説明

2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤およびその製造方法ならびに2液型ポリウレタン樹脂塗料

【課題】耐溶剤性の悪化の問題を効果的に改善することができる2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤およびその製造方法ならびに2液型ポリウレタン樹脂塗料を提供する。
【解決手段】ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性してなるポリイソシアネート変性体を主成分として含有する硬化剤と活性水素を有する主剤からなる2液型ポリウレタン樹脂塗料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネートを硬化剤に用いる2液型ポリウレタン樹脂塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
主剤(樹脂)としてポリオール等の各種樹脂成分を用い、硬化剤としてポリイソシアネートを用いた2液型ポリウレタン樹脂塗料は、常温乾燥が可能であり、塗装外観がよく、塗膜強度に優れ、また、良好な耐酸性のある塗膜を形成することができるため、建築、土工および車両の各分野において用いられている。
【0003】
2液型ポリウレタン樹脂塗料を用いて塗装する際、硬化性および乾燥性の促進のために、配合した上記2液に触媒を添加することが行われる。また、このとき、2液のうちのいずれか一方に予め触媒を添加しておくことも行われる。
このような触媒として、例えば、有機金属化合物であるジブチルスズジラウレートや、有機非金属化合物であるトリエチレンアミン等の第三級アミン等が用いられる。
【0004】
しかしながら、これらの触媒は、硬化性を高めるために多量に用いると、塗膜外観が低下する問題がある。特に、活性の強い有機金属化合物は、硬化反応が不均一に進行しやすいために、この問題が顕著となるおそれがある。
【0005】
上記の問題を改善するために、種々の技術が提案されている。
例えば、脂肪族または脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート化合物と水酸基を2個以上有するポリヒドキシル化合物とからなるウレタン樹脂組成物に、硬化触媒として(A)モノアルキル錫トリス脂肪酸塩と(B)ジアルキル錫ジ脂肪酸塩を用いたウレタン樹脂組成物が提案されており、このウレタン樹脂組成物は、速い硬化性と長い可使時間(混合から硬化が始まるまでの使用可能な時間。ポットライフともいう。)を提供できるとされている。ここで、脂肪族または脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート化合物としては、1、6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、3、5、5−トリメチル−3−イソシアネートメチルシクロヘキサン(IPDI)などのジイソシアネートから誘導される末端にイソシアネート基を有するビウレット、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート基を有するポリイソシシが使用される(特許文献1参照)。
【0006】
また、例えば、ウレタンエラストマー形成性組成物に関するものではあるが、(A)成分:ジフェニルメタンジイソシアネート(A1)と、数平均分子量500〜3、000の2官能ポリオール(A2)とを反応させることにより得られるイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む主剤と、(B)成分:数平均分子量300以下の短鎖ジオール(B1)、および数平均分子量500以下の短鎖トリオール(B2)を含む硬化剤と、(C)成分:N、N、N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミン(C1)を含む触媒を含有するものが提案されており、硬化時間(脱型時間)が短く、しかも可使時間(注型可能な時間)が長い新規なウレタンエラストマー形成性組成物を提供するものとされている。なお、ウレタンフオームの反応触媒の中で唯一N、N、N’−トリメチルアミノエチルエタノールアミンを使用した場合にのみ、無発泡の注型ウレタンエラストマーの形成において顕著な速脱型効果が奏されたことが述べられている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−106758号公報
【特許文献2】特開2004−224938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した2つの従来技術は、2液型ポリウレタン樹脂塗料を用いて塗装等する際、配合したこれら2液に触媒を添加する点においては、他の従来技術と変わるものではない。このため、塗膜外観の大幅な低下の有無は別としても、塗膜外観の評価指標のひとつである耐溶剤性試験(MEKラビングテスト)時に塗膜の一部がはがれ落ちる現象で確認されるように、耐溶剤性が悪化する問題の改善には限度があるものと考えられる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、耐溶剤性の悪化の問題を効果的に改善することができる2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤およびその製造方法ならびに2液型ポリウレタン樹脂塗料を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐溶剤性と可使時間や速乾性・速硬化性等とのバランスに優れる2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤およびその製造方法ならびに2液型ポリウレタン樹脂塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性してなるポリイソシアネート変性体を主成分として含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、好ましくは、前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基およびアロファネート基のいずれか一方または双方を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、好ましくは、前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートのうちのいずれか一方または双方から誘導されたポリイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、好ましくは、前記変性剤が有機非金属化合物であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、好ましくは、前記主剤がアクリル系樹脂であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料は、上記の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤と活性水素を有する主剤からなることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基およびアロファネート基のいずれか一方または双方を含むことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、好ましくは、前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートのうちのいずれか一方または双方から誘導されたポリイソシアネートを含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、好ましくは、前記変性剤が有機非金属化合物であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、好ましくは、前記主剤がアクリル系樹脂であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性してなるポリイソシアネート変性体を主成分として含有するため、耐溶剤性の悪化の問題を効果的に改善することができる。
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、耐溶剤性と可使時間や速乾性・速硬化性等とのバランスに優れる2液型ポリウレタン樹脂塗料を得ることができる。
また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤を好適に得ることができ、また、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料は、本発明に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の効果を好適に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態(本実施の形態)について、以下に説明する。
【0022】
本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性してなるポリイソシアネート変性体を主成分として含有するものである。
また、上記本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤を好適に製造することができる本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性するものである。
【0023】
ポリイソシアネートは、特に限定するものではなく、例えば2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート(TDI)、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアナート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)等の芳香族ポリイソシアネートであってもよいが、黄変性を軽減する観点からは、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環族ポリイソシアネートであることがより好ましい。脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートはいずれか一方を用いてもよく、また、双方を用いてもよい。
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンー1,4−ジイソシアネート、ペンタメチレンー1,5−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルーヘキサメチレンー1,6−ジイソシアネート等を用いることができる。
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、4,4’
−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5-ジイソシアナトメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6-ジイソシアナトメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン等を用いることができる。
【0024】
ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基およびアロファネート基のいずれか一方または双方を含むものであると、塗膜強度、乾燥性および硬化性の観点からより好ましい。
イソシアヌレート基は、ポリイソシアネート又はポリイソシアネートをモノオール及び/又はジオールでウレタン処理したものを、イソシアヌレート化触媒を用いて反応させることにより得られる。
アロファネート基は、ポリイソシアネートと、アロファネート化触媒の存在下でモノオール及び/又はジオールを反応させることにより得られる。
上記モノオールとしては特に限定されるものではなく、例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノール、iso−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−へプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、エチルジメチル−1−ヘキサノール、メチル−1−ノナノール、ジメチル−1−オクタノール、テトラメチル−1−ヘキサノール、3−エチル−4,5,6−トリメチルオクタノール、4,5,6,7−テトラメチルノナノール、4,5,8−トリメチルデカノール、4、7、8−トリメチルデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ドデシルデカノール、2−ヘキサデシルオクタデカノール等の炭素数1〜20のモノオール類等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
上記ジオールとしては特に限定されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1、3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2−ターシャリーブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルプロピル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ノルマルブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−エチル−1,4−ブタンジオール、2,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらのモノオールとジオールの中でも、得られるポリイソシアネート組成物の低極性有機溶剤に対する溶解性をより高めることを考慮すると、炭素数3〜40のモノオールが好ましい。さらに、得られるポリイソシアネート組成物のNCO含量が低下することを避けることを考慮すると、炭素数3〜20のモノオールがより好ましい。
イソシアヌレート基を含むポリイソシアネートは、前述の有機ポリイソシアネートのみ用いてイソシアヌレート変性を行ってもよいが、例示したモノオールとジオールを用いてウレタン変性した後にイソシアヌレート変性した方が、溶剤との相溶性の観点からより好ましい。
また、ポリイソシアネートは、ウレタン基、ウレア基、ビウレット基、ウレチジオン基、カルボジイミド基、ウレトンイミン基、アミド基、アシルウレア基、カーバモイルクロライド基等のイソシアネート基から誘導される官能基を含んでいてもよい。
また、ポリイソシアネートは、有機ポリイソシアネートを触媒活性を有する化合物で変性したものに、さらに有機ポリイソシアネートを併用してもよい。
【0025】
ポリイソシアネートを変性する変性剤は、上記したように、水酸基、および活性水素を有する主剤(樹脂)との反応において触媒作用を奏する官能基を有するものである。ここで、活性水素を有する主剤(樹脂)との反応において触媒作用を奏する官能基は、第3級アミン(第3級アミノ基)および第4級アンモニウム(第4級アンモニウム基)等に代表される塩基性触媒能を有する官能基や、カルボン酸(カルボキシ基)、リン酸(リン酸基)およびスルホン酸(スルホ基)等に代表される酸触媒能を有する官能基等を挙げることができる。
変性剤は、これら水酸基および官能基を有するものであれば特に限定するものではないが、有機非金属化合物であると、耐溶剤性や可使時間の観点からより好ましい。ここで、非金属とは、化合物の構造中にスズ等の高い触媒活性を有する金属元素を含まないことを指す。また、有機非金属化合物は、非環構造(不飽和環や飽和環を構造の一部に含まないもの)であることが好ましいが、これに限らず環構造を含むものであってもよい。
【0026】
非環式有機非金属化合物は、下表1に示すものを例示することができる。これらの非環式有機非金属化合物は、1種又は2種以上を併用することができる。
例えばN、N-ジメチルアミノヘキサノールの場合、脂肪族炭化水素長鎖の一方の末端に活性水素を含むOH基を有するとともに、反対側の末端に主剤との反応において触媒作用を奏する官能基である第3級アミノ基を有する。
【0027】
【表1】

【0028】
本実施の形態の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤が反応する相手方である主剤は、活性水素を有する。活性水素は、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基等の官能基が挙げられる。
主剤は、2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤が反応して本発明の効果を奏する塗膜を形成することができるものであれば特に限定するものではない。
主剤としては、例えば、飽和または不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和または不飽和の油変性または脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、さらには飽和または不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、飽和または不飽和の油変性または脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂などが挙げられる。これらのうち、乾燥性、硬化性等の作業性および経済性の点で、特にアクリルポリオール、アクリル樹脂が好ましく、さらにその中でもアクリル樹脂がより好ましい。
【0029】
本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、上記したポリイソシアネートを変性剤で変性したポリイソシアネート変性体を主成分とするものであり、本発明の効果を奏するものである限り、硬化剤中のポリイソシアネート変性体の含有量に制限はない。
2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、本発明の効果を奏するものである限り、ポリイソシアネート変性体以外の残余の成分として、未変性のポリイソシアネートや変性原料に用いたもの以外の種類のポリイソシアネートを含んでいてもよく、また、塗膜形成に必要な有機溶剤その他の助剤等を含んでいてもよい。
【0030】
2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、用いる変性剤の種類によって適宜設定するものであり、限定するものではない。例えば、ポリイソシアネートに変性剤を数十ppm〜数万ppm、好ましくは100ppm〜15,000ppmの濃度となるように配合して、80℃程度の温度で2時間程度反応させることにより硬化剤を製造することができる。
【0031】
以上説明した本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、硬化不良による耐溶剤性の悪化を従来のものに比べて効果的に改善することができる。これは、活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤がポリイソシアネートと結合したものであるため、塗装時に硬化剤および主剤を配合したときに液相内での動きが制限されることにより、従来の、触媒を予め硬化剤または主剤のいずれかに添加するものや、塗装時に硬化剤および主剤を配合する際に触媒を添加するものに比べて触媒作用が緩和され、耐溶剤性が改善されるのではないかと考えられる。
また、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、耐溶剤性と、可使時間、速乾性・速硬化性等とのバランスに優れる。
また、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤は、速乾性および速硬化性に優れる。
【0032】
また、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法は、上記本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤を好適に得ることができる。
【0033】
つぎに、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料は、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤と活性水素を有する主剤からなる。主剤は、前記したものを用いることができる。これにより、本実施の形態に係る2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の上記の効果を好適に得ることができる。
【0034】
なお、以上説明した本実施の形態に係る2液型樹脂塗料用硬化剤を1液塗料用に用い、あるいはポリウレタン樹脂塗料用主剤とは別の種類の主剤と配合して用い、あるいはまた他の硬化剤と併用することを排除するものではない。
また、本実施の形態は塗料用途についてのものであるが、これに関わらず、本発明は、接着剤、粘着剤、防水材トップコートおよび湿気硬化型塗料の各用途にも利用することができる。
【実施例】
【0035】
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。また、以下の説明において、各成分量の単位(ppm、%)は質量基準である。
【0036】
(ポリイソシアネート合成例1:イソシアネート1(イソシアヌレート基含有イソシアネート))
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた1000mlの蓋付きガラス製四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート (以下HDIという。)936g、1、3-ブタンジオール6gを仕込み、窒素パージした後、撹拌しながら50℃に昇温し、フェノール0.1g、触媒(イソ酪酸カリウム:ジプロピレングリコール:THF=1:4.5:4.5の混合物)を0.04g加えた。110℃で反応させながら、サンプリングを行い、NCO含量が41.5%になった時点で、N-シクロヘキシルスルファミン酸を0.004g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.015g加えて反応を停止させた。次に130℃、0.04kPaの条件下で薄膜蒸留して遊離HDIを除去した。
このようにして得られたイソシアネート1は、淡黄色液体で平均官能基数3.5、NCO含量21.2%、粘度2500(mPa・s at 25℃)であった。
【0037】
(ポリイソシアネート合成例2:イソシアネート2(イソシアヌレート基含有イソシアネート))
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた1000mlの蓋付きガラス製四つ口フラスコに、HDI961g、1、3-ブタンジオール3.5gを仕込み、窒素パージした後、撹拌しながら50℃に昇温し、フェノール0.1g、触媒(イソ酪酸カリウム:ジプロピレンアルコール:THF=1:4.5:4.5の混合物)を0.06g加えた。110℃で反応させながら、サンプリングを行い、NCO含量が35.0%になった時点で、N-シクロヘキシルスルファミン酸を0.007g、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.011g加えて反応を停止させた。次に130℃、0.04kPaの条件下で薄膜蒸留して遊離HDIを除去した。
このようにして得られたイソシアネート2は、淡黄色液体で平均官能基数4.5、NCO含量20.0%、粘度8000(mPa・s at 25℃)であった。
【0038】
(ポリイソシアネート合成例3:イソシアネート3(アロファネート含有イソシアネート))
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた1000mlの蓋付きガラス製四つ口フラスコに、HDI950g、1、3-ブタンジオール50gを仕込み、窒素パージした後、撹拌しながら50℃に昇温し、オクチルサンジルコニール(第一稀元素化学工業)を0.05g加えた。110℃で反応させながら、サンプリングを行い、NCO含量が40.3%になった時点で、2-エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.055g加えて反応を停止させた。次に130℃、0.04kPaの条件下で薄膜蒸留して遊離HDIを除去した。
このようにして得られたイソシアネート3は、淡黄色液体で平均官能基数4.8、NCO含量19.2%、粘度2000(mPa・s at 25℃)であった。
【0039】
(ポリイソシアネート合成例4:イソシアネート4(イソシアヌレート基含有イソシアネート))
温度計、撹拌機および窒素ガス導入管を備えた1000mlの蓋付きガラス製四つ口フラスコに,VESTANAT T-1890/100(IPDI系イソシアヌレート型変性ポリイソシアネート、エボニック・デグサ・ジャパン株式会社製,NCO含量17.3%)600g、酢酸ブチル400gを仕込み、窒素パージした後、50℃に昇温しながら、VESTANAT T-1890が完全に溶解するまで、撹拌した。
このようにして得られたイソシアネート4は、淡黄色液体で平均官能基数3.6、NCO含量10.4%、粘度80(mPa・s at 25℃)であった。
【0040】
(ポリイソシアネート変性体合成実施例:硬化剤)
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた反応器を窒素置換した後、ポリイソシアネート合成例1〜3で合成したいずれかのイソシアネートを990gと表1記載のいずれかの変性剤を10g仕込み(10、000ppm)、80℃にて攪拌しながら2時間反応させることにより、硬化剤(ポリイソシアネート変性体)を得た。
各合成実施例で使用したイソシアネートおよび変性剤の種類は、下記各表にまとめて示す。また、各合成実施例でポリイソシアネートに対する変性剤の配合量が上記(990gに対して10g)でないものは配合量を表中に示す。
【0041】
(2液型ポリウレタン樹脂塗料製造実施例)
ポリイソシアネート変性体合成例で合成したポリイソシアネート変性体(硬化剤)と主剤としてのアクリル系樹脂(大日本インキ社製「アクリディックA-801」)をイソシアネート基/水酸基比率がモル比で1/1になるように配合した塗料を、常温下で、メチルエチルケトンで脱脂した鋼板(JIS G3141、株式会社パルテック社製、商品名「SPCC−SB」、PF−1077処理)に、アプリケーターを用い100μmの厚みで塗布して塗膜を形成して試験片を調製した。
【0042】
(2液型ポリウレタン樹脂塗料製造比較例)
ポリイソシアネート変性体合成例で用いたポリイソシアネート(非変性体)またはこのポリイソシアネート(非変性体)に予めポリイソシアネート変性体合成例で用いた変性剤を配合(添加)したポリイソシアネート(非変性体)と主剤としてのアクリル系樹脂(大日本インキ社製「アクリディックA-801」)をイソシアネート基/水酸基比率がモル比で1/1になるように配合した塗料を、常温下で、メチルエチルケトンで脱脂した鋼板(JIS G3141、株式会社パルテック社製、商品名「SPCC−SB」、PF−1077処理)に、アプリケーターを用い100μmの厚みで塗布して塗膜を形成した。
【0043】
(評価方法)
2液型ポリウレタン樹脂塗料製造実施例および2液型ポリウレタン樹脂塗料製造比較例で製造した塗料の塗膜特性について、下記の要領で評価した。
<MEKラビングテスト>
○MEKラビングテスト硬化時間1
温度40℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片を、メチルエチルケトン(MEK)に軽く浸した脱脂綿を塗膜上で往復させ、塗膜に傷や剥れなどが生じるまでの往復回数が100回以上可能である最低硬化時間を求めた。
○MEKラビングテスト硬化時間2
温度80℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片を、メチルエチルケトン(MEK)に軽く浸した脱脂綿を塗膜上で往復させ、塗膜に傷や剥れなどが生じるまでの往復回数が100回以上可能である最低硬化時間を求めた。
○MEKラビングテスト硬化時間3
温度90℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片を、メチルエチルケトン(MEK)に軽く浸した脱脂綿を塗膜上で往復させ、塗膜に傷や剥れなどが生じるまでの往復回数が100回以上可能である最低硬化時間を求めた。
○MEKラビングテスト硬化温度1
温度勾配式オーブンで50%RHの条件下温度条件を変えて30分間乾燥焼付けした試験片を、メチルエチルケトン(MEK)に軽く浸した脱脂綿を塗膜上で往復させ、塗膜に傷や剥れなどが生じるまでの往復回数が100回以上可能である最低乾燥温度(最低硬化温度)を求めた。
○MEKラビングテスト硬化温度2
温度勾配式オーブンで50%RHの条件下温度条件を変えて90分間乾燥焼付けした試験片を、メチルエチルケトン(MEK)に軽く浸した脱脂綿を塗膜上で往復させ、塗膜に傷や剥れなどが生じるまでの往復回数が100回以上可能である最低乾燥温度(最低硬化温度)を求めた。
<指圧乾燥テスト>
○指圧乾燥テスト1
温度勾配式オーブンで50%RHの条件下温度条件を変えて30分間乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央を親指と人差し指とで強くはさんだとき、塗面に指紋によるヘコミが付かない最低乾燥温度を求めた。
○指圧乾燥テスト2
温度40℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央を親指と人差し指とで強くはさんだとき、塗面に指紋によるヘコミが付かない最低硬化時間(最低乾燥時間)を求めた。
○指圧乾燥テスト3
温度80℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央を親指と人差し指とで強くはさんだとき、塗面に指紋によるヘコミが付かない最低硬化時間(最低乾燥時間)を求めた。
<指触乾燥テスト>
○指触乾燥テスト1
温度勾配式オーブンで50%RHの条件下温度条件を変えて30分間乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央に指先を軽く触れてみて、べと付き感がなくなる最低乾燥温度を求めた。
○指触乾燥テスト2
温度40℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央に指先を軽く触れてみて、べと付き感がなくなる最低硬化時間(最低乾燥時間)を求めた。
○指触乾燥テスト3
温度80℃、50%RHの乾燥機で乾燥時間(硬化時間)を変えて乾燥焼付けした試験片について、塗面の中央に指先を軽く触れてみて、べと付き感がなくなる最低硬化時間(最低乾燥時間)を求めた。
<ポットライフ評価>
主剤である大日本インキ社製「アクリディックA-801」にポリイソシアネート変性体合成例で合成したポリイソシアネート変性体(硬化剤)をポリイソシアネート基/水酸基比率が1.0になるように配合し、配合液の固形分が45%になるように酢酸ブチルを加え混合した。この混合液を25℃の恒温水槽に入れ、所定の時間内での配合液のゲル化の有無を見るとともに粘度変化測定を行った。
【0044】
2液型ポリウレタン樹脂塗料製造実施例1〜25および2液型ポリウレタン樹脂塗料製造比較例1〜8で製造した塗料で形成した塗膜の調製条件および評価結果を表2〜7にまとめて示した。また、一部の実施例および比較例を除き、ポットライフ評価を図1〜5にまとめて示した。
【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】表2に示す実施例等のポットライフ評価を示す図である。
【図2】表4に示す実施例等のポットライフ評価を示す図である。
【図3】表5に示す実施例等のポットライフ評価を示す図である。
【図4】表6に示す実施例等のポットライフ評価を示す図である。
【図5】表7に示す実施例等のポットライフ評価を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性してなるポリイソシアネート変性体を主成分として含有することを特徴とする2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤。
【請求項2】
前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基およびアロファネート基のいずれか一方または双方を含むことを特徴とする請求項1記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートのうちのいずれか一方または双方から誘導されたポリイソシアネートを含むことを特徴とする請求項1または2記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤。
【請求項4】
前記変性剤が有機非金属化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤。
【請求項5】
前記主剤がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤と活性水素を有する主剤からなることを特徴とする2液型ポリウレタン樹脂塗料。
【請求項7】
ポリイソシアネートを、水酸基、および活性水素を有する主剤との反応において触媒作用を奏する官能基を有する変性剤で変性することを特徴とする2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法。
【請求項8】
前記ポリイソシアネートが、イソシアヌレート基およびアロファネート基のいずれか一方または双方を含むことを特徴とする請求項7記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法。
【請求項9】
前記ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートのうちのいずれか一方または双方から誘導されたポリイソシアネートを含むことを特徴とする請求項7または8記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法。
【請求項10】
前記変性剤が有機非金属化合物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法。
【請求項11】
前記主剤がアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の2液型ポリウレタン樹脂塗料用硬化剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−100768(P2010−100768A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275039(P2008−275039)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】