説明

2型糖尿病プリフォームのバイオマーカー、及び2型糖尿病プリフォームの存在又は不在を検出する方法

耐糖能異常など、代謝性障害、特に2型糖尿病又はインスリン欠損と関連する他の病態若しくは疾患の前形成状態の診断、予後予測、及び層別化の方法。単独又は併用で2型糖尿病のプリフォームの診断、予後予測、又は層別化を可能とするペプチド。加えて、本発明は、前記方法のための試験キット、並びに新規のペプチド分子及びその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、耐糖能異常(IGT)など、2型糖尿病プリフォーム又はインスリン欠損と関連する他の病態若しくは疾患の診断、予後予測、及び層別化の方法に関する。具体的には、単独又は併用で2型糖尿病プリフォームの診断、予後予測、又は層別化(stratification)を可能にする新規のペプチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病とは、インスリン分泌、インスリン作用、又はその両方の欠損から生じる高血糖を特徴とする代謝性疾患の群である。糖尿病の慢性高血糖は、各種の器官、特に、眼、腎臓、神経、心臓、及び血管の長期にわたる損傷、機能障害、不全を伴う。世界保健機構(「WHO」)は、1型糖尿病、2型糖尿病、及び妊娠性糖尿病(又は3型糖尿病、妊娠中に生じる)という糖尿病の3大形態を認めているが、糖尿病のこれらの3つの「型」は、単一の疾患というよりも、より正確には膵不全のパターンとして考えられる。1型糖尿病がインスリン産生細胞の自己免疫性破壊に起因するのに対し、2型糖尿病及び妊娠性糖尿病は、組織によるインスリン抵抗性に起因する。
【0003】
糖尿病の危険性のスクリーニングを目的として、異常なグルコースホメオスタシスの分類が定義されている。耐糖能異常(IGT)と、より近年に創出された分類である空腹時血糖異常(IFG)とは、それぞれ、糖負荷後血糖値又は空腹時血糖値(FPG)に基づき、糖尿病を発症する危険性の高い個体を同定する。IGT及びIFGは、「前糖尿病」と総称されるが、基礎的な病態生理において異なる。IFGにおいてはインスリン分泌の欠損が明らかであることが多いのに対し、IGTにおいてはインスリン感受性の異常がより明らかであることがある。人口の大半において、IGTの方がIFGよりもはるかに高頻度であるため、前者の方が糖尿病を発症する人々のより大きな割合を示す。IGT及びIFGは、糖尿病への異なる進行速度及び心血管疾患(CVD)の危険性における差と関連することが示唆されている。複数の研究結果は、食後の高血糖(又は血糖負荷2時間後の血糖値)の方が、空腹時血糖値よりも、将来の心血管疾患事象の危険性を評価するのに優れていることを示す。CVD又は将来の糖尿病の危険性は血糖値範囲にわたって連続的であるように思われ、範囲の区切りは、証拠よりもむしろ同意に基づいている。
【0004】
2時間のOGTT(経口ブドウ糖負荷試験)は、その診断的価値にもかかわらず、患者及び検査者の双方にとって煩雑で時間をとるため、多くの医療提供者は、同試験法の施行に消極的である。したがって、IGTの特異的でより正確な診断を可能とする別のマーカーを同定することが望ましい。
【0005】
2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、肥満、メタボリックシンドローム、心血管疾患、及びアテローム性動脈硬化は、すべて相互に関連する疾患である。
【0006】
耐糖能異常又はIGTは、正常よりも高いが、糖尿病患者の場合よりも低い血糖値を定義する名称である。IGTは、(i)インスリンの分泌異常と、(ii)インスリン感受性の低下(インスリン抵抗性)との組合せである。
【0007】
耐糖能異常(IGT)は、後年に2型糖尿病及び心血管疾患(CVD)を発症する危険性の高さと関連する主要な健康問題である。IGT及びIFGは「前糖尿病」と総称されるが、IFGは、IGTとは異なる病態生理的特徴を有する。人口の大半において、IGTの方がIFGよりもはるかに高頻度であるため、前者の方が糖尿病を発症する人々のより大きな割合を同定する。IGTは、経口ブドウ糖負荷試験のみにより同定することができ、空腹時血糖値(FPG)の測定にはよらない。さらに、IGTは、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性症候群、又は症候群Xとして知られる、相互に関連する心血管危険因子の一群と関連することが多い。
【0008】
通常、いわゆる経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施して、IGT又は糖尿病の存在を判定する。すなわち、IGT患者においては、75gグルコースを摂取した後に生じる血糖の増加が正常よりも大きく、とりわけ長時間続く、すなわち、6.7mM超10mM未満の血漿グルコースを示す。WHOが定義する通り、75gグルコースの摂取2時間後に決定した血糖値(OGTT)10mM以上から、糖尿病の血糖値となる。空腹時血糖値は、正常又は中程度に上昇する。IGTは、2型糖尿病へと進行する高い危険性、米国糖尿病学会が「前糖尿病」と呼ぶ状態、又は境界型糖尿病若しくは無症状糖尿病を生じる高い危険性を伴う。すなわち、IGTを発症する人々には、正常な耐糖能に戻りうる人々もいる。IGTの状態にとどまる人々もいる。しかし、IGTを発症すると、体内のインスリン分泌及び感受性が減退し続ける傾向があり、最終的には2型糖尿病を生じる。実際、IGTを有する個体の約40〜50%は、10年以内に2型糖尿病を発症する(心血管疾患及び微小血管合併症の危険性増大を伴う)。現在のところ、IGT患者の数が最も多く、有病率が最も高い東南アジア地域では、3億1400万人の人々がIGTを有すると推定されている。IGTの有病率は年齢とともに上昇し、男女間に著明な差はなく、特定の民族集団がIGTのより高い有病率を有し、欧州におけるIGTの有病率は米国の場合と同様であることが判明した。
【0009】
別の研究は、2型糖尿病患者が追跡期間中に死亡する可能性は、正常な血糖コントロールを有する人々と比べて2倍超高いことを示した。IGT患者が追跡期間中に心血管合併症で死亡する可能性は、正常な血糖コントロールを有する人々と比べて50%超高かった。
【0010】
今日、IGTは、上記に示した通り、個体が75gグルコースを摂取し、1及び2時間後にそれぞれ血糖値を決定する、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を用いて判定される。或いは、被験者が試料採取以前に何も食べないように求められる、空腹時血糖値試験が用いられる。IGTを有する患者は、病態の診断がまれであるために、治療されることもまれである。IGTは、身体活動を増やすこと、健康な体重を維持すること、及び健康的でバランスのとれた食事をとることによって予防することができる。
【0011】
上記の観点から、IGTの判定及び診断を可能とする手段を提供することに対する依然として強い関心が存在する。
【0012】
メタボリックシンドロームは、糖尿病又は前糖尿病、腹部肥満又は肥満、コレステロールの変化、及び高血圧という、最も危険な心血管疾患(CVD)の危険因子の一群である。腹部肥満又は肥満は、メタボリックシンドロームの有病率の上昇の主な原因である。肥満は、インスリン抵抗性と因果関係のある軽度の炎症状態に寄与する複数の急性期タンパク質及び炎症性サイトカインの循環レベルの上昇と関連する。インスリン抵抗性は、メタボリックシンドローム患者の大半において存在し、心血管疾患及び2型糖尿病の危険性とも強く関連している。
【0013】
脂肪組織又は脂肪細胞は、「アディポカイン」と総称される広範なタンパク質因子を分泌又は放出する。これらのアディポカインは、脂質代謝、インスリン感受性、副経路補体系、血管止血、血圧調節、及び血管新生のほか、エネルギーバランスの調節に関与する。加えて、炎症(TNF−アルファ、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、形質転換成長因子、神経成長因子)及び急性期反応(プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI−1)、ハプトグロビン、血清アミロイドA)に関与するアディポカインのリストが増大しつつある。PAI−1レベルの上昇が血栓形成促進状態に寄与する一方、アディポネクチンの低レベルは、代謝性危険因子の増悪と相関する。インスリン抵抗性も、II型糖尿病の根底をなす主要な影響の1つである。
【0014】
現在のところ、耐糖能異常(IGT)など2型糖尿病プリフォームに罹患する患者の初期同定を裏付ける唯一の診断法は、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施することである。この試験は、時間がかかり、その結果費用がかかり、定期的には実施されない。バイオマーカー、例えば、血液、血漿、血清、尿などの体液に由来するタンパク質又はペプチドを測定する診断的試験であれば、2型糖尿病プリフォームの診断に対する価値が高いであろう。
【0015】
現在のところ、耐糖能異常(IGT)など2型糖尿病プリフォームの治療は、まず、身体活動及び特別の食事及び体重減量によって治療する。これは、多くの場合に、ともに強力なインスリン増感剤であるグリタゾン又はチアゾリジネジオン(TZD)などの物質を用いて2型糖尿病を治療する、化学的治療法の早期の適用を回避することができる。最後に、これらの化学的治療法が失敗し始めた後で、これにインスリン注射を併用するか、又はインスリン注射を2型糖尿病の単一の治療として用いる。
【0016】
しかし、すべての患者が初期の治療的試みに対して同様に反応するわけではない。身体活動、特別の食事、及び体重減量から利益を得ない患者もいるが、利益を得る患者もいる。この差の理由は不明であり、どのIGT患者が身体活動の増加、食事、及び体重減量から利益を得るかを層別化又は予測する、信頼できる診断法は現在のところ得られていない。こうした診断法であれば、この治療戦略に対して最も有望な患者を同定する価値が高いであろう。同時に、予測結果が陽性であれば、他の方法では達成の困難な、身体活動及び食事に関する自身の生活の変更に対する患者の遵守を高度に改善する可能性が最も高いであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】試料解析の図式を示す図である。
【図2】図1の試料の測定値のグループであって、解析中に比較したグループを示す表である。
【図3】本発明の様々な実施形態に従って用いるペプチドを収載する表である。
【図4】2型糖尿病プリフォームを判定するマーカーパネルとして適するペプチドの組合せを収載する表である。
【図5】個体が2型糖尿病プリフォームの改善に関する身体運動及び/又は食事による介入から利益を得るかどうかを判定する個体の層別化のためのマーカーパネルとして適するペプチドの組合せを収載する表である。
【図6】開示された方法に従って用いる288個のペプチドを収載する表である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本明細書で用いる「個体」又は「対象」又は「生物」という用語は、治療若しくは予防を必要とするか、又は本明細書に記載の病態若しくは疾患に罹患すると推定される個体又は対象又は生物を、本明細書の全体において互換的に指す。対象又は個体又は生物は、脊椎動物であることが好ましく、哺乳類、特にヒトであることがより好ましい。
【0027】
本発明の実施形態による方法は、個体に由来する試料を用いるステップと、当業者に知られる適切な手段及び手順を用いて、本発明に従う少なくとも1つのタンパク質若しくはペプチド又はその修飾形態の量をin vitroにおいて測定するステップとにより実施することが好ましい。
【0028】
図1では、7つの大ボックスのそれぞれが、試料グループを表す。「NGT」と標識したボックスは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による測定で、正常な耐糖能を有する試料を表す。「IGT」と標識したボックスは、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)による測定で、耐糖能異常を有する試料を表す。中段の2つのボックスは、試験開始(t、ベースライン)時において分析した試料を表し、下段の4つのボックスは、12カ月後の試験終了(t12、追跡)時に測定した試料を表す。「ベースライン」とは、ライフスタイル介入試験以前に測定したペプチドのシグナルを意味し、「追跡」とは、ライフスタイル介入試験以後に測定したペプチドのシグナルを意味する。中段の2つのボックスは、下半分において、各々が、これもまたNGT及びIGTで標識した2つの「サブボックス」に分かれる。これらのサブボックスは、試験開始時tにおける試料であって、将来試験終了時t12においてNGT試料又はIGT試料となる試料を表す。小文字a、a1、a2、b、b1、b2、c、d、e、及びfを付したグレーの小ボックスは、試料の各グループの標識であり、これが、図2に対応し、どのグループのどの測定値を分析において比較したのかを示す。グループ「a」は、グループ「a1」と「a2」との和に等しく、グループ「b」は、グループ「b1」と「b2」との和に等しい。
【0029】
図2は、データ解析中に相互に比較した試料の異なるグループ(a、b、a1、a2、b1、・・・)を表し、その結果としてペプチドグループ(グループI、II、及びIII)が得られ、これらのグループが、「食事及び身体運動による介入」の有益性の判定、2型糖尿病プリフォームの判定、及び2型糖尿病プリフォームの予後予測に適するペプチドを表す。加えて、グループI、II、及びIIIのサブグループを示す(A1、A2、A3、D1、・・・)。
【0030】
図3は、本発明の各種の実施形態に従うペプチド及び各々のシグナルIDを番号順に収載する。シグナルIDとは、対応するペプチドが、分画36(F036.)で同定され、該ペプチドが、2591.5ドルトンの分子量を有することを示す。質量決定の精度が±1ドルトンであることに注意する。これらのデータは、本発明書で以下に記載の実施例の説明とともに、その配列が今まで知られておらず、このために図3の表の右端の欄に収載されない場合であっても、前記ペプチドを正確に同定する。さらに、図3中の表は、「グループ番号」と称する欄において、各ペプチドが属するペプチドの1つ又は複数のグループを収載する。本特許出願の特許請求の範囲においては、これらのグループを参照する。図3中の表は、図1に示し、本記載の後出において説明するA1、A2、A3など、グループI、II、及びIIIのサブグループをも収載する。「エンドポイントマーカー」及び「パネルに対する適性」と称する欄は、ペプチドバイオマーカーが有用である測定の1つ又は複数の種類を示す。
【0031】
図3中の表で用いる「有益性」という用語は、このペプチドの測定が、個体が2型糖尿病プリフォームの改善に関する身体運動及び/又は食事による介入から利益を得るかどうかを判定する個体の層別化に適することを示す。「OGGT」又は「IGT」は、このペプチドの測定が、経口ブドウ糖負荷試験又は2型糖尿病プリフォームを診断するための別の診断法に代替する又はこれを補完するのに適することを示す。
【0032】
図3中の表と関連して用いる「診断」という用語は、特定のペプチドの測定が、経口ブドウ糖負荷試験又は2型糖尿病プリフォーム、特に、IGTを診断するための別の診断法に代替する又はこれを補完するのに適することを示す。
【0033】
図3で用いる「予後予測」という用語は、特定のペプチドの測定が、2型糖尿病プリフォームを発症する及び/又は2型糖尿病を発症する危険性が高い遺伝的な素因を有するか、又は過去に2型糖尿病プリフォームに罹患した及び/又は2型糖尿病に罹患した可能性が高い個体を検出するのに適することを示す。2型糖尿病プリフォームにかつて罹患したがもはや罹患しない、及び/又は2型糖尿病に罹患した個体は、その体内に一定の不可逆的な変化を蒙る可能性があり、この不可逆的な変化が、その体内のペプチド量の変化により反映される可能性があることを仮定する。これらの個体は、2型糖尿病プリフォームを再発する、及び/又は2型糖尿病を再発する可能性が高いことをさらに仮定する。結果として、「予後予測」に分類されたペプチドは、2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病に罹患することに関する個体の予後予測に適しうる。
【0034】
図3中の「調節」と称する欄は、個体が2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病に罹患しつつある、又は罹患する可能性が高い、又は過去に罹患した可能性が高い場合に、前記個体において特定のペプチド量がどちらの方向に変化するのかを示す。ペプチド量の変化の方向(増加又は減少)は、2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病、特に、IGTに罹患する、又は罹患する可能性が高い、又は過去に罹患した可能性が高い個体の群のいずれの1つにも属さない個体における同一のペプチド量と比べて計算する。
【0035】
図3において、「前駆体の名称」と称する欄は、該ペプチドが由来するタンパク質の名称を示す。「配列」と称する欄は、1文字のアミノ酸コードで記した該ペプチドのアミノ酸配列を列挙し、「分子と配列位置」と称する欄は、該タンパク質の省略名を提示し、該ペプチドの由来及び前記タンパク質内における該ペプチドのアミノ酸配列位置を示す。さらに、「修飾」と称する欄は、前記ペプチド中で同定されるか、又は質量分析検査により前記ペプチド中に存在する可能性が高い修飾を示す。
【0036】
図4は、2型糖尿病プリフォームの「マーカー」として役立ち、マーカーパネルを提供するのに適する他のペプチドマーカーと組み合わせる、本明細書に開示のペプチドの組合せを収載する。
【0037】
図5では、個体が2型糖尿病プリフォームの改善に関する身体運動及び/又は食事による介入から利益を得るかどうかを判定する、個体の層別化のためのマーカーパネルとして適するペプチドの組合せを収載する。図5の左側の欄は、「マーカーパネルに適するマーカー」と称する欄における任意の1つのペプチドと組み合わせてマーカーパネルを作製することのできるペプチド(図3中の表に従う「シグナルID」により示す)を収載する。
【0038】
グループI、II、及び/又はIIIのペプチドと組み合わせる、図4及び5のペプチドを、特許請求の範囲では「追加のペプチドマーカー」と呼ぶ。
【0039】
図6は、本明細書に記載の現在の方法により用い、及び/又は調べ、若しくは同定する288のペプチドを収載する。図6のペプチドはすべて、サブグループA1、A2、又はA3に属するペプチドを表す。これらのペプチドの一部は、図3にも収載する。
【0040】
2型糖尿病プリフォームの診断
図3中の表に示す通り、一実施形態に従うグループIのペプチドは、2型糖尿病プリフォームの診断において役割を果たすペプチドを含む。グループIのペプチドは、F067.4181.5、F067.2440.5、F024.1161.5、F034.2008.5、F029.1736.5、F066.4390.5、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5を含む。
【0041】
第1の実施形態では、個体における2型糖尿病プリフォームの存在又は不在を検出する方法であって、
a)個体の試料中における、F067.4181.5、F067.2440.5、F024.1161.5、F034.2008.5、F029.1736.5、F066.4390.5、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5からなる群(グループI)から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体における前記2型糖尿病プリフォームの存在又は不在を判定するステップと
を含む方法を記載する。
【0042】
前記方法は、グループIの少なくとも1つ若しくは2つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定することを特徴とすることが好ましい。
【0043】
その方法は、グループIから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態、及びグループIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する、図4中のペプチドから選択される少なくとも1つの追加のペプチドの量を測定することを特徴とすることが好ましい。
【0044】
好ましい実施形態において、その方法は、グループIの少なくとも2つのペプチド又はその修飾形態の量を測定することを特徴とする。さらに、その方法は、グループIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において増大することを特徴とする。
【0045】
別の実施形態において、その方法は、グループIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において減少するか又は不在であることを特徴とする。例えば、本方法は、グループIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを形成する、図4中のペプチドから選択される少なくとも1つのペプチド、又は図4中のこれらのペプチドの修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において増加することを特徴とする。或いは、その方法は、グループIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを形成する、図4中のペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又は図4中のこれらのペプチドの修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において減少するか又は不在であることを特徴とする。
【0046】
食事及び運動療法の成功に対する予後予測
別の好ましい実施形態において、本方法は、食事及び/又は運動(身体運動)レジメンを含む治療法の有用性を判定する、2型糖尿病プリフォームに罹患した個体の層別化に関する。この方法は、図3に示す少なくとも1つのグループIIペプチドの量の検出及び決定を含む。具体的には、グループIIペプチドは、ペプチドF036.2591.5、F046.4874.5、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5、F050.2199.5、F031.1820を含む。
【0047】
より具体的には、この代替の好ましい実施形態に従う方法は、
a)個体の試料中における、F036.2591.5、F046.4874.5、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5、F050.2199.5、F031.1820からなる群(グループII)から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体に対する前記治療法の有用性を判定するステップと
を含む。
【0048】
前記方法は、グループIIの少なくとも1つ若しくは少なくとも2つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定することを特徴とすることが好ましい。例えば、該方法では、グループIIのペプチド又はその修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において増加する。或いは、グループIIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において減少するか不在である。
【0049】
例えば、上述の方法は、グループIIから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態、及びグループIIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する図6中のペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチドの量を測定することを特徴とする。さらなる実施形態において、その方法は、グループIIの少なくとも2つのペプチドの量を測定することを特徴とする。
【0050】
さらに、その方法は、グループIIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを形成する、図5中のペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又は図5中のこれらのペプチドの修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において増大することを検出するステップに関する。グループIIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを形成するペプチド、図5中のペプチドからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又は図5中のこれらのペプチドの修飾形態の量が、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において減少する又は不在であることが好ましい。
【0051】
2型糖尿病プリフォーム又は2型糖尿病の予後予測
さらに好ましい実施形態において、個体が2型糖尿病プリフォームに罹患する予後の判定法を提供する。この方法は、図3に示す通り、少なくとも1つのグループIIIペプチドの量の検出及び決定を含む。具体的には、グループIIIペプチドは、ペプチドF066.4390.5、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804.5、F064.2789.5、F064.3020、F066.1394.5、F018.2069.5、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5、F021.2378.5、F024.1753.5、F068.7665.5を含む。
【0052】
より具体的には、個体が2型糖尿病プリフォームに罹患する予後の判定法は、
a)個体の試料中における、F066.4390.5、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5、F064.3020、F066.1394.5、F018.2069.5、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5、F021.2378.5、F024.1753.5、F068.7665からなる群(グループIII)から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体における2型糖尿病プリフォームの存在又は不在を判定するステップと
を含む。
【0053】
前記方法は、グループIIIの少なくとも1つ若しくは2つのペプチド又はその修飾形態の量を測定することを特徴とすることが好ましい。さらに、該方法は、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において増大する、グループIIIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量を測定することが好ましい。別の実施形態では、2型糖尿病プリフォームを有する前記個体において、グループIIIのペプチド又はその修飾形態の量が減少する又は不在である。前述の方法は、2型糖尿病プリフォームが、耐糖能異常(IGT)であることを特徴とすることが好ましい。
【0054】
その方法は、全血、血漿、血清、尿、脂肪組織及び肝組織を含みうる試料を用いて行ってよい。加えて、該ペプチドは、ELISA(酵素免疫測定)法、RIA法(ラジオイムノアッセイ)、ウェスタンブロット法、プロテインチップ法、質量分析法、免疫組織学法、フローサイトメトリー法などの1つ若しくは複数の方法、又は分子生物学的方法により決定する。
【0055】
別の実施形態は、グループI、II、若しくはIIIの任意の1つの分子であるペプチド又はその修飾形態に関する。該ペプチドは、図3の表に示す配列を有することが好ましい。
【0056】
本出願は、記載した実施形態に従うペプチドのネオエピトープに特異的に結合し、ペプチド自体が由来するタンパク質には結合しない抗体をさらに開示する。
【0057】
加えて、
a)本発明に従うペプチド;並びに/又は
b)本明細書に記載の抗体若しくは前記抗体の断片;及び
c)本明細書に記載の実施形態に従う方法に前記試験キットをどのように用いるかについての説明書
を含む試験キットを提供する。
【0058】
最後に、別の実施形態に従って、本明細書に記載の実施形態に従う試験キットの製造のための、
a)上述のペプチド;及び/又は
b)本明細書において特許請求に係る抗体若しくは前記抗体の断片
の使用を開示する。
【0059】
個体における2型糖尿病プリフォームの診断のための、場合によってはグループIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを作製する図4に収載の少なくとも1つのペプチド又は図4中のこれらのペプチドの修飾形態と組み合わせた、グループIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用について特許請求することが好ましい。
【0060】
或いは、2型糖尿病プリフォームの改善に関する若しくは2型糖尿病の改善に関する身体運動及び/又は食事による介入から利益を得る個体の層別化のための場合によってはグループIIの対応するペプチドと組み合わせてペプチドマーカーパネルを作製する図5に収載の少なくとも1つのペプチド又は図5中のこれらのペプチドの修飾形態と組み合わせた、グループIIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用について特許請求する。さらに、本出願は、2型糖尿病プリフォームに罹患する可能性の高い個体の予後予測のための、グループIIIの少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用に関する。
【0061】
好ましい実施形態において、本発明に従う使用は、IGTの予後予測、診断、又は層別化への使用である。
【0062】
本明細書に記載の方法及びペプチドは、本明細書に記載し、図3に示す少なくとも2つの異なるペプチド又はその修飾形態を用いて、個体のペプチド若しくはタンパク質パターン又はパネル(例えば、それぞれ、図4及び5を参照のこと)を決定することにより、前記個体における本明細書に記載の病態をモニターするのに特に有用である。MS−TOF法又はCE−MS法、SELDI法(表面増強レーザー脱離イオン化法)など、当業者に知られた通例の機器を用いることができる。
【0063】
以下の定義は、本出願全体において頻用される特定の用語の理解を容易にする目的で提示する。
【0064】
ペプチド
本明細書で用いる「ペプチド」は、リン酸基、炭水化物基、又は脂質部分などの翻訳後修飾を含むタンパク質を含む、天然に存在するすべての種類のタンパク質の断片でありうる。遺伝子コードがコードする標準的な20種類のアミノ酸のセットとは異なるアミノ酸を含むペプチドをも含む。試料は、全血、血清、血漿若しくは尿、残余の血液細胞を含む血清、血小板、赤血球、白血球など残余の血液細胞、又は試料が由来する個体に感染した微生物を含む血漿であることが好ましい。個体は、ヒト、哺乳類、げっ歯類、霊長類、マウス若しくはラット又は別の実験動物であることが好ましい。
【0065】
本明細書で用いる「ペプチド」という用語は、ペプチド結合により共有結合した2以上、好ましくは3以上、好ましくは4以上、好ましくは6以上、好ましくは8以上、好ましくは10以上、好ましくは13以上、好ましくは16以上、好ましくは21以上のアミノ酸からなる物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは少なくとも160アミノ酸を有するペプチドを指すが、一般に、「ペプチド」という用語と「タンパク質」という用語とは同意語であり、本出願においては同意語として用いる。本発明に従う「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸を含む物質のみでなく、非アミノ酸成分を含む物質をも含み、ペプチド結合のみを含む物質のほか、他の結合、例えば、エステル結合、チオエーテル結合、又はジスルフィド結合をも含む物質を含む。
【0066】
修飾ペプチド
本明細書で用いるペプチドの「修飾形態」は、翻訳後修飾、化学修飾、酵素修飾による修飾、及び他の機構による修飾などの修飾を含むペプチドを含む。可能な修飾の例は、グリコシル化、リン酸化、硫酸化、ピログルタミン酸修飾、システイン−ジスルフィド架橋、メチル化、アセチル化、アシル化、ファルネシル化、ホルミル化、ゲラニルゲラニル化、ビオチニル化、ステアロイル化、パルミチル化、リポイル化、C−マンノーシル化、ミリストイル化、アミド化、脱アミド化、メチル化、脱メチル化、カルボキシル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、酸化、PEG化、プレニル化、ADP−リボシル化、脂質付加、ホスファチジルイノシトール付加、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー付加、リン酸ピリドキサール付加、カルボキシアミドメチルシステインをもたらすシステイン残基修飾、カルボキシメチルシステインをもたらすシステイン残基修飾、ピリジルエチルシステインをもたらすシステイン残基修飾、リポ酸をもたらすリシン残基修飾、ピログルタミン酸をもたらすグルタミン酸修飾などを含むがこれに限定されない。
【0067】
本発明の実施形態に従うペプチドの修飾形態は、アルファアミノブチル酸、ベータアミノブチル酸、ベータアミノイソブチル酸、ベータアラニン、ガンマブチル酸、アルファアミノアジピン酸、4−アミノ安息香酸、アミノエチルシステイン、アルファアミノペニシラン酸、アリシン、4−カルボキシグルタミン酸、シスタチオニン、カルボキシグルタミン酸、カルボキシアミドメチルシステイン、カルボキシメチルシステイン、システイン酸、シトルリン、デヒドロアラニン、ジアミノブチル酸、デヒドロアミノ−2−ブチル酸、エチオニン、グリシン−プロリンジペプチド、4−ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、ホモセリン、ホモシステイン、ヒスタミン、イソバレイン、リシノアラニン、ランチオニン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、2−ピピリジン−カルボキシル酸、ピログルタミン酸、ピロリシン、プロリン−ヒドロキシプロリンジペプチド、サルコシン、4−セレノシステイン、シンデシン、チオプロリンなどを含むがこれに限定されない、まれなアミノ酸、化学的若しくは酵素的に修飾されたアミノ酸などを含んでよい。さらなる例は、ABRF「分子生物資源機関会議」のウェブサイト(http://www.abrf.org/index.cfm/dm.home?AvgMass<:>=all)で検索可能なデータベース「Delta Mass」などのデータベース中に見出すことができる。
【0068】
加えて、本発明に従うペプチドの修飾形態は、1つ又は複数のアミノ酸残基の変化、1つ又は複数のアミノ酸残基の欠失、及び1つ又は複数のアミノ酸残基の挿入(ペプチド若しくはタンパク質の突然変異体又はその多型形態)を含みうるアミノ酸配列における差異を特徴とする。
【0069】
ペプチド及び/又はタンパク質の多型形態とは、天然に存在する突然変異又は分子生物学、遺伝学、若しくは化学(核酸又はペプチド合成)などの技術を用いる実験的若しくは無作為的な配列の操作により生じる突然変異による配列の変異を意味する。さらに、ペプチド及び/又はタンパク質の多型形態は、配列アライメントにより判定する通り、相互に好ましくは70%の配列同一性、好ましくは75%、好ましくは80%、好ましくは85%、好ましくは90%、好ましくは95%、好ましくは97%、及び好ましくは99%の配列同一性を有する。2つの配列の配列アライメント内においてアミノ酸残基又はヌクレオチドが同一の配列位置におかれる場合、このアミノ酸又はヌクレオチドをこれら2つの配列において同一であるとみなす。例えば、第1の架空の配列「ACDEF」と、「D」が欠失した第2の架空の配列「ACEF」とを整列する場合、第2の配列の「F」と「H」との間にギャップを挿入する結果として「AC−EF」が生じ、これにより、第2の配列の第1の配列に対するより良好なアライメントが可能となる。結果として生じるアライメントにおいては、5つの配列位置のうち4つが、同一のアミノ酸残基により占められる結果として、第1の配列の第2の配列に対する80%の配列同一性を生じる。配列アライメントをどのように計算するかという方法は、本明細書の以下において記載する。
【0070】
一般に、「修飾ペプチド」又は「ペプチドの修飾形態」という用語は、天然に見出される該ペプチドのすべての種類の修飾を含む。加えて、「修飾ペプチド」という用語は、天然に見出されるペプチドに存在しうる修飾であって、試料を分析又は測定する、例えば、質量分析又は他の適切な方法により該ペプチドを測定する過程以前又は該過程中において、これらのペプチドを含むこれらの試料を保存及び/又は操作することから生じるすべての種類の修飾を含む。試料の保存及び/又は操作の結果として生じるこうした修飾の例は、酸化ペプチドである。
【0071】
2型糖尿病プリフォーム
糖尿病の「前形成状態」とは、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、境界型糖尿病、無症状糖尿病、インスリン抵抗性など、2型糖尿病をもたらすと考えられる疾患又は病態を指す。
【0072】
陰性対照試料
「陰性対照試料」とは、2型糖尿病プリフォーム又は2型糖尿病に罹患しない同一種の個体の試料である。陰性試料は、試料と同一の種類である、例えば、試料及び陰性試料ともに、血漿試料である、又はともに午前中に採取した尿試料である、又はともに生検により採取した脂肪組織試料などであることが好ましい。
【0073】
基準値
「基準値」とは、診断法において決定する同一のマーカー又はペプチドの既知の値である。基準値は、試料の値を決定する前、決定すると同時、又は決定した後に決定することができる。
【0074】
試料
本発明に従う「試料」とは、全血、血漿、血清、血液濾液、尿、脂肪組織、肝組織など、個体から得た生物学的材料である。試料は、個体から得た細胞であって、細胞自体又はこれら細胞から得た細胞培養物上清でありうる、in vitroにおいて培養した細胞から試料を得る前に、in vitroにおいて培養していた細胞など、個体から間接に得た材料でもありうる。試料は、本発明の方法による分析前に前処理することもできる。こうした前処理は、例えば、室温、4℃、0℃、−20℃、−70℃、−80℃、若しくは他の温度などの各温度における試料の保存、又は水氷若しくはドライアイス上での保存、又は液体窒素中における保存、或いは他の固体媒質、液体媒質、又は気体媒質中での保存でありうる。とりわけ、さらなる前処理は、1、3、5、30、50、100、150、300、又は1000kDaの分子分画値によることが好ましい限外濾過などの試料の濾過、塩、エタノール又は他のアルコール、アセトンなどの有機溶媒を用いる試料の沈析、クロマトグラフィー、液相抽出、固相抽出などの方法を用いる試料の亜分画への分離、抗体、抗体断片、又は試料成分に結合する他の物質を用いる免疫沈降反応である。とりわけ、クロマトグラフィー法は、限外クロマトグラフィー、陰イオンクロマトグラフィー又は陽イオンクロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、キャピラリークロマトグラフィーなどであり、逆相クロマトグラフィーが好ましい。亜分画への分離により試料を前処理する場合、個々の、一部の、又はすべての分画及び/又は流動物及び/又はクロマトグラフィー媒質上に残った任意の物質を、試料のさらなる分析に用いてよい。
【0075】

「量」という用語は、ペプチドの絶対量又は、例えば、陰性試料中の同一のペプチドと比べた、若しくは同一のペプチドの基準値と比べたペプチドの相対量について述べる。相対的とは、モル又はmg/リットルなどの明確な量を明示することではなく、例えば、該試料が、基準試料又は基準値と比べて、より多い量の、より少ない量の、又は同一量の特定ペプチドを含むことを明示することを意味する。この状況における「より多い量、より少ない量、又は同一量」という用語は、測定単位が明示されさえすれば、吸光値、減衰係数、質量分析シグナル強度、ウェスタンブロット法の濃度測定値、又は該ペプチドの絶対量に変換されない他の種類の測定値などをも含む。
【0076】
減少した又は不在である
本発明に従う「減少した」は、試料中にペプチドが、別の試料と比べて、又は対照試料と比べて、又は陰性対照試料と比べて、又は、これらの測定値が相対測定値であるか若しくは絶対測定値であるかにかかわらず、基準値と比べて、より低量(smaller quantities, or amounts)又はより低濃度において存在することを意味する。本発明に従う「不在である」とは、ペプチドが試料中に全く存在しないこと、又はペプチドが試料中に一定量(a quantity, or amount)又は一定濃度において存在するが、その量又は濃度が、前記ペプチドを検出又は測定するのに用いる試験系の検出限界未満であることを意味する。減少したペプチドは、一定の濃度又は量において存在し、比較対象の値を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも1000%、又は少なくとも1000%超下回ることが好ましい。
【0077】
増加した又は存在する
「増加した」とは、試料中にペプチドが、別の試料と比べて、又は対照試料と比べて、又は陰性対照試料と比べて、又は、これらの測定値が相対測定値であるか若しくは絶対測定値であるかにかかわらず、基準値と比べて、より高量(higher quantities, or amounts)又はより高濃度において「存在する」ことを意味する。増加したペプチドは、一定の濃度又は量において存在し、比較対象の値を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、少なくとも500%、少なくとも1000%、又は少なくとも1000%超上回ることが好ましい。
【0078】
試料を分析するのに適する方法
一般に、試料中に存在するペプチドを検出及び分析するのに適するすべての方法を、開示の方法において用いることができ、本発明のペプチド、核酸及び断片、誘導体の存在、不在、又は量を測定するのに用いることができる。好ましくは、質量分析法、プロテインチップアッセイ、免疫学及び分子生物学の方法を用いうる。
【0079】
とりわけ、適切な質量分析法は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、連続的又はパルス状のエレクトロスプレーイオン化(ESI)法、及びイオンスプレー法若しくはサーモスプレー法若しくはマッシブクラスター衝撃(MCI)法などの関連する方法でありうる。イオン供給源は、リニア反射型又は非リニア反射型の飛行時間(TOF)法、単独又は多重の四重極法、単独又は多重の磁場法、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)法、イオントラップ法、及びこれらの組合せ、例えば、イオントラップ/飛行時間法を含む検出形式と適合させることができる。イオン化では、多数のマトリックス/波長の組合せ(MALDI)又は溶媒の組合せ(ESI)を用いることができる。他の適切な質量分析法は、例えば、高速原子衝撃(FAB)質量分析法、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)質量分析法、同位体コード親和性タグ(ICAT)質量分析法、又は親和性質量分析法である。
【0080】
さらに、適切な免疫学的方法は、とりわけ、酵素結合免疫測定(ELISA)法、サンドイッチELISA法、直接ELISA法、間接ELISA法、競合ELISA法、酵素結合免疫スポット測定(ELISPOT)法、ラジオイムノアッセイ(RIA法)、フローサイトメトリー(FACS=蛍光活性化細胞選別)法、免疫組織化学法、ウェスタンブロット法、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法、例えば、開示のペプチドに対して特異的な抗体、抗体断片、受容体、リガンド、又は他の結合作用物質を用いるプロテインチップ法である。
【0081】
食事及び/又は身体運動を含む治療
本明細書で用いる「食事及び/又は身体運動を含む治療」という表現は、2型糖尿病プリフォームを予防、治癒、若しくは改善するための治療戦略及び/又は2型糖尿病を予防、治癒、若しくは改善するための治療戦略を指す。2型糖尿病プリフォームの改善、又は2型糖尿病の改善とは、個体が、食事及び/又は身体運動により、2型糖尿病プリフォームを治療する又は2型糖尿病を治療するのにもはや薬剤を必要としない、或いはより少量の薬剤及び/又はより低用量の薬剤及び/又はより低投与回数の薬剤、及び/又は「より弱い薬剤」のみを必要とすることを意味する。「より弱い薬剤」とは、例えば、2型糖尿病プリフォームを治療するのに用いるのが通例である、又は2型糖尿病を治療するのには用いない若しくは他の薬剤との併用でのみ用いる薬剤を意味する。例えば、インスリン注射と比べて「弱い薬剤」は、化学療法剤である。
【0082】
予後予測
「予後予測」とは、個体が、2型糖尿病プリフォーム又は2型糖尿病などの病態を発症する可能性が高いかどうかを予測することを目的とする。予後予測は、個体が将来においてこうした病態に罹患する可能性が高いこと、又は個体が将来においてこうした病態に罹患する可能性が低いこと、又は個体が過去においてこうした病態に罹患した可能性が高いこと、又は個体が過去においてこうした病態に罹患した可能性が低いことでありうる。
【0083】
ネオエピトープ
「ネオエピトープ」とは、その抗原にいまだ結合している抗体又は抗体断片が認識する抗原のエピトープであって、タンパク質の断片である特定のペプチド中のみにおいて存在し、完全なタンパク質中には存在しないエピトープである。
【0084】
抗体
「抗体」は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウサギ、畜牛、ブタ、ヤギ、ヒツジなど、すべての種の抗体、血清、血漿、卵子など、天然において見出される材料に由来する抗体、分子生物学又は遺伝子組換え技術を用いて作製した抗体、例えば、マウスなど異なる種の抗体に由来する抗体の抗原結合部分以外の部分に限りヒトアミノ酸配列を含む、ヒト化抗体などのキメラ抗体を含むものとする。さらに、本発明には、抗体が依然その抗原に結合する限りにおけるFab、Fab2、又は他の抗体断片などの抗体断片、IgG、IgA、IgM、IgE、IgYなどすべての抗体クラスの抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル抗体(複数のモノクローナル抗体の混合物)、及びポリクローナル抗体、血漿、血清、組織培養物上清、腹水、細胞培養槽などの供給源から精製した又は非精製の又は部分精製の抗体、約1%、約5%、約10%、約20%、約50%、約75%、約80%、約90%、約95%、約98%、98%超の純度まで精製した抗体が含まれる。抗体は、目的の抗原に特異的な抗体のみを含むことができるか、又は加えて、例えば、非精製のポリクローナル抗血清若しくは非精製の抗体含有細胞培養物上清(抗体産生細胞を培養するのに用いる血清に由来することが通例である非特異的抗体)の場合が通例である、他の特異性を有する他の抗体を含むことができる。
【0085】
試験キット
「試験キット」は、試験キットにより検出するペプチドと同一の精製した、又は部分精製の若しくは非精製のペプチドでありうる標準物質を含んでよい。さらに、試験キットは、陽性対照試料(試験中にシグナルを発する)及び陰性対照試料(シグナルを発しないか、又は予測される背景シグナルを示す)、抗体又は抗体断片又は酵素と結合した抗体などの結合作用物質、フルオロフォア、放射性物質、前記結合作用物質で被覆したマイクロタイタープレート、SELDIチップ、プロテインチップ、BIACOREチップなどの表面、酵素基質、オリゴヌクレオチドプローブ、緩衝液、ペプチド標準物質、試験をどのように行うかの説明書などを含んでよい。
【0086】
本発明の方法と他の診断法との併用
本発明の方法を他の診断法と併用して、診断の正確さ、信頼性、特異性などを改善してよい。例えば、本発明の方法を以下の1つ又は複数の診断法と併用することができる。肥満指数(BMI)の判定、「ウエスト対ヒップ比」の判定、血圧の測定、「経口ブドウ糖負荷試験」の実施、磁気共鳴分光法などの方法を用いる肝脂肪含量の測定、以下の物質のいずれか1つの測定:Cペプチド(インスリンの断片)、インスリン、アディポネクチン、グリコシル化ヘモグロビン(Hba1cとも呼ぶ)、並びにコレステロール及び/又は脂肪酸若しくは脂質の測定。
【0087】
有益性
「有益性」という用語は、個体が2型糖尿病プリフォームの改善に関する身体運動及び/又は食事による介入から利益を得るかどうかを判定する、個体の層別化に適する特定のペプチドの測定に関して用いる。「OGGT」又はIGTは、このペプチドの測定が、経口ブドウ糖負荷試験又は2型糖尿病プリフォームを診断するための別の診断法に代替する又はこれを補完するのに適することについて述べる。
【0088】
「予後予測」
本明細書で用いる「予後予測」とは、2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病を発症する危険性の高い素因、好ましくは遺伝的素因を有する個体、或いは過去において2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病に罹患した可能性の高い個体を検出するのに適するペプチドを測定することを指す。2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病を過去に有したがもはや有さない個体は、その体内に一定の不可逆的変化を蒙る可能性があり、この不可逆的変化がその体内におけるペプチド量の変化により反映される可能性があることを仮定する。これらの個体が、2型糖尿病プリフォームを再発する及び/又は2型糖尿病を再発する可能性が高いことをさらに仮定する。結果として、「予後予測」に分類されるペプチドは、2型糖尿病プリフォーム及び/又は2型糖尿病に罹患する個体の予後予測に適しうる。
【0089】
「診断」
「診断」という用語は、経口ブドウ糖負荷試験、又は2型糖尿病プリフォーム、特に、IGTを診断するための別の診断法に代替する又はこれを補完するのに適するペプチドの測定について述べることを目的とする。
【0090】
配列アライメント並びに配列相同性及び配列同一性の計算の準備
配列相同性を計算するために、GAPアルゴリズム(Nucleic Acids Res.、第12巻、387〜395頁)、BLASTPアルゴリズム、BLASTNアルゴリズム、FASTAアルゴリズム(J Mol Biol.、第215巻、403〜410頁)又はよく知られたSmith−Watermannアルゴリズムを含む、GCGソフトウェア一式(米国、ウィスコンシン州、マジソン、ウィスコンシン大学、Genetics Computer Group)などのコンピュータプログラムを用いることができる。アミノ酸配列の比較又はアライメントに用いる好ましいパラメータは、Needleman及びWunschのアルゴリズム(J Mol Biol.、第48巻、443〜453頁)、BLOSUM 62マトリックス(Proc Natl Acad Sci USA.、第89巻、10915〜10919頁)、ギャップペナルティー12、ギャップ長ペナルティー4、及び類似性の閾値0を含む。GAPソフトウェアは、前述のパラメータにより用いるのにも適する。前述のパラメータは、アミノ酸比較のためのデフォルトのパラメータであって、配列の端部におけるギャップが相同性値を減少させないパラメータである。8〜20アミノ酸残基長の配列など極めて短い配列を比較する場合、期待値を100000まで増加させ、ワード長を2まで減少させることが必要な場合がある。さらに適切なアルゴリズムは、ギャップ開始ペナルティー、ギャップ伸長ペナルティーの使用、及び1997年9月以降のWisconsin Package、バージョン9のプログラムハンドブックに見出される行列の使用である。最適のアルゴリズムの選択は、実施する比較の種類によって決まる。2つの配列を比較する場合は、GAPアルゴリズム又はBest Fitアルゴリズムが好ましく、1つの配列を配列データベースと比較する場合は、FASTAアルゴリズム及びBLASTアルゴリズムが好ましい。70%の配列同一性を、70%の相同性ともいう。同一性とは、アライメントのいずれの配列内においても同一の配列位置に同一のアミノ酸残基又はヌクレオチドが存在することを意味する。
【0091】
IGT用となる可能性のあるバイオマーカー
食後のグルコース代謝における変化と相関するペプチドバイオマーカーを得るために、以下のグループをt及びt12において比較した(p<0.01)。2つのマーカーセットの間には最小限の重複が存在する結果、14ペプチドのより頑健なリスト(「IGTマーカー」)が得られた。
【0092】
ベースライン時(t0)のOGTTにおいて正常であった被験者をN@BL又はグループa(図1参照)(ベースライン時におけるNGT)と記し、追跡来院時(t12)に正常であった被験者をN@FU又はグループb(図1参照)(追跡時におけるNGT)と記した。同様に、ベースライン時のOGTTにおいて異常であった被験者をI@BL又はグループb(ベースライン時におけるIGT)と記し、追跡来院時(t12)に異常であった被験者をI@FU又はグループd+f(追跡時におけるIGT)と記した。NGTからIGTを発症した個体は、ベースライン来院時におけるNBLFU又はグループa2(ベースライン時にはNGTであったが、追跡時にはIGTを発症した)、及び追跡来院時におけるIFUBL又はグループd(追跡時にはIGTであったが、ベースライン時にはNGTであった)と記した。他のIGTサブグループ又はNGTサブグループにも同じ表記法を用いた。
【表1】


A1+A3=マーカーがより頑健
【0093】
IGTからNGTへの転換者は、食後高血糖の履歴を有する。被験者が追跡来院時にNGTでありえても、過去における耐糖能異常に関連する代謝特性又は表現型特性は残存し、特定のペプチドプロファイル(「不可逆性マーカー」)と相関すると仮定した。マーカーグループA2は、別のグループへ転換したか否かにかかわらず、追跡時におけるもとのNGTグループ及びIGTグループの間で異なるペプチドについて述べる。
【表2】


A1+A2+A3=マーカーがより頑健
【0094】
ライフスタイル介入に対する反応の予測因子
以下のグループ比較を行い、どの被験者がライフスタイルの変化から利益を得てIGTからNGTへと転換するかを予測するバイオマーカーを同定する。当初IGTでNGTに転換した被験者のペプチドプロファイルを、IGTにとどまった被験者の場合とT及びTにおいて比較した。さらに、2つのマーカーセットの間の重複を計算した。
【表3】


D1+D2=マーカーがより頑健
【0095】
遺伝的素因マーカー
肥満であるか、IGTと診断されたか、又は2型糖尿病患者の第1等親者であるかした被験者を試験に組み入れた(1)。2型糖尿病を発症する家族的素因を有する被験者において、これらの異常は、IGTの診断以前に存在することがある。2回の検査間でNGTにとどまる患者が遺伝的素因を有さないのに対し、NGTからIGTに転換する患者又は該検査間でIGTにとどまる患者は遺伝的素因を有すると仮定した。将来においてIGTを発症する素因を示すマーカーを同定するため、Tにおけるペプチドプロファイルであって、試験の全期間においてNGTにとどまる患者に由来するプロファイルと、試験の全期間においてIGTにとどまる患者に由来するプロファイルとを比較した。
【0096】
加えて、T及びTにおけるNGT及びIGTの非転換者のサブグループを統合し、相互に比較した。いずれのペプチドリストも、36ペプチドの重複(「遺伝マーカー」)を有した。
【表4】


F1+F2=マーカーがより頑健
【0097】
ペプチドの同定
統計学的解析に基づき、異なるグループ比較に由来する25ペプチドのリストをまとめた。配列の同定には、同一分画中における低〜高存在比である5%のピークを上回る質量分析シグナルのみを選択した。ペプチドプロファイルの作製には患者の血漿を用いたので、前述の試験以来の既に分画された血漿のみが使用可能であった。こうして、IGTグループにおいて増加したペプチドの存在量があまりに少量であるため、健康ボランティア被験者の血漿プールに由来するペプチドを同定することができない場合もあった。
【0098】
13前駆体に由来する全20ペプチドを同定した。その前駆体タンパク質に仮定される代謝機能に従って、そのペプチドを、以下の種類に類別することができる。
・ 高密度リポタンパク質:アポC−III、アポL−I
・ 鉄及びヘムの代謝及び輸送タンパク質及びペプチド:ヘモペキシン、ヘプシジン
・ 炎症感受性血漿タンパク質:補体C4、フィブリノーゲン
・ 活性化血小板から放出されるタンパク質:チモシンベータ4
・ 骨吸収/形成に関与するペプチドホルモン:オステオカルシン、IGF−I
・ I型コラーゲン
・ アルブミン(プレアルブミン=トランスチレチン)
・ グルコース輸送及び代謝:IGF−I及びインスリン
【0099】
マーカー候補物質の詳細な説明
アポC−III
アポC−IIIの一般的な説明
血漿アポリポタンパク質CIII(アポC−III)は、トリグリセリド(Tg)に富むリポタンパク質(キロミクロン及びVLDL)の主要成分及びHDLの微量成分である。アポC−IIIは、リポタンパク質粒子のクリアランスに干渉するが、その主要な役割は、リポタンパク質リパーゼに対する生化学的な阻害によるとともに、脂肪分解酵素及びリポタンパク質受容体が滞留する細胞表面のグリコサミノグリカンマトリックスへのリポタンパク質の結合に対する干渉にもよる、脂肪分解阻害剤としてのものである。アポC−III発現の変化は、高トリグリセリド血症において重要な役割を有することが、明確に実証されている。食後の試験は、Tgに富むリポタンパク質(TRL)クリアランスの遅延が、心筋虚血症、頸動脈アテローム性硬化症、及びアテローム性動脈硬化の危険性と関連することを見出した。アポC−IIIは、ヒト血漿において最も豊富なCアポリポタンパク質であり、約12mg/dLの濃度である。
【0100】
同定されたアポC−IIIペプチド
そのグリコシル化のパターンのみが異なる、3つの同一なアポC−III(アミノ酸89〜99)ペプチドを同定した。そのC末端の長さのみが異なるアポC−IIIのN末端から、さらに2つのペプチドを同定した(アミノ酸20〜60、20〜61)。アポC−IIIのN末端に由来するペプチド(アミノ酸26〜46)は、脂質間相互作用特性を有することが示されている。親水性残基が、トリグリセリド代謝にとって重要なアポリポタンパク質と脂質との交換に関与すると推測された。
【0101】
アポC−IIIの潜在的な開裂部位
アポC−IIIは、肝臓で、また少量は腸で、99アミノ酸のペプチドとして合成される。小胞体内における20アミノ酸のシグナルペプチドの除去後、79アミノ酸の成熟アポC−IIIタンパク質は、8.8kDaの分子量を有する。in vitroにおけるアポC−IIIのトロンビン開裂の結果、残基21〜60のN末端ドメイン、及び残基61〜79のC末端ドメインが生じる。こうして、同定されたアポC−III断片の1つ(アミノ酸21〜60)は、トロンビン開裂産物でありうる。
【0102】
アポC−IIIの示差的なグリコシル化
アポC−IIIは、配列位置74のスレオニン残基におけるO結合型シアリル化の程度に応じて、アポC−III−0(シアル酸なし)、アポC−III−1(1モルのシアル酸)、及びアポC−III−2(2モルのシアル酸)の3つの異なるアイソフォームにおいて存在する。本試験において本発明者らが同定したペプチドは、そのグリコシル化のパターンにおいて異なる。
【0103】
アポC−IIIの機能
アポC−IIIは、in vivo及びin vitroにおいて、リポタンパク質リパーゼによるTGに富む粒子の加水分解、及びアポEが介在する該分解物の肝臓による取り込みを阻害する。こうして、アポC−IIIは、Tgに富むリポタンパク質の分解において重要な役割を有する可能性がある。McConathyらは、アポC−IIIの合成ポリペプチド断片を用いて、アポC−IIIのN末端ドメインが、リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性の阻害の主な原因であることを観察した。候補物質18(アミノ酸21〜61)と同一なCNBr開裂ペプチド(アミノ酸1〜41)が、LPL活性を阻害する。
【0104】
アポC−IIIと糖尿病又はIGT
アポC−IIIのアテロームを誘発する役割のほか、メタボリックシンドロームにおいて冠動脈疾患(CAD)の危険性を生じる高トリグリセリド血症の該役割がよく認識されている。大規模なCARE(コレステロール及び再発事象)臨床試験の結果は、アポC−IIIレベルが、従来測定されたTGレベルよりも優れた、CADの発現及び進行危険性に関する予測因子であることを示した。
【0105】
アポC−III遺伝子は、インスリンレベルにより転写が下方調節され、インスリン応答を媒介する核転写因子に対する親和性の低下と関連する、プロモーター領域における遺伝子多型が記載されている。こうして、遺伝子レベルにおいて「インスリン抵抗性」と関連すると思われる、インスリン応答要素における遺伝子多型が記載された。アポC−III T−455C変異体のホモ接合性は、CADの危険性に対する感受性の独立因子をなす。
【0106】
欧州アテローム性動脈硬化研究試験(EARS)IIでは、アポC−III変異体を有する男性被験者の食後応答が解析された。まれなC−482T変異体の相同保有が、OGTT後におけるグルコース濃度及びインスリン濃度を著明に上昇させた。
【0107】
バイオマーカーとしてのアポC−IIIペプチドの使用
同定されたペプチドは、アポC−IIIのN末端及びC末端に由来し、IGTと正に相関した。これらのペプチドレベルの上昇は、OGTTを用いる必要なく見出された。こうして、一晩の絶食後にレベルの上昇を検出しうる。該ペプチドレベルは、アポC−III前駆体レベルの上昇と相関する可能性が高い。血漿アポC−III濃度は、EDTA血漿中で、和光純薬工業株式会社(日本、大阪)製のキットを用いて測定することができる。
【0108】
該ペプチドを用いて、インスリン感受性の異常を診断してよい。さらに、タンパク質分解による開裂は、LPL活性を阻害する可能性を有する循環ペプチドを放出する。アポC−III発現の上昇のほか、LPL活性を阻害しうるペプチドの放出もともに、LPL活性の低下に寄与しうる。
【0109】
アポL−I
アポL−Iの一般的な説明
アポL−Iは、血漿並びに肝臓、肺、脳、膵臓、胎盤、及び血管内皮など各種の組織中に見出される42kDaのタンパク質である。血漿中において、アポL−Iは、大径HDL粒子(アポA−Iを含むリポタンパク質の10%において見出される)と主に関連する。遊離アポLは、血漿中において検出されなかった。コレステロールの輸送に関与するリポタンパク質との関連により、アポL−Iは、脂質の輸送及び代謝に役割を果たすと考えられる。
【0110】
加えて、アポL−Iは、ヒト血清におけるトリパノソーマ溶解因子であることが近年判明した。該タンパク質は、病原体の膜を透過化する、細孔形成ドメインを含む。
【0111】
アポL−Iの潜在的な開裂部位
同定されたアポL−Iペプチドは、該タンパク質のN末端に由来する。Lp(A−I)粒子から単離されたアポLは、42kDa及び39kDa(微量形態)の2つの形態において観察された。切断型の種は、他の複数の血漿アポリポタンパク質の場合と同様に、該タンパク質のタンパク質分解による活性化形態を表しうると推測された。N末端配列決定を実施して、該39Kda形態のN末端である、DWAAGTMDPEを決定した。本発明者らが同定したN末端ペプチドは、タンパク質分解による予測開裂部位と一致する。
【0112】
アポL−Iと糖尿病又はIGT
血漿アポL−Iレベルは、原発性高コレステロール血症(対照における8.5μg/mLに対して10.1μg/mL)、内因性高トリグリセリド血症(13.8μg/mL)、高脂血症表現型の統合(18.7g/mL)、及び高脂血性のII型糖尿病患者(16.2μg/mL)において上昇する。アポLと、肥満指数、年齢、性別、HDLコレステロール、又は空腹時の血糖値及びグリコヘモグロビンレベルとの間に著明な相関関係は認められなかった。原発性コレステリルエステル輸送タンパク質欠損症患者の血漿中におけるアポLレベルは、著明に上昇した(5.47±0.27に対して7.1±0.5)。
【0113】
バイオマーカーとしてのアポL−Iの使用
同定されたペプチドは、IGT(WHO基準)の存在と正に相関する。この知見は、これまで述べられなかった。アポL−I値の上昇は、IFG又は2型糖尿病を有する被験者のみにおいて測定されてきた。該ペプチドは、39Kda形態の存在とも相関しうる。しかし、39Kda形態が明確な生物学的機能を有するかどうかは、現在のところ知られていない。こうして、該ペプチドは、OGTTを実施する必要なくIGT(及び高い可能性でIFGも)を測定する単独マーカー又は多重マーカーとして用いてよい。しかし、アポL−Iレベル間の高度のばらつきにより、明確な分画値を定めることが困難となりうる。
【0114】
オステオカルシンプロペプチド
オステオカルシンの一般的な説明
オステオカルシン又は骨ガンマカルボキシグルタミン酸(Gla)タンパク質(BGLAP、又はBGP)は、翻訳中に開裂する23残基の転座シグナルペプチド、ガンマカルボキシル化するタンパク質を標的とする26残基のプロペプチド、及び49残基の成熟ペプチドからなる、11kDの分子として当初合成される。新規に合成されたオステオカルシンの大半が骨マトリックス内に沈着するが、少量は血中で検出することができ、骨芽細胞活性の特異的な指標としての現在の臨床的使用をもたらしているのはこの特性である。オステオカルシンは、完全な分子及び断片として、骨吸収中にも骨マトリックスから放出される。こうして、オステオカルシンは、骨形成及び骨代謝回転の両方に対するマーカーとして考えるべきである。オステオカルシンは、主に骨芽細胞、骨細胞、及び象牙芽細胞により産生されるが、メッセンジャーRNAは、骨以外の組織においても検出されている。
【0115】
しかし、該プロペプチドの帰趨についてはほとんど知られていない。オステオカルシン及びそのプロペプチドが共分泌されるならば、そのプロペプチドの濃度も骨芽細胞機能のマーカーとして有用でありえ、さらに、骨への結合による影響を受けないのでオステオカルシンより優れている可能性もある。オステオカルシンプロペプチドの血中における存在については、矛盾する結果が公表されている。
【0116】
オステオカルシンプロペプチドのタンパク質分解によるプロセシング
同定されたペプチドは、予測プロペプチドに由来する。オステオカルシンプロペプチドは、そのC末端の二塩基部位において開裂して成熟オステオカルシンペプチドを放出する。同定されたプロペプチドは、予測プロペプチドの小型の形態であり、N末端における2アミノ酸Lys−Ala及びC末端におけるArgを欠いている。これらの知見は、該プロペプチドのN末端が、DPPIV開裂部位を含む一方、C末端は、細胞内において、又はC末端のArg残基に特異的な血漿カルボキシペプチダーゼBによりプロセシングされる可能性がある。
【0117】
こうして、本知見は、なぜ特定の抗体が該プロペプチドの循環形態を検出できないのかを説明する一助となるであろう。
【0118】
オステオカルシンと糖尿病又はIGT
高血糖値及びインスリン分泌の欠如を標識とするインスリン依存性糖尿病は、骨量の低下及び骨折率の上昇と関連する。これに対して、2型糖尿病患者は、健康な対照と比べて、骨ミネラル密度(BMD)レベルが上昇することさえ多い。Akinら、Gynecol.Endocrinol、第17巻、19〜29頁、2003年、は、閉経後の2型糖尿病患者における骨代謝回転を評価し、糖尿病患者におけるBMD値が健康な閉経後の対照群よりも高く、血清オステオカルシンレベルが該対照群よりも著明に低いことを見出した。肥満指数とBMD値との間にも著明な相関関係が観察された。これらの知見は、2型糖尿病患者における骨代謝回転速度が、健康な閉経後患者と比べて著明に低いことを示唆する。
【0119】
Dennisonら、Diabetologia、第47巻、1963〜1968頁、2004年、は、1930年代にハートフォードシャーに生まれた男女を、グルコース代謝、インスリン分泌及びインスリン抵抗性並びに骨量の測定値に関して特徴づけた、ハートフォードシャーコホート試験において、2型糖尿病と骨密度の上昇との関係を探索した。彼らは、その根底にある機序は不明なままであるが、部分的には脂肪症を介し、男性よりも女性において著明な、BMDと2型糖尿病との間の正の相関をも見出した。
【0120】
Rosatoら、Calcif.Tissue Int、第63巻、107〜111頁、1998年、は、糖尿病患者において、血糖コントロールの改善が、血清オステオカルシン値及び血清インスリン様成長因子I(IGF−I)値の上昇と関連することを示した。糖尿病患者においては、オステオカルシン及びHbA1c及びグルコースに関して、ベースライン時から血糖コントロールの改善時に至る百分率変化に逆相関が存在した。これらのデータは、血糖コントロールの改善が、男女の糖尿病患者の骨代謝回転の上昇を伴い、おそらくは循環IGF−Iレベルの上昇を介していることを示唆する。
【0121】
バイオマーカーとしてのオステオカルシンプロペプチドの使用
本発明者らは、オステオカルシンのプロペプチドが、ベースライン時におけるNGT被験者と比較して、IGT被験者においては減少することを見出した(IGTマーカー)。オステオカルシンレベルは、ライフスタイルの変更後にNGTに転換するIGT被験者における方が、転換しない被験者の場合と比べて高い。現在までのところ、本発明者らは、オステオカルシンプロペプチドレベルを年齢又は性別と相関させていない。
【0122】
IGTにおける血漿オステオカルシンレベルは、様々な機序により低下しうる。該プロペプチドが、骨芽細胞の活性及び機能(骨形成)の直接のマーカーであるらしい。
A)骨芽細胞のオステオカルシン分泌は、高血糖値により減少するので、オステオカルシンにより評価される骨形成は、糖尿病コントロールに応じて低下する。
B)ヒトオステオカルシンの発現は、グルココルチコイドにより負に調節される。グルココルチコイドは、生理学的効果の広いスペクトルを有するストレスホルモンであり、メタボリックシンドロームの病態生理に関与している(19)。
C)一般に、身体活動は骨喪失を低下させ、これも部分的に、オステオカルシンレベルの変化に反映される。
こうして、オステオカルシンプロペプチドレベルの差は、IGTを有する個体における身体活動又はホルモンレベルの違いを反映しうる。
【0123】
インスリン様成長因子I(IGF−I)
IGF−Iの一般的な説明
インスリン様成長因子I(IGF−I)は、骨成長、細胞分化、及び代謝を刺激するペプチドである。IGF−Iは、IGF−I及びIGF−II及びそのアミノ酸の約50パーセントを共有するインスリンからなる、IGFファミリーに属する。IGFは、インスリンと構造的に関連するが、Cペプチドを保持し、延長されたC末端を有する。インスリンがピコモル濃度で循環し、分単位の半減期を有するのに対し、IGFは、はるかに高い(ナノモル)濃度で循環し、IGF活性を調節する6つのIGF結合タンパク質の1つに大部分が結合する。これらの結合タンパク質は、IGFと同様、主に肝臓で合成される。IGF及びその結合タンパク質は、大半の組織によっても局所的に産生され、この場合、自己分泌的又は傍分泌的に作用する。インスリンが主に肝臓、筋肉、及び脂肪組織に作用するのに対し、IGFは、体内のほとんどすべての器官の機能において重要である。どちらのIGFも、胚発生に不可欠であり、成人となっても両方のナノモル濃度は循環中で維持される。年齢、性別、栄養状態、及び成長ホルモン分泌など、多くの変数が、血清IGF−I濃度に影響する。その濃度は出生時には低く、幼少期及び思春期に著明に上昇し、第三期に低下し始める。これらの変化は、成長ホルモンの分泌と並行する。
【0124】
同定されたIGF−Iペプチド
IGF−Iは、不活性のプロペプチド前駆体として合成される。70アミノ酸の成熟IGF−I分子は、2つの異なるプロホルモン前駆体であるプロ−IGF−IA又はプロ−IGF−IBから、Eドメインの除去により産生することができる。IGF−I mRNAの別のスプライシングが、2つのIGF−Iプロホルモンの産生の原因であるが、異なる形態の生理学的な意義は知られていない。ヒトプロIGF−IA及びプロIGF−IBの配列は、独自の五塩基プロホルモン開裂モチーフであるLys−X−X−Lys−X−X−Arg−X−X−Arg−X−X−Argを含む、Eドメインの最初の16残基を介して一致する。このモチーフは、哺乳類、鳥類、両生類、及び硬骨類において保存されている。
【0125】
本研究において、本発明者らは、IGF−Iの2つの形態を同定した。分子量7665を有する1つのペプチドが、Arg119での開裂から生じる成熟IGF−I 1〜70に対応する一方、他のペプチド(1〜76)は、Arg195での開裂から生じるC末端における6つの追加アミノ酸を含む。いずれのIGF−I形態も、プロ−IGF−IAを発現するHEK293細胞から同定されており、フリンが、五塩基モチーフ内の複数の部位においてプロIGF−IAを開裂しうることが示された。本発明者らの知る限りで、IGF−Iの長い方の形態は、いまだ血漿中で同定されていない。新規に同定され、肝臓において高度に発現する、ヒトプロタンパク質転換酵素PCSK9又はNARC−1(神経アポトーシス調節型転換酵素)における突然変異が、家族性高コレステロール血症と関連する。PCSK9の発現は、肝細胞においてインスリン又は脂質降下剤スタチンにより調節され、IGF−Iの別のプロセシング形態を心血管疾患及び耐糖能異常と関連させうる。
【0126】
IGT、糖尿病、及び心血管疾患とIGF−Iとの関連
近年、IGF−Iが、グルコースのホメオスタシス及び心血管疾患のいずれにおいても役割を有する可能性があることを示唆する証拠が増えつつある。正常被験者、極度のインスリン抵抗性を有する患者、及び1型又は2型糖尿病患者を対象に実施された臨床試験は、組換えIGF−Iの投与が、血糖を著明に低下させ、インスリン感受性を著明に上昇させたことを示している。IGF−Iがインスリン作用を促進するという考えを裏付ける近年の研究(Nature、第422巻、83〜87頁、2003年)は、循環中におけるIGF−I濃度が低いと、4〜5年間の追跡期間中に2型糖尿病を発症する危険性が極めて高くなると結論づけた。循環中の低IGF−Iレベルは、非糖尿病被験者において血管造影法により記録された冠動脈疾患のほか、頸動脈におけるアテローム硬化性プラーク、及び冠動脈疾患と関連している。様々な程度の耐糖能を有する被験者における血漿IGF−I濃度とインスリン感受性との間の関係が、Sestiら、Diabetes Care、第28巻、120〜125頁、2005年によって研究されている。彼らのデータは、血漿IGF−I濃度が、インスリン感受性の異常及びメタボリックシンドロームの他の構成要素と独立に関連することを示し、低IGF−Iレベルが、心血管疾患の危険性にある被験者を同定する有用なマーカーでありうることを示唆した。
【0127】
複数の研究が、IGF−I遺伝子のプロモーター領域における遺伝子多型の、循環IGF−Iレベル及び2型糖尿病及び心筋梗塞との関係について述べている。
【0128】
バイオマーカーとしてのIGF−Iの使用
本明細書における方法を用いると、IGTを有する個体においてIGF−Iレベルが低下することが示される。IGF、前立腺特異抗原(PSA)及びカテプシンDなどのIGF結合タンパク質(IGFBP)及びIGFBPプロテアーゼの自己分泌による産生を含むIGF軸の異常が、前立腺癌、肺癌、及び乳癌の細胞及び組織で同定されている。近年の症例対照研究は、最も高頻度で診断される癌のうち、前立腺癌、乳癌、及び肺癌の患者において、血清IGF−Iレベルが約10%上昇することを見出している。血漿IGF−Iレベルは、年齢依存的に低下するので、IGF−Iは、別のマーカーペプチドとの併用に限り、診断検査マーカーとして考えるべきである。
【0129】
ヘプシジン
ヘプシジンの一般的な説明
肝臓において産生される25アミノ酸のペプチドホルモンであるヘプシジンは、全身の鉄ホメオスタシスの主要な調節因子である。ヘプシジンは、腸による鉄吸収、マクロファージによる鉄再利用、及び肝貯蔵からの鉄移動を阻害することにより、血漿鉄濃度及び鉄の組織分布を制御する。ヘプシジンは、細胞内で唯一知られた鉄エクスポーターであるフェロポルチンへの結合及びその分解の誘導を介して、細胞からの鉄流出を阻害することにより作用する。ヘプシジンの合成はホメオスタシスを維持するように、鉄負荷により増加し、貧血症及び低酸素症により減少する。ヘプシジンは、おそらくは侵入する微生物への鉄利用能を制限する宿主防御機構として、感染症及び炎症中にも増加し、血清鉄レベルの低下を生じ、炎症性貧血症の発症に寄与する。スペクトルの反対側において、ヘプシジン欠損は、ヘプシジン遺伝子自体における突然変異、又はヘプシジン合成の調節因子における突然変異により、大半の形態のヘモクロマトーシスの最終原因であると思われる。
【0130】
同定されたヘプシジンペプチド
ヘプシジンは、循環抗菌ペプチドとして個別に単離されている。主要なヘプシジン形態は、25アミノ酸残基及び4ジスルフィド架橋を有する陽イオン性ペプチドであった。ヒトにおいて、該ペプチドは84アミノ酸プレプロペプチドのC末端に由来する。
【0131】
ヘプシジンと糖尿病、IGT、及び脂肪肝
血清フェリチン濃度として表現される鉄貯蔵が、インスリン抵抗性症候群の構成要素であると仮定されている。実際、循環フェリチン濃度は、主に体内脂肪の分布と関連するほか、他の複数の肥満測定値とも著明に関連している。見掛け上健康な一般の集団において、フェリチンの血清レベルは、経口ブドウ糖負荷試験中におけるベースライン時の血清グルコース及びグルコースの曲線下面積とも正に相関した。妊娠性糖尿病では、BMIレベル及び血清フェリチンレベルともに、2時間にわたる経口ブドウ糖負荷試験中におけるグルコースの独立した予測因子であることがわかった。フェリチンレベルは、BMIについて調整した後でなお、拡張期動脈血圧とも相関した。鉄貯蔵の減少を生じる頻繁な献血は、健康なボランティア被験者における食後の高インスリン血症を低減し、インスリン感受性を改善し、2型糖尿病の発現に対する防御因子を構成することが示されている。欧米諸国の人口全般における鉄貯蔵増加の高有病率、及び鉄貯蔵の増加が2型糖尿病の高発症率を予測するらしいという観察を踏まえると、この知見は極めて重要である。
【0132】
新規の肝鉄過剰症候群が記載され、インスリン抵抗性関連肝鉄過剰症(IR−HIO)として知られている。その症候群は、鉄代謝異常(正常なトランスフェリン飽和率を伴う孤発性高フェリチン血症)、脂肪性肝炎、及びインスリン抵抗性症候群(肥満、高脂血症、異常グルコース代謝、及び高血圧)を統合する。IR−HIOでは、肝細胞及び類洞細胞の両方において鉄過剰が生じるが、類洞細胞における方が高頻度であり、症例の45%で生じ、所見がヘモクロマトーシスを有する被験者において見られるのは3%に過ぎない。これらの患者の約3分の2が脂肪症を発症し、残りの3分の1が孤発性の炎症徴候を示す。こうして、これら患者は、肝線維症を発症する危険性が高く、鉄過剰の存在が中程度である場合でも、全症例の60%において合併症が観察される。
【0133】
ヘプシジンの合成及び放出は、細菌性リポ多糖及びサイトカイン、特に、IL−6により迅速に調節される。こうして、ヘプシジン遺伝子は、炎症に反応して過剰発現する急性期反応性遺伝子である。
【0134】
バイオマーカーとしてのヘプシジンの使用
肥満において、脂肪組織は、IL−6を含む広範な炎症分子であって、脂肪組織に対する局所性の効果を有するだけでなく他の器官に対する全身性の効果をも有しうる炎症分子の産生及び分泌の増加を特徴とする。IL−6は、大網脂肪組織から門脈を経て肝臓に運ばれ、これによりヘプシジン発現を増加させることがある。まとめると、ヘプシジン25は、耐糖能異常を有する個体における酸化ストレスの増大及び肝機能異常/脂肪肝の新規マーカーとして考えてよい。
【0135】
ヘモペキシン
ヘモペキシンの一般的な説明
ヘモペキシンは、既知のタンパク質中で、ヘムに対する結合親和性が最も高い血漿タンパク質である。該タンパク質は、主に肝臓で発現し、炎症後にその合成が誘発される急性期反応物質に属する。ヘムは、呼吸及びエネルギー移動を含む広範な生物学的過程において用いられ、全血清タンパク質の約1.4%を占める。ヘムタンパク質、特にヘモグロビンの代謝回転は、細胞外液中へのヘム放出を生じ、健康に重大な結果を生じる可能性がある。遊離鉄と同様に、ヘムは、侵入する細菌性病原体に対する必須鉄の供給源であり、そのフリーラジカル形成に対する触媒能のために毒性が高い。遊離ヘムレベルは低いことが通例であるが、溶血性疾患の病態においては危険なまでに高くなりうる。防御は60kDaの血清糖タンパク質であるヘモペキシンによってもたらされ、それは極めて高い親和性(Kd<1012M)で血流からヘムを隔離し、肝細胞上の特異的な受容体にヘムを輸送し、そこでヘムが受容体媒介エンドサイトーシスを受け、それと結合したヘムを細胞中に放出する。こうして、ヘモペキシンは、ヘム毒性に対する防御並びに鉄の保持及び再利用の両方に寄与する。
【0136】
同定されたヘモペキシンペプチド
同定されたペプチドは、ヘモペキシンのN末端に由来し、DPPIV開裂部位に一致する予測N末端の最初の2アミノ酸を欠く。したがって、ヘモペキシンペプチドは、DPPIV開裂の産物でありうる。そのペプチドの新規のN末端をDPPIV(LP/P)により開裂することはできないので、そのペプチド(少なくともN末端部分)が血中に蓄積するように思われる。DPPIVは、より小型のタンパク質及びペプチドを優先的に開裂するので、ヘモペキシンの全体もDPPIV基質であると結論づけることはできない。
【0137】
ヘモペキシンと糖尿病、IGT、又は脂肪肝
ヘモペキシンは、IL−6及び成長ホルモンがその転写を上方調節する急性期肝タンパク質であるが、インスリンは、ヘモペキシンの転写速度には影響を与えない。2型糖尿病患者においては、ヘモペキシンレベルの上昇がみられた。
【0138】
バイオマーカーとしてのヘモペキシンの使用
本発明者らは、ヘモペキシンのN末端に由来するペプチドが、IGTを有する個体であって、NGTに転換する個体の場合と比べて、ライフスタイルの変化によって耐糖能が改善しない個体において減少することを見出した。この知見は新しく、2型糖尿病患者におけるヘモペキシンの増加が公表されているので、より詳細な分析を要する。可能な説明は、再生肝ではヘモペキシンレベルが上昇するという知見でありうる。こうして、レベルの低下は、肝インスリン耐性再生能の低下を示しうる。
【0139】
補体C4−A
C4の一般的な説明
補体系は、生得的免疫の主要な構成要素であり、侵入する病原体に対する防御の最前線を提供する。補体タンパク質は、血清タンパク質の約10%を構成し、第4成分であるC4は、血中に350〜600μg/mlの濃度で存在する。C4は、細胞内でアルファ鎖、ベータ鎖、及びガンマ鎖にプロセシングされ、これらはジスルフィド架橋により連結される。補体の古典的経路及びレクチン経路による認識は、それ自体セリンプロテアーゼである補体成分C2、及びC4を開裂するセリンプロテアーゼの活性化をもたらし、C3をC3a及びC3bに開裂するプロテアーゼ複合体C4b2aの形成をもたらす。C3b及びC4bは、C3及びC4における表面のヒドロキシ基又はアミノ基と同内部のチオールエステルとの間のエステル交換反応により、補体活性化表面に共有結合する。古典的経路の複数の産物は、宿主防御に寄与する強力な生物学的活性を有する、例えば、放出されたC4a断片が弱いアナフィロトキシンであるのに対し、C4bは補体受容体への結合による食作用を促進するオプソニンである。
【0140】
古典的経路の重要な下方調節因子は、アルギニル特異性を有するセリンプロテアーゼ因子Iである。該因子は、活性型で循環し、タンパク質分解活性を必要としない。因子Iは、C4b結合タンパク質(C4BP)又は因子H(FH)などの補因子タンパク質に結合する場合に限り、補体因子3(C3b)及び4(C4b)の活性型を分解する。因子Iによる分解の間、C3b及びC4bのα鎖における複数のペプチド結合が開裂する(37)。
【0141】
同定されたC4ペプチド
C4前駆体に由来する2つのペプチドを同定した。いずれのペプチドも、補体C4−Aアルファ鎖(C4ba、アミノ酸680〜1446)に由来する。アミノ酸1337〜1352に由来するC4−Aアルファペプチドは、著明には調節されなかった。そのペプチドは、アミノ酸R/Nにおける因子I開裂により放出されうる。N末端開裂産物が、C4d(アミノ酸957 1336)である。C4分子の活性化及び分解に続き、C4活性化部位の近傍における内皮細胞表面及び血管基底膜細胞外マトリックス成分に対する、分解産物C4dの一過性共有結合を可能にするチオエステル基が露出される。C4dは、体液媒介アロ反応の免疫組織化学的マーカーとみなされる。アミノ酸1429〜1449を含む第2のペプチドは、C末端側に延長され、補体アルファ鎖と同ガンマ鎖(アミノ酸1454〜1744)との間の予測プロペプチドドメインにわたる。どちらのペプチドも、予測外の翻訳後修飾を有する。
【0142】
チモシンβ4ペプチド
チモシンβ4の一般的な説明
βチモシンは、高度に保存的で極めて水溶性の高い5kDaのポリペプチドファミリーを構成する。チモシンβが最も多く存在するメンバーであり、大半の細胞型において発現し、主要な細胞内Gアクチン隔離ペプチドとみなされる。この43アミノ酸のオリゴペプチドは、Gアクチンと1:1複合体を形成し、これによりFアクチンへの塩誘導重合を阻害する。チモシンβ4は、白血球及び血小板中に極めて高濃度で存在するが、該ペプチドは分泌のシグナル配列を有さないので、その血漿濃度は低い。しかし、凝血が生じると、血清中のチモシンβ4レベルは著明に上昇しうる。細胞外のチモシンβ4は、血管新生、創傷治癒、及び炎症の調節を含む複数の生理学的過程に寄与しうる。このペプチドは、内皮細胞のマトリックス成分への付着及び拡大の速度を増大させ、ヒト臍静脈内皮細胞の移動を刺激し、マトリックスメタロプロテイナーゼを誘発し、角質創傷の治癒を促進し、炎症メディエータを調節する。チモシンβ4の硫酸化物は、炎症反応を阻害すると報告されている。血小板の活性化後、チモシンβが放出され、組織トランスグルタミナーゼによりフィブリン及びコラーゲンなどのタンパク質に架橋する。
【0143】
同定されたチモシンβ4ペプチド
本発明者らは、チモシンβ4ペプチドに対応する配列タグを同定した。しかし、該ペプチドは、さらなる解明を要する翻訳後修飾を有する。
【0144】
チモシンβ4の役割
本明細書に開示される方法によれば、チモシンβ4ペプチドは、IGTを有する個体であって、ライフスタイルの変更後にNGTに転換しない個体において増加した。他の試験は、血漿試料中のチモシンβ4ペプチド量が、試料の血小板含量の間接的な測定値であることを見出している。チモシンb4ペプチドレベルの上昇は、血液採取、血液凝固における変化、又は血小板カウント及び血小板体積における変化までも示しうる。
【0145】
複数の研究が、血小板カウント又は血小板体積のインスリン抵抗性、糖尿病、及び肥満との関係を示してきた。NGT又はIGT分類との関係における血小板カウント及び血小板体積に関する追加のデータが、この仮定を裏付ける必要がある。本発明者らは、チモシンペプチドのレベルが、ベースライン時の試料と比べて追跡時の試料においてより低いことをも見出している。
【0146】
フィブリノーゲンペプチド
フィブリノーゲンの一般的な説明
フィブリノーゲンは、肝臓で合成される340kDaのタンパク質であり、主に血漿中に見出される。該タンパク質は、ジスルフィド結合により結合される同一でない3つの鎖の2つのセットからなり、1つの中心ドメイン、及び同一な2つの外側ドメインを有する3結節構造を生じる。フィブリノーゲンからフィブリンへの転換は、軟凝血塊の形成の原因であるN末端重合部位を露出させるアルファ鎖及びベータ鎖からフィブリノペプチドA及びBを開裂する、トロンビンにより開始される。トロンビンは、フィブリンにおけるイプシロン−(ガンマ−グルタミル)−リシン架橋の形成を介して凝血塊を安定化させる因子XIIIaをも活性化する。したがって、フィブリノペプチドA及びB並びに因子XIIIaの活性化ペプチドは、凝固経路のマーカーである。
【0147】
不溶性のタンパク質マトリックスであるフィブリンの沈着は、一過性であるに過ぎない。タンパク質分解によるフィブリン除去の主に知られた機構(線溶)は、プラスミノーゲンからのプラスミンの形成をもたらすカスケード型のタンパク質分解過程を伴う。プラスミンは、循環中にプラスミノーゲンとして放出され、組織プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子、トロンビン、フィブリン、及び因子XII(Hageman因子)により活性化されるセリンプロテアーゼである。線溶において、プラスミンは、様々な部位でフィブリンメッシュを切開し、他のプロテイナーゼによりさらにプロセシングされる循環断片の産生をもたらす。
【0148】
同定されたペプチド
フィブリノーゲン前駆体から、2つのペプチドを同定した。1つのペプチド候補物質であるF46_1690.5がFibAであり、活性化トロンビンがフィブリンを開裂するときに放出される。したがって、FibAは、凝固マーカーである。同定された第2のペプチドは、フィブリノーゲンアルファ鎖に由来するペプチドであって、プラスミン開裂により放出されうるペプチドであるので、線溶マーカーでありうる。
【0149】
凝固及び線溶と糖尿病、肥満、及び耐糖能異常に対する関係
本発明の方法を用いると、FibAペプチドのレベルは、IGTを有する個体であって、ライフスタイルの変更後にIGTに転換しない個体において、NGTに転換する個体と比べて低下する。本発明者らは、線溶の潜在的なペプチドマーカーが、NGTを有する個体と比べて、IGTを有する個体において低下することをも見出した。これらの結果は、インスリン抵抗性、肥満、及びメタボリックシンドロームの症状として十分に確立された凝固線溶系の障害と一致する。止血異常においては、線溶の強力な阻害剤であるプラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)−1の血漿中における増加が、メタボリックシンドロームの主要症状であると考えられる。PAI−1の高血漿濃度は、血栓形成と関連し、心血管事象を生じることがある。
【0150】
さらに、PAI−1レベルの低下が示す通り、食事及び身体運動による強化介入は、線溶に対して長期の有益な効果を及ぼす。これらの結果は、耐糖能異常を有する肥満被験者におけるPAI−1レベルの上昇は、ライフスタイルの変更、特に、体重減量に向けられた変更により、大半は可逆的であることを示唆する。
【0151】
コラーゲンペプチド
他の多くの細胞もそれを合成することができるが、哺乳類体内における大部分のI型コラーゲンは、線維芽細胞及び骨芽細胞により産生される。
【0152】
骨は、頻繁なリモデリングを受け、大きな再生能を有する組織である。成体では、約10〜11年ごとに骨格が置き換わるようにリモデリングが生じる。この生理的リモデリングは、骨を吸収する破骨細胞により開始され、骨芽細胞による新規の等量の骨の形成がこれに続く。骨吸収量が新規の骨形成量を上回るときに、骨喪失という。これは、老齢の骨格において、特に閉経に関連する骨粗鬆症の間に生じる。
【0153】
I型糖尿病は、実質的な骨喪失とも関連してきた。これに対して、2型糖尿病における骨喪失の存在はそれほど明らかでなく、現在の理解は、この形態の糖尿病の方が、より頻繁に骨ミネラル密度の上昇と関連することを示唆する。
【0154】
骨吸収が、血漿I型コラーゲン架橋Cテロペプチド(CTX)の測定により判定される一方、骨形成は、I型プロコラーゲン血漿アミノ末端プロペプチド(PINP)レベル及びオステオカルシンレベルの測定により判定される。骨吸収は夜間に最高となり、CTX値は早朝に最高となる。最高値及び最低値は、24時間の平均値と24%異なる。骨吸収は、摂食により抑制され、インクレチンホルモンGLP−2が関与すると思われる(47、48)。
【0155】
同定されたコラーゲンペプチド
同定されたコラーゲンペプチドは、コラーゲンアルファ−1(I)鎖の三重らせん領域にマップされ、多重分解事象の産物である。本発明者らは、このペプチドが、NGTを有する個体と比べてIGTを有する個体において減少し、骨吸収の低下を反映しうることを見出した。
【0156】
本発明のさらなる特性及び利点については、制限を含意するのでなく例示のみを目的に提示される、以下の実施例との関連でより明確に理解されたい。
【実施例】
【0157】
(実施例1)
試験デザインと被験者
96例のヒト個体が、試験に参加した(男性39例、女性61例)。すべての個体は、2型糖尿病の既罹患者の親近者であるか、又は肥満指数>27/m2を有する肥満者若しくは過体重者、耐糖能異常を有する個体、及び妊娠性糖尿病の履歴を有する女性であるなどの理由による2型糖尿病の危険性が高い者であった。アルコール乱用が臨床的に疑われる者は、本試験から除外した。すべての個体は、一晩の絶食後、午前中に、当技術分野で知られる経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)に従って、75gグルコース溶液の経口摂取前に1つ目、また同摂取の2時間後に2つ目の2つの血液試料の採取を受けた。両血液試料の血糖値は、当技術分野で知られる標準的な臨床的方法により測定し、OGTT開始の2時間後に個体が正常血糖値(<6.7mM)を有するか、個体を耐糖能異常(IGT)に罹患すると分類する血糖値の上昇(≧6.6mM〜≦10mM)を有するか、又は個体を2型糖尿病に罹患すると分類する血糖値(>10mM)を有するかを判定した。グルコースに関するすべての閾値は、1997年の世界保健機構(WHO)による診断基準(Diabetes Care、1997年、第20巻、1183〜1197頁)に従った。
【0158】
この初回来院の後、すべての個体が、標準化された身体運動及び食事による介入プログラムを開始した。身体運動プログラムは、すべての試験参加者が、各自の身体能力に応じて、週に3回各回1時間ずつ運動することを要請した。身体運動は、例えば、徒歩、ジョギング、トレッドミル上でのランニングなどであった。参加者の食事は、脂肪摂取を減らし、線維摂取を増やすことを意図し、その結果、全個体の約50%が、食物摂取1000kcalあたり線維約15gの線維を摂取した。この介入プログラムの12カ月後、一晩の絶食後、午前中に、すべての個体が、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)に従って、75gグルコースの摂取前に1つ目、また同摂取の2時間後に2つ目の2つの血液試料の2回目の採取に来院した。試験を完了した各個体から採取した計4つの血液試料から、実施例2に従って血漿を調製した。血漿グルコースは、ベッドサイドグルコースアナライザー(米国、コロラド州、イエロースプリング、Yellow Springs Instruments[YSI]社製、グルコースオキシダーゼ法)を用いて決定した。
【0159】
(実施例2)
血清及び血漿の調製
健康ヒト成人及び耐糖能異常(IGT)に罹患することが疑われる又は知られているヒトが、書面によるインフォームドコンセントを提出し、ハノーバー医学院の施設内倫理委員会がプロトコールを承認した後で、本試験に組み入れられた。血液試料は、一晩絶食後の個体から採取し、次いで個体が所定のグルコース溶液を摂取し、グルコース摂取の120分後に2つ目の血液試料を採取した。1年後に、同じ個体が同じ手順に従ったので、試験を完了した各個体から、計4つの血液試料を採取した。この1年間に、すべての個体が、その健康状態を変更するために、標準化された身体運動及び食事の介入プログラムを実行した。経口ブドウ糖負荷試験及び試験デザインの詳細は、実施例1に述べてある。血液試料は、肘脈から血液採取試験管(ドイツ、ニュンブレヒト、ザールシュテット、EDTAカリウムを含む、又は0.106mol/Lクエン酸溶液を含む9mLのS−Monovette)に採取した。採取直後、2000×g、室温で10分間の遠心分離により、血漿を得た。低温は、血小板を活性化して、何よりもタンパク質及びペプチドを血漿内に放出させ、これが血漿試料中に存在するペプチド又はタンパク質分析のための試料品質に好ましくない影響を与えるので、4℃のような低温での遠心分離は避けるべきである。2ml容の血漿試料は、細孔径0.2μmで濾過面積5cmの酢酸セルロース製濾過ユニットを装着した2ml試験管(ドイツ、ニュンブレヒト、ザールシュテット、Sartorius社製、Minisart(登録商標))に移した。血漿試料は、さらなる解析まで、−80℃の冷凍庫に移した。
【0160】
(実施例3)
試料の液体クロマトグラフィー
実行した分離法は、逆相クロマトグラフィーであった。各種のRPクロマトグラフィー用樹脂及び溶離剤が、同様に適切である。ペプチド及びタンパク質の分離は、供給源5RPC、4.6×150mmの逆相クロマトグラフィーカラム(ドイツ、フライブルク、Amersham Biosciences Europe GmbH製)を用いて行った。分離は、以下に述べる通りに行った。以下の成分からなる移動相を用いた。移動相A:0.06%(v/v)トリフルオロ酢酸、移動相B:0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸、80%(v/v)アセトニトリル。クロマトグラフィーは、Agilent Technologies社製のマイクロフローセルを伴うAgilent Technologies社製HP 1100を用い、33℃で行った。
【0161】
試料は、pHを2〜3に調整した0.06%(v/v)トリフルオロ酢酸により希釈し、該試料を18000×gで10分間遠心分離し、こうして調製された最終的に750μlの血漿同等物を、クロマトグラフィーカラムに投入した。クロマトグラフィーの条件は、以下の通りであった。時点0分において5%の移動相B、時点1〜45分において移動相B濃度を50%まで継続的に上昇させ、時点45〜49分において移動相B濃度を100%まで継続的に上昇させ、その後時点53分まで緩衝液Bを100%で一定に保つ。0.5mlずつ96分画の採取は、クロマトグラフィー開始の7分後から開始する。
【0162】
(実施例4)
試料の質量分析
質量分析法による解析のため、ペプチドの典型的な陽イオンスペクトルを、MALDI−TOF質量分析計(マトリックス支援レーザー脱イオン化法)により産生した。適切なMALDI−TOF質量分析計は、PerSeptive Biosystems Framingham社製(Voyager−DE、Voyager−DE PRO、又はVoyager−DE STR)、又はBruker Daltonik Bremen社製(BIFLEX)である。試料は、有機酸からなることが通例であるマトリックス物質と試料とを混合することにより調製する。ペプチドに適する通例のマトリックス物質は、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシ桂皮酸、αα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、及び2,5−ジヒドロキシ安息香酸である。逆相クロマトグラフィーにより得られ、15μl血漿又は血清に対応する凍結乾燥した同等物を用いて、ペプチド及び/又はタンパク質及び/又は標準物質を測定する。クロマトグラフィーにかけた試料を15μlのマトリックス溶液中に溶解する。このマトリックス溶液は、例えば、容積比で49:49:1:1のアセトニトリル、水、トリフルオロ酢酸、及びアセトンからなる溶媒混合液中に溶解した、10g/lのαα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸及び10g/lのL(−)フコースを含む。この溶液0.3μlをMALDIキャリアプレートに移し、乾燥試料を、PerSeptive Biosystems社製のVoyager−DE STR MALDI質量分析計により解析する。測定は、遅延抽出法による直線モードで行う。MALDI−TOF質量分析計を用いて、例えば、質量分析計の測定ダイナミックレンジ内の濃度でこれらのペプチドが存在し、このために検出器飽和を回避する場合は、本発明の標準的なペプチドなどのペプチドを定量することができる。各ペプチドの測定するシグナルと濃度との間には特定の存在比が存在し、これは、MALDI質量分析法を、好ましくは、ペプチドの相対的な定量に用いうることを意味する。標準物質及び試料に由来するペプチドのシグナル強度を測定することができる。
【0163】
(実施例5)
ペプチドの同定
ペプチドからなる標準物質は、例えば、nanoSpray−MS/MSを用いて同定することができる。これは、当業者に知られた方式で、特定のm/z(質量/電荷)値に基づき、質量分析計内において選択される標準的なペプチドイオンを必要とする。次いで、この選択されたイオンを、衝突ガス、例えば、ヘリウム又は窒素による衝突エネルギーを供給することにより断片化し、結果として得られる標準ペプチドの断片を、質量分析計の統合解析ユニットにより検出し、対応するm/z値を決定する(タンデム質量分析法の原理)。ペプチドの断片化挙動は、ペプチドの明確な同定を可能にする。この特殊事例では、米国、Applied Biosystems−Sciex社製の四重極TOF機である、QStar−Pulsarモデルを用いて、質量分析法による解析を行った。
【0164】
(実施例6)
データ解析
実施例3に述べた分画化に続き、実施例4に述べたMALDI質量分析法により各分画を個別に解析する結果、各試料につき96の質量スペクトルが得られる。これらの96の質量スペクトルを、いわゆるペプチドディスプレイに電気的に統合する。これらのペプチドディスプレイのx軸が分子量を示し、y軸が分画番号を示し、色強度が質量分析法によるシグナル強度を表す。
【0165】
解析グループ間の識別が可能な属性の同定(図1及び2を参照のこと)には、多重仮説検定手順を適用した。多重仮説検定は、ランクに基づく統計解析法であるMann−WhitneyのU検定手順を用いて実行した。ランクに基づく方法の利点は、比較するシグナル強度について正規性を仮定しないことである。集めたクラスが、異なる個体特性を有する異なる個体からなるため、この方法が必要であり、正規性は予測されない。データの許容基準は、U検定のp値≦0.01であった。
【0166】
191試料から産生したペプチドディスプレイを、1つの平均マスターペプチドディスプレイに統合した。この平均マスターペプチドディスプレイに基づき、ピーク認識及びシグナル座標の定義(分画及び質量)を実行した。各ディスプレイからシグナル強度をエクスポートしてシグナル座標の行列を生成した。次いで、グループ間において、ベースピーク強度のp値及び百分率を計算した。Pirouette 3.11ソフトウェア(企業名、国名、所在地名)を用いて、異常値検出及び主成分分析を行った。Mahalanobisの距離に関する臨界値を超える(>10)試料は、該分析から除外した。この手順の結果、ベースラインのノイズから識別された計9966シグナルが得られ、これを各ペプチドディスプレイの個別の特徴として後続の生物統計学的解析に用いた。
【0167】
ペプチドディスプレイのデータは、背景ノイズについて調整することによって予め加工することができ、異常値は解析から除外することができる。ペプチドディスプレイ間の差は、ペプチドディスプレイ同士を電子的に減じ合うことにより計算する。ペプチドの異なる濃度の検出は、異なる時間間隔にわたりインキュベートした血清試料又は血漿試料からの質量分析データ(シグナル強度)の比較、又は異なる濃度の13ペプチド混合物でスパイクした血清試料又は血漿試料の比較により行う。血漿試料中に存在する他のペプチドに由来する何千ものシグナルから13個の標準ペプチドを識別するため、相関解析を行った。異なる濃度の標準ペプチド混合物をスパイクした血漿試料により得られるペプチドディスプレイを、r=0.8の相関係数を用いる相関解析により比較した。標準ペプチドの濃度は試料ごとに極めて一様に変化するので(異なる濃度を異なる血清試料に加えたので)、この高相関係数rのみが結果として得られる。
【0168】
他の実施形態
本発明をその詳細な記載とともに述べてきたが、上記の記載は本発明の例示を目的とし、付属の特許請求の範囲が定義する本発明の適用範囲の制限を目的とするものではない。他の態様、利点、及び変更も、以下の特許請求の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を検出する方法であって、
a)個体由来の試料中における、F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体における前記2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を判定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
請求項1のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量と、少なくとも1つの追加のペプチドマーカーとを組み合わせて、ペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する、請求項1のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態及び少なくとも1つの追加のペプチドマーカーの組合せの量を測定する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも2つのペプチド又はその修飾形態の量を測定する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2型糖尿病のプリフォームが耐糖能異常(IGT)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記試料が、全血、血漿、血清、尿、脂肪組織及び肝組織からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ペプチドが、ELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法、プロテインチップ法、質量分析法、免疫組織学法、フローサイトメトリー法からなる群から選択される方法によって、又は既知の分子生物学的方法を用いることによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
食事及び/又は運動レジメンを含む治療法の有用性を判定する、2型糖尿病のプリフォームである個体の層別化方法であって、
a)個体由来の試料中における、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体に対する前記治療法の有用性を判定するステップと
を含む方法。
【請求項9】
請求項8のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の量と、少なくとも1つの追加のペプチドマーカーとを組み合わせて、ペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ペプチドマーカーパネル又はその修飾形態を形成する、請求項8のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態及び少なくとも1つの追加のペプチドマーカーの組合せの量を測定する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項8のa)に記載のペプチドから選択される少なくとも2つのペプチド又はその修飾形態の量を測定する、請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ペプチドが、ELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法、プロテインチップ法、質量分析法、免疫組織学法、フローサイトメトリー法からなる群から選択される方法によって、又は既知の分子生物学的方法を用いて決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
個体が2型糖尿病のプリフォームに罹患する予後予測の方法であって、
a)個体由来の試料中における、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体における2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を判定するステップと
を含む方法。
【請求項14】
請求項13のa)に記載の群の少なくとも2つのペプチドの量を測定する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
2型糖尿病のプリフォームが耐糖能異常(IGT)である、任意の請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記試料が、全血、血漿、血清、尿、脂肪組織及び肝組織からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記ペプチドが、ELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法、プロテインチップ法、質量分析法、免疫組織学法、フローサイトメトリー法からなる群から選択される方法によって、又は既知の分子生物学的方法を用いて決定される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
代謝性障害の存在を検出するか、又は代謝性障害の発生可能性を予測する際に用いるペプチドであって、F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22)からなる群から選択される分子、又はその修飾形態であるペプチド。
【請求項19】
前記代謝性障害が2型糖尿病のプリフォームである、請求項18に記載のペプチド。
【請求項20】
前記2型糖尿病のプリフォームがIGTである、請求項19に記載のペプチド。
【請求項21】
請求項18に記載のペプチドのネオエピトープに特異的に結合し、前記ペプチドが由来するタンパク質には結合しない抗体。
【請求項22】
個体における2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を判定する試験キットであって、
a)F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22);
からなる群から選択されるペプチド、及び/又は
b)前記ペプチドのネオエピトープに特異的に結合し、前記ペプチドが由来するタンパク質には結合しない抗体若しくは抗体断片、及び
c)2型糖尿病のプリフォームの存在若しくは不在を判定する前記試験キットを用いるための説明書
を含む試験キット。
【請求項23】
請求項22に記載の試験キットの製造におけるペプチドの使用であって、
a)1つ又は複数の前記ペプチド、及び/又は
b)前記ペプチドのネオエピトープに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片
を含むペプチドの使用。
【請求項24】
個体が2型糖尿病のプリフォームに罹患する予後を判定するための試験キットであって、
a)F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22);
からなる群から選択されるペプチド、及び/又は
b)前記ペプチドのネオエピトープに特異的に結合し、前記ペプチドが由来するタンパク質には結合しない抗体若しくは抗体断片及び、
c)個体が2型糖尿病のプリフォームに罹患する可能性を判定する前記試験キットを用いるための説明書
を含む試験キット。
【請求項25】
請求項24に記載の試験キットの製造におけるペプチドの使用であって、
a)1つ又は複数の前記ペプチド、及び/又は
b)前記ペプチドのネオエピトープに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片
を含むペプチドの使用。
【請求項26】
2型糖尿病のプリフォームに罹患した個体を層別化して、食事及び/又は身体運動レジメンを含む治療プログラムの有用性を判定する試験キットであって、
a)F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22);
からなる群から選択されるペプチド、及び/又は
b)請求項18に記載のペプチドのネオエピトープに特異的に結合し、前記ペプチドが由来するタンパク質には結合しない抗体若しくは抗体断片及び、
c)2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を判定する前記試験キットを用いるための説明書
を含む試験キット。
【請求項27】
請求項26に記載の試験キットの製造におけるペプチドの使用であって、
a)1つ又は複数の前記ペプチド、及び/又は
b)前記ペプチドのネオエピトープに特異的に結合する抗体若しくは抗体断片
を含むペプチドの使用。
【請求項28】
場合によっては少なくとも1つの追加のペプチドマーカーと組み合わせて、個体における2型糖尿病のプリフォームの診断を容易にするペプチドマーカーパネルを形成する、F067.4181.5(配列番号3)、F067.2440.5(配列番号4)、F024.1161.5(配列番号5)、F034.2008.5、F029.1736.5(配列番号6)、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F075.4399.5(配列番号14)、F075.3561.5、F033.1210.5、F075.4342.5(配列番号15)、F075.3474.5、F075.3345.5、F068.3841.5、F075.3988.5、F034.2638.5(配列番号16)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用。
【請求項29】
2型糖尿病のプリフォームがIGTである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
2型糖尿病のプリフォームに罹患した個体の層別化のための、F036.2591.5(配列番号1)、F046.4874.5(配列番号2)、F076.4758.5、F046.4745.5、F035.2615.5、F041.1906.5、F046.4901.5、F046.4874.5、F046.1690.5(配列番号17)、F050.2199.5、F031.1820(配列番号18)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用。
【請求項31】
2型糖尿病のプリフォームがIGTである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
個体が2型糖尿病のプリフォームに罹患した予後予測のための、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド又はその修飾形態の使用。
【請求項33】
2型糖尿病のプリフォームがIGTである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
個体が代謝性障害に罹患する可能性を判定する方法であって、
a)個体由来の試料中における、F066.4390.5(配列番号7)、F075.3345.5、F075.3561.5、F073.1122.5、F066.2843.5、F066.2804、F064.2789.5(配列番号8)、F064.3020(配列番号9)、F066.1394.5(配列番号10;配列番号11)、F018.2069.5(配列番号12)、F034.1870.5、F039.2158.5、F046.4901.5(配列番号13)、F068.5171.5、F066.2851.5、F066.4390.5、F025.2966.5、F068.7960.5、F076.4758.5、F024.1463.5(配列番号19)、F021.2378.5(配列番号20)、F024.1753.5(配列番号21)、F068.7665(配列番号22)からなる群から選択される少なくとも1つのペプチド、又はその修飾形態の量を測定するステップと、
b)a)の結果を、陰性対照試料を使用して、又は既知の基準値を用いて決定した結果と比較するステップと、
c)前記個体における2型糖尿病のプリフォームの存在又は不在を判定するステップと
を含む方法。
【請求項35】
請求項34のa)に記載の群の少なくとも2つのペプチドの量を測定する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
代謝性障害が2型糖尿病のプリフォームである、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
2型糖尿病のプリフォームが耐糖能異常(IGT)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
試料が、全血、血漿、血清、尿、脂肪組織、及び肝組織からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
ペプチドが、ELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法、プロテインチップ法、質量分析法、免疫組織学法、フローサイトメトリー法からなる群から選択される方法によって、又は既知の分子生物学的方法を用いて決定される、請求項34に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【公表番号】特表2009−537812(P2009−537812A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510561(P2009−510561)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【国際出願番号】PCT/IB2006/004112
【国際公開番号】WO2007/132291
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(508152467)デジラブ インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】