説明

1−(5−tert−ブチル−2−フェニル−2H−ピラゾール−3−イル)−3−[2−フルオロ−4−(1−メチル−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−B]ピリジン−7−イルオキシ)−フェニル]−尿素および関連化合物ならびに治療におけるそれらの使用

本発明は、一般的には、治療用化合物の分野に関し、より具体的には、以下の式(I)の特定の化合物(便宜上、本明細書中では「IP化合物」と総称される)に関し、該化合物はとりわけ、癌(例えば、突然変異型RASを特徴とする(例えば、突然変異型RASが引き金となる)癌(「突然変異型RAS癌」))の治療で有用である。本発明はまた、そのような化合物を含む医薬組成物、ならびに癌(例えば、突然変異型RAS癌)の治療におけるそのような化合物および組成物の使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には治療用化合物の分野に関し、より具体的には、とりわけ癌(例えば、突然変異型RASを特徴とする(例えば、突然変異型RASが引き金となる)癌(「突然変異型RAS癌」))の治療で有用な、特定の化合物(便宜上、本明細書中では「IP化合物」と総称される)に関する。本発明はまた、そのような化合物を含む医薬組成物ならびに癌(例えば、突然変異型RAS癌)の治療におけるそのような化合物および組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明および本発明が関連する技術分野の技術水準についてより完全に説明ならびに開示するために、多数の特許および刊行物を本明細書中で引用する。これらの参考文献のそれぞれは、個々の参考文献が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、本明細書の開示にその全体が参照により組み入れられる。
【0003】
引き続く特許請求の範囲を含む本明細書全体を通して、文脈からそうでないことが必要とされない限り、「含む」(comprise)との単語、ならびに「含む」(comprises)および「含んでいる」(comprising)などの変形は、記載した整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を包含することを意味するが、他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を排除することを意味しないことが理解されるであろう。
【0004】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈によりそうでないことが明らかに指示されない限り、複数形を含むことに注意しなければならない。つまり、例えば、「医薬用担体」への言及は、2種以上のそのような担体の混合物などを包含する。
【0005】
本明細書中では多くの場合、範囲は「約」1つの特定の値から、かつ/または「約」別の特定の値まで、と表される。そのような範囲を表現する場合、別の形態としては、1つの特定の値から、かつ/または他の特定の値までが挙げられる。同様に、先行詞「約」を用いて、値を近似値として表す場合、特定の値が別の形態となることが理解されるであろう。
【0006】
本明細書の開示は、本発明を理解する上で有用であり得る情報を含む。これは、本明細書中に提供される情報のうちいずれかが先行技術であるか、もしくはここで特許請求される発明に関連するものであること、または具体的もしくは黙示的に引用されたいずれかの刊行物が先行技術であることを認めるものではない。
【0007】
癌とRAS
RASタンパク質は、増殖因子、サイトカインおよびホルモン受容体の下流である小分子グアニンヌクレオチド結合タンパク質である。これらの細胞表面受容体は、グアニンヌクレオチド交換因子(GNEF)と称されるタンパク質を活性化し、これはRASタンパク質上のGDPをGTPに交換し、RAS活性化を刺激する。GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)と称される他のタンパク質は、RASの内因性GTPアーゼ活性を刺激し、それによりGTP加水分解を促進し、RASをその不活性型GDP結合状態に戻す。活性型RASは、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)、RAFファミリーのタンパク質キナーゼ、およびRalグアニンヌクレオチド交換因子をはじめとする数種類のエフェクタータンパク質に結合する。次にこれらのエフェクターが、細胞増殖、老化、生存および分化を制御するシグナル伝達経路の活性を調節する。哺乳動物には、HRAS、KRASおよびNRASと称される3種類のRAS遺伝子があり、これらは重複するが非保存的な機能を果たす。
【0008】
RASタンパク質はまた、癌においても重要である。ヒト腫瘍のうち20〜30%が、RAS遺伝子の1種での体細胞機能獲得型突然変異を有する。最も一般的には、これらはグリシン12(G12)、グリシン13(G13)およびグルタミン61(Q61)のコドンを含み、これらの突然変異は、異なるメカニズムを通じて、RASのGAP刺激型内因性GTPアーゼ活性を傷害し、これを活性型GTP結合状態に留め、腫瘍形成を促進させる。Downward, 2003; Young et al., 2009; and Bos, 1989を参照されたい。
【表1】

【0009】
RASおよびBRAF
活性型RASタンパク質は、RAFファミリーのタンパク質をはじめとする数種類の下流エフェクターを活性化する。3種類のRAFタンパク質:ARAF、BRAFおよびCRAFがある。活性型RAFは、MEKと称される第2のタンパク質キナーゼをリン酸化および活性化し、これが次にERKと称される第3のタンパク質キナーゼをリン酸化および活性化する。ERKは、多数の細胞質/核基質をリン酸化し、それにより、増殖、生存、分化および老化などの細胞プロセスを調節する。
【0010】
BRAFは、癌において重要である。なぜなら、このタンパク質はヒト癌のうち約2%、特に黒色腫(43%の症例)、甲状腺癌(45%)、卵巣癌(10%)、および結腸直腸癌(13%)で突然変異されているからである。対照的に、ARAFおよびCRAFの突然変異は、ヒトの癌では非常に稀である。しかしながら、とりわけ、癌細胞では発癌性RASはBRAFを介してシグナル伝達せず、代わりにもっぱらCRAFを介してシグナル伝達してMEKを活性化する。
【0011】
癌でのBRAFの100種類を超える異なる突然変異が報告されているが、単一突然変異(600位のバリンのグルタミン酸置換)が、発生する突然変異の約90%を占める。この突然変異体は、BRAFを500倍活性化し、構成的ERKおよびNFκBシグナル伝達を刺激することを可能にし、生存および増殖を刺激する。結果として、V600EBRAFは、線維芽細胞およびメラニン細胞などの細胞を形質転換することができる。癌細胞でのV600EBRAFの阻害は、細胞増殖を阻害し、in vitroでアポトーシスを誘導し、in vivoでは腫瘍細胞増殖を抑制し、これは治療標的としてV600EBRAFが有効であることを確認する。
【0012】
大多数の癌では、BRAFとRASの突然変異は相互排他的である。このことは、これらのタンパク質が同じ経路にあること、および癌細胞で同じプロセスを動かしていることを示唆する遺伝学的証拠を提供する。しかしながら、癌細胞での発癌性BRAFと発癌性RASの機能には、明らかな差異がある。第1に、RASは数種類の経路を活性化するが、BRAFはMEK/ERK経路を活性化することしか知られていない。結果として、BRAF突然変異型細胞は、MEK/ERKシグナル伝達により依存しており、したがってRASが突然変異している細胞と比較して、BRAFまたはMEK阻害剤に対して著明に感受性が高い。Garnett et al., 2004; Wellbrock et al., 2004; Gray Schopfer et al., 2007; Solit et al., 2006を参照されたい。
【0013】
関連化合物
Niculescu-Duvaz et al., 2006(WO 2006/043090 A1)には、41〜43頁に以下のクラスの化合物が記載されている。化合物は、癌の治療、特に突然変異型BRAF癌の治療に有用なBRAF阻害剤として記載されている。
【化1】

【0014】
また、Niculescu-Duvaz et al., 2006には、以下の実施例が提供されている:
【化2】


【0015】
Niculescu-Duvaz et al., 2007(WO 2007/125330 A1)には、57〜58頁に以下のクラスの化合物が記載されている。化合物は、癌の治療、特に突然変異型BRAF癌の治療に有用なBRAF阻害剤として記載されている。
【化3】

【0016】
また、Niculescu-Duvaz et al., 2007には、以下の実施例が提供されている:
【化4】


【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2006/043090号
【特許文献2】国際公開第2007/125330号
【特許文献3】国際公開第2009/130487号
【特許文献4】国際公開第2009/077766号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Bos, 1989, “ras oncogenes in human cancer: a review”, Cancer Res., Vol. 49, pp. 4682-4689.
【非特許文献2】Downward, 2003, “Targeting RAS signalling pathways in cancer therapy”, Nat. Rev. Cancer, Vol. 3, pp. 11-22.
【非特許文献3】Garnett et al., 2004, “Guilty as charged: B-RAF is a human oncogene”, Cancer Cell, Vol. 6, pp. 313-319.
【非特許文献4】Gray Schopfer et al., 2007, “Melanoma biology and new targeted therapy”, Nature, Vol. 445, pp. 851-857.
【非特許文献5】Solit et al., 2006, “BRAF mutation predicts sensitivity to MEK inhibition”, Nature, Vol. 439, pp. 358-362.
【非特許文献6】Wellbrock et al., 2004, “The RAF proteins take centre stage”, Nature Reviews Molecular Cell Biology, Vol. 5, pp. 875-885.
【非特許文献7】Young et al., 2009, “Ras signaling and therapies”, Adv. Cancer Res., Vol. 102, pp. 1-17.
【発明の概要】
【0019】
本発明は、構造的モチーフの特定の組み合わせを特徴とし、例えば、1種以上の構造的に関連する公知の化合物と比較して、驚くべき予期せぬ活性(例えば、突然変異型RAS癌に対する活性)をもたらす代替的化合物を提供する。
【0020】
構造的に関連する化合物はBRAF阻害剤として公知であるが、特許請求される化合物が突然変異型RAS癌に対して活性であることは予測されていない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の数種類の化合物:AA-01、AA-02、AA-03およびAA-04の化学構造を示す図である。
【図2】本発明の数種類の化合物:BB-01およびBB-02の化学構造を示す図である。
【図3】数種類の比較化合物:XX-01、XX-02、XX-03およびXX-04の化学構造を示す図である。
【図4】化合物AA-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、以下の細胞株である:(a)突然変異型BRAF(mutBRAF)細胞株のパネル:WM266.4、A375M、UACC62;(b)突然変異型RAS(mutRAS)細胞株のパネル:SW620、HCT116、およびWM1361;ならびに(c)野生型BRAFおよびRAS(wtBRAFT/RAS)細胞株のパネル:SKMEL23、KM12、およびBT474。
【図5】化合物BB-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図6】化合物BB-02に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図7】比較化合物XX-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図8】比較化合物XX-02に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図9】比較化合物XX-03に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図10】比較化合物XX-04に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同様である。
【図11】化合物AA-01を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図12】化合物BB-02を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図13】化合物AA-01を用いた治療と対照に対する、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図14】化合物BB-02を用いた治療と対照に対する、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図15】比較化合物XX-01を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図16】比較化合物XX-02を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図17】比較化合物XX-03を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図18】比較化合物XX-04を用いた治療と対照に対する、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【図19】比較化合物XX-02を用いた治療と対照に対する、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片についての時間(日数)の関数としての相対的腫瘍体積のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一態様は、本明細書中に記載された特定の化合物(便宜上、本明細書中では「IP化合物」と総称される)に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載されたIP化合物および製薬上許容される担体または希釈剤を含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載されたIP化合物と製薬上許容される担体または希釈剤とを混合するステップを含む、組成物(例えば、医薬組成物)の調製方法に関する。
【0025】
本発明の別の態様は、好ましくは医薬組成物の形態の本明細書中に記載された治療上有効量のIP化合物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む、治療方法に関する。
【0026】
本発明の別の態様は、療法によるヒトまたは動物体の治療方法で使用するための、本明細書中に記載されたIP化合物に関する。
【0027】
本発明の別の態様は、治療での使用のための医薬品の製造での、本明細書中に記載されたIP化合物に関する。
【0028】
一実施形態では、治療は癌の治療である。
【0029】
一実施形態では、癌は固形腫瘍癌である。
【0030】
一実施形態では、癌は、膵臓癌;甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);結腸直腸癌;精上皮腫;骨髄異形成症候群(MDS);肺癌(例えば、肺腺癌);肝臓癌;白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));黒色腫;膀胱癌;腎臓癌;乳癌、卵巣癌、胆管癌、または神経膠腫である。
【0031】
一実施形態では、癌は膵臓癌である。
一実施形態では、癌は甲状腺癌である。
一実施形態では、癌は結腸直腸癌である。
一実施形態では、癌は精上皮腫である。
一実施形態では、癌は骨髄異形成症候群(MDS)である。
一実施形態では、癌は肺癌である。
一実施形態では、癌は肺腺癌である。
一実施形態では、癌は肝臓癌である。
一実施形態では、癌は白血病である。
一実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)である。
一実施形態では、癌は黒色腫である。
一実施形態では、癌は膀胱癌である。
一実施形態では、癌は腎臓癌である。
一実施形態では、癌は乳癌である。
一実施形態では、癌は卵巣癌である。
一実施形態では、癌は胆管癌である。
一実施形態では、癌は神経膠腫である。
【0032】
一実施形態では、癌は突然変異型RAS癌(例えば、突然変異型RAS膵臓癌等)である。
【0033】
一実施形態では、癌は、癌幹細胞を特徴とするか、癌幹細胞をさらに特徴とする。
【0034】
一実施形態では、治療は、1種以上の追加の治療剤または療法(例えば、1種以上の追加の抗癌剤または抗癌療法)を用いた治療をさらに含む。
【0035】
本発明の別の態様は、以下の要素を含むキットに関する:(a)好ましくは医薬組成物として、好適な容器中に、かつ/または好適な包装を伴って提供される本明細書中に記載されたIP化合物;および(b)使用説明書(例えば、化合物を投与するやり方についての説明書面)。
【0036】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載された合成方法、または本明細書中に記載された合成方法を含む方法により得られるIP化合物に関する。
【0037】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載された合成方法、または本明細書中に記載された合成方法を含む方法により得られたIP化合物に関する。
【0038】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載された合成方法での使用に好適な、本明細書中に記載された新規中間体に関する。
【0039】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載された合成方法での、本明細書中に記載されたそのような新規中間体の使用に関する。
【0040】
当業者には理解されるであろう通り、本発明の一態様の特徴および好ましい実施形態はまた、本発明の他の態様にも関するであろう。
【0041】
化合物
本発明は、以下の化合物に構造的に関連する特定の化合物に関する:
【化5】

【0042】
公知の化合物とは対照的に、本発明の化合物は、構造的モチーフの特定の組み合わせを特徴とし、そのようなモチーフとは具体的には以下のものである:
(A) 1-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシモチーフ:
【化6】

【0043】
(B) 2-フルオロ-フェン-1,4-ジ-イル連結部分またはナフト-1,4-ジ-イル連結モチーフ:
【化7】

【0044】
(C) 1-(5-tert-ブチル-2-フェニル-2H-ピラゾール-3-イル)-ウレイル(ureyl)モチーフ(式中、フェニル基は任意によりメタまたはパラ置換基を有する):
【化8】

【0045】
公知の化合物のいずれも、これらのモチーフのうち3種類すべては有しない。さらに、化合物(公知の化合物を含む)との比較研究により、驚くべき予期せぬことに、3種類すべてのモチーフを有する化合物(すなわち、特許請求された化合物)が、これらのモチーフのうち1種以上を有しない比較化合物よりも、突然変異型RAS癌に対してかなり良好な活性を有することが実証されている。
【0046】
つまり、本発明の一態様は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物(本明細書中では「IP化合物」と総称される)に関する:
【化9】

【0047】
[式中、
-J-は独立に、
【化10】

【0048】
であり;
-Rは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり;
-Rは、フェニル環のメタ位またはパラ位に位置する]。
【0049】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり、-RAは、フェニル環のメタ位またはパラ位に位置する:
【化11】

【0050】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである:
【化12】

【0051】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである:
【化13】

【0052】
一実施形態では、-RAは独立に、-H、-Me、-F、または-Clである。
【0053】
一実施形態では、-RAは独立に、-Hまたは-Meである。
【0054】
一実施形態では、-RAは独立に、-Hである。
【0055】
一実施形態では、-RAは独立に、-Meである。
【0056】
一実施形態では、-RAは独立に、-F、または-Clである。
【0057】
一実施形態では、-RAは独立に、-Fである。
【0058】
一実施形態では、-RAは独立に、-Clである。
【0059】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、AA-01)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化14】

【0060】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、AA-02)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化15】

【0061】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、AA-03)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化16】

【0062】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、AA-04)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化17】

【0063】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり、-RBは、フェニル環のメタ位またはパラ位に位置する:
【化18】

【0064】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである:
【化19】

【0065】
一実施形態では、化合物は、以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択され、式中、-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである:
【化20】

【0066】
一実施形態では、-RBは独立に、-H、-Me、-F、または-Clである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Hまたは-Meである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Hである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Meである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Fまたは-Clである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Fである。
一実施形態では、-RBは独立に、-Clである。
【0067】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、BB-01)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化21】

【0068】
一実施形態では、化合物は、以下の化合物(すなわち、BB-02)、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される:
【化22】

【0069】
組み合わせ
明確にするために別々の実施形態との関連で説明されている本発明の特定の特徴はまた、単独の実施形態において組み合わせで提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単独の実施形態との関連で説明されている本発明の種々の特徴はまた、別々に、またはいずれかの好適な下位組み合わせで提供することもできる。可変基(例えば、-J-、-R、-RA、-RB等)により表される化学基に関する実施形態のすべての組み合わせは、本発明により具体的に包含され、そのような組み合わせが安定化合物(すなわち、単離、特徴付け、および生物学的活性について試験することができる化合物)である化合物を包含する程度までそれぞれすべての組み合わせが個別かつ明示的に開示されているのとまったく同様に、本明細書中に開示されている。また、そのような可変基を説明する実施形態に列挙された化学基のすべての下位組み合わせもまた、本発明に具体的に包含され、それぞれすべてのそのような化学基の下位組み合わせが本明細書中に個別かつ明示的に開示されているのとまったく同様に、本明細書中に開示されている。
【0070】
実質的に精製された形態
本発明の一態様は、実質的に精製された形態の、かつ/または実質的に混入物を含まない形態の、本明細書中に記載されたIP化合物に関する。
【0071】
一実施形態では、化合物は、実質的に精製された形態であり、かつ/または実質的に混入物を含まない形態である。
【0072】
一実施形態では、化合物は、少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも97重量%、例えば少なくとも98重量%、例えば少なくとも99重量%の純度を有する実質的に精製された形態である。
【0073】
指定しない限り、実質的に精製された形態とは、いずれかの立体異性体形態の化合物を意味する。例えば、一実施形態では、実質的に精製された形態とは、立体異性体の混合物、すなわち、他の化合物に関して精製されていることを意味する。一実施形態では、実質的に精製された形態とは、1種類の立体異性体を意味する。
【0074】
一実施形態では、化合物は、実質的に混入物を含まない形態であり、ここで、混入物は、50重量%以下(例えば、40重量%以下、例えば、30重量%以下、例えば、20重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、3重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1重量%以下)を示す。
【0075】
指定しない限り、混入物とは、他の化合物、つまり、立体異性体以外の化合物を意味する。一実施形態では、混入物とは、他の化合物および他の立体異性体を意味する。
【0076】
異性体
一部の化合物は、1種以上の特定の幾何異性体型、光学異性体型、エナンチオマー型、ジアステレオマー型、エピマー型、アトロプ異性体型、立体異性体型、互変異性型、立体配座型、またはアノマー型で存在することができ、そのようなものとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:シス型およびトランス型;E型およびZ型;c型、t型およびr型;エンド型およびエキソ型;R型、S型およびメソ型;D型およびL型;d型およびl型;(+)型および(-)型;ケト型、エノール型、およびエノラート型;シン型およびアンチ型;向斜型および背斜型;α型およびβ型;軸型および赤道型;舟形、いす形、ねじれ形、封筒形、および半いす形;ならびにそれらの組み合わせ(本明細書中、以下では、「異性体」(または異性体形)と総称される)。
【0077】
本明細書中で用いる場合、「異性体」との用語から特別に排除されるのは、構造異性体(structural isomer、constitutional isomer)(すなわち、単に空間内での原子の位置によるのではなく、原子同士の連結が異なる異性体)であることに留意されたい。例えば、tert-ブチル基(-C(CH3)3)への言及は、その構造異性体であるイソブチル(-CH2CH(CH3)2)への言及であるとは解釈されない。同様に、パラクロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタクロロフェニルへの言及であるとは解釈されない。
【0078】
「異性体」との用語に特別に含まれるのは、1個以上の同位体置換を有する化合物であることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、および3H(T)をはじめとするいずれかの同位体型であり得;Cは、12C、13C、および14Cをはじめとするいずれかの同位体型であり得;Oは、16Oおよび18Oをはじめとするいずれかの同位体型であり得る、等。
【0079】
特に指定しない限り、特定の化合物への言及は、すべてのそのような異性体型(それらの混合物を含む)を含む。
【0080】

化合物の対応する塩(例えば、製薬上許容される塩)を調製し、精製し、かつ/もしくは取り扱うことが、都合がよいかまたは望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例は、Berge et al., 1977, “Pharmaceutically Acceptable Salts,” J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19で考察されている。
【0081】
例えば、化合物がカチオン性であるか、またはカチオン性であり得る官能基を有する(例えば、-NH-は-NH2+-であり得る)場合、好適なアニオンとの塩を形成させることができる。好適な無機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の無機酸に由来するものが挙げられる:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、および亜リン酸。
【0082】
好適な有機アニオンの例としては、限定するものではないが、以下の有機酸に由来するものが挙げられる:2-アセチルオキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、粘液酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および吉草酸。好適なポリマー性有機アニオンとしては、限定するものではないが、以下のポリマー酸に由来するものが挙げられる:タンニン酸、カルボキシメチルセルロース。
【0083】
特に指定しない限り、特定の化合物への言及はまた、その塩形態も含む。
【0084】
水和物および溶媒和物
化合物の対応する溶媒和物を調製し、精製し、かつ/もしくは取り扱うことが、都合がよいかまたは望ましい場合がある。「溶媒和物」との用語は、本明細書中では従来の意味で用いられ、溶質(例えば、化合物、化合物の塩)および溶媒の複合体を意味する。溶媒が水である場合、溶媒和物は、便宜上水和物と称される場合がある(例えば、一水和物、二水和物、三水和物等)。
【0085】
特に指定しない限り、特定の化合物への言及はまた、その溶媒和物および水和物形態も含む。
【0086】
化学合成
本発明の化合物の化学合成法は、本明細書中に説明されている。これらの方法および/または他の周知の方法は、本発明の範囲内に入る追加の化合物の合成を容易にするために、公知の方式で改変し、かつ/または適合させることができる。
【0087】
本明細書中に記載された化合物の調製に有用な一般的な実験室法および手順は、Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry, 5th Edition, 1989(Furniss, Hannaford, Smith, and Tatchell編)(Longmann, UKより出版)に記載されている。
【0088】
特に、ピリジン化合物の合成法は、Heterocyclic Chemistry, 3rd Edition, 1998,(Joule, Mills, and Smith編)(Chapman & Hall, UKより出版)に記載されている。
【0089】
本明細書中に記載されたIP化合物は、中間体(2)を介して調製することができる。これらの中間体は市販の出発物質である2-アミノ-3-ニトロ-4-クロロピリジン(1)、および3-フルオロ-4-アミノフェノール(R1は-Hであり、R2は-Fである)または4-アミノ-1-ナフトール(R1およびR2は一緒に、-CH=CH-である)から調製することができる。中間体(2)を、次に、例えばBOCカルバミン酸エステルとしてアミノ基で選択的に保護して、中間体(3)を得る。
【化23】

【0090】
中間体(3)はまた、2-アミノ-3-ニトロ-4-クロロピリジン(1)およびN-BOC保護3-フルオロ-4-アミノフェノールまたはN-BOC保護4-アミノ-1-ナフトールから直接取得することもできる。
【化24】

【0091】
保護された中間体(3)のニトロ基を、Pd/Cおよびギ酸アンモニウムもしくは水素を用いて、またはNiCl2およびNaBH4を用いてアミノ基に還元し、ジアミノ中間体(4)を得ることができる。
【化25】

【0092】
N3でアルキル化された(ピリジン環に関して)中間体(8)は、中間体(4)から調製することができる。中間体(4)の比較的求核性の3-アミノ基をカルバミン酸エチルに変換して、中間体(5)を得、TFAを用いてBOC基を除去して中間体(6)を得る。NaHを用いた酸性カルバミン酸プロトンの脱プロトン化によりアルキル化されたN3にアニオンをもたらし、中間体(7)を得る。塩基の存在下での中間体(7)の環化により、対応する中間体(8)を得る。
【化26】

【0093】
中間体(8)を3-tert-ブチル-5-イソシアナト-1-アリール-1H-ピラゾールと反応させて、対応する尿素を得る。それぞれのイソシアネートは、ホスゲン、トリホスゲンもしくはそれらの誘導体とのアミンの反応によるか、または例えばジフェニルホスホリルアジドを用いた対応するカルボン酸からアシルアジドへの変換と、それに続くクルチウス転位により、取得することができる。ピラゾールのアリール基は、例えば、未置換であるか、またはアルキル基(例えば、-Me)もしくはハロゲン原子(例えば、-F、-Cl、-Br、-I)で置換されている(例えば、メタ置換またはパラ置換)ことができる。
【化27】

【0094】
組成物
本発明の一態様は、本明細書中に記載されたIP化合物、および製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む組成物(例えば、医薬組成物)に関する。
【0095】
一実施形態では、組成物は、本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤をさらに含む。
【0096】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載されたIP化合物と、製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを混合するステップを含む、組成物(例えば、医薬組成物)の調製方法に関する。
【0097】
本発明の別の態様は、本明細書中に記載されたIP化合物と、本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤と、製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを混合するステップを含む、組成物(例えば、医薬組成物)の調製方法に関する。
【0098】
使用
本明細書中に記載された化合物は、例えば、癌(例えば、突然変異型RAS癌)の治療において有用である。
【0099】
誤解を避けるために、「突然変異型RAS癌」との用語は、RAS遺伝子(すなわち、HRAS、KRAS、およびNRAS)のうち1種での1ヵ所以上の突然変異(例えば、機能獲得突然変異)による、突然変異型RASを特徴とする(例えば、突然変異型RASが引き金となる)癌を意味するために、本明細書中で用いられる。本明細書中で議論した通り、最も一般的なRAS突然変異は、グリシン12(G12)、グリシン13(G13)およびグルタミン61(Q61)のうち1ヵ所以上についてのコドンを含む。
【0100】
治療方法での使用
本発明の別の態様は、療法によるヒトまたは動物体の治療方法で使用するための、本明細書中に記載されたIP化合物に関する。
【0101】
本発明の別の態様は、療法によるヒトまたは動物体の治療方法で使用するための、本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤との組み合わせでの、本明細書中に記載されたIP化合物に関する。
【0102】
医薬品の製造での使用
本発明の別の態様は、治療での使用のための医薬品の製造における、本明細書中に記載されたIP化合物の使用に関する。
【0103】
一実施形態では、医薬品はIP化合物を含む。
【0104】
本発明の別の態様は、治療での使用のための医薬品の製造における、本明細書中に記載されたIP化合物および本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤の使用に関する。
【0105】
一実施形態では、医薬品は、IP化合物および1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤を含む。
【0106】
治療方法
本発明の別の態様は、好ましくは医薬組成物の形態の本明細書中に記載された治療上有効量のIP化合物を、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、治療方法に関する。
【0107】
本発明の別の態様は、好ましくは医薬組成物の形態の本明細書中に記載された治療上有効量のIP化合物、および好ましくは医薬組成物の形態の本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤を、治療を必要とする患者に投与するステップを含む、治療方法に関する。
【0108】
治療対象の状態
一実施形態では、治療は、癌の治療である。
【0109】
一実施形態では、癌は、肺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、消化器癌、胃癌、腸癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮内膜癌、前立腺癌、精巣癌、肝臓癌、腎臓癌、腎細胞癌、膀胱癌、膵臓癌、脳癌、神経膠腫、肉腫、骨肉腫、骨癌、鼻咽頭癌(例えば、頭部癌、頸部癌)、皮膚癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、リンパ腫、または白血病である。
【0110】
一実施形態では、癌は、以下のものである:
癌、例えば、膀胱、乳房、結腸/直腸(例えば、結腸腺癌および結腸腺腫などの結腸直腸癌)、腎臓、表皮、肝臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、食道、胆嚢、卵巣、膵臓(例えば、膵外分泌癌)、胃、頸部、甲状腺、前立腺、皮膚(例えば、扁平上皮癌)の癌;
リンパ系の造血系腫瘍、例えば、白血病、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、またはバーキットリンパ腫;
骨髄系の造血系腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、または前骨髄球性白血病;
間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉腫;
中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫または神経鞘腫;
黒色腫;精上皮腫;奇形癌;骨肉腫;色素性乾皮症(xenoderoma pigmentoum);角化棘細胞腫(keratoctanthoma);甲状腺濾胞癌;またはカポジ肉腫。
【0111】
一実施形態では、癌は固形腫瘍癌である。
【0112】
一実施形態では、癌は膵臓癌;甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);結腸直腸癌;精上皮腫;骨髄異形成症候群(MDS);肺癌(例えば、肺腺癌);肝臓癌;白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));黒色腫;膀胱癌;腎臓癌;乳癌、卵巣癌、胆管癌、または神経膠腫である。
【0113】
一実施形態では、癌は膵臓癌である。
一実施形態では、癌は甲状腺癌である。
一実施形態では、癌は結腸直腸癌である。
一実施形態では、癌は精上皮腫である。
一実施形態では、癌は骨髄異形成症候群(MDS)である。
一実施形態では、癌は肺癌である。
一実施形態では、癌は肺腺癌である。
一実施形態では、癌は肝臓癌である。
一実施形態では、癌は白血病である。
一実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)である。
一実施形態では、癌は黒色腫である。
一実施形態では、癌は膀胱癌である。
一実施形態では、癌は腎臓癌である。
一実施形態では、癌は乳癌である。
一実施形態では、癌は卵巣癌である。
一実施形態では、癌は胆管癌である。
一実施形態では、癌は神経膠腫である。
【0114】
一実施形態では、癌は突然変異型RAS癌(例えば、突然変異型RAS膵臓癌等)である。
【0115】
一実施形態では、癌は、癌幹細胞を特徴とするか、癌幹細胞をさらに特徴とする。
【0116】
抗癌作用は、1種以上のメカニズムを介して生じる場合があり、そのようなメカニズムとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:細胞増殖の調節、細胞周期進行の阻害、血管新生(新規血管の形成)の阻害、転移(原発部位からの腫瘍の拡散)の阻害、細胞移動(身体の他の部位への癌細胞の拡散)の阻害、浸潤(隣接する正常構造への腫瘍細胞の拡散)の阻害、またはアポトーシス(プログラムされた細胞死)の促進。本発明の化合物は、本明細書中で議論されたメカニズムとは無関係に、本明細書中に記載された癌の治療で用いることができる。
【0117】
治療
状態を治療することの文脈において本明細書中で用いる場合、「治療」との用語は、一般的に、いくぶんかの所望の治療効果が達成される(例えば、状態の進行の阻害)、ヒトまたは動物(例えば、獣医学での適用の場合)の治療および療法に関し、進行速度の低下、進行速度の停止、状態の症状の軽減、状態の改善、および状態の治癒を含む。予防対策としての治療(すなわち、予防)もまた含まれる。例えば、まだ状態を発症していないが、状態を発症するリスクを有する患者との使用は、「治療」との用語に包含される。
【0118】
例えば、治療には、癌の予防、癌の発生率の低下、癌の重症度の低下、癌の症状の軽減などが含まれる。
【0119】
本明細書中で用いる場合、「治療上有効量」との用語は、所望の治療レジメンに従って投与した場合、妥当なリスク対効果比と釣り合ういくぶんかの所望の治療効果をもたらすのに有効な、化合物、または化合物を含む物質、組成物もしくは投与剤形の量に関する。
【0120】
併用療法
「治療」との用語には、例えば、逐次的または同時に、2種以上の治療または療法が組み合わされる、併用治療および併用療法が含まれる。例えば、本明細書中に記載された化合物はまた、併用療法で、例えば、他の薬剤(例えば、細胞毒性薬、抗癌剤等)と組み合わせて用いることもできる。治療および療法の例としては、限定するものではないが、化学療法(例えば、薬物、抗体(例えば、免疫療法でのように)、プロドラッグ(例えば、光力学治療、GDEPT、ADEPT等でのように)をはじめとする活性薬剤の投与);手術;放射線療法;光力学治療;遺伝子治療;および食餌制限が挙げられる。
【0121】
例えば、本明細書中に記載された化合物を用いた治療を、異なるメカニズムを介して細胞増殖もしくは生存もしくは分化を調節する1種以上の他の(例えば、1、2、3、4種類)薬剤または療法と組み合わせて、癌発達の数種類の特性を治療するのが有益である場合がある。
【0122】
本発明の一態様は、以下で説明する1種以上の追加の治療剤との組み合わせでの、本明細書中に記載された化合物に関する。
【0123】
特定の組み合わせは、その一般常識を用いて投与量を選択し、当業者に公知の投与レジメンを選択するであろう医師の裁量に任されているであろう。
【0124】
薬剤(すなわち、本明細書中に記載された化合物、および1種以上の他の薬剤)は、同時または逐次的に投与することができ、個々に異なる投与スケジュールで、種々の経路を介して投与することができる。例えば、逐次的に投与する場合、薬剤同士は、狭い間隔で(例えば、5〜10分間にわたって)またはより長い間隔で(例えば、1、2、3、4時間以上離して、または必要であればさらに長い間隔を空けて)投与することができ、細かい投与レジメンは、治療剤の特性に適したものである。
【0125】
薬剤(すなわち、本明細書中に記載された化合物、および1種以上の他の薬剤)は、単一投与剤形に併せて製剤化することができ、あるいは、個々の薬剤を別々に製剤化して、任意によりそれらの使用説明書と共に、キットの形態で一緒に提示することができる。
【0126】
他の使用
本明細書中に記載されたIP化合物はまた、例えば、候補宿主が対象となる化合物を用いた治療から恩恵を受ける可能性が高いか否かを決定するために、in vitroアッセイの一部分として用いることもできる。
【0127】
本明細書中に記載されたIP化合物はまた、例えば、他の化合物、他の抗癌剤等を特定するために、アッセイ中で標準として用いることもできる。
【0128】
キット
本発明の一態様は、以下の要素を含むキットに関する:(a)例えば好ましくは、好適な容器中に、かつ/または好適な包装を伴って提供される本明細書中に記載されたIP化合物、または本明細書中に記載されたIP化合物を含む組成物;および(b)使用説明書(例えば、化合物または組成物を投与するやり方についての説明書面)。
【0129】
一実施形態では、キットは、本明細書中に記載された1種以上(例えば、1、2、3、4種類)の追加の治療剤をさらに含む。
【0130】
説明書面はまた、有効成分が好適な治療である適応症のリストも含むことができる。
【0131】
投与経路
IP化合物またはIP化合物を含む医薬組成物は、全身的/末梢的または局所的(すなわち、所望の作用部位に)であるか否かにかかわらず、いずれかの便利な投与経路により被験体に投与することができる。
【0132】
投与経路としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:経口投与(例えば、経口摂取);頬内投与;舌下投与;経皮投与(例えば、パッチ剤、湿布剤によるものを含む);経粘膜投与(例えば、パッチ剤、湿布剤によるものを含む);鼻内投与(例えば、鼻内スプレー、点鼻薬により、または噴霧器もしくは乾燥粉末送達デバイスから);眼からの投与(例えば、点眼薬による);経肺投与(例えば、口もしくは鼻を介した、例えばエアゾールを用いた吸入または送気療法);直腸投与(例えば、坐薬または浣腸による);膣内投与(例えば、ペッサリーによる);非経口投与(例えば、皮下、皮内、筋内、静脈内、動脈内、心臓内、くも膜下腔、髄腔内、関節包内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下、および胸骨下(intrasternal)をはじめとする注入による);例えば、皮下または筋内へのデポー製剤またはリザーバーの埋め込みによるもの。
【0133】
被験体/患者
被験体/患者は、脊索動物、脊椎動物、哺乳動物、有胎盤哺乳動物、有袋動物(例えば、カンガルー、ウォンバット)、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ(例えば、マウス)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、鳥)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、ブタ(porcine)(例えば、ブタ(pig))、ヒツジ(ovine)(例えば、ヒツジ(sheep))、ウシ(bovine)(例えば、雌牛(cow))、霊長類、サル(simian)(例えば、サル(monkey)または類人猿(ape))、サル(monkey)(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(ape)(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)、またはヒトであり得る。
【0134】
さらに、被験体/患者は、その発生のいずれかの形態(例えば、胎児)であり得る。
【0135】
1つの好ましい実施形態では、被験体/患者はヒトである。
【0136】
製剤
IP化合物を単独で投与することが可能であるが、当業者に周知の1種以上の他の製薬上許容される成分と共に、本明細書中に記載された少なくとも1種のIP化合物を含む医薬製剤(例えば、組成物、調製物、医薬品)としてIP化合物を提示するのが好ましく、他の製薬上許容される成分としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:製薬上許容される担体、希釈剤、賦形剤、添加剤、充填剤、緩衝剤、保存料、抗酸化剤、滑沢剤、安定化剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤化剤)、マスキング剤、着色剤、香料、および甘味料。製剤は、他の活性薬剤(例えば、他の治療剤または予防剤)をさらに含むことができる。
【0137】
つまり、本発明は、上記で定義した医薬組成物、および当業者に周知の1種以上の他の製薬上許容される成分(例えば、担体、希釈剤、賦形剤等)と共に、本明細書中に記載された少なくとも1種のIP化合物を混合するステップを含む医薬組成物の製造方法をさらに提供する。分離した単位(例えば、錠剤等)として製剤化する場合、それぞれの単位は、所定量(投与量)の化合物を含有する。
【0138】
本明細書中で用いる場合、「製薬上許容される」との用語は、健全な医学的判断の範囲内で、妥当なリスク対効果比と釣り合って、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を有さずに、対象となる被験体(例えば、ヒト)の組織と接触させる用途に好適な、化合物、成分、物質、組成物、投与剤形等に関する。それぞれの担体、希釈剤、賦形剤等もまた、製剤の他の成分と適合性であるという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0139】
好適な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な調剤学の教科書(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990; and Handbook of Pharmaceutical Excipients, 5th edition, 2005)に見出すことができる。
【0140】
製剤は、薬学分野で周知のいずれかの方法により調製することができる。そのような方法は、1種以上の補助的成分を構成する担体と化合物とを併せるステップを含む。一般的に、製剤は、化合物と担体(例えば、液体担体、微粉化固体担体等)とを均一かつ緊密に併せるステップ、および続いて必要であれば製品を成型するステップにより調製される。
【0141】
迅速放出または徐放;即時放出、遅延放出、持続放出(timed release、sustained release);あるいはそれらの組み合わせをもたらすために、製剤を調製することができる。
【0142】
製剤は、好適には、以下の剤形であり得る:液剤、溶液剤(例えば、水性、非水性)、懸濁液剤(例えば、水性、非水性)、エマルジョン剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、洗口剤、滴下剤、錠剤(例えば、コーティング錠剤を含む)、顆粒剤、散剤、ロゼンジ錠、トローチ剤、カプセル剤(例えば、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンカプセルを含む)、カシェー剤、丸剤、アンプル、ボーラス剤、坐薬、ペッサリー、チンキ剤、ゲル剤、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、フォーム剤、噴霧剤、ミスト剤、またはエアロゾル剤。
【0143】
製剤は、好適には、1種以上の化合物および任意により1種以上の他の製薬上許容される成分(例えば、浸透促進剤、透過促進剤、および吸収促進剤を含む)が含浸されているパッチ剤、絆創膏、包帯剤(bandage、dressing)などとして提供することができる。製剤はまた、好適には、デポー製剤またはリザーバーの形態で提供することができる。
【0144】
化合物は、1種以上の他の製薬上許容される成分に溶解するか、懸濁するか、またはそれと混合することができる。化合物は、例えば、血液成分または1以上の臓器に化合物を標的化するために設計されたリポソームその他の微粒子中に存在させることができる。
【0145】
経口投与(例えば、経口摂取による)に好適な製剤としては、液剤、溶液剤(例えば、水性、非水性)、懸濁液剤(例えば、水性、非水性)、エマルジョン剤(例えば、水中油型、油中水型)、エリキシル剤、シロップ剤、舐剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、カシェー剤、丸剤、アンプル、ボーラス剤が挙げられる。
【0146】
頬内投与に好適な製剤としては、洗口剤、ロゼンジ錠、トローチ剤、ならびにパッチ剤、絆創膏、デポー製剤、およびリザーバーが挙げられる。ロゼンジ錠は、典型的には、風味づけされた基剤(通常は、スクロースおよびアカシアゴムまたはトラガカント)中に化合物を含む。トローチ剤は、典型的には、不活性マトリックス(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアゴムなど)中に化合物を含む。洗口剤は、典型的には、好適な液体担体中に化合物を含む。
【0147】
舌下投与に好適な製剤としては、錠剤、ロゼンジ錠、トローチ剤、カプセル剤、および丸剤が挙げられる。
【0148】
経口経粘膜投与に好適な製剤としては、液剤、溶液剤(例えば、水性、非水性)、懸濁液剤(例えば、水性、非水性)、エマルジョン剤(例えば、水中油型、油中水型)、洗口剤、ロゼンジ錠、トローチ剤、ならびにパッチ剤、絆創膏、デポー製剤、およびリザーバーが挙げられる。
【0149】
非経口経粘膜投与に好適な製剤としては、液剤、溶液剤(例えば、水性、非水性)、懸濁液剤(例えば、水性、非水性)、エマルジョン剤(例えば、水中油型、油中水型)、坐薬、ペッサリー、ゲル剤、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、油剤、ならびにパッチ剤、絆創膏、デポー製剤、およびリザーバーが挙げられる。
【0150】
経皮投与に好適な製剤としては、ゲル剤、パスタ剤、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、および油剤、ならびにパッチ剤、絆創膏、包帯剤(bandage、dressing)、デポー製剤、およびリザーバーが挙げられる。
【0151】
錠剤は、任意により1種以上の補助成分と共に、慣用の手段(例えば、圧縮または成型)により製造することができる。圧縮錠剤は、任意により以下の成分と混合して、自由流動状態(粉末または顆粒など)の化合物を好適な機械で圧縮することにより調製することができる:1種以上の結合剤(例えば、ポビドン、ゼラチン、アカシアゴム、ソルビトール、トラガカント、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤または希釈剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム);界面活性剤または分散剤または湿潤化剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);保存料(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸);香味剤、香味添加剤、および甘味料。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、好適な機械で成型することにより製造することができる。錠剤は、任意によりコーティングまたは分割することができ、所望の放出特性を得るために、種々の割合で、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いて、その中に含まれる化合物の持続放出または制御放出をもたらすように製剤化することができる。錠剤は、任意により、例えば、放出に影響を与えるためのコーティング(例えば、胃ではなく腸の部分での放出をもたらすための腸溶コーティング)を施して提供することができる。
【0152】
軟膏剤は、典型的には、化合物およびパラフィン性または水混和性軟膏基剤から調製される。
【0153】
クリーム剤は、典型的には、化合物および水中油型クリーム基剤から調製される。所望であれば、クリーム基剤の水相は、例えば、少なくとも約30%w/wの多価アルコール(すなわち、2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール)(プロピレングリコール、ブタン-1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコールならびにそれらの混合物など)を含有することができる。局所用製剤は、望ましくは、皮膚もしくは他の罹患領域を通した化合物の吸収または浸透を強化する化合物を含むことができる。そのような皮膚浸透促進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似体が挙げられる。
【0154】
エマルジョン剤は、典型的には、化合物および油相から調製され、油相は、任意により単に乳化剤(他には、利尿剤(emulgent)として知られる)を含むか、または少なくとも1種の乳化剤と、脂肪もしくは油または脂肪および油の両方との混合物を含むことができる。好ましくは、親水性乳化剤は、安定化剤として機能する親油性乳化剤と共に含有される。油と脂肪の両方を含有することも好ましい。総合すると、乳化剤(安定化剤を含むかまたは含まない)がいわゆる乳化性ワックスを構成し、ワックスは、油および/または脂肪と併せて、いわゆる乳化性軟膏基剤を構成し、これが、クリーム製剤の油分散相を形成する。
【0155】
好適な利尿剤(emulgent)および乳化安定化剤としては、Tween 60、Span 80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリンおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。医薬用エマルジョン製剤でよく用いられるほとんどの油への化合物の溶解性は非常に低い場合があるので、製剤化のための好適な油または脂肪の選択は、所望の化粧品特性の達成に基づく。つまり、クリーム剤は、好ましくは、脂っぽくなく、染色性でなくかつ洗浄可能な製品であり、チューブその他の容器からの漏出を回避するために好適な稠度を有するべきである。ジイソアジピン酸エステル、ステアリン酸イソセチル、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸2-エチルヘキシルまたはCrodamol CAPとして公知の分岐鎖エステルのブレンドなどの直鎖もしくは分岐鎖一塩基性または二塩基性アルキルエステルを用いることができ、最後の3種類が好ましいエステルである。必要な特性に応じて、これらは単独または組み合わせで用いることができる。あるいは、白色軟パラフィンおよび/もしくは流動パラフィンまたは他の鉱油などの高融点脂質を用いることができる。
【0156】
担体が液体である、鼻内投与に好適な製剤としては、例えば、鼻内スプレー、点鼻薬、または化合物の水性もしくは油性溶液を含むネブライザーからのエアロゾル投与によるものが挙げられる。
【0157】
担体が固体である、鼻内投与に好適な製剤としては、例えば、嗅ぎタバコを嗅ぐように、すなわち、鼻に近づけた粉末容器からの鼻腔を通る迅速吸入により投与される、例えば約20〜約500ミクロンの粒径を有する粗い粉末として提示されるものが挙げられる。
【0158】
経肺投与(例えば、吸入または送気療法による)に好適な製剤としては、好適な噴射剤(ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適なガスなど)を用いた加圧パックからのエアロゾルスプレーとして提示されるものが挙げられる。
【0159】
眼からの投与に好適な製剤としては、化合物が好適な担体に(特に化合物のための水性溶媒に)溶解または懸濁されている点眼薬が挙げられる。
【0160】
直腸投与に好適な製剤としては、例えば、天然油もしくは硬化油、ワックス、脂肪、半流動体もしくは液体ポリオール(例えば、カカオバターまたはサリチル酸エステル)を含む坐薬として、または浣腸による治療のための溶液剤もしくは懸濁液剤として提示することができる。
【0161】
膣内投与に好適な製剤としては、化合物に加えて、当技術分野で適切であることが知られている担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、パスタ剤、フォーム剤またはスプレー剤として提示することができる。
【0162】
非経口投与(例えば、注射による)に好適な製剤としては、化合物が溶解、懸濁、もしくはその他の方法で提供されている(例えば、リポソームその他の微粒子)、水性または非水性等張性パイロジェン不含無菌液剤(例えば、溶液剤、懸濁液剤)が挙げられる。そのような液体は、以下のものなどの製薬上許容される他の成分をさらに含有することができる:抗酸化剤、緩衝剤、保存料、安定化剤、静細菌剤、懸濁化剤、増粘剤、および製剤を所与のレシピエントの血液(または他の対応する体液)と等張にする溶質。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油などが挙げられる。そのような製剤での使用に好適な等張性担体の例としては、塩化ナトリウム注、リンゲル液、または乳酸加リンゲル液が挙げられる。典型的には、液体中の化合物の濃度は、約1ng/mL〜約10μg/mL、例えば、約10ng/mL〜約1μg/mLである。製剤は、単一用量または多用量密閉容器(例えば、アンプルおよびバイアル)中に入れることができ、使用直前に無菌液体担体(例えば、注射用水)を添加するだけでよい凍結乾燥(freeze-dried、lyophilised)状態で保存することができる。即席調合注射溶液剤および懸濁液剤は、無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製することができる。
【0163】
投与量
IP化合物およびIP化合物を含む組成物の適切な投与量は患者毎に異なり得ることが、当業者には理解されるであろう。最適な投与量の決定は、一般的に、治療効果のレベルと、いずれかのリスクまたは有害副作用とのバランスを取ることを含むであろう。選択された投与量レベルは、限定するものではないが、以下のものをはじめとする種々の要因に依存するであろう:特定のIP化合物の活性、投与経路、投与時期、IP化合物の排出速度、治療の持続期間、組み合わせて用いる他の薬物、化合物および/または物質、状態の重症度、ならびに患者の生物種、性別、年齢、体重、状態、全般的健康状態、および既往歴。一般的に、投与量は、実質的に有害な(harmful、deleterious)副作用を引き起こさずに、所望の効果をもたらす作用部位での局所濃度を達成するために選択されるものであるが、IP化合物の量および投与経路は、最終的には医師、獣医、または臨床医の裁量の範囲内にあるであろう。
【0164】
投与は、一用量で、治療期間にわたって継続的または間欠的に(例えば、適切な間隔で分割用量で)行なうことができる。最も有効な投与手段および投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、療法のために用いる製剤、療法の目的、治療対象の標的細胞、および治療対象の被験体によって変わるであろう。単回投与または複数回投与は、治療を行なう医師、獣医、または臨床医が選択した用量レベルおよび投与パターンを用いて行なうことができる。
【0165】
一般的に、IP化合物の好適な用量は、約10μg〜約250mg(より典型的には、約100μg〜約25mg)/kg被験体体重/日である。化合物が塩、エステル、アミド、プロドラッグなどである場合、投与する量は、親化合物に基づいて算出され、したがって用いる実際の重量は比例して増加する。
【実施例】
【0166】
以下の実施例は、もっぱら本発明を例示するためだけに提供されるものであり、本明細書中に記載された本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0167】
化学合成
反応のためのすべての出発物質、試薬および溶媒は、試薬グレードであり、購入したままで用いた。クロマトグラフィー溶媒は、HPLCグレードであり、さらなる精製を行なわずに用いた。反応は、Merckシリカゲル60 F-254薄層プレートを用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)分析によりモニタリングした。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Merckシリカゲル60(0.015〜0.040mm)またはディスポーザブルIsolute Flash SiおよびSi IIシリカゲルカラムで行なった。分離用TLCは、Macherey-Nagel [809 023]プレコーティングTLCプレートSIL G-25 UV254またはAnaltech [2015]プレコーティング分離用TLCプレート(2000μm、UV254)のいずれかで行なった。LCMS分析は、以下の溶媒系を用いて、Micromass LCT/Waters社Alliance 2795 HPLCシステムと、Discovery 5μm(C18, 50mm×4.6mm i.d.)カラム(Supelco社)で、22℃の温度にて行なった:溶媒A:メタノール;溶媒B:0.1%ギ酸(水中)、流速1mL/分。勾配は、10%A/90%B(0〜0.5分)から出発し、続いて10%A/90%Bから90%A/10%B(0.5分〜6.5分)、および90%A/10%Bで10分まで維持した。10〜10.5分で勾配を10%A/90%Bに戻し、濃度を12分まで維持した。UV検出は254nmで行ない、イオン化は陽イオンまたは陰イオンエレクトロスプレーであった。分子量スキャン範囲は、50〜1000であった。サンプルは、1mg/mL(DMSOまたはメタノール中)で、部分ループフィルにて3μL注入した。NMRスペクトルは、DMSO-d6においてBruker Advance 500 MHz分光計で記録した。
【0168】
合成1
2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニルカルバミン酸tert-ブチル
【化28】

【0169】
4-アミノ-3-フルオロフェノール(10.61g、83.5mmol)を、Boc2O(18.29g、83.8mmol)およびInCl3(188mg、0.85mmol)の溶融混合物に35℃で加えた。黒色混合物を35℃で2時間撹拌すると、その間に粘性の黒色油状物に変わった。次に混合物をEtOAc(200mL)およびH2O(200mL)で希釈し、10分間撹拌を続けた。層を分離し、有機層をH2O(3×200mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、濃縮乾固した。得られた黒色油状物をCH2Cl2(50mL)に再溶解し、シリカゲルカラムにロードした。5→7%EtOAc(CH2Cl2中)を用いた溶出により、表題化合物が淡黄色結晶固体として得られた。
【0170】
収量: 16.7 g (90%). 1H-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 1.42 (s, 9H, C(CH3)3), 6.50-6.57 (m, 2H, ArH), 7.11-7.21 (m, 1H, ArH), 8.45 (bs, 1H, OH), 9.63 (s, 1H, NHBoc); 13C-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 28.0, 78.6, 102.7 (d, JFH=22.2), 110.8 (d, JFH=2.7), 117.1 (d, JFH=12.6), 127.2, 153.7, 155.5 (d, JFH=11.3), 156.1 (d, JFH=246); 19F-NMR (DMSO-d6), δ (ppm): 121.6; LC-MS (3.94 min): m/z C11H14FNO3 [M-C(CH3)3]+についての算出値: 172.0; 実測値: 172.0。
【0171】
合成2
4-(2-アミノ-3-ニトロピリジン-4-イルオキシ)-2-フルオロフェニルカルバミン酸tert-ブチル(3a)
【化29】

【0172】
乾燥DMSO(20mL)を、アルゴン下で丸底フラスコ中のNaH(鉱油中60%分散液1.029g、25.7mmol)に添加した。5分後、固体2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニルカルバミン酸tert-ブチル(5.59g、24.6mmol)を3回に分けて添加すると、暗色溶液が得られ、室温で15分間の撹拌後、これを4-クロロ-3-ニトロピリジン-2-アミン(4.23g、24.4mmol)で直ちに処理した。暗赤色溶液を110℃まで1時間加熱し、室温まで冷却させた。続いて、EtOAc(150mL)およびH2O(200mL)を溶液に加え、有機層を単離した。水層をEtOAc(3×100mL)で抽出し、併せた有機層を飽和NaHCO3(150mL)で1回洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、ろ過し、濃縮乾固すると、明黄色固体が得られた。この物質をさらなる精製をせずに次のステップで用いた。
【0173】
収量: 8.68 g (98%). 1H-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 1.46 (s, 9H, C(CH3)3), 6.08 (d, 1H, 3JHH=5.5, PyrH), 7.01 (m, 1H, ArH), 7.18 (br s, 2H, NH2), 7.22 (m, 1H, ArH), 7.67 (m, 1H, ArH), 8.04 (d, 1H, 3JHH=5.5, PyrH), 9.03 (s, 1H, NHBoc); 19F-NMR (DMSO-d6), δ (ppm): 120.7; LC-MS (4.72 min): m/z C16H17FN4O5 [M+H+]についての算出値: 365.0; 実測値: 365.0。
【0174】
合成3
4-(2,3-ジアミノピリジン-4-イルオキシ)-2-フルオロフェニルアルバミン酸tert-ブチル(4a)
【化30】

【0175】
Pd/C(1.09g)を、EtOAc/EtOH(90/150mL)中の4-(2-アミノ-3-ニトロピリジン-4-イルオキシ)-2-フルオロフェニルカルバミン酸tert-ブチル(3a)(6.20g、17.0mmol)の黄色溶液に添加し、黒色混合物を窒素雰囲気下で5時間撹拌し、セライトでろ過した。暗褐色のろ液を濃縮乾固し、CH2Cl2(20mL)に再溶解し、シリカゲルカラムにロードした。生成物をEtOAcで溶出し、表題化合物を含有する画分を蒸発乾固した。橙色油状物をCH2Cl2に溶解し、等量のヘキサンを加えた。溶液を濃縮乾固すると、橙色の泡状物が得られた。
【0176】
収量: 4.30 g (76%). 1H-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 1.45 (s, 9H, C(CH3)3), 4.47 (s, 2H, NH2), 5.61 (s, 2H, NH2), 6.09 (d, 1H, 3JHH=5.5, PyrH), 6.76 (m, 1H, ArH), 6.87 (m, 1H, ArH), 7.28 (d, 1H, 3JHH=5.5, PyrH), 7.47 (m, 1H, ArH), 8.82 (s, 1H, NHBoc); 13C-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 28.0, 79.1, 104.4, 105.9 (d, JFH=23.1), 113.4 (d, JFH=3.1), 120.3, 121.5 (d, JFH=12.2), 126.1, 135.7, 146.2, 150.5, 153.1 (d, JFH=10.1), 153.3, 155.1 (d, JFH=248); 19F-NMR (DMSO-d6), δ (ppm): -120.7; LC-MS (2.69 min): m/z C16H20FN4O3 [M+H+]についての算出値: 335.2; 実測値: 335.3。
【0177】
合成4
4-(4-N-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-カルバミン酸エチル(5a)
【化31】

【0178】
4-(4-N-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-3-フルオロフェニルオキシ)-2,3-ジアミノピリジン(4a)(2.5g、7.5mmol)を、撹拌しながら乾燥THF(50mL)に溶解し、ピリジン(1.2mL、15mmol)を添加し、溶液を0℃で冷却した。クロロギ酸エチル(0.77mL、8.0mmol)を直ちに加えた。30分後、反応混合物を室温にし、さらに24時間撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させ、残渣をDCMと飽和水性Na2CO3とに分割した。有機層をH2Oで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーにより精製すると(溶出液勾配DCM〜EtOAc)、表題化合物が泡状物として得られた。
【0179】
収量: 1.13 g, 37%. 1H NMR δ: 1.17 (t, 3H, CH3,Et, J=7.1 Hz), 1.45 (s, 9H, tBu), 4.02 (q, 2H, J=7.1, CH2,Et), 5.89 (s, 2H, NH2,Py2), 5.98 (d, 1H, J=5.7, HPy), 6.83 (d, 1H, Harom), 6.96 (d, 1H, Harom), 7.55 (t, 1H, Harom), 7.73 (d, 1H, J=5.7, HPy), 8.29 (br s, 1H, NHPy3), 9.39 (s, 1H, NHBoc)。
【0180】
合成5
4-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-カルバミン酸エチル(6a)
【化32】

【0181】
4-(4-N-(tert-ブトキシカルボニル)-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-カルバミン酸エチル(5a)(1.13g、2.8mmol)をTFA(8mL)に溶解し、数滴の水を添加して、反応混合物を室温で2時間撹拌した。TFAを蒸発させ、残渣を水(20mL)に溶解し、飽和水性NaCO3を用いて中和し、DCM(2×20mL)で抽出した。有機層を乾燥させ、蒸発させると、表題化合物が得られた。
【0182】
収量: 730 mg, 86%. 1H NMR δ: 1.17 (t, 3H, J=7.1, CH3,Et), 4.05 (q, 2H, J=7.0, CH2,Et), 5.04 (s, 2H, NH2,Ph), 5.71 (s, 2H, NH2,Py), 5.86 (d, 1H, J=5.7, HPy), 6.64 (d, 1H, Harom), 6.73-6.82 (m, 2H, Harom), 7.68 (d, 1H, J=5.7, HPy), 8.23 (br s, 1H, NHPy3). LC-MS: m/z 307 ([M+H]+, 100)。
【0183】
合成6
4-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-メチル-カルバミン酸エチル(7a)
【化33】

【0184】
4-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-カルバミン酸エチル(6a)(480mg、1.6mmol)を乾燥THF(8mL)に溶解し、0℃で冷却した。水素化ナトリウム(鉱油中60%、80mg、2.0mmol)を添加し、反応混合物を0℃で40分間撹拌した。ヨウ化メチル(130μL、1.8mmol)を0℃で加えた。氷浴をはずし、混合物を室温で18時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣をDCMと蒸留水とに分割した。有機層を乾燥および蒸発させ、残渣をジエチルエーテルで洗浄すると、表題化合物が褐色固体として得られた。
【0185】
収量: 322 mg, 63%. 1H NMR δ: 1.09 (t, 3H, J=7.0, CH3,Et), 3.00 (s, 3H, CH3N), 3.90-4.10 (m, 2H, CH2,Et), 5.07 (s, 2H, NH2,Ph), 5.87 (d, 1H, HPy), 6.03 (s, 2H, NH2,Py), 6.63 (t, 1H, Harom), 6.77-6.81 (m, 2H, Harom), 7.75 (d, 1H, HPy)。
【0186】
合成7
7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8a)
【化34】

【0187】
4-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-2-アミノピリジン-3-イル-メチル-カルバミン酸エチル(7a)(320mg、1.0mmol)を、エタノール(9mL)にナトリウム(480mg、21mmol)を溶解することにより得られたEtONa溶液(EtOH中)(4mL)に懸濁した。懸濁液を、マイクロ波照射で1時間加熱した(100℃、100W)。混合物を室温で冷却し、溶媒を蒸発させた。残渣を水に溶解し、AcOHを用いてpH4に酸性化した。形成された沈殿をろ過により回収すると、表題化合物が得られた。
【0188】
収量: 188 mg, 67%. 1H NMR δ: 3.46 (s, 3H, CH3N), 5.11 (s, 2H, NH2), 6.35 (d, 1H, J=5.9, HPy), 6.77-6.82 (m, 2H, Harom,), 6.99 (d, 1H, Harom), 7.76 (d, 1H, J=6.0, HPy), 11.54 (s, 1H, NHPy)。
【0189】
合成8
1-(3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(2-フルオロ-4-(1-N-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル尿素(AA-01)
【化35】

【0190】
3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミン(550mg、1.8mmol)をCH2Cl2(25mL)に溶解し、等量の飽和NaHCO3(水性)を添加した。二相性混合物を撹拌し、氷/水浴を用いて0℃まで冷却した。10分後、2当量のホスゲン1.9M溶液(トルエン中)を加えた。混合物を10分間激しく撹拌し、有機層を単離し、H2Oで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、約5mLまで濃縮した。この溶液を7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8a)(200mg、1.4mmol)のTHF溶液に加えた。溶液を室温で15時間撹拌し、溶媒を蒸発させ、固体残渣をEt2OおよびCH2Cl2を用いて洗浄すると、表題化合物が白色固体として得られた。
【0191】
収量: 200 mg, 53%. 1H NMR, δ: 1.28 (s, 9H, tert-Bu), 3.42 (s, 3H, CH3), 6.39 (s, 1H, HPyz,4), 6.49 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.99 (dd, 1H, J = 1.6, 9.0, Harom),7.21 (dd, 1H, J = 11.9, 2.7, Harom), 7.40-7.45 (m, 1H, Harom), 7.50-7.58 (m, 4H, Harom), 7.81 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 8.10 (t, 1H, J = 9.1, Harom), 8.80 (s, 1H, NHurea), 8.93 (s, 1H, NHurea), 11.63 (bs, 1H, NHPy2). LC-MS: m/z 516 ([M]+, 100). HRMS (EI): m/z C27H27N7O3 ([M+H]+)についての算出値: 516.2154; 実測値: 516.2152。
【0192】
合成9
1-(3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(2-フルオロ-4-(1-N-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)尿素(AA-02)
【化36】

【0193】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-アミン(458mg、2mmol)および7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8a)(110mg、0.4mmol)から表題化合物をオフホワイトの固体として調製した。
【0194】
収量: 150 mg, 71%. 1H NMR, δ: 1.27 (s, 9H, tert-Bu), 2.38 (s, 3H, Ph-CH3), 3.42 (s, 3H, N-CH3), 6.37 (s, 1H, HPyz,4), 6.49 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.96 (dd, 1H, Harom), 7.20 (d, 1H, Harom), 7.34 (d, 2H, J = 8.3, Harom), 7.39 (d, 2H, J = 8.4, Harom), 7.81 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 8.11 (t, 1H, Harom), 8.74 (s, 1H, NHurea), 8.92 (s, 1H, NHurea), 11.61 (bs, 1H, NHPy2). LC-MS: m/z 530 ([M+H]+, 100)。
【0195】
合成10
1-(3-tert-ブチル-1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(2-フルオロ-4-(1-N-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)尿素(AA-03)
【化37】

【0196】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-(4-クロロフェニル)-1H-ピラゾール-5-アミン(375mg、1.5mmol)および7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8a)(150mg、0.55mmol)から表題化合物をオフホワイトの固体として調製した。
【0197】
収量: 190 mg, 63%. 1H NMR, δ: 1.28 (s, 9H, tert-Bu), 3.42 (s, 3H, CH3), 6.39 (s, 1H, HPyz,4), 6.49 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.96 (dd, 1H, 9.0, Harom), 7.21 (d, 1H, Harom), 7.57 (d, 2H, J = 9.0, Harom), 7.60 (d, 2H, J = 8.9, Harom), 7.81 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 8.08 (t, 1H, Harom), 8.80 (s, 1H, NHurea), 8.89 (s, 1H, NHurea), 11.63 (bs, 1H, NHPy2). LC-MS: m/z 549 ([M]+, 100)。
【0198】
合成11
3-tert-ブチル-1-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸
【化38】

【0199】
丸底フラスコ(炉乾燥)中で、(3-フルオロフェニル)ボロン酸(224mg、1.6mmol)、3-t-ブチル-ピラゾール-5-カルボン酸エチル(320mg、1.6mmol)、酢酸銅(355mg、1.9mmol)および乾燥ピリジン(158μL、1.9mmol)を、10mL乾燥DMF中にアルゴン雰囲気下、激しく撹拌しながら懸濁した。反応混合物に300mgの4A分子篩を添加し、懸濁液を室温で20時間撹拌した。懸濁液を20mL AcOEtを用いて希釈し、水(2×20mL)、次に20mLの濃NaHCO3溶液、および20mLブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、真空下で蒸発させた。粘性の油状物(520mg)が得られ、これを精製せずに次のステップで用いた。
【0200】
油状物を10mL EtOHに溶解し、3mL NaOH溶液(2M)を撹拌しながら加え、反応混合物を30分間還流した。室温まで冷却した後、反応混合物をpH4に調整し(AcOHを用いて)、20mL AcOEtを用いて抽出した。有機層を水(2×20mL)で洗浄し、乾燥させ、真空下で蒸発させた。固体が得られた(457mg)。固体をシクロヘキサン:AcOEt(3:1)を用いてBiotageで精製すると、表題化合物が白色固体として得られた。
【0201】
収量: 166 mg (40%). 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 1.30 (s, 9H), 6.95 (s, 1H, Hpyr), 8.59 (d, 1H, J = 8.6 Hz), 7.25-7.32 (m, 1H, Harom), 7.35 (d, 1H, J = 9.9 Hz, Harom), 7.47-7.52 (m, 1H, Harom), 13.22 (s, 1H, Hacid). HRMS: (M+H)+ C14H15FN2O2についての算出値, 262.1118, 実測値: 262.1117。
【0202】
合成12
1-(3-tert-ブチル-1-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(2-フルオロ-4-(1-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニル)尿素(AA-04)
【化39】

【0203】
3-tert-ブチル-1-(3-フルオロフェニル)-1H-ピラゾール-5-カルボン酸(393mg、1.5mmol)を乾燥DMF(8mL)に溶解し、トリエチルアミン(209μL、1.5mmol)を添加した。溶液を0℃で冷却し、ジフェニルホスホリルアジド(323μL、1.5mmol)を加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌し、続いて室温で1時間撹拌した。7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8a)(140mg、0.5mmol)を加え、反応混合物を110℃で1時間加熱した。溶液を冷却し、AcOEt(100mL)を用いて希釈し、水およびブラインで抽出した。有機層を乾燥および蒸発させ、残渣をDCMに回収した。残った固体をろ過により回収すると、表題化合物が得られた。
【0204】
収量: 25 mg, 9%. 1H NMR, δ: 1.28 (s, 9H, tert-Bu), 3.41 (s, 3H, CH3), 6.40 (s, 1H, HPyz,4), 6.49 (d, 1H, J = 6.1, HPy,5), 6.96-7.02 (m, 1H, Harom), 7.19-7.26 (m, 2H, Harom), 7.36-7.44 (m, 2H, Harom), 7.58 (t, 1H, Harom), 7.81 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 8.06 (t, 1H, J = 9.1, Harom), 8.83 (s, 1H, NHurea), 8.92 (s, 1H, NHurea), 11.64 (bs, 1H, NHPy2). LC-MS: m/z 533 ([M]+, 100)。
【0205】
合成13
4-(2-アミノ-3-ニトロピリジン-4-イル-オキシ)ナフタレン-1-イル-カルバミン酸tert-ブチル(3b)
【化40】

【0206】
化合物(3a)について記載されたのと同じ方法により、4-ヒドロキシナフタレン-1-イルカルバミン酸tert-ブチル(Regan, J. et al, J. Med. Chem., 2002, Vol. 45, No. 14, p. 2994)(3.9g、15mmol)から表題化合物を調製した。
【0207】
収量: 5.4 g, 90% (ジクロロメタンから再結晶化した場合). 1H-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 1.52 (s, 9H, C(CH3)3), 5.80 (d, 1H, J=5.7, PyrH), 7.26 (s, 2H, NH2), 7.38 (d, 1H, J=8.3, ArH,Naph), 7.58-7.69 (m, 3H, ArH, Naph), 7.86-7.89 (m, 1H, ArH, Naph), 7.93 (d, 1H, J=5.5, PyrH), 8.14-8.17 (m, 1H, ArH, Naph), 9.36 (s, 1H, NHBoc)。
【0208】
合成14
4-(2,3-ジアミノピリジン-4-イル-オキシ)ナフタレン-1-イル-カルバミン酸tert-ブチル(4b)
【化41】

【0209】
化合物(4a)について記載されたのと同じ方法により、4-(2-アミノ-3-ニトロピリジン-4-イル-オキシ)ナフタレン-1-イル-カルバミン酸tert-ブチル(3b)(0.50g、1.26mmol)から、表題化合物を褐色固体として調製した。
【0210】
収量: 0.38 g (82%). 1H-NMR (DMSO-d6), δ (ppm), J (Hz): 1.55 (s, 9H, C(CH3)3), 4.63 (s, 2H, NH2), 5.66 (s, 2H, NH2), 5.92 (d, 1H, J=5.6, PyrH), 7.05 (d, 1H, J=8.3, ArH,Naph), 7.24 (d, 1H, J=5.5, PyrH), 7.54 (d, 1H, J=8.3, ArH,Naph), 7.60-7.65 (m, 2H, ArH, Naph), 8.07-8.12 (m, 2H, ArH, Naph), 9.22 (s, 1H, NHBoc)。
【0211】
合成15
4-(4-N-Boc-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノ-ピリジン(5b)
【化42】

【0212】
4-(4-N-Boc-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-2,3-ジアミノピリジン(4b)(500mg、1.4mmol)およびピリジン(222μL、2.7mmol)を、0℃にて激しく撹拌しながら乾燥THF(8mL)に溶解した。この溶液に、クロロギ酸エチル(136mL、1.5mmol)を直ちに加えた。反応混合物を室温にして、さらに10時間撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcとNa2CO3溶液とに分割した。有機層を洗浄し(20mLブライン)、乾燥させ(MgSO4)、蒸発させて、固体残渣を得た。LC(Isoluteカラム、Flash Si II、50g/170mL;溶出液:EtOAc)による精製後、所望の化合物が得られた。
【0213】
収量: 475 mg, 75%. 1H-NMR δ: 1.14-1.21 (m, 3H, CH3), 1.50 (s, 9H, tBu), 4.04-4.10 (m, 2H, CH2), 5.66 (d, 1H, J=5.7, HPy), 5.84 (s, 2H, NH2), 7.15 (d, 1H, J=8.1, Harom), 7.49-7.60 (m, 3H, Harom), 7.62 (d, 1H, J=5.7, HPy), 7.98-8.04 (m, 1H, Harom), 8.07 (d, 1H, J=8.5, Harom), 8.40 (s, 1H, NHcarb), 9.22 (s, 1H, NHBoc). LC-MS: m/z 440 [(M + H)+, 100]. HRMS (EI): m/z C23H27N4O5 [(M + H)+]についての算出値: 439.1981; 実測値: 439.1979。
【0214】
合成16
4-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノ-ピリジン(6b)
【化43】

【0215】
4-(4-N-Boc-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノピリジン(5b)(475mg、1.05mmol)を、0℃にて激しく撹拌しながら乾燥TFA(10mL)に溶解した。この溶液を室温にして、さらに2時間撹拌した。真空下でTFAを蒸発させ、油状残渣をEtOAcとNa2CO3溶液とに分割した。有機層を洗浄し(20mLブライン)、乾燥させ(MgSO4)、蒸発させて、固体残渣を得た。
【0216】
収量: 346 mg, 97%. 1H NMR δ: 1.19-1.26 (m, 3H, CH3), 4.07-4.13 (m, 2H, CH2), 5.57 (d, 1H, J=5.7, HPy), 5.77 (s, 4H, 2 x NH2), 6.66 (d, 1H, J=8.1, Harom), 6.97 (d, 1H, J=8.1, Harom), 7.37-7.45 (m, 2H, Harom), 7.55 (d, 1H, J=5.7, HPy), 7.76-7.86 (bs, 1H, Harom), 8.09-8.12 (m, 1H, Harom), 8.36 (s, 1H, NHcarb). LC-MS: m/z 339 [(M+H)+, 100]. HRMS (EI): m/z C18H19N4O3 [(M+H)+, 100]についての算出値: 339.1457; 実測値: 339.1459。
【0217】
合成17
4-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-メチル-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノ-ピリジン(7b)
【化44】

【0218】
4-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノ-ピリジン(6b)(350mg、1.04mmol)を、0℃にてアルゴン下で激しく撹拌しながら乾燥THF(8mL)に溶解した。この溶液に、NaH(60%、鉱油中に分散)(45mg、1.14mmol)を加えた。40分後、MeI(66mL、0.91mmol)を0℃で加えた。。反応混合物を室温にして、さらに10時間撹拌した。真空下で溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAc 20mLに再回収した。溶液をブラインで洗浄し(2×20mL)、乾燥させ、蒸発乾固した。残渣をEt2Oを用いて粉砕し、ろ過すると、表題化合物が固体として得られた。
【0219】
収量: 238 mg, 65%. 1H NMR δ: 1.12-1.29 (m, 3H, CH3), 3.14 (s, 3H, CH3), 4.05-4.16 (m, 2H, CH2), 5.53 (d, 1H, J=5.8, HPy), 5.75 (s, 2H, NH2), 6.01 (s, 2H, NH2), 6.66 (d, 1H, J=8.1, Harom), 6.96 (d, 1H, J=8.1, Harom), 7.37-7.43 (m, 2H, Harom), 7.57 (d, 1H, J=5.8, HPy), 7.59-7.64 (m, 1H, Harom), 8.11-8.15 (m, 1H, Harom). LC-MS: m/z 353 ([M+H]+, 100). HRMS (EI): m/z C19H21N4O3 ([M+H]+)についての算出値: 353.1614; 実測値: 353.1610。
【0220】
合成18
7-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8b)
【化45】

【0221】
230mg(0.65mmol)の4-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-3-N-メチル-N-アミノカルバモイルエチル-2-アミノピリジン(7b)を、1.0MのEtONa溶液(EtOH中)5.0mLに懸濁した。懸濁液を45分間、マイクロ波(150W、100℃)にかけた。冷却後、反応混合物を蒸発乾固し、20mLのH2Oに再回収し、pHを4.5に調整し(AcOH)、表題化合物を沈殿させた。
【0222】
収量: 167 mg, 84%. 1H NMR δ: 3.61 (s, 3H, CH3), 5.79 (s, 2H, NH2), 6.10 (d, 1H, J=5.9, HPy), 6.68 (d, 1H, J=8.1, Harom), 7.10 (d, 1H, J=8.1, Harom), 7.43-7.48 (m, 2H, Harom), 7.64 (d, 1H, J=5.8, HPy), 7.74-7.81 (m, 1H, Harom), 8.12-8.17 (m, 1H, Harom), 11.57 (s, 1H, NHPy). LC-MS: m/z 307 ([M+H]+, 100). HRMS (EI): m/z C17H25N4O2 ([M+H]+)についての算出値: 307.1195; 実測値: 307.1188。
【0223】
合成19
1-(3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(1-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)ナフタレン-1-イル)尿素(BB-01)
【化46】

【0224】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミン(0.18mmol)および7-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8b)(50mg、0.16mmol)から、表題化合物をオフホワイトの固体として調製した。
【0225】
収量: 87 mg, 98%. 1H NMR, δ 1.29 (s, 9H, tert-Bu), 3.53 (s, 3H, CH3), 6.29 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.40 (s, 1H, Hpyr), 7.24 (d, 1H, J = 8.3, Harom), 7.43 (t, 1H, J = 7.0 Hz), 7.54-7.63 (m, 5H), 7.66 (t, 1H, J = 8.2, Harom), 7.74 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 7.86 (d, 2H, J = 8.3, Harom), 8.05-8.10 (m, 1H), 8.77 (s, 1H, NHurea), 9.07 (s, 1H, NHurea), 11.64 (s, 1H, NHPy2). LC-MS: Rf = 8.25 min; m/z 548.2 (M+, 100). HRMS (EI): m/z C31H30N7O3 ([M+H]+)についての算出値: 548.2410; 実測値: 548.2404。
【0226】
合成20
1-(1-N-p-トリル-3-tert-ブチル-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イル-オキシ)ナフタレン-1-イル)尿素(BB-02)
【化47】

【0227】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-アミン(35mg、0.15mmol)および7-(4-アミノナフタレン-1-イル-オキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(8b)(40mg、0.13mmol)から、表題化合物をオフホワイトの固体として調製した。
【0228】
収量: 52 mg, 71%. 1H NMR, δ: 1.28 (s, 9H, tert-Bu), 2.40 (s, 3H, CH3), 3.53 (s, 3H, CH3), 6.29 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.39 (s, 1H, Hpyr), 7.24 (d, 1H, J = 8.4, Harom), 7.36 (d, 2H, J = 8.2, Harom), 7.45 (d, 2H, J = 8.2, Harom), 7.60 (t, 1H, J = 7.5, Harom), 7.67 (t, 1H, J = 7.6, Harom), 7.74 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 7.87 (d, 1H, J = 8.3, Harom), 8.07 (d, 2H, J = 8.3, Harom), 8.71 (s, 1H, NHurea), 9.06 (s, 1H, NHurea), 11.65 (s, 1H, NHPy3). LC-MS: Rf = 5.23 min; m/z 562.2 ([M+H]+, 100). HRMS (EI): m/z C32H32N7O3 ([M+H]+)についての算出値: 562.2561; 実測値: 562.2566。
【0229】
(参考)合成21
2-フルオロ-4-(2-(メチルアミノ)-3-ニトロピリジン-4-イルオキシ)フェニルカルバミン酸tert-ブチル
【化48】

【0230】
2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニルカルバミン酸tert-ブチル(3.25g、14.4mmol)をDMSO(25mL)に溶解し、溶液をアルゴン雰囲気下で20分間撹拌した。水素化ナトリウム(鉱油中60%、580mg、14.4mmol)を少しずつ加え、暗色溶液を室温で1時間撹拌した。DMSO(5mL)に溶解した4-クロロ-N-メチル-3-ニトロピリジン-2-アミン(2.7g、14.4mmol)を直ちに加え、赤色溶液を50℃で2時間撹拌した。溶液を冷却し、砕いた氷(200g)に注ぎ、酢酸エチル(3×100mL)を用いて抽出した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ、蒸発させると、表題化合物が黄色固体として得られた。
【0231】
収量: 5.3 g, 90%. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 1.47 (s, 9H, tert-Bu) 2.93 (d, J = 4.5 Hz, CH3N), 6.08 (d, J = 5.7 Hz, 1H, Hpy), 7.00 (m, 1H, Harom), 7.22 (m, 1H, Harom), 7.55 (q, J = 4.5 Hz, 1H, NHCH3), 7.66 (m, 1H, Harom), 8.14 (d, J = 5.7 Hz, 1H, 1H, Hpy), 9.04 (bs, 1H, NH). LC-MS: m/z 378.3 ([M+H]+, 100)。
【0232】
(参考)合成22
4-(3-アミノ-2-(メチルアミノ)ピリジン-4-イルオキシ)-2-フルオロフェニルカルバミン酸tert-ブチル
【化49】

【0233】
2-フルオロ-4-(2-(メチルアミノ)-3-ニトロピリジン-4-イルオキシ)フェニルカルバミン酸tert-ブチル(5.3mg、14mmol)を無水エタノール(600mL)に溶解し、H-Cube装置を通して10%Pd/Cカートリッジで水素化すると、表題化合物が黄色固体として得られた。
【0234】
収量: 4.88 g (定量的収量). 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 1.44 (s, 9H, tert-Bu), 2.85(d, 3H, J = 4.5 Hz, CH3N), 4.51 (bs, 2H, NH2), 5.94 (m, 1H, CH3NH), 6.10 (d, 1H, J = 5.6 Hz, Hpy), 6.72 (m, 1H, Harom), 6.85 (m, 1H, Harom), 7.37 (d, 1H, J = 5.6 Hz, Hpy), 7.44 (m, 1H, Harom), 8.87 (bs, 1H, NH). LC-MS: m/z 348.4 ([M+H]+, 100)。
【0235】
(参考)合成23
2-フルオロ-4-(3-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニルカルバミン酸tert-ブチル
【化50】

【0236】
アルゴン雰囲気下にてTHF(150mL)およびピリジン(10mL)中の4-(3-アミノ-2-(メチルアミノ)ピリジン-4-イルオキシ)-2-フルオロフェニルカルバミン酸tert-ブチル(4.9g、14mmol)の氷冷溶液に、THF(75mL)中のトリホスゲン(4.45g、15mmol)の溶液を滴下漏斗を介して2時間かけて加えた。溶液を0℃で2時間撹拌し、続いて室温で4時間撹拌し、次に一晩還流した。冷却後、溶液をろ過し、蒸発させ、Biotage装置(25+Mカラム、溶出液DCM/EtOAc 1/1)でクロマトグラフィーにかけると、表題化合物が白色固体として得られた。
【0237】
収量: 2.05 g, 40%. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ: 1.47 (s, 9H, tert-Bu), 3.32 (s, 3H, CH3N), 6.53 (d, 1H, J = 5.9 Hz, Hpy), 6.94 (m, 1H, Harom), 7.15 (m, 1H, Harom), 7.60 (m, 1H, Harom), 7.89 (d, 1H, J = 5.9 Hz, Hpy), 8.97 (s, 1H, NH), 11.46 (s, 1H, NH). LC-MS: m/z 375.1 ([M+H]+, 100)。
【0238】
(参考)合成24
7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-3-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン
【化51】

【0239】
THF(41mL)中1M TBAF中の2-フルオロ-4-(3-メチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)フェニルカルバミン酸tert-ブチル(2.18g、5.8mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下で一晩還流した。溶液を冷却し、蒸発させ、水(20mL)を加えると、沈殿が形成された。沈殿をろ過し、水で洗浄し、乾燥させると、表題化合物がオフホワイトの固体として得られた。
【0240】
収量: 1.37 g, 86%. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 3.29 (s, 3H, CH3N), 5.17 (s, 2H, NH2), 6.35 (d, 1H, J = 5.94 Hz, Hpy), 6.74-6.83 (m, 2H, Harom), 6.99 (m, 1H, Harom), 7.81 (d, 1H, J = 5.94 Hz, Hpy), 11.44 (s, 1H, NH). LC-MS: m/z 275.1 ([M+H]+, 100)。
【0241】
(参考)合成25
7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1,3-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン
【化52】

【0242】
アルゴン下、0℃にて、THF(4mL)中の7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-3-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(100mg、0.365mmol)の溶液にNaH(16.77mg、0.419mmol)を一度に加えた。得られた溶液を20分間撹拌し、ヨードメタン(0.025mL、0.401mmol)を加えた。1時間後、水を加え、溶液を蒸発させ、DCM(3×20mL)で抽出すると、表題化合物が得られた。
【0243】
収量: 80 mg, 0.278 mmol, 76%. 1H NMR (CDCl3), δ: 3.51 (s, 3H, Me), 3.66 (s, 3H, Me), 6.40 (d, 1H, J = 6.0, Harom,Py), 6.74 (ddd, 1H, J = 8.6, 2.5, 1.0, Harom,FPh), 6.83 (m, 2H, Harom,FPh), 7.87 (d, 1H, J = 6.0, Harom,Py). LC-MS: Rf = 2.60 min; m/z 289.1 ([M+H]+, 90)。
【0244】
(参考)合成26
1-(1-N-p-トリル-3-tert-ブチル-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イル-オキシ)フェニル)尿素(XX-02)
【化53】

【0245】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-p-トリル-1H-ピラゾール-5-アミン(43.7mg、0.19mmol)および7-(4-アミノフェニルオキシ)-1-N-メチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(Niculescu-Duvaz, D. et al, J. Med. Chem., 2009, Vol. 52, No. 8, p. 2255)(40mg、0.16mmol)を用いて、表題化合物を白色固体として調製した。
【0246】
収量: 62 mg, 76%. 1H NMR, δ: 1.27 (s, 9H, tert-Bu), 2.37 (s, 3H, CH3), 3.44 (s, 3H, CH3), 6.35 (d, 1H, J = 5.9, HPy,5), 6.39 (s, 1H, Hpyr), 7.11 (d, 2H, J = 9.0, Harom), 7.33 (d, 2H, J = 8.3, Harom), 7.39 (d, 2H, J = 8.3, Harom), 7.47 (d, 2H, J = 9.0, Harom), 7.78 (d, 1H, J = 5.9, HPy,6), 8.32 (s, 1H, NHurea), 9.08 (s, 1H, NHurea), 11.59 (s, 1H, NHPy3). LC-MS: Rf = 5.14 min; m/z 511 ([M+H]+, 100). HRMS (EI): m/z C28H30N7O3 ([M+H]+)についての算出値: 512.2405; 実測値: 512.2405。
【0247】
(参考)合成27
1-(3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-(4-(1,3-ジメチル-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)-2-フルオロフェニル)尿素(XX-03)
【化54】

【0248】
(AA-01)について記載されたのと同じ方法により、3-tert-ブチル-1-フェニル-1H-ピラゾール-5-アミン(130mg、0.60mmol)および7-(4-アミノ-3-フルオロフェノキシ)-1,3-ジメチル-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2(3H)-オン(100mg、0.35mmol)から、表題化合物を黄色粉末として調製した。
【0249】
収量: 15 mg, 8%. 1H NMR (CDCl3), δ: 1.39 (s, 9H, tert-Bu), 3.48 (s, 3H, Me), 3.59 (s, 3H, Me), 6.47 (d, 1H, J = 5.9, Harom,Py), 6.49 (s, 1H, HPyz,4), 6.85 (dd, 1H, J = 11.1, 2.5, Harom,FPh), 6.89 (d, 1H, J = 9.0, Harom,FPh), 7.31 (t, 1H, J = 7.7, Harom,Ph), 7.42 (t, 2H, J = 7.7, Harom,Ph), 7.50 (d, 2H, J = 7.9, Harom,Ph), 7.92 (d, 1H, J = 5.9, Harom,Py), 8.15 (t, 1H, J = 8.9, Harom,FPh). LC MS: Rf = 2.78 min; m/z 530 ([M+H]+, 90). HRMS (EI): m/z C28H29FN7O3 ([M+H]+)についての算出値: 530.2310; 実測値: 530.2326。
【0250】
(参考)合成28
1-(5-tert-ブチル-2-フェニル-2H-ピラゾール-3-イル)-3-[4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)-フェニル]-尿素(XX-01)
【化55】

【0251】
公知の方法(例えば、Synthesis 61, Niculescu-Duvaz et al., 2006に示されている)を用いて、表題化合物を得た。
【0252】
(参考)合成29
1-[5-tert-ブチル-2-(4-フルオロ-フェニル)-2H-ピラゾール-3-イル]-3-[4-(2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-7-イルオキシ)-フェニル]-尿素(XX-04)
【化56】

【0253】
公知の方法(例えば、Synthesis 79, Niculescu-Duvaz et al., 2006に示されている)を用いて、表題化合物を得た。
【0254】
生物学的方法
生物学的方法 - アッセイA - DELFIAキナーゼアッセイ
下記のプロトコールに従って行なったキナーゼアッセイにより、化合物を評価した。
【0255】
以下の試薬を調製した:
DELFIAキナーゼバッファー(DKB)
【表2】

【0256】
MOPS=3-[N-モルホリノ]プロパンスルホン酸(Sigma M3183)
EGTA=エチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(Sigma E3889)。
【0257】
DKB1(B-RAFおよびMEKタンパク質を含むDKB)
4950μLのDKBと50μLの2.5mg/mL GST-MEKストックを併せる(40μLあたり1mgのMEKとする)。続いて、22.5μLのB-RAFを加え、40μL当たり約0.2μLのB-RAFとする。
【0258】
DKB2(MEKタンパク質を含むDKB)
4950μLのDKBと50μLの2.5mg/mL GST-MEKストックを併せる(40μLあたり1mgのMEKとする)。ブローアウト(BO)および空ベクター(EV)対照のために、これを500μL用いる。
【0259】
ATP
100mMストック、500μMに希釈し、アッセイ中最終濃度100μMとする。
【0260】
阻害剤(試験化合物)
100mMストック、薬物プレートにおいてDMSO中10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、0.001、0.0003、および0.0001mMに希釈し、アッセイ中100、30、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01、0.003、および0.001μM濃度とする。
【0261】
一次抗体
リン酸化MEK1/2(phospho-MEK)(CST #9121S)、DELFIAアッセイバッファー(AB)にて1:1000希釈。使用前に、室温にて30分間、AB中で抗体をプレインキュベートする。
【0262】
二次抗体
抗ウサギ-Eur標識二次抗体(Perkin Elmer #AD0105)、DELFIAアッセイバッファー(AB)にて1:1000希釈。使用前に、室温にて30分間、AB中で抗体をプレインキュベートする。(一次抗体と二次抗体とは一緒にインキュベートした)。
【0263】
Tween
0.1%Tween20(水中)。
【0264】
アッセイバッファー
DELFIAアッセイバッファー(Perkin Elmer #4002-0010)。
【0265】
増強溶液
DELFIA増強(enhancement)溶液(Perkin Elmer #4001-0010)。
【0266】
アッセイプレート
96ウェルグルタチオンコーティング黒色プレート(Perbio #15340)。
【0267】
手順
1. 5%ミルク(TBS中)を用いて1時間、ウェルを予めブロッキングする.
2. 200μL TBSでウェルを3回洗浄する.
3. すべての阻害剤(試験化合物)、DMSO対照、および任意により他の対照化合物に対して、40μLのDKB1を加える.
4. BOウェルおよびEVウェルに、40μLのDKB2を加える.
5. 所望のプレート配置に従って、0.5μL/ウェルの阻害剤(試験化合物)を添加する.
6. ビヒクル対照ウェルに、0.5μL DMSOを添加する.
7. BOウェルおよびEVウェルに、2μL B-RAFを添加する.
8. 振盪しながら室温で10分間、阻害剤(試験化合物)と共にプレインキュベートする.
9. 500μM ATPストック(DKB中)を10μL加えて、100μMのアッセイ濃度とする.
10. TopSealを用いてプレートを密閉し、振盪しながら45分間室温でインキュベートする.
11. 200μL 0.1%Tween20/水でプレートを3回洗浄し、反応を終了させる.
12. 50μL/ウェルの抗体混合液を加え、振盪しながら室温で1時間インキュベートする.
13. 200μL 0.1%Tween20/水でプレートを3回洗浄する.
14. 1ウェル当たり100μLのDELFIA増強溶液を加え、ホイルで覆い、振盪しながら室温で30分間インキュベートする.
15. ユーロピウム法を用いて、Victorで測定する.
【0268】
ブランク(空ベクター)についての値を、すべての値から減算する。DMSO対照を100%活性に設定し、アッセイ点(応答)をDMSO対照に対する割合(%)として算出する。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータをプロットし、以下の複合法面S字状用量反応式を用いて、非線形回帰直線を算出する:
Y = Bottom + [ Top - Bottom ] / [ 1 + 10^((LogEC50 - X) * HillSlope) ]
(式中、Xは濃度の対数であり、Yは応答である)。この手順により導かれたIC50は、飽和とゼロ効果プラトーとの途中の対照蛍光値(%)をもたらす薬物濃度である。通常は、3回の独立したアッセイを行ない、平均IC50を報告する。
【0269】
生物学的方法 - アッセイB - 細胞ベースリン酸化ERKアッセイ
以下のプロトコールに従って行なった細胞ベースアッセイを用いて、化合物を評価した。
【0270】
第0日:
96ウェルプレートで、99μLの培地に突然変異型BRAF WM266.4細胞を16,000細胞/ウェル播種する。
【0271】
第1日:
1. 細胞に1μLの阻害剤(試験化合物)を加える(合計1μLの溶液).
2. 37℃で6時間、試験化合物と共に細胞をインキュベートする.
3. すべてのウェルから溶液をアスピレートして除去する.
4. ウェル当たり100μLの4%ホルムアルデヒド/0.25%Triton X-100 PBSを用いて細胞を固定する.
5. プレートを4℃にて1時間インキュベートする.
6. 固定溶液をアスピレートして除去し、300μL TBS/ウェルを加える.
7. プレートを4℃にて一晩静置する.
【0272】
第2日:
1. 200μL PBS/ウェルでプレートを2回洗浄する.
2. 100μLの5%乾燥ミルク(TBS中)でブロッキングする.
3. プレートを37℃にて20分間インキュベートする.
4. 0.1%Tween/H2Oを用いてプレートを2回洗浄する.
5. 50μLの3μg/mL一次抗体pERK(Sigma M8159)(5%ミルク粉末/TBSで希釈)を各ウェルに加える.
6. プレートを37℃にて2時間インキュベートする.
7. 0.1%Tween/H2Oを用いてプレートを3回洗浄する.
8. 50μLの0.45μg/mLユーロピウム標識抗マウス二次抗体(Perkin Elmer)を各ウェルに加える.
9. プレートを37℃にて1時間インキュベートする.
10. 0.1%Tween/H2Oを用いてプレートを3回洗浄する.
11. 100μLの増強溶液(Perkin Elmer)を各ウェルに加える.
12. プレートを室温で約10分間静置し、続いて穏やかに振盪する.
13. Victor2を用いて、ユーロピウム時間分解蛍光を測定する.
14. 0.1%Tween/H2Oを用いてプレートを2回洗浄する.
15. 200μL/ウェルの溶液を添加することにより、BCA(Sigma)を用いてタンパク質濃度を測定する.
16. プレートを37℃にて30分間インキュベートする.
17. 570nmでの吸光レベルをプレートリーダーで測定する.
【0273】
吸光度でカウントを除算することにより、ユーロピウムカウントをタンパク質レベルについて標準化することに留意されたい。
【0274】
ブランク(細胞なし)についての値を、すべての値から減算する。DMSO対照を100%活性として設定し、アッセイ点(応答)をDMSO対照に対する割合(%)として算出する。Graphpad Prismソフトウェアを用いてデータをプロットし、以下の複合法面S字状用量反応式を用いて、非線形回帰直線を算出する:
Y = Bottom + [ Top - Bottom ] / [ 1 + 10^((LogEC50 - X) * HillSlope) ]
(式中、Xは濃度の対数であり、Yは応答である)。この手順により導かれたIC50は、飽和とゼロ効果プラトーとの途中の対照蛍光値(%)をもたらす薬物濃度である。通常は、3回の独立したアッセイを行ない、平均IC50を報告する。
【0275】
生物学的方法 - アッセイC - SRB細胞増殖アッセイ(SRB GI50
細胞株(例えば、WM266.4およびA375M黒色腫細胞株;SW620結腸直腸癌細胞株)を、10%ウシ胎児血清を添加したDMEMまたはRPMI1640中、10%CO2水飽和雰囲気下で37℃にて通常通りに培養する。コンフルエントに達する前に継代培養(3〜5日間隔)することにより、培養を指数増殖相で維持する。5mLの市販のトリプシンEDTAを用いて80cm2組織培養フラスコから回収することにより、単一細胞懸濁液を調製する。5分後、剥がれた細胞を5mLの完全補充培養培地と混合し、遠心してペレットにする(1000rpm、7分間)。上清をアスピレートして除去した後、細胞ペレットを10mLの新たな培地に再懸濁し、19ゲージ注射針を通して全量を5回出し入れすることにより、細胞を完全にばらばらにする。血球計算盤を用いて、細胞濃度を測定する(1/10希釈)。細胞懸濁液を10,000〜40,000細胞/mLに希釈することにより、実施する試験の回数に対して少なくとも2倍過剰量を与える好適な体積(典型的には100〜200mL)を調製し、プログラム可能な8連ペリスタポンプを用いて96ウェルプレートに100μL/ウェルを分注して、1000〜4000細胞/ウェルとし、第12列はブランクにする。プレートをインキュベーターに24時間戻し、細胞を再び接着させる。
【0276】
試験対象の化合物を、DMSO中10mMで準備する。アリコート(24μL)を1.2mLの培養培地で希釈して200μMとし、80μLを160μLに移すことにより10段階の3倍希釈系列を作製する。8連ピペッターを用いて各希釈のアリコート(100μL)をウェルに加えることで、最後にさらに2倍希釈を行ない、100μM〜0.005μMの用量とする。第11列には、通常の培養培地のみを入れる。各化合物を4回試験し、各回は4ウェルの平均とする。
【0277】
さらに5日間生育させた後、プレートの内容物を除去し、細胞を10%トリクロロ酢酸で4℃にて30分間固定する。水道水の流水で十分にすすいだ後、プレートを乾燥させ、50μLの0.1%スルホローダミンB溶液(1%酢酸中)を室温で10分間加えることにより、染色する。染色液を捨て、1%酢酸を流して十分にすすいで、結合していない染料を除去し、乾燥させる。100μLのTrisバッファー(pH8)を加え、プレートシェーカー(約500rpm)上に10分間置くことにより、結合した染料を溶液中に回収する。プレートリーダーを用いて、各ウェルの540nmでの吸光度(存在する細胞数に比例する)を測定する。
【0278】
第12列のブランク値を平均し、これをすべての値から減算して、結果を未処理の値(第11列)に対する割合(%)として表した。そのようにして導かれた10個の値(4回測定)を薬物濃度の対数に対してプロットして、4変数ロジスティック方程式に対する非線形回帰により解析する(検査により示される場合には、拘束を設定する)。この手順により導かれるGI50は、飽和とゼロ効果プラトーとの途中の対照A540(%)をもたらす薬物濃度である。
【0279】
生物学的方法 - 異種移植研究
SW620ヒト結腸直腸癌細胞(突然変異型RAS、7×107)またはA375Mヒト黒色腫細胞(突然変異型BRAF、107)を、メスCrl:CD1-Foxn1nu無胸腺マウスの右脇腹に懸濁液(0.2mL)として皮下接種する。腫瘍体積の階層化された割り当て(allocationi)に従って、群を治療に割り振った。試験化合物を用いた治療は、細胞投与後11〜14日目に始めた。強制経口投与のために、懸濁液(DMSO:水=1:19(v/v)、10mL/kg)を投与した。対照動物には、同じ投与量のビヒクル(DMSO:水=1:19(v/v))を投与した。試験化合物を用いた治療は、1日1回24用量、継続した。
【0280】
生物学的データ - アッセイデータ
数種類の本発明の化合物、ならびに数種類の比較化合物についてのデータを、下記の表にまとめる。低いIC50/GI50値が、高い有効性を表す。
【表3】

【0281】
in vitro BRAF酵素アッセイ(アッセイA)では、本発明の化合物(約0.2〜2.3μM)および比較化合物(約0.1〜1.1μM)は、同様のBRAF IC50値を有した。
【0282】
in vitro pERK細胞ベースアッセイ(アッセイB)では、本発明の化合物(約0.02〜0.26μM)および比較化合物(約0.1〜0.6μM)は、同様のpERK IC50値を有した。
【0283】
突然変異型BRAF細胞株WM266.4およびA375Mについてのin vitro SRB細胞ベースアッセイ(アッセイC)では、本発明の化合物(WM266.4:約0.01〜0.12μM;A375M:約0.05〜0.14μM)および比較化合物(WM266.4:約0.02〜0.4μM;A375M:約0.25〜1.1μM)は、同様のGI50値を有した。特に、BB-01は最も有効性が高く(最低のGI50を有する:WM266.4、0.008μM;A375M、0.052μM)、XX-01は最も有効性が低かった(最も高いGI50を有する:WM266.4、0.39μM;A375M、1.13μM)。
【0284】
突然変異型RAS細胞株SW620についてのin vitro SRB細胞ベースアッセイ(アッセイC)では、本発明の化合物(SW620:約0.17〜1.6μM)および比較化合物(SW620:約0.45〜7μM)は、同様のGI50値を有した。
【0285】
しかしながら、in vitro突然変異型RASデータに基づけば、in vivo突然変異型RAS SW620異種移植研究において、XX-01およびXX-02がBB-02よりもよい治療有効性を有することが予測されるであろうことに留意されたい。
【0286】
同様に、in vitro突然変異型RASデータに基づけば、in vivo突然変異型RAS SW620異種移植研究において、XX-02がAA-01と同様の治療有効性を有することが予測されるであろう。
【0287】
in vitro突然変異型RASデータに基づけば、in vivo突然変異型RAS SW620異種移植研究において、特許請求された化合物(特にAA-01およびBB-02)が、比較化合物(XX-01、XX-02、XX-03、XX-04)よりも大幅に有効性が高いとは予測されないであろう。
【0288】
生物学的データ - BRAF/RAS野生型選択性データ
数種類の本発明の化合物、ならびに数種類の比較化合物についてのデータを、下記で説明した通りに図4〜10に示す。データにより、突然変異型BRAF細胞株もしくは突然変異型RAS細胞株についての選択性または選択性の欠如が示される。
【0289】
図4は、化合物AA-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、以下の通りである:(a)突然変異型BRAF(mutBRAF)細胞株のパネル:WM266.4、A375M、UACC62;(b)突然変異型RAS(mutRAS)細胞株のパネル:SW620、HCT116、およびWM1361;ならびに(c)野生型BRAFおよびRAS(wtBRAFT/RAS)細胞株のパネル:SKMEL23、KM12、およびBT474。
【0290】
図5は、化合物BB-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0291】
図6は、化合物BB-02に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0292】
図7は、比較化合物XX-01に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0293】
図8は、比較化合物XX-02に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0294】
図9は、比較化合物XX-03に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0295】
図10は、比較化合物XX-04に対する、一定範囲の細胞株のそれぞれについてのGI50とWM266.4細胞株についてのGI50との比を示す棒グラフである。一定範囲の細胞株とは、図4についてと同じである。
【0296】
これらのin vitroデータに基づけば、in vivo突然変異型RAS SW620異種移植研究において、特許請求された化合物(特にAA-01およびBB-02)が、比較化合物(XX-01、XX-02、XX-03、XX-04)よりも大幅に有効性が高いとは予測されないであろう。
【0297】
生物学的データ - 異種移植データ
数種類の本発明の化合物、ならびに数種類の比較化合物についての異種移植データを、図11〜19に示す。
【0298】
図11は、化合物AA-01を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0299】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、研究の時間スケールにわたって化合物AA-01が腫瘍体積を大幅に減少させたことを示している(例えば、約3の係数)。
【0300】
図12は、化合物BB-02を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0301】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、研究の時間スケールにわたって化合物BB-02が腫瘍体積を大幅に減少させたことを示している(例えば、約1.5の係数)。
【0302】
図13は、化合物AA-01を用いた治療および対照についての、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0303】
データは、この黒色腫細胞株について、対照と比較して、研究の時間スケールにわたって化合物AA-01が腫瘍体積を大幅に減少させたことを示している(例えば、約2.5の係数)。
【0304】
図14は、化合物BB-02を用いた治療および対照についての、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0305】
データは、この突然変異型BRAF黒色腫細胞株について、対照と比較して、研究の時間スケールにわたって化合物BB-02が腫瘍体積を大幅に減少させたことを示している(例えば、約1.5の係数)。
【0306】
図15は、比較化合物XX-01を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0307】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、比較化合物XX-01が比較的わずかな効果しか有しなかったことを示している。
【0308】
図16は、比較化合物XX-02を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0309】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、比較化合物XX-02が比較的わずかな効果しか有しなかったことを示している。
【0310】
図17は、比較化合物XX-03を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0311】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、比較化合物XX-03が比較的わずかな効果しか有しなかったことを示している。
【0312】
図18は、比較化合物XX-04を用いた治療および対照についての、突然変異型RAS細胞株SW620のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0313】
データは、この突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株について、対照と比較して、比較化合物XX-04が比較的わずかな効果しか有しなかったことを示している。
【0314】
図19は、比較化合物XX-02を用いた治療および対照についての、突然変異型BRAF細胞株A375のマウス異種移植片の相対的腫瘍体積(時間(日数)の関数として)のグラフである。
【0315】
データは、この突然変異型BRAF黒色腫細胞株について、対照と比較して、比較化合物XX-02が少なくともある程度は有効であることを示している。
【0316】
突然変異型RAS SW620異種移植片に関する腫瘍体積(治療)と腫瘍体積(対照)との比(T/C)を、以下の表に示す。低いT/Cが、高い有効性を表す。比較化合物はすべて、有効性がほとんどないかまったくないことを示すT/C比を有するが、特許請求された化合物AA-01およびBB-02は両方とも、統計学的に有意な有効性を示すT/C比を有する。
【表4】

【0317】
特許請求された化合物についてのデータにより、特許請求された化合物がBRAF阻害剤として、かつ突然変異型BRAF腫瘍(例えば、突然変異型BRAF黒色腫細胞株A375Mの異種移植片;図13および14)に対して有効であるだけでなく、驚くべき予期せぬことに、特許請求された化合物はまた、突然変異型RAS腫瘍(例えば、突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株SW620の異種移植片;図11および12)に対しても有効であることが示されている。突然変異型RAS腫瘍に対する特許請求された化合物の驚くべき予期せぬ活性は、これらの既知のまたは予期されたBRAF阻害活性からは予測することができなかった。
【0318】
比較化合物についてのデータにより、比較化合物は突然変異型BRAF腫瘍(例えば、突然変異型BRAF黒色腫細胞株A375Mの異種移植片;図19)に対してある程度まで有効ではあるものの、突然変異型RAS腫瘍(例えば、突然変異型RAS結腸直腸癌細胞株SW620の異種移植片;図15、16、17、および18)に対しては比較的わずかな効果しか有しないことが示されている。
【0319】
上記で、本発明の原理、好ましい実施形態、および操作様式を説明してきた。しかしながら、本発明は、説明された特定の実施形態に限定されると解釈すべきではない。そうではなく、上述した実施形態は、制限的ではなく例示的なものとみなされるべきであり、本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によってそれらの実施形態において変更を行なうことができることが理解されるべきである。
【0320】
参考文献
本発明および本発明が関わる技術分野の技術水準を完全に説明ならびに開示するために、多数の特許および刊行物を本明細書中で引用している。これらの参考文献の完全な引用を、以下に提示する。これらの参考文献のそれぞれが、個々の参考文献が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、本明細書中の開示にその全体が参照により組み入れられる。
【0321】
Bos, 1989, “ras oncogenes in human cancer: a review”, Cancer Res., Vol. 49, pp. 4682-4689.
Downward, 2003, “Targeting RAS signalling pathways in cancer therapy”, Nat. Rev. Cancer, Vol. 3, pp. 11-22.
Garnett et al., 2004, “Guilty as charged: B-RAF is a human oncogene”, Cancer Cell, Vol. 6, pp. 313-319.
Gray Schopfer et al., 2007, “Melanoma biology and new targeted therapy”, Nature, Vol. 445, pp. 851-857.
Niculescu-Duvaz et al., 2006, “Imidazo[4,5-b]pyridine-2-one and oxazolo[4,5-b]pyridine-2-one compounds and analoges thereof as therapeutic compounds”, 国際公開第2006/043090 A1号(2006年4月27日公開).
Niculescu-Duvaz et al., 2007, “Imidazo[4,5-b]pyridine-2-one and oxazolo[4,5-b]pyridine-2-one compounds and analoges thereof as cancer therapeutic compounds”, 国際公開第2007/125330 A1号(2007年11月8日公開).
Niculescu-Duvaz et al., 2009, “Aryl-quinolyl compounds and their use”, 国際公開第2009/130487 A1号(2009年10月29日公開).
Solit et al., 2006, “BRAF mutation predicts sensitivity to MEK inhibition”, Nature, Vol. 439, pp. 358-362.
Springer et al., 2009, “Pyrido[2,3-b]pyrazine-8-substituted compounds and their use”, 国際公開第2009/077766 A1号(2009年6月25日公開).
Wellbrock et al., 2004, “The RAF proteins take centre stage”, Nature Reviews Molecular Cell Biology, Vol. 5, pp. 875-885.
Young et al., 2009, “Ras signaling and therapies”, Adv. Cancer Res., Vol. 102, pp. 1-17.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される化合物:
【化1】

[式中、
-J-は独立に、
【化2】

であり;
-Rは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり;
-Rはフェニル環のメタ位またはパラ位に位置する]。
【請求項2】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化3】

[式中、
-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり、
-RAはフェニル環のメタ位またはパラ位に位置する]。
【請求項3】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化4】

[式中、
-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである]。
【請求項4】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化5】

[式中、
-RAは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである]。
【請求項5】
-RAが独立に、-H、-Me、-F、または-Clである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
-RAが独立に、-Hまたは-Meである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
-RAが独立に-Hである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
-RAが独立に-Meである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
-RAが独立に、-Fまたは-Clである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
-RAが独立に-Fである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
-RAが独立に-Clである、請求項2〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
以下の化合物(すなわち、AA-01)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化6】

【請求項13】
以下の化合物(すなわち、AA-02)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化7】

【請求項14】
以下の化合物(すなわち、AA-03)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化8】

【請求項15】
以下の化合物(すなわち、AA-04)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項2に記載の化合物:
【化9】

【請求項16】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項1に記載の化合物:
【化10】

[式中、
-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iであり、
-RBはフェニル環のメタ位またはパラ位に位置する]。
【請求項17】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項16に記載の化合物:
【化11】

[式中、
-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである]。
【請求項18】
以下の式の化合物、ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項16に記載の化合物:
【化12】

[式中、
-RBは独立に、-H、-Me、-F、-Cl、-Br、または-Iである]。
【請求項19】
-RBが独立に、-H、-Me、-F、または-Clである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
-RBが独立に、-Hまたは-Meである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
-RBが独立に-Hである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
-RBが独立に-Meである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
-RBが独立に、-Fまたは-Clである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
-RBが独立に、-Fである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
-RBが独立に-Clである、請求項16〜18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
以下の化合物(すなわち、BB-01)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項16に記載の化合物:
【化13】

【請求項27】
以下の化合物(すなわち、BB-02)ならびに製薬上許容されるその塩、水和物、および溶媒和物から選択される、請求項16に記載の化合物:
【化14】

【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物、および製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む組成物。
【請求項29】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物と、製薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを混合するステップを含む、組成物の調製方法。
【請求項30】
療法によるヒトまたは動物体の治療方法で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
癌の治療方法で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
突然変異型RAS癌の治療方法で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
以下の腫瘍の治療方法で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物:
膵臓癌;甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);結腸直腸癌;精上皮腫;骨髄異形成症候群(MDS);肺癌(例えば、肺腺癌);肝臓癌;白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));黒色腫;膀胱癌;腎臓癌;乳癌、卵巣癌、胆管癌、または神経膠腫。
【請求項34】
以下の腫瘍の治療方法で使用するための、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物:
突然変異型RAS膵臓癌;突然変異型RAS甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);突然変異型RAS結腸直腸癌;突然変異型RAS精上皮腫;突然変異型RAS骨髄異形成症候群(MDS);突然変異型RAS肺癌(例えば、肺腺癌);突然変異型RAS肝臓癌;突然変異型RAS白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));突然変異型RAS黒色腫;突然変異型RAS膀胱癌;突然変異型RAS腎臓癌;突然変異型RAS乳癌、突然変異型RAS卵巣癌、突然変異型RAS胆管癌、または突然変異型RAS神経膠腫。
【請求項35】
癌の治療のための医薬品の製造における、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項36】
突然変異型RAS癌の治療のための医薬品の製造における、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項37】
以下の腫瘍の治療のための医薬品の製造における、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物の使用:
膵臓癌;甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);結腸直腸癌;精上皮腫;骨髄異形成症候群(MDS);肺癌(例えば、肺腺癌);肝臓癌;白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));黒色腫;膀胱癌;腎臓癌;乳癌、卵巣癌、胆管癌、または神経膠腫。
【請求項38】
以下の腫瘍の治療のための医薬品の製造での、請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物の使用:
突然変異型RAS膵臓癌;突然変異型RAS甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);突然変異型RAS結腸直腸癌;突然変異型RAS精上皮腫;突然変異型RAS骨髄異形成症候群(MDS);突然変異型RAS肺癌(例えば、肺腺癌);突然変異型RAS肝臓癌;突然変異型RAS白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));突然変異型RAS黒色腫;突然変異型RAS膀胱癌;突然変異型RAS腎臓癌;突然変異型RAS乳癌、突然変異型RAS卵巣癌、突然変異型RAS胆管癌、または突然変異型RAS神経膠腫。
【請求項39】
治療上有効量の請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む治療方法であって、該治療が癌の治療である、上記方法。
【請求項40】
治療上有効量の請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む治療方法であって、該治療が突然変異型RAS癌の治療である、上記方法。
【請求項41】
治療上有効量の請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む治療方法であって、該治療が以下の腫瘍の治療である、上記方法:
膵臓癌;甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);結腸直腸癌;精上皮腫;骨髄異形成症候群(MDS);肺癌(例えば、肺腺癌);肝臓癌;白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));黒色腫;膀胱癌;腎臓癌;乳癌、卵巣癌、胆管癌、または神経膠腫。
【請求項42】
治療上有効量の請求項1〜27のいずれか1項に記載の化合物を、治療を必要とする対象に投与するステップを含む治療方法であって、該治療が以下の腫瘍の治療である、上記方法:
突然変異型RAS膵臓癌;突然変異型RAS甲状腺癌(例えば、濾胞腺癌;未分化乳頭癌);突然変異型RAS結腸直腸癌;突然変異型RAS精上皮腫;突然変異型RAS骨髄異形成症候群(MDS);突然変異型RAS肺癌(例えば、肺腺癌);突然変異型RAS肝臓癌;突然変異型RAS白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML));突然変異型RAS黒色腫;突然変異型RAS膀胱癌;突然変異型RAS腎臓癌;突然変異型RAS乳癌、突然変異型RAS卵巣癌、突然変異型RAS胆管癌、または突然変異型RAS神経膠腫。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2013−518089(P2013−518089A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550510(P2012−550510)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000106
【国際公開番号】WO2011/092469
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511085460)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (2)
【出願人】(508109782)インスティチュート オブ キャンサー リサーチ:ロイヤル キャンサー ホスピタル (3)
【Fターム(参考)】