説明

1以上の血漿誘導体を含む、品質保証された薬物

【課題】本発明は、1以上の血漿誘導体を活性物質または不活性成分として含む薬物を記載し、ここで、出発原料、または該血漿誘導体の製造時に生ずる中間体は、1つまたはそれ以上の複製可能な血液原ウイルスにより汚染されていないか、または規定された限界値を越えないウイルス負荷を有する。
【解決手段】最終血漿誘導体を製造するための、このようにして品質の確かめられた出発原料または中間体を、少なくとも1つのさらなる実質的なウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかける。本発明はさらに、この薬物を製造するための方法、さらにはまた、品質保証された出発原料または中間体を製造するための方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の血漿誘導体を活性物質または不活性成分として含む薬物に関し、またそのような薬物の製造のための品質保証された出発原料に関し、さらにはまた、これらの薬物を製造するための方法に関する。本発明はまた、品質保証された出発原料、特に品質保証された血漿プールの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト血漿は、特に先天的または後天的な血漿成分の欠乏の場合における代替療法に対する、医薬品製剤として、または血漿誘導体の製造のための出発原料として特に優れた臨床的重要性を有するものである。しかし、ヒト血漿を使用する場合、医薬品製剤によって、または血漿誘導体によって運搬され得る、感染物質が含まれていないことに注意しなければならない。恐らく血中に存在し得るであろう感染物質には、とりわけ、HIウイルスまたは肝炎ウイルス(A型、B型、C型または非A非B型肝炎)といったような、血液によって運搬され得るウイルス(血液原ウイルス)が含まれるが、血液により伝達され得るパルボウイルスもまた含まれる。
【0003】
血漿誘導体を含む薬物が非常に必要であることから、これらの薬物の経済的な製造は、工業規模でのみ可能である。
【0004】
血漿をドナーから得て、医薬品製剤の製造のためにプールする。従来のプールサイズは、約2,000〜6,000個の献血漿(plasma donations)である。たった1つの、ウイルスで汚染された献血漿により、血漿プール全体が汚染される危険がある。
【0005】
20世紀前半の後期という早い時期に、ヒトアルブミンが加熱により首尾よくウイルス不含有製剤とされた。このことは最初、それらの熱感度から、血漿から得ることができる他の薬物全てに対して不可能であった。今までのところ、適切に製造されたアルブミンが何百万という場合において使用されている;それにもかかわらず、ヒト血液が有するウイルスが原因となる感染はいまだかつてなかった。対照的に、ウイルス感染、特に肝炎ウイルスによるウイルス感染、また1980年代以来、AIDSウイルスによる大規模なウイルス感染もまた、血漿から製造された多くの他の薬物に関して報告されている。
【0006】
1980年ごろ、ウイルス汚染物質を不活性化する目的で、適切に安定化された第VIII因子濃縮物に対して加熱処理が初めて行われた。しかし、最初に、第VIII因子活性の多大な損失が認めざるを得ず、実際の不活性化の可能性は未知のままであった。
【0007】
加熱処理方法を改良することにより、また他の新たな不活性化方法によって、最終的には、血漿から薬物を製造することが可能となり、これは大抵の場合、レシピエントにおけるウイルス感染をもたらさなかった。この開発に付随して、ウイルス血症の疑いがあり、従って、血漿がウイルスを含む疑いのあるドナーおよび献物(donations)を排除することを目的とした、ドナーおよび献物の選択における改良もまたあった。
【0008】
今しばらくの間、陽性の結果を与える献物を排除しようと、また血液製剤の製造のための出発原料として使用すべき、より大きな血漿プールに、それらを取り入れまいと、血中の幾つかのウイルス抗原または抗体の検出が利用されている。疾患の症状またはあらゆる検査での異常検査結果を有していないが、それにもかかわらず、彼らの血中には幾つかのウイルスが長期間にわたり高濃度でも匿われている個々のドナーの場合、ある特定のウイルスによる、そのようなウイルス血症の発生は現在、増幅方法の助けをもって、はっきりと検出することができる。
【0009】
血漿ユニットをプールした後、ウイルスで汚染された、たった1つの献血漿は、当然ながら希釈される;しかし、増幅反応の助けによるウイルスゲノム配列の検出は非常に鋭敏なので、そのような希釈物中においてすら、ウイルスゲノムまたはそれらの配列をはっきりと検出することができる;また上述のように、それらが一定の検出限界以下に落ち込むなら、感染の可能性という意味では、それらには、もはや臨床的関連はない。
The EEC Regulatory Document Note for Guidance,Guidelines for Medicinal Products Derived from Human Blood and Plasma(Biologicals 1992、20:159−164)は、血漿ドナーおよび献血漿を調べるための品質保証システムを提唱している。従って、各々の献血漿を、B型肝炎抗原またはHIV−1およびHIV−2抗体といったようなウイルスマーカーの不在に関する確認試験で分析しなければならないが、これは、これらが血漿ドナーの対応するウイルス感染を示すからである。C型肝炎の感染を排除するための試験もまた行うべきである。
【0010】
欧州薬局方に従って、B型肝炎表面抗原およびC型肝炎ウイルスおよびHIV抗体を測定するために、特別な試験を各々の献物に対して行うべきである(欧州薬局方、第2版、第II部、1994年、853〜854頁)。
【0011】
1995年3月14日付のFDAガイドラインは、付加的安全因子としての最終産物(免疫グロブリン産物)のPCR試験を提供している。
【0012】
提唱された試験にもかかわらず、これらのウイルスマーカーを単に調べるだけでは、個々の献血漿の安全性は十分に保証されないことがEECガイドラインにおいて力説されている。血漿試料中での該マーカーの不在が確認されたとしても、ドナーのウイルス血症を排除することはできない。ウイルス抗原および対応する抗体は、感染後すぐには検出することができないので、ウイルス感染の最初のマーカーは、感染源と接触してから数週間または数カ月後にしか発生しないことが多い。感染後および抗体発生前の、この重要な期間は、通例、「ウィンドウ期間(window period)」と呼ばれている。しかし、感染後、最初のウイルスマーカーを検出することができる時間ポイントは、ウイルスによって様々である。
【0013】
さらに、血漿から製造される幾つかの薬物に関して、ウイルスを製造過程の途中で消失させる、または不活性化すること、またそのような製品自体が非常にウイルスに関して安全であることもまた知られるに至っている。
【0014】
血漿誘導体のウイルス不活性化は、工業的規模で非常に上手く行われているが、それにもかかわらず、AIDS、A型、B型およびC型肝炎ウイルスといったような血液原ウイルスが稀に伝達されていることから、製造業者は、一定の製造方法を利用しているにもかかわらず、ウイルスで汚染された製品のバッチが幾つか生じたと仮定しなければならなかった(Lancet 340、305〜306(1992);MMWR 43(28)、505〜509(1994)、Thromb.Haemost. 68、781(1992))。このことは恐らく、幾つかの出発バッチの過度の汚染から起こった。血漿を回収する間に、ウイルスで汚染された献血漿を排除するのには、間接法が利用できるだけであることから、出発原料は非常にひどく汚染されているので、他の上手く利用されるウイルス不活性化およびウイルス消失方法が、もはやウイルスに関して安全な最終産物を製造するには十分でないということが起こり得る。
【0015】
HIV、HCVおよびHBVに関するヒト感染用量は知られておらず、また今のところ測定することはできない。従って、組織培養における感染用量(TCID50:組織培養感染用量)または動物モデルにおける感染用量(CID50:チンパンジー感染用量)の測定では、概算のヒト感染用量しか得られない。さらに、幾つかの場合、人々は、それらにさらされているにもかかわらず、HIV、HCVまたはHBVで感染されない。従って、そのようなウイルスのヒト感染用量は、必ずしも感染するとは限らない。
【0016】
Piatakら(Science 1993、259:1749−1754)は、HIVのTCID50が、1 TCID50/HIV RNAの10コピーであることを測定した。Shimizu,Y.K.ら(PNAS.Natl.Acad.Sci. USA 1993、90:6037−6041)は、HCV株のCID50が、1 CID50/RNAの1コピーであることを測定した。
【0017】
Ederら(The Role of the Chimpanzee in Research、Symp.Vienna 1992、156〜165)は、HBV DNAの20コピー/血漿のmlがCID50 1に対応することを示すことができた。
【0018】
血漿プールまたは他の血漿出発原料の場合、ウイルス負荷(ウイルス汚染)は出来るだけ低く、必要ならば、付加的ウイルス不活性化工程により、またはウイルスを消失させる方法により、ウイルス汚染を少なくとも感染用量以下まで低下させることができるように注意することが特に必要である。出発原料のウイルス汚染は、ウイルス核酸のコピー数が既にチンパンジーの感染用量以下程度であるのが望ましいであろう。
【0019】
【非特許文献1】The EEC Regulatory Document Note for Guidance,Guidelines for Medicinal Products Derived from Human Blood and Plasma(Biologicals 1992、20:159−164
【非特許文献2】Piatakら、Science 1993、259:1749−1754
【非特許文献3】Shimizu,Y.K.ら、PNAS.Natl.Acad.Sci. USA 1993、90:6037−6041
【非特許文献4】Ederら、The Role of the Chimpanzee in Research、Symp.Vienna 1992、156〜165
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、幾つかの出発バッチの過度の汚染から起こる、複製可能な血液原ウイルスでのウイルス汚染の危険がもはや全くない、1以上の血漿誘導体を含む薬物を提供することである。
【0021】
さらに具体的な目的は、ウイルス負荷が指定された最大値を越えてはならない、品質保証された出発原料または中間体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により、この目的は、出発原料または血漿誘導体の製造中に生ずる中間体がウイルスにより汚染されておらず、または1つまたはそれ以上の複製可能な血液原ウイルスの負荷が規定された限界値を越えていない、1以上の血漿誘導体を活性物質または補助成分として含む薬物により成し遂げられ、
− 幾つかの複製可能な血液原ウイルスのウイルス負荷の不在を、出発原料もしくは中間体中の過剰のウイルス中和抗体により、または献血漿時の血漿ドナーの防御免疫により測定し、
− あるいは、出発原料もしくは中間体中の問題の各々のウイルスのゲノム当量(equivalents)を、核酸の検出または測定のための、定量可能な、制御された、非阻害的方法により測定し、最終血漿誘導体の製造のための、品質保証された出発原料または中間体を、少なくとも1つの実質的なウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかけて、得られた品質保証された最終血漿誘導体を既知の方法により後処理して、薬物とする。
【0023】
該目的の達成は、出発原料中に存在する汚染またはウイルス負荷の程度の測定を含んでなり、このウイルス負荷をもはや、ウイルスを不活性化する、または消失させる方法により排除することができない。従って、出発原料中のウイルス汚染の可能性を測定し、こういった高度の汚染が実在する限り、それらの出発原料をさらに処理しないことにより、すなわち、それらを処理から排除することにより、その問題を解決する。
【0024】
この目的のために、ウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかけるべきである、各血漿由来の出発原料、およびあるいは血漿誘導体の製造で生ずる中間体を、並びに最終血漿誘導体を、血液血漿から製造された薬物がもはや、時々ですらなくも、複製可能な血液原ウイルスを伝達することができないということを確かな方法で確実なものとする方法で試験して処理すべきである。そのようにする際は、可能なウイルス負荷の上限を測定するために、出発原料を、選択された増幅技術の利用により試験し、血液原ウイルスの伝達を起こさないであろう薬物とするために、この出発原料または中間体をさらに、少なくとも1つの実質的なウイルス不活性化またはウイルス消失工程にかけるであろう。
【0025】
本発明により、ゲノム当量の測定の間に検出されるべき標的核酸は、血液中、血漿中、血清中、または血漿画分中での様々な増幅方法により増幅することができる。しかし、好ましくは、ポリメラーゼ鎖反応(PCR)または特殊型のPCRを、各々、検出または測定方法として使用する。特定のウイルスゲノム配列の検出の場合には、増幅方法が、増幅すべき核酸配列に対して選択的でなければならない。本発明の血漿プール中の核酸の増幅は、文献に記載されている一連の増幅方法により達成することができる。
【0026】
特定のウイルスゲノム配列の増幅は、それらを複製して、それらを検出可能とするために、個々のゲノム、さらに非常に様々なウイルスのゲノムに関する知識を必要とする。
【0027】
核酸の様々な増幅方法は、PCRに基づいている。PCR増幅方法は、Mullisら(米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)に初めて記載された。ウイルスゲノム配列はまた、「ネステッド(nested) PCR」(Mullisら、Methods Enzymol. 1987、155:335−350)またはRT−PCR(Powell,L.M.ら、Cell 1987、50:831−840;Kawasakiら、Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1988、85:5698−5702)によっても増幅することができる。
【0028】
RNAの増幅および検出では、まず最初に、RNAをDNAに転写しなければならない。この方法は、いわゆるRT−PCRとして、WO 91/09944に記載されており、また逆転写酵素の使用を必要とする。
【0029】
次いで、伸長工程において、また後のハイブリダイジングまたはその産物のゲル電気泳動による分離において、標識化ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドプライマーを使用することにより、その増幅産物を分析することができる。
【0030】
PCRに対する他の方法もまた記載されている。
【0031】
核酸を増幅するための、これらの方法の1つは、欧州特許第0 320 308号、並びに欧州特許第0 336 731号、並びにWuおよびWallace(Genomics 1989、4:560〜596)による、LCR(リガーゼ鎖反応)である。
他の酵素的方法は、欧州特許第0 310 229号、およびGuatelli,J.C.ら(Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1990、87:1874〜1878)による、NASBA(核酸配列に基づく増幅)、3SR(自己支持配列複製)、または欧州特許第0 373 960号、およびKwoh,D.Y.ら(Proc.Natl.Acad.Sci. USA 1989、86:1173〜1177)によるTAS(転写に基づく増幅システム)である。これらの方法では、増幅において、例えば、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼといったような一連の酵素を同時に、または段階的に使用する。
【0032】
他の増幅方法は、欧州特許第0 361 983号、およびLizardiら(TIBTECH 1991、9:53〜58)による、RNAバクテリオファージ Qβのレプリカーゼの使用に基づく。
【0033】
Urdea,M.S.ら、Nucleic Acids Res.Symp.Ser. 24 Oxford 1991、Pachl,C.A.ら、XXXII Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy.Anaheim、1992年10月(アブストラクト 1247)により、さらなる方法は、抽出される核酸に代わって、分枝鎖状DNAオリゴヌクレオチドによるシグナル増幅(分枝鎖状DNAシグナル増幅)を記載している。
欧州特許第0 590 327 A2号は、例えば、C型肝炎ウイルス、HIV、またはB型肝炎ウイルスのウイルスRNAまたはDNAの測定を提供する、血液試料の分析方法を開示している。B型肝炎ウイルスゲノムを測定するための試験に対する検出限界は、その評価を、ゲルを染色した後で電気泳動により行うなら、1,500コピー(150,000コピー/ml)である。血液試料は一部が、血液の乾燥スポットである。分析後、試料のさらなる処理のための準備はしない。
【0034】
幾つかのウイルスに対する高度免疫グロブリン製剤を製造するための方法は、能動的に免疫されているドナー、または既に疾患を克服していることから、防御免疫を示すドナーに由来する血液および血漿から出発する。病原性ウイルスに対して予防接種されている血漿ドナーの血液は、対応する抗体タイターを含む。HIV抗体のような、ウイルス血症を示す抗体とは対照的に、これらの抗体が望ましい。
【0035】
従って、本発明の薬物を製造するために使用する、品質保証された出発原料または中間体は、問題のウイルスに対するウイルス中和抗体を過剰に含むか、または存在する可能性のある複製可能な血液原ウイルスのゲノムもしくはゲノムフラグメントを検出不可能な量で、もしくは限界値以下の量で含む。
【0036】
血漿誘導体は、薬物中、活性物質として、または補助成分としてもまた含まれ得る。活性物質には、例えば、凝固因子、免疫グロブリン、繊維素溶解因子、酵素阻害剤または血漿中に存在する他の酵素もしくはチモーゲンもしくはそれらの混合物が含まれる。補助成分には、アルブミンまたは他の安定剤、様々な阻害剤、補因子等が含まれる。
原則的には、血漿プール、クリオプアー(cryopoor)血漿、またはCohn II + III ペーストといったような、ある特定の製造方法を開始する物質を全て、出発原料としてみなすべきである。一連の可能な出発原料は、Heideら(「The Plasma Proteins」中の「Plasma Protein Fractionation」、Frank W.Putnam編、Academic Press New York、San Francisco、London 1977、545〜597頁)による論文で引用されている。
【0037】
中間体は、与えられた製造工程により得られている、ある特定の製造方法で出発原料から誘導される産物、例えば、出発原料として血漿またはクリオプアー血漿を用いての第IX因子の製造におけるプロトロンビン複合体である。
【0038】
慣例の製造方法で薬物に後処理される最終血漿誘導体は、該製品に特異的な製造方法により、場合によっては中間体を経て、出発原料から製造される。勿論、この後処理の間に、2つまたはそれ以上の最終血漿誘導体を一緒に合わせることができる。
【0039】
好ましくは、HIV、HAV、HBVおよびHCV、また特にHIVおよびHCVよりなる群から選択される、少なくとも2つのウイルスに関して、ウイルス汚染が存在しないか、または規定された限界値を越えないウイルス汚染が存在することが好ましい。
【0040】
さらに、本発明は、上述のウイルスに限定されない;むしろ、存在しないか、または規定された限界値を越えないウイルス汚染を、血液により、または血液から得られた産物により伝達され得、またヒトにとって危険の高いウイルスであることが判明している、あらゆる血液原ウイルス、例えば、パルボウイルス、非A非B型肝炎ウイルスに関して、および新たに発見されたウイルスに関して測定することができる。好ましくは、これらのウイルスの薬物中での存在が患者に危険を示すならば、存在しないか、または規定された限界値を越えないウイルス汚染を、血液原ウイルス全てに関して測定するであろう。
【0041】
いずれの場合でも、この値を越えてはならないという、複製可能な血液原ウイルスによる許容可能な汚染の限界値は、主として、検出反応の能力に、また出発原料および中間体を評価するのに適当な手段に依存する。例えば、検出限界は、検出反応に使用される試料の体積に依存する。例えば、ウイルスゲノム当量を、たった1つの献物の試料20μl中で検出することができず、また使用する検出方法が、たった1つのゲノム当量を試料中で検出することが可能なら、個々の献物の最大汚染は、血漿1ml当たり50 ゲノム当量より少ないと結論することができる。陰性の検出結果を得て、さらに試料20μlを試験して、再びウイルスゲノム当量が検出されないなら、その単一の献物の最大負荷は、血漿1ml当たり25 ゲノム当量より少ないと結論することができる。
【0042】
出発原料または中間体1ml当たり、最大値 500 ゲノム当量、特に最大値 200 ゲノム当量、好ましくは最大値 100 ゲノム当量、またとりわけ最大値 50 ゲノム当量は、複製可能な血液原ウイルスによる許容可能な汚染に関する実際的な限界値であることが証明されている。
【0043】
本発明の好ましい保証された出発原料または中間体の場合には、少なくとも4つのリダクション(reduction)因子を与える、少なくとも1つの方法により成し遂げられるウイルス不活性化またはウイルス消失が、品質保証された、この出発原料または中間体起源の薬物の製造において成し遂げられる。
【0044】
本発明の血漿タンパク質含有薬物は、出発原料となる血漿タンパク質の、1つまたはそれ以上の複製可能な血液原ウイルスによる、確かめられた、限定された汚染を基にして、ウイルスを不活性化する、または消失させるためのタンパク質保存方法が、血漿タンパク質をウイルスに安全な形で得るのに十分であるという利点を有する。好ましくは、存在する可能性のある複製可能な血液原ウイルスのウイルス負荷をいずれも不活性化する、または排除するために、4つ未満のリダクション因子を有するタンパク質保存方法を行う。あるタンパク質保存方法は、血漿タンパク質の活性および完全性を出来る限り最も広い範囲で維持することが可能である。回収されるべきタンパク質の(特異的)活性を50%またはそれ以上、また好ましくは80%またはそれ以上維持する、ある方法は、タンパク質保存性と見なされる。本発明の薬物の製造方法中での、たった1つのウイルス活性化またはウイルス消失は、存在する可能性のあるウイルスをいずれも完全に不活性化する、または排除するのに十分である。
【0045】
血漿誘導体または薬物の製造に使用され、また試験ウイルスが加えられている出発原料または中間体の場合には、与えられたウイルス不活性化工程に先立つウイルス消失により、ウイルス負荷を大いに減少させることができることが示されている(例えば、EP−A−0 506 651)。該消失は、ナノ(nano)濾過、沈降反応、透析、遠心分離、クロマトグラフ精製工程等といったような、既知の方法により行うことができる。ウイルスを不活性化するために、一連の物理的、化学的、または化学的/物理的方法が知られており、これらは、例えば、EP−A−159 311またはEP−A−0 637 451でのような加熱処理、EP−A−0 247 998による加水分解酵素処理、例えば、EP−A−0 131 740でのような放射線処理または有機溶媒および/または界面活性剤での処理を含んでなる。血漿画分および薬物を製造する間の、さらに適当なウイルス不活性化工程は、EP−A−0 506 651またはWO 94/13329に記載されている。様々な不活性化方法が、Eur.J.Epidermal. 3(1987)、103−118において分析されている;そのリダクション因子は、EC委員会(Commission)のECIII/8 115/89−EN ガイドラインにおいて扱われている。
【0046】
本発明の方法により、プールした出発原料、特に血漿プール、または中間体を各々、群を抜いて安全性の増加した品質とすることが可能である。
【0047】
好ましくは、例えば、適当な予防接種により、1つまたは幾つかのウイルスに対して、能動的に免疫されているか、または免疫性であることから、防御免疫を示す血漿ドナーを、本発明の品質保証された血漿プールの製造のために選択する。血漿ドナーは、肝炎ウイルスに対して、特にA型肝炎ウイルスに対して、対応する血漿の感染の可能性を排除するために予防接種されているのが好ましい。
【0048】
血漿が出発原料であるなら、本発明による品質保証の好ましい態様は、
− HIV、HBV、HCV、パルボウイルスおよびHAV群の全てのウイルスのゲノム当量を測定する、
− HIV、HBV、HCVおよびパルボウイルス群の全てのウイルスのゲノム当量、さらにはまた過剰のHAV抗体を測定する、
− HIV、HBVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量、さらにはまた過剰のHAVおよびパルボウイルス抗体を測定する、
− HIV、HBVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量、さらにはまた過剰のHAV抗体を測定する、
− HIV、HBVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量、さらにはまた過剰のパルボウイルス抗体を測定する、
− HIV、HBVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量を測定する、
− HIVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量を測定する、
− HIVおよびHCV群の全てのウイルスのゲノム当量、さらにはまた過剰のHBV抗体を測定する
ということにある。
【0049】
本発明の品質保証された血漿プールは、例えば、A型肝炎およびB型肝炎ウイルスに対して予防接種されており、それ故、抗感染免疫性により、血中に抗体タイターを有し得る血漿ドナーを選択することによっても得ることができる。これらの抗体は、能動免疫化により形成されており、それ故、ウイルス血症を示すものではない。対応するウイルス血症を示すマーカーの不在に関して、献血漿を個々に試験する。この目的のために、例えば、C型肝炎ウイルス抗体、また場合により、HIV抗体を測定するための試験を、有効とされるELISA試験システムの助けをもって行う。ALTおよびGPD値といったような、幾つかの肝臓値もまた、C型肝炎ウイルスのマーカーである。ドナー血漿中のウイルスマーカーの不在を確かめるのなら、個々の献血漿の血漿プール中のAIDSウイルス(HIV−1)、また場合により、C型肝炎ウイルスのゲノムまたはゲノムフラグメントの不在の証拠を、さらなる選択基準として用意する。この献血漿が、ウイルス感染を示す、HIVに対する抗体を何ら含まないという確認にもかかわらず、この方法が推奨される。HIVウイルスで感染させてから、対応する抗体が検出可能となるまでの時間は、とりわけ、これらのウイルスの場合には、数カ月であり得る。従って、HIV抗体の不在に関してのみ試験した血漿プールを、複製可能な感染ウイルスを何ら含まない、またはそれらを規定された限界値以下で含む、制御された血漿プールとして利用可能とすることはできない。
【0050】
複製可能な血液原ウイルスによる限定された汚染を確かめるための本発明の方法の1つは、核酸を検出する、または測定する、定量可能な、制御された、および非阻害的方法は別として、本発明の血漿プール中のウイルス中和抗体の検出を含んでなる。例えば、適当な酵素免疫試験のような、有効とされる試験システムもまた、抗体タイターを測定するのに使用すべきである。該方法に使用される試料は、場合により、凍結乾燥した後、再構築することができる。
【0051】
血漿プールの他に、低温型沈降物または他の初期の中間体が本発明の出発原料と考えられる。初期の中間体は、薬物の製造においてヒト血漿から得られる中間体であり、これらはさらに、ウイルス消失またはウイルス不活性化にかけられるであろう。血漿プール、特に、同様に保証された少量のものを、より多量なものに合わせる可能性に関して本明細書中で述べられていることはまた、−可能である限り−本発明により、他の出発原料にも適用される。従って、同じ種類の、品質保証された出発原料または中間体を、各々、品質保証された出発原料または中間体の、より大きなプールへと混合することを、本発明により提供する。
【0052】
出発原料または中間体に対する、そのような高い品質基準は、まだ満たされていない。一方では、ウイルスで汚染された血漿プールにより引き起こされるウイルス血症を完全に排除することが必要であるとは考えられていない。血漿プールは、主として、血漿誘導体の製造、すなわち、血漿タンパク質に基づいた医薬品製剤の製造に使用される。しかし、この製造では、存在する可能性のあるウイルスを不活性化する、および/または消失させるための付加的方法を行わなければならず、このことは、最終生成物による病原性ウイルスの伝達の危険を倍数的に減少させるので、先行技術により指示された通常のアッセイが適しているとみなされる。
【0053】
本発明により、過剰のウイルス中和抗体、または確かめられた、限定された負荷のウイルスゲノム配列を示す、それらの出発原料または中間体のみを、生成物のさらなる後処理に使用する。それにもかかわらず、核酸増幅方法で測定されるゲノム当量の量は、複製可能なウイルスによる汚染の上限しか与えないことから、本発明の要件を満たさず、また本発明の範囲内の薬物への、さらなる処理には不適な出発原料を、感染性として証明できるように記載することはできない。従って、測定されるゲノム当量の量は、全てのゲノム当量が活性なウイルスに由来する場合にのみ、複製可能なウイルスの負荷の「真の値」を与える。
【0054】
本発明により保証された幾つかの出発原料から、混合することにより、より多量のものを得ることができるが、これは、同じ安全基準に従う。
【0055】
血漿プールの場合、後者を、約2〜約20個の献血漿からなる小さなプールとして与えるのがよい。少なくとも10の小さなプールを合わせて、約20〜200、また好ましくは約200個の献血漿からなるミニプールとすることができる。大きさの次のオーダーは、約200〜2,000、また好ましくは約2,000個の献血漿からなるマクロプールであり、これは、場合により、少なくとも10のミニプール単位で混合することにより製造される。幾つかのマクロプールを合わせて、200,000個までの献血漿からなるマルチマクロプールとすることができる。
【0056】
本発明により、ウイルスゲノムまたはゲノムフラグメントに関する証拠を、これらのプールサイズ各々に用意することができる。小さなプールを試験した後、調べた小さなプールを合わせて、より大きなプール、例えば、ミニプールとすることにより、かつて記載されたことのない品質が、より大きなプールでも得られる。
【0057】
従って、本発明の特別の態様は、好ましくは約200個の献血漿からなるミニプールを混合して、好ましくは約2,000個の献血漿からなるマクロプールとすることにより得られる血漿プールにある。
【0058】
さらに好ましい態様は、マクロプールを、いずれかの所望の数の他のマクロプールと混合することにより合わせて、200,000個までの献物からなるマルチマクロプールとすることを特徴とする、血漿プールからなる。
【0059】
また別の好ましい態様は、そのミニプールが、2〜約20個の献物からなる小さなプールを混合することにより得られる、血漿プールにある。
【0060】
血漿画分または最終血漿誘導体を各々製造するための、および薬物を製造するための、血液血漿の分画に対する出発原料を選択する際には、経済的な理由から、比較的多量のものが好まれるべきである。しかし、今までは、ウイルスゲノムまたはゲノムフラグメントの検出により、ウイルスで汚染されていないとみなすことができたマクロプールの、またはマルチマクロプールの大きさの血漿プールを利用することができなかった。2,000個以上の献血漿を一緒に混合することから生ずる希釈効果が大きすぎ、また検出すべきゲノムの数が試験方法の検出限界より小さいことが非常に多いことから、マルチマクロプールのみに関しての証拠を用意するには十分ではない。小さなサブユニットを試験した後、合わせて、より大きなユニットとすることにより、こういった検出能力の問題を克服し、また経済的に重要な量が得られる。
【0061】
本発明の品質保証された出発原料は、血漿タンパク質を中間体として含む画分の製造に、または最終薬物の製造に、群を抜いて適当である。
【0062】
出発原料、特に血漿プールに与えられた方法は、勿論、全ての種類の血漿画分に対して同様に利用することができる。従って、さらなる態様により、本発明はまた、品質保証された最終血漿誘導体にも関し、この血漿誘導体の複製可能な血液原ウイルスによる汚染は、品質保証された出発原料の使用によって安全に限定される。
【0063】
さらに、本発明は、勿論、本発明により品質保証された出発原料からの、または本発明により品質保証された1つまたは幾つかの中間体からの製造方法により得られる最終的な血漿誘導体にも関する。
【0064】
本発明により製造される最終血漿誘導体から医薬的調合によって製造される薬物もまた、本発明に含まれる。
【0065】
さらに、本発明は、品質保証された出発原料からの、または血漿誘導体の製造中に得られる品質保証された中間体からの、1以上の血漿誘導体を含む薬物の製造方法に関し、その品質保証された出発原料または中間体は、1つまたはそれ以上の複製可能な血液原ウイルスで汚染されていないか、または規定された限界値を越えない量で汚染されており、またその規定された限界値は、1つまたはそれ以上の、以下の基準による核酸の検出または測定のための、定量可能な、制御された、および非阻害的方法により、各々のウイルスのゲノム当量を測定する場合において選択される:
【0066】
− 少なくとも10,000コピーの選択された核酸配列の核酸増幅方法の検出限界;
− 出発原料または中間体1ml当り、ある一定数のゲノム当量、特に500以下のゲノム当量、好ましくは200以下のゲノム当量、さらに好ましくは100以下のゲノム当量、またとりわけ好ましくは50以下のゲノム当量。
【0067】
本発明により、限界値に関する他の許容可能な選択基準は:
− 細胞培養試験によって測定される限界値、好ましくは、1ml当りのあるTCID50(a TCID50)、またはこの量で含まれるゲノム当量、
− 動物モデルによって測定される限界値、好ましくは、1ml当りのあるCID50(a CID50)、またはこの量で含まれるゲノム当量
である。
【0068】
これらの限界値は、それらの実用的関連(試験方法の検出能力に依存する)、およびそれらの生物学的関連(特に、TCIDおよびCID値)から好ましい。
【0069】
非常に鋭敏なPCR法は、試験物質中に混入し得る非常に僅かな量の幾つかの不純物でさえもまた増幅されて、誤った陽性の結果を生じ得るという不利な点を有する。
【0070】
本発明の方法の好ましい態様は、1つ以上の検出システムの使用により特徴付けられ、または測定を核酸に対して利用する場合、1つのシステムが誤った陽性の結果を排除して、他のシステムが誤った陰性の結果を排除するよう、その検出または測定システムを選択するのが好ましい。
【0071】
好ましくは、少なくとも2つの異なったPCR法を利用し、少なくとも1つの方法をスクリーニングに使用して、少なくとも1つの方法を確認に使用する。
【0072】
DTS−PCR(二重標的化(Dual Targeting)サザンブロットPCR)の場合、抽出された核酸の増幅に続いて、合成された核酸をアガロースゲル電気泳動により分離した後、ジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブとハイブリダイゼーションさせた後、サザンブロットにかける。その評価は、バンド強度のデンシトメーター測定によって行う。配列の不均一性から、PCRプライマーとテンプレートとの間のミスプライミングにより引き起こされ得る誤った陰性の結果を排除するために、核酸抽出物を増幅して、最初のプライマー対とは異なる、さらなるプライマーを用いての第2のPCRにおいて再度分析する。合成核酸を内部標準として加えることにより、DTS−PCRを調べて、誤った陰性の結果を排除する。
【0073】
例えば、DTS−PCRにおいて得られた結果をさらに確かめるために、LIF−PCR(レーザー誘起蛍光PCR)をさらなる方法として使用するのが好ましい。
【0074】
非放射能標識化プライマー(好ましくは、蛍光染料で標識化されたプライマー)を使用することにより、PCR産物をLIF−PCRにより検出することができる。しかし、増幅産物の検出はまた、伸長反応の間に、非放射能標識化ヌクレオチドアナログを、新しく合成された核酸に組み込むことにより簡易化することもできる。LIF−PCRでは、核酸を蛍光標識化プライマーの存在下に増幅した後、その増幅産物をPAGEにより分離する。LIF−PCRの各々の試料に関して、さらなる陰性および陽性の対照を行う。PCR産物の検出および定量は、遺伝子スキャナーによって達成される。特に、誤った陰性の結果を排除して、陽性の結果をLIF−PCRの内部二重標準化法により確認する。
【0075】
本発明により、陽性および陰性の対照を使用することによって、誤った陽性の結果または誤った陰性の結果を排除することができる。記載した、2つの異なったPCR法の組み合わせ、特にDTS−PCRとレーザー誘起蛍光PCR(LIF−PCR)との組合せは、多数の試料を慣例の対照で試験することを可能とすることから、主として、誤った陰性の結果を排除することができ、また誤った陽性の結果を回避することができる。
【0076】
本発明のさらなる態様は、試験試料を濃縮することに存し、それによって、より低い負荷のウイルスゲノム配列でさえも検出することができる。本発明の方法の感度は、血漿試料またはその中に含まれるゲノム当量を濃縮することによる、さらなる方法により、増大させることができ、感度を10倍〜100倍増大させるのが好ましい。
【0077】
従って、本発明の方法の好ましい態様では、出発原料(例えば、個々の献血漿または試料プール)もしくは中間体起源の試料、またはその中に含まれるゲノム当量を、好ましくは凍結乾燥、吸着、または遠心分離により濃縮する。
【0078】
本発明により、ゲノム配列を検出する、または測定するための、定量可能な、制御された、および非阻害的方法を与える方法を利用する。しかし、血漿プール中の限定された負荷の複製可能なウイルスをウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出により測定する場合、検出方法の幾つかの阻害物質が試料中に存在することが起こり得るので、非阻害増幅は、直ちには不可能である。
【0079】
PCR法により測定される血漿プールのウイルス汚染は、過小評価され得ることが証明されている。PCR測定法の感度にかなり影響を与え得る因子が血漿プール中に存在することがある(Nucleic Acids Research 16(21)、10355(1988))。これらの、いわゆるPCR反応の阻害物質は、検出反応の前に、本発明の方法により除去するか、またはゲノム標準を使用することにより、検出反応の間に排除する。プール中、内部標準が適当な割合で増幅可能であり、また検出可能であるなら、そのような阻害物質の存在は排除される。
【0080】
ヘパリンのような血漿中に存在する物質、高塩濃縮物およびポリエチレングリコールが、PCR反応を阻害し得ることは周知である(BioTechniques 9(2)、166(1990)、およびJournal of Clinical Microbiology 29(4)、676−679(1991))。
【0081】
従って、本発明の方法の好ましい態様は、存在する可能性のある増幅の阻害物質を、個々の献血漿中、または試料プール中から除去する、または消失させることを特徴とする。
【0082】
血液、血漿または血清中の増幅阻害物質を除去する、または中和するための、これらのさらなる方法は、例えば、試料の超遠心分離、およびその中に含まれる阻害物質を含む上清をデカントすること、および核酸の抽出、さらにはまたヘパリナーゼ、ポリアミンを用いての試料の処理、またはHPLCによる核酸の予備精製を含んでなる。核酸の無制限増幅を、より高い純度の核酸により確実なものとする。
【0083】
該方法の好ましい変更態様により、幾つかのウイルスに特異的なプライマー対を増幅試験に使用し、その結果、幾つかの種類のウイルスの存在を同時にアッセイすることができる。特に好ましい試験では、HIV、HAV、HBVおよびHCVの群から選択される、2つまたはそれ以上のウイルスがアッセイされる。
【0084】
特に、RNAウイルスは、この変異体または既知の株のサブタイプが大変迅速に発生し得、そのゲノム配列が野生型配列のものとは幾分異なる結果として、高い変異率を受けやすい。しかし、例えば、PCRのような、鋭敏な増幅方法の場合には、試料中に実在するコピーを測定するために、特に高い増幅効率が、非常に少ないコピー数のウイルスゲノム配列の検出および定量測定に欠くことができない。プライマーのテンプレートとの不十分なアニーリングは、それらの効率を減少させる。従って、プライマーを選択する際の適当な注意を確実なものとしなければならない。
【0085】
好ましいプライマー対は、それらがアッセイすべき個々の血液原ウイルスの保存されたゲノム配列をコードするよう選択され、そのプライマーの適合性は、調査すべきウイルスの典型的な試料横断切片(cross section)の適当な試料において確立される。
【0086】
以前同定された、HIV、HCVおよびHBVの既知のゲノム配列の他に、それらのサブタイプもまた、増幅反応のためのプライマーを選択することにより検出することができる。本発明により、このことは、使用するプライマーを各々のウイルスの高度に保存されたゲノム領域から選択することで達成される。従って、全ての関連あるサブタイプに対する特異性が確認されているプライマーのみが、LIF−PCRおよびDTS−PCRによる本発明の出発原料または中間体の選択に使用されるであろう。
【0087】
疫学モニターの範囲内では、標的ウイルスの、新たに発生したウイルス株をアッセイして、それらが対応するテンプレートを含むかどうかを調べ、使用するプライマーを、これに対して配向する。次いで、既知のウイルス株群内で見出される変化を基に、新規ウイルス性株に関して実在するコピーの定量的な検出に適当な新規プライマーを合成することが可能であろう。そこで、新たに合成されたプライマーが有するアッセイの感度は、既に試験されているプライマーの感度と少なくとも同等でなければならない。
【0088】
保存された核酸配列のための新規プライマーを、新たに発生する標的ウイルスのために開発しなければならない。
【0089】
試料中の核酸を検出する、または測定する方法を調べるために、好ましくは、該方法を行う前または間に、1つまたはそれ以上の内部標準または標準品を試料に加え、その標準物質は、全く同じアッセイ容器中、存在し得る全てのウイルスゲノムまたはゲノム配列と同時に検出され、または測定される。
【0090】
この方法は、特に、内部標準を各々の増幅反応の検出限界に近い量で使用するならば、ウイルス核酸の含量の一層正確な定量または増幅方法の検出限界の一層良好な評価の可能性を提供する。
【0091】
本発明により合わせて、品質保証された血漿プールとした個々の献物を、さらなる同様に品質保証された血漿プールと合わせることができるので、品質保証されたミニプール、マクロプールまたはマルチマクロプールが提供される。品質保証された、より小さなプールから製造される、より大きなプールの利点は、既に十分記載した。
【0092】
さらなる態様により、本発明は、血漿プールを、2つまたはそれ以上の個々の献物から、複製可能なウイルスによる、確かめられた、限定された汚染を伴う、品質保証された出発原料として製造する方法であって、以下の工程:
− 試料をn個の献物から採取し、
− 個々の献物試料を合わせて、mの試料プールとし、
− この試料プール中に存在するウイルスゲノムまたはゲノム配列の量を、核酸の検出または測定のための、定量可能な、制御された、および非阻害的方法によって検出する
により特徴付けられる方法に関し、
その方法においては、試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出量が、ある一定の限界値以下にある、個々の献物(n)を合わせて、品質保証された血漿プールとして、試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出量が、限界値より大きいか、または限界値に等しい、個々の献物(n)を、さらなる処理にかけるか、または排除する(nおよびmは正の整数である)。例えば、ウイルスゲノム当量を消失させることにより、またはウイルス中和抗体含有画分を混合することにより、個々の献物のさらなる処理を行うことができる。
【0093】
さらなる方法の工程では、排除されるn個の献物のさらなる処理に関してもまた、試料を再び採取するのがよく、またこれらの個々の献物試料を合わせて、mの試料プールとするのがよい(nおよびmは、m2の正の整数であって、m:nの割合は、m:nの割合より大きい)。この試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の量を、核酸の検出または測定のための、定量可能な、制御された、および非阻害的方法によって再び検出することができ、ここで、試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出量が、ある一定の限界値以下にある、個々の献物を合わせて、品質保証された血漿プールとして、ウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出量が、限界値に等しいか、限界値より大きい、個々の献物を、さらなる処理にかけるか、または排除する。さらに処理すべき、または排除すべき個々の献物の数が、ある一定数に達するか、または一定数以下となるまで、この方法を繰り返すことができる。
【0094】
これらの方法により、許容不可能なほど高い負荷の複製可能なウイルスを含む可能性のある全ての個々の献血漿を、ほぼ無限に大きな血漿プールから幾つかの試験で排除することを可能とするための、簡単な方法を提供する。他方では、ウイルスで汚染された個々の献物と一緒に、今までに利用した方法により排除されてきた適当な個々の献物は、合わせて分析するなら、簡単な方法の工程により認識され、また最終血漿誘導体へと処理することができる。
【0095】
従って、本発明のさらなる目的、すなわち、大きな血漿プール中でさえも、たった1人の感染したドナーを、さらなる献物から排除して、直ちに医療処置に付すために、簡単かつ低コストの方法で発見することを達成することができる。そのことで、ドナー集団の安全性が増大する。
【0096】
本発明の方法を受ける血漿プールにより含まれてなる個々の献物の数は、通常、2〜200,000(n=2〜200,000)、また好ましくは20〜20,000、さらに好ましくは200〜2,000、またとりわけ200に達する。数字mは、特に、1〜100,000の間、また好ましくは2〜1,000の間にある。さらに処理すべき、または事実上、排除すべき個々の献物に対して決められた数は、100、好ましくは10、また特に好ましくは1に達する。従って、最後の場合、ウイルスで汚染された個々の献物は、それ相当に同定される。しかし、実際、このことは、血漿ドナーを同定するという理由でのみ示される;従って、その数は、通常、10〜100の間で決められる。
【0097】
必要ならば、核酸の検出または測定に加えて、アッセイすべきウイルスに対するウイルス中和抗体に関して、血漿プールをアッセイすることができる。
【0098】
概して、ウイルスに対する抗体が見出された試料プールを用いて、各々の個々の献物を合わせて、さらに使用する。次いで、試料プール中、抗体が全く検出されていない個々の献物をさらなる処理に回すか、または排除する。
【0099】
さらに、本発明は、本発明の方法の範囲内で製造される、品質保証された出発原料または中間体、特に血漿プールに関し、さらにはまた、好ましくは、ウイルスゲノム当量に関して、またはウイルス中和抗体の存在に関して、各々、一度以上アッセイされている、品質保証された最終血漿誘導体に関する。
【0100】
本発明はまた、医薬品製剤化工程により、ヒト血漿起源の品質保証された最終血漿誘導体から得ることができる薬物をも含んでなる。
【0101】
さらなる態様により、本発明は、複製可能な様々な血液原ウイルスを含まない、1以上の血漿誘導体を含む薬物の製造方法に関し、この方法は、以下の方法の工程により特徴付けられる:
− 血漿誘導体の製造中に生じ、またヒト血漿から誘導される出発原料または中間体を与え、
− 複製可能な血液原ウイルスによるウイルス汚染の不在を実証することにより、またはそのような汚染が、ある特定の限界値を越えない量で存在することを測定することにより、出発原料または中間体の品質を保証し、
− 出発原料または中間体各々の中の過剰のウイルス中和抗体により、または献血漿時の血漿ドナーの防御免疫により、幾つかの複製可能な血液原ウイルスによる汚染の不在を検出し、
− あるいは、問題の各々のウイルスのゲノム当量を、出発原料中、または中間体中、各々、測定し、
− このようにして品質保証された出発原料または中間体を各々、少なくとも1つのさらなる実質的なウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかけて、血漿誘導体を完成し、
− このようにして得られた品質保証された最終血漿誘導体を、公知の方法により後処理して、薬物とする。
【0102】
ヒト血漿から薬物を製造するための好ましい方法では、その製造方法中、品質保証工程を少なくとも1つの中間体に用いる。
【0103】
好ましい態様により、該品質保証工程は、実質的なウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかける中間体に対して行う。最も好ましくは、実質的なウイルス消失またはウイルス不活性化工程にかけるべき、各々の中間体の品質保証である。
本発明を以下の実施例により記載するが、これは、本発明を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0104】
実施例1
1. PCRの通則
1.1. DTS−PCR(二重標的化サザンブロット)の通則
第1の特異的プライマー対によって、核酸をPCRで増幅した後、そのPCR産物をアガロースゲルでの電気泳動により分離して、フィルターにブロットさせる。フィルターに結合させたPCR産物をジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブとハイブリダイズさせると、これが増幅されたゲノム配列内に結合し、発生反応後に検出する。デンシトメーターによって、バンド強度を定量的に測定する。第1のプライマーとは異なる第2のプライマー対を使用する、さらなるPCRでは、核酸を増幅して、サザンブロット分析によってもまた検出する。ゲノム配列の2つの異なる領域のPCR、およびハイブリダイゼーションによる、それらの視覚化により、誤った陰性の結果を減らすことができ、また陽性の結果を確かめることができる。
【0105】
1.2. LIF−PCR(レーザー誘起蛍光標識化)の通則
蛍光基を有するプライマーを使用するPCRによって、様々な起源の核酸を増幅した。レーザー誘起蛍光測定装置を備えた自動DNAシークエンサー(Applied Biosystems製のGene Scan(商標) ソフトウェアを備えたDNA Sequencer 373A)の助けをもって、得られた増幅産物の分析および定量を行った。この装置により、変性条件下、ポリアクリルアミドゲル中でのゲル電気泳動によって、蛍光標識化PCR産物をサイズにより分離して、それらの量を定量的に測定することができる。試料中の幾つかの配列のコピー数を、定量すべき核酸、および少なくとも2つの内部標準に関して得られた強度に基づいて測定する。
【0106】
1.2.1. ウイルス粒子のDNAの抽出
超遠心分離機中、試料500μlを70,000rpmで20分間遠心分離した。ペレットを、10mM トリス/HCl(pH 8.0)500μl、およびプロテイナーゼ K(Boehringer Mannheim、20mg/ml)10μl、さらにはまた20% SDS10μlに溶解する。37℃で一晩インキュベーションするか、または56℃で4時間インキュベーションした後、既知量の標準核酸を加え、試料をフェノールおよびクロロホルムで順次抽出した後、グリコゲン(Boehringer Mannheim、20mg/ml)10μlを加える。続いて、生成物をエタノールで沈殿させ、遠心分離して、ペレットを洗浄して、最終的には、水に溶解する。
【0107】
1.2.2. 残留ウイルスDNAの抽出
試料500μlを、10mM トリス/HCl(pH 8.0)5μl、およびプロテイナーゼ K(20mg/ml)10μlに溶解する。37℃で一晩インキュベーションするか、または56℃で4時間インキュベーションした後、既知量の標準核酸を加え、試料をフェノールおよびクロロホルムで順次抽出して、グリコゲン(20mg/ml)10μlを加える。続いて、生成物をエタノールで沈殿させ、遠心分離して、ペレットを洗浄して、最終的には、水に再び溶解する。
【0108】
1.2.3. PCRのためのRNAの抽出
血漿またはPBSで希釈した血漿1mlを70,000rpmで20分間遠心分離する。上清を吸引により取り除いた。ペレットを、イソチオシアン酸グアニジウム溶液(BiotexのRNAzol)1ml、および酵母由来の1mg/ml tRNA5μlにとって、20μlのような、予め決められた量の標準RNAを加えた。400および1,200コピーといったような、指定された数の(−)RNA標準および(+)RNA標準を加えて、渦流する(vortexed)。その溶液を70℃で10分間加熱し、1/10体積のクロロホルムを加えた後、その混合物を氷上で10分間インキュベートする。次いで、卓上遠心分離機中、これを5分間遠心分離して、上清を新しい管に移す。イソプロパノール500μlを加えて、温度を−80℃で15分間維持する。次いで、これを10分間遠心分離し、70% エタノールで2回洗浄して、ペレットを水50μlにとる。RT−PCRの場合には、5μlを使用した。
【0109】
1.2.4. DNAの検出のためのPCR
PCR製剤は、抽出された核酸のアリコート、PCR緩衝液(Boehringer Mannheim)、MgCl、dNTPs、プライマー、Taq ポリメラーゼ(Boehringer Mannheim、5.0ユニット/μl)および水を既知の方法で含む。緩衝液および酵素の製造業者の指示に従って、また従来の方法に従って、PCRを行う(Mullisら、Methods in Enzymology 155:335、1987)。
【0110】
1.2.5. HIV RNAの検出のためのRT−PCR
RT−PCR製剤は、Perkin−Elmer製のRT緩衝液中の抽出された核酸のアリコート、MgCl、dNTPs、RT プライマー、およびrT.th. ポリメラーゼ(Perkin−Elmer、2.5ユニット/μl)および水を通常の方法で含む。緩衝液および酵素の製造業者の指示に従って、また従来の方法に従って、RTをPCR装置(Perkin−ElmerのGeneAmp PCR System 9600)で行う(Mullisら、Methods in Enzymology 155:335、1987)。
PCRの場合には、MgCl、キレート緩衝剤、および第2のプライマーをさらに加える。次いで、PCRを上記のように行う。
【0111】
1.2.6. 生成物の分析
PCR産物の測定および定量のために、0.5〜1.0μlをPCR溶液から採取して、製造業者の指示に従って、Applied Biosystems 373A装置で分析する。
【0112】
1.3. サザンブロットおよびDTS−PCR産物の検出
各々の生成物に意図された濃度でのPCR産物のゲル電気泳動分離のために、アガロースゲルを調製した。ゲル操作は、電気泳動用の1×操作用(running)緩衝液中で行った。PCR産物試料を、0.5×操作用緩衝液中のフィコール/ブロモフェノールブルーと混合して、調製したゲルスロットを変えた。ゲル操作後、そのゲルを0.5M NaOH/1.5M NaCl中で1時間インキュベーションすることにより、PCR産物を変性させた後、中和した。DNAをフィルター(DuralonTM、Stratagene、La Jolla、California)に移して、核酸をUV架橋(cross linking)より膜に結合させた。プレハイブリダイゼーション緩衝液(6×SSC、0.5% SDS、5×Denhardt's、100μg/ml 変性DNA)中、その膜を68℃で1時間インキュベートした。ハイブリダイゼーションでジゴキシゲニン標識化DNAプローブで起こした後、アルカリ性ホスファターゼがコンジュゲートした抗体、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、および5−ブロモ−1−クロロ−3−インドールホスフェート(BCIP)によって、免疫染色によるバンドの視覚化を成し遂げた。ブロットをデンシトメトリーにより評価した。
【0113】
1.4. 使用したプライマー
LIF−PCRに使用したプライマーを表1.1.および表1.2.に要約する。
DTS−PCRに使用したプライマーは、HIVの場合には、SK38、SK39、SK145およびSK431(Ratnerら、1985);HCVの場合には、32、R3、CHAA、R1、ConA1、ConaA2およびConA(Chironから入手可能);およびHBVの場合には、HBV1aおよびHBV1b(Kanekoら、1989)、さらにはまたHBV4aおよびHBV4b(Carmanら、1989)である。
【表1−1】

【表1−2】

【0114】
実施例 2:
2.1. LIF−PCRおよびDTS−PCRによる、ドナー由来の血漿試料中のHIV RNAの定量
献血漿を、HIV 血清(−)の健康な被験者、およびHIV 血清(−)、p24抗原(+)の一次感染した被験者から採取した。ドナーの血漿試料をLIF−PCRおよびDTS−PCRによって試験した。DTS−PCRによる試料試験を、プライマー対 SK145/431(プライマー対 1)およびSK38/39(プライマー対 2)(表1.1.)で行った;正のハイブリダイゼーションシグナルを有する試料をLIF−PCRによってさらに試験した。LIF−PCRによって定量する場合には、HIV−1のcDNA配列に結合し、野生型RNAのRT−PCRによって115bpのPCR産物を与える、プライマー SK38およびSK39(表 1.1)を使用した。標準プラスミド、pgag1、pgag−15およびpgag+12(表1.2.)を使用した結果、115bp(pgag1)、100bp(pgag−15)および127bp(pgag+12)のRT−PCR産物が生じた。標準プラスミドを共増幅し(coamplified)、Gene Scan(商標)で共分析して(coanalyzed)、コピー数/mlを測定した。定量的評価の結果を表2に要約する。
【表2】

HIV 血清(−)、p24抗原(+)の血漿ドナーでは、最小汚染は2.8×10、最大汚染は2.3×10コピー/mlであることが測定された。
【0115】
2.2. LIF−PCRおよびDTS−PCRによる、ドナー由来の血漿試料中のHCV RNAの定量
献血漿を、HCV 血清(−)の健康な被験者、およびHCVの一次感染した被験者から採取した。ドナー由来の血漿試料をLIF−PCRおよびDTS−PCRによって試験した。試料のDTS−PCR試験を、プライマー対 32/R3(プライマー対 1)およびCHAA/R1(プライマー対 2)(Chiron)で行った;正のハイブリダイゼーションシグナルを有する試料を、LIF−PCRによってさらに試験した。LIF−PCRにより定量する場合には、HCVのcDNA配列に結合して、RT−PCRにより野生型RNAから誘導される114bpの産物を与える、プライマー HCV32およびHCVPT4(表 1.1)を使用した。標準プラスミドとして、pHCVwt、pHCV−7およびpHCV+8(表1.2.)を使用した結果、長さ 114bp(pHCVwt)、107bp(pHCV−7)および122bp(pHCV+8)のRT−PCR産物が生じた。標準プラスミドを試料で共増幅し、Gene Scan(商標)で共分析して、コピー数/mlを測定した。定量的測定の結果を表3に要約する。
【表3】

HCV 血清(−)の一次感染した血漿ドナーでは、最小汚染は2.2×10コピー/ml、最大汚染は1.6×10コピー/mlであることが測定された。
【0116】
2.3. LIF−PCRおよびDTS−PCRによる、ドナー由来の血漿試料中のHBV DNAの定量
献血漿を、HBV 血清(−)の健康な被験者、並びに一次感染した、HBsAg(+)、抗HBsAg 血清(−)、およびHBsAg(+)、抗HBsAg 血清(+)の被験者から採取した。ドナーの血漿試料をLIF−PCRおよびDTS−PCRによってアッセイした。DTS−PCRによる試料試験を、プライマー対 HBV1a/HBV1b(プライマー対 1)およびHBV4a/HBV4b(プライマー対 2)で行った(Carmanら、1989);正のハイブリダイゼーションシグナルを有する試料をLIF−PCRによってさらに試験した。LIF−PCRにより定量する場合には、HBVゲノムのcDNA配列に結合して、RT−PCRにより野生型RNAから誘導される182bpのPCR産物を与える、プライマー HBV+1780BおよびHBV−1950B(表1.1.)を使用した。標準プラスミド、pHBVwt、pHBV−9およびpHBV+12(表1.2.)を使用したが、これらは、182bp(pHBVwt)、173bp(pHBV−9)および194bp(pHBV+12)のRT−PCR産物を与える。標準プラスミドを試料で共増幅し、Gene Scan(商標)で共分析して、コピー数/mlを測定した。定量的評価の結果を表4に要約する。
【表4】

【0117】
HBV 血清(−)の一次感染した血漿ドナーでは、最小汚染は1.4×10コピー/ml、また最大汚染は1.3×10コピー/mlであることが各々測定された。
【0118】
実施例 3:
3.1. HIV−1 RNAに関する様々なサイズの血漿プールのアッセイ
10、50、100、500、1,000および2,000のHIV 血清(−)、p24抗原(−)の健康な個々のドナー由来の血漿試料を、試料プール中に混合した。各々の個々のプールサイズを、実施例1でのように測定された2.3×10コピー/ml(試料)という高いウイルス負荷で一次HIV感染したドナー由来の1つの血漿試料と、実施例1でのように測定された2.8×10コピー/ml(試料 2)という最小汚染で一次HIV感染したドナー由来の1つの血漿試料と、また対照として、1×10コピー/ml(試料 3)、および1×10コピー/ml(試料 4)であるHIV RNAの規定された製剤と混合した。各々のプールサイズに関する定量可能なウイルスのコピー数/mlを、LIF−PCRによって測定した。PCR評価の結果を表5.1.に要約する。
【0119】
結果:
表5.1.は、高い負荷(2.3×10コピー/ml)を有する、さらにはまた最小汚染(3.8×10コピー/ml)を有する、一次感染した、抗−HIV 血清(−)、p24抗原(+)の個々の献物でのウイルス汚染を、10、50、100および500の個々の献物の血漿プール中、PCRによって検出することができることを示す。HIV−RNAで高度に汚染された献物はまた、1,000および2,000の個々のドナー由来の血漿プール中でも検出することができた;他方、最小汚染を伴う献物はもはや、このサイズのプールでは検出することができなかった。個々の献物中、1×10コピー/mlでの汚染により引き起こされるHIV−RNA負荷は、10個までの献物のプール中で検出することができた。試験したプールサイズではいずれも、個々の献物中、1×10コピー/mlの汚染レベルでウイルスゲノム配列を検出することは不可能であった。
【表5−1】

【0120】
3.2. 試料を濃縮することによる感度の増大
HIV−RNAのコピーを検出することができなかったプールサイズでの検出感度を増大させるために、プールした血漿の10倍濃縮した試料をPCRに使用した。この目的のために、実施例3.1.で使用した、試料2、3および4の個々の血漿プールの各々の場合における試料体積の10倍体積を遠心分離により濃縮し、1/10の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した。PCR評価の結果を表5.2.に要約する。
【0121】
PCRの初期試料体積を10倍濃縮することにより、1つの一次HIV感染した献物を含む2,000の個々のドナー由来のプールの最小汚染を検出することが可能であった(2.8×10コピー/ml)。同様に、たった1つの献物中に1×10コピー/mlのウイルス汚染を伴う、50および100の個々のドナー由来の血漿プール中での検出の感度を増大させることが可能であった。たった1つの献物中の1×10コピー/mlでのウイルス汚染は、10の個々のドナー由来の最も小さなプールサイズでしか検出することができなかった。
【0122】
次に大きいプールサイズでのウイルスゲノムの検出を改良するために、100倍の初期体積の、実施例3.1.で使用した試料3および4を、さらなる実験において濃縮し、1/100の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した。PCR評価の結果を表5.3.に要約する。
【0123】
血漿試料を100倍濃縮することにより、たった1つの献物中の1×10コピー/mlのウイルスHIVゲノム汚染をさらに、500、1,000および2,000の個々のドナー由来の血漿プール中で検出することができた。
【表5−2】


【表5−3】

【0124】
実施例 4
4.1. HCV−RNAに関する様々なサイズの血漿プールの試験
10、50、100、500および1,000のHCV 血清(−)の健康な個々のドナー由来の血漿試料を混合して、試料プールとした。各々の個々のプールサイズを、実施例1でのように測定された1.6×10コピー/ml(試料 1)という高い汚染を有する、一次HCV感染したドナーの献血漿に由来する1つの血漿試料と、実施例1でのように測定された2.2×10コピー/ml(試料 2)という最小汚染で一次感染したドナー由来の1つの血漿試料と、また対象として、1×10コピー/ml(試料 3)、および5×10コピー/ml(試料 4)であるHCVの規定された製剤と混合した。各々のプールサイズに関する、定量可能なコピー数/mlを、PCRによって測定した。PCR評価の結果を表6.1.に要約する。
【0125】
結果:
表6.1.は、1.6×10コピー/mlという高い汚染を有する、一次感染した献物でのウイルス汚染を、10、50、100、500、および1,000個の献物からなる血漿プール中で検出することができることを示す。100、500および1,000の個々のドナー由来のプールでは、たった1つの、最小限度に汚染された献物(2.2×10コピー/ml)により引き起こされるHCV−RNAはもはや、検出することができなかった。HCVゲノム当量の検出は、10および50までのドナー由来のプール中、たった1つの献物における2.2×10コピー/mlの汚染で可能である。たった1つの献物における約1×10または5×10コピー/mlという、より少ない数のHCVコピーでのウイルスゲノム当量汚染は、試験したプールサイズではいずれも検出することができなかった。
【表6−1】

【0126】
4.2. 試料を濃縮することによる感度の増大
HCV−RNAのコピーを検出することができなかったプールサイズでの感度を増大させるために、プールした血漿の10倍濃縮した試料をPCRに使用した。この目的のために、実施例4.1.で使用した、試料2、3および4の個々の血漿プールの各々の場合における試料体積の10倍体積を遠心分離により濃縮し、1/10の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した。PCR評価の結果を表6.2.に要約する。
PCRの初期試料体積を10倍濃縮することにより、1つの一次HCV感染した献物を含む10、50および500の個々のドナー由来のプールの最小負荷を検出することが可能であった(2.2×10コピー/ml)。同様に、10の個々のドナー由来の血漿プール中、たった1つの献物における1×10または5×10コピー/mlという、各々のウイルス汚染の検出の感度を増大させることが可能であった。
【0127】
次に大きいプールサイズでのウイルスゲノムの検出を改良するために、100倍の初期体積の、実施例4.1.で使用した試料3および4を、さらなる実験において濃縮し、1/100の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した。PCR評価の結果を表6.3.に要約する。
【0128】
血漿試料を100倍濃縮することにより、たった1つの献物中の1×10および5×10コピー/mlのウイルスHCVゲノム汚染をさらに、100の個々のドナー由来の血漿プール中で検出することができた。
【表6−2】

【表6−3】

【0129】
実施例 5:
5.1. HBV−DNAに関する様々なサイズの血漿プールの試験
10、50、100、500、1,000および2,000のHBV 血清(−)の健康な個々のドナーの血漿試料を混合して、試料プールとした。そのプールを、実施例1でのように測定された1.3×10コピー/ml(試料 1)という高い汚染を有する、一次HBV感染したドナー由来の血漿試料と、実施例1でのように測定された1.4×10コピー/ml(試料 2)という最小汚染で一次感染したドナー由来の血漿と、また対象として、5×10コピー/ml(試料 3)、および1×10コピー/ml(試料 4)であるHBVの規定された製剤と混合した。各々のプールサイズに関する、定量可能なコピー数/mlを、PCRによって測定した。PCR評価の結果を表7.1.に要約する。
表7.1.は、高いゲノム汚染を有する、一次HBV感染した献物でのウイルス汚染を、10、50、100、500、1,000および2,000個の献物からなる血漿試料プール中で検出することができることを示す。500、1,000および2,000の個々のドナー由来のプールでは、たった1つの、最小限度に汚染された献物(1.4×10コピー/ml)により引き起こされるHBV−DNAはもはや、検出することができなかった。HBVゲノム当量の検出は、10および50までのドナー由来のプール中、たった1つの献物における5×10コピー/mlの汚染で、また10までのドナー由来のプール中、たった1つの献物における1×10コピー/mlの汚染で可能であった。
【表7−1】

【0130】
5.2. 試料を濃縮することによる感度の増大
HBV−DNAのコピーを検出することができなかったプールサイズでの感度を増大させるために、プールした血漿の10倍濃縮した試料をPCRに使用した。この目的のために、実施例5.1.で使用した、試料2、3および4の個々の血漿プールの各々の場合における試料体積の10倍体積を遠心分離により濃縮し、1/10の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した。PCR評価の結果を表7.2.に要約する。
PCRの初期試料体積を10倍濃縮することにより、1.4×10コピー/mlという、1つの一次HBV感染した献物を含む500の個々のドナー由来のプールの最小負荷を検出することが可能であった。同様に、100および500の個々のドナー由来の血漿プール中、たった1つの献物に由来する5×10コピー/mlのウイルス汚染を、また50および100の個々のドナー由来の血漿プール中、たった1つの献物に由来する1×10コピー/mlの汚染を検出する感度を増大させることが可能であった。
次に大きいプールサイズでのウイルスゲノムの検出を改良するために、100倍の初期体積の、実施例5.1.で使用した試料3および4を、さらなる実験において濃縮し、1/100の初期体積を有する緩衝液中に再び懸濁させて、PCRに使用した(表7.3.)。
【0131】
結果:
血漿試料を100倍濃縮することにより、たった1つの献物中の1×10コピー/mlのウイルスHIVゲノム汚染をさらに、500および1,000の個々のドナー由来の血漿プール中で検出することができた。
【表7−2】

【表7−3】

【0132】
実施例 6:
HIVおよびHCV RNAに関する様々なサイズの血漿プールの試験
10、50、100、500、1,000および2,000のHIV 血清(−)およびHCV 血清(−)の健康な個々のドナー由来の血漿試料を混合して、血漿試料プールとした。各々の個々のプールサイズを、実施例2.1.および2.2.でのように測定された2.3×10コピー/mlという高いHIV負荷、および1.6×10コピー/ml(試料 1)というHCV負荷、並びに実施例2.1.および2.2.でのように測定された2.8×10コピー/mlという最小HIV負荷、および2.2×10コピー/ml(試料 2)というHCV負荷を有する、一次HIV感染したドナー由来の血漿試料、および一次HCV感染したドナー由来の血漿試料、また対照として、1×10コピー/mlであるHIV、および1×10コピー/ml(試料 3)であるHCVの規定された製剤、並びに1×10コピー/mlであるHIV、および2×10コピー/ml(試料 4)であるHCVの製剤と混合した。HIVおよびHCVに特異的な核酸の存在に関して、各々のプールサイズを、HIVおよびHCVに特異的なプライマーを用いてのLIF−PCRによって試験した。1,000の個々のドナー由来のプールサイズまでの、たった1つの献物による2.3×10 HIVコピー/mlおよび1.6×10 HCVコピー/mlという最大汚染を伴う汚染で、HIVに特異的なゲノム配列およびHCVに特異的なゲノム配列を検出することが可能であった。HIVゲノム当量はさらに、僅かに汚染された献物で汚染された500個の献物のプール中で見出されたが、HCVゲノム当量は、50の個々のドナー由来のプール中でしか見出すことはできなかった。従って、試験したプール中でのHCVゲノム配列の検出に対する感度は、HIVゲノム配列に対する感度より対数減衰的に(log step)低い。
【0133】
7.プール中のHAVウイルス汚染に対する、HAV免疫化献物の中和効果の検出
HAV免疫化ドナー由来の献血漿の中和能力は、インビトロにおける中和試験により示すことができる。
血漿中に存在するA型肝炎ウイルスに対するHAV抗体の中和効果を検出するために、防御免疫を有する100の予め免疫化されたHAVドナー由来の血漿プールを試験して、そのプールをHAV(タイター 106.4TCID50/ml)と混合した。37℃で1時間インキュベーションした後、HAVタイターを測定した。血漿プール中に存在するHAV抗体により、HAV感染力を対数減衰的に4.6まで減少させることができた。このことは、免疫されたドナー由来の血漿中に存在する防御抗体が、より大きな血漿プール中でのウイルス汚染を中和することができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生できるある血液ウイルスによる汚染に関し品質保証された血漿プール(品質保証血漿プール)を製造する方法であって、以下のことを特徴とする方法:
(a)再生できるある血液ウイルスによる個別の献血漿の汚染の不存在を、対応するウイルス血症を示すマーカーの不存在により、または出発材料中における過剰のウイルス中和抗体により、または献血漿の時の血漿ドナーの保護免疫により測定し;
(b)ウイルスのゲノム当量の測定を以下のように行う;
−n個の個々の献物 (donation) から試料をとり、
−その個々の献物試料をm個の試料プールに集め、
−それぞれ核酸検出または測定方法によりこれらの試料プール中に存在するウイルスゲノムまたはゲノム配列の量を、1つまたは数個の内部標準を添加することによる内部標準を用いて検出し、その標準は、多分存在するウイルスゲノムまたはウイルスゲノム配列を1つの同じ試験管中で同時にそれぞれ測定または検出し、
それによって試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が規定された限界値以下であるこれらの個々の献物(ng)を品質保証血漿プールに混合し、
試料プール中のウイルスゲノムまたはゲノム配列の検出された量が該規定された限界値より大きい、または等しいこれらの個々の献物(na)をさらなる処理に付すか、または除去する(nおよびmは正の整数である)。

【公開番号】特開2008−247913(P2008−247913A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111565(P2008−111565)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【分割の表示】特願平8−533598の分割
【原出願日】平成8年5月6日(1996.5.6)
【出願人】(591154762)イムノ・アクチエンゲゼルシャフト (4)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】