説明

2ピースホイールのメッキ除去装置

【課題】 リム内周面の溶接予定箇所のメッキを容易に且つ綺麗に除去可能となし、煩雑な作業を要することなく、メッキ処理したリムを有する2ピースホイールを実現な可能な2ピースホイールのメッキ除去装置を提供する。
【解決手段】 リム2とディスクとからなる2ピースホイールにおけるリム内周面の溶接予定箇所RWのメッキを除去するメッキ除去装置であって、水平配置した1対の支持ローラ13と、リム2を支持ローラ13の軸方向に位置決めするための位置決め部材15と、支持ローラ13との間にリム2を保持する1対の保持ローラ19と、保持したリム2を回転駆動する回転駆動手段と、リム2の内側へ延びてリム2におけるディスクとの溶接予定箇所RWを研磨して、該溶接予定箇所RWのメッキを除去する研磨手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リムとディスクとからなる2ピースホイールにおけるリム内周面の溶接予定箇所のメッキを除去する2ピースホイールのメッキ除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウム合金などの軽合金からなる車両用ホイールとして、鋳造により一体成形した1ピースホイールと、リムとディスクの2つに分割構成した2ピースホイールと、インナリムとアウタリムとディスクの3つに分割構成した3ピースホイールとが広く実施されている。また、これらのホイールに対してクロムメッキなどのメッキ処理を施してその意匠性を高めたものも広く実用化されている(特許文献1参照。)。
【0003】
通常、2ピースホイールにおいては、次のような理由から、ディスクのみにメッキ処理を施し、リムにはメッキ処理を施さないように構成することが一般的である。
【0004】
つまり、2ピースホイールでは、焼嵌めによりリムの内側にディスクを嵌合固定した状態で、リムの内周面とディスクの外周面とを溶接して両者を一体化しているが、リムとディスクにメッキ処理を施す場合には、リムに対するディスクの溶接不良を防止するため、両者の溶接予定箇所のメッキ層を除去した状態で、両者を溶接する必要がある。しかし、ディスクの溶接予定箇所のメッキ層は、外面側に露出しているので、携帯用グラインダ等を用いた手作業でも比較的容易に除去できるが、リムの溶接予定箇所のメッキ層は、リム内周面に形成され、しかもディスクをリムの軸方向の適正位置に固定する必要があることから、携帯用グラインダなどによる手作業では精度良く除去することができないという問題がある。
【0005】
また、携帯用グラインダなどによるメッキ除去処理に代えて、リムに対してメッキ処理を施すときに、溶接予定箇所に対してマスキングテープを貼り付けて、溶接予定箇所にメッキ層が形成されないように構成することも可能である。しかし、この場合には、マスキングテープを適正位置に貼り付けるためには、予め罫書き線等の目印をリムの内周面に形成し、目印に沿ってマスキングテープを貼り付ける必要があり、その作業が大変煩雑なものとなる。また、メッキ処理は、特殊な技術であり、一般にホイールメーカでは行われず、メッキ処理の専門メーカにて行われていることから、マスキングテープの貼り付け作業分だけメッキ処理の工賃が高くなり、ホイールの製造コストが高くなるという問題もある。しかも、リム内周面には微細な凹凸が形成されているので、綺麗にマスキングテープを貼り付けた場合でも、リムをメッキ液に浸漬したときに、マスキングとリム間にメッキ液が侵入して、溶接予定箇所の一部がメッキされてしまうことがある。更に、図10に示すように、リム100の溶接予定箇所における地肌部101との境界部103においてメッキ部分102にマスキングテープの側縁に沿った隆起部104が形成され、地肌部101とメッキ部分102の境界部103に段差ができ、物理的な衝撃でメッキが剥離し易くなったり、マスキングテープとリム間に侵入したメッキ液により不完全なメッキ部分105、例えばクロムメッキの場合には、下地層としての銅のメッキ層が形成され、該部分105からメッキ部分102が剥離し易くなったりするという問題も懸念される。
【0006】
更に、携帯用グラインダなどによるメッキ除去処理に代えて、メッキ処理した後に、溶接予定箇所のメッキを切削による機械加工で除去する方法も考えられる。しかし、この場合には、1回の切削処理でメッキ部分を切削すると、刃物をメッキ部分から離脱させるときに、メッキ部分にそれを剥離する方向への力が作用して地肌部分との境界部からメッキ部分が剥離し易くなるという問題がある。また、これを防止するため、溶接予定箇所の両側縁から刃物を差し入れて、溶接予定箇所の幅方向の途中部で刃物を離脱させることも考えられるが、2回の切削処理が必要となり、作業が大変煩雑になるという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−236681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のような理由から、リムにメッキ処理を施した2ピースホイールは、特注品として製作することは可能であるが、普及品としては実施されていないのが実状である。しかし、2ピースホイールにおいても、ホイールの意匠性を向上させるため、特にディスクに対してメッキ処理を施す場合には、メッキ処理したリムの使用が強く要望されている。
【0009】
本発明の目的は、リム内周面の溶接予定箇所のメッキを容易に且つ綺麗に除去可能となし、煩雑な作業を要することなく、メッキ処理したリムを有する2ピースホイールを実現な2ピースホイールのメッキ除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る2ピースホイールのメッキ除去装置は、リムとディスクとからなる2ピースホイールにおけるリム内周面の溶接予定箇所のメッキを除去するメッキ除去装置であって、前記リムの外径よりも小さい間隔をあけて軸心を平行にして水平配置した1対の支持ローラと、前記支持ローラ上に軸心を略水平にして支持したリムを支持ローラの軸方向に位置決めするための位置決め部材と、前記支持ローラ上に位置決め支持したリムを上側から押圧して、支持ローラとの間にリムを保持する1対の保持ローラと、前記支持ローラと保持ローラ間に保持したリムを回転駆動する回転駆動手段と、前記リムの内側へ延びてリムにおけるディスクとの溶接予定箇所を研磨して、該溶接予定箇所のメッキを除去する研磨手段とを備えたものである。
【0011】
このメッキ除去装置を用いてリムの溶接予定箇所のメッキを除去する際には、リムの軸心が支持ローラの軸心と略平行になるように、支持ローラ上にリムを載置し、保持ローラで上側からリムを押圧して、両ローラ間にリムを保持し、回転駆動手段でリムを例えば5〜100rpmの低速で回転させながら、研磨手段で溶接予定箇所を研磨して、溶接予定箇所のメッキを除去することになる。
【0012】
前記研磨手段によりリム内周面の底部を研磨することができる。この場合には、サイズの異なるリムのメッキ部分を除去する場合でも、リム内周面の研磨する位置が略同じ高さ位置となるので、研磨手段の高さやリムの高さを調整することなく、リムの溶接予定箇所を連続的に研磨処理することができる。
【0013】
前記研磨手段として、支持ローラの軸心と略平行な軸心回りに回転自在に支持した駆動プーリと、軸心を略鉛直にして配置した遊動プーリと、案内ロールにより途中部の向きを変えて両プーリ間に張設した研磨ベルトと、遊動プーリを回転駆動する研磨用駆動手段と、駆動プーリに張設した研磨ベルトをリムの溶接予定箇所に押し当てる押圧手段とを備えたものを採用できる。研磨手段では、リムの内周面を研磨する必要があるので、研磨ディスク等の研磨具を用いる場合には、小型なものを採用する必要があり、研磨ディスクを頻繁に交換する必要があるが、この発明では、研磨ベルトにより溶接予定箇所を研磨するので、リム内に挿入する駆動プーリを小型に構成しつつ、研磨具としての研磨ベルトの耐久性を高めることができる。また、研磨時にリム内周面に圧接された研磨ベルトの側縁部が撓むことにより、メッキを除去した溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に形成することが可能となる。
【0014】
前記押圧手段として、両プーリを支持する支持部材を設け、駆動プーリ側が上下移動するように、この支持部材を回動自在に支持する支軸を設けるとともに、支軸回りに支持部材を傾動させる傾動手段を設けたものを採用できる。この発明では、傾動手段により支軸を中心に支持部材を傾動させて、研磨ベルトをリムから離間させた状態で、支持ローラに対するリムのセッティング及び支持ローラ外へリムの移動を行い、研磨ベルトをリムの溶接予定箇所に圧接させながら、溶接予定箇所におけるメッキの研磨を実施することになる。
【0015】
前記研磨手段による研磨位置をリムの軸方向に位置調整可能な位置調整手段を設けたものを用いたことができる。この場合には、研磨する溶接予定箇所を軸方向に任意に調整することができる。このため、例えばメッキ処理を施したリムを予め製作しておき、ユーザの要望に応じてリムの軸方向に対するディスクの溶接位置を調整することができる。
【0016】
前記支持ローラ間にリムに対してバルブ取付孔を形成するためのドリルを設け、このドリルを昇降する昇降手段を設けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る2ピースホイールのメッキ除去装置によれば、研磨により溶接予定箇所のメッキを除去するので、溶接予定箇所のメッキを綺麗に除去することが可能となり、リムに対するディスクの溶接不良を確実に防止できる。また、マスキングや切削による場合と比較して、メッキを除去した溶接予定箇所とメッキ部分との境界部における段差が角張ったものとなることを防止でき、境界部からのメッキの剥離を効果的に防止できる。特にリム内周面のうちの内側へ緩やかに突出した部分を溶接予定箇所に設定すると、メッキを除去した溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に形成することが可能となり、境界部におけるメッキの剥離を効果的に防止できる。更に、マスキングテープの貼り付け作業も不要となるので、メッキ処理の工賃を安くして、ホイールの製造コストを低減できる。このように、リムに対してメッキ処理を施した場合でも、リム内周面の溶接予定箇所のメッキを複雑な作業を要することなく容易に且つ綺麗に除去できるので、メッキ処理したリムを有する2ピースホイールを安価に実現することが可能となる。
【0018】
前記研磨手段によりリム内周面の底部を研磨するように構成すると、サイズの異なるリムのメッキ部分を除去する場合でも、研磨手段により研磨するリム内周面の高さが略同じ高さとなり、研磨手段とリムとの高さ関係を調整する必要がないので、メッキ除去の作業性を格段に向上できる。
【0019】
前記研磨手段として、駆動プーリと遊動プーリと研磨ベルトと研磨用駆動手段と押圧手段とを備えたものを採用すると、リム内に挿入する駆動プーリを小型に構成しつつ、研磨具としての研磨ベルトの耐久性を高めることが可能となり、研磨作業を効率的に行うことができる。また、研磨時にリム内周面に圧接された研磨ベルトの側縁部が撓むことにより、メッキを除去した溶接予定箇所とメッキ部分とを段差なく滑らかな面に形成することが可能となり、境界部におけるメッキの剥離を効果的に防止できる。
【0020】
前記押圧手段として、支持部材と支軸と傾動手段とを設けると、簡単な機構で、研磨ベルトをリムの適所に圧接させた状態と、研磨ベルトをリムから離間させた状態とに研磨ベルトの位置を切り替えることができる。
【0021】
前記研磨手段による研磨位置をリムの軸方向に位置調整可能な位置調整手段を設けると、研磨する溶接予定箇所を軸方向に任意に変更することができる。このため、予めメッキ処理を施したリムを製作しておき、ユーザの要望に応じてリムの軸方向に対するディスクの溶接位置を調整できる。
【0022】
前記支持ローラ間にリムに対してバルブ取付孔を形成するためのドリルを設け、このドリルを昇降する昇降手段を設けると、溶接予定箇所におけるメッキの除去作業と、リムに対するバルブ取付孔の形成作業とを一台の装置で行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
先ず、2ピースホイール1について説明する。
図1に示すように、2ピースホイール1は、略筒状のリム2と、リム2の内側に配置され、外端部をリム2の内周面に溶接固定したディスク3とを備えている。
【0024】
ディスク3は、アルミニウム合金等の軽量な金属材料を用いて、鋳造やプレス成形や鍛造等により一体成形したもので、全面にクロムメッキなどのメッキ処理を施したものである。メッキ処理は、メッキ液にリム2を浸漬する周知の方法で行われ、ディスク3のリム2に対する溶接予定箇所DWのメッキはマスキングや研磨により除去されている。
【0025】
ディスク3は、車輪支持部材(図示略)への取付部4と、取付部4を取り囲むように設けた環状のリング部5と、取付部4とリング部5とを連結するスポーク部6とを備えている。
【0026】
リム2は、アルミニウム合金などの延伸性に優れた金属材料で構成され、全面にクロムメッキなどのメッキ処理を施したものである。メッキ処理は、メッキ液にリム2を浸漬する周知の方法で行われ、このリム2におけるディスク3との溶接予定箇所RWのメッキは、後述するメッキ除去装置により研磨により除去されている。
【0027】
リム2のデザイン面側の端部及び取付面側の端部には肉厚を増加させて他の部分より厚肉に構成したフランジ部7が形成されている。このように、フランジ部7を肉厚の増加により厚肉に構成しているので、リム2をメッキ処理するときに、フランジ部7内にメッキ液等が残留することを確実に防止して、メッキ液が残留することによるフランジ部7の腐食を防止できる。また、フランジ部7を厚肉に構成しているので、旋回時等におけるホイール1の強度剛性を十分に確保できる。
【0028】
ホイール1を組み立てる際には、加熱したリム2の軸方向の設定位置にディスク3を嵌合させてリム2を冷却し、焼き嵌めによりリム2にディスク3を固定した状態で、両者の溶接予定箇所RW、DWを溶接して組み立てることになる。
【0029】
次に、リム2内周面の溶接予定箇所RWのメッキを除去するメッキ除去装置10について説明する。
図1〜図3に示すように、メッキ除去装置10は、軸心を略水平にしてリム2を低速回転させる回転手段11と、リム2の内側へ延びてリム2におけるディスク3との溶接予定箇所RW(図8(c)参照)を研磨して、該溶接予定箇所RWのメッキを除去する研磨手段20と、リム2に対してバルブ取付孔8を形成するドリル手段50とを備えている。但し、ドリル手段50は省略することも可能である。
【0030】
回転手段11について説明すると、図2〜図4に示すように、下部フレーム12の上側にはリム2の外径よりも小さい間隔をあけて軸心を左右方向に向けて水平配置した前後1対の支持ローラ13が設けられ、支持ローラ13の後方には後側の支持ローラ13を回転駆動する電動モータ14aを主体としたてなる回転駆動手段14が設けられ、支持ローラ13の右端部には支持ローラ13よりも大径の略円板状の位置決め部材15が設けられている。リム2は、両支持ローラ13上に軸心を左右方向に向けて載置され、その右端部を位置決め部材15に当接させることで軸方向に位置決めされることになる。
【0031】
下部フレーム12の後部には上方へ延びる鉛直フレーム16が設けられ、鉛直フレーム16の上端部には前方へ延びる支持フレーム17が設けられている。支持フレーム17には前後1対のエアシリンダなどからなるアクチュエータ18が、支持ローラ13の上方位置の前後両側においてその出力部18aをリム2の中心位置側へ向けて斜めに設けられ、出力部18aの先端部には軸心を左右方向に向けた保持ローラ19が回転自在に取り付けられている。保持ローラ19は図3に仮想線で示す退避位置と実線で示す保持位置とにリム2の中心側へ向けて移動可能の設けられ、支持ローラ13上に位置決め支持したリム2は、アクチュエータ18により保持ローラ19を下側へ突出させることで、支持ローラ13と保持ローラ19間に保持され、この状態で回転駆動手段14により支持ローラ13を回転駆動することで、一方向に低速回転する。
【0032】
研磨手段20は、図2、図4〜図6に示すように、左右方向の軸心回りに回転自在に設けた駆動プーリ21と、上下方向の軸心回りに回転自在に設けた遊動プーリ22と、駆動プーリ21の上側に配置した案内ローラ23と、案内ローラ23により途中部において向きを変えて両プーリ21、22間に張設した研磨ベルト24と、遊動プーリ22を回転駆動する研磨用駆動手段25と、駆動プーリ21に張設した研磨ベルト24をリム2の溶接予定箇所RWに押し当てる押圧手段26とを備えている。この研磨手段20は、次のような構成の位置調整手段30により研磨位置をリム2の軸方向に位置調整可能に支持されている。
【0033】
位置調整手段30について説明すると、図2、図4〜図6に示すように、下部フレーム12の下部には右方へ延びる載置フレーム31が設けられ、載置フレーム31には左右方向に延びるガイドレール32が前後1対設けられ、ガイドレール32には移動台33が左右方向に移動自在に支持されている。移動台33を左右方向に位置調整するため、載置フレーム31には左右方向に延びるスクリュー軸34が設けられ、スクリュー軸34の途中部には移動台33に固定された雌ネジ部材35が設けられ、移動台33の右端部にはスクリュー軸34を回転駆動するための電動モータ34aを主体とした駆動手段34bが設けられ、移動台33は駆動手段34bにより図2に図示の前進位置と図4に図示の後退位置とにわたって左右方向に移動できるように構成されている。
【0034】
研磨手段20について説明すると、移動台33には上方へ延びる前後1対の支柱36が立設固定され、支柱36の上端部間には支持板36aが架設状に固定され、支持板36aには前後1対のブラケット部材36bが固定されている。両ブラケット部材36bには略筒状の支持部材37が前後方向の支軸38を中心に回転自在に支持され、支持部材37の右部の前後両側には左右方向に延びるガイドロッド43が固定されている。両ガイドロッド43間には支持板44が左右方向に移動自在に設けら、支持板44には遊動プーリ22が略鉛直軸心回りに回転自在に設けられ、遊動プーリ22はガイドロッド43に外装したバネ部材45により支持板44とともに常時右側へ付勢されている。支持部材37には支持板44を左方へ操作するエアシリンダからなるアクチュエータ46が設けられ、バネ部材45の付勢力に抗して支持板44及び遊動プーリ22を左側へ操作できるように構成されている。支持部材37にはその略中央部を貫通して左右方向に延びる回転軸39が回転自在に設けられ、支持部材37から左方へ延びる回転軸39の左端部には駆動プーリ21が設けられている。回転軸39の上側には支持部材37から左方へ片持ち状延びる支持ロッド40が設けられ、支持ロッド40の左端部には前後1対の案内ローラ23が設けられ、両プーリ21、22間には案内ローラ23により途中部において向きが変えた状態で研磨ベルト24が張設されている。支持部材37の右部の下側には電動モータ25aを主体とした研磨用駆動手段25が設けられ、この研磨用駆動手段25により回転軸39を回転駆動することで、研磨ベルト24が周回するように構成されている。研磨ベルト24にはバネ部材45により適度な張力が作用し、この状態で駆動プーリ21の下側の研磨ベルト24で効率的に研磨できるように構成され、またベルト交換時にはアクチュエータ46により駆動プーリ21を左側へ操作することで、研磨ベルト24を容易に交換できるように構成されている。
【0035】
押圧手段26について説明すると、支持部材37の左端部と移動台33間には支持部材37を支軸38周りに傾動させるためのエアシリンダなどからなるアクチュエータ41が設けられ、移動台33と電動モータ25a間にはクッション用の圧縮コイルバネ42が設けられている。支持部材37はアクチュエータ41により図5、図6に実線で図示の研磨位置と、仮想線で図示の退避位置とに傾動可能に支持され、研磨位置においてリム2内周面の底部における溶接予定箇所RWに研磨ベルト24が圧接されるように構成されている。
【0036】
溶接予定箇所に対する研磨ベルト24の周速度は150〜600m/minに設定され、リム2に対する圧接力は0.5kN〜1.5kNに設定され、リム2の回転速度は5〜100rpmに設定され、リム2を1回転させる間に溶接予定箇所を研磨処理できるように構成されている。但し、リム2を複数回回転させた状態で、研磨処理が完了するように構成することも可能である。研磨ベルト24の幅は、1回の研磨処理により溶接予定箇所RWのメッキを研磨できるように、溶接予定箇所RWと同じ幅あるいはやや大きな幅に設定されている。但し、軸方向に複数回に分けて研磨することも可能である。
【0037】
ドリル手段50について説明すると、支持ローラ13間の下側の支持枠51上には左右方向に延びるガイドレール52が設けられ、ガイドレール52にはドリル支持台53が左右方向に移動自在に設けられている。ドリル支持台53は電動モータ54aを主体とした駆動手段54により、ガイドレール52に沿って位置調整可能に支持され、リム2の軸方向に対するバルブ取付孔8の形成位置を調整できるように構成されている。ドリル支持台53には電動モータ55aを主体としたドリル駆動手段55が図示外の昇降手段により上下移動自在に設けられ、ドリル駆動手段55の上端部にはチャック56を介してドリル57が着脱自在に設けられ、ドリル57は昇降手段により、リム2の底部の上側へ突出してバルブ取付孔8を形成する図3に仮想線で図示の上昇位置と、リム2よりも下側へ移動した図3に実線で図示の下降位置とに上下移動自在に支持されている。
【0038】
次に、メッキ除去装置10の作動について説明する。
先ず、図4に示すように、位置調整手段30により研磨手段20を後退位置に移動させ、ドリル57を下降位置へ移動させた状態で、図4、図7(a)に示すように、軸心を左右方向に向けて支持ローラ13上にリム2を載置し、リム2の端部を位置決め部材15に当接させて、リム2を左右方向に位置決めセットする。
【0039】
次に、図3、図7(b)に示すように、アクチュエータ18により保持ローラ19を下側へ突出させて、支持ローラ13と保持ローラ19間にリム2を保持する。
【0040】
次に、支持部材37をアクチュエータ41により、図7(c)、図5に仮想線で図示の退避位置に傾動させた状態で、図8(a)に示すように、位置調整手段30により研磨手段20を前進位置まで移動させる。
【0041】
次に、回転駆動手段14により支持ローラ13を回転させて、リム2を例えば10rpmの回転速度で低速回転させるとともに、電動モータ25aにより研磨ベルト24を周回させてから、図8(b)、図5に実線で図示のように、アクチュエータ41により支持部材37を研磨位置に傾動させて、駆動プーリ21に掛けられた研磨ベルト24を、低速回転するリム2内周面における底部の溶接予定箇所RWに圧接させ、低速回転するリム2の溶接予定箇所RWを順次研磨して、溶接予定箇所RWにおけるメッキを順次除去することになる。
【0042】
こうして、リム2を1回転させて溶接予定箇所RWのメッキを全周にわたって除去した後、支持部材37をアクチュエータ41により図5に仮想線で図示の退避位置に復帰させて、研磨ベルト24をリム2内周面から離間させるとともに、研磨用駆動手段25によるリム2の回転を停止させた状態で、図8(c)に示すように、ドリル駆動手段55によりドリル57を回転させながら、図3に示すように、昇降手段によりドリル57を上昇させて下降させ、バルブ取付孔8を形成することになる。但し、ドリル57によりバルブ取付孔8を形成した後、溶接予定箇所RWにおけるメッキを除去するように構成することも可能である。
【0043】
次に、位置調整手段30により研磨手段20を後退位置に移動させ、アクチュエータ18により保持ローラ19をリム2の上方へ移動させ、リム2を取り出して新しいリム2を支持ローラ13にセットし、前記と同様にして、溶接予定箇所RWにおけるメッキの除去とバルブ取付孔8の形成を行うことになる。
【0044】
このメッキ研磨装置10では、研磨ベルト24による溶接予定箇所RWの研磨時に、図9に示すように、研磨ベルト24の側縁が微妙に撓むので、メッキを除去した後の溶接予定箇所RWの地肌面2aとメッキ部分2bの表面とは滑らかに連なった状態となり、両者の境界部2cに段差が形成されないので、溶接時等において境界部2cからメッキ部分2bが剥離するという不具合を効果的に防止することが可能となる。
【0045】
また、研磨により溶接予定箇所RWのメッキを除去するので、溶接予定箇所RWのメッキを略完全に綺麗に除去することが可能となり、リム2に対するディスク3の溶接不良を確実に防止できる。また、マスキングテープを貼り付けないでリム2の全面に対してメッキができるので、メッキ処理の工賃を安くして、ホイール1の製造コストを低減できる。
【0046】
リム2内周面の底部を研磨するので、サイズの異なるリム2のメッキ部分を除去する場合でも、研磨手段20により研磨するリム2内周面の高さが略同じ高さとなり、研磨手段20とリム2との高さ関係を調整する必要がないので、メッキ除去の作業性を格段に向上できる。
【0047】
研磨ベルト24を用いて研磨が可能なので、リム2内に挿入する駆動プーリ21を小型に構成しつつ、研磨具としての研磨ベルト24の耐久性を高めることが可能となり、研磨作業を効率的に行うことができる。
【0048】
また、位置調整手段30により研磨位置をリム2の軸方向に位置調整可能なので、研磨する溶接予定箇所RWを軸方向に任意に変更することができる。このため、予めメッキ処理を施したリム2を製作しておき、ユーザの要望に応じてリム2の軸方向に対するディスク3の溶接位置を調整できる。
【0049】
尚、本実施例では、研磨具として研磨ベルト24を用いた場合について説明したが、研磨ベルト24以外のフラップホイールなどの研磨具を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】2ピースホイールの断面図
【図2】研磨手段を前進位置へ移動させた状態におけるメッキ除去装置の正面図
【図3】ホイールを保持した状態でのメッキ除去装置の左側面図
【図4】研磨手段を後退位置へ移動させた状態におけるメッキ除去装置の正面図
【図5】研磨手段の正面図
【図6】図5のA矢視図
【図7】メッキ除去手段の作動状態を示す図で、(a)は支持ロールに対してリムを載置した状態の説明図、(b)は保持ローラでリムを保持した状態の説明図、(c)はリムに対して研磨ベルトを挿入する直前の説明図
【図8】メッキ除去手段の作動状態を示す図で、(a)はリムに対して研磨ベルトを挿入した状態の説明図、(b)は研磨ベルトによる溶接予定箇所研磨時の説明図、(c)はドリルによるバルブ取付孔形成時の説明図
【図9】研磨ベルトによる研磨箇所の説明図
【図10】マスキングにより溶接予定箇所に地肌部を露出させた場合の説明図
【符号の説明】
【0051】
1 ホイール 2 リム
2a 地肌面 2b メッキ部分
2c 境界部 3 ディスク
4 取付部 5 リング部
6 スポーク部 7 フランジ部
8 バルブ取付孔
10 メッキ除去装置 11 回転手段
12 下部フレーム 13 支持ローラ
14 回転駆動手段 14a 電動モータ
15 位置決め部材 16 鉛直フレーム
17 支持フレーム 18 アクチュエータ
18a 出力部 19 保持ローラ
20 研磨手段 21 駆動プーリ
22 遊動プーリ 23 案内ローラ
24 研磨ベルト 25 研磨用駆動手段
25a 電動モータ 26 押圧手段
30 位置調整手段 31 載置フレーム
32 ガイドレール 33 移動台
34 スクリュー軸 34a 電動モータ
34b 駆動手段 35 雌ネジ部材
36 支柱 36a 支持板
36b ブラケット部材 37 支持部材
38 支軸 39 回転軸
40 支持ロッド 41 アクチュエータ
42 圧縮コイルバネ 43 ガイドロッド
44 支持板 45 バネ部材
46 アクチュエータ
50 ドリル手段 51 支持枠
52 ガイドレール 53 ドリル支持台
54 駆動手段 54a 電動モータ
55 ドリル駆動手段 55a 電動モータ
56 チャック 57 ドリル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リムとディスクとからなる2ピースホイールにおけるリム内周面の溶接予定箇所のメッキを除去するメッキ除去装置であって、
前記リムの外径よりも小さい間隔をあけて軸心を平行にして水平配置した1対の支持ローラと、
前記支持ローラ上に軸心を略水平にして支持したリムを支持ローラの軸方向に位置決めするための位置決め部材と、
前記支持ローラ上に位置決め支持したリムを上側から押圧して、支持ローラとの間にリムを保持する1対の保持ローラと、
前記支持ローラと保持ローラ間に保持したリムを回転駆動する回転駆動手段と、
前記リムの内側へ延びてリムにおけるディスクとの溶接予定箇所を研磨して、該溶接予定箇所のメッキを除去する研磨手段と、
を備えたことを特徴とする2ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項2】
前記研磨手段によりリム内周面の底部を研磨する請求項1記載の2ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項3】
前記研磨手段として、支持ローラの軸心と略平行な軸心回りに回転自在に支持した駆動プーリと、軸心を略鉛直にして配置した遊動プーリと、案内ロールにより途中部の向きを変えて両プーリ間に張設した研磨ベルトと、駆動プーリを回転駆動する研磨用駆動手段と、駆動プーリに張設した研磨ベルトをリムの溶接予定箇所に押し当てる押圧手段とを備えた請求項1又は2記載の2ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項4】
前記押圧手段として、両プーリを支持する支持部材を設け、駆動プーリ側が上下移動するように、この支持部材を回動自在に支持する支軸を設けるとともに、支軸回りに支持部材を傾動させる傾動手段を設けた請求項3記載の2ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項5】
前記研磨手段による研磨位置をリムの軸方向に位置調整可能な位置調整手段を設けた請求項1〜4のいずれか1項記載の2ピースホイールのメッキ除去装置。
【請求項6】
前記支持ローラ間にリムに対してバルブ取付孔を形成するためのドリルを設け、このドリルを昇降する昇降手段を設けた請求項1〜5のいずれか1項記載の2ピースホイールのメッキ除去装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−69340(P2007−69340A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155686(P2006−155686)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(390007397)株式会社ワーク (4)
【Fターム(参考)】