説明

2−置換−1α,25−ジヒドロキシ−19,26,27−トリノルビタミンD類縁体およびその使用

式(I)、(II)、または(III)の化合物が提供され、式中、X1、X2、およびX3はHおよびヒドロキシ保護基から独立に選択され、R1およびR2はHあるいは1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択され;かつR3は1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。そのような化合物は薬学的組成物の調製において用いられ、様々な生物学的状態の治療において有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明はビタミンD化合物、特に(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロールならびにこれらの化合物を含む薬学的製剤に関する。本発明は、様々な疾患を治療する際に用いるための薬剤の調製における(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、またはその塩の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
天然ホルモンである1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(1α,25-ジヒドロキシコレカルシフェロールおよびカルシトリオールとも呼ばれる)およびエルゴステロール系のその類縁体、すなわち1α,25-ジヒドロキシビタミンD2は動物およびヒトにおけるカルシウム恒常性の非常に強力な調節物質であることが公知であり、細胞分化におけるそれらの活性も確立されている(Ostrem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 2610 (1987))。1α-ヒドロキシビタミンD3、1α-ヒドロキシビタミンD2、様々な側鎖同族体化ビタミン、およびフッ化類縁体を含む、これらの代謝産物の多くの構造類縁体が調製され、試験されている。これらの化合物のいくつかは細胞分化とカルシウム調節とにおける活性の興味深い分離を示す。活性におけるこの相違は、腎性骨形成異常、ビタミンD抵抗性くる病、骨粗しょう症、乾癬、および特定の悪性病変などの、当技術分野において確立されている様々な疾患の治療において有用である(例えば、Zemplar、Calcipotriol、MC-903、Dovonex、22-オキサ-1α,25-(OH)2D3参照)。

これらすべての引用文献はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
前述のとおり、腎性骨形成異常は、腎臓が血中のカルシウムおよびリンの適切なレベルを維持できない場合に起こる骨疾患である。腎性骨形成異常は腎臓病を有する患者においては一般的な問題であり、透析患者の90パーセントが罹患している。
【0004】
腎性骨形成異常は、骨がまだ成長中であるため小児において最も重篤である。この状態は骨の成長を遅らせ、変形を引き起こす。そのような変形の一つは、下肢が互いに向かって内側に、または互いから離れて外側に屈曲する場合に起こり;この変形は「腎性くる病」と呼ばれる。もう一つの重要な結果は低身長である。症状は腎疾患を有する成長中の小児において、透析を開始する前でも認められる。
【0005】
腎性骨形成異常に起因する骨変化は、腎臓病を有する成人では症状が現れる何年も前に始まることもある。腎性骨形成異常の症状は成人では通常、透析を数年間続けるまで見られない。高齢患者および閉経後の女性は、腎臓病がなくともただでさえ骨粗しょう症を生じやすいため、この疾患のリスクが高い。治療せずに放置すると、骨は徐々に細く弱くなり、腎性骨形成異常を有する個人は骨および関節痛を経験し、かつ骨折のリスクが高くなる。
【0006】
健常な成人では、骨組織は絶えず再造形および再構築されている。腎臓は血中のカルシウムおよびリンのレベルのバランスを保つので、健常な骨の量および構造を維持する上で重要な役割を果たしている。血中のカルシウムレベルが下がりすぎると、副甲状腺は副甲状腺ホルモン(PTH)を放出する。このホルモンは骨からカルシウムを溶出させ、血中カルシウムレベルを高める。血中のPTHが多すぎるとカルシウムおよびリンの恒常性に混乱をきたす。これは次いで骨から多くのカルシウムを溶出しすぎて、経時的な一定のカルシウム溶出により骨が軟弱化する。
【0007】
続発性副甲状腺機能亢進症は、不十分なレベルの活性ビタミンDホルモンに関連したPTH上昇を特徴とする。典型的に、ビタミンDは、ビタミンD受容体(VDR)に結合して活性化するために、肝臓および腎臓における2回の連続したヒドロキシル化を必要とする。内因性VDR活性化物質であるカルシトリオール[1,25(OH)2D3]は、副甲状腺、腸、腎臓、および骨に存在するVDRに結合して副甲状腺機能とカルシウムおよびリンの恒常性とを維持し、かつ、前立腺、内皮、および免疫細胞を含む多くの他の組織で見いだされるVDRに結合するホルモンである。リンも骨におけるカルシウムレベルの調節を助ける。健常な腎臓は血中から過剰なリンを除去する。腎臓が正常にはたらくのをやめると、血中のリンレベルが高くなりすぎることがあり、これは血中のカルシウムレベル低下につながり、その結果骨からのカルシウム損失を引き起こす。
【0008】
健常な腎臓はカルシトリオールを産生して、体内で食事カルシウムが血液および骨へと吸収されるのを助ける。カルシトリオールレベルが下がりすぎると、PTHレベルが上がり、カルシウムが骨から溶出される。カルシトリオールとPTHは一緒にはたらいて、カルシウムバランスを正常に保ち、骨を健常に保つ。腎機能不全患者では、腎臓はカルシトリオールの産生を停止し、食事カルシウムは吸収されず、カルシウムが骨から溶出される。
【0009】
PTHレベルを制御することで、カルシウムの骨からの溶出が離脱する。通常、過度に活性な副甲状腺は食事の変更、透析治療、または投薬により制御可能である。2004年に食品医薬品局(FDA)により承認された塩酸シナカルセット(Sensipar)という薬物は、PTH放出を制御するカルシウム受容体に結合することによりPTHレベルを低下させる。PTHレベルを制御することができなければ、副甲状腺を外科的に摘出する必要が生じることもある。この状態の他の治療には、丸剤としてまたは注射可能な形態での合成カルシトリオールの摂取が含まれる。
【0010】
腎性骨形成異常は食事の変更で治療することもできる。食事によるリンの摂取の低減は骨疾患を予防する上で最も重要な段階の一つである。しばしば、炭酸カルシウム(Tums)、酢酸カルシウム(PhosLo)、塩酸セベラマー(Renagel)、または炭酸ランタン(Fosrenol)などの薬物が食事および間食と共に処方されて腸内でリンと結合し、リンの血中への吸収を低減する。
【0011】
腎性骨形成異常に対する他の治療の選択肢には、Zemplar(パラカルシトール注射剤、USP)の活性成分であるパラカルシトールが含まれるが、これは側鎖およびA(19-ノル)環が修飾されたカルシトリオールの合成の生物活性ビタミンD類縁体である。パラカルシトールの作用はVDRへの結合によって仲介され、これによりビタミンD反応経路の選択的活性化を引き起こすことが、前臨床およびインビトロ試験により明らかにされている。カルシトリオールおよびパラカルシトールはPTH合成および分泌を阻害することにより副甲状腺ホルモンレベルを低下させることが明らかにされている。

【0012】
1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の構造およびこの化合物中の炭素原子を示すために用いる番号付けシステムを以下に示す。

【0013】
典型的に、19-ノル-ビタミンD化合物などのビタミンD類縁体のクラスは、ビタミンD系に典型的なA環の環外メチレン基からの19位炭素の不在を特徴とする。そのような19-ノル-類縁体(例えば、1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3)の生物学的試験により、細胞分化の誘導における高い効力と非常に低いカルシウム動員活性とを伴う選択的活性プロファイルが明らかとなった。したがって、これらの化合物は悪性病変の治療、または様々な皮膚障害の治療用の治療薬として有用である可能性がある。そのような19-ノル-ビタミンD類縁体合成の2つの異なる方法が記載されている(Perlman et al., Tetrahedron Lett. 31, 1823 (1990);Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991)、およびDeLuca et al., 米国特許第5,086,191号)。
【0014】
2007年1月30日提出の米国特許出願第11/669,029号および第11/669,053号において、腎性骨形成異常の治療のための可能性のある薬物として、(20R,25S)-2-メチレン-19,26-ジノル-1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(NEL)および(20S,25S)-2-メチレン-19,26-ジノル-1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(RAK)がDeLucaらによって記載され、試験された。米国特許第4,666,634号において、骨粗しょう症のために可能性のある薬物として、および抗腫瘍剤として1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の2β-ヒドロキシおよびアルコキシ(例えば、ED-71)類縁体がChugaiグループによって記載され、試験された。Okano et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 163, 1444 (1989)も参照されたい。1α,25-ジヒドロキシビタミンD3のその他の2-置換(ヒドロキシアルキル、例えば、ED-120、およびフルオロアルキル基による)A環類縁体も調製され、試験されている(Miyamoto et al., Chem. Pharm. Bull. 41, 1111 (1993);Nishii et al., Osteoporosis Int. Suppl. 1, 190 (1993);Posner et al., J. Org. Chem. 59, 7855 (1994)、およびJ. Org. Chem. 60, 4617 (1995))。
【0015】
1α,25-ジヒドロキシ-19-ノル-ビタミンD3の様々な2-置換類縁体、すなわち、2位でヒドロキシ基またはアルコキシ基(DeLuca et al.、米国特許第5,536,713号)、2-アルキル基(DeLuca et al.、米国特許第5,945,410号)、および2-アルキリデン基(DeLuca et al.、米国特許第5,843,928号)により置換された化合物も合成されており、これらは興味深い選択的活性プロファイルを示す。これらの試験はすべて、ビタミンD受容体中の結合部位が合成ビタミンD類縁体中のC-2における異なる置換基に適応しうることを示している。
【0016】
19-ノルクラスの薬理学的に重要なビタミンD化合物を探索するための継続的努力において、2位炭素(C-2)におけるメチレン置換基、1位炭素(C-1)におけるヒドロキシル基、および20位炭素(C-20)に結合した短い側鎖の存在を特徴とする類縁体も合成され、試験されている。1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-プレグナカルシフェロールが米国特許第6,566,352号に記載されている一方、1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-(20S)-ホモプレグナカルシフェロールが米国特許第6,579,861号に、1α-ヒドロキシ-2-メチレン-19-ノル-ビスホモプレグナカルシフェロールが米国特許第6,627,622号に記載されている。これら3つの化合物は全て、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3に比べてビタミンD受容体に対する比較的高い結合活性および比較的高い細胞分化活性を有するが、血中カルシウム上昇(calcemic)活性はあるとしても非常に低い。その生物活性により、352号、861号、および622号特許に示すとおり、これらの化合物は様々な薬学的使用に対する優秀な候補となっている。他の19-ノル化合物は、米国特許出願第10/996,642号および第10/997,698号に開示されている。これらすべての特許および特許出願はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0017】
米国特許第6,846,811号、第6,844,457号、第6,844,332号、第6,844,331号、第6,844,330号、第6,306,844号、第6,277,837号、第6,127,559号、および第5,945,410号に開示されているとおり、2位炭素(C-2)におけるα-アルキル置換基、α-ヒドロキシアルキル置換基、β-アルキル置換基、またはβ-ヒドロキシアルキル置換基、および1位炭素(C-1)におけるヒドロキシル基の存在を特徴とする、さらに他の19-ノルクラスの薬理学的に重要なビタミンD類縁体が合成され、試験されている。これらの811号、457号、332号、331号、330号、844号、837号、559号、および410号米国特許に開示されている化合物は、これらの特許に記載のとおり、様々な薬学的使用に対する優れた候補である。これらすべての特許はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
米国特許第4,970,203号に記載のとおり、ビタミンDのさらなる特定のトリノル類縁体が合成され、特徴決定られているが、これらは、203号特許ならびに米国特許第6,291,444号、第5,880,114号、および第4,411,833号に示すとおり、様々な薬学的使用に対する優れた候補であり、これらすべての特許はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0019】
前述の化合物および製剤を含む現在利用可能な治療は、程度の違いはあっても様々な制限を有するため、血中カルシウム上昇作用を低減し続ける一方でPTHを抑制する能力を保持している新しい化合物および薬学的製剤が望ましい。
【発明の開示】
【0020】
発明の概要
本発明は概して、(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、ならびに関連化合物、これらの化合物を含む薬学的製剤、および様々な疾患状態の治療において用いるための薬剤の調製におけるこれらの化合物の使用を提供する。
【0021】
したがって、一局面において、本発明は以下に示す式I、II、またはIIIを有する化合物を提供する:

式中、X1、X2、およびX3は同じまたは異なる基であり、Hまたはヒドロキシ保護基から独立に選択される。一部の態様において、X1、X2、およびX3はシリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシアルキルエーテル基、アセタール基、およびエステル基などのヒドロキシ保護基である。一部のそのような態様において、X1、X2、およびX3は、t-ブチルジメチルシリルエーテル基(TBDMS)、トリメチルシリルエーテル基(TMS)、トリエチルシリルエーテル基(TES)、トリイソプロピルシリルエーテル基(TIPS)、t-ブチルジフェニルシリルエーテル基(TBDPS)、テトラヒドロピラン基(THP)、メトキシエトキシメチル基(MEM)、メトキシメチル基(MOM)、ベンジルエーテル基、t-ブチルエーテル基、N-フタルイミドアセタール基(Nphth)、イソプロピリデン、トリメトキシブタン、2,4-ジメチルペンタン-3-イルオキシカルボニル基(Doc)である。様々な他のヒドロキシ保護基は当業者には公知であり、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられるJarowicki et al, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1998, 4005-4037を参照されたい。
【0022】
本発明のこの局面において、R1、R2、およびR3は同じまたは異なる基であり、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。一部のそのような態様において、R1、R2、およびR3は2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。他のそのような態様において、R1、R2、およびR3は2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。特定の態様において、R1もしくはR2またはR1とR2の両方は、互いに独立にHでありうる。
【0023】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語は、炭素-炭素一重結合および炭素-水素一重結合だけを含む炭素および水素原子を含む基を指す。これらの基はいかなるヘテロ原子(HまたはC以外の原子)も含まない。したがって、「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、およびオクチル基などの直鎖アルキル基、ならびに以下を非限定的に含む(これらは例示としてのみ提供される)直鎖アルキル基の分枝鎖異性体が含まれる:
-CH(CH3)2、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH2CH3)3、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH2C(CH2CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH2CH3)2、-CH2CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH(CH3)CH(CH3)2、-CH2CH2CH2C(CH3)3、-CH2CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)C(CH3)3、-CH2CH2CH(CH3)CH(CH3)2など。
【0024】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルキル基」という用語は、炭素または水素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、前記で定義した「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。
【0025】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合が炭素原子2つの間に存在すること以外は前記で定義したとおりの「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。例としては、-CH=CH2、-CH=C(H)(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=C(H)2、-C(CH3)=C(H)(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、-C(H)=C(H)CH2CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH(CH3)CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH2C(CH3)3、-C(H)=C(H)CH(CH3)C(CH3)3などのシスおよびトランス(ZおよびE)異性体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0026】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルケニル基」という用語は、「ヒドロキシ置換アルキル基」が「直鎖および分枝鎖アルキル基」に関して有するのと同じ意味を、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」に関して有する。したがって、「ヒドロキシ置換アルケニル基」は、水素原子へのまたは別の炭素原子に二重結合していない炭素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」である。
【0027】
一般に、本明細書において用いられる「ヒドロキシ保護基」という用語は、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基またはアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と称する)、およびアルコキシアルキル基などであるがそれらに限定されるわけではない、ヒドロキシ(-OH)官能基の一時的保護のために一般に用いられる任意の基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、またはアリルオキシカルボニルなどのアルキル-O-CO-基である。「アシル」という用語は、炭素数1〜6のアルカノイル基のすべての異性体、または、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基などの炭素数1〜6のカルボキシアルカノイル基、あるいはベンゾイル基、またはハロ置換、ニトロ置換もしくはアルキル置換ベンゾイル基などの芳香族アシル基を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、またはテトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロピラニルなどの基である。好ましいシリル保護基はトリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル-t-ブチルシリル、および類似のアルキル化シリルラジカルである。「アリール」という用語は、フェニル、またはアルキル置換、ニトロ置換もしくはハロ置換フェニルを規定する。ヒドロキシ官能性に対する保護基の広範なリストはProtective Groups in Organic Synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999)に記載されており、これらは該文書に記載の手順を用いて付加または除去することができ、この内容は本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0028】
「保護ヒドロキシ」基とは、ヒドロキシ官能基の一時的または永久的保護のために一般的に用いられる任意の前述の基、例えば、前記で定義したシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基、またはアルコキシカルボニル基で誘導体化または保護されたヒドロキシ基である。
【0029】
他の態様において、化合物が以下に示す式IA、IIA、およびIIIAを有する(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロールであるように、X1、X2、およびX3はHであり、R1、R2、およびR3はCH3である。

【0030】
本発明の別の態様は、式IA、IIA、またはIIIAの化合物の有効量と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物を提供する。この薬学的組成物において、有効量は、本化合物を組成物1グラムあたり約0.01μg〜約1mg含む。より好ましくは、有効量は、本化合物を組成物1グラムあたり約0.1μg〜約500μg含む。
【0031】
特定の態様において、本発明は、生物学的状態を患う被験体を治療する方法を提供し、該方法は、式I、II、IIIの化合物、またはより好ましくは式IA、IIA、もしくはIIIAの化合物の有効量を被験体に投与する段階を含み、ここで生物学的状態は、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;皮膚癌;肺癌;前立腺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植の拒絶反応;関節リウマチ、喘息、もしくは、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病から選択される炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨形成異常;または骨粗しょう症から選択される。好ましい態様において、生物学的状態は、腎性骨形成異常、ビタミンD抵抗性くる病、骨粗しょう症、または乾癬性関節炎である。別の好ましい態様において、生物学的状態は、白血病、大腸癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、または前立腺癌から選択される。さらに別の好ましい態様において、生物学的状態は、多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片反応、または臓器移植の拒絶反応から選択される。さらに他の好ましい態様において、生物学的状態は、関節リウマチ、喘息、または、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病から選択される炎症性腸疾患から選択される。さらに他の好ましい態様において、生物学的状態は、しわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、または不十分な皮脂分泌から選択される。
【0032】
同様に好ましくは、本態様において、本化合物の有効量を被験体に経口的に、非経口的に、経皮的に、経鼻的に、直腸に、舌下に、または局所的に投与する。さらにより好ましくは、本化合物の有効量を腹腔内投与する。本態様において、本化合物は0.01μg/日〜1mg/日の投与量で投与される。
【0033】
本発明の別の局面は、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;皮膚癌;肺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植の拒絶反応;関節リウマチ、喘息、もしくは、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病から選択される炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨形成異常;骨減少症;または骨粗しょう症から選択される生物学的状態の治療用薬剤の調製における、式I、II、III、IA、IIA、またはIIIAの化合物の使用を提供する。
【0034】
本発明のさらに別の好ましい態様は、式IAを有する化合物を提供する。

【0035】
本発明はまた、式IAの化合物の有効量と薬学的に許容される担体とを有する薬学的組成物も教示する。
【0036】
本発明の別の局面は、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;皮膚癌;肺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植の拒絶反応;関節リウマチ、喘息、もしくは、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病から選択される炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨形成異常;骨減少症;または骨粗しょう症から選択される生物学的状態の治療用薬剤の調製における、式IAの化合物の使用を提供する。
【0037】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は以下の詳細な説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0038】
発明の詳細な説明
本発明は概して、以下に示す式I、II、またはIIIを有する化合物を提供する:

式中、X1、X2、およびX3は同じまたは異なる基であり、Hまたはヒドロキシ保護基から独立に選択される。一部の態様において、X1、X2、およびX3は、シリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシアルキルエーテル基、アセタール基、およびエステル基などのヒドロキシ保護基である。一部のそのような態様において、X1、X2、およびX3はt-ブチルジメチルシリルエーテル基(TBDMS)、トリメチルシリルエーテル基(TMS)、トリエチルシリルエーテル基(TES)、トリイソプロピルシリルエーテル基(TIPS)、t-ブチルジフェニルシリルエーテル基(TBDPS)、テトラヒドロピラン基(THP)、メトキシエトキシメチル基(MEM)、メトキシメチル基(MOM)、ベンジルエーテル基、t-ブチルエーテル基、N-フタルイミドアセタール基(Nphth)、イソプロピリデン、トリメトキシブタン、2,4-ジメチルペンタン-3-イルオキシカルボニル基(Doc)である。前述のとおり、様々な他のヒドロキシ保護基が当業者には公知であり、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられるJarowicki et al, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1998, 4005-4037を参照されたい。
【0039】
本発明のこの局面において、R1、R2、およびR3は同じまたは異なる基であり、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。一部のそのような態様において、R1、R2、およびR3は、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。他のそのような態様において、R1、R2、およびR3は2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、または2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。特定の態様において、R1もしくはR2またはR1とR2の両方は、互いに独立にHでありうる。
【0040】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語は、炭素-炭素一重結合および炭素-水素一重結合だけを含む炭素および水素原子を含む基を指す。これらの基はいかなるヘテロ原子(HまたはC以外の原子)も含まない。したがって、「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、およびオクチル基などの直鎖アルキル基、ならびに以下を非限定的に含む(これらは例示としてのみ提供される)直鎖アルキル基の分枝鎖異性体が含まれる:
-CH(CH3)2、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH2CH3)3、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH2C(CH2CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH2CH3)2、-CH2CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH(CH3)CH(CH3)2、-CH2CH2CH2C(CH3)3、-CH2CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)C(CH3)3、-CH2CH2CH(CH3)CH(CH3)2など。
【0041】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルキル基」という用語は、炭素または水素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、前記で定義した「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。
【0042】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合が炭素原子2つの間に存在すること以外は前記で定義したとおりの「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。例としては、-CH=CH2、-CH=C(H)(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=C(H)2、-C(CH3)=C(H)(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、-C(H)=C(H)CH2CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH(CH3)CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH2C(CH3)3、-C(H)=C(H)CH(CH3)C(CH3)3などのシスおよびトランス(ZおよびE)異性体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0043】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルケニル基」という用語は、「ヒドロキシ置換アルキル基」が「直鎖および分枝鎖アルキル基」に関して有するのと同じ意味を、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」に関して有する。したがって、「ヒドロキシ置換アルケニル基」は、水素原子へのまたは別の炭素原子に二重結合していない炭素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」である。
【0044】
一般に、本明細書において用いられる「ヒドロキシ保護基」という用語は、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基またはアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と称する)、およびアルコキシアルキル基などであるがそれらに限定されるわけではない、ヒドロキシ(-OH)官能基の一時的保護のために一般に用いられる任意の基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、またはアリルオキシカルボニルなどのアルキル-O-CO-基である。「アシル」という用語は、炭素数1〜6のアルカノイル基のすべての異性体、または、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基などの炭素数1〜6のカルボキシアルカノイル基、あるいはベンゾイル基、またはハロ置換、ニトロ置換もしくはアルキル置換ベンゾイル基などの芳香族アシル基を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、またはテトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロピラニルなどの基である。好ましいシリル保護基はトリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル-t-ブチルシリル、および類似のアルキル化シリルラジカルである。「アリール」という用語は、フェニル、またはアルキル置換、ニトロ置換もしくはハロ置換フェニルを規定する。ヒドロキシ官能性に対する保護基の広範なリストはProtective Groups in Organic Synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999)に記載されており、これらはその中に示される手順を用いて付加または除去することができ、この内容は本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
「保護ヒドロキシ」基とは、ヒドロキシ官能基の一時的または永久的保護のために一般的に用いられる任意の前述の基、例えば、前記で定義したシリル基、アルコキシアルキル基、アシル基、またはアルコキシカルボニル基で誘導体化または保護されたヒドロキシ基である。
【0046】
他の態様において、化合物が以下に示す式IA、IIA、およびIIIAを有する(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロールであるように、X1、X2、およびX3はHであり、R1、R2、およびR3はCH3である。

【0047】
式IAの化合物(RA-7)は、望ましくかつ非常に有益な生物活性のパターンを示す。この化合物はビタミンD受容体への強い結合、ならびに、癌性HL-60細胞の増殖阻害および分化誘導における良好な活性を特徴とする。さらに、この化合物は、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3の活性に比べて腸管カルシウム輸送活性が非常に低いことを特徴とし、かつ、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3に比べてカルシウムを骨から動員する能力が非常に低い。したがって、この化合物は、血中カルシウム上昇活性があったとしても非常に低いことを特徴とする。このように、これは、続発性副甲状腺機能亢進症または腎性骨形成異常の抑制のための治療薬として有用である。
【0048】
化合物IIAおよびIIIAもまた、2位炭素(C-2)におけるα-アルキル置換基、α-ヒドロキシアルキル置換基、β-アルキル置換基、またはβ-ヒドロキシアルキル置換基、および1位炭素(C-1)におけるヒドロキシル基を有する他のビタミンD類縁体(これらは合成および試験され、米国特許第6,846,811号、第6,844,457号、第6,844,332号、第6,844,331号、第6,844,330号、第6,306,844号、第6,277,837号、第6,127,559号、および第5,945,410号に開示されている)に匹敵する、2α-アルキルおよび2β-アルキル置換基に基づく非常に有益な生物活性パターンを有することが予想される。これらの811号、457号、332号、331号、330号、844号、837号、559号、および410号米国特許に開示されている化合物は、上記の特許に記載のとおり、様々な薬学的使用に対する優れた候補である。
【0049】
例示的態様において、本発明の化合物RA-7はまた、免疫系の不均衡を特徴とするヒト障害、例えば、多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片反応、および臓器移植の拒絶反応を含む自己免疫疾患の治療および予防のため;加えて関節リウマチ、喘息、ならびに、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病などの炎症性腸疾患などの炎症性疾患の治療のために特に適している。ざ瘡、脱毛、および高血圧は、本発明の化合物で治療される他の状態である。
【0050】
前述の化合物RA-7は、比較的高い細胞分化活性も特徴とする。したがってこの化合物は、乾癬の治療のための、または特に白血病、大腸癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、および前立腺癌に対する抗癌剤としての治療剤も提供する。加えて、その比較的高い細胞分化活性ゆえに、この化合物は、しわ、十分な皮膚水分の欠如、すなわち乾燥皮膚、十分な皮膚弾力の欠如、すなわちたるんだ皮膚、および不十分な皮脂分泌を含む様々な皮膚状態の治療のための治療剤を提供する。したがってこの化合物の使用は皮膚の加湿を引き起こすのみならず、皮膚のバリア機能も改善する。
【0051】
本発明の化合物を用いて、本発明の化合物と薬学的に許容される担体との組み合わせを含む薬学的製剤または薬剤を調製する。そのような薬学的製剤および薬剤は、本明細書に記載のものなどの様々な生物学的障害を治療するために用いられる。そのような障害の治療法は典型的に、本化合物の有効量または本化合物を含む薬学的製剤もしくは薬剤の適切な量を、生物学的障害を患う被験体に投与する段階を含む。一部の態様において、被験体は哺乳動物である。一部のそのような態様において、哺乳動物は齧歯類、霊長類、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、クマ、ブタ、ウサギ、またはモルモットから選択される。一部のそのような態様において、哺乳動物はラットまたはマウスである。一部の態様において、被験体は、(一部の態様においては)ヒトなどの霊長類である。
【0052】
前述の疾患および障害を治療するための組成物中に存在する本化合物は、組成物1gあたり約0.01μg〜約1mg、好ましくは組成物1gあたり約0.1μg〜約500μgの量であり、局所的、経皮的、経口的、または非経口的に約0.01μg/日〜約1mg/日、好ましくは約0.1μg/日〜約500μg/日の量で投与される。
【0053】
本発明の好ましい一態様は、式IAを有する化合物を提供する。

【0054】
好ましい態様において、(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(13)(RA-7)を合成して試験したが、これは本明細書に記載の様々な生物学的状態の治療において有用である。
【0055】
一般に、(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(13)(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロールの調製は、適切な二環式ウィンダウス-グルンドマン型ケトン(III)をアリルホスフィンオキシドIVと縮合し、続いて脱保護(Y1およびY2基の除去)することによって達成することができる。本発明の他の化合物を同様に合成する。

【0056】
ケトンIIIおよびホスフィンオキシドIVにおいて、Y1、Y2、Y4は好ましくはヒドロキシ保護基であり、ここで、X1、X2、およびX3は同じまたは異なる基であり、Hまたはヒドロキシ保護基から独立に選択される。一部の態様において、X1、X2、およびX3はシリルエーテル基、アルキルエーテル基、アルコキシアルキルエーテル基、アセタール基、およびエステル基などのヒドロキシ保護基である。一部のそのような態様において、X1、X2、およびX3はt-ブチルジメチルシリルエーテル基(TBDMS)、トリメチルシリルエーテル基(TMS)、トリエチルシリルエーテル基(TES)、トリイソプロピルシリルエーテル基(TIPS)、t-ブチルジフェニルシリルエーテル基(TBDPS)、テトラヒドロピラン基(THP)、メトキシエトキシメチル基(MEM)、メトキシメチル基(MOM)、ベンジルエーテル基、t-ブチルエーテル基、N-フタルイミドアセタール基(Nphth)、イソプロピリデン、トリメトキシブタン、2,4-ジメチルペンタン-3-イルオキシカルボニル基(Doc)である。様々な他のヒドロキシ保護基が当業者には公知であり、例えば、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられるJarowicki et al, J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1, 1998, 4005-4037を参照されたい。
【0057】
好ましい態様において、トリエチルシリル基(TES)およびt-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基は特に有用なヒドロキシ保護基の例である。前述のプロセスは収束的合成概念の適用を意味し、これは多くのビタミンD化合物の調製に対して有効に適用されている(Lythgoe et al., J. Chem. Soc. Perkin Trans. I, 590 (1978);Lythgoe, Chem. Soc. Rev. 9, 449 (1983);Toh et al., J. Org. Chem. 48, 1414 (1983);Baggiolini et al., J. Org. Chem. 51, 3098 (1986);Sardina et al., J. Org. Chem. 51, 1264 (1986);J. Org. Chem. 51, 1269 (1986);DeLuca et al.、米国特許第5,086,191号;DeLuca et al.、米国特許第5,536,713号;およびDeLuca et al.、米国特許第5,843,928号を参照されたく、これらはすべて、本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる)。
【0058】
さらに、ケトンIIIにおいて、R1およびR2基は同じまたは異なっており、Hあるいは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。一部のそのような態様において、R1およびR2は、Hあるいは、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または、2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。他のそのような態様において、R1およびR2は、Hあるいは、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、または、2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から選択される。
【0059】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語は、炭素-炭素一重結合および炭素-水素一重結合だけを含む炭素および水素原子を含む基を指す。これらの基はいかなるヘテロ原子(HまたはC以外の原子)も含まない。したがって、「直鎖および分枝鎖アルキル基」という用語には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、およびオクチル基などの直鎖アルキル基、ならびに以下を非限定的に含む(これらは例示としてのみ提供される)直鎖アルキル基の分枝鎖異性体が含まれる:
-CH(CH3)2、-CH(CH3)(CH2CH3)、-CH(CH2CH3)2、-C(CH3)3、-C(CH2CH3)3、-CH2CH(CH3)2、-CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH(CH2CH3)2、-CH2C(CH3)3、-CH2C(CH2CH3)3、-CH(CH3)CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)(CH2CH3)、-CH2CH2CH(CH2CH3)2、-CH2CH2C(CH3)3、-CH(CH3)CH2CH(CH3)2、-CH(CH3)CH(CH3)CH(CH3)2、-CH2CH2CH2C(CH3)3、-CH2CH2CH2CH(CH3)2、-CH2CH2CH(CH3)C(CH3)3、-CH2CH2CH(CH3)CH(CH3)2など。
【0060】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルキル基」という用語は、炭素または水素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、前記で定義した「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。
【0061】
本明細書において用いられる「直鎖および分枝鎖アルケニル基」という用語は、少なくとも1つの二重結合が炭素原子2つの間に存在すること以外は前記で定義したとおりの「直鎖および分枝鎖アルキル基」を指す。例としては、-CH=CH2、-CH=C(H)(CH3)、-CH=C(CH3)2、-C(CH3)=C(H)2、-C(CH3)=C(H)(CH3)、-C(CH2CH3)=CH2、-C(H)=C(H)CH2CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH(CH3)CH(CH3)2、-C(H)=C(H)CH2C(CH3)3、-C(H)=C(H)CH(CH3)C(CH3)3などのシスおよびトランス(ZおよびE)異性体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0062】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ置換アルケニル基」という用語は、「ヒドロキシ置換アルキル基」が「直鎖および分枝鎖アルキル基」に関して有するのと同じ意味を、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」に関して有する。したがって、「ヒドロキシ置換アルケニル基」は、水素原子へのまたは別の炭素原子に二重結合していない炭素原子への結合がヒドロキシル(-OH)基への結合で置き換えられている、「直鎖および分枝鎖アルケニル基」である。
【0063】
本明細書において用いられる「ヒドロキシ保護基」という用語は、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基またはアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と称する)、およびアルコキシアルキル基などであるがそれらに限定されるわけではない、ヒドロキシ(-OH)官能基の一時的保護のために一般に用いられる任意の基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、またはアリルオキシカルボニルなどのアルキル-O-CO-基である。「アシル」という用語は、炭素数1〜6のアルカノイル基のすべての異性体、または、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基などの炭素数1〜6のカルボキシアルカノイル基、あるいはベンゾイル基、またはハロ置換、ニトロ置換もしくはアルキル置換ベンゾイル基などの芳香族アシル基を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、またはテトラヒドロフラニル、およびテトラヒドロピラニルなどの基である。好ましいシリル保護基はトリメチルシリル、トリエチルシリル、t-ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル-t-ブチルシリル、および類似のアルキル化シリルラジカルである。「アリール」という用語は、フェニル、またはアルキル置換、ニトロ置換もしくはハロ置換フェニルを規定する。ヒドロキシ官能性に対する保護基の広範なリストはProtective Groups in Organic Synthesis, Greene, T. W.; Wuts, P. G. M., John Wiley & Sons, New York, NY, (3rd Edition, 1999)に記載されており、これらはその中に示される手順を用いて付加または除去することができ、この内容は本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0064】
ホスフィンオキシドIVは、大量の19-ノルビタミンD化合物を調製するために用いることができる便利な試薬であり、Sicinski et al., J. Med. Chem., 41, 4662 (1998)、DeLuca et al., 米国特許第5,843,928号;Perlman et al., Tetrahedron Lett. 32, 7663 (1991);およびDeLuca et al., 米国特許第5,086,191号に記載の手順に従って調製される。スキームIは、米国特許第5,843,928号(本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文が参照により本明細書に組み入れられる)で概説されている、ホスフィンオキシドIVを合成するための一般法を示している。当業者に明らかであるような、スキームIに示す方法の変法を用いて大量のビタミンD類縁体を製造する。例えば、ケトンBをアルケンCに変換するために用いるMePh3P+Br-の代わりに様々なホスホニウム化合物を用いる。そのような化合物の例には、EtPh3P+Br-、PrPh3P+Br-、ならびに、トリフェニルホスフィンとハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化保護ヒドロキシアルキル、およびハロゲン化保護ヒドロキシアルケニルとの反応によって一般に調製される化合物が含まれる。次いで、この手順を用いて調製したアルケンにより、スキームIにおいてホスフィンオキシドHを調製するために用いるのと類似の様式でホスフィンオキシドを調製する。または、スキームIの化合物Cに類似のアルケンを(Ph3P)3RhClおよびH2で還元して、他のビタミンD類縁体を得る。米国特許第5,945,410号およびSicinski, R. R. et al., J. Med. Chem., 41, 4662-4674 (1998)を参照されたく、これらはいずれもその全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。したがって、スキームIに示すホスフィンオキシドを形成するための手順を用いて、本発明の化合物に加えて様々なビタミンD類縁体を調製する。
【0065】
スキームI

【0066】
構造IIIのヒドラインダノンは、当業者には容易に明らかであり本明細書に記載される、公知の方法または改変法により調製することができる。ビタミンD類縁体を合成するために用いるいくつかの重要な二環式ケトンの具体例は、Mincione et al., Synth. Commun 19, 723, (1989);およびPeterson et al., J. Org. Chem. 51, 1948, (1986)に記載のものである。
【0067】
好ましい一態様において、Y4=TBSO基を有するケトンIII(10)を、下記に示すスキームIIおよびIIIにより合成する。
【0068】
スキームII

【0069】
スキームIII

【0070】
さらに、化合物(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(13)(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(14)、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(15)を、以下のスキームIVに示すとおりに合成する。
【0071】
スキームIV

【0072】
様々な2-アルキリデン-19-ノル-ビタミンD化合物を合成するための全プロセスは米国特許第5,843,928号、米国特許第6,627,622号、米国特許第6,579,861号、米国特許第5,086,191号、米国特許第5,585,369号、および米国特許第6,537,981号、ならびにAndrzej R. Daniewski and Wen Liu, J. Org. Chem. 66, 626-628 (2001)に例示および記載されており、これらの内容は本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0073】
式I、II、III、IA、IIA、およびIIIAの化合物は、スキームI、II、III、およびIVに示す方法を用いて調製することができる。
【0074】
下記の実施例は、本発明において提供される選択した化合物の合成および生物活性を例示する。これらの実施例は例示目的のものにすぎず、本発明の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【0075】
実施例I:RA-7合成
(8S,20S)-デ-A,B-20-(ヒドロキシメチル)-プレグナン-8-オール(1)の調製
メタノール(250mL)とピリジン(2.44g、2.5mL、31mmol)中のビタミンD2(3g、7.6mmol)の溶液にオゾンを-78℃で50分間通気した。次いで、反応混合物に酸素を15分間流して残留オゾンを除去し、溶液をNaBH4(0.75g、20mmol)で処理した。20分後、次のNaBH4(0.75g、20mmol)を加え、混合物を室温まで温めた。次いで、次のNaBH4(0.75g、20mmol)を加え、反応混合物を18時間撹拌した。水(40mL)で反応停止し、溶液を減圧下で濃縮した。残渣を酢酸エチル(3×80 mL)で抽出し、混合した有機相を1M HCl水溶液、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(75:25)を用いたクロマトグラフィーに供し、ジオール1(1.21g、収率75%)を白色結晶として得た。

【0076】
(8S,20S)-デ-A,B-20-(アセチルオキシメチル)-プレグナン-8-オール(2)の調製
ジオール1(1.8g、8.5mmol)とトリエチルアミン(4.2mL、3.03g、30mmol)の無水ジクロロメタン(10mL)溶液に無水酢酸(1.05mL、1.13g、11.1mmol)を0℃で加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、室温で18時間撹拌した。水(10mL)で反応停止し、ジクロロメタンで抽出した。混合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(95:5、次いで9:1)を用いたクロマトグラフィーにかけて、純粋なアルコール2(2.09g、収率97%)を無色油状物として単離した。

【0077】
(8S,20S)-デ-A,B-8-トリエチルシリルオキシ-20-(アセチルオキシメチル)-プレグナン(3)の調製
アルコール2(2.08g、8.2mmol)と2,6-ルチジン(2.86mL、2.63g、24.6mmol)の無水ジクロロメタン(10mL)溶液にトリフルオロメタンスルホン酸トリエチルシリル(1.9mL、2.24g、8.5mmol)を0℃で加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、0℃で0.5時間撹拌した。水(30mL)で反応停止し、ジクロロメタンで抽出した。混合した有機相を水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(95:5)を用いたクロマトグラフィーにかけて、生成物3(2.9g、収率96%)を無色油状物として単離した。

【0078】
(8S,20S)-デ-A,B-8-トリエチルシリルオキシ-20-(ヒドロキシメチル)-プレグナン(4)の調製
無水エタノール(10mL)中の化合物3(2.9g、7.9mmol)の混合物に水酸化ナトリウム(1.5g、37.5mmol)の無水エタノール(20mL)溶液を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌し、次いで5%塩酸水溶液で中和した。混合物をジクロロメタンで抽出し、混合した有機相を水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(95:5、次いで9:1)を用いたクロマトグラフィーにかけて、アルコール4(2.58g、収率100%)を得た。

【0079】
(8S,20S)-デ-A,B-8-トリエチルシリルオキシ-20-(ヨードメチル)-プレグナン(5)の調製
ヨウ素(1.52g、6mmol)の塩化メチレン(120mL)溶液を、トリフェニルホスフィン(1.6g、6.1mmol)とイミダゾール(816 mg、12mmol)の塩化メチレン(10mL)溶液に0℃でゆっくりと加えた。15分後、アルコール4(0.5g、1.5mmol)の塩化メチレン(20mL)溶液を加え、混合物を、0℃で20分間および室温で18時間、撹拌した。反応混合物を水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサンを用いたクロマトグラフィーにかけて、所望のヨウ化物5(657mg、100%)を得た。

【0080】
(8S,20R)-デ-A,B-8-トリエチルシリルオキシ-20-(3-イソプロポキシカルボニル)-プロピル-プレグナン(6)の調製
亜鉛末(488mg、7.5mmol)、無水ピリジン(8mL)、およびアクリル酸イソプロピル(900μL、855mg、7.5mmol)の混合物を50℃まで加温し、次いで塩化ニッケル(II)六水和物(428mg、1.8mmol)を加えた。得られた混合物を65℃まで加温し、その緑色が赤褐色に変わるまで2時間撹拌した。0℃まで冷却後、ヨウ化物5(657mg、1.5mmol)の無水ピリジン(6mL)溶液を加え、反応混合物を室温で7時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(20mL)で希釈し、生じた沈殿をCeliteパッドを通してろ過した。ろ液を5%HCl水溶液およびブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサンおよびヘキサン/酢酸エチル(95:5)を用いたクロマトグラフィーにかけて、エステル6(494mg、78%)を得た。

【0081】
(8S,20R)-デ-A,B-8-トリエチルシリルオキシ-20-(4-ヒドロキシ-ブチル)-プレグナン(7)の調製
エステル6(100mg、0.24mmol)の無水THF(8mL)溶液に水素化アルミニウムリチウム(19mg、0.5mmol)を0℃で加えた。冷却浴を取り除き、反応混合物を室温で18時間撹拌した。メタノールを注意深く連続的に加えて、過剰な水素化物を失活した。酒石酸の飽和水溶液を加え、混合物を塩化メチレンで抽出した。混合した有機相を水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(95:5)を用いたクロマトグラフィーにかけて、アルコール7(87mg、99%)を得た。

【0082】
(8S,20R)-デ-A,B-20-(4-ヒドロキシ-ブチル)-プレグナン-8-オール(8)の調製
テトラヒドロフラン(2mL)とアセトニトリル(2mL)中の化合物7(86mg、0.23mmol)の溶液に、48%HF水溶液/アセトニトリル(1:9の比、2mL)の混合物を0℃で加え、得られた混合物を室温で1時間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。混合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサン/酢酸エチル(9:1)を用いたクロマトグラフィーにかけて、ジオール8(60mg、100%)を得た。

【0083】
(8S,20R)-デ-A,B-20-[4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-ブチル]-プレグナン-8-オール(9)の調製
ジオール8(60mg、0.23mmol)とトリエチルアミン(134μL、97mg、0.96mmol)の無水塩化メチレン(4mL)溶液に塩化tert-ブチルジメチルシリル(47mg、0.31mmol)を加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、室温で18時間撹拌した。水で反応停止し、酢酸エチルで抽出した。混合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣を、シリカゲル上でヘキサンおよびヘキサン/酢酸エチル(98:2)を用いたクロマトグラフィーにかけて、アルコール9(84mg、100%)を得た。

【0084】
(20R)-デ-A,B-20-[4-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-ブチル]-プレグナン-8-オン(10)の調製
アルコール9(26mg、71μmol)とp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(3mg、12μmol)の無水塩化メチレン(6mL)溶液に二クロム酸ピリジニウム(127mg、0.34mmol)を加えた。得られた懸濁液を室温で3時間撹拌した。反応混合物をWatersシリカSep-Pakカートリッジ(5g)を通してろ過し、これを塩化メチレンでさらに洗浄した。溶媒除去後、ケトン10(23mg、収率89%)を無色油状物として得た。

【0085】
(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(13)の調製
-20℃のホスフィンオキシド11(87mg、149μmol)の無水THF(600μL)溶液に、PhLi(シクロヘキサン-エーテル中1.3M、200μL、260μmol)をアルゴン雰囲気下で撹拌しながらゆっくりと加えた。溶液は暗橙色に変わった。30分後、混合物を-78℃まで冷却し、あらかじめ冷却(-78℃)したケトン10(18mg、49μmol)の無水THF(200μL)溶液をゆっくりと加えた。混合物をアルゴン雰囲気下、-78℃で3時間および0℃で18時間撹拌した。酢酸エチルを加え、有機相をブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、蒸発させた。残渣をヘキサンに溶解させ、WatersシリカSep-Pakカートリッジ(2g)に加えた。カートリッジをヘキサンおよびヘキサン/酢酸エチル(99.5:0.5)で洗浄して、19-ノルビタミン誘導体12(32mg)を得た。次いで、Sep-Pakをヘキサン/酢酸エチル(96:4)で洗浄して、未変化のC,D-環ケトン10(5mg、14μmol)を回収し、酢酸エチルを用いてジフェニルホスフィンオキシド11(55mg)を回収した。保護ビタミン12を、ヘキサン/2-プロパノール(99.9:0.1)溶媒系を用いたHPLC(9.4×250mm Zorbax Silカラム、4mL/分)でさらに精製した。無色油状物として、純粋な化合物12(31.55mg、収率88%)がRt=4.09分で溶出した。

【0086】
保護ビタミン12(31.54mg、43μmol)をTHF(3mL)およびアセトニトリル(3mL)に溶解した。48%HF水溶液とアセトニトリルの溶液(比率1:9、2mL)を0℃で加え、得られた混合物を室温で3時間撹拌した。飽和NaHCO3水溶液を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。混合した有機相をブラインで洗浄し、乾燥(Na2SO4)させ、減圧下で濃縮した。残渣をヘキサン/酢酸エチル(8:2)2mLで希釈し、WatersシリカSep-Pakカートリッジ(2g)に加えた。ヘキサン/酢酸エチル(8:2)および酢酸エチルを用いた溶出により、粗生成物13(20mg)を得た。ビタミン13を、順相HPLC[9.4×250mm Zorbax Silカラム、5mL/分、ヘキサン/2-プロパノール(85:15)溶媒系、Rt=8.75分]と、その後の逆相HPLC[9.4×250mm Zorbax Eclipse XDB-C18カラム、4mL/分、メタノール/水(85:15)溶媒系、Rt=7.90分]でさらに精製し、無色油状物を得た(13.15mg、収率79%)。

【0087】
(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(14)および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(15)の調製
塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(7mg、7.6μmol)を、水素であらかじめ(15分間)飽和させた無水ベンゼン(5mL)に加えた。室温で均質な溶液が形成されるまで(25分間)、混合物を撹拌した。次いで、ビタミン13(2.9mg、7.5μmol)の無水ベンゼン(3mL)溶液を加え、水素の連続気流下で4時間、反応を進行させた。ベンゼンを真空下で除去し、残渣をヘキサン/酢酸エチル(1:1)中に再度溶解し、WatersシリカSep-Pakカートリッジ(2g)に加えた。2-メチルビタミンの混合物を、同じ溶媒系で溶出させた。化合物を、ヘキサン/2-プロパノール(85:15)溶媒系を用いたHPLC(9.4×250mm Zorbax-Silカラム、5mL/分)でさらに精製した。2-メチル-19-ノルビタミン14および15の混合物はRt=8.91分で単一ピークを示した。両エピマーの分離は、メタノール/水(85:15)溶媒系を用いた逆相HPLC(9.4×250mm Zorbax Eclipse XDB-C18カラム、3mL/分)で達成した。2β-メチルビタミン15(911μg、収率31%)をRt=8.71分で回収し、その2α-エピマー14(1.055μg、収率36%)をRt=9.27分で回収した。
【0088】
2α-メチル類縁体14:

【0089】
2β-メチル類縁体15:

【0090】
実施例II:生物活性
実験法
(A)ビタミンD受容体結合
試験材料
タンパク質供給源
全長組換えラット受容体を大腸菌(E. coli)BL21(DE3) Codon Plus RIL細胞中で発現させ、2つの異なるカラムクロマトグラフィー系を用いて均質に精製した。第一の系は、このタンパク質のC末端ヒスチジンタグを用いるニッケルアフィニティ樹脂であった。この樹脂から溶出したタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(S-Sepharose Fast Flow)を用いてさらに精製した。精製したタンパク質のアリコートを液体窒素中で急速凍結し、使用時まで-80℃で保存した。結合アッセイで用いるために、タンパク質を、0.1%Chaps界面活性剤を含むTEDK50(50mMトリス、1.5mM EDTA、pH7.4、5mM DTT、150mM KCl)で希釈した。受容体タンパク質およびリガンド濃度を、加えた放射性標識リガンドの20%以下が受容体に結合するように最適化した。
【0091】
試験薬
非標識リガンドをエタノールに溶解し、UV分光光度法を用いて濃度を定量した(1,25(OH)2D3:モル吸光係数=18,200およびλmax=265nm;類縁体:モル吸光係数=42,000およびλmax=252nm)。放射性標識リガンド(3H-1,25(OH)2D3、約159Ci/mmol)は、最終濃度1nMでエタノール中に加えた。
【0092】
アッセイ条件
放射性標識および非標識リガンドを希釈タンパク質100mclに最終エタノール濃度≦10%で加え、混合し、氷上で一晩インキュベーションして結合平衡に到達させた。翌日、ヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)(100mcl)を各チューブに加え、10分間隔で30分間混合した。ヒドロキシルアパタイトを遠沈により回収し、次いで0.5%Triton X-100を含むトリス-EDTA緩衝液(50mMトリス、1.5mM EDTA、pH7.4)で3回洗浄した。最終洗浄後、ペレットを、Biosafe IIシンチレーションカクテル4mLを含むシンチレーションバイアルに移し、混合し、シンチレーション計数器に置いた。全結合を、放射性標識リガンドのみを含むチューブから定量した。
【0093】
(B)HL-60分化
試験材料
試験薬
試験薬をエタノールに溶解し、UV分光光度法を用いて濃度を定量した。細胞培養液中に存在するエタノールの最終濃度(≦0.2%)を変えることなく一定範囲の薬物濃度を試験できるように、連続希釈液を調製した。
【0094】
細胞
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%ウシ胎仔血清を含むRPMI-1640培地中で増殖させた。細胞を5%CO2存在下、37℃でインキュベートした。
【0095】
アッセイ条件
HL60細胞を1.2×105細胞/mlで播種した。播種の18時間後、細胞を二つ組で、薬物により処理した。4日後、細胞を回収し、ニトロブルーテトラゾリウム還元アッセイを実施した(Collins et al., 1979; J. Exp. Med. 149:969-974)。細胞計200個を計数し、細胞内に黒-青のホルマザン沈着物を含む数を記録することによって、分化した細胞のパーセンテージを決定した。単核細胞への分化の実証は、食細胞活性を測定することにより行った(データは示していない)。
【0096】
(C)インビトロ転写アッセイ
転写活性を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流の24-ヒドロキシラーゼ(24Ohase)遺伝子プロモーターが安定にトランスフェクションされたROS 17/2.8(骨)細胞で測定した(Arbour et al., 1998)。細胞に一定範囲の用量を投与した。投与の16時間後、細胞を回収し、光度計を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。RLU=相対ルシフェラーゼ単位。
【0097】
(D)腸管カルシウム輸送および骨カルシウム動員
雄の離乳Sprague-Dawleyラットを、Diet 11(0.47%Ca)飼料+AEKで1週間、続いてDiet 11(0.02%Ca)+AEKで3週間飼育した。次いでラットを、0.47%Caを含む飼料で1週間、続いて0.02%Caを含む飼料で2週間へと切り換えた。用量投与を0.02%カルシウム飼料の最終週の間に開始した。4回の連続したip投与を約24時間おきに行った。最後の投与から24時間後、切断頸部から採血し、血清カルシウム濃度を骨カルシウム動員の尺度として定量した。反転腸管法(everted gut sac method)を用いた腸管カルシウム輸送アッセイのために腸の起始部10cmも採取した。
【0098】
RA-7はビタミンD受容体(VDR)に結合するが、天然ホルモンである1α,25-ジヒドロキシビタミンD3ほどではない(図1参照)。これは受容体への結合およびおそらくはその活性化における天然ホルモンの活性の10分の1である。加えて、これはRos17/2.8(骨)細胞内に安定にトランスフェクションされたレポーター遺伝子の転写刺激においては活性が低く、1α,25-ジヒドロキシビタミンD3よりも生物活性が低いことを示している(図5参照)。これはまた、癌性HL-60細胞の増殖阻害および分化誘導においても活性である(図4参照)。しかし、天然ホルモンの30倍または7,020pmol/日で投与した場合でさえ、これは骨からのカルシウム動員を引き起こすことができなかった(図2参照)。さらにこれは、天然ホルモンの30倍を投与した場合でさえ、腸管カルシウム輸送活性の上昇において実質的に活性を有さない(図3参照)。したがってこの化合物は、血清カルシウムを高めることなく腎機能不全の続発性副甲状腺機能亢進症を治療するために有効であると考えられる。さらにRA-7は、健常ラットの副甲状腺ホルモンレベルの抑制において顕著な活性を有することが予想される。またこれは、カルシウムを高めたりビタミンD中毒を誘導したりすることなく結腸癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、および前立腺癌を治療するのに非常に活性であると考えられる。またこれは、多発性硬化症または、セリアック病、潰瘍性大腸炎、およびクローン病などの炎症性腸疾患の治療においても有用でありうる。
【0099】
同様に、式IA、IIA、およびIIIAに示す本発明の他の類似の化合物は、ビタミンD受容体に結合すること、Ros 17/2.8(骨)細胞に安定にトランスフェクションされたレポーター遺伝子の転写を刺激すること、HL-60細胞の分化を誘導すること、腸管カルシウム輸送または骨カルシウム動員のいずれかによって定量した場合に1α,25-ジヒドロキシビタミンD3よりも小さな血中カルシウム上昇活性を有すること、および、健常ラットの副甲状腺ホルモンレベルの抑制において顕著な活性を有することが、予想される。
【0100】
したがって、この化合物RA-7および本発明に記載の他の化合物は、多発性硬化症、I型糖尿病、関節リウマチ、狼瘡、および他の類似の変性疾患などの自己免疫疾患の治療においてその用途が見出される。またこれは、結腸直腸癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、および前立腺癌などの悪性増殖の治療においても顕著な活性を有する。これらの活性はすべて、血清カルシウム濃度を上げることなく現れる(図2および3参照)。この化合物は、血液透析または腹膜透析を受けている患者などの腎機能を失った患者において見られる続発性副甲状腺機能亢進症の治療においても有用である。
【0101】
一態様において、式IA、IIA、またはIIIAの化合物を薬学的組成物において用いる。例えば、薬学的組成物1mlは、本化合物5μg、30%(v/v)プロピレングリコールおよび20%(v/v)アルコールを含みうる。
【0102】
本発明の化合物は、動物被験体における肥満の予防もしくは治療、脂肪細胞分化の阻害、SCD-1遺伝子転写の阻害、および/または体脂肪の減少においても有用である。したがって、一部の態様において、動物被験体における肥満を予防もしくは治療し、脂肪細胞分化を阻害し、SCD-1遺伝子転写を阻害し、かつ/または体脂肪を減少させる方法は、本化合物または本化合物を含む薬学的組成物の有効量を動物被験体に投与する段階を含む。本化合物または本薬学的組成物の被験体への投与は、動物被験体における脂肪細胞分化を阻害し、遺伝子転写を阻害し、かつ/または体脂肪を減少させる。
【0103】
治療目的に関して、式I、IA、II、IIA、III、およびIIIAで規定される化合物を、当技術分野において公知の通常の方法に従い、無害な溶媒中の液剤として、または、適切な溶媒もしくは担体中の乳剤、懸濁剤もしくは分散剤として、または、固体担体と共に丸剤、錠剤またはカプセル剤として、薬学的適用のために製剤化する。任意のそのような製剤は、安定化剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、または乳化もしくは食味改変剤などの、他の薬学的に許容されかつ非毒性の賦形剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される賦形剤および担体は一般に当業者には公知で、したがって本発明に含まれる。そのような賦形剤および担体は、例えば、"Remingtons Pharmaceutical Sciences" Mack Pub. Co., New Jersey (1991)に記載されており、この内容は本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0104】
本化合物は経口的に、局所的に、非経口的に、経鼻的に、直腸に、舌下に、または経皮的に投与される。本化合物は、注射により、または静脈内注入もしくは適切な滅菌溶液により、または消化管を介して液体もしくは固体剤形で、または経皮適用に適したクリーム、軟膏、パッチ、もしくは類似の媒体の形態で好都合に投与される。一部の態様において、本化合物の1日あたり0.001μg〜約1mgの用量が治療目的に適している。一部のそのような態様において、適切かつ有効な用量は本化合物の1日あたり0.01μg〜1mgの範囲でありうる。他のそのような態様において、適切かつ有効な用量は、本化合物の1日あたり0.1μg〜500μgの範囲でありうる。そのような用量は、当技術分野において十分に理解されているとおり、治療対象の疾患または状態のタイプ、疾患または状態の重症度、および被験体の反応に応じて調整されるであろう。本化合物は単独で、または別の活性ビタミンD化合物と共に適切に投与する。
【0105】
一態様において、薬学的組成物において式IAの化合物を用いる。例えば、薬学的組成物1mlは本化合物5μg、30%(v/v)プロピレングリコール、および20%(v/v)アルコールを含みうる。
【0106】
本発明において用いるための組成物は、活性成分として有効量の(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(RA-7)、(20R)-2α-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、および(20R)-2β-メチル-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール、ならびに適切な担体を含む。本発明の一部の態様に従って用いるための本化合物の有効量は一般に、本明細書に記載のものなどの投与量であり、局所的に、経皮的に、経口的に、経鼻的に、直腸に、舌下に、または非経口的に投与される。一態様において、投与量を腹腔内投与する。
【0107】
式I、IA、II、IIA、III、またはIIIAの化合物を、前骨髄球を正常なマクロファージへと分化させるのに十分な量で好都合に投与する。前述の投与量が適切であるが、当技術分野において十分に理解されているとおり、投与量は疾患および状態の重症度ならびに被験体の反応に応じて調整されるべきであることが理解されよう。
【0108】
本化合物は、クリーム、ローション、軟膏、エアロゾル、坐剤、局所パッチ、丸剤、カプセル剤もしくは錠剤として、または、薬学的に無害かつ許容される溶媒もしくは油中の液剤、乳剤、分散剤、もしくは懸濁剤としての液体剤形で製剤化され、そのような製剤はさらに、安定化剤、抗酸化剤、乳化剤、着色剤、結合剤、または食味改変剤などの、他の薬学的に無害または有益な成分を含んでいてもよい。
【0109】
本発明の製剤は、活性成分と、そのための薬学的に許容される担体および任意で他の治療成分とを含む。担体は、製剤の他の成分と適合可能でありかつその受容者に対して有害でないとの意味で「許容され」なければならない。
【0110】
経口投与に適した本発明の製剤は、それぞれあらかじめ決められた量の活性成分を含むカプセル剤、サシェ剤、錠剤もしくはロゼンジなどの独立単位の形態であるか;散剤もしくは顆粒剤の形態であるか;水性の液体もしくは非水性の液体中の液剤もしくは懸濁剤の形態であるか;または、水中油乳剤もしくは油中水乳剤の形態である。
【0111】
直腸投与用の製剤は、活性成分およびカカオバターなどの担体が組み込まれている坐剤の形態、または浣腸剤の形態である。
【0112】
非経口投与に適した製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である、活性成分の油性または水性滅菌調製物を好都合に含む。
【0113】
局所投与に適した製剤は、リニメント、ローション、塗布剤、クリーム、軟膏もしくはペーストなどの水中油もしくは油中水乳剤;または滴剤などの液剤もしくは懸濁剤などの;あるいは噴霧剤としての、液体または半液体調製物を含む。
【0114】
経鼻投与のためには、スプレー缶、ネブライザー、またはアトマイザーによって投与される自己噴射散剤もしくは噴霧製剤の吸入を用いることができる。投与の際、製剤は、10〜100ミクロンの範囲の粒径を有することが好ましい。
【0115】
製剤は投与量単位形態で好都合に提供することができ、薬学分野で周知の任意の方法によって調製される。「投与量単位」という用語は、一単位、すなわち、活性成分自体または活性成分と固体もしくは液体の薬学的希釈剤もしくは担体との混合物のいずれかを含む、物理的および化学的に安定な単位用量として患者に投与可能な一用量を意味する。
【0116】
本明細書において引用するすべての参考文献は、本明細書において完全に示されたのと同じようにその全文があらゆる目的のために参照により具体的に組み入れられる。
【0117】
本発明は、例示のために本明細書において示された態様に限定されることはないが、添付の特許請求の範囲内に示すものなどの、そのすべての形態を含むことが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0118】
図1〜5は、天然ホルモンである1α,25-ジヒドロキシビタミンD3(図中では「1,25(OH)2D3」と称する)の生物活性と比較した、(20R)-2-メチレン-19,26,27-トリノル-1α,25-ジヒドロキシカルシフェロール(図中では「RA-7」と称する)の様々な生物活性を示す。
【図1】[3H]-1,25-(OH)2-D3による全長組換えラットビタミンD受容体への結合に競合するRA-7および1,25(OH)2D3の相対活性を比較するグラフである。
【図2】RA-7の骨カルシウム動員活性を1,25(OH)2D3の活性と比較する棒グラフである。
【図3】RA-7の腸管カルシウム輸送活性を1,25(OH)2D3の活性と比較する棒グラフである。
【図4】RA-7の濃度の関数としてのHL-60細胞分化パーセントを1,25(OH)2D3と比較するグラフである。
【図5】RA-7のインビトロ転写活性を1,25(OH)2D3の活性と比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、II、またはIIIを有する化合物:

式中、X1、X2、およびX3はHおよびヒドロキシ保護基から独立に選択され、R1およびR2はHあるいは1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択され;かつR3は1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。
【請求項2】
X1、X2、およびX3がヒドロキシ保護基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
X1、X2、およびX3がトリエチルシリル基またはt-ブチルジメチルシリル基である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
X1、X2、およびX3がHであり、R1、R2、およびR3がCH3であり、かつ化合物が式IA、IIA、またはIIIA

を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の化合物の有効量と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項6】
有効量が組成物1グラムあたり約0.01μg〜約1mgの化合物を含む、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
有効量が組成物1グラムあたり約0.1μg〜約500μgの化合物を含む、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項8】
生物学的状態を患う被験体に請求項1記載の化合物の有効量を投与する段階を含む、被験体を治療する方法であって、生物学的状態が、乾癬;白血病;大腸癌;乳癌;前立腺癌;皮膚癌;肺癌;多発性硬化症;狼瘡;真性糖尿病;宿主対移植片反応;臓器移植の拒絶反応;関節リウマチ、喘息、もしくは炎症性腸疾患から選択される炎症性疾患;しわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、もしくは不十分な皮脂分泌から選択される皮膚状態;腎性骨形成異常;骨減少症;または骨粗しょう症から選択される、方法。
【請求項9】
生物学的状態が腎性骨形成異常、ビタミンD抵抗性くる病、骨粗しょう症、または乾癬性関節炎である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
生物学的状態が白血病、大腸癌、乳癌、皮膚癌、肺癌、または前立腺癌から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項11】
生物学的状態が多発性硬化症、狼瘡、真性糖尿病、宿主対移植片反応、または臓器移植の拒絶反応から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項12】
生物学的状態が、関節リウマチ、喘息、またはセリアック病、潰瘍性大腸炎およびクローン病から選択される炎症性腸疾患から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項13】
生物学的状態がしわ、十分な皮膚弾力の欠如、十分な皮膚水分の欠如、または不十分な皮脂分泌から選択される、請求項8記載の方法。
【請求項14】
化合物を被験体に経口的に、非経口的に、経皮的に、経鼻的に、直腸に、舌下に、または局所的に投与する、請求項8記載の方法。
【請求項15】
化合物を腹腔内投与する、請求項8記載の方法。
【請求項16】
化合物を0.01μg/日〜1mg/日の投与量で投与する、請求項8記載の方法。
【請求項17】
式IA

を有する化合物。
【請求項18】
請求項17記載の化合物の有効量と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項19】
有効量が組成物1グラムあたり約0.01μg〜約1mgの化合物を含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項20】
有効量が組成物1グラムあたり約0.1μg〜約500μgの化合物を含む、請求項18記載の薬学的組成物。
【請求項21】
動物の肥満を治療もしくは予防し、脂肪細胞分化を阻害し、SCD-1遺伝子転写を阻害し、かつ/または動物の体脂肪を減少させる方法であって、それを必要としている動物に式I、II、またはIIIを有する化合物の有効量を投与する段階を含む方法:


式中、X1、X2、およびX3はHおよびヒドロキシ保護基から独立に選択され、R1およびR2はHあるいは1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択され;かつR3は1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニル基、1〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルキル基、または2〜8個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖ヒドロキシ置換アルケニル基から独立に選択される。
【請求項22】
化合物を動物に経口、非経口、経鼻、直腸、舌下、経皮、または局所投与する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
化合物を0.01μg/日〜1mg/日の投与量で投与する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
化合物が下記式

を有する2-メチレン-1α,25-ジヒドロキシ-19,26,27-トリノルビタミンD3である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
動物がヒトである、請求項21記載の方法。
【請求項26】
動物が家畜である、請求項21記載の方法。
【請求項27】
動物が農業動物である、請求項21記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2009−532460(P2009−532460A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503692(P2009−503692)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003919
【国際公開番号】WO2008/035228
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(505098661)ウイスコンシン アラムニ リサーチ ファンデーション (11)
【Fターム(参考)】