説明

2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体及び副甲状腺ホルモンの組合せを含んでなる医薬組成物及び方法

本発明は、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せを含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。特に、本発明は、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せを含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。特に、本発明は、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、ステロイド分子の1群へ言及する一般用語である。1,25−ジヒドロキシビタミンD(1,25−ジヒドロキシコレカルシフェロール)と呼ばれるビタミンDの活性型は、ヒトにおいて、7−デヒドロコレステロールのビタミンD(コレカルシフェロール)への変換により生合成される。この変換は皮膚で起こり、典型的には太陽光に由来する、UV放射線を必要とする。次いで、ビタミンDは、肝臓で25−ヒドロキシビタミンD(25−ヒドロキシコレカルシフェロール)へ代謝され、次いで腎臓でビタミンDの活性型、1,25−ジヒドロキシビタミンDへさらに代謝される。次いで、1,25−ジヒドロキシビタミンDは身体全体へ分配されて、そこで細胞内ビタミンD受容体へ結合する。
【0003】
ビタミンDの活性型は、ミネラル代謝及び骨成長に関与することか知られているホルモンであり、カルシウムの腸吸収を促進する。
ビタミンD類似体は、1998年12月1日発行の米国特許第5,843,928号に開示されている。開示された化合物は2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体であり、1,25−ジヒドロキシビタミンDと比較するとき、低い腸カルシウム輸送活性と高い骨カルシウム可動化活性を特徴とする。
【0004】
本発明は、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体、特に、化合物:2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンD(2MDとしても知られる)と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せを使用する治療の方法を提供する。
【0005】
発明の要約
本発明は、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せを含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。特に、本発明は、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を含んでなる医薬組成物と、その必要な患者へそれを投与することを含んでなる治療の方法に関する。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せを使用する、医薬組成物と、代謝性骨疾患、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ステロイド誘発性骨粗鬆症、低骨代謝回転骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、宿主対移植片拒絶、移植拒絶、慢性関節リウマチ、喘息、骨折、移植骨片、座瘡、脱毛症、乾燥皮膚、皮膚堅性不全、皮脂分泌不全、皺、高血圧、白血病、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、性機能低下症、男性休止(andropause)、虚弱、筋損傷、肉減少症(sarcopenia)、骨肉腫、低カルシウム血症テタニー、上皮小体機能低下症、くる病、ビタミンD欠乏症、無食欲症、果敢な運動行動に由来する骨量低下を治療する方法と、思春期におけるピーク骨量の亢進のための方法と、二回目の股関節骨折の予防のための方法に関する。
【0007】
好ましい態様において、本発明は、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を使用する、代謝性骨疾患、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ステロイド誘発性骨粗鬆症、低骨代謝回転骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、宿主対移植片拒絶、移植拒絶、慢性関節リウマチ、喘息、骨折、移植骨片、座瘡、脱毛症、乾燥皮膚、皮膚堅性不全、皮脂分泌不全、皺、高血圧、白血病、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、性機能低下症、男性休止、虚弱、筋損傷、肉減少症、骨肉腫、低カルシウム血症テタニー、上皮小体機能低下症、くる病、ビタミンD欠乏症、無食欲症、果敢な運動行動に由来する骨量低下を治療する方法と、青年期におけるピーク骨量の亢進のための方法と二回目の股関節骨折の予防のための方法に関する。
【0008】
好ましい態様において、上記組合せを使用する治療の方法は、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、骨折、移植骨片、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、虚弱、筋損傷、及び肉減少症のためのものである。
【0009】
骨減少症は、骨の希薄化であるが、骨粗鬆症で見られるほどではなく、真性骨粗鬆症の前の段階である。世界保健機構は、個人が正常な骨を有するか、骨減少症を有するか又は骨粗鬆症を有するかを示すための骨量密度(BMD)に基づいた診断カテゴリーを開発した。正常な骨密度は、若年成人の平均骨密度の1の標準偏差(+1又は−1)内にある。骨減少症(低い骨密度)は、若年成人平均より標準偏差が1〜2.5低い(−1〜−2.5)骨密度として定義され、骨粗鬆症は、若年成人平均より標準偏差が2.5以上低い(>−2.5)骨密度として定義される。
【0010】
性機能低下症は、一般的には、生殖子形成及び/又は性腺ホルモンの分泌の不足により発露されるような不十分な性腺機能として定義され、思春期(puberty)の遅延、及び/又は生殖不全をもたらす場合がある。主に3種類の性機能低下症がある:1)一次性性機能低下症;2)二次性性機能低下症、及び3)耐性性機能低下症。一次性性機能低下症では、ライディッヒ細胞への損傷によりアンドロゲン産生が妨げられる。二次性性機能低下症では、視床下部又は下垂体の障害によりゴナドトロピン分泌が妨げられ、耐性性機能低下症では、アンドロゲンへの身体応答が不充分である。
【0011】
くる病は、骨の軟化及び弱化に関連する小児期の障害であり、主に、ビタミンD、カルシウム、及び/又はリン酸塩の不足により引き起こされる。
無食欲症は、以下の特徴を有する疾患である:年齢及び身長に対する下限正常体重以上に体重を維持することを拒むこと(例えば、期待体重の85%未満の体重の維持をもたらす減量;又は期待体重の85%未満の体重の維持をもたらす、成長期の間に期待される体重増加をしないこと);低体重であっても、体重増加又は肥ることを強く恐れること;及び、自分の体重又は格好について経験することへの不安、体重や格好が自己評価に不当に影響すること、又は現行の低体重が重大であることの否認。本発明の化合物及び組合せは、無食欲症を治療するために使用してよく、無食欲症に関連した骨損失を治療するために使用することができる。
【0012】
本発明の化合物及び組合せを使用して治療し得る別の状態は、特に女性における、果敢な運動行動に関連した骨損失である。運動、競技、又はスポーツにおける果敢な参画は、骨損失をもたらす場合があり、女性では無月経を通常伴う。果敢な運動行動を明示する男性も骨損失を明示する。
【0013】
男性休止(男性更年期又は男性停止(viropause)とも呼ばれる)は、典型的には、40歳と55歳の年齢の間で起こる、男性の自然な出来事である。男性休止は、ホルモン、テストステロンのレベルの低下である。テストステロンレベルが低下すると、男性は男性休止に入り、精力及び体力の減少、体脂肪の増加、骨粗鬆症、うつ病、心的明敏性の減少、筋力維持の不能、心臓血管系疾患、アテローム性動脈硬化症、リビドー減少、オルガスム強度の低下、勃起不全症、苛々の増加、そして痛み及び関節硬直(特に手及び足の)が含まれる、様々な変化又は状態が観察される場合がある。さらに、男性休止を体験しているか又は体験した男性は、女性化乳房、高コレステロール血症が含まれる血清脂質障害、血管反応性の低下、性機能低下症、及び良性前立腺肥大を有する場合がある。
【0014】
虚弱は、転倒による損傷の高リスク、病気からの回復の難しさ、入院の長期化、及び日常生活での支援を必要とする長期の無力状態をもたらす、骨格筋量の、進行性かつ容赦なき損失を特徴とする。筋肉量、体力、及び身体機能の低下は、典型的には、生活の質の低下、独立性の欠如、及び死亡につながる。虚弱は、通常、加齢と関連するが、疾患誘発性の悪液質、移動不能、又は薬物誘発性の肉減少症のような、他の要因により筋肉損失と体力低下が起こるときに生じる場合もある。虚弱を意味するのに使用されてきた別の用語は肉減少症であり、これは、骨格筋の量又は質の損失についての一般用語である。その全体の質に貢献する骨格筋の特性の例には、収縮性、線維の大きさ及び種類、疲労性、ホルモン応答性、グルコース取込み/代謝、及び毛管密度が含まれる。筋肉の質の損失は、筋肉量の損失がない場合でも、体力の損失と身体機能の障害をもたらす場合がある。
【0015】
本明細書に使用する用語「筋肉損傷」は、あらゆる筋肉組織への損傷である。筋肉損傷は、事故、運動傷害、内分泌障害、疾患、創傷、又は外科的手技の結果としての筋肉組織への物的外傷より生じる場合がある。本発明の方法は、筋肉損傷の修復を促進することによって筋肉損傷を治療するのに有用である。
【0016】
高齢女性における骨粗鬆症は、成人期につながる思春期において獲得したピーク骨量の量、そのようなピーク骨量の前更年期での維持、及び更年期後骨量損失の速度によって決定される。ピーク骨量の決定因子には、遺伝、栄養、体重負荷(運動)、及び環境の要因が含まれる。故に、晩年での骨粗鬆症の発症を防ぐのに骨格量を最大化するためには、思春期のピーク骨量を高めることが望ましい。同様に、男性でも、思春期のピーク骨量を高めることが望ましい。
【0017】
股関節骨折は、医療資源と患者の罹病及び死亡に重大な影響を及ぼす。股関節骨折で収容された患者について、さらなる骨折リスクの低下を目的とした予防手段が考慮されることはほとんどない。現在、10〜13%の患者が後に二回目の股関節骨折を蒙る。二回目の股関節骨折を罹患した患者の中で、自力で歩行する能力を二回目の骨折の後で維持する患者は、それを一回目の後で維持する患者より少なかった(それぞれ、53%と91%、P<0.0005)。Pearse E. O. et al., Injury, 2003, 34(7), 518-521。二回目の股関節骨折の後では、患者の移動能力により、その将来の社会的自立が決定された。より高齢の患者と頻回の転倒の既往歴のある患者は、骨折の間の間隔がより短かった。二回目の股関節骨折は、患者の運動性と社会的自立に対して重大なさらなる影響を及ぼす。故に、二回目の股関節骨折の予防への新たな方法をもつことが望ましい。
【0018】
骨肉腫は、比較的よくある、きわめて悪性の原発性骨腫瘍であり、肺へ転移する傾向がある。骨肉腫は、どの年齢でも起こり得るが、10〜20歳のヒトで最も多い。すべての骨肉腫の約半分は、膝の領域に存在するが、どの骨でも見つかる可能性がある。疼痛と塊が骨肉腫の通常の症状である。骨肉腫への典型的な治療は、外科手術と組み合わせた化学療法である。メトトレキセート、ドキソルビシン、シスプラチン、又はカルボプラチンのような薬剤を用いた術前又は術後の化学療法が骨肉腫を治療するために使用し得る。
【0019】
上皮小体機能低下症は、低カルシウム血症への傾向であり、ホルモン欠乏症より生じる慢性テタニーとしばしば関連して、低い血清カルシウムと高い血清リンレベルを特徴とする。上皮小体機能低下症は、通常、甲状腺切除術の間でのいくつかの副甲状腺の偶発的な除去又はそれへの損傷の後で起こる。一過性の上皮小体機能低下症は、亜全的甲状腺切除術の後では一般的であり、専門的に実施された甲状腺切除術の3%未満では永続的に起こる。
【0020】
低カルシウム血症テタニーは、低カルシウム血症より生じるテタニーの形態である。低カルシウム血症は、正常な血漿タンパク濃度の存在下で8.8mg/dL(ミリグラム/デシリットル)未満の全血漿カルシウム濃度に減少することを特徴とする。テタニーは、自発症状とともに明白であるか、又は潜在的であり得る。テタニーは、明白であるとき、唇、舌、指、及び足の麻痺;長期化して苦痛を伴う場合がある、手足の痙攣;全身性の筋肉痛;及び顔面筋組織の痙攣のような、感覚症状を特徴とする。潜伏テタニーは、引き起こすには誘発試験を必要とし、一般的には、7〜8mg/dLのような、さほど重篤に減少していないカルシウム濃度で起こる。低カルシウム血症テタニーは、獣医学診療における動物でも観察される。例えば、ウマの低カルシウム血症テタニーは、血清イオン化カルシウムの急性枯渇と関連した稀な状態であり、マグネシウム及びリン酸塩の血清濃度の変化を伴う場合がある。それは、長期化した身体行使又は輸送(輸送中テタニー)の後で、そして授乳中の雌馬(妊婦テタニー)で起こる。徴候は多様であり、神経筋肉の過剰興奮性に関連する。
【0021】
本発明はまた、式Iの化合物のような2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体、及び担体、溶媒、希釈剤、等を含んでなる、代謝性骨疾患、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ステロイド誘発性骨粗鬆症、低骨代謝回転骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、宿主対移植片拒絶、移植拒絶、慢性関節リウマチ、喘息、骨折、移植骨片、座瘡、脱毛症、乾燥皮膚、皮膚堅性不全、皮脂分泌不全、皺、高血圧、白血病、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、性機能低下症、男性休止、虚弱、筋損傷、肉減少症、骨肉腫、低カルシウム血症テタニー、上皮小体機能低下症、くる病、ビタミンD欠乏症、無食欲症、果敢な運動行動に由来する骨量低下を治療すること、思春期におけるピーク骨量の亢進のためと二回目の股関節骨折の予防のための医薬組成物に関する。
【0022】
1つの態様において、本発明の組合せは、治療有効量の第一化合物(前記第一化合物は、式Iの化合物のような、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体である);及び、治療有効量の第二化合物(第二化合物は、副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体である)を含む。
【0023】
特に好ましい組合せは、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドトキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の組合せである。
本発明に使用することができる2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体は、米国特許第5,843,928号に開示され、該誘導体は、以下に示す一般式I:
【0024】
【化1】

【0025】
[式中、YとYは、同じでも異なってもよく、水素及びヒドロキシ保護基からなる群よりそれぞれ選択され、RとRは、同じでも異なってもよく、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、及びフルオロアルキルからなる群よりそれぞれ選択されるか、又は一緒になるとき、基:−(CH−(ここでXは、2〜5の整数である)を表し、そして式中、R基は、ビタミンD型化合物について知られる典型的な側鎖のいずれも表す]を特徴とする。
【0026】
より具体的には、Rは、直鎖、分岐鎖、又は環式でよく、そして、ヒドロキシ又は保護化ヒドロキシ基、フルオロ、カルボニル、エステル、エポキシ、アミノ、又は他のヘテロ原子基のような1以上の追加置換基を含有し得る、1〜35の炭素の飽和又は不飽和炭化水素基を表すことができる。好ましいこの型の側鎖は、以下の構造:
【0027】
【化2】

【0028】
[式中、立体化学中心(ステロイド番号付けでC−20に対応する)はR又はS配置(即ち、炭素20についての天然配置又は20−エピ配置のいずれか一方)をとる場合があり、式中、Zは、Y、−OY、−CHOY、−C≡CY、及び−CH=CHYより選択され、ここで二重結合は、シス又はトランスジオメトリーを有してよく、ここでYは、水素、メチル、−COR、及び構造:
【0029】
【化3】

【0030】
{式中、mとnは、独立して、0〜5の整数を表し、式中、Rは、水素、重水素、ヒドロキシ、保護化ヒドロキシ、フルオロ、トリフルオロメチル、及び、直鎖でも分岐鎖でもよく、ヒドロキシ又は保護化ヒドロキシ置換基を随意に担うC1−5アルキルより選択され、そして式中、R、R、及びRのそれぞれは、独立して、重水素、ジュウテロアルキル、水素、フルオロ、トリフルオロメチル、及び、直鎖でも分岐鎖でもよく、ヒドロキシ又は保護化ヒドロキシ置換基を随意に担うC1−5アルキルより選択され、そして式中、RとRは、一緒になるとき、オキソ基、又はアルキリデン基:=CR、又は基:−(CH−(ここでpは、2〜5の整数である)を表し、そして式中、RとRは、一緒になるとき、オキソ基、又は基:−(CH−(ここでqは、2〜5の整数である)を表し、そして式中、Rは、水素、ヒドロキシ、保護化ヒドロキシ、又はC1−5アルキルを表し、そしてここで、側鎖中の20、22、又は23位にあるCH基のいずれも窒素原子に置き換わってもよく、20、22、及び23位のそれぞれの−CH(CH)−、−CH(R)−、又は−CH(R)−基のいずれも酸素又はイオウ原子に置き換わってよい}の基より選択される]により表される。
【0031】
C−20位でのメチル置換基への波線は、炭素20がR又はS配置のいずれを有してもよいことを示す。
天然の20R配置の側鎖の特に重要な例は、以下の式(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)により表される構造、即ち、25−ヒドロキシビタミンD(a);ビタミンD(b);25−ヒドロキシビタミンD(c);ビタミンD(d);及び25−ヒドロキシビタミンDのC−24エピマー(e)に出現する側鎖である:
【0032】
【化4】

【0033】
本明細書に使用するように、用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基の一時的な保護のために通常使用する、例えば、アルコキシカルボニル、アシル、アルキルシリル又はアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と言及する)、及びアルコキシアルキル基のような基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、又はアリルオキシカルボニルのような、アルキル−O−CO−群である。用語「アシル」は、1〜6の炭素のアルカノイル基(すべてのその異性型において)、又はオキサリル、マロニル、スクシニル、又はグルタル基のような1〜6の炭素のカルボキシアルカノイル基、又はベンゾイルのような芳香族アシル基、又はハロ、ニトロ、又はアルキル置換ベンゾイル基、を意味する。本記載又は特許請求項において使用する単語「アルキル」は、1〜10の炭素の直鎖又は分岐鎖アルキル基をすべてのその異性型において意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、又はテトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロピラニルのような群である。好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、フェニル−t−ブチルシリル、及び類似のアルキル化シリル基である。用語「アリール」は、フェニル−、又はあらゆるアルキル−、ニトロ−、又はハロ−置換フェニル基を特定する。
【0034】
「保護化ヒドロキシ」基は、ヒドロキシ官能基の一時的又は永続的な保護に通常使用される上記の基(例えば、先に定義したような、シリル、アルコキシアルキル、アシル、又はアルコキシカルボニル基)のいずれかにより誘導又は保護されたヒドロキシ基である。用語「ヒドロキシアルキル」、「ジュウテロアルキル」、及び「フルオロアルキル」は、それぞれ1以上のヒドロキシ、重水素、又はフルオロ基により置換されたアルキル基を意味する。
【0035】
本記載において、用語「24−ホモ」は、側鎖中の炭素24位での1つのメチレン基の付加を意味し、用語「24−ジホモ」は、2つのメチレン基の付加を意味することに留意されたい。同様に、用語「トリホモ」は、3つのメチレン基の付加を意味する。また、用語「26,27−ジメチル」は、炭素26及び27位でのメチル基の付加を意味するので、例えば、RとRは、エチル基となる。同様に、用語「26,27−ジエチル」は、26及び27位でのエチル基の付加を意味するので、RとRは、プロピル基となる。
【0036】
以下の化合物のリストでは、炭素2位へ付く特別なアルキリデン置換基を命名法へ加えるべきである。例えば、メチレン基がアルキリデン置換基であるならば、用語「2−メチレン」が命名される化合物のそれぞれに先行する。エチレン基がアルキリデン置換基であるならば、用語「2−エチレン」が命名される化合物のそれぞれに先行し、以下同様である。さらに、炭素20位で付くメチル基がそのエピ又は非天然の配置にあるならば、用語「20(S)」又は「20−エピ」を、以下の命名される化合物のそれぞれに含めるべきである。命名される化合物は、所望により、ビタミンD型のものであってもよい。
【0037】
側鎖が不飽和であるときの構造Iの2−アルキリデン化合物の特定の好ましい例は:
19−ノル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジメチル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジメチル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジメチル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンD;及び
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシ−22−デヒドロビタミンDである。
【0038】
側鎖が飽和であるときの構造Iの2−アルキリデン化合物の特定の好ましい例は:
19−ノル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,26−ジメチル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジメチル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジメチル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジエチル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−ホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−ジホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンD;及び
19−ノル−26,27−ジプロピル−24−トリホモ−1,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【0039】
本発明のある側面では、どの副甲状腺ホルモン(PTH)も第二化合物として使用してよい。用語「副甲状腺ホルモン」は、骨形成を促進して、骨量を高めることができる、副甲状腺ホルモン、その断片又は代謝産物、及び構造類似体を意味する。副甲状腺関連ペプチドと、副甲状腺関連ペプチドの活性断片及び類似体もまた含まれる(PCT公開公報番号WO94/01460を参照のこと)。例示の副甲状腺ホルモンを以下の参考文献に開示する:
「椎骨の骨粗鬆症のヒト副甲状腺ペプチドでの治療(Human Parathyroid Peptide Treatment of Vertebral Osteoporosis)」Osteoporosis Int., 3, (Supp 1): 199-203。
【0040】
「相加的ホルモン置換療法を伴う骨粗鬆症のPTH1−34での治療:生化学的、速度論的、及び組織学的応答(PTH 1-34 Treatment of Osteoporosis with Added Hormone Replacement Therapy: Biochemical, Kinetic and Histological Responses)」Osteoporosis Int. 1: 162-170。
【0041】
好ましい副甲状腺ホルモンは、組換えヒト副甲状腺ホルモンである。別の好ましい副甲状腺ホルモンは、組換えヒト副甲状腺ホルモン1−34である。組換えヒト副甲状腺ホルモン1−34は、Forteo(登録商標)として市販されている。テリパラチド(teriparatide)とも呼ばれる組換えヒト副甲状腺ホルモン1−34は、84アミノ酸のヒト副甲状腺ホルモンの34個のN末端アミノ酸(生物活性領域)に同一の配列を有する。本発明に使用し得る別の副甲状腺ホルモンの型は、副甲状腺ホルモン1−34酢酸塩(酢酸テリパラチド)である。
【0042】
副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体は、組換え技術を使用して入手するか、当業者に知られた通常のペプチド合成技術を使用して合成することができる。
副甲状腺ホルモンは、当業者によく知られている。本明細書に記載の本発明における使用では、副甲状腺ホルモンは、ある態様において、天然に存在する副甲状腺ホルモンの変異体又は断片でよい。例えば、変異体は、保守的(conservative)アミノ酸置換を行って、生じる変異体を当該技術分野で知られた機能アッセイにおいて試験することによって産生することができる。保守的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の相互交換可能性を意味する。例えば、脂肪族の側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンとスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンとグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;そして、イオウ含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインとメチオニンである。好ましい保守的アミノ酸置換の群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。
【0043】
当業者が理解するように、副甲状腺ホルモンの変異体又は断片は、離散点突然変異を創出することが含まれる、突然変異誘発、又は末端切断によるような慣用の技術を使用して産生することができる。例えば、突然変異は、それが誘導されたポリペプチド増殖因子の生物活性と実質的に同一であるもの、又は単にその亜集合を保持する変異体を生じる場合がある。
【0044】
副甲状腺ホルモン変異体はまた、グリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基、等のような他の化学部分との共有又は凝集コンジュゲートを形成することによって、化学的に修飾することができる。共有誘導体は、タンパク質のアミノ酸側鎖の官能基へ、又はポリペプチドのN末端又はC末端で化学部分を連結することによって製造することができる。
【0045】
句「保守的アミノ酸置換」は、1つのアミノ酸をある共通の特性を有する別のアミノ酸で置換することを意味する。個々のアミノ酸の間の共通の特性を明確にする機能的な方法は、相同生物の対応タンパク質間のアミノ酸変化の正規化頻度を解析することである(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer「タンパク構造の原理(Principles of Protein Structure)」、Springer-Verlag)。そのような解析によれば、群内のアミノ酸が互いと選好的に交換して、それ故に全体のタンパク構造に対するその影響において互いに最も似ているアミノ酸の群を画定することができる(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer「タンパク構造の原理(Principles of Protein Structure)」、Springer-Verlag)。このやり方で画定されるアミノ酸群の例には:(i)荷電群、Glu、及びAsp、Lys、Arg、及びHisからなる;(ii)陽性荷電群、Lys、Arg、及びHisからなる;(iii)陰性荷電群、Glu及びAspからなる;(iv)芳香族群、Phe、Tyr、及びTrpからなる;(v)窒素環群、His及びTrpからなる;(vi)大きな脂肪族非極性群、Val、Leu、及びIleからなる;(vii)微極性群、Met及びCysからなる;(viii)小残基群、Ser、Thr、Asp、Asn、Gly、Ala、Glu、Gln、及びProからなる;(ix)脂肪族群、Val、Leu、Ile、Met、及びCysからなる;及び(x)小さなヒドロキシル群、Ser及びThrからなる、が含まれる。
【0046】
「保守的置換」は、その活性又は発現にほとんど又は全く影響を及ぼさないと予測される、タンパク様分子中のアミノ酸の置換、付加、又は欠失を意味する。例えば、タンパク様分子の膜貫通領域において、ある疎水性アミノ酸を別のものに置き換えても、その活性に有意な影響をほとんど及ぼさない。他の保守的置換も当業者によく知られている。
【0047】
本発明は、代謝性骨疾患、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ステロイド誘発性骨粗鬆症、低骨代謝回転骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、宿主対移植片拒絶、移植拒絶、慢性関節リウマチ、喘息、骨折、移植骨片、座瘡、脱毛症、乾燥皮膚、皮膚堅性不全、皮脂分泌不全、皺、高血圧、白血病、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、性機能低下症、アンドポーズ、虚弱、筋損傷、肉減少症、骨肉腫、低カルシウム血症テタニー、上皮小体機能低下症、くる病、ビタミンD欠乏症、無食欲症、果敢な運動行動に由来する骨量低下の治療、そして思春期におけるピーク骨量の亢進のためと、二回目の股関節骨折の予防のための医薬組成物にも関し、式Iの化合物のような2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体、及び担体、溶媒、希釈剤、等の組合せをその必要な患者へ投与することを含んでなる。
【0048】
本明細書の化合物について考察するとき、該化合物は、医薬的に許容される塩、プロドラッグ、又はプロドラッグの塩として患者へ投与してよいと考慮される。そのようなすべてのバリエーションが本発明に含まれると企図される。
【0049】
用語「その必要な患者」は、代謝性骨疾患、老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、ステロイド誘発性骨粗鬆症、低骨代謝回転骨粗鬆症、骨軟化症、腎性骨ジストロフィー、乾癬、多発性硬化症、糖尿病、宿主対移植片拒絶、移植拒絶、慢性関節リウマチ、喘息、骨折、移植骨片、座瘡、脱毛症、乾燥皮膚、皮膚堅性不全、皮脂分泌不全、皺、高血圧、白血病、結腸癌、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、性機能低下症、アンドポーズ、虚弱、筋損傷、肉減少症、骨肉腫、低カルシウム血症テタニー、上皮小体機能低下症、くる病、ビタミンD欠乏症、無食欲症、果敢な運動行動に由来する骨量低下の治療、そして思春期におけるピーク骨量の亢進と、二回目の股関節骨折の予防、を有するか又はそれを有するリスクがある、ヒトや他の動物を意味する。
【0050】
本明細書に使用する用語「治療すること」、「治療する」、又は「治療」には、防止的(例えば、予防的)、緩和的、及び治癒的治療が含まれる。
「医薬的に許容される」は、担体、希釈剤、賦形剤、及び/又は塩又はプロドラッグが製剤の他の成分と適合可能でなければならず、患者に対して有害であってはならないことを意味する。
【0051】
用語「プロドラッグ」は、in vivo で変換されて本発明の化合物を生じる化合物を意味する。変換は、血液中の加水分解を介するような、様々な機序により起きてよい。プロドラッグの使用についての考察は、T. Higuchi and W. Stella「新規送達系としてのプロドラッグ(Pro-drugs as Novel Delivery Systems)」A.C.S.シンポジウムシリーズの第14巻および「薬物設計における生可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug Design)」、Edward B. Roche 監修、米国製薬協会及びペルガモンプレス(1987年)に提供されている。
【0052】
例えば、本発明の化合物がカルボン酸官能基を含有するとき、プロドラッグは、酸基の水素原子を、(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4〜9の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5〜10の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3〜6の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4〜7の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5〜8の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3〜9の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4〜10の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチルのような)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキル、及びピペリジノ−、ピロリジノ−又はモルホリノ(C〜C)アルキルのような基で置き換えることによって形成されるエステルを含む場合がある。
【0053】
同様に、本発明の化合物がアルコール官能基を含むとき、アルコール基の水素原子を、(C〜C)アルカノイルオキシメチル、1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、(C〜C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C〜C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C〜C)アルカノイル、α−アミノ(C〜C)アルカノイル、アリールアシル、及びα−アミノアシル、又はα−アミノアシル−α−アミノアシル{ここで、それぞれのα−アミノアシル基は、天然に存在するL−アミノ酸、P(O)(OH)、−P(O)(O(C〜C)アルキル)、又はグルコシル(ヘミアセタール型の炭水化物のヒドロキシル基の除去より生じる残基)より独立して選択される}のような基で置き換えることによってプロドラッグを形成することができる。
【0054】
本発明の化合物がアミン官能基を含むとき、アミン基中の水素原子を、R−カルボニル、RO−カルボニル、NRX’−カルボニル{ここでRとRX’は、それぞれ独立して、(C〜C10)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、ベンジルであるか、又はR−カルボニルは、天然α−アミノアシル又は天然α−アミノアシル−天然α−アミノアシルである}、−C(OH)C(O)OY(ここでYは、H、(C〜C)アルキル、又はベンジルである)、−C(OYX0)YX1(ここでYX0は(C〜C)アルキルであり、YX1は(C〜C)アルキル、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、又はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノアルキルである)、−C(YX2)YX3(ここでYX2はH又はメチルであり、YX3はモノ−N−若しくはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジン−1−イル、又はピロリジン−1−イルである)のような基で置き換えることによってプロドラッグを形成することができる。
【0055】
表現「医薬的に許容される塩」は、アニオンを含有する、(限定されないが)塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、及び4−トルエン−スルホン酸塩のような、無毒のアニオン塩を意味する。この表現はまた、(限定されないが)ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、又はプロトン化ベンザチン(N,N’−ジベンジルエチレンジアミン)、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグラミン(N−メチル−グルカミン)、ベネタミン(N−ベンジルフェネチルアミン)、ピペラジン又はトロメタミン(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)のような無毒のカチオン塩を意味する。
【0056】
本発明の化合物は、放射標識型で存在する場合がある、即ち、前記化合物は、天然で通常見出される原子量又は質量数とは異なる原子量又は質量数を含有する1以上の原子を含有する場合があると認識されよう。水素、炭素、リン、フッ素、及び塩素の放射性同位体には、H、14C、32P、35S、18F、及び36Clがそれぞれ含まれる。これらの放射性同位体、及び/又は他の原子の他の放射性同位体を含有する本発明の化合物は、本発明の範囲内にある。トリチウム化、即ちHと、炭素−14、即ち14Cの放射性同位体は、その調製の容易さと検出可能性のために特に好ましい。一般に、本発明の放射標識化合物は、当業者によく知られた方法によって調製することができる。簡便には、そのような放射標識化合物は、容易に利用可能な放射標識試薬を非放射標識試薬に代用すること以外は、本明細書に開示する手順を行うことによって調製することができる。
【0057】
当業者には、本発明の化合物の中には少なくとも1つの不斉炭素を有するものがあり、それ故にエナンチオマー又はジアステレオマーとなることが認識されよう。ジアステレオマー混合物は、例えば、クロマトグラフィー及び/又は分画結晶化としてそのまま知られている方法により、その物理化学的な違いに基づいて、その個別のジアステレオマーへ分離することができる。エナンチオマーは、エナンチオマー混合物を適切な光学活性化合物(例、アルコール)との反応によりジアステレオマー混合物へ変換すること、このジアステレオマーを分離すること、そして個別ジアステレオマーを対応する純粋なエナンチオマーへ変換すること(例えば、化学的加水分解法と微生物リパーゼ加水分解法の両方が含まれる加水分解、例えば、酵素触媒加水分解)によって分離することができる。ジアステレオマー、エナンチオマー、及びこれらの混合物が含まれる、すべてのそのような異性体が本発明の一部とみなされる。また、本発明の化合部のいくつかはアトロプ異性体(例、置換ビアリール)であり、本発明の一部とみなされる。
【0058】
さらに、式Iの化合物、又は副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体が含まれる本発明の化合物が水和物又は溶媒和物を形成するとき、それらも本発明の範囲内にある。
本発明の化合物の投与は、本発明の化合物を全身的及び/又は局所的に送達するどの方法によってもよい。これらの方法には、経口、非経口、及び十二指腸内の経路、等が含まれる。一般に、本発明の化合物は経口投与されるが、例えば、経口投与が標的に不適切である場合や、患者が薬物を摂取することができない場合は、非経口投与(例、静脈内、筋肉内、経皮、皮下、直腸、又は脊髄内)も利用してよい。
【0059】
本発明の化合物は、好適な担体又は希釈剤において患者の中又は上の部位へ局所適用してもよい。
本発明の2MDや他の2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体は、ヒト患者へ約0.01μg/日〜約10μg/日の範囲で投与してよい。好ましい投与量範囲は約0.05μg/日〜約1μg/日であり、より好ましい投与量範囲は約0.1μg/日〜約0.4μg/日である。
【0060】
副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の有効量は、約0.00001mg/kg/日〜1mg/kg/日、好ましくは0.0001〜0.5mg/kg/日の範囲にある。テリパラチドの好ましい用量は、20μg/日である。
【0061】
投与の量及び時機は、当然ながら、治療される被検者、疾患の重症度、投与のやり方、そして処方医の判断に依存するものである。従って、患者ごとの変動性のために、本明細書に示す投与量はガイドラインであって、医師は、患者に適切であると医師がみなす治療を達成するために、薬物の用量を増減してよい。所望される治療の度合いを考慮するとき、医師は、患者の年齢、既往疾患の存在、並びに他の疾患の存在といった多様な要因を斟酌しなければならない。用量は、1日1回で与えても、1日1回より多く与えてもよく、持続放出又は制御放出の製剤で与えてよい。即時放出及び制御放出の組合せ、及び/又は持続放出製剤を使用して本化合物を投与することも可能である。
【0062】
2MDや他の2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と、副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体、又はこれらの組合せの投与は、連続的又は間欠的な投薬スケジュールに従ってよい。1日1回、1日数回、週1回、週数回、隔週1回、隔週数回、月1回、月数回、隔月1回、3ヶ月に1回、6ヶ月に1回、及び年1回の投薬は、2MDや別の2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と、副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体、又はこれらの組合せの投薬スケジュールの非限定的な例である。
【0063】
一般に、本発明の化合物は、本発明の化合物の少なくとも1つを医薬的に許容される担体又は希釈剤と一緒に含んでなる医薬組成物の形態で投与する。このように、本発明の化合物は、あらゆる簡便な経口、非経口、直腸、又は経皮の剤形で投与してよい。
【0064】
経口投与では、医薬組成物が、溶液剤、懸濁液剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、等の形態を取り得る。クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、及びリン酸カルシウムのような様々な賦形剤を含有する錠剤は、デンプン、そして好ましくはジャガイモ又はタピオカデンプン、及びある種の複合ケイ酸塩のような様々な崩壊剤とともに、ポリビニルピロリドン、ショ糖、ゼラチン、及びアカシアのような結合剤と一緒に利用する。さらに、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクのような滑沢剤が錠剤化の目的にしばしば非常に有用である。類似の種類の固体組成物も、軟及び硬充填ゼラチンカプセル剤中の充填剤として利用され;これに関連した好ましい材料には、ラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコールも含まれる。水性懸濁液剤及び/又はエリキシル剤が経口投与に所望されるとき、本発明の化合物は、様々な甘味剤、芳香剤、着色剤、乳化剤、及び/又は懸濁剤、並びに、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリンとその様々な同様の組合せと組み合わせてよい。2MDや他の2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体の許容される製剤の1つの例は、2MDや他の2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体が溶けた neobe オイルを含有する軟ゼラチンカプセル剤である。当業者には、他の好適な製剤が明らかであろう。
【0065】
非経口投与の目的では、ゴマ油又は落花生油、又は水性プロピレングリコール中の溶液剤、並びに対応する水溶性塩の無菌水溶液剤を利用することができる。そのような水溶液剤は、必要ならば、好適に緩衝化してよく、はじめに液体希釈剤を十分な生理食塩水又はブドウ糖で等張にする。これらの水溶液剤は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の注射目的に特に適している。これに関連して、利用する無菌の水性媒体は、当業者によく知られた標準技術によりいずれも容易に入手可能である。
【0066】
経皮(例、局所)投与の目的では、他の点では上記の非経口溶液剤に類似した、希釈した無菌の水性又は一部水性の溶液剤(通常、約0.1%〜5%の濃度)を調製する。
ある量の有効成分のある様々な医薬組成物を調製する方法は、当業者に知られているか、又は本開示に照らして明らかであろう。医薬組成物を調製する方法の例については、「レミントン製薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)」、マックパブリッシング・カンパニー、ペンシルヴェニア州イーストン、第19版(1995年)を参照のこと。
【0067】
本発明の別の側面は:
a.式Iの化合物のような、2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体、及び医薬的に許容される担体又は希釈剤の、ある量を、第一の単位剤形において;
b.副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体、及び医薬的に許容される担体又は希釈剤、のある量を、第二の単位剤形において;そして
c.容器
を含んでなるキットである。
【0068】
キットは、2つの別々の医薬組成物:式Iの化合物のような2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と上記のような第二化合物を含む。キットは、別々の組成物を含有するための、分割ボトル又は分割ホイルパケットのような容器手段を含むが、別々の組成物は、単一の非分割容器に含めてもよい。典型的には、キットは、この別々の成分の投与についての説明書を含む。キット形態は、別々の成分を好ましくは異なる剤形(例、経口及び非経口)で投与するとき、異なる投与間隔で投与するとき、又は組合せの個別成分の増減が処方医により望まれるとき、特に有利である。
【0069】
そのようなキットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは包装業界でよく知られていて、医薬単位剤形(錠剤、カプセル剤、等)の包装に広く使用されている。一般に、ブリスターパックは、好ましくは透明なプラスチック材料のホイルで覆われた比較的堅い材料のシートからなる。包装プロセスの間に、プラスチックホイルに窪みを形成する。この窪みは、包装する錠剤又はカプセル剤の大きさ及び形状を有する。次に、錠剤又はカプセル剤を窪みに入れて、窪みを形成した方向とは反対であるホイルの面で、プラスチックホイルに対して比較的堅い材料のシートをシールする。結果として、錠剤又はカプセル剤は、プラスチックホイルとシートの間の窪みにシールされる。好ましくは、シートの強度は、窪みに手で圧力をかけることにより窪みの場所でシートに開口部を生じることによって、ブリスターパックより錠剤又はカプセル剤を取り出すことができるくらいである。従って、錠剤又はカプセル剤は、前記開口部より取り出すことができる。
【0070】
キットには、例えば、錠剤又はカプセル剤の隣にある数字の形態の記憶支援(ここでは、特定された剤形を服用すべき処方の日数に数字が対応する)を提供することが望ましい場合がある。そのような記憶支援の別の例は、例えば、以下のように、「第一週、月曜日、火曜日、・・・等・・・第二週、月曜日、火曜日、・・・等・・・」とカードに印刷されたカレンダーである。記憶支援の他のバリエーションは、容易に明らかであろう。「1日用量」は、所定の日に服用される、単一の錠剤又はカプセル剤でも、数個の錠剤又はカプセル剤でもよい。また、式Iの化合物、そのプロドラッグ、又は前記化合物又は前記プロドラッグの医薬的に許容される塩の1日用量が1つの錠剤又はカプセル剤からなる一方で、第二化合物の1日用量は数個の錠剤又はカプセル剤からなってよく、その逆でもよい。記憶支援は、こういったことを反映すべきである。
【0071】
本発明の別の特別な態様では、1日用量をその企図される使用の順序で一度に調合するディスペンサーが提供される。好ましくは、ディスペンサーに記憶支援を付与して、処方とのコンプライアンスをさらに促進する。そのような記憶支援の例は、すでに調合された1日用量の回数を示す機械カウンターである。そのような記憶支援の別の例は、液晶読取りと連動した電池式マイクロチップメモリーであるか、又は、例えば、最後の1日用量を服用した日付を読み出す、及び/又は次回の用量をいつ服用すべきかを思い出させる可聴通知信号である。
【0072】
2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体と副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体は、同じ剤形で投与しても、異なる剤形で同じ時又は異なる時に投与してもよい。投与法のすべてのバリエーションが考慮される。好ましい投与の方法は、この組合せを同じ剤形で同じ時に投与することである。別の好ましい投与方法は、ある剤形で2−アルキリデン−19−ノル−ビタミンD誘導体を、そして別の剤形で副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を投与することであり、その両方を同じ時に服用する。
【0073】
基本構造(I)を有する、1α−ヒドロキシ−2−アルキル−19−ノル−ビタミンD化合物、特に1α−ヒドロキシ−2−メチル−19−ノル−ビタミンD化合物の製造は、通常の一般的な方法によって達成することができる。即ち、二環式ウィンダウス−グルンドマン(Windaus-Grundmann)型ケトン(II)の酸化アリルホスフィン(III)との縮合により対応の2−メチレン−19−ノル−ビタミンD類似体(IV)とし、後の化合物中のC−1及びC−3での脱保護を続ける:
【0074】
【化5】

【0075】
【化6】

【0076】
構造(II)、(III)、(IV)において、基:Y及びYとRは、上記に定義される基を表し;Y及びYは、好ましくはヒドロキシ保護基であり、R中のどの官能基も鋭敏である可能性があるか、又は縮合反応に干渉するので、当該技術分野で知られているように、好適に保護すべきであることも理解される。上記に示す方法は、ビタミンD化合物の製造に効果的に応用されている、収束合成の概念の応用を表す[例えば、Lythgoe et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 590 (1978); Lythgoe, Chem. Soc. Rev. 9, 449 (1983); Toh et al., J. Org. Chem. 48, 1414 (1983); Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986); Sardina et al., J. Org. Chem. 51, 1264 (1986); J. Org. Chem. 51, 1269 (1986);DeLuca ら、米国特許第5,086,191号;DeLuca ら、米国特許第5,536,713号]。
【0077】
一般構造(II)のヒドリンダノンは、知られているか、又は既知の方法によって製造することができる。そのような既知の二環式ケトンの特に重要な例は、上記の側鎖(a)、(b)、(c)、及び(d)のある構造、即ち、25−ヒドロキシグルンドマンケトン(f)[Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986)];グルンドマンケトン(g)[Inhoffen et al., Chem. Ber. 90, 664 (1957)];25−ヒドロキシウィンダウスケトン(h)[Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986)]、及びウィンダウスケトン(i)[Windaus et al., Ann., 524, 297 (1936)]:
【0078】
【化7】

【0079】
である。
一般構造(III)の必要とされる酸化ホスフィンの製法について、Periman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991) 及び DeLuca ら、米国特許第5,086,191号に記載のように、市販の(1R,3R,4S,5R)−(−)−キナ酸から容易に得られるメチルキニケート誘導体(1)より出発する、新しい合成経路が開発された。出発メチルエステル(1)の、所望A環シントンへの変換の全体プロセスを、スキームIに要約する。このように、(1)の2級4−ヒドロキシ基をRuOで酸化した(RuClとNaIOを共酸化剤として用いた触媒法)。そのような強い酸化剤の使用は、この非常に妨害されたヒドロキシルの有効な酸化プロセスに必要であった。しかしながら、通常、反応の完了にずっと長い時間が必要とされる、他のより一般的に使用される酸化剤(例、ジクロム酸ピリジニウム)も適用してよい。この合成の第二工程は、立体障害のある4−ケト化合物(2)の、臭化メチルトリフェニルホスホニウム及びn−ブチルリチウムより製造したイリドとのウィティッヒ(Wittig)反応を含む。t−BuOK、NaNH、NaH、K/HMPT、NaN(TMS)、等のような他の塩基も、反応性メチレンホスホランの産生に使用してよい。4−メチレン化合物(3)の製造には、ウィティッヒ法について記載された修飾、例えば、活性化メチレントリフェニルホスホランと(2)の反応を使用してよい[Corey et al., Tetrahedron Lett. 26, 555 (1985)]。あるいは、非反応性ケトンのメチル化に広く使用される他の方法も適用してよい。例えば、酸化メチルジフェニルホスフィンより脱プロトン化により得たPO−イリドの、n−ブチルリチウムとのウィティッヒ−ホーナー(Wittig-Horner)反応[Schosse et al., Chimia 30, 197 (1976)]、又はメチルスルフィン酸ナトリウム[Corey et al., J. Org. Chem. 28, 1128 (1963)]及びメチルスルフィン酸カリウム[Greene et al., Tetrahedron Lett. 3755 (1976)]とケトンの反応である。エステル(3)の水素化アルミニウムリチウムや他の好適な還元剤(例、DIBALH)での還元によりジオール(4)がもたらされ、これを引き続き過ヨウ素酸ナトリウムによりシクロヘキサノン誘導体(5)へ酸化した。この方法の次の工程は、ケトン(5)の(トリメチルシリル)酢酸メチルとのピーターソン(Peterson)反応を含む。生じるアリルエステル(6)を水素化ジイソブチルアルミニウムで処理して、次いで、生じるアリルアルコール(7)を所望のA環酸化ホスフィン(8)へ変換した。(7)の(8)への変換は、3つの工程、即ち、n−ブチルリチウム及び塩化p−トルエンスルホニルでの in situ トシル化に続く、ジフェニルホスフィンリチウム塩との反応、及び過酸化水素での酸化を含んだ。
【0080】
いくつかの一般構造(IV)の2−メチレン−19−ノル−ビタミンD化合物は、A環シントン(8)と、所望の側鎖構造を有する好適なウィンダウス−グルンドマンケトン(II)を使用して合成することができる。従って、例えば、(8)とn−ブチルリチウムより生成するリチウムホスフィノキシカルバニオンの、公知の手順[Sicinski et al., J. Med. Chem. 37, 3730 (1994)]に従って製造した保護化25−ヒドロキシグルンドマンケトン(9)とのウィティッヒ−ホーナーカップリングにより、予測される保護化ビタミン化合物(10)を得た。これを、AG 50W−X4陽イオン交換樹脂での脱保護の後、1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(11)を得た。
【0081】
C−20エピマー化は、酸化ホスフィン(8)の保護化(20S)−25−ヒドロキシグルンドマンケトン(13)との類似のカップリング(スキームII)により達成し、19−ノル−ビタミン(14)を得て、これをヒドロキシ保護基の加水分解の後、(20S)−1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(15)を得た。上記に注目されるように、他の2−メチレン−19−ノル−ビタミンD類似体は、本明細書に開示する方法によって合成することができる。例えば、1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンDは、グルンドマンケトン(g)を提供することによって得られる。
【0082】
特許及び特許出願が含まれる、本出願に引用するすべての文献は、参照により本明細書に組み込まれる。以下に提示する実施例は、本発明の特別な態様を例示することを企図していて、特許請求の範囲を含む本発明を、いかなるやり方で限定することをも企図していない。
【実施例】
【0083】
本出願では、以下の略語を使用する。
NMR 核磁気共鳴
mp 融点
H 水素
h 時間
min 分
t−Bu tert−ブチル
THF テトラヒドロフラン
n−BuLi n−ブチルリチウム
MS 質量スペクトル
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
SEM 標準誤差測定
Ph フェニル
Me メチル
Et エチル
DIBALH 水素化ジイソブチルアルミニウム
LDA リチウムジイソプロピルアミド
式Iの化合物の製法は、米国特許第5,843,928号において以下のように説明された:
これらの実施例において、アラビア数字(例、1、2、3、等)により確定される特定の生成物は、先行の記載とスキームI及びスキームIIにおいてそのように確定された特定の構造に関連する。
【0084】
実施例1
1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(11)の製造
はじめスキームIに関連して、市販の(−)キニン酸より、既報[Periman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991) 及び DeLuca ら、米国特許第5,086,191号]のように、出発のメチルキニケート誘導体(1)を入手した。(1):融点 80℃〜82.5℃(ヘキサンより)。
【0085】
【化8】

【0086】
(a)メチルキニケート誘導体(1)中の4−ヒドロキシ基の酸化
(3R,5R)−3,5−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−1−ヒドロキシ−4−オキソシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(2)。水(42mL)中の塩化ルテニウム(III)水和物(434mg,2.1ミリモル)及び過ヨウ素酸ナトリウム(10.8g,50.6ミリモル)の撹拌混合物に、メチルキニケート(1)(6.09g,14ミリモル)のCCl/CHCN(1:1,64mL)溶液を加えた。激しい撹拌を8時間続けた。数滴の2−プロパノールを加え、この混合物を水へ注ぎ、クロロホルムで抽出した。有機抽出物を合わせ、水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、蒸発させて、黒ずんだ油状の残渣(約5g)を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン/酢酸エチル(8:2)での溶出により、純粋な油状の4−ケトン(2)(3.4g,56%)を得た。
【0087】
【化9】

【0088】
(b)4−ケトン(2)のウィティッヒ反応
(3R,5R)−3,5−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−1−ヒドロキシ−4−メチレンシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(3)。無水THF(32mL)中の臭化メチルトリフェニルホスホニウム(2.813g,7.88ミリモル)へ0℃でn−BuLi(ヘキサン中2.5M,6.0mL,15ミリモル)をアルゴン下に撹拌しながら滴下した。次いで、別の分量のMePhBr(2.813g,7.88ミリモル)を加え、この溶液を0℃で10分間、そして室温で40分間撹拌した。この橙色〜赤色の混合物を再び0℃へ冷やし、4−ケトン(2)(1.558g,3.6ミリモル)の無水THF(16+2mL)溶液を20分の間に反応フラスコへ吸引した。この反応混合物を0℃で1時間、そして室温で3時間撹拌した。次いで、この混合物を塩水(1%HClを含む)へ慎重に注ぎ、酢酸エチル及びベンゼンで抽出した。合わせた有機抽出物を希NaHCOと塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、蒸発させて、橙色の油状残渣(約2.6g)を得て、これをフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)での溶出により、純粋な4−メチレン化合物(3)(368mg,24%)を無色のオイルとして得た。
【0089】
【化10】

【0090】
(c)4−メチレン化合物(3)中のエステル基の還元
[(3R,5R)−3,5−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−1−ヒドロキシ−4−メチレンシクロヘキシル]メタノール(4)。(i)エステル(3)(90mg,0.21ミリモル)の無水THF(8mL)撹拌溶液へ水素化アルミニウムリチウム(60mg,1.6ミリモル)を0℃でアルゴン下に加えた。1時間後に冷却浴を外し、撹拌を6℃で12時間、そして室温で6時間続けた。試薬の過剰量を飽和NaSO水溶液で分解して、この混合物を酢酸エチルとエーテルで抽出し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。この残渣のヘキサン/酢酸エチル(9:1)でのフラッシュクロマトグラフィーにより、未反応の基質(12mg)と純粋な結晶性のジオール(4)(35mg,回収したエステル(3)に基づけば48%)を得た。
【0091】
【化11】

【0092】
(ii)エステル(3)(215mg,0.5ミリモル)の無水エーテル(3mL)溶液へ水素化ジイソブチルアルミニウム(トルエン中1.5M,2.0mL,3ミリモル)を−78℃でアルゴン下に加えた。この混合物を−78℃で3時間、そして−24℃で1.5時間撹拌し、エーテル(10mL)で希釈し、2N酒石酸ナトリウムカリウムのゆっくりした添加により失活させた。この溶液を室温へ温めて、15分間撹拌し、塩水へ注ぎ、酢酸エチルとエーテルで抽出した。この有機抽出物を合わせ、希(約1%)HClと塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。この結晶性の残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)での溶出により、結晶性のジオール(4)(43mg,24%)を得た。
【0093】
(d)ビシナルジオール(4)の切断
(3R,5R)−3,5−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−4−メチレンシクロヘキサノン(5)。ジオール(4)(146mg,0.36ミリモル)のメタノール(9mL)溶液へ0℃で過ヨウ素酸ナトリウム飽和水(2.2mL)を加えた。この溶液を0℃で1時間撹拌し、塩水へ注ぎ、エーテルとベンゼンで抽出した。有機抽出物を合わせ、塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。油状の残渣をヘキサン(1mL)に溶かし、シリカSep−Pakカートリッジに適用した。純粋な4−メチレンシクロヘキサノン誘導体(5)(110mg,82%)をヘキサン/酢酸エチル(95:5)で無色のオイルとして溶出させた。
【0094】
【化12】

【0095】
(e)アリルエステル(6)の製造
[(3’R,5’R)−3’,5’−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−4’−メチレンシクロヘキシリデン]酢酸メチルエステル(6)。ジイソプロピルアミン(37μL,0.28ミリモル)の無水THF(200μL)溶液へn−BuLi(ヘキサン中2.5M,113μL,0.28ミリモル)を−78℃でアルゴン下に撹拌しながら加えてから、酢酸メチル(トリメチルシリル)(46μL,0.28ミリモル)を加えた。15分後、無水THF(200+80μL)中のケト化合物(5)(49mg,0.132ミリモル)を滴下した。この溶液を−78℃で2時間撹拌し、この反応混合物を飽和NHClで失活させ、塩水へ注ぎ、エーテルとベンゼンで抽出した。合わせた有機抽出物を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をヘキサン(1mL)に溶かし、シリカSep−Pakカートリッジに適用した。ヘキサンとヘキサン/酢酸エチル(98:2)での溶出により、純粋なアリルエステル(6)(50mg,89%)を無色のオイルとして得た。
【0096】
【化13】

【0097】
(f)アリルエステル(6)の還元
2−[(3’R,5’R)−3’,5’−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−4’−メチレンシクロヘキシリデン]エタノール(7)。アリルエステル(6)(143mg,0.33ミリモル)のトルエン/塩化メチレン(2:1,5.7mL)撹拌溶液へ水素化ジイソブチルアルミニウム(トルエン中1.5M,1.6mL,2.4ミリモル)を−78℃でアルゴン下にゆっくり加えた。撹拌を−78℃で1時間、そして−46℃(シクロヘキサノン/ドライアイス浴)で25分間続けた。この混合物を、酒石酸ナトリウムカリウム(2N,3mL)、HCl水溶液(2N,3mL)、及びHO(12mL)のゆっくりとした添加により失活させてから、塩化メチレン(12mL)で希釈して、エーテルとベンゼンで抽出した。有機抽出物を合わせ、希(約1%)HClと塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン/酢酸エチル(9:1)での溶出により、結晶性のアリルアルコール(7)(130mg,97%)を得た。
【0098】
【化14】

【0099】
(g)アリルアルコール(7)の酸化ホスフィン(8)への変換
[2−[(3’R,5’R)−3’,5’−ビス[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−4’−メチレンシクロヘキシリデン]エチル]ジフェニルホスフィンオキシド(8)。無水THF(2.4mL)中のアリルアルコール(7)(105mg,0.263ミリモル)へ、n−BuLi(ヘキサン中2.5M,105μL,0.263ミリモル)を0℃でアルゴン下に加えた。新たに再結晶させた塩化トシル(50.4mg,0.264ミリモル)を無水THF(480μL)に溶かし、先のアリルアルコール−BuLi溶液へ加えた。この混合物を0℃で5分間撹拌し、0℃で取って置いた。アルゴンにより空気置換した別の乾燥フラスコにおいて、n−BuLi(ヘキサン中2.5M,210μL,0.525ミリモル)を無水THF(750μL)中のPhPH(93μL,0.534ミリモル)へ0℃で撹拌しながら加えた。この赤い溶液をアルゴン圧下にトシラートの溶液へ、橙色が存続するまで吸引した(溶液の約1/2を加えた)。生じた混合物を0℃でさらに30分間撹拌して、HO(30μL)の添加により失活させた。溶媒を減圧で蒸発させ、残渣を塩化メチレン(2.4mL)に再び溶かし、10% Hとともに0℃で1時間撹拌した。有機層を分離し、冷たい亜硫酸ナトリウム水溶液とHOで洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィーへ処した。ベンゼン/酢酸エチル(6:4)での溶出により、半結晶性の酸化ホスフィン(8)(134mg,87%)を得た。
【0100】
【化15】

【0101】
(h)保護化25−ヒドロキシグルンドマンケトン(9)の酸化ホスフィン(8)とのウィティッヒ−ホーナーカップリング
1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(11)。酸化ホスフィン(8)(33.1mg,56.8μモル)の無水THF(450μL)溶液へ0℃でn−BuLi(ヘキサン中2.5M,23μL,57.5μモル)をアルゴン下に撹拌しながらゆっくり加えた。溶液は深橙色になった。この混合物を−78℃へ冷やし、公知の手順[Sicinski et al., J. Med. Chem. 37, 3730 (1994)]に従って製造した保護化ヒドロキシケトン(9)(9.0mg,22.8μモル)の無水THF(200+100μL)の予冷却(−78℃)溶液をゆっくり加えた。この混合物をアルゴン下に−78℃で1時間、そして0℃で18時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機相を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をヘキサンに溶かし、シリカSep−Pakカートリッジに適用し、ヘキサン/酢酸エチル(99:1,20mL)で洗浄して、19−ノル−ビタミン誘導体(10)(13.5mg,78%)を得た。次いで、Sep−Pakをヘキサン/酢酸エチル(96:4)(10mL)で洗浄していくらかの未変化C,D環ケトン(9)(2mg)を回収し、酢酸エチル(10mL)で酸化ジフェニルホスフィン(20mg)を回収した。分析目的に、保護化ビタミン(10)の試料を、ヘキサン/酢酸エチル(99.9:0.1)溶媒系を使用するHPLC(6.2mmx25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)によりさらに精製した。純粋な化合物(10)がR26mLで無色のオイルとして溶出した。
【0102】
【化16】

【0103】
保護化ビタミン(10)(4.3mg)をベンゼン(150μL)に溶かし、メタノール(800μL)中の樹脂(AG 50W−X4,60mg;メタノールで予洗浄した)を加えた。この混合物を室温でアルゴン下に17時間撹拌し、酢酸エチル/エーテル(1:1,4mL)で希釈して、デカントした。この樹脂をエーテル(8mL)で洗浄し、合わせた有機相を塩水と飽和NaHCOで洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。ヘキサン/2−プロパノール(9:1)溶媒系を使用するHPLC(6.2mmx25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)により残渣を精製した。分析的に純粋な2−メチレン−19−ノル−ビタミン(11)(2.3mg,97%)をR29mLで白い固形物として採取した(同じ系において、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、R52mLで溶出した)。
【0104】
【化17】

【0105】
実施例2
(20S)−1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(15)の製造
スキームIIは、保護化(20S)−25−ヒドロキシグルンドマンケトン(13)の製法と、その酸化ホスフィン(8)(実施例1に記載のように入手する)とのカップリングを例示する。
【0106】
(a)ヒドロキシケトン(12)のシリル化
(20S)−25−[(トリエチルシリル)オキシ]−des−A,B−コレスタン−8−オン(13)。ケトン(12)(Tetrionics社、ワイオミング州マジソン;56mg,0.2ミリモル)及びイミダゾール(65mg,0.96ミリモル)の無水DMF(1.2mL)溶液を塩化トリエチルシリル(95μL,0.56ミリモル)で処理し、この混合物を室温でアルゴン下に4時間撹拌した。酢酸エチルを加えて、水及び有機層を分離させた。酢酸エチル層を水と塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をヘキサン/酢酸エチル(9:1)においてシリカSep−Pakカートリッジに通過させ、蒸発の後で、ヘキサン/酢酸エチル(9:1)溶媒系を使用するHPLC(9.4mm x 25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)により精製した。純粋な保護化ヒドロキシケトン(13)(55mg,70%)がR35mLで無色のオイルとして溶出した。
【0107】
【化18】

【0108】
(b)保護化(20S)−25−ヒドロキシグルンドマンケトン(13)の酸化ホスフィン(8)とのウィティッヒ−ホーナーカップリング
(20S)−1α,25−ジヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビタミンD(15)。酸化ホスフィン(8)(15.8mg,27.1μモル)の無水THF(200μL)溶液へ0℃でn−BuLi(ヘキサン中2.5M,11μL,27.5μモル)をアルゴン下に撹拌しながらゆっくり加えた。溶液は深橙色になった。この混合物を−78℃へ冷やし、保護化ヒドロキシケトン(13)(8.0mg,20.3μモル)の無水THF(100μL)の予冷却(−78℃)溶液をゆっくり加えた。この混合物をアルゴン下に−78℃で1時間、そして0℃で18時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機相を塩水で洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。残渣をヘキサンに溶かし、シリカSep−Pakカートリッジに適用し、ヘキサン/酢酸エチル(99.5:0.5,20mL)で洗浄して、19−ノル−ビタミン誘導体(14)(7mg,45%)を無色のオイルとして得た。次いで、Sep−Pakをヘキサン/酢酸エチル(96:4,10mL)で洗浄していくらかの未変化C,D環ケトン(13)(4mg)を回収し、酢酸エチル(10mL)で酸化ジフェニルホスフィン(9mg)を回収した。分析目的に、保護化ビタミン(14)の試料を、ヘキサン/酢酸エチル(99.9:0.1)溶媒系を使用するHPLC(6.2mmx25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)によりさらに精製した。
【0109】
【化19】

【0110】
保護化ビタミン(14)(5.0mg)をベンゼン(160μL)に溶かし、メタノール(900μL)中の樹脂(AG 50W−X4,70mg;メタノールで予洗浄した)を加えた。この混合物を室温でアルゴン下に19時間撹拌し、酢酸エチル/エーテル(1:1,4mL)で希釈して、デカントした。この樹脂をエーテル(8mL)で洗浄し、合わせた有機相を塩水と飽和NaHCOで洗浄し、乾燥(MgSO)させて、蒸発させた。ヘキサン/2−プロパノール(9:1)溶媒系を使用するHPLC(6.2mmx25cm Zorbax−Silカラム、4mL/分)により残渣を精製した。分析的に純粋な2−メチレン−19−ノル−ビタミン(15)(2.6mg,95%)をR28mLで白い固形物として採取した[同じ系において、(20R)−類似体はR29mLで溶出し、1α,25−ジヒドロキシビタミンDはR52mLで溶出した]。
【0111】
【化20】

【0112】
2−メチレン置換19−ノル−1,25−(OH)化合物とその20S−異性体の生物活性
式Iの化合物の生物活性は、米国特許第5,843,928号において以下のように示された。19−ノル−1,25−(OH)又はその20S−異性体の2位へのメチレン基の導入は、ブタ腸のビタミンD受容体への結合に対してほとんど又は全く影響を及ぼさなかった。標準の1,25−(OH)が含まれるすべての化合物がブタの受容体へ同等によく結合した。これらの結果より、この化合物のすべてが同等の生物活性を有すると予測されよう。しかしながら、驚くべきことに、2−メチレン置換により、主に骨に作用するきわめて選択的な類似体が生成された。慢性形式で7日間与えるとき、試験した中で最も強力な化合物は、2−メチレン−19−ノル−20S−1,25−(OH)であった(表1)。130ピコモル/日で与えるとき、骨カルシウム可動化(血清カルシウム)に対するその活性は、ネーティブホルモンのそれより、少なくとも10のオーダー、おそらくは100〜1,000倍高かった。同一の条件下で、2回目の1,25−(OH)の用量は、130ピコモル用量で13.8mg/100mlの血清カルシウム値をもたらした。260ピコモル/日で与えるとき、それは、骨を犠牲にして14mg/100mlの血清カルシウムという驚くべき値をもたらした。その選択性を示すと、1,25−(OH)が試験した唯一の用量、即ち260ピコモル/日で腸カルシウム輸送の予測される上昇をもたらしたのに対し、この化合物は、130又は260ピコモル用量のいずれでも、腸のカルシウム輸送において有意な変化をもたらさなかった。2−メチレン−19−ノル−1,25−(OH)はまた、両方の用量レベルできわめて強い骨カルシウム可動化をもたらしたが、やはり腸のカルシウム輸送活性は示さなかった。この化合物の骨カルシウム可動化活性は、1,25−(OH)のそれの10〜100倍であるらしい。上記の結果は、19−ノル−1,25−(OH)の2−メチレン及び20S−2−メチレン誘導体がカルシウムの骨からの可動化に選択的であることを例証する。表2は、様々な化合物の単一高用量に対する腸及び血清カルシウムの両方の応答を例示し、表1より導かれる結論をやはり支持する。
【0113】
この結果は、2−メチレン−19−ノル−20S−1,25−(OH)がHL−60細胞の単球への分化を誘導するのにきわめて強力であることを例証する。2−メチレン−19−ノル化合物は、1,25−(OH)と同様の活性を有した。これらの結果は、2−メチレン−19−ノル−20S−1,25−(OH)及び2−メチレン−19−ノル−1,25−(OH)化合物の、抗癌剤(特に白血病、結腸癌、乳癌、及び前立腺癌に抗する)として、又は乾癬の治療における薬剤としての潜在能力を例証する。
【0114】
類似体のブタ腸受容体への競合結合は、Dame et al. (Biochemistry 25, 4523-4534, 1986) に記載の方法によって行った。
HL−60前骨髄球の単球への分化は、Ostrem et al (J. Biol. Chem. 262, 14164-14171, 1987) に記載のように定量した。
【0115】
【表1】

【0116】
雄性の離乳ラットをスプレーグ・ドーリー社(インディアナ州インディアナポリス)より入手し、0.47%カルシウム、0.3%リン、ビタミンD欠乏食で1週間飼育してから、0.02%カルシウム、0.3%リンを含有する同じ食餌を2週間与えた。最後の週の間に0.1mlの95%プロピレングリコール及び5%エタノールの腹腔内注射により指定量の化合物を7日間連日与えた。対照動物には、0.1mlの95%プロピレングリコール、5%エタノールだけを与えた。最終投薬から24時間後、ラットを犠牲にして、既報のような反転腸管(everted sac)技術により腸カルシウム輸送を定量し、モデル3110 パーキンエルマーインスツルメント(コネティカット州ノーウォーク)による原子吸光スペクトロメトリーで血清カルシウムを定量した。各群のラットは5匹であり、数値は、平均(±)SEMを表す。
【0117】
【表2】

【0118】
雄性Holtzman系離乳ラットをスプレーグ・ドーリー社(インディアナ州インディアナポリス)より入手し、Suda et al. (J. Nutr. 100, 1049-1052, 1970) に記載の0.47%カルシウム、0.3%リン食餌で1週間飼育してから、0.02%カルシウム及び0.3%リンを含有する同じ食餌でさらに2週間飼育した。この時点で、それらは、0.1mlの95%プロピレングリコール/5%エタノールに溶けた指定量の単回頚動脈内注射を受けた。24時間後、それらを犠牲にして、腸カルシウム輸送と血清カルシウムを表1に記載のように定量した。化合物の用量は650ピコモルで、各群の動物は5匹であった。データは、平均(±)SEMとして表す。
【0119】
従って、以下の式Iaの化合物も、式Iのものといっしょに本発明に含まれる:
【0120】
【化21】

【0121】
上記の式Iaにおいて、Y、Y、R、R、及びZの定義は、本明細書においてすでに示した通りである。X、X、X、X、X、X、X、X、及びXに関しては、これらの置換基は、同じでも異なってもよく、水素又は低級アルキル、即ち、メチル、エチル、又はn−プロピルのようなC1−5アルキルより選択される。さらに、対の置換基、XとX又はX、X又はXとX又はX、X又はXとX又はXは、化合物の中央部分の3つの隣接炭素原子(それぞれ、8、14、13又は14、13、17又は13、17、20位に対応する)と一緒になるとき、同じでも異なってもよく、飽和又は不飽和、置換又は未置換、炭素環式の3、4、5、6又は7員環を形成する。
【0122】
本発明の好ましい化合物は以下の式の1つにより表すことができる:
【0123】
【化22】

【0124】
【化23】

【0125】
【化24】

【0126】
【化25】

【0127】
上記の式Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig及びIhにおいて、Y、Y、R、R、R、Z、X、X、X、X、X、X、X、及びXの定義は、本明細書においてすでに示した通りである。置換基Qは、0、1、2、3、又は4の炭素原子を含む飽和又は不飽和、置換又は未置換の炭化水素鎖を表すが、好ましくは、基:−(CH−である(ここでkは、2又は3に等しい整数である)。
【0128】
式Ia〜Ihの化合物を作製する方法は知られている。具体的には、国際特許出願番号PCT/EP94/02294(1994年7月7日出願)の国際特許公開公報番号WO95/01960(1995年1月19日公開)が参考になる。
【0129】
【化26】

【0130】
【化27】

【0131】
【化28】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物:2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
副甲状腺ホルモンがヒト組換え副甲状腺ホルモンである、請求項1の組成物。
【請求項3】
副甲状腺ホルモンがヒト組換え副甲状腺ホルモン1−34である、請求項1の組成物。
【請求項4】
老年性骨粗鬆症、閉経後骨粗鬆症、骨折、移植骨片、乳癌、前立腺癌、肥満、骨減少症、男性骨粗鬆症、虚弱、筋損傷、又は肉減少症を患者において治療する方法であって、2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体の治療有効量をその必要な患者へ投与することを含んでなる、前記方法。
【請求項5】
2−メチレン−19−ノル−20(S)−1α,25−ジヒドロキシビタミンDと副甲状腺ホルモン又はその活性断片又は変異体を実質的に同時に投与する、請求項4の方法。
【請求項6】
閉経後骨粗鬆症を治療する、請求項4の方法。
【請求項7】
骨折を治療する、請求項4の方法。

【公表番号】特表2007−505883(P2007−505883A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526715(P2006−526715)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【国際出願番号】PCT/IB2004/002902
【国際公開番号】WO2005/027915
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】