説明

2型糖尿病およびその早期発症の診断の方法

本発明はヒト遺伝学の分野に属し、tieg2遺伝子のエクソン2に位置するA185G変異ならびにG−1534C、54a、304a、+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)変異の同定に基づく、ヒト被験者における2型糖尿病(T2D)、早期発症2型糖尿病および若年発症成人型糖尿病(MODY)の新規な診断および治療の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はヒト遺伝学の分野に属し、tieg2遺伝子のエクソン2に位置するA185G変異ならびにG−1534C、54a、304a、+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)変異の同定に基づく、ヒト被験者における2型糖尿病、早期発症2型糖尿病および若年発症成人型糖尿病(MODY)の新規な診断および治療の方法に関する。
【0002】
2型糖尿病は、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)または成人発症型糖尿病としても知られる、最も多く見られる糖尿病の種類である。2型糖尿病では、膵細胞がインスリンをわずかしか産生しない、もしくは全く産生しないか、または全身の細胞がインスリンを利用することができない(インスリン抵抗性)。これは欧米諸国で全症例の95%に相当し、米国だけで約1500万人が罹患している。
【0003】
今日現在、糖尿病の診断には空腹時血漿グルコース(FPG)検査が用いられている。しかし、この検査はひとたび病気を発症した場合にしか適さない。従って、この疾病に関連する遺伝的リスク因子を評価することのできる診断検査が必要である。このような検査は、リスクのある人々の生活習慣を適応させるため、また疾病の発症を予防するために大きな関心が寄せられるだろう。
【0004】
2型糖尿病の発生において遺伝因子の関与を裏付ける強力な証拠がある。例えば、一卵性双生児間の2型糖尿病のリスク率は約60〜90パーセントである(Bennett PH. Epidemiology of diabetes mellitus. In: Rifkin H, Porte D Jr., eds. Ellenburg and Rifkin's Diabetes Mellitus. New York: Elsevier, 1990: 363-77)。その上、2型糖尿病の第一度近親者がいる場合、この病気を発症するリスクは2倍となる(Leslie RD, Pyke DA. Genetics of diabetes. In: Alberti KG, Krall LP, eds. The diabetes annual. Amsterdam: Elsevier, 1987: 39-54)。
【0005】
もっと最近では、多数の科学研究によって、2型糖尿病に対する遺伝的素因が存在するということが確定された。本発明者らは糖尿病および肥満家系のゲノムワイドスキャンを行い、それによってこのような疾患との関連の証拠を示すいくつかのゲノム領域を同定するに至った(Vionnet N et al. (2000): Genomewide search for type 2 diabetes susceptibility genes in French whites: Evidence for a novel susceptibility locus for early onset diabetes on chromosome 3q27 qter and independent replication of a type 2 diabetes locus on chromosome lq21 q24. Am. J. Hum. Genet. 67: 1470 1480 and Hager J et al. (1998): A genome wide scan for human obesity genes reveals a major susceptibility locus on chromosome 10. Nat. Genet. 20: 304 308.)。
【0006】
マイクロサテライトマーカーを用いるさらなる微細マッピングによって、この領域を約5M塩基まで限定することが可能となり、これによりこの領域へ候補遺伝子を同定し、LDマッピング戦略を適用することが可能となった。LDマッピングは膨大な量の一塩基多型(SNP)の遺伝子型解析を伴う。
【0007】
数年かけて、本発明者らは位置的遺伝子候補を同定するための完璧な戦略および方法を開発した。これには統計分析、生物情報学の情報ルート、SNP遺伝子型解析および組織発現プロファイリングが含まれる。本発明者らのアプローチは、結果としてchr2区間の微細マッピング、および位置クローニングアプローチによるこのゲノム領域の分析をもたらした。第2染色体の領域に対して確立されたSNPマップにより、TIEG2を2型糖尿病に対する感受性に関連する遺伝子として同定するに至った。
【0008】
両TIEG遺伝子は、TGF−βによって誘発され(Cook et al. 1998 ; Blok et al. 1995)、膵細胞増殖を制御する可能性がある(Cook et al. 1998; Cook and Urrutia 2000)。外分泌PANC1細胞系統でのTIEG1の過剰発現はアポトーシスを誘発し(Tachibana et al. 1997)、類似の増殖阻害効果がTIEG2にに関しても示された(Cook et al. 1998)。外分泌膵臓の腺房細胞においてTIEG2を発現するトランスジェニックマウス(Mladek et al. 1999)は、TGF−βを過剰発現しているマウスと類似の膵臓萎縮を示す(Sanvito et al. 1995)。さらに、TIEG1は骨芽細胞中でTGF−βと類似の効果を誘発することが示されている(Hefferan et al. 2000))。このように、TGF−βに誘発されるTIEG1および2は、TGF−βの効果、特に外分泌膵臓組織に見出される効果を模倣することができる。
【0009】
本発明に関して、本発明者らは、TIEG2のエクソン2に位置する変異体A185G(=2SNP199b、TG2Q62R、TG2AI85G)を同定および分析し、TIEG2が2型糖尿病(T2D)に対する感受性に関連していることを明らかにした。SNP199b(A>G)はTIEG2のエクソン2中の非同義(Gln62Arg)変異で、転写の際のTIEG2の抑制特性を変化させることができる。
【0010】
本発明に関して、本発明者らはA185Gと密接な不平衡にある、さらなる変異体G−1534Cを同定および分析した。この変異は翻訳開始部位から1.5Kbに位置し、TIEG2遺伝子のまだ定義されていないプロモーター中に存在すると思われる。この配列をTransFac(Heinemeyer et al 1998)で解析すると、C対立遺伝子の導入によってAP−1部位が作成されることが予測された。−1534Cおよび185G対立遺伝子双方の存在は、非機能的TIEG2タンパク質の過剰発現をもたらす結果となりうる。本発明者らはTIEG2におけるまれな突然変異が若年発症成人型糖尿病(MODY)および早期発症T2Dに関連することも見出した。
【0011】
この点に関して、機能性の低いTIEG2の調節によって引き起こされうる、膵臓の発達における前駆細胞の調節の変化および/またはヒト成人膵臓におけるβ細胞の新生の変化は、外分泌細胞と内分泌細胞との間のバランスを変える可能性がある。
【0012】
TIEG2は膵臓の内分泌と外分泌のバランスに関連しており、本明細書ではこれを2型糖尿病の発生に影響しうる、膵組織の発達および再生に重要なものであると仮定される。TIEG2は偏在発現するが、骨格筋、外分泌膵臓、脳および脂肪組織でmRNAレベルが高く、このことは、いくつかの組織で2型糖尿病に対する感受性に影響を与えうる増殖/分化および細胞周期の調節を含み得るさらなる役割をTIEG2が有する可能性があることを示唆するものである。
【0013】
説明
従って、本発明は、2型糖尿病に対する対応の改善に寄与し、TIEG2を媒介とするシグナル伝達が2型糖尿病に対する感受性に関連がある証拠を示す。結果として、TIEG2は、2型糖尿病のための薬剤設計のための新規な標的となる。TIEG2変異体TG2Q62Rの2型糖尿病との関連は、2型糖尿病への素因を分析する診断検査として特に有用である。
【0014】
第1の態様では、本発明は、ヒト被験者における2型糖尿病、早期発症型2型糖尿病および若年発症成人型糖尿病(MODY)の素因を診断するための方法に関し、この方法はtieg2遺伝子の配列中に生殖細胞系の変異があるかどうかを判定することを含み、該変異が2型糖尿病の素因の指標となり、該変異は、そのコード配列が配列番号1に示されるtieg2遺伝子の開始コドンに関して番号が付されたA185G、配列番号4に示されるG−1534C、図4Aおよび4Bに示される54aまたは304a、ならびにその配列が図7および8にそれぞれ示される配列番号6および7に示される+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)から選択される。
【0015】
本発明はまた、上述のように、変異体A185G、G−1534C、54aまたは304a、+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)から選択される変異体と、密接に関連する生殖細胞系変異の存在を決定することを含んでなる、2型糖尿病に対する素因を診断する方法に関する。
【0016】
本発明はより一般には、tieg2遺伝子の研究に関する。この点で、本発明は、分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNA領域と、(2)tieg2遺伝子DNAのヒト野生型領域と相補的な核酸プローブとを互いにハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた場合に、分子(1)と(2)の間に、前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAの配列中に少なくとも1つの変異が存在することによるミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子の配列中の変異を同定する方法に関する。
【0017】
より具体的には、本発明は、分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAのエクソン2と、(2)配列番号2で示されるtieg2遺伝子DNAのヒト野生型エクソン2領域と相補的な核酸プローブとを互いにハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた場合に、分子(1)と(2)の間に、前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAの配列中に少なくとも1つの変異が存在することによるミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子のエクソン2中の変異を同定する方法を対象とする。
【0018】
上述の方法では、サンプルのmRNAを、前記プローブと前記tieg2遺伝子に対応するRNAとのハイブリダイゼーションに適した条件下で、tieg2遺伝子プローブと接触させ、前記プローブのハイブリダイゼーションを判定し、ハイブリダイゼーション後のシグナルレベルを標準のシグナル(陽性対照、陰性対照または双方のいずれか)と比較する。
【0019】
このハイブリダイゼーション複合体は、プローブ、または直接にはmRNAの標識化によると思われるシグナルを発する。用いることができる種々の標識は当業者に周知であり、32P、33P、35S、Hまたは125Iが挙げられる。非放射性標識は、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、ジオキシゲニン、ハプテン、色素、発光物質(放射性発光物質、化学発光物質、生物発光物質、蛍光物質またはリン光発光物質など)のようなリガンドから選択することができる。本願中に記載されているSNPを同定するためには、tieg2遺伝子プローブと前記サンプルから単離されたゲノムDNAとを、前記プローブと前記遺伝子とのハイブリダイゼーションに適した条件下で接触させ、前記プローブのハイブリダイゼーションを判定することができる。
【0020】
前記tieg2遺伝子領域プローブは、「野生型」DNA(すなわち、探索されるSNPがプローブ上に存在せず、本発明のSNPがサンプル中のDNA上に存在しない場合にハイブリダイゼーションが起こる)か、または「突然変異」DNA(すなわち、探索されるSNPを有し、SNPがサンプル中のDNA上に存在する場合にのみハイブリダイゼーションが起こる)のいずれかである。この実施形態で用いる対立遺伝子特異的プローブ、それらの長さ、またはハイブリダイゼーション条件を決定する技術は当業者に公知である。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、tieg2遺伝子エクソン2領域の生殖細胞系配列または前記サンプルのその他の領域に変化があるかどうかを、変性または非変性ポリアクリルアミドゲル上で、前記サンプル由来の一本鎖DNAの電気泳動移動度のシフトを観察することによって決定することにより実行される。前記一本鎖核酸は、好適なプライマーを用いるゲノムDNAの増幅および変性(このような目的では、通常、ゲルおよび電気泳動条件は変性されている)後に得てもよい。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、tieg2遺伝子エクソン2領域の全てまたは一部、あるいは前記サンプル由来のその他の領域の増幅、および前記の増幅されたDNAの配列の決定によって実行される。
【0023】
別の実施形態では、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプライマーを用いて、特定のtieg2突然変異対立遺伝子が前記サンプル中に存在するかどうかを決定するが、この場合には増幅のみが起こる。
【0024】
例えば、これらのプライマーは、それぞれA185GおよびG−1534Cの配列−caaagatcccRgaaaggtgac−(配列番号5)および−ggggtgctgaStgggaagagg−(配列番号6)を包含し、配列中のRはAまたはGを示し、SはCまたはGを示す。
【0025】
本発明はまた、分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAと、(2)配列gacacacacctcaXggacagt−(配列番号42)(配列中、XはCまたはT)に由来するプローブおよび配列ttggtcctgccccagggaYccctccctccg−(配列番号43)(配列中、YはGまたはT)に由来するプローブなどの+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)変異配列を包含するヒトtieg2遺伝子DNAと相補的な核酸プローブとの間にミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子中の変異を同定する方法を対象とする。
【0026】
この点に関して、本発明は、+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)変異配列を包含するプライマーを対象とする。例えば、+659 C>T変異のプライマーは、配列−gacacacacctcaXggacagt−(配列番号42)(配列中、XはCまたはT)を包含するか、またはこれに由来するものであってよい。+1039 G>T変異のプライマーは、配列−ttggtcctgccccagggaYccctccctccg−(配列番号43)(配列中、YはGまたはT)を包含するか、またはこれに由来するものであってよい。
【0027】
別の実施形態では、前記サンプル由来のtieg2遺伝子エクソン2領域の全てまたは一部をクローニングしてクローン配列を作出し、前記クローン配列の配列を決定する。
【0028】
上述の方法は、前記サンプルのtieg2遺伝子エクソン2領域配列の増幅、および増幅した配列と野生型tieg2遺伝子エクソン2領域配列(配列番号2で示される)または突然変異型tieg2遺伝子エクソン2領域配列に由来する1以上の核酸プローブとのハイブリダイゼーションによって実施することができ、前記プローブは、A185G変異体およびG−1534C変異体に特異的なプローブから選択される。
【0029】
A185G変異アッセイは、オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによりエクソン2 TIEG2のゲノム配列5’−CTC GGT GTT TGT TGC TAT AGA CT−3’(配列番号7)および5’−CAG GGA ATC TTC TCA CAA GTT CT−3’(配列番号8)、表1)を増幅することによって実施することができ、その後、対立遺伝子の変異を、プローブLCRed640−ATC CCA GAA AGG TGA CCT(配列番号33)およびTCT TGT TTG TAT GAG CTC CTG GGG TCA−フルオレセイン(配列番号34)を用いてライトサイクラー(Roche)を使用して示差的Tm変化により評価することができる。
【0030】
G−1534C変異アッセイは、オリゴヌクレオチドプライマーを用いるPCRによりTIEG2の上流のゲノム配列(5’−GTT TAA GAC GAA AGA ACC GTG ATA−3’(配列番号9)および5’−GAA CAG CAA GTG CGA GGA C−3’、(配列番号10)、表1)を増幅することによって実施することができ、その後、対立遺伝子の変異を、プローブLCRed640−TCTTCCCACTCAGCAC(配列番号35)およびTCCCTGCGTCCACTCCAGCTCCCAGA−フルオレセイン(配列番号36)を用いてライトサイクラー(Roche)を使用して示差的Tm変化により評価することができる。
【0031】
プローブに付着させた蛍光分子は例として示しているものであって、これに限定されるものではない。
さらに別の実施形態では、本発明は、配列番号5〜配列番号36から選択されるプローブまたはプライマーを対象とする(下記表1参照)。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明はまた、表1に記載のプローブで増幅した配列番号1および配列番号4の断片、ならびに少なくとも1種類の同定された変異を含む診断キットを対象とする。
【0034】
本発明はまた、前記サンプル中のtieg2遺伝子エクソン2領域と、野生型または突然変異型tieg2遺伝子エクソン2領域配列に由来する1以上の核酸プローブとのin situハイブリダイゼーションを決定することを含んでなる方法に関する。このような方法としては、T座でのCGH−fish法またはCGHアレイ法が挙げられる。
【0035】
発明者らは、TIEG2にGln62Arg変異が存在すると、TIEG2転写抑制活性を阻害する可能性があることをいく通りかの方法で証明した。従って、tieg2遺伝子のエクソン2領域またはその他の領域での他の改変もまた、TIEG2タンパク質の転写抑制活性の変化をもたらし、mSin3Aとの相互作用の変化によって、2型糖尿病に対する素因につながるとの推測には信憑性がある。
【0036】
概して、最初にMadタンパク質について示されたように、コリプレッサーmSin3Aとの相互作用はヒストン脱アセチル化酵素の動員および機能的転写抑制複合体の形成を誘起する。近年、最初の抑制ドメイン近傍のリン酸化がmSin3AとTIEG2との結合を阻害し、結果としてTIEG2の抑制活性が失われることが示されている(Ellenrieder et al 2002)。同様に、62R変異が起こるとmSin3A結合が妨げられ、TIEG2の抑制活性が変化しうる。その上、−1534C(%)変異を有する185G変異が起こると、TIEG2のプロモーター中のAP−1反応部位の導入を介してTIEG2に可能な転写のアップレギュレーションを誘導し、結果として非機能的TIEG2タンパク質の過剰発現をもたらし得る。
【0037】
従って、一実施形態では、本発明は、ヒト被験者において2型糖尿病に対する素因を診断する方法に関し、この方法ではTIEG2タンパク質とmSin3Aとの相互作用および前記サンプル中のTIEG2mRNAの発現レベルの変化が調査される。タンパク質と核酸の間の相互作用の変化は、当技術分野で公知の技術で検出が可能である。
【0038】
第二の態様では、本発明は、配列番号3のTIEG2のGln62Arg変異体、TIEG2のThr220Met変異体およびTIEG2のAla347Ser変異体に関する。これはまた、以下の変異:
Gln62Arg
Thr220Met
Ala347Ser
のうち少なくとも1、2または3つを呈するTIEG2の変異体に関する。特に、これらのポリペプチドは免疫ブロット法または免疫細胞化学によって検出することができる。
【0039】
従って、本発明は、患者のサンプルにおいて前記変異の存在または不在を検出するのに使用可能な、これらのTIEG2変異体に特異的な抗体、すなわち正常なTIEG2と変異体TIEG2とを区別することのできる抗体を対象とする。免疫学的アッセイは当技術分野で標準的な知識を用いて実施できる。これらのものとしては、ウエスタンブロット法、免疫組織化学的アッセイおよびELISAアッセイが挙げられる。本発明はこれらの試験に好適なこのような抗体および試薬を含む診断キットを包含する。
【0040】
本発明は、2型糖尿病の、特に遺伝的感受性が懸念される家系の患者のための、処置および/または予防における新規な分野を開拓するものである。従って、本発明はまた、2型糖尿病を予防および/または処置することの可能な化合物をスクリーニングするための方法に関し、その方法は、(i)候補化合物および(ii)TIEG2ポリペプチドを混合すること、ならびにTIEG2ポリペプチドと前記化合物との結合量を測定することを含んでなる。実際、TIEG2のアゴニストはその転写抑制活性を回復させ、2型糖尿病を単独またはその他の処置と組み合わせて処置するために有用な薬剤であると考えられる。
【0041】
この実施形態では、「TIEG2」とは、Gln62Arg、Thr220MetおよびAla347Ser変異ならびに野生型TIEG2を含むものと理解される。
【0042】
本発明はまた、薬学上許容される賦形剤および本発明に記載の方法によって同定された化合物を含む医薬組成物、ならびに2型糖尿病の処置および/または予防を目的とする薬剤の製造のための本発明の方法によって同定された化合物の使用に関する。
【0043】
本発明はまた、本発明の医薬組成物の投与を含んでなる、2型糖尿病の治療方法に関する。
【0044】
Gln62Arg、Thr220MetおよびAla347Ser変異体による欠陥を修正するためには、本発明の別の実施形態としてはベクター、より詳しくは、ヒト細胞中で野生型TIEG2のコード配列の発現を可能にするプロモーターと作動可能に連結された前記コード配列を含んでなる、遺伝子治療に好適なベクターに関する。このようなベクターは直接in vivo遺伝子導入に適合させることができ、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)などのウイルスベクターが挙げられる。リポソーム、分子複合体、ポリマーおよびその他のベクターを含む、非ウイルスベクターを用いてもよい。組織への直接注射、静脈内もしくは動脈内投与、吸入、または局所適用ならびにその他の投与経路は当技術分野で公知である。
【0045】
本発明はまた、2型糖尿病を研究するために有用な新規な動物モデルに関し、該動物内で前記tieg2変異体が発現される。本発明の動物を得る方法は当業者に公知であり、特に本発明の方法に従って同定することができる薬剤の試験に有用である。この方法には、前記tieg2変異遺伝子、キメラ動物、および前記tieg2変異体を発現するベクターでトランスフェクトされた動物の生殖的伝達が可能な新規な系統をもたらすための遺伝子改変動物を含む。
【0046】
この構築物の、本発明のトランスジェニック動物のゲノムへの挿入は、当業者に周知の方法によって行うことができ、無作為でも標的化してもよい。要するに、当業者であれば、ゲノム内に挿入する配列を含むベクター、および選択マーカー(例えばネオマイシン耐性をもたらすタンパク質をコードする遺伝子)を構築し、それを動物の胚幹(ES)細胞に導入することができる。次に、これらの細胞を選択マーカーで選択し、それを、例えば胚盤胞へのマイクロインジェクションによって、胚へ組み込み、これは妊娠中の雌の子宮を灌流することによって回収することができる。胚の再移植および形質転換動物の選択の後に可能性のある戻し交雑を行って、このようなトランスジェニック動物を得ることができる。「よりクリーンな」動物を得るためには、それが正しい配列に隣接されているならば部位特異的リコンビナーゼを使用して選択マーカー遺伝子を切り出してもよい。
【0047】
従って本発明は、前述のようなTIEG2変異体タンパク質の、すなわちGln62Arg、Thr220MetおよびAla347Serまたはそのいずれかの組み合わせの発現をもたらす調節エレメントと作動可能に連結されているtieg2変異遺伝子の核酸配列またはそのコード配列をそのゲノムに組み込んでいるトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。
【0048】
前記実施形態に予見されるtieg2配列は、本発明の動物のゲノム内に導入されたヒトtieg2遺伝子配列、またはそのプロモーターが、変異が配列中に存在する間は過剰発現を誘発するよう修飾されている、内在性tieg2遺伝子配列であってよい。
【0049】
さらに、本発明はまた、TIEG2と2型糖尿病との関連を試験するため、および早期発症T2Dを研究するための動物モデルとして、内在性tieg2遺伝子の破壊をそのゲノムに含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物に関する。特に、前記破壊には、選択可能なマーカー配列の挿入を含む。特に、前記破壊はホモ接合型の破壊であり、前記ホモ接合型の破壊は結果としてTIEG2をコードする内在遺伝子のヌル変異をもたらす。
【0050】
本発明の哺乳類は好ましくはマウスなどの齧歯類である。
【実施例】
【0051】
実施例1:2型糖尿病(T2D)におけるTIEG2の関与の遺伝的証拠
SNP199b(A>G)はTIEG2のエクソン変異である。SNP199b(TG2Q62R)とT2Dとの強い関連は、家族性T2Dおよび対照群からなるフランス系白人コホートで存在することが示された(優性モデルTG2Q62Rに基づくロジスティック回帰(年齢と性別で階層化)p<10〜5)。SNP199b、437b、54aおよび304aは強い関連がある(カイ2乗 p<0.0001)。SNP 437b(G>C)は、TIEG2遺伝子の未だ同定されていないプロモーター中に存在する可能性のあるゲノム変異である。本発明者らは、chr2(表現型large/strict、xtdロッドスコア4.45(p=0.04))との連鎖の証拠を示す家系全員のゲノムワイドスキャンで54aと糖尿病との関連を示した。家族性2型糖尿病との(対照352名に対して糖尿病患者287名のコホートにおける)顕著な関連に対し、さらに異種の「コルベール」集団(糖尿病患者947名)では糖尿病との優性関係は見られなかった。しかし、分散には高いBMI値との劣性関係が残っていた。
【0052】
Gln62Argは、mSin3Aコリプレッサーと相互作用することが示されているTIEG2タンパク質の最初のリプレッサードメインの近傍に位置する。TIEG2のR1ドメインはαへリックス型のコンホメーションをとり、TIEG1、BTEB1、3および4において保存されているこのαへリックス抑制モチーフ(oc−HRM)がmSin3Aとの相互作用を担うことが示されている(Sin相互作用ドメイン;(Zhang et al. 2001))。PIX(UK HGMP資源センター http://www.hizmp.mrc.ac.uk/)を用いるTIEG2(62Gln)および62Arg−TIEG2(TG2Q62Rを含むタンパク質)のタンパク質二次構造の分析は、DSC(使用した3つの2D解析プログラムの中の1つ(King et al. 2000))がSIDの近傍にある62Arg−TIEG2に対して長いαへリックスを予測したことを示した。従って、変化した62Arg−TIEG2のコンホメーションは、α−HRMに媒介されるmSin3Aとの相互作用を阻害する可能性がある。
【0053】
それに加えて、グルタミンからアルギニンへの変化がタンパク質に特別な変化を加え、従って、その等電点およびmSin3Aとの結合特性を変える可能性がある。
【0054】
さらに、Gln62Argは、プロテインキナーゼCによってリン酸化されうるセリンの隣に位置する。リン酸化は、タンパク質活性の調節、核への転位またはその他のタンパク質との相互作用ならびにタンパク質分解に対する感受性に重要な役割を果たし得る。
【0055】
G−1534Cは翻訳開始部位から1.5Kbに位置し、TIEG2遺伝子の未だ同定されていないプロモーター中に存在する可能性がある。この配列をTransFac(Heinemeyer et al 1998)で解析すると、C対立遺伝子の導入によってAP−1部位が作り出されることが予測された。−1534Cおよび185G対立遺伝子双方の存在(連鎖不均衡0.95)は、非機能的TIEG2タンパク質の過剰発現をもたらす結果となりうる。
【0056】
要するに、TIEG2は外分泌膵細胞の増殖に関連づけられてはいたが、新規に同定されたTG2Q62R(SNP199b)の解析結果は、初めて、変化したTIEG2と2型糖尿病に対する感受性とを直接関連づけるものである。さらに、本発明者らは、TIEG2は偏在的に発現するが、骨格筋、外分泌膵臓、脳および脂肪細胞において高いレベルで発現することが見出されるため、TIEG2はこれらの組織への影響によってT2Dに対する感受性に影響を及ぼす可能性があるものと仮定する。TG2Q62R(SNP199b)と2型糖尿病との関連は、2型糖尿病に対する素因を分析するための診断検査として有用である。
【0057】
2型糖尿病の発生におけるTIEG2の役割をさらに調査するために、本発明者らが目的としたのは、TIEG2の標的遺伝子を同定することであった。発明者らは、まず、膵臓で主要な役割を果たす遺伝子に注目した。報告されているTIEG2のSP1様結合部位(Cook et al 1998)を基にして、発明者らはSmad4、IGF2およびPDX−1のプロモーター中のTIEG2結合エレメントを予想した。PDX−1に関して、この結合エレメントは最近同定された<エンハンサー1>エレメント(Ben-Shushan et al 2001)中に存在する可能性がある。実際、発明者らはTIEG2発現ベクターがPDX−1エンハンサーエレメントの活性を数倍刺激することを示しているが、突然変異したエンハンサーエレメントには何の影響も与えなかった。PDX−1は膵臓の発達に重要であり、適正な島細胞機能に重要な遺伝子、例えばインスリン遺伝子、の転写を調節する(Hui et al 2002により概説)。さらに、PDX−1遺伝子の突然変異は若年発症成人型糖尿病4型(MODY4)の発生の原因である。従って、TIEG2によるPDX−1の調節は、TIEG2の不適切な機能が2型糖尿病の発生の一因である可能性があることを示す。発明者らは現在、TIEG2によるPDX−1遺伝子調節の正確な機構を調査している。一方で、これはエンハンサー1エレメントとの直接的な相互作用によって生じている可能性がある。他方では、最近、密接に関連するTIEG1がsmad7およびsmad2の双方の遺伝子発現を調節することが報告された(Johnsen et al 2002a, b)ことから、TIEG2はsmadのシグナル伝達の調節によってPDX−1遺伝子発現に影響を及ぼしている可能性がある。
【0058】
従って、本発明者らは、TIEG2のG−1534CおよびGln62Arg変異はいくつかの方法でTIEG2の転写活性を阻害し、その結果として2型糖尿病の発生と因果関係を持つと結論づける。
【0059】
実施例2:まれなTIEG2の突然変異に関連する若年発症成人型糖尿病(MODY)および早期発症2型糖尿病(T2D)の新規な診断および治療法
本発明者らは、根底にある遺伝子的原因が不明なフランスのMODYの家系の19名の発端者、ならびに40歳までに糖尿病を発症した171名の発端者および最低1名の罹患第一度近親者(男性/女性 96/75、BMI24.9±0.3kg/cm、年齢49.7±1.0歳、空腹時グルコースレベル8.9±0.3mM、糖尿病の発症年齢32.6±0.5歳)についてTIEG2突然変異のスクリーニングを行った。発明者らは、313名のT2D患者および313名の対照被験体に存在しない、2種類の稀な突然変異を確認した。突然変異+1039 G>T(Ala437Ser)が4世代にわたるMODY−X家系(FR29)で見出され、分析した3世代で糖尿病/グルコース不耐性が遺伝していた(図5a)。ヘテロ接合型保因者の2名の配偶者(そのうちの1名も糖尿病)および3名の糖尿病でない兄弟はこの変異を保有していなかった。Ala437SerはTIEG2の3番目のリプレッサードメイン内に位置し、生物情報学的分析でこの変異がこのドメイン(PIXおよびSOPM)のタンパク質二次構造を変化させるとの予測がなされた。第2の突然変異、+659 C>T(Thr220Met)は2つの早期発症T2D家系に存在した。家系FR47(図5b)では、グルコース不耐性または明らかな糖尿病の4名の姉妹のうち3名がヘテロ接合型保因者であった。この家系のうち、分析した糖尿病でない5名の被験者にこの突然変異は存在しなかった。糖尿病を早期発症する家系は、定義では一遺伝子性ではなく、またThr220Metが糖尿病家系の1家族に存在しなかったという事実は、複雑な形質という面において予期しないものではない。またTIEG2は多遺伝子による感受性環境でT2Dの発症に影響を及ぼしうるという発明者らのこれまでの結論に一致する。家系FR4848(図5c)では、2名の糖尿病被験者がヘテロ接合型保因者であり、糖尿病でない被験者はThr220Metを保有していなかった。2つのリプレッサードメイン間に位置しているとはいえ、220Met−TIEG2タンパク質はこの領域中に長いαへリックス構造を有しうる(PIX)。
【0060】
TIEG2の情報伝達経路の障害の生理学上の結果を分析するため、発明者らはTIEG2によって制御されうる遺伝子を調査した。発明者らはTIEG2が膵臓のβ−細胞系統の主要マーカーであるPDX1/IPF1遺伝子およびMODY4遺伝子のエンハンサーE1部位、ならびにインスリン遺伝子プロモーター(図6)を活性化させることを見出した。肥満に関連するT2Dの発生を進行させるβ−細胞機能障害はβ−細胞塊での代償的増加の障害に関与しているので(S. E. Kahn,J. Clin. Endocrinol. Metab., 2001 and S. E. Kahn, Diabetologia 2003に概説)、PDX1活性のどのような欠陥も糖尿病の発生に劇的な効果を有しうる。
【0061】
さらに、トランスフェクション実験は、変異+185 A>Gを含む62Arg−TIEG2により、インスリンプロモーターの活性化が損なわれたことを示し、従って糖尿病に対する遺伝的素因を引き起こす新規な機構を解明しうる。
【0062】


【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】SNPマップとTIEGに近接するコンティグを示す図である。
【図2】TIEG2 CDSを示す図である。E1〜4:エクソン1〜4、Atg:開始コドン、SまたはT(網掛け部分):報告されたリン酸化部位、Gag..:リプレッサードメイン、Gag..:mSin3Aと相互作用するリプレッサードメイン、Tgc..:Znフィンガードメイン、Cag:A185(G)、Q Gln62(Arg)
【図3】tieg2mtQ62Rを示す図である。凡例:E1〜4:エクソン1〜4、Atg:開始コドン、SまたはT(網掛け部分):報告されたリン酸化部位、Gag..:リプレッサードメイン、Tgc..:Znフィンガードメイン、CGg:(A)185G、R (Gln)62Arg
【図4】304aおよび54aの配列を示す図である。
【図5】TIEG2変異を説明する図である。 a)SNP+1039 G>T Ala347Serを有する家系(MODY−X FR29)、およびb、c)SNP+659 C>T Thr220Metを有する家系(早期発症糖尿病FR47およびFR4848)。アスタリスクは糖尿病性合併症(例えば神経障害)の存在を示す。記号の下は遺伝子型、検診時年齢、糖尿病/グルコース不耐性の発症年齢、糖尿病の処置(OHA;経口血糖降下薬、INS;インスリン)およびBMIを示す。
【図6】本明細書に記載の変異体がTIEG2転写能を改変することを示す図である。CHO細胞にトランスフェクトされたTIEG2発現ベクターはヒトPDX−1エンハンサーおよびインスリンプロモーターを活性化し、SNP+185 A>G Gln62Arg、+1039 G>T Ala347SerおよびSNP+659 C>T Thr220Metを含む構築物はこれらの変異体がTIEG2の転写能を改変することを示す。
【図7】配列番号40の配列を示す図である。c>t Thr220Met MODY/早期発症
【図8】配列番号41の配列を示す図である。g>t A347S MODY f29

【特許請求の範囲】
【請求項1】
tieg2遺伝子の配列中に生殖細胞系の変異があるかどうかを決定することを含んでなり、該変異は2型糖尿病の素因の指標となるヒト被験者における2型糖尿病、早期発症型2型糖尿病および若年発症成人型糖尿病(MODY)の素因を診断する方法であって、該変異は、そのコード配列が配列番号1で表されるtieg2遺伝子の開始コドンに関して番号が付されたA185G、配列番号4に示されるG−1534C、図4Aおよび4Bに示される54aまたは304a、ならびにその配列が図7および8にそれぞれ示される配列番号40および41に表される+659 C>T(Thr220Met)および+1039 G>T(Ala347Ser)から選択される方法。
【請求項2】
変異A185G、G−1534C、54aまたは304a、+659 C>T(Thr220Met)および+1039G>T(Ala347Ser)から選択される変異と密接に関連する生殖細胞系の変異の存在を判定することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNA領域と、(2)tieg2遺伝子DNAのヒト野生型領域と相補的な核酸プローブとを互いにハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた場合に、分子(1)と(2)の間に、前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAの配列中に少なくとも1つの変異が存在することによるミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子の配列中の変異を同定する方法。
【請求項4】
分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAのエクソン2と、(2)配列番号2で表されるtieg2遺伝子DNAのヒト野生型エクソン2領域と相補的な核酸プローブとを互いにハイブリダイズさせて二重らせんを形成させた場合に、分子(1)と(2)の間に、前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAの配列中に少なくとも1つの変異が存在することによるミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子のエクソン2中の変異を同定する方法。
【請求項5】
前記サンプル中のtieg2遺伝子エクソン2領域の増幅、および増幅した配列と野生型tieg2遺伝子エクソン2領域配列(配列番号2で表される)または突然変異型tieg2遺伝子エクソン2領域配列に由来する1以上の核酸プローブとのハイブリダイゼーションを含んでなり、前記プローブまたはプライマーがそれぞれA185GおよびG−1534Cの配列として、−caaagatcccRgaaaggtgac−(配列番号5)および−ggggtgctgaStgggaagagg−(配列番号6)を包含する(配列中のRはAまたはGを示し、SはCまたはGを示す)、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
分子(1)前記サンプルから単離されたtieg2遺伝子ゲノムDNAと、(2)配列gacacacacctcaXggacagt−(配列番号42)(配列中、XはCまたはT)に由来するプローブおよび配列ttggtcctgccccagggaYccctccctccg−(配列番号43)(配列中、YはGまたはT)に由来するプローブなどの+659C>T(Thr220Met)および+1039G>T(Ala347Ser)変異配列を包含するヒトtieg2遺伝子DNAと相補的な核酸プローブとの間にミスマッチが存在するかどうかを決定することを含んでなる、tieg2遺伝子中の変異を同定する方法。
【請求項7】
配列番号5乃至36から選択されるプローブまたはプライマーならびに配列番号42および43由来のプライマー。
【請求項8】
配列番号3のTIEG2のGln62Argタンパク質変異体、Thr220Metタンパク質変異体、Ala347Serタンパク質変異体および以下の変異:
Gln62Arg
Thr220Met
Ala347Ser
のうち少なくとも2つを呈する変異体から選択されるTIEG2の変異体。
【請求項9】
正常なTIEG2と請求項8に記載のTIEG2の変異体とを区別することができる抗体。
【請求項10】
請求項8に記載の抗体、ならびにウエスタンブロット法、免疫組織化学的アッセイおよびELISAアッセイに好適な試薬、または少なくとも1種の請求項7に記載のプローブを含んでなる、診断用キット。
【請求項11】
(i)候補化合物および(ii)TIEG2ポリペプチドを混合すること、ならびにTIEG2ポリペプチドと前記化合物との結合量を測定することを含んでなる、2型糖尿病の予防および/または処置をすることができる化合物のスクリーニング方法。
【請求項12】
ヒト細胞中で野生型TIEG2のコード配列の発現を可能にするプロモーターと作動可能に連結された野生型TIEG2のコード配列を含んでなる、遺伝子療法に好適なベクター。
【請求項13】
2型糖尿病の予防および/または処置用薬剤を製造するための請求項11に記載の方法によって同定される化合物または請求項11に記載のベクターの使用。
【請求項14】
請求項8に記載のタンパク質変異体を発現する、2型糖尿病の研究に用いられる動物モデル。
【請求項15】
配列番号3のTIEG2のGln62Argタンパク質変異体、Thr220Metタンパク質変異体、Ala347Serタンパク質変異体および以下の変異:
Gln62Arg
Thr220Met
Ala347Ser
のうち少なくとも2つを呈する変異体から選択されるTIEG2の変異体の発現をもたらす、調節エレメントと作動可能に連結された請求項8に記載のタンパク質変異体をコードする核酸分子配列をそのゲノムに組み込んでいる、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項16】
2型糖尿病、早期発症型2型糖尿病および若年発症成人型糖尿病(MODY)に用いられる動物モデルとして、そのゲノム中に内在性tieg2遺伝子の破壊を含んでなる、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項17】
遺伝子の破壊が、A185G、G−1534C、54a、304a、+659 C>Tおよび+1039G>Tである、請求項16に記載のトランスジェニック非ヒト哺乳動物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−518213(P2006−518213A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502500(P2006−502500)
【出願日】平成16年2月20日(2004.2.20)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000947
【国際公開番号】WO2004/074514
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】