説明

2型糖尿病、インスリン抵抗性及びメタボリック症候群の治療及び予防においてスフィンゴ脂質を使用する方法

本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群の治療及び/又は予防のための食品、食品サプリメント及び/又は医薬品の調製のためにスフィンゴ脂質を使用する方法に関する。特に、本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(1)(ここで、Zが、R又は−CH(OH)−Rであり;Aが、サルフェート、サルフォネート、フォスフェート、フォスフォネート又は−C(O)O−であり;Rが、水素、水酸基、アルジトール、アルドース、アルコール、C−Cアルキル又はアミノ酸であり;Rが、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖であり;Rが、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖であり;Qが、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−)であり;及びtが、0又は1である)を有するスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスリン抵抗性及び2型糖尿病の治療及び予防のための調製物に関する。特に、本発明は、スフィンゴ脂質を含む食品又は食品サプリメント、この食品サプリメントを含む食品、スフィンゴ脂質を含む医薬調整物、及び上記の調製のための方法に関する。本発明はさらに、インスリン抵抗性及び2型糖尿病並びにメタボリック症候群の治療及び/又は予防のための医薬品の調製のために、スフィンゴ脂質、より好ましくはフィトスフィンゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セラミド、セレブロシド、及び/又はスフィンゴミエリンを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前は成人発症糖尿病又は非インスリン依存性糖尿病と呼ばれていた2型糖尿病は、グルコース及び脂質代謝の両方における摂動によって特徴付けされる慢性病である。インスリン抵抗性及び膵臓のβ細胞による損なわれたインスリン生産が、これら摂動の基礎となる原因であることが広く受け入れられている(Kadowaki、2000年)。ペプチドホルモン インスリンは、骨格筋及び脂肪組織におけるグルコースの取り込み及び貯蔵を刺激し、及びそれは、(グルコースからの)グリコーゲンの及びトリグリセリドの合成を刺激する。同時に、インスリンは、糖新生及びグリコーゲン分解を阻止することによって肝臓におけるグルコース生産を阻害する。不完全なインスリン分泌又は抵抗性は、主な代謝経路の機能不全をもたらし、及び2型糖尿病をもたらすための重要な危険因子である。
【0003】
インスリンが該ホルモンの最大投与量でその正常な同化応答を顕在化することができない状態は、インスリン抵抗性と名付けられる(Saltiel、2001年)。インスリンへの不適当な応答は、(主に筋肉及び脂肪組織における)減少されたグルコース取り込み及び増加された肝臓糖新生をもたらし、その両方は循環血糖濃度を上昇させるだろう。ホメオスタシスを維持し且つ高血糖(過剰の血清グルコースレベル)を妨げるために、膵臓のβ細胞はそれらのインスリン分泌を増加させ、高インスリン血症(高血圧インスリンレベル)を引き起こす。糖尿病への進行における初期(しかし2型糖尿病の進展前)に、膵臓が、インスリン生成を増加させることによってインスリン抵抗性を克服し且つ正常血糖を維持しうる。糖尿病への進行における後期に、膵臓による補完的(compensatory)インスリン分泌は身体のインスリン抵抗性を克服できず、及び正常な血漿グルコース濃度はもはや維持されることができず、従って高血糖症をもたらす(Olefsky、2000年;Mayerson & Inzucchi、2002年)。高血糖症の症状は、多尿症(所定の期間における大量の尿の通過)及び多渇症(過度口渇)である。慢性の高血糖症は、グルコース脱感作(身体のインスリン感受性の更なる減少、すなわち増加されたインスリン抵抗性)並びにβ細胞の枯渇及びアポトーシスによって膵臓のβ細胞機能に対する有害な影響を及ぼし、それはインスリン分泌を損なう(Poitout & Robertson、2002年)。これは結局のことろ、7.0 mmol/1(126 mg/dL)を超える、絶食の、静脈の全血糖濃度によって特徴づけられる明白な2型糖尿病をもたらすだろう。
【0004】
2型糖尿病は、平均寿命における注目される減少と一致し、及び該疾病に関連付けられた短期及び長期の合併症の進展を制限するために長期の治療を必要とする不釣り合いに費用のかかる疾病である。これら合併症は、高インスリン血症、高血糖症、低血糖症(血清グルコース<50 mg/dL)、ケトアシドーシス、感染症の増加した危険、微小血管合併症(すなわち、網膜症、ネフロパシー)、神経障害合併症、及び巨大血管性疾患(例えば、深刻な動脈硬化症による心血管疾患(CVD))を含む。糖尿病に関連付けられた疾病率及び死亡率は、これら合併症によって主にもたらされる。例えば、糖尿病は、失明の主な原因並びに下肢切断及び腎臓病の重要な原因である。
【0005】
2型糖尿病を有する多くの患者は、無症候性であり且つ長年の間、診断未確定である。研究は、新発症2型糖尿病を有する患者が診断前に少なくとも4〜7年の間、糖尿病を現実に有していることを示唆する。2型糖尿病は、糖尿病の家族歴を有する40歳よりも上の大人において最も一般に見つけられるが、疾病の発生率は、他の年齢グループにおけるよりも若者及びヤングアダルトにおいてより急速に増加している。2010年までに、およそ2億5千万人の人々が世界的に2型糖尿病に冒されるだろうと今予測されている(Shulman、2000年)。現在のところ、2型糖尿病は、より若い者、特に肥満に関連付けられた増加する頻度で直面される。実際、2型糖尿病及び肥満は、密接に関連付けられると考えられる。
【0006】
グルコース及び脂質(血中脂質)代謝における異常、腹部肥満、高血圧症及びCVDは、個体がなんらかの相互関係があることを示唆するのに十分なほど同じ個体において通常一緒に生じる。実際、異常のこのクラスターは、メタボリック症候群として知られるようになっている(Hansen、1999年)。該症候群の様々な特徴を一緒に結びつけるように見えるものは、基礎となるインスリン抵抗性である。大多数の場合では、2型糖尿病は、メタボリック症候群の進行性の兆候であると信じられている(Tenenbaum等、2003年)。
【0007】
メタボリック症候群と2型糖尿病との間のこの疑わしい関係は、腹部肥満の相互危険因子の兆候及び粥腫発生異常脂質症(atherogenic dyslipidemia)の発生によって指示されている。粥腫発生異常脂質症(粥腫発生リポタンパク質表現型又は三脂質異常症(lipid triad)としてまた知られている)は、リポタンパク質代謝の疾患である。それは、高密度リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度における付随する減少とともに、高められた血清トリグリセリド(TG)レベル、高められた血清総コレステロールレベル、及び高められた低密度リポタンパク質(LDL)粒子によって特徴付けられる。異常脂質症は、2型糖尿病及び肥満を特徴づける代謝的摂動の不可欠な要素であり、及び期尚早の粥腫発生及び高められた心血管危険に密接に関連付けられている。一方では肥満とインスリン抵抗性との間の代謝関係、及び他方では心血管の危険は、とてもより明らかになってきている。
【0008】
2型糖尿病は、遺伝的及び環境的要因の両方を伴う多因子の疾病であることは明らかである。特に、不健康で、脂肪豊富な食事と組み合わせての肥満は、重要な危険因子である。2型糖尿病を進展するほとんどの患者(90%)は、肥満である。周辺組織への脂質の供給過剰がインスリン抵抗性の進展に寄与し、それは、随伴する肥満とともに過剰なエネルギー摂取が2型糖尿病を進展するための重要な危険因子であるという結論を可能にすることを多数の研究は示唆する(Lewis等、2002年)。肥満は、過剰な量の脂肪組織によって特徴づけられる。肥満個体における超過量の脂肪組織は脂質代謝を妨げ、長期の妨げは異常脂質症をもたらす。脂肪細胞における遊離脂肪酸(FFA)のより高いプールは循環内への脂肪細胞からのFFAのより高い遊離をもたらすので、肥満個体におけるより大きな全体の脂肪量は非脂肪組織への脂肪酸流入の増加をもたらすだろう。
【0009】
脂肪組織から遊離されたFFAは主に、肝臓において留まる。そこで、FFAは、β−酸化において使用され、脂肪貯蔵のためにトリグリセリド(TG)の形成において使用され、及び超低密度リポタンパク質(VLDL)として血流内に分泌される。肝臓へのFFA流入における増加は、肝臓におけるTG蓄積及び血流内への増加されたVLDL分泌をもたらす。TG豊富なVLDL粒子はFFAを骨格筋のような他の組織へ運び、そこでそれはβ−酸化によってエネルギーとして使用される。筋肉における脂肪酸の流入がβ−酸化よりも高い場合、過剰なTG貯蔵はグルコース取り込みに関連するインスリン抵抗性と一緒に生じるだろう(Pan等、1997年;Lewis等、2002年)。一方、肝臓におけるTGの蓄積は、肝臓の糖新生及びグリコーゲン分解の阻止に関してインスリン抵抗性に関連付けられている。筋肉において、TG蓄積はまた、インスリン抵抗性に関連付けられており、インスリン刺激されたグルコース取り込みにおける減少によって特徴付けられている。FFAは、多くのインスリン抵抗性状態において高められ、且つグルコース取り込み、グリコーゲン合成及びグルコース酸化を阻害することによって並びにグルコース出力を増加させることによってインスリンに寄与することを示唆されている。このようにして、高血清FAAレベルは結局のところ、2型糖尿病発生に寄与しうる。従って、FFAにおける増加はインスリン抵抗性の進展の基礎となる重要な機構でありうる。
【0010】
どの化合物がインスリン抵抗性の治療において有効に使用されうるかは現在知られていない。現在、2型糖尿病患者の治療において、糖尿病の臨床的兆候が処置されているが、基礎となるインスリン抵抗性それ自身は処置されていない。2型糖尿病を有する患者は、厳しい食事コントロール及び運動を含む、医者に指示された体重減量プログラムを成功裡に厳守することによって体重を減らす場合、彼らは経口抗肥満医薬又はインスリンを用いての治療をしばしば必要としないことが見つけられている。食事手段並びに体重における明らかな減少は、医薬選択よりも事実好ましい。なぜならば、この代謝疾病の最適な治療が到達されうるためである。これら患者のための初期の治療は、医学的栄養学的治療の試みである(MNT;食事療法と一般に呼ばれる)。インスリン抵抗性のための適切な栄養上の治療が議論になっている。2つの主なアプローチが、糖尿病推奨から取り出される:i)低血糖指数食品を強調する高炭水化物、低脂肪、高繊維食事、及びii)飽和脂肪酸を犠牲にして、モノ不飽和脂肪と複合炭水化物との間のカロリーを共有すること。有望なデータは第1のアプローチから明らかになり、集中的なカウンセリングを通じて維持される運動プログラムに加えて、高炭水化物、低脂肪、高繊維食事は40%を超えるだけ肥満リスクを減少しうることを示す(Sievenpiper等、2002年)。現在、食事治療のこれら著しい効果がどの様に達成されるかは明らかでない。
【0011】
しかしながら、現実において、食事療法は、患者にとって維持することが困難であることがわかり、及び彼らは前の不健康な食事習慣にしばしば戻る。その結果、治療は、多くの場合、高い血糖値及びコレステロール値の医薬的治療をまだ目的とされている。
【0012】
メタボリック症候群の背景におけるインスリン抵抗性及び2型糖尿病の分子メカニズムについての研究は、インスリン抵抗性が引き起こされる機構が転写因子によってもたらされる遺伝子発現プロファイルにおける変更を含みうることを明らかにした(Saltiel & Kahn、2001年)。転写因子の特定のグループ、いわゆるペルオキシゾーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、インスリン抵抗性に関して多くの注目を最近獲得している。3つの型のPPARが識別されている:PPARα、PPARβ(PPARδ)及びPPARγ。PPARαは、ステロイドホルモン受容体上科(super family)のメンバーであり且つ肝臓、心臓、腎臓及び筋肉における脂質代謝の調整に関与する。これは、PPARαを2型糖尿病及び異常脂質症についての候補遺伝子にする。代謝シンドローム及び2型糖尿病のPPARに基づく評価は、これら疾病及びそれらの治療における包括的なアプローチについての基礎の理解を改善しうることが示唆された(Tenenbaum等、2003年)。異常脂質症は、PPARαの既知のアゴニストであるフィブラート剤で成功裡に治療されうることがさらに見つけられた(Chapman、2003年)。PPARアゴニストは、インスリン抵抗性に関連付けられた乱れたリポタンパク質代謝に関与される重要な遺伝子の発現を調節することによって異常脂質症を改善するように見える(Ruotolo & Howard、2002年)。フィブラート剤は、血漿トリグリセリドを有効に低くし且つ高脂質血の治療において広く使用されている(Staels等、1998年;Fruchart等、1998年)。フィブラート剤は、アテローム性動脈硬化症及び心血管死の進行を遅くすることが示されているけれども、幾つかの試験の結果は曖昧である。例えばフェノフィブラート(PPARαの既知のアゴニスト)は、動物試験において抗酸化効果を示すことが示された。しかしながら、該薬物は、総血漿トリグリセリド濃度及びコレステロール濃度に対して有意な効果を有しなかった(Beltowski等、2002年)。その上、他の試験の結果は、これら薬物を受け取る患者における不整脈、筋炎、脳溢血、腎臓機能の低下、癌、及び非心血管死の増加した発生率を示す。それ故に、粥腫発生に関与する他のプロセスに対するフィブラート剤の効果が考慮される必要があり(Beltowski等、2002年)、並びに従来技術はインスリン抵抗性に対するPPARアゴニストの効果について決定的でないこと及びそれらは望ましくない副作用をさらに引き起こしうることが結論付けられた。
【0013】
脂質低下薬、可塑剤及び除草剤への曝露での肝臓腫瘍の進展を研究する際に、Van Veldhoven及びその同僚は、リノール酸の他にスフィンゴイド・ベースがPPAR−αの候補の内因性リガンドであることを見つけた(Van Veldhoven等、2000年)。スフィンゲニン及びスフィンガニンは強力な結合リガンドとして識別されていた一方、フォススファチジルコリン、スフィンゴミエリン、スフィンガニン−1−フォスフェート、セラミド、N−アセチルスフィンゲニン及びN−ヘキサデカノイルスフィンゲニンは受容体に結合できなかった。これら化合物がアゴニスト又はアンタゴニストであるかどかは知られていない。他の研究において、C−セラミド(短鎖セラミド類似物)が脂肪分解を刺激すること及びインスリンの抗脂肪分解作用を減少することが見つけられ、その結果としてそれはインスリン抵抗性の誘導に関与されると信じられている(Mei等、2002年)。従って、この研究は、スフィンゴ脂質がインスリン抵抗性の進展に対して負の効果を有しうることを示唆する。肥満に関連してインスリン抵抗性についてのさらに他の研究は、スフィンゴミエリンが脂肪細胞におけるPPAR−γ mRNAレベルの調節及び対象におけるインスリン抵抗性に役割を果たすこと、及びこれは脂肪細胞原形質膜の高スフィンゴミエリン含量に関連付けられることが見つけられた(Al-Makdissy等、2001年)。それ故に、従来技術は、インスリン抵抗性に対するスフィンゴ脂質の効果について決定的でない。
【0014】
しかしながら、2型糖尿病の症状を単に治療しないが、異常脂質症及びインスリン抵抗性の基礎となる問題に対処する医薬組成物又は食品の供給が、現在高く求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、2型糖尿病の症状のようなインスリン抵抗性の症状を単に治療するのでなくて、異常脂質症及びインスリン抵抗性の基礎となる問題に対処する医薬組成物及び/又は食品を提供する。
【0016】
本発明者らは、スフィンゴ脂質が、ApoE*3Leidenマウスにおける血漿のコレステロール及びトリグリセリド・レベルの両方を減少することを以前に見出した。そのようなマウスは、血漿コレステロール及びトリグリセリド・レベルに対する薬物及び食品化合物の効果を研究するための適切な動物モデルを表す(Volger等、2001年;Post等、2000年)。例えば、スフィンゴ脂質(特に、フィトスフィゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セラミド、セレブロシド及び/又はスフィンゴミエリン)の1%までを含む食餌を用いて給餌されたApoE*3Leidenマウスは、添加されたスフィンゴ脂質なしの同じ食餌を用いて給餌されたApoE*3Leidenマウスと比較して、血漿コレステロールレベルにおいて劇的な減少(60%まで)及び血漿トリグリセリド・レベルにおいて同様に劇的な減少(50%まで)を示した。スフィンゴ脂質は、全ての真核細胞で見つけられた天然化合物であるけれども、本発明者らは、食品及び臨床的に安全な医薬品がスフィンゴ脂質に基づいて調製されうることを以前に見出した。該食品及び医薬品は、脂質に関連する疾患/疾病の傾向を有する又は病む対象においてTG(トリグリセリド)及びコレステロール・レベルを減少するための能力を有し、及び該食品及び医薬品は望ましくない副作用に悩まない。
【課題を解決するための手段】
【0017】
それらに関連して、本発明は、スフィンゴ脂質を含む食品及び臨床的に安全や医薬品がインスリン抵抗性の進展を防ぐために及び/又はインスリン抵抗性の重篤性を緩和ために非常に適切に使用されうることことが今見出された。この能力の故に、本発明の食品及び医薬品は、2型糖尿病の治療及び予防において使用されうる。また、本発明の食品及び医薬品は、メタボリック症候群の治療及び予防において使用されうる。
【0018】
1つの観点では、本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(I)
【0019】
【化1】

【0020】
(ここで、
Zが、R又は−CH(OH)−Rであり;
Aが、サルフェート、サルフォネート、フォスフェート、フォスフォネート又は−C(O)O−であり;
が、水素、水酸基、アルジトール、アルドース、アルコール、C−Cアルキル又はアミノ酸であり;
が、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−)であり;好ましくは第二級アミン基であり;及び
tが、0又は1である)に従うスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法を今提供する。
【0021】
好ましい実施態様では、前記スフィンゴ脂質は、一般式(II)
【0022】
【化2】

【0023】
(ここで、
Zが、R又はCH(OH)−Rであり、及びRが、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖である)に従うスフィンゴ脂質であり、さらにより好ましくは式(III)
【0024】
【化3】

【0025】
(ここで、
Zが、R又はCH(OH)−R、好ましくはRであり、Rが、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖、好ましくは不飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−)、好ましくはアミド基であり、及び
が、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖である)に従うスフィンゴ脂質である。
【0026】
非常に好ましい実施態様では、スフィンゴ脂質は式(II)に従うスフィンゴ脂質であり、本発明に従うスフィンゴ脂質は、フィトスフィンゴシン、スフィンガニン、スフィンゴシンであり、及び他の非常に好ましい実施態様では、スフィンゴ脂質は式(III)に従うスフィンゴ脂質であり、該スフィンゴ脂質はスフィンゴミエリンである。
【0027】
好ましくは、前記疾患はインスリン抵抗性である。
【0028】
本発明はまた、食品においてインスリン抵抗性を予防する剤として、式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質、又は前駆体若しくは誘導体の使用を提供する。
【0029】
他の観点では、本発明は、健康な対象において、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群の発生を予防する方法であって、前記対象に、式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩の強化されたレベルを有する食事を与えることを含む方法を提供する。
【0030】
他の観点では、本発明は、健康な対象において、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群の発生を治療する方法であって、前記対象に、式(1)、式(11)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩の強化されたレベルを有する食事を与えることを含む方法を提供する。
【0031】
インスリン抵抗性がそれ自体疾病状態ではない故に、それが肥満対象において徐々に進展しうる場合に、インスリン抵抗性を取得する危険は、非処方の医薬品、食品、又は食品サプリメントの危険対象への医学的に非当業者による投与によって縮小されうる。本発明の栄養補助食品を含む、食品及び食品サプリメントの多くは、健康食品店又は薬局において処方箋なしで販売されうる。従って、一つの好ましい実施態様では、本発明は、非医学的な方法として危険対象におけるインスリン抵抗性を予防する方法に関する。
【0032】
他の実施態様では、本発明は、非医学的な方法として対象におけるインスリン抵抗性を治療する方法に関する。そのような治療方法は、インスリン抵抗性の進展における進行を低くするために又は病状を病まないヒトにおけるインスリン抵抗性を減少させるために、非処方箋医薬品、食品又は食品サプリメントの健康な対象への投与によって実行されうる。従って、他の実施態様では、本発明は、非医学的な方法として健康な対象における粥状動脈硬化症を治療する方法に関する。
【0033】
さらに他の実施態様では、本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患を病む対象を治療する方法であって、前記方法は、治療的に有効な量の医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含み、前記組成物は、式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩、並びに医薬的に許容される担体、及び任意的に1以上の賦形剤を含む方法を提供する。
【0034】
さらに他の実施態様では、本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のために、式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体若しくは誘導体の強化されたレベルを有する食品を使用する方法を予防及び治療の上記方法のいずれかにおいて、提供する。
【0035】
式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体若しくは誘導体の強化されたレベルを有する食品(食品サプリメント及び栄養補助食品を含む)の使用が、本発明において考慮される。
【0036】
さらに他の実施態様では、本発明は、インスリン抵抗性を減少し及び/又は予防するための食事において、式(I)、式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体若しくは誘導体の強化されたレベルを有する食品を使用する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
定義
前に述べられたように、語「インスリン抵抗性」は、インスリンが該ホルモンの最大投与量でその通常の同化作用の応答を導き出すことができないところの状態をいう。インスリンに対する不十分な応答は、減少したグルコース取り込み(主に筋肉において)及び増加した肝臓糖新生をもたらし、それらの両方は循環血糖濃度を上昇させるだろう。血糖レベルのホメオスタシスの維持(すなわち正常血糖)は、インスリンレベルが、増加した膵臓生産によって上昇される場合に通常生じるのみだろう。膵臓のβ細胞へのダメージは、インスリン分泌を永久に損ない且つ注射によるインスリンを用いた治療を必要とする。インスリン抵抗性は、高インスリン血症の正常血糖の(hyperinsulinemic euglycemic)クランプ研究によって診断されうる。インスリン分泌及び作用の測定における「クランプすること(Clamping)」は、所定の血清又は血糖濃度を維持するために周期的に調節された速度でグルコース溶液の注入を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、語「血漿」は、細胞性成分、例えば赤血球及び白血球細胞が血液から通常遠心分離によって除去されたところの血液の水様の、非細胞性部分である。
【0039】
本明細書で使用される場合、語「血清」は、血液が凝固され、そして該固形物が除去された後に残る血液の水様の、非細胞性部分である。凝固は、血液細胞及び凝固因子を除去する。従って、血清は、凝固因子(例えば、フィブリノーゲン)がさらに除去された以外は基本的に血漿と同じである。血清及び血漿(水様である)は、水溶性(親水性)物質、例えば水溶性ビタミン、炭水化物及びタンパク質を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、語「スフィンゴ脂質」は、この特定の脂肪様群の化合物の一般に受け入れられた語を含むが、それは明示的に別記しない限り、本発明の式(I)、(II)及び(III)に従う化合物の群単独若しくは組み合わせでそれらの類似体又は誘導体又は医薬的に許容される塩(すなわち所謂、前駆体化合物を含む)を指すために特に使用される。
【0041】
語「高められた量(elevated amount)」(又は「増加された量」)は、自然における若しくはヒトの介在の無い組成物における成分の量よりもより高い該組成物における成分の量に関する。成分の高められた量は、該成分を通常含んでいない組成物への成分の添加によって、すなわち前記化合物による組成物の富化(enrichment)によってもたらされうる。成分の高められた量はまた、前記成分を既に含む組成物への成分の添加によりもたらされうるが、組成物は、該成分が添加される場合、通常生じない成分濃度を有する。また、これは、該成分による該組成物の富化と呼ばれる。
【0042】
種々の食品におけるスフィンゴ脂質(例えば、フィトスフィゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、スフィンゴミエリン、セラミド、セレブロシド及びリソスフィンゴミエリン)の量における多様性の故に、本発明に従う「高められた量」として示されるだろう量について一般的な値を与えることができない。例えば、ジャガイモ中のスフィンゴミエリンの少量は、「高められた量」と容易に呼ばれるだろう。なぜならば、ジャガイモそれ自身は、スフィンゴミエリンをほとんど含んでいないからである。比較的高い濃度のスフィンゴミエリンを通常含む乳における同じ量は、「高められた量」の呼び方を生じないだろう。
【0043】
本明細書で使用される場合、語「治療的に有効な量」は、疾病若しくは状態を治療し、改善し若しくは予防するための、又は検出可能な治療的若しくは予防的効果を示すための医薬剤の量をいう。対象のために必要とされる正確な有効な量は、対象のサイズ及び健康、状態の性質及び範囲、並びに投与のために選択された治療又は治療の組み合わせに依存するだろう。従って、正確な有効な量を前もって特定することは有益でない。しかしながら、与えられた状況について有効な量が、ルーチン実験によって決定されうる。
【0044】
「誘導体」、「類似物(analog)」又は「類似物質(analogue)」は、(生)化学変性(例えば、有機化学的又は酵素的)に付されている式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質として本明細書において定義される。誘導体化は、スフィンゴ脂質への或る化学基の置換を含んでよく、それによって化合物のスフィンゴ脂質特徴を維持する。そのような誘導体化は、従来技術で知られている。誘導体及び類似物質は、天然のスフィンゴ脂質の生物学的活性を維持して、同様の様式で作用するが、該分子に有利点、例えば、より長い半減期、分解に対する抵抗性、又は増加された活性を提供してよい。フィトスフィゴシンについて非常に適切な誘導体は、例えばTAPSである(以下を参照)。例えば身体中での、誘導体の加水分解後、転化された化合物がそのコレステロール及びトリグリセリドを低下させる効果を発揮するだろう故に、そのような誘導体は、本発明の実施態様において適切に使用されてよい。
【0045】
「医薬的に許容される塩」は、スフィンゴ脂質の望ましい生物活性が維持され且つ最小の望ましくない毒物学的効果を示すところの塩として本明細書において定義される。そのような塩の制限されない例は、(a)無機酸(例えば、塩酸、臭化水素、硫酸、リン酸、硝酸など)を用いて形成された酸添加塩、及び有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸など)を用いて形成された塩;(b)金属陽イオン(例えば、亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウム、ナトリウム、カリウムなど)を用いて、又はアンモニアから形成された陽イオン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、D−グルコサミン、テトラエチルアンモニウム又はエチレンジアミンを用いて形成された塩基添加塩;又は(C)(a)及び(b)の組み合わせ、例えば亜鉛タンネートなどである。塩形態はより可溶性であり、従ってスフィンゴ脂質のバイオアベイラビリティを高める故に、式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質の医薬的に許容される塩、例えばアンモニウム塩又は塩化物塩の使用が好ましい。好ましくは、塩化水素の塩が使用される。医薬的に許容される塩の使用は医薬的調製物に制限されないが、食品又は食品サプリメントにおける使用を含む。
【0046】
「前駆体」は、類似の、より少ない又はゼロの活性を有し、例えば消化管又は体内の他の消化システムによって活性な化合物に転化されうるところの活性な化合物の誘導体として本明細書において定義される。そのような前駆体は、活性な分子の化学的又は酵素的修飾によって得られうる。
【0047】
本明細書において使用される場合、「対象」とは、例えばヒト、非ヒト霊長類、マウス、ブタ、ウシ、ヤギ、ネコ、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター、ウマ、サル、ヒツジ、又は他の非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物;及び例えば非哺乳動物の脊椎動物、例えば、鳥(例えば、ニワトリ若しくはアヒル)又は魚を含む非哺乳動物の動物、並びに無脊椎動物を含むがこれらに制限されない。
【0048】
スフィンゴ脂質は、その幾つかが低濃度で食品中に生じ且つ植物、動物及びヒトの細胞の小さいしかし重要な成分を形成するところの脂質である。幾つかのスフィンゴ脂質がヒト及び動物の身体中に自然に生じる故に、それらは、食品及び食品化合物への添加について又は医薬剤として容易に許容されるだろう。
【0049】
スフィンゴ脂質は一般に、分子の中央基または「バックボーン」として長いスフィンゴイド・ベース(スフィンゴシン、スフィンガニン、フィトスフィンゴシン又は関連する化合物)から構築され(なかんずく、Karlsson、1970年、Chem. Phys. Lipids、第5巻:第6〜43頁)、それは、アミド結合された長鎖脂肪酸及び頭部基を含む。種々の頭部基(例えば、コリンフォスフェート、グルコース、ガラクトース、多糖)を有する並びに種々の脂肪酸及びスフィンゴイド・ベースを有するスフィンゴ脂質の何百の既知のクラスがある(なかんずく、Merrill & Sweeley、1996年、New Comprehensive Biochemistry:Biochemistry of Lipids, Lipoproteins, and Membranes, (Vance, D.E. & Vance, J. E. 編集、第309〜338頁、Elsevier Science、アムステルダムを参照)。
【0050】
スフィンゴシン及びスフィンガニンのような最も単純なスフィンゴ脂質が、非常に低濃度で食品中に通常生じる。スフィンゴ脂質の最も豊富な出所は、乳製品、大豆、卵、肉(魚肉、貝肉、及び海洋無脊椎動物例えばヒトデの肉を含む)である。食品において最も豊富なスフィンゴ脂質は、スフィンゴミエリン(乳及び卵)並びにセラミド(肉)である。全乳は、主にスフィンゴミエリを含むだけでなく、グルコシルセラミド、ラクトシルセラミド及びガングリオシドをも含む。ジャガイモ、りんご、トマト、ほうれん草、コショウ及び米が特に、低濃度でセレブロシドを含む(例えば、Stryer L., Biochemistry, [W. H. Freeman and Co., ニューヨーク州、米国], 1988年、第287頁、及びRyu J, Kim JS, Kang SS., Cerebrosides from Longan Arillus. Arch Pharm Res. 2003年2月;第26(2)巻:第138〜42頁;Kawatake S, Nakamura K, Inagaki M, Higuchi R. Isolation and structure determination of six glucocerebrosides from the starfish Luidia maculata. Chem Pharm Bull (東京)、2002年8月;第50(8)巻:第1091〜6頁を参照)。
【0051】
スフィンゴシン及びスフィンゴシン類似物がヒト及び動物の腫瘍細胞の成長及び転移を阻害することが知られている(例えば、欧州公開特許EP 0,381,514号公報を参照)。ラットの食餌へのスフィンゴミエリンの投与が、悪性の、化学的に誘導された結腸癌の発生の機会を有意に減少しうることがまた知られている(Schmeltz, E.等を参照)。
【0052】
スフィンゴ脂質はまた、大気汚染の不利な影響に対して皮膚及び/又は髪を防止するために、医薬組成物において使用される(例えば、米国特許明細書US 5,869,034号を参照)。
【0053】
例えばStaphylococcus aureus、Candida albicans及びPropionibacterium acnesのような細菌に対する皮膚の成分としてのスフィンゴシンの抗菌作用が、皮膚病学(Bibel等、1992年、J. Invest. Dermatol.、第98(3)巻:第269〜73頁;Bibel等、1995年、Clin Exp Dermatol、第20(5)巻:第395〜400頁)で知られ、そしてスフィンゴシンを含む局所軟膏の適用がそれに記載されている。
【0054】
本発明者は、そのようなスフィンゴ脂質が例えば食品、食品サプリメント又は医薬品として対象に投与される場合、スフィンゴ脂質が、前記対象におけるインスリン抵抗性の進展を予防するために及び/又はインスリン抵抗性の重篤性を緩和するために有効に使用されうることを今見出した。対象におけるインスリン抵抗性の進展を予防するための及び/又はインスリン抵抗性の重篤性を緩和するためのそれらの能力故に、本発明の食品及び医薬品はまた、2型糖尿病の治療及び予防において且つメタボリック症候群の治療及び予防において使用されうる。
【0055】
スフィンゴ脂質摂取の結果として対象におけるインスリン抵抗性の重篤性の緩和は、下記実施例に概説されているようにインスリン抵抗性マウスにおいて観察された。従って、本発明者らは、すなわちインスリン抵抗性を病む対象の血液において血糖ホメオスタシスを改善するためにスフィンゴ脂質の著しい効果を示した。従って、スフィンゴ脂質は、インスリン抵抗性対象における血糖レベルのホメオスタシスをサポートすることができる。
【0056】
従って、本発明に従うと、スフィンゴ脂質は、血流からのグルコースの生理学的除去のための能力を改善するための及び/又はそれを必要とする対象における、好ましくはインスリン抵抗性対象における血糖ホメオスタシスを維持するための能力を改善するための医薬品の製造のために使用されうる。この効果がそれによって達成される機構は現在知られていない。しかしながら、初めて、食品及び臨床的に安全な医薬(該食品及び医薬品は糖尿病と闘う能力を有する)がスフィンゴ脂質に基づいて調製されうる故に、該発見は、疾患、例えばインスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群の予防及び/又は治療のための大きな影響を有する。
【0057】
本発明は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(I)
【0058】
【化4】

【0059】
(ここで、
Zが、R又は−CH(OH)−Rであり;
Aが、サルフェート、サルフォネート、フォスフェート、フォスフォネート又は−C(O)O−であり;
が、水素、水酸基、アルジトール、アルドース、アルコール、C−Cアルキル又はアミノ酸であり;
が、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−);好ましくは第二級アミン基であり;及びtが、0又は1である)に従うスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法を第1の観点において今提供する。
【0060】
は、アルドースラジカル、例えばアセスルファム、アロース、アルトロース、アラビノース、エリトロース、フルクトース、フコース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、イソマルトース、ラクトース、リキソース、マルトース、マンノース、メレチトース、プシコース、ラフィノース、ラムノース、リボース、サッカロース、ソルボース、スタキオース、スクロース、タガトース、タロース、トレオース、トレハロース、ツラノース、キシロース及びキシルロース、並びに他のモノ−、ジ−、又はポリサッカライドの残基から選択されうる。
【0061】
は、アミノ酸残基、例えばアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパルテート、カルニチン、シトルリン、システイン、シスチン、GABA、グルタメート、グルタミン、グルタチオン、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリン、又はそれらの誘導体若しくは組み合わせの残基から好ましくは選択される。
【0062】
は、水素、水酸基若しくは水酸基を含む基(例えば、ヒドロキシアルキル)、アルジトール残基、又はポリオール残基(例えば、アドニトール、アラビトール、ダルシトール、エリスリトール、エチレングリコール、グリセロール、イノシトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、プロピレングリコール、リビトール、ソルビトール、トレイトール及びキシリトールの残基)、並びにメタノール、エタノール、エタンジオール、イソプロパノール、n-プロパノール、1,3-プロパンジオール及び他のポリアルコールからなる群からより好ましくは選択される。
【0063】
さらにより好ましくは、Rは、アルコール(例えば、コリン、エタノールアミン、エタノール、グリセロール、イノシトール、チロシン及びセリン)の残基からなる群から選択され、及びより好ましくはフォスフォグリセリド又はフォスフォグリセリドアルコール(例えば、コリン、セリン、エタノールアミン、グリセロール又はイノシトール)のアルコール残基からなる群から選択される。
【0064】
は、最も好ましくは水酸基である。
【0065】
(A)は、式(I)に従うスフィンゴ脂質の塩の形成のために任意の望まれる対イオンを有しうる。
【0066】
式(I)に従うスフィンゴ脂質におけるQの形で存在してよいようなアミノ基は、例えば単一の又は複数のメチル化、アルキル化、アシル化若しくはアセチル化によって、又はギ酸アミドへの修飾によって、修飾されることが可能である。
【0067】
また、式(I)における遊離の水酸基(特に、Rにおける水酸基)は、当業者に知られている方法で修飾されてよい。
【0068】
さらに、式(I)に従うスフィンゴ脂質の全てのありゆるラセミ化合物及び(ジア)ステレオ異性体が、本発明において使用されうる。Qが、例えば、水素、水酸基、カルボキシル基又はシアノ基によって置換されている式(I)に従う化合物を使用することが可能である。Qが、アミノ基である化合物が好ましい。
【0069】
は、水素、又は不飽和若しくは飽和の(C〜C30)アルキル鎖であり、及びRが、不飽和又は飽和の(C〜C30)アルキル鎖である。
【0070】
本明細書で使用される場合、語「アルキル」とは、C〜C30の飽和若しくは不飽和の直鎖、分岐した若しくは環状の、第一級、第二級又は第三級の炭化水素(任意的に置換されていてよい)を云い、特に、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、3-メチルペンチル、2,2-ジメチルブチル及び2,3-ジメチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンイコシル及びドコシル、並びにそれらの異性体を含む。
【0071】
〜C30アルキル鎖又は基は、水酸基、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルコキシ、アリールオキシ、ニトロ、シアノ、硫酸、スルフェート、スルフォネート、フォスフォネート又はフォスフェート(望まれるなら保護されていない又は保護されているのいずれか)からなる集団から選択される1以上の基で任意的に置換されてよい。これら置換基は、例えばGreene等、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、第2版、1991年において当業者に知られている。C〜C30アルキル鎖の好ましい実施態様は、C〜C24アルキル鎖を構成する。
【0072】
式(I)の化合物は、スフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩である。
【0073】
さらにより好ましくは式(I)に従う化合物、又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩において、Rが水酸基であり、tが0であり、Rが水素であり、Rが不飽和又は飽和(C〜C30)アルキルであり、Q−Rが一緒になってアミノ基である。それ故に、より好ましくは、本発明の実施態様において使用されるスフィンゴ脂質は、一般式(II)
【0074】
【化5】

【0075】
(ここで、Zが、R又はCH(OH)−Rであり、及びRが、不飽和又は飽和(C〜C30)アルキル鎖である)を有するスフィンゴ脂質である。
【0076】
本発明の最も好ましい実施態様では、フィトスフィゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セラミド、セレブロシド及び/又はスフィンゴミエリンが使用される。なぜならば、これら化合物が血漿コレステロール及びトリグリセリドにおける優れた減少を示すからである。
【0077】
スフィンゴミエリン、フィトスフィゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セラミド及びセレブロシドの他に、また、これら化合物の誘導体が本発明の観点において使用されてよい。例えば、水酸基頭部基の代わりに、コリン、フォスフェート、エタノールアミンフォスフェート、セリンフォスフェート、イノシトールフォスフェート、グリセロールフォスフェート、グルコース又はガラクトース頭部基が、式(I)に従う化合物におけるR基として使用されてよい。基本的に、上記Rの定義内の全ての頭部基が、フィトスフィゴシン、スフィンゴシン及びスフィンガニンの誘導体化のために使用されてよい。誘導体、例えばリソスフィンゴミエリンはまた、本発明の実施態様において使用されてよい。
【0078】
本発明の観点において式(I)及び/又は式(II)及び/又は式(III)に従うスフィンゴ脂質の組み合わせを使用することがまた可能である。
【0079】
原則的に、式(I)及び/又は式(II)及び/又は式(III)に従うスフィンゴ脂質の全てのありうる起源が、本発明の観点及び実施態様における使用のために適切である。例えば、適切なスフィンゴ脂質(例えば、フィトスフィゴシン)は、植物(例えば、トウモロコシ)(Wright等、Arch. Biochem. Biophys.、第415(2)巻、第184〜192頁及びその中の文献)から、動物(皮膚繊維芽細胞)から、又は微生物(例えば、酵母)(例えば、Pichia ciferii)から得られてよい。スフィンゴ脂質は、これら有機体から単離されてよく、又は低純度の形態で(すなわち豊化された画分として)、若しくは微生物(例えば、酵母)の場合、完全な有機体又はそれらの画分を採取することによって使用されうる。さらに、スフィンゴ脂質は、他の適切な起源、例えば乳、卵、大豆、酵母、細菌、藻類、植物、肉、脳などから単離されてよく、又は本発明に従う食品、食品サプリメント及び/又は医薬組成物において使用するために、化学的又は酵素的に調製されてよい。
【0080】
本発明に従う食品又は食品サプリメントにおける適用について、スフィンゴ脂質が、食品等級出所から好ましくは得られる。適切な食品等級出所の例は、例えば、ベーカリー酵母、醸造用酵母及び卵、並びに或るタイプの細菌、(線維状)真菌、海綿動物及び藻類であるが、特に、一般に安全であると認識されている(GRAS)細菌、酵母及び真菌のそれら種に排他的でない。スフィンゴ脂質の細菌起源は、例えば米国特許明細書US 6,204,006号で知られている。
【0081】
スフィンゴ脂質は、当業者に知られている方法によって、例えば(有機)溶媒を用いた抽出、クロマトグラフ的分離、沈殿、結晶化及び/又は酵素的若しくは化学的加水分解によって上記起源から得られてよい。乳からのスフィンゴ脂質強化された(特に、スフィンゴミエリン強化された)画分の生産は、例えば国際公開公報第W0 94/18289号で知られている。スフィンゴ脂質はまた、米国特許明細書US 5,677,472号で知られているような種々の動物生産物、例えば乳生成物、卵生成物及び血液生成物の脂肪濃縮物から得られてよい。
【0082】
スフィンゴ脂質及びスフィンゴ脂質誘導体の調製のための方法は、なかんずく欧州公開特許公報EP 0 940 409号、国際公開公報WO 98/03529号、国際公開公報WO 99/50433号及び米国特許明細書US 6,204,006号で知られており、且つ当業者は、これら及び他の方法によって誘導体を調製できるだろう。スフィンゴシンを得るための様々な経路が、D. Shapiro、"Chemistry of Sphingolipids"、Hermann、パリ(1969年)によって記載されている。或るフィトスフィンゴ脂質誘導体を生産するための方法は当業者において知られ、例えば、微生物起源(すなわち、Pichia ciferrii)からのテトラアセチルフィトスフィンゴシン(TAPS)を誘導し、そしてこのTAPSを、フィトスフィンゴシンを生じるために加水分解に付すことが、米国特許明細書US 6,204,006号及び米国特許明細書US 5,618,706号で知られている。
【0083】
式(1)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩はまた、例えば米国特許明細書US 5,232,837号及び5,110,987号で知られているような既知の方法によって、又はこれら方法の標準の変更によって合成されてよい。
【0084】
スフィンゴ脂質(それは、食品に又は医薬組成物にある)の投与に関連する既知の問題は、それらが代謝されうることである。これは特に、消化管におけるスフィンゴ脂質の適用に関連する。式(I)に従う、より好ましくは式(II)若しくは式(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの誘導体若しくは医薬的に許容される塩を単独で又は組み合わせで、所謂前駆体化合物(該化合物は或る置換基を含み、その結果として該化合物はもはや代謝されない又は減少された割合でのみ代謝されうる)として投与することによって、この問題は解決されうる。これら前駆体は、消化管の上部(例えば、口、胃)での加水分解に抵抗性であることが好ましく、そして例えば、スフィンゴ脂質が特に消化管の下部(例えば、盲腸、結腸)においてその作用を有すべき場合、消化管の下部において比較的容易に開裂される。好ましくは、前駆体の摂取が経口経路を介する場合、そのままの又は代謝された前駆体が血流内に取り込まれ、そして目的の器官、例えば肝臓、筋肉及び脂肪組織に輸送され、そこではそれらは、それらの有益な効果を発揮するために活性されうる。従って、該化合物が、消化管、例えば血清又は肝臓から吸収された場合、活性が生じることが可能である。結果として、該化合物の量は、スフィンゴ脂質がその作用を有するそれらの位置で上昇される。例えば、スフィンゴ脂質が遊離されるように、適切な酵素によってインビボ(in vivo)で開裂されうる又は活性化されうるスフィンゴ脂質前駆体が使用されてよく、これは対象におけるコレステロール及びトリグリセリドのレベルを減少しうる。スフィンゴ脂質前駆体は、国際公開公報WO 99/41266号に記載されている。
【0085】
インシチュー(in situ)酵素的又は化学的転化によって(すなわち体内で)、式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質の前駆体を、本発明の実施態様において使用されうる式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質に変更することは可能である。それ故に、式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質のそのような前駆体はまた、本発明に従う使用のために適している。条件は、前駆体が、例えば酵素的転化によって、式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質に、体内において(例えば、好ましくは腸において)転化されることであり、その場合、インシチュー(in situ)活性がある。それ故に、例えばスフィンゴミエリンとともに、スフィンゴミエリンをリソスフィンゴミエリンに転化しうる酵素 スフィンゴミエリンデアシラーゼを投与することが可能である。他の可能性は、スフィンゴミエリンをセラミドに転化するためにスフィンゴミエリナーゼを使用することである。すると、セラミドは、セラミダーゼによってスフィンゴイド基本構造及び脂肪酸に分解されうる。酵素の他の例は、例えばSueyoshi等(Sueyoshi等、1997年)において見つけらうる。しかしながら、好ましくは、式(1)、(11)又は(III)に従うスフィンゴ脂質は前駆体として使用されるのではなくて、食品若しくは食品サプリメント又は医薬調製物において「活性な」形態で使用される。
【0086】
式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩は、予防的又は治療的理由のために、治療を必要とする対象に提供されてよい。式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩は、食品若しくは食品サプリメントの形態で、又は医薬調製物の形態で治療を必要とする対象に提供されてよく、全てのそのような投与形態は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の進展を予防すること及び/又は重篤度を緩解することができる。特に、インスリン抵抗性の進展及び/又は重篤度が考慮される。
【0087】
式(I)に従う、より好ましくは式(II)に従う、さらにより好ましくは式(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩は、食品又は食品サプリメントにおいて使用されうる。食品サプリメントは、通常の食品摂取に加えて消費されることができ、且つ通常の食品に含まれていない又は小量のみ含まれていてそしてその十分な又は増加された消費が望まれるところの元素又は成分を含む組成物として定義される。食品の組成は、必ずしも食品サプリメントのそれと大きく異ならない。
【0088】
本明細書において記載される場合、食品又は食品サプリメントは、普通に又はヒトの介在の無い前記食品又は食品サプリメントにおいて生じる若しくは見つけられるだろう量よりもより高い式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質の量を含む。式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質のこの高められた量は、該高められた量で前記スフィンゴ脂質を通常含まない食品組成物への前記スフィンゴ脂質の特別の添加を通じて(すなわち、前記スフィンゴ脂質による食品の富化によって)生じてよい。代替的に、遺伝子エンジニアリングが、前記スフィンゴ脂質が高められた量で有機体において生成されるような方法で、例えば、食品の生成のために使用される植物又は酵母若しくは他の微生物におけるそのようなスフィンゴ脂質の生産のための生合成経路をエンジニアリングすることによって、高められた量で前記スフィンゴ脂質を含む食品を生成するために使用されてよい。
【0089】
スフィンゴ脂質、例えばフィトスフィゴシン、スフィンゴシン、スフィンゴミエリン、リソスフィンゴミエリン又はスフィンガニンの量は様々な食品の間でかなり異なりうる故に、高められた量であると言われている含量又は富化された食品の一般的な値はない。一般に、比較的高い量のスフィンゴミエリンを通常含む乳は、例えばスフィンゴミエリンを含んでない又はほんの微量含むジャガイモよりもより高い絶対的な濃度で高められた量を含むといわれる。
【0090】
上記されるようなスフィンゴ脂質強化食品又は食品サプリメントは、式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質の0.01〜99.9重量%を適切に含んでよい。好ましい実施態様では、そのような食品又は食品サプリメントは、式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの誘導体、前駆体若しくは許容される塩の0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%を含む。
【0091】
ヒト又は動物消費に適している式(I)、(II)又は(III)に従うスフィンゴ脂質の高められた量を含む食品又は食品サプリメントを作るために、栄養価、テクスチャ、味又は匂いが、前記食品又はサプリメントに様々な化合物を添加することによって改善されてよい。当業者は、本発明に従う食品又は食品サプリメントにおいて使用されてよいタンパク質、炭水化物及び脂肪、並びにありうる甘味料、ビタミン、ミネラル、電解質、着色剤、着臭剤、香料、香辛料、増量剤、乳化剤、安定剤、保存薬、酸化防止剤、食物繊維、及びその栄養価、味又はテクスチャを改善するために添加されうる食品のための他の成分の種々の起源に十分に気付く。そのような成分の選択は、配合、設計及び嗜好の問題である。添加されうるそのような成分及び物質の量は当業者に知られており、該選択は例えば、子供及び大人並びに動物のために推奨された毎日の許容投与量(RDA(recommended daily allowance) dosages)によって手引きされてよい。
【0092】
食品又は食品サプリメントの摂取のための一回分はサイズにおいて異なってよく、且つ推奨された投与量に対応する値に制限されない。語「食品サプリメント」は、特定の重量又は投与量に制限されるように本明細書において意図されない。
【0093】
上記されるような食品又は食品サプリメントの組成物は、原則として、ヒト又は動物による消費に適した任意の形態で摂取してよい。1つの実施態様では、該組成物が、水性液(例えば、水、コーヒー、茶、乳、ヨーグルト、ブイヨン(stock)又は果汁中及びアルコール飲料)中に懸濁され、分散され、乳化され又は溶解されうる乾燥粉末の形態である。この目的のために、該粉末は、単位投与量形態で提供されてよい。
【0094】
代替の実施態様では、乾燥粉末の形態における組成物が、錠剤化される。その目的のために、本発明に従う食品サプリメントのための組成物は、増量剤(例えば、微結晶性セルロース(MCC)及びマンニトール)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC))及び潤滑剤(例えば、ステアリン酸)、又は他の賦形剤を非常に適切に備えられてよい。
【0095】
上記されるような食品又は食品サプリメントの組成物はまた、該固体が、水性液中に懸濁され、分散され、又は乳化されているところの液状調製物の形態で提供されてよい。そのような組成物は、食品を通じて直接的に混合されてよく又は例えば、押し出され、そして粒又は他の形状に処理されてよい。
【0096】
代替の実施態様では、食品又は食品サプリメントは、固体、半固体又は液状食品、例えば、パン、バー(bar)、クッキー若しくはサンドイッチ、又はスプレッド、ソース、バター、マーガリン、乳製品などの形状を採用してよい。好ましくは、本発明に従うスフィンゴ脂質は、例えばバター若しくはマーガリン、カスタード、ヨーグルト、チーズ、スプレッド、飲料又はプディング、或いは他のデザートのような乳製品において適用される。該スフィンゴ脂質はまた、揚げるために又はベーキングするために使用されるバター又は脂肪において使用されうる。なぜならば、それらは比較的安定であり、そして高温によって分解されないだろうからである。この特徴はまた、パスツリゼーション又は殺菌処理を受ける食品又は食品サプリメントにおいてスフィンゴ脂質の使用を可能にする。ダイエット製品はまた、本発明に従う食品又は食品サプリメントの好ましい実施態様を構成する。
【0097】
本発明に従う食品が動物飼料として使用される場合、該食品は、例えば、粉末、粒、ワッフル、ポリッジ、ブロック、パルプ(pulp)、ペースト、フレーク、コック(cook)、懸濁物又はシロップの形態で調製されてよい。
【0098】
ヒトへの投与のために、本発明の食品は、食品又は食品サプリメントの形態で非常に適切に調製されてよい。
【0099】
本発明はさらに、本発明に従う食品又は食品サプリメントの調製のための方法であって、食品又は食品サプリメントを、式(I)及び/又は(II)及び/又は(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩に富むようにすることを含む方法に関する。
【0100】
1つの実施態様では、本発明は、スフィンゴ脂質で強化された食品又は食品サプリメントの調製のための方法であって、式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を、好ましくは0.01〜99.9重量%の量に、より好ましくは0.01〜50重量%の量に、さらにより好ましくは0.01〜10重量%の量に、そして最も好ましくは0.01〜5重量%の量に、食品又は食品サプリメントに加工することを含む方法を提供する。本発明に従い食品中に加工されるスフィンゴ脂質の量は、スフィンゴ脂質のタイプ及びその使用に依存し、そして当業者は、本開示の文脈においてこの量を決定することができる。
【0101】
本発明に従う食品を調製するための方法において、該食品が最初に別途に調製されて、次にスフィンゴ脂質と一緒にされて、前記スフィンゴ脂質が該食品に取り込まれている本発明に従う食品を提供してよい。該食品は、慣用の方法、例えば混合、ベーキング、油で揚げる、クッキング、蒸気処理又は精洗(poaching)によって別途に調製されてよく、そして必要であれば、スフィンゴ脂質と一緒にされる前に、冷却されてよい。他の適切な実施態様によると、スフィンゴ脂質は食品の調製中に、食品中の成分として入れられる。
【0102】
本発明に従う食品又は食品サプリメントは、栄養組成物として非常に適切に定義されうる。栄養組成物は、重要な栄養素の総食事摂取を増加させることによって食事を補うために使用される天然物であると定義されうる。この定義は、栄養サプリメント、例えばビタミン、ミネラル、薬草抽出物、抗酸化剤、アミノ酸及びタンパク質サプリメントを含む。栄養生成物は、1994年の食事サプリメント規則(Dietary Supplement Act)においてFDAによって制定された「食事サプリメント」の新たに生成された生成物カテゴリに適合する。この規則は、総1日摂取量を増加させることによって食事を補強するために使用されるビタミン、ミネラル、薬草抽出物又は他の植物性薬品、抗酸化剤、アミノ酸、又は他の栄養補助物質を含むように栄養補助食品を特に定義した。
【0103】
「栄養組成物」は、健康利点を生み出すことができる成分とともに補強された食品組成物として本明細書において定義される。本発明の文脈におけるそのような組成物はまた、特別のダイエット用使用、医薬食品及びダイエットサプリメントのための食事としてまた示されうる。本発明の食品又は食品サプリメントは、栄養組成物である。なぜならば、それは、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群を治療し又は予防することができるからである。
【0104】
本発明はまた、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群を病む対象を治療する方法であって、該方法は、治療的に有効な量の医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含み、該組成物は、式(I)に従う、より好ましくは式(II)に従う、さらにより好ましくは式(III)に従うスフィンゴ脂質、最も好ましくはフィトスフィンゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セレブロシド、セラミド若しくはスフィンゴミエリン、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩、並びに医薬的に許容される担体、及び任意的に1以上の賦形剤を含む方法を提供する。
【0105】
医薬組成物はまた、適切な医薬的に許容される担体を含むことができ、且つカプセル、錠剤、トローチ剤、糖衣錠、ピル、ドロップ剤、座薬、粉末、スプレー、ワクチン、軟膏、ペースト、クリーム、吸入抗原、パッチ、エアロゾルなどの形状でありうる。医薬的に許容される担体として、任意の溶剤、希釈剤若しくは他の液体溶媒、分散剤若しくは懸濁剤、表面活性剤、等張剤、濃厚剤若しくは乳化剤、保存剤、封入剤、固形結合剤又は潤滑剤が使用されることができ、それは特定の投与形態に最も適しており、及びそれはスフィンゴ脂質に相容性である。
【0106】
医薬組成物はまた、医薬的に許容される担体を含みうる。語「医薬的に許容される担体」は、治療剤の投与のための担体をいう。該語は、組成物を受け取る個体に有害な抗体の生産をそれ自体誘導せず且つ不当な毒性なしに投与されうる任意の医薬担体をいう。適切な担体は、大きく、ゆっくりと代謝される巨大分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、重合アミノ酸、アミノ酸コポリマー、及び不活性ウィルス粒子でありうる。そのような担体は、当業者に周知である。
【0107】
本明細書で使用されうる医薬的に許容される塩例えば、無機酸、例えば塩酸、臭化水素、フォスフェート、サルフェートなど;有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などが使用されうる。医薬的に許容される担体の全体的な議論は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co., N. J. 1991年)において利用可能である。
【0108】
治療組成物における医薬的に許容される塩は、液体、例えば水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールを含みうる。さらに、補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などが、そのような媒体中に存在しうる。典型的に、治療組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかで注射剤として調製される;注射の前に液体媒体中に溶液又は懸濁液に適している固体がまた調製されうる。リポソームが医薬的に許容される塩の定義内に含まれる。
【0109】
治療上の処置のために、スフィンゴ脂質は、上記されたように製造されることができ且つそれを必要とする対象に適用される。スフィンゴ脂質は、任意の適切な経路によって、好ましくはそのような経路に適応された医薬組成物の形状において、そして意図された治療のために有効である投与量において、対象に投与されうる。疾患を治療するために、例えばヒト又は動物対象の身体におけるインスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のために要求されるスフィンゴ脂質の治療的に有効な投与量は、例えば動物モデルを使用することによって当業者によって容易に決定されうる。
【0110】
本明細書において使用される場合、語「治療的に有効な量」とは、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群を減少させ又は予防するための、或いは検出可能な治療的又は予防的効果を示すための、治療的、すなわち本発明に従うスフィンゴ脂質の量をいう。この効果は、本明細書において述べられる場合、例えば血糖、血清トリグリセリド及び/又はコレステロールの測定によって、或いはインスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群の進行又は重篤性を評価する何らかの他の適切な方法によって検出されうる。対象の正確な有効量は、対象のサイズ及び健康、状態の性質及び程度、並びに投与のために選択される治療又は治療の組み合わせに依存しうるだろう。従って、予め正確な有効量を特定することは有用でない。しかしながら、所与の状況について有効な量は、ルーチン実験によって決定されることができ且つ臨床医又は実験者の判断内である。特に、本発明の組成物は、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群及び/又は付随する生理学的又は肉体的兆候を減少させ又は予防するために使用されうる。臨床医が初期投与量を確立することを可能にする方法は従来知られている。投与されるべく決定される投与量は、安全且つ有効でなければならない。
【0111】
本発明の目的のために、スフィンゴ脂質が投与される個体におけるスフィンゴ脂質の有効な量は、約0.01μg/kg〜1g/kg、及び好ましくは約0.5μg/kg〜約400 mg/kgであるだろう。
【0112】
さらに他の実施態様は、本発明のスフィンゴ脂質又は組成物は、対象の体内に挿入された制御された又は持続された放出マトリックスから投与されうる。
【0113】
本明細書において記載された医薬組成物、食品又は食品サプリメントの治療的効果を達成するための投与量は、当業者によって容易に決定されうる。本発明の目的のために、有効な投与量は、それが投与される個体において、乾燥食品重量の約0.01〜5%であろう。それは、大人の人間について、一日量は、約0.002〜10グラムの間のスフィンゴ脂質であろう。
【0114】
好ましくは、上記されるような医薬組成物は、口腔適用について意図されている。口腔適用のための組成物は、不活性希釈剤又は可食性担体を通常含むだろう。該組成物は、例えばゼラチンカプセル内に包装されてよく、或いは錠剤の形状に錠剤化されてよい。口腔治療用途のために、該活性化合物が、賦形剤と一緒に投与されてよく且つ例えば粉末、小袋、錠剤、ピル、トローチ、カプセルの形状で使用されてよい。医薬的に許容される結合剤及び/又はアジュバントはまた、医薬組成物の構成要素として含まれうる。
【0115】
粉末、小袋、錠剤、ピル、トローチ、カプセルなどは、下記の成分又は類似の趣旨の化合物のそれぞれを含みうる:増量剤、例えば微結晶性セルロース(MCC)又はマンニトール;結合剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、トラガカントガム又はゼラチン;賦形剤、例えばデンプン又はラクトース;任意成分(desintegrant)、例えばアルギナート又はとうもろこしデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;甘味料、例えばスクロースすなわちショ糖;又は芳香物質、例えばペパーミント又はサリチル酸メチル。
【0116】
投薬がカプセルの形態である場合、該カプセルは上記された要素とは別に、液状担体(例えば、油)を含みうる。投薬形態はさらに、糖、シェラック又は他の剤のコーティングを備えられてよい。医薬組成物の該成分は、それらがスフィンゴ脂質の望ましい作用を減少しないように好ましくは選択される。
【0117】
式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの医薬的に許容される塩はまた、例えばエリキシル剤、懸濁物、シロップ、ワッフル又はチューインガムの形状で投与されてよい。
【0118】
上記されるような医薬組成物では、式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩が、(乾燥)重量で0.01〜99.9重量%、好ましくは0.01〜10重量%、そしてより好ましくは0.01〜5重量%の量で使用される。
【0119】
本発明に従う医薬組成物は、対象におけるインスリン抵抗性を治療し又は予防するために意図される。
【0120】
本発明はさらに、対象におけるインスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬組成物の調製のための方法であって、医薬組成物において医薬的に許容される塩とともに、活性物質として、式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を処理すること又は入れることを含む方法に関する。
【0121】
医薬組成物の調製は、式(I)、(II)若しくは(III)に従うスフィンゴ脂質、又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩とともに、別途の成分、例えば増量剤、結合剤、滑沢剤、及び任意的に他の賦形剤を全て混合し、そして得られた該混合物を医薬調製物に処理することによって非常に適切に生じうる。
【0122】
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【0123】
実施例
【実施例1】
【0124】
高インスリン血症の正常血糖のクランプ法で測定されたインスリン抵抗性
インスリン抵抗性診断
インスリン抵抗性についての「最も基準になる検査(gold standard)」は、高インスリン血症の正常血糖のクランプ研究と呼ばれる試験である。それは、インスリンのいかなるレベルが異なるレベルのグルコースを制御するかをみるために、インスリン及びグルコースがいくつかの異なる投与量で静脈的に注入されるところの複雑且つ高価な研究である。基本的に、Koopmans等(2001年)及びVoshol等(2001年)の方法。
【0125】
インスリン抵抗性マウス
雄のApoE*3Leidenマウスが、高脂肪、高フルクトース食餌(24%カゼイン、17%コーンスターチ、14%セルロース、1%コレステロール、24%ウシラード、20%フルクトース;全て重量/重量)を用いて給餌された。8週間後、このグループにおける全てのマウスは、中庸にインスリン抵抗性であり且つ18週後に、強くインスリン抵抗性であった。2つのマウス(n=8)の平行グループが、さらに10週間について、同じ食餌(しかし、0.3%(乾燥食餌の重量当たりの重量)の卵スフィンゴミエリン又はフィトスフィンゴシンのいずれかを含む)を給餌された。
【0126】
他の平行実験において、8匹の3つのグループのマウス各々が同じ高脂肪、高フルクトース食餌を18週の間給餌された。一つのグループは全期間の間0.3%の卵スフィンゴミエリンを受け取り、一つのグループは全期間の間0.3%フィトスフィンゴシンを受け取り、及び残りのグループは対照グループとして使用された(すなわち、追加のスフィンゴ脂質を受け取らなかった)。
【0127】
インスリン抵抗性測定
全てのマウスは一晩絶食され、そしてHypnorm(商標)(フェンタニル−フルアニソン)(0.5 mg/kg体重)及びミダゾラム(12.5 mg/kg体重)の腹腔内注射によって麻酔された。マウスは、45分毎に50μlのHypnorm(商標)/ミダゾラム皮下を投与することによって麻酔を維持された。
【0128】
PBSで満たされた針が尾静脈内に挿入され、そして2つのポンプ(モデル100シリーズ、KdScienticic、ペンシルベニア州、米国)に接続された:一つは、3057μl PBS、400μl シトレート(30μg/μl)及び543μl インスリン(1U/ml)からなるインスリン溶液であり、及び一つのポンプは50ml PBS中6.25g D−グルコースの溶液である。2つの溶液を用いての注入が開始された前に、毛細管の血液が尾静脈から抜かれた。引き続き、30μlインスリンのボーラスが与えられ、そしてポンプが開始された(50μl/時間)。マウスは、30分間の休息が与えられた。次に、10分毎にグルコースレベルがグルコースハンドメーター(Freestyle、Disetronic Medical Systems AG、ブルクドルフ、ドイツ)を用いて測定され、そしてグルコース注入速度が、血中のグルコース濃度が少なくとも20分間の間一定であるまで調整され、そして毛細管の血液が抜かれた。
【0129】
毛細管中のインスリン及びグルコースレベルが、標準の市販キットを使用して、製造者の指示書に従い測定された(ヘキソキナーゼ方法、Instruchemie);及びインスリンレベルが、超高感度マウスインスリンELISA、製造者の指示(Mercodia、スウェーデン)に従う酵素免疫測定によって測定された。
【0130】
結果
図1では、グルコースの注入速度が示されている。注入速度は、18週間、対照の高脂肪、高フルクトース食餌を給餌された強くインスリン抵抗性マウスで見られた注入速度のパーセントとして表される。0.3%スフィンゴミエリン又は0.3%フィトスフィンゴシンを含む以外は同じ食餌を18週間給餌した後に、注入速度は対照グループと比較して夫々117%及び102%だった。18週間実験のうち最後の10週間の間に0.3%スフィンゴミエリン又は0.3%フィトスフィンゴシンを受け取ったマウスでは、注入速度は対照グループと比較して夫々102%及び114%だった。通常の食餌での対照グループでは、注入速度は、強くインスリン抵抗性対照グループに対して182%であり、8週間後では127%だった。インスリンレベルが様々な試験グループの間で異なったことの証拠はなかった(すなわち、マウスがスフィンゴ脂質を受け取った場合、所与のインスリン濃度で血流からのグルコースの生理的除去がより有効である)。該結果は、インスリン抵抗性がスフィンゴ脂質給餌の結果として減少したこと及びスフィンゴ脂質はインスリン抵抗性を減少させるために有効に使用されうることを示す。
【実施例2】
【0131】
1%フィトスフィンゴシンを用いたob/obマウスの処置はインスリン感受性を改善する
20匹の雌のob/obマウス(C57Bl/6バックグラウンド)がチャールスリバー(オランダ)から入手され、そしてTNO施設内で2週間の期間順応された。4時間の絶食後、血液が尾出血によって引き抜かれ、そして該動物は体重及び血漿グルコースレベルに従い無作為化された。表1は、開始点で両グループが等しい体重、グルコースレベル及びインスリンレベルを有したことを示す。該マウスは、通常の食餌(対照)又は1%フィトスフィンゴシン(1%PS)を補給された通常の食餌を与えられた。処置の3週間後、血液サンプルが4時間断食後に引き抜かれ、そして体重が決定された。表1は、対照グループにおける動物が研究の間に、より高い体重を有する傾向にあることを示すが、これは統計的有意に達しない。1%PSで処理されたマウスは、それらの初期体重を維持した。グルコースレベルが、対照マウスにおいてのみ時と共に増加され、一方1%PSを給餌されたマウスは、それらの初期値を維持し、そしてそれ故に対照マウスと有意に違った。我々は、グループ間でインスリンレベルにおける差を観察しなかった。
【0132】
最後の血液サンプルから1.5週間後(マウスの完全な回復に必要である)、ob/obマウスは一晩絶食され、そして高インスリン血症の正常血糖のクランプ分析にふされた。表2に示されるように、基礎の(インスリン添加されていない)又は高インスリン血症の状態の間、血漿グルコースレベルにおいて有意な差はなかった。1%PSを給餌されたマウスにおける減少されたグルコースレベルの欠如は、血液サンプリングの前の、より長い期間の断食によって説明されうる。1%PS処置は、グルコース注入速度に基づくインスリン感受性の有意な改善をもたらした(1%PS及び対照処置されたob/obマウスについて夫々75±16対46±8μL/kg・分(P=0.001)、図2)。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】対象食餌に対する及びスフィンゴ脂質を含む食餌に対するインスリン抵抗性マウスの高インスリン血症の正常血糖のクランプ研究におけるグルコースの注入速度を示すグラフ。
【図2】通常の食餌、又は1%PS処理の5週後の雌ob/obマウスにおける高インスリン血症の正常血糖のクランプ分析で決定されたグルコース注入速度(GIR)を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(I)
【化1】


(ここで、
Zが、R又は−CH(OH)−Rであり;
Aが、サルフェート、サルフォネート、フォスフェート、フォスフォネート又は−C(O)O−であり;
が、水素、水酸基、アルジトール、アルドース、アルコール、C−Cアルキル又はアミノ酸であり;
が、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−)であり;及び
tが、0又は1である)を有するスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法。
【請求項2】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(II)
【化2】


(ここで、
Zが、R又はCH(OH)−Rであり、及び
が、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖である)を有するスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法。
【請求項3】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造のために、一般式(III)
【化3】


(ここで、
Zが、R又はCH(OH)−R、好ましくはRであり;
が、第一級アミン基(−NH)、第二級アミン基(−NH−)又はアミド基(−NH−CO−)、好ましくはアミド基であり、及び
が、水素、又は不飽和若しくは飽和(C−C30)アルキル鎖であり;
が、不飽和又は飽和(C−C30)アルキル鎖、好ましくは不飽和(C−C30)アルキル鎖である)を有するスフィンゴ脂質又はその前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩を使用する方法。
【請求項4】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群の予防及び/又は治療のために、請求項1に定義された式(I)若しくは請求項2に定義された式(II)若しくは請求項3に定義された式(III)に従うスフィンゴ脂質、又はその前駆体若しくは誘導体を食品において使用する方法。
【請求項5】
前記スフィンゴ脂質が、フィトスフィンゴシン、スフィンゴシン、スフィンガニン、セラミド、セレブロシド、及び/又はスフィンゴミエリンである、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記スフィンゴ脂質がスフィンゴミエリンである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
健康な対象において、インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群の発生を予防する方法であって、前記対象に、請求項1〜6のいずれか一項に定義されたスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩の強化されたレベルを有する食事を与えることを含む方法。
【請求項8】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及び/又はメタボリック症候群を病む対象を治療する方法であって、前記方法は、治療的に有効な量の医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含み、前記組成物は、請求項1に定義された式(I)若しくは請求項2に定義された式(II)若しくは請求項3に定義された式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体、誘導体若しくは医薬的に許容される塩、並びに医薬的に許容される担体、及び任意的に1以上の賦形剤を含む、方法。
【請求項9】
インスリン抵抗性、2型糖尿病及びメタボリック症候群からなる群から選択される疾患の予防及び/又は治療のために、請求項1に定義された式(I)若しくは請求項2に定義された式(II)若しくは請求項3に定義された式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体若しくは誘導体の強化されたレベルを有する食品を使用する方法。
【請求項10】
インスリン抵抗性を減少し及び/又は予防するための食事において、請求項1に定義された式(I)若しくは請求項2に定義された式(II)若しくは請求項3に定義された式(III)に従うスフィンゴ脂質又はそれらの前駆体若しくは誘導体の強化されたレベルを有する食品を使用する方法。
【請求項11】
血流からのグルコースの生理学的除去のための能力を改善するための、及び/又は改善を必要とする対象、好ましくはインスリン抵抗性対象における血糖ホメオスタシスを維持するための能力を改善するための医薬品の製造のために、請求項1〜3のいずれか一項に定義されたスフィンゴ脂質を使用する方法。
【請求項12】
血流からのグルコースの生理学的除去のための能力を改善するための、及び/又は改善を必要とする対象、好ましくはインスリン抵抗性対象における血糖ホメオスタシスを維持するための能力を改善するための食品又は食品サプリメントの製造のために、請求項1〜3のいずれか一項に定義されたスフィンゴ脂質を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529507(P2007−529507A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503852(P2007−503852)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000193
【国際公開番号】WO2005/087023
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502015784)ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパストナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー (41)
【Fターム(参考)】