説明

2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホン

【課題】感度および指向周波数特性が同一である2つの単一指向性コンデンサマイクロホンユニットを用い、簡単な回路構成で2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンを実現する。
【解決手段】感度および指向周波数応答が実質的に同一である第1および第2の2つの単一指向性マイクロホンユニットU1,U2を用い、音源に対して遠い方に配置される第2マイクロホンユニットU2のFETQ2のドレインDとソースSに抵抗値が等しい抵抗素子R3,R4を接続するとともに、FETQ2のドレインDをカップリングコンデンサC1を介して音源に近い側の第1マイクロホンユニットU1の振動板1aに接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一指向性である2つのエレクトレットコンデンサマイクロホンユニットを備える2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
狭指向性マイクロホンには、音響管を用いる例えばガンマイクロホンと呼ばれるものの他に2次音圧傾度型がある。
【0003】
2次音圧傾度型マイクロホンは、2つのカージオイドユニットを指向軸(収音軸)の前後に所定の間隔をおいて配置し、その出力を減算することにより実現できる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、特許文献1には、膜エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットから出力される正相出力信号と、バックエレクトレットコンデンサマイクロホンユニットから出力される逆相出力信号とを交流的に接続してなる2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−277489号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】John Eargle著THE MICROPHONE BOOK Second Edition 「SECOND−AND HIGHER−ORDER MICROPHONES」参照,Focal Press 出版,2004年11月24日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、非特許文献1の減算方式の場合には、その減算回路が複雑であるという問題がある。また、特許文献1に記載のマイクロホンによれば、非特許文献1に比べて回路構成は簡素化されるものの、膜エレクトレット型とバックエレクトレット型の2機種を必要とする点で好ましくない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、感度および指向周波数特性が同一である2つの単一指向性コンデンサマイクロホンユニットを用い、簡単な回路構成で2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明は、対向的に配置された第1振動板および第1固定極と、ゲートが上記第1固定極に接続されている第1FETとを含む単一指向性の第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットと、対向的に配置された第2振動板および第2固定極と、ゲートが上記第2固定極に接続されている第2FETとを含む単一指向性の第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットとを備え、上記第1,第2の各エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットは感度および指向周波数応答が同一であり、上記第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットが音源側、上記第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットが所定の間隔をもってその後方の位置に収音軸を一致させて配置されており、上記第1,第2FETの各ドレインがともに給電線に接続され、上記第1,第2FETの各ソースおよび上記第1,第2振動板がともに接地線に接続されているとともに、上記第2FETのドレインと上記給電線との間および上記第2FETのソースと上記接地線との間に、抵抗値が同一である抵抗素子がそれぞれ接続され、上記第2FETのドレインに現れる出力信号にて上記第1振動板が駆動されることを特徴としている。
【0010】
本発明において、回路的には、上記第2FETのドレインが交流結合のカップリングコンデンサを介して上記第1振動板に接続される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、後方に配置される第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの第2FETのドレインと給電線との間および第2FETのソースと接地線との間に抵抗値が同一である抵抗素子が接続されているため、そのソース側から位相が正相の出力が得られ、ドレイン側からは逆相出力が得られ、これらの出力はレベルが等しく位相のみが180゜異なる。一方、音源側の第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの第1FETのソースからの出力は正相である。第2FETのドレイン出力の逆相と第1FETのソース出力の正相のレベルは等しい。よって、第2FETのドレイン側の逆相出力で第1振動板を駆動することにより、第1FETのソースからの出力は、第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの出力から第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの出力が減算されたものとなり、簡単な回路構成で2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンを示す回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図1により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1を参照して、この実施形態に係る2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンは、感度および指向周波数応答が実質的に同一である第1および第2の2つの単一指向性エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットU1,U2を備えている。以下、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットを「マイクロホンユニット」ということがある。
【0015】
マイクロホンユニットU1には、図示しないスペーサを介して対向的に配置された振動板1aおよび固定極1bと、インピーダンス変換器としてのFET(電界効果トランジスタ)Q1とが含まれており、固定極1bは、FETQ1のゲートGに接続されている。
【0016】
同様に、マイクロホンユニットU2には、図示しないスペーサを介して対向的に配置された振動板2aおよび固定極2bと、インピーダンス変換器としてのFETQ2とが含まれており、固定極2bは、FETQ2のゲートGに接続されている。
【0017】
マイクロホンユニットU1,U2は、ともにバックエレクトレット型で、詳しくは図示しないが、固定極1b,2bには、エレクトレット誘電体膜が設けられている。また、FETQ1,Q2のゲートGとソースSとの間には、2つのダイオードD1,D2を互いに逆方向として並列に接続したバイアス回路が接続されている。
【0018】
第1マイクロホンユニットU1と第2マイクロホンユニットU2は、指向軸(収音軸)を実質的に一致させた状態で所定の間隔Dをもって離間配置されている。この実施形態において、第1マイクロホンユニットU1が音源側で、第2マイクロホンユニットU2はその後方に配置されている。音源は図示されていないが、図1において第1マイクロホンユニットU1の左側に存在すると仮定している。
【0019】
この2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンは、給電線VDDと接地線GNDの2線式で駆動される。信号出力SIG−OUTは、第1マイクロホンユニットU1が備えるFETQ1のソースS側から得る。
【0020】
第1マイクロホンユニットU1において、振動板1aは抵抗素子R1を介して接地線GNDに接続される。また、FETQ1のドレインDは、給電線VDDに接続され、FETQ1のソースSは、抵抗素子R2を介して接地線GNDに接続される。
【0021】
第2マイクロホンユニットU2において、振動板2aは接地線GNDに接続される。また、FETQ2のドレインDは、給電線VDDに接続され、FETQ2のソースSは、接地線GNDに接続されるが、FETQ2のドレインDと給電線VDDとの間には抵抗素子R3が接続され、FETQ2のソースSと接地線GNDとの間に抵抗素子R4が接続される。
【0022】
抵抗素子R3とR4の抵抗値は実質的に同一とする。これにより、FETQ2のソースSには音源から到来する音波に対して位相が正相である出力が現れ、これに対して、FETQ2のドレインDには逆相の出力が現れる。これらの正相出力と逆相出力は、レベルが等しく位相のみが180゜異なる。
【0023】
一方、第1マイクロホンユニットU1が備えるFETQ1のソースSからの出力は正相である。FETQ2のドレインDに現れる逆相出力のレベルと、FETQ1のソースSからの正相出力のレベルはほぼ等しい。
【0024】
このことから、第2マイクロホンユニットU2が備えるFETQ2のドレインD側の逆相出力で第1マイクロホンユニットU1の振動板1aを駆動することにより、第1マイクロホンユニットU1が備えるFETQ1のソースSからの信号出力SIG−OUTは、(U1−U2)の減算出力となる。
【0025】
そのため、この実施形態では、FETQ2のドレインDと抵抗素子R3との接続点を交流結合のカップリングコンデンサC1を介して第1マイクロホンユニットU1の振動板1aに接続するようにしている。なお、振動板1aに対する接続個所は、実際には振動板1aが張設されている金属製の支持リング(ダイアフラムリング)である。
【0026】
このように、本発明によれば、感度および指向周波数応答が実質的に同一である第1および第2の2つの単一指向性マイクロホンユニットU1,U2を用い、音源に対して遠い方に配置される第2マイクロホンユニットU2のFETQ2のドレインDとソースSに抵抗値が等しい抵抗素子R3,R4を接続するとともに、FETQ2のドレインDをカップリングコンデンサC1を介して音源に近い側の第1マイクロホンユニットU1の振動板1aに接続する、という簡単な回路構成で2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホンを実現することができる。
【符号の説明】
【0027】
U1 第1マイクロホンユニット
U2 第2マイクロホンユニット
1a,2a 振動板
1b,2b 固定極
Q1,Q2 FET(電界効果トランジスタ)
G ゲート
D ドレイン
S ソース
R1〜R4 抵抗素子
C1 カップリングコンデンサ
VDD 給電線
GND 接地線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向的に配置された第1振動板および第1固定極と、ゲートが上記第1固定極に接続されている第1FETとを含む単一指向性の第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットと、
対向的に配置された第2振動板および第2固定極と、ゲートが上記第2固定極に接続されている第2FETとを含む単一指向性の第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットとを備え、上記第1,第2の各エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットは感度および指向周波数応答が同一であり、
上記第1エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットが音源側、上記第2エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットが所定の間隔をもってその後方の位置に収音軸を一致させて配置されており、
上記第1,第2FETの各ドレインがともに給電線に接続され、上記第1,第2FETの各ソースおよび上記第1,第2振動板がともに接地線に接続されているとともに、
上記第2FETのドレインと上記給電線との間および上記第2FETのソースと上記接地線との間に、抵抗値が同一である抵抗素子がそれぞれ接続され、
上記第2FETのドレインに現れる出力信号にて上記第1振動板が駆動されることを特徴とする2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
上記第2FETのドレインが交流結合のカップリングコンデンサを介して上記第1振動板に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の2次音圧傾度型エレクトレットコンデンサマイクロホン。

【図1】
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【公開番号】特開2012−227771(P2012−227771A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94160(P2011−94160)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】