説明

1以上のカロテノイドの水性懸濁液及び粉末製剤の製造方法

本発明は、a)少なくとも1種のカロテノイド、b)少なくとも1種の加工デンプン、及びc)ショ糖を含む、1種以上のカロテノイドの水性懸濁液及び粉末製剤を製造する方法に関する。本発明は、懸濁液又は粉末製剤が、水性懸濁液の乾燥重量又は粉末製剤の総重量に対して、1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、且つカロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上のカロテノイド、特にβ−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択されるカロテノイドの水性懸濁液及び粉末形態の製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイド類の物質は、2つの主な群であるカロテンとキサントフィルに分類される。たとえば、β−カロテン又はリコピンのような純粋なポリエン炭化水素であるカロテンは、たとえば、ヒドロキシル基、エポキシ基及び/又はカルボニル基のような酸素官能性も有するキサントフィルとは異なる。後者の群の典型的な代表例は、特に、アスタキサンチン、カンタキサンチン、ルテイン及びゼアキサンチンである。
【0003】
酸素含有カロテノイドにはまた、シトラナキサンチン及びエチルβ−アポ−8’−カロテノエートも含まれる。
【0004】
酸素含有カロテノイドは自然界に広く存在し、特に、トウモロコシ(ゼアキサンチン)、インゲン(ルテイン)、パプリカ(カプサンチン)、卵黄(ルテイン)及びエビとサケ(アスタキサンチン)に存在し、これらの食材にその特徴的な色を付与する。
【0005】
合成によって得ることも、天然物から単離することもできるこれらのポリエンは、ヒトの食品業界及び動物の飼料業界にとって、及び医薬品業界にとっての重要な着色料及び活性物質であり、アスタキサンチンの場合のように、サケにおけるプロビタミンA活性を持つ活性物質である。
【0006】
しかしながら、カロテン及びキサントフィルの双方は、水に不溶である一方で、油脂及び油における溶解性がわずかに低いことがわかっている。粗い結晶形態では、物質は保存安定性がなく、乏しい着色結果しか与えないので、この限定された溶解性及び酸化に対する大きな感受性が、ヒトの食品及び動物の飼料の着色において、化学合成から得られる相対的に粗い粒状生成物を直接使用することの妨げとなっている。カロテノイドを実際に使用するのに不利なこれらの作用は水性媒体で特に顕著である。
【0007】
ヒトの食品の直接的な着色における改善されたカラーイールドは、活性物質が微粉砕された形態であり、適宜、保護コロイドによって酸化から保護される特別に製造された製剤によってのみ達成することができる。さらに、動物の飼料においてこれらの製剤を使用することにより、カロテノイド及びキサントフィルの生物学的利用能をより高め、間接的に、たとえば、卵黄又は魚の色素沈着における着色効果を改善する。
【0008】
カラーイールドを改善するため及び吸収性又は生物学的利用能を高めるための種々の方法が記載されており、それらはいずれも活性物質の結晶のサイズを小さくし、その粒子を10μm未満の範囲のサイズにすることを目的とする。
【0009】
特に、非特許文献1、特許文献1及び特許文献2に記載された多数の方法は、コロイドミルを用いてカロテノイドを粉砕し、2〜10μmの粒径を得ている。
【0010】
たとえば、特許文献3又は特許文献4に記載されているような乳化/噴霧乾燥を組み合わせた多数の方法も存在する。
【0011】
特許文献5によれば、微粉砕された粉末形態でのカロテノイド生成物は、高温にて、適宜、高圧下で、揮発性の水混和性有機溶媒にカロテノイドを溶解し、保護コロイドの水溶液と混合することによってカロテノイドを沈殿させ、次いで噴霧乾燥することによって製造される。
【0012】
微粉砕された粉末形態でのカロテノイド生成物を製造する類似の方法は、水非混和性の溶媒の使用と共に特許文献6に記載されている。
【0013】
特許文献7には、脂質溶解性の活性物質のための保護コロイドとして部分的に分解した大豆タンパク質を使用することが記載されている。本明細書で開示する大豆タンパク質は0.1〜5%の分解度を有する。
【0014】
特許文献8には、保護コロイドとしての乳糖と共に大豆タンパク質を使用することによるカロテノイド乾燥粉末の製造が記載されている。
【0015】
冒頭で言及した従来技術においてすでに多数記載されたカロテノイド製剤にもかかわらず、たとえば、錠剤における高い生物学的利用能に関連するものであれ、特にさらに良好な保存安定性に関連するものであれ、これらの製剤を改善するニーズが継続している。
【特許文献1】WO 91/06292
【特許文献2】WO 94/19411
【特許文献3】DE-A-12 11 911
【特許文献4】EP-A-0 410 236
【特許文献5】EP-B-0 065 193
【特許文献6】EP-A-0 937 412
【特許文献7】DE-A-44 24 085
【特許文献8】DE-A-101 04 494
【非特許文献1】Chimia 21, 329 (1967)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、前述の要件を満たすカロテノイド含有製剤を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本目的は、
a)少なくとも1種のカロテノイド、
b)少なくとも1種の加工デンプン、及び
c)ショ糖
を含む水性のカロテノイド含有懸濁液であって、
該懸濁液が、水性懸濁液の乾燥物質に対して、1〜25重量%の、好ましくは2〜20重量%の特に好ましくは5〜15重量%の、非常に特に好ましくは8〜13重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、且つ、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80、好ましくは1:3〜1:40、特に好ましくは1:4〜1:18、非常に特に好ましくは1:5〜1:10である、上記水性カロテノイド含有懸濁液によって本発明に従って達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に好適なカロテノイドには、α−及びβ−カロテン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、カプサンチン、ビキシン、β−アポ−4−カロテナール、β−アポ−8−カロテナール及びβ−アポ−8−カロテン酸エステル又はそれらの混合物が挙げられる。好ましいカロテノイドは、β−カロテン、β−クリプトキサンチン、リコピン、ルテイン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、及びカンタキサンチンである。特に好ましいカロテノイドは、β−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン、及びリコピン、又はそれらの混合物から成る群から選択されるものであり、非常に特に好ましいのは、β−カロテン、リコピン及びルテイン又はそれらの混合物であり、とりわけβ−カロテンである。
【0019】
加工デンプンは、化学的に又は酵素的に製造されたデンプンの変換生成物を意味する。この関連における可能性のあるものは、デンプンエーテル、デンプンエステル又はリン酸デンプンである。この群の好ましい代表例は、デンプンエステル、特に、オクテニルコハク酸デンプン、たとえば、National Staarch製のCapsul(登録商標)(オクテニルコハク酸デンプンナトリウム)である。
【0020】
水性懸濁液の乾燥物質に対する加工デンプンの含有量は、5〜50重量%、好ましくは5〜30重量%、特に好ましくは8〜26重量%である。
【0021】
本発明の水性懸濁液の好ましい実施形態は、ナノ粒子としての少なくとも1種のカロテノイドを含む。
【0022】
ナノ粒子は、0.02〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.05〜20μm、非常に特に好ましくは0.05〜5μm、とりわけ0.05〜1.0μmの、Fraunhofer回折により測定される平均粒径D[4.3]を有する粒子を意味する。用語D[4.3]は、体積加重平均直径を言う(Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UKに関するハンドブックを参照のこと)。
【0023】
本発明の水性懸濁液のさらに好ましい実施形態は、さらに、水性懸濁液の乾燥物質に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.8〜2.5重量%、非常に特に好ましくは1〜2重量%の1以上の抗酸化剤を成分d)として含む。好適な抗酸化剤の例には、α−トコフェロール、t−ブチルヒドロキシトルエン、t−ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル又はエトキシキン又はそれらの混合物が挙げられる。好ましい抗酸化剤は、α−トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル又はそれらの混合物である。
【0024】
微生物による分解に対する活性物質の安定性を高めるために、たとえば、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、ソルビン酸又は安息香酸又はそれらの塩のような防腐剤を製剤に添加することが好都合であり得る。
【0025】
本発明の水性懸濁液は、10〜80重量%、好ましくは30〜75重量%、特に好ましくは50〜75重量%の固形分を含む。
【0026】
加工デンプンに加えて、本発明の水性懸濁液及びそれから製造される粉末形態の製剤は、さらに保護コロイドを含んでもよい。この目的のために好適な物質の例は以下のとおりである。
【0027】
ウシ、ブタ又は魚のゼラチン、特に、0〜250の範囲のBloom数を有する、酸又は塩基で分解したゼラチン、非常に特に好ましくはゼラチンA100、A200、A240、B100、及びB200、並びにBloom数0及び分子量15000〜25000 Dを有する低分子量の、酵素で分解したゼラチン種、たとえば、Collagel A及びGelitasol P(Stoess, Eberbach製)、並びにこれらのゼラチン種の混合物。
【0028】
デンプン、デキストリン、ペクチン、アラビアゴム、リグニンスルホネート、キトサン、ポリスチレンスルホネート、アルギネート、カゼイン、カゼイネート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、又はこれらの保護コロイドの混合物。
【0029】
植物タンパク質、たとえば、大豆、コメ及び/又はコムギのタンパク質、これらの植物タンパク質が部分的に分解された形態又は未分解の形態は可能である。
【0030】
本発明はまた、
i)少なくとも1種の加工デンプンb)及びショ糖c)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、及び
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程
を含み、懸濁液が工程段階ii)の後、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、水性カロテノイド含有懸濁液の製造方法にも関する。
【0031】
本発明は同様に、
i)加工デンプンb)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、及び
iii)微粒子懸濁液をショ糖c)と混合する工程
を含み、懸濁液が工程段階iii)の後、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、水性カロテノイド含有懸濁液の製造方法にも関する。
【0032】
活性物質[1以上のカロテノイド]はこの場合、粉砕する前に、好ましくは結晶形態で前述の保護コロイド溶液に懸濁される。
【0033】
懸濁した粒子の粉砕は、本発明において、特に、高圧ホモジナイザーを使用して、又は好ましくは粉砕によって行うことができる。
【0034】
工程段階ii)における粉砕は、それ自体既知の方法、たとえば、ボールミルを用いてさらに行うことができる。これは、使用するミルの型によるが、粒子が0.02〜100μm、好ましくは0.05〜50μm、特に好ましくは0.05〜20μm、非常に特に好ましくは0.05〜5μm、とりわけ0.05〜1.0μmの、Fraunhofer回折により測定される平均粒径D[4.3]を有するまで粉砕することを必要とする。用語D[4.3]は、体積加重平均直径を言う(Malvern Mastersizer S, Malvern Instruments Ltd., UKに関するハンドブックを参照のこと)。
【0035】
そのために使用される粉砕及び装置のさらなる詳細は、特に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Sixth Edition, 2000, Electronic Release, Size Reduction, Chapter 3.6.: Wet Grinding及びEP-A-0 498 824に見られる。
【0036】
粉砕工程後の粉砕したカロテノイド粒子の結晶化度は、80%より高く、好ましくは90%より高く、特に好ましくは98%より高い。
【0037】
成分a)〜c)及び使用するそれらの量に関する好ましい実施形態は冒頭での説明において見られる。
【0038】
水性カロテノイド含有懸濁液を製造するための本発明の方法の特に好ましい実施形態は、
i)β−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択される1以上のカロテノイドa)を、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムb)の水性の分子溶液又はコロイド溶液に懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、及び
iii)粉砕した懸濁液をショ糖c)と混合する工程
を含み、懸濁液は工程段階iii)の後、水性懸濁液の乾燥物質に対して8〜13重量%の、β−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比は1:5〜1:10である。
【0039】
本発明はさらに
i)少なくとも1種の加工デンプンb)及びショ糖c)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、及び
iii)続いて、適宜、被覆材の存在下で懸濁液を乾燥粉末に変換する工程
を含み、懸濁液が工程段階ii)において、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、少なくとも1種のカロテノイドを含む粉末形態の製剤を製造する方法に関する。
【0040】
本発明はさらに、
i)加工デンプンb)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、
iii)粉砕した懸濁液をショ糖c)と混合する工程、及び
iv)続いて、適宜、被覆材の存在下で懸濁液を乾燥粉末に変換する工程
を含み、懸濁液が工程段階iii)の後、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、少なくとも1種のカロテノイドを含む粉末形態の製剤を製造する方法に関する。
【0041】
乾燥粉末への変換はさらに、適宜、被覆材の存在下においても、とりわけ、噴霧乾燥、噴霧冷却、改変噴霧乾燥、凍結乾燥又は流動床における乾燥によって行うことができる。好適な被覆材には、トウモロコシデンプン、シリカ又は他に、リン酸三カルシウムが挙げられる。
【0042】
噴霧冷却及び改変噴霧乾燥のさらなる詳細は、WO91/06292(5〜8頁)に見られる。
【0043】
成分a)〜c)及び使用するそれらの量に関する好ましい実施形態は冒頭での説明において見られる。
【0044】
粉末形態のカロテノイド含有製剤を製造するための本発明の方法の特に好ましい実施形態は、
i)β−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択される1以上のカロテノイドa)を、オクテニルコハク酸デンプンナトリウムb)の水性の分子溶液又はコロイド溶液に懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、
iii)粉砕した懸濁液をショ糖c)と混合する工程、及び
iv)続いて、適宜、被覆材の存在下で懸濁液を乾燥粉末に変換する工程
を含み、懸濁液は工程段階iii)の後、水性懸濁液の乾燥物質に対して8〜13重量%の、β−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカロテノイドa)を含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比は1:5〜1:10である。
【0045】
本発明はまた、
a)好ましくはβ−カロテン、ルテイン、ゼアキサンチン及びリコピン又はそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカロテノイド、
b)少なくとも1種の加工デンプン、好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは5〜30重量%、非常に特に好ましくは8〜26重量%のオクテニルコハク酸デンプン、及び
c)ショ糖
を含み、粉末形態の製剤の総質量に対して、製剤が1〜25重量%、好ましくは2〜20重量%、特に好ましくは5〜15重量%、非常に特に好ましくは8〜13重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80、好ましくは1:3〜1:40、特に好ましくは1:4〜1:18、非常に特に好ましくは1:5〜1:10である、粉末形態での製剤にも関する。
【0046】
粉末形態での本発明の製剤のさらに好ましい実施形態は、さらに、粉末形態での製剤の総質量に対して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、特に好ましくは0.8〜2.5重量%、非常に特に好ましくは1〜2重量%の1以上の抗酸化剤を成分d)として含む。
【0047】
好適な抗酸化剤の例には、α−トコフェロール、t−ブチルヒドロキシトルエン、t−ブチルヒドロキシアニソール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル又はエトキシキン又はそれらの混合物が挙げられる。好ましい抗酸化剤は、α−トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル又はそれらの混合物である。
【0048】
たとえばX線回折測定によって測定することができる、粉末形態で製剤中に存在するカロテノイド粒子の結晶化度は70%より高く、好ましくは80〜100%の範囲内であり、特に好ましくは90〜99%の範囲内であり、非常に特に好ましくは95〜99%の範囲内である。
【0049】
本発明の乾燥粉末が、水溶液系に容易に再分散し、1μm未満の粒径範囲で活性物質が均一に微細分散できることに特に注目すべきである。
【0050】
製剤化助剤としてのショ糖と加工デンプンの本発明の組み合わせを使用することで、他の糖、たとえば、乳糖又はブドウ糖と比べて、それと共に製造されたカロテノイド製剤が特に、マルチビタミン錠剤にて特に高い保存安定性を示すという利点を有する(表を参照のこと)。
【0051】
本発明のカロテノイド製剤は、たとえば飲料などのヒトの食品を着色するためのヒトの食品への添加剤として、医薬品及び化粧品を製造するための、並びに栄養補助製品、たとえば、ヒト及び動物におけるマルチビタミン製品を製造するための組成物として特に好適である。
【0052】
本発明の方法の実施について以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例1】
【0053】
ショ糖とオクテニルコハク酸デンプンとの混合物を使用するβ−カロテン(BC)乾燥粉末の製造(β−カロテン:ショ糖=1:6.6)
a.
保護ガス下で1160gの水を55℃に加熱し、26.5gのアスコルビン酸ナトリウム、23.5gのアスコルビン酸及び500gのオクテニルコハク酸デンプン(National Starch製のCapsul(登録商標))を加えた。撹拌することによって、500gの結晶性β−カロテンをこの溶液に懸濁した。次いで、β−カロテン粒子が約0.6μmの、Fraunhofer回折により測定される平均粒径D[4.3]を有するようになるまで、ボールミルを使用して懸濁液を粉砕した。
【0054】
b.
2630gのこの粉砕した懸濁液を保護ガス下で第2の反応器に移し、撹拌しながら、3207gのショ糖及び追加の469gのオクテニルコハク酸デンプンを加えた。この混合物の温度を55℃に保った。30gのα−トコフェロールを加え、その後、懸濁液をホモジナイズし、続いて、改変噴霧乾燥によってビーズレット形態の乾燥粉末に変換した。ビーズレット中のβ−カロテンの含有量は11.1%であり、91のE1/11)を有していた。
【実施例2】
【0055】
ショ糖とオクテニルコハク酸デンプンとの混合物を使用するβ−カロテン(BC)乾燥粉末の製造(β−カロテン:ショ糖=1:7.2)
a.
保護ガス下で1160gの水を55℃に加熱し、26.5gのアスコルビン酸ナトリウム、23.5gのアスコルビン酸及び500gのオクテニルコハク酸デンプン(National Starch製のCapsul(登録商標))を加えた。撹拌することによって、500gの結晶性β−カロテンをこの溶液に懸濁した。次いで、β−カロテン粒子が約0.6μmの、Fraunhofer回折により測定される平均粒径D[4.3]を有するようになるまで、ボールミルを使用して懸濁液を粉砕した。
【0056】
b.
2774gのこの粉砕した懸濁液を保護ガス下で第2の反応器に移し、撹拌しながら、3914gのショ糖を加えた。この混合物の温度を55℃に保った。32gのα−トコフェロールを加え、その後、懸濁液をホモジナイズし、続いて、改変噴霧乾燥によってビーズレット形態の乾燥粉末に変換した。ビーズレット中のβ−カロテンの含有量は11.7%であり、89のE1/11)を有していた。
【実施例3】
【0057】
(比較試験)
ブドウ糖シロップとオクテニルコハク酸デンプンとの混合物を使用するβ−カロテン(BC)乾燥粉末の製造(β−カロテン:ブドウ糖シロップ=1:6.6)
a.
保護ガス下で7.5kgの水を55℃に加熱し、0.225kgのアスコルビン酸ナトリウム、0.2kgのアスコルビン酸及び4.25kgのオクテニルコハク酸デンプン(National Starch製のCapsul(登録商標))を加えた。撹拌することによって、4.25kgの結晶性β−カロテンをこの溶液に懸濁した。次いで、β−カロテン粒子が約0.6μmの、Fraunhofer回折により測定される平均粒径D[4.3]を有するようになるまで、ボールミルを使用して懸濁液を粉砕した。
【0058】
b.
2445gのこの粉砕した懸濁液を保護ガス下で第2の反応器に移し、撹拌しながら、3590gのブドウ糖シロップ及び追加の419.7gのオクテニルコハク酸デンプンを加えた。この混合物の温度を55℃に保った。26.9gのα−トコフェロールを加え、その後、懸濁液をホモジナイズし、続いて、改変噴霧乾燥によってビーズレット形態の乾燥粉末に変換した。ビーズレット中のβ−カロテンの含有量は10.9%であり、94のE1/11)を有していた。
【実施例4】
【0059】
(比較試験)
ブドウ糖シロップとオクテニルコハク酸デンプンとの混合物を使用するβ−カロテン(BC)乾燥粉末の製造(β−カロテン:ブドウ糖シロップ=1:7.6)
2481gの実施例3aで得られた粉砕した懸濁液を保護ガス下で第2の反応器に移し、撹拌しながら、4194gのブドウ糖シロップを加えた。この混合物の温度を55℃に保った。27.4gのα−トコフェロールを加え、その後、懸濁液をホモジナイズし、続いて、改変噴霧乾燥によってビーズレット形態の乾燥粉末に変換した。ビーズレット中のβ−カロテンの含有量は10.6%であり、96のE1/11)を有していた。
【0060】
1)ここで、E1/1は1cmのキュベット中の10重量%の乾燥粉末の1%強度の水性分散液の吸収極大での比吸収係数と定義する。
【0061】
表:マルチビタミン錠剤におけるβ−カロテンビーズレットの保存安定性
【0062】
β−カロテンビーズレットの安定性は、錠剤当たり約3mgのβ−カロテンの含有量を有するマルチビタミンミネラル錠剤を用いて試験した。フタがヒートシールアルミホイルで密封されるHDPE容器に錠剤を詰めた。40℃、相対湿度75%で6ヵ月間、錠剤を保存した。3ヵ月及び6ヵ月の保存後の各場合にβ−カロテン含有量を調べた。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性のカロテノイド含有懸濁液であって、
a)少なくとも1種のカロテノイド、
b)少なくとも1種の加工デンプン、及び
c)ショ糖
を含み、該懸濁液が、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記懸濁液。
【請求項2】
加工デンプンb)がオクテニルコハク酸デンプンである、請求項1に記載の水性懸濁液。
【請求項3】
ナノ粒子として少なくとも1種のカロテノイドを含む、請求項1又は2のいずれかに記載の水性懸濁液。
【請求項4】
β−カロテン、リコピン、ゼアキサンチン及びルテイン又はそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカロテノイドa)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項5】
水性懸濁液の乾燥物質に対して0.1〜10重量%の1以上の抗酸化剤を成分d)としてさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項6】
0.1〜80重量%の固形分を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性懸濁液。
【請求項7】
水性のカロテノイド含有懸濁液の製造方法であって、
i)少なくとも1種の加工デンプンb)及びショ糖c)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1種以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、及び
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程
を含み、該懸濁液が工程段階ii)の後に、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記方法。
【請求項8】
水性のカロテノイド含有懸濁液の製造方法であって、
i)加工デンプンb)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1種以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、及び
iii)微粒子懸濁液をショ糖c)と混合する工程
を含み、該懸濁液が工程段階iii)の後に、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記方法。
【請求項9】
加工デンプンb)がオクテニルコハク酸デンプンである、請求項7又は8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
カロテノイドa)が、β−カロテン、リコピン、ゼアキサンチン及びルテイン又はそれらの混合物から成る群から選択される化合物である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種のカロテノイドを含む粉末形態の製剤の製造方法であって、
i)少なくとも1種の加工デンプンb)及びショ糖c)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1種以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、及び
iii)続いて、適宜、被覆材の存在下で懸濁液を乾燥粉末に変換する工程
を含み、該懸濁液が工程段階ii)において、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記方法。
【請求項12】
少なくとも1種のカロテノイドを含む粉末形態の製剤の製造方法であって、
i)加工デンプンb)の水性の分子分散溶液又はコロイド溶液に1種以上のカロテノイドa)を懸濁する工程、
ii)懸濁した粒子を粉砕する工程、
iii)粉砕した懸濁液をショ糖c)と混合する工程、及び
iv)続いて、適宜、被覆材の存在下で懸濁液を乾燥粉末に変換する工程
を含み、該懸濁液が工程段階iii)の後に、水性懸濁液の乾燥物質に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記方法。
【請求項13】
カロテノイドa)が、β−カロテン、リコピン、ゼアキサンチン及びルテイン又はそれらの混合物から成る群から選択される化合物である、請求項11又は12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
加工デンプンb)がオクテニルコハク酸デンプンである、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
粉末形態の製剤であって、
a)少なくとも1種のカロテノイド、
b)少なくとも1種の加工デンプン、及び
c)ショ糖
を含み、該製剤が、粉末形態の製剤の総質量に対して1〜25重量%の少なくとも1種のカロテノイドを含み、カロテノイドa)とショ糖c)との重量比が1:2〜1:80である、上記製剤。
【請求項16】
加工デンプンb)がオクテニルコハク酸デンプンである、請求項15に記載の粉末形態の製剤。
【請求項17】
β−カロテン、リコピン、ゼアキサンチン及びルテイン又はそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のカロテノイドa)を含む、請求項15又は16に記載の粉末形態の製剤。
【請求項18】
粉末形態の製剤の総質量に対して0.1〜10重量%の抗酸化剤を成分d)としてさらに含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の粉末形態の製剤。
【請求項19】
ヒトの食品、栄養補助食品、動物の飼料、医薬品及び化粧品への添加物としての、請求項1〜6のいずれか1項で定義される水性懸濁液の使用。
【請求項20】
ヒトの食品、栄養補助食品、動物の飼料、医薬品及び化粧品への添加物としての、請求項15〜18のいずれか1項で定義される粉末形態の製剤の使用。

【公表番号】特表2009−500309(P2009−500309A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518823(P2008−518823)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063627
【国際公開番号】WO2007/003543
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】