説明

2次元光走査装置、画像投影装置

【課題】コンパクトな2次元光走査装置を提供する。
【解決手段】第1軸線a回りに揺動可能なミラー11aと、ミラー11aを第1軸線回りに揺動させる圧電素子12を有する可動部10と、可動部10を第1軸線aと直交する第2軸線b回りに回動させる回動駆動部20とから構成され、圧電素子12に駆動電流を供給する配線は、圧電素子12に接続する第1配線31と、一端が第1配線31と中継部45で接続され、他端が駆動電流を生成する駆動電源に接続された第2配線32とから構成され、第1配線31を、第2配線32よりも、単位長さ当たりの質量が小さい配線で構成する。これにより、圧電素子12の振動は質量が小さい第1配線31により阻害されること無い。このため、光を走査する可動部10を回動させて光を2次元走査させるコンパクトな2次元光走査装置を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光等の光を2次元走査させる2次元光走査装置、これを用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、振動するミラーによりレーザ光の走査を行う光走査装置が知られている。このような光走査装置は、梁部で回動可能に支持されたミラーを、圧電素子で共振させて回動させることにより、ミラーに入射する光を走査する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−271788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような光走査装置は、光を1次元方向しか走査させることができない。光を2次元走査させて画像を生成する場合には、2個の光走査装置を、それぞれの走査方向が直交するように配置させる必要があり、装置が大きくなってしまうという問題があった。また、2個の光走査装置を正確に配置させなければ、画像が歪んでしまうが、各光走査装置の位置合わせ(軸合わせ)が困難であり、2次元光走査装置の製造が困難であった。
本発明は、上記問題を解決し、装置が大きくならず、製造が困難でない2次元光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を第1軸線回りに揺動可能に支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する一対の支持梁と、
前記一対の支持梁が接続される伝達部と、
前記伝達部と前記支持梁との接続部分と反対端の前記伝達部に接続された被取付部と、
前記伝達部に設けられ、前記伝達部に振動を付与することで前記ミラーを前記第1軸線回りに揺動させる圧電素子とを有する可動部と、
基台と、
前記基台に、前記第1軸線と直交する第2軸線回りに回動可能に軸支され、前記被取付部が取り付けられた回動軸と、
磁界を発生する磁界発生部と、
駆動電流が供給されるコイルを有し、
前記コイルが発生する磁界と前記磁界発生部が発生する磁界の相互作用により前記回動軸を第2軸線回りに回動させる回動駆動部とから構成され、
前記圧電素子に駆動電流を供給する配線は、
前記圧電素子に接続する第1配線と、
一端が前記第1配線と中継部で接続され、他端が前記駆動電流を生成する駆動電源に接続された第2配線とから構成され、
前記第1配線は前記第2配線よりも単位長さ当たりの質量が小さいことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記中継部は、前記第2軸上に有ることを特徴とする。
これにより、回動部の回動が第1配線や第2配線によって阻害されない。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
前記中継部は、前記被固定部上に有ることを特徴とする。
これにより、第1配線の圧電素子に接続される位置と中継部との間隔が、可動部が揺動しても常に一定に保たれる。従って、可動部の回動による第1配線の断線が防止される。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、
前記ミラー、前記一対の支持梁、前記伝達部、前記被取付部は、金属で一体に構成され、
前記中継部と前記被取付部との間に絶縁部を形成し、前記中継部と前記被取付部とを絶縁させたことを特徴とする。
これにより、基板がグランド電位であっても第2配線と基板がショートすることが無い。このため、基板をグランド電位とすると、圧電素子に接続するグランド線を省略することが可能となり、低コスト化及び軽量化を実現することが可能となる。
【0009】
請求項5に記載の発明は、
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を第1軸線回りに揺動可能に支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する一対の支持梁と、
前記一対の支持梁が接続される伝達部と、
前記伝達部と前記支持梁との接続部分と反対端の前記伝達部に接続された被取付部と、
前記伝達部に設けられ、前記伝達部に振動を付与することで前記ミラーを前記第1軸線回りに揺動させる圧電素子と、を有する可動部と、
基台と、
前記基台に、前記第1軸線と直交する第2軸線回りに回動可能に軸支され、前記被取付部が取り付けられた回動軸と、
磁界を発生する磁界発生部と、
駆動電流が供給されるコイルを有し、
前記コイルが発生する磁界と前記磁界発生部が発生する磁界の相互作用により前記回動軸を第2軸線回りに回動させる回動駆動部とから構成され、
前記ミラーが前記圧電素子により前記第1軸回りに揺動されつつ、前記可動部が前記駆動部により第2軸回りに回動されて、前記ミラーに入射した光束を、2次元走査させる2次元光走査装置と、
前記圧電素子に供給する駆動電流を生成する第1ドライバと、
前記コイルに供給する駆動電流を生成する第2ドライバと、
前記ミラーに入射させる光を生成する光源部と、
前記2次元走査装置で2次元走査された光を、結像させるための光学系を有し、
前記第1ドライバと前記圧電素子間を接続する配線は、
前記圧電素子に接続する第1配線と、
一端が前記第1配線と中継部で接続され、他端が前記第1ドライバに接続された第2配線とから構成され、
前記第1配線は前記第2配線よりも単位長さ当たりの質量が小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1軸線回りに揺動可能なミラーと、振動することにより前記ミラーを第1軸線回りに揺動させる圧電素子を有する可動部と、この可動部を前記第1軸線と直交する第2軸線回りに回動させる回動駆動部とから構成され、前記圧電素子に駆動電流を供給する配線は、前記圧電素子に接続する第1配線と、一端が前記第1配線と中継部で接続され、他端が前記駆動電流を生成する駆動電源に接続された第2配線とから構成され、前記第1配線を前記第2配線よりも、単位長さ当たりの質量が小さい配線で構成した。これにより、圧電素子の振動は質量が小さい第1配線により阻害されること無い。このため、光を走査する可動部を、回動させて光を2次元走査させる構造を実現することが可能となり、装置が大きくならず、製造が困難で無い2次元光走査装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態の2次元光走査装置の斜視図である。
【図2】図1の上面図である。
【図3】図2のA―A断面図である。
【図4】中継部の拡大図である。
【図5】第2の実施形態の2次元光走査装置の斜視図である。
【図6】図5の上面図である。
【図7】画像投影装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態の2次元走査装置)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態(第1の実施形態)を示す。図1に示されるように、2次元光走査装置50は、回動駆動部20と、この回動駆動部20に回動可能に取り付けられた可動部10とから構成されている。可動部10は、ミラー11aに入射した光を第1軸線a回りに走査するものである。回動駆動部20は、可動部10を第1軸線aと直交する第2軸線b回りに回動させることにより、ミラー11aに入射した光を第2軸線b回りに走査するものである。
【0013】
図1〜図3に示されるように、可動部10は、ミラー11a、支持梁11b、接続部11e、伝達部11c、被取付部11dが一体形成された基板11と、伝達部11c上に貼設された圧電素子12とから構成されている。
【0014】
ミラー11aは、レーザ光等の光を反射する面である。ミラー11aは、本実施形態では、円形状であるが、これに限定されず、四角形状等であっても差し支えない。ミラー11aの両側には、ミラー11aから離れる方向に延出する支持梁11bが形成されている。支持梁11bの延出方向は、第1軸線a方向と一致している。つまり、支持梁11bの中心を、第1軸線aが通っている。この支持梁11bによって、ミラー11aの両側が第1軸線a回りに揺動可能に弾性的に支持されている。つまり、支持梁11bは、ミラー11aを第1軸線a回りに揺動可能に支持するトーションバーとしての役割を持っている。伝達部11cは四角形状であり、一辺から延出する2本の接続部11eが形成されている。2本の接続部11e間に、2本の支持梁11bが位置し、支持梁11bの端部が接続部11eに接続している。
伝達部11cの接続部11eが形成されている辺と反対側の一端には、被取付部11dが接続されている。本実施形態では、被取付部11dは、長方形状となっている。本実施形態では、被取付部11dは、その長手方向の中心で、伝達部11cの一端と接続している。基板11は、ステンレスやチタン等の金属板材を、エッチング加工やプレス加工等の除去加工をすることにより、ミラー11a、支持梁11b、伝達部11c、被取付部11d、接続部11eが一体に形成されて製造される。
【0015】
伝達部11c上には、セラミックス製等の圧電素子12が取り付けられている。本実施形態では、伝達部11cと圧電素子12は、導電性接着剤で接着されている。前記導電性接着剤は、熱硬化性を有するエポキシ系、アクリル系、シリコン系等の合成樹脂製の基剤内に、銀、金、銅等で構成された金属フィラーを分散させたものである。まず、伝達部11c上に導電性接着剤を塗布することで、接着剤層を形成する。次に、この接着剤層上に圧電素子12を載置した後に押圧する。そして、前記接着剤層を熱硬化させることにより、圧電素子12を伝達部11c上に接着させている。
【0016】
圧電素子12に交流電圧が印加されると、圧電素子12が振動し、一対の支持梁11bは第1軸線aを中心にねじれ振動する。すると、ミラー11aが共振して、第1軸線a回りに揺動し、ミラー11aに入射した光が第1軸線a回りに走査される。
【0017】
次に、回動駆動部20について説明する。図1〜図3に示されるように、回動駆動部20は、主に、基台21、回動軸22、磁界発生部23、コイル24とから構成されている。
【0018】
基台21は、ステンレスやチタン等の金属材料で構成されている。基台21は、板状又はブロック状の基部21aと、この基部21aの両端から、基部21aの形成方向と直交する方向(上方)に延出する板状又はブロック状の支持部21b、21cとから構成されている。
【0019】
軸部材22は、支持部21b、21c間に配設され、支持部21b、21cに回動自在に軸支されている。本実施形態では、軸部材22は、ステンレスやチタン等の金属材料で構成されている。本実施形態では、軸部材22の一端は、支持部材21bに取り付けられた軸受25に軸支されている。また、軸部材22の他端は、支持部材21cに取り付けられた軸受26に軸支されている。軸受25、26には、ボールベアリング等の転がり軸受、磁気軸受、流体軸受、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))や潤滑油等の低摩擦物質で軸部材22と接触する滑り軸受等のラジアル軸受が含まれる。
【0020】
図3に示されるように、軸部材22の中間部分は、軸部材22の上端から第2軸線bより下側位置まで切り欠かれた空間である基板配置部22aが形成されている。
基板配置部22aの一端側には、基板配置部22aの底面よりも上方にある平面である取付部22bが形成されている。図3に示されるように、基板11の被取付部11dが、軸部材22の取付部22bに載置された状態で取り付けられ、基板11が基板配置部22aに配置されている。本実施形態では、被取付部11dはスポット溶接により取付部22bに取り付けられている。なお、接着剤による接着や、所定の治具を用いたクランピングなどによって、被取付部11dが取付部22bに取り付けられてもよい。図3に示されるように、基板11の被取付部11d以外は、基板配置部22aの底面から離間している。また、基板11の上面、特に、ミラー11aの上面は、軸部材22の回動中心である第2軸線bが通っている。図2に示されるように、基板11を含む可動部10は、第2軸線bを対称軸として、幅方向対称に形成されている。
【0021】
図1や図3に示されるように、軸部材22の下部には、磁界発生部23が取り付けられている。本実施形態では、磁界発生部23は板状の永久磁石であり、軸部材22の下部から垂下して取り付けられている。なお、磁界発生部23を電磁石で構成しても差し支え無い。
【0022】
図1や図2に示されるように、磁界発生部23を挟むように、一対のコイル24が配設されている。本実施形態では、一対のコイル24は、基台21の基部21a上に取り付けられている。なお、コイル24内に、鉄心が配設されていても差し支え無い。一対のコイル24に電流が流れると、磁界が発生し、この磁界と磁界発生部23が発生する磁界の相互作用により、軸部材22が回動される。一対のコイル24に流れる電流を制御することにより、軸部材22を第2軸線b回りの任意の回動角度に回動させることができる。軸部材22が回動すると、ミラー11aもまた第2軸線b回りに回動されるので、ミラー11aに入射した光が第2軸線b回りに走査される。このように、ミラー11aの共振により、ミラー11aに入射した光が第1軸線a回りに走査され、軸部材22の回動により、ミラー11aに入射した光が第2軸線b回りに走査されることにより、ミラー11aに入射した光が2次元走査される。
【0023】
図1〜図3に示されるように、本発明では、圧電素子12に駆動電流を供給する配線は、圧電素子12に接続する第1配線31と、第1配線31と中継部40で接続された第2配線32とから構成されている。図2に示されるように、中継部40は、第2軸線b上にある。以下、図4の(A)も用いて、中継部40について説明する。
【0024】
図1〜図3、図4の(A)に示されるように、第2軸線b上に位置する支持部21b上には、絶縁層35が形成されている。なお、第2軸線b上とは、第2軸線bの上方を含む概念である。この絶縁層35により、中継部40が構成されている。絶縁層35は、例えば、エポキシ系絶縁材料等の絶縁体で構成されている。
図1〜図3、図4の(A)に示されるように、絶縁層35上には、第2配線32の一端が接着されている。このように、第2配線32は、絶縁層35を介して、支持部21b上に取り付けられているので、第2配線32と基台21とは絶縁されている。本実施形態では、第2配線32は、厚み12μm〜50μmのフィルム状の絶縁体(ベースフィルム)の上に接着層を形成し、さらにその上に厚み12μm〜50μm程度の導体箔を形成したフレキシブルプリント基板(FPC)である。前記絶縁体には、ポリイミド膜もしくはフォトソルダーレジスト膜が含まれる。また、前記導体箔には、銅箔、金泊、銀箔、アルミ箔が含まれる。このようなフレキシブルプリント基板は、繰り返し変形させることが可能であり、繰り返し変形により導体箔が断線すること無く、変形した場合であってもその電気的特性が維持される。
図1〜図3、図4(A)に示されるように、第2配線32の一端には、前記導体箔と電気的に接続する端子部32aが形成されている。
なお、第2配線32の他端側は、後述する第1ドライバ181(図7に示す)の出力側に接続している。
【0025】
図1〜図3に示されるように、第1配線31の一端31aは、圧電素子12に接続されている。第1配線31は、金線、銀線、銅線等の導電率の良好な金属線である。図1や図2に示されるように、第1配線31の一端31aは、圧電素子12の幅方向中間位置、つまり、第2軸線b上で、圧電素子12に接続されている。第1配線31は、第1配線31は、第2配線32よりも、単位長さ当たりの質量が小さく、その線径は25〜75μmの細い金属線である。
このため、圧電素子12の振動が阻害されない。第1配線31の線径が75μmよりも太い場合には、圧電素子12の振動が阻害され、ミラー11aに入射した光の第1軸線a回りの走査が阻害される。一方で、第1配線31の線径が25μmよりも細い場合には、圧電素子12の振動により、第1配線31が断線する恐れが有る。なお、第1配線31と圧電素子12との接続は、第1配線31の一端を、圧電素子12に押し付けつつ、熱と超音波振動を加えて、第1配線31と圧電素子12の接続部分を合金化させるワイヤーボンディングなどにより行われる。
【0026】
図1〜図3、図4(A)に示されるように、第1配線31の他端31bは、第2配線32の端子部32aに接続している。第1配線31の他端31bと第2配線32の端子部32aとの接続方法には、前記したワイヤーボンディング、半田付けが含まれる。
【0027】
本実施形態では、基板11と軸部材22、軸部材22と軸受25、26、軸受25、26と基台21は相互に電気的に接続している。つまり、基板11と基台21は電気的に接続している。そして本実施形態では、基板11、軸部材22、及び、基台21はグランド電位となっている。本実施形態では、第2配線32は、絶縁層35を介して基台21に取り付けられているので、基台21がグランド電位であっても第2配線32と基台21がショートすることが無い。このように、本実施形態では、基板11、軸部材22、及び、基台21をグランド電位としているので、圧電素子12に接続するグランド線を省略することが可能となり、低コスト化及び軽量化を実現することが可能となっている。
【0028】
図2に示されるように、第1配線31の他端31bと第2配線32との接続位置である中継部40は、第2軸線b上である。このため、可動部10が回動駆動部20に対して回動する際に、回動部10の回動が阻害されない。第1の実施形態では、第1配線31と第2配線32が接続される中継部40が基台21側にあり、中継点40と圧電素子12間は、線径が細く質量の小さい第1配線31で接続されているので、回動部10の回動が阻害されないようになっている。
【0029】
(第2の実施形態の2次元走査装置)
図4(B)、図5、図6を用いて、第1の実施形態の2次元光走査装置50と異なる点について、以下、第2の実施形態の2次元走査装置60について説明する。第2の実施形態の2次元走査装置60は、中継部45が、基板11の被取付部11d上にある実施形態である。図4の(B)、図5、図6に示されるように、基板11の被取付部11d上には、中継部45を構成する絶縁層36が形成されている。絶縁層36上には、第2配線32の一端側が接着されている。このように、第2配線32は、絶縁層36を介して、被取付部11d上に取り付けられているので、第2配線32と基板11とは絶縁されている。これにより、基板11がグランド電位であっても第2配線32と基板11がショートすることが無い。
【0030】
図4の(B)、図5、図6に示されるように、第1配線31の他端31bは、第2配線32の端子部32aに接続している。第1配線31の他端31bと第2配線32の端子部32aとの接続方法には、前記したワイヤーボンディング、半田付けが含まれる。図6に示されるように、第1配線31の他端31bと第2配線32との接続位置である中継部45は、第2軸線b上である。このため、回動部10の回動が第2配線32によって阻害されない。
【0031】
第2の実施形態では、第1配線31と第2配線32が接続される中継部45が、基板11の被取付部11d上にあるので、第1配線31の圧電素子12に接続される位置と中継部45との間隔が、可動部10が揺動しても常に一定に保たれる。従って、可動部10の回動による、第1配線31の断線が防止される。また、中継部45には丈夫な第2配線32が接着されているので、可動部10の回動による、第2配線32の断線が防止される。また、第1配線31の線長が短いので、第1配線31の質量による圧電素子12の振動の阻害が抑制される。
【0032】
(画像投影装置の説明)
次に図7を用いて、画像投影装置200の説明をする。前記した第1の実施形態及び第2の実施形態における2次元光走査装置50、60は、画像を形成するために光を走査する構成として、画像投影装置200に用いることが可能である。図7は、画像投影装置200の全体構成について説明する図である。画像投影装置200は、観察者の瞳孔901に入射した光束を用いて網膜902上に画像を投影することによって、観察者に虚像を視認させる装置である。この装置は、網膜走査型ディスプレイともいわれる。
【0033】
画像投影装置200は、光束生成手段150、光ファイバ161、コリメート光学系162、第1ドライバ181、第2ドライバ182、2次元光走査装置50、及び、接眼光学系190を備える。光束生成手段150は、映像信号処理回路120、光源部130及び光合波部140から構成されている。なお、第1の実施形態の2次元光走査装置50の代わりに、第2の実施形態の2次元走査装置60が用いられても差し支えない。映像信号処理回路120は、外部から入力される映像信号に基づいて、画像を形成するためのB信号、G信号、R信号、水平同期信号及び垂直同期信号を発生する。
【0034】
光源部130は、Bレーザドライバ131、Gレーザドライバ132、Rレーザドライバ133、Bレーザ134、Gレーザ135及びRレーザ136を備える。Bレーザドライバ131は、映像信号処理回路120からのB信号に応じた強度の青色の光束を発生させるように、Bレーザ134を駆動する。Gレーザドライバ132は、映像信号処理回路120からのG信号に応じた強度の緑色の光束を発生させるように、Gレーザ135を駆動する。Rレーザドライバ133は、映像信号処理回路120からのR信号に応じた強度の赤色の光束を発生させるように、Rレーザ136を駆動する。Bレーザ134,Gレーザ135及びRレーザ136は、例えば半導体レーザや高調波発生機構付き固体レーザを用いて構成できる。
【0035】
光合波部140は、コリメート光学系141、142、143と、このコリメートされたレーザ光を合波するためのダイクロイックミラー144、145、146と、合波されたレーザ光を光ファイバ161に導く集光光学系147とを備える。Bレーザ134から出射した青色レーザ光は、コリメート光学系141によって平行光化される。平行光化された青色レーザ光は、ダイクロイックミラー144に入射する。Gレーザ135から出射した緑色レーザ光は、コリメート光学系142によって平行光化される。平行光化された緑色レーザ光は、ダイクロイックミラー145に入射する。Rレーザ136から出射した赤色レーザ光は、コリメート光学系143によって平行光化される。平行光化された赤色レーザ光は、ダイクロイックミラー146に入射する。ダイクロイックミラー144、145、146にそれぞれ入射した青色、緑色及び赤色レーザ光は、波長選択的に反射または透過されて1本の光束として合波され、集光光学系147に達する。合波されたレーザ光は、集光光学系147によって集光され、光ファイバ161へ入射する。
【0036】
第1ドライバ181は、映像信号処理回路120から出力される垂直同期信号に基づいて、2次元走査装置50の圧電素子12に供給する駆動電流を生成するものである。第1ドライバ181の出力側は、第2配線32と、グランドである基台21に接続している。第2ドライバ182は、映像信号処理回路120から出力される水平同期信号に基づいて、2次元走査装置50のコイル24に供給する駆動電流を生成するものである。
【0037】
光ファイバ161から出射したレーザ光は、コリメート光学系162によって平行光化される。平行光化されたレーザ光は、2次元光走査装置50のミラー11aに入射する。2次元光走査装置50の圧電素子12は、第1ドライバ181から供給される駆動電流によって、ミラー11aを振動させることにより揺動させ、ミラー11aに入射したレーザ光を垂直方向に走査させる。
2次元光走査装置50のコイル24は、第2ドライバ182から供給される駆動電流によって、可動部10(軸部材22)を回動させ、ミラー11aに入射したレーザ光を水平方向に走査させる。
なお、水平方向は、例えば使用者に対して左右方向である。また、垂直方向は、例えば使用者に対して上下方向である。2次元光走査装置50のミラー11aに入射したレーザ光は、水平方向及び垂直方向に走査された2次元走査光に変換される。接眼光学系190は、単一或いは複数のレンズから構成されている。2次元走査光は、接眼光学系190を介して、観測者の瞳孔901に平行光線として入射する。即ち、画像が観測者に提示される。
なお、圧電素子12による垂直走査は高速であり、これと比較して、可動部10の回動による水平走査は低速である。
【0038】
以上説明した実施形態では、第1ドライバ181は、映像信号処理回路120から出力される垂直同期信号に基づいて、2次元走査装置50の圧電素子12に供給する駆動電流を生成しているが、第1ドライバ181は、映像信号処理回路120から出力される水平同期信号に基づいて、2次元走査装置50の圧電素子12に供給する駆動電流を生成する実施形態でも差し支え無い。同様に、第2ドライバ182は、映像信号処理回路120から出力される垂直同期信号に基づいて、2次元走査装置50のコイル24に供給する駆動電流を生成する実施形態でも差し支え無い。この実施形態の場合には、2次元光走査装置50の圧電素子12は、第1ドライバ181から供給される駆動電流によって、ミラー11aを共振させ、ミラー11aに入射したレーザ光を水平方向に走査させる。また、2次元光走査装置50のコイル24は、第2ドライバ182から供給される駆動電流によって、可動部10を回動させ、ミラー11aに入射したレーザ光を垂直方向に走査させる。
【0039】
以上説明した実施形態では、光源部130は、レーザドライバ131〜133とレーザ134〜136とから構成されているが、光源部130は、電球、冷陰極管等の蛍光管、LED等であっても差し支え無い。
なお、網膜走査型ディスプレイの例で画像投影装置200を説明したが、壁面やスクリーンに画像を投影する画像投影装置200にも本発明の2次元光走査装置50、60を使用可能なことは言うまでもなく、この場合には、接眼光学系190の代わりに、2次元走査光を壁面やスクリーンに画像を結像させる結像光学系が使用される。
【0040】
以上説明した実施形態では、第2配線32はフレキシブルプリント基板であるが、第2配線32はこれに限定されず、撚り導線、平編み導線等であっても差し支え無い。
【0041】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う2次元光走査装置や画像投影装置もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0042】
10 可動部
11 基板
11a ミラー
11b 支持梁
11c 伝達部
11d 被取付部
11e 接続部
12 圧電素子
20 回動駆動部
21 基台
22 回動軸
23 磁界発生部
24 コイル
25 軸受
26 軸受
31 第1配線
32 第2配線
35 絶縁層(第1の実施形態)
36 絶縁層(第2の実施形態)
40 中継部(第1の実施形態)
45 中継部(第2の実施形態)
50 2次元光走査装置(第1の実施形態)
60 2次元光走査装置(第2の実施形態)
200 画像投影装置
a 第1軸線
b 第2軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を第1軸線回りに揺動可能に支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する一対の支持梁と、
前記一対の支持梁が接続される伝達部と、
前記伝達部と前記支持梁との接続部分と反対端の前記伝達部に接続された被取付部と、
前記伝達部に設けられ、前記伝達部に振動を付与することで前記ミラーを前記第1軸線回りに揺動させる圧電素子とを有する可動部と、
基台と、
前記基台に、前記第1軸線と直交する第2軸線回りに回動可能に軸支され、前記被取付部が取り付けられた回動軸と、
磁界を発生する磁界発生部と、駆動電流が供給されるコイルとを有し、前記コイルが発生する磁界と前記磁界発生部が発生する磁界との相互作用により前記回動軸を第2軸線回りに回動させる回動駆動部とから構成され、
前記圧電素子に駆動電流を供給する配線は、
前記圧電素子に接続する第1配線と、
一端が前記第1配線と中継部で接続され、他端が前記駆動電流を生成する駆動電源に接続された第2配線とから構成され、
前記第1配線は前記第2配線よりも単位長さ当たりの質量が小さいことを特徴とする2次元光走査装置。
【請求項2】
前記中継部は、前記第2軸上に有ることを特徴とする請求項1に記載の2次元光走査装置。
【請求項3】
前記中継部は、前記被固定部上に有ることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の2次元走査装置。
【請求項4】
前記ミラー、前記一対の支持梁、前記伝達部、前記被取付部は、金属で一体に構成され、
前記中継部と前記被取付部との間に絶縁部を形成し、前記中継部と前記被取付部とを絶縁させたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の2次元走査装置。
【請求項5】
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を第1軸線回りに揺動可能に支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する一対の支持梁と、
前記一対の支持梁が接続される伝達部と、
前記伝達部と前記支持梁との接続部分と反対端の前記伝達部に接続された被取付部と、
前記伝達部に設けられ、前記伝達部に振動を付与することで前記ミラーを前記第1軸線回りに揺動させる圧電素子と、を有する可動部と、
基台と、
前記基台に、前記第1軸線と直交する第2軸線回りに回動可能に軸支され、前記被取付部が取り付けられた回動軸と、
磁界を発生する磁界発生部と、
駆動電流が供給されるコイルを有し、
前記コイルが発生する磁界と前記磁界発生部が発生する磁界の相互作用により前記回動軸を第2軸線回りに回動させる回動駆動部とから構成され、
前記ミラーが前記圧電素子により前記第1軸回りに揺動されつつ、前記可動部が前記駆動部により第2軸回りに回動されて、前記ミラーに入射した光束を、2次元走査させる2次元光走査装置と、
前記圧電素子に供給する駆動電流を生成する第1ドライバと、
前記コイルに供給する駆動電流を生成する第2ドライバと、
前記ミラーに入射させる光を生成する光源部と、
前記2次元走査装置で2次元走査された光を、結像させるための光学系を有し、
前記第1ドライバと前記圧電素子間を接続する配線は、
前記圧電素子に接続する第1配線と、
一端が前記第1配線と中継部で接続され、他端が前記第1ドライバに接続された第2配線とから構成され、
前記第1配線は前記第2配線よりも単位長さ当たりの質量が小さいことを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−68424(P2012−68424A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213047(P2010−213047)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】