説明

2つの母音字を使ったローマ字入力装置

【課題】機械式のキーやタッチパネルを具備した携帯電話などの情報端末において、少ないスペースで簡便な日本語文字入力を実現する。
【解決手段】本発明は情報端末で12個のキーを使用しローマ字で日本語を入力するものであって、キーに第一母音字と第二母音字の2つの母音字を配置し、これに子音字を特別な配置で設置することで、清音、拗音、濁音、拗濁音、半濁音がどちらかの母音を使用して入力できるようになった。また入力方法の補助表示をすることでユーザーが第一母音字、第二母音字の意識しなくとも簡単に入力できるようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPDA(personal digital assistants)と呼ばれる携帯情報端末、携帯電話、テレビゲーム機の端末、パソコン用キーボードなどの日本語文字入力機能をもつ情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
文字入力機能をもつ情報端末端末のほとんどは、マイクロプロセッサーを内蔵し、機械式のボタンを使用した文字入力や、ペンや指の感知機能をもつタッチパネルとした液晶画面での文字入力操作をソフト的に支援して、使用者に簡便な文字入力環境を提供し、メールの作成やインターネット検索などで利便性の高い装置となることを目指している。
【0003】
またタッチパネルによる文字入力では、大きな画面と高い表示解像度で豊富な支援情報を使用者に与えることができる。機械式のボタンを具備するものでも、折りたたみ式のデザイン、機械式のボタンをスライドして表示画面下に収納するデザインなどで、端末が小型のものであっても表示画面を大きくして、多くの情報を使用者に与えることができる製品が多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
情報端末としての機能をもつ携帯電話等、手のひらに収まる程度の大きさの携帯情報端末での文字入力は、キーボードのキーの数が少ない、あるいは一つ一つのキーの大きさが指で押すことが困難なほど小さくなっている。そのため多くの利用者は情報端末で数字を入力するためにも使用されている12個のボタンを文字入力用として利用しているが、ボタン数が少なく各ボタンに配置された“あかさたな”行ごとのひらがなをめくるように選んで入力文字を確定する面倒な操作を強いていた。本発明の目的は、小型の情報端末であっても使用者が簡単に文字入力をおこなうことができる装置にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
図1は、本発明を実施したもっとも効果の高い設計である。ローマ字入力のための、12個の入力キーをもち、それぞれに第一の母音字キー1aの5つ、子音字と兼用し子音字の押しの次に母音字となる第二の母音字キー1bの5つ、残りの子音字キー1cの2つから成る。本発明の新しいローマ字入力の取り決めとして第一の母音字、あるいは第二の母音字で子音を入力することとした。尚、便宜上、第一の母音字を「A」‥「O」、第二の母音字を「a」‥「o」で表記する。またキーに単独、あるいは複数で配置し適時に入力可能となる英字を「A」、「a」、「K」などで表記する。また拗音は、拗音、拗濁音に2つに分ける表記を使用する。
【0006】
本発明は前記本発明の取り決めのなかで、基本的な清音、拗音、濁音、拗濁音、半濁音を入力できるようにするための要件を導き出し、使用者が簡単に日本語入力できるようにしたものであり、図6の表は本発明で初めて実現した12個のキーでの2つの母音による、日本語入力で最も基本となる清音、拗音のローマ字入力表である。
【0007】
請求項1によれば、前記本発明の取り決めでの文字入力において、次の第一〜五の5つの要件を満足させる英字の配置を行ったことで、前記ローマ字入力表のような本発明の取り決めでの清音、拗音、濁音、拗濁音、半濁音の入力を実現した。
【0008】
第一にキーは全部で12個だから、濁音を持つひらがな行、例えば、“か”行などは“か”、“き”、“く”、“け”、“こ”5つの清音と5つの濁音で合計10個のキーを使い、残りの2つのうち1つは“KYA”などの拗音の入力で使用する「Y」3aを充てる必要がある。さらに「Y」は濁音に成り得る子音字と兼用できない。例えば、4aはその例であり、濁音に成り得る「K」と兼用すると“や”、“ゆ”、“よ”が入力できない。
【0009】
第二に“ちゃ”、“てゃ”の拗音は“TYA”、“THA”のように二押し目に「Y」、「H」を使用するから残りの1つのキーに「H」3bを充てる必要がある。加えて「H」は“は”行の清音、濁音、拗音、拗濁音があるから他の子音字と兼用しない必要がある。
【0010】
第三に「N」は“ん”の“NN”で同一キーを使用する場合があるから、2打目に“な”行の拗音として必要な「Y」と5aのように兼用できない。加えて5bに示す位置のような第二の母音字キーのすべてを使う「K」、「S」、「T」と兼用できない。すなわち第一、第二の要件も加えると「K」、「S」、「T」、「Y」、「H」と兼用しない位置に配置する必要がある。
【0011】
第四に、先ず第一〜三の要件を満足させると「K」、「S」、「T」、「H」は他の3キー2cは必ず兼用キーとする必要がある。よって「N」は残りのなかで母音5つ全てを使う「M」、「R」、「P」と兼用できないから、母音字を“わ”、“を”で2つだけ使う「W」とのみ兼用できることになる。もちろん「N」の位置は、「W」を第二母音で入力する場合では「a」、「o」を避ける必要がある。
【0012】
第五に、第一〜四の要件を満足させると「Y」には4dに示す残りの「M」「R」「P」のいずれかを兼用キーとする必要がある。
【0013】
図2(a)に第一〜五の要件をまとめたものを示す。もちろん「K」と兼用している第2の母音字は「a」は、「K」と「i」などに変えてもよい。図7に第一の母音字以外のキーを押したときに入力できるひらがなを示す。第二の母音字は、先ず兼用している子音字として機能し、次の押しで図7(b)のようにひらがなが入力できる母音字として機能するから、図7(b)の“がぎぐげご”のような濁音の入力や、2つの子音字と兼用しているキー7cの押し後である図7(d)の“やゆよ”のように使用頻度の低い子音の入力用として使用するとよい。
【0014】
尚、“TSA”(つぁ)〜“TSO”(つぉ)、“KWA”(くぁ)〜“KWO”(クォ)の入力は、使用頻度がきわめて低いし、このローマ字表記自体を知らない使用者も多く、使用者は通常は清音+小字として入力するのでサポートしなくても不便を感じることはあまりない。また「F」は使用しなくても日本語入力できるし「X」、「V」も使用頻度が低いので、例えば、図7(d)に示すような「M」と「Y」の兼用キーの押し後、あるいはいずれかのキーの押しの後に入力する、あるいは“X”での母音の小字入力は、第一母音の長押しでも入力可能にすればよい。“F”も、「H」の長押し後の第一母音字の押し、あるいは「H」の押し後の第一母音字の長押しなどで「H」を「F」とみなすことでも対応してもよい。また“っ”の入力は通常“XTU”、あるいは“LTU”で行うが、使用頻度が高く「H」「H」など2つのキーの押しで入力するショートカットを設けたほうが利便性は高い。また本発明では対応していない促音を音節の最初の子音字を重ねて入力する方法、例えば、“KAPPA”など“PPA”を“っぱ”とする入力方法もあるが、“PP”と“っ”は本来ローマ字的に全く関連性がなく混乱することもあり、この方法をとらない使用者も多く、JIS(日本工業規格:Japanese Industrial Standards)にもこの促音の入力方法は規定にない。またJISでは小字は“X”を音節の最初につける規定になっていて“L”で、例えば、“LTU”による“っ”の入力などは規定されておらず、“XTU”で入力する規定になっている。
【0015】
請求項2によれば、請求項1記載の文字入力装置が、請求項5に記載の第一母音字と第二母音字の機能の切り替え時、“ん”の入力方法を同じにできない問題(図7(f)と図8(a)の“ん”を参照)を解決するため、図2(c)示すように「H」を第二母音字側で入力することにより、「N」を第一の母音字ではなく、第二の母音字ではなく、「Y」ではないキーに配置して、前記切り替え時でも“ん”の入力を「N」「N」で入力することが可能になった。更に図2(c)の配置では、使用者が混乱やすい第二母音字を使用した清音用の子音字の入力を、格子状の視認性の高い中央の2つのキーで行うため、左右どちらの母音字を使用するのかが画面表示で確認し易くなり、使用者は混乱しにくくなる。但し、拗音、拗濁音のうち“THA”などで2つ目の押しで「H」の押しを必要とする時、「H」を新たな位置に配置するなど工夫する必要があり、図6のローマ字入力表どおりには一部ならないが、使用者に補助表示で入力支援をおこなうことで違和感を改善できる。
【0016】
請求項3によれば、半濁音の入力に関して本発明の取り決めに沿わないが、請求項2を示す図2(b)で、例えば、「H」2aの押しの後「P」2bが入力できる仕様にすれば、使用頻度の低い「ぱ」の入力が「は」と関連づけられ、使用者がわかりやすくなることと、この例に沿わない場合でも図7(e)の“ぱ”行を入力するための第二の母音字部分の5つのキーを「、」、「。」などの他の記号や機能キーとして使えるようになる利点がある。
【0017】
請求項4によれば、本発明での2種類の母音字キーの使用は、使用者によっては難解に感じる問題があるが、これを入力端末自体の表示装置あるいは入力端末とつながった表示装置に、次にキーを打つとどんなひらがな、あるいはローマ字が入力できるかを補助表示して入力支援する。例えば、図9(a)は使用者が「K」を押した後の画面状態であるが、使用者が必ずしも第二の母音字を意識しなくても、濁音入力などの第二の母音字を使用する入力がこの補助表示で簡単にできる。
【0018】
請求項5は片手入力、あるいは人差し指などの一本指で入力する場合の操作性の改善を目的としていて、本発明で図1の配置の場合は、第一母音を頻度の高い清音の子音の入力に使用するのがもっとも効果的であり、手のひらに収まるような端末で通常左右交互に両手の親指を使って軽快な操作ができるが、片手で入力する際にも通常親指のみを使用することから子音字と第一の母音字との距離が遠いことが問題になるため、これを第一の母音字と第二の母音字の機能を切り替えることで改善した。
【0019】
この切り替えにより入力できるひらがなは図8になり、使用頻度の高い清音の子音の入力が子音字と兼用している第二の母音字側に移ることになり、文字入力時の全体の指の移動距離を短くできる。また図1の配置ではなく、第一の母音字と第二の母音字が上下に離れて成る場合も同様に両手操作時と片手操作時で操作性が異なるため請求項4は有効である。前期切り替えは使用者が行い、切り替え手段は機械式のボタン、タッチパネル操作、あるいは使用者の動作による加速度センサーの信号などを用いる。
【0020】
請求項6によれば、子音字と第一の母音字との距離が遠い問題の改善であって、子音の入力が、子音字、あるいは第二の母音字の長押しにより、第二の母音字を第一の母音字として扱うことで、第一の母音字を使用せずに入力でき、子音字と兼用している第二の母音字側の使用頻度が高くなり、文字入力時の全体の指の移動距離を短くできる。この機能は請求項4と組み合わせることでより効果的である。例えば、図1の配置だと「K」押し後「a」押しで“か”が入力でき、「K」の長押し後「a」の押し、あるいは「K」押し後の「a」の長押しで“が”が入力できるため、片手持ちの際に操作が楽になる。
【0021】
請求項7によれば、子音字と第一の母音字との距離が遠い問題の改善であって、請求項6を実施した場合でも変わらない第一の母音字による母音の入力が、第二の母音字の側で入力できるため「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の操作がなくなり、第二母音字の側に操作が集中する。例えば、図1の配置だと、より効果が高くなる請求項5と請求項6を組み合わせて、「K」押し後「a」押しで“か”が入力でき、「K」押し後「a」の長押しで“が”が入力でき、「K」の長押しで“あ”が入力できる。すなわち“か”、“が”、“あ”を同一キーの操作で入力できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば12個のキーだけで簡単にローマ字での日本語入力ができるようになり、小型の情報端末で日本語入力が容易になる。
【実施例】
【0023】
本発明において、両手入力に重点を置いた場合にもっとも有効的な配置での動作を、図7、図9を用いて説明する。図7(a)はタッチパネル上の表示である。図7(a)の「A」、「I」、「U」、「E」、「O」は第一母音字であり独立して母音が入力でき且つ子音用の母音字である。図7(a)の「a」、「i」、「u」、「e」、「o」は第二母音字であり子音用の母音字である。
【0024】
“か”を入力したいとするとユーザーは先ず「K」7aを押し、次に「A」7bを押す。このとき実際の画面表示は図9(a)のようなアシスト表示になっていて使用者は9bを押すことになる。“が”を入力したいとすると「K」7aの押し後、同一キーである第2の母音字「a」7aを押すが、実際にはアシスト表示された「が」9aを押せばよい。
【0025】
拗音の“きゃ”は「K」7a押し後「Y」7cを押し「A」7bを押すが、もし“ぎゃ゛の入力をしたい場合は「A」7bのかわりに「a」7aを押す。このとき実際には「が」と同様に「Y」7cが押された時点で図9(c)のアシスト表示がされているで使用者は「ぎゃ」9dを押せばよい。
【0026】
“わ”を入力したいとすると「NW」7dを押す。「NW」は兼用キーであり、どちらの英字を入力したいかを選択する必要はない。次に第2の母音字「a」7aを押す。実際にはアシスト表示が行われ表示が図9(b)になるので「わ」9cを押す。
【0027】
図7のひらがな全ては、第一の母音字以外のキーの押しの後に入力できる。ただし第一の母音字と第二の母音字はユーザーの設定で逆になる場合があり、この場合初めのキーの押しの後、図8に示すひらがなが入力できるため、使用頻度の高い子音の入力時、例えば、「K」7a押し「a」7a押しで“か”のように最初に押した子音字キーと同じキーであったり「K」7a押し「i」7e押しで“き”のように近くのキーを押すケースが多くなるため、指の移動距離が短くなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 本発明の効果が高い配置である。
【図2】 本発明の説明である。
【図3】 キーの配置の説明である。
【図4】 キーの兼用についての説明である。
【図5】 キーの兼用と配置についての説明である。
【図6】 本発明におけるローマ字入力方法である。
【図7】 子音字押し後に入力できる文字の説明である。
【図8】 子音字押し後に入力できる文字の説明である。
【図9】 補助表示の実例である。
【符号の説明】
【0029】
1aは第一の母音字範囲。1bは第二の母音字範囲。1cは子音字のみの範囲。2a、2bは子音字キー。2cは2つの子音字兼用キー。3a、3b、3cはキー配置の説明。4a、4bは兼用キーの条件説明。5a、5b、5c、5dはキー配置の説明。7a、7b、7c、7d、7eは使用者の押すキー。9a、9b、9cは端末上に補助表示されたひらがな。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日本語をローマ字で入力する手段とマイクロコンピューターを具備してなる情報端末において、12個のキーをもつことと、12個のキーのうち5つのキーはそれぞれに「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の第一の母音字をもつことと、第一の母音字以外の5つのキーそれぞれに「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の第二の母音字をもつことと、第二の母音字が「K」、「S」、「T」、「N」、「M」、「R」、「W」、「P」の子音字のうち1つ、あるいは2つと兼用することと、残りの2つのキーがそれぞれ「Y」、「H」の子音字をもつことと、「Y」は「M」、「R」、「P」のいずれかの子音字と兼用することと、前記子音字と兼用している「Y」は拗音になり得る子音字の押しの後は「Y」として機能することと、第二の母音字は先ず兼用している子音字として機能し、いずれかの子音字の入力の後、後、母音字として機能することと、「K」、「S」、「T」、「H」の子音字の押しの後、あらかじめ定めた第一の母音字あるいは第二の母音字の押しで、それぞれの押された子音字は「G」、「Z」、「D」、「B」として機能することと、子音字を2つ兼用しているキーの押しの後、第一の母音字の押しで一方の子音字からなる子音を入力し、第二の母音字の押しでもう一方の子音字からなる子音を入力することと、第二の母音字のひとつは「N」と「W」の2つを兼用していることを特徴とする文字入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の「H」は、他の子音字と兼用しないで第二の母音字と兼用することと、「T」の押しの後の「H」の入力が、第一の母音字ではなく、第二の母音字ではなく、「Y」ではないキーで入力できることと、請求項1記載の「N」と「W」の2つを兼用しているキーは、第一の母音字ではなく、第二の母音字ではなく、「Y」ではないキーであることを特徴とする文字入力装置。
【請求項3】
請求項1記載の「P」は、任意の子音字の押し後でのみ入力できることと、請求項1記載の「Y」と兼用する子音字は、「M」、「R」、「W」のいずれかであることと、請求項1記載の「N」を含む第二の母音字に子音字が2つ兼用しているキーの一つは、「Y」との兼用キーではない「M」、「R」、「W」のいずれかであることを特徴とする文字入力装置。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の文字入力装置が、表示装置を持つとき、使用者の押しで入力できるひらがな、あるいはローマ字を表示装置に表示することを特徴とする文字入力装置。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の文字入力装置において、第一の母音字と第二の母音字の機能が、ユーザーの切り替え操作で任意に交換できることを特徴とする文字入力装置。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載の文字入力装置において、子音字の長押し後の第二の母音字の押しが、あるいは子音字の押し後の第二の母音字の長押しが、第一の母音字として一時的に機能することを特徴とする文字入力装置。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載の文字入力装置において、第二の母音字と兼用している子音字の長押しが、その子音字の押しを無効にし、第一の母音字として一時的に機能することを特徴とする文字入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−44726(P2010−44726A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229061(P2008−229061)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(593128655)
【Fターム(参考)】