説明

2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒドの製造方法およびその中間体

【課題】
収率のよい2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法およびその中間体を提供する。
【解決手段】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物(1)とアルコール化合物とをアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類金属化合物の存在下に反応させて2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール化合物(2)を得、次いで、該化合物と水とを酸の存在下で反応させる2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物(3)の製造方法。


(各式中、各記号は明細書中と同義を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法およびその中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法としては、例えば、2−(アリールオキシメチル)ベンジルハライドの酸化による方法(特許文献1参照。)が知られている。しかしながら、かかる方法は収率の点で工業的に満足できるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−95462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような状況のもと、本発明者らは、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の工業的に有利な製造方法について鋭意検討したところ、容易に合成可能な2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物をアルカリ土類金属化合物の存在下にアルコール化合物と反応させることで、アセタール化し、次いで、該アセタール化合物を酸の存在下に加水分解すれば、収率よく2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち本発明は、
〔1〕式(1)
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Qは水素原子またはハロゲン原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Arは置換されていてもよいフェニル基を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物とアルコール化合物とをアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類金属化合物の存在下に反応させて式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、QおよびArはそれぞれ上記と同一の意味を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表すか、2つのRが互いに結合して水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール化合物を得、次いで、該化合物と水とを酸の存在下で反応させる式(3)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、QおよびArはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法、
〔2〕アルコール化合物が、2価のアルコール化合物である上記〔1〕に記載の製造方法、
〔3〕アルコール化合物が、1,2−ジオール化合物である上記〔1〕に記載の製造方法、
〔4〕アルコール化合物が、エチレングリコールである上記〔1〕に記載の製造方法、
〔5〕アルカリ土類金属が、カルシウムである上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法、
〔6〕アルカリ土類金属化合物が、アルカリ土類金属の炭酸塩である上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法、
〔7〕アルカリ土類金属化合物が、炭酸カルシウムである上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法、
〔8〕酸が、ブレンステッド酸である上記〔1〕に記載の製造方法、
〔9〕酸が、塩酸である上記〔1〕に記載の製造方法、
〔10〕Xが、塩素原子である上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法、
〔11〕Arが、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基である上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の製造方法、
〔12〕Arが、2,5−ジメチルフェニル基である上記〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の製造方法、
〔13〕式(4)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、QおよびXはそれぞれ上記と同一の意味を表し、Yはハロゲン原子を表わす。)
で示される2−(ハロメチル)ベンザルハライド化合物と式(5)
【0013】
【化5】

【0014】
(式中、Arは上記と同一の意味を表す。)
で示されるフェノール化合物とを塩基の存在下で反応させて式(1)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物を得る工程をさらに含む上記〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の製造方法、および
〔14〕2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタールを提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物を収率よく製造できるため、工業的に有利である。本発明の2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタールは、本発明の2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法における合成中間体等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
上記式(1)〜(4)において、Qは水素原子またはハロゲン原子を表わす。Qで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。Qとしては、水素原子が好ましい。Qがハロゲン原子である場合、Qで示されるハロゲン原子はベンゼン環の置換可能な位置に置換されていればよい。Qがハロゲン原子である場合、Qで示されるハロゲン原子の数は特に限定されない。
【0018】
上記式(1)、(4)において、Xで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。コスト面から塩素原子が好ましい。
【0019】
上記式(4)において、Yで示されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。コスト面から塩素原子が好ましい。式(4)において、XとYは同一であることが好ましい。
【0020】
上記式(1)〜(3)、(5)において、Arで示される官能基は、フェニル基およびフェニル基の水素原子が置換されたフェニル基である。フェニル基上に置換される基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基やフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子が例示される。フェニル基に置換される基の数は特に限定されず、1〜5個であってもよい。1〜3個が好ましく、1又は2個がより好ましく、2個がさらに好ましい。かかるフェニル基の水素原子が置換されたフェニル基としては、例えば2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,3−ジエチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、2,5−ジエチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2,4,6−トリエチルフェニル基、2−(n−プロピル)フェニル基、3−(n−プロピル)フェニル基、4−(n−プロピル)フェニル基、2,4−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,5−ジ(n−プロピル)フェニル基、2,6−ジプロピルフェニル基、2,4,6−トリ(n−プロピル)フェニル基、2−イソプロピルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、2,4−イソプロピルフェニル基、2,5−ジイソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、2,4,6−トリイソプロピルフェニル基、2−(n−ブチル)フェニル基、3−(n−ブチル)フェニル基、4−(n−ブチル)フェニル基、2,4−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,5−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,6−ジ(n−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ(n−ブチル)フェニル基、2−イソブチルフェニル基、3−イソブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、2,4−ジイソブチルフェニル基、2,5−ジイソブチルフェニル基、2,6−ジイソブチルフェニル基、2,4,6−トリイソブチルフェニル基、2−(tert−ブチル)フェニル基、3−(tert−ブチル)フェニル基、4−(tert−ブチル)フェニル基、2,5−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,6−ジ−(tert−ブチル)フェニル基、2,4,6−トリ−(tert−ブチル)フェニル基、2−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、ペンタクロロフェニル基等が挙げられる。なかでも、2−メチルフェニル基および2,5−ジメチルフェニル基が好ましく、2,5−ジメチルフェニル基がより好ましい。
【0021】
式(2)において、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表すか、2つのRが互いに結合して水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表わす。Rで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。2つのRが互いに結合して水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、−CH−、−CH−CH−、−CH−CH(CH)−、−C(CH−C(CH−、−CH−CH(CHOH)−等が挙げられ、−CH−CH−が好ましい。
【0022】
まず、上記式(1)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物(以下、2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)と略記する。)とアルコール化合物とを、アルカリ土類金属化合物の存在下に反応させる方法について説明する。
【0023】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(3−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−エチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2−t−ブチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(4−t−ブチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,6−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(3,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,6−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,6−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−3−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−5−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−6−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2−エチルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンザルクロリド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルブロミド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンザルブロミド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンザルヨージド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンザルヨージド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンザルブロミド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンザルヨージド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンザルヨージド等が挙げられる。なかでも、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドおよび2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドが好ましく、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドがより好ましい。
【0024】
本発明に用いるアルコール化合物は、分子中に水酸基を1以上有する炭素数1〜6のアルコール化合物である。かかるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の1価アルコール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ピナコール等の2価のアルコール化合物;グリセリン等の3価のアルコール化合物;等が挙げられる。2価のアルコール化合物が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ピナコール等の1,2−ジオール化合物がより好ましく、なかでも、エチレングリコールがさらに好ましい。
【0025】
アルコール化合物の使用量は、特に制限されず、溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよいが、1価のアルコールであれば2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)に対して、通常2〜200モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、2価以上のアルコールであれば2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)に対して、通常1〜100モル倍、好ましくは1〜10モル倍である。
【0026】
本発明に用いるアルカリ土類金属化合物を構成するアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムおよびバリウムが挙げられる。なかでも、カルシウムが価格の点から好ましく用いられる。ここで、本明細書においてアルカリ土類金属とは周期表第2族元素を意味する。本発明においてアルカリ土類金属化合物とは、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つである。アルカリ土類金属化合物としては、例えば、酸化マグネシウム等の酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の水酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;等が挙げられる。なかでも炭酸カルシウムが好ましい。
【0027】
アルカリ土類金属化合物の使用量は、特に限定されないが、2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)に対して、通常1〜10モル倍、好ましくは1〜4モル倍である。
【0028】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)とアルコール化合物との反応は、溶媒を用いて実施してもよいし、溶媒を用いることなく実施してもよい。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、経済性の観点から、2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)に対して、通常100重量倍以下である。特に溶媒を用いることなく、前述のとおり2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)と反応させるアルコール化合物を、溶媒を兼ねて大過剰量用いることが好ましい。
【0029】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)とアルコール化合物との反応は、相間移動触媒の存在下で実施することができる。かかる相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;臭化トリフェニルホスフィン等のホスホニウム塩;18−クラウン−6、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物;等が挙げられる。
【0030】
原料を混合する順番、方法に特に制限はないが、例えば、アルコール化合物にアルカリ土類金属化合物と2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)とを加える方法が挙げられる。
【0031】
反応温度は、通常−5℃以上、溶媒の沸点以下の範囲であり、好ましくは10〜200℃の範囲である。反応時間は、通常1〜100時間である。常圧下で本反応を行ってもよいし、加圧下で本反応を行ってもよい。反応の進行は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により、確認することができる。
【0032】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)とアルコール化合物とをアルカリ土類金属化合物の存在下に反応させて得られた反応混合物は、上記式(2)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール化合物(以下、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)と略記する。)を含む。該反応混合物を、そのまま酸の存在下での水との反応に供してもよいし、抽出処理、水洗処理等の後処理を施すことにより、反応混合物中に残存するアルカリ土類金属化合物やアルコール化合物等を除去した後、酸の存在下での水との反応に供することもできる。また、かかる後処理により得られた混合物を、そのまま酸の存在下での水との反応に供してもよいし、濃縮、晶析、ろ過等の通常の手段により2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)を単離した後、酸の存在下での水との反応に供してもよい。また、単離された2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)をさらに再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段により精製してから供してもよい。
【0033】
かくして得られる2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(3−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(4−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(4−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,4−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,6−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(3,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,4−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,6−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,6−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドエチレングリコール アセタール、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−エチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジメチルアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジメチルアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジエチルアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジエチルアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジ(n−プロピル)アセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジ(n−プロピル)アセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジイソプロピルアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジイソプロピルアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジ(n−ブチル)アセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ジ(n−ブチル)アセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ピナコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド ピナコールアセタール、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド プロピレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド プロピレングリコールアセタール等が挙げられる。なかでも、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタールが好ましく、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタールがより好ましい。
【0034】
次に、酸の存在下で行われる2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)と水との反応について説明する。
【0035】
酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸等のブレンステッド酸が挙げられる。なかでも塩酸または硫酸が好ましく、塩酸がより好ましい。かかる酸は、通常、市販のものをそのまま用いればよい。また、水や後述する溶媒で希釈して用いても、濃縮して用いてもよい。酸の使用量は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)に対して、通常0.01モル倍以上であればよく、好ましくは1〜5モル倍の範囲である。
【0036】
水は、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。その使用量は、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)に対して、通常2モル倍以上であれば、特に制限はなく、溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよい。
【0037】
2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)と水との反応は、通常、有機溶媒の存在下で実施される。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。芳香族溶媒が好ましく、キシレン、トルエンがより好ましい。溶媒の使用量は特に制限されないが、経済性の観点から、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)に対して、通常100重量倍以下である。
【0038】
反応温度は、通常1℃以上、溶媒の沸点以下の範囲であり、好ましくは10〜200℃の範囲である。反応時間は、通常1〜100時間である。常圧下で本反応を行ってもよいし、加圧下で本反応を行ってもよい。ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により、反応の進行を確認することができる。
【0039】
2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール(2)と酸と水の混合順序は、特に限定されない。
【0040】
かくして得られる反応混合物には、通常、上記式(3)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物(以下、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド(3)と略記する。)が主生成物として含まれており、該反応混合物をそのまま、もしくは、中和処理、分液処理等の後処理に付した後、濃縮処理、晶析処理、ろ過処理等の通常の単離処理に付すことにより、2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド(3)を単離することができる。単離された2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド(3)は、さらに再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段により精製されてもよい。
【0041】
かくして得られる2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド(3)としては、例えば、2−(フェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−エチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−イソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(4−t−ブチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジエチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,6−ジイソプロピルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,4,6−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(3,4,5−トリメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−3−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−5−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−6−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジエチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−エチルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジイソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2−イソプロピルフェノキシメチル)−4−クロロベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ブロモベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド、2−(2−メチルフェノキシメチル)−4−ヨードベンズアルデヒド等があげられる。なかでも、2−(2−メチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドが好ましく、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドがより好ましい。
【0042】
最後に、本発明に用いる2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)の製造方法について説明する。
【0043】
2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)は、例えば、式(4)
【0044】
【化6】

【0045】
(式中、Q、XおよびYはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される2−(ハロメチル)ベンザルハライド化合物(以下、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)と略記する。)と式(5)
【0046】
【化7】

【0047】
(式中、Arは上記と同一の意味を表す。)
で示されるフェノール化合物(以下、フェノール(5)と略記する。)とを塩基の存在下で反応させることにより製造できる。
【0048】
2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)としては、例えば2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、2−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、3−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、4−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、4−ブロモ−2−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、4−ヨード−2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、5−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド、5−ブロモ−2−(ブロモメチル)ベンザルブロミド、5−ヨード−2−(ヨードメチル)ベンザルヨージド、6−クロロ−2−(クロロメチル)ベンザルクロリド等が挙げられる。入手性の点から2−(クロロメチル)ベンザルクロリドが好ましい。2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)は、市販のものを用いてもよいし、例えば、オルトキシレン化合物を、ラジカル開始剤の存在下あるいは光照射下において、ハロゲンを反応させる方法(特開2006−335737号公報参照。)等の公知の方法に準じて製造して用いてもよい。
【0049】
フェノール(5)としては、例えばフェノール、2−メチルフェノール、2−エチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−メチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2,5−ジイソプロピルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−フルオロフェノール、4−フルオロフェノール、2,4−ジフルオロフェノール、2,4,6−トリフルオロフェノール等が挙げられる。なかでも、2−メチルフェノール、2,5−ジメチルフェノールが好ましく、2,5−ジメチルフェノールがより好ましい。フェノール(5)は、市販のものを用いてもよいし、例えば、J.Am.Chem.Soc.,128,10694(2006)、Tetrahedron Letters,30,5215(1989)、特開2002−3426号公報等に記載の公知の方法により製造して用いてもよい。
【0050】
2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)とフェノール(5)の使用量は特に限定されず、いずれか一方を、他方に対して10モル倍以上用いてもよいが、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)に対して、フェノール(5)を、通常0.1〜10モル倍、好ましくは1〜3モル倍の範囲で用いる。
【0051】
塩基としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の三級アミン;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等の水素化アルカリ金属化合物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸アルカリ金属化合物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等の炭酸水素アルカリ金属化合物;等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。かかる塩基は、通常、市販のものをそのまま用いればよい。また、水や後述する溶媒で希釈して用いても、濃縮して用いてもよい。
【0052】
塩基の使用量は、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)およびフェノール(5)のうち、使用モル量が少ない方に対して、通常1モル倍以上用いればよく、その上限は特にないが、好ましくは1〜3モル倍の範囲である。
【0053】
2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)とフェノール(5)との反応は、通常、溶媒の存在下で実施される。かかる溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、ベンゼン等の芳香族溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;tert−ブチルメチルケトン等のケトン溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;水;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を同時に用いてもよい。水がより好ましい。溶媒の使用量は特に限定されないが、経済性の観点から、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)に対して、通常100重量倍以下である。
【0054】
2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)とフェノール(5)との反応は、相間移動触媒の存在下に実施されることが好ましい。かかる相間移動触媒としては、例えば、臭化テトラn−ブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、硫酸水素テトラn−ブチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム等の四級アンモニウム塩;臭化トリフェニルホスフィン等のホスホニウム塩;18−クラウン−6、ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物;等が挙げられる。なかでも、四級アンモニウム塩が好ましく、臭化テトラn−ブチルアンモニウムがより好ましい。相間移動触媒の使用量は、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)およびフェノール(5)のうち、使用モル量が少ない方に対し、通常0.01モル倍以上であればよい。好ましくは0.05〜1モル倍の範囲である。
【0055】
2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)とフェノール(5)との反応をスムーズに進行させるために、ヨウ素化合物の存在下で本反応を行ってもよい。かかるヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム等のアルカリ金属ヨウ化物や、ヨウ素等が挙げられる。アルカリ金属ヨウ化物が好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。ヨウ素化合物は、通常、市販のものをそのまま用いるが、任意の公知の方法により製造して用いてもよい。ヨウ素化合物の使用量は、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)およびフェノール(5)のうち、使用モル量が少ない方に対し、通常0.01モル倍以上であればよい。好ましくは0.05〜1モル倍の範囲である。
【0056】
反応温度は、通常−5℃以上、溶媒の沸点以下の範囲であり、好ましくは10〜100℃の範囲である。反応時間は、通常1〜100時間である。常圧下で本反応を行ってもよいし、加圧下で本反応を行ってもよい。ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR等の通常の分析手段により、反応の進行を確認することができる。
【0057】
本反応は、2−(ハロメチル)ベンザルハライド(4)とフェノール(5)と塩基とを混合することにより実施されるが、それらの混合順序は、特に限定されない。
【0058】
かくして得られる反応混合物には、通常、2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)が主生成物として含まれており、該反応混合物を、そのまま上述したアルコール化合物との反応に供してもよいし、後処理した後に供してもよい。かかる後処理としては、例えば、中和処理、分液処理等が挙げられる。後処理により得られた混合物を、そのまま上述したアルコール化合物との反応に供してもよいし、例えば、濃縮、晶析、ろ過等の通常の手段により2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)を単離してから上述したアルコール化合物との反応に供してもよい。また、単離された2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド(1)をさらに再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の通常の手段により精製してから上述したアルコール化合物との反応に供してもよい。経済的な観点から、中和処理、分液処理を実施した後に、アルコール化合物との反応を実施することが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0060】
実施例1
500mLフラスコに、2,5−ジメチルフェノール84g(0.69mol)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液148g(0.74mol)を仕込み、得られた混合物を80℃まで昇温し、同温度で3時間攪拌した後、60℃まで冷却した。別の500mLフラスコに2−(クロロメチル)ベンザルクロリド129g(0.60mol)と臭化テトラn−ブチルアンモニウム8.1g(0.03mol)を仕込み、フラスコ内容物を60℃まで昇温した。該フラスコ内容物の内温を60℃に保ちながら、そこに上記の2,5−ジメチルフェノールと20重量%水酸化ナトリウム水溶液とから調製された混合物を3時間で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を同温度で5時間攪拌した。得られた反応混合物を60℃にて分液処理し、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物192.6gを得た。該粗製物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの含量は94.8重量%であった。
【0061】
実施例2
1000mLフラスコに、エチレングリコール213g(3.42mol)、炭酸カルシウム65g(0.65mol)および実施例1で得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物の全量を60℃で仕込み、得られた混合物を150℃に加熱し、7時間保持した。得られた混合物を80℃に冷却し、そこに、水127gと35重量%塩酸51gを加えて、得られた混合物を50℃で1時間保持した。得られた混合物を分液し、得られた油層に水127gと35重量%塩酸51gとを加え、得られた混合物を65℃で1時間保持した。得られた混合物を分液することにより、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの粗製物を147.0g得た。該粗製物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量は85.5重量%であった。
収率:87.2%(2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド基準)
【0062】
実施例3
500mLフラスコに、2,5−ジメチルフェノール84g(0.69mol)と20重量%水酸化ナトリウム水溶液148g(0.74mol)とキシレン169gとを仕込み、得られた混合物を80℃まで昇温し、同温度で3時間攪拌した後、60℃まで冷却した。別の500mLフラスコに2−(クロロメチル)ベンザルクロリド129g(0.60mol)と臭化テトラn−ブチルアンモニウム8.1g(0.03mol)を仕込み、フラスコ内容物を60℃まで昇温した。該フラスコ内容物の内温を60℃に保ちながら、そこに上記の2,5−ジメチルフェノールとトルエンと20重量%水酸化ナトリウム水溶液とから調製された混合物のうち水層のみを3時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた混合物を同温度で5時間攪拌した。得られた反応混合物を60℃にて分液処理し、得られた油層を減圧濃縮することにより、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物191.6gを得た。該粗製物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの含量は96.1重量%であった。
【0063】
実施例4
実施例2において、実施例1で得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物に代えて、実施例3で得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物を用いる以外は、実施例2と同様に操作を行い、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの粗製物を148.3g得た。該粗製物を高速液体クロマトグラフィー内部標準法にて分析したところ、2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒドの含量は87.2重量%であった。
収率:89.7%(2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリド基準)
【0064】
実施例5
1000mLフラスコに、エチレングリコール213g(3.42mol)、炭酸カルシウム65g(0.65mol)および実施例1と同様にして得た2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンザルクロリドの粗製物の全量を60℃で仕込み、得られた混合物を150℃に加熱し、7時間保持した。得られた混合物の一部を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲルは和光純薬工業株式会社製「ワコーゲル(登録商標)C−300」を使用し、流出液は酢酸エチル:ヘキサン=1:10を使用した。)で精製した。2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタールの無色透明液体を得た。
薄層クロマトグラフ(酢酸エチル:ヘキサン=1:10):Rf=0.45
ガスクロマトグラフ質量分析:284(M+),162,119,105,91(base)
H−NMR(CDCl):δ=2.23(s,3H,CH),2.31(s,3H,CH),4.00〜4.16(m,4H,CH−CH),5.22(s,2H,CHO),6.05(s,1H,CH),6.68〜6.74(m,2H,Ar),7.02〜7.05(m,1H,Ar),7.31〜7.41(m,2H,Ar),7.56〜7.63(m,2H,Ar)
13C−NMR(CDCl):16.3、21.7、65.5、67.2、102.2、112.6、121.3、124.1、126.6、127.9、128.3、129.5、130.7、135.2、136.4、136.8、157.0
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により得られる2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド(3)は、例えば、農業用殺菌剤の製造中間体(特開平3−17052号公報、特開平9−95462号公報参照。)として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】


(式中、Qは水素原子またはハロゲン原子を表し、Xはハロゲン原子を表し、Arは置換されていてもよいフェニル基を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物とアルコール化合物とをアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類金属化合物の存在下に反応させて式(2)
【化2】


(式中、QおよびArはそれぞれ上記と同一の意味を表す。Rは炭素数1〜6のアルキル基を表すか、2つのRが互いに結合して水酸基で置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド アセタール化合物を得、次いで、該化合物と水とを酸の存在下で反応させる式(3)
【化3】


(式中、QおよびArはそれぞれ上記と同一の意味を表す。)
で示される2−(アリールオキシメチル)ベンズアルデヒド化合物の製造方法。
【請求項2】
アルコール化合物が、2価のアルコール化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルコール化合物が、1,2−ジオール化合物である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
アルコール化合物が、エチレングリコールである請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
アルカリ土類金属が、カルシウムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
アルカリ土類金属化合物が、アルカリ土類金属の炭酸塩である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
アルカリ土類金属化合物が、炭酸カルシウムである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
酸が、ブレンステッド酸である請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
酸が、塩酸である請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
Xが、塩素原子である請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
Arが、炭素数1〜4のアルキル基で置換されたフェニル基である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
Arが、2,5−ジメチルフェニル基である請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
式(4)
【化4】


(式中、QおよびXはそれぞれ上記と同一の意味を表し、Yはハロゲン原子を表わす。)
で示される2−(ハロメチル)ベンザルハライド化合物と式(5)
【化5】


(式中、Arは上記と同一の意味を表す。)
で示されるフェノール化合物とを塩基の存在下で反応させて式(1)で示される2−(アリールオキシメチル)ベンザルハライド化合物を得る工程をさらに含む請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
2−(2,5−ジメチルフェノキシメチル)ベンズアルデヒド エチレングリコールアセタール。

【公開番号】特開2009−298746(P2009−298746A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157213(P2008−157213)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】