説明

1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシン

【課題】糸を針の糸捕捉鉤で確実に捕捉することができ、ミシンベッド内空間で縫目形成を行えるようにする。
【解決手段】鉤針13、回転する外釜202に装架される揺動する内釜205で構成される釜200、糸引出作動子401の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針13の第1ストロークにおいて送り歯601により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針13の第2ストロークにおいて送り歯601により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンに係り、特に糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
1本の糸で被縫製体の一側上で交互に見えたり隠れたりするピンポイントステッチを形成し、手縫いの風合いをかもし出す縫目は、国際標準であるISO4915Stitch Type104(チェーンステッチ)及びISO4915Stitch Type209(サドルステッチ/ハンドステッチ)として規格化されている。
【0003】
従来から、針に刺し通された1本の糸が刺し通された縫針、糸捕捉鉤を側設した鉤針、ルーパー及びスプレッダーを用いて、「104」縫目をピンポイントステッチ(擬似ハンドステッチ)として形成し、星縫等の布ズレを防止するピンポイント縫いミシンが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このピンポイント縫いミシンは、1本の糸が刺し通された縫針と糸捕捉鉤を側設した鉤針を使用しているので、縫目ピッチは縫針と鉤針間の間隔に限定されるという欠点がある。また、このピンポイント縫いミシンにおいて、縫製時に、布の上側にはバルーンステッチが形成されるが、本来縫製されるピンポイントステッチが布の下側に形成されるので、作業者にとって目視できない状態で縫製作業が強いられることから、ピンポイント縫位置を確認することが困難となって正確な縫製ができないという欠点もある。また、このピンポイント縫いミシンにおける「104」縫目では、縫目を形成している糸を引張ることによって容易にほどけるので、上述した星縫等の布ズレを防止する機能を失ってしまうという欠点もある。
【0005】
この欠点を解決するため、回転釜に内装されるボビンに巻装された1本の糸で、1本の糸捕捉鉤を側設した鉤針、糸掛けフック、糸捕捉鉤への糸案内スプレッダ及び天秤を用いて、「104」縫目に類似する擬似ピンポイントステッチを形成する擬似ハンドステッチ縫いミシンが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭55−35481号公報(第5図、第6図、第7図)
【特許文献2】特公平4−3234号公報(=特開昭60−53175号公報 =U.S. Patent 4,590,878)(第11図、第13図、第14図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この擬似ハンドステッチ縫いミシンにおいて、縫製時に、布の上側には2重になった糸がハンドステッチ状に形成され、布の下側には錠縫縫目が形成される。しかしながら、この擬似ハンドステッチ縫いミシンでは、針の糸捕捉鉤への糸案内スプレッダは布を支える針板と回転釜の間に配置させる必要があるにも拘らず、天秤はその機能上、針板の直下に設置して、針板と回転釜の間に配置させ、かつ糸案内スプレッダを駆動する駆動機構を配置しなければならないので、限りあるミシンベッド内空間には、このような配置は具体的に実現できないものであった。
【0008】
また、この擬似ハンドステッチ縫いミシンでは、回転釜にくぐり込まれた糸が回転釜からくぐり出た糸を糸掛けフックで布の上方に引き上げなければならず、作業者は布上で、このような位置に手をもっていくことは極めて危険であり、布を移動する縫製作業に支障を来すという難点があった。したがって、この擬似ハンドステッチ縫いミシンを実施することは不可能である。
【0009】
また、キルト若しくは刺子又はパッチワークの作成に当たって、古来より手作業で縫製が行われている。これは極めて多大の手間を必要とし、重労働が強いられる作業となっている。そこで、ロックステッチ(ISO4915Stitch Type301)で縫製するミシンを用いて、使用される2本の糸のうち1本に透明糸を用いることにより、一見したところハンドステッチ縫いがかもしだされるようにする手法も採用されている。しかしながら、この手法で縫製された縫目では基本的にロックステッチミシンを用いていることにより、糸が連続して縫われているので、キルト若しくは刺子又はパッチワークで必要とされる縫製後の被縫製体表面に生じる凹凸を伴う柔らかさを追求するという本来のハンドステッチ縫いの風合いが得られないという難点がある。
【0010】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行なうとともに、縫目ピッチ及び縫目間ピッチを自由に設定できる1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、被縫製体の送り方向、即ち縫方向を1跳び縫いセット毎に可変とし、キルト若しくは刺子又はパッチワークに適する1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の要旨は、糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針、回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜、往復運動する糸引出作動子及び楕円運動する送り歯を協働させて、糸を針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉し、かつミシンベッド内空間で縫目形成を行なうことで、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させることを目的とする。また、本発明の要旨は、鉤針、回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成するにあたり、送り歯による被縫製体の送り量を縫目ピッチ送りと縫目間ピッチ送りに応じてそれぞれ変化させることで、縫目ピッチ及び縫目間ピッチを自由に設定できることを目的とする。
【0014】
この目的を達成するため本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、
(a)糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針が第1ストロークにおいて上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点に到達する直前から上昇する迄に、針板の下方にあって釜の回転する外釜に装架される内釜を揺動することにより内釜に内蔵した糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースの糸出口を揺動して糸出口から引き出されている糸を鉤針に周接して緊張させること、
(b)鉤針が下死点から上昇する際に、鉤針に周接して緊張されている糸を糸捕捉鉤で捕捉すること、
(c)鉤針を第1ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目ピッチ送りすること、
(d)鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を回転する外釜の剣先で掬うと共に、捕捉されていた糸を釜の回転によって糸捕捉鉤から解放すること、
(e)釜の剣先で掬われて解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れてボビンに巻装されている糸に交錯させ、釜からくぐり出た糸を糸締めすること、
(f)鉤針を第2ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目間ピッチ送りすること、
(g)(a)乃至(f)の工程を繰り返して被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることからなる。
【0015】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法において、糸出口は、糸捕捉鉤の開口方向と平行な方向に鉤針の針落ち位置を挟んで揺動するようにボビンケースに設けられる。
【0016】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が外釜の剣先で掬われた後、剣先で掬われた糸を釜にくぐり入れ、釜からくぐり出る直前にボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛け、釜からくぐり出た糸を糸締めし、次いで糸捕捉鉤で糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放することからなる。
【0017】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、第2ストロークにおいて鉤針が上死点から下降する際に糸捕捉鉤で捕捉された糸を鉤針の針先と被縫製体の間で糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せすることからなる。
【0018】
この1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、釜からくぐり出た糸を糸締めするにあたり、被縫製体の送り量に応じて糸締量を調節することからなる。
【0019】
また、上記の目的を達成するための本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法は、糸捕捉鉤が側設された鉤針、回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針の第1ストロークにおいて送り機構により被縫製体をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針の第2ストロークにおいて送り機構により被縫製体をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするにあたり、
縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、
1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、
設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構に伝達して送り機構により被縫製体を送ることからなる。
【0020】
また、上記の目的を達成するための本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、
上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から被縫製体から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸を捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、捕捉されていた糸を解放する糸捕捉鉤を側設した鉤針と、
下死点に到達する直前から上昇する迄に、針板の下方にあって釜の回転する外釜に装架される内釜を揺動することにより内釜に内蔵した糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースの糸出口を揺動して糸出口から引き出されている糸を鉤針に周接して緊張させる釜であって、第1ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目ピッチ送りすると共に、鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を掬う回転する外釜の剣先を有し、捕捉されていた糸を釜の回転によって糸捕捉鉤から解放し、釜の剣先で掬われて解放された糸を釜が更に回転することにより釜にくぐり入れてボビンに巻装されている糸に交錯させる釜と、
釜がさらに回転して釜からくぐり出た糸を糸締めする糸引出作動子と、
鉤針を第1ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに、鉤針を第2ストロークにおいて被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体を1縫目間ピッチ送りする送り機構とを備えることにより被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるものである。
【0021】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいて、外釜は、釜からくぐり出る直前の糸を剣先の回転平面から逃がす方向に偏倚して剣先が釜からくぐり出た糸を引掛けるのを回
避する外釜偏倚子を備えている。
【0022】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、内釜を揺動作動子により揺動自在に駆動する内釜揺動機構を備えている。
【0023】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいて、糸出口は、糸捕捉鉤の開口方向と平行な方向に鉤針の針落ち位置を挟んで揺動するようにボビンケースに設けられる。
【0024】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいて、糸引出作動子は、糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が外釜の剣先で掬われた後、剣先で掬われた糸を釜にくぐり入れ、釜からくぐり出る直前にボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛け、釜からくぐり出た糸を糸締めし、次いで糸捕捉鉤で糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放する機能を有する。
【0025】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、第2ストロークにおいて鉤針が上死点から下降する際に糸捕捉鉤で捕捉された糸を鉤針の針先と被縫製体の間で糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せする糸寄せ機構を備えている。
【0026】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、鉤針の糸捕捉鉤が鉤針の上死点から下降して被縫製体に貫通し、針板を越えるまでの期間及び下死点から上昇して糸捕捉鉤が糸を捕捉した後、針板を越え、被縫製体を抜け出して上死点に達するまでの期間に糸捕捉鉤を閉塞する蓋針を駆動する鉤針・蓋針駆動機構を備えている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、糸が針の糸捕捉鉤へ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハンドステッチに適する縫製ができる。
【0028】
更に、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。
【0029】
また、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、1本糸錠縫化縫目を形成している糸を引っ張ることによって容易にほどけることがないので、強固な縫製が得られる。
【0030】
また、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、鉤針、回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜、糸引出作動子の協働によって1本糸錠縫化縫目が形成されるので、縫目ピッチ、縫目間ピッチはそれぞれ自由に設定可能である。
【0031】
また、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンによれば、糸引出作動子がボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛ける前の待避位置が縫目ピッチ、縫目間ピッチが変動しても糸締調節機構により一定にすることができ、この一定の待避位置から、設定された送り量に応じて糸引出作動子の糸締量を調節するので綺麗なハンドステッチに仕上がる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンによる好ましい実施の形態例を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの駆動系統を示すブロック図である。
【図3(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(A)は鉤針が上死点の図である。
【図3(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す斜視図で、(B)は鉤針が下死点の図である。
【図4】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける鉤針・蓋針駆動機構を示す分解斜視図である。
【図5】鉤針と蓋針との関係を示す斜視図で、(A)は鉤針の糸捕捉鉤が蓋針で閉状態になった図、(B)は鉤針の糸捕捉鉤が開状態になった図である。
【図6】鉤針と蓋針との関係を示す部分斜視図で、(A)は鉤針の糸捕捉鉤が蓋針で閉状態になった図、(B)は鉤針の糸捕捉鉤が開状態になった図である。
【図7】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける押え機構を示す分解斜視図である。
【図8】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンで得られる擬似ハンドステッチ縫目構造を示す説明図である。
【図9】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り機構及び布送り駆動機構を示す分解斜視図である。
【図10】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り機構を示す斜視図である。
【図11】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける布送り駆動機構、送り量設定機構及びモード切換機構を示す分解斜視図である。
【図12】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜を示す斜視図である。
【図13】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける外釜駆動部、内釜揺動機構を示す斜視図である。
【図15】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける外釜駆動部、内釜揺動機構を示す分解斜視図である。
【図16(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸引出作動子駆動機構、糸締調節機構を示す斜視図である。
【図16(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸引出作動子駆動機構、糸締調節機構を示す分解斜視図である。
【図17(A)】図16(A)、図16(B)の糸締調節機構をミシンの下から見た時の動作状態を示す平面図である。
【図17(B)】図16(A)、図16(B)の糸締調節機構をミシンの下から見た時の動作状態を示す模式図である。
【図18(A)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(B)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(C)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(D)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(E)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(F)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(G)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(H)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(I)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(J)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(K)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(L)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(M)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(N)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図18(O)】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作について1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を示す動作説明図である。
【図19】本発明による1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの鉤針、内釜、外釜、糸引出作動子、蓋針及び送り歯の動作状態を示す動作説明図である。
【図20(A)】図18(G)に記載された釜を上から見た鉤針の糸捕捉準備状態を示す説明図である。
【図20(B)】図18(H)に記載された釜を上から見た鉤針の糸捕捉状態を示す説明図である。
【図21】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図22】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図23(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図23(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図24(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図24(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける送り量設定機構、モード切換機構、布送り機構及び布送り駆動機構を模式的に示す図である。
【図25(A)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸寄せ機構を示す斜視図である。
【図25(B)】本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおける糸寄せ機構を示す分解斜視図である。
【図26】図25(A)、図25(B)の糸寄せ機構の糸寄せの運動軌跡を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法及びミシンを実施の最良の形態例
について図面に基づき説明する。
【0034】
本発明の1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、図1、図2に示すように、ベッド1a、アーム1b及び支持脚柱部1cからなるフレーム1に、糸捕捉鉤13a(図6)を側設し垂直方向に直線往復運動して被縫製体21に1本の糸20を刺し通す鉤針13、回転する外釜202に装架され、揺動する内釜205で構成され、糸20を交錯させ縫目を作る釜200、往復運動して糸20に弛みを与えたり縫目を引き締めたりする糸引出作動子401及び楕円運動して被縫製体21を送り出す送り機構600が装着され、内釜205に内蔵したボビンケース207に収納されたボビン206に巻装された糸20で被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成させるものである。
【0035】
アーム1bには上軸5、支持脚柱部1cには中間軸8、ベッド1aには水平送り軸605、上下送り軸613及び釜軸201が、それぞれ軸方向が水平方向に設置されている。
【0036】
上軸5は上軸前メタル7及び上軸後メタル6で、中間軸8は中間軸前メタル9及び中間軸後メタル10でそれぞれ支持脚柱部1cに回動自在に設置されている。
【0037】
上軸5の一端には従動プーリ4が設けられモータMにより無端ベルトである駆動ベルトMBを介して駆動される。また、上軸5の他端には鉤針13を駆動する鉤針・蓋針駆動機構100の釣合錘101が設けられ、上軸5の中間には送り歯601を楕円運動させる布送り機構600を駆動する布送り駆動機構700が連結され、上軸5の従動プーリ4に近傍する部位には縫目ピッチ、縫目間ピッチの送り量設定機構300を駆動する上軸駆動プーリ25が設けられている。
【0038】
水平送り軸605は水平送り軸前メタル606及び水平送り軸後メタル607で、上下送り軸613は上下送り軸前メタル614及び上下送り軸後メタル611でそれぞれベッド1aに回動自在に設置されている。
【0039】
釜軸201は釜軸後メタル203及び釜軸前メタル204でベッド1aに回動自在に設置されると共に、上軸5に設けられた釜駆動プーリ230、釜軸201に設けられた釜軸プーリ232間に張設されたタイミングベルト231で駆動される。これによって釜200の外釜202は上軸5と1対1の回転数比で回転駆動される。
【0040】
鉤針・蓋針駆動機構100は、鉤針13を、上死点から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し、下死点から被縫製体21から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた糸20を解放する機構構成である。なお、本明細書において、「鉤針13の第1ストローク」とは鉤針13が針上死点→針下死点→針上死点に至るまでの1針目、「鉤針13の第2ストローク」とは鉤針13が針上死点→針下死点→針上死点に至るまでの2針目のことを意味する。
【0041】
鉤針・蓋針駆動機構100において、鉤針13は針留107に固定され、針留107は針棒上メタル105及び針棒下メタル106(図3(A))によって垂直方向に直線往復運動可能な状態でアーム1bに設置された針棒11の下端部に、針止めネジ108で固定されている。また、針棒上メタル105及び針棒下メタル106間の針棒11には針棒抱104が固定され、この針棒抱104に形成されたクランクロッドピン102は針棒クランクロッド103の一端が回動自在に連結され、針棒クランクロッド103の他端は上軸5の他端に固着された釣合錘101にクランクロッドピン102によって回動自在に連結
されている。したがって、針棒クランクロッド103が上軸5の回転により釣合錘101を介してクランク運動するので、鉤針13が針留107で固定された針棒11は針棒抱104によって垂直方向に直線往復運動する。
【0042】
また、鉤針・蓋針駆動機構100は、図3(A)、(B)、図4に示すように、針棒11に一端が枢着され他端にローラフォロワ134を有する蓋針駆動リンク132と、蓋針棒15に固着されローラフォロワ134を水平方向に移動可能に嵌合する溝138aを有する蓋針棒駆動腕138と、ローラフォロワ134を嵌入して鉤針13の上死点から下死点に向かって垂直方向に移動させると共に、下死点に向かって移動するローラフォロワ134を所定位置で水平方向に移動させる垂直溝135a、水平溝135bが形成されアーム1bに固定された板溝カム135とを備えている。
【0043】
蓋針駆動リンク132の一端は、針棒抱104の一端に形成されたピン104aにより回動自在に保持されている。針棒抱104の他端にはクランクロッドピン104bが形成され、クランクロッドピン104bには針棒クランクロッド103の一端が回動自在に連結されている。針棒抱104は針棒上メタル105及び針棒下メタル106間の針棒11に固定されている。また、蓋針駆動リンク132の他端にはローラ軸133が形成され、ローラ134aを回動自在に保持することでローラフォロワ134が構成される。
【0044】
蓋針棒駆動腕138は、蓋針棒上メタル113及び蓋針棒下メタル114間の蓋針棒15に固定されている。また、鉤針13の糸捕捉鉤13aは、蓋針14によって開閉される。この蓋針14は蓋針留111に蓋針止めネジ112で固定され、蓋針留111は蓋針棒上メタル113及び蓋針棒下メタル114によって垂直方向に直線往復運動可能な状態でアーム1bに設置された蓋針棒15の下端部に固定されている。また、板溝カム135は、垂直溝135a、水平溝135bが曲線溝で繋げられてL字状に形成されている。
【0045】
このように構成された鉤針・蓋針駆動機構100は、鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体21に貫通し、針板12を越えるまでの期間及び下死点から上昇して針板12を越え、被縫製体21を抜け出して上死点に達するまでの期間に糸捕捉鉤13aを閉塞する蓋針14を駆動することができる。
【0046】
具体的には、上軸5の回転により針棒11が上昇した場合には図3(A)に示すように、蓋針駆動リンク132のローラフォロワ134が板溝カム135の垂直溝135aに沿って上昇すると共に蓋針棒駆動腕138を上昇させる。この際、鉤針13の上昇と共に蓋針棒駆動腕138が固定された蓋針棒15を介して蓋針14も上昇するので、図5(A)、図6(A)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉状態になる。即ち、鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体21に貫通し、針板12を越えるまでの期間及び下死点から上昇して針板12を越え、被縫製体21を抜け出して上死点に達するまでの期間において糸捕捉鉤13aは蓋針14によって閉塞されることになる。また、上軸5の回転により針棒11が下降した場合には図3(B)に示すように、蓋針駆動リンク132のローラフォロワ134が板溝カム135の垂直溝135aに沿って下降後、水平溝135bに沿って水平移動する。この際、鉤針13は降下するが蓋針棒駆動腕138は停止するので、図5(B)、図6(B)に示すように、鉤針13の糸捕捉鉤13aは開状態になる。即ち、鉤針13の糸捕捉鉤13aが鉤針13の糸捕捉鉤13aが上死点から下降して被縫製体21に貫通し、針板12を越えた後、蓋針14が糸捕捉鉤13aから離れることにより糸捕捉鉤13aは開口されることになる。
【0047】
このように蓋針14を鉤針・蓋針駆動機構100で駆動するのは、鉤針13が被縫製体21を貫通する際に、糸捕捉鉤13aが被縫製体21の織り糸を引っ掛けて地糸切れの発生を防止すると共に、捕捉した糸が糸捕捉鉤13aより抜け出ることを防止するためである。
【0048】
鉤針・蓋針駆動機構100の近傍には図1、図2に示すように、被縫製体21を針板12に押え付けるための押え金501を動作させる押え機構500が設けられている。押え機構500は図7に示すように、押え棒503が垂直方向に直線往復運動可能にアーム1bに設置され、押え棒503の下端部に、押え金501が揺動自在に取り付けられた押え足502が押え止ネジ509で固定されている。また、押え棒503の上部には押え圧力調節ネジ508が固定され、押え圧力調節ネジ508はアーム1bの上部に螺合されている。押え棒503には押え棒抱505が固定され、押え棒抱505とアーム1bの下面との間には押え圧力調節バネ504が押え棒503に嵌めこまれている。押え圧力調節バネ504による押え金501の被縫製体21に対する押圧力は押え圧力調節ネジ508を回すことによって調節できる。さらに、押え金501を上下させるために、押え棒抱505に係合する押え上げレバー506がアーム1bに固定された押え上げレバー軸507に回動自在に設けられている。押え上げレバー506を上昇させると押え棒抱505が上昇し、下降させると押え棒抱505が下降する。したがって、押え上げレバー506を上昇させて押え金501及び針板12間に空間を作り、被縫製体21を針板12上に載せたら押え上げレバー506を下降させて被縫製体21を押え金501で針板12に押し付けることで、被縫製体21を針板12上にセットすることができる。
【0049】
布送り機構600は図1、図2に示すように、鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を1縫目ピッチ送りするとともに、鉤針13を第2ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を1縫目間ピッチ送りする送り歯601を備えている。ここで図8(A)、(B)、(C)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1とは被縫製体21の表面に形成されるハンドステッチ縫目の縫長さで、縫目間送りの1縫目間ピッチP2とは連続する2つのハンドステッチ縫目間の跳び縫い長さである。
【0050】
布送り機構600は図2、図9、図10に示すように、針板12の下方に設けられ、送り歯601が送り土台602の略中央部に固定されている。送り土台602の一端は、水平送り軸605の一方に固定された水平送り腕604に水平送り腕軸603によって回動自在に連結されている。したがって、水平送り軸605を往復回転させることで水平送り腕604が往復揺動するので、送り歯601を水平方向で往復運動させることができる。
【0051】
また、送り土台602の他端には上下送りローラ軸609が固定され、上下送りローラ軸609に上下送りローラ608が回動自在に設けられている。上下送りローラ608は、上下送り軸613の一方に固定された上下送り二又616の二又部616aに摺動可能に挿入されている。したがって、上下送り軸613を往復回転することで上下送り二又616が往復揺動するので、上下送り二又616に嵌り込んだ上下送りローラ608が送り土台602の他端を上下方向に往復運動させることができる。
【0052】
布送り駆動機構700は図9に示すように、後述する送り量設定機構300で設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて伝達して送り歯601により被縫製体21を送るもので、上軸5に、水平送り軸605を往復回転させる水平送りカム701と、上軸5に固定され上下送り軸613を往復回転させる上下送りカム717とが固定されている。なお、本明細書において、「各被縫製体送りモード」とは縫目ピッチ送りと縫目間ピッチ送りのことを意味する。
【0053】
水平送りカム701は偏心カムで、カム部701aには水平送り駆動ロッド702が回動自在に嵌合され、水平送り駆動ロッド702のアーム端702aには水平送り縦ロッド704の一端が連結ピン703で回動自在に連結されている。水平送り縦ロッド704の他端は、水平送り軸605の他方に固定された水平送り軸駆動腕705に連結ピン706で回動自在に連結されている。したがって、上軸5が回転すると水平送りカム701が水平送り駆動ロッド702を偏心運動させるので、水平送り縦ロッド704が上下運動して水平送り軸駆動腕705が水平送り軸605を往復回転させることができる。
【0054】
上下送りカム717は偏心カムで、カム部717aには上下送り縦ロッド714の一端が回動自在に嵌合され、上下送り縦ロッド714の他端は、上下送り軸613の他方に固定された上下送り軸駆動腕715に連結ピン716で回動自在に連結されている。したがって、上軸5が回転すると上下送りカム717が上下送り縦ロッド714の一端を偏心運動させるので、上下送り縦ロッド714自体が上下運動して上下送り軸駆動腕715が上下送り軸613を往復回転させることができる。
【0055】
このように水平送り軸605を往復回転させることで、水平送り腕604が往復揺動して送り土台602を水平方向で往復運動させ、上下送り軸613を往復回転させることで、上下送り二又616が往復揺動して上下送り二又616に嵌り込んだ上下送りローラ608が送り土台602の他端を上下方向に往復運動させる。したがって、送り土台602に固定された送り歯601は、上昇→前進→下降→後退という所謂送りの四工程楕円運動をすることができる。
【0056】
送り量設定機構300は図11に示すように、縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定するもので、鉤針13を駆動する上軸5から2分の1減速される中間軸8に枢支される支え腕311に枢着される逆T字形の送り調節体310から成る。逆T字形の送り調節体310の横腕となる両腕には、縫目ピッチ送り量操作部材である縫目送り調節レバー301、縫目間ピッチ送り量操作部材である縫目間送り調節レバー302がそれぞれ枢着されている。
【0057】
具体的には、支え腕311の腕端311aは逆T字形の送り調節体310の横腕と縦腕とが交叉する部位を送り調節体ピン309で回動自在に連結すると共に、中間軸8に回動自在に嵌め合わされている。逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aには、連結ピン308aで第1の調節レバーリンク307の一端が回動自在に連結され、第1の調節レバーリンク307の他端には縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位が連結ピン308bで回動自在に連結されている。逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bには、連結ピン308cで第2の調節レバーリンク307’の一端が回動自在に連結され、第2の調節レバーリンク307’の他端には縫目送り調節レバー301の作用点となる部位が連結ピン308dで回動自在に連結されている。縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301はそれぞれ支点となる部位が、支持脚柱部1cに固定された調節レバー軸303に回動自在に備えられている。また、調節レバー軸303に回動自在に設けられた縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301間には、T字形の調節レバー仕切板304の縦腕端304aが調節レバー軸303に備えられ、横腕となる一方の横腕端304bは上に、他方の横腕端304cは下になるように止ネジ313a、313bで支持脚柱部1cに固定されている。また、一方の横腕端304bには止ネジ313aで仕切板上スペーサー305が固定され、他方の横腕端304cには止ネジ313bで仕切板下スペーサー306が固定されている。仕切板上スペーサー305は、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301の力点となる部位の上昇位置のストッパーで、仕切板下スペーサー306は、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301の力点となる部位の下降位置のストッパーである。なお、縫目間送り調節レバー302及び縫目送り調節レバー301は、支点となる部位を支持脚柱部1cに固着された調節レバー軸303に枢支されて、操作ツマミとなる力点となる部位の操作により設定される位置に波ワッシャー等の弾撥部材314で押圧された状態で停止される。以下、この停止状態を半固定という。
【0058】
また、図1、図2に示すように、1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換える送りモード切換機構350を備えている。なお、本明細書において、「跳び縫いセット(skip stitch set)」とは一組のハンドステッチ縫目及び錠縫縫目のことを意味する。
【0059】
送りモード切換機構350は図11に示すように、中間軸8に固着され2個の偏位点を有する送り切換三角カム351と、送り切換三角カム351に外接する送り切換ロッド352とを備えている。送り切換ロッド352の連結端352aは縫目ピッチ切換リンク355の一端に枢着され、縫目ピッチ切換リンク355の他端は逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cに枢着されている。具体的には、送り切換三角カム351は送り切換ロッド352に形成された略四角形のカム穴352bに外接し、送り切換ロッド352の連結端352aは連結ピン354で縫目ピッチ切換リンク355の一端に回動自在に連結され、縫目ピッチ切換リンク355の他端は連結ピン312で逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cが回動自在に連結されている。
【0060】
なお、送り切換三角カム351は、2個の偶数個の偏位点を有して1つの跳び縫いセットを形成させていたが、これに限らず、4個以上の偶数個の偏位点を有する送り切換カムとして、複数の跳び縫いセットを形成させるようにしてもよい。
【0061】
また、布送り駆動機構700は図11に示すように、一端が送り切換ロッド352の連結端352aに枢着される水平送り連結リンク712と、第1の腕709aが水平送り連結リンク712の他端に枢着される水平送り連結クランク709と、一端が水平送り連結クランク709の第2の腕709bに枢着され他端が水平送り縦ロッド704に枢着される水平送りロッドリンク707とを備えている。
【0062】
具体的には、水平送り連結リンク712の一端は送り切換ロッド352の連結端352aに連結ピン354で回動自在に連結され、水平送り連結リンク712の他端は水平送り連結クランク709の第1の腕709aに連結ピン711で回動自在に連結され、水平送り連結クランク709の第2の腕709bは連結ピン708で水平送りロッドリンク707の一端を回動自在に連結している。水平送りロッドリンク707の他端は水平送り縦ロッド704及び水平送り駆動ロッド702のアーム端702aを連結ピン703で回動自在に連結している。
【0063】
さらに、中間軸8の一端には中間軸従動プーリ26が固定され、中間軸従動プーリ26と上軸5に固定された上軸駆動プーリ25に無端ベルトであるタイミングベルトTBが巻き掛けられている。中間軸従動プーリ26と上軸駆動プーリ25とは上軸5から2分の1減速されて中間軸8に回転運動が伝達される。
【0064】
なお、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350の動作については、後述する動作説明において詳述する。
【0065】
釜200は、図1、図2に示すように、鉤針13が下死点に到達する直前から上昇する迄に、針板12の下方にあって釜200の回転する外釜202に装架される内釜205を揺動することにより内釜205に内蔵した糸20が巻装されるボビン206を収納するボビンケース207の糸出口207aを揺動して糸出口207aから引き出されている糸20を鉤針13に周接して緊張させるものであって、鉤針13の第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を1縫目ピッチ送りすると共に、鉤針13が第2ストロークにおいて上死点から下降し被縫製体21に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた糸20を掬う回転する外釜202の剣先202aを有し、捕捉されていた糸20を外釜202の回転によって糸捕捉鉤13aから解放し、外釜202の剣先202aで掬われて解放された糸20を外釜202が更に回転することにより釜200にくぐり入れてボビンケース207に巻装されている糸20に交錯させる機構構成である。
【0066】
このような釜200は、図12、図13、図14、図15に示すように、糸20が巻装されるボビン206を収納するボビンケース207を内釜205に取り外し自在に内蔵し、ボビンケース207は内釜205と共に揺動自在に外釜202に装架されている。外釜202は、剣先202aを有する。
【0067】
また、外釜202には、外釜202と一体的に構成されたパイプ状の釜軸201を有し、釜軸201は前述の上軸5に設けられた釜駆動プーリ230、釜軸201に設けられた釜軸プーリ232間に張設されたタイミングベルト231で駆動され、これによって釜200の外釜202は上軸5と1対1の回転数比で回転駆動される。なお、釜200の外釜202は、上軸5と1対2の回転数比で回転駆動してもよい。
【0068】
この1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいて、外釜202は、釜200からくぐり出る直前の糸20を剣先202aの回転平面から逃がす方向(即ち、釜開口方向200a)に偏倚して剣先202aが釜200からくぐり出た糸20を引掛けるのを回避する外釜偏倚子202bを備えている。外釜偏倚子202bは、内釜205を保持する内釜押え202dの一部に設けられ、糸案内バネ202cとともに釜200にくぐり入れ、くぐり出る糸20を案内する。
【0069】
また、図1、図14、図15に示すように、釜200の内釜205は、内釜揺動機構220から揺動作動子208により揺動自在に駆動される。即ち、内釜揺動機構220は、中間軸8に設けられ水平方向における回転運動を垂直方向における回転運動に変換するねじれ歯車410、ねじれ歯車410で水平方向から垂直方向に変換された回転運動を伝達する糸引出作動子駆動カム軸408、糸引出作動子駆動カム軸408に固定された糸引出作動子駆動カム407で構成される。糸引出作動子駆動カム407の円周に側設された内釜揺動溝221に沿って内釜揺動腕223の一端に固定されるピン224に枢支されるカムフロワ222が従動され、内釜揺動腕223により揺動作動子軸209、従って内釜205を揺動する。
【0070】
中間軸従動プーリ26と上軸駆動プーリ25とは上軸5から2分の1減速されて中間軸
8に回転運動が伝達される。内釜揺動溝221は1周に1つの上下に変化する波を有する。このようにして内釜205は上軸5の回転、従って鉤針13の上下動と2対1で揺動する。
【0071】
また、内釜205は、内釜205に設けられた凹部205aと揺動作動子208に設けられた凸部208aとが、剣先202aで掬われて釜200にくぐり入れられた糸20が抵抗無く通過出来る隙間をもって係合して揺動作動子208で内釜205を駆動するものである。揺動作動子208は、揺動作動子208と一体的に構成された揺動作動子軸209を有し、揺動作動子軸209はパイプ状の釜軸201に同心配置されている。揺動作動子軸209は上記の内釜揺動機構220により揺動駆動される。
【0072】
ボビンケース207には、糸捕捉鉤13aの開口方向と平行な方向に鉤針13の針落ち位置を挟んで揺動するように糸出口207aが設けられる。
【0073】
中間軸8には糸引出作動子401を駆動する糸引出作動子駆動機構400が連結されている。
【0074】
糸引出作動子駆動機構400は、図1、図2に示すように、糸引出作動子401が、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた糸20が外釜202の剣先202aで掬われた後、剣先202aで掬われた糸20を釜200にくぐり入れ、釜200からくぐり出る直前にボビンケース207の糸出口207aから引き出されている糸20を引掛け、釜200からくぐり出た糸を糸締めし、次いで糸捕捉鉤13aで糸20を捕捉した後、引掛けている糸20を釈放する機能を有している。
【0075】
このような糸引出作動子駆動機構400は図16、図17に示すように、中間軸8の水平方向における回転運動を垂直方向における回転運動に変換するねじれ歯車410と、ねじれ歯車410で水平方向から垂直方向に変換された回転運動を伝達する糸引出作動子駆動カム軸408と、糸引出作動子駆動カム軸408の回転運動を糸引出作動子401に上述した機能をもたせる糸引出作動子駆動カム407とを備えている。
【0076】
具体的には、ねじれ歯車410の第1歯車410aが中間軸8に固定され、第2歯車410bが糸引出作動子駆動カム軸408の一端(上端)に固定されている。糸引出作動子駆動カム軸408の他端側(下端側)にはカム溝407aが形成された正面カムである糸引出作動子駆動カム407が固定されている。糸引出作動子駆動カム軸408はベッド部1aに固定されている糸引出作動子駆動カム軸筒409に装着された糸引出作動子駆動カム軸上メタル411及び糸引出作動子駆動カム軸下メタル412で回動自在に設置されている。また、糸引出作動子駆動機構400は、水平方向に配置され糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aに係合するカムフォロワ406がカムフォロワピン413で回動自在に設けられた糸引出作動子駆動ロッド台405を有している。糸引出作動子駆動ロッド台405は、一端に中空の長穴405aが形成され、長穴405aに糸引出作動子駆動カム軸408が挿入されて、糸引出作動子駆動カム407の下方で水平方向に移動可能にスラスト受415で糸引出作動子駆動カム軸408に装着されている。糸引出作動子駆動ロッド台405の中間部には案内ピン429を固着する穴405dが設けられ、他端には後述する糸締調節機構420の糸引出作動子偏心軸422を枢支する穴405cが設けられている。
【0077】
糸引出作動子駆動ロッド台405には案内ピン429で案内されて糸引出作動子偏心軸422を介して糸引出作動子調節ロッド424が連結されている。糸引出作動子調節ロッド424は糸引出作動子駆動腕403の腕端403aに連結されている。糸引出作動子調節ロッド424の他端と糸引出作動子駆動腕403の腕端403aとは連結ピン414で回動自在に連結されている。糸引出作動子揺動軸402の下端は糸引出作動子駆動腕403、上端は糸引出作動子401のボス401bがそれぞれ取付台416に取付られて糸引出作動子揺動軸402にそれぞれ固定されている。糸引出作動子駆動腕403と糸引出作動子401は糸引出作動子揺動軸402とともに取付台416上で回動自在に取付られている。
【0078】
このように構成された糸引出作動子駆動機構400は、中間軸8が回転すると、ねじれ歯車410で糸引出作動子駆動カム軸408が回転し、カムフォロワ406が糸引出作動子駆動カム407のカム溝407aの形状に応じて従動し、糸引出作動子駆動ロッド台405を往復動させ糸引出作動子偏心軸422を介して糸引出作動子調節ロッド424で糸引出作動子駆動腕403の腕端403aを揺動させ、したがって糸引出作動子401を揺動させる。
【0079】
糸引出作動子401の揺動運動により、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた糸20が外釜202の剣先202aで掬われて糸捕捉鉤13aから離脱させた後、剣先202aで掬われた糸20を釜200にくぐり入れ、釜200からくぐり出る直前にボビンケース207の糸出口207aから引き出されている糸20を糸掛部401aで引掛け、釜200からくぐり出た糸20を糸締めする機能を有する。糸引出作動子401の揺動運動によって縫製されたハンドステッチは綺麗な縫いに仕上がる。
【0080】
上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいて、糸引出作動子駆動機構400により糸引出作動子401は、往復運動して糸20に弛みを与えたり縫目を引き締めたりするが、縫目ピッチを送り量設定機構300で変更しても糸引出作動子401による糸締量が常時一定になっている。そこで、図16(A)、図16(B)、図17(A)、図17(B)に示すように、送り量設定機構300によって設定された送り量、即ち縫目ピッチ、縫目間ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節する糸締調節機構420が備えられている。
【0081】
糸締調節機構420の構造について説明すると、上記の糸引出作動子偏心軸422は、糸引出作動子調節ロッド424の中間部に設けた穴424aと糸引出作動子駆動ロッド台405の穴405cを通って偏心調節腕423に固定される。
【0082】
案内ピン429は、糸引出作動子調節ロッド424の他端に設けた長穴424bを通って糸引出作動子駆動ロッド台405の穴405dに固定され、糸引出作動子調節ロッド424を長穴424bに沿って摺動自在に案内する。
【0083】
偏心調節腕423の一端に設けた穴423bには、角駒421の中心軸421aが枢支されている。角駒421は、糸引出作動子調節枡425の案内溝425aに摺動自在に挿入され、糸引出作動子調節枡425は調節枡旋回台426に角枡蓋427と共に固定される。
【0084】
調節枡旋回台426は旋回軸426aを有し、ベッド1a内に設けられている糸引出作動子調節台板428の取付ボス428aに対して旋回自在に枢着されている。
【0085】
調節枡旋回台426はその突出端にピン426bが設けられ、スライドリンク433の一端の長穴433aに連結されている。スライドリンク433は一対の長穴433b、433bにより一対の摺動駒434で糸引出作動子調節台板428に摺動自在に取付られる。
【0086】
スライドリンク433の他端に設けられた下方に直角に折曲げられた接合腕433cは長穴433dを有している。糸引出作動子調節台板428の他端に設けられた上方に直角に折曲げられた取付腕428bに枢着された糸引出作動子調節ベルクランク432の一方の腕432aに植設されたピン432bが長穴433dに摺動自在に嵌められている。
【0087】
糸引出作動子調節ベルクランク432の他方の腕432cには、糸引出作動子調節縦ロ
ッド431に設けた長穴431cがカシメ段ピン432dで摺動自在にカシメられている。糸引出作動子調節縦ロッド431の長穴431cを設けた部分は糸引出作動子調節縦ロッド431の中間部において左方向に直角に折曲げられ、上端は取付穴431aにより上記の縫目送り調節レバー301に植設されたピン301aに回動自在に取付けられている。糸引出作動子調節縦ロッド431の下端部431dは糸引出作動子調節台板428に設けられたガイド溝428dに摺動自在に遊嵌されている。
【0088】
このように糸引出作動子駆動カム軸408と糸引出作動子駆動腕403とを結ぶ基準線上に糸引出作動子駆動ロッド台405と糸引出作動子調節枡425とを糸引出作動子偏心軸422で連結し、糸引出作動子偏心軸422の偏心方向が基準線とは直角方向となるように偏心調節腕423に固定して、偏心調節腕423の一端に嵌入される角駒軸421aと角駒421が摺動する糸引出作動子調節枡425の回転する旋回軸426aのそれぞれ軸心が基準線上に一致する位置で構成されている。
【0089】
なお、以上の実施の形態例において、糸締調節機構420は、送り量設定機構300によって設定された送り量、即ち縫目ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節する形態について説明したが、送り量設定機構300によって設定された送り量、即ち縫目ピッチ及び/又は縫目間ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節するようにしてもよい。
【0090】
また、上述した1本糸錠縫化ハンドステッチミシンにおいては図18(J)〜(L)に示すように、鉤針13の第2ストロークにおいて鉤針13が下降していくと、鉤針13の針先と被縫製体21との間で鉤針13の糸捕捉鉤13aに捕捉された糸20が張った状態から弛んだ状態になって糸弛みができるので、その糸弛み状態の糸20を、下降する鉤針13の針先で刺し通してしまう虞がある。そこで、図25(A)、(B)に示すように、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された糸を鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せする糸寄せ機構800を備えている。
【0091】
糸寄せ機構800は図25(A)、(B)に示すように、鉤針13(図1)の針先と被縫製体21との間において発生する糸弛みを引っ掛けるL字形に形成された糸寄せ811と、上軸5の回転運動を偏心運動に変換する偏心機構812と、偏心機構812に連結され当該偏心機構の偏心運動を水平運動に変換する第1のリンク機構813と、偏心機構812に連結され当該偏心機構の偏心運動を上下運動に変換する第2のリンク機構814と、第1のリンク機構813及び第2のリンク機構814に連結され、第1のリンク機構813の水平運動及び第2のリンク機構814の上下運動を合成して水平方向において運動軌跡を楕円形にして、その楕円運動を糸寄せ811に伝達する糸寄せ取付腕815とを備えている。
【0092】
偏心機構812は、上述した図3(A)、(B)、図4に示す鉤針・蓋針駆動機構100の針棒クランクロッド103を釣合錘101に連結するクランクロッドピン102の代わりに糸寄せ駆動偏心軸816を利用する。糸寄せ駆動偏心軸816は、針棒クランクロッド103を釣合錘101に連結するクランクロッドピン816aと、一端にクランクロッドピン816aが固定され他端に偏心軸816cが固定された腕部816bとから構成されている。
【0093】
第1のリンク機構813は、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cに係合する長穴817aが一端に形成された糸寄せ水平揺動腕817を備えている。長穴817aは長手方向が上下方向となるように糸寄せ水平揺動腕817に形成されている。糸寄せ水平揺動腕817は、一端となる長穴817aが力点、他端が作用点、一端と他端との間が支点となるように構成されている。糸寄せ水平揺動腕817の支点を支持する糸寄せ機構取付台818がアーム1bに固定されている。糸寄せ水平揺動腕817の支点となる部位は、糸寄せ機構取付台818の所定位置に設けられた糸寄せ支軸819に回動自在に支持されている。したがって、糸寄せ水平揺動腕817の他端は糸寄せ支軸819を支点にして送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向で往復揺動することができる。
【0094】
第2のリンク機構814は、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cに係合する長穴820aが一端に形成された糸寄せ上下駆動腕820を備えている。長穴820aは長手方向がほぼ水平方向となるように糸寄せ上下駆動腕820に形成されている。糸寄せ上下駆動腕820は、一端となる長穴820aが力点、他端が作用点、一端と他端との間が支点となるように構成されている。糸寄せ上下駆動腕820の支点は糸寄せ水平揺動腕817の一端に連結ピン等の連結部材821によって回動自在に連結されている。また、糸寄せ上下駆動腕820の作用点には、上下方向に配置された糸寄せ上下揺動腕822の上端822aが連結ピン等の連結部材823によって回動自在に連結されている。したがって、糸寄せ上下駆動腕820の他端は連結部材821を支点にして上下方向に往復揺動することができるので、糸寄せ上下駆動腕820の他端に連結された糸寄せ上下揺動腕822は上下方向で往復運動することができる。
【0095】
糸寄せ取付腕815は、T字形に形成され横腕の配置方向が送り歯601(図1)の送りの運動方向と直交する方向で、一方の横腕端815aは連結ピン等の連結部材824で糸寄せ水平揺動腕817の他端に回動自在に連結され、他方の横腕端815bには連結ピン等の連結部材825で糸寄せ上下揺動腕822の下端822bが回動自在に連結されている。また、糸寄せ取付腕815の縦腕の配置方向は垂直方向で、先端815cに糸寄せ811が固定されている。
【0096】
このように構成された糸寄せ機構800は図26に示すように、上軸5が1回転する間に糸寄せ811の先端部811aを運動軌跡830の楕円運動により押え金501の上方で1周させるもので、上下方向に直線運動する鉤針13に干渉することなく糸寄せ811の先端部811aを楕円運動させることができる。
【0097】
具体的には、釣合錘101が上軸5によって回転すると、釣合錘101の上軸5による回転中心とクランクロッドピン816aの軸心との距離に比べて、糸寄せ駆動偏心軸816のクランクロッドピン816aの軸心と偏心軸816cの軸心との距離が予め設計された寸法だけ僅か短いので、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cは小さな円運動を行なう。
【0098】
糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cが小さな円運動すると、糸寄せ水平揺動腕817の他端は長穴817aにより糸寄せ支軸819を支点にして送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向に往復揺動するので、当該糸寄せ水平揺動腕817の他端に連結された糸寄せ取付腕815の縦腕端815cも送り歯601の送りの運動方向と同一方向である水平方向で往復揺動を行うことになる。また、糸寄せ駆動偏心軸816の偏心軸816cが小さな円運動すると、糸寄せ上下駆動腕820の他端は長穴820aにより連結ピン821を支点にして上下方向に往復揺動するので、糸寄せ上下駆動腕820の他端に連結された糸寄せ上下揺動腕822は上下方向で往復運動することになる。糸寄せ上下揺動腕822が上下方向で往復運動すると、当該糸寄せ上下揺動腕822の下端822bに連結された糸寄せ取付腕815の他端815bが上下方向に往復揺動するので、当該糸寄せ取付腕815の縦腕端815cは送り歯601の送りの運動方向と直交する方向である水平方向で往復揺動を行うことになる。
【0099】
したがって、第1のリンク機構813及び第2のリンク機構814による2つの往復揺動が合成されると、糸寄せ811の先端部811aは図26に示すような運動軌跡830の楕円運動を水平方向において行うことができるので、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された糸を鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せ811の先端部811aで掬って糸寄せすることが可能になる。
【0100】
このように構成された1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、鉤針13、回転する外釜202に装架される揺動内釜205で構成される釜200、糸引出作動子401の協働によって被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、鉤針13の第1ストロークにおいて布送り機構600により被縫製体21をハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、鉤針13の第2ストロークにおいて布送り機構600により被縫製体21をハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするものである。
【0101】
また、1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、送り量設定機構300によって縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、1つの跳び縫いセットごとに縫目ピッチ送り、縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、設定された縫目ピッチ送り量、縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構700に伝達して布送り機構600により被縫製体21を送るものである。なお、本明細書において、「協働」とは他の部分と協同して働くことを意味する。
【0102】
このような1本糸錠縫化ハンドステッチミシンの動作を、1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法を中心にして図18(A)〜(O)、図19、図20(A)、(B)に基づき説明する。図18(A)〜(O)は鉤針13、回転する外釜202に装架される揺動内釜205で構成される釜200及び糸引出作動子401の動作説明図で、図19は鉤針13、釜200、糸引出作動子401、蓋針14及び送り歯601のモーションダイヤグラムである。この動作説明において、方向を示す場合には図18(A)〜(O)を正面から見た状態で説明する。また、図18(A)〜(O)において、送り歯601の図示を省略している。
【0103】
説明の便宜上、糸20が糸捕捉鉤13aに捕捉されていない鉤針13が上死点に位置する状態で、且つ外釜202の剣先202aが垂直方向の下方に位置している状態(図18(A))から動作説明を行うものとする。
【0104】
図18(A)の状態においては、内釜205に内蔵のボビンケース207の糸出口207aは内釜揺動機構220で駆動される揺動作動子208により右方向に揺動している。ボビンケース207の糸出口207aから引き出された糸20は針板12の針落穴12aを通って被縫製体21の裏面から表面に貫通し表面から裏面に折り返す縫目に繋がっており、糸20は外釜202の剣先202aによって釜200にくぐり入れられた状態、蓋針14は閉状態、送り歯601は縫目間送り状態である。被縫製体21の送り方向は左とする。また、図19においては、プーリ4が2回転で跳び縫いセットとして形成するので、縫製の1サイクルは上軸5における720度で示され、図18(A)は上軸5が0度(720度)の状態とする。上軸5が0度で鉤針13は上死点、180度で鉤針13は下死点、360度で鉤針13は上死点、540度で鉤針13は下死点となる。
【0105】
図1において、モータMにより駆動ベルトMBを介して駆動される従動プーリ4が、鉤針13側より見て時計方向に回転すると、上軸5の回転により鉤針・蓋針駆動機構100、布送り駆動機構700、釜駆動部231-232、内釜揺動機構220及び糸引出作動子駆動機構400が駆動する。
【0106】
鉤針・蓋針駆動機構100が駆動すると鉤針13を垂直方向に直線往復運動させ、布送り駆動機構700が駆動すると布送り機構600で送り歯601を送りの四工程楕円運動させ、釜駆動部231-232、内釜揺動機構220が駆動すると釜200の外釜202を回転させ、内釜205を揺動させ、糸引出作動子駆動機構400が駆動すると糸引出作動子401を揺動させる。なお、各機構の動作説明は上述した構成説明で詳述したので省略する。
【0107】
(a)垂直方向に直線往復運動する鉤針13が糸捕捉鉤13aで糸20を捕捉していない状態で第1ストロークにおいて上死点(上軸5:0度)から下降し針板12に載置された被縫製体21に貫通し(図18(A)〜図18(G)、図19)、下死点に到達する直前に内釜205が揺動し、内釜205に内蔵のボビン206よりボビンケース207の糸出口207aから引き出される糸20を鉤針13に周接して緊張しておく。なお、蓋針14は鉤針13が上死点から下降して被縫製体21を通過するとき、鉤針13の糸捕捉鉤13aを開状態にする(図18(G)、図19)。
【0108】
(b)下死点(上軸5:180度)から上昇する際に、針板12の下方にあって内釜205に内蔵のボビンケース207に収納されたボビン206に巻装されてボビンケース207の糸出口207aを通って糸引出作動子401によって引き出され、鉤針13に周接して緊張されている糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉する(図18(H)〜図18(I)、図19)。
【0109】
(c)糸20を糸捕捉鉤13aで捕捉している状態で鉤針13を第1ストロークにおいて被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を布送り機構600により1縫目ピッチ送りする(図19)。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に被縫製体21の布送りを停止する(図19)。なお、蓋針14は鉤針13が下死点から上昇して被縫製体21を通過するとき、鉤針13の糸捕捉鉤13aを閉状態にする(図18(J)〜図18(K)、図19)。
【0110】
(d)鉤針13が第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸捕捉鉤13aで捕捉されていた糸20を回転する外釜202の剣先202aで掬うと共に、捕捉されていた糸20を外釜202の剣先202aの回転によって糸捕捉鉤13aから解放する。(図18(I)〜図18(M)、図19)。
【0111】
なお、第2ストロークにおいて鉤針13が上死点から下降する際に糸捕捉鉤13aで捕捉された糸20を糸寄せ機構800で鉤針13の針先と被縫製体の間で糸寄せ811の先端部811aで掬って糸寄せするので(図18(J)〜図18(L)、図19)、鉤針13の第2ストロークにおいて鉤針13が下降していくと、鉤針13の針先と被縫製体21との間で鉤針13の糸捕捉鉤13aに捕捉された糸20が張った状態から弛んだ状態になって糸弛みができ、その糸弛み状態の糸20を、下降する鉤針13の針先で刺し通してしまう虞が解消される。
【0112】
(e)外釜202の剣先202aで掬われて解放された糸20を外釜202が更に回転することにより釜200にくぐり入れ、釜200からくぐり出る直前にボビンケース207の糸出口207aから引き出されている糸20を糸引出作動子駆動機構400で駆動される糸引出作動子401で引掛け、釜200にくぐり入れた糸20をボビンケース207に巻装されている糸20に交錯(interlace)させ、釜200からくぐり出た糸20を糸引出作動子駆動機構400により糸引出作動子401で糸締めする(図18(B)〜図18(G)、図19)。なお、糸引出作動子401は、鉤針13が被縫製体21に貫通した後、ボビンケース207の糸出口207aから引き出されている糸20を引掛けて、鉤針13が上昇すると同時に、糸締めするために引出した糸20を放出するように後退を開始する(図18(I)〜図18(N)、図19)。また、糸20が釜200にくぐり入れ、釜200からくぐり出るとき、外釜202の外釜偏倚子202bは、釜200からくぐり出る直前の糸20を剣先202aの回転平面から逃がす方向(即ち、釜開口方向200a)に偏倚して剣先202aが釜200からくぐり出た糸20を引掛けるのを回避する(図18(C)、(D))。
【0113】
(f)鉤針13を第2ストロークにおいて糸捕捉鉤13aで糸20を捕捉していない状態で被縫製体21から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、被縫製体21を布送り機構600により1縫目間ピッチ送りする。送り歯601は鉤針13が被縫製体21に刺さる前に1縫目間ピッチ送りを停止する(図18(N)、(O)、(A)、図19)。
【0114】
(g)(a)乃至(f)の工程を繰り返して被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目をそれぞれ形成する。
【0115】
したがって、糸20が鉤針13の糸捕捉鉤13aへ確実に捕捉され、かつミシンベッド内空間で1本糸錠縫化縫目形成を行ないピンポイント/サドルステッチと呼ばれる擬似ハ
ンドステッチに適する縫製ができる。また、被縫製体21の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されるので、作業者にとって表面にハンドステッチ縫目を目視できる状態で縫製作業が行なわれ、ハンドステッチ縫位置を確認できることから正確な縫製ができる。また、1本糸錠縫化縫目を形成している糸20が錠縫されることによって容易にほどけることはないので、強固な縫製が得られる。
【0116】
このような1本糸錠縫化ハンドステッチミシンは、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350によって縫目ピッチ、縫目間ピッチを調節することができる。送り量設定機構300及び送りモード切換機構350の動作について図21〜図24に基づき説明する。図21〜図24は送り量設定機構300、モード切換機構350、布送り機構600及び布送り駆動機構700を模式的に示す図である。また、図21〜図24において、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302はそれぞれ上下に揺動し、縫目送り調節レバー301の上端点a’s、縫目間送り調節レバー302の上端点asでそれぞれ最少送りピッチとなり、縫目送り調節レバー301の下端点a’d、縫目間送り調節レバー302の下端点adでは、それぞれ最大送りピッチとなるように構成されている。この動作説明において、方向を示す場合には図21〜図24を送り歯601方向から右方向に見た状態で説明する。
<縫目送りピッチ及び縫目間送りピッチの最小送りの設定例>
まず、縫目送りの1縫目ピッチP1と縫目間送りの1縫目間ピッチP2とを最小送りにした場合について図21、図8(B)、(C)に基づき説明する。
【0117】
縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302を操作して両方とも最少送りピッチの上端点a’s、asに設定すると、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302の各作用点となる部位b’、bはそれぞれ最下点に位置するので、連結されている調節レバーリンク307’、307がそれぞれ、支え腕311によって支持された逆T字形の送り調節体310を直立の状態で下方に移動させる。この移動位置が送り調節体310の最下位置となる。
【0118】
逆T字形の送り調節体310が直立の状態で最下位置に位置すると、逆T字形の送り調
節体310の縦腕端に枢着されている縫目ピッチ切換リンク355を介して送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712をそれぞれ下方向に引き下げる。この移動位置が送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712の最下位置となる。この状態で、中間軸8が時計方向に回転すると、送り切換三角カム351が偏心運動するので、送り切換ロッド352は略水平方向の左右二つの位置q、q’間を変位量Qで往復間欠揺動する。なお、送り切換三角カム351のカム形状は、送り切換ロッド352が移動位置q、q’において間欠停止することができる形状に形成されている。移動位置q、q’における送り切換ロッド352の間欠停止時間は送り切換三角カム351により定まる。また、中間軸8は上軸5が2回転する間に1回転するので、上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q方向に、さらに上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q’方向に移動することになる。
【0119】
送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ
切換リンク355の一端であるh点は最下位置に移動した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致し、送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最下位置に移動した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。したがって、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302によつてそれぞれ設定された送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点と他方の横腕端310bであるc’点に、水平送り連結リンク712の一端であるh点を位置決めすることができるので、各被縫製体送りモードの設定を順次切換えることができる。この各被縫製体送りモードの設定は、送り切換ロッド352が行なっている。この被縫製体送りモード毎に布送りがなされる。
【0120】
このように縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302がそれぞれ最少送りピッチに設定されている場合には、水平送り連結クランク709の第1の腕709aは水平送り連結リンク712に引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、各被縫製体送りモードにおいては、送り歯601の水平送り量は最小となり、被縫製体21は最小送りとなる。
<縫目送りピッチ及び縫目間送りピッチの最大送りの設定例>
次に、縫目送りの1縫目ピッチP1と縫目間送りの1縫目間ピッチP2とを最大送りにした場合について図22、図8(B)、(C)に基づき説明する。
【0121】
縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302を操作して両方とも最大送りピッチの下端点a’d、adに設定すると、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302の各作用点となる部位b’、bはそれぞれ最上点に位置するので、連結されている調節レバーリンク307’、307がそれぞれ、支え腕311によって支持された逆T字形の送り調節体310を直立の状態で上方に移動させる。この移動位置が送り調節体310の最上位置となる。
【0122】
逆T字形の送り調節体310が直立の状態で最上位置に位置すると、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cに枢着されている縫目ピッチ切換リンク355を介して送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712をそれぞれ上方向に押し上げる。この移動位置が送り切換えロッド352の連結端352aと水平送り連結リンク712の最上位置となる。この状態で、中間軸8が時計方向に回転すると、上述した最少送りの設定例と同様に、送り切換三角カム351が偏心運動するので、送り切換ロッド352は略水平方向の左右二つの位置q、q’間を変位量Qで往復間欠揺動する。なお、送り切換三角カム351のカム形状は、送り切換ロッド352が移動位置q、q’において間欠停止することができる形状に形成されている。移動位置q、q’における送り切換ロッド352の間欠停止時間は送り切換三角カム351により定まる。また、中間軸8は上軸5が2回転する間に1回転するので、上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q方向に、さらに上軸の1回転で送り切換ロッド352は移動位置q’方向に移動することになる。
【0123】
送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最上位置に移動した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致し、送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は最上位置に移動した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。したがって、縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302によつてそれぞれ設定された送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点と他方の横腕端310bであるc’点に、水平送り連結リンク712の一端であるh点を位置決めすることができるので、各被縫製体送りモードの設定を順次切換えることができる。この各被縫製体送りモードの設定は、送り切換ロッド352が行なっている。この被縫製体送りモード毎に布送りがなされる。
【0124】
このように縫目送り調節レバー301及び縫目間送り調節レバー302がそれぞれ最大送りピッチに設定されている場合には、水平送り連結クランク709の第1の腕709aは水平送り連結リンク712に押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動することになる。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、各被縫製体送りモードにおいては、送り歯601の水平送り量は最大ピッチとなり被縫製体21は最大ピッチで布送りされる。
<縫目送りピッチ最少、縫目間送りピッチ最大の設定例>
次に、図8(B)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1を最小送りにして、縫目間送りの1縫目間ピッチP2を最大送りにした場合について図23(A)、(B)に基づき説明する。
【0125】
図23(A)に示すように、縫目送り調節レバー301を最小送りピッチの最上点a’sへ、縫目間送り調節レバー302を最大送りピッチの最下点adへそれぞれ操作して設定すると、縫目送り調節レバー301の作用点となる部位b’は最下点に位置し、縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位bは最上点に位置する。縫目送り調節レバー301に連結された調節レバーリンク307’は逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bを引き下げ、縫目間送り調節レバー302に連結された調節レバーリンク307は逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aを押し上げる。その結果、逆T字形の送り調節体310は支え腕311によって枢支される枢支点dを中心に時計方向に回転する。
【0126】
その状態では、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは右方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして時計方向に回転することで左上方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は上方向に押し上げられ、r水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕
709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動して停止している。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、縫目間送り調節レバー302によって設定された縫目間の送りが最大送りピッチの送り量となる。
【0127】
一方、図23(B)に示すように、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは右方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして反時計方向に回転することで右下方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は下方向に引き下げられ、水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、送り歯601の水平送り量も極めて微小となるので、被縫製体21は僅かに布送りされる。即ち、縫目送り調節レバー301によって設定された最小送りピッチの送り量となる。
【0128】
このようにして各被縫製体送りモードのそれぞれの設定を順次切換えることができる。
<縫目送りピッチ最大、縫目間送りピッチ最小の設定例>
次に、図8(C)に示すように、縫目送りの1縫目ピッチP1を最大送りにして、縫目間送りの1縫目間ピッチP2を最小送りにした場合について図24(A)、(B)に基づき説明する。
【0129】
図24(A)に示すように、縫目送り調節レバー301を最大送りピッチの最下点a’dへ、縫目間送り調節レバー302を最小送りピッチの最上点asへそれぞれ操作して設定すると、縫目送り調節レバー301の作用点となる部位b’は最上点に位置し、縫目間送り調節レバー302の作用点となる部位bは最下点に位置する。縫目送り調節レバー301に連結された調節レバーリンク307’は逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bを押し上げ、縫目間送り調節レバー302に連結された調節レバーリンク307は逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aを引き下げる。その結果、逆T字形の送り調節体310は支え腕311によって枢支される枢支点dを中心に反時計方向に回転する。
【0130】
この状態では、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは左方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が左方向位置qに移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は反時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の一方の横腕端310aであるc点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして時計方向に回転することで左下方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は下方向に引き下げられ、水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは引き下げられて時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は左方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送りクランク709の第2の腕709bに連結されている水平送りロッドリンク707は一端であるj点を揺動中心にして、水平送りロッドリンク707の他端lに連結されている水平送り縦ロッド704が左右方向に揺動される。なお、水平送りクランク709の第2の腕709bが左方向に揺動して停止する位置は、水平送りロッドリンク707は一端であるj点が水平送り縦ロッド704の揺動中心位置に一致するように設定されていて、水平送り偏心カム701の偏心量eは伝達されても水平送りロッドリンク707の揺動中心と水平送り縦ロッド704の揺動中心が重なるので、水平送り縦ロッド704へ伝達される上下運動は極めて微小となる。したがって、送り歯601の水平送り量も極めて微小となるので、被縫製体21は僅かに布送りされる。即ち、縫目間送り調節レバー302によって設定された最小送りピッチの送り量となる。
【0131】
一方、図24(B)に示すように、逆T字形の送り調節体310の縦腕端310cは左方向へ傾斜して、縦腕端310cに連結されている縫目ピッチ切換リンク355は、中間軸8が時計方向に回転して送り切換三角カム351が偏心運動することで送り切換ロッド352が右方向位置q’に移動して間欠停止した場合には、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は反時計方向に回転した逆T字形の送り調節体310の他方の横腕端310bであるc’点に一致する。即ち、縫目ピッチ切換リンク355の一端であるh点は、連結ピン312を中心にして反時計方向に回転することで右上方に移動する。したがって、縫目ピッチ切換リンク355の他端に連結されている水平送り連結リンク712は上方向に押し上げられ、水平送り連結リンク712に連結されている水平送り連結クランク709の第1の腕709aは押し上げられて反時計方向に回転する。そのため、水平送りクランク709の第2の腕709bの下端であるj点は右方向に揺動して停止している。この状態で、上軸5が時計方向に回転すると、水平送り偏心カム701の偏心量eが水平送り駆動ロッド702を略水平方向に往復運動するので、水平送り偏心カム701が左方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは左下がりに揺動し、水平送り偏心カム701が右方向へ偏心回転移動すると、水平送り駆動ロッド702によって水平送りロッドリンク707の他端lは右上がりに揺動して停止している。その結果、水平送り縦ロッド704には水平送り駆動ロッド702による往復揺動運動が最大の上下方向の往復運動に変換されて伝達される。したがって、縫目送り調節レバー301によって設定された縫目間の送りが最大送りピッチの送り量となる。
【0132】
このようにして各被縫製体送りモードのそれぞれの設定を順次切換えることができる。
【0133】
このように、送り量設定機構300及び送りモード切換機構350による1縫目ピッチ送りと1縫目間ピッチ送りの各送り量は、各調節レバー301、302の位置設定によりそれぞれ設定された送り量を交互に切換えて被縫製体21を送り歯601で布送りすることができると共に、鉤針13、釜200、糸引出作動子401の協働によって1本糸錠縫化縫目が形成されるので、縫目ピッチ、縫目間ピッチはそれぞれ自由に設定可能である(図8(A))。
【0134】
次に、送り量設定機構300によって設定された送り量、即ち縫目ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節する糸締調節機構420の糸締調節動作について、図16(A)、(B)、図17(A)、(B)に基づき説明する。
【0135】
図17(A)は、糸締調節機構420をミシンの下から見た図で、縫目ピッチが最大の設定を示していて、糸引出作動子調節枡425の案内溝425aの案内方向が糸引出調節ロッド424の進退方向に合わせて位置決めされている。(i)はカムフォロワ406がカム溝407aの最大径点にあり糸引出差動子ロッド台405、糸引出作動子調節ロッド424は最後退点にあって糸引出作動子401は後退した待避位置にある。(ii)はカムフォロワ406がカム溝407aの最小径点にあり糸引出差動子ロッド台405、糸引出作動子調節ロッド424は最前進点にあって糸引出作動子401は前進した糸締め位置にある。
【0136】
図17(B)は、糸締調節機構420をミシンの下から見た図で、縫目ピッチを小さく設定した場合の動作を示す。縫目送り調節レバー301で縫目ピッチを小さく設定されると縫目送り調節レバー301に連結された糸引出作動子調節縦ロッド431が上下し、連結された糸引出作動子調節ベルクランク432がスライドリンク433を摺動させて糸引出作動子調節枡425に一体的に組み合わされたピン426bに係合して糸引出作動子調節枡425を旋回させた状態を示す。(i)はカムフォロワ406がカム溝407aの最大径点にあり糸引出差動子ロッド台405、糸引出作動子調節ロッド424は最後退点にあって糸引出作動子401は後退した待避位置にある。
【0137】
この場合、角駒421の回転中心e’点は糸引出作動子調節枡425の旋回中心e点に一致して位置し、偏心調節腕423は糸引出調節ロッド424の進退方向に同じ方向に向かっている。(ii)はカムフォロワ406がカム溝407aの最小径点にあり糸引出差動子ロッド台405、糸引出作動子調節ロッド424は最前進点にあって糸引出作動子401は前進した糸締め位置にある。この場合、偏心調節腕423は糸引出差動子ロッド台405の前進により角駒421を押し進め角駒421は案内溝425a内を案内されて摺動した回転中心e’点を示している。
【0138】
a点は糸引出作動子駆動カム407の回転中心、b点はカムフォロワ406の回転中心、c点は糸引出作動子偏心軸422の回転中心、d点は糸引出作動子偏心軸422の偏心中心点、e点は糸引出作動子調節枡425の回転中心、e’点は角駒421の中心軸421aの回転中心、f点は糸引出作動子401の揺動中心、g点は糸引出作動子駆動腕403と糸引出作動子調節ロッド424の接合点である。また、図17(B)に示すL1は、a点からd点までの長さで、L2は、d点からg点までの長さであって、長さL1、L2は糸引出作動子401の待避位置を決める不変の基準寸法である。L3は、c点とg点の長さである。Hは、カム構407aの軌跡最大値−最小値である。
【0139】
カムフォロワ406の回転中心bがカム構407aの最大径基準点にあるとき、糸引出作動子401は最後退点、即ち待避位置にある。
【0140】
縫目送り調節レバー301の設定量によって縫目送り調節レバー301に連結された糸引出作動子調節縦ロッド431、糸引出作動子調節ベルクランク432、スライドリンク433を介して糸引出作動子調節枡425の突出端に設けられるピン426bに連結して糸引出作動子調節枡425を傾斜角θに傾斜させる。
【0141】
縫目送り調節レバー301で縫目ピッチが最大に設定された場合には、引出作動子調節枡425の傾斜角θは0度となり、案内溝425aは角駒421を基準線上に案内し、糸引出作動子駆動カム407の設定量Hは糸引出作動子駆動ロッド台405と引出作動子調節枡425との長さL1+L2(基準寸法)のまま糸引出作動子駆動腕403を揺動させ糸引出作動子駆動腕403に固定された糸引出作動子401を揺動させる。
【0142】
縫目送り調節レバー301で縫目ピッチが最小に設定された場合には、引出作動子調節枡425の傾斜角θは最大角度となり、案内溝425aは基準線上から傾斜角θ方向に角駒421を案内する。
【0143】
角駒421が案内溝425aに沿って案内されると、偏心調節腕423は糸引出作動子偏心軸422を中心にして角度βに傾斜する。
【0144】
腕423が糸引出作動子偏心軸422を中心にして角度βに傾斜すると、偏心調節腕423に偏心方向が直角方向に固定された糸引出作動子偏心軸422は角度βだけ回動(回転)し偏心方向も傾斜する。
【0145】
偏心量Jがβ角度に傾斜して糸引出作動子駆動ロッド台405の回転中心cに対して糸引出作動子調節ロッド424の接合点dの位置がk=Sinβ・Jだけ移動し、糸引出作動子調節ロッド424は糸引出作動子駆動ロッド台405上で摺動し、その結果、それぞれの接合点c、g間の長さL2はL2−k=L3に縮まる。
【0146】
即ち、縫目送り調節レバー301で縫目ピッチが最小に設定された場合には、溝カム407の軌跡最大値−最小値Hは糸引出作動子駆動ロッド台405と糸引出作動子調節ロッド424との長さL1+L3と短くなって糸引出作動子駆動腕403を揺動させ、糸引出作動子駆動腕403に固定された糸引出作動子401のストローク、即ち揺動量Paは揺動量Pbに少なくなって糸締量を調節する。
【0147】
このようにして糸締調節機構420は、被縫製体21の送り量に応じて回動する糸引出作動子偏心軸422の回動により伸縮して糸引出作動子のストロークを調節する糸引出作動子駆動ロッドで、送り量設定機構300によって設定された送り量、即ち縫目ピッチに応じて糸引出作動子401の糸締量を調節することができる。このため糸引出作動子がボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛ける前の待避位置が縫目ピッチ、縫目間ピッチが変動しても糸締調節機構により一定にすることができ、この一定の待避位置から、設定された送り量に応じて糸引出作動子の糸締量を調節するので綺麗なハンドステッチに仕上がる。
【0148】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成であっても採用することができることは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0149】
5……上軸
8……中間軸
12……針板
13……鉤針
13a……糸捕捉鉤
20……糸
21……被縫製体
100……鉤針・蓋針駆動機構
200……釜
202……外釜
205……内釜
206……ボビン
207……ボビンケース
207a……糸出口
220……内釜揺動機構
300……送り量設定機構
301……縫目送り調節レバー
302……縫目間送り調節レバー
310……逆T字形の送り調節体
311……支え腕
350……送りモード切換機構
351……送り切換カム
352……送り切換ロッド
355……縫目ピッチ切換リンク
400……糸引出作動子駆動機構
401……糸引出作動子
420……糸締調節機構
500……押え機構
600……送り機構
601……送り歯
700……送り駆動機構
701……水平送り偏心カム
702……水平送り駆動ロッド
704……水平送り縦ロッド
707……水平送りロッドリンク
709……水平送り連結クランク
709a……第1の腕
709b……第2の腕
712……水平送り連結リンク
800……糸寄せ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)糸捕捉鉤を側設され垂直方向に直線往復運動する鉤針が第1ストロークにおいて上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点に到達する直前から上昇する迄に、前記針板の下方にあって釜の回転する外釜に装架される内釜を揺動することにより前記内釜に内蔵した糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースの糸出口を揺動して前記糸出口から引き出されている糸を前記鉤針に周接して緊張させること、
(b)前記鉤針が前記下死点から上昇する際に、前記鉤針に周接して緊張されている糸を前記糸捕捉鉤で捕捉すること、
(c)前記鉤針を前記第1ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目ピッチ送りすること、
(d)前記鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を回転する前記外釜の剣先で掬うと共に、捕捉されていた糸を前記釜の回転によって前記糸捕捉鉤から解放すること、
(e)前記釜の剣先で掬われて解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記ボビンに巻装されている糸に交錯させ、前記釜からくぐり出た糸を糸締めすること、
(f)前記鉤針を前記第2ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目間ピッチ送りすること、
(g)前記(a)乃至(f)の工程を繰り返して前記被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項2】
前記糸出口は、前記糸捕捉鉤の開口方向と平行な方向に前記鉤針の針落ち位置を挟んで揺動するように前記ボビンケースに設けることを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項3】
前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が前記外釜の剣先で掬われた後、剣先で掬われた糸を前記釜にくぐり入れ、前記釜からくぐり出る直前に前記ボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛け、前記釜からくぐり出た糸を糸締めし、次いで前記糸捕捉鉤で前記糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項4】
前記第2ストロークにおいて前記鉤針が前記上死点から下降する際に前記糸捕捉鉤で捕捉された糸を前記鉤針の針先と前記被縫製体の間で前記糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せすることを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項5】
前記釜からくぐり出た糸を糸締めするにあたり、前記被縫製体の送り量に応じて糸締量を調節することを特徴とする請求項1記載の1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項6】
糸捕捉鉤が側設された鉤針、回転する外釜に装架される揺動内釜で構成される釜、糸引出作動子の協働によって被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目を跳び縫いセットとして形成し、前記鉤針の第1ストロークにおいて送り機構により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目のための縫目ピッチ送りし、前記鉤針の第2ストロークにおいて前記送り機構により前記被縫製体を前記ハンドステッチ縫目間のための縫目間ピッチ送りするにあたり、
前記縫目ピッチ送りの縫目ピッチ送り量及び前記縫目間ピッチ送りの縫目間ピッチ送り量をそれぞれ設定し、
1つの跳び縫いセットごとに前記縫目ピッチ送り、前記縫目間ピッチ送りにそれぞれ対応する各被縫製体送りモードに順次切換え、
設定された前記縫目ピッチ送り量、前記縫目間ピッチ送り量をそれぞれ各被縫製体送りモードにおいて送り駆動機構に伝達して前記送り機構により前記被縫製体を送ることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチ形成方法。
【請求項7】
上死点から下降し針板に載置された被縫製体に貫通し、下死点から前記被縫製体から抜け出して上昇し、垂直方向に直線往復運動する第1ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、糸を捕捉し、第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、捕捉されていた糸を解放する糸捕捉鉤を側設した鉤針と、
前記下死点に到達する直前から上昇する迄に、前記針板の下方にあって釜の回転する外釜に装架される内釜を揺動することにより前記内釜に内蔵した糸が巻装されるボビンを収納するボビンケースの糸出口を揺動して前記糸出口から引き出されている糸を前記鉤針に周接して緊張させる釜であって、前記第1ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目ピッチ送りすると共に、前記鉤針が第2ストロークにおいて上死点から下降し前記被縫製体に貫通し、下死点から上昇する際に、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸を掬う回転する外釜の剣先を有し、捕捉されていた糸を前記釜の回転によって前記糸捕捉鉤から解放し、前記釜の剣先で掬われて解放された糸を前記釜が更に回転することにより前記釜にくぐり入れて前記ボビンに巻装されている糸に交錯させる釜と、
前記釜がさらに回転して前記釜からくぐり出た糸を糸締めする糸引出作動子と、
前記鉤針を前記第1ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目ピッチ送りするとともに、前記鉤針を前記第2ストロークにおいて前記被縫製体から抜け出して上昇させ上死点を通過する間に、前記被縫製体を1縫目間ピッチ送りする送り機構とを備えることにより前記被縫製体の表面にハンドステッチ縫目、裏面に錠縫縫目がそれぞれ形成されることを特徴とする1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項8】
前記外釜は、前記釜からくぐり出る直前の糸を前記剣先の回転平面から逃がす方向に偏倚して前記剣先が前記釜からくぐり出た糸を引掛けるのを回避する外釜偏倚子を備えることを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項9】
前記内釜を揺動作動子により揺動自在に駆動する内釜揺動機構を備えることを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項10】
前記糸出口は、前記糸捕捉鉤の開口方向と平行な方向に前記鉤針の針落ち位置を挟んで揺動するように前記ボビンケースに設けることを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項11】
前記糸引出作動子は、前記糸捕捉鉤で捕捉されていた糸が前記外釜の剣先で掬われた後、剣先で掬われた糸を前記釜にくぐり入れ、前記釜からくぐり出る直前に前記ボビンケースの糸出口から引き出されている糸を引掛け、前記釜からくぐり出た糸を糸締めし、次いで前記糸捕捉鉤で前記糸を捕捉した後、引掛けている糸を釈放する機能を有することを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項12】
前記第2ストロークにおいて前記鉤針が前記上死点から下降する際に前記糸捕捉鉤で捕捉された糸を前記鉤針の針先と前記被縫製体の間で前記糸捕捉鉤の非開口方向に糸寄せする糸寄せ機構を備えることを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。
【請求項13】
前記鉤針の前記糸捕捉鉤が前記鉤針の前記上死点から下降して前記被縫製体に貫通し、前記針板を越えるまでの期間及び前記下死点から上昇して前記糸捕捉鉤が前記糸を捕捉し
た後、前記針板を越え、前記被縫製体を抜け出して前記上死点に達するまでの期間に前記糸捕捉鉤を閉塞する蓋針を駆動する鉤針・蓋針駆動機構を備えることを特徴とする請求項7記載の1本糸錠縫化ハンドステッチミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3(A)】
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【図3(B)】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16(A)】
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【図16(B)】
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【図17(A)】
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【図17(B)】
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【図18(A)】
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【図18(B)】
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【図18(C)】
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【図18(D)】
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【図18(E)】
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【図18(F)】
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【図18(G)】
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【図18(H)】
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【図18(I)】
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【図18(J)】
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【図18(K)】
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【図18(L)】
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【図18(M)】
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【図18(N)】
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【図19】
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【図20(A)】
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【図20(B)】
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【図21】
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【図22】
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【図23(A)】
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【図23(B)】
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【図24(A)】
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【図24(B)】
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【図25(A)】
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【図25(B)】
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【図26】
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【図18(O)】
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【公開番号】特開2013−27738(P2013−27738A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−222247(P2012−222247)
【出願日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【分割の表示】特願2007−207215(P2007−207215)の分割
【原出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000156008)株式会社鈴木製作所 (20)
【Fターム(参考)】