説明

1次元測定ユニット

【課題】 エバネッセント波を利用した測定装置に用いる1次元測定ユニットにの正確な位置決めを簡単な構造で可能にする。
【解決手段】 透明で平滑な上面に薄膜層50が形成された細長い誘電体ブロック50の薄膜層50上に、多数の測定用流路63を誘電体ブロック50の長さ方向に間隔をおいて形成した1次元ユニット10の誘電体ブロック50の底面に、長さ方向に直線状に延びた搬送用案内溝50eを形成し、側面と一端面に位置決め用当接面50dと50fをそれぞれ設け、X,Y,Z方向に正確な位置決めをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料等の測定対象物に接した薄膜層と誘電体ブロックとの界面で光ビームを全反射させてエバネッセント波を発生させ、それにより全反射した光ビームの強度に表れる変化を測定して試料の分析を行う測定装置に用いる測定ユニット、特に長さ方向に多数の測定部を並べて備えた細長い形状の1次元測定ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、エバネッセント波を利用した測定装置の1つとして表面プラズモンセンサが知られている。金属中においては、自由電子が集団的に振動して、プラズマ波と呼ばれる粗密波が生じる。そして、金属表面に生じるこの粗密波を量子化したものは、表面プラズモンと呼ばれている。表面プラズモンセンサは、この表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用して、試料の特性を分析するものであり、種々のタイプのセンサが提案されている。そして、それらの中で特に良く知られているものとして、 Kretschmann配置と称される系を用いるものが挙げられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記の系を用いる表面プラズモンセンサは、基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されて試料に接触させられる金属膜と、光ビームを発生させる光源と、光ビームを誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、上記界面で全反射した光ビームの強度を検出する光検出手段と、この光検出手段の検出結果に基づいて表面プラズモン共鳴の状態を測定する測定手段とを備えてなるものである。
【0004】
なお上述のように種々の入射角を得るためには、比較的細い光ビームを入射角を変化させて上記界面に入射させてもよいし、あるいは光ビームに種々の角度で入射する成分が含まれるように、比較的太い光ビームを上記界面に収束光状態であるいは発散光状態で入射させてもよい。前者の場合は、入射した光ビームの入射角の変化に従って、反射角が変化する光ビームを、上記反射角の変化に同期して移動する小さな光検出器によって検出したり、反射角の変化方向に沿って延びるエリアセンサによって検出することができる。一方後者の場合は、種々の反射角で反射した各光ビームを全て受光できる方向に延びるエリアセンサによって検出することができる。
【0005】
上記構成の表面プラズモンセンサにおいて、光ビームを金属膜に対して全反射角以上の特定入射角θSPで入射させると、金属膜に接している試料中に電界分布をもつエバネッセント波が生じ、このエバネッセント波によって金属膜と試料との界面に表面プラズモンが励起される。エバネッセント光の波数ベクトルが表面プラズモンの波数と等しくて波数整合が成立しているとき両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行するので、誘電体ブロックと金属膜との界面で全反射した光の強度が鋭く低下する。この光強度の低下は、一般に上記光検出手段により暗線として検出される。
【0006】
この光強度の低下が生じる全反射角以上の特定入射角θSP(以後全反射減衰角θSPと記載)より表面プラズモンの波数が解ると、試料の誘電率が求められる。すなわち表面プラズモンの波数をKSP、表面プラズモンの角周波数をω、cを真空中の光速、εmとεsをそれぞれ金属、試料の誘電率とすると、以下の関係がある。
【数1】

【0007】
試料の誘電率εsが分かれば、所定の較正曲線等に基づいて試料の屈折率等が分かるので、結局、全反射減衰角θSPを知ることにより、試料の誘電率つまりは屈折率に関連する特性を求めることができる。
【0008】
また、エバネッセント波を利用した類似のセンサとして、漏洩モードセンサも知られている(例えば非特許文献1参照)。この漏洩モードセンサは、基本的に、例えばプリズム状に形成された誘電体ブロックと、この誘電体ブロックの一面に形成されたクラッド層と、このクラッド層の上に形成されて、試料に接触させられる光導波層と、光ビームを発生させる光源と、光ビームを誘電体ブロックとクラッド層との界面で全反射条件が得られるように種々の角度で入射させる光学系と、界面で全反射した光ビームの強度を測定する光検出手段と、この光検出手段の検出結果に基づいて導波モードの励起状態を測定する測定手段とを備えてなるものである。
【0009】
上記構成の漏洩モードセンサにおいて、光ビームを誘電体ブロックを通してクラッド層に対して全反射角以上の入射角で入射させると、このクラッド層を透過した後に光導波層においては、ある特定の波数を有する特定入射角の光のみが導波モードで伝搬するようになる。こうして導波モードが励起されると、入射光のほとんどが光導波層に取り込まれるので、上記界面で全反射する光の強度が鋭く低下する全反射減衰が生じる。そして導波光の波数は光導波層の上の試料の屈折率に依存するので、全反射減衰角θSPを知ることによって、試料の屈折率や、それに関連する試料の特性を分析することができる。
【0010】
また、上述した表面プラズモンセンサや漏洩モードセンサは、創薬研究分野等において、所望のセンシング物質に結合する特定物質を見いだすランダムスクリーニングへ使用されることがあり、この場合には前記薄膜層(表面プラズモンセンサの場合は金属膜であり、漏洩モードセンサの場合はクラッド層および光導波層)上にセンシング物質を固定し、該センシング物質上に種々の被検体の溶液(液体試料)を添加し、所定時間が経過する毎に前述の全反射減衰角θSPを測定する。液体試料中の被検体がセンシング物質と結合するものであれば、この結合によりセンシング物質の屈折率が時間経過に伴って変化する。したがって、所定時間経過毎に上記全反射減衰角θSPを測定し、全反射減衰角θSPに変化が生じているか否か測定することにより、被検体とセンシング物質の結合が行われているか否か、すなわち被検体がセンシング物質と結合する特定物質であるか否かを判定することができる。このような特定物質とセンシング物質との組み合わせとしては、例えば抗原と抗体あるいは抗体と抗体が挙げられ、そのようなものに関する具体的な測定としては、一例として、センシング物質をウサギ抗ヒトIgG抗体とし、被検体であるヒトIgG抗体との結合の有無検出とその定量分析を行う測定が挙げられる。
【0011】
なお、液体試料中の被検体とセンシング物質の結合状態を測定するためには、必ずしも全反射減衰角θSPの角度そのものを検出する必要はない。例えばセンシング物質に被検体が含まれた液体試料を添加し、その後の全反射減衰角θSPの角度変化量を測定して、その角度変化量の大小に基づいて結合状態を測定することもできる。
【0012】
一方、上記のようなセンサとしては、センシング物質が固定された平板上の測定チップ上に流路機構を用いて、液体試料を連続的に供給して測定を行うものが知られている(例えば特許文献2参照)。この形態のセンサを用いれば、センシング物質と特定物質との結合状態を測定する際に、常に新しい液体試料が測定チップ上に供給されるため、液体試料中の被検体の濃度が変化せず、結合状態の測定を精度良く行うことができる。また、センシング物質と特定物質の結合状態を測定したのち、結合が行われている場合には、この結合体が固定されている測定チップ上に、特定物質が含まれていない液体試料を流すことより、センシング物質と特定物質との解離状態を測定することができる。さらに、例えば試料として気体を用いる場合、あるいは気体が溶在している液体試料を用いる場合に、流路機構を用いて、容易に測定チップ上に試料を供給することができる。
【0013】
さらに、近年、被検出反応の多様化に伴って、測定試料の溶媒にも様々なものが用いられるようになってきており、この中には例えば水等のように比較的蒸発しやすい溶媒も含まれ、この際の水の蒸発は測定試料の屈折率の変化を意味し、測定信号も変化してしまうために正確な測定が困難となる場合があるため、このような場合にも上記の流路機構を設けることにより、測定試料の蒸発を最低限に抑え信号の安定化を図ることが可能である。
【0014】
このように流路機構を設けることにより種々の効果が得られるが、一方で測定チップ上
に試料を供給するために長い配管が必要となってしまい、多量の試料を準備しなければならないという欠点もある。
【0015】
そこで、本出願人は、光ビームに対して透明で平滑な上面に薄膜層を形成した細長い誘電体ブロックの薄膜層上に流路形成部材を密接させ、この流路形成部材によって薄膜層上に多数の流路を誘電体ブロックの長さ方向に間隔をおいて形成し、その流路を薄膜層上で測定路とし、その各測定路の両端を前記流路形成部材上の入口および出口に連通させて、それぞれ供給路と排出路とし、その入口および出口にピペットを臨ませて液体試料を供給、排出するようにした、いわゆる1次元測定ユニットを提案した。(特願2004−246879号)
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【特許文献2】特開2000−065731号公報
【非特許文献1】「分光研究」第47巻 第1号(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このような1次元測定ユニットは、流路形成部材の入口からピペットチップ等の外部送液部品により直接液体試料を供給することができるので、薄膜層上に試料を供給する流路機構を備えつつ、従来必要とされていた長い配管等が不要となり、少ない試料で測定を行うことが可能となる。
【0017】
しかし、その長い測定ユニットの位置を正確に所定の位置にセットするためには、そのユニットの両端に突出して設けた突起部を保持して取り扱うので、その保持機構にX、Y、Zの3方向への動作を正確に行う機能を持たせなければならず、保持機構が複雑になるとともに、読取時の位置変動が発生しやすくなり、実用上は好ましくない。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑み、長い測定ユニットのX、Y、Zの3方向における位置を正確に所定の位置に簡単な構成で位置決めすることができ、複雑な保持機構を必要とすることなく読取時の位置変動が発生しないようにした、1次元測定ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の1次元測定ユニットは、光ビームに対して透明であり、平滑な上面に薄膜層が形成された細長い誘電体ブロックと、誘電体ブロックの前記薄膜層上に密接され、薄膜層上に多数の流路を前記誘電体ブロックの長さ方向に間隔をおいて形成する流路形成部材とからなり、前記多数の流路の各々が、薄膜層上に形成される測定路、流路形成部材上の入口から測定路に至る供給路、および測定路から流路形成部材上の出口に至る排出路から構成された1次元測定ユニットにおいて、
前記誘電体ブロックが、底面に長さ方向に直線状に延びた搬送用案内溝を有し、側面と一端面に位置決め用当接面をそれぞれ有するものであることを特徴とするものである。
【0020】
前記誘電体ブロックの側面と一端面に設けられた位置決め用当接面は、それぞれ前記底面の近傍側面と前記底面の近傍一端面に形成されていることが望ましい。
【0021】
本発明の測定ユニットは、薄膜層を金属膜からなるものとし、前述の表面プラズモン共鳴による効果を利用して測定を行う、所謂表面プラズモンセンサに使用する測定ユニットとして構成してもよいし、薄膜層を誘電体ブロックの前記一面に形成されたクラッド層とクラッド層上に形成された光導波層からなるものとし、光導波層における導波モードの励起による効果を利用して測定を行う、所謂漏洩モードセンサに使用する測定ユニットとして構成してもよい。
【0022】
また、誘電体ブロックは、測定装置の光源から出射された光ビームを誘電体ブロックと薄膜層との界面に入射させるとともに、この界面で全反射した光ビームを測定装置の光検出手段に向けて出射させるプリズムを含まないプレート状のものでもいいし、プリズムと一体的に形成されたものでもよい。
【0023】
また、流路形成部材は、弾性材料からなるものとすることが好ましく、この場合は、入口および/または出口にスリット部またはセプタムを備えたものとすることがさらに好ましい。ここでスリット部またはセプタムは、必ずしも入口および/または出口の端部にある必要はなく、入口および/または出口の近傍にあればよい。
【0024】
また、誘電体ブロックと係合して、流路形成部材を誘電体ブロックの一面上に保持する保持部材をさらに備えていることが好ましく、この場合、保持部材は、流路形成部材の入口および出口が形成された面に密接する保持板部を備え、この保持板部は、流路形成部材の入口および出口と対向する位置に、流路形成部材に向けて狭くなるテーパー状の挿入孔を有するものとすることが好ましい。
【0025】
また、入口および/または出口を密封して試料の蒸発を防止する蒸発防止部材をさらに備えていることが好ましい。この場合、蒸発防止部材は、入口および/または出口と対向する部分にスリットが形成された弾性材料からなるものとすることができる。また、保持部材と蒸発防止部材とは一体に形成してもよいし、接着部材により接着してもよい。
【0026】
なお、本発明の測定ユニットを用いて試料等の測定対象物についての測定を行う場合、すなわち測定対象物の屈折率情報を取得する場合には、例えば、薄膜層上に配される試料の屈折率自体を取得するものであってもよいし、あるいは薄膜層上に抗体等のセンシング物質を固定し、抗原抗体反応による屈折率の変化や変化の有無を取得するものであってもよい。
【0027】
屈折率情報の取得方法は、誘電体ブロックと薄膜層との界面に対して種々の入射角度で入射させた光ビームの該界面での反射光を検出して、全反射減衰角もしくはその角度変化を検出することにより屈折率もしくは屈折率変化を取得するものであってもよいし、また、D.V.Noort,K.johansen,C.-F.Mandenius, Porous Gold in Surface Plasmon Resonance Measurement, EUROSENSORS XIII, 1999, pp.585-588 に記載されているように、複数の波長の光ビームを前記界面で全反射条件が得られる入射角で入射させ、各波長毎に前記界面で全反射した光ビームの強度を測定して、各波長毎の全反射減衰の程度を検出することにより屈折率もしくは屈折率変化を取得するものであってもよい。さらに、P.I.Nikitin,A.N.Grigorenko,A.A.Beloglazov,M.V.Valeiko,A.I.Savchuk,O.A.Savchuk, Surface Plasmon Resonance Interferometry for Micro-Array Biosensing, EUROSENSORS XIII, 1999, pp.235-238 に記載されているように、光ビームを前記界面で全反射条件が得られる入射角で入射させるとともに、この光ビームの一部を、この光ビームが前記界面に入射する前に分割し、この分割した光ビームを、前記界面で全反射した光ビームと干渉させて、その干渉後の光ビームの干渉縞の変化を検出することにより屈折率の変化を取得するものであってもよい。
【0028】
すなわち、測定対象物の屈折率情報とは、測定対象物の屈折率に応じて変化するものであればいかなるものでもよく、測定対象物の屈折率に応じて変化する全反射減衰角や全反射減衰を生じる光ビーム波長、測定対象物の屈折率変化に応じて変化する全反射減衰角の変化や全反射減衰を生じる光ビーム波長の変化あるいは干渉縞の変化等がその例である。
【発明の効果】
【0029】
本発明の1次元測定ユニットは、薄膜層上に流路形成部材により多数の流路を長さ方向に間隔をおいて形成した細長い誘電体ブロックが、底面に長さ方向に直線状に延びる搬送用案内溝を有しているから、搬送用案内溝を装置側のレールに摺動させることにより長さ方向に安定して移動させ、それぞれの流路の測定路を所定の測定部に臨ませることができ、またその誘電体ブロックがその側面と一端面に位置決め用当接面をそれぞれ有するから、装置側にその当接面に当接する位置決め用ストッパと、誘電体ブロックをそのストッパおよび前記レールに向けて押し付ける手段を設ければ、誘電体ブロックをX,Y,Zの3方向に正確に位置決めすることができ、安定した正確な測定を実現することができる。
【0030】
測定を行うことが可能となる。
【0031】
また、誘電体ブロックの側面と一端面に設けられる位置決め用当接面を、誘電体ブロックの底面の近傍側面と近傍一端面に形成すれば、位置決め用のストッパをレールに一体的に設けることができ、装置側の位置決めのための構成を極めて簡単なものにすることができる。
【0032】
流路形成部材を、弾性材料からなるものとすることにより、流路形成部材を薄膜層上に確実に密接させることができるため、接触面からの液体試料の液漏れを防止することができる。また、この場合に、さらに入口および/または出口にスリット部またはセプタムを備えたものとすることにより、液体試料の蒸発を防止することができるため、この液体試料の蒸発による試料の屈折率変化を防止して、測定信号の安定化を図ることが可能となる。
【0033】
また、誘電体ブロックと係合して、流路形成部材を誘電体ブロックの一面上に保持する保持部材をさらに備えることにより、搬送時等に誘電体ブロックと流路形成部材とが離別することを防止できるため、取扱性を向上させることができる。また、この場合、保持部材は、流路形成部材の入口および出口が形成された面に密接する保持板部を備え、この保持板部は、流路形成部材の入口および出口と対向する位置に、流路形成部材に向けて狭くなるテーパー状の挿入孔を有するものとすることにより、ピペットやシリンジ等の外部送液部品を流路形成部材の入口または出口へ容易に挿入させることができる。
【0034】
また、入口および/または出口を密封して試料の蒸発を防止する蒸発防止部材をさらに備えることにより、液体試料が蒸発することによる試料の屈折率変化を防止することができるため、測定信号の安定化を図ることが可能となる。この場合、蒸発防止部材を、入口および/または出口と対向する部分にスリットが形成された弾性材料からなるものとすることにより、簡易な構造で蒸発防止部材を作成することができる。
【0035】
また、保持部材と蒸発防止部材とを一体に形成した場合には、部品点数を削減することができるため、測定ユニットの製作性を向上させることができる。
【0036】
また、保持部材と蒸発防止部材とを接着部材により接着した場合には、両者をそれぞれ異なる材料で形成することができる。
【0037】
また、流路形成部材を、複数の流路を備えたものとすることにより、一つの測定ユニットで複数の試料の測定を並列的に行わせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0039】
[測定ユニット]
図1は本発明の第1の実施の形態による測定ユニットの斜視図、図2は上記測定ユニットの分解斜視図、図3は上記測定ユニットの上面図、図4は図3中のIV−IV線断面図である。
【0040】
測定ユニット10は、光ビームに対して透明であり、平滑な上面50aに薄膜層としての金属膜55が形成された誘電体ブロック50と、この誘電体ブロック50の金属膜55上に密接される流路形成部材51と、誘電体ブロック50と係合して、流路形成部材51を誘電体ブロック50の上面50a上に保持する保持部材52とから構成される。
【0041】
誘電体ブロック50は、例えば透明樹脂等からなるものであり、長手方向に直交する断面が上底よりも下底の方が短い台形状の本体を有し、この本体の長手方向の両端部に上面(もしくは下面)方向から見たときの幅が本体よりも薄く形成された保持部50bが形成されたもので、後述の測定装置の光源から出射された光ビームを誘電体ブロック50と金属膜55との界面に入射させるとともに、この界面で全反射した光ビームを測定装置の光検出手段に向けて出射させるプリズム部が一体的に形成されたものである。本体の長手方向の両側面には後述の保持部材52に形成された係合孔52cに係合させるための係合凸部50cと底面近傍の側面が垂直に形成された垂直凸部50dとが両側面で各々互いに対向するように形成されており、底面には長手方向に平行に延びる摺動溝50eが形成されている。左右の側面に形成された垂直凸部50dの表面は互いに平行とされている。また、保持部50bの、測定部に移動されるとき先端となる側の端面には位置決め用の当接面50fが設けられている。
【0042】
流路形成部材51は、入口61から測定路63に至る供給路62、および測定路63から出口65に至る排出路64から構成される流路60が、流路形成部材51の長手方向に渡って複数形成されており、この複数の流路60は直線状に配置されている。
【0043】
図4に示すように、流路形成部材51の下部部分には、供給路62の出口と排出路64の入口が開口され、また流路形成部材51の下面に位置する金属膜55の表面と接する領域に、この供給路62の出口と排出路64の入口を囲むシール部51aが形成されており、このシール部51aの内側が測定路63となる。このため、流路形成部材51を誘電体ブロック50の金属膜55上に密接させた場合に、このシール部51a内の測定路63が流路として機能するようになる。なお、シール部51aは、流路形成部材51の上部部分と一体形成されたものであってもよいし、上部部分とは異なる素材により形成され、後付されたものであってもよく、例えばOリング等を流路形成部材51の下部部分に取り付けたものであってもよい。
【0044】
本発明の測定ユニットを使用する表面プラズモンセンサ等の測定装置では、蛋白質を含む液体試料が使用されることが想定されるが、流路60内で液体試料中の蛋白質が固着してしまうと測定を正確に行うことが困難となってしまうため、流路形成部材51の材料としては蛋白質に対する非特異吸着性を有しないことが好ましく、具体的にはシリコン、ポリプロピレン等を用いるとよい。また、流路形成部材51をこのような弾性材料からなるものとすることにより、流路形成部材51を金属膜55上に確実に密接させることができるため、接触面からの液体試料の液漏れを防止することができる。
【0045】
保持部材52は、ポリプロピレン等の弾性材料からなり、長手方向と直交する方向の断面が略冂字形状をしており、保持部材52の上板(保持板部)の流路形成部材51の入口61および出口65と対向する位置には流路形成部材51に向けて狭くなるテーパー状のピペット挿入孔52aが形成されており、保持部材52の上面の各ピペット挿入孔52aの中間、および両端のピペット挿入孔52aのさらに外側には位置決め用のボス52bが形成されている。
【0046】
また、この保持部材52の上面には、蒸発防止部材54が両面テープ(接着部材)53により貼付されている。図2に示すように、両面テープ53のピペット挿入孔52aと対向する位置にはピペット挿入用の孔53aが形成され、ボス52bと対向する位置には位置決め用の孔53bが形成されており、同様に、蒸発防止部材54のピペット挿入孔52aと対向する位置にはスリット54aが形成され、ボス52bと対向する位置には位置決め用の孔54bが形成されており、ボス52bに両面テープ53の孔53bおよび蒸発防止部材54の孔54bを挿通した状態で、蒸発防止部材54を保持部材52の上面に貼付することにより、蒸発防止部材54のスリット54aと流路形成部材51の入口61および出口65とが対向するように構成される。この蒸発防止部材54は、スリット54aからピペットを挿入できるように弾性を有する材料である必要があり、具体的にはシリコンまたはポリプロピレン等を用いるとよい。なお、上記の保持部材52と蒸発防止部材54とは一体的に形成してもよく、これに加えてさらに流路形成部材51も一体的に形成してもよい。
【0047】
さらに、保持部材52の長手方向側板には、誘電体ブロック50に形成された係合凸部50cに係合させるための係合孔52cが形成されており、この係合孔52cを係合凸部50cに係合させて保持部材52と誘電体ブロック50とを係合させた状態で、流路形成部材51が保持部材52と誘電体ブロック50とに挟持され、流路形成部材51が誘電体ブロック50の上面50a上に保持されるように構成されている。
【0048】
図4に示すように、流路形成部材51が保持部材52と誘電体ブロック50とに挟持された状態では、流路形成部材51の入口61および出口65は、蒸発防止部材54のスリット54aにより外気から遮断され、流路60内に注入された液体試料の蒸発を防止するように構成されている。
【0049】
[表面プラズモンセンサ]
次いで、上記測定ユニット10を用いた表面プラズモンセンサを説明する。図5はこの表面プラズモンセンサの概略構成を示す平面図、図6は上記表面プラズモンセンサの測定系の平面図、図7は図6中のVII−VII線断面図、図8は上記表面プラズモンセンサの測定系の側面図である。なお、図8においては、測定ユニット10の保持部材52(両面テープ53および蒸発防止部材54を含む)を省略して示している。
【0050】
この表面プラズモンセンサ1は、図5に示すように測定ユニット10に設けられた複数の流路60毎に光ビームを並列的に入射させることにより複数の試料の分析を同時に行うことが可能な表面プラズモンセンサであり、同様の構成の複数の表面プラズモン測定系1A、1B…により構成されている。各測定系の構成について、個別の要素を表す符号であるA、B…の符号は省略して説明する。
【0051】
図6および図8に示すように、各測定系は、1本の光ビーム13を発生させる半導体レーザ等からなる光源14(以下、レーザ光源14という)と、上記光ビーム13を測定ユニット10に通し、流路60の下の誘電体ブロック50と金属膜55との2箇所の界面50dおよび50eに対して、種々の入射角が得られるように並列的に入射させる光学系15と、上記界面50dおよび50eで全反射した光ビーム13を各々平行光化する2つのコリメータレンズ16と、この平行光化された光ビーム13を各々検出する2つのフォトダイオードアレイ17と、2つのフォトダイオードアレイ17に接続された差動アンプアレイ18と、ドライバ19と、コンピュータシステム等からなる信号処理部20と、この信号処理部20に接続された表示部21とを備えている。
【0052】
入射光学系15は、レーザ光源14から発散光状態で出射した光ビーム13を平行光化するコリメータレンズ15aと、該平行光化された光ビーム13を分光するハーフミラー15cと、ハーフミラー15cにより反射された光ビーム13を測定ユニット10方向に反射させるミラー15dと、ハーフミラー15cを透過した光ビーム13、およびミラー15dにより反射された光ビーム13を上記界面50dおよび50e上で各々収束させる2つの集光レンズ15bとから構成されている。
【0053】
光ビーム13は、上述のように集光されるので、界面50dおよび50eに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なおこの入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビーム13は界面50dおよび50eで全反射し、この反射した光ビーム13には、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。なお、上記光学系15は、光ビーム13を界面50dおよび50eにデフォーカス状態で入射させるように構成されてもよい。そのようにすれば、表面プラズモン共鳴の状態検出の誤差が平均化されて、測定精度が高められる。
【0054】
なお光ビーム13は、界面50dおよび50eに対してp偏光で入射させる。そのようにするためには、予めレーザ光源14をその偏光方向が所定方向となるように配設すればよい。その他、波長板で光ビーム13の偏光の向きを制御してもよい。
【0055】
図7に示すように、本実施の形態において、測定ユニット10の各流路60の測定路63には2箇所の界面55dおよび55eに対して光ビーム13が並列的に入射されるが、この内界面55d上の金属膜55上には何も固定せず、界面55e上の金属膜55上にはセンシング物質73を固定する。
【0056】
測定に当たっては、測定部の検出器の差動アンプが出力する微分値を時間の経過とともに測定し続けることにより、金属膜55に接している液体試料72またはセンシング物質73の屈折率変化を調べることができる。
【0057】
特に本実施形態では液体試料に含まれる被検体が、センシング物質73と結合する特定物質であれば、センシング物質73と被検体との結合状態に応じてセンシング物質73の屈折率が変化するので、上記微分値を測定し続けることにより、被検体がセンシング物質73と結合する特定物質であるか否かを検出することができる。
【0058】
また、本実施の形態においては、金属膜55上にセンシング物質73が固定されていない領域と、センシング物質73が固定された領域を有し、リファレンスの測定とセンシング物質73と被検体との結合状態の測定を同時に行っているため、2つの領域における測定値の差を求めることにより、液体試料の温度変化等の影響で生じる測定誤差を相殺した測定結果を得ることができる。
【0059】
なお、本実施の形態は、上述したように、リファレンスの測定とセンシング物質73と被検体との結合状態の測定に使用方法が限定されるものではない。また、別の流路により形成される測定面をリファレンスの測定に用いる態様や、リファレンスの測定を行わない態様も可能である。
【0060】
[測定ユニットの位置決め]
以下、上記構成の表面プラズモンセンサ1における測定ユニットの位置決めについて説明する。測定に先立ち、恒温室2からチップ保持部11上の測定位置へ向けて測定ユニット10が移動される。(移動機構については後述する)チップ保持部11には誘電体ブロック50に形成された摺動溝50eと係合するレール11aが形成されており、測定ユニット10を移動させる際に高い位置精度を確保することができるようになっている。さらに、測定ユニット10がチップ保持部11上に載置された後、誘電体ブロック50が、チップ保持部11の図中右の側部に一体的に立設されたストッパ11bに誘電体ブロック50の垂直凸部50dが当接するように、誘電体ブロック50の反対側に形成された垂直凸部50dが不図示の付勢機構によりX方向に押圧されて、チップ保持部11上の測定位置に固定され、X方向に位置決めが正確になされる。このときX方向の精密な位置決めができるように、前記摺動溝50eとレール11aとの係合による位置決めには僅かに遊びがある。また流路形成部材51の上面には平板状もしくは枠状の押圧部材12が載置され、その上から測定ユニット10をZ方向に押し付けて測定ユニット10をチップ保持部11上において正確にZ方向に位置決めする。さらに図9に示すように、チップ保持部11の先端(図中右端)には、誘電体ブロック50の保持部50bの先端面50fに当接して測定ユニット10をその移動方向すなわちY方向に位置決めするストッパ11cが設けられ、後端の誘電体ブロック50の保持部50bの端面を押圧することにより、測定ユニット10をY方向に位置決めする。なお、図9においては、誘電体ブロック50の垂直凸部50dに当接するストッパ11bは図示されていない。(図16、図17には他例を示す)
[表面プラズモンセンサによる試料分析]
その後、図7に示すように流路形成部材51の入口61に液体試料供給用ピペットチップ70を挿入し、出口65に液体試料吸入用ピペットチップ71を挿入し、液体試料供給用ピペットチップ70から液体試料72を流路60の測定路63に供給した後、測定を開始する。
【0061】
図8に示す通り、レーザ光源14から発散光状態で出射した光ビーム13は、光学系15の作用により、測定路63の下の誘電体ブロック50と金属膜55との界面50dおよび50e上で収束する。この際、光ビーム13は、界面50dおよび50eに対して種々の入射角θで入射する成分を含むことになる。なおこの入射角θは、全反射角以上の角度とされる。そこで、光ビーム13は界面50dおよび50eで全反射し、この反射した光ビーム13には、種々の反射角で反射する成分が含まれることになる。
【0062】
界面50dおよび50eで全反射した後、2つのコリメータレンズ16によって各々平行光化された2本の光ビーム13は、2つのフォトダイオードアレイ17により各々検出される。本例におけるフォトダイオードアレイ17は、複数のフォトダイオード17a、17b、17c……が1列に並設されてなり、図8の図示面内において、平行光化された光ビーム13の進行方向に対してフォトダイオード並設方向がほぼ直角となる向きに配設されている。したがって、上記界面50dおよび50eにおいて種々の反射角で全反射した光ビーム13の各成分を、それぞれ異なるフォトダイオード17a、17b、17c……が受光することになる。
【0063】
本実施の形態においては、金属膜55上にセンシング物質73が固定されていない領域と、センシング物質73が固定された領域を有し、リファレンスの測定とセンシング物質73と被検体との結合状態の測定を同時に行っているため、2つの領域における測定値の差を求めることにより、液体試料の温度変化等の影響で生じる測定誤差を相殺した測定結果を得ることができる。
【0064】
なお、ここではリファレンスの測定面として金属膜55を例示しているが、液体試料72中の被測定物質と結合しない機能を有している方が好ましい。そのような測定面としては、例えばアルキルチオール、アミノアルコールまたはアミノエーテル等をリファレンスの測定面に固定し、被検体の測定面にセンシング物質として抗体を固定する構造にしてもよい。
【0065】
なお、本実施の形態は、上述したように、リファレンスの測定とセンシング物質73と被検体との結合状態の測定に使用方法が限定されるものではない。また、別の流路により形成される測定面をリファレンスの測定に用いる態様や、リファレンスの測定を行わない態様も可能である。
【0066】
また、測定装置については、複数の表面プラズモン測定系により測定ユニットに設けられた全ての流路に対して同時に測定を行う態様に限定されるものではなく、一つの表面プラズモン測定系のみを備え、測定ユニットの位置を測定系に対して相対的に移動させることによって測定ユニットに設けられた複数の流路の測定を順次行う態様としてもよい。
【0067】
[表面プラズモンセンサ装置の全体構成]
以下、本発明の1次元測定ユニットを使用して試料の分析をする表面プラズモンセンの、測定ユニットの搬送機構を含む全体的な基本的構成の一実施形態の概略、および測定ユニットの搬送機構の例を説明する。
【0068】
図10は表面プラズモンセンサ装置の全体の概略を示す平面図、図11はその正面図、図12はその側面図、図13は測定ユニットの搬送機構を示す斜視図、図14はその平面図、図15はその測定ユニット突き上げ機構を示す一部正面図である。
【0069】
この実施形態による表面プラズモンセンサ装置では、1次元測定ユニット10(以下、ユニットという)が8本並列されて収容されたユニットプレート100が2つ並列され、一度に16本のユニット10の測定ができるように構成されている。このプレート100はその各ユニット10の長さ方向に直角な方向に16本分の距離だけA方向に移動可能とされ、16本のすべてのユニット10が後述する突き上げ位置aにおいてA方向と直角なB方向に移動されて、ユニットの測定部111にユニット10のすべての測定路を移動することができるようになっている。測定部111では、ユニット10の全長に亘ってユニット10を押さえる図9の押圧部材12とは異なり、ユニット10の測定部111に位置する部分だけを前記Z方向に押圧するウェル押さえ112がユニット10の測定される測定路を位置決めする。
【0070】
測定部111には、液の供給と排出(吸入)を行うチップ121、122を備えた分注ヘッド120が出入り可能とされ、この分注ヘッド120は、図10の図中、一番上から一番下までA方向に移動可能とされている。図中一番上には、縦横に多数のチップ121が配列されたチップ供給部122があって、このチップ供給部122はB方向に移動してすべてのチップ121がA方向に移動する分注ヘッド120によりピックアップできるようになっている。また、チップ供給部122と並んで測定に使用される多数のアナライトを縦横に配列されたタイタプレート123が同じくB方向に移動可能に設置され、分注ヘッド120がA方向に移動する軌道までB方向に移動して、すべてのアナライトが分注ヘッド120のチップ121により吸入されるようになっている。このタイタプレートとしては、例えば行、列ともに一つおきに96箇所に分注する386タイタプレートを使用することができる。
【0071】
さらに、図10の下方には、濃度の異なるDMSO液、例えば低濃度、中低濃度、中濃度、中高濃度、高濃度のDMSO液と、バッファ液を収容した96ウェルプレート124が同様にB方向に移動可能に設置され、B方向に移動して、すべてのサンプルとバッファ液が分注ヘッド120のチップ121により吸入されるようになっている。
【0072】
また、この96ウェルプレート124と測定部111との間には、ユニットから排出された不要となって廃棄される液をピペットチップから吸引して液を廃棄する廃液部125が配置され、分注ヘッド120はここに液を廃棄する。
【0073】
測定の順序としては、まずセンシング物質を予め金属膜55の一部に設けたユニット10をユニットプレート100からB方向に測定部111まで移動して測定すべき測定路63を測定部111に位置させた後固定し、分注ヘッド120にチップ供給部122から新しいチップ121を装着し、ヘッド120が96ウェルプレートまでA方向に移動して低濃度DMSO液を吸入し、ユニット10の測定路63にこの低濃度DMSO液を注入し、測定し、その後排出する。次いで同様に中濃度と高濃度のDMSO液についても吸入、注入、測定、排出を行う。このように、DMSOの濃度を変更してDMSO補正のための測定を行う。その後ヘッド120がアナライトのタイタプレート123まで移動してアナライトを吸入し、A方向に移動してユニット10に注入し、反応を待って測定し、排出を行う。その後ヘッド120が96ウェルプレート124まで移動してバッファ液を吸入し、ユニット10に注入し、測定し、排出を行う。それからバッファで洗浄し、チップ121を捨てる。これにより得られたDMSOの濃度のデータから、アナライトについての屈折率を求める。
【0074】
これで、センシング物質を付けた一つの測定路について、一つのアナライトについて測定が終わり、次にユニット10をB方向に移動して次の測定路63を測定部111に位置させ、同様の測定を異なるアナライトについて行なう。
【0075】
なお、図11に示すように、チップ121は2つが対になっているが、これはユニット10の入口61と出口65に同時に1対のチップ121が入って、入口61からの液の供給と出口65からの液の排出を同時にするためのものである。
【0076】
また図12において、チップ供給部122とアナライトのタイタプレート123の上方および96ウェルプレート124の上方に示すのは、装置においてチップ121が上下に移動し、これらに至るための、それぞれアナライト・チップ用開口部126、サンプル用開口部127である。
【0077】
また、測定部の下方には、レーザ光源130、レーザ光をユニット10に入射させるビームスプリッタやシャッタを含む光学系132、その間を接続する光ファイバ131およびユニット10の金属膜55で反射した光を検出する受光部133が設置されている。
【0078】
[測定ユニット搬送]
ユニット10を移動する機構を図13、14および15に示す。1次元測定ユニット10を8本ずつ収容する(図では空になっている)2つのユニットプレート100がA方向に移動可能とされ、その中から上方に突き上げ機構により突き上げられたユニット10がB方向に移動されて、測定される測定路を測定部111に位置させる。突上げ機構は、図15に示すように、ユニット10を下から上に突き上げる突上げ板140からなり、この突上げ板140は、ユニットのプレート100の下に、プレート100の底にユニット毎に開口したスリット100a(図13,図14)から上方にユニット10を突き上げるように設けられている。この突上げ板140の下部141と一体に固定されたラック142にピニオン143が噛合し、それと同軸のウォームホイール144がウォームギア145によって回転され、ウォームギア145の正逆回転によって突上げ板140が上下動するようになっている。
【0079】
この装置の実施形態におけるユニット10の位置決め機構の詳細を図16および図17に示す。ユニット10の側面の垂直凸部50dには側面ストッパ40が当接し、保持部50bの先端面50fには先端ストッパ41が当接し、図17に示すようにユニット10の側面ストッパ40の反対側には反対側の垂直凸部50dに当接して位置決めをする側面押圧部42が測定部111に来た測定路のある位置でユニット10の誘電体ブロック50を反対側から押して、ブロック50を側面ストッパ40に押し付けてユニット10を正確に位置決めする。
【0080】
上記装置の位置決め機構によれば、正確な位置決めができるとともに、ユニット10を強い力で固定することができるので、チップ121を抜き差しするときに、ユニット10が動いたりすることがないという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施の形態による測定ユニットの斜視図
【図2】上記測定ユニットの分解斜視図
【図3】上記測定ユニットの上面図
【図4】図3中のIV−IV線断面図
【図5】本発明の第1の実施の形態による測定ユニットを用いた表面プラズモンセンサの概略構成を示す平面図
【図6】上記表面プラズモンセンサの測定系の平面図
【図7】図6中のVII−VII線断面図
【図8】上記表面プラズモンセンサの測定系の側面図
【図9】表面プラズモンセンサの測定系における測定ユニットの位置決め方向を示す正面図
【図10】表面プラズモンセンサ装置の全体の概略を示す平面図
【図11】表面プラズモンセンサ装置の全体の概略を示す正面図
【図12】表面プラズモンセンサ装置の全体の概略を示す側面図
【図13】測定ユニットの搬送機構を示す斜視図
【図14】測定ユニットの搬送機構を示す平面図
【図15】測定ユニットの搬送機構の測定ユニット突き上げ機構を示す一部正面図
【図16】測定ユニットの位置決め機構を示す一部拡大斜視図
【図17】測定ユニットの位置決め機構を示す一部拡大側面図
【符号の説明】
【0082】
10 測定ユニット
12 押圧部材
13 光ビーム
14 レーザ光源
15 光学系
16 コリメータレンズ
17 フォトダイオードアレイ
17a、17b、17c…… フォトダイオード
18 差動アンプアレイ
18a、18b、18c…… 差動アンプ
19 ドライバ
20 信号処理部
21 表示部
40 側面ストッパ
41 先端ストッパ
42 側面押圧部
50 誘電体ブロック
50d 垂直凸部(側面当接面)
50f 先端当接面
51 流路形成部材
52 保持部材
53 両面テープ
54 蒸発防止部材
55 金属膜
60 流路
61 入口
62 供給路
63 測定路
64 排出路
65 出口
70、71 ピペット
72 液体試料
73 センシング物質
100 ユニットのプレート
111 測定部
120 分注ヘッド
121 チップ(ピペット)
122 チップ供給部
123 アナライトタイタプレート
124 96ウェルプレート(サンプルプレート)
125 液吸収部
140 突上げ板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームに対して透明であり、平滑な上面に薄膜層が形成された細長い誘電体ブロックと、
該誘電体ブロックの前記薄膜層上に密接され、該薄膜層上に多数の流路を前記誘電体ブロックの長さ方向に間隔をおいて形成する流路形成部材とからなり、
前記多数の流路の各々が、前記薄膜層上に形成される測定路、前記流路形成部材上の入口から該測定路に至る供給路、該測定路から前記流路形成部材上の出口に至る排出路から構成され、
前記誘電体ブロックが、底面に長さ方向に直線状に延びた搬送用案内溝を有し、側面と一端面に位置決め用当接面をそれぞれ有するものであることを特徴とする1次元測定ユニット。
【請求項2】
前記誘電体ブロックの側面と一端面に設けられた位置決め用当接面が、それぞれ前記底面の近傍側面と前記底面の近傍一端面に形成されていることを特徴とする請求項1記載の1次元測定ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2006−105911(P2006−105911A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296435(P2004−296435)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】