11βHSD1阻害剤およびその用途
【課題】ベンゾフラン誘導体を有効成分とする11βHSD1阻害剤を提供する。
【解決手段】本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)で示される化合物(Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは水酸基またはアルコキシル基である)で示される化合物またはその塩を有効成分として含んでいる。
【化1】
【解決手段】本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)で示される化合物(Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは水酸基またはアルコキシル基である)で示される化合物またはその塩を有効成分として含んでいる。
【化1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)阻害剤およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、ベンゾフラン誘導体を有効成分とする11βHSD1阻害剤、その11βHSD1阻害剤を含有する食品および医薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(MS)は、内臓脂肪型肥満を中心としてインスリン抵抗性、耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧などの代謝異常が重積する病態であり、心筋梗塞または脳卒中に代表される致死的イベントの発症基盤となることが知られている。
【0003】
近年、脂肪組織機能に焦点を当てたアプローチの中から、脂肪細胞内でのグルココルチコイド(GC)の異常な活性化がMSの発症に関与していることが明らかになってきた。細胞内で不活性型GCを活性型GCに変換する酵素は、11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)である。ヒトやげっ歯類で11βHSD1は、皮下脂肪組織よりも内臓脂肪組織において高い酵素活性と遺伝子発現レベルを示し、肥満度やインスリン抵抗性指標と強い相関性を示す。
【0004】
下記のように、11βHSDには、11βHSD1および11βHSD2の二つのタイプが存在する。
【0005】
【化1】
【0006】
具体的には、11βHSD1は脂肪組織以外にも肝臓、肺などのGC標的組織において高発現している。11βHSD1は、げっ歯類では11−デヒドロコルチコステロン(11-dehydrocorticosterone(不活性型))から、コルチコステロン(corticosterone(活性型))へ、ヒトではコルチゾン(cortisone(不活性型))から、コルチゾール(cortisol(活性型))へと変換し、活性化する。11βHSD1の全身性ノックアウトマウスでは、投与された不活性型GCを活性型GCに変換できないことから、11βHSD1が生体における唯一の細胞内GC活性化酵素であることが証明されている。
【0007】
一方、11βHSD2は、腎臓、大腸、胎盤などの組織に高発現し、11β−HSD1と逆の反応(活性型GCを不活性GCに変換)を担っている。
【0008】
11βHSD1は小胞体に局在し、補酵素としてNADPHを要求するが、このNADPHを供給しているのがヘキソース−6−リン酸脱水素酵素(H6PDH)である。H6PDHもまた11β−HSD1と同様に小胞体に局在している。細胞質に存在するグルコース−6−リン酸(G6P)がG6Pトランスポーター(G6TP)を介して小胞体内に流入し、H6PDHによって6−ホスホグルコン酸(6PG)に変換され、それと同時にNADPからNADPHが生成する。生成したNADPHを補酵素として、11βHSD1は不活性型GCを活性型GCへと変換する。細胞質には、H6PDHと同様の反応を行うグルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)が存在する。しかし、H6PDHノックアウトマウスでは11βHSD1活性が見られなくなることから、11βHSD1活性はH6PDHに依存していると考えられている。
【0009】
GCは脂肪細胞の分化や増殖に重要な役割を果たすと共に、代表的なインスリン拮抗ホルモンとしてインスリンによる糖・脂質代謝を阻害する。また、アンジオテンシノーゲンの産生誘導やアンジオテンシンII受容体(ATI)発現の増強などを介して血圧を上昇させる。さらに、強力なレプチン拮抗ホルモンとして過食と肥満を引き起こすことが示唆されている。したがって、GCは、MSの病態に関与すると考えられており、そのGCを活性化する11βHSD1がMS発症の分子基盤として注目されている。
【0010】
近年、11βHSD1を遺伝子操作したモデルマウスにおいて、11βHSD1のMSに対する関与の可能性が検証されている。すなわち、11βHSD1ノックアウトマウスでは、インスリン感受性の上昇や耐糖能の改善が見られ、高脂肪食負荷による内臓脂肪蓄積が抑制され、MSの発症・進展に抵抗性を示す。
【0011】
一方、脂肪細胞で11βHSD1を過剰発現するトランスジェニックマウスは、内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧、脂肪肝などMSの主要な徴候を発現する。このモデルマウスにおいて注目すべきことは、全身の血中GC濃度の増加は認められないが、脂肪組織内のGC濃度は野生型より2〜3倍上昇しており、門脈を介して肝臓へ流入するGCも増加していたことである。さらに、過剰なGCに対する肝臓への影響を検討するため肝臓特異的に11βHSD1を過剰発現させたトランスジェニックマウスでは、高血圧、非肥満型高インスリン血症を示すことが報告されている。また、種々のMS病態モデルマウスへの11βHSD1阻害剤の投与により、MSの徴候が改善されることが報告されている。すなわち、高脂肪食を負荷して肥満を誘導したマウスは、11βHSD1阻害剤の投与により、体重増加の抑制、脂肪蓄積の減少、インスリン抵抗性の改善が認められる。さらに、2型糖尿病モデルマウスではインスリン抵抗性の改善が、動脈硬化モデルマウスでは血中脂質の低下が認められる。
【0012】
MSの発症メカニズムを考える上で示唆に富む病態がクッシング症候群である。本症候群は高コルチゾール血症として特徴付けられ、これに伴って内臓脂肪型肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧を引き起こす。MSとクッシング症候群の重要な相違点として、大部分のMS患者の血中コルチゾール濃度は、正常レベルであることが注目される。この対比は、血中コルチゾール濃度が必ずしもMSの病態の発症を決定するわけではないことを示唆している。
【0013】
以上のことから、内臓脂肪型肥満およびMSの予防や治療には、内臓脂肪組織内における過剰なGCの活性化を招く11βHSD1活性を抑制(阻害)することが鍵となる。
【0014】
また、活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾール)は、糖新生、インスリンによる糖取込みおよび解糖阻害、脂肪分化、アンギオテンシノーゲン産生または骨形成抑制等の生理作用を有し、生体内で重要な役割を担っている。しかし、過剰なコルチゾールは、耐糖能異常、脂質代謝異常、骨形成阻害、脂肪細胞由来生理活性物質の過剰分泌等に起因する様々な病体の原因となる。
【0015】
例えば、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、アテローム性動脈硬化症、クッシング症候群、高血圧、認識障害、記憶障害、鬱病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0016】
従って、11βHSD1阻害剤は、このような疾患等の治療または予防に有効である。
【0017】
例えば、非特許文献1には、カルベノキソロン、化合物544、BVT2733をはじめ、種々の11βHSD1阻害剤が記載されている。
【0018】
【化2】
【0019】
一方、特許文献1には、2−(4−ヒドロキシル)ベンゾフラン誘導体が、エストラジオール受容体に対して顕著な親和力を有し、強力な抗エストロゲン作用を示すことが開示されている。
【0020】
また、本願発明者等は、ベンゾフラン誘導体である、4−(2−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP17)および4−(3−メチル−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP20)が、脂肪組織において、11βHSD1阻害活性を示すことを明らかにしている(非特許文献2)。
【0021】
また、本願発明者等は、ベンゾフラン誘導体である、4−(2−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP17)およびステモフランA(KPNP25)が、脳組織において、11βHSD1阻害活性を示すことを明らかにしている(非特許文献3)。
【0022】
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特表平6−507615号公報(1994年9月1日公表)
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Drug Discovery Today, Volume 12, No.13/14 July 2007 pp 504-520.
【非特許文献2】13th International Congress of Endocrinology Nov.8-12 (2008) Rio de Janeiro.
【非特許文献3】日本薬学会第128回年会講演要旨集 発表番号:27PW−pm014,2008年3月
【非特許文献4】J. Org. Chem. Volume 70, 2005 pp 10292-10296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上述した公知化合物とは化学構造が異なるベンゾフラン誘導体を有効成分とする11βHSD1阻害剤およびその用途(利用方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者等は、特定のベンゾフラン誘導体が、11βHSD1活性を顕著に阻害することを見出すと共に、ヒドロキシベンゾフラン誘導体が、11βHSD1活性を選択的に阻害するという注目すべき生物活性を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0027】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)(式中、Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは、水酸基またはアルコキシル基である)で示される化合物またはその塩を有効成分とするものである。
【0028】
【化4】
【0029】
本発明の11βHSD1阻害剤において、上記一般式(1)で示される化合物の置換基Xが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合した水酸基またはアルコキシル基であることが好ましい。
【0030】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物が、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることが好ましい。
【0031】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物の置換基XおよびZが、いずれも水酸基であることが好ましい。
【0032】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物が、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることが特に好ましい。
【0033】
本発明の食品は、前記いずれかの11βHSD1阻害剤を含有することを特徴としている。
【0034】
本発明の医薬は、前記いずれかの11βHSD1阻害剤を含有することを特徴としている。
【0035】
本発明の医薬は、グルココルチコイドが関与する疾患の治療剤または予防剤であることが好ましい。
【0036】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患は、例えば、糖尿病(特に2型糖尿病)、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0037】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患が、内臓脂肪型肥満であることがより好ましい。
【0038】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患が、メタボリックシンドロームであることがより好ましい。
【0039】
本発明によれば、11βHSD1阻害活性を示す公知化合物とは化学構造が異なるベンゾフラン誘導体(一般式(1)で示されるベンゾフラン誘導体)を有効成分とする11βHSD1阻害剤を実現することができる。また、本発明によれば、11βHSD1阻害剤を、グルココルチコイドに起因する疾患等を予防または治療するための食品または医薬用途として利用することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明は、一般式(1)で示されるベンゾフラン誘導体またはその塩を有効成分とするものである。従って、11βHSD1阻害活性によって、グルココルチコイドに起因する疾患等を予防または治療することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図2】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図3】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図4】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図5】KPNP9,13と、17,25の腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対する阻害活性を示すグラフである。
【図6】KPNP7,8,9,11,12,13の腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対する阻害作用を示すグラフである。
【図7】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。
【図8】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【図9】腎臓の11βHSD2に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図10】腎臓の11βHSD2に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図11】実施例3におけるマウスの体重を示すグラフである。
【図12】実施例3におけるマウスの食餌摂取量を示すグラフである。
【図13】実施例3におけるマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【図14】脳組織における11βHSD1活性を示すグラフである。
【図15】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図16】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の阻害作用を示すグラフである。
【図17】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図18】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。
【図19】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【図20】実施例5におけるマウスの体重を示すグラフである。
【図21】実施例5におけるマウスの食餌摂取量を示すグラフである。
【図22】実施例5におけるマウスの脂肪組織重量を示すグラフである。
【図23】実施例5におけるマウスの平均血圧を示すグラフである。
【図24】実施例5におけるマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図19に基づいて具体的に説明する。本発明は、ベンゾフラン誘導体が、生体における唯一の細胞内GC活性化酵素である11βHSD1の活性を顕著に阻害することを見出したことに基づくものである。
【0043】
1.本発明の11βHSD1阻害剤
本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、「ベンゾフラン誘導体」ともいう)またはその塩を有効成分とするものである。
【0044】
【化5】
【0045】
上記ベンゾフラン誘導体は、ベンゾフラン環のベンゼン部分に置換基Xを、フラン部分に、置換基Yおよび4位に置換基Zを有するフェニル基を有している。
【0046】
ここで、「置換基X」は、ベンゾフラン環の4位〜7位のいずれかの炭素に結合している。具体的には、「置換基X」は、水酸基(−OH)、アルコキシル基(−OR;Rは炭化水素基)、アミノ基、または、トリフルオロメチル基を示す。すなわち、「置換基X」は、極性基であるとも言い換えられる。
【0047】
なお、アルコキシル基は、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、または環状のアルコキシ基を示す。アルコキシル基は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状の低級アルコキシル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖状のアルコキシル基であることがより好ましい。具体的には、アルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペンチルオキシ、2,2−ジメチルプロポキシ等が挙げられる。
【0048】
また、アミノ基は、−NH2 で表される1級アミノ基、1級アミノ基の一方の水素が置換された2級アミノ基、1級アミノ基のいずれの水素も置換された3級アミノ基のいずれであってもよい。2級アミノ基としては、一方の水素がアルキル基で置換されたアルキルアミノ基などを例示することができる。3級アミノ基としては、いずれの水素もアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基などを例示することができる。
【0049】
一方、「置換基Y」は、ベンゾフラン環の3位の炭素に結合している。具体的には、「置換基Y」は、水素原子、または、ハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素、フッ素の各原子)である。
【0050】
また、4位に置換基Zを有するフェニル基は、ベンゾフラン環の2位の炭素に結合している。具体的には、4位に置換基Zを有するフェニル基は、ヒドロキシフェニル基またはフェノキシル基である。つまり、「置換基Z」は、水酸基(−OH)、または、アルコキシル基(「置換基X」のアルコキシル基と同様)である。例えば、ベンゾフラン環の2位の炭素には、4位に置換基Zを有するフェニル基として、4−ヒドロキシフェニル基、または、4−アルコキシフェニル基が結合する。
【0051】
このようなベンゾフラン誘導体の具体例としては、以下に示すように、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP7),
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP11),
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP8),
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP12),
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9),
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)等を挙げることができる。
【0052】
【化6】
【0053】
また、上記ベンゾフラン誘導体の「置換基X」は、ベンゾフラン環の4位〜7位のいずれかの炭素に結合するものであるが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合していることが好ましく、6位の炭素に結合していることがより好ましい。これにより、本発明11βHSD1阻害剤が、より高い11βHSD1阻害活性を示す。
【0054】
また、ベンゾフラン環に水酸基が結合したベンゾフラン誘導体は、高い11βHSD1阻害活性を示す傾向にある。従って、「置換基X」は、水酸基であることが特に好ましい。
【0055】
また、2−(4−ヒドロキシ)フェニル基が、ベンゾフラン環の2位の炭素に結合したベンゾフラン誘導体は、高い11βHSD1阻害活性を示す傾向にある。従って、「置換基Z」は、水酸基であることが好ましい。
【0056】
このように、上記ベンゾフラン誘導体の好ましい組み合わせとしては、「置換基X」および「置換基Z」が、いずれも水酸基であることが好ましく、さらに「置換基X」がベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合していることがより好ましい。すなわち、上述の例示した化合物の中では、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9)、または、2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)が好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9)が特に好ましい。
【0057】
特に、「置換基X」および「置換基Z」がいずれも水酸基であるベンゾフラン誘導体は、11βHSD1の活性を阻害するだけでなく、11βHSD2の活性を阻害しないという、注目すべき薬理活性を有する。このため、そのベンゾフラン誘導体は、選択的11βHSD1阻害剤として利用することができる。特に、後述の実施例のように、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9),および,2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)は、選択的に11βHSD1を阻害することが実証されている。
【0058】
なお、上記ベンゾフラン誘導体は、11βHSD1阻害活性に影響を及ぼさない範囲で、「置換基X」,「置換基Y」,および「置換基Z」以外の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよい。任意の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルコキシル基等を挙げることができる。
【0059】
上記ベンゾフラン誘導体は、既知化合物であり、例えば、特許文献1または非特許文献4に記載された方法に基づいて製造することができるため、その製造方法の説明は省略する。
【0060】
また、上記ベンゾフラン誘導体は、任意の塩類の形態であってもよい。この塩類には、非毒性塩薬理学的に許容される塩、またはプロドラッグ等すべてが含まれる。例えば、上記ベンゾフラン誘導体は、分子内に水酸基またはアミノ基を有する場合がある。従って、水酸基およびアミノ基を利用して、上記ベンゾフラン誘導体の塩類を構成することができる。なお、上記ベンゾフラン誘導体の塩類は、毒性のない薬理学的に許容される塩であって、かつ、水溶性のものが好ましい。
【0061】
具体的には、上記ベンゾフラン誘導体の塩類としては、例えば、金属塩、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などが挙げられる。
【0062】
金属塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩;アルミニウム塩等が挙げられる。
【0063】
無機酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0064】
有機酸との塩としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等が挙げられる。
【0065】
なお、無機酸との塩および有機酸との塩は、酸付加物塩とも言い換えられる。
【0066】
無機塩基との塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0067】
有機塩基との塩としては、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等の有機アミンの塩が挙げられる。
【0068】
また、上記ベンゾフラン誘導体の塩類には、溶媒和物、または、上記ベンゾフラン誘導体の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩の溶媒和物も含まれる。溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系溶媒(エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。上記ベンゾフラン誘導体は、公知の方法で非毒性塩や薬理学的に許容される塩類に変換することができる。
【0069】
なお、上記ベンゾフラン誘導体の塩類には、アミノ基の窒素原子が酸化された、N−オキシドも含まれる。
【0070】
一方、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により、上記ベンゾフラン誘導体に変換される化合物を示す。すなわち、酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして、上記ベンゾフラン誘導体に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして上記ベンゾフラン誘導体に変化する化合物などを示す。
【0071】
例えば、一般式(1)で示される化合物がアミノ基を有する場合、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグとしては、そのアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、アミノ基が、アセチル化、エイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物等)を挙げることができる。
【0072】
一方、一般式(1)で示される化合物が水酸基を有する場合、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグとしては、その水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)を挙げることができる。
【0073】
このようなベンゾフラン誘導体のプロドラッグは、自体公知の方法によって製造することができる。また、このプロドラッグは、水和物および非水和物のいずれであってもよい。さらに、このプロドラッグは、上記ベンゾフラン誘導体が複数重合した、オリゴマーやポリマーであってもよい。この場合も、生体内で酵素的または化学的に分解され、上記ベンゾフラン誘導体となる。
【0074】
このようなベンゾフラン誘導体の塩(特にプロドラッグ)は、作用の持続性、消化管内安定性、経口吸収性、副作用の軽減に優れ、またバイオアベイラビリティの向上による低用量化なども実現できる。
【0075】
なお、上記ベンゾフラン誘導体およびその塩類は、放射性同位元素(例えば 3H,14C)等により、標識されていてもよい。また、上記ベンゾフラン誘導体およびその塩類に種々の異性体が存在する場合、本発明の11βHSD1阻害剤は、その異性体の混合物であってもよい。
【0076】
また、本発明の11βHSD1阻害剤は、上述したベンゾフラン誘導体またはその塩類から選択される1つの化合物を有効成分とするものであってもよいし、複数の化合物の混合物を有効成分とするものであってもよい。
【0077】
本発明の11βHSD1阻害剤は、固体形態、液体形態、半固形形態のいずれであってもよい。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤が、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類の単一成分の場合、固体形態となる。本発明の11βHSD1阻害剤は、経口投与に好ましい錠剤、カプセルなどの形態として調製され得る。また、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を適当な溶媒に溶解させれば、液体形態、一部を溶解させれば半固形態(クリームなど)となる。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤は、注射用蒸留水または生理食塩水に、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を溶解または懸濁させた液剤または懸濁剤であってもよい。
【0078】
このように、本発明の11βHSD1阻害剤は、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類からなるものであってもよいし、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類の他に、水、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールのような1つ以上の成分を含んでいてもよい。さらに、本発明の11βHSD1阻害剤は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質、安定化剤、抗酸化剤などの補助物質を含んでいてもよい。
【0079】
以上のような本発明の11βHSD1阻害剤は、生体における唯一の細胞内GC活性化酵素である11βHSD1の活性を阻害する。このため、本発明の11βHSD1阻害剤の有効量を、哺乳動物に投与することにより、11βHSD1活性の抑制が可能となる。哺乳動物としては、ヒトに限らず、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなどが挙げられる。
【0080】
さらに、また、本発明の11βHSD1阻害剤の一部は、11βHSD1の活性を阻害する一方、11βHSD2の活性を阻害しない、選択的11βHSD1阻害剤として利用することができる。
【0081】
ここで、11βHSD1の阻害活性は、例えば、ラットの場合、11βHSD1を発現している細胞のミクロソーム画分に、基質として11−デヒドロコルチコステロン(不活性型)、補酵素としてNADPHを加えてインキュベートし、生成したコルチコステロン(活性型)を、HPLC等で定量することによって測定できる。本発明においては、このアッセイにおいて、コルチコステロンの生成量がコントロール(溶媒対照)よりも減少する(すなわち11βHSD1活性が低下する)ベンゾフラン誘導体、好ましくはコントロールのコルチコステロンの生成量に対して統計学的な有意差がP値0.05以下であるベンゾフラン誘導体、より好ましくはP値0.01以下であるベンゾフラン誘導体を、「11βHSD1阻害活性あり」と評価する。
【0082】
一方、11βHSD2の阻害活性は、例えば、ラットの場合、11βHSD2を発現している細胞のミクロソーム画分に、基質としてコルチコステロン(活性型)、補酵素としてNAD+を加えてインキュベートし、生成した11−デヒドロコルチコステロン(不活性型)を、GC−MS等で定量することによって測定できる。本発明においては、このアッセイにおいて、コントロール(溶媒対照)の11−デヒドロコルチコステロンの生成量に対して統計学的な有意差がP値0.05以上であるベンゾフラン誘導体を、「11βHSD2阻害活性なし」と評価する。
【0083】
2.本発明の11βHSD1阻害剤の用途
本発明の11βHSD1阻害剤は、11βHSD1の活性の阻害作用を示す。従って、本発明の11βHSD1阻害剤は、11βHSD1によって産生するグルココルチコイドに起因する疾患を処置するために利用することができる。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤は、これを含有する組成物として食品、医薬品、医薬部外品、化粧品など形態として利用することができる。各組成物における11βHSD1阻害剤の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物重量基準で好ましくは0.001〜99.999重量%、より好ましくは0.01〜99.9重量%である。
【0084】
なお、「疾患を処置」とは、予防的(発症前)または治療的(発症後)に、グルココルチコイドが関与する疾患の症状を軽減または排除することを意味する。また、「治療」には、疾患の病態を治癒の方向へ導く一般的な治療の意味はもちろん、病態の悪化を抑制する意味(病態の進行をとどめる進展防止剤の意味)も含まれる。
【0085】
(1)本発明の食品
本発明の食品は、本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加、または希釈されてなるもの(食用組成物)である。本発明の食品には、飲料および飼料も含まれる。本発明の食品は、11βHSD1阻害剤を抑制する。
【0086】
本発明の食品の製造法は特に限定されるものではなく、調理、加工および一般に用いられている食品の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品または飲料に本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加および/または希釈されていればよい。
【0087】
本発明の食品としては特に限定されるものではないが、例えば、菓子類、乳製品(例えば、ヨーグルト)、健康食品(例えば、カプセル、タブレット、粉末)、飲料(例えば、清涼飲料、乳飲料、野菜飲料など)、ドリンク剤などが挙げられる。菓子類は、携行利便性の観点から好ましく、乳製品は、菓子類と比較すると1回当たりの摂取量が多く、毎日摂取しやすいという観点からより好ましい。
【0088】
本発明における食品中の11βHSD1阻害剤の含有量は特に限定されず、その官能と作用発現の観点から適宜選択できる。
【0089】
本発明の食品は、本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加および/または希釈されており、その生理作用を発現させるための有効量が含有されていれば特にその形状が限定されることはない。本発明の食品は、液状または固形の任意の形態とすることができる。例えば、本発明の食品は、タブレット状、顆粒状、カプセル状、液状などの経口的に摂取可能な形状であってもよい。本発明の食品がカプセル状の場合は、ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤とすることができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D−ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜で作られる。
【0090】
本発明の食品は、11βHSD1阻害剤を含むため、11βHSD1阻害作用を有する。このため、本発明の食品を日常的に摂取すれば、持続的に11βHSD1阻害活性が発揮される。従って、本発明の食品は、機能性食品(特定保健用食品)、グルココルチコイドが関与する疾患(特にグルココルチコイドの過剰産生に起因する疾患)を予防する健康食品として好適である。特に、本発明の機能性食品(特定保健用食品など)は、グルココルチコイドが関与する疾患を予防する健康食品、予防医学の分野での利用に適している。グルココルチコイドが関与する疾患については、後述する。
【0091】
本発明の食品には、必須成分である11βHSD1阻害剤の他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。
【0092】
(2)本発明の医薬
本発明の医薬は、本発明の11βHSD1阻害剤を有効成分として含有する。なお、上述のように、本発明の医薬は、上述のベンゾフラン誘導体を、プロドラッグ等の塩類の形態として含有していてもよい。
【0093】
本発明の医薬の用途は、特に限定されるものではないが、11βHSD1を阻害するため、活性型グルココルチコイドが関与する疾患(特に、コルチゾールの過剰産生が関与する疾患)を処置するために好適である。
【0094】
具体的には、11βHSD1は、不活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾン)を、活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾール)に変換する酵素である。コルチゾールは糖新生、インスリンによる糖取込みおよび解糖阻害、脂肪分化、アンギオテンシノーゲン産生または骨形成抑制等の生理作用を有し、生体内で重要な役割を担っている。しかし、過剰なコルチゾールは、耐糖能異常、脂質代謝異常、骨形成阻害、脂肪細胞由来生理活性物質の過剰分泌等に起因する様々な病体の原因となることが知られている。
【0095】
従って、本発明の医薬は、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患の治療または予防のために好適に利用できる。
【0096】
コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、メタボリックシンドローム等の種々の代謝性疾患、メタボリックシンドロームを基盤とする致死的イベント、神経変性疾患、感情障害、精神分裂病、食欲増進を含む神経機能障害の疾患、免疫疾患等が挙げられる。
【0097】
具体的には、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、例えば、糖尿病(特に2型糖尿病)、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0098】
本発明の医薬は、このような疾患を少なくとも1つを発症した患者、または、発症する可能性のある患者に対して投与することが好ましい。特に、内臓脂肪型肥満、または、メタボリックシンドロームを発症した患者、または、発症する可能性のある患者に対して投与することがより好ましい。これにより、生体内で11βHSD1活性の阻害作用を示し、コルチゾール過剰産生の予防または治療効果が得られる。
【0099】
ここで、本発明の医薬は、少なくとも11βHSD1の阻害活性を有していればよいが、さらに、11βHSD2の阻害活性を有しないことが好ましい。本発明の医薬が、11βHSD1の阻害活性に加えて、11βHSD2阻害活性も示すと、コルチゾール(活性型)を、コルチゾン(不活性型)に変換することができなくなる。その結果、コルチゾンに変換されないコルチゾールが蓄積し、蓄積したコルチゾールが種々の薬理作用を示す。
【0100】
例えば、11βHSD2は、主に、腎臓組織に存在する。このため、11βHSD1阻害剤が、腎臓組織の11βHSD2の活性を阻害すると、コルチゾールが不活性化されない。その結果、蓄積されたコルチゾールが蓄積によって、高血圧などの副作用がでるおそれがある。
【0101】
従って、本発明の医薬は、11βHSD1活性を阻害する一方、11βHSD2活性を阻害しないことが好ましい。すなわち、11βHSD1阻害剤は、選択的に11βHSD1活性を阻害する11βHSD1阻害剤を含有することが好ましい。これにより、11βHSD2活性が阻害され、コルチゾールの蓄積による副作用を低減または防止することができる。
【0102】
なお、本発明の医薬を、局所投与またはDDS等の技術により、標的部位に特異的に投与することによっても、コルチゾールの蓄積による副作用を低減または防止することができる。
【0103】
本発明の医薬は、毒性が低く、医薬製剤の製造法として一般的に用いられている自体公知の手段に従って、本発明の医薬をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤とした後、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
【0104】
本発明の医薬中に存在する有効成分の含有量は、投与形態、投与方法などを考慮し、当該医薬を用いて後述の投与量範囲で、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を投与できるような量であれば特に限定されない。例えば、この含有量は、医薬製剤全体の約0.01ないし約100重量%とすることができる。
【0105】
本発明の医薬の投与量は、その製剤形態、投与対象、投与ルート、疾患、投与対象である患者の年齢、体重、症状、有効成分であるベンゾフラン誘導体等により適宜設定され一定ではない。一般には、製剤中に含有される有効成分の投与量で、好ましくは成人1日当り0.01〜1000mg/kg、より好ましくは0.1〜200mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0106】
なお、この投与量は、選択的に11βHSD1活性を阻害するために、非選択的に11βHSD1活性を阻害する場合よりも、低減してもよい。ただし、後述の実施例(実施例3)では、比較的高用量であっても、11βHSD2阻害活性を示していない。従って、選択的に11βHSD1活性を阻害する場合と、非選択的に11βHSD1活性を阻害する場合とで、投与量は同一であってもよい。
【0107】
投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよい。また、本発明の医薬を輸液製剤として適用する場合は、例えば、連続的に静脈内投与することもできる。この場合、例えば、有効成分の数百mg〜数百gを500mLの溶液に添加してもよい。また、本発明の医薬はそのまま経口的または非経口的に投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0108】
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤及び無痛化剤等が挙げられる。さらに必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
【0109】
本発明の医薬を、特に、注射剤または輸液製剤とする場合、その医薬は、キット化すること(キット製剤)が好ましい。このキット製剤は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装を示し、注射剤に用いるバイアルも含まれる。また、キット製剤は、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を封入したバイアル製剤、または、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類と水性溶媒とからなるキット製剤の形態であってもよい。
【0110】
本発明の医薬がバイアル製剤の場合、そのバイアルの大きさは、その使用目的に応じて適宜選択される。例えば、当該バイアルに水性溶媒を注入し、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を溶解させて調製された注射溶液を注射器に吸入して使用する場合には、バイアルの大きさは約1〜約50mLである。また、例えば、より多量の注射用溶液を一度に調製する必要のある点滴用として用いる場合には、バイアルの大きさは約50〜約300mLである。
【0111】
本発明の医薬がキット製剤の場合、そのキット製剤は、一体成型され、隔壁により仕切られた複数の部屋からなるバッグの1室に、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を封入し、他の部屋に溶解液としての生理食塩液またはブドウ糖液を封入し、両部屋の隔壁を用時容易に開通できるよう構成し、用時両者を混合・溶解して用いることのできる構成とすることができる。キット製剤は、前述のような複数の部屋に仕切られていない単一のバックに、最初から本発明の医薬を添加した構成であってもよい。
【0112】
本発明の医薬を投与する時期は、特に限定されるものではないが、予防効果を期待する場合は、上述の疾患の発症前から日常的に投与することが好ましい。また、本発明の医薬は、治療効果を期待する場合、上述の疾患の発症後に投与すればよい。両方の効果を期待する場合は、日常的に投与をはじめ、上述の疾患の治療後も投与を続ければよい。
【0113】
本発明の医薬は、本発明の医薬以外の薬物(併用薬物)と併用して使用することもできる。
【0114】
本発明の医薬と併用し得る薬物としては、例えば、α−グルコシダーゼ阻害薬などが挙げられる。
【0115】
さらに、本発明の医薬は、動物モデルや臨床で、11βHSD1活性の阻害作用、または、選択的11βHSD1阻害作用が認められている薬剤(非特許文献1参照)と併用することもできる。
【0116】
このように、本発明の医薬と併用薬物とを組み合わせることにより、以下のような優れた効果が得られる。
(i)本発明の医薬または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減することができる。
(ii)患者の症状(軽症、重症など)に応じて、本発明の医薬と併用する薬物を選択することができる。
(iii)本発明の医薬と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を短く設定することができる、
(iv)本発明の医薬と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図ることができる、
(v)本発明の医薬と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる。
【0117】
本発明の医薬と併用薬物とを組み合わせて用いる場合、本発明の医薬と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明の医薬と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0118】
本発明の医薬と併用薬物の投与形態としては、例えば、
・本発明の医薬と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与;
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与;
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の医薬、併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)
などが挙げられる。
【0119】
以上のように、本発明によれば、ベンゾフラン誘導体が有する、11βHSD1活性の抑制効果によって、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患を、予防または治療することができる。また、本発明によれば、11βHSD1の抑制効果を有する食品および医薬品を提供することができる。それゆえ、本発明によれば、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患に対する有効な予防方法および/または治療方法を確立することができる。
【0120】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0121】
以下の実施例1,2,4では、実験動物として、雄性Wistar rat、10週齢(体重:240〜260g)を1週間飼育した後用いた。また、図中の数値は、平均値±標準誤差(mean±S.E.)あるいは平均値(mean)を表す。各群の検体数はn=3〜5とし、有意差検定は、コントロール(vehicle)群との比較を、Dunnett検定を用いて行った。各図の「**」は、Dunnett検定において、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。また、実施例で用いたベンゾフラン誘導体の番号(KPNP)と、化合物名との対応関係は、以下の通りである。
KPNP7:3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP8:6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP9:2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール
KPNP11:3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP12:5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP13:2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール
KPNP17:4−(2−ベンゾフラニル)フェノール
KPNP25:ステモフランA。
【0122】
〔実施例1〕ラット腸間膜脂肪組織における11βHSD1阻害活性
(1)時間依存的阻害作用
ラット腸間膜脂肪組織から調製したミクロソームを、インキュベート用緩衝液(pH7.0)に加えて37℃でインキュベートし、生成するコルチコステロンをHPLC法で定量した。インキュベート用緩衝液は、11−デヒドロコルチコステロン(基質)1μM,β−NADP+ 1mM,G6P6mM,ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)25μMを含有する20mM MOPS緩衝液である。このインキュベート用緩衝液1mLに25unit/mL G6PDHを14μL添加し(最終G6PDH濃度:0.35unit/mL),37℃の水浴で5分間プレインキュベートした。次に,ミクロソームを10μL添加(最終ミクロソームタンパク濃度:40μg/mL)して反応を開始し,40分間インキュベート後,ジクロロメタン2.0mLを添加して反応を停止した。遠心分離を行い,ジクロロメタン層を分取した。残った水層に再びジクロロメタン2.0mLを加えて,遠心分離を行い,ジクロロメタン層を1回目に分取したジクロロメタン層と合わせた。ジクロロメタン層を減圧乾固後,生成したコルチコステロン濃度をHPLCで定量し,11βHSD1活性を求めた。
【0123】
なお、コルチコステロンの定量には、UV検出器およびオートサンプラーを備えたNANOSPACE SI-1セミミクロHPLCシステム (SHISEIDO) を用い、分析カラムとしてCapcellpak C18 MGII type (3 μm),250 mm×2 mm I.D.を使用した。また、測定条件は、流速を0.1mL/min,移動相溶媒を水-メタノール(45:55,v/v),カラム温度を40℃,検出波長を240nm,試料注入量を20μL,分析時間を12分とした。そして、予め作成した検量線から、コルチコステロンを定量した。
【0124】
図1は、11βHSD1に対するKPNP9の時間依存的阻害作用を示すグラフである。図2は、11βHSD1に対するKPNP13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【0125】
その結果、図1および図2のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、経時的に抑制された。また、同図のように、グラフが直線性を示していることから、ベンゾフラン誘導体自身が11βHSD1を阻害しており、その代謝物が11βHSD1を阻害しないことが確認された。なお、同図において、黒丸印がコントロールの結果、黒三角印がベンゾフラン誘導体を添加した結果である。
【0126】
(2)濃度依存的阻害作用
11−デヒドロコルチコステロン(1μM)、NADPH(1mM)、ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13:1〜50μM)を含む20mM MOPS緩衝液に、ラット腸間膜脂肪組織から調製したミクロソーム(最終ミクロソームタンパク濃度:40μg/mL)を加えて、37℃で40分間インキュベートし、生成するコルチコステロンをHPLC法で定量した。
【0127】
図3は、11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図4は、11βHSD1に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【0128】
その結果、図3および図4のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、用量依存的に有意に抑制された。特に、図3のように、5μM以上のKPNP9の添加によって、60%以上の強い阻害活性を示した。なお、同図において、「CBX」は、ポジティブコントロールとして用いたカルベノキソロン(50μM)の結果を示している。また、同図から求めたKPNP9のIC50は4.5μMであり、KPNP13のIC50は10μMである。
【0129】
一方、図5は、KPNP9,13と、17,25の11βHSD1に対する阻害活性を比較した図である。同図のように、いずれのベンゾフラン誘導体も、コントロールに対して、有意に11βHSD1阻害活性を示した。特に、KPNP9は、強い阻害活性を示した。
【0130】
同様にして、KPNP7,8,11,12の11βHSD1阻害活性を確認した。図6は、KPNP7,8,9,11,12,13の11βHSD1に対する阻害作用を示すグラフである。同図のように、いずれのベンゾフラン誘導体も、コントロールよりも11βHSD1活性が低下しており、11βHSD1阻害活性を示すことが確認された。
【0131】
(3)阻害反応様式
上記(2)と同様にして、Lineweaver-Burk plotを作成し、その阻害反応形式を調べた(最終ミクロソームタンパク濃度:2.8mg/mL)。図7は、11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。図8は、11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【0132】
その結果、図7および図8のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性のベンゾフラン誘導体による阻害反応形式は、非拮抗型であった。つまり、KPNP9,KPNP13の11βHSD1への結合部位は、基質であるデヒドロコルチコステロンの結合部位と異なることが確認された。また、同図から求めた、11βHSD1に対するKm値は0.6μM〜1.3μMであり、これまでの報告に略一致した。さらに、Dixon plotから求めた、KPNP9の11βHSD1に対する阻害定数Ki値は1μMであり、KPNP13のKi値は8μMであった。
【0133】
〔実施例2〕ラット腎臓における11βHSD2阻害活性
ラット腎臓からミクロソームを調製し、インキュベート用緩衝液(pH7.4)に加えて37℃でインキュベートし、生成する11−デヒドロコルチコステロンをGC−MS法で定量した。インキュベート用緩衝液は、コルチコステロン(基質)1μM,β−NAD+2mM,ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)50μMを含有する5mM MOPS緩衝液である。このインキュベート用緩衝液1mLを,37℃の水浴で5分間プレインキュベートした。次に,ミクロソームを10μL添加(最終ミクロソームタンパク濃度:2.26mg/mL)して反応を開始し、30分間インキュベート後,ジクロロメタン2.0mLを添加して反応を停止した。遠心分離を行い,ジクロロメタン層を分取した。残った水層に再びジクロロメタン2.0mLを加えて,遠心分離を行い,ジクロロメタン層を1回目に分取したジクロロメタン層と合わせた。ジクロロメタン層を減圧乾固後,生成した11−デヒドロコルチコステロンを抽出した。抽出した11−デヒドロコルチコステロンを、メタノール0.1mLに溶解し、GC/MS誘導体化剤として50μLの無水ペンタフルオロプロピオン酸(PFPA)を加え、60分間70℃で反応させる。次に、減圧乾固後の残留物に、内標準物質としてアンドロステンジオール含有ジクロロメタン液(200ng/mL)0.1mLを加え、さらにジクロロメタン0.1mLを加えて全量を0.2mLとし、GC−MSの試料とした。
【0134】
なお、11−デヒドロコルチコステロンの定量には、Hewlett-Packardマススペクトロメーター(Model 5973)、および、Hewlett-Packardガスクロマトグラフィー(Model 6890)を用い、カラムとしてJ&W製DB-1カラム(長さ15 m,0.25 mm I.D,膜厚0.1 μm)を用いた。また、測定条件は、イオン化電圧を70eV,ヘリウムガスの流速を1mL/min,インジェクター温度を300℃,インターフェイス温度を290℃に設定し,カラムオーブン温度を初期(1.5min)は50℃とし,30℃/minで昇温し,最終温度を300℃(2min)とした。そして、予め作成した検量線から、11−デヒドロコルチコステロンを定量した。
【0135】
図9は、11βHSD2に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図10は、11βHSD2に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【0136】
その結果、図9および図10のように、KPNP9,KPNP13は、いずれも、11βHSD2活性を抑制しなかった。一方、図10のように、ポジティブコントロールであるCBX(カルベノキソロン)は、11βHSD2の活性を有意に抑制した。
【0137】
〔実施例3〕動物実験−1
雄性5週齢C57BL/6Jマウス(体重18.1〜21.5g)を購入し、1週間普通食を与えて飼育した、6週齢のマウスを実験動物として使用した。ベンゾフラン誘導体投与群には、170mg/kg/日のKPNP9をオリーブオイルに混和し、0.1mL/kg/日を経口投与した。一方、コントロール群には、オリーブオイル0.1mL/kg/日を投与した。また、試験中の食餌は、普通食から高脂肪食(60kcal%ラード)に代えた。そして、試験前後の体重、食餌摂取量、血圧を比較した。図11は、マウスの体重を示すグラフである。図12は、マウスの食餌摂取量を示すグラフである。図13は、マウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【0138】
図11のように、ベンゾフラン誘導体投与群は、コントロール群に対して、14日後の体重が有意に低下した。しかし、図12のように、食餌摂取量は、両群間で差は見られない。このように、KPNP9の投与によって11βHSD1が阻害され、体重が有意に低下した。
【0139】
また、図13のように、収縮期血圧は、両群間で差は見られなかった。つまり、KPNP9の投与によって、11βHSD2の阻害による高血圧の副作用は示さなかった。従って、KPNP9は、選択的に11βHSD1を阻害することが確認された。
【0140】
〔実施例4〕ラット脳組織における11βHSD1阻害活性
脳組織(大脳皮質,海馬,視床下部,小脳の各部)からミクロソームを調製し、実施例1と同様にして、ベンゾフラン誘導体非存在下での各部における11βHSD1活性、および、ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)を添加した場合の11βHSD1活性を測定した。
【0141】
図14は、ラット脳組織の11βHSD1活性を示すグラフである。図13のように、大脳皮質,海馬,視床下部および小脳のいずれにおいても、11βHSD1活性が確認された。特に、海馬および小脳では、他の部位に比較して、11βHSD1活性が高くなっている。なお、図14における各部位の結果は、Turkey法で有意差検定を行った。
【0142】
一方、図15は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。図15のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、経時的に抑制された。また、同図のように、グラフが直線性を示していることから、ベンゾフラン誘導体自身が11βHSD1を阻害しており、その代謝物が11βHSD1を阻害しないことが確認された。
【0143】
また、図16は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の阻害作用を示すグラフである。図17は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図16のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性は、KPNP9,13の添加によって有意に抑制された。特に、図17のように、10μM以上のKPNP9の添加によって、40%以上の強い阻害活性を示した。また、同図から求めたKPNP9のIC50は、8.5μMである。
【0144】
一方、図18は、11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。図19は、11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【0145】
図18および図19のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性のベンゾフラン誘導体による阻害反応形式は、非拮抗型であった。つまり、KPNP9,KPNP13の11βHSD1への結合部位は、基質であるデヒドロコルチコステロンの結合部位と異なることが確認された。また、同図から求めた、11βHSD1に対するKm値は2μMであり、これまでの報告に略一致した。さらに、Dixon plotから求めた、KPNP9の11βHSD1に対する阻害定数Ki値は1μMであり、KPNP13のKi値は10μMであった。
【0146】
〔実施例5〕動物実験−2
雄性3齢C57BL/6Jマウス(体重18.1〜21.5g)を購入し、2週間普通食を与えて飼育した5週齢のマウスを実験動物として使用した。試験群は、普通食摂取+ベンゾフラン誘導体非投与群(コントロール(−))、普通食摂取+ベンゾフラン誘導体投与群(コントロール(+))、高脂肪食摂取+ベンゾフラン誘導体非投与群(HF(−))、高脂肪食摂取+ベンゾフラン誘導体投与群(HF(+))の4群に分け、各群の検体数はn=13〜15とした。ベンゾフラン誘導体投与群には、実施例3よりも少ない100mg/kg/日のKPNP9をオリーブオイルに混和し、0.1mL/kg/日を経口投与した。一方、ベンゾフラン誘導体非投与群には、オリーブオイル0.1mL/kg/日を投与した。そして、試験期間中の体重、食餌摂取量、脂肪組織重量、血圧、および、試験終了後の脂肪組織の重量を比較した。図20は、マウスの体重を示すグラフである。図21は、マウスの食餌摂取量を示すグラフである。図22は、マウスの脂肪組織重量を示すグラフである。図23はマウスの平均血圧と示すグラフである。図24はマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【0147】
図20中の拡大されたグラフは、21目〜30日目の体重を示している。図20のように、ベンゾフラン誘導体投与開始後28日目〜30日目にかけて、HF(−)群に比べ、HF(+)群において、有意な体重減少が認められた。なお、試験期間中、コントロール(−)群とコントロール(+)群とで、体重に有意差は認められなかったため、KPNP9の投与による体重抑制作用は、細胞毒性によるものではないことが示唆された。また、有意差は無かったものの,コントロール(−)群に比べHF(−)群で体重増加傾向がみられていることから、HFによって肥満が誘導されていると考えられる。図20における有意差検定は、HF(−)群との比較を、Dunnett検定を用いて行い、「**」は、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。また、図21のように、試験期間中の摂食量は、各群間で差は認められなかった。このように、KPNP9が11βHSD1を阻害し、体重増加を有意に抑制した。
【0148】
また、試験期間終了後(ベンゾフラン誘導体投与開始後30日目:10週齢)の各群における皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪、褐色脂肪、肝臓、および腎臓の組織重量を測定した。その結果、図22のように、HF(−)群の皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量は、コントロール(−)群に比べて、有意に増加した。さらに、HF(+)群は、HF(−)群に比べ、皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量が有意に減少した。なお、コントロール(−)群とコントロール(+)群とで、組織重量の有意な差は認められなかったため、KPNP9の投与による組織重量の低下は、細胞毒性によるものではないことが示唆された。図22における有意差検定は、Tukey検定を用いて行い、「**」は、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。このように、KPNP9が11βHSD1を阻害し、メタボリックシンドローム(MS)に密接に関係する皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量を顕著に減少させた。
【0149】
また、ベンゾフラン誘導体投与開始前(3週齢)、投与開始後16日(5週齢)、32日目(10週齢)に、各群の血圧を測定した。血圧は、非観血式自動血圧測定装置(Softron BP−98A−L)を用いたtail cuff法で測定した。その結果、図23および図24のように、いずれの測定時においても、平均血圧および収縮期血圧は、各群間で差は認められなかった。つまり、高脂肪食およびKPNP9共に、血圧に影響しないことが確認された。このように、KPNP9は、11βHSD2の阻害による高血圧の副作用を示さず、選択的に11βHSD1を阻害することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、ベンゾフラン誘導体が有する11βHSD1活性の抑制効果によって、コルチゾールが関与する疾患を予防または治療することができる。また、本発明によれば、11βHSD1の抑制効果を有する食品および医薬品を提供することができる。それゆえ、本発明によれば、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患に対する有効な予防方法および/または治療方法を確立することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)阻害剤およびその用途に関する。より詳細には、本発明は、ベンゾフラン誘導体を有効成分とする11βHSD1阻害剤、その11βHSD1阻害剤を含有する食品および医薬等に関する。
【背景技術】
【0002】
メタボリックシンドローム(MS)は、内臓脂肪型肥満を中心としてインスリン抵抗性、耐糖能異常、脂質代謝異常、高血圧などの代謝異常が重積する病態であり、心筋梗塞または脳卒中に代表される致死的イベントの発症基盤となることが知られている。
【0003】
近年、脂肪組織機能に焦点を当てたアプローチの中から、脂肪細胞内でのグルココルチコイド(GC)の異常な活性化がMSの発症に関与していることが明らかになってきた。細胞内で不活性型GCを活性型GCに変換する酵素は、11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)である。ヒトやげっ歯類で11βHSD1は、皮下脂肪組織よりも内臓脂肪組織において高い酵素活性と遺伝子発現レベルを示し、肥満度やインスリン抵抗性指標と強い相関性を示す。
【0004】
下記のように、11βHSDには、11βHSD1および11βHSD2の二つのタイプが存在する。
【0005】
【化1】
【0006】
具体的には、11βHSD1は脂肪組織以外にも肝臓、肺などのGC標的組織において高発現している。11βHSD1は、げっ歯類では11−デヒドロコルチコステロン(11-dehydrocorticosterone(不活性型))から、コルチコステロン(corticosterone(活性型))へ、ヒトではコルチゾン(cortisone(不活性型))から、コルチゾール(cortisol(活性型))へと変換し、活性化する。11βHSD1の全身性ノックアウトマウスでは、投与された不活性型GCを活性型GCに変換できないことから、11βHSD1が生体における唯一の細胞内GC活性化酵素であることが証明されている。
【0007】
一方、11βHSD2は、腎臓、大腸、胎盤などの組織に高発現し、11β−HSD1と逆の反応(活性型GCを不活性GCに変換)を担っている。
【0008】
11βHSD1は小胞体に局在し、補酵素としてNADPHを要求するが、このNADPHを供給しているのがヘキソース−6−リン酸脱水素酵素(H6PDH)である。H6PDHもまた11β−HSD1と同様に小胞体に局在している。細胞質に存在するグルコース−6−リン酸(G6P)がG6Pトランスポーター(G6TP)を介して小胞体内に流入し、H6PDHによって6−ホスホグルコン酸(6PG)に変換され、それと同時にNADPからNADPHが生成する。生成したNADPHを補酵素として、11βHSD1は不活性型GCを活性型GCへと変換する。細胞質には、H6PDHと同様の反応を行うグルコース−6−リン酸脱水素酵素(G6PDH)が存在する。しかし、H6PDHノックアウトマウスでは11βHSD1活性が見られなくなることから、11βHSD1活性はH6PDHに依存していると考えられている。
【0009】
GCは脂肪細胞の分化や増殖に重要な役割を果たすと共に、代表的なインスリン拮抗ホルモンとしてインスリンによる糖・脂質代謝を阻害する。また、アンジオテンシノーゲンの産生誘導やアンジオテンシンII受容体(ATI)発現の増強などを介して血圧を上昇させる。さらに、強力なレプチン拮抗ホルモンとして過食と肥満を引き起こすことが示唆されている。したがって、GCは、MSの病態に関与すると考えられており、そのGCを活性化する11βHSD1がMS発症の分子基盤として注目されている。
【0010】
近年、11βHSD1を遺伝子操作したモデルマウスにおいて、11βHSD1のMSに対する関与の可能性が検証されている。すなわち、11βHSD1ノックアウトマウスでは、インスリン感受性の上昇や耐糖能の改善が見られ、高脂肪食負荷による内臓脂肪蓄積が抑制され、MSの発症・進展に抵抗性を示す。
【0011】
一方、脂肪細胞で11βHSD1を過剰発現するトランスジェニックマウスは、内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高血圧、脂肪肝などMSの主要な徴候を発現する。このモデルマウスにおいて注目すべきことは、全身の血中GC濃度の増加は認められないが、脂肪組織内のGC濃度は野生型より2〜3倍上昇しており、門脈を介して肝臓へ流入するGCも増加していたことである。さらに、過剰なGCに対する肝臓への影響を検討するため肝臓特異的に11βHSD1を過剰発現させたトランスジェニックマウスでは、高血圧、非肥満型高インスリン血症を示すことが報告されている。また、種々のMS病態モデルマウスへの11βHSD1阻害剤の投与により、MSの徴候が改善されることが報告されている。すなわち、高脂肪食を負荷して肥満を誘導したマウスは、11βHSD1阻害剤の投与により、体重増加の抑制、脂肪蓄積の減少、インスリン抵抗性の改善が認められる。さらに、2型糖尿病モデルマウスではインスリン抵抗性の改善が、動脈硬化モデルマウスでは血中脂質の低下が認められる。
【0012】
MSの発症メカニズムを考える上で示唆に富む病態がクッシング症候群である。本症候群は高コルチゾール血症として特徴付けられ、これに伴って内臓脂肪型肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧を引き起こす。MSとクッシング症候群の重要な相違点として、大部分のMS患者の血中コルチゾール濃度は、正常レベルであることが注目される。この対比は、血中コルチゾール濃度が必ずしもMSの病態の発症を決定するわけではないことを示唆している。
【0013】
以上のことから、内臓脂肪型肥満およびMSの予防や治療には、内臓脂肪組織内における過剰なGCの活性化を招く11βHSD1活性を抑制(阻害)することが鍵となる。
【0014】
また、活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾール)は、糖新生、インスリンによる糖取込みおよび解糖阻害、脂肪分化、アンギオテンシノーゲン産生または骨形成抑制等の生理作用を有し、生体内で重要な役割を担っている。しかし、過剰なコルチゾールは、耐糖能異常、脂質代謝異常、骨形成阻害、脂肪細胞由来生理活性物質の過剰分泌等に起因する様々な病体の原因となる。
【0015】
例えば、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、アテローム性動脈硬化症、クッシング症候群、高血圧、認識障害、記憶障害、鬱病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0016】
従って、11βHSD1阻害剤は、このような疾患等の治療または予防に有効である。
【0017】
例えば、非特許文献1には、カルベノキソロン、化合物544、BVT2733をはじめ、種々の11βHSD1阻害剤が記載されている。
【0018】
【化2】
【0019】
一方、特許文献1には、2−(4−ヒドロキシル)ベンゾフラン誘導体が、エストラジオール受容体に対して顕著な親和力を有し、強力な抗エストロゲン作用を示すことが開示されている。
【0020】
また、本願発明者等は、ベンゾフラン誘導体である、4−(2−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP17)および4−(3−メチル−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP20)が、脂肪組織において、11βHSD1阻害活性を示すことを明らかにしている(非特許文献2)。
【0021】
また、本願発明者等は、ベンゾフラン誘導体である、4−(2−ベンゾフラニル)フェノール(KPNP17)およびステモフランA(KPNP25)が、脳組織において、11βHSD1阻害活性を示すことを明らかにしている(非特許文献3)。
【0022】
【化3】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特表平6−507615号公報(1994年9月1日公表)
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Drug Discovery Today, Volume 12, No.13/14 July 2007 pp 504-520.
【非特許文献2】13th International Congress of Endocrinology Nov.8-12 (2008) Rio de Janeiro.
【非特許文献3】日本薬学会第128回年会講演要旨集 発表番号:27PW−pm014,2008年3月
【非特許文献4】J. Org. Chem. Volume 70, 2005 pp 10292-10296
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上述した公知化合物とは化学構造が異なるベンゾフラン誘導体を有効成分とする11βHSD1阻害剤およびその用途(利用方法)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明者等は、特定のベンゾフラン誘導体が、11βHSD1活性を顕著に阻害することを見出すと共に、ヒドロキシベンゾフラン誘導体が、11βHSD1活性を選択的に阻害するという注目すべき生物活性を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0027】
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)(式中、Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは、水酸基またはアルコキシル基である)で示される化合物またはその塩を有効成分とするものである。
【0028】
【化4】
【0029】
本発明の11βHSD1阻害剤において、上記一般式(1)で示される化合物の置換基Xが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合した水酸基またはアルコキシル基であることが好ましい。
【0030】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物が、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることが好ましい。
【0031】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物の置換基XおよびZが、いずれも水酸基であることが好ましい。
【0032】
本発明の11βHSD1阻害剤は、上記一般式(1)で示される化合物が、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることが特に好ましい。
【0033】
本発明の食品は、前記いずれかの11βHSD1阻害剤を含有することを特徴としている。
【0034】
本発明の医薬は、前記いずれかの11βHSD1阻害剤を含有することを特徴としている。
【0035】
本発明の医薬は、グルココルチコイドが関与する疾患の治療剤または予防剤であることが好ましい。
【0036】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患は、例えば、糖尿病(特に2型糖尿病)、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0037】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患が、内臓脂肪型肥満であることがより好ましい。
【0038】
本発明の医薬は、上記グルココルチコイドが関与する疾患が、メタボリックシンドロームであることがより好ましい。
【0039】
本発明によれば、11βHSD1阻害活性を示す公知化合物とは化学構造が異なるベンゾフラン誘導体(一般式(1)で示されるベンゾフラン誘導体)を有効成分とする11βHSD1阻害剤を実現することができる。また、本発明によれば、11βHSD1阻害剤を、グルココルチコイドに起因する疾患等を予防または治療するための食品または医薬用途として利用することができる。
【発明の効果】
【0040】
以上のように、本発明は、一般式(1)で示されるベンゾフラン誘導体またはその塩を有効成分とするものである。従って、11βHSD1阻害活性によって、グルココルチコイドに起因する疾患等を予防または治療することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図2】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図3】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図4】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図5】KPNP9,13と、17,25の腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対する阻害活性を示すグラフである。
【図6】KPNP7,8,9,11,12,13の腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対する阻害作用を示すグラフである。
【図7】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。
【図8】腸間膜脂肪組織の11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【図9】腎臓の11βHSD2に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図10】腎臓の11βHSD2に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図11】実施例3におけるマウスの体重を示すグラフである。
【図12】実施例3におけるマウスの食餌摂取量を示すグラフである。
【図13】実施例3におけるマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【図14】脳組織における11βHSD1活性を示すグラフである。
【図15】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【図16】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の阻害作用を示すグラフである。
【図17】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【図18】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。
【図19】大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【図20】実施例5におけるマウスの体重を示すグラフである。
【図21】実施例5におけるマウスの食餌摂取量を示すグラフである。
【図22】実施例5におけるマウスの脂肪組織重量を示すグラフである。
【図23】実施例5におけるマウスの平均血圧を示すグラフである。
【図24】実施例5におけるマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図19に基づいて具体的に説明する。本発明は、ベンゾフラン誘導体が、生体における唯一の細胞内GC活性化酵素である11βHSD1の活性を顕著に阻害することを見出したことに基づくものである。
【0043】
1.本発明の11βHSD1阻害剤
本発明の11βHSD1阻害剤は、下記一般式(1)で示される化合物(以下、「ベンゾフラン誘導体」ともいう)またはその塩を有効成分とするものである。
【0044】
【化5】
【0045】
上記ベンゾフラン誘導体は、ベンゾフラン環のベンゼン部分に置換基Xを、フラン部分に、置換基Yおよび4位に置換基Zを有するフェニル基を有している。
【0046】
ここで、「置換基X」は、ベンゾフラン環の4位〜7位のいずれかの炭素に結合している。具体的には、「置換基X」は、水酸基(−OH)、アルコキシル基(−OR;Rは炭化水素基)、アミノ基、または、トリフルオロメチル基を示す。すなわち、「置換基X」は、極性基であるとも言い換えられる。
【0047】
なお、アルコキシル基は、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状、または環状のアルコキシ基を示す。アルコキシル基は、炭素数1〜6の直鎖状または分岐状の低級アルコキシル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖状のアルコキシル基であることがより好ましい。具体的には、アルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、1−メチルエトキシ、ブトキシ、1−メチルプロポキシ、2−メチルプロポキシ、1,1−ジメチルエトキシ、ペンチルオキシ、2,2−ジメチルプロポキシ等が挙げられる。
【0048】
また、アミノ基は、−NH2 で表される1級アミノ基、1級アミノ基の一方の水素が置換された2級アミノ基、1級アミノ基のいずれの水素も置換された3級アミノ基のいずれであってもよい。2級アミノ基としては、一方の水素がアルキル基で置換されたアルキルアミノ基などを例示することができる。3級アミノ基としては、いずれの水素もアルキル基で置換されたジアルキルアミノ基などを例示することができる。
【0049】
一方、「置換基Y」は、ベンゾフラン環の3位の炭素に結合している。具体的には、「置換基Y」は、水素原子、または、ハロゲン原子(ヨウ素、臭素、塩素、フッ素の各原子)である。
【0050】
また、4位に置換基Zを有するフェニル基は、ベンゾフラン環の2位の炭素に結合している。具体的には、4位に置換基Zを有するフェニル基は、ヒドロキシフェニル基またはフェノキシル基である。つまり、「置換基Z」は、水酸基(−OH)、または、アルコキシル基(「置換基X」のアルコキシル基と同様)である。例えば、ベンゾフラン環の2位の炭素には、4位に置換基Zを有するフェニル基として、4−ヒドロキシフェニル基、または、4−アルコキシフェニル基が結合する。
【0051】
このようなベンゾフラン誘導体の具体例としては、以下に示すように、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP7),
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP11),
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP8),
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン(KPNP12),
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9),
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)等を挙げることができる。
【0052】
【化6】
【0053】
また、上記ベンゾフラン誘導体の「置換基X」は、ベンゾフラン環の4位〜7位のいずれかの炭素に結合するものであるが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合していることが好ましく、6位の炭素に結合していることがより好ましい。これにより、本発明11βHSD1阻害剤が、より高い11βHSD1阻害活性を示す。
【0054】
また、ベンゾフラン環に水酸基が結合したベンゾフラン誘導体は、高い11βHSD1阻害活性を示す傾向にある。従って、「置換基X」は、水酸基であることが特に好ましい。
【0055】
また、2−(4−ヒドロキシ)フェニル基が、ベンゾフラン環の2位の炭素に結合したベンゾフラン誘導体は、高い11βHSD1阻害活性を示す傾向にある。従って、「置換基Z」は、水酸基であることが好ましい。
【0056】
このように、上記ベンゾフラン誘導体の好ましい組み合わせとしては、「置換基X」および「置換基Z」が、いずれも水酸基であることが好ましく、さらに「置換基X」がベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合していることがより好ましい。すなわち、上述の例示した化合物の中では、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9)、または、2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)が好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9)が特に好ましい。
【0057】
特に、「置換基X」および「置換基Z」がいずれも水酸基であるベンゾフラン誘導体は、11βHSD1の活性を阻害するだけでなく、11βHSD2の活性を阻害しないという、注目すべき薬理活性を有する。このため、そのベンゾフラン誘導体は、選択的11βHSD1阻害剤として利用することができる。特に、後述の実施例のように、2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール(KPNP9),および,2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール(KPNP13)は、選択的に11βHSD1を阻害することが実証されている。
【0058】
なお、上記ベンゾフラン誘導体は、11βHSD1阻害活性に影響を及ぼさない範囲で、「置換基X」,「置換基Y」,および「置換基Z」以外の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよい。任意の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、水酸基、アミノ基、アルコキシル基等を挙げることができる。
【0059】
上記ベンゾフラン誘導体は、既知化合物であり、例えば、特許文献1または非特許文献4に記載された方法に基づいて製造することができるため、その製造方法の説明は省略する。
【0060】
また、上記ベンゾフラン誘導体は、任意の塩類の形態であってもよい。この塩類には、非毒性塩薬理学的に許容される塩、またはプロドラッグ等すべてが含まれる。例えば、上記ベンゾフラン誘導体は、分子内に水酸基またはアミノ基を有する場合がある。従って、水酸基およびアミノ基を利用して、上記ベンゾフラン誘導体の塩類を構成することができる。なお、上記ベンゾフラン誘導体の塩類は、毒性のない薬理学的に許容される塩であって、かつ、水溶性のものが好ましい。
【0061】
具体的には、上記ベンゾフラン誘導体の塩類としては、例えば、金属塩、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩などが挙げられる。
【0062】
金属塩としては、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩;アルミニウム塩等が挙げられる。
【0063】
無機酸との塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
【0064】
有機酸との塩としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等が挙げられる。
【0065】
なお、無機酸との塩および有機酸との塩は、酸付加物塩とも言い換えられる。
【0066】
無機塩基との塩としては、テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0067】
有機塩基との塩としては、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等の有機アミンの塩が挙げられる。
【0068】
また、上記ベンゾフラン誘導体の塩類には、溶媒和物、または、上記ベンゾフラン誘導体の金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩の溶媒和物も含まれる。溶媒和物は非毒性かつ水溶性であることが好ましい。適当な溶媒和物としては、例えば水、アルコール系溶媒(エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。上記ベンゾフラン誘導体は、公知の方法で非毒性塩や薬理学的に許容される塩類に変換することができる。
【0069】
なお、上記ベンゾフラン誘導体の塩類には、アミノ基の窒素原子が酸化された、N−オキシドも含まれる。
【0070】
一方、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により、上記ベンゾフラン誘導体に変換される化合物を示す。すなわち、酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして、上記ベンゾフラン誘導体に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして上記ベンゾフラン誘導体に変化する化合物などを示す。
【0071】
例えば、一般式(1)で示される化合物がアミノ基を有する場合、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグとしては、そのアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、アミノ基が、アセチル化、エイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、アセトキシメチル化、tert−ブチル化された化合物等)を挙げることができる。
【0072】
一方、一般式(1)で示される化合物が水酸基を有する場合、上記ベンゾフラン誘導体のプロドラッグとしては、その水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物等)を挙げることができる。
【0073】
このようなベンゾフラン誘導体のプロドラッグは、自体公知の方法によって製造することができる。また、このプロドラッグは、水和物および非水和物のいずれであってもよい。さらに、このプロドラッグは、上記ベンゾフラン誘導体が複数重合した、オリゴマーやポリマーであってもよい。この場合も、生体内で酵素的または化学的に分解され、上記ベンゾフラン誘導体となる。
【0074】
このようなベンゾフラン誘導体の塩(特にプロドラッグ)は、作用の持続性、消化管内安定性、経口吸収性、副作用の軽減に優れ、またバイオアベイラビリティの向上による低用量化なども実現できる。
【0075】
なお、上記ベンゾフラン誘導体およびその塩類は、放射性同位元素(例えば 3H,14C)等により、標識されていてもよい。また、上記ベンゾフラン誘導体およびその塩類に種々の異性体が存在する場合、本発明の11βHSD1阻害剤は、その異性体の混合物であってもよい。
【0076】
また、本発明の11βHSD1阻害剤は、上述したベンゾフラン誘導体またはその塩類から選択される1つの化合物を有効成分とするものであってもよいし、複数の化合物の混合物を有効成分とするものであってもよい。
【0077】
本発明の11βHSD1阻害剤は、固体形態、液体形態、半固形形態のいずれであってもよい。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤が、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類の単一成分の場合、固体形態となる。本発明の11βHSD1阻害剤は、経口投与に好ましい錠剤、カプセルなどの形態として調製され得る。また、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を適当な溶媒に溶解させれば、液体形態、一部を溶解させれば半固形態(クリームなど)となる。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤は、注射用蒸留水または生理食塩水に、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を溶解または懸濁させた液剤または懸濁剤であってもよい。
【0078】
このように、本発明の11βHSD1阻害剤は、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類からなるものであってもよいし、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類の他に、水、生理食塩水、グリセロール、またはエタノールのような1つ以上の成分を含んでいてもよい。さらに、本発明の11βHSD1阻害剤は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質、安定化剤、抗酸化剤などの補助物質を含んでいてもよい。
【0079】
以上のような本発明の11βHSD1阻害剤は、生体における唯一の細胞内GC活性化酵素である11βHSD1の活性を阻害する。このため、本発明の11βHSD1阻害剤の有効量を、哺乳動物に投与することにより、11βHSD1活性の抑制が可能となる。哺乳動物としては、ヒトに限らず、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サルなどが挙げられる。
【0080】
さらに、また、本発明の11βHSD1阻害剤の一部は、11βHSD1の活性を阻害する一方、11βHSD2の活性を阻害しない、選択的11βHSD1阻害剤として利用することができる。
【0081】
ここで、11βHSD1の阻害活性は、例えば、ラットの場合、11βHSD1を発現している細胞のミクロソーム画分に、基質として11−デヒドロコルチコステロン(不活性型)、補酵素としてNADPHを加えてインキュベートし、生成したコルチコステロン(活性型)を、HPLC等で定量することによって測定できる。本発明においては、このアッセイにおいて、コルチコステロンの生成量がコントロール(溶媒対照)よりも減少する(すなわち11βHSD1活性が低下する)ベンゾフラン誘導体、好ましくはコントロールのコルチコステロンの生成量に対して統計学的な有意差がP値0.05以下であるベンゾフラン誘導体、より好ましくはP値0.01以下であるベンゾフラン誘導体を、「11βHSD1阻害活性あり」と評価する。
【0082】
一方、11βHSD2の阻害活性は、例えば、ラットの場合、11βHSD2を発現している細胞のミクロソーム画分に、基質としてコルチコステロン(活性型)、補酵素としてNAD+を加えてインキュベートし、生成した11−デヒドロコルチコステロン(不活性型)を、GC−MS等で定量することによって測定できる。本発明においては、このアッセイにおいて、コントロール(溶媒対照)の11−デヒドロコルチコステロンの生成量に対して統計学的な有意差がP値0.05以上であるベンゾフラン誘導体を、「11βHSD2阻害活性なし」と評価する。
【0083】
2.本発明の11βHSD1阻害剤の用途
本発明の11βHSD1阻害剤は、11βHSD1の活性の阻害作用を示す。従って、本発明の11βHSD1阻害剤は、11βHSD1によって産生するグルココルチコイドに起因する疾患を処置するために利用することができる。例えば、本発明の11βHSD1阻害剤は、これを含有する組成物として食品、医薬品、医薬部外品、化粧品など形態として利用することができる。各組成物における11βHSD1阻害剤の含有量は、特に限定されるものではないが、組成物重量基準で好ましくは0.001〜99.999重量%、より好ましくは0.01〜99.9重量%である。
【0084】
なお、「疾患を処置」とは、予防的(発症前)または治療的(発症後)に、グルココルチコイドが関与する疾患の症状を軽減または排除することを意味する。また、「治療」には、疾患の病態を治癒の方向へ導く一般的な治療の意味はもちろん、病態の悪化を抑制する意味(病態の進行をとどめる進展防止剤の意味)も含まれる。
【0085】
(1)本発明の食品
本発明の食品は、本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加、または希釈されてなるもの(食用組成物)である。本発明の食品には、飲料および飼料も含まれる。本発明の食品は、11βHSD1阻害剤を抑制する。
【0086】
本発明の食品の製造法は特に限定されるものではなく、調理、加工および一般に用いられている食品の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品または飲料に本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加および/または希釈されていればよい。
【0087】
本発明の食品としては特に限定されるものではないが、例えば、菓子類、乳製品(例えば、ヨーグルト)、健康食品(例えば、カプセル、タブレット、粉末)、飲料(例えば、清涼飲料、乳飲料、野菜飲料など)、ドリンク剤などが挙げられる。菓子類は、携行利便性の観点から好ましく、乳製品は、菓子類と比較すると1回当たりの摂取量が多く、毎日摂取しやすいという観点からより好ましい。
【0088】
本発明における食品中の11βHSD1阻害剤の含有量は特に限定されず、その官能と作用発現の観点から適宜選択できる。
【0089】
本発明の食品は、本発明の11βHSD1阻害剤が含有、添加および/または希釈されており、その生理作用を発現させるための有効量が含有されていれば特にその形状が限定されることはない。本発明の食品は、液状または固形の任意の形態とすることができる。例えば、本発明の食品は、タブレット状、顆粒状、カプセル状、液状などの経口的に摂取可能な形状であってもよい。本発明の食品がカプセル状の場合は、ゼラチンなどで外包してカプセル化した軟カプセル剤とすることができる。カプセルは、例えば、原料ゼラチンに水を加えて溶解し、これに可塑剤(グリセリン、D−ソルビトールなど)を加えることにより調製したゼラチン皮膜で作られる。
【0090】
本発明の食品は、11βHSD1阻害剤を含むため、11βHSD1阻害作用を有する。このため、本発明の食品を日常的に摂取すれば、持続的に11βHSD1阻害活性が発揮される。従って、本発明の食品は、機能性食品(特定保健用食品)、グルココルチコイドが関与する疾患(特にグルココルチコイドの過剰産生に起因する疾患)を予防する健康食品として好適である。特に、本発明の機能性食品(特定保健用食品など)は、グルココルチコイドが関与する疾患を予防する健康食品、予防医学の分野での利用に適している。グルココルチコイドが関与する疾患については、後述する。
【0091】
本発明の食品には、必須成分である11βHSD1阻害剤の他に、任意的成分として、通常食品に添加されるビタミン類、炭水化物、色素、香料など適宜配合することができる。
【0092】
(2)本発明の医薬
本発明の医薬は、本発明の11βHSD1阻害剤を有効成分として含有する。なお、上述のように、本発明の医薬は、上述のベンゾフラン誘導体を、プロドラッグ等の塩類の形態として含有していてもよい。
【0093】
本発明の医薬の用途は、特に限定されるものではないが、11βHSD1を阻害するため、活性型グルココルチコイドが関与する疾患(特に、コルチゾールの過剰産生が関与する疾患)を処置するために好適である。
【0094】
具体的には、11βHSD1は、不活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾン)を、活性型グルココルチコイド(ヒトではコルチゾール)に変換する酵素である。コルチゾールは糖新生、インスリンによる糖取込みおよび解糖阻害、脂肪分化、アンギオテンシノーゲン産生または骨形成抑制等の生理作用を有し、生体内で重要な役割を担っている。しかし、過剰なコルチゾールは、耐糖能異常、脂質代謝異常、骨形成阻害、脂肪細胞由来生理活性物質の過剰分泌等に起因する様々な病体の原因となることが知られている。
【0095】
従って、本発明の医薬は、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患の治療または予防のために好適に利用できる。
【0096】
コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、メタボリックシンドローム等の種々の代謝性疾患、メタボリックシンドロームを基盤とする致死的イベント、神経変性疾患、感情障害、精神分裂病、食欲増進を含む神経機能障害の疾患、免疫疾患等が挙げられる。
【0097】
具体的には、コルチゾール過剰産生によって引き起こされる疾患としては、例えば、糖尿病(特に2型糖尿病)、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、骨粗鬆症等が挙げられる。
【0098】
本発明の医薬は、このような疾患を少なくとも1つを発症した患者、または、発症する可能性のある患者に対して投与することが好ましい。特に、内臓脂肪型肥満、または、メタボリックシンドロームを発症した患者、または、発症する可能性のある患者に対して投与することがより好ましい。これにより、生体内で11βHSD1活性の阻害作用を示し、コルチゾール過剰産生の予防または治療効果が得られる。
【0099】
ここで、本発明の医薬は、少なくとも11βHSD1の阻害活性を有していればよいが、さらに、11βHSD2の阻害活性を有しないことが好ましい。本発明の医薬が、11βHSD1の阻害活性に加えて、11βHSD2阻害活性も示すと、コルチゾール(活性型)を、コルチゾン(不活性型)に変換することができなくなる。その結果、コルチゾンに変換されないコルチゾールが蓄積し、蓄積したコルチゾールが種々の薬理作用を示す。
【0100】
例えば、11βHSD2は、主に、腎臓組織に存在する。このため、11βHSD1阻害剤が、腎臓組織の11βHSD2の活性を阻害すると、コルチゾールが不活性化されない。その結果、蓄積されたコルチゾールが蓄積によって、高血圧などの副作用がでるおそれがある。
【0101】
従って、本発明の医薬は、11βHSD1活性を阻害する一方、11βHSD2活性を阻害しないことが好ましい。すなわち、11βHSD1阻害剤は、選択的に11βHSD1活性を阻害する11βHSD1阻害剤を含有することが好ましい。これにより、11βHSD2活性が阻害され、コルチゾールの蓄積による副作用を低減または防止することができる。
【0102】
なお、本発明の医薬を、局所投与またはDDS等の技術により、標的部位に特異的に投与することによっても、コルチゾールの蓄積による副作用を低減または防止することができる。
【0103】
本発明の医薬は、毒性が低く、医薬製剤の製造法として一般的に用いられている自体公知の手段に従って、本発明の医薬をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤とした後、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。
【0104】
本発明の医薬中に存在する有効成分の含有量は、投与形態、投与方法などを考慮し、当該医薬を用いて後述の投与量範囲で、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を投与できるような量であれば特に限定されない。例えば、この含有量は、医薬製剤全体の約0.01ないし約100重量%とすることができる。
【0105】
本発明の医薬の投与量は、その製剤形態、投与対象、投与ルート、疾患、投与対象である患者の年齢、体重、症状、有効成分であるベンゾフラン誘導体等により適宜設定され一定ではない。一般には、製剤中に含有される有効成分の投与量で、好ましくは成人1日当り0.01〜1000mg/kg、より好ましくは0.1〜200mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。
【0106】
なお、この投与量は、選択的に11βHSD1活性を阻害するために、非選択的に11βHSD1活性を阻害する場合よりも、低減してもよい。ただし、後述の実施例(実施例3)では、比較的高用量であっても、11βHSD2阻害活性を示していない。従って、選択的に11βHSD1活性を阻害する場合と、非選択的に11βHSD1活性を阻害する場合とで、投与量は同一であってもよい。
【0107】
投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよい。また、本発明の医薬を輸液製剤として適用する場合は、例えば、連続的に静脈内投与することもできる。この場合、例えば、有効成分の数百mg〜数百gを500mLの溶液に添加してもよい。また、本発明の医薬はそのまま経口的または非経口的に投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0108】
本発明の医薬の製造に用いられてもよい薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が挙げられ、例えば固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、安定化剤及び無痛化剤等が挙げられる。さらに必要に応じ、通常の防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等の添加物を適宜、適量用いることもできる。
【0109】
本発明の医薬を、特に、注射剤または輸液製剤とする場合、その医薬は、キット化すること(キット製剤)が好ましい。このキット製剤は、特定の材料を内包する容器(例えば、ボトル、プレート、チューブ、ディッシュなど)を備えた包装を示し、注射剤に用いるバイアルも含まれる。また、キット製剤は、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を封入したバイアル製剤、または、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類と水性溶媒とからなるキット製剤の形態であってもよい。
【0110】
本発明の医薬がバイアル製剤の場合、そのバイアルの大きさは、その使用目的に応じて適宜選択される。例えば、当該バイアルに水性溶媒を注入し、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を溶解させて調製された注射溶液を注射器に吸入して使用する場合には、バイアルの大きさは約1〜約50mLである。また、例えば、より多量の注射用溶液を一度に調製する必要のある点滴用として用いる場合には、バイアルの大きさは約50〜約300mLである。
【0111】
本発明の医薬がキット製剤の場合、そのキット製剤は、一体成型され、隔壁により仕切られた複数の部屋からなるバッグの1室に、上記ベンゾフラン誘導体またはその塩類を封入し、他の部屋に溶解液としての生理食塩液またはブドウ糖液を封入し、両部屋の隔壁を用時容易に開通できるよう構成し、用時両者を混合・溶解して用いることのできる構成とすることができる。キット製剤は、前述のような複数の部屋に仕切られていない単一のバックに、最初から本発明の医薬を添加した構成であってもよい。
【0112】
本発明の医薬を投与する時期は、特に限定されるものではないが、予防効果を期待する場合は、上述の疾患の発症前から日常的に投与することが好ましい。また、本発明の医薬は、治療効果を期待する場合、上述の疾患の発症後に投与すればよい。両方の効果を期待する場合は、日常的に投与をはじめ、上述の疾患の治療後も投与を続ければよい。
【0113】
本発明の医薬は、本発明の医薬以外の薬物(併用薬物)と併用して使用することもできる。
【0114】
本発明の医薬と併用し得る薬物としては、例えば、α−グルコシダーゼ阻害薬などが挙げられる。
【0115】
さらに、本発明の医薬は、動物モデルや臨床で、11βHSD1活性の阻害作用、または、選択的11βHSD1阻害作用が認められている薬剤(非特許文献1参照)と併用することもできる。
【0116】
このように、本発明の医薬と併用薬物とを組み合わせることにより、以下のような優れた効果が得られる。
(i)本発明の医薬または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減することができる。
(ii)患者の症状(軽症、重症など)に応じて、本発明の医薬と併用する薬物を選択することができる。
(iii)本発明の医薬と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を短く設定することができる、
(iv)本発明の医薬と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図ることができる、
(v)本発明の医薬と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる。
【0117】
本発明の医薬と併用薬物とを組み合わせて用いる場合、本発明の医薬と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明の医薬と併用薬物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
【0118】
本発明の医薬と併用薬物の投与形態としては、例えば、
・本発明の医薬と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与;
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与;
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与
・本発明の医薬と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の医薬、併用薬物の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)
などが挙げられる。
【0119】
以上のように、本発明によれば、ベンゾフラン誘導体が有する、11βHSD1活性の抑制効果によって、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患を、予防または治療することができる。また、本発明によれば、11βHSD1の抑制効果を有する食品および医薬品を提供することができる。それゆえ、本発明によれば、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患に対する有効な予防方法および/または治療方法を確立することができる。
【0120】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0121】
以下の実施例1,2,4では、実験動物として、雄性Wistar rat、10週齢(体重:240〜260g)を1週間飼育した後用いた。また、図中の数値は、平均値±標準誤差(mean±S.E.)あるいは平均値(mean)を表す。各群の検体数はn=3〜5とし、有意差検定は、コントロール(vehicle)群との比較を、Dunnett検定を用いて行った。各図の「**」は、Dunnett検定において、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。また、実施例で用いたベンゾフラン誘導体の番号(KPNP)と、化合物名との対応関係は、以下の通りである。
KPNP7:3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP8:6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP9:2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール
KPNP11:3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP12:5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン
KPNP13:2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノール
KPNP17:4−(2−ベンゾフラニル)フェノール
KPNP25:ステモフランA。
【0122】
〔実施例1〕ラット腸間膜脂肪組織における11βHSD1阻害活性
(1)時間依存的阻害作用
ラット腸間膜脂肪組織から調製したミクロソームを、インキュベート用緩衝液(pH7.0)に加えて37℃でインキュベートし、生成するコルチコステロンをHPLC法で定量した。インキュベート用緩衝液は、11−デヒドロコルチコステロン(基質)1μM,β−NADP+ 1mM,G6P6mM,ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)25μMを含有する20mM MOPS緩衝液である。このインキュベート用緩衝液1mLに25unit/mL G6PDHを14μL添加し(最終G6PDH濃度:0.35unit/mL),37℃の水浴で5分間プレインキュベートした。次に,ミクロソームを10μL添加(最終ミクロソームタンパク濃度:40μg/mL)して反応を開始し,40分間インキュベート後,ジクロロメタン2.0mLを添加して反応を停止した。遠心分離を行い,ジクロロメタン層を分取した。残った水層に再びジクロロメタン2.0mLを加えて,遠心分離を行い,ジクロロメタン層を1回目に分取したジクロロメタン層と合わせた。ジクロロメタン層を減圧乾固後,生成したコルチコステロン濃度をHPLCで定量し,11βHSD1活性を求めた。
【0123】
なお、コルチコステロンの定量には、UV検出器およびオートサンプラーを備えたNANOSPACE SI-1セミミクロHPLCシステム (SHISEIDO) を用い、分析カラムとしてCapcellpak C18 MGII type (3 μm),250 mm×2 mm I.D.を使用した。また、測定条件は、流速を0.1mL/min,移動相溶媒を水-メタノール(45:55,v/v),カラム温度を40℃,検出波長を240nm,試料注入量を20μL,分析時間を12分とした。そして、予め作成した検量線から、コルチコステロンを定量した。
【0124】
図1は、11βHSD1に対するKPNP9の時間依存的阻害作用を示すグラフである。図2は、11βHSD1に対するKPNP13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。
【0125】
その結果、図1および図2のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、経時的に抑制された。また、同図のように、グラフが直線性を示していることから、ベンゾフラン誘導体自身が11βHSD1を阻害しており、その代謝物が11βHSD1を阻害しないことが確認された。なお、同図において、黒丸印がコントロールの結果、黒三角印がベンゾフラン誘導体を添加した結果である。
【0126】
(2)濃度依存的阻害作用
11−デヒドロコルチコステロン(1μM)、NADPH(1mM)、ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13:1〜50μM)を含む20mM MOPS緩衝液に、ラット腸間膜脂肪組織から調製したミクロソーム(最終ミクロソームタンパク濃度:40μg/mL)を加えて、37℃で40分間インキュベートし、生成するコルチコステロンをHPLC法で定量した。
【0127】
図3は、11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図4は、11βHSD1に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【0128】
その結果、図3および図4のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、用量依存的に有意に抑制された。特に、図3のように、5μM以上のKPNP9の添加によって、60%以上の強い阻害活性を示した。なお、同図において、「CBX」は、ポジティブコントロールとして用いたカルベノキソロン(50μM)の結果を示している。また、同図から求めたKPNP9のIC50は4.5μMであり、KPNP13のIC50は10μMである。
【0129】
一方、図5は、KPNP9,13と、17,25の11βHSD1に対する阻害活性を比較した図である。同図のように、いずれのベンゾフラン誘導体も、コントロールに対して、有意に11βHSD1阻害活性を示した。特に、KPNP9は、強い阻害活性を示した。
【0130】
同様にして、KPNP7,8,11,12の11βHSD1阻害活性を確認した。図6は、KPNP7,8,9,11,12,13の11βHSD1に対する阻害作用を示すグラフである。同図のように、いずれのベンゾフラン誘導体も、コントロールよりも11βHSD1活性が低下しており、11βHSD1阻害活性を示すことが確認された。
【0131】
(3)阻害反応様式
上記(2)と同様にして、Lineweaver-Burk plotを作成し、その阻害反応形式を調べた(最終ミクロソームタンパク濃度:2.8mg/mL)。図7は、11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。図8は、11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【0132】
その結果、図7および図8のように、ラット脂肪組織ミクロソーム中の11βHSD1活性のベンゾフラン誘導体による阻害反応形式は、非拮抗型であった。つまり、KPNP9,KPNP13の11βHSD1への結合部位は、基質であるデヒドロコルチコステロンの結合部位と異なることが確認された。また、同図から求めた、11βHSD1に対するKm値は0.6μM〜1.3μMであり、これまでの報告に略一致した。さらに、Dixon plotから求めた、KPNP9の11βHSD1に対する阻害定数Ki値は1μMであり、KPNP13のKi値は8μMであった。
【0133】
〔実施例2〕ラット腎臓における11βHSD2阻害活性
ラット腎臓からミクロソームを調製し、インキュベート用緩衝液(pH7.4)に加えて37℃でインキュベートし、生成する11−デヒドロコルチコステロンをGC−MS法で定量した。インキュベート用緩衝液は、コルチコステロン(基質)1μM,β−NAD+2mM,ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)50μMを含有する5mM MOPS緩衝液である。このインキュベート用緩衝液1mLを,37℃の水浴で5分間プレインキュベートした。次に,ミクロソームを10μL添加(最終ミクロソームタンパク濃度:2.26mg/mL)して反応を開始し、30分間インキュベート後,ジクロロメタン2.0mLを添加して反応を停止した。遠心分離を行い,ジクロロメタン層を分取した。残った水層に再びジクロロメタン2.0mLを加えて,遠心分離を行い,ジクロロメタン層を1回目に分取したジクロロメタン層と合わせた。ジクロロメタン層を減圧乾固後,生成した11−デヒドロコルチコステロンを抽出した。抽出した11−デヒドロコルチコステロンを、メタノール0.1mLに溶解し、GC/MS誘導体化剤として50μLの無水ペンタフルオロプロピオン酸(PFPA)を加え、60分間70℃で反応させる。次に、減圧乾固後の残留物に、内標準物質としてアンドロステンジオール含有ジクロロメタン液(200ng/mL)0.1mLを加え、さらにジクロロメタン0.1mLを加えて全量を0.2mLとし、GC−MSの試料とした。
【0134】
なお、11−デヒドロコルチコステロンの定量には、Hewlett-Packardマススペクトロメーター(Model 5973)、および、Hewlett-Packardガスクロマトグラフィー(Model 6890)を用い、カラムとしてJ&W製DB-1カラム(長さ15 m,0.25 mm I.D,膜厚0.1 μm)を用いた。また、測定条件は、イオン化電圧を70eV,ヘリウムガスの流速を1mL/min,インジェクター温度を300℃,インターフェイス温度を290℃に設定し,カラムオーブン温度を初期(1.5min)は50℃とし,30℃/minで昇温し,最終温度を300℃(2min)とした。そして、予め作成した検量線から、11−デヒドロコルチコステロンを定量した。
【0135】
図9は、11βHSD2に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図10は、11βHSD2に対するKPNP13の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。
【0136】
その結果、図9および図10のように、KPNP9,KPNP13は、いずれも、11βHSD2活性を抑制しなかった。一方、図10のように、ポジティブコントロールであるCBX(カルベノキソロン)は、11βHSD2の活性を有意に抑制した。
【0137】
〔実施例3〕動物実験−1
雄性5週齢C57BL/6Jマウス(体重18.1〜21.5g)を購入し、1週間普通食を与えて飼育した、6週齢のマウスを実験動物として使用した。ベンゾフラン誘導体投与群には、170mg/kg/日のKPNP9をオリーブオイルに混和し、0.1mL/kg/日を経口投与した。一方、コントロール群には、オリーブオイル0.1mL/kg/日を投与した。また、試験中の食餌は、普通食から高脂肪食(60kcal%ラード)に代えた。そして、試験前後の体重、食餌摂取量、血圧を比較した。図11は、マウスの体重を示すグラフである。図12は、マウスの食餌摂取量を示すグラフである。図13は、マウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【0138】
図11のように、ベンゾフラン誘導体投与群は、コントロール群に対して、14日後の体重が有意に低下した。しかし、図12のように、食餌摂取量は、両群間で差は見られない。このように、KPNP9の投与によって11βHSD1が阻害され、体重が有意に低下した。
【0139】
また、図13のように、収縮期血圧は、両群間で差は見られなかった。つまり、KPNP9の投与によって、11βHSD2の阻害による高血圧の副作用は示さなかった。従って、KPNP9は、選択的に11βHSD1を阻害することが確認された。
【0140】
〔実施例4〕ラット脳組織における11βHSD1阻害活性
脳組織(大脳皮質,海馬,視床下部,小脳の各部)からミクロソームを調製し、実施例1と同様にして、ベンゾフラン誘導体非存在下での各部における11βHSD1活性、および、ベンゾフラン誘導体(KPNP9,13)を添加した場合の11βHSD1活性を測定した。
【0141】
図14は、ラット脳組織の11βHSD1活性を示すグラフである。図13のように、大脳皮質,海馬,視床下部および小脳のいずれにおいても、11βHSD1活性が確認された。特に、海馬および小脳では、他の部位に比較して、11βHSD1活性が高くなっている。なお、図14における各部位の結果は、Turkey法で有意差検定を行った。
【0142】
一方、図15は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の時間依存的阻害作用を示すグラフである。図15のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性は、ベンゾフラン誘導体の添加によって、経時的に抑制された。また、同図のように、グラフが直線性を示していることから、ベンゾフラン誘導体自身が11βHSD1を阻害しており、その代謝物が11βHSD1を阻害しないことが確認された。
【0143】
また、図16は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9,13の阻害作用を示すグラフである。図17は、大脳皮質の11βHSD1に対するKPNP9の濃度依存的阻害作用を示すグラフである。図16のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性は、KPNP9,13の添加によって有意に抑制された。特に、図17のように、10μM以上のKPNP9の添加によって、40%以上の強い阻害活性を示した。また、同図から求めたKPNP9のIC50は、8.5μMである。
【0144】
一方、図18は、11βHSD1に対するKPNP9の阻害反応形式を示すグラフである。図19は、11βHSD1に対するKPNP13の阻害反応形式を示すグラフである。
【0145】
図18および図19のように、ラット大脳皮質ミクロソーム中の11βHSD1活性のベンゾフラン誘導体による阻害反応形式は、非拮抗型であった。つまり、KPNP9,KPNP13の11βHSD1への結合部位は、基質であるデヒドロコルチコステロンの結合部位と異なることが確認された。また、同図から求めた、11βHSD1に対するKm値は2μMであり、これまでの報告に略一致した。さらに、Dixon plotから求めた、KPNP9の11βHSD1に対する阻害定数Ki値は1μMであり、KPNP13のKi値は10μMであった。
【0146】
〔実施例5〕動物実験−2
雄性3齢C57BL/6Jマウス(体重18.1〜21.5g)を購入し、2週間普通食を与えて飼育した5週齢のマウスを実験動物として使用した。試験群は、普通食摂取+ベンゾフラン誘導体非投与群(コントロール(−))、普通食摂取+ベンゾフラン誘導体投与群(コントロール(+))、高脂肪食摂取+ベンゾフラン誘導体非投与群(HF(−))、高脂肪食摂取+ベンゾフラン誘導体投与群(HF(+))の4群に分け、各群の検体数はn=13〜15とした。ベンゾフラン誘導体投与群には、実施例3よりも少ない100mg/kg/日のKPNP9をオリーブオイルに混和し、0.1mL/kg/日を経口投与した。一方、ベンゾフラン誘導体非投与群には、オリーブオイル0.1mL/kg/日を投与した。そして、試験期間中の体重、食餌摂取量、脂肪組織重量、血圧、および、試験終了後の脂肪組織の重量を比較した。図20は、マウスの体重を示すグラフである。図21は、マウスの食餌摂取量を示すグラフである。図22は、マウスの脂肪組織重量を示すグラフである。図23はマウスの平均血圧と示すグラフである。図24はマウスの収縮期血圧を示すグラフである。
【0147】
図20中の拡大されたグラフは、21目〜30日目の体重を示している。図20のように、ベンゾフラン誘導体投与開始後28日目〜30日目にかけて、HF(−)群に比べ、HF(+)群において、有意な体重減少が認められた。なお、試験期間中、コントロール(−)群とコントロール(+)群とで、体重に有意差は認められなかったため、KPNP9の投与による体重抑制作用は、細胞毒性によるものではないことが示唆された。また、有意差は無かったものの,コントロール(−)群に比べHF(−)群で体重増加傾向がみられていることから、HFによって肥満が誘導されていると考えられる。図20における有意差検定は、HF(−)群との比較を、Dunnett検定を用いて行い、「**」は、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。また、図21のように、試験期間中の摂食量は、各群間で差は認められなかった。このように、KPNP9が11βHSD1を阻害し、体重増加を有意に抑制した。
【0148】
また、試験期間終了後(ベンゾフラン誘導体投与開始後30日目:10週齢)の各群における皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪、褐色脂肪、肝臓、および腎臓の組織重量を測定した。その結果、図22のように、HF(−)群の皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量は、コントロール(−)群に比べて、有意に増加した。さらに、HF(+)群は、HF(−)群に比べ、皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量が有意に減少した。なお、コントロール(−)群とコントロール(+)群とで、組織重量の有意な差は認められなかったため、KPNP9の投与による組織重量の低下は、細胞毒性によるものではないことが示唆された。図22における有意差検定は、Tukey検定を用いて行い、「**」は、p<0.01、「*」は、p<0.05であることを示す。このように、KPNP9が11βHSD1を阻害し、メタボリックシンドローム(MS)に密接に関係する皮下脂肪、腸間膜脂肪、精巣周囲脂肪の組織重量を顕著に減少させた。
【0149】
また、ベンゾフラン誘導体投与開始前(3週齢)、投与開始後16日(5週齢)、32日目(10週齢)に、各群の血圧を測定した。血圧は、非観血式自動血圧測定装置(Softron BP−98A−L)を用いたtail cuff法で測定した。その結果、図23および図24のように、いずれの測定時においても、平均血圧および収縮期血圧は、各群間で差は認められなかった。つまり、高脂肪食およびKPNP9共に、血圧に影響しないことが確認された。このように、KPNP9は、11βHSD2の阻害による高血圧の副作用を示さず、選択的に11βHSD1を阻害することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明によれば、ベンゾフラン誘導体が有する11βHSD1活性の抑制効果によって、コルチゾールが関与する疾患を予防または治療することができる。また、本発明によれば、11βHSD1の抑制効果を有する食品および医薬品を提供することができる。それゆえ、本発明によれば、コルチゾール過剰産生が原因となる疾患に対する有効な予防方法および/または治療方法を確立することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは、水酸基またはアルコキシル基である)
で示される化合物またはその塩を有効成分とする11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)阻害剤。
【請求項2】
上記一般式(1)で示される化合物の置換基Xが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合した水酸基またはアルコキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項3】
上記一般式(1)で示される化合物が、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることを特徴とする請求項1または2に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項4】
上記一般式(1)で示される化合物の置換基XおよびZが、いずれも水酸基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項5】
上記一般式(1)で示される化合物が、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤を含有することを特徴とする食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項8】
グルココルチコイドが関与する疾患の治療剤または予防剤である請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、糖尿病、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、または骨粗鬆症であることを特徴とする請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、内臓脂肪型肥満であることを特徴とする請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、メタボリックシンドロームであることを特徴とする請求項9に記載の医薬。
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、Xは水酸基、アルコキシル基、アミノ基、またはトリフルオロメチル基であり、Yは水素原子またはハロゲン原子であり、Zは、水酸基またはアルコキシル基である)
で示される化合物またはその塩を有効成分とする11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11βHSD1)阻害剤。
【請求項2】
上記一般式(1)で示される化合物の置換基Xが、ベンゾフラン環の5位または6位の炭素に結合した水酸基またはアルコキシル基であることを特徴とする請求項1に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項3】
上記一般式(1)で示される化合物が、
3−ヨード−6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
3−ヨード−5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
5−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−ベンゾフラン,
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることを特徴とする請求項1または2に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項4】
上記一般式(1)で示される化合物の置換基XおよびZが、いずれも水酸基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項5】
上記一般式(1)で示される化合物が、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−6−ベンゾフラノール、または、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−5−ベンゾフラノールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤を含有することを特徴とする食品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の11βHSD1阻害剤を含有することを特徴とする医薬。
【請求項8】
グルココルチコイドが関与する疾患の治療剤または予防剤である請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、糖尿病、糖尿病合併症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂質代謝異常、高脂血症、高トリグリセリド血症、肥満、脂肪肝、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞または脳卒中を含む致死的血管イベント、クッシング症候群、高血圧、認知障害、記憶障害、鬱病、躁病、不安症、痴呆症、アルツハイマー病、または骨粗鬆症であることを特徴とする請求項8に記載の医薬。
【請求項10】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、内臓脂肪型肥満であることを特徴とする請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
上記グルココルチコイドが関与する疾患が、メタボリックシンドロームであることを特徴とする請求項9に記載の医薬。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−32267(P2011−32267A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155777(P2010−155777)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509194965)
【出願人】(509194976)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509194965)
【出願人】(509194976)
【Fターム(参考)】
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