説明

2次元のイオンビームプロファイルを取得する装置および方法

イオンビームのプロファイルを測定する方法と装置が提供される。この装置は、各々がイオンビームの入射されたイオンに応答して検知信号を生成するビーム電流検出器のアレイと、イオンビームに関する移動経路に沿ってビーム電流検出器のアレイが移動するように構成される移動機構と、移動経路に沿って複数の位置でビーム電流検出器によって生成される検知信号を取得し、取得した検知信号がイオンビームの二次元プロファイルを表わすように構成されるコントローラとを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン注入のシステムおよび方法に関し、更に詳しくは、イオンビームの2次元プロファイルを測定するための方法および装置に関する。
【発明の背景】
【0002】
イオン注入は、伝導率を変化させる不純物を半導体基板に送り込むための標準的な技術である。所望の不純物物質は、イオン源においてイオン化され、イオンは、所定のエネルギーを持つイオンビームとなるために加速され、イオンビームは、基板の表面に当てられる。ビームにエネルギーを持つイオンは、半導体材料の大部分に入り込み、所望の伝導率の領域を形成するために半導体材料の結晶格子に組み込まれる。
【0003】
イオン注入システムは、通常、気体または固体材料を洗練されたイオンビームに変換するためのイオン源を含む。イオンビームは、望まれていないイオン種を除去するために質量分析され、所望のエネルギーに加速されて、ターゲット面に導かれる。ビームは、ビーム走査、ターゲットの移動、あるいはビーム走査とターゲットの移動との組合せによって、ターゲット領域に分布させることができる。
【0004】
従来の手法の一つにおいては、大電流で広範囲に及ぶイオンビームの注入機は、高電流密度イオン源と、所望の種類のイオンを分離スリットを通して導く解析磁石と、その結果として生じる光線を屈折させる角度修正用磁石を有し、光線を平行にするとともにその幅の面において均一にする。リボン形のイオンビームはターゲットに到達し、ターゲットは、ターゲット上にイオンビームを分布させるためにリボン・ビームの進行方向に対して垂直方向に移動する。
【0005】
半導体基板の表面上でのイオンの均一な注入は、大抵の用途に重要な要求である。半導体素子構造の大きさが減少し、基板径が増加するにつれて、装置製造者は大面積の表面においてイオン線量のばらつきが最小限になることを要求する。均一性は、イオン注入のために使用するイオンビームのプロファイルによってある程度決定される。ビームプロファイルは、ビーム伝達の方向に対して垂直な平面のイオンビーム強度のマップである。特に広域ビーム、例えばリボン・イオンビームの場合、ビーム電流量は、イオンビームの横断面の中で変化することがありうる。さらに、ビームプロファイルは、イオン注入の状況、例えばドーパント種、エネルギーおよび電流量、あるいは時間等によって変化することができる。したがって、イオン注入装置の性能をより良くするために、ビームプロファイルを測定し、必要ならば調整することが望ましい。
【0006】
検出用開口部および、それに合わせて配置された環状のファラデーカップのあるマスク・プレートを含む、イオン注入のための線量計測と均一性モニタのシステム装置は、1988年6月14日に出された、CoreyJr.氏らへの米国特許第4,751,393号において記載される。複数の固定イオンビーム探知器を含む、イオン注入のためのビーム走査制御装置は、19851月15日に出された、柴田氏らへの米国特許第4,494,005号において記載される。光線内に配置される標本点の二次元の配列を含む、イオンビームの断面モニタは、E.P. EerNisseらによる、1975年3月のRev.Sci.Instrum.第46巻第3号の266〜268頁に記載される。単一の低速で移動するファラデー検知器を含む、イオン注入装置内の高性能走査のための方法と装置は、1999年12月25日に出された、Berrian氏らへの米国特許第4,980,562号において記載される。全ての従来ビーム測定技術は、低解像度、不正確性および動作が遅いことなど、これらに限らない様々な欠点を一つ以上持っていた。
したがって、イオンビーム断面測定のための改良された方法と装置が必要である。
【発明の開示】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、イオンビームのプロファイルを測定する装置を提供する。装置は、各々が前記イオンビームの入射されたイオンに応答して検知信号を生成するビーム電流検出器のアレイと、前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイが移動するように構成される移動機構と、前記移動経路に沿って複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成される検知信号を取得し、ように構成されるコントローラとを具える。取得した検知信号がイオンビームの二次元プロファイルを表す。
【0008】
本発明の第2態様によれば、イオン注入装置は、イオンビームを生成するように構成されたイオンビーム発生器と、イオン注入のためのターゲットを支持するターゲット部位と、ビーム電流検出器のアレイと、イオンビーム測定装置とを具える。イオンビーム測定装置は、前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイを移動するように構成された移動装置、および前記移動経路に沿った複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成された検知信号を取得するように構成されたコントローラを具える。
【0009】
第3の本発明の態様によれば、イオンビームを測定する方法が提供される。
その方法は、各々が前記イオンビームの入射されたイオンに応答して検知信号を生成するビーム電流検出器のアレイを設け、前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイが移動し、前記移動経路に沿って複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成される検知信号を取得する。
【0010】
本発明をより良く理解するための図面の簡単な説明を、文書の中に本願明細書において組み込まれた添付図面を参照して行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1において、イオン注入装置の実施例のブロック図が示される。イオン源10は、イオンを生成してイオンビーム12を出力する。イオン源10は、電離箱と、イオン化されるガスを含むガスボックスとを有する。ガスは、電離箱に供給され、電離箱でガスがイオン化される。このように形成されたイオンは、イオンビーム12を形成するために、電離箱から抽出される。イオンビーム12は、分解磁石32のポールの間に向かう。第1の電源14は、イオン源10の抽出電極に接続し、第1の正の電圧V0を提供する。第1の電圧V0は、例えば約0.2kvから80kvまで調節可能となりうる。このように、イオン源10からのイオンは、第1の電圧V0によって約0.2〜80kvのエネルギーに加速される。
【0012】
イオンビーム12は、抑制電極20および接地電極22を通過して質量分析器30に向かう。質量分析器30は、分解磁石32と、分析スリット36を有するマスキング電極34とを有する。分解磁石32は、イオンビーム12内のイオンを偏向させ、所望の種類のイオンは、分析スリット36を通り抜け、所望の種類ではないイオンは、分析スリット36を通過せずにマスキング電極34によってブロックされるようにする。実施例において、分解磁石32は、対象種類のイオンを90度偏向させる。
【0013】
所望の種類のイオンは、分析スリット36を通り抜け、質量分析器30の下流に配置される第1の減速段50に至る。減速段50は、上流電極52、抑制電極54および下流電極56を有する。イオンビームのイオンは、減速段50によって減速することができ、その後、角度修正用磁石60を通過することができる。角度修正用磁石60は、所望の種類のイオンを偏向させ、イオンビームを、発散イオンビームからほぼ平行なイオン軌道を有するリボン・イオンビーム62へと変える。実施例において、角度修正用磁石60は、対象種類のイオンを70度偏向させる。
【0014】
終端局70は、例えば基板72のような一つ以上の半導体基板をリボン・イオンビーム62の経路中で支持し、所望の種類のイオンが半導体基板に注入されるようにする。終端局70は、冷やされた静電気プラテンと、基板72をリボン・イオンビーム62の断面の長さ方向に垂直に移動するためのスキャナ(図示せず)とを有し、イオンを基板72の表面に分布させるようにする。リボン・イオンビームは、少なくとも基板72と同じくらいの幅の可能性がある。
【0015】
イオン注入装置は、角度修正用磁石60の下流に配置される第2の減速段80を有する。減速段80は、上流電極82、抑制電極84および下流電極86を有する。
【0016】
イオン注入装置は、当業者に既知の追加の構成要素を有する。例えば、終端局70は、典型的には、基板をイオン注入装置に導入するとともにイオン注入後に基板を取り除くオートメーション化した基板処理装置を有する。また、終端局70は、線量計測システム、電子銃および他の周知の構成要素を有してもよい。当然のことながら、イオンビームによって横断される全ての経路が、イオン注入の間真空になる。
【0017】
図1のイオン注入装置は、いくつかのモードのうちの一つで操作することができる。ドリフトモードとして知られているような第1の操作モードにおいて、減速段50および80は接地し、イオンビーム12は、イオン源10から発生した後、決められた最終的な光線エネルギーでビーム経路を移動する。促進されたドリフトモードとして知られている第2の操作モードにおいて、イオンビーム12は、質量分析器30を通過する前に電極22で中間エネルギーにまで加速され、その後、第1の減速段50において最終的な光線エネルギーにまで減速される。二重減速モードとして知られている第3の操作モードにおいて、イオンビームは、質量分析器30を通過する前に電極22で中間エネルギーにまで加速され、第1の減速段50において第2の中間エネルギーにまで減速し、角度修正用磁石を通過し、その後、第2の減速段80によって最終的な光線エネルギーに減速される。第4の操作モードは、ビームが第2の減速段80まで中間エネルギーで移動され、第1の減速段50のギャップは、分路によって操作される。イオンビームを、より高いエネルギーでビーム経路の一部を移動させることによって、所与の最終的な光線エネルギーに対して、空間電荷の広がりを、ドリフトモードに比べて減少することができる。
【0018】
本発明の態様によれば、終端局70は、図1に示すようにイオンビームプロファイラ100を有する。本発明の実施例によるイオンビームプロファイラ100のブロック図は、図2に示される。イオンビームプロファイラ100は、典型的にはイオンビーム移動方向に直交する面にあり、イオンビーム62の断面のプロファイルを取得するように構成される。ビーム移動方向は、図2の面に直交する。典型的には、基板72の面またはそれに近接するイオンビームプロファイルが、関心の対象となる。しかしながら、イオンビーム観測記録装置100は、あらゆる所望の面でイオンビームプロファイルを取得することができる。
【0019】
イオンビームプロファイラは、ビーム電流密度の2次元マップの形態でビームプロファイルを取得するために、イオンビームの横断面上の逐次の領域のビーム電流値を測定する。2次元マップを、X−Y画素アレイとして構成することができ、画素アレイの各々は、ビーム断面の増加領域のビーム電流密度の計測値を有する。画素値を、後述するように測定することができる。ビーム電流密度の2次元マップは、イオンビームプロファイルが仕様の範囲内であることを確認するために利用することができる。ビームプロファイルが仕様の範囲内でない場合、ビームプロファイルを調整することができ、更新されたビームプロファイルを、調整を確認するために取得することができる。2次元ビームプロファイルの他の使用を、本発明の範囲内で考えることができる。
【0020】
図2を参照すると、イオンビームプロファイラ100は、ビーム検知アッセンブリ110、移動機構112およびコントローラ114を有する。イオンビームプロファイラ100は、イオンビーム62の2次元プロファイルを測定するよう構成される。後述するように、イオンビームプロファイラは、任意の断面形状およびサイズを有するイオンビームを測定するように構成されうる。
【0021】
ビーム検知アッセンブリ110は、フレームあるいはハウジング126に装着されるビーム電流検出器124のアレイ122を有する。ビーム電流検出器124は、遮断されたイオンビームに応答して電気信号を生じるファラデーカップであってもよい。周知のように、検知信号の大きさは、遮断されたイオンビーム電流の関数である。各々のビーム電流検出器を、イオンビームに面する開口を有するカップ形状導体とすることができる。開口のサイズは、ビーム電流検出器によってサンプリングされるイオンビームの領域を決定する。
【0022】
図2の実施例において、配列122は、Y方向に沿って等間隔に設置されるビーム電流検出器124の線形アレイである。後述するように、他のアレイ形態を本発明の範囲内で利用することができる。
【0023】
ビーム検知アッセンブリ110は、イオンビーム62の全ての断面をカバーするために、移動装置112によってX方向の移動経路140に沿って移動させられる。ビーム検知アッセンブリ110が移動経路140に沿って移動させられるので、ビーム電流測定値は各々のビーム電流センサ124から取得される。ビーム電流測定値を、ビーム検知アッセンブリ110が移動するときに取得することができ、ステップ状の移動の場合にはビーム検知アッセンブリ110が移動経路140に沿って停止するときに取得することができる。ビーム電流測定器124によって発生する検知信号は、連続的に測定されることができ、または所望の間隔でサンプリングすることができる。電流測定結果は、メモリ130への記録およびホストコンピューターへの伝達の双方又はいずれか一方のためにコントローラ114に供給される。ビーム検知アッセンブリ110がイオンビーム62を横切って移動するので、電流測定結果のセットは、イオンビーム62のビーム電流密度の2次元マップを表す。電流測定結果のセットは、イオンビームプロファイルの表示またはプリントアウトを生成するために用いてもよい。
【0024】
イオンビームプロファイラ100のパラメータは、ビーム電流量や断面の大きさおよび形状のようなイオンビーム62の特徴と、所望の解像度および測定速度とに依存する。アレイ122がY方向に沿ったビーム電流検出器124を有する図2の実施例において、アレイ122の長さを、少なくともイオンビーム62の予想される最大の高さと同じ大きさにする必要がある。ビーム検知アッセンブリ110の経路140の長さを、少なくともイオンビーム62の予想される最大の幅と同じ大きさにする必要がある。アレイ122のビーム電流検出器124の寸法は、ビームプロファイルの所望される解像度と、条件にあった信号レベルを表示するための能力に依存する。個々のビーム電流検出器124は、イオンビーム全体の連続的なプロファイルを提供するために、隣接している領域を検出することができる。
【0025】
移動経路140に沿ったビーム検知アッセンブリ110の平行移動は、連続的または離散的なステップであってもよい。ある実施例において、ビーム検知アッセンブリ110は、ビーム電流検出器124の開口部の幅の半分の長さずつ移動する。この実施例では、イオンビームプロファイラ100は、それぞれが測定された電流値を有する画素の行と列を有する二次元のビームプロファイルを取得する。ビーム電流検出器124のアレイ122は画素の列を決定し、画素の行は、各々のビーム電流検出器124が移動経路140に沿って移動されることで決定される。
【0026】
移動機構112は、例えばラックピニオン駆動機構を利用することができる。他の適切な移動機構には、ボールねじ、リニアーモータおよび空気ピストン等がある。
【0027】
図2に示されるように、コントローラ114は、移動経路140に沿ったビーム検知アッセンブリ110の移動を制御するために、移動機構112に位置制御信号を出力することができる。例えば、コントローラ114は、ビーム検知アッセンブリ110をイオンビーム62を横切るようステップ状に移動するとともに各々の位置でビーム電流検出器124の各々によって検出されるビーム電流量を記録するために移動機構112を制御することができる。測定された電流値およびそれに対応する位置は、2次元のイオンビームプロファイルを表すデータセットを形成する。データセットは、メモリ130への保存及びホストコンピューターへの伝達の双方あるいはいずれか一方が可能である。
【0028】
図2の実施例においては、ビーム検知アッセンブリ110は、Y方向に沿って配置されるビーム電流検出器124を有し、ビーム検知アッセンブリ110は、X方向に移動する。他の実施態様においては、ビーム電流検出器124をX方向に沿って配置することができ、ビーム検知アッセンブリを、Y方向に沿って移動することができる。さらに、ビーム検知アッセンブリ110が、必ずしもX方向またはY方向に整列させられるというわけではない。
【0029】
本発明の実施例によるビーム検知アッセンブリの実施態様は、図3および4に示される。図3および4の実施例において、ビーム検知アッセンブリ210は、ハウジング226、ビーム電流検出器224のアレイ222および単一の細長いビーム電流検出器228を有する。アレイ222は、ビーム電流検出器224の第1のサブアレイ250およびビーム電流検出器224の第2のサブアレイ252を有する。第1及び第2のサブアレイ250と252はそれぞれ、ビーム電流検出器の線状アレイを有し、サブアレイ252のビーム電流検出器は、第1のサブアレイ250のそれに対してオフセットOYの分だけずれている。このアレイ形態は、連続的なストリップのイオンビーム62に沿ったイオンビームの測定ができるようにする。
【0030】
図4に示されるように、ビーム電流検出器224および228は、ハウジング226に装着される。ハウジング226は、それぞれのビーム電流検出器によって検出されるイオンビーム62の増加領域を決定する開口部262および264を有するカバー260によって囲まれる。特に、開口部262は、ビーム電流検出器224によって検出される領域を定め、開口部264は、ビーム電流検出器228によって検出される領域を定める長形スロットである。
【0031】
特に、低いイオンビーム流を測定するとき、2次元ビームプロファイルの取得の困難性の一つは、イオンビームによる電流のみが測定されることを保証することである。プロファイラは、周囲のガスへのイオンビームの衝突および基板上の帯電を消すために使用する電子銃からの導入によって発生する電子及び低エネルギー・イオンも存在するイオン注入機の領域で作動する。電子銃を、ビーム経路におけるプロファイラの上流側に直接配置することができる。ビームプロファイラは、ビーム電流検出器に電子および低エネルギー・イオンの侵入を抑制するための抑制部材を備えうる。
【0032】
ビーム検知アッセンブリは、低エネルギー電子がビームイオンとともにビーム電流検出器に入りまたは一度イオンが入った後に電子がビーム電流検出器から出て行くことを阻止するための磁石を有することができる。再び図4を参照すると、ビーム検知アッセンブリ210は、ビーム電流検出器224および228の対向側に配置される磁石270、272、274および276を有することができる。図4の実施例において、磁石270、272、274および276は、それぞれのS・N極が互いに向かい合って電流検出器224および228の入射部口に双極子磁場を作るように配置することができる。これらの磁石は、ビーム移動方向に直交するとともに大きさが約500〜600ガウスである磁場をそれぞれのビーム電流検出器の中央に生じるように選択される。当然のことながら、これらのパラメータはほんの一例として与えられており、本発明の範囲を制限するものではない。
【0033】
ビーム検知アッセンブリ210は、低エネルギーイオン、特に、電子銃によって発生する低エネルギーイオンがビームイオンとともにビーム電流検出器に入るとともにイオンビーム電流の一部として測定されることを阻止するためにビーム電流検出器の前に配置された正にバイアスがかけられたプレート280を有することができる。例えば、プレート280は、約+20ボルトの電圧でバイアスをかけることができる。
【0034】
電子および低エネルギー・イオン抑制のための抑制部材を有するビーム電流検出器の他の実施例は、図5に示される。ビーム電流検出器284を、ファラデーカップとして構成することができる。電子および低エネルギー・イオンは、接地板286、負の抑制金属板288、正の抑制金属板290および負の抑制金属板292を有する装置によって抑制される。図5の実施例において、接地板286は接地しており、負の抑制金属板288と292は、−200ボルトでバイアスされており、一方、正の抑制金属板290は、+400ボルトでバイアスされる。正の抑制金属板290は、低エネルギー・イオンがビーム電流検出器に入るのを防止し、ビーム経路中の電子がファラデーカップに出入りするのを防止する、負にバイアスがかけられたプレートによって、ビーム経路やビーム電流検出器から隔てられる。抑制磁石がない場合、正にバイアスがかけられたプレートのみが低エネルギー・イオンがファラデーカップに入るのを防止するが、同時に電子流を歪めることになる。
【0035】
図3および4の実施例において、ビーム電流検出器224の各々は、高さHおよび幅Wを有し、隣接したビーム電流検出器は、Y方向に高さHに等しい間隔SYだけ離れている。サブアレイ250及び252は、X方向に間隔SXだけ間隔を置いて離間されている。ビーム電流検出器の間隔を空けた二つのサブアレイの配置は、単一の線形アレイに個々のビーム電流センサが配置されたときの壁の厚さから生じる測定のあらゆるギャップを回避する。イオンビーム62の連続的なストリップに沿ったビーム電流測定は、ある特定のX位置におけるサブアレイ252による第一の測定と、ビーム検知アッセンブリ210のX方向における幅Wと間隔SXとの和に等しい距離だけの移動と、サブアレイ250による同じX位置における第2の測定とを含む。2つの測定値は結合され、特定のX位置における連続的なストリップに沿ったイオンビームプロファイルを提供する。実際には、測定値は、異なるX位置においてサブアレイ250および252によって同時に取得され、ビーム検知アッセンブリ210は、完全なデータのセットを提供するためにX方向に移動される。得られた電流の値は、XおよびY方向の隣接するデータ値を提供するために適切に処理される。このように、同じX位置においてサブアレイ250および252によって得られる電流値は、プロファイルデータセットの一段分を提供するために結合される。ビーム検知アッセンブリは、ビーム電流検出器の単一のアレイまたはビーム電流検出器の二つ以上のサブアレイを有することができる。
【0036】
一実施例において、各々のビーム電流検出器224は、6mm(ミリメータ)の高さHおよび6mmの幅Wを有し、各々の列の検出器間の間隔SYは6mmである。サブアレイ250および252のオフセットOYは6mmであり、サブアレイ250および252間の間隔SXは12mmである。例えば、ビーム検知アッセンブリ210を、3mmきざみでX方向に沿って移動させることができる。この実施例において、各々のサブアレイ250および252は、144mmの総測定高さに対して12個のビーム電流検出器を有することができる。ビーム電流検出器224の高さHおよび幅Wは、関心のあるアプリケーションにおいて受け入れられる信号レベルを収集するとともに所望の解像度を提供するよう選択される。移動経路140の長さを、イオンビーム60の幅以上にすることができ、一実施例では400mmである。この例では、二次元のイオンビームプロファイルを2秒で取得することができる。当然ながら、これらのパラメータは例として与えられており、本発明の範囲に関して制限するものではない。
【0037】
ビーム電流検出器228を、アレイ222のビーム電流検出器224の総面積に等しい面積を有する単一ビーム電流検出器として構成することができる。より詳しく言えば、ビーム電流検出器228は、ビーム電流検出器224の幅Wに等しい幅Vを有することができ、Y方向に沿ってアレイ222の長さに等しい長さを有することができる。ビーム電流検出器228は、アレイ222の検出器224の動作を確認するために用いてもよい。特定のX位置でビーム電流検出器228により測定されるビーム電流は、同じX位置でサブアレイ250および252により測定される全電流に等しくなるべきである。ビーム電流検出器228は、各々のX位置において、ビーム電流密度のY方向に沿ったばらつきを平均し、単一の測定された電流値を与える。このように、ビーム電流検出器228は、一次元のビームプロファイルを提供する。
【0038】
図3および4の実施例は、イオンビームの連続的なストリップを測定する二つのサブアレイを有する。他の実施態様において、ビーム電流検出器は、Y方向に沿って間隔を置かれ、検出器間のビーム電流を推定するために内挿法が用いられる。図2に示される既に説明されたアレイ122は、間隔を置いたビーム電流検出器124の実施例である。他の実施例において、ビーム電流検出器は、重なり合う測定領域を有する。
【0039】
種々のイオンビームを、ここに図示されて説明されるイオンビームプロファイラによってプロファイルすることができる。図6を参照すると、リボン・イオンビーム300は、典型的には、ビーム高さBHおよびビーム幅BWによって特徴づけられる細長い断面を有する。Y方向のビーム検出器のアレイの長さは、ビーム高さBH以上になるように選択され、X方向の平行移動経路140の長さは、ビーム幅BW以上になるように選択される。イオンビーム断面の長さに沿ってビーム検知アッセンブリを移動することが典型的には最も実際的である。しかしながら、本発明はこの点に関しては制限されない。それ故、例えば、リボン・イオンビーム300のプロファイルを取得するために、水平方向のビーム電流検出器のアレイを垂直方向に移動することもできる。
【0040】
図7を参照すると、本発明のイオンビームプロファイラを、走査されたイオンビームのプロファイルを取得するために利用することができる。図7において、イオンビーム310は、走査パターン316を提供するために走査方向314に沿って走査される。イオンビームプロファイラを、走査方向314に沿って走査パターン316のプロファイルを取得するために利用することができる。図7の実施例において、ビーム検知アッセンブリは、走査方向314に沿って移動され、移動経路は、走査パターン316の幅以上の長さを有する。ビーム検知アッセンブリの移動速度は、イオンビーム310が移動経路に沿った各々の位置での少なくとも一回の測定を確実に行うために、ビーム走査速度に比べて低い。
【0041】
スポット・イオンビーム320は、図8に示される。スポット・イオンビーム320のプロファイルを取得するために、ビーム電流検出器のアレイの高さおよび移動経路の長さは両方とも、イオンビーム320の予想される最大の直径以上である。当然のことながら、スポット・イオンビーム320は円形断面を必ずしも有するというわけではなく、一般に不規則な断面形状を有する。
【0042】
あらゆるビームタイプに対して、ビーム電流検出器のアレイの長さと移動経路の長さは、好適には、異常なイオンビーム状態に順応するためにさ偉大の予測さえるビーム寸法または走査パターンの長さよりも幾分大きい。ビーム電流検出器のアレイは、個々のビーム電流検出器の所望の形態を有することができ、X方向、Y方向、あるいは任意の方向に移動させることができる。
【0043】
本発明の少なくとも一つの実施の形態の複数の態様を説明したが、種々の変更、変形および向上が容易に行われることは、当業者に明らかである。そのような変更、変形及び向上は、この開示の一部であるとともに本発明の範囲内にある。したがって、前述の説明および図面は、単なる実施例である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、イオン注入装置の実施例の簡略回路図である。
【図2】図2は、本発明の実施例に従ってイオンビームの2次元プロファイルを測定する装置の概略構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例に従う光線検知アッセンブリの正面図である。
【図4】図4は、図3の4−4のラインに沿った光線検知アッセンブリの断面図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施例に従う抑制電極を有するビーム電流検出器の簡易断面図である。
【図6】図6は、リボン・イオンビームの断面を図示する。
【図7】図7は、走査されたイオンビームの断面を図示する。
【図8】図8は、スポット・イオンビームの断面を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームのプロファイルを測定する装置であって、
各々が前記イオンビームの入射されたイオンに応答して検知信号を生成するビーム電流検出器のアレイと、
前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイが移動するように構成される移動機構と、
前記移動経路に沿って複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成される検知信号を取得し、ように構成されるコントローラとを具え、
取得した検知信号がイオンビームの二次元プロファイルを表す装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記コントローラが、前記移動経路に沿った前記ビーム電流検出器のアレイの移動を制御するように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記移動機構が、前記ビーム電流検出器のアレイを前記移動経路に沿った不連続なステップで移動させるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置において、前記移動機構が、ビーム電流検出器の列を移動経路に沿って連続的に移動させるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記移動機構が、前記イオンビーム移動方向に対してほぼ垂直な方向に前記ビーム電流検出器のアレイを移動させるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記ビーム電流検出器のアレイが線形アレイを具えることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記ビーム電流検出器のアレイがファラデーカップのアレイ配列を具えることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記ビーム電流検出器のアレイがファラデーカップの第1および第2のサブアレイを具え、前記ファラデーカップの第1および第2のサブアレイが、移動方向において互いにずれるとともに移動方向に垂直な方向に対して互いにずれていることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置において、前記コントローラが、前記移動経路に沿った複数の位置の取得した検知信号に応答して前記イオンビームの二次元プロファイルを表わすデータセットを生成するように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置において、前記データセットの各々の要素が、測定された電流値およびそれに対応する位置を有することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置において、長さのある断面を有するリボン・イオンビームを測定するよう構成され、前記移動機構が、前記リボン・イオンビームの断面の長さに沿って前記ビーム電流検出器のアレイを移動させるように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1に記載の装置において、走査方向を有する操作されたイオンビームを測定するよう構成され、前記移動機構が、前記走査方向に沿ってビーム電流検出器のアレイを移動するように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、前記ビーム電流検出器のアレイの移動が前記イオンビームの走査に比べて遅くしたことを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置において、スポット・イオンビームを測定するように構成され、前記移動機構が前記スポット・イオンビームに関して前記ビーム電流検出器のアレイを移動するように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項1に記載の装置において、前記アレイの前記ビーム電流検出器の領域の和にほぼ等しい領域を有し、前記ビーム電流検出器のアレイと共に移動されるとともに検知信号を生成する単一のファラデーカップを更に具えることを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項1に記載の装置において、前記ビーム電流検出器が、前記移動経路に対して直角の方向で前記イオンビームの連続的なストリップを検知するように構成されたことを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置おいて、前記ビーム電流検出器が、前記移動経路に対して垂直の方向に離間していることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項1に記載の装置において、前記ビーム電流検出器に対する電子および低エネルギーイオンの侵入を抑制するための一つ以上の抑制部材を更に有することを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置において、前記抑制部材が、前記ビーム電流検出器への電子への侵入を抑制する磁石と、前記ビーム電流検出器への低エネルギー・イオンの侵入を抑制する正にバイアスをかけられたプレートとを有することを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項18に記載の装置において、前記抑制部材が、前記ビーム電流検出器への低エネルギー・イオンの侵入を抑制する正にバイアスをかけられたプレートと、前記ビーム電流検出器への電子の侵入を抑制する一つ以上の負にバイアスをかけられたプレートとを有することを特徴とする装置。
【請求項21】
イオンビームを生成するように構成されたイオンビーム発生器と、
イオン注入のためのターゲットを支持するターゲット部位と、
ビーム電流検出器のアレイ、前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイを移動するように構成された移動装置、および前記移動経路に沿った複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成された検知信号を取得するように構成されたコントローラを具えるイオンビーム測定装置とを具えるイオン注入装置。
【請求項22】
請求項21に記載のイオン注入装置において、前記コントローラが、前記移動経路に沿った前記ビーム電流検出器のアレイの移動を制御するように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項23】
請求項21に記載のイオン注入装置において、移動装置が、前記ビーム電流検出器のアレイを移動経路に沿った不連続なステップで経て移動させるように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項24】
請求項21に記載のイオン注入装置において、前記移動装置が、前記ビーム電流検出器のアレイを前記移動経路に沿って連続的に移動させるように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項25】
請求項21に記載のイオン注入装置において、前記移動装置が、前記イオンビーム移動方向に対してほぼ垂直な方向にビーム電流検出器のアレイを移動させるように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項26】
請求項21に記載のイオン注入装置において、前記ビーム電流検出器のアレイがファラデーカップの第1および第2のサブアレイを具え、前記ファラデーカップの第1および第2のサブアレイが、移動方向において互いにずれるとともに移動方向に垂直な方向に対して互いにずれていることを特徴とするイオン注入装置。
【請求項27】
請求項21に記載のイオン注入装置において、前記コントローラが、前記移動経路に沿った複数の位置の取得した検知信号に応答して前記イオンビームの二次元プロファイルを表わすデータセットを生成するように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項28】
請求項27に記載のイオン注入装置において、前記データセットの各々の要素が、測定された電流値およびそれに対応する位置を有することを特徴とするイオン注入装置。
【請求項29】
請求項21に記載のイオン注入装置において、長さのある断面を有するリボン・イオンビームを測定するよう構成され、前記移動機構が、前記リボン・イオンビームの断面の長さに沿って前記ビーム電流検出器のアレイを移動させるように構成されたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項30】
各々が前記イオンビームの入射されたイオンに応答して検知信号を生成するビーム電流検出器のアレイを設け、
前記イオンビームに関する移動経路に沿って前記ビーム電流検出器のアレイが移動し、
前記移動経路に沿って複数の位置で前記ビーム電流検出器によって生成される検知信号を取得する、イオンビームを測定する方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法において、前記アレイの移動によって、前記ビーム電流検出器のアレイを移動経路に沿った不連続なステップで経て移動させることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法において、前記アレイの移動によって、前記ビーム電流検出器のアレイを前記移動経路に沿って連続的に移動させることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法において、前記アレイの移動によって、前記イオンビーム移動方向に対してほぼ垂直な方向に前記ビーム電流検出器のアレイを移動させることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法において、前記移動経路に沿った複数の位置の取得した検知信号に応答して前記イオンビームの二次元プロファイルを表わすデータセットを生成することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法において、前記データセットの各々の要素が、測定された電流値およびそれに対応する位置を有することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項30に記載の方法において、前記移動経路に対して直角の方向で前記イオンビームの連続的なストリップを検知するように構成されたアレイを具える前記ビーム電流検出器のアレイを設けることを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項30に記載の方法において、互いに離間したビーム電流検出器を備える前記ビーム電流検出器のアレイを設け、前記移動経路に垂直な方向のイオンビームのストリップに沿ってビーム電流値を推定するために内挿法を用いることを含むことを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項30に記載の方法において、前記ビーム電流検出器に対する電子および低エネルギー・イオンの侵入を抑制することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−519414(P2008−519414A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540012(P2007−540012)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/039729
【国際公開番号】WO2006/052622
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(500239188)ヴァリアン セミコンダクター イクイップメント アソシエイツ インコーポレイテッド (69)
【Fターム(参考)】