説明

2つの超電導体の端部片を超電導的に接続する装置とその製造方法

超電導接続(10)はそれぞれ常電導材料からなるマトリックス内に埋め込まれた少なくとも1つの超電導材料からなる導体心線(13,23)を有する2つの超電導体(12、22)の端部片(12a、22a)の接触に用いられる。接続範囲ではスリーブ(6)またはブッシュ(9)内で端部片(12a、22a)の導体心線(13,23)は少なくとも部分的にマトリックス材料から剥離されて配置され、付加的に超電導接触材料(7)として二ホウ化マグネシウム(MgB2)材料が少なくとも導体心線(13,23)間の部分範囲に設けられる。接続(10)の製造のためこのように充填されたスリーブまたはブッシュ(6)の断面が縮小される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ常電導材料からなるマトリックスとその中に埋め込まれた超電導MgB2(二ホウ化マグネシウム)からなる少なくとも1つの導体心線を有する少なくとも2つの超電導体の端部片を超電導的に接続するための装置に関し、その際スリーブまたはブッシュ内の接続範囲には
端部片の導体心線が少なくとも部分的にマトリックス材料から剥離されて配置され、
付加的に超電導接触材料として少なくとも導体心線間の部分範囲にMgB2が存在する。
【背景技術】
【0002】
相応する超電導接続装置並びにこのような接続装置の製造方法は特許文献1に示されている。
【0003】
LTC(低Tc)超電導材料またはHTC(高Tc)超電導材料を使用した超電導体はとりわけいわゆる単心導体またはマルチフィラメント導体として限定された導体長で製造される。この種の導体の相応する導体構造では少なくとも1つの超電導導体心線(または少なくとも1つの超電導導体フィラメント)が常電導材料からなるマトリックスに埋め込まれる。特にたとえば磁石巻線のようなこの種の超電導体を有する超電導装置の製作にあたっては相応する導体の端部片の接触もしくは接続が必要である。
【0004】
たとえば磁気共鳴断層撮影(核スピンまたはNMR断層撮影とも呼ばれる)用の多くの超電導磁石巻線はいわゆる「永久電流モード」(英語"persistent current mode")で運転されなければならない。このため磁石巻線は短絡され、一旦作られた磁気電流は電源なしで実質的に時間制限なく流される。しかしこのためには、磁石巻線の電流により貫流される部分は電気抵抗を持たないことが必要である。このため個々の超電導導体(超電導体)間の超電導的な接続も必要である。この超電導接続はしかし磁場に対して敏感に反応する。すなわち磁場または磁気誘導が典型的には1テスラと2テスラとの間のある限界値を越えると、接続は電気抵抗を示し、従って永久電流運転を不可能にする。磁気誘導がたとえば3テスラ以上である超電導高磁場磁石ではこのことは、局所的な磁場が上述の限界値以下である箇所で接続をしなければならないので問題を生じる。極めて高い磁場ではこれはまったく不可能である。
【0005】
2つの超電導体の端部片の公知の超電導的な接続はたとえば非特許文献1に示されている。このような接続を作るため超電導体の接続すべき端部片においてそのフィラメントをたとえばエッチングにより露出させ、接触材料としての超電導性ろうにより互いに接続することが行われる。ろうとしては一般にたとえばPb27−Bi50−Sn12−Cd10(いわゆる「ウッド・メタル」)からなる鉛化合物またはPb−BiまたはPb−Bi−Sn合金をベースとする同様のろうが使用される。この種のすべてのろう材料は常圧での液体ヘリウムの温度である4.2Kの温度で最大約2テスラの上側臨界磁場BC2を有する。この臨界磁場以上の磁場ではこの種の材料はその超電導特性を失い、それ故しばしば超電導高磁場接触の形成には適さない。
【0006】
2つの超電導体の端部片用の別の接続技術は非特許文献2から伺うことができる。この文献では超電導体は点溶接または拡散ボンディングにより接触を媒介するまたは助成する中間金属なしに圧力や温度を利用して互いに直接接続もしくはプレスされる。しかしながら相応する接続の電流搬送能力は一般に導体自体のそれより小さい。その際フィラメントが大面積接触でなくむしろ点接触になるという問題が生じる。しかし磁場の強さが増せば増すほど電流搬送能力は引き続き低下するので、この種の接続も多くの超電導的高磁場接触用には適していない。
【0007】
特許文献2からは超電導体間の超電導的接触の製造方法が示されており、ここでは導体前駆物からなる導体端部片にマトリックス材料から解放された導体心線がスリーブ内の中間材料としての所定の粉末材料とともに圧力および温度処理に掛けられる。粉末材料はこの場合、この材料とともにこの処理で導体前駆物からも超電導材料が形成されるように選定される。しかしこの場合たとえば600℃以上の高い温度が必要である。公知の方法はそれ故極めて高価であり、しばしば使用できない。
【0008】
特許文献1からは2つの超電導体の端部片の超電導的接続と、接続が600℃以下でMgB2を使用して作られる製造方法が公知となっている。その際MgB2導体心線が埋め込まれているマトリックス材料を除去するエッチング工程が利用される。MgB2材料を露出する環境雰囲気で行うことのできるエッチング工程ではMgB2材料は劣化しもろくなる。この材料はエッチング工程後砕けるおそれがあり、端部片の接続を困難にしもしくは不可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許出願公開第2007/128635号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第3413167号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0556837号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol.9,No.2 1999年6月 185-187頁
【非特許文献2】Cryogenics, Vol.30(Supplement) 1990年 626-629頁
【非特許文献3】Applied Physics Letters, Vol.79 2001年 230-233頁
【非特許文献4】IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol.15,No.2 2005年6月 3211−3214頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、一方では電流搬送能力を低減することなく1テスラ以上、特に2テスラ以上の高い磁気誘導を可能にし、他方では簡単に製造可能な端部片における超電導MgB2導体間の接続もしくは接続装置を提供することにある。さらに、MgB2導体心線のエッチング工程による損傷を低減もしくは完全になくし端部片の破損を生じないまたは低減したこのような接続の簡単にして好適な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
冒頭に述べた種類の超電導接続装置に関する課題は請求項1に記載の手段により解決される。これによればMgB2導体心線は直接バリア層で被覆され常電導マトリックス材料中に埋め込まれ、その際バリア層の材料およびマトリックス材料は異なるようにされる。端部片の導体心線は少なくとも部分的にマトリックス材料を剥離され、バリア層は少なくとも導体心線の端面側の接続範囲には存在しない。超電導接触材料であるMgB2はスリーブもしくはブッシュ内において少なくとも接続範囲における導体心線間の部分範囲に存在する。
【0013】
超電導接続装置のこのような形態による利点は、特に接続装置が
MgB2導体心線の殆ど劣化しない端部片を有すること、
このため高磁場においても使用が可能となり、そして
簡単に価格上有利に製造でき、エッチング工程によるMgB2導体心線の劣化ならびに導体心線の破損がなく、その際
一般に接続すべき端部片の洗浄、研削および研磨並びにプレスだけが必要であり、多くは特別な温度処理を不要とすることができ、その際
頑丈で特にフラックスジャンプに対して安定に振舞う超電導接続装置を生じ、
さらに環境の観点から望ましくないエッチングを強制的に必要としない
ことにある。
【0014】
超電導磁石におけるこのような接続装置の使用は、たとえば磁気共鳴断層撮影における高磁場磁石に要求されるような高磁場における永久電流運転を可能にする。
【0015】
本発明による超電導接続装置の有利な実施形態は請求項1に従属する請求項に示されている。その際請求項1の実施形態は従属請求項の1つの特徴とまたは好適には多数の従属請求項の特徴と組み合わせることができる。
【0016】
これにより本発明による接続装置は付加的になお以下の特徴を有することができる。
●たとえば端部片の超電導MgB2接続範囲の比較的大面積が端部片の突出 により達成される。
●MgB2接触材料の跳躍温度である39K以下の温度での運転が行われる ので有利である。これによりスリーブまたはブッシュ内の全構造の超電導 特性が保証される。
●特に約4.2Kの液体ヘリウム温度を運転温度にすることができるので、 超電導技術の公知の装置の使用が可能となる。
●その際マトリックス材料は銅またはニッケルからなることができ、または これらの材料もしくはこれらの材料の化合物を含むことができる。銅およ びニッケルは特に簡単にエッチングなしに錫浴で除去できる。
●バリア材料は鋼または特殊鋼からなるかまたはこれらを含むことができる 。これによりマトリックス材料の除去の際にMgB2からなる導体心線が ほぼ攻撃を受けることなく劣化もしない。鋼特に特殊鋼は錫浴に耐性があ り溶解しない。
●特に有利なのは超電導接続が特に磁気共鳴断層撮影用の設備における磁石 の超電導磁石巻線に組み込むことができることである。なぜなら特に高磁 場用の磁石構造は磁場中における高い電流搬送能力を有する超電導接続を 必要とするからである。MgB2からなる導体心線が損傷を受けず劣化し ないMgB2接触材料は相応する用途を保証する。
●このような特性により超電導接続は特に永久電流運転用に設計された超電 導磁石巻線に適している。
【0017】
方法に関する課題は請求項10に記載された手段により解決される。これによれば請求対象の超電導接続装置に関しては
接続すべき端部片において超電導導体心線がそれぞれ少なくとも部分的にそのマトリックス材料から剥離され、
剥離工程において被覆されているバリア材料は除去されず、
接続すべき端部片の端面側における接続範囲において導体心線のMgB2材料が少なくとも部分的に露出されるか、または
剥離された導体心線がスリーブまたはブッシュ内に挿入され、
スリーブまたはブッシュ内に付加的にMgB2接触材料が挿入され、
および
このようにして充填されたスリーブまたはブッシュの断面が縮小されることが行われる。
【0018】
この方法は特にその簡易性において優れている。なぜなら有利なことに断面縮小だけで多くの場合、高磁場条件下での使用も可能にする所望の接続を作るのに十分であるからである。
【0019】
特にバリア層はこの際導体心線のマトリックス材料からの剥離に際して、バリア材料により取り囲まれている導体心線のMgB2材料が攻撃を受けず従って劣化しないことを保証する。剥離工程後に導体心線のMgB2材料は少なくとも接続すべき端部片の端面側において少なくとも部分的に露出され、または予め既に露出されたMgB2材料が剥離工程から遮蔽される。スリーブまたはブッシュ内に挿入されたMgB2接触材料により特にスリーブまたはブッシュの断面縮小に際して特に良好な超電導的な電気的接触が生じる。
【0020】
超電導接続装置の製造方法の有利な実施形態は請求項10の従属請求項に示されている。その際請求項10の実施形態はその従属項の1つの特徴または有利には複数の請求項の特徴と組み合わせることができる。これによればこの方法は付加的になお以下の特徴を有することができる。
●超電導MgB2およびバリア材料を備えた端部片はスリーブまたはブッシ ュへの挿入前に突出され、露出されたMgB2接続範囲の面積が拡大され る。面積の拡大によりより高い電流搬送能力を有する良好な接触が生じる 。
●接続範囲は少なくとも部分的に研削および/または研磨される。これ により簡単に接続範囲の面積が拡大され、場合によっては導体心線の端部 における損傷したMgB2範囲が除去される。
●マトリックス材料は錫浴で除去されるが、導体心線のバリア材料の被覆は そのまま残る。これによりエッチング工程を節約でき、バリア材料は引き 続き導体心線のMgB2材料を保護する。
●MgB2接触材料は粉末状態でスリーブまたはブッシュ内に挿入される。 これにより超電導部分と接触材料との間の強力な接触を伴うコンパクトな 構造が得られる。
●充填されたスリーブまたはブッシュは断面縮小工程後または工程中に熱処 理に掛けられる。従って特に高磁場における電流搬送能力に関して種々の 材料からなる接続構造がさらに改良される。
●このため熱処理は600℃以下、好適には250℃以下で実施される。比 較的低い温度での熱処理はまさに簡単な手段で実現可能である。
●熱処理はアルゴン雰囲気中で実施される。これによりMgB2材料への酸 素及び水の侵入は妨げられる。このような侵入は材料の劣化と超電導接触 の劣化を招くものである。この方法は真空中よりもアルゴン中でより簡単 に実施できる。なぜなら熱処理用炉への酸素および水素の侵入が容易にも しくは少ない経費で妨げられるからである。
【0021】
本発明をさらに説明するために以下に図面を参照して本発明による超電導接続装置の有利な実施例を詳述する。その際各図における対応部分には同じ符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は従来技術による公知のマルチフィラメント超電導体の横断面図である。
【図2】図2は本発明による接続装置に使用されるマルチフィラメント超電導体の第1の実施例の縦断面図である。
【図3】図3はマルチフィラメント超電導体の第2の実施例の縦断面図である。
【図4】図4はマルチフィラメント超電導体を用いた本発明の接続装置の第1の実施例の構造の一部断面図である。
【図5】図5は図4に示した接続装置の別の実施例の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示した超電導体は公知の実施形態をもとにしている。これはいわゆる単心(モノコア)超電導体または図に示すようにいわゆるマルチフィラメント超電導体とすることができる。この超電導体2は常電導材料からなるマトリックス4中に埋め込まれた多数の超電導導体心線またはフィラメント3iを有している。導体心線3iはMgB2HTC超電導体材料からなる。マトリックス用に知られている材料は元素(たとえばCu,Ni,Ag,Fe,Wo,Alなど)または特にこれらの元素の合金(たとえばCuNi,AgMg,CuSn,CuZnまたはNiCrなど)である。
【0024】
図2には本発明による接続装置に使用される超電導体2が縦断断面図で示されている。超電導体2は図1の超電導体2と同様に形成されるか、または導体心線3iとして上下に積層された帯導体から形成される。図1に示した超電導体2とは異なり図2に示した超電導体2の超電導導体心線3iはバリア材料5で被覆されている。バリア材料5はたとえば鋼または特殊鋼からなることができる。しかしニオブNbのようなほかの安定した金属もバリア材料5として使用可能である。
【0025】
導体心線3iはその端面側の端部が好適には突出している。突出端部は端面側の接続範囲8を形成する。接続範囲8は研削および/または研磨される。これにより導体心線3iのMgB2材料は、たとえばマトリックス材料4の除去により損傷を受けたものが切除されるか露出される。バリア材料5によりマトリックス材料4の除去中およびその後の導体心線のMgB2材料の損傷および破損が避けられる。このように露出され研削および/または研磨された接続範囲8は本発明の接続装置において極めて良好な超電導接触を形成する。
【0026】
場合によってはマトリックス材料4に関する剥離工程の前に既に少なくとも導体心線3iの端面を露出することも可能である。しかしこの場合には導体心線の露出部分は剥離工程時に特別な処置で剥離材またはエッチング材から保護されなければならない。
【0027】
導体心線3iは超電導体2内で図2に示すように個々の導体心線3i間にマトリックス材料4を設けて分離して配置することができるし、または図3に示すようにまとめて1つのブロックとして形成することもできる。導体心線3iのブロック形成は導体心線3iの端部の研削および/または研磨を容易化する。
【0028】
図4は、図2または図3に示した超電導体2に相応する超電導体2の少なくとも2つの端部片を示し、これらは本発明による接続装置で互いに抵抗を少なく接触化されている。接触の前に超電導体2の端部片の範囲では少なくとも1つの超電導導体心線3iが少なくとも部分的に露出、即ちマトリックス材料からこのための公知の技術たとえば化学的エッチング、機械的切除、特に斜め研削などにより少なくとも部分的に剥離されなければならない。
【0029】
この場合導体心線3iはバリア材料5により保護される。MgB2材料の破損はバリア材料5により妨げられる。特に有利なのは、マトリックス材料4が錫に溶解する場合に錫浴での導体心線3iの端部の洗浄である。この例はたとえばマトリックス材料4が銅からなる場合である。錫浴によるマトリックス材料4の除去はエッチング工程を省略する。バリア材料5として鋼または特殊鋼を使用する場合には錫浴におけるバリア材料5の溶解が避けられ、バリア材料5は錫での洗浄の際にMgB2材料を保護する。導体心線3iは従って損傷を被らない。
【0030】
研削および/または研磨による導体心線3iの切除時に導体心線3iの端面側の端部に接続範囲が作られる。接続範囲ではバリア材料5が除去され、無傷のMgB2材料が導体心線3iの接触のために残る。
【0031】
図4には2つの超電導体12,22が示されており、これらの端部が本発明による接続装置で超電導的に接触させられる。その際12a,22aでそれらの端部片が示され、相応する完全に露出された導体心線は13,23で示されている。導体心線はブッシュ6またはスリーブ(図5参照)中にたとえば粉末形状のMgB2接触材料7とともに挿入される。ブッシュまたはスリーブとはここでは一般的に、導体心線13,23および接触材料7を公知の仕方で収容する少なくとも部分的に被覆された任意の部材と理解すべきであり、これを介してこの中に挿入された部分の圧縮もしくは断面縮小が行われる。
【0032】
本発明により接触材料として利用される二ホウ化マグネシウム(MgB2)は臨界温度が約Tc=39K(常圧で)で上側臨界磁場Bc2(4.2Kで)が40テスラ以上の超電導材料である。したがってこれはたとえば特に磁気共鳴断層撮影の高磁場磁石に生じるような高い磁場での使用にも適している。それ故有利なことに本発明による接続はMgB2接触材料の使用のもとに温度が39K以下、たとえば4.2Kで運転され、その際たとえば液体ヘリウムのような公知の冷却手段が用いられる。適当なプレスまたは圧延により温度処理もしくは焼きなましがなくても超電導電流を搬送する状態にある(非特許文献3参照)。その比較的高い臨界温度のためこの材料はたとえばフラックスジャンプまたは導体の動きまたはいわゆるクエンチに導くような不所望な運転温度の上昇などの障害にも特に強い。
【0033】
露出された導体心線13,23並びに粉末状のMgB2接触材料7で充たされるブッシュ6は好適には良好に変形可能な金属材料からなる。これに適した材料はたとえばCu,Ni,Ag,NbまたはFeなどの元素材料並びにたとえば鋼、NbTi,NiCrまたはCuZnなどの合金である。ブッシュ6には特に導体心線13,23が互いに直接接していない範囲において導体心線間の中間室が図では簡略化のため若干しか示されていないMgB2粉末粒子7で充填される。導体心線間の所望の接触形成は次いでプレスまたは圧延などの少なくとも接続すべき導体端部片の断面縮小加工により行われる。場合によってはこの接触処置は好適には250℃以下の比較的低温度の焼きなましによりさらに改良される。自明のように場合によっては600℃以上の高い焼きなまし温度も適用可能である(非特許文献4参照)。このようにして得られた接続は図では符号10が付けられている。
【0034】
図5に20で示した超電導接続の別の実施態様は図4に示した超電導接続10とは、両超電導導体12,22がここでは、その端部12a,22aの範囲で露出された導体心線13,23がスリーブ9中にMgB2粉末粒子7とともにそれぞれ反対方向に挿入されそこでプレスされることにより接触させられる点で異なっている。
【0035】
図4,5に概略的に示した超電導接続もしくは接続装置10,20の実施形態では超電導体12,22の端部片12a、22aでそれぞれマトリックス4の材料が除去されることが前提になっていた。しかし場合によっては導体の端部片の一部、たとえば半分の断面をマトリックス材料4から機械的または化学的手段により露出し、残りの構造表面に幾つかの導体心線を露出させることも可能である(たとえば特許文献3参照)。このように露出された2つの導体端部の表面は次いでMgB2接触材料の接合のもとに上述のように順次接合および互いに接続される。
【0036】
さらに図4,5の実施形態においてはそれぞれ2つの超電導体12,13がそれらの端部片12a,13aで互いに接続されている。自明のようにブッシュ6またはスリーブ9にそれ以上の数、たとえば3つの超電導体を挿入しそこで互いに接続することもできる。
【0037】
以上の説明では接触材料7としてMgB2を前提とした。しかしまたたとえばMgおよびBr前駆材料などのMgB2の出発材料も使用することができる。焼きなましにより公知のように前駆材料を使用して超電導相が形成される。
【符号の説明】
【0038】
2 超電導体
4 マトリックス材料
5 バリア層
6 ブッシュ
7 接触材料
8 接続範囲
9 スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ常電導材料からなるマトリックス(4)とその中に埋め込まれた超電導MgB2(二ホウ化マグネシウム)からなる少なくとも1つの導体心線(3i)を有する少なくとも2つの超電導体(2)の端部片を超電導的に接続するための装置であって、スリーブ(6)またはブッシュ(9)内の接続範囲(8)に
端部片の導体心線(3i)が少なくとも部分的にマトリックス材料(4)を剥離されて配置され、
付加的に超電導接触材料(7)として少なくとも導体心線(3i)間の部分範囲にMgB2が存在する
装置において、
導体心線(3i)がそれぞれマトリックス材料(4)とは異なるバリア材料(5)からなるバリア層によって直接被覆され、および
少なくとも端面側の接続範囲(8)が導体心線(3i)を取り囲むバリア材料(5)から露出される
ことを特徴とする超電導接続装置。
【請求項2】
超電導MgB2およびバリア材料を備えた端部片が突出させられていることを特徴とする請求項1記載の超電導接続装置。
【請求項3】
MgB2接触材料(7)の39Kの跳躍温度以下の温度での運転を特徴とする請求項1または2記載の超電導接続装置。
【請求項4】
約4.2Kの液体ヘリウム温度での運転温度を特徴とする請求項3記載の超電導接続装置。
【請求項5】
マトリックス材料(4)が銅またはニッケルからなり、またはマトリックス材料(4)が銅またはニッケルを含みおよび/またはスリーブ(6)またはブッシュ(9)が気密および/または水密に封止されていることを特徴とする請求項1から4の1つに記載の超電導接続装置。
【請求項6】
バリア材料(5)が鋼または特殊鋼からなり、または鋼または特殊鋼を含むことを特徴とする請求項1から5の1つに記載の超電導接続装置。
【請求項7】
磁石の超電導磁石巻線に組み込まれることを特徴とする請求項1から6の1つに記載の超電導接続装置。
【請求項8】
磁気共鳴断層撮影設備の磁石の超電導磁石巻線に組み込まれることを特徴とする請求項7記載の超電導接続装置。
【請求項9】
永久電流運転用に設計された超電導磁石巻線に組み込まれることを特徴とする請求項7または8記載の超電導接続装置。
【請求項10】
請求項1から9の1つに記載の超電導接続装置の製造方法において、
接続すべき端部片において超電導導体心線(3i)がそれぞれ少なくとも部分的にそのマトリックス材料(4)から剥離され、
剥離工程において被覆されているバリア層(5)が除去されずにおかれ、
少なくとも接続すべき端部片の端面側における接続範囲(8)において導体心線(3i)のMgB2材料が少なくとも部分的に露出され、または
剥離された導体心線(3i)がスリーブ(6)またはブッシュ(9)内に挿入され、
スリーブ(6)またはブッシュ(9)内に付加的にMgB2接触材料(7)またはその出発材料が挿入され、
および
このようにして充填されたスリーブ(6)またはブッシュ(9)の断面が縮小される
ことを特徴とする超電導接続装置の製造方法。
【請求項11】
超電導MgB2およびバリア材料(5)を備えた端部片がスリーブ(6)またはブッシュ(9)への挿入前に突出させられ、露出されたMgB2接続範囲(8)の面積が拡大させられることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
接続範囲(8)が少なくとも部分的に研削および/または研磨されることを特徴とする請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
マトリックス材料(4)が錫浴で除去され、導体心線(3i)がバリア材料で被覆されたままであることを特徴とする請求項10から13の1つに記載の方法。
【請求項14】
MgB2接触材料(7)またはその出発材料がスリーブ(6)またはブッシュ(9)内に粉末の形で挿入され、場合により熱処理に掛けられることを特徴とする請求項10から13の1つに記載の方法。
【請求項15】
充填されたスリーブ(6)またはブッシュ(9)が断面縮小後または縮小中に特に600℃以下、好適には250℃の温度で熱処理に掛けられ、特に熱処理がアルゴン雰囲気中で実施され、特にスリーブ(6)またはブッシュ(9)が気密および/または水密に封止されることを特徴とする請求項10から14の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−528428(P2012−528428A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512276(P2012−512276)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055031
【国際公開番号】WO2010/136263
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】