説明

13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤

【課題】優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有する新規なミルベマイシン誘導体を提供すること。
【解決手段】式(I)


(式中、オキシム基の幾何異性:E、Z;R:C1〜C6アルキル基;A:A1〜A10の構造単位)で表される、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレプトミセス属のB−41−146菌株より単離された一群のマクロライド系化合物は、特開昭50−29742号公報において、B−41と称され、9種類の化合物が開示されている(特許文献1参照)。その後、B−41はミルベマイシンとも称され、類縁の化合物が相次いで発見されている(特許文献2〜4及び非特許文献1参照)。
【0003】
又、16員環マクロライド化合物であって、ミルベマイシン類に類似する化合物も、見出されている(特許文献5〜11参照)。
【0004】
更に、ストレプトミセス属のB−41−146菌株の菌学的性質については、特許文献1に詳しく記載され、ストレプトミセス属のB−41−146菌株は、工業技術院微生物工業研究所に寄託されており、その微生物受託番号は、微工研菌寄第1438号である。
【0005】
更に又、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体も、知られているが(特許文献12〜14参照)、その2位の炭素原子及び10位の炭素原子を含む構造は、すべて、天然物であるミルベマイシンA等のものと同一である。
【特許文献1】特開昭50−29742号
【特許文献2】特開昭56−32461号
【特許文献3】特開昭57−77686号
【特許文献4】特開昭57−136585号
【特許文献5】特開昭52−151197号
【特許文献6】特開昭57−59892号
【特許文献7】特開昭57−150699号
【特許文献8】特開昭58−52300号
【特許文献9】特開昭61−10589号
【特許文献10】特開昭61−118387号
【特許文献11】英国特許公報第2170499号
【特許文献12】特開平8−259570号
【特許文献13】特開平9−143183号
【特許文献14】特開2000−44751号
【非特許文献1】J. Antibiotics vol.36,980-990(1983)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の目的は、新規な、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、優れた殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を開発すべく、ミルベマイシン誘導体の合成及びその生物活性の検討を鋭意進めた結果、新規な、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体が、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、式(I)で表される13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体及びそれを有効成分として含有する殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規な、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体は、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有し、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤として、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の新規な、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体は、式(I)
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、オキシム基の幾何異性は、E又はZを示し、
Rは、C1〜C6アルキル基を示し、
Aは、その結合する2位の炭素原子及び10位の炭素原子を含む構造とし、下記式A1〜A10
【0013】
【化4】

【0014】
で表されるいずれかの構造単位を示す)
で表される。
【0015】
式(I)で表される化合物において、RのC1〜C6アルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基であり得、好適には、メチル、エチル、イソプロピル又はs−ブチル基であり、更に好適には、メチル又はエチルであり、最も好適には、エチル基である。
【0016】
Aは、好適には、式A1、A2、A3、A8又はA10で表されるいずれかの構造単位であり、更に好適には、式A1、A2又はA3で表されるいずれかの構造単位であり、最も好適には、式A2で表される構造単位である、
オキシム基の幾何異性は、Z又はEであり得、この双方とも本発明には包含されるが、好適には、Zである。
【0017】
化合物(I)の具体例として、例示化合物を表1に示す。
【0018】
なお、表1において、「Me」はメチル基を、「Et」はエチル基を、「iPr」はイソプロピル基を、それぞれ示す。
【0019】
【表1−1】

【0020】
【表1−2】

【0021】
上記例示化合物のうち、
好適には、化合物番号1、2、3、7、8、9、13、14、15、19、20、21、25、26、27、31、32、33、37、38、39、40、41、42、43、44、45、49、50、51、55、56又は57の化合物であり、
更に好適には、化合物番号1、2、8、14、44又は56の化合物であり、
更により好適には、化合物番号1、2、8又は14の化合物であり、
最も好適には、化合物番号8の化合物である。
【0022】
本発明の一般式(I)の化合物は、以下に記載するA法〜G法により製造することができる。
【0023】
A法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A1で表される構造単位である化合物(Ia)を製造する方法である。
【0024】
【化5】

【0025】
上記式中、オキシムの幾何異性及びRは、前述したものと同意義を示す。
【0026】
A−1工程は、溶媒存在下又は非存在中(好適には、溶媒存在下)、一般式(II)で表される13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体を酸化剤と反応させ、一般式(Ia)で表される26−ヒドロキシミルベマイシン誘導体を製造する工程である。
【0027】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、例えば、ベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びペンタンのような脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル及びプロピオニトリルのような二トリル類;アセトン及びメチルイソブチルケトンのようなケトン類;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類又はこれらの混合溶媒であり、更に好適には、ハロゲン化炭化水素類であり、最も好適には、ジクロロメタンである。
【0028】
使用される酸化剤は、例えば、二酸化セレン又は二酸化セレンとt−ブチルハイドロペルオキシドの組み合わせであり得、好適には、二酸化セレンとt−ブチルハイドロペルオキシドの組み合わせである。
【0029】
使用される二酸化セレンの量は、化合物(II)に対して、通常、触媒量〜5当量であり、好適には、0.1当量〜2当量であり、更に好適には、0.2当量〜0.5当量である。
【0030】
反応温度は、−78℃〜100℃であり、好適には、−20℃〜50℃であり、更に好適には、0℃〜室温である。
【0031】
反応時間は、反応温度、原料化合物及び/又は反応溶媒の種類によって大幅に変わり得るが、通常、15分間〜3昼夜であり、好適には、2時間〜1昼夜である。
【0032】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(Ia)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0033】
本反応の出発化合物(II)は、公知であるか、公知の方法で容易に製造される(例えば、特開平8−259570号、特開平9−143183号又は特開2000−44751号)。
【0034】
B法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A2又はA3で表される構造単位である化合物(Ib)及び(Ic)を製造する方法である。
【0035】
【化6】

【0036】
上記式中、オキシムの幾何異性及びRは、前述したものと同意義を示す。
【0037】
B−1工程は、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、縮合剤存在下、化合物(Ia)を、一般式(III)で表される3,3−ジメチルアクリル酸又は一般式(IV)で表されるピロール−2−カルボン酸と反応させ、化合物(Ib)又は(Ic)を製造する工程である。
【0038】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定は無いが、例えば、ベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びペンタンのような脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル及びプロピオニトリルのような二トリル類;アセトン及びメチルイソブチルケトンのようなケトン類;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類またはこれらの混合溶媒であり、更に好適には、芳香族炭化水素類(特に、ベンゼン又はトルエン)である。
【0039】
使用される縮合剤は、カルボン酸類とアルコール類を縮合して、エステル類を製造させるものであれば、特に限定は無いが、例えば、ジエチルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンの組み合わせ、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド又は1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドであり得、好適には、ジエチルアゾジカルボキシレート及びトリフェニルホスフィンの組み合わせである。
【0040】
縮合剤の使用量は、化合物(Ia)に対して、通常、触媒量〜大過剰であり、好適には、0.1当量〜10当量であり、更に好適には、1当量〜2当量である。
【0041】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、−20℃〜50℃であり、更に好適には、0℃〜室温である。
【0042】
反応時間は、反応温度、原料化合物又は/及び反応溶媒の種類によって大幅に変わり得るが、通常、1分間〜6時間であり、好適には、15分間〜1時間である。
【0043】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(Ib)及び(Ic)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0044】
C法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A4で表される構造単位である化合物(Id)を製造する方法である。
【0045】
【化7】

【0046】
上記式中、R2は、それぞれ、同一又は異なって、C1〜C6アルキル基又はフェニル基を示し、オキシムの幾何異性及びRは、前述したものと同意義を示す。
【0047】
C−1工程は、5位及び26位の水酸基をシリル基で同時に保護して、一般式(V)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、塩基の存在下、化合物(Ia)をシリル化剤と反応させることによって達成される。
【0048】
使用されるシリル化剤は、アルキル又は/及びフェニルシリル化に用いられるシリル化剤であれば、特に限定は無いが、例えば、トリメチルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルクロライド、t−ブチルジフェニルシリルクロライド、t−ブチルジメチルシリルトリフレート、トリエチルシリルクロライド又はトリイソプロピルシリルクロライドであり得、好適には、t−ブチルジメチルシリルクロライドである。
【0049】
シリル化剤の使用量は、化合物(Ia)に対して、通常、2〜10当量であり、好適には、2〜5当量である。
【0050】
使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、イミダゾールである。
【0051】
塩基の使用量は、化合物(Ia)に対して、通常、1.5当量〜10当量であり、好適には、2当量〜5当量である。
【0052】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば、特に限定はないが、例えば、四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、アミド類(特に、N,N−ジメチルホルムアミド)である。
【0053】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0054】
反応時間は、反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、15分間〜3昼夜であり、好適には、30分〜1昼夜である。
【0055】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(V)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0056】
C−2工程は、化合物(V)の26位のシリルオキシ基のみを脱保護し、一般式(VI)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(V)を酸と反応させることで達成される。
【0057】
使用される酸は、例えば、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸のような有機酸類;硫酸、塩酸及び硝酸のような鉱酸類であり得、好適には、有機酸類であり、最も好適には、酢酸である。
【0058】
酸の使用量は、化合物(V)に対して、通常、大過剰に用いられる。
【0059】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、エーテル類、アミド類、スルホキシド類、ニトリル類、水又はこれらの溶媒の混合物であり、更に好適には、エーテル類と水の混合溶媒であり、最も好適には、テトラヒドロフランと水の混合溶媒である。
【0060】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0061】
反応時間は反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、30分間〜2昼夜であり、好適には、1時間〜1昼夜である。
【0062】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(VI)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0063】
C−3工程は、化合物(VI)の26位の水酸基をメタンスルホニル化し、一般式(VII)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、塩基の存在下、化合物(VI)をメタンスルホニル化剤と反応させることによって達成される。
【0064】
使用されるメタンスルホニル化剤は、例えば、メタンスルホニルハライドであり得、好適には、メタンスルホニルクロライドである。
【0065】
メタンスルホニル化剤の使用量は、化合物(VI)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1.5当量〜3当量である。
【0066】
使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、トリエチルアミンである。
【0067】
塩基の使用量は、化合物(VI)に対して、通常、2当量〜10当量であり、好適には、2当量〜5当量である。
【0068】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、ハロゲン化炭素類であり、最も好適には、ジクロロメタンである。
【0069】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0070】
反応時間は、反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、15分間〜1昼夜であり、好適には、30分間〜2時間である。
【0071】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(VII)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0072】
C−4工程は、化合物(VII)を脱離反応に付し、一般式(VIII)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(VII)を塩基と反応させることによって達成される。
【0073】
使用される塩基は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムなどのようなアルカリ金属炭酸水素塩類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類;トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、アルカリ金属炭酸塩類であり、最も好適には、炭酸リチウムである。
【0074】
塩基の使用量は、化合物(VII)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1当量〜5当量である。
【0075】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;、ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、アミド類であり、更に好適には、N,N−ジメチルホルムアミドである。
【0076】
反応温度は、通常、−78℃〜200℃であり、好適には、室温〜180℃であり、更に好適には、70℃〜150℃である。
【0077】
反応時間は、反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、1分間〜から2時間であり、好適には、5分間〜1時間である。
【0078】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(VIII)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0079】
C−5工程は、化合物(VIII)の5位のシリルオキシ基を脱シリル化することにより、化合物(Id)を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(VIII)を酸又は弗化イオン源と反応させることによって達成される。
【0080】
使用される酸は、例えば、希塩酸及び希硫酸のような希酸類、蟻酸、酢酸及びトリフルオロ酢酸のような有機酸類、p−トルエンスルホン酸及びトリフルオロメタンスルホン酸のようなスルホン酸類又は酸性イオン交換樹脂であり得、好適には、スルホン酸類(特に、p−トルエンスルホン酸)である。
【0081】
酸の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常、1当量〜20当量であり、好適には、1当量〜5当量である。
【0082】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、メタノール及びエタノールのようなアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、ベンゼン及びトルエンのような炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、アルコール類、エーテル類、水又はこれらの溶媒の混合物であり、更に好適には、アルコール類(特に、メタノール)である。
【0083】
反応温度は、通常、−20℃〜70℃であり、好適には、0℃〜50℃である。
【0084】
反応時間は、反応温度、反応試薬、反応に用いられる溶媒の種類などによって異なるが、通常、15分間〜3昼夜であり、好適には、30分間〜1昼夜である。
【0085】
使用される弗化イオン源は、例えば、弗化水素ピリジン錯体又はテトラブチルアンモニウムフロライドであり得、好適には、弗化水素ピリジン錯体である。
【0086】
弗化イオン源の使用量は、化合物(VIII)に対して、通常、1当量〜大過剰であり、好適には、3当量〜大過剰である。
【0087】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;メタノール及びエタノールのようなアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、ニトリル類(特に、アセトニトリル)である。
【0088】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0089】
反応時間は、反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、15分間〜1昼夜であり、好適には、30分間〜3時間である。
【0090】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(Id)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0091】
D法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A5で表される構造単位である化合物(Ie)を製造する方法である。
【0092】
【化8】

【0093】
上記式中、オキシムの幾何異性、R及びR2は、前述したものと同意義を示す。
【0094】
D−1工程は、化合物(II)の5位の水酸基をシリル基で保護して、一般式(IX)を有する化合物を製造する工程であり、シリル化剤の使用量及び塩基の使用量を除いて、前記C法C−1工程と同様に行われる。
【0095】
シリル化剤の使用量は、化合物(II)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1当量〜3当量である。
【0096】
塩基の使用量は、化合物(II)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1当量〜3当量である。
【0097】
D−2工程は、化合物(IX)の3,4−位の二重結合を2,3−位の二重結合へと異性化させることにより、一般式(X)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(IX)を塩基と反応させることにより達成される。
【0098】
使用される塩基は、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩類;又は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類であり得、好適には、有機塩基類(特に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン)である。
【0099】
塩基の使用量は、化合物(IX)に対して、通常、触媒量〜10当量であり、好適には、1当量〜3当量であり、更に好適には、1当量〜2当量である。
【0100】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、ベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン及びオクタンのような脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、芳香族炭化水素類であり、最も好適には、トルエンである。
【0101】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0102】
反応時間は、反応温度、反応試薬及び/又は反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、5時間〜1週間であり、好適には、10時間〜2昼夜である。
【0103】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(X)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0104】
D−3工程は、化合物(X)の5位のシリルオキシ基を脱シリル化(脱保護)することにより、化合物(Ie)を製造する工程であり、前記C法C−5工程と同様に実施される。
【0105】
E法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A6で表される構造単位である化合物(If)を製造する方法である。
【0106】
【化9】

【0107】
上記式中、オキシムの幾何異性、R及びR2は、前述したものと同意義を示す。
【0108】
E−1工程は、化合物(X)の2,3−位の二重結合を3,4−位の二重結合へと異性化させると同時に、2位の立体を反転させることにより、一般式(XI)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(X)を塩基と反応させた後に、酸と反応させることによって達成される。
【0109】
使用される塩基は、例えば、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザン及びナトリウムヘキサメチルジシラザンのようなアルカリ金属アミド類;ブチルリチウム及びヘキシルリチウムのようなアルキルリチウム類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩類;又は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類であり得、好適には、アルカリ金属アミド類又はアルキルリチウム類であり、更に好適には、アルカリ金属アミド類であり、最も好適には、リチウムジイソプロピルアミドである。
【0110】
塩基の使用量は、化合物(X)に対して、1当量〜50当量であり、好適には、2当量〜20当量であり、更に好適には、3当量〜10当量である。
【0111】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、ベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン及びオクタンなどのような脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり、好適には、エーテル類であり、最も好適には、テトラヒドロフランである。
【0112】
塩基との反応温度は、通常、−100℃〜0℃であり、好適には、−78℃〜−40℃である。
【0113】
塩基との反応時間は、反応温度、反応試薬又は/及び反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、1分間〜1時間であり、好適には、5分間〜15分間である。
【0114】
塩基との反応後の反応に使用される酸は、例えば、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸のような有機酸類;硫酸、塩酸及び硝酸のような鉱酸類であり得、好適には、有機酸類であり、最も好適には、酢酸である。
【0115】
酸の使用量は、化合物(X)に対して、1当量〜50当量であり、好適には、2当量〜30当量であり、更に好適には、5当量〜20当量である。
【0116】
酸との反応温度は、通常、−100℃〜0℃であり、好適には、−78℃〜−40℃である。
【0117】
酸との反応時間は、反応温度、反応試薬又は/及び反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、5分間〜3時間であり、好適には、10分間〜1時間である。
【0118】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(XI)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0119】
E−2工程は、化合物(XI)の5位のシリルオキシ基を脱シリル化(脱保護)することにより、化合物(If)を製造する工程であり、前記C法C−5と同様に実施される。
【0120】
F法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A7で表される構造単位である化合物(Ig)を製造する方法である。
【0121】
【化10】

【0122】
上記式中、オキシムの幾何異性及びRは、前述したものと同意義を示す。
【0123】
F−1工程は、化合物(II)の5位の水酸基をメタンスルホニル化することにより、一般式(XII)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、塩基の存在下、化合物(II)をメタンスルホニル化剤と反応させることによって達成される。
【0124】
使用されるメタンスルホニル化剤は、例えば、メタンスルホニルハライドであり、好適には、メタンスルホニルクロライドである。
【0125】
メタンスルホニル化剤の使用量は、化合物(II)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1.5当量〜3当量である。
【0126】
使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、トリエチルアミンである。
【0127】
塩基の使用量は、化合物(II)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1.5当量〜3当量である。
【0128】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、ハロゲン化炭素類であり、最も好適には、ジクロロメタンである。
【0129】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0130】
反応時間は、反応温度、反応試薬又は/及び反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、15分間〜1昼夜であり、好適には、30分間〜2時間である。
【0131】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(XII)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0132】
F−2工程は、化合物(XII)の5位のメタンスルホニルオキシ基を蟻酸で置換することにより、一般式(XIII)を有する化合物を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、塩基の存在下、化合物(XII)を蟻酸と反応させることによって達成される。
【0133】
蟻酸の使用量は、化合物(XII)に対して、通常、1当量〜大過剰であり、好適には、3当量〜20当量である。
【0134】
使用される塩基は、例えば、トリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、トリエチルアミンである。
【0135】
塩基の使用量は、化合物(XII)に対して、通常、1当量〜大過剰であり、好適には、3当量〜20当量である。
【0136】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、ハロゲン化炭素類であり、最も好適には、ジクロロメタンである。
【0137】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0138】
反応時間は、反応温度、反応試薬又は/及び反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、6時間〜1週間であり、好適には、1昼夜〜5昼夜である。
【0139】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(XIII)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0140】
F−3工程は、化合物(XIII)の5位のホルミルオキシ基を脱ホルミル化することにより、化合物(Ig)を製造する工程であり、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(XIII)を塩基と反応させることにより達成される。
【0141】
使用される塩基は、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのようなアルカリ金属炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウムのようなアルカリ金属炭酸水素塩類;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物類;又はトリエチルアミン、2,6−ルチジン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン及びイミダゾールのような有機塩基であり得、好適には、アルカリ金属炭酸水素塩類であり、最も好適には、炭酸水素ナトリウムである。
【0142】
塩基の使用量は、化合物(XIII)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1当量〜5当量である。
【0143】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えば、メタノール及びエタノールのようなアルコール類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;四塩化炭素、クロロホルム及びジクロロメタンのようなハロゲン化炭素類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;アセトニトリルのようなニトリル類;水;又はこれらの溶媒の混合物であり得、好適には、アルコール類と水の混合溶媒であり、最も好適には、メタノールと水の混合溶媒である。
【0144】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、0℃〜室温である。
【0145】
反応時間は、反応温度、反応試薬又は/及び反応に用いられる溶媒の種類によって異なるが、通常、10分間〜1昼夜であり、好適には、30分間〜2時間である。
【0146】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(Ig)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0147】
G法は、本発明の化合物(I)において、Aが式A8〜A10で表される構造単位である化合物(Ih)〜(Ij)を製造する方法である。
【0148】
【化11】

【0149】
上記式中、オキシムの幾何異性及びRは、前述したものと同意義を示す。
【0150】
G−1工程は、溶媒の存在下又は非存在下(好適には、溶媒の存在下)、化合物(II)を酸化剤と反応させることにより、化合物(Ih)〜(Ij)を製造する工程である。
【0151】
使用される酸化剤は、例えば、メタクロロ過安息香酸、過酢酸、過蟻酸及び過安息香酸のような過酸類;過酸化水素及びt−ブチルハイドロペルオキシドのような過酸化物類;又は過硫酸及びオキソンのような過スルホン酸類であり得、好適には、過酸類であり、最も好適には、メタクロロ過安息香酸である。
【0152】
酸化剤の使用量は、化合物(II)に対して、通常、1当量〜10当量であり、好適には、1当量〜3当量であり、更に好適には、1当量〜2当量である。
【0153】
反応温度は、通常、−78℃〜100℃であり、好適には、−20℃〜50℃であり、更に好適には、0℃〜室温である。
【0154】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解する物であれば特に限定は無いが、例えば、ベンゼン及びトルエンのような芳香族炭化水素類;ヘキサン及びペンタンのような脂肪族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム及びジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル及び酢酸ブチルのようなエステル類;N,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及び1,4−ジオキサンのようなエーテル類;アセトニトリル及びプロピオニトリルのような二トリル類;アセトン及びメチルイソブチルケトンのようなケトン類;又はこれらの混合溶媒であり得、好適には、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類又はこれらの混合溶媒であり、更に好適には、ハロゲン化炭化水素類(特に、ジクロロメタン)である。
【0155】
反応時間は、反応温度、原料化合物又は/及び反応溶媒の種類の要因で変わり得るが、通常、15分間〜3昼夜であり、好適には、2時間〜1昼夜である。
【0156】
本工程の反応終了後、目的物である化合物(Ih)〜(Ij)は、周知の方法に従って、反応混合物から採取することができる。例えば、反応混合物を適宜中和し、又、不溶物が存在する場合には濾過により除去した後、酢酸エチルのような水不混和性有機溶媒を加え、水洗した後、目的化合物を含む有機層を分離し、無水硫酸マグネシウムのような乾燥剤で乾燥した後、溶剤を留去することによって得られる。更に、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィーのような公知の手段で、更に精製することができる。
【0157】
本発明の化合物(I)は、果樹、野菜及び花卉に寄生するナミハダニ類(Tetranychus)、リンゴハダニ、ミカンハダニ(Panonychus)及びサビダニの成虫、及び卵、並びに寄生するマダニ科(Ixodidae)、ワクモ科(Dermanysside)及びヒゼンダニ科(Sarcoptidaeに対して優れた殺ダニ活性を有している。更に、ヒツジバエ(Oestrus)、キンバエ(Lucilia)、ウシバエ(Hypoderma)、ウマバエ(Gautrophilus)、のみ及びしらみのようなの、動物や鳥類の外部寄生虫;ゴキブリ及びイエバエのような衛生害虫;及び/又はアブラムシ、コナガ及び鱗翅目害虫のような各種農園芸害虫に活性がある。
【0158】
本発明の化合物(I)は、更に又、ネコブセンチュウ(Meloidogyne)、マツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus)及びネダニ(Phizoglyphus)に対しても活性がある。
【0159】
本発明の化合物(I)は、更に又、動物及び人間の内部寄生虫に対しても優れた活性を有している。特に、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ及び鶏のような、家畜及びペットに感染するセンチュウのほか、フィラリア科(Filariidae)及びナタリア科(Setariidae)の寄生虫、及び人間の消化管、血液又は他の組織及び臓器に見出される寄生虫に対しても有効である。
【0160】
本発明の化合物(I)を農園芸(農薬)用に使用する場合には、本発明の化合物(I)を、担体及び必要に応じて他の補助剤と混合して、農薬として通常用いられる製剤形態、例えば、粉剤、水和剤、乳剤、水もしくは油性懸濁液、エアゾールのような組成物に調製されて使用される。
【0161】
種々の剤形に調製された本発明の組成物を、例えば、果樹園又は畑地において、有害昆虫及びハダニ類が寄生した農作物又は家畜に散布するときは、有効成分濃度として、0.5〜100ppmを、農作物の茎葉、土壌又は家畜に処理することにより有効に防除することができる。
【0162】
本発明の化合物(I)を、動物及びヒトにおける駆虫剤として使用する場合には、液体飲料として経口的に投与することができる。飲料は、普通、ベントナイトのような懸濁剤及び湿潤剤、又はその賦形剤と共に、適当な非毒性の溶剤又は水での溶液、懸濁液又は分散剤である。一般に飲料は、消泡剤を含有する。飲料処方は、一般に活性化合物を0.01〜0.5重量%、好適には、0.01〜0.1重量%を含有する。
【0163】
本発明の化合物(I)を動物飼料により投与する場合には、それを飼料に均質に分散させるか、トップドレッシングとして使用されるか、又は、ペレットの形態として使用される。普通望ましい抗寄生虫効果を達成するためには、最終飼料中に活性化合物を0.0001〜0.02重量%含有する。
【0164】
又、本発明の化合物(I)を液体担体賦形剤に溶解又は分散させたものは、胃内、筋肉内、気管内、又は皮下に注射することによって、非経口的に動物に投与することができる。非経口投与のためには、活性化合物を、好適には、落花生油又は綿実油のような適当な植物油と混合する。このような処方は、一般に活性化合物を0.05〜50重量%含有する。
【0165】
更に又、本発明の化合物(I)は、ジメチルスルホキシド又は炭化水素溶剤のような適当な担体と混合することによって、局所的に投与し得る。この製剤は、スプレー又は直接的注加によって、動物の外部表面に直接適用される。最善の結果を得るための活性化合物の最適使用量は、治癒される動物の種類、及び寄生虫感染の型及び程度によって異なるが、一般に、動物体重1kg当たり約0.01〜100mgであり、好適には、0.5〜50mgである(経口投与の場合)。このような使用量は、一度に又は分割して、1〜5日のような比較的短期間に渡って与えられる。
【0166】
以下、実施例及び試験例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0167】
実施例1
26−ヒドロキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号2の化合物)
二酸化セレン77.2mg(0.70mmol)をジクロロメタン50mlに投入し、室温で攪拌した。これにt−ブチルハイドロペルオキシド(濃度80%、0.78ml、6.95mmol)を加え、次いで、13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA1.00g(1.39mmol)を添加し、一昼夜室温で攪拌した。これに、チオ硫酸ナトリウム水溶液とセライトを加え、攪拌し、その後ろ過した。得られた有機層を2回水洗した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)に付し、標記化合物0.51gを得た(収率50%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.54 (2H,m),7.38 (3H,m),5.87 (2H,m),5.72 (1H,br),5.30-5.61 (3H,m),5.21 (1H,d,J=10.6Hz),4.71 (2H,br),4.58 (1H,m),4.29 (2H,br),4.21 (1H,s),3.99 (3H,s),3.97 (1H,d,J=4.0Hz),3.62 (1H,m),3.33 (1H,t,J=1.8Hz),3.07 (1H,m),2.75 (1H,br),2.61 (1H,m),2.28-2.49 (3H,m),2.03 (1H,m),1.56 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.2Hz),1.00 (3H,t,J=7.1Hz),0.83 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 735 (M+),717,556,538,510,412,195,167。
【0168】
実施例2
26−(3,3−ジメチルアクリルオキシ)−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号8の化合物)
26−ヒドロキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA100mg(0.14mmol)、3,3−ジメチルアクリル酸20.5mg(0.20mmol)及びトリフェニルホスフィン53.5mg(0.20mmol)をトルエン2mlに溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これにジエチルアゾジカルボキシレート(40%トルエン溶液)89μl(0.20mmol)を加え、室温で45分攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和重曹水、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/2)に付し、標記化合物100.2mgを得た(収率90%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.50 (2H,m),7.38 (3H,m),5.83 (2H,m),5.73 (2H,m),5.36-5.57 (3H,m),5.20 (1H,d,J=10.3Hz),4.82 (1H,d,J=13.6Hz),4.70 (2H,br),4.68 (1H,d,J=13.6Hz),4.49 (1H,m),4.14 (1H,s),4.01 (1H,d,J=4.4Hz),3.99 (3H,s),3.62 (1H,m),3.33 (1H,br),3.06 (1H,m),2.77 (1H,d,J=7.3Hz),2.62 (1H,m),2.21-2.49 (2H,m),2.18 (3H,s),1.90 (3H,s),1.56 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.6Hz),1.00 (3H,t,J=7.1Hz),0.83 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 817 (M+),717,699,538,520,195,167。
【0169】
実施例3
26−(ピロール−2−カルボニルオキシ)−13β―[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号14の化合物)
26−ヒドロキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA100mg(0.14mmol)、ピロール−2−カルボン酸22.7mg(0.20mmol)及びトリフェニルホスフィン53.5mg(0.20mmol)をトルエン2mlに溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これにジエチルアゾジカルボキシレート(40%トルエン溶液)89μl(0.20mmol)を加え、室温で35分間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和重曹水、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/2)に付し、標記化合物99.4mgを得た(収率88%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 9.72 (1H,br),7.51 (2H,m),7.38 (3H,m),6.97 (2H,m),6.25 (1H,m),5.84 (3H,m),5.25-5.55 (3H,m),5.20 (1H,d,J=10.6Hz),4.98 (1H,d,J=13.5Hz),4.85 (1H,d,J=13.5Hz),4.71 (2H,br),4.55 (1H,m),4.17 (1H,s),4.01 (1H,d,J=5.9Hz),3.99 (3H,s),3.63 (1H,m),3.34 (1H,br),3.07 (1H,m),2.62 (1H,m),2.15-2.50 (3H,m),1.56 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.2Hz),0.99 (3H,t,J=7.3Hz),0.83 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 828 (M+),717,699,649,195,167。
【0170】
実施例4
Δ2,3,Δ4,26−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号20の化合物)
(1)5−O,26−O−ジ(t−ブチルジメチルシリル)−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(C−1工程)
26−ヒドロキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA119mg(0.16mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(2ml)に溶解し、窒素気流下室温で攪拌した。これにt−ブチルジメチルシリルクロライド73.2mg(0.49mmol)及びイミダゾール33.1mg(0.49mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)に付し、標記化合物145.9mgを得た(収率94%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.38 (3H,m),5.75-5.93 (2H,m),5.62 (1H,br),5.27-5.61 (3H,m),5.20 (1H,d,J=10.6Hz),4.52-4.75 (3H,m),4.21 (2H,m),4.17 (1H,s),3.99 (3H,s),3.82 (1H,d,J=5.5Hz),3.62 (1H,m),3.38 (1H,m),3.06 (1H,m),2.62 (1H,m),2.40 (2H,m),2.08 (1H,m),1.57 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.6Hz),1.00 (3H,t,J=7.3Hz),0.91 (9H,s),0.90 (9H,s),0.82 (3H,d,J=6.2Hz),0.12 (3H,s),0.10 (3H,s),0.06 (3H,s),0.05 (3H,s).
EI-MS (m/z): 963 (M+),906,831,195,167。
【0171】
(2)5−O−t−ブチルジメチルシリル−26−ヒドロキシ−13β―[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(C−2工程)
5−O,26−O−ジ−t−ブチルジメチルシリル−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA145mg(0.15mmol)をテトラヒドロフラン(1.5ml)に溶解し、室温で攪拌した。これに水(3.5ml)及び酢酸(6.5ml)を添加し、室温で2時間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水、飽和重曹水、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、標記化合物82.6mgを得た(収率65%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.38 (3H,m),5.83 (2H,m),5.67 (1H,br),5.51 (1H,m),5.25-5.46 (2H,m),5.21 (1H,d,J=10.3Hz),4.55-4.75 (3H,m),4.12-4.33 (3H,m),3.99 (3H,s),3.83 (1H,d,J=5.5Hz),3.62 (1H,m),3.40 (1H,br),3.08 (1H,m),2.62 (1H,m),2.20-2.50 (2H,m),2.08 (1H,m),1.57 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.6Hz),1.00 (3H,t,J=7.3Hz),0.93 (9H,s),0.82 (3H,d,J=6.6Hz),0.15 (6H,s).
EI-MS (m/z): 849 (M+),831,792,652,595,195,167。
【0172】
(3)5−O−t−ブチルジメチルシリル−26−メタンスルホニルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(C−3工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−26−ヒドロキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA200mg(0.24mmol)をジクロロメタン8mlに溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これにメタンスルホニルクロライド46μl(0.59mmol)及びトリエチルアミン66μl(0.47mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、標記化合物188mgを得た(収率86%)。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.38 (3H,m),5.82 (3H,m),5.52 (1H,m),5.30-5.48 (2H,m),5.20 (1H,d,J=10.5Hz),4.86 (1H,m),4.74 (1H,d,J=11.3Hz),3.63 (3H,m,H-5),4.18 (1H,s),3.99 (3H,s),3.86 (1H,d,J=5.5Hz),3.62 (1H,m),3.40 (1H,m),3.08 (1H,m),3.02 (3H,s),2.62 (1H,m),2.23-2.47 (2H,m),2.05 (1H,m),1.57 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.4Hz),0.99 (3H,t,J=7.3Hz),0.93 (9H,s),0.83 (3H,d,J=6.4Hz),0.16 (3H,s),0.15 (3H,s).
EI-MS (m/z): 870 (M+-57),831,800,195。
【0173】
(4)5−O−t−ブチルジメチルシリル−Δ2,3,Δ4,26−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(C−4工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−26−メタンスルホニルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA180mg(0.19mmol)をジメチルホルムアミド4mlに溶解し、室温で攪拌した。これに炭酸リチウム43mg(0.58mmol)を加え、120℃で20分間加熱した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)に付し、標記化合物12mgを得た(収率7%)。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 7.50 (2H,m),7.38 (3H,m),6.68 (1H,br),6.16 (1H,d,J=11.9Hz),5.79 (1H,m),5.70 (1H,m),5.32-5.58 (4H,m),5.20 (1H,d,J=10.7Hz),4.76 (1H,s),4.61 (1H,m),4.58 (1H,m),4.45 (1H,m),4.02 (1H,m),3.98 (3H,s),3.68 (1H,m),3.08 (1H,m),2.60 (1H,m),2.21-2.56 (2H,m),1.95 (1H,m),1.51 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.4Hz),1.01 (3H,t,J=7.3Hz),0.96 (9H,s),0.83 (3H,d,J=6.4Hz),0.16 (3H,s),0.15 (3H,s).
EI-MS (m/z): 831 (M+),813,774,756,652,195,167。
【0174】
(5)Δ2,3,Δ4,26−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号20の化合物、C−5工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−Δ2,3,Δ4,26−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA12mg(0.014mmol)をアセトニトリル1mlに溶解し、氷冷下、攪拌した。これに弗化水素ピリジン錯体(濃度約70%)を0.4ml添加し、1時間30分間攪拌した。反応液を注意深く飽和重曹水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、標記化合物6.3mgを得た(収率61%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.37 (3H,m),6.68 (1H,s),6.19 (1H,m),5.80 (2H,m),5.32-5.58 (4H,m),5.20 (1H,d,J=10.5Hz),4.76 (1H,s),4.40-4.62 (3H,m),4.14 (1H,d,J=2.6Hz),3.98 (3H,s),3.68 (1H,m),3.08 (1H,m),2.60 (1H,m),2.42 (1H,m),2.30 (1H,m),2.15 (1H,br),1.99 (1H,m),1.50 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.4Hz),1.01 (3H,t,J=7.2Hz),0.84 (3H,d,J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 717 (M+),699,668,538,520,195,167。
【0175】
実施例5
Δ2,3−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(化合物番号26の化合物)
(1)5−O−t−ブチルジメチルシリル−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(D−1工程)
13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA(10.0g,13.9mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド(100ml)に溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これにt−ブチルジメチルシリルクロライド(6.29g,41.7mmol)及びイミダゾール(2.84g,41.7mmol)を加え、室温で1時間30分間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を水で2回及び飽和食塩水で1回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)に付し、標記化合物11.31gを得た(収率97.6%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.39 (3H,m),5.72-5.95 (2H,m),5,55 (1H,m),5.25-5.45 (3H,m),5.20 (1H,d,J=10.6Hz),4.64 (2H,m),4.42 (1H,m),4.12 (1H,s),3.99 (3H,s),3.82 (1H,d,J=5.5Hz),3.62 (1H,m),3.37 (1H,m),3.07 (1H,m),2.62 (1H,m),2.25-2.48 (2H,m),2.05 (1H,m),1.80 (3H,br),1.56 (3H,br),1.08 (3H,d,J=6.6Hz),1.00 (3H,t,J=7.3Hz),0.93 (9H,s),0.82 (3H,d,J=6.2Hz),0.13 (6H,s).
EI-MS (m/z): 833 (M+),815,776,758。
【0176】
(2)5−O−t−ブチルジメチルシリル−Δ2,3−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(D−2工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA1.00g(1.20mmol)をトルエン20mlに溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これに1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン0.18ml(1.20mol)を滴下し、室温で2昼夜攪拌した。反応液を1規定塩酸にあけ、トルエンで抽出した。得られた有機層を水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)に付し、標記化合物0.98gを得た(収率98%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.38 (3H,m),6.19 (2H,m),5.81 (1H,dd,J=14.7Hz,11.0Hz),5.35-5.60 (3H,m),5.20 (1H,m,J=10.3Hz),4.85 (1H,s),4.53 (2H,m),3.98 (3H,s),3.95 (1H,d,J=2.2Hz),3.70 (2H,m),3.08 (1H,m),1.51 (3H,br),1.14 (3H,d,J=7.3Hz),1.08 (3H,d,J=6.6Hz),0.93 (9H,s),0.88 (3H,t,J=6.6Hz),0.83 (3H,d,J=5.9Hz),0.13 (6H,s).
EI-MS (m/z): 833 (M+),815,776,636,579,504,195,167。
【0177】
(3)Δ2,3−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号26の化合物、D−3工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−Δ2,3−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA100mg(0.12mmol)をメタノール2mlに溶解し、室温で攪拌した。これにp−トルエンスルホン酸一水和物68.5mg(0.36mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=2/1)に付し、標記化合物66.4mgを得た(収率77%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.50 (2H,m),7.38 (3H,m),6.10-6.23 (2H,m),5.81 (1H,dd,J=14.5Hz,11.4Hz),5.35-5.60 (3H,m),5.20 (1H,d,J=10.6Hz),4.88 (1H,s),4.55 (2H,m),4.04 (1H,d,J=2.6Hz),3.98 (3H,s),3.50-3.75 (2H,m),3.05 (1H,m),1.50 (3H,br),1.22 (3H,d,J=7.3Hz),1.09 (3H,d,J=6.2Hz),1.01 (3H,t,J=7.3Hz),0.84 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 719 (M+),701,683,540,522,195,167。
【0178】
実施例6
2−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号32の化合物)
(1)5−O−t−ブチルジメチルシリル−2−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(E−1工程)
2規定溶液のリチウムジイソプロピルアミド1.2ml(2.40mol)をテトラヒドロフラン5mlに溶解し、窒素気流下、−78℃で攪拌した。これに5−O−t−ブチルジメチルシリル−Δ2,3−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA200mg(0.24mmol)をテトラヒドロフラン2mlに溶解した溶液を滴下した。−78℃で10分間攪拌した後、酢酸0.21ml(3.60mmol)をテトラヒドロフラン1mlに溶解した溶液を滴下し、更に−78℃で20分間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)に付し、標記化合物93.5mgを得た(収率47%)。
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.40 (3H,m),5.72-5.98 (2H,m),5.67 (1H,br),5.32-5.66 (3H,m),5.18 (1H,d,J=10.9Hz),4.60 (1H,d,J=13.9Hz),4.34 (1H,br),4.21 (1H,s),4.07-4.18 (2H,m),3.98 (3H,s),3.65 (1H,m),3.16 (1H,m),3.07 (1H,m),2.60 (1H,m),2.18-2.52 (2H,m),1.85 (3H,br),1.52 (3H,br),1.07 (3H,d,J=6.6Hz),1.01 (3H,t,J=7.3Hz),0.94 (9H,s),0.83 (3H,d,J=6.6Hz),0.14 (6H,s).
EI-MS (m/z): 833 (M+),815,195,167。
【0179】
(2)2−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号32の化合物、E−2工程)
5−O−t−ブチルジメチルシリル−2−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA90mg(0.11mmol)をメタノール4mlに溶解し、室温で攪拌した。これにp−トルエンスルホン酸一水和物61.7mg(0.32mmol)を添加し、室温で2時間30分間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、標記化合物62.0mgを得た(収率80%)。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.38 (3H,m),5.92 (1H,d,J=11.2Hz),5.79 (1H,dd,J=14.5Hz,11.2Hz),5.71 (1H,m),5.38-5.62 (3H,m),5.18 (1H,d,J=10.6Hz),4.62 (1H,d,J=13.5Hz),4.53 (1H,s),4.33 (1H,d,J=3.0Hz),4.23 (1H,m),4.13 (1H,d,J=13.5Hz),3.98 (3H,s),3.68 (1H,m),3.20 (1H,m),3.05 (1H,m),2.60 (1H,m),1.88 (3H,br),1.52 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.6Hz),1.01 (3H,t,J=7.3Hz),0.83 (3H,d,J=6.3Hz).
EI-MS (m/z): 719 (M+),683,591,540,522,504,412,195,167,151。
【0180】
実施例7
5−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号38の化合物)
(1)5−メタンスルホニルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(F−1工程)
13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA1.00g(1.39mmol)をジクロロメタン(20ml)に溶解し、窒素気流下、氷冷しながら攪拌した。これにメタンスルホニルクロライド0.27ml(3.48mmol)及びトリエチルアミン0.48ml(3.48ml)を添加し、その後、室温で1時間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)に付し、標記化合物1.00gを得た(収率90%)。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 7.52 (2H,m),7.38 (3H,m),5.85 (2H,m),5.62 (1H,br),5.52 (1H,m),5.41 (2H,m),5.33 (1H,m),5.20 (1H,d,J=10.5Hz),4.70 (2H,m),4.15 (1H,s),4.12 (1H,d,J=7.0Hz),3.99 (3H,s),3.63 (1H,m),3.36 (1H,m),3.11 (3H,s),3.08 (1H,m),2.62 (1H,m),2.23-2.50 (2H,m),2.03 (1H,m),1.88 (3H,br),1.56 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.4Hz),0.99 (3H,t,J=7.3Hz),0.83 (3H,d,J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 504 (M+-293),279,195,167。
【0181】
(2)5−エピ−5−ホルミルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(F−2工程)
トリエチルアミン1.54ml(11.06mmol)をジクロロメタン(10ml)に溶解し、窒素気流下、氷冷しながら攪拌した。これにギ酸0.42ml(11.06mmol)を滴下し、次いで、5−メタンスルホニルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA897mg(1.11mmol)をジクロロメタン10mlに溶解した溶液を滴下した。その後、室温で4昼夜攪拌した。反応液を水にあけ、ジクロロメタンで2回抽出した。得られた有機層を水洗し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル、グラジエント)に付し、標記化合物0.33gを得た(収率40%)。あわせて原料化合物を0.41g回収した。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 8.18 (1H,s),7.52 (2H,m),7.39 (3H,m),5.88 (2H,m),5.61 (1H,br),5.35-5.58 (4H,m),5.18 (1H,d,J=10.5Hz),4.61 (2H,br),3.99 (4H,s),3.75 (1H,s),3.63 (1H,m),3.09 (2H,m),2.63 (1H,m),2.23-2.50 (2H,m),2.05 (1H,m),1.79 (3H,br),1.55 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.4Hz),1.00 (3H,t,J=7.1Hz),0.83 (3H,d,J=6.4Hz).
EI-MS (m/z): 747 (M+),568,522,279,195,167。
【0182】
(3)5−エピ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号38の化合物、F−3工程)
5−エピ−5−ホルミルオキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA377mg(0.50mmol)をメタノール15mlに溶解し、室温で攪拌した。これに水1.5ml及び炭酸水素ナトリウム105.8mg(1.26mmol)を順次添加し、室温で1時間30分間攪拌した。反応液を水にあけ、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、水及び飽和食塩水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取薄層クロマトグラフィー(溶離剤:ヘキサン/酢酸エチル=1/1)に付し、標記化合物235.7mgを得た(収率65%)。
1H-NMR (270MHz,CDCl3) δ: 7.53 (2H,m),7.38 (3H,m),5.84 (2H,m),5.31-5.57 (4H,m),5.20 (1H,d,J=10.5Hz),4.60 (2H,br),4.13 (1H,s),4.01 (1H,m),3.99 (3H,s),3.84 (1H,d,J=1.4Hz),3.63 (1H,m),3.08 (2H,m),2.61 (1H,m),2.21-2.48 (3H,m),2.02 (1H,m),1.91 (3H,br),1.55 (3H,br),1.10 (3H,d,J=6.7Hz),1.00 (3H,t,J=7.3Hz),0.83 (3H,d,J=6.7Hz).
EI-MS (m/z): 719 (M+),591,412,279,195,167。
【0183】
実施例8
3,4β−エポキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号44の化合物)、3,4β−8,9α−ジエポキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号50の化合物)及び8,9α−エポキシ−13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA4(例示化合物番号56の化合物、G−1工程)
13β−[(2Z)−メトキシイミノ−2−フェニルアセトキシ]−ミルベマイシンA500mg、0.70mmol)をジクロロメタン(40ml)に溶解し、窒素気流下、室温で攪拌した。これにメタクロロ過安息香酸(純度80%)150mg(0.70mmol)を添加し、室温で終夜攪拌した。反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、ジクロロメタンで抽出した。得られた有機層を、重曹水及び水の順に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧濃縮した。得られた残渣を分取高速液体クロマトグラフィー(カラム:ODS−Pack S−365−10,φ30×500mm,溶離液:アセトニトリル/水=3/1)付し、3,4β−エポキシ体(例示化合物番号44の化合物)86.4mg(収率17%)、3,4β−8,9α−ジエポキシ体(例示化合物番号50の化合物)110.5mg(収率21%)及び8,9α−エポキシ体(例示化合物番号56の化合物)75.9mg(収率15%)をそれぞれ得た。
【0184】
3,4β−エポキシ体(例示化合物番号44の化合物)
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.35 (3H,m),5.80 (2H,m),5.32-5.58 (3H,m),5.19 (1H,d,J=10.6Hz),4.61 (2H,m),4.31 (1H,s),4.22 (1H,m),3.99 (3H,s),3.91 (1H,d,J=6.6Hz),3.62 (1H,m),3.30 (1H,d,J=2.2Hz),3.08 (1H,dt,Jt=9.1Hz,Jd=2.2Hz),2.82 (1H,d,J=2.2Hz),2.62 (1H,m),2.25-2.50 (3H,m),2.00 (1H,m),1.55 (3H,s),1.51 (3H,br),1.09 (3H,d,J=6.6Hz),1.01 (3H,t,J=7.3Hz),0.82 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 735 (M+),677,556,538,195,167。
【0185】
3,4β−8,9α−ジエポキシ体(例示化合物番号50の化合物)
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.38 (3H,m),5.87 (1H,dd,J=15.4Hz,9.5Hz),5.65 (1H,dd,J=11.4Hz,4.0Hz),5.30 (1H,m),5.25 (1H,d,J=10.6Hz),5.05 (1H,dd,J=15.4Hz,9.5Hz),4.32 (1H,d,J=11.4Hz),4.12 (1H,m),4.02 (1H,d,J=6.2Hz),3.99 (3H,s),3.86 (1H,d,J=11.4Hz),3.68 (1H,m),3.61 (1H,s),3.55 (1H,d,J=9.5Hz),3.33 (1H,s),3.08 (1H,m),2.97 (1H,s),2.70 (1H,m),2.27-2.55 (3H,m),2.18 (1H,m),1.57 (3H,s),1.51 (3H,br),1.12 (3H,d,J=6.6Hz),0.99 (3H,t,J=7.7Hz),0.84 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 751 (M+),720,572,554,536,195,167。
【0186】
8,9α−エポキシ体(例示化合物番号56の化合物)
1H-NMR (200MHz,CDCl3) δ: 7.51 (2H,m),7.38 (3H,m),5.65 (1H,dd,J=11.2Hz,3.8Hz),5.35 (2H,m),5.25 (1H,d,J=10.9Hz),5.03 (1H,dd,J=15.0Hz,9.5Hz),4.38 (1H,d,J=11.4Hz),4.30 (1H,br),4.15 (1H,d,J=5.1Hz),3.99 (3H,s),3.95 (1H,s),3.94 (1H,d,J=11.4Hz),3.68 (1H,m),3.58 (1H,d,J=9.5Hz),3.30 (1H,dd,J=4.8Hz,2.6Hz),3.08 (1H,dt,Jt=9.2Hz,Jd=2.6Hz),2.73 (1H,m),2.05-2.55 (4H,m),1.86 (3H,br),1.56 (3H,br),1.12 (3H,d,J=6.6Hz),0.99 (3H,t,J=7.0Hz),0.84 (3H,d,J=6.2Hz).
EI-MS (m/z): 735 (M+),556,538,195,167。
【0187】
試験例1
抵抗性ハダニに対する殺ダニ効力
ササゲ(Vigna sinensis Savi)の初生葉にナミハダニ(Tetranychus urticae)を接種した。接種1日後、接種葉に10ppm及び1ppmの濃度の試験化合物を含む溶液[10ppm溶液:展着剤(ニッコール710F)0.004%、展着剤(グラミンS)0.01%、分散剤(ポリビニルアルコール)0.06%、アセトン0.2%を含む水溶液100mlに試験化合物1mgを含む。1ppm溶液:上記10ppm溶液を水で10倍希釈した溶液]7mlをミズホ回転散布塔にて、散布液量が3.5mg/cm葉面積になるように散布した。3日後に双眼顕微鏡によって成虫の生死(反応率:苦悶虫含む)を調べた。各化合物について二連制で試験を行い、試験中、薬液処理葉は25℃の恒温室内に保存した。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】

【0189】
表2の結果から、表2における本発明の化合物は、微量で抵抗性ハダニに対して高い殺ダニ効力を示す。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体(I)は、優れた、殺虫、殺ダニ及び/又は駆虫活性を有し、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤として、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】


(式中、オキシム基の幾何異性は、E又はZを示し、
Rは、C1〜C6アルキル基を示し、
Aは、その結合する2位の炭素原子及び10位の炭素原子を含む構造とし、下記式A1〜A10
【化2】


で表されるいずれかの構造単位を示す)
で表される、13位にオキシム基を有するミルベマイシン誘導体。
【請求項2】
Rが、メチル、エチル、イソプロピル又はs−ブチル基である、請求項1記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項3】
Rが、メチル又はエチル基である、請求項1記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項4】
Rが、エチル基である、請求項1記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項5】
オキシム基の幾何異性がZである、請求項1〜4記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項6】
Aが、式A1、A2、A3、A8又はA10で表されるいずれかの構造単位である、請求項1〜5記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項7】
Aが、式A1、A2又はA3で表されるいずれかの構造単位である、請求項1〜5記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項8】
Aが、式A2で表される構造単位である、請求項1〜5記載のミルベマイシン誘導体。
【請求項9】
請求項1〜8記載のミルベマイシン誘導体を有効成分として含有する、殺虫、殺ダニもしくは駆虫剤。

【公開番号】特開2007−254406(P2007−254406A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82146(P2006−82146)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(303020956)三共アグロ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】