2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを使用し得る。例えばアルコールのような共溶媒も、種々の医薬製剤において本発明の化合物の溶解性及び/又は安定性を高め得る。
【0079】
本発明の医薬組成物に適用される“担体”という用語は、活性化合物と一緒に投与される希釈剤、賦形剤、又はビヒクルを示す。このような製薬担体は、滅菌液、例えば水、食塩水溶液、デキストロース水溶液、グリセリン水溶液、及び油類、例えば石油、動物油、植物油又は合成油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などであることができる。しかし、メマンチンは高溶解性であることから、水溶液が好ましい。適当な製薬担体は、E.W. Martinによる“Remington's Pharmaceutical Sciences”第18版に記載されている。本発明に特に好ましいものは、即時放出、すなわち短時間、例えば60分以下で有効成分の大部分又は全部の放出に適し且つ薬剤の迅速吸収を可能にする担体である。
【0080】
“製薬学的に許容し得る賦形剤”とは、一般に安全で、毒性がない医薬組成物の調製に有用である賦形剤を意味し、動物用及びヒト医薬用途に許容し得る賦形剤を包含する。本明細書で使用する“製薬学的に許容し得る賦形剤”とは、このような賦形剤の一つ及びそれ以上を包含する。
【0081】
病気の状態、障害又は状況(state、disorder or condition)を“治療する”又はこれらの“治療”とは、
(1) 病気の状態、障害又は状況に苦しんでいるか又はかかりやすいものであり得るが未だ病気の状態、障害又は状況の臨床症状又は亜臨床症状を経験していないか又は示していない哺乳動物において病気の状態、障害又は状況の進行の臨床症状の出現を防止又は遅らせること、
(2) 病気の状態、障害又は状況を抑制する、すなわち、病気あるいはその少なくとも1種の臨床症状又は亜臨床症状の進行を停止又は阻止すること、あるいは
(3) 病気を和らげる、すなわち、病気の状態、障害又は状況あるいはその少なくとも1種の臨床症状又は亜臨床症状の後退を生じること
を包含する。
【0082】
治療すべき患者に対する利点は、統計的に著しいか又は少なくとも患者又は医師に知覚できる。
【0083】
“治療有効量”とは、病気の状態、障害又は状況を治療するために哺乳動物に投与された場合に、このような治療を行うのに十分である化合物の量を意味する。“治療有効量”は、化合物、病気及びその重症度並びに治療すべき哺乳動物の年齢、体重、健康状態及び反応性に応じて変化するであろう。
【0084】
用量及び投与計画は、当業者によって認められるように、年齢、性別、健康状態及び 本発明の化合物を施用することによって達成される利点及び治療すべき患者又は対象哺乳動物の副作用並びに医師の判断に応じて調節することができる。
【0085】
本明細書で使用する治療を必要とする宿主又は対象とは、哺乳動物、好ましくはヒトを示す。
【0086】
神経化学的定常状態に対する本発明の化合物の効果は、生体外試験、例えば5-HT2A受容体(Bonhaus D.W. Br., J. Pharmacol., 1995, 115:622; Saucier C., J. Neurochem., 1997, 68:1998)及び5-HT2C受容体(Wolf W.A., J. Neurochem., 1997, 69:1449)についての放射線核種標識放射性リガンド結合アッセイ、σ1受容体(Thomson W. and Donn R., Arthritis Res., 2002, 4:302-306)についての生体外結合アッセイによって及び生体外試験、例えば尾懸垂試験(Vogel H.G.及びVogel W.H. Drug Discovery and Evaluation Pharmacological Assays, Springer 1997, 304)、マウスでのアンフェタミン誘発高歩行運動(Millan MJ. et al, 1998, J Pharmacol. Exp. Ther., 287:167-186)、マウスでの強制水泳試験(Porsolt R.D. et al., Arch Int. Pharmacodyn. 1977, 227:327-336)、ラットに対するm-クロロフェニルピペラジン(m-CPP)試験(Drug Dev. Res., 1989, 18:119-144)及びラットでのアポモルヒネ、トリプタミン、ノルエピネフリン(ATN)試験(Arch. Int. Pharmacodyn. 1977, 227:238-253)によって調べた。
【実施例】
【0087】
5−HT2A受容体及び5−HT2C受容体に対する結合親和性を生体外で測定する方法
受容体に対する結合について大きな親和性を有する低濃度の放射性リガンドを、緩衝培地(0.2〜5mL)中である種の受容体に富む組織試料(組織1〜5mg)と共にインキュベートした。組換えヒトHT2A及びHT2C受容体をCHO−K1又はCOS−7細胞で発現させ、また競争結合についても使用した。インキュベーション中に、放射性リガンドは前記受容体に結合した。結合バランスが達成された際に、放射性リガンドを結合した受容体を前記リガンドが結合されていない受容体から分離し、受容体/放射性リガンド複合体の放射能を測定した。供試化合物と受容体との相互作用を、競合結合実験で試験した。種々の濃度の供試化合物を、対応する受容体に富む調製組織と前記放射性リガンドとを含有するインキュベーション混合物に加えた。放射性リガンド結合は、受容体に対するある種の化合物の親和性と該化合物の濃度に比例して供試化合物によって阻害された。
5-HT2A受容体に対する結合について調べるために使用した放射性リガンドは、
H]-ケタンセリンであり、使用した組織はひヒト皮質又はCHO−K1で発現された組換え5−HT2A受容体であった。
5−HT2C受容体に対する結合について調べるために使用した放射性リガンドは、[3H]-mesulergineであり、使用した組織は脈絡叢又はCHO-K1細胞で発現された組換え5−HT2C受容体であった。
1μMよりも低い濃度でIC50及びKを示す化合物を、活性であるとみなした。化合物:3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン及びジメチル−[3−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミンが、200nMよりも小さいIC50値及び100nMよりも小さいK値として表される5-HT2A及びHT2Cセロトニン受容体に対する結合親和性を示した。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想された。
【0088】
σ1受容体に対する結合親和性を生体外で測定する方法
ジャーカット細胞を、10%ウシ胎児血清、100 U/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを補足した培地RPMIで増殖させ、回収し、その懸濁物をホモジナイズした。遠心分離後に、膜画分を分離し、リン酸緩衝液(pH=7.5)に再懸濁し、使用するまで液体窒素中に少量のアリコートで保存した。ジャーカット細胞膜に対する種々の放射標識リガンドの結合を既に報告されているようにして測定した(Ramamoorthy et al., 1995)。ジャーカット細胞株におけるσ結合部位を特定するために、[H]ハロペリドールをリガンドとして使用した。ハロペリドールは、1型及び2型の両方のσ受容体に対する高親和性リガンドである。結合アッセイは、ジャーカット細胞膜を使用して、全結合を調べるためには[H]ハロペリドール(10nM)単独の存在下で及び非特異的結合を調べるためには[H]ハロペリドール(10nM)と非標識ハロペリドール(10nM)の存在下で行った。膜を、リン酸緩衝液中でリガンと室温で3時間インキュベートした。濾紙を洗浄した後に、濾紙に会合した放射能を液体シンチレーション分光法を使用して測定した。
1μMよりも低い濃度でIC50及びKを示す化合物を、活性であるとみなした。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0089】
マウスでの強制水泳試験
体重20〜25gの雄性CD1マウスを実験に使用した。10匹の動物の群を、効果を調べるために試験の30分前に胃管栄養法で経口により供試化合物、イミプラミン(陽性対照)又はビヒクル(陰性対照)で処理した。実験の当日に、動物を、22℃に温めた水を10cmの高さまで満たしたガラスシリンダー(高さ18.2cm、直径13.3cm)に入れた。動物のもがきの終わり及び浮遊の開始として定義される無動作(この場合、動作は動物がその頭部を水面上に保つのに不可欠な動作まで低下した)を、2分後に記録し始め、次いで4分間監視した。
【0090】
受動的な挙動を示す動物の割合を算出し、担体で処理した対症群と比較した。10 mg/kgの用量で、対照群よりも30%以上について動物の無動作を減少させた化合物を活性であるとみなした。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0091】
マウスでの尾懸垂試験
体重20〜25gの雄性Balb/cJマウスを実験に使用した。動物9匹の群を、可能性のある抗うつ活性を調べるために試験の30分前に、供試化合物、イミプラミン(陽性対照)又はビヒクル(陰性対照)を用いて腹腔内注射、皮下注射により処理するか又は胃管栄養法で経口により処理した。マウスを約90cmの高さでその尾から吊り下げ、5分間観察した。観察期間中に1分間マウスが垂れ下がった完全に動かない状態を、抗うつとして定義した。抗うつ作用を有する物質で処理した動物では、無動作時間が短縮された。
受動的な挙動を示す動物の割合を算出し、ビヒクルで処理した対照群と比較した。結果の有意差は、フィッシャーの正確確率検定を使用して分析した。10 mg/kgの用量で対照群よりも40%以上の動物の無動作を減少させた化合物を、活性であるとみなした。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0092】
マウスにおいてアンフェタミンで誘発した自発運動の亢進
体重35〜35gの雄性Swiss OFAマウスを、自発運動の亢進(hyperlocomotion)の誘発の30分前にビヒクル(食塩水)又は供試化合物で処理した。デキサンフェタミン硫酸塩を、2mg/kgで腹腔内投与した。30分後に、動物を、自発運動(locomotor activity)を記録するために低照度(100ルックス)の部屋の80×80cmの木箱に入れた。運動活性を、ビデオ画像分析装置を使用して30分間調べた。運動の全期間、運動の発生及び全運動距離を調べた。ハロペリドールを0.25 mg/kgの用量で試験した(0.5%メチルセルロース中で調製され、対照物質として働いた)。
化合物は、ビヒクル処理対照群と比べた場合に、30%以上の実験動物のアンフェタミンで誘発させた自発運動の亢進を低下させた場合に活性であるとみなした。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0093】
マウスでのm-クロロフェニルピペラジン(m−CPP)試験
供試物質を試験の1時間前にマウスに経口投与し、m−CPPを1mg/kgの用量で試験の15分前に静脈内に投与した。実験の開始時に、処理した動物をラットについてのオープンフィールド試験に供した(Drug Dev. Res., 1989, 18, 119-144):この装置は80×65×35 cmの寸法をもつ開放箱から構成され、一方の壁に直径10cmの開口を有し、この開口によって25×21×21 cmの寸法をもつ非照明区室に接続され且つ前記開口には66cmの距離から光源〔IR源又はKlevermx(登録商標);12 V/20 W〕によって光を当てた;供試物質投与1時間後に、動物がその頭部を照明出口からそむけるように暗い(非照明)区室に入れ、動物が暗い区室から明るい区室に動物へ出るのを10分間調べた。
m−CPPによって誘発される効果を40%以上低下させた用量を、物質の活性用量として定義した。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0094】
ラットでのアポモルヒネ、トリプタミン、ノルエピネフリン(ATN)試験
実験の開始時(t=0)に、動物に1.25 mg/kgのアポモルヒネを静脈内注射し、次いで40 mg/kgのトリプタミン(t=60分)を静脈内注射し、そして1.25 mg/kgのノルエピネフリン(t=90分)を静脈内注射した。
異常な興奮状態と正常な挙動を60分間観察し(アポモルヒネ試験)、次いでトリプタミン試験(観察時間5分)で後足の両側の間代性痙攣及び体の一般的な震えを観察し、そしてノルエピネフリン試験において注射後120分間、致死を観察した。
受動的な挙動を示す動物の割合を算出し、担体で処理した対照群と比較した。
10 mg/kgの用量で対照群よりも40%について認められた効果(可動状態)の時間を低減させた化合物を、生体内試験で活性であるとみなした。
同様の結果が本発明のその他の化合物について認められるであろうと予想される。
【0095】
前記のアッセイで試験した本発明の化合物は、前記の試験の少なくとも2つの試験で作用を示した。しかし、これらの結果は、化合物の生物作用の単なる例示を示し及びいずれにしろ本発明を限定するものではない。
【0096】
実施例による製造方法
本発明を以下の実施例により例証する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【0097】
実施例1
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(1a)
11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オンオキシム(1.66ミリモル)を乾燥THF(10 mL)に溶解し、−78℃に冷却した溶液に、n-ブチルリチウム(3.57ミリモル)を1滴ずつ徐々に加えた。この反応混合物をこの温度で15分間攪拌し、次いで0℃に加熱し、これに酢酸エチル(3.57ミリモル)を加えた。反応混合物の攪拌を室温で1時間以上続け、次いで水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
1H NMR (ppm, CDCl3): 2.03(s, 3H), 7.27-7.60(m, 8H);
MS(m/z): 306.1 [MNa], 338.1 [MNa+MeOH]。
【0098】
3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(1)
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(1a)(0.07ミリモル)をTHF(5mL)に溶解した溶液に、濃硫酸(100μL)を加えた。反応混合物を攪拌し、還流下で5時間加熱し、次いで冷却し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、油状生成物を単離した;
1H NMR (ppm, CDCl3):2.74(s, 3H), 7.35-7.93(m, 8H);
MS(m/z):265.9 [MH]。
【0099】
実施例2
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(2a)
11−クロロ−11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オンオキシム(1.89ミリモル)を乾燥THF(10 mL)に溶解し、−78℃に冷却した溶液に、n-ブチルリチウム(4.07ミリモル)を1滴ずつ徐々に加えた。この反応混合物をこの温度で15分間攪拌し、次いで0℃に加熱し、これに酢酸エチル(4.07ミリモル)を加えた。反応混合物の攪拌を室温で1時間以上続け、次いで水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS(m/z): 340.1 [MNa]。
【0100】
3−メチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(2)
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(2a)(0.08ミリモル)をTHF(5mL)に溶解した溶液に、濃硫酸(114μL)を加えた。反応混合物を攪拌し、還流下で5時間加熱し、次いで冷却し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、油状生成物を単離した;
MS (m/z): 300.78 [MH]。
【0101】
実施例3
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(3a)
11H−ジベンゾ[b,f]オキセピン−10−オンオキシム(1.91ミリモル)を乾燥THF(10 mL)に溶解し、−78℃に冷却した溶液に、n-ブチルリチウム(4.10ミリモル)を1滴ずつ徐々に加えた。この反応混合物をこの温度で15分間攪拌し、次いで0℃に加熱し、これに酢酸エチル(4.10ミリモル)を加えた。反応混合物の攪拌を室温で1時間以上続け、次いで水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS (m/z): 290.3 [Mna]。
【0102】
3−メチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(3)
3−メチル−3,3a−ジヒドロ−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−オール(3a)をTHF(5mL)に溶解した溶液に、濃硫酸(143μL)を加えた。反応混合物を攪拌し、還流下で5時間加熱し、次いで冷却し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、油状生成物を単離した;
MS (m/z): 250.27 [MH]。
【0103】
実施例4
1−ブロモメチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(4)
3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(1)(0.68ミリモル)を四塩化炭素(15 mL)に溶解した溶液に、NBS(N-ブロモコハク酸イミド)(1.02ミリモル)と、触媒量の過酸化ベンゾイル(PhCO)とを加えた。この反応混合物を攪拌し、6〜8時間加熱還流し、次いで冷却し、沈殿したコハク酸イミドを濾過し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、油状生成物を単離した;
1H NMR (ppm, CDCl3): 4.63(s, 2H), 7.38-8.10(m, 8H);
MS (m/z): 264.0 [M-Br]。
【0104】
実施例5
1−ブロモメチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(5)
3−メチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(2)(0.78ミリモル)を四塩化炭素(15 mL)に溶解した溶液に、NBS(N-ブロモコハク酸イミド)(1.17ミリモル)と、触媒量の過酸化ベンゾイル(PhCO)とを加えた。この反応混合物を攪拌し、6〜8時間加熱還流し、次いで冷却し、沈殿したコハク酸イミドを濾過し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、油状生成物を単離した;
MS (m/z): 298.45 [M-Br]。
【0105】
実施例6
1−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(6)
3−メチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(3)(0.58ミリモル)を四塩化炭素(15 mL)に溶解した溶液に、NBS(N-ブロモコハク酸イミド)(0.87ミリモル)と、触媒量の過酸化ベンゾイル(PhCO)とを加えた。この反応混合物を攪拌し、6〜8時間加熱還流し、次いで冷却し、沈殿したコハク酸イミドを濾過し、溶媒を蒸発させ、これに水を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を一緒にし、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS (m/z): 248.0 [M-Br]。
【0106】
実施例7
ジメチル−[3−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン(7)
3-ジメチルアミノプロピルクロリド塩酸塩(2.16ミリモル)を50%水酸化ナトリウム(1.9 mL)に溶解した溶液に、触媒量のベンジルトリエチルアンモニウムクロリドと、1-ブロモメチル-2-オキサ-8-チア-1-アザ-ジベンゾ[e,h]アズレン(4)(0.15ミリモル)をトルエン(10 mL)に溶解した溶液とを加えた。この反応混合物を激しく攪拌しながら加熱し、3時間還流させ、次いで室温まで冷却し、水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出液を水洗し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS (m/z): 367.2 [MH]。
【0107】
実施例8
ジメチル−[2−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン(8)
実施例7に記載の方法に従って、1-ブロモメチル-2-オキサ-8-チア-1-アザ-ジベンゾ[e,h]アズレン(4)(0.20ミリモル)と、2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(2.85ミリモル)とから出発して、油状生成物を得た;
1H NMR (ppm, CDCl3): 2.39(s, 6H), 2.69-2.72(t, 2H), 3.83-3.87(t, 2H), 4.79(s, 2H), 7.35-7.89(m, 8H);
MS (m/z): 353.2 [MH], 375.2 [MNa]。
【0108】
実施例9
ジメチル−[2−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン(9)
実施例7に記載の方法に従って、1-ブロモメチル-11-クロロ-2-オキサ-8-チア-1-アザ-ジベンゾ[e,h]アズレン(5)(0.18ミリモル)と2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(2.56ミリモル)とから出発して、油状生成物を得た;
MS (m/z): 387.65 [MH]。
【0109】
実施例10
ジメチル−[3−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン(10)
実施例7に記載の方法に従って、1−ブロモメチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(5)(0.18ミリモル)と2-ジメチルアミノプロピルクロリド塩酸塩(2.56ミリモル)とから出発して、油状生成物を得た;
MS (m/z): 401.65 [MH]
実施例11
ジメチル−[2−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン(11)
実施例7に記載の方法に従って、1−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(6)(0.25ミリモル)と2-ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(3.42ミリモル)とから出発して、油状生成物を得た;
MS (m/z): 337.2 [MH]。
【0110】
実施例12
ジメチル−[3−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン(12)
1−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン(6)(0.25ミリモル)と2-ジメチルアミノプロピルクロリド塩酸塩(3.42ミリモル)とから出発して、油状生成物を得た;
MS (m/z): 351.2 [MH]。
【0111】
出発化合物の製造
11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オンオキシム
11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オン(J.O. Jilek et al., Mh. Chem., 96 (1965) 182-207)(2.21ミリモル)を、攪拌及び穏やかな加熱下に無水エタノール(4.26 mL)と水(1.28 mL)に溶解した。得られたケトンの溶液に、水酸化アミン塩酸塩(4.42ミリモル)と酢酸ナトリウム(4.42ミリモル)とを加えた。反応混合物を攪拌し、2時間加熱還流した。反応の完結後に、熱反応混合物に30%エタノール(2mL)を加え、室温まで放置冷却した。沈殿が生じない場合には、溶媒を減圧下で蒸発させ、蒸発後の残留物を水に溶解し、ジクロロメタンで抽出し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
1H NMR (ppm, CDCl3): 3.65(bs, 1H), 4.34(s, 2H), 7.18-8.06(m, 8H);
MS (m/z): 242.0 [MH], 264.0 [MNa], 296.0 [MNa+MeOH]。
【0112】
8−クロロ−11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オンオキシム
11−クロロ−11H−ジベンゾ[b,f]チエピン−10−オン(J.O. Jilek et al., Mh. Chem., 96 (1965) 182-207)(1.47ミリモル)を、攪拌及び穏やかな加熱下に無水エタノール(4.26 mL)と水(1.28 mL)に溶解した。得られたケトンの溶液に、水酸化アミン塩酸塩(2.95ミリモル)と酢酸ナトリウム(2.95ミリモル)とを加えた。反応混合物を攪拌し、2時間加熱還流した。反応の完結後に、熱反応混合物に30%エタノール(2mL)を加え、室温まで放置冷却した。沈殿が生じない場合には、溶媒を減圧下で蒸発させ、蒸発後の残留物を水に溶解し、ジクロロメタンで抽出し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS (m/z): 276.45 [MH]。
【0113】
11H−ジベンゾ[b,f]オキセピン−10−オンオキシム
11H−ジベンゾ[b,f]オキセピン−10−オン(I. Ueda et al., Chem. Pharm. Bull., 23 (10) 2223-2231 (1975))(4.42ミリモル)を、攪拌及び穏やかな加熱下に無水エタノール(8.52 mL)と水(2.56 mL)に溶解した。得られたケトンの溶液に、水酸化アミン塩酸塩(8.84ミリモル)と酢酸ナトリウム(8.84ミリモル)とを加えた。反応混合物を攪拌し、2時間加熱還流した。反応の完結後に、熱反応混合物に30%エタノール(4mL)を加え、室温まで放置冷却した。沈殿が生じない場合には、溶媒を減圧下で蒸発させ、蒸発後の残留物を水に溶解し、ジクロロメタンで抽出し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させた。シリカゲルカラムを用いてクロマトグラフィーで精製した後に、結晶質生成物を単離した;
MS (m/z): 226.0 [MH]。
【0114】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I

{式中、XはCHを意味するか又はO、S、S(=O)、S(=O)及びNRからなる群から選択される異種原子を意味し(但し、Rは、水素原子であるか又はC〜C-アルキル基、C〜C-アルカノイル基、C〜C-アルコキシカルボニル基、C〜C10-アリールアルキルオキシカルボニル基、C〜C10-アロイル基、C〜C10-アリールアルキル基、C〜C-アルキルシリル基及びC〜C10-アルキルシリルアルキルオキシアルキル基からなる群から選択される置換基である);
Y及びZは、互いに独立して、利用できる炭素原子に結合された1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、C〜C-アルキル基、C〜C-アルケニル基、C〜C-アルキニル基、ハロ-C〜C-アルキル基、ヒドロキシ基、C〜C-アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、C〜C-アルカノイル基、アミノ基、アミノ-C〜C-アルキル基、C〜C-アルキルアミノ基、N-(C〜C-アルキル)アミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)アミノ基、チオール基、C〜C-アルキルチオ基、スルホニル基、C〜C-アルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜C-アルキルスルフィニル基、カルボキシ基、C〜C-アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される置換基を意味し;
は、水素原子、ハロゲン原子;場合によりハロゲン原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基及びC〜Cアルキルスルフィニル基からなる群から選択される1個、2個、3個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基;場合により1個、2個、3個又はそれ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルケニル基;C〜Cアルキニル基;6〜10個の炭素原子と交互二重結合とを有する単環式又は二環式アリール基〔前記の基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく且つ利用できる炭素原子により直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に結合されることができる〕;4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基の意義を有する単環式又は二環式ヘテロアリール基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基で置換されていてもよい〕;O、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記複素環式基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニルで置換されていてもよい〕;ヒドロキシ基;ヒドロキシ-C〜Cアルケニル基;ヒドロキシ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルコキシ基;チオール基;チオ-C〜Cアルケニル基;チオ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルキルチオ基;アミノ基;N-(C〜Cアルキル)アミノ基;N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基;C〜Cアルキルアミノ基;アミノ-C〜Cアルケニル基;アミノ-C〜Cアルキニル基;アミノ-C〜Cアルコキシ基;C〜Cアルカノイル基;C〜C10アロイル基;オキソ-C〜Cアルキル基;C〜Cアルカノイルオキシ基;カルボキシ基;場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基;場合により置換されていてもよいC〜C10アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基;N-(C〜Cアルキル)カルバモイル基;N,N-ジ(C〜C-アルキル)カルバモイル基;シアノ基;シアノ-C〜Cアルキル基;スルホニル基;C〜Cアルキルスルホニル基;スルフィニル基;C〜Cアルキルスルフィニル基;ニトロ基を意味するか、
あるいは式II

〔式中、R及びRは、同時に又は互いに独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、前記の意義を有するアリール基の意義を有するか、あるいはNと一緒になって場合により置換されていてもよい複素環式基又はヘテロアリール基の意義を有し[但し、複素環式基はO、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基であり且つ前記複素環式基は、場合によりハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜Cアルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく、またヘテロアリール基は4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基であり且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよい];
mは1〜3の整数の意義を有し;
Qは酸素原子又は硫黄原子の意義を有する〕
で表される置換基を意味する}
で示される化合物並びにその製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物。
【請求項2】
XがO又はS原子を表す請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Y及びZが、互いに独立して、利用できる炭素原子に結合された1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基であって、水素原子、弗素原子、塩素原子、臭素原子、C〜C-アルキル基、ハロ-C〜C-アルキル基、ヒドロキシ基、C〜C-アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、C〜C-アルカノイル基、アミノ基、アミノ-C〜C-アルキル基、N-(C〜C-アルキル)アミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)アミノ基、チオール基、C〜C-アルキルチオ基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基を意味する請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、水素原子、ハロゲン原子;場合によりハロゲン原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基からなる群から選択される1個、2個、3個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基;6〜10個の炭素原子と交互二重結合とを有する単環式又は二環式アリール基〔前記の基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基からなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく且つ利用できる炭素原子により直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に結合されることができる〕;4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基の意義を有する単環式又は二環式ヘテロアリール基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基で置換されていてもよい〕;O、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記複素環式基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基及びN,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基で置換されていてもよい〕;ヒドロキシ基;C〜Cアルコキシ基;チオール基;C〜Cアルキルチオ基;アミノ基;N-(C〜Cアルキル)アミノ基;N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基;アミノ-C〜Cアルコキシ基;C〜Cアルカノイル基;C〜C10アロイル基;C〜Cアルカノイルオキシ基;場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基;場合により置換されていてもよいC〜C10アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基;N-(C〜Cアルキル)カルバモイル基;N,N-ジ(C〜C-アルキル)カルバモイル基;シアノ基;シアノ-C〜Cアルキル基;ニトロ基の意義を有するか、
あるいは式II

(式中、R及びRは、同時に又は互いに独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、前記の意義を有するアリール基の意義を有するか、あるいはNと一緒になってモルホリン−4−イル基、ピペリジン−1−イル基、ピロリジン−1−イル基、イミダゾール−1−イル基及びピペラジン−1−イル基からなる群から選択される複素環式基又はヘテロアリール基の意義を有し;mは1〜3の整数の意義を有し;Qは酸素原子の意義を有する)
で表される置換基の意義を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Yが水素原子又は塩素原子を表し且つZが水素原子を表す請求項1又は3に記載の化合物。
【請求項6】
がCH、CHBr、CHOHを表すか又は式II:

(式中、R、R、Q及びmは前記の意義を有する)
で示される置換基を表す請求項1又は4に記載の化合物。
【請求項7】
記号mが2又は3の意義を有する請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
11−クロロ−3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−メチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
ジメチル−[2−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;及び
ジメチル−[3−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン
からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式I

{式中、XはCHを意味するか又はO、S、S(=O)、S(=O)及びNRからなる群から選択される異種原子を意味し(但し、Rは水素原子であるか又はC〜C-アルキル基、C〜C-アルカノイル基、C〜C-アルコキシカルボニル基、C〜C10-アリールアルキルオキシカルボニル基、C〜C10-アロイル基、C〜C10-アリールアルキル基、C〜C-アルキルシリル基及びC〜C10-アルキルシリルアルキルオキシアルキル基からなる群から選択される置換基である);
Y及びZは、互いに独立して、利用できる炭素原子に結合された1個又はそれ以上の同一又は異なる置換基であって、水素原子、ハロゲン原子、C〜C-アルキル基、C〜C-アルケニル基、C〜C-アルキニル基、ハロ-C〜C-アルキル基、ヒドロキシ基、C〜C-アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基、C〜C-アルカノイル基、アミノ基、アミノ-C〜C-アルキル基、C〜C-アルキルアミノ基、N-(C〜C-アルキル)アミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)アミノ基、チオール基、C〜C-アルキルチオ基、スルホニル基、C〜C-アルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜C-アルキルスルフィニル基、カルボキシ基、C〜C-アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される置換基を意味し;
は、水素原子、ハロゲン原子;場合によりハロゲン原子、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基及びC〜Cアルキルスルフィニル基からなる群から選択される1個、2個、3個又はそれ以上の置換基で置換されていてもよいC〜Cアルキル基;場合により1個、2個、3個又はそれ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cアルケニル基;C〜Cアルキニル基;6〜10個の炭素原子と交互二重結合とを有する単環式又は二環式アリール基〔前記の基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニルからなる群から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく且つ利用できる炭素原子により直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に結合されることができる〕;4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基の意義を有する単環式又は二環式ヘテロアリール基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記ヘテロアリール基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基で置換されていてもよい〕;O、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基〔但し、利用できる炭素原子又は窒素原子は、直接結合を介して又はC〜Cアルキレン基を介して分子の残部に対する前記の基の結合部位を表し且つ前記複素環式基は、場合によりフルオロ基、クロロ基、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基又はC〜Cアルキルスルフィニルで置換されていてもよい〕;ヒドロキシ基;ヒドロキシ-C〜Cアルケニル基;ヒドロキシ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルコキシ基;チオール基;チオ-C〜Cアルケニル基;チオ-C〜Cアルキニル基;C〜Cアルキルチオ基;アミノ基;N-(C〜Cアルキル)アミノ基;N,N-ジ(C〜Cアルキル)アミノ基;C〜Cアルキルアミノ基;アミノ-C〜Cアルケニル基;アミノ-C〜Cアルキニル基;アミノ-C〜Cアルコキシ基;C〜Cアルカノイル基;C〜C10アロイル基;オキソ-C〜Cアルキル基;C〜Cアルカノイルオキシ基;カルボキシ基;場合により置換されていてもよいC〜Cアルキルオキシカルボニル基;場合により置換されていてもよいC〜C10アリールオキシカルボニル基;カルバモイル基;N-(C〜Cアルキル)カルバモイル基;N,N-ジ(C〜C-アルキル)カルバモイル基;シアノ基;シアノ-C〜Cアルキル基;スルホニル基;C〜Cアルキルスルホニル基;スルフィニル基;C〜Cアルキルスルフィニル基;ニトロ基を意味するか、
あるいは式II

〔式中、R及びRは、同時に又は互いに独立して、水素原子、C〜Cアルキル基、前記の意義を有するアリール基の意義を有するか、あるいはNと一緒になって場合により置換されていてもよい複素環式基又はヘテロアリール基の意義を有し[但し、複素環式基はO、S及びN原子からなる群から選択される少なくとも1個の異種原子を含有する5員又は6員完全飽和又は部分不飽和複素環式基であり且つ前記複素環式基は、場合によりハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜Cアルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換されていてもよく、またヘテロアリール基は4〜12個の炭素原子(その少なくとも1個はO、S及びN原子からなる群から選択される異種原子である)を有する単環式又は二環式の環の芳香族基及び部分芳香族基であり且つ前記ヘテロアリール基はハロゲン原子、C〜Cアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、C〜Cアルコキシ基、チオール基、C〜Cアルキルチオ基、アミノ基、N-(C〜C)アルキルアミノ基、N,N-ジ(C〜C-アルキル)-アミノ基、スルホニル基、C〜Cアルキルスルホニル基、スルフィニル基、C〜Cアルキルスルフィニル基の中から選択される1個又は2個の置換基で置換することができる];
mは1〜3の整数の意義を有し;
Qは酸素原子又は硫黄原子の意義を有する〕で表される置換基を意味する}
で示される化合物並びにその製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物の製造方法であって、
a)化合物Ia:

(式中、記号X、Y及びZは前記の意義を有し、Lは脱離基の意義を有する)
を、場合により選択されたアルコール、チオアルコール又はアミンと縮合させるか又は式IIa:

(式中、全ての基及び記号は前記の意義を有する)
で示される化合物と縮合させる;
b)式Ib:

(式中、全ての記号は前記の意義を有する)
で示される化合物を、式IIb:

(式中、R及びR並びに記号mは前記の意義を有し且つ記号Lは適当な脱離基の意義を有する)
で示される化合物と縮合させる
ことからなる前記の式Iで示される化合物並びにその製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の化合物の少なくとも1つ及びその製薬学的に許容し得る塩又は溶媒和物を製薬学的に許容し得る賦形剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に含有してなる医薬組成物。
【請求項11】
生体アミン又はその他の神経伝達物質の神経化学平衡の障害によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷及び障害の治療及び予防用医薬製剤を製造するための請求項1に記載の化合物の使用。
【請求項12】
選択される生体アミンがセロトニン、ノルエピネフリン及びドーパミンである請求項11に記載の使用。
【請求項13】
神経伝達物質がグルタメートである請求項11に記載の使用。
【請求項14】
一般式Iで示される化合物が生体アミン又は神経伝達物質の合成、貯蔵、放出、代謝及び/又は再吸収を調節することによって及び前記アミン又は神経伝達物質の受容体に対する結合を調節することによって神経化学平衡に作用するものである請求項11、12又は13に記載の使用。
【請求項15】
一般式Iで示される化合物が1種又はそれ以上の生体アミンの受容体に対して結合親和性を示すものである請求項14に記載の使用。
【請求項16】
一般式Iで示される化合物がセロトニン5−HT2A及び5−HT2C受容体に対して顕著な結合親和性を示すものである請求項15に記載の使用。
【請求項17】
一般式Iで示される化合物が、選択されたセロトニン受容体に対してIC50<1μMの濃度で結合親和性を示すものである請求項16に記載の使用。
【請求項18】
一般式Iで示される化合物が中枢神経伝達物質系を調節することによってIC50<1μMの濃度でσ1受容体リガンドとして作用するものである請求項11に記載の使用。
【請求項19】
一般式Iで示される化合物がσ1受容体に対して並びにセロトニン5−HT2A及び5−HT2Cから選択される少なくとも1種のセロトニン受容体に対して二重結合親和性を示すものである請求項11、16又は18に記載の使用。
【請求項20】
中枢神経系の疾患及び障害が、不安、鬱病及び穏やかな鬱病、双極性障害、睡眠障害、性障害、精神病、境界型精神病、精神分裂病、片頭痛、人格障害及び強迫性障害、対人恐怖症又は不安発作、幼児の器質性精神障害、高齢者の攻撃性、記憶障害及び人格障害、依存症、肥満症、過食症及び類似の障害、いびき及び月経前トラブルからなる群から選択されるものである請求項11に記載の使用。
【請求項21】
中枢神経系の損傷が、外傷、脳卒中、神経変性疾患、心臓血管障害(例えば、高血圧、血栓形成、梗塞)及び胃腸障害によって引き起こされるものである請求項11に記載の使用。
【請求項22】
一般式Iで示される化合物、その製薬学的に許容し得る塩及び溶媒和物が、
3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
11−クロロ−3−メチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−メチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
3−ブロモメチル−2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン;
ジメチル−[2−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(11−クロロ−2−オキサ−8−チア−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−エチル]−アミン;及び
ジメチル−[3−(2,8−ジオキサ−1−アザ−ジベンゾ[e,h]アズレン−3−イルメトキシ)−プロピル]−アミン
からなる群から選択されるものである請求項11に記載の使用。


【公表番号】特表2007−511595(P2007−511595A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540627(P2006−540627)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/HR2004/000050
【国際公開番号】WO2005/049623
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(504378294)プリバ−イストラツイヴアツキー インスティテュト デイ.オー.オー (17)
【Fターム(参考)】