説明

2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール及びその使用

本発明は、2α−メチル−19−ノルービタミンD類似体、具体的には、2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール、及びその医薬的使用を開示する。本化合物は、未分化の細胞の増殖を阻止し、単球への分化を誘導する場合に顕著な活性を示すので、抗癌剤として及び乾癬等の皮膚疾患、さらに、しわ、たるんだ皮膚、乾燥皮膚及び不十分な皮脂分泌等の皮膚状態の治療のための使用が示される。本化合物はさらに、カルシウム血症活性があったとしても極めて低いため、ヒトの自己免疫障害又は炎症性疾患、さらに、腎性骨ジストロフィの治療に用いることができる。本化合物は、さらに、肥満症の治療又は予防に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンD化合物、より具体的には、2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール及びその医薬的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ホルモンである1α,25−ジヒドロキシビタミンD及びそのエルゴステロール系列の類似体、すなわち、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、動物及びヒトのカルシウムホメオスタシスの極めて強力な調節因子であることが知られているが、細胞分化におけるその活性も、Ostrem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 2610 (1987)で確認された。1α−ヒドロキシビタミンD、1α−ヒドロキシビタミンD、種々の側鎖同族ビタミン及びフッ素化類似体を含む、これら代謝産物の多数の構造類似体が、製造され、試験されている。本化合物のうちいくつかは、細胞分化及びカルシウム調節において活性の興味深い分離を示す。この活性の相違は、腎性骨ジストロフィ、ビタミンD抵抗性くる病、骨粗鬆症、乾癬及びある種の悪性疾患等の様々な疾患の治療に有用でありうる。
【0003】
別のクラスのビタミンD類似体、すなわち、いわゆる19−ノル−ビタミンD化合物は、ビタミンD系に典型的なA環環外メチレン基(炭素19)が2個の水素原子で置換されていることを特徴とする。このような19−ノル類似体(例えば、1α,25−ジヒドロキシ−19−ノル−ビタミンD)の生物学的試験は、細胞分化を誘導する場合に高力価となる選択的活性プロフィールとカルシウム動員活性が極めて低いことを示した。従って、本化合物は、悪性疾患の治療又は様々な皮膚障害の治療のための治療薬として潜在的に有用である。このような19−ノル−ビタミンD類似体について二つの異なる合成方法が報告された(Perlman et al., Tetrahedron Lett. 31, 1823 (1990); Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991) 及び DeLucaら、米国特許第5,086,191号)。
【0004】
米国特許第4,666,634号には、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの2β−ヒドロキシ及びアルコキシ(例えば、ED−71)類似体が記載されており、中外グループにより、骨粗鬆症薬の薬物及び抗腫瘍薬としての可能性が検討された。Okano et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 163, 1444 (1989)も参照されたい。1α,25−ジヒドロキシビタミンDの他の2−置換(ヒドロキシアルキル、例えば、ED−120及びフルオロアルキル基)A環類似体も、製造され、試験された(Miyamoto et al., Chem. Pharm. Bull. 41, 1111 (1993); Nishii et al., Osteoporosis Int. Suppl. 1, 190 (1993); Posner et al., J. Org. Chem. 59, 7855 (1994), and J. Org. Chem. 60, 4617 (1995))。
【0005】
1α,25−ジヒドロキシ−19−ノルビタミンDの2−置換類似体、すなわち、2位にヒドロキシ基又はアルコキシ基で(DeLucaら、米国特許第5,536,713号)、2−アルキル基で(DeLucaら、米国特許第5,945,410号)及び2−アルキリデン基で(DeLucaら、米国特許第5,843,928号)置換された化合物も合成されたが、それらは、興味深く選択的な活性プロフィールを示す。上記研究は全て、ビタミンD受容体中の結合部位が、合成されたビタミンD類似体のC−2位に異なる置換基で置換できることを示す。
【0006】
薬理学的に重要なビタミンD化合物の19−ノル−クラスの調査を精力的に続けて、炭素2(C−2)にメチレン置換基、炭素1(C−1)にヒドロキシル基、及び炭素20(C−20)へ結合した短い側鎖の存在を特徴とする類似体をも合成して試験した。1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−プレグナカルシフェロールは米国特許第6,566,352号に報告され、1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,579,861号に報告され、そして1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビスホモプレグナカルシフェロールは米国特許第6,627,622号に報告されている。1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較したところ、3種類の本化合物は全て、ビタミンD受容体への結合活性及び細胞分化活性が比較的高いが、カルシウム血症活性(calcemic activity)は、あったとしても極めて低い。第6,566,352号、第6,579,861号及び第6,627,622号特許に開示されるように、上記化合物は、その生物学的活性のため、様々な医薬的使用の優れた候補物質となる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、2α−メチル−19−ノル−ビタミンD類似体、より具体的には、2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール、その生物学的活性及び本化合物の様々な医薬的使用に関する。これまでに知られていない、この新規な1α−ヒドロキシル化ビタミンD化合物は、2位にメチル基及び17位(C−17)にイソプロピル置換基がある19−ノル−ビタミンD類似体である。
【0008】
構造的に、この2α−メチル−19−ノル−ビタミンD類似体は以下に示す一般式I:
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を特徴とする。好ましい類似体は、次の式Ia:
【0011】
【化2】

【0012】
を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである。
【0013】
上の化合物I、特にIaは、望ましく、極めて好都合な生物学的活性態様を示す。本化合物は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの場合と比較すると、ビタミンD受容体への結合が比較的高いこと特徴とするが、腸管カルシウム輸送活性は極めて低いこと特徴とし、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較すると、カルシウムを骨から動員する機能は極めて低い。従って、本化合物は、カルシウム血症活性があったとしても極めて低いと特定することができる。プレプロ副甲状腺ホルモン遺伝子(Darwish & DeLuca, Arch. Biochem. Biophys. 365, 123-130, 1999)及び副甲状腺増殖を抑制する場合、血清カルシウムを超生理学的レベルに上昇させることは望ましくない。カルシウム血症活性が全くない又は極めて低く、分化には極めて活性な本類似体は、腎性骨ジストロフィの続発性副甲状腺機能亢進の抑制の治療に有用であると考えられる。
【0014】
本発明の化合物I、特にIaはさらに、免疫系の不均衡を特徴とする、例えば、多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片拒絶反応及び臓器移植拒絶反応を含めた自己免疫疾患のヒト障害の治療及び予防に;さらに、関節リウマチ、喘息、並びにセリアック病、潰瘍性大腸炎及びクローン病等の炎症性腸疾患等の炎症性疾患の治療に、特に適することが見出された。ざ瘡、脱毛症及び高血圧症は、本発明の化合物で治療することができる他の症状である。
【0015】
上の化合物I、特にIaはさらに、細胞分化活性が比較的高いことを特徴とする。従って、本化合物はさらに、乾癬の治療用又は、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌及び前立腺癌に対する抗癌剤としての治療薬をもたらす。さらに、その細胞分化活性が比較的高いため、本化合物は、しわ、適切な皮膚水和の欠如、すなわち、乾燥皮膚、適切な皮膚引き締めの欠如、すなわち、たるんだ皮膚、及び不十分な皮脂分泌を含めた様々な皮膚状態の治療用の治療薬をもたらす。従って、本化合物を用いると、皮膚に加湿がもたらされるのみならず、皮膚の保護機能も改善される。
【0016】
式I、特に式Iaの本発明の化合物は、さらに、動物個体の肥満症を予防又は治療する、脂肪細胞分化を阻害する、SCD−1遺伝子転写を阻害及び/又は体脂肪を減少させる場合に有用である。従って、ある態様では、動物個体の肥満症を予防する又は治療する、脂肪細胞分化を阻害する、SCD−1遺伝子転写を阻害する及び/又は体脂肪を減少させる方法としては、式Iの1又はそれ以上の化合物、あるいは1又はそれ以上の化合物を包含する医薬組成物の有効量を、その動物個体に投与することがあげられる。1又はそれ以上の化合物又は医薬組成物を個体へ投与することにより、動物個体の脂肪細胞分化が阻害され、遺伝子転写が阻害され及び/又は体脂肪が減少する。
【0017】
1又はそれ以上の化合物は、上記疾患及び障害を治療するための組成物中に、組成物の約0.01μg/gm〜約1000μg/gm、好ましくは、組成物の約0.1μg/gm〜約500μg/gmの量で存在してよく、局所に、経皮で、経口で、直腸に、鼻腔内に、舌下に又は非経口で、約0.01μg/日〜約1000μg/日、好ましくは、約0.1μg/日〜約500μg/日の用量で投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
発明の詳細な説明
炭素2(C−2)にメチル置換基及び炭素17(C−17)にイソプロピル置換基の存在を特徴とする19−ノル−ビタミンD類似体である2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール(本明細書中2α−メチルPという)を合成して試験した。本ビタミンD類似体は、C−2位の比較的小さいメチル基により、ビタミンD受容体への結合が妨げられることはないため、興味深い標的と考えられた。構造的に、この19−ノル類似体は、本明細書中上記一般式Iaを特徴とし、その(保護されたヒドロキシの形の)プロドラッグは一般式Iで示される。
【0019】
構造Iを有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール類似体の製造は、共通の一般的な方法、すなわち、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド[Wilkinson's触媒(PhP)RhCl]の存在下で効率よく行われる、一般式IIの2−メチレン−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール化合物中の炭素2でのエキソメチレン単位の選択的均一接触水素化により達成することができる。本還元条件は、C(2)=CH単位のみを還元させ、C(5)−C(8)ブタジエン部分は影響を受けない。単離物質は、C−2の立体配置が異なる2−メチル−19−ノルービタミンI及びIIIのエピマー混合物(約1:1)である。その混合物は分離せずに用いることができ、所望の場合は、個々の2α−(式I)異性体及び2β−(式III)異性体を、有効なHPLCシステムで分離することができる。
【0020】
【化3】

【0021】
構造I、II及びIIIで、置換基X及びXは、上記で定義した基である。
【0022】
一般的な構造IIを有する2−メチレン−19−ノルホモプレグナカルシフェロール類似体は公知であり又は既知の方法で製造することができる。
【0023】
化合物I、II及びIIIの合成方法全体は、本明細書中にその明細書が具体的に援用される、「2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD化合物」という米国特許第5,843,928号に詳しく説明され、より完全に記載されている。
【0024】
本明細書中及び請求の範囲中で用いられる「ヒドロキシ保護基」との用語は、ヒドロキシ官能基の一時的保護に一般的に用いられるいかなる基、例えば、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基又はアルキルアリールシリル基(以下、簡潔には「シリル」基という)及びアルコキシアルキル基等があげられる。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基又はアリルオキシカルボニル基等のアルキル−O−CO−基群である。「アシル」という用語は、1〜6個の炭素を有するアルカノイル基であって、その全ての異性体の形;又はオキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基等の、1〜6個の炭素を有するカルボキシアルカノイル基;又はベンゾイル基、又はハロ、ニトロ又はアルキルで置換されたベンゾイル基等の芳香族アシル基を意味する。本明細書及び請求の範囲中で用いられる「アルキル」という語は、1〜10個の炭素を有する直鎖又は分岐状アルキル基であって、その全ての異性体の形を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基又はテトラヒドロフラニル基及びテトラヒドロピラニル基等の群である。好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ジブチルメチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、ジフェニル−t−ブチルシリル基及び類似のアルキル化シリル基である。「アリール」という用語は、フェニル−、又はアルキル−、ニトロ−又はハロ−で置換されたフェニル基を意味する。
【0025】
「保護されたヒドロキシ」基は、ヒドロキシ官能基の一時的又は永久的保護に一般的に用いられる上のいずれかの基、例えば、前に定義のシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基によって保護された又は誘導体化されたヒドロキシ基である。「ヒドロキシアルキル」、「重アルキル」及び「フルオロアルキル」という用語は、それぞれ、1個又はそれを超えるヒドロキシ基、重水素基又はフルオロ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0026】
より具体的には、化合物2α−メチルPの製造の詳細な説明については、次の代表的な実施例及び説明、並びに本明細書中のスキーム1を参照すべきである。
【0027】
この実施例において、アラビア数字(1、2、3)で示される具体的な生成物は、スキーム1に示された具体的な構造を意味する。
【実施例】
【0028】
共通事項
紫外(UV)吸収スペクトルは、示した溶媒中で日立モデル60−100UV−vis分光計で記録した。H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、ジュウテリオクロロホルム中500MHzで、Bruker AM−500FT分光計で記録した。化学シフト(δ)は、内部MeSi(δ0.00)から低磁場に報告している。質量スペクトルは、Kratos MS−55データシステムを装備したKratos DS−50TC計測器で70eVで記録した。試料は、120〜250℃に維持したイオン源中に直接挿入プローブにより導入した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Model 6000A溶媒デリバリーシステム、Model 6UK Universalインジェクター、Model 486波長可変吸光度検出器及び示差R401屈折計を装備した Waters Associates液体クロマトグラフで行った。
【0029】
実施例1
2−メチレン−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール(1)の水素化
トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)クロリド(32.0mg,34.6μmol)を予め水素で飽和した(20分間)乾燥ベンゼン(35mL)に加えた。本混合物を室温で均一溶液が形成されるまで(約70分)撹拌した。次に、乾燥ベンゼン(6mL)中のビタミン1(11mg,33.3μmol)の溶液を加え、反応を連続水素流下で3.5時間続けた。ベンゼンを真空下で除去し、残留物をヘキサン/酢酸エチル(7:3)に再溶解し、WatersシリカSep−Pak(Vac 12cc)上に適用した。粗2−メチルビタミン(約11mg)を同一溶媒系(35mL)で溶出した。画分を合わせて蒸発させ、HPLC(10mm×25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)で、ヘキサン/2−プロパノール(90:10)溶媒系を用いてさらに精製した。2α−及び2β−メチル−19−ノルービタミン2及び3の混合物(約1:1)(53:47の比率;6.37mg,58%)はRv29mLで単一ピークを生じた。双方のエピマーの分離は逆相HPLC(6.2mm×25cm Zorbax−ODSカラム、2mL/分)で、メタノール/水(90:10)溶媒系を用いて行った。2β−メチルビタミン3をRv17mLで回収し、2α−エピマー2はRv19mLで回収した。
【0030】
2:UV(エタノール中)λmax242.0, 250.0, 260.0nm; 1H NMR (CDCl3) δ0.531 (3H, s, 18-H3), 0.860 及び 0.940(3H及び3H,各々d, J=6.5 Hz, 21-及び22-H3),1.134 (3H, d, J=6.8 Hz, 2α-CH3), 2.13 (1H,〜t, J〜11 Hz, 4β-H), 2.22 (1H, br d, J〜13 Hz, 10β-H),2.60 (1H, dd, J=12.9, 4.1 Hz, 4α-H), 2.80 (2H, m, 9β-及び10α-H), 3.61 (1H, m, w/2=23 Hz, 3α-H), 3.96 (1H, m, w/2=14 Hz, 1β-H), 5.82 及び 6.37 (1H及び1H,各々d, J=11.2 Hz, 7-及び6-H); MS m/z (相対強度) 332 (M+, 100), 289(37), 253(21), 177(67), 135(76), 91(78);C2236の正確な理論質量332.2715,実測値332.2712。
【0031】
【化4】

【0032】
2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールの生物学的活性
メチル基の2位への導入、及び1α−ヒドロキシ−19−ノルービタミンDの側鎖中の炭素23、24、25、26及び27の脱離は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較したところ、完全長組換えラットビタミンD受容体への結合にほとんど又は全く影響しなかった。化合物2α−メチルPは、標準の1,25(OH)と比較して、同等に十分に受容体に結合した(図1)。本結果から、化合物2α−メチルPは同等の生物学的活性を有するであろうと考えられる。しかしながら、驚くべきことに、化合物2α−メチルPは、固有の生物学的活性を有する極めて選択的な類似体である。
【0033】
図5は、2α−メチルPは、天然ホルモン1,25−ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH))と比較して、腸管カルシウム輸送を刺激する活性がほとんどないことを示す。
【0034】
図4は、2α−メチルPは、1,25(OH)と比較して、骨カルシウム動員活性がほとんどないことを示す。
【0035】
従って、図4及び図5は、2α−メチルPが、カルシウム血症活性があっても極めて低いと特定できることを示す。
【0036】
図2は、2α−メチルPは、HL−60細胞分化について、1,25(OH)とほぼ同程度に強力であることを示し、乾癬及び癌、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌及び前立腺癌の治療のための優れた候補物質となる。さらに、本化合物は細胞分化活性が比較的高いため、しわ、適切な皮膚水和の欠如、すなわち、乾燥皮膚、適切な皮膚引き締めの欠如、すなわち、たるんだ皮膚、及び不十分な皮脂分泌を含めた様々な皮膚状態の治療用の治療薬をもたらす。従って、本化合物の使用は、皮膚を加湿するのみならず、皮膚の保護機能も改善する。
【0037】
図3は、化合物2α−メチルPが、骨細胞で、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと同様の転写活性を有することを示す。本結果は、図2の細胞分化活性とともに、2α−メチルPは、細胞分化、遺伝子転写を起こす場合及び細胞増殖を抑制する場合に直接的な細胞活性を有するため、乾癬に極めて有効であろうことを示唆する。上記データは、さらに、2α−メチルPが、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌及び前立腺癌に対する抗癌剤としての活性が有意であることを示す。
【0038】
図6は、2α−メチルPには、副甲状腺ホルモン(PTH)の発現を抑制する機能があるが、1,25(OH)程強力ではないことを示す。
【0039】
2α−メチルPはHL−60分化に対する活性が強いことから、副甲状腺の増殖を抑制する場合及びプレプロ副甲状腺遺伝子の抑制において活性であることを示唆する。
【0040】
実験方法
ビタミンD受容体結合
試験材料
タンパク質源
完全長組換えラット受容体は、大腸菌BL21(DE3)Codon Plus RIL細胞中で発現させて二つの異なるカラムクロマトグラフィー系を用いて精製して均一にした。最初の系は本タンパク質上のC末端ヒスチジン標識を利用するニッケル親和性樹脂であった。この樹脂から溶出したタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(S−Sepharose Fast Flow)を用いてさらに精製した。精製したタンパク質のアリコートを、液体窒素中で急速冷凍して−80℃で使用まで貯蔵した。結合アッセイで用いるために、本タンパク質を、0.1% Chaps洗浄剤を含有するTEDK50(50mM Tris, 1.5mM EDTA, pH7.4, 5mM DTT, 150mM KCl)で希釈した。受容体タンパク質及びリガンド濃度を最適化して、加えた放射性標識リガンドのうち受容体に結合するものが20%以下になるようにした。
【0041】
研究用試薬
未標識リガンドをエタノールに溶解し、UV分光測光を用いて濃度を決定した(1,25(OH):モル吸光係数=18,200及びλmax=265nm;類似体:モル吸光係数=42,000及びλmax=252nm)。放射性標識リガンド(H−1,25(OH),約159Ci/ミリモル)を、エタノール中に最終濃度が1nMになるように加えた。
【0042】
アッセイ条件
放射性標識リガンド及び未標識リガンドを最終エタノール濃度が10%以下になるように希釈した100mclのタンパク質に加えて混合し、氷上で一晩インキュベートして結合平衡に到達させた。翌日、100mclのヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)を各試験管に加え、10分間隔で30分間混合した。ヒドロキシルアパタイトを遠心分離で回収後、0.5% Triton X−100を含有するTris−EDTA緩衝液(50mM Tris, 1.5mM EDTA, pH7.4)で3回洗浄した。最終洗浄後、ペレットを4mlのBiosafeIIシンチレーション混合物が入っているシンチレーションバイアルに移して混合し、シンチレーション計数計に入れた。放射性標識リガンドのみが入っている試験管から総結合を決定した。
【0043】
HL−60分化
試験材料
研究用試薬
研究用試薬をエタノールに溶解し、UV分光測光を用いて濃度を決定した。連続希釈液を調製して、一定範囲の薬物濃度を細胞培養物中に存在するエタノールの最終濃度(0.2%以下)を変更せずに調べられるようにした。
【0044】
細胞
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地で増殖した。本細胞を5%COの存在下で37℃でインキュベートした。
【0045】
アッセイ条件
HL60細胞を1.2×10個/mlで播種した。播種から8時間後、二重反復試験で細胞を試薬で処理した。4日後、上記細胞を収集してニトロブルーテトラゾリウム還元アッセイを行った(Collins et al., 1979; J. Exp. Med. 149:969-974)。全200個の細胞を計数し、細胞内に黒〜青色ホルマザン沈着物を含有した数を記録して分化細胞の百分率を決定した。単球細胞への分化のアッセイは食細胞活性を測定して決定した(データ示さず)。
【0046】
インビトロ転写活性
転写活性は、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流に24−ヒドロキシラーゼ(24Ohase)遺伝子プロモーターで安定にトランスフェクションさせたROS17/2.8(骨)細胞で測定した(Arbour et al., 1998)。一定範囲の用量で細胞を与えた。投与16時間後、細胞を回収し、ルミノメーターを用いてルシフェラーゼ活性を測定した。
RLU=相対ルシフェラーゼ単位
【0047】
腸管カルシウム輸送及び骨カルシウム動員
離乳Sprague-Dawley雄ラットを、Diet11(0.47%Ca)飼料+AEKで1週間、次に、Diet11(0.02%Ca)飼料+AEKで3週間給餌した。次に、上記ラットを、0.47%Ca含有飼料を1週間、次に0.02%Ca含有飼料を2週間へと切り換えた。用量投与は0.02%カルシウム飼料での最終週で開始した。ip用量を4回連続して約24時間隔で与えた。最終投与から24時間後、首を切断して血液を回収して、血清カルシウム濃度を骨カルシウム動員の指標として決定した。腸管カルシウム輸送分析のため、腸管の最初の10cmを外転腸嚢法(everted gut sac method)を用いて収集した。
【0048】
PTH抑制及び高カルシウム血症

成熟Sprague-Dawley雌ラットを、Harlan(Madison, WI)より入手した。
【0049】
養畜
受取時に、被験動物を個々の尾のマークで識別した。被験動物を、吊り下げステンレス鋼製ワイヤ底ケージに収容した。各ケージに1匹の動物を収容した。動物室は、温度68〜72°F及び相対湿度25〜75%で維持した。待機室は1日に12時間明るくなるように設定した。
【0050】
0.47%及び0.3%のリン並びに脂溶性ビタミンA、D、E及びK含有精製齧歯類用飼料(Suda et al., Purified Rodent Diet−Diet 11)と水を随意に与えた。
【0051】
処置群
被験動物を、無作為に振り分けて処置群とした(5匹/群)。用量は全て100マイクロリットルのプロピレングリコールで腹腔内投与した。用量を4〜7回連続して約24時間隔で与えた。投薬は、被験動物を少なくとも1週間順応させた後に開始した。
【0052】
用量調製
対照物質
負対照物質
負対照物質は、エタノール(<5%)及びプロピレングリコールを容量測定し、混合後、2〜8℃で貯蔵して調製した。
【0053】
正対照物質
1,25(OH)は、エタノールストック溶液の濃度をUV分光測光を用いて決定して調製した(吸光係数=18,200及びλmax=265nm)。1,25(OH)の必要量をプロピレングリコールで容量測定して、最終溶液中のエタノールが5%未満になるようにした。本溶液を混合後、2〜8℃で貯蔵した。
【0054】
試験材料
類似体は、エタノールストック溶液の濃度をUV分光測光を用いて最初に決定して調製した(吸光係数=42,000及びλmax=252nm)。次に、類似体溶液をプロピレングリコールに容量的に加えて、最終溶液中のエタノールが5%未満になるようにした。本溶液を混合し、2〜8℃で貯蔵した。
【0055】
用量投与方法
対照品も試験品も、100マイクロリットルを腹腔内注射で、約24時間間隔で連続4〜7日間投与した。1,25(OH)は、連続4日間与えたが、試験薬物は連続7日間与えた。
【0056】
血清PTHレベル
最終投与から24時間後、尾動脈から血液を回収して、生物活性血清PTH濃度を、Immutopics, Inc.(San Clemente, CA)製のラットBioActive Intact PTH ELISA Kit を用いて測定した。
【0057】
血清カルシウム分析
最終投与から24時間後、各実験動物の尾動脈から約1mlの血液を回収した。上記血液を室温で凝固させた後、3000×gで15分間遠心分離した。本血清をポリプロピレン管に移して−20℃で冷凍した。カルシウムレベルは、本血清を0.1%塩化ランタン(lanthum)で希釈し、原子吸光分光光度計(Perkin Elmer Model 3110,Shelton, CT)で吸光度を測定して決定した。
【0058】
データの解釈
VDR結合、HL60細胞分化及び転写活性
2α−メチルP(K=9.4×10−10M)は、完全長組換えラットビタミンD受容体への結合について[H]−1,25−(OH)−Dとの競合能が天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD(K=1.3×10−10M)より僅かに低い(図1)。さらに、HL60分化促進能(効力又は力価)は、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(EC50=3.6×10−9M)と比較すると、2α−メチルP(EC50=3.8×10−8M)とほとんど差異がない(図2を参照)。さらに、化合物2α−メチルP(EC50=3.3×10−9M)は、骨細胞で1α,25−ジヒドロキシビタミンD(EC50=2.9×10−10M)と同様の転写活性である(図3を参照)。上記結果は、2α−メチルPが、細胞分化、遺伝子転写を引き起こす場合及び細胞増殖を抑制する場合に直接的な細胞活性を有するため、乾癬に極めて有効であることを示唆する。本データは、さらに、2α−メチルPが、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌及び前立腺癌に対する抗癌剤として、さらに、乾燥皮膚(皮膚水和の欠如)、過度の皮膚たるみ(不十分な皮膚引き締め)、不十分な皮脂分泌及びしわ等の皮膚状態に対する活性が有意であることを示す。それは、さらに、続発性副甲状腺機能亢進を抑制する活性が極めて高いと考えられる。
【0059】
ビタミンD欠乏動物における骨からのカルシウム動員及び腸管カルシウム吸収
低カルシウム飼料(0.02%)のビタミンD欠乏ラットを用いて腸管及び骨における2α−メチルP及び1,25(OH)の活性を試験した。予想されたように、天然ホルモン(1,25(OH))では、全ての用量で血清カルシウムレベルが増加した(図4)。図4は、2α−メチルPが骨からカルシウムを動員する活性が、あったとしてもほとんどないことを示す。2α−メチルPを87pmol/日で連続4日間投与しても骨カルシウムの動員は起こらなかったし、2α−メチルPの量を260pmol/日、その後、780pmol/日、最後に、2340pmol/日と増やしても、実質的な影響は全くなかった。
【0060】
腸管カルシウム輸送を同じ動物群で外転腸嚢法を用いて評価した(図5)。その結果、化合物2α−メチルPを、87pmol/日、260pmol/日、780pmol/日又は2340pmol/日で投与した場合、腸管カルシウム輸送を促進しないが、1,25(OH)は、260pmol/日の用量での有意の増加を促進することを示す。従って、2α−メチルPは、試験した用量で腸管カルシウム輸送活性が本質的にないと結論することができる。
【0061】
PTH抑制
PTH抑制における2α−メチルP及び1,25(OH)の活性も調べた。予想されたように、1,25(OH)を100pmol/日で投与した場合、100%のPTHを抑制した。図6は、さらに、2α−メチルPは、1,25(OH)程有効ではないものの、PTHを抑制することを示す。2α−メチルPを500pmol/日及び1500pmol/日で投与すると、約20%のPTHが抑制され、4500pmol/日で投与すると、約60%のPTHが抑制された。本結果は、図4及び図5のデータと相俟って、2α−メチルPは、血中カルシウムレベルを上昇させずにPTHを抑制する機能があるため、腎性骨ジストロフィの続発性副甲状腺機能亢進を治療する場合に極めて有効であろうことを示唆している。
【0062】
本結果は、2α−メチルPが本明細書中に記載の多数のヒトの治療の優れた候補物質であること及び腎性骨ジストロフィの続発性副甲状腺機能亢進、自己免疫疾患、癌及び乾癬等の多数の状態で特に有用でありうることを示す。2α−メチルPは、(1)有意のVDR結合、転写活性及び細胞分化活性を有する;(2)1,25(OH)とは異なり、高カルシウム血症の易罹病性がない;及び(3)容易に合成されるという理由で、乾癬を治療するための優れた候補物質である。2α−メチルPはまた、ビタミンD受容体への有意の結合活性を有し、PTH発現を抑制するが、血清カルシウムを高める機能がほとんどなく、腎性骨ジストロフィの続発性副甲状腺機能亢進の治療に特に有用でありうる。
【0063】
本データは、さらに、本発明の化合物2α−メチルPが、免疫系の不均衡を特徴とする、例えば、多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片拒絶反応及び臓器移植拒絶反応を含む自己免疫疾患のヒトの障害の治療及び予防に;さらに、関節リウマチ、喘息、及びセリアック病、潰瘍性大腸炎及びクローン病等の炎症性腸疾患等の炎症性疾患の治療に特に適しうることを示す。ざ瘡、脱毛症及び高血圧症は、本発明の化合物2α−メチルPで治療できる他の症状である。
【0064】
式I、特に式Iaを有する本発明の化合物は、さらに、動物対象の肥満症を予防又は治療する、脂肪細胞分化を阻害する、SCD−1遺伝子転写を阻害する及び/又は体脂肪を減少させる場合に有用である。従って、ある態様では、動物対象の肥満症を予防又は治療する、脂肪細胞分化を阻害する、SCD−1遺伝子転写を阻害する及び/又は体脂肪を減少させる方法は、その動物対象に、式Iを有する1又はそれ以上の化合物、又は1又はそれ以上の化合物を包含する医薬組成物の有効量を投与することを包含する。化合物又は医薬組成物の対象への投与は、動物対象の脂肪細胞分化を阻害する、遺伝子転写を阻害する、及び/又は体脂肪を減少させる。その動物は、ヒト、イヌ又はネコ等の家畜、又は農産物用動物、特に、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ又はウズラのような家禽、並びに、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はブタ等のヒト消費用食肉を提供する動物でもよい。
【0065】
予防及び/又は治療目的のため、式Iで定義される本発明の化合物は、医薬的用途のため、無害な溶媒中の溶液又は適する溶媒又は担体中のエマルジョン、懸濁液又は分散として、又は丸剤、錠剤又はカプセル剤として固形担体と共に、当該技術分野で公知の慣用法により製剤化できる。本製剤はいずれも、安定化剤、酸化防止剤、結合剤、着色剤又は乳化剤又は風味調節剤等の他の医薬的に許容しうる且つ無毒性の賦形剤を含有してもよい。
【0066】
式Iの化合物、特に、2α−メチルPは、経口で、局所に、非経口で、直腸に、鼻腔内に、舌下に又は経皮で投与することができる。本化合物は、好都合には、注射により又は静脈内注入又は適する滅菌液剤により、又は消化管を経る液状又は固形用量の形で、又はクリーム剤、軟膏剤、貼付剤、又は経皮用途に適する類似のビヒクルの形で投与される。化合物I、特に、2α−メチルPの用量は、0.01μg/日〜1000μg/日、好ましくは、約0.1μg/日〜約500μg/日で予防及び/又は治療目的に適し、本用量は、治療される疾患、その重症度及び対象の応答により調整されることは当該技術分野で十分に理解される。本化合物は作用特異性を示すため、各々、好適には、様々な程度の骨無機質動員及びカルシウム輸送刺激が好都合であることが判明している状態では、単独で、又は段階的な用量の他の活性なビタミンD化合物、例えば、1α−ヒドロキシビタミンD又はD、又は1α,25−ジヒドロキシビタミンDと共に投与することができる。
【0067】
上記治療に用いる組成物は、上の式I及び式Iaで定義される化合物I、特に、2α−メチルPの活性成分としての有効量と、適当な担体を含有する。本発明で用いる上記化合物の有効量は、組成物1gmにつき約0.01μg〜約1000μg、好ましくは、組成物1グラムにつき約0.1μg〜約500μgであり、局所に、経皮で、経口で、直腸に、鼻腔内に、舌下に又は非経口で、約0.01μg/日〜約1000μg/日、好ましくは、約0.1μg/日〜約500μg/日の用量で投与することができる。
【0068】
化合物I、特に、2α−メチルPは、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤、局所貼付剤、丸剤、カプセル剤又は錠剤、坐剤、エアゾル剤として、又は医薬的に無害かつ許容しうる溶媒又は油中の液剤、乳剤、分散剤又は懸濁剤として液体で製剤化することができるが、本製剤は、さらに、安定化剤、酸化防止剤、乳化剤、着色剤、結合剤又は風味調節剤等の他の医薬的に無害な又は有益な成分を含有してよい。
【0069】
化合物I、特に、2α−メチルPは、好都合には、前骨髄球を正常マクロファージへ分化させるのに十分な量で投与することができる。上記用量は適しているが、与えられる量は、疾患の重症度、対象の状態及び応答に応じて調整されるべきであることは当該技術分野で十分に理解される。
【0070】
本発明の製剤は、活性成分を、医薬的に許容しうる担体と共に、すなわち場合により、他の治療的成分と共に含む。その担体は、製剤の他の成分と相溶性であり、レシピエントに有害でないという意味で、「許容しうる」べきである。
【0071】
経口投与に適する本発明の製剤は、所定量の活性成分を各々含有するカプセル剤、サシェ剤、錠剤又はロゼンジとして分離した単位の剤型;粉末又は顆粒剤の剤型;水性液又は非水性液中の溶液又は懸濁液の剤型;又は水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンの剤型であってよい。
【0072】
直腸投与用の製剤は、活性成分と、カカオ脂等の担体を包含する坐剤の剤型、又は浣腸剤の剤型であってよい。
【0073】
非経口投与に適する製剤は、好都合には、活性成分の滅菌油状又は水性製剤を含むが、好ましくは、レシピエントの血液と等張である。
【0074】
局所投与に適する製剤には、液状又は半液状製剤であって、リニメント剤、ローション剤、外用薬(applicants)等、水中油エマルジョン又は油中水エマルジョンであって、クリーム剤、軟膏剤又はペースト剤等;滴剤等の液剤又は懸濁剤;又は噴霧剤が含まれる。
【0075】
鼻腔内投与用には、スプレー缶、ネブライザー又はアトマイザーで計量分配される粉末、自己推進性又は噴霧製剤の吸入を用いることができる。本製剤の粒度は、計量分配される場合、好ましくは、10〜100μの範囲内である。
【0076】
本製剤は、好都合には、用量単位の形であってもよく、医薬技術分野において周知のいかなる方法により製造してもよい。「用量単位」という用語は、活性成分それ自体又は固形又は液状医薬希釈剤又は担体との混合物として含む物理的かつ化学的に安定な単位用量として患者に投与することができる単一、すなわち、単回の用量を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、完全長組換えラットビタミンD受容体への結合に[H]−1,25−(OH)−Dと競合する、2α−メチルP及び1,25(OH)の相対活性を示すグラフである。
【図2】図2は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、2α−メチルP及び1,25(OH)の濃度の関数としてのHL−60細胞分化比率(分化パーセント)を示すグラフである。
【図3】図3は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、2α−メチルPと比較した場合の1,25(OH)のインビトロ転写活性を示すグラフである。
【図4】図4は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、2α−メチルPと比較した場合の1,25(OH)の骨カルシウム動員活性を示す棒グラフである。
【図5】図5は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、2α−メチルPと比較した場合の1,25(OH)の腸管カルシウム輸送活性を示す棒グラフである。
【図6】図6は、「2α−メチルP」という2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、天然ホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンD、以下、「1,25(OH)」と比較した場合の種々の生物学的活性を示し、ビヒクル対照と比較した場合の、1,25(OH)及び2α−メチルPのPTH抑制%を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物。
【請求項2】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
及びXが共にt−ブチルジメチルシリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
有効量の、少なくとも一つの請求項1に記載の化合物を、医薬的に許容しうる賦形剤と共に含有する、医薬組成物。
【請求項6】
有効量が、組成物1グラムにつき約0.01μg〜約1000μgを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
有効量が、組成物1グラムにつき約0.1μg〜約500μgを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】

【化2】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロール。
【請求項9】
有効量の、2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールを、医薬的に許容しうる賦形剤と共に含有する医薬組成物。
【請求項10】
有効量が、組成物1グラムにつき約0.01μg〜約1000μgを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
有効量が、組成物1グラムにつき約0.1μg〜約500μgを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
乾癬を治療する方法であって、乾癬に罹患した対象に、式
【化3】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項13】
化合物を経口投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
化合物を非経口投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
化合物を経皮投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
化合物を局所投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
化合物を直腸投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
化合物を鼻腔内投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
化合物を舌下投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
化合物が、式
【化4】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌又は前立腺癌からなる群から選択される疾患を治療する方法であって、前記疾患に罹患した対象に、式
【化5】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項23】
化合物を経口投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化合物を非経口投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
化合物を経皮投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
化合物を直腸投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
化合物を鼻腔内投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
化合物を舌下投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
化合物が、式
【化6】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項22に記載の方法。
【請求項31】
多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片拒絶反応及び臓器移植拒絶反応からなる群から選択される自己免疫疾患を治療する方法であって、前記疾患に罹患した対象に、式
【化7】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
化合物を経口投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
化合物を非経口投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
化合物を経皮投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
化合物を直腸投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
化合物を鼻腔内投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
化合物を舌下投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
化合物が、式
【化8】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
関節リウマチ、喘息及び炎症性腸疾患からなる群から選択される炎症性疾患を治療する方法であって、前記疾患に罹患した対象に、式
【化9】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項41】
化合物を経口投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
化合物を非経口投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
化合物を経皮投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
化合物を直腸投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
化合物を鼻腔内投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
化合物を舌下投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
化合物が、式
【化10】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項40に記載の方法。
【請求項49】
しわ、適切な皮膚引き締めの欠如、適切な皮膚水和の欠如及び不十分な皮脂分泌からなる群から選択される皮膚状態を治療する方法であって、前記皮膚状態に罹患した対象に、式
【化11】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項50】
化合物を経口投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
化合物を非経口投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
化合物を経皮投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
化合物を局所投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
化合物を直腸投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
化合物を鼻腔内投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
化合物を舌下投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
化合物が、式
【化12】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項49に記載の方法。
【請求項59】
腎性骨ジストロフィを治療する方法であって、腎性骨ジストロフィに罹患した対象に、式
【化13】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を投与することを含む方法。
【請求項60】
化合物を経口投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
化合物を非経口投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
化合物を経皮投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
化合物を直腸投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
化合物を鼻腔内投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
化合物を舌下投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
化合物が、式
【化14】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項59に記載の方法。
【請求項68】
動物の肥満症を治療又は予防し、脂肪細胞分化を阻害し、SCD−1遺伝子転写を阻害及び/又は動物の体脂肪を減少させる方法であって、式
【化15】

(式中、X及びXは、同一又は異なっていてもよく、各々、水素又はヒドロキシ保護基から選択される)
を有する化合物の有効量を必要な対象に投与することを含む方法。
【請求項69】
化合物を経口投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
化合物を非経口投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
化合物を経皮投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
化合物を直腸投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
化合物を鼻腔内投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
化合物を舌下投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
化合物を、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与する、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
化合物が、式
【化16】

を有する2α−メチル−19−ノル−1α−ヒドロキシ−ホモプレグナカルシフェロールである、請求項68に記載の方法。
【請求項77】
動物がヒトである、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
動物が家畜である、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
動物が農業用動物である、請求項68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−520706(P2008−520706A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543270(P2007−543270)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/041821
【国際公開番号】WO2006/057902
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(591057706)ウィスコンシン・アルムニ・リサーチ・ファウンデーション (26)
【氏名又は名称原語表記】WISCONSIN ALUMNI RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】