説明

1つ或いはそれ以上のドーナツ形をしたバルーンを備えた小線源照射療法装置

実施形態は、例えば癌のような組織の除去の後の空洞のような、体に近い組織への照射の制御された適用のためのカテーテル装置および方法へ指し示されている。このカテーテル装置は、装置の末端シャフト部分上に1つ或いはそれ以上の膨張可能なドーナツ形をしたバルーンを有する。バルーンは、末端シャフト部分を取り囲み、1つ或いはそれ以上の放射線ガイド部材から離される。好ましくは、少なくとも1つの放射線ガイド部材が、非対称の照射を与えるように、中央長手軸から離れて延びている。複数の接続部材が、複数の放射線ガイド部材とドーナツ形をしたバルーンとの間で延びても良い。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
[本発明の分野]
この発明は、一般に、医療処置装置およびその使用方法の分野に関する。特に、この発明は、癌性の、前癌性の、或いは他の組織が除去された場所のような体腔を取り囲む組織への照射のための装置および方法に関する。
【0002】
[本発明の従来技術]
確かな健康状態の診断および処置において、生検の実施がしばしば所望される。この生検において、組織の標本或いはサンプルが、病理学上の試験、テスト、および分析のため、取り除かれる。生検は、典型的には、除去された組織によって先に占められていた空間をふさぐ生検空洞を結果として生じる。知られているように、生検によって組織サンプルを得ることおよびそれに続く試験は、癌および他の悪性腫瘍の診断に典型的に与えられ、或いは、疑わしい病変或いは腫瘍が悪性ではないことを確かにするために典型的に与えられる。生検によって明らかにされた癌の処置は、この生検サイトの周りの組織の引き続く除去を含み、患者の体に広げられた空洞を残す。癌にかかった組織は、化学療法によって、或いは熱処置(例えば、局所加熱、低温療法、および、組織を加熱、冷却、或いは冷凍する他の処置)によって、放射線を与えることによってしばしば処置される。
【0003】
癌の処置は、当然の空洞、すなわち組織が除去された患者の体内の空洞に向けられ、典型的には、生検或いは外科手術の間に癌性の組織の結果として起こる除去に向けられる。例えば、米国特許No6,923,754、米国特許出願シリアルNo10/849,410、米国特許出願シリアルNo11/593,784、および米国特許出願シリアルNo11/716,758の開示は、全て、参照によってその全てがここに組み込まれ、癌性組織の除去による空洞内へ埋め込むための装置を開示している。この装置は、組織の周りへ放射線を与えるために使用可能である。組織の除去の後に残る体腔近くの癌を処置するために使用される放射線治療の1つの装置は、処置される場所の近くに放射線源が配置される“小線源照射療法”である。
【0004】
癌性の或いは他の組織の外科的な除去による空洞の周りの組織の処置のための上述した埋め込み可能な装置であるラボック(Lubock)は、空洞内への配置のために設けられた膨張可能なバルーンを有する。このような装置は、放射線療法、化学療法、および熱療法の1つ或いはそれ以上を組織が除去された空洞を囲む組織に与えるために使用される。この装置の運搬管腔は、固体或いは液体放射線源を受け入れる。放射線処置は、放射性“核種”のような放射性材料を運搬管腔内に配置することによって、装置のバルーンに近い組織へ与えられる。このような処置は、所望される場合繰り返される。
【0005】
“体腔への非対称照射装置”と題された2006年11月6日の米国特許出願シリアルNo11/593,784は、中心長手軸から離れて延び且つ膨張可能な部材すなわちバルーンによって取り囲まれた複数の個別の管状部材を有する小線源照射療法装置について開示している。このような装置の一例として、Contura(登録商標)マルチ管腔放射線バルーン(MLB)カテーテルが、本出願人であるSenoRx社によって現在販売されている。
【0006】
生検或いは乳腺腫瘤摘出のような他の外科手術の結果の組織空洞は、典型的に、そのサイズおよび形において常に均一或いは標準的ではなく、“ホットスポット”および比較的低い線量の領域を含む、組織の周りの異なる領域へ与えられた線量において、放射線処置がしばしば異なる結果に終わる。しかしながら、空洞の内側組織をバルーンのような膨張された部材の周りに適合させることにより、より均一すなわち制御された放射が組織へ与えられることができる。
【0007】
しかしながら、予想できる膨張サイズおよび形を有する丈夫で膨張可能なバルーンを形成することは、特に、約0.5インチから最大径で約4インチまでの範囲で、典型的には約2インチの胸部生検/乳腺腫瘤摘出空洞に適したバルーンサイズにおいて、問題を含む可能性がある。
【0008】
[本発明の要約]
本発明は、延長されたシャフト、末端シャフト部分、この末端シャフト部分を取り囲む1つあるいはそれ以上のドーナツ形をした膨張可能な部材、および、末端シャフト部分の長手方向に沿って放射線源を配置するための内側ガイドすなわち管腔を有する少なくとも1つの放射線ガイド部材、を有する小線源照射療法カテーテルへ向けられる。好ましくは、1つ或いはそれ以上のドーナツ形をしたバルーンは、末端シャフト部分の長さより短い。これら1つ或いはそれ以上のバルーンは、バルーンカテーテルへ、好ましくは1つ或いはそれ以上の放射線ガイド部材或いはカテーテルの末端チップへ固定される。この接続は、固く或いは柔らかく、しかし、アセンブリは、小さな困難性を伴って患者の組織を通した前進のため適していなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、放射源を受けるガイド部材を取り囲むふくれあがった状態のドーナツ形をしたバルーンを示す本発明の特徴を具体化するカテーテルの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示された線2−2に沿ったカテーテルの先端シャフト部分の縦断面図である。
【図3】図3は、図2に示された線3−3に沿った図2に示されたようなカテーテルの横断面図である。
【図4】図4は、ドーナツ形をしたバルーンとカテーテルシャフトとの間の異なる接続を有する、図1に示された断面図と同様の縦断面図である。
【図5A】図5Aは、ドーナツ形をしたバルーンの他の形およびサイズを示す概略横断面図である。
【図5B】図5Bは、ドーナツ形をしたバルーンの他の形およびサイズを示す概略横断面図である。
【図5C】図5Cは、ドーナツ形をしたバルーンの他の形およびサイズを示す概略横断面図である。
【0010】
[本発明の実施例の詳細な説明]
本発明は、患者の体腔の処置のための装置および方法を提供する。特に、本発明の特徴を有する装置および方法は、生検サイト内への、或いは患者の体から癌性の組織を除去した後に残る空洞内への放射線の射出に使われる。
【0011】
図1−3は、本発明の特徴を具体化する小線源照射療法バルーンカテーテル10を示す。このバルーンカテーテル10は、ドーナツ形をしたバルーン12によって囲まれた末端シャフト部分11を有する。複数の個々の管状放射線ガイド部材13が、末端シャフト部分11の長手方向に沿って延びている。ドーナツ形をしたバルーン12は、接続要素14によって、個々の管状放射線ガイド部材13へ固定されている。バルーン12は、バルーン12の内部に流体を流すように接続された管状膨張部材15を通して膨張流体で満たされる。複数の管状ガイド部材13は、内側ガイド、すなわち管腔16を有する。管腔16は、放射性粒体(図示せず)のような放射線源を受け入れて、この放射線源を末端シャフト部分11に沿ったガイド内の所望する位置へガイドする。複数の接続要素14は、バルーン12或いは管状部材の延長であり、或いは分離部材或いは接着剤である。中央管状放射線ガイド部材17は、内側ガイド、すなわち管腔18とともに供給される。管腔18は、処置の間中、放射線源を受け入れて、この放射線源を末端シャフト部分11の長さ19内の所望する箇所へガイドする。上記カテーテルのさらなる詳細は、参考としてここに組み込まれた上で参照された出願内に見出される。その中に放射線源が配置された末端シャフト部分18の長さは、線19によって示されている。管状ガイド部材14および16の末端は、カテーテルの末端で末端チップ20に固定されている。これら管状ガイド部材は、患者の中へ進んだとき、カテーテルの末端シャフト部分11へ支持を与えるのに十分に強く形成されている。代わりに、少なくとも末端シャフト部分に沿って延び且つ末端チップ20へ固定された末端を有する1つ或いはそれ以上の長手方向支持部材(図示せず)が設けられる。複数の吸引ラインが、末端シャフト部分内へ延び、ガス、流体、および/或いは有機堆積物を処置空洞から排出する。図面では唯一のドーナツ形をしたバルーン12が示されているが、末端シャフト部分は、処置位置の長さ方向に沿ってこのようなバルーンを複数備えても良い。このような複数のドーナツ形をしたバルーンは、長手方向に互いに離間し、或いは互いに接触している。さらに、複数のドーナツ形をしたバルーンは、拡張可能な部材を形成するように、互いに固定される。
【0012】
図4は、バルーン12をカテーテルへ接続するための他の構造を示す。この実施例において、複数の接続部財21が、バルーン12を末端チップ20へ固定する。複数の接続部材21は、前述の出願で説明された生検サイトへ進まれたとき、末端シャフト部分11に置かれるように、好ましくは、長手方向に十分に柔らかい。
【0013】
図5A−5Cは、本発明のカテーテルで用いられる他のバルーン形状およびサイズを示す。図5Aにおいて、バルーンは、平らな内面および湾曲された外面を有する。図5Bは、正方形の横断面を有するバルーンを図示している。図5Cは、矩形の横断面を有するバルーンを図示している。
【0014】
複数の管状ガイド部材13および17は、カテーテルの基端部で、アダプター(図示せず)へ隣接して延びている。代わりに、カテーテル10は、複数の管腔を有する基端シャフト部分(図示せず)を有しても良い。これら基端シャフト部分の複数の管腔は、末端シャフト部分内に配置された複数の管状ガイド内の複数の管腔に対して流体を流通させるように接続され、1つ或いはそれ以上の放射線源を受け入れるように構成され、この放射線源を複数の管状ガイド部材12および16の複数の内部管腔16および18へガイドする。これらの特徴は、共に出願中のシリアル番号11/593,784およびシリアル番号11/716,758の出願に示されている。
【0015】
管状部材12および16は、共に出願中の出願(シリアル番号11/593,784およびシリアル番号11/716,758)に示された支持要素を有する。この支持要素は、処置位置の長さ方向に沿って延び、複数の管状放射線ガイド部材を受け入れて支持するようにデザインされた複数の区画された部屋を有する。
【0016】
処置位置を通って延びた全ての管状ガイド部材は、必ずしも特別な照射手続で使用される必要はなく、例えば、放射カテーテル10のバルーン12が所望する位置になく且つカテーテルの回転が適切ではなく所望されるものではない場合、医者が必要とする場合に使用可能である。
【0017】
小線源照射療法装置のための放射線源は、好ましくはロッドの末端にある放射線粒であるが、この放射線源は、固体或いは液体の放射線源であっても良い。本発明の特徴を具体化する装置10とともに使用するのに適した固体放射性核種は、現在、アイオワ州オレンジシティーのMed−Tecから入手可能な小線源照射療法放射線源として一般に入手可能である。適した液体放射線源は、例えば、放射性ヨウ素同位元素(例えば、I125或いはI131)を含む液体、固体同位元素のスラリー、例えば、198Au或いは169Yb、或いは放射性同位元素を含むゲルを含む。放射線源は、通常、患者の体腔或いは他の箇所内への配置の後で、カテーテル装置10内へ装填される。
【0018】
種々の装置要素は、少なくとも部分的に、親水性材料のような潤滑性のコーティングを施すことができる。この潤滑性のコーティングは、装置10の挿入および取り出しの間の粘着や摩擦を減少するため、好ましくは、延長シャフト或いは管状部材、およびドーナツ形をしたバルーンへ与えられる。AST、Surmodics、TUAシステム、Hydromer、或いはSTSバイオポリマーによって提供された親水性コーティングが適している。装置10の表面は、延長された処置の間の汚染の伝達の危険を減少するように、装置10の全て或いは一部をカバーする抗菌性のコーティングを有しても良い。この抗菌性のコーティングは、好ましくは、親水性のキャリア内へ含浸された銀イオンを含む。代わりに、この銀イオンは、イオンビーム堆積によって装置10の表面に埋め込まれる。この抗菌性のコーティングは、クロルヘキサダイン、ベンジルクロライド、或いは親水性コーティング内に含浸された他の適した生体適合抗菌性材料のような殺菌剤或いは消毒薬であることもできる。Spire、AST、Algon、Surfacine、Ion Fusion、或いはBacterin Internationalによって供給されたような抗菌性のコーティングが適している。代わりに、抗菌性のコーティングによってカバーされた袖口部材が、装置10が患者の皮に入る点で、運搬装置10の延長されたシャフトに設けられても良い。
【0019】
バルーン11は、CT、X線、或いは透視法のイメージングの間の検出を容易にするため、放射線不透過性の膨張材料で満たされても良い。このようなイメージングは、医者や他のスタッフが、バルーンのサイズや形を検出すること、およびバルーンが所望する位置に適切に配置されたか否かを検出することを許容する。代わりに、バルーンの内側層の外面が放射線不透過性の材料で少なくとも部分的に被覆されても良い。
【0020】
この装置10は、共に出願中の出願を参照して前もって説明された方法で、患者の体腔、例えば患者の胸の中の生検或いは乳腺腫瘤摘出サイトを処置するために使用されても良い。通常、カテーテルの基端部は、バルーンが膨張されたとき、手続きの間中、患者の外部に延びている。
【0021】
胸に埋め込むための放射線バルーンカテーテルは、一般に、約6インチから約12インチ(15.2−30.5cm)の長さ、典型的に、約10.6インチ(27cm)の長さである。シャフトの直径は、約0.1インチから約0.5インチ(2.5−12.7mm)、好ましくは、約0.2インチから約0.4インチ(5.1−10.2mm)、典型的には、0.32インチ(8mm)である。個々の放射線管腔は、約0.02インチから約0.15インチ(0.5−3.8mm)、好ましくは、約0.04インチから約0.1インチ(1−1.5mm)である。バルーンは、横寸法、例えば外径で、約0.5インチから約4インチ(1.3−10.2cm)、典型的には、約1インチから約3インチ(2.5−7.2cm)の膨張された形状に形成されている。
【0022】
本発明の特定の形がここでは図示されて説明されたが、本発明に対して種々の変形や改良をできることが明白である。ここでは説明されていない範囲において、カテーテル装置の種々の要素が、同様の装置で使用されている従来の材料から形成されても良い。さらに、本発明の実施例の個々の特徴が、いくつかの図面に示されているが、当業者は、本発明の個々の実施例の特徴を他の実施例のいくつかの特徴或いは全ての特徴と組み合わせ可能であることを認識している。従って、本発明は、図示された特定の実施例に限定するつもりはない。上で参照された全ての特許および全ての特許出願は、その全体が参照によってここに組み込まれる。さらに、小線源照射療法カテーテルの詳細は、参照によってここに組み込まれた特許および出願内に見出せる。
【0023】
“要素”“部材”“要素”“装置”“手段”“部分”“部位”“ステップ”などの言葉、および、ここで使用されたときに同じ意味の単語は、以下の特許請求の範囲が、特別な構造或いは特別な作用を参照することなく、特別な機能によって従わされた“手段”或いは“ステップ”という言葉を特別に使うことなく、35U.S.C§112(6)の規定にたよるように解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端シャフト部分およびこの末端シャフト部分の末端の末端チップを有する延長されたシャフトと、
上記末端シャフト部分の長手方向に沿って延設され、放射線源を受け入れてこの放射線源の前進を容易にするように構成された内側ガイドを有する少なくとも1つの放射線ガイド部材と、
上記放射線ガイド部材のまわりに配置された少なくとも1つのドーナツ形をした膨張可能な部材と、
を有する小線源照射療法装置。
【請求項2】
上記膨張可能な部材はバルーンである請求項1の小線源照射療法装置。
【請求項3】
上記バルーンは、上記放射線ガイド部材の1つ或いはそれ以上へ固定されている請求項2の小線源照射療法装置。
【請求項4】
上記バルーンは、上記末端チップへ固定されている請求項2の小線源照射療法装置。
【請求項5】
上記バルーンは、複数の接続部材或いは複数の支柱によって上記末端チップへ固定されている請求項6の小線源照射療法装置。
【請求項6】
上記末端シャフト部分の長手方向に沿って延びた複数の放射線ガイド部材を有する請求項1の小線源照射療法装置。
【請求項7】
放射線源が上記放射線ガイド部材内に配置されたとき、非対称の照射を与えるように、中央長手軸から離れて延びた少なくとも1つの放射線ガイド部材を有する請求項1の小線源照射療法装置。
【請求項8】
上記少なくとも1つの放射線ガイド部材は管状部材である請求項7の小線源照射療法装置。
【請求項9】
複数のドーナツ形をした膨張可能な部材が上記末端シャフト部分に設けられている請求項1の小線源照射療法装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2011−527600(P2011−527600A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517415(P2011−517415)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/003980
【国際公開番号】WO2010/005559
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510285997)セノアールエックス,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】