説明

2−メチルピロリジン及びその特定の鏡像異性体を調製するための方法

本発明は、2−メチルピロリジン、とりわけ、2−メチルピロリジンの特定の鏡像異性体の調製方法に関する。新規中間体についても述べる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−メチルピロリジン化合物、特定の鏡像異性体及びそれらの誘導体を調製するための方法に関する。とりわけ、本発明は、キラル出発物質から、2−メチルピロリジンの特定の異性体を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
多くの生物学的に重要な物質中には、ピロリジン環系及びそれらの誘導体が存在することが多い。特に2−メチルピロリジンは、様々な製薬プロセスにおける出発物質として有用な化合物である。例えば、2−メチルピロリジンは、H3受容体リガンドの調製における出発物質としての有用性が証明されている。国際特許公開WO第02/074758号(2002年9月26日公開)には、アルキル鎖を介してベンゾフラン部分に結合されている環状アミンの調製が記載されている。このような化合物は、状態や疾患の中で特にH−介在状態又は疾患、例えば、認知機能又は肥満等の治療に有益な効果があることが示されている。
【0003】
2−メチルピロリジンを調製するためのプロセスが文献において報告されている。例えば、Elworthyらは、Tetrahedron,Vol.50,No.20,pp.6089−6096(1994)において、α−リチオピロリジン誘導体のアルキル化を介して2−メチルピロリジンを調製するためのプロセスを報告している。Andresらは、Eur.J.Org.Chem.,pp.1719−1726(2000)において、炭素担持パラジウムでの水素添加分解によるN−ベンジル部分の除去及び(2R)−2−[(2’R)−2’−メチル−N−ピロリジニル]−2−フェニル−1−エタノールの塩化トシルを用いた処理を記載している。Nijhuisらは、J.Org.Chem.,Vol.54,No.1,pp.209−216(1989)において、2−クロロメチル(ピロリジン)の塩を介してプロリノールから光学活性ピロリジンを調製することができることを示唆している。さらに、Donnerらは、Tetrahedron Letters,Vol.36,No.8,pp.1223−1226(1995)において、N−Boc−保護化プロリノールチオエーテル誘導体のRaneyニッケル還元を介して、鏡像異性体的に純粋な2−メチルピロリジンを調製するためのプロセスを記載している。これらの方法により、ある条件下で光学活性のあるピロリジン誘導体を得ることができるが、一般に、のようなプロセスを介して大量に化合物を調製することは、工業での実用性に対して費用の面で最適とは言えない。
【0004】
従って、製薬業界において、単一の所望する鏡像異性体を得るために、ラセミ化合物の2−メチルピロリジンを分離する方法に対する強い依存がある。例えば、酒石酸等のキラル酸を用いて、ジアステレオマー塩を形成させることにより、ラセミ化合物混合物を分解してきた(例えば、Elworthyら、Tetrahedron,Vol.50,No.20,pp.6089−6096(1994)を参照のこと。)。ラセミ化合物混合物はまた、鏡像異性体混合物をキラル補助基に結合させ、得られたジアステレオマーの混合物を再結晶化又はクロマトグラフィーにより分離し、場合によっては、Furniss,Hannaford,Smith及びTathcell、「Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry」、第5版(1989);及びLongman Scientific & Technical,Essex CM20 2JE,Englandで記載されているように、前記補助基から光学的に純粋な生成物を単体分離することにより分離されてきた。さらに、キラルクロマトグラフィーカラムでの、又は分別再結晶化による光学的鏡像異性体混合物の直接分離も本分野で一般に用いられてきた。残念ながら、これらの方法を用いると、使用が非効率的となり、高価な出発物質が過度に廃棄されることとなり、光学活性生成物の調製に対する工業的に実行可能なプロセスとしてはあまり効率の良いプロセスとは言えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、効率的で費用効率の高い2−メチルピロリジン合成法を提供することは有用であろう。さらに、このような効率的で費用効率の高い合成を介した2−メチルピロリジンの特定の鏡像異性体を得るための方法を提供することは有用であろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要約
本発明は、2−メチルピロリジン及び、とりわけ、キラル出発物質から得られる、2−メチルピロリジンの特定の鏡像異性体を調製するための方法を含む。本キラル出発物質は、市販のプロリノール化合物であり、通常、(R)−プロリノール又は(S)−プロリノールのいずれかとして得られる。プロリノール出発物質を使用することにより、2−メチルピロリジン及びその特定の鏡像異性体、例えば、(S)−プロリノール及び(R)−プロリノールからそれぞれ2−(R)メチルピロリジン及び2−(S)−メチルピロリジンを調製するための、効果的な合成方法が得られる。
【0007】
ある局面において、本発明は、
1a)式(II)
【0008】
【化12】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、窒素保護基である。)の化合物を用意する段階と、
1b)式(III)
【0009】
【化13】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりであり、Rは、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アリール又は置換アリール基である。)の化合物を得るために、式(II)の化合物をスルホニル化試薬で処理する段階と、
1c)式(V):
【0010】
【化14】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、水素又は窒素保護基(R)もしくはそれらの塩である。)の化合物の所望する鏡像異性体を得るために、式(III)の化合物における−O−S(O)−R基をアルカリ金属水素化トリエチルホウ素と反応させる段階と、
を含む、式(V):
【0011】
【化15】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりである。)の化合物の調製方法を含む。本発明のある実施形態において、式(V)の化合物を与えるために、水素化トリエチルホウ素リチウム剤を用いて化合物(III)の−O−S(O)−R基を除去することができる。式(II)のN−保護化プロリノール化合物は、市販業者から購入可能であるが、あるいは、式(I):
【0012】
【化16】

を有するプロリノールの所望する鏡像異性体をアミン保護剤と反応させて、式(II)の化合物を得ることができる。
【0013】
別の局面において、本発明は、
2a)式(III):
【0014】
【化17】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心であり、Rは、窒素保護基であり、Rは、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アリール又は置換アリール基である。)の化合物を用意して、式(IV):
【0015】
【化18】

(式中、及びRは、式(III)の化合物に対して定義されるとおりである。)の化合物を得るために、式(III)の化合物をアルカリ金属ヨウ化塩で処理する段階と、
2b)式(V):
【0016】
【化19】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、水素又は窒素保護基もしくはそれらの塩である。)の化合物の所望する鏡像異性体を得るために、式(IV)の化合物を水素化する段階と、
を含む、式(V):
【0017】
【化20】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりである。)の化合物を調製するためのプロセスを含む。好ましいヨウ化塩は、金属ヨウ化塩である。あるいは、式(IV)の化合物は、すでに記載されているように、式(II)の化合物をヨウ素試薬、例えばヨウ素分子(I)、アルカリ金属ヨウ化塩又はテトラアルキルアンモニウムヨウ化塩等と反応させることにより、式(II)の化合物から直接調製することができる。
【0018】
所望する2−メチルピロリジン化合物を得るために、従来の条件下で、式(V)の化合物(式中、Rは、窒素保護基である。)を脱保護することができ、当業者にとって公知の条件下で所望する塩又は他の適切な誘導体を得るためにそれをさらに処理することができる。
【0019】
本発明の方法を用いて調製された新規中間体もまた意図するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
用語の定義
多くの用語が本発明の特定の要素を指すために本明細書中で使用される。そのように使用される場合、次の意味を持つよう意図する。「アルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、1個から10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖炭化水素を意味する。代表的なアルキルの例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル及びn−デシルが含まれる。本発明のアルキル基は、0、1、2、3、4又は5個のハロ置換基で置換され得る。
【0021】
「アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、6個の炭素原子を含有する単環芳香環系を意味する。アリールの代表例には、これらに限定されないが、フェニルが含まれる。本発明のアリール基は、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルスルホニル、アルキニル、アミド、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ及びチオアルコキシから独立して選択される0、1、2、3、4又は5個の置換基で置換され得る。
【0022】
「アルカリ金属水素化トリエチルホウ素」を意味するように使用される場合、「アルカリ金属」という用語は、例えば、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム及び水素化トリエチルホウ素カリウムにおけるような、リチウム、ナトリウム及びカリウムを意味する。
【0023】
「ヨウ素試薬」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば、I又はアルカリ金属ヨウ化塩等、ヨウ素を導入できる試薬を意味する。
【0024】
「ヨウ化塩」という用語は、本明細書中で使用される場合、アルカリ金属ヨウ化塩、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム及びヨウ化セシウムを意味する。
【0025】
「窒素保護基」という用語は、本明細書中で使用される場合、合成手段中に、望ましくない反応から窒素原子を保護することを意図する基を意味する。窒素保護基には、カルバメート、アミド、N−ベンジル誘導体及びイミン誘導体が含まれる。好ましい窒素保護基は、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ホルミル、フェニルスルホニル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、tert−ブチルアセチル及びトリフェニルメチル(トリチル)である。例えばトリエチルアミン等の塩基及びアミン保護剤とアミン基を反応させることにより、窒素保護基を本発明化合物のアミノ基に付加させることができる。アミン保護剤は、適切な窒素保護基を与え、必ずしもそこから選択する必要があるわけではないが、ハロゲン化アルキル、アルキルトリフラート、ジアルキル炭酸無水物、例えば(アルキル−O)C=Oで表されるようなもの又はジ−tert−ブチルジカーボネート、ジアリール炭酸無水物、例えば(アリール−O)C=Oで表されるもの、ハロゲン化アシル、例えばクロロギ酸イソブチル等のクロロギ酸アルキル、例えばクロロギ酸フェニル等のクロロギ酸アリール、例えば塩化メタンスルホニル等のハロゲン化アルキルスルホニル、例えば塩化トリフルオロメタンスルホニル等のハロゲン化ハロアルキルスルホニル、ハロゲン化アリールスルホニル又は例えばピロリジン−1−塩化カルボニル等のハロ−CON(アルキル)、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、例えばベンジルブロミド等のハロゲン化ベンジル、塩化ベンジルオキシカルボニル、フッ化ホルミル、塩化フェニルスルホニル、塩化ピバロイル、ジ−tert−ブチルジカーボネート、トリフルオロ酢酸無水物及び塩化トリフェニルメチルから選択され得る。
【0026】
「スルホニル化試薬」という用語は、本明細書中で使用される場合、スルホネート又はスルホンアミドを与えるようにアルコール又はアミンと反応しうる試薬を意味する。スルホニル化試薬の例には、例えば、塩化メタンスルホニル等のハロゲン化アルキルスルホニル、メタンスルホン酸無水物等のアルキルスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等のハロアルキルスルホン酸無水物、パラ−塩化トルエンスルホニル等のハロゲン化アリールスルホニル及びパラ−トルエンスルホン酸無水物等のアリールスルホン酸無水物が含まれる。
【0027】
本発明の実施形態
本発明は、医薬品の調製に有用な化合物及び中間体である2−メチルピロリジン化合物を調製するための方法を提供する。本発明は、例えばR−及びS−鏡像異性体等の単一の鏡像異性体を調製するために適切な、効率的に2−メチルピロリジンを調製するための方法を含む。これらの立体異性体は、キラル炭素原子の周囲の置換基の立体配置に依存する「R」又は「S」である。本明細書中で使用される「R」及び「S」という用語は、IUPAC 1974 Recommendations for Section E,Fundamental Stereochemistry,Pure Appl.Chem.,1976,45:13−30で定義されているとおりの立体配置である。
【0028】
本発明の方法の例は、スキームに従うが、これらは、本発明の方法を説明することを意図するものであり、本発明の範囲を何ら限定することを意図するものではない。下記に示すように、(S)−プロリノールから2−メチルピロリジンのR−鏡像異性体を調製するための方法を示す。本スキーム中に記載されている本化合物の異性体は、S−異性体の調製も可能にする、請求の範囲に記載されている発明の範囲に包含されるようにもくろまれ、みなされる。
【0029】
下記のスキーム1において、2−(R)−メチルピロリジンを調製するための方法を例示する。
【0030】
【化21】

スキーム1に示すように、市販の(S)−プロリノール(又は(S)−2−ピロリジンメタノール、Chemical Abstracts number 23356−96−9)(1)を、無機又は有機塩基存在下でアミン保護基と反応させて、N−保護化−(S)−プロリノール誘導体(2)を得ることができる。しかし、N−保護化−(S)−プロリノール誘導体(2)は、例えば、Sigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis,Missouri,USA)等の市販業者から得ることもできる。有機塩基存在下でN−保護化−(S)−プロリノール(2)をスルホニル化試薬で処理して、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステル(3)を与える。(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステル(3)を金属ヨウ化塩と反応させ、N−保護化−2−(S)ヨウ化メチルピロリジン(4)を与えるが、これは、N−保護化−(S)−プロリノール(2)をI、アルカリ金属ヨウ化塩又はテトラアルキルアンモニウムヨウ化塩と反応させることにより、N−保護化−(S)−プロリノール(2)から直接調製することもできる。パラジウム触媒反応を用いてN−保護化−2−(S)ヨウ化メチルピロリジン(4)を水素化して、N−保護化−2−(R)−メチルピロリジン(5)を与えることができる。
【0031】
別の局面において、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステル(3)をアルカリ金属水素化トリエチルホウ素、例えばLiBH(Et)で処理して、N−保護化−2−(R)−メチルピロリジン(5)を直接得ることができる。そのN−保護化−2−(R)−メチルピロリジンを適切な還元剤で処理して、本分野で公知の従来法を用いてN−保護基を除去し、2−(R)−メチルピロリジンもしくはその塩又は他の適切な誘導体を与えることができる。
【0032】
本明細書中で提供するスキーム及び詳細な説明により説明するように、本発明の方法は、このスキーム又は実施例により説明するあらゆる化合物及び中間体の対応するS−鏡像異性体の調製に適切であろうことは当業者にとって明らかであろう。例えば、スキーム1で示すようなあらゆる方法において、対応するN−保護化−2−(S)−メチルピロリジン化合物(5)を得るために、(R)−プロリノールは(S)プロリノール出発物質に置換し得る。このような置換は、当業者の技術の範囲内であり、さらなる実験を行うことなく容易に遂行し得る。
【0033】
例えばSigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis,Missouri,USA)又はFisher Scientific International Inc.(Hampton,New Hampshire、USA)等の市販業者からN−保護化−(S)−プロリノール(式中、Rは、窒素保護基である。)を直接入手することができる。あるいは、スキーム1で示すように、(S)−プロリノール(1)のアミン基を何らかの適切なアミン保護剤と反応させることにより、N−保護化−(S)プロリノール(2)を調製することができる。
【0034】
スキーム1に従い、(S)−プロリノールをアミン保護剤と反応させて、N−保護化−(S)−プロリノール(2)を与えることができる。(S)−プロリノールは、市販のアミノアルコールであり、Sigma−Aldrich Chemical Company及び/又はFisher Scientific International Inc.より入手することができる。アミン保護剤は、多くの一般的に利用可能な窒素保護基のうちいずれか1つ又はそれらの混合物を与える。Rに対応する典型的な窒素保護基には、これらに限定されないが、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ホルミル、フェニルスルホニル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、tert−ブチルアセチル、トリフルオロアセチル及びトリフェニルメチル(トリチル)が含まれる。好ましい窒素保護基は、ベンジルオキシカルボニル及びtert−ブトキシカルボニルである。
【0035】
通常、本反応は有機塩基存在下で行われる。ほとんどの塩基が適切であるが、有機塩基、例えばアミンが好ましい。このような塩基には、これらに限定されないが、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン等又はそれらの混合物が含まれる。好ましい塩基は、トリエチルアミン及びピリジンである。アミン保護剤には、これらに限定されないが、ハロゲン化アルキル、アルキルトリフラート、例えば(アルキル−O)C=Oで表されるようなジアルキル炭酸無水物、例えば(アリール−O)C=Oで表されるようなジアリール炭酸無水物又はジ−tert−ブチルジカーボネート、ハロゲン化アシル、例えばクロロギ酸イソブチル等のクロロギ酸アルキル、例えばクロロギ酸フェニル等のクロロギ酸アリール、例えば塩化メタンスルホニル等のハロゲン化アルキルスルホニル、例えば塩化トリフルオロメタンスルホニル等のハロゲン化ハロアルキルスルホニル、ハロゲン化アリールスルホニル、ハロゲン化アルカノイル、ハロゲン化ベンジル又はハロ−CON(アルキル)が含まれる。とりわけ、アミン保護剤の例には、これらに限定されないが、例えば塩化アセチル、塩化ベンゾイル、ベンジルブロミド、塩化ベンジルオキシカルボニル、フッ化ホルミル、ピロリジン−1−カルボニル、塩化フェニルスルホニル、塩化ピバロイル、ジ−tert−ブチルジカーボネート(又はtert−ブトキシカルボニル無水物)、トリフルオロ酢酸無水物及び塩化トリフェニルメチルが含まれる。好ましくは、本反応は室温以下にていずれかの適切な溶媒中で行われる。好ましい溶媒の例には、これらに限定されないが、非プロトン性溶媒(これらに限定されないが、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル及び酢酸エチルが含まれる。)が含まれる。より極性の小さい非プロトン溶媒、例えば酢酸エチルが好ましい。反応が最も効果的となる窒素保護基及び試薬及び溶媒のさらなる考察は、T.W.Greene及びP.G.M.Wuts,Protective Groupes in Organic Synthesis,第三版、John Wiley & Son,Inc.,1999で見出すことができる。
【0036】
N−保護化−(S)−プロリノール(2)のヒドロキシ基をスルホニル化試薬と反応させ、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステル(3)(式中、Rは、上記で定義されるとおりであり、Rは、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アリール又は置換アリールである。)を得る。本明細書中で使用される場合、「アルキル」という用語は、本明細書で使用される場合、1個から10個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖炭化水素を意味する。代表的なアルキルの例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソ−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル及びn−デシルが含まれる。本発明のアルキル基は、0、1、2、3、4又は5個の、例えばクロロ及びフルオロ置換基等のハロ置換基で置換することができる。置換されたアルキル基の例には、これらに限定されないが、ジクロロメチル、トリフルオロメチル等が含まれる。Rに対する好ましいアルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル及びトリフルオロメチル(−CF)が含まれる。「アリール」という用語は、本明細書中で使用される場合、6個の炭素原子を含有する単環芳香環系を意味する。アリールの代表例には、これらに限定されないが、フェニルが含まれる。本発明のアリール基は、アシル、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、アルコキシスルホニル、アルキル、アルキルスルホニル、アルキニル、アミド、カルボキシ、シアノ、ホルミル、ハロアルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、メルカプト、ニトロ及びチオアルコキシから独立して選択される0、1、2、3、4又は5個の置換基で置換される(例えばジメチルフェニル、ニトロフェニル等)。Rの好ましいアリール基の例には、これらに限定されないが、フェニル及びアルキル置換フェニル基、例えば−フェニル−CH及び特に−フェニル−4−CHが含まれる。
【0037】
スルホニル化試薬は、N−保護化−(S)−プロリノールのヒドロキシ基と反応するためのアルキルスルホニル又はアリールスルホニル基を与えるあらゆる適切な試薬であり得る。スルホニル化試薬には、例えば、ハロゲン化アルキルスルホニル、アルキルスルホン酸無水物、ハロアルキルスルホン酸無水物、ハロゲン化アリールスルホニル及びアリールスルホン酸無水物が含まれ得る。適切なスルホニル化試薬のさらに特定の例には、例えば、メタンスルホン酸無水物、塩化メタンスルホニル、パラ−塩化トルエンスルホン酸、パラ−塩化トルエンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物等が含まれ得る。本反応は、通常、有機塩基存在下で行われる。このような塩基には、これらに限定されないが、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン等又はそれらの混合物が含まれ得る。好ましい塩基は、トリエチルアミンもしくはピリジン等又はそれらの混合物である。本反応に対して広い範囲にわたる溶媒が適切であるが、本反応に非常に好ましいのは非プロトン溶媒である。非プロトン溶媒の例には、これらに限定されないが、塩化メチレン(又はジクロロメタン)、ジエチルエーテル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル及び酢酸エチルが含まれる。好ましい溶媒は、酢酸エチル又は塩化メチレンである。
【0038】
通常、N−保護化(S)−プロリノールに対して約1:1から約1:5モル濃度相当の範囲でスルホニル化試薬をN−保護化(S)−プロリノールと反応させる。好ましくは、N−保護化(S)−プロリノール1モル濃度に対して、スルホニル化試薬を約3モル濃度相当使用する。少なくとも室温にてこの反応を行うことができる。約1時間から2時間でこの反応を遂行できる。ヒドロキシ部分と反応させるためのスルホニル基を与える試薬及び溶媒のさらなる考察は、Leeら、J.Med.Chem.,44:2015−2026(2001)及びT.W.Greene及びP.G.M.Wuts,Protective Groupes in Organic Synthesis,第三版、John Wiley & Son,Inc.,1999で見出すことができる。
【0039】
(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル又はアリール)スルホン酸エステル(3)をヨウ化塩で処理して、N−保護化−2−(S)−ヨウ化メチルピロリジン(4)(式中、Rは,前に定義したとおりである。)を得る。ヨウ化塩は、あらゆる金属ヨウ化塩であり得る。本反応に対する適切なヨウ化塩の例には、これらに限定されないが、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム及びヨウ化セシウム等が含まれる。ヨウ化塩は市販されており、一般に、あらゆる適切な溶媒中で(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルと反応させることができる。好ましくは、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)に対して約1:1から約1:20モル濃度相当のヨウ化塩を使用する。通常、本反応は、本反応に対する出発物質が溶解され得るあらゆる不活性溶媒中で行われる。好ましい溶媒は、極性溶媒、例えば、エチルニトリル、アセトン、2−ブタノン、テトラヒドロフラン等である。好ましい溶媒は、テトラヒドロフランである。
【0040】
あるいは、N−保護化−(S)−プロリノール(2)をヨウ素試薬で処理して、N−保護化−2−(S)−ヨウ化メチルピロリジン(4)を得ることができる。通常、ヨウ素試薬は、ヨウ素分子(I)又はアルカリ金属ヨウ化塩、例えばヨウ化ナトリウムである。テトラアルキルヨウ化アンモニウム塩、例えばテトラブチルヨウ化アンモニウムも使用できる。N−保護化−(S)−プロリノールの処理は、有利に、ヒドロキシ部分を活性化するために、ホスフィン、特にトリアリールホスフィン(トリフェニルホスフィン等)の使用を含み得る。ヨウ化ナトリウムを使用する場合、CBr等の臭化物試薬も、本反応の成分として含まれる。本反応は、あらゆる適切な溶媒中で遂行される。適切な溶媒には、これらに限定されないが、極性、非プロトン溶媒、例えば、トルエン、アセトニトリル、アセトン等が含まれ得る。N−保護化−(S)−プロリノール(2)からN−保護化−2−(S)−ヨウ化メチルピロリジンを得るための適切な条件の例は、本反応のためのヨウ素試薬を使用した代表的な条件を要約している下記の表1及び適切な条件を決定するためのさらなる文献に従う。
【0041】
【表1】

【0042】
N−保護化−2−(S)−ヨウ化メチルピロリジン(4)を水素添加分解して、N−保護化−2−(R)−メチルピロリジン(5)を得ることができる。通常、本水素化反応は、水素源および触媒を用いて遂行される。水素ガスを用いることにより、又は、水素供与体源、ギ酸アンモニウム、ギ酸、ベンジルトリエチルギ酸アンモニウム、ヒドラジン、シクロヘキサジエン等又はそれらの混合物を介して水素を供与することにより、本反応を遂行し得る。触媒は通常、パラジウム又は白金触媒である。適切な触媒の例には、これらに限定されないが、炭素担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、酢酸パラジウム、PdCl、Pd(OH)、炭素担持白金、PtCl及び酸化白金が含まれ得る。本反応は、あらゆる適切な溶媒、通常は極性有機溶媒中で、有機塩、例えばアミン、又は無機塩基存在下で行われ得る。極性有機溶媒の例には、これらに限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が含まれる。好ましい溶媒は、メタノールである。適切な有機塩基は、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、トリメチルアミン、トリイソプロピルアミン等又はそれらの混合物から選択され得る。好ましいアミンはトリエチルアミンである。
【0043】
スキーム1でも示すように、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステル(3)を場合によっては、アルカリ金属水素化トリエチルホウ素又は他の強力な還元剤で処理し、N−保護化−2−(R)−メチルピロリジン(5)を得る。好ましいアルカリ金属水素化トリエチルホウ素化合物には、これらに限定されないが、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム及び水素化トリエチルホウ素カリウムが含まれる。好ましいアルカリ金属水素化トリエチルホウ素は、水素化トリエチルホウ素リチウムであり、これは、スーパーヒドリド試薬(super hydride reagent)又はL−スーパーヒドリド(L−super hydride)として一般に知られている。本反応は不活性非プロトン溶媒中で行われ得る。本反応に対する適切な溶媒の例には、これらに限定されないが、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等又はそれらの混合物が含まれる。好ましい溶媒はテトラヒドロフランである。本反応は、好ましくは、室温以下で行われる。通常、還元剤の量は、(S)−プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルに対して約1:1から約1:10モル濃度相当であり得る。本反応を行うための好ましい温度には、約−20℃から約20℃までが含まれ得る。好ましい温度は0℃である。
【0044】
他に述べない限り、本反応に対するあらゆる試薬、触媒、溶媒又は出発物質は、例えばSigma−Aldrich Chemical Company(St.Louis,Missouri,USA)又はFisher Scientific International Inc.(Hampton,New Hampshire,USA)等の市販業者から入手され得る。記載される本方法の化合物及び中間体は、有機合成の当業者にとって公知の方法により単離及び精製され得る。化合物を単離し精製するための従来法の例には、これらに限定されないが、例として「Vogel’s Textbook of Practical Organic Chemistry」、第5版(1989)、Furniss,Hannaford,Smith及びTatchell著、Longman Scientific & Technical,Essex CM20 2JE,Englandより出版、に記載されているような、シリカゲル、アルミナ又はアルキルシラン基で誘導体化したシリカ等の固体支持体を用いたクロマトグラフィー、場合によっては活性炭で前処理して高温又は低温で再結晶化すること、薄層クロマトグラフィー、様々な圧力での蒸留、真空下での凝華及び摩砕が含まれる。
【0045】
上記の記述は、N−保護化−2−(R)−メチルピロリジン及びN−保護化−2−(S)−メチルピロリジンを含む、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物を調製するための方法を説明する。本分野で公知の方法に従い、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物を脱保護化して、対応する2−メチルピロリジン化合物を得ることができる。2−メチルピロリジンの塩もまた、当業者が一般に利用可能な手段に従い、容易に調製することができる。このような手段については、以下のスキーム2で説明する。
【0046】
【化22】

スキーム2において示すように、N−保護化−2−メチルピロリジン(VI)(式中、Rは、窒素保護基である。)を脱保護して、対応する2−メチルピロリジン(VII)又はその塩を得ることができる。
【0047】
窒素保護基を除去するための従来の手段により、式(VI)の化合物を容易に脱保護することができる。例えば、不活性有機溶媒、好ましくは非プロトン有機溶媒、水又はそれらの混合物中で強酸を用いることにより、窒素保護基を容易に除去することができる。窒素保護基を除去するために適切な酸の例には、これらに限定されないが、トリフルオロ酢酸、パラ−トルエンスルホン酸及び塩酸が含まれる。適切な溶媒には、例えば、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、ジオキサン、ジメチルエタン、トルエン等又はそれらの混合物が含まれる。窒素保護基、例えばtert−ブトキシカルボニルを除去するための好ましい条件は、N−保護化合物を、酢酸エチル又はジオキサン等の不活性有機溶媒中で、塩酸により処理することである。窒素保護基除去のための適切な試薬及び条件に対するさらなる説明は、T.W.Greene及びP.G.M.Wuts,Protective Groupes in Organic Synthesis,第三版、John Wiley & Son,Inc.,1999で見出すことができる。
【0048】
本発明の2−メチルピロリジン化合物の窒素部分を酸で処理して、所望する塩を形成させることができる。許容可能な塩は、本分野で公知である。本発明化合物の最後の単離及び精製中にインサイチューで、又は独立して遊離塩基官能基を適切な有機酸と反応させることにより、その塩を調製することができる。例えば、室温以上の状態で化合物を酸と反応させ、所望する塩(冷却後、沈殿させ濾過により回収する。)を得ることができる。本反応に適切な酸の例には、これらに限定されないが、トリフルオロ酢酸、酒石酸、乳酸、コハク酸、塩酸及び硫酸ならびにマンデル酸、アトロラクチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、炭酸、フマル酸、グルコン酸、酢酸、プロピオン酸、サリチル酸、臭化水素酸、リン酸、クエン酸、ヒドロキシ酪酸、カンファスルホン酸、リンゴ酸、フェニル酢酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等が含まれる。好ましくは、酸付加塩の調製のために非プロトン溶媒が使用される。このような溶媒の例には、これらに限定されないが、塩化メチレン、ジエチルエーテル、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、メチル−tert−ブチルエーテル及び酢酸エチル等及びそれらの混合物が含まれる。好ましい溶媒は、酢酸エチルである。
【0049】
従って、本発明のある局面は、
3a)市販品を購入することができる、又はアミン保護基とのプロリノールの反応を介して調製して得られたN−保護化プロリノールのヒドロキシ基を、スルホニル化試薬で処理して、プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルを得る段階と、
3b)プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルを、水素化トリエチルホウ素リチウム等のアルカリ金属水素化トリエチルホウ素と反応させて、N−保護化−2−メチルピロリジンを得る段階と、
を含む、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物の調製に関する。
【0050】
本発明の別の局面は、
4a)N−保護化プロリノールをヨウ素試薬と反応させるか、又はプロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルをヨウ化塩と反応させて、N−保護化−2−ヨウ化メチルピロリジンを得る段階と、
4b)N−保護化−2−ヨウ化メチルピロリジンを水素化して、N−保護化−2−メチルピロリジンを得る段階と、
を含む、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物の調製に関する。
【0051】
本明細書中に記載の方法は、医薬活性を示す化合物及び特にヒスタミン−2−受容体を調整する活性を示す化合物を調製するための有用な化合物を与える。例えば、2−メチルピロリジンは、国際特許公開WO第02/074758号に記載されているようなベンゾフラン部分に結合された環状アミンを有する化合物を調製するために有用であり得る。
【0052】
本発明のさらに別の局面は、式(VIII):
【0053】
【化23】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、水素又は窒素保護基である。)の化合物に関する。特定の窒素保護基の例には、これらに限定されないが、tert−ブトキシカルボニルが含まれる。このような化合物は、本発明の方法において有用であり、対応する2−メチルピロリジン化合物の調製に適切な材料を与える。
【0054】
本明細書中に記載の化合物及び方法は、本発明の範囲を説明することを意図するものであってそれを制限するものではない実施例と結び付けることでより良く理解されるであろう。
【実施例1】
【0055】
2−(R)−メチル−ピロリジン−1−カルボンキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
【0056】
段階1:2−(S)−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(2)の調製
酢酸エチル(250ml)中の(S)−プロリノール(1,50g、0.49mol)の溶液を0℃に冷却した。反応温度を0℃以下に保ちながら、トリエチルアミン(139ml、101g、1mol)をこの冷反応混合物に滴下添加した。反応温度を0℃以下に保ちながら、酢酸エチル(100ml、EtOAc)中のtert−ブトキシカルボニル無水物(126ml、119.7g、0.54mol)の溶液をその反応混合物に滴下添加した(〜30分間)。その反応混合物を室温にて一晩撹拌した(〜11時間)。TLCにより、出発物質がなくなったことが分かった(Si ゲル、EtOAc、I)。その生成物を205nmにてHPLCで検出した。1M HPO水溶液(300ml)により反応を停止させた。その有機層を分離し、1M HPO水溶液(3x300ml)、次にNaHCO飽和水溶液(3x200ml)で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し濃縮して油状の残渣生成物を残した(109g、100%回収率に対して99.5g)。H NMR(CDCl):δ1.47(s,9H,3xCH),1.81(m,2H,CH),2.01(m,2H,CH),3.38(m,2H,CH),3.61(m,2H,CH)及び3.97(m,1H,CH);[M+H] at m/z 202.
【0057】
段階2:2−(S)−メタンスルホニルオキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(3)の調製
ジクロロメタン(500ml)中の2−(S)−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(上記から得られた化合物(2)、109g、100%回収率に対して99.5g、0.49mol)の溶液を0℃に冷却した。その反応系を0℃以下に保ちながら、トリエチルアミン(139ml、101g、1mol)をその冷却溶液に滴下添加した。反応温度を0℃以下に保ちながら、塩化メタンスルホニル(58ml、85.8g、0.75mol)を反応混合物に滴下添加した(〜1時間)。その反応混合物を室温にて一晩撹拌した(〜11時間)。HPLCにより、出発物質がなくなったことが分かった。1M HPO水溶液(300ml)によりその反応混合物の反応を停止させ、15分間混合した。その有機層を分離し、1M HPO水溶液(2x300ml)、続いてNaHCO飽和水溶液(4x250ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して油状の残渣生成物を残した(132g、95.6%回収率)。H NMR(CDCl):δ1.48(s,9H,3xCH),1.82−2.08(m,4H,2xCH),3.01(s,3H,CH),3.36(m,2H,CH),3.94−4.18(m,2H,CH)及び4.29(m,1H CH);[M+H] at m/z 280.
【0058】
段階3:2−(S)−ヨウ化メチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(4)の調製
テトロヒドロフラン無水物(600ml)中の2−(S)−メタンスルホニルオキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(上記から得られた化合物(3)、30g、0.10mol)の溶液を0℃に冷却した。反応温度を30℃以下に保ちながら、ヨウ化リチウム(144g、1mol)を、固形物として冷却反応混合物に分割添加した。HPLCで出発物質が2%未満になることが示されるまで、その反応混合物を62℃に温めた。10% チオ硫酸ナトリウム水溶液(300ml)により、その反応混合物の反応を停止させた。酢酸エチル(600ml)をその反応混合物に添加した。その有機層を分離した。その水層を酢酸エチル(3x50ml)で再抽出した。合わせた有機層を食塩水(2x100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、油状の残渣生成物を残した(26.3g、78.6%回収率)。H NMR(CDCl):δ1.46(d,3H,CH),1.48(d,6H,2xCH),1.79−2.14(m,4H,2xxCH),3.14−3.52(m,4H,2xCH)及び3.88(m,1H,CH);[M+H] at m/z 312.
【0059】
段階4:2−(R)−メチル−ピロリジン−1−カルボキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
メタノール(250ml)中の2−(S)−ヨウ化メチル−ピロリジン−1−カルボン酸tertブチルエステル(上記から得られた化合物(4)、25g、0.08mol)、トリエチルアミン(11.2ml、8.12g、0.08mol)の異種反応混合物及び5% 炭素担持パラジウム(2.5g、10重量%、Pd/C)を、室温にて一晩、水素ガスのブランケット下で、HPLCにより出発物質が1%未満になったことが示されるまで(〜7時間)反応させた。その反応混合物を濾過し、残渣を得られるまでその濾過液を濃縮し残渣を得た。その残渣を蒸留水(100ml)及び酢酸エチル(100ml)中に溶解した。その有機層を分離し、その水層を酢酸エチル(2x50ml)で再抽出した。合わせた有機層を1M HPO水溶液(2x100ml)、続いてNaHCO飽和溶液(2x100ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、油状の残渣生成物を残した(12.78g、85.9%回収率)。H NMR(CDCl):δ1.16(d,3H,CH),1.47(s,9H,3xCH),1.50−1.82(m,2H,CH),1.84−2.03(m,2H,CH),3.34(m,2H,CH)及び3.86(m,1H,CH);[M+H] at m/z 186.
【実施例2】
【0060】
2−(R)−メチル−ピロリジン−1−カルボンキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
【0061】
段階1:2−(S)−メタンスルホニルオキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(3)の調製
化合物(3)を実施例1、段階1−2に対して上述した手段に従い調製した。
【0062】
段階2:2−(R)−メチル−ピロリジン−1−カルボキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
テトラヒドロフラン無水物(50ml、THF)中の2−(S)−メタンスルホニルオキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(化合物(3)、4.6g、0.016mol)の溶液を0℃に冷却した。反応温度を0℃以下に保ちながら、THF(38ml、3.17g、0.029mol)中の1.0M 水素化トリエチルホウ素リチウムを本反応混合物に滴下添加した。その反応混合物を一晩還流させた(〜11時間)。HPLCにより、出発物質がなくなったことが分かった。反応混合物を0℃に冷却し、温度を10℃以下に保ちながら、酢酸エチル(50ml)をゆっくりと添加し、続いて蒸留水(50ml)を添加した。その有機層を分離し、蒸留水(2x50ml)、1M HPO(2x50ml)及びNaHCO飽和溶液(2x50ml)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、油状の残渣生成物を残した(2.46g、53.5.%回収率)。H NMR(CDCl):δ1.16(d,3H,CH),1.47(s,9H,3xCH),1.50−1.82(m,2H,CH),1.84−2.03(m,2H,CH),3.34(m,2H,CH)及び3.86(m,1H,CH).
【実施例3】
【0063】
2−(S)−メチル−ピロリジン−1−カルボキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
【0064】
段階1:2−(R)−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの調製
2−(R)−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルを、(R)−プロリノールを(S)−プロリノールに置き換えることを除いて実施例1、段階1に対して上述した手段に従い調製した。
【0065】
段階2:2−(R)−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(3)の調製
反応系を0℃以下に保ちながら、よく撹拌した、ピリジン 42ml及びジクロロメタン100ml中の2−(R)−ヒドロキシメチル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(化合物(2)、15g、75mmol)の0℃の溶液に、ジクロロメタン 75ml中の4−塩化トルエンスルホニル(15.68g、82.55mmol)の溶液を添加した。添加終了後、反応温度を室温(〜23℃)まで上げ、その反応物を5時間撹拌し、その時点で4−塩化トルエンスルホニルをさらに5g添加した。その反応物を15時間撹拌した。ジクロロメタン及びヘキサンの2:1混合物 150mlに、その反応混合物を注いだ。NaHPO飽和溶液(pH=4.1)100mlと水との混合液でその混合物2回洗浄し、次にNaHPO 100mlと水との混合液 500mlで洗浄した。有機相を硫酸ナトリウム無水物で乾燥させ、真空中で濃縮して、フラッシュクロマトグラフィーを用いてヘキサン中の15% EtOAcで溶出して精製し、透明な油状物質を得た(22.9g、86% 回収率)。
【0066】
段階3:2−(S)−メチル−ピロリジン−1−カルボンキシルtert−ブチルエステル(5)の調製
0℃のTHF 5ml中の2−(S)−(トルエン−4−スルホニルオキシメチル)−ピロリジン−i−カルボン酸tert−ブチルエステル(化合物(4)、1.77g、4.99mol)の溶液に、水素化トリエチルホウ素リチウムの1M THF溶液 15ml(15mmol)を滴下添加した。15時間後、水 7.39mlを添加して反応を停止させた。その反応物をクロロホルム 35mlで希釈し、分液漏斗に注いだ。その混合物をジクロロメタンで希釈し、NaCl飽和水溶液で洗浄した。次に有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。その混合物を真空中で濃縮して、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで、1:3 酢酸エチル/ヘキサンで溶出して精製し、透明な油状物質として純粋な生成物を得た(0.73g、79% 回収率)。
【実施例4】
【0067】
2−(R)−メチル−ピロリジン 塩酸(6)の調製
【0068】
実施例1、段階4で得られた2−(R)−メチル−ピロリジン−1−カルボキシルtert−ブチルエステル(化合物(5)、12g、64mmol)を酢酸エチルに溶解し、反応混合物のpHが1以下になるまで、5分間、HClガスを通した。その反応混合物を室温にて2時間混合した。HPLCにより出発物質がなくなったことが分かった。その反応混合物を濃縮して残渣を残し、液体をデカントしながら、それをメチルtert−ブチルエーテル(3x30ml)で摩砕した。40℃にて一晩、窒素流出させながら、その吸湿性の固体を乾燥させ、HCl塩として白色の固体生成物を得た(7.5g、95.6% 回収率)。H NMR(CDCl):δ1.55(d,6H,2xCH),1.66−2.05(m,2H,CH),2.13(m,2H,CH),3.37(m,2H,CH)及び3.70(m,1H,CH);[M+H] at m/z 122.
本開示実施形態に対する様々な変化及び変更は、当業者にとって明らかであろう。このような変化及び変更は、本発明の範囲内であり、添付の請求項により定義される、その精神及び範囲から逸脱することなくなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1a)式(II)
【化1】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心であり、Rは、窒素保護基である。)の化合物を与える段階と、
1b)式(III)
【化2】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりであり、Rは、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アリール又は置換アリール基である。)の化合物を得るために、式(II)の化合物をスルホニル化試薬で処理する段階と、
1c)式(V):
【化3】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心であり、Rは、水素又は窒素保護基(R)である。)の化合物の所望する鏡像異性体を得るために、式(III)の化合物における−O−S(O)−R基をアルカリ金属水素化トリエチルホウ素と反応させる段階と、
を含む、式(V):
【化4】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりである。)
の化合物又はその塩を調製するための方法。
【請求項2】
前記式(II)の化合物が、
2a)式(I):
【化5】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示す。)を有するプロリノールの所望する鏡像異性体を与える段階と、及び
2b)式(II)の化合物を得るために、式(I)の化合物中のアミン基の窒素原子を窒素保護基で保護する段階と、
を含むプロセスにより与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(II)の化合物中のRが、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、ホルミル、フェニルスルホニル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、tert−ブチルアセチル及びトリフェニルメチル(トリチル)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
4a)式(III):
【化6】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、窒素保護基であり、Rは、非置換アルキル、置換アルキル、非置換アリール又は置換アリール基である。)の化合物を用意し、式(IV):
【化7】

(式中、及びRは、式(III)の化合物に対して定義されるとおりである。)の化合物を得るために、式(III)の化合物をアルカリ金属ヨウ化塩で処理する段階と、
4b)式(V):
【化8】

(式中、Rは、水素又は窒素保護基である。)の化合物の所望する鏡像異性体を得るために、式(IV)の化合物を水素化する段階と、
を含む、式(V):
【化9】

(式中、及びRは、前に定義されるとおりである。)の化合物又はその塩を調製するための方法。
【請求項5】
式(IV)の化合物を得るために、段階4a)が、式(II):
【化10】

(式中、は前に定義されるとおりであり、Rは、窒素保護基である。)の化合物をヨウ素試薬と反応させることを含む段階に置き換えられている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
6a)プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルを得るために、N−保護プロリノールのヒドロキシ基をスルホニル化試薬で処理する段階と、及び
6b)N−保護化−2−メチルピロリジンを得るために、プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルをアルカリ金属水素化トリエチルホウ素と反応させる段階と、
を含む、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物を調製するための方法。
【請求項7】
7a)N−保護化−2−ヨウ化メチルピロリジンを得るために、N−保護化プロリノールをヨウ素試薬と反応させる、及び/又は、プロリノールのN−保護化−2−(アルキル−又はアリール)スルホン酸エステルをヨウ化塩と反応させる段階と、及び
7b)N−保護化−2−メチルピロリジンを得るために、N−保護化−2−ヨウ化メチルピロリジンを水素化する段階と、
を含む、N−保護化−2−メチルピロリジン化合物を調製するための方法。
【請求項8】
請求項1、5、7及び9に記載の方法により調製される化合物。
【請求項9】
ヒスタミン−3受容体を調節するために有用な化合物を得るために、前記化合物がさらに処理される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
式(VIII):
【化11】

(式中、は、R−又はS−立体中心として表され得る不斉中心を示し、Rは、窒素保護基である。)の化合物。

【公表番号】特表2006−519233(P2006−519233A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503863(P2006−503863)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005573
【国際公開番号】WO2004/076388
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】