説明

2−アミノ−2−[2−(4−C3〜C21−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの調製方法

本発明は、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの改良した製造方法およびその方法において使用する化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールの製造方法、およびその方法において使用する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールは、EP-A-1627406に開示されており、その関連する開示内容は、参照により本明細書に組み込む。この化合物は、観測された活性に基づき、免疫抑制剤として有用であることが明らかになっている。したがって、この化合物は、急性の同種移植片拒絶反応、自己免疫疾患または異種移植片拒絶反応の治療または予防に有用である可能性がある。この種の特定の化合物は、FTY720、すなわち、2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールであり、次の構造をもつ。
【化34】

【0003】
FTY720は、多発性硬化症などの自己免疫疾患の予防に有用であることが明らかになっている。FTY720は、多発性硬化症の臨床試験で有効性が認められたファーストインクラスのスフィンゴシン1−リン酸(SIP)受容体モジュレーターである。
【0004】
WO 00/27798には、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオールを調製する種々の方法が開示されている。この方法のいくつかが、この公報で示されている参照番号を用いて、FTY720の製造に関連して下記の反応スキームに例示されている。
【化35】

【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の方法は、化合物16のアシル化を経て中間体18が形成されることを含む。しかし、このアシル化プロセスの結果、オルト、メタおよびパラ置換の生成物の混合物ができる。これらの生成物には生物活性がない。ベンゼン環のパラ位の位置選択性を改善した、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、特に、FTY720およびその塩を製造する方法が求められている。
【0006】
さらに、上記方法には多くの工程、すなわち、それぞれの工程の間に、例えば結晶化、抽出濾過および/または沈殿のいずれかによる中間体の多くの精製または分離が必要である。中間体の精製あるいは後処理(working-up)がより少なくてすむ、改良された製造経路が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、遊離した形または塩の形の、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、特に、FTY720を製造する新規の方法が提供される。
【0008】
本発明の新規の方法は、連続フロー形式で、例えば、多成分カスケード反応として実施することができる。例えば、FTY720の遊離した形は、連続的に、例えば、1工程だけで形成することができる。この改良された方法では、種々の中間体を精製または分離する必要性が低くなり、さらにはそれをなくすことも可能である。本発明の方法では、それぞれの工程の間の精製および分離を少なくし、さらにはなくすこともできる。
【0009】
本発明は、遊離した形または塩の形の、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、特に、FTY720を連続フロー、例えば、多成分ドミノ反応で製造する方法を提供する。
【0010】
多成分カスケード反応(または多成分ドミノ反応)は、(1つまたは複数の)前の工程で形成された化合物に対して中間体の単離または後処理(workup)をせずに進行する、単分子または二分子の素反応の連続と定義される。本発明によると、試薬は、それを添加する間の条件を変更しながら、または変更せずに、明確に定義される一連の順序で添加することができる。別の実施形態では、試薬がすべてこの方法の最初から存在し、その条件は順次変化する。多成分ドミノ反応は、当該分野で公知であり、例えば、「Domino Reactions in Organic Synthesis」,Angew.Chem.Int.Ed. 第46巻, 17巻, 2977〜2978頁に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の態様において、式(I)の化合物、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を製造する方法が提供され、
【化36】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルである。)
この方法は、
(a)式(III)の化合物を還元して
【化37】


(式中、Rは保護基であり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
式(II)の化合物を形成する工程と、
【化38】


(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む。
【0012】
式(III)の化合物から式(II)の化合物への還元は、例えば、Pd−C触媒などの触媒の存在下で、水素化によって実施してもよい。
【0013】
式(III)の化合物は、式(V)の化合物を
【化39】


(式中、Rは離脱基である。)
式(VI)の化合物と反応させることによって得ることができる。
【化40】

【0014】
式(V)と(VI)の化合物のカップリングは、当該分野で公知の方法、例えば、金属触媒によるカップリング反応を用いて実現してもよい。特に、薗頭カップリングが挙げられる(例えば、Synthesis(5),761,(2007);Catalysis Communications,7,377(2006);Org.Synth.Coll.,9,117(1998);Tet.Lett.,50,4467(1975);J.O.C,63,8551(1998);Djakovitchら、Adv.Synth.Catal.346,1782〜1792(2004);またはHuaら、Journ.Org.Chem.,71,2535(2006)を参照されたい)。したがって、ある特定の実施形態では、式(V)と(VI)の化合物の反応は、パラジウム触媒の存在下で行われる。銅共触媒とアミンの一方または両方が存在していてもよい。
【0015】
一例として、パラジウム触媒は、ハロ(例えば、クロロ)およびホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)配位子から選択される1個または複数の配位子を含んでもよい。銅共触媒は、例えば、ハロゲン化銅、例えば、ヨウ化銅でもよい。アミンは、例えば、トリエチルアミンでもよい。
【0016】
式(V)の化合物は、式(VII)の化合物を還元することによって得ることができる。
【化41】


(式中、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルである。)
【0017】
一例として、式(VII)の化合物の還元は、水素化ホウ素アルカリ金属などの還元剤を使って実施してもよい。特に、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0018】
式(VII)の化合物は、式(VIII)の化合物を
【化42】


式(IX)の化合物と反応させることによって得ることができる。
【化43】


(式中、Rは離脱基である。)
【0019】
式(VIII)と(IX)の化合物の反応は、通常、式(VIII)の化合物の窒素原子のα位にある炭素原子からプロトンを取り出すことができる塩基の存在下で行う。例示的な塩基には、ナトリウムエタノレート(ナトリウムエトキシド)などがある。
【0020】
式(III)の化合物は、式(X)の化合物を還元することによって得ることもできる。
【化44】


(式中、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルである。)
【0021】
一例として、式(X)の化合物の還元は、水素化ホウ素アルカリ金属塩などの還元剤を使用して行ってもよい。特に、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0022】
式(X)の化合物は、式(VII)の化合物を
【化45】


式(VI)の化合物と反応させることによって得ることができる。
【化46】

【0023】
式(VII)と(VI)の化合物のカップリングは、当該分野で公知の方法、例えば、薗頭カップリングおよび他の金属触媒カップリング反応を使用して実現してもよい。ある特定の実施形態では、式(VII)と(VI)の化合物の反応は、パラジウム触媒、銅共触媒およびアミンの存在下で行われる。例えば、パラジウム触媒は、ハロ(例えば、クロロ)およびホスフィン(例えば、トリフェニルホスフィン)配位子から選択される1以上の配位子を含んでもよい。銅共触媒は、例えば、ハロゲン化銅、例えば、ヨウ化銅でもよい。
【0024】
式(X)の化合物は、上式(VIII)、(IX)および(VI)の化合物を、連続フロー、例えば、多成分ドミノ反応として、反応させて直接得ることもできる。任意選択で、第一の工程において、式(VIII)と(IX)の化合物を混合することにより式(VII)の化合物を形成し、続く工程で、式(VI)の化合物を加えることによって、式(X)の化合物を形成する。
【0025】
本発明は、式(I)の化合物、例えば、FTY720、または医薬的に許容される塩を製造する代替方法も提供し、この方法は、
(a)式(X)の化合物を還元して式(IV)の化合物を形成する工程(下記のとおり)と、
(b)式(IV)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(c)式(II)の化合物を脱保護し、式(I)の化合物を形成する工程と、
(d)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む。
【0026】
一例として、式(X)の化合物から式(IV)の化合物への還元は、例えば、Pd−C触媒などの触媒の存在下で、水素化によって実現してもよい。式(IV)の化合物の還元は、水素化ホウ素アルカリ金属などの還元剤を使用して行ってもよい。特に、水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。
【0027】
他の実施形態では、式(II)の化合物は、式(X)の化合物から直接、例えばドミノ反応により、連続フロー方法で製造することができ、この方法は、
(a)式(X)の化合物を還元して式(IV)の化合物を形成する工程と、
(b)工程(a)で得た化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と
を含む。
【0028】
工程(a)と(b)における還元は上記のように行ってよい。
【0029】
また別の方法では、式(X)の化合物は、式(III)の化合物に還元される。
【0030】
このように、本発明はさらに、式(I)の化合物、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を製造する方法を提供し、この方法は、
(a)式(X)の化合物を還元して式(III)の化合物を形成する工程と、
(b)式(III)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(c)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含み、この方法は、連続フローで、例えばドミノ反応として任意選択で行ってもよい。
【0031】
他の方法では、式(X)の化合物は式(II)の化合物に直接還元される。したがって、本発明は、式(I)の化合物、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を製造する方法も提供し、この方法は、
(a)式(X)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含み、この方法は、連続フローで、例えばドミノ反応として任意選択で行ってもよい。
【0032】
式(X)の化合物から式(II)の化合物への還元は、通常Pd−Cなどの触媒の存在下で、例えば水素化によって実現してもよい。ある特定の実施形態では、式(X)の化合物は酢酸などの酸性のプロトン性溶媒の存在下で、水素化によって還元される。適切な手順は当業者に公知である。
【0033】
さらに他の方法では、式(X)の化合物は、連続フローで、例えば、ドミノ反応として製造される。例えば、式(X)の化合物、式(VIII)の化合物、式(IX)の化合物、および式(VI)の化合物の混合物から直接、すなわち式(VII)の中間体化合物を後処理せずに、例えば精製せずに、製造される。式(VIII)、(IX)および(VI)の化合物は、反応の始めから混合してもよい。あるいは、式(VIII)と(IX)の化合物は、最初に混ぜてよいが、それは、式(VI)の化合物を添加してからである。式(VIII)と(IX)の化合物のカップリングは、上記のように行ってよい。式(VII)と(VI)の化合物のカップリングも、上記のように、例えば、薗頭法によって行ってよい。
【0034】
したがって、本発明は、式(X)の化合物を製造する方法も提供し、この方法は、
(a)式(VIII)と(IX)の化合物を反応させて式(VII)の化合物を得る工程と、
(b)式(VI)の化合物を工程(a)で得た化合物と直接反応させて式(X)の化合物を得る工程と
を含み、この方法は、連続フローで、例えば、ドミノ反応として行われる。
【0035】
このように、本発明は、式(I)の化合物、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を製造するための連続方法、例えば、多成分ドミノ反応も提供し、この方法は、
(a)式(VIII)と(IX)の化合物を反応させて式(VII)の化合物を得る工程と、
(b)式(VI)の化合物を工程(a)で得た化合物と直接反応させて式(X)の化合物を得る工程と、
(c)工程(b)で直接得た化合物を還元して式(II)の化合物を得る工程と、
(d)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(e)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む。
【0036】
任意選択で、工程(c)は、次のように行われる。
(c1)工程(b)で直接得た化合物を還元して式(IV)の化合物を得る工程、および
(c2)工程(c1)で直接得た化合物を還元して式(II)の化合物を得る工程。
【0037】
例示のためにすぎないが、次の反応スキームで本発明の種々の方法を要約する。
【化47】

【0038】
このスキームから明らかなように、市販され容易に入手できる式(IX)の化合物を使用して、パラ置換された生成物の形成が制御される位置選択的な方法が提供される。
【0039】
本発明は、式(I)の化合物を製造する上記の方法、ならびにそのそれぞれの工程および連続工程のすべての組合せを含む。上記のように、式(I)の化合物、例えば、FTY720は、医薬的に許容される塩の形にさらに変換することもできる。
【0040】
特定の方法について、以下の番号付き項目に示す。
1.式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
(a)式(III)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む方法。
2.式(III)の化合物が式(V)の化合物を式(VI)の化合物と反応させることによって得られる、第1項に記載の方法。
3.式(V)の化合物が式(VII)の化合物を還元することによって得られる、第2項に記載の方法。
4.式(VII)の化合物が式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と反応させることによって得られる、第3項に記載の方法。
5.式(III)の化合物が式(X)の化合物を還元することによって得られる、第1項に記載の方法。
6.式(X)の化合物は式(VII)の化合物を式(VI)の化合物と反応させることによって得られる、第5項に記載の方法。
7.式(VII)の化合物が第4項に記載の式(VIII)と(IX)の化合物を反応させることによって得られる、第6項に記載の方法。
8.式(X)の化合物が式(VIII)、(IX)および(VI)の化合物を反応させることによって得られる、第5項に記載の方法。
9.式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
(a)式(X)の化合物を還元して式(IV)の化合物を形成する工程と、
(b)式(IV)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(c)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(d)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む方法。
10.式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
(a)式(X)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む方法。
11.式(I)の化合物、またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
(a)式(X)の化合物を還元して式(III)の化合物を形成する工程と、
(b)式(III)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
(c)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む方法。
12.式(X)の化合物が、第6項に記載の式(VII)と(VI)の化合物を反応させることによって得られる、第9項または第10項に記載の方法。
13.式(VII)の化合物が、第4項に記載の式(VIII)と(IX)の化合物を反応させることによって得られる、第12項に記載の方法。
14.式(X)の化合物が、第8項に記載の式(VIII)、(IX)および(VI)の化合物を反応させることによって得られる、第9項または第10項に記載の方法。
15.式(I)の化合物を塩、例えば塩酸塩に変換する工程を含む、前項のいずれかに記載の方法。
16.連続フローで、例えば、多成分ドミノ反応として行われる、前項のいずれかに記載の方法。
17.式(I)の化合物がFTY720である、前項のいずれかに記載の方法。
18.式(III)、式(VI)または式(X)の化合物を還元する工程を含む、式(II)の化合物またはその塩を製造する方法。
19.式(III)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
(a)式(V)の化合物を式(VI)の化合物と反応させる工程、または
(b)式(X)の化合物を還元する工程
を含む方法。
20.式(X)の化合物を還元する工程を含む、式(IV)の化合物またはその塩を製造する方法。
21.式(VII)の化合物を還元する工程を含む、式(V)の化合物を製造する方法。
22.式(VII)の化合物を式(VI)の化合物と反応させる工程を含む、式(X)の化合物またはその塩を製造する方法。
23.式(VIII)、(IX)および(IV)の化合物を反応させる工程を含む、式(X)の化合物またはその塩を製造する方法。
24.式(VIII)の化合物を式(IX)の化合物と反応させる工程を含む、式(VII)の化合物またはその塩を製造する方法。
25.連続フローで、例えば、多成分ドミノ反応として行われる、第18項から第24項に記載の方法。
【0041】
また、本発明は、還元工程において、例えば式(X)の化合物を還元する際に形成することができる以下の化合物およびその塩に関する。
【化48】

【0042】
次の方法も本発明に含まれる。
1a.式(X)の化合物を還元する工程を含む、式(XIa)の化合物を製造する方法。
【0043】
次の方法も本発明に含まれる。
1a.式(X)の化合物を還元する工程を含む、式(XIb)の化合物を製造する方法。
【0044】
次の方法も、本発明に含まれる。
1a.式(X)の化合物を還元する工程を含む、式(XIc)の化合物を製造する方法。
【0045】
本発明は、2−アミノ−2−[2−(4−C2〜20−アルキル−フェニル)エチル]プロパン−1,3−ジオール、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を製造するための、例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物ならびにその塩から選択される種々の化合物の使用にも関する。
【0046】
式(I)の化合物またはその中間体化合物は、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留、遠心分離、洗浄または乾燥などの従来の方法によって精製および/または分離することができる。
【0047】
式(I)の化合物は医薬的に許容される塩に変換することができる。塩には、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、および硫酸塩などの無機酸との塩;酢酸塩、乳酸塩、琥珀酸塩または酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩、およびベンゼンスルホン酸塩など有機酸との塩などが挙げられる。好ましい塩は塩酸塩である。式(I)の化合物、特にFTY720は、公知の方法に従って、例えば、最後の反応工程または再結晶の前にHClを添加することによって、塩酸塩の形に変換することができる。
【0048】
本明細書に記載された様々な式および方法のそれぞれに関しては、Rは、例えば、C1〜18アルキルでもよく、このアルキル基は直鎖でも分枝鎖でもよい。ある実施形態では、Rはヘキシルである。特定の実施形態では、Rはn−ヘキシルであり、すなわち式(I)の化合物はFTY720である。
【0049】
で表され得る適当な保護基は、「Protective Groups in Organic Synthesis」, T.W.Green, J.Wiley & Sons NY (1982), 219〜287に記載されている。例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイルなどのアシル;アルコキシカルボニル(例えば、tert−ブチルオキシカルボニル);アリルオキシカルボニル;トリチルなどが挙げられる。ある実施形態では、Rはアシル、例えば、アセチルである。アシル基は、当該分野で周知の手順を用いて除去してもよい。ある実施形態では、Rは、アルカリ金属水素化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化リチウムを使って除去されるアシル基である。
【0050】
はそれぞれ独立して、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルから選択してもよい。
【0051】
またはRで表され得る離脱基の例としては、ハロ、すなわちフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードが挙げられる。ある特定の実施形態では、Rはブロモまたはクロロである。
【0052】
で表され得る離脱基の例として、ハロ、すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードが挙げられる。ある特定の実施形態では、Rはブロモである。他の例としては、メシレート基、ベシレート基、トシレート基、ノシレート基およびブロシレート基が挙げられ、これらは適当なハロゲン化スルホニルを用いてヒドロキシ基をエステル化することによって得ることができる。
【0053】
ある実施形態において、「−−−−」で表される任意選択の第3の結合は存在しない。別の実施形態において、「−−−−」で表される任意選択の第3の結合は存在する。
【0054】
本明細書に開示される種々の中間体化合物、例えば式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物も治療上の有用性がある可能性がある。特に、中間体化合物、例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物は、スフィンゴシン−1リン酸(S1P)受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして、例えば、下記の治療および予防に有用である可能性がある。
a)例えば、心臓、肺、心肺同時、肝臓、腎臓、膵臓、皮膚または角膜の移植のレシピエントの治療のための、臓器または組織の移植拒絶反応の治療および予防;ならびに骨髄移植の後に、特に急性もしくは慢性の同種および異種移植片拒絶反応の治療において、またはインスリン産生細胞(例えば膵島細胞)の移植において発症することがある、移植片対宿主病の予防;ならびに
b)自己免疫疾患または炎症状態、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型またはII型の糖尿病およびこれらに関連する障害、脈管炎、悪性貧血、シェーグレン症候群、ブドウ膜炎、乾癬、グレーブス眼症、円形脱毛症など、アレルギー性疾患、例えばアレルギー性喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎、潜在的な異常反応(underlying aberrant reaction)を場合によって伴う炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患、クローン病または潰瘍性大腸炎、内因性喘息、炎症性肺損傷、炎症性肝臓損傷、炎症性糸球体損傷、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、刺激性接触皮膚炎、さらに湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、免疫を介した障害の皮膚症状発現、炎症性眼疾患、角結膜炎、心筋炎または肝炎の治療および予防。
【0055】
上記の使用において必要となる投薬量は、もちろん、投与方法、治療される特定の状態および所望の効果によって異なる。一般に、満足のいく結果が、体重1kgあたり約0.1mg〜約100mgの1日投薬量で得られるとされている。大型哺乳動物、例えば、ヒトで示される1日の投薬量は、約0.5mg〜2000mgの範囲であり、簡便には、例えば、1日4回までの分割投与で、または遅滞形態(retard form)で投与される。
【0056】
本発明の化合物は、任意の適当な経路で、例えば、経口で、例えば、錠剤またはカプセル剤の形で、局所的または非経口的に、例えば、静脈内に、投与してもよい。医薬組成物は、この化合物を医薬的に許容される担体または賦形剤と混合することにより、従来の方法で製造することができる。経口投与の単位投薬形態では、例えば、含有される有効成分は約0.1mg〜約500mgである。
【0057】
本発明の化合物は、例えば上記に示すように、遊離した形または医薬的に許容される塩の形で投与してもよい。このような塩は従来の方法で調製でき、遊離化合物と同程度の活性を示す。
【0058】
本発明の化合物は、例えば、急性もしくは慢性の同種移植片拒絶反応または炎症性もしくは自己免疫性の障害を治療または予防するために、免疫調節レジメンにおいて、単独の有効成分としてまたは他の薬物と、あるいは他の抗炎症剤と併用で投与してもよい。例えば、本化合物は、カルシニューリン阻害剤(例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ABT−281、ASM981)、mTOR阻害薬、例えば、ラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシル)エチル−ラパマイシン、CCI779、ABT578またはAP23573など;コルチコステロイド;シクロホスファミド;アザチオプレン;メトトレキサート;他のS1P受容体アゴニスト(例えば、FTY720またはその類似体);レフルノミドまたはその類似体;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリンまたはその類似体;免疫抑制モノクローナル抗体、例えば白血球受容体(例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD11a/CD18、CD7、CD25、CD27、B7、CD40、CD45、CD58、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えば、CD154)に対するモノクローナル抗体;あるいは、少なくともCTLA4の細胞外ドメイン部分またはその変異体を有する他の免疫調節化合物、例えば、非CTLA4タンパク質配列に結合した、少なくともCTLA4の細胞外部分またはその変異体をもつ組換え結合分子、例えば、CTLA4Ig(例えば、ATCC68629と称する)またはそれらの変異体、例えば、LEA29Y、または他の接着分子阻害剤、例えば、LFA−1アンタゴニスト、セレクチンアンタゴニストおよびVLA−4アンタゴニストを含む、mAbまたは低分子量阻害剤と組み合わせて使用してもよい。
【0059】
化合物を別の免疫調節剤または抗炎症剤と併用して投与する場合、同時投与される免疫調節剤または抗炎症剤の投薬量は、もちろん、使用する併用薬の種類、治療される状態などによって異なる。
【0060】
したがって、本発明は以下を提供する。
1.例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、臓器または組織の移植拒絶反応を治療または予防する方法。
2.例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩の治療有効量を被験体に投与する工程を含む、自己免疫疾患または炎症状態(例えば、多発性硬化症)を治療または予防する方法。
3.医薬品として使用される、例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される中間体化合物またはその医薬的に許容される塩。
4.例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩と、医薬的に許容される賦形剤または担体とを含む医薬組成物。
5.例えば、上記に開示される方法における薬剤の調製のための、例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩の使用。
6.(a)例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩と、(b)上記の状態を予防または治療するのに適する第2の原薬(drug substance)とを含む、医薬的な組合せ(併用(combination))。
7.(a)例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその医薬的に許容される塩と、(b)上記の状態の予防または治療するのに適する第2の原薬とを、例えば、同時にまたは連続して同時投与する工程を含む、上記に定義した方法。
【0061】
本発明は、式(I)の化合物、例えば、FTY720、またはその医薬的に許容される塩を、例えば、式(III)、(V)、(VII)、(X)、(XIa)、(XIb)および(XIc)の化合物から選択される1種以上の中間体化合物またはその塩の比較的少量と組み合わせて含む組成物も提供する。
【実施例】
【0062】
下記実施例は本発明の例示である。
【0063】
[実施例1]
【化49】


乾燥フラスコに、ナトリウムエタノレート1.17g(0.24g=3.62mmol)のエタノール溶液(濃度21%)を入れる。この溶液を無水エタノール2mlで希釈する。次に、アセトアミドマロン酸ジエチル1.04g(4.81mmol)を少量ずつ添加し、次いで30分間60℃まで加熱する。この澄んだ黄色の溶液を室温まで冷却する。次に、室温で、乾燥エタノール5mlと乾燥THF2mlに溶解した4−ブロモフェナシルブロミド0.51g(1.81mmol)を10分以内に滴下漏斗を介して添加する。HPLC制御により、添加が完了した後すぐに4−ブロモフェナシルブロミドの完全な変換が完了していることが示される。この反応混合物を、攪拌しながら温度0℃で、10%クエン酸(25ml)でクエンチする。酢酸エチル50mlを添加し、相を分離する。水相を酢酸エチル20mlで3回抽出する。次いで、合わせた有機相をKHCO3溶液で3回抽出し、最後にMgSOで乾燥させる。濾過後、これらの溶媒を、減圧下で、最後は高真空下で蒸発させ、粗生成物を黄色の油状物として得る。この粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=1:1)により分離される過剰なアセトアミドマロネートをなお含有している。
【化50】

【0064】
[実施例2]
【化51】


乾燥フラスコに、乾燥窒素下で、実施例1の化合物0.83g(2mmol)、次いでNMP(N−メチルピロリドン)とトリエチアミンの混合物(2:1)9mlを入れる。この溶液に、窒素下で、1−オクチン0.33g(3mmol)、Cul(約2モル%)8mg、およびビス(トリフェニル−ホスフィン)パラジウム(II)クロリド21mg(1.5モル%)を添加する。この反応混合物を室温で一晩(15時間)攪拌する。HPLC制御により完全な変換が示される。このオレンジ色の反応混合物(懸濁液)に水30mlとt−ブチルメチルエーテル30mlを添加する。この二相混合物を10分間攪拌すると相が分離する。有機相をクエン酸溶液(10%)20mlで3回洗浄し、最後にブライン20mlで3回洗浄する。この有機相を真空下、MgSOで乾燥させ、濾過し蒸発させると暗黒色の油状物が得られる。最後にこの粗油状物を高真空下で脱気する。
【化52】

【0065】
[実施例3]
【化53】


窒素雰囲気下で予め乾かしておいた50ml三口フラスコに、ナトリウムエトキシド(エタノール中21%溶液)4.5g(14mmol)および追加の乾燥エタノール7.5mlを入れる。次いで、アセトアミドマロン酸ジエチルエステル4.5g(21mmol)を、10分間攪拌しながら室温で少量ずつ添加する。この澄んだ黄色の溶液を25℃でさらに30分間攪拌する。次いで、テトラヒドロフラン7mlおよびエタノール23mlに溶解した4−ブロモフェナシルブロミド(4-bromo-phen-acylbromide)1.9g(7mmol)を30分以内に滴下漏斗を介して25℃で添加する。添加後すぐのHPLC制御によりフェナシルブロミドの完全な変換が示される。
【0066】
このアルキル化マロン酸溶液に、乾燥NMP7mlおよび1−オクチン1.54g(14mmol)を添加する。次いで、ヨウ化銅0.047g(0.25mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)−Pd−(II)−クロリド0.197g(0.28mmol)の触媒カクテルを添加する。その後、懸濁液を80℃まで加熱する。30分後のHPLC分析によりアリールブロミドの中間体の変換が示される。
【0067】
反応混合物を真空下で蒸発させる。次に、この残渣をTBME60mlに溶解し水30mlで抽出する。水相をTBME30mlで2回抽出し、複合の有機相を水20mlで4回洗浄する。この有機相をNaSOで乾燥させ濾過する。この濾過液を真空下で蒸発させると粗生成物が得られる。この粗生成物を、溶離剤(酢酸エチル:ヘプタン、1:2)を使用してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製する。H−NMRは実施例2と同様である。
【0068】
[実施例4]
【化54】


乾燥フラスコに、N下で、21%ナトリウムエトキシドのエタノール溶液3.25g(ナトリウムエトキシド10mmolに相当)および乾燥NMP(N−メチルピロリジノン)7.5mlを入れる。次いで、固体2−アセトアミドマロン酸ジエチルエステル3.26g(15mmol)を少量ずつ10分間添加すると茶色の懸濁液が生成される。追加の乾燥エタノール3.0mlを添加し43℃に加熱すると、赤茶色の溶液が得られる。ここで、NMP14mlに溶解した4−ブロモフェナシルブロミド1.39g(5mmol)を脱プロトン化したマロネートに滴下漏斗を介して25分間かけてゆっくりと添加する。添加後すぐのHPLC制御により、この4−ブロモフェナシルブロミドが所望の生成物に変換していることが示される。
【0069】
[実施例5]
【化55】


生成物VIIを2mmol含有する反応溶液を実施例3で記載されているように調製する。この溶液をアルゴン下で65℃に加熱する。次いで、1−オクチン0.44g(4mmol)、ヨウ化銅(I)16mg(0.07mmol)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)−Pd−(0)56mg(0.05mmol)のNMP溶液2mlを添加する。この反応物を70℃で加熱する。30分後のHPLC制御により、25分後にすでに示される。
【0070】
[実施例6]
【化56】


乾燥三口フラスコに、乾燥窒素下で、ナトリウムエトキシド溶液3.9g(12mmol)(21%エタノール中)、エタノール15ml、2−アセトアミドマロン酸ジエチルエステル3.9g(18mmol)を入れる。生成された溶液に、1−オクチン1.32g(12mmol)、ヨウ化銅(I)0.04g(0.2mmol)およびビス(トリフェニル−ホスフィン)−Pd−(II)−クロリド0.17g(0.24mmol)をさらに添加すると懸濁液が生成される。この懸濁液に、NMP8.5mlおよびエタノール10mlに溶解した4−ブロモフェナシルブロミド1.7g(6mmol)を30分以内に滴下漏斗を介して室温で添加する。添加が完了した後、反応混合物を攪拌しながら88℃の外部温度まで加熱する(還流)。30分後のHPLC制御により、アルキル化生成物への変換が示される(8.45分)。反応混合物を真空下で蒸発させ、実施例3に記載のように後処理と精製を行う。
【0071】
[実施例7]
【化57】


オートクレーブに、実施例5の出発物質0.91g(2mmol)およびエタノール40ml、ならびに(5%)触媒(Degussa E-101)であるPd−C200mgを入れる。この反応混合物を55℃の温度および10バールで水素化させる。18時間後、圧力は4バールに下がった。HPLC分析により、出発物質が新しい中間体および所望の生成物(IV)に変換していることが示される。同じ触媒をさらに200mg加えて、水素化を4バール55℃で続けた。
【0072】
さらに45時間後、HPLC制御により、所望の生成物(IV)への明らかな変換が示される。この反応混合物を濾過しエタノールで洗浄して触媒を除去する。濾過液を真空下で蒸発させると、室温で貯蔵中に結晶化した白色の油状物(0.75g)が得られる。H−NMRおよびMSならびに基準試料(authentic sample)との比較により、下記構造が証明される。
【化58】

【0073】
[実施例8]
【化59】


生成物VIIの濃度0.17mmol/gの反応溶液206gを、実施例3の最初の工程に記載のとおり調製する。NMP46.01gに溶解したヨウ化銅(I)0.23g(1.2mmol)、ビス(トリフェニル−ホスフィン)−パラジウム−(II)−クロリド0.98g(1.4mmol)および1−オクチン7.71g(69.9mmol)の第2の溶液を調製する。この調製した溶液の濃度は1.26mmol/g(1−オクチン/溶液)である。両方の溶液を窒素下で保存する。エーアフェルトマイクロ反応器を乾燥エタノールで浄化し(purched)、maander反応器を110℃まで加熱する。次いで、生成物VIIを有する溶液に0.678g/分の燃料を注入し(prime)、また1−オクチン−溶液に0.192g/分の燃料を注入し、この系を3.5バールの圧力で45分間安定に保持し、流出する反応溶液を採取する。この分離した反応溶液を実施例3に従って後処理し清浄する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
【化1】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルである。)
(a)式(III)の化合物を還元して
【化2】


(式中、Rは保護基であり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
式(II)の化合物を形成する工程と、
【化3】


(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
【化4】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルである。)
(a)式(X)の化合物を還元して
【化5】


(式中、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
式(IV)の化合物を形成する工程と、
【化6】


(b)式(IV)の化合物を還元して式(II)の化合物を形成する工程と、
【化7】


(c)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(d)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む、前記方法。
【請求項3】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
【化8】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルである。)
(a)式(X)の化合物を還元して
【化9】


(式中、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
式(II)の化合物を形成する工程と、
【化10】


(b)式(II)の化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(c)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む、前記方法。
【請求項4】
式(II)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化11】


(式中、Rは水素またはC1〜18であり、Rは保護基である。)
式(III)または式(X)の化合物を還元する工程を含む、前記方法。
【化12】


(式中、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
【請求項5】
式(III)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化13】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルであり、Rは保護基であり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
(a)式(V)の化合物を、
【化14】


(式中、Rは離脱基である。)
式(VI)の化合物と反応させる工程、または
【化15】


(b)式(X)の化合物を還元する工程
【化16】


(式中、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルである。)
を含む、前記方法。
【請求項6】
式(IV)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化17】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルであり、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルである。)
式(X)の化合物を還元する工程を含む、前記方法。
【化18】


(式中、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
【請求項7】
がn−ヘキシルである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
式(X)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化19】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルであり、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
式(VII)の化合物を
【化20】


式(VI)の化合物と反応させる工程を含む、前記方法。
【化21】

【請求項9】
式(VII)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化22】


(式中、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、Rは離脱基である。)
式(VIII)の化合物を
【化23】


式(IX)の化合物と反応させる工程を含む、前記方法。
【化24】


(式中、Rは離脱基である。)
【請求項10】
式(X)の化合物またはその塩を製造する方法であって、
【化25】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルであり、Rは保護基であり、Rはそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)
(a)式(VIII)の化合物を
【化26】


式(IX)の化合物と反応させて
【化27】


(式中、RとRはそれぞれ離脱基である。)
式(VII)の化合物を得る工程と、
【化28】


(b)式(VI)の化合物を
【化29】


工程(a)で得られた化合物と反応させて式(X)の化合物を得る工程と
を含む、前記方法。
【請求項11】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を製造する方法であって、
【化30】


(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルである。)
(a)請求項10に従って式(X)の化合物またはその塩を調製する工程と、
(b)工程(a)の化合物を反応させて式(II)の化合物を形成する工程と、
【化31】


(c)工程(d)で得られる化合物を脱保護して式(I)の化合物を形成する工程と、
(f)任意選択で、式(I)の化合物を医薬的に許容される塩に変換する工程と
を含む、前記方法。
【請求項12】
連続フローで実施される、請求項1〜11のいずれか一項、例えば、請求項2、3、10または11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
次式のうちの一つの化合物またはそのそれぞれの化合物の塩。
【化32】

【化33】

(式中、Rは水素またはC1〜18アルキルであり、Rは保護基であり、
はそれぞれ独立してC1〜4アルキルであり、
は離脱基であり、
「−−−−」は任意選択の第3の結合を表す。)

【公表番号】特表2011−515364(P2011−515364A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500204(P2011−500204)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053163
【国際公開番号】WO2009/115534
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】