説明

2次ペプチド構造の保存

N-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミドまたはN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドのα−ヘリックス2次構造を保存する方法およびかかるペプチドを含む組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、凍結乾燥中にあるペプチドのα−ヘリックス2次構造を保存する方法、ならびに当該方法に従って製造した前記ペプチドの凍結乾燥製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
関連する背景技術
APP018およびAPL180は、既知のアポリポタンパク質(apo)A−I模倣物であり、米国特許第6,664,230号および第6,933,279号、ならびにWO 2004/034977にそれぞれ開示されている。これらのペプチドはそれぞれ18アミノ酸配列、すなわちアセチルアミノ末端保護基とアミドカルボキシル末端保護基を有するD-W-F-K-A-F-Y-D-K-V-A-E-K-F-K-E-A-F (Ac-Asp-Trp-Phe-Lys-Ala-Phe-Tyr-Asp-Lys-Val-Ala-Glu-Lys-Phe-Lys-Glu-Ala-Phe-NH2 - 配列番号1)を含む。遊離(非結合)形において、全てのアミノ酸がD型であるとき、該ペプチドはAPP018として知られており;全てのアミノ酸がL型であるとき、遊離(非結合)ペプチドはAPL180として知られている。これらのペプチドは4個のフェニルアラニンを有し、該アミノ酸が全てD型であるとき「D4F」と、あるいは該アミノ酸が全てL型であるとき「L4F」と称することもある。リバース「4F」はアミノ酸の相対位置について互いに4Fの鏡像であり、親水性面および疎水性面が同一である。同様に、この群のペプチドは2個のフェニルアラニン(2Fとして知られる)、3個のフェニルアラニン(3Fとして知られる)、5個のフェニルアラニン(5F)、6個のフェニルアラニン(6F)、7個のフェニルアラニン(7F)を含む。これらのペプチドに基づいて鏡像またはリバースペプチドを得ることも可能である。
【0003】
これらのペプチドは全て、低密度リポタンパク質(LDL)の酸化を阻害し、逆コレステロール輸送を刺激し、動脈硬化病変の形成を低下することが示されている。したがって、これらの薬剤は、未だ特に米国および西欧諸国における主たる罹患および死亡原因である心臓血管疾患の処置に有用である。したがって、これらのペプチドの有効な製剤が切望される。
【0004】
apoA−Iを含む交換性アポリポタンパク質は脂質関連ドメインを有する(Brouillette et al., Biochim. Biophys. Acta 1256:103-129 (1995);Segrest et al., FEBS Lett. 38: :247-253 (1974))。apoA−Iは22mer配列の8個のタンデム反復を有すると推定されている。A群両親媒性ヘリックスの特徴は、極性−非極性界面で正に荷電した基が存在し、極性面の中心に負に荷電した基が存在することを含む(Id.; Segrest et al., Proteins: Structure, Function, and Genetics 8: 103-117 (1990))。apoA−Iはリン脂質と強く関連して複合体を形成し、コレステロール富化細胞からのコレステロール流出を促進することが示されている。apoA−Iの2次構造が脂質との高親和性結合、最終的にはその生物学的活性の誘導に必須であることが示されている(Saito et al., J. Biol. Chem. 279(20): 20974-20981 (2004))。したがって、apoA−Iの2次構造の保存が熱望される。具体的な作用メカニズムに本発明が限定されることはないが、apoA−Iに脂質との結合親和性を与えるために、α−ヘリックスコンホメーションの保存が必要であり得て、重要である。
【0005】
「D」アミノ酸残基で形成され、そして/または保護アミノおよびカルボキシル末端を有するときA群両親媒性ヘリックスを有する18アミノ酸を含む新規ペプチドを提供する米国特許第6,664,230号の発明は、これを生物に経口投与したとき、容易に吸収されて血中に移行し、アテローム性動脈硬化症の1個以上の症状の緩和に有効である。
【0006】
タンパク質の凍結乾燥は、タンパク質の化学的および物理的安定性の両方を改善するための一般的なアプローチである。しかし凍結および脱水ストレスはタンパク質の凝集を引き起こすことがあり、その生物活性が失われる結果となる。トレハロース、α−D−グルコピラノシル−α−D−グルコピラノシドは天然に生じる二糖類であり、乾燥中のタンパク質および他の巨大分子、ウイルスおよび栄養素の変性の防止に有用であることが示されている。例えば、米国特許第4,891,319号、第5,149,653号、第5,026,566号、第5,902,565号および第6,890,512号を参照されたい。EP 0 762 897は、そこに開示した凝集防止方法がタンパク質およびペプチドの両方に適用可能であると記載しているが、ヒト成長ホルモンについての方法しか例示されていない。また、トレハロースは文献(Kaushik et al., J. Bio. Chem. 278 (29): 26458-26465 (2003))においてタンパク質安定化剤として広範に試験されている。今日まで、ペプチド2次構造の保存にトレハロースが有効であり得るとの示唆は、先行技術中に記載されていない。
【0007】
したがって、トレハロースによる凍結乾燥中のAPP018およびAPL180のα−ヘリックス(2次)構造の保存方法が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、ペプチドの凍結乾燥中にその2次構造を保存する方法であって:
(a) ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースとペプチドを溶液中で混合する工程;および
(b) 前記溶液または懸濁液を凍結乾燥させて、2次構造が保存されているペプチド組成物を得る工程
を含む方法、
ここで、前記ペプチドはN-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド (D4F);N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド (L4F)、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形から選択される。本発明のこの局面の好ましい態様において、ペプチドはL4Fである。本発明はさらに、(c) ペプチド組成物を再構成して、2次構造が保存されているペプチドの溶液または懸濁液を得る工程を含む方法に関する。
【0009】
本発明の好ましい態様において、2次構造はα−ヘリックス構造である。他の好ましい態様において、工程(a)の溶液または懸濁液はさらに少なくとも1種のさらなる凍結乾燥用添加剤、例えばバッファーまたは界面活性剤を含む。
【0010】
本発明はさらに、本発明の方法に従って製造した凍結乾燥組成物および再構成組成物に関する。
【0011】
本発明はさらに、ペプチドと該ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースを含む凍結乾燥組成物であって、該ペプチドはN-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形から選択される組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本発明は、ペプチドの凍結乾燥中にその2次構造を保存する方法に関する。本明細書において使用するとき、「2次構造」はペプチドのような生体分子またはタンパク質または核酸のような生体分子の断片の一般3次元形態を意味し;本発明の目的のために、「2次構造」は好ましくは、あるペプチドのα−ヘリックス構造を意味する。本明細書において使用するとき、「保存」(およびその他の形)はインタクトなままであることを意味する。保存は好ましくは、あるペプチドのα−ヘリックス含有量の維持または改善(増加)を意味し、換言すれば本発明の方法に従って製造した特定の凍結乾燥組成物のα−ヘリックス含有量が、常套の方法に従って製造した凍結乾燥組成物のものよりも多い。本明細書において使用するとき、「凍結乾燥」(およびその他の形)は、まず凍結し、次いで減圧し、そして/または加熱して水を固体から気体に直接昇華させて、物質から水を除去するあらゆる方法を意味する。
【0013】
より具体的には、本発明の第1の態様は、
(a) ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースとペプチドを溶液または懸濁液中で混合する工程;および
(b) 前記溶液または懸濁液を凍結乾燥させて、2次構造が保存されているペプチド組成物を得る工程
を含む方法、
ここで、前記ペプチドはN-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形から選択される。好ましくは、ペプチドは遊離形のN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドである。個々のペプチドは一般に、本明細書において本発明のペプチドと称する。
【0014】
本発明の方法の第1工程において、トレハロースは溶液中で本発明のペプチドと混合する。
【0015】
トレハロースは商業的に入手可能な物質であり、如何なる供給源から購入してもよい。N-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドペプチドまたは何れかの本発明のペプチドは、販売業者から購入してもよく、あるいは米国特許第6,664,230号および第6,933,279号ならびにPCT国際公開番号第WO 2004/034977号(それぞれの全開示を参照により本明細書に引用する)に記載の既知の方法に従って製造してもよい。
【0016】
トレハロースと本発明のペプチドは水中で混合する。本発明によると、トレハロースは本発明のペプチドの溶液に加えてもよく、ペプチドはトレハロースの溶液に加えてもよく、あるいはトレハロースとペプチドの両方を溶媒に加えて工程(a)の溶液を形成してもよい。pHは3〜11、より好ましくは6〜9、さらに好ましくは6.5〜9の範囲に調節する。好ましくは界面活性剤(TWEEN 80を含むが、これに限定されない)は、ペプチドの添加の前に加える。TWEEN 80は好ましくは体積に対して約0.0001重量%〜10重量%の量で存在する。
【0017】
ペプチドの2次構造を保存するために十分なトレハロースの量は、好ましくは体積に対して約1〜約50重量%、より好ましくは約10〜25重量%の範囲に対応し、体積に対して約10重量%が最も好ましい。これは約500:0.01〜約10:200、好ましくは約250:0.2〜約100:30、最も好ましくは約100:0.2〜約100:30のトレハロースとペプチドの重量比に対応する。
【0018】
混合はあらゆる常套の方法、すなわち単純な混合によって実施することができる。
【0019】
本発明の好ましい態様において、工程(a)の溶液はさらに、少なくとも1種のさらなるバッファーを含む。本発明に用いるために好ましいバッファーは、リン酸ナトリウム、例えばモノもしくはジリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、Tris、クエン酸塩、酒石酸塩およびヒスチジン、ならびにそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。存在するとき、リン酸バッファー濃度は好ましくは、工程(a)の溶液の約1mM〜約1M、好ましくは約5mM〜約100mMの範囲に対応する。
【0020】
本発明の方法の第2工程において、溶液または懸濁液を凍結乾燥させて、2次構造が保存されているペプチド組成物を得る。凍結乾燥はあらゆる既知の方法によって実施することができる。例えば凍結乾燥は、機械的冷蔵、ドライアイスおよびメタノール、または液体窒素によって冷却される浴中で回転させる凍結乾燥フラスコの使用を含んでいてもよく、あるいは大規模凍結乾燥機の使用を含んでいてもよい。トレハロースとペプチドの混合物を凍結乾燥させた結果、該ペプチド組成物中のペプチドの2次構造が保存される。換言すれば、工程(b)のペプチド組成物はトレハロースを使用せずに凍結乾燥させたペプチド組成物と比較して、高α−ヘリックス含有量を有する。
【0021】
本発明の第1の態様の随意工程は、(c) ペプチド組成物を再構成して2次構造が保存されているペプチド溶液を得ることを含む。再構成は、工程(b)のペプチド組成物に単純に水を添加するようなあらゆる既知の方法で実施することができる。当業者が容易に理解するように、多様な溶媒の量で再構成して多様なペプチド濃度の溶液を得ることができる。工程(c)で使用するのに適した溶媒は、水、バッファー溶液または等張溶液を含むが、これらに限定されない。凍結乾燥ペプチド組成物の再構成の結果、ペプチドの2次構造が保存される。換言すると、本発明によるトレハロースを使用しない凍結乾燥組成物から再構成した溶液または懸濁液と比較して、工程(c)の溶液は高ペプチド2次構造含有量、そして可能であれば高α−ヘリックス含有量を有する。
【0022】
さらなる本発明の態様は、本発明の第1の態様の方法に従って製造した凍結乾燥組成物および再構成組成物に関する。
【0023】
さらに別の本発明の態様は、N-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形であるペプチドと、該ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースを含む凍結乾燥組成物に関する。ペプチドとトレハロースの量に関する詳細は、本発明の第1の態様について上記のものと同じである。
【0024】
本発明の具体的な態様は下記実施例の記載によって説明される。これらの実施例は本発明を単に説明するためにのみ記載されると理解するべきであり、如何なる方法においても本発明の範囲を限定するべきではない。
【実施例】
【0025】
実施例1
N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド(APL180)の凍結乾燥組成物は、次の表1に記載の成分を用いて製造した。
表1
【表1】

これは凍結乾燥前の組成物/mlである。
【0026】
製剤1と3は1mg/mlのAPL180として製造し、製剤2と4は100mg/mlのAPL180として製造した。両濃度は15mMのリン酸バッファーpH7と10%のトレハロースを含む。製剤3と4は0.5%のTWEEN 80も含む。バイアル当たり1mlを充填し、凍結乾燥させ、使用前に1mlの水で再構成して1mg/mlのAPL180溶液を製造する。25mg/mlのAPL180溶液をバイアル当たり2mlで充填し、凍結乾燥させ、使用前に0.5mlの水で再構成して100mg/mlのAPL180製剤を製造する。そして25mg/mlのAPL180溶液中の他の成分を意図した最終濃度25%で再構成後に製剤する。
【0027】
凍結乾燥サイクルを次の通りに実施する:
表2.
【表2】

【0028】
実施例2 フーリエ変換赤外分光法による凍結乾燥−再構成溶液試験
次の表3に記載した成分を用いてN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド (APL180)の凍結乾燥組成物を製造し、次いで記載のとおりに再構成し、フーリエ変換赤外分光法を用いて試験して、α−ヘリックスの%とβ−ヘリックスの%を測定した。
表3.
【表3】

【0029】
実施例3 6mgのN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドの組成物
6mgのAPL180薬物を静脈内投与用の滅菌凍結乾燥粉末として製剤する。各バイアルの組成を表4に示す。各バイアルを2.2mlのバルク液体で過剰充填した後、凍結乾燥させ、投与前に注射用水(WFI)2mlで再構成する。2mlの再構成溶液は6mgのAPL180を送達する。
表4.APL180薬物6mg/バイアルの組成物
【表4】

【0030】
・ 主要包装材
・ 伸延ブローバック成形ガラスバイアル6 ml/20mm
・ ゴム栓20 mm Daikyo D777-1、V10-F7-3W B2-TR lyo、RS
・ もぎ取り式のアルミニウムカバー栓、PP/AL 20 mm、天然/天然
【0031】
・ バルク液体製剤組成物
バイアルに充填して凍結乾燥させる前に、APL180をバルク溶液として調製する。バルク溶液調製物の組成を表5に示す。
表5.凍結乾燥前のAPL 180バルク溶液調製物の組成
【表5】

【0032】
・ 製造手順
APL180を製剤したバルク溶液の製造(混合)
1. 混合領域およびタンク/容器(SS T316L)が清潔か検査する。
2. 混合容器の風袋重量を得る。
3. 混合容器に加えるWFIの量を計算する(合計最終調製液容量の約80%)。
4. 計算量の冷WFIを混合容器に加える。
5. プロペラミキサーを作動させ、スピードを緩やかな撹拌に調節する。秤量した
a. リン酸水素二ナトリウム無水物
b. リン酸水素二ナトリウム2Aq
c. トレハロース二水和物
d. ポリソルベート80
e. APL180
を加える。
APL 180はa、b、cおよびdが完全に溶解するまで添加しない。少なくとも15分間撹拌する。溶解しなければ、肉眼観察により溶解するまで撹拌を続ける。
【0033】
6. バッチ総容量の98%になるようにWFIを加える。pH測定用のサンプルを抜き取る。必要であれば、注射用1.0Nの水酸化ナトリウムまたは1NのHCLを用いてpHを調節する。
7. 総バッチ容量までWFIを加え、5分間撹拌する。
8. 外見、濃度およびpHについてのIPC試験のためのサンプルを採取する。
9. 同一混合溶液を用いて2枚の0.22μ PVDFフィルター(バッチサイズによってMillipak 40 または Millipak 20)の完全性を試験する。完全性試験に使用した全溶液を廃棄する。
製品特異的BPmin=38.5psi
10. 完全性試験を行ったフィルターで化合物溶液を濾過する。第2フィルターを通過した溶液の最初の500mlを廃棄する。
【0034】
APL180調製液の凍結乾燥
11. 工程10で調製したバルク溶液2.2mlを無菌状態で清潔な滅菌6mlバイアルに充填する。最初の230バイアル(溶液506mlに相当)を廃棄する。
12. バイアルにDaikyo D777-1 lyoゴムストッパーを半挿入する。
13. バイアルを凍結乾燥機に搬入する。
14. 表6の工程に従って凍結乾燥サイクルを開始する。
15. サイクルの終了時に、最終チャンバー圧が850±50mbarになるように、凍結乾燥チャンバーを窒素ガスで戻充満させる。次いでバイアルに十分に栓をする。
16. 検査済みバイアルをもぎ取り式アルミニウムシールで密栓する。
【0035】
表6.凍結乾燥サイクルのパラメーター
【表6】

【0036】
本発明はその具体的な態様についての記載によって上記しているが、本明細書に開示した発明の概念から離れることなく、多様な変化、修飾および変形が可能であると理解される。したがって、全てのかかる変化、修飾および変形が特許請求の範囲の精神および範囲に含まれると意図される。本明細書において言及した全ての特許出願、特許および他の公報は、それらの全体について参照により本明細書に引用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドの凍結乾燥中にその2次構造を保存する方法であって:
(a) ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースとペプチドを溶液または懸濁液中で混合する工程;および
(b) 前記溶液または懸濁液を凍結乾燥させて、2次構造が保存されているペプチド組成物を得る工程
を含む方法、
ここで、前記ペプチドはN-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形から選択される。
【請求項2】
ペプチドがN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドまたはその何れかの薬学的に許容される塩形である、請求項1の方法。
【請求項3】
さらに
(c) ペプチド組成物を再構成して、2次抗体が保存されているペプチド溶液を得る工程
を含む、請求項1の方法。
【請求項4】
ペプチドがN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドまたはその何れかの薬学的に許容される塩形である、請求項3の方法。
【請求項5】
2次構造がα−ヘリックス構造である、請求項1の方法。
【請求項6】
工程(b) または(c) の何れかのペプチド組成物が高α−ヘリックス含有量を有する、請求項3の方法。
【請求項7】
約500:0.01〜約10:200のトレハロースとペプチドの重量比が、2次構造を保存するために十分なトレハロースの量を提供する、請求項1の方法。
【請求項8】
トレハロースとペプチドの重量比が約100:0.2〜約100:30である、請求項7の方法。
【請求項9】
工程(a)の溶液が、さらに少なくとも1種のさらなる賦形剤を含む、請求項1の方法。
【請求項10】
少なくとも1種のさらなる賦形剤が界面活性剤およびバッファー、ならびにそれらの組合せから選択される、請求項9の方法。
【請求項11】
ペプチドの前に界面活性剤が添加される、請求項10の方法。
【請求項12】
界面活性剤がTWEEN 80である、請求項11の方法。
【請求項13】
工程(a) の溶液の体積に対して約0.0001〜10重量%の量でTWEEN 80が存在する、請求項12の方法。
【請求項14】
工程(a) の溶液の体積に対して約0.005〜0.1重量%の量でTWEEN 80が存在する、請求項13の方法。
【請求項15】
バッファーがリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、Tris、クエン酸塩、酒石酸塩およびヒスチジンから成る群から選択される、請求項10の方法。
【請求項16】
バッファーが工程(a) の溶液の約5mM〜100mMの量で存在するリン酸ナトリウムバッファーである、請求項15の方法。
【請求項17】
請求項1の方法に従って製造した凍結乾燥組成物。
【請求項18】
請求項3の方法に従って製造した再構成組成物。
【請求項19】
N-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド;N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミド、D3F、L3F、D5F、L5F、D6F、L6F、D7FおよびL7Fまたはその何れかの薬学的に許容される塩形から成る群から選択されるペプチドと、該ペプチドの2次構造を保存するために十分な量のトレハロースを含む凍結乾燥組成物。
【請求項20】
ペプチドがN-アセチル-D-Asp-D-Trp-D-Phe-D-Lys-D-Ala-D-Phe-D-Tyr-D-Asp-D-Lys-D-Val-D-Ala-D-Glu-D-Lys-D-Phe-D-Lys-D-Glu-D-Ala-D-Phe-アミド または N-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドである、請求項19の凍結乾燥組成物。
【請求項21】
ペプチドがN-アセチル-L-Asp-L-Trp-L-Phe-L-Lys-L-Ala-L-Phe-L-Tyr-L-Asp-L-Lys-L-Val-L-Ala-L-Glu-L-Lys-L-Phe-L-Lys-L-Glu-L-Ala-L-Phe-アミドである、請求項20の凍結乾燥組成物。

【公表番号】特表2010−533195(P2010−533195A)
【公表日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−516207(P2010−516207)
【出願日】平成20年7月9日(2008.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/069456
【国際公開番号】WO2009/009552
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】