2相コンバータ用リアクトル及び2相コンバータ
【課題】2相コンバータ用リアクトルにおいて、外接直方体内部での占積率を高くし、外部への漏れ磁束を少なくするとともに、コイルの誘導損失を低減しやすくすることである。
【解決手段】2相コンバータ用リアクトル10は、コア14に巻装され、互いに磁気結合された第1コイル16及び第2コイル18を含む。コア14は、環状部20の内側に十字形部22が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間を形成する。各コイル16,18は、それぞれ別の隣り合う2つの内部空間に配置されるように十字形部22の反対側2個所位置に巻回する。第1コイル16及び第2コイル18は、一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成する。
【解決手段】2相コンバータ用リアクトル10は、コア14に巻装され、互いに磁気結合された第1コイル16及び第2コイル18を含む。コア14は、環状部20の内側に十字形部22が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間を形成する。各コイル16,18は、それぞれ別の隣り合う2つの内部空間に配置されるように十字形部22の反対側2個所位置に巻回する。第1コイル16及び第2コイル18は、一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルと、2相コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力回路において、回路電圧を昇圧または降圧する電圧変換器(コンバータ)は、産業界において広く使用されている。例えば、エンジンと走行用モータとを搭載し、エンジン及び走行用モータの一方または両方を主駆動源として使用するハイブリッド車両(HV)や、電気自動車(EV)、燃料電池車両等の走行用モータを有する自動車において、電池電圧と、走行用モータに接続されたインバータの駆動電圧との最適化を図るために、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の電圧変換器が使用されている。
【0003】
また、チョッパ方式の昇圧コンバータである昇圧チョッパの容量を1/Nにして、N個の昇圧チョッパを並列に接続し、駆動パルスの位相を2π/Nずつずらした構成は、N相の複数相コンバータであり、マルチフェーズコンバータと呼ばれている。マルチフェーズコンバータは、例えばパーソナルコンピュータ等のCPUの電圧を得る方式として広く使用されている(特許文献1等参照)。
【0004】
一方、大電力用途におけるマルチフェーズコンバータは現在、研究段階であるが、特許文献2及び非特許文献1には、それぞれ電車用及び電気自動車用に2相のコイルを磁気結合構造とした例が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、コンバータ用としてN相を使用する、すなわちマルチフェーズ化させることで、リアクトルの全容積を1/Nに減少させ、体積を小さくできる、すなわち小型化を図れるコンバータが記載されている。
【0006】
また、非特許文献2には、自動車用としてN相のマルチフェーズ化したコンバータを用いた実験例が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、自動車用として、磁気結合型の2相コイルを用いた昇圧コンバータが記載されている。図14は、特許文献3に記載された昇圧コンバータを構成するリアクトルの従来構造の1例を示す図である。図15は、図14のリアクトルにおいて、コアの外側に無駄な空間が発生することを説明するための概略図である。
【0008】
図14、図15に示したリアクトル56は、コア58と、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18とを備える。コア58は、断面略長方形の磁性材を矩形状に連結してなる本体部60と、本体部60の内側に互いにギャップGを介して向き合うように結合された脚部62とを含む。各コイル16,18は、コア58の本体部60の両側2個所位置に巻回されている。各コイル16,18の一端(図14の下端)同士は、図示しない直流電源の正極側に接続されている。各コイル16,18の他端(図14の上端)は、互いに別の相である図示しない2相のトランジスタに接続されている。第1コイル16及び第2コイル18の巻き数は同じであり、かつ同じ材質からなる。2相のトランジスタは、位相が180°ずれるようにスイッチングのオンオフがされる。各コイル16,18により発生する磁束は、片側(例えば図14の上側)の脚部62から他側(例えば図14の下側)の脚部62に向かう方向にギャップGを通過する。このため、片側コイル(例えば第1コイル16)により発生した磁束に含まれるリプル成分は、他側コイル(例えば第2コイル18)により発生した磁束に含まれるリプル成分により打ち消されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−65384号公報
【特許文献2】特開2009−273280号公報
【特許文献3】特開2003−304681号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.Hirakawa他、「High Power Density DC/DC Converter using the Close-Coupled Inductors」、ECCE2009、san Jose、IEEE 2009
【非特許文献2】B.Eckardt他、「Automotive Powertrain DC/DC Converter with 25kW/dm3 by using SiC Diodes」、PCIM 2006 Conference Proceedings、Nuernberg、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の図14、図15に示したリアクトル56では、各コイル16,18のコア58から外側に出る部分が多くなり、コア58の左右方向両側で、各コイル16,18の外側の上側及び下側となるそれぞれ2個所位置に、図15に斜線部Pで示す空間が形成される。このため、リアクトル56の外接直方体の体積が斜線部Pを含んで大きくなってしまう。また、各コイル16,18の外側にコア材が存在しないので外部への漏れ磁束が発生しやすい。
【0012】
これに対して、本発明者は、リアクトルにおいて、内部に中間脚部を設けたE型構造のコアを基本とし、中間脚部にコイルを巻回したものを2個配置して磁気結合し、リアクトルの外接直方体内での占積率、すなわち充填率を高くすることを考えた。ただし、単純にリアクトルをこのように構成しただけでは、コアの内部で発生する漏れ磁束がコイルに鎖交し、コイルの誘導損失が大きくなり、リアクトルの損失が増大する可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、2相コンバータ用リアクトルにおいて、外接直方体内部での占積率を高くし、外部への漏れ磁束を少なくするとともに、コイルの誘導損失を低減しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る2相コンバータ用リアクトルは、2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルであって、環状部の内側に十字形部が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間が形成されるコアと、それぞれ別の隣り合う2つの前記内部空間に配置されるように前記十字形部の反対側2個所位置に巻回された2相コイルとを備え、前記2相コイルは、前記2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合に前記コア内で前記2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトルである。
【0015】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルは、前記十字形部の反対側2個所位置に同じ向きに巻かれ、かつ、前記2相コイルの内側に配置される一端同士が結線され、互いに結線された前記2相コイルの一端は、入力側または出力側に設けられる直流電源に接続される。
【0016】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記コアは、楕円状に巻かれた磁性フィルムを2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素を、I字形状を有するI字コア要素にそれぞれの両端部を結合することにより形成され、前記2相コイルは、前記コアの内側の反対側2個所位置に巻回されている。
【0017】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記コアは、別の材料により形成され、互いに結合された複数のコア要素を含む。
【0018】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルは、互いに同じ外形寸法を有し、前記コアは、前記2相コイルが巻回されるコイル巻回部分と、前記2相コイルが巻回されないコイル非巻回部分とを含み、前記コイル非巻回部分は、前記各相コイルの外径寸法と同じ厚みを有する。
【0019】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分により前記コアに生じる磁束である交流磁束の変動量が、2相コイル電流の合計により前記コアに生じる磁束である直流磁束の変動量よりも大きくなるように、前記2相コイルの磁気結合率が設定されている。
【0020】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルの他端にそれぞれ接続された少なくとも2つのスイッチング素子とを備え、入力側と出力側との電圧比を調整するために使用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の2相コンバータ用リアクトルによれば、コアの内部に2相コイルが巻回され、2相コイルの外側にコアの一部が配置されるので、外接直方体内部での占積率を高くでき、かつ、外部への漏れ磁束を少なくできる。しかも、2相コイルは、2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア内で2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されるので、2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分によりコアに生じる磁束を交流磁束と規定した場合に、交流磁束により十字形部の一部に流れる起磁力がなくなって、各相コイルの誘導損失を低減しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す斜視図である。
【図2】図1を正面から見た略図である。
【図3】図1のリアクトルにおいて、各相コイルの巻線方向及び接続状態を説明するための模式図である。
【図4】図1のリアクトルにおいて、直流磁束と交流磁束とが流れる方向を説明するための概略断面図である。
【図5】図1のリアクトルを用いた2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。
【図6A】図1のリアクトルにおいて、コアに交流磁束のみが流れると仮定した場合の概略断面図である。
【図6B】図1のリアクトルにおいて、コアに直流磁束のみが流れると仮定した場合の概略断面図である。
【図7】比較例のリアクトルにおいて、コアからの漏れ磁束がコイルに鎖交する様子を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す概略断面図である。
【図9】図8のリアクトルにおいて、各相コイルを流れる各相コイル電流、各相コイル電流の差分及び各相コイル電流の合計分との電流リップルを、システム電圧の関係で示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、コアを構成する複数のコア要素を分離した状態(a)と、複数のコア要素を結合した状態(b)とで示す概略図である。
【図11】単にE型コア構造のリアクトルを空間をあけて2つ並べて配置した2相リアクトルの比較例を示す概略図である。
【図12】(a)は、第1の実施形態についての図2のA−A断面図であり、(b)は、本発明の第4の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルの(a)に対応する断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る双方向に昇降圧可能な2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。
【図14】昇圧コンバータを構成するリアクトルの従来構造の1例を示す図である。
【図15】図14のリアクトルにおいて、コアの外側に無駄な空間が発生することを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。本発明の2相コンバータ用リアクトルは、マルチフェーズ構成において、さらなる小型化を図るべく発明したものであって、以下に説明するように2相のコイル同士を磁気的に結合させた磁気結合型コイルを備える。このような2相コンバータ用リアクトルは、例えばハイブリッド車両の駆動源として使用する回転電機である、走行用モータに接続されたインバータを駆動するための電気回路を構成するために使用される。ただし、2相コンバータ用リアクトルは、電気自動車、燃料自動車等の、ハイブリッド車両以外を駆動する回転電機のための電気回路に使用することもできる。また、回転電機は、車両駆動以外の補機駆動用でもよい。また、回転電機を2個とし、2個の回転電機に接続された2つのインバータと、バッテリ等の直流電源との間にコンバータを設ける構成に本発明に係るリアクトルを使用することもできる。
【0024】
[第1の実施形態]
図1から図5、図6A、図6Bは、本発明の第1の実施形態を示している。2相コンバータ用リアクトル(以下、単に「リアクトル」という場合がある。)10は、2相磁気結合型リアクトルであり、昇降圧用として使用される2相コンバータ12(図5)に組み込んで使用される。リアクトル10は、コア14と、コア14に巻回された2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18とを備える。
【0025】
図1、図2に示すように、コア14は、それぞれ同一の磁性材であるコア材料により形成され、断面略矩形状の環状部20の内側に十字形部22が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間Q1,Q2,Q3,Q4(図2、図3)が形成されている。このようなコア14は、それぞれ断面E字形の一対の外側コア要素24と、一対の外側コア要素24の間に非磁性材製のギャップ板26を介して結合された中間コア要素28とを含む。中間コア要素28は、E字形を2つ反対向きに結合した形状の断面を有する。各外側コア要素24及び中間コア要素28は、同一の磁性材であるコア材料により形成されている。例えば各コア要素24,28は、鉄等の磁性粉末を固めた圧粉磁心であるダストコアまたはけい素鋼板等の電磁鋼板の積層体またはアモルファス材等の低損失材等により形成されることができる。
【0026】
また、各外側コア要素24は、I字形の外側基部30の片側に3本の平行なI字形の脚部要素32が直交する方向に結合されており、中間コア要素28は、I字形の中間基部34の両側に3本の平行なI字形の脚部要素36が直交する方向に結合されている。そして、各外側コア要素24の各脚部要素32と、中間コア要素28の各脚部要素36とを、ギャップ板26を介して結合している。このように形成されるコア14は、図3に示すように、2つの平行な外側基部30と、2つの外側基部30の間に直交する方向に結合された複数のI字形の脚部38,40と、各脚部38,40同士の間に直交する方向に結合された、中間基部34の両側2個所位置である渡り部42とを含んでいる。図3では、渡り部42を斜線部で示している。
【0027】
また、各コイル16,18は、それぞれ別の隣り合う2つの内部空間Q1,Q2,Q3,Q4に配置されるように十字形部22の反対側2個所位置である中間の脚部40の2個所位置に巻回され、一端同士、すなわち内側の端部同士が接続されている。例えば、各コイル16,18の一端同士は、最短で結線されることができる。なお、脚部40と各コイル16,18との間に絶縁材製のボビン等、他の部材を設けることもできる。
【0028】
なお、図1では、各コイル16,18が断面矩形の導体である角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズ型である場合を示しているが、各コイル16,18の種類はこれに限定するものではなく、断面丸形の丸線の導体を用いた、通常使用される丸線コイルとすることもできる。また、図3に示すように、各コイル16,18は、中間脚部40の2個所位置にそれぞれ同じ向きに巻かれ、かつ、各コイル16,18の内側に配置される一端同士が結線されている。第1コイル16及び第2コイル18は、互いの巻き数を同じとし、かつ、同じ導電材料により形成されている。また、第1コイル16及び第2コイル18は、互いの外径寸法を同じとし、互いのインダクタンスLを同じとしている。互いに結線された第1コイル16及び第2コイル18の一端(図3の左端)は、使用時に、入力側または出力側に設けられる直流電源であるバッテリ44(図5)の正極側に接続される。また、各コイル16,18の他端(図3の右端)は、出力側または入力側に設けられる2相アーム46,48(図5)にそれぞれ設けられた2つのスイッチング素子Sa、Sbに接続されている。図5を参照して、各相アーム46,48は、それぞれ2つのスイッチング素子Sa、Sbを直列接続しており、各相アーム46,48の中点である2つのスイッチング素子Sa、Sbの間に各コイル16,18の他端が接続されている。各相アーム46,48の正極側同士及び負極側同士はそれぞれ接続され、各相アーム46,48の両端間にコンデンサ50が接続されている。各相アーム46,48の負極側はバッテリ44の負極側に接続されている。
【0029】
本実施形態に係る2相コンバータ12は、リアクトル10と、2相アーム46,48とを含む。なお、図5では、リアクトル10を等価回路で示しており、各コイル16,18を、相手コイルと磁気結合する磁気結合要素X1と、相手コイルと磁気結合しない非磁気結合要素X2とに分けて示している。スイッチング素子Sa、Sbは、トランジスタ、IGBT等の半導体素子である。各スイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、図示しない制御部により制御される。また、各スイッチング素子Sa、Sbは、オン状態で、矢印αの向きに電流を流す。また、各スイッチング素子Sa、Sbに逆並列に図示しないダイオードを接続している。
【0030】
各スイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、各相アーム46,48同士で180°位相をずらせている。図5では、バッテリ電圧Vbがコンデンサ両端間電圧VHよりも低い場合を示している。例えば、コンバータ12が、バッテリ44の電圧Vbを昇圧してコンデンサ50に供給する昇圧用として使用される場合、各相アーム46,48の上側、すなわち正極側のスイッチング素子Saをオフ状態としたまま、下側、すなわち負極側のスイッチング素子Sbをオンオフするとともに、各相アーム46,48の下側スイッチング素子Sb同士でオンオフが逆になるようにスイッチングする。
【0031】
これに対して、コンバータ12が、コンデンサ50の両端間の電圧VHを降圧してバッテリ44に供給する降圧用として使用される場合、各相アーム46,48の下側スイッチング素子Sbをオフ状態としたまま、上側スイッチング素子Saをオンオフするとともに、各相アーム46,48の上側スイッチング素子Sa同士でオンオフが逆になるようにスイッチングする。
【0032】
このようなコンバータ12は、入力側と出力側との電圧比を調整するために使用される。例えば、昇圧用として使用されるコンバータ12では、バッテリ44側が入力側で、コンデンサ50側が出力側となる。これに対して降圧用として使用されるコンバータ12では、コンデンサ50側が入力側となり、バッテリ44側が出力側となる。オンオフスイッチングされるスイッチング素子Sb(またはSa)のオンデューティの1周期における比であるオンデューティ比を調節することで、入力側と出力側との電圧比を調整することができる。なお、バッテリ44は、充放電可能であり、例えば325Vの大きさの端子電圧Vbを有するリチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池等を使用できる。ただし、バッテリ44の代わりにキャパシタ等の蓄電部である直流電源を用いることもできる。また、バッテリ44の正極側と負極側とに、それぞれ制御部により制御されるリレースイッチ(図示せず)を設けることもできる。
【0033】
また、コア14において、外側コア要素24の脚部要素32と中間コア要素28の脚部要素36との間に設ける複数のギャップ板26のうち、いずれか1以上のギャップ板26または全部のギャップ板26を省略して、対向する脚部要素32,36同士を直接結合するか、または対向する脚部要素32,36同士を空間を介して対向させることもできる。ギャップ板26の数や脚部要素32,36の結合状態は、狙いとするコア14の性能に応じて設定する。
【0034】
また、各コイル16,18は、リアクトル10に設けられて互いにコア14で磁気的に結合されている。また、第1コイル16及び第2コイル18は、各コイル16,18の一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されている。すなわち、バッテリ電流Ibが分かれて各コイル16,18にそれぞれコイル電流I1、I2が流れた場合を考える。バッテリ電流Ibはリップル成分を有し、コイル電流I1、I2もリップル成分を有する。各相のコイル電流I1、I2が各コイル16,18に同じ向きに同じ強さで流れたと仮定すると、中間脚部40の2個所位置に、図3に矢印T1,T2で示すように、互いに逆向きに磁束が流れる。
【0035】
また、本実施形態のリアクトル10では、交流磁束の変動量が直流磁束の変動量よりも大きくなるようにしている。ここで、「交流磁束」とは、2相リアクトル構造で互いの電圧位相を180°ずらしたために発生するコイル電流I1,I2の差分である逆相電流(I1−I2)により生成される磁束であって、図4、図6Aの実線矢印βの向きに流れるように、コア14の中間脚部40から外側基部30を通って外側脚部38に流れるように循環する磁束のことである(本明細書全体で同じである。)。
【0036】
これに対して、「直流磁束」とは、コイル電流I1,I2の合計である同相電流(I1+I2)、すなわち図5のバッテリ電流Ibにより発生する磁束であって、図4、図6Bの破線矢印γの向きに流れるように、コア14の中間脚部40から外側基部30及び外側脚部38を通り、中間基部34から中間脚部40に流れるように循環する磁束のことである(本明細書全体で同じである。)。
【0037】
各コイル16,18同士の磁気結合率をYとし、各コイル16,18のインダクタンスをLとし、第1コイル16に流れるコイル電流をI1とし、第2コイル18に流れるコイル電流をI2とし、同相電流のリップル値のpeak-to-peakをΔ(I1+I2)(=ΔIb)とし、逆相電流のリップル値のpeak-to-peakをΔ(I1−I2)とした場合に、直流磁束の変動分を波高値で表したΔΦdcと、交流磁束の変動分を波高値で表したΔΦacとは、コイルの巻き数を同じくNとして、それぞれ次式で表される。
【0038】
ΔΦdc=(1−Y)×L×Δ(I1+I2)/(4/N) ・・・(1)
ΔΦac=Y×L×Δ(I1−I2)/(2/N) ・・・(2)
【0039】
ここで、交流磁束は片側のコイル16(または18)で形成したものでも他側のコイル18(または16)にも鎖交するが、直流磁束はコイル16,18毎に分離される。このため、(1)式では、単相分に換算して(2)式に対応するものにさらに1/2を乗じている。本実施形態では、交流磁束の変動分が直流磁束の変動分よりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように、各コイル16,18同士の磁気結合率Yが設定されている。
【0040】
このような本実施形態のリアクトル10によれば、コア14の内部に各コイル16,18が巻回され、各コイル16,18の外側にコア14の一部が配置されるので、リアクトル10の外接直方体内部での占積率を高くでき、かつ、外部への漏れ磁束を少なくできる。すなわち、上記の図14、図15に示した従来構造のリアクトル56と、図2に示した本実施形態のリアクトル10とを比較すれば分かるように、仮にコイル16,18の外径寸法をコア14、58の厚み方向(図15、図2の表裏方向)の寸法と同じとすると、図15で表される空間Pの有無がほとんど両者の占積率の差になる。すなわち、図15の従来構造のリアクトル56では、空間Pが、図2のリアクトル10に対して余分な空間となる。逆に言えば、本実施形態では図15の従来構造に対して占積率の向上を図れる。このため、リアクトル10及びリアクトル10を含むコンバータ12の小型化が可能となる。さらに、各コイル16,18の外側にコア14の一部が多く配置されるため、外部への漏れ磁束が発生しにくくなる。
【0041】
さらに、各コイル16,18は、両コイル16,18の一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成される。このため、上記のように各コイル16,18に流れるコイル電流I1,I2の差分(I1−I2)によりコア14に生じる磁束を交流磁束と規定した場合に、交流磁束により十字形部22の一部に流れる起磁力がなくなって、各コイル16,18の誘導損失を低減しやすい。以下、これについて詳しく説明する。
【0042】
本実施形態の構成は、図7の比較例のリアクトル66のように、占積率の高いE型コア68、すなわちE字形のコア要素2つを上下に結合した構造で、中間脚部62にコイル64を巻回したE型コア構造を、縦に2つ並べて結合したのと似ている。ただし、図7の比較例のE型構造リアクトル66では、E型コア68を流れる磁束のうち、図7の矢印δで示すように、内側の空間に漏れ出る漏れ磁束が発生し、漏れ磁束がコイル64に鎖交することでコイル64の誘導損失が大きくなるという欠点がある。
【0043】
これに対して、図1等に示す本実施形態ではコイル16,18同士の磁気結合を有効に利用し、E型コアで発生するコイルに鎖交する漏れ磁束を発生しにくくしている。すなわち、2つのコイル16,18を磁気結合させ、直流磁束をE型コア単独の場合と同じに発生させるが、交流磁束は外部の磁路である環状部20と、十字形部22の一部である1つの中間脚部40とのみを通る構成としている。このため、図6Aの交流磁束のみを考えた場合に、中間基部34の両側2個所位置である渡り部42付近では、漏れ磁束はコイル16,18に鎖交しにくくなる。このため、各コイル16,18の誘導損失を低減しやすい。
【0044】
しかも、リアクトル10において、交流磁束の変動分ΔΦacが直流磁束の変動分ΔΦdcよりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように、各コイル16,18同士の磁気結合率Yが設定されている。例えばΔΦac≫ΔΦdcが成立するように磁気結合率Yを適切に設定すると、漏れ磁束に対する寄与度の違いはあるが、交流磁束の漏れ分がコイル16,18の誘導損失のほとんどを生じさせる。すなわち、上記の図7に示した従来のE型構造のリアクトル66では、直流磁束に対応する単相コイルによる磁束のみが形成されるため、単相コイルによる磁束の変動分がコイル誘導損失を発生させるのに対して、図6Aに示す本実施形態では交流磁束の変動分ΔΦacがコイル誘導損失のほとんどを発生させる。直流磁束及び交流磁束の合成で形成される磁束のうちでコイル16,18に鎖交する漏れ磁束が形成される割合は、コア形状等に依存するため単純には説明できない。ただし、本実施形態の構造では、コア14において、交流磁束で、コイル16,18が巻回されない部分である図3の斜線部で示した渡り部42で、図7の矢印δで表す漏れ磁束を形成する起磁力の片側(図7の上側または下側)に対応する分が打ち消される。すなわち、図6Aの交流磁束のみが発生する状態では、図6Bの直流磁束のみが発生する状態に対して、Vで囲った範囲の起磁力が打ち消される。このため、直流磁束で発生する漏れ磁束は、交流磁束で発生する漏れ磁束に対して1〜2倍程度多くなると考えられる。したがって、漏れ磁束のうち、交流磁束の漏れ分が主となる本実施形態によれば、各コイル16,18の誘導損失を1/4程度に低減することができる。
【0045】
このように本実施形態では、交流磁束の変動分ΔΦacが各コイル16,18の誘導損失を発生させることに対して支配的になるのに対し、交流磁束の変動分ΔΦacによる漏れ磁束は上記のように少ないので、リアクトル10全体での各コイル16,18の誘導損失を低減できる。このように単体のE型コア構造のリアクトルで生じる内部の磁束漏れに対して、本実施形態のように2つのコイル16,18の磁気結合構造とすることで磁束漏れを大幅に減少させることができ、低損失化を図れる。
【0046】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す概略断面図である。本実施形態のリアクトル10では、コア14の中間基部34において、各コイル16,18同士の間に配置されるコア要素である2つの渡り部42をダストコア、すなわち磁性粉末を固めてなる圧粉磁心により形成し、各外側コア要素24と、中間コア要素28の渡り部42以外の部分である複数の別のコア要素70,72とを、鉄系のアモルファスコアであり、カットコアである日立金属株式会社製のAMCCコア(商品名)により形成している。このように本実施形態では、コア14は、複数のコア要素24,70,72と、各コア要素24,70,72とは別の材料により形成され、各コア要素24,70,72に直接、または他の部材を介して結合される渡り部42とを含む。
【0047】
本実施形態のリアクトル10は、自動車の昇圧コンバータで用いられる仕様に近い仕様での具体的構造を容易に実現できる。渡り部42は、圧粉磁心により形成することで、磁束密度が周辺よりも若干高くなるように設定されている。例えば渡り部42を形成するダストコアの磁束密度Bsは1.9Tであり、渡り部42以外の各コア要素24,70,72を形成するAMCCコアの磁束密度Bsは1.56Tである。
【0048】
このような本実施形態によれば、リアクトル10の体格をより小さくできるとともに、損失をより低減させることができる。例えば、損失を低減できる最大の理由は、コア14の大部分を低損失コア材であるAMCCコアにより形成していることである。ただし、コア14のすべての部分に低損失コア材を使用すると、飽和磁束密度が低い分、概算で飽和磁束密度の逆数に比例してコア14の体格が増加する。このため、単にコア14に低損失コア材を使用しただけでは体格を十分には小さくできないが、本実施形態では、各コイル16,18を磁気結合型とし、交流磁束が通過しない渡り部42にのみ飽和磁束密度の高いダストコアを使用することで、コア14の体格を小さくできる。
【0049】
次に本実施形態の効果を確認するために行った計算結果を、比較例との比較で説明する(図9)。この計算では、本実施形態の構造を有する実施例のリアクトル10で、各コイル16,18は単相で100Aを通電可能とし、単相のインダクタンス値は204μH、相互インダクタンス/単相インダクタンスである磁気結合率Yは0.388とした。また、比較例として、互いに磁気結合しない2つの単相コイルを用いた2相コンバータ用リアクトルを使用し、その仕様は、単相で100Aを通電可能とし、インダクタンス値は225μHとした。また、電池電圧は325Vとし、駆動周波数は10kHzとした。
【0050】
次に図9を用いて実施例の電流リップルの計算結果を説明する。なお、以下の説明では、図8に示した要素と同じ要素には同一の符号を付して説明する。図9は、図8のリアクトル10において、各相コイル16,18を流れる各相コイル電流、各相コイル電流の差分及び各相コイル電流の合計分との電流リップルを、システム電圧の関係で示す図である。各相コイル16,18の単相分での電流リップルΔ(I1)=Δ(I2)は、比較例の単相コイルの電流リップル(単相(225μH))とほぼ同じとなっている。
【0051】
次に、実施例において、交流磁束の変動量ΔΦacが直流磁束の変動量ΔΦdcよりも大きく設定されていることを、図9の電流リップルを用いて説明する。図9のΔ(I1+I2)=ΔIb、Δ(I1−I2)は、それぞれ同相電流、逆相電流の電流リップル値をpeak-to-peakで計算した場合の値である。各電流リップルの波高値は、図9に示す電流リップル値の1/2となる。
【0052】
図9の計算結果から明らかなように、ハイブリッド車用として多く使用されるシステム電圧である650V付近では、同相電流リップルである直流電流リップルΔIbは、逆相電流リップルである交流電流リップルΔ(I1−I2)に対して格段に小さくなる。このため、上記の第1の実施形態で説明した(1)式及び(2)式で、仮に磁気結合率Y=0.4程度とすると、ΔΦdc≪ΔΦacとなる。このように結合率Yを適切に設定することで、交流磁束の変動量ΔΦacを直流磁束の変動量ΔΦdcよりも十分に大きく設定することが可能となることが分かる。
【0053】
次に、上記の図9の計算結果で用いた実施例の計算条件に基づいて、リアクトル10の体格と損失とを、比較例の2相リアクトルと比較した結果を説明する。この計算条件では、損失を求めるための条件として、主として使用される使用条件と同じ10kHz駆動で、325Vから650Vの昇圧を行うとした。また、計算は、株式会社J−SOL製の電磁界解析ソフトJ−MAGを用いて行った。また、比較例の2相リアクトルは、上記の図9の計算で用いたのと同様に、互いに磁気結合しない2つの単相コイルを用いたリアクトルで、コアが2次元構造で、コイル部分が外側に出た構成とした。また、比較例のコア材にダストコアを用いた。また、実施例も同様に、コアが2次元構造で、コイル部分が外側に出た構成とした。表1は、このようにして行った計算結果を示している。
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、「L値」は、単相コイルのインダクタンスを示しており、「結合率」は、実施例の磁気結合率Yを示している。リアクトル体格及び損失は、比較例の場合を1とした場合の比で示している。表1の結果から、単に磁気結合しない2相リアクトルの比較例から磁気結合型の実施例のリアクトル10とすることで、ほぼ同じ電流リップル、同じコイル抵抗でありながら実施例で比較例に対して、リアクトル10の体格を55%で、損失を56%と大きく低減することができ、リアクトル10の性能を向上できることを確認できた。なお、表1の損失は、コア損失とコイル損失とを加算した全損失での比較であり、直流電流Idc=0の場合である。
【0056】
このように実施例で損失を低減できる最大の理由は、比較例に比べて低損失なコア材、すなわちAMCCコアを使用していることが考えられるが、同じ構造で低損失コア材を使用する場合には飽和磁束密度が低い分、概算で飽和磁束密度の逆数に比例して体格が増加する。このため、単にコア材を低損失コア材に置き換えただけでは表1の結果は得られない。すなわち、表1の実施例では、磁気結合構造によって体格を低減できているのであり、表1の実施例の性能は、単にコア材を置き換えるだけでは得られない。
【0057】
さらに交流磁束の漏れを、実施例でJ−MAGで解析した結果に基づいて説明する。解析では、2つのコイル16,18にそれぞれ10Aを通電した。単相のE型コア構造のリアクトルを単に縦に2つ重ねた構造、すなわち上記の図6Bと同様に、単にコア14内に直流磁束のみが流れる場合には、コイル16,18と鎖交する漏れ磁束が多くなる。これに対して、磁気結合型の実施例では、コイル16,18と鎖交する漏れ磁束が上記の図6Bの場合の1/2程度になる。電流変動と漏れ磁束とから見積もったコイル16,18の誘導損失は、比較例に対して15%程度になり、単相のE型コア構造のリアクトルを単に縦に2つ重ねた構造で問題となるコイルの誘導損失を大幅に低減できることが分かった。本実施形態において、その他の構成及び作用は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0058】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の第3の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、コアを構成する複数のコア要素を分離した状態(a)と、複数のコア要素を結合した状態(b)とで示す概略図である。図10(a)で示すように、本実施形態のリアクトル10を構成するコア14は、楕円状、すなわちロール状に巻かれたアモルファス材等の低損失材の磁性フィルムを半分の2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素74を、I字形状を有し、ダストコア等により形成されるI字コア要素76にそれぞれの両端部を結合することにより形成されている。また、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18は、図10(b)で示すように、コア14の内側の反対側2個所位置に巻回されている。
【0059】
このような本実施形態では、低損失材の磁性フィルムを用いて簡便にリアクトル10を構成することができる。例えば、低損失材としてアモルファス材を使用する場合を考えると、アモルファス材をフィルム状に作成したものをロール状に巻き、半分に2分割してU字コア要素としたものが製造、販売されている。本実施形態では、このU字コア要素を簡便に利用可能である。すなわち、4つのU字コア要素74と1つのI字コア要素76とを図10に示したように組み合わせることで、簡単にコア14を形成できる。
【0060】
一方、図11は、単にE型コア構造のリアクトル66を空間78をあけて2つ並べて配置した2相リアクトルの比較例を示す概略図である。図11で示すように、単純にE型コア構造のリアクトル66を2つ用いて配置した場合でも、交流磁束の磁路に空気の磁気抵抗層である空間78が形成されるため、交流磁束は形成されにくくなる。このため、本実施形態により得られる効果は、図11の構成では得られない。このことからも、本実施形態では、上記の第1の実施形態で説明したように、交流磁束の変動分ΔΦacが直流磁束の変動分ΔΦdcよりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように設計する必要があることが分かる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態、または第2の実施形態と同様である。
【0061】
[第4の実施形態]
図12において、(a)は、第1の実施形態についての図2のA−A断面図であり、(b)は、本発明の第4の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルの(a)に対応する断面図である。図12(b)に示すように、本実施形態のリアクトル88では、コア80は、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18が巻回されるコイル巻回部分82と、各コイル16,18が巻回されないコイル非巻回部分84,86とを含む。コイル非巻回部分84,86は、各コイル16,18の外径寸法Dと同じ厚み方向(図12の上下方向)の寸法Wを有する。このような本実施形態のリアクトル88では、加工が容易な等方性を有するコア材を用いることが好ましい。このようなリアクトル88では、上記の第1の実施形態で説明した図12(a)のリアクトル10に対して、コイル非巻回部分84,86の厚み方向寸法Wを大きくできるため、磁路の断面積を同じにしたままで各コイル16,18の巻回軸方向と一致する方向(図12の左右方向)の長さL1を、第1の実施形態のリアクトルの長さL2に対して短くできる(L1<L2)。このため、リアクトル10のさらなる小型化を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態と同様である。
【0062】
[第5の実施形態]
図13は、本発明の実施の形態に係る双方向に昇降圧可能な2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。本実施形態の2相コンバータ90は、上記の図5に示した第1の実施形態の2相コンバータ12に対して、各コイル16,18の一端側(図13の左端側)とバッテリ44の正極側との間に、2相の第2アーム92,94を接続している。すなわち、各コイル16,18の一端は、2相アーム46,48とは反対側に設けられる2相の第2アーム92,94にそれぞれ設けられた2つのスイッチング素子Sa、Sbに接続されている。各相の第2アーム92,94は、それぞれ2つのスイッチング素子Sa、Sbを直列接続しており、各相の第2アーム92,94の中点である2つのスイッチング素子Sa、Sbの間に、各コイル16,18の一端が接続されている。各相の第2アーム92,94の正極側同士及び負極側同士はそれぞれバッテリ44の正極側と負極側とに接続されている。2相の第2アーム92,94の構成は、2相アーム46,48と同様である。2相の第2アーム92,94のスイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、図示しない制御部で制御される。
【0063】
このような本実施形態によれば、2相コンバータ90は、昇降圧が双方向に可能となる。すなわち、本実施形態では、上記の図5に示した第1の実施形態のように、コンデンサ50両端間の電圧VHがバッテリ44の電圧Vbよりも高くなる場合だけでなく、バッテリ44の電圧Vbがコンデンサ50両端間の電圧VHよりも高くなる場合にも適用できる。バッテリ44の電圧Vbがコンデンサ50両端間の電圧VHよりも高くなる場合には、2相の第2アーム92,94のスイッチング素子Sa、Sbのスイッチングを用いて、バッテリ44の出力電圧Vbを降圧し、降圧した電圧をコンデンサ50両端間に出力したり、コンデンサ50両端間の入力電圧VHを昇圧し、昇圧した電圧をバッテリ44に出力することができる。このように本発明に係る2相コンバータ用リアクトルは、昇降圧が双方向に可能な構成に適用することもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態と同様である。なお、リアクトルとして、第1の実施形態のリアクトルの代わりに、上記の第2の実施形態から第4の実施形態のリアクトルのいずれか1を用いることもできる。
【0064】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 2相コンバータ用リアクトル、12 2相コンバータ、14 コア、16 第1コイル、18 第2コイル、20 環状部、22 十字形部、24 外側コア要素、26 ギャップ板、28 中間コア要素、30 外側基部、32 脚部要素、34 中間基部、36 脚部要素、38,40 脚部、42 渡り部、44 バッテリ、46,48 アーム、50 コンデンサ、56 リアクトル、58 コア、60 本体部、62 脚部、64 コイル、66 リアクトル、68 E型コア、70,72 コア要素,74 U字コア要素、76 I字コア要素、78 空間、80 コア、82 コイル巻回部分、84,86 コイル非巻回部分、88 リアクトル、90 2相コンバータ、92,94 第2アーム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルと、2相コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力回路において、回路電圧を昇圧または降圧する電圧変換器(コンバータ)は、産業界において広く使用されている。例えば、エンジンと走行用モータとを搭載し、エンジン及び走行用モータの一方または両方を主駆動源として使用するハイブリッド車両(HV)や、電気自動車(EV)、燃料電池車両等の走行用モータを有する自動車において、電池電圧と、走行用モータに接続されたインバータの駆動電圧との最適化を図るために、昇圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の電圧変換器が使用されている。
【0003】
また、チョッパ方式の昇圧コンバータである昇圧チョッパの容量を1/Nにして、N個の昇圧チョッパを並列に接続し、駆動パルスの位相を2π/Nずつずらした構成は、N相の複数相コンバータであり、マルチフェーズコンバータと呼ばれている。マルチフェーズコンバータは、例えばパーソナルコンピュータ等のCPUの電圧を得る方式として広く使用されている(特許文献1等参照)。
【0004】
一方、大電力用途におけるマルチフェーズコンバータは現在、研究段階であるが、特許文献2及び非特許文献1には、それぞれ電車用及び電気自動車用に2相のコイルを磁気結合構造とした例が記載されている。
【0005】
また、非特許文献1には、コンバータ用としてN相を使用する、すなわちマルチフェーズ化させることで、リアクトルの全容積を1/Nに減少させ、体積を小さくできる、すなわち小型化を図れるコンバータが記載されている。
【0006】
また、非特許文献2には、自動車用としてN相のマルチフェーズ化したコンバータを用いた実験例が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、自動車用として、磁気結合型の2相コイルを用いた昇圧コンバータが記載されている。図14は、特許文献3に記載された昇圧コンバータを構成するリアクトルの従来構造の1例を示す図である。図15は、図14のリアクトルにおいて、コアの外側に無駄な空間が発生することを説明するための概略図である。
【0008】
図14、図15に示したリアクトル56は、コア58と、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18とを備える。コア58は、断面略長方形の磁性材を矩形状に連結してなる本体部60と、本体部60の内側に互いにギャップGを介して向き合うように結合された脚部62とを含む。各コイル16,18は、コア58の本体部60の両側2個所位置に巻回されている。各コイル16,18の一端(図14の下端)同士は、図示しない直流電源の正極側に接続されている。各コイル16,18の他端(図14の上端)は、互いに別の相である図示しない2相のトランジスタに接続されている。第1コイル16及び第2コイル18の巻き数は同じであり、かつ同じ材質からなる。2相のトランジスタは、位相が180°ずれるようにスイッチングのオンオフがされる。各コイル16,18により発生する磁束は、片側(例えば図14の上側)の脚部62から他側(例えば図14の下側)の脚部62に向かう方向にギャップGを通過する。このため、片側コイル(例えば第1コイル16)により発生した磁束に含まれるリプル成分は、他側コイル(例えば第2コイル18)により発生した磁束に含まれるリプル成分により打ち消されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−65384号公報
【特許文献2】特開2009−273280号公報
【特許文献3】特開2003−304681号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.Hirakawa他、「High Power Density DC/DC Converter using the Close-Coupled Inductors」、ECCE2009、san Jose、IEEE 2009
【非特許文献2】B.Eckardt他、「Automotive Powertrain DC/DC Converter with 25kW/dm3 by using SiC Diodes」、PCIM 2006 Conference Proceedings、Nuernberg、2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の図14、図15に示したリアクトル56では、各コイル16,18のコア58から外側に出る部分が多くなり、コア58の左右方向両側で、各コイル16,18の外側の上側及び下側となるそれぞれ2個所位置に、図15に斜線部Pで示す空間が形成される。このため、リアクトル56の外接直方体の体積が斜線部Pを含んで大きくなってしまう。また、各コイル16,18の外側にコア材が存在しないので外部への漏れ磁束が発生しやすい。
【0012】
これに対して、本発明者は、リアクトルにおいて、内部に中間脚部を設けたE型構造のコアを基本とし、中間脚部にコイルを巻回したものを2個配置して磁気結合し、リアクトルの外接直方体内での占積率、すなわち充填率を高くすることを考えた。ただし、単純にリアクトルをこのように構成しただけでは、コアの内部で発生する漏れ磁束がコイルに鎖交し、コイルの誘導損失が大きくなり、リアクトルの損失が増大する可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、2相コンバータ用リアクトルにおいて、外接直方体内部での占積率を高くし、外部への漏れ磁束を少なくするとともに、コイルの誘導損失を低減しやすくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る2相コンバータ用リアクトルは、2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルであって、環状部の内側に十字形部が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間が形成されるコアと、それぞれ別の隣り合う2つの前記内部空間に配置されるように前記十字形部の反対側2個所位置に巻回された2相コイルとを備え、前記2相コイルは、前記2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合に前記コア内で前記2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトルである。
【0015】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルは、前記十字形部の反対側2個所位置に同じ向きに巻かれ、かつ、前記2相コイルの内側に配置される一端同士が結線され、互いに結線された前記2相コイルの一端は、入力側または出力側に設けられる直流電源に接続される。
【0016】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記コアは、楕円状に巻かれた磁性フィルムを2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素を、I字形状を有するI字コア要素にそれぞれの両端部を結合することにより形成され、前記2相コイルは、前記コアの内側の反対側2個所位置に巻回されている。
【0017】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記コアは、別の材料により形成され、互いに結合された複数のコア要素を含む。
【0018】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルは、互いに同じ外形寸法を有し、前記コアは、前記2相コイルが巻回されるコイル巻回部分と、前記2相コイルが巻回されないコイル非巻回部分とを含み、前記コイル非巻回部分は、前記各相コイルの外径寸法と同じ厚みを有する。
【0019】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分により前記コアに生じる磁束である交流磁束の変動量が、2相コイル電流の合計により前記コアに生じる磁束である直流磁束の変動量よりも大きくなるように、前記2相コイルの磁気結合率が設定されている。
【0020】
また、本発明に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、好ましくは、前記2相コイルの他端にそれぞれ接続された少なくとも2つのスイッチング素子とを備え、入力側と出力側との電圧比を調整するために使用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の2相コンバータ用リアクトルによれば、コアの内部に2相コイルが巻回され、2相コイルの外側にコアの一部が配置されるので、外接直方体内部での占積率を高くでき、かつ、外部への漏れ磁束を少なくできる。しかも、2相コイルは、2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア内で2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されるので、2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分によりコアに生じる磁束を交流磁束と規定した場合に、交流磁束により十字形部の一部に流れる起磁力がなくなって、各相コイルの誘導損失を低減しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す斜視図である。
【図2】図1を正面から見た略図である。
【図3】図1のリアクトルにおいて、各相コイルの巻線方向及び接続状態を説明するための模式図である。
【図4】図1のリアクトルにおいて、直流磁束と交流磁束とが流れる方向を説明するための概略断面図である。
【図5】図1のリアクトルを用いた2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。
【図6A】図1のリアクトルにおいて、コアに交流磁束のみが流れると仮定した場合の概略断面図である。
【図6B】図1のリアクトルにおいて、コアに直流磁束のみが流れると仮定した場合の概略断面図である。
【図7】比較例のリアクトルにおいて、コアからの漏れ磁束がコイルに鎖交する様子を説明するための図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す概略断面図である。
【図9】図8のリアクトルにおいて、各相コイルを流れる各相コイル電流、各相コイル電流の差分及び各相コイル電流の合計分との電流リップルを、システム電圧の関係で示す図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、コアを構成する複数のコア要素を分離した状態(a)と、複数のコア要素を結合した状態(b)とで示す概略図である。
【図11】単にE型コア構造のリアクトルを空間をあけて2つ並べて配置した2相リアクトルの比較例を示す概略図である。
【図12】(a)は、第1の実施形態についての図2のA−A断面図であり、(b)は、本発明の第4の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルの(a)に対応する断面図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る双方向に昇降圧可能な2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。
【図14】昇圧コンバータを構成するリアクトルの従来構造の1例を示す図である。
【図15】図14のリアクトルにおいて、コアの外側に無駄な空間が発生することを説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。本発明の2相コンバータ用リアクトルは、マルチフェーズ構成において、さらなる小型化を図るべく発明したものであって、以下に説明するように2相のコイル同士を磁気的に結合させた磁気結合型コイルを備える。このような2相コンバータ用リアクトルは、例えばハイブリッド車両の駆動源として使用する回転電機である、走行用モータに接続されたインバータを駆動するための電気回路を構成するために使用される。ただし、2相コンバータ用リアクトルは、電気自動車、燃料自動車等の、ハイブリッド車両以外を駆動する回転電機のための電気回路に使用することもできる。また、回転電機は、車両駆動以外の補機駆動用でもよい。また、回転電機を2個とし、2個の回転電機に接続された2つのインバータと、バッテリ等の直流電源との間にコンバータを設ける構成に本発明に係るリアクトルを使用することもできる。
【0024】
[第1の実施形態]
図1から図5、図6A、図6Bは、本発明の第1の実施形態を示している。2相コンバータ用リアクトル(以下、単に「リアクトル」という場合がある。)10は、2相磁気結合型リアクトルであり、昇降圧用として使用される2相コンバータ12(図5)に組み込んで使用される。リアクトル10は、コア14と、コア14に巻回された2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18とを備える。
【0025】
図1、図2に示すように、コア14は、それぞれ同一の磁性材であるコア材料により形成され、断面略矩形状の環状部20の内側に十字形部22が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間Q1,Q2,Q3,Q4(図2、図3)が形成されている。このようなコア14は、それぞれ断面E字形の一対の外側コア要素24と、一対の外側コア要素24の間に非磁性材製のギャップ板26を介して結合された中間コア要素28とを含む。中間コア要素28は、E字形を2つ反対向きに結合した形状の断面を有する。各外側コア要素24及び中間コア要素28は、同一の磁性材であるコア材料により形成されている。例えば各コア要素24,28は、鉄等の磁性粉末を固めた圧粉磁心であるダストコアまたはけい素鋼板等の電磁鋼板の積層体またはアモルファス材等の低損失材等により形成されることができる。
【0026】
また、各外側コア要素24は、I字形の外側基部30の片側に3本の平行なI字形の脚部要素32が直交する方向に結合されており、中間コア要素28は、I字形の中間基部34の両側に3本の平行なI字形の脚部要素36が直交する方向に結合されている。そして、各外側コア要素24の各脚部要素32と、中間コア要素28の各脚部要素36とを、ギャップ板26を介して結合している。このように形成されるコア14は、図3に示すように、2つの平行な外側基部30と、2つの外側基部30の間に直交する方向に結合された複数のI字形の脚部38,40と、各脚部38,40同士の間に直交する方向に結合された、中間基部34の両側2個所位置である渡り部42とを含んでいる。図3では、渡り部42を斜線部で示している。
【0027】
また、各コイル16,18は、それぞれ別の隣り合う2つの内部空間Q1,Q2,Q3,Q4に配置されるように十字形部22の反対側2個所位置である中間の脚部40の2個所位置に巻回され、一端同士、すなわち内側の端部同士が接続されている。例えば、各コイル16,18の一端同士は、最短で結線されることができる。なお、脚部40と各コイル16,18との間に絶縁材製のボビン等、他の部材を設けることもできる。
【0028】
なお、図1では、各コイル16,18が断面矩形の導体である角線をエッジワイズ巻きにしたエッジワイズ型である場合を示しているが、各コイル16,18の種類はこれに限定するものではなく、断面丸形の丸線の導体を用いた、通常使用される丸線コイルとすることもできる。また、図3に示すように、各コイル16,18は、中間脚部40の2個所位置にそれぞれ同じ向きに巻かれ、かつ、各コイル16,18の内側に配置される一端同士が結線されている。第1コイル16及び第2コイル18は、互いの巻き数を同じとし、かつ、同じ導電材料により形成されている。また、第1コイル16及び第2コイル18は、互いの外径寸法を同じとし、互いのインダクタンスLを同じとしている。互いに結線された第1コイル16及び第2コイル18の一端(図3の左端)は、使用時に、入力側または出力側に設けられる直流電源であるバッテリ44(図5)の正極側に接続される。また、各コイル16,18の他端(図3の右端)は、出力側または入力側に設けられる2相アーム46,48(図5)にそれぞれ設けられた2つのスイッチング素子Sa、Sbに接続されている。図5を参照して、各相アーム46,48は、それぞれ2つのスイッチング素子Sa、Sbを直列接続しており、各相アーム46,48の中点である2つのスイッチング素子Sa、Sbの間に各コイル16,18の他端が接続されている。各相アーム46,48の正極側同士及び負極側同士はそれぞれ接続され、各相アーム46,48の両端間にコンデンサ50が接続されている。各相アーム46,48の負極側はバッテリ44の負極側に接続されている。
【0029】
本実施形態に係る2相コンバータ12は、リアクトル10と、2相アーム46,48とを含む。なお、図5では、リアクトル10を等価回路で示しており、各コイル16,18を、相手コイルと磁気結合する磁気結合要素X1と、相手コイルと磁気結合しない非磁気結合要素X2とに分けて示している。スイッチング素子Sa、Sbは、トランジスタ、IGBT等の半導体素子である。各スイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、図示しない制御部により制御される。また、各スイッチング素子Sa、Sbは、オン状態で、矢印αの向きに電流を流す。また、各スイッチング素子Sa、Sbに逆並列に図示しないダイオードを接続している。
【0030】
各スイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、各相アーム46,48同士で180°位相をずらせている。図5では、バッテリ電圧Vbがコンデンサ両端間電圧VHよりも低い場合を示している。例えば、コンバータ12が、バッテリ44の電圧Vbを昇圧してコンデンサ50に供給する昇圧用として使用される場合、各相アーム46,48の上側、すなわち正極側のスイッチング素子Saをオフ状態としたまま、下側、すなわち負極側のスイッチング素子Sbをオンオフするとともに、各相アーム46,48の下側スイッチング素子Sb同士でオンオフが逆になるようにスイッチングする。
【0031】
これに対して、コンバータ12が、コンデンサ50の両端間の電圧VHを降圧してバッテリ44に供給する降圧用として使用される場合、各相アーム46,48の下側スイッチング素子Sbをオフ状態としたまま、上側スイッチング素子Saをオンオフするとともに、各相アーム46,48の上側スイッチング素子Sa同士でオンオフが逆になるようにスイッチングする。
【0032】
このようなコンバータ12は、入力側と出力側との電圧比を調整するために使用される。例えば、昇圧用として使用されるコンバータ12では、バッテリ44側が入力側で、コンデンサ50側が出力側となる。これに対して降圧用として使用されるコンバータ12では、コンデンサ50側が入力側となり、バッテリ44側が出力側となる。オンオフスイッチングされるスイッチング素子Sb(またはSa)のオンデューティの1周期における比であるオンデューティ比を調節することで、入力側と出力側との電圧比を調整することができる。なお、バッテリ44は、充放電可能であり、例えば325Vの大きさの端子電圧Vbを有するリチウムイオン組電池、ニッケル水素組電池等を使用できる。ただし、バッテリ44の代わりにキャパシタ等の蓄電部である直流電源を用いることもできる。また、バッテリ44の正極側と負極側とに、それぞれ制御部により制御されるリレースイッチ(図示せず)を設けることもできる。
【0033】
また、コア14において、外側コア要素24の脚部要素32と中間コア要素28の脚部要素36との間に設ける複数のギャップ板26のうち、いずれか1以上のギャップ板26または全部のギャップ板26を省略して、対向する脚部要素32,36同士を直接結合するか、または対向する脚部要素32,36同士を空間を介して対向させることもできる。ギャップ板26の数や脚部要素32,36の結合状態は、狙いとするコア14の性能に応じて設定する。
【0034】
また、各コイル16,18は、リアクトル10に設けられて互いにコア14で磁気的に結合されている。また、第1コイル16及び第2コイル18は、各コイル16,18の一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されている。すなわち、バッテリ電流Ibが分かれて各コイル16,18にそれぞれコイル電流I1、I2が流れた場合を考える。バッテリ電流Ibはリップル成分を有し、コイル電流I1、I2もリップル成分を有する。各相のコイル電流I1、I2が各コイル16,18に同じ向きに同じ強さで流れたと仮定すると、中間脚部40の2個所位置に、図3に矢印T1,T2で示すように、互いに逆向きに磁束が流れる。
【0035】
また、本実施形態のリアクトル10では、交流磁束の変動量が直流磁束の変動量よりも大きくなるようにしている。ここで、「交流磁束」とは、2相リアクトル構造で互いの電圧位相を180°ずらしたために発生するコイル電流I1,I2の差分である逆相電流(I1−I2)により生成される磁束であって、図4、図6Aの実線矢印βの向きに流れるように、コア14の中間脚部40から外側基部30を通って外側脚部38に流れるように循環する磁束のことである(本明細書全体で同じである。)。
【0036】
これに対して、「直流磁束」とは、コイル電流I1,I2の合計である同相電流(I1+I2)、すなわち図5のバッテリ電流Ibにより発生する磁束であって、図4、図6Bの破線矢印γの向きに流れるように、コア14の中間脚部40から外側基部30及び外側脚部38を通り、中間基部34から中間脚部40に流れるように循環する磁束のことである(本明細書全体で同じである。)。
【0037】
各コイル16,18同士の磁気結合率をYとし、各コイル16,18のインダクタンスをLとし、第1コイル16に流れるコイル電流をI1とし、第2コイル18に流れるコイル電流をI2とし、同相電流のリップル値のpeak-to-peakをΔ(I1+I2)(=ΔIb)とし、逆相電流のリップル値のpeak-to-peakをΔ(I1−I2)とした場合に、直流磁束の変動分を波高値で表したΔΦdcと、交流磁束の変動分を波高値で表したΔΦacとは、コイルの巻き数を同じくNとして、それぞれ次式で表される。
【0038】
ΔΦdc=(1−Y)×L×Δ(I1+I2)/(4/N) ・・・(1)
ΔΦac=Y×L×Δ(I1−I2)/(2/N) ・・・(2)
【0039】
ここで、交流磁束は片側のコイル16(または18)で形成したものでも他側のコイル18(または16)にも鎖交するが、直流磁束はコイル16,18毎に分離される。このため、(1)式では、単相分に換算して(2)式に対応するものにさらに1/2を乗じている。本実施形態では、交流磁束の変動分が直流磁束の変動分よりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように、各コイル16,18同士の磁気結合率Yが設定されている。
【0040】
このような本実施形態のリアクトル10によれば、コア14の内部に各コイル16,18が巻回され、各コイル16,18の外側にコア14の一部が配置されるので、リアクトル10の外接直方体内部での占積率を高くでき、かつ、外部への漏れ磁束を少なくできる。すなわち、上記の図14、図15に示した従来構造のリアクトル56と、図2に示した本実施形態のリアクトル10とを比較すれば分かるように、仮にコイル16,18の外径寸法をコア14、58の厚み方向(図15、図2の表裏方向)の寸法と同じとすると、図15で表される空間Pの有無がほとんど両者の占積率の差になる。すなわち、図15の従来構造のリアクトル56では、空間Pが、図2のリアクトル10に対して余分な空間となる。逆に言えば、本実施形態では図15の従来構造に対して占積率の向上を図れる。このため、リアクトル10及びリアクトル10を含むコンバータ12の小型化が可能となる。さらに、各コイル16,18の外側にコア14の一部が多く配置されるため、外部への漏れ磁束が発生しにくくなる。
【0041】
さらに、各コイル16,18は、両コイル16,18の一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合にコア14内で各コイル16,18により形成される磁束が反発する方向に流れるように形成される。このため、上記のように各コイル16,18に流れるコイル電流I1,I2の差分(I1−I2)によりコア14に生じる磁束を交流磁束と規定した場合に、交流磁束により十字形部22の一部に流れる起磁力がなくなって、各コイル16,18の誘導損失を低減しやすい。以下、これについて詳しく説明する。
【0042】
本実施形態の構成は、図7の比較例のリアクトル66のように、占積率の高いE型コア68、すなわちE字形のコア要素2つを上下に結合した構造で、中間脚部62にコイル64を巻回したE型コア構造を、縦に2つ並べて結合したのと似ている。ただし、図7の比較例のE型構造リアクトル66では、E型コア68を流れる磁束のうち、図7の矢印δで示すように、内側の空間に漏れ出る漏れ磁束が発生し、漏れ磁束がコイル64に鎖交することでコイル64の誘導損失が大きくなるという欠点がある。
【0043】
これに対して、図1等に示す本実施形態ではコイル16,18同士の磁気結合を有効に利用し、E型コアで発生するコイルに鎖交する漏れ磁束を発生しにくくしている。すなわち、2つのコイル16,18を磁気結合させ、直流磁束をE型コア単独の場合と同じに発生させるが、交流磁束は外部の磁路である環状部20と、十字形部22の一部である1つの中間脚部40とのみを通る構成としている。このため、図6Aの交流磁束のみを考えた場合に、中間基部34の両側2個所位置である渡り部42付近では、漏れ磁束はコイル16,18に鎖交しにくくなる。このため、各コイル16,18の誘導損失を低減しやすい。
【0044】
しかも、リアクトル10において、交流磁束の変動分ΔΦacが直流磁束の変動分ΔΦdcよりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように、各コイル16,18同士の磁気結合率Yが設定されている。例えばΔΦac≫ΔΦdcが成立するように磁気結合率Yを適切に設定すると、漏れ磁束に対する寄与度の違いはあるが、交流磁束の漏れ分がコイル16,18の誘導損失のほとんどを生じさせる。すなわち、上記の図7に示した従来のE型構造のリアクトル66では、直流磁束に対応する単相コイルによる磁束のみが形成されるため、単相コイルによる磁束の変動分がコイル誘導損失を発生させるのに対して、図6Aに示す本実施形態では交流磁束の変動分ΔΦacがコイル誘導損失のほとんどを発生させる。直流磁束及び交流磁束の合成で形成される磁束のうちでコイル16,18に鎖交する漏れ磁束が形成される割合は、コア形状等に依存するため単純には説明できない。ただし、本実施形態の構造では、コア14において、交流磁束で、コイル16,18が巻回されない部分である図3の斜線部で示した渡り部42で、図7の矢印δで表す漏れ磁束を形成する起磁力の片側(図7の上側または下側)に対応する分が打ち消される。すなわち、図6Aの交流磁束のみが発生する状態では、図6Bの直流磁束のみが発生する状態に対して、Vで囲った範囲の起磁力が打ち消される。このため、直流磁束で発生する漏れ磁束は、交流磁束で発生する漏れ磁束に対して1〜2倍程度多くなると考えられる。したがって、漏れ磁束のうち、交流磁束の漏れ分が主となる本実施形態によれば、各コイル16,18の誘導損失を1/4程度に低減することができる。
【0045】
このように本実施形態では、交流磁束の変動分ΔΦacが各コイル16,18の誘導損失を発生させることに対して支配的になるのに対し、交流磁束の変動分ΔΦacによる漏れ磁束は上記のように少ないので、リアクトル10全体での各コイル16,18の誘導損失を低減できる。このように単体のE型コア構造のリアクトルで生じる内部の磁束漏れに対して、本実施形態のように2つのコイル16,18の磁気結合構造とすることで磁束漏れを大幅に減少させることができ、低損失化を図れる。
【0046】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルを示す概略断面図である。本実施形態のリアクトル10では、コア14の中間基部34において、各コイル16,18同士の間に配置されるコア要素である2つの渡り部42をダストコア、すなわち磁性粉末を固めてなる圧粉磁心により形成し、各外側コア要素24と、中間コア要素28の渡り部42以外の部分である複数の別のコア要素70,72とを、鉄系のアモルファスコアであり、カットコアである日立金属株式会社製のAMCCコア(商品名)により形成している。このように本実施形態では、コア14は、複数のコア要素24,70,72と、各コア要素24,70,72とは別の材料により形成され、各コア要素24,70,72に直接、または他の部材を介して結合される渡り部42とを含む。
【0047】
本実施形態のリアクトル10は、自動車の昇圧コンバータで用いられる仕様に近い仕様での具体的構造を容易に実現できる。渡り部42は、圧粉磁心により形成することで、磁束密度が周辺よりも若干高くなるように設定されている。例えば渡り部42を形成するダストコアの磁束密度Bsは1.9Tであり、渡り部42以外の各コア要素24,70,72を形成するAMCCコアの磁束密度Bsは1.56Tである。
【0048】
このような本実施形態によれば、リアクトル10の体格をより小さくできるとともに、損失をより低減させることができる。例えば、損失を低減できる最大の理由は、コア14の大部分を低損失コア材であるAMCCコアにより形成していることである。ただし、コア14のすべての部分に低損失コア材を使用すると、飽和磁束密度が低い分、概算で飽和磁束密度の逆数に比例してコア14の体格が増加する。このため、単にコア14に低損失コア材を使用しただけでは体格を十分には小さくできないが、本実施形態では、各コイル16,18を磁気結合型とし、交流磁束が通過しない渡り部42にのみ飽和磁束密度の高いダストコアを使用することで、コア14の体格を小さくできる。
【0049】
次に本実施形態の効果を確認するために行った計算結果を、比較例との比較で説明する(図9)。この計算では、本実施形態の構造を有する実施例のリアクトル10で、各コイル16,18は単相で100Aを通電可能とし、単相のインダクタンス値は204μH、相互インダクタンス/単相インダクタンスである磁気結合率Yは0.388とした。また、比較例として、互いに磁気結合しない2つの単相コイルを用いた2相コンバータ用リアクトルを使用し、その仕様は、単相で100Aを通電可能とし、インダクタンス値は225μHとした。また、電池電圧は325Vとし、駆動周波数は10kHzとした。
【0050】
次に図9を用いて実施例の電流リップルの計算結果を説明する。なお、以下の説明では、図8に示した要素と同じ要素には同一の符号を付して説明する。図9は、図8のリアクトル10において、各相コイル16,18を流れる各相コイル電流、各相コイル電流の差分及び各相コイル電流の合計分との電流リップルを、システム電圧の関係で示す図である。各相コイル16,18の単相分での電流リップルΔ(I1)=Δ(I2)は、比較例の単相コイルの電流リップル(単相(225μH))とほぼ同じとなっている。
【0051】
次に、実施例において、交流磁束の変動量ΔΦacが直流磁束の変動量ΔΦdcよりも大きく設定されていることを、図9の電流リップルを用いて説明する。図9のΔ(I1+I2)=ΔIb、Δ(I1−I2)は、それぞれ同相電流、逆相電流の電流リップル値をpeak-to-peakで計算した場合の値である。各電流リップルの波高値は、図9に示す電流リップル値の1/2となる。
【0052】
図9の計算結果から明らかなように、ハイブリッド車用として多く使用されるシステム電圧である650V付近では、同相電流リップルである直流電流リップルΔIbは、逆相電流リップルである交流電流リップルΔ(I1−I2)に対して格段に小さくなる。このため、上記の第1の実施形態で説明した(1)式及び(2)式で、仮に磁気結合率Y=0.4程度とすると、ΔΦdc≪ΔΦacとなる。このように結合率Yを適切に設定することで、交流磁束の変動量ΔΦacを直流磁束の変動量ΔΦdcよりも十分に大きく設定することが可能となることが分かる。
【0053】
次に、上記の図9の計算結果で用いた実施例の計算条件に基づいて、リアクトル10の体格と損失とを、比較例の2相リアクトルと比較した結果を説明する。この計算条件では、損失を求めるための条件として、主として使用される使用条件と同じ10kHz駆動で、325Vから650Vの昇圧を行うとした。また、計算は、株式会社J−SOL製の電磁界解析ソフトJ−MAGを用いて行った。また、比較例の2相リアクトルは、上記の図9の計算で用いたのと同様に、互いに磁気結合しない2つの単相コイルを用いたリアクトルで、コアが2次元構造で、コイル部分が外側に出た構成とした。また、比較例のコア材にダストコアを用いた。また、実施例も同様に、コアが2次元構造で、コイル部分が外側に出た構成とした。表1は、このようにして行った計算結果を示している。
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、「L値」は、単相コイルのインダクタンスを示しており、「結合率」は、実施例の磁気結合率Yを示している。リアクトル体格及び損失は、比較例の場合を1とした場合の比で示している。表1の結果から、単に磁気結合しない2相リアクトルの比較例から磁気結合型の実施例のリアクトル10とすることで、ほぼ同じ電流リップル、同じコイル抵抗でありながら実施例で比較例に対して、リアクトル10の体格を55%で、損失を56%と大きく低減することができ、リアクトル10の性能を向上できることを確認できた。なお、表1の損失は、コア損失とコイル損失とを加算した全損失での比較であり、直流電流Idc=0の場合である。
【0056】
このように実施例で損失を低減できる最大の理由は、比較例に比べて低損失なコア材、すなわちAMCCコアを使用していることが考えられるが、同じ構造で低損失コア材を使用する場合には飽和磁束密度が低い分、概算で飽和磁束密度の逆数に比例して体格が増加する。このため、単にコア材を低損失コア材に置き換えただけでは表1の結果は得られない。すなわち、表1の実施例では、磁気結合構造によって体格を低減できているのであり、表1の実施例の性能は、単にコア材を置き換えるだけでは得られない。
【0057】
さらに交流磁束の漏れを、実施例でJ−MAGで解析した結果に基づいて説明する。解析では、2つのコイル16,18にそれぞれ10Aを通電した。単相のE型コア構造のリアクトルを単に縦に2つ重ねた構造、すなわち上記の図6Bと同様に、単にコア14内に直流磁束のみが流れる場合には、コイル16,18と鎖交する漏れ磁束が多くなる。これに対して、磁気結合型の実施例では、コイル16,18と鎖交する漏れ磁束が上記の図6Bの場合の1/2程度になる。電流変動と漏れ磁束とから見積もったコイル16,18の誘導損失は、比較例に対して15%程度になり、単相のE型コア構造のリアクトルを単に縦に2つ重ねた構造で問題となるコイルの誘導損失を大幅に低減できることが分かった。本実施形態において、その他の構成及び作用は、上記の第1の実施形態と同様である。
【0058】
[第3の実施形態]
図10は、本発明の第3の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルにおいて、コアを構成する複数のコア要素を分離した状態(a)と、複数のコア要素を結合した状態(b)とで示す概略図である。図10(a)で示すように、本実施形態のリアクトル10を構成するコア14は、楕円状、すなわちロール状に巻かれたアモルファス材等の低損失材の磁性フィルムを半分の2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素74を、I字形状を有し、ダストコア等により形成されるI字コア要素76にそれぞれの両端部を結合することにより形成されている。また、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18は、図10(b)で示すように、コア14の内側の反対側2個所位置に巻回されている。
【0059】
このような本実施形態では、低損失材の磁性フィルムを用いて簡便にリアクトル10を構成することができる。例えば、低損失材としてアモルファス材を使用する場合を考えると、アモルファス材をフィルム状に作成したものをロール状に巻き、半分に2分割してU字コア要素としたものが製造、販売されている。本実施形態では、このU字コア要素を簡便に利用可能である。すなわち、4つのU字コア要素74と1つのI字コア要素76とを図10に示したように組み合わせることで、簡単にコア14を形成できる。
【0060】
一方、図11は、単にE型コア構造のリアクトル66を空間78をあけて2つ並べて配置した2相リアクトルの比較例を示す概略図である。図11で示すように、単純にE型コア構造のリアクトル66を2つ用いて配置した場合でも、交流磁束の磁路に空気の磁気抵抗層である空間78が形成されるため、交流磁束は形成されにくくなる。このため、本実施形態により得られる効果は、図11の構成では得られない。このことからも、本実施形態では、上記の第1の実施形態で説明したように、交流磁束の変動分ΔΦacが直流磁束の変動分ΔΦdcよりも大きくなる、すなわちΔΦac>ΔΦdcが成立するように設計する必要があることが分かる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態、または第2の実施形態と同様である。
【0061】
[第4の実施形態]
図12において、(a)は、第1の実施形態についての図2のA−A断面図であり、(b)は、本発明の第4の実施形態に係る2相コンバータ用リアクトルの(a)に対応する断面図である。図12(b)に示すように、本実施形態のリアクトル88では、コア80は、2相コイルである第1コイル16及び第2コイル18が巻回されるコイル巻回部分82と、各コイル16,18が巻回されないコイル非巻回部分84,86とを含む。コイル非巻回部分84,86は、各コイル16,18の外径寸法Dと同じ厚み方向(図12の上下方向)の寸法Wを有する。このような本実施形態のリアクトル88では、加工が容易な等方性を有するコア材を用いることが好ましい。このようなリアクトル88では、上記の第1の実施形態で説明した図12(a)のリアクトル10に対して、コイル非巻回部分84,86の厚み方向寸法Wを大きくできるため、磁路の断面積を同じにしたままで各コイル16,18の巻回軸方向と一致する方向(図12の左右方向)の長さL1を、第1の実施形態のリアクトルの長さL2に対して短くできる(L1<L2)。このため、リアクトル10のさらなる小型化を図れる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態と同様である。
【0062】
[第5の実施形態]
図13は、本発明の実施の形態に係る双方向に昇降圧可能な2相コンバータを含む電源回路の等価回路を示す図である。本実施形態の2相コンバータ90は、上記の図5に示した第1の実施形態の2相コンバータ12に対して、各コイル16,18の一端側(図13の左端側)とバッテリ44の正極側との間に、2相の第2アーム92,94を接続している。すなわち、各コイル16,18の一端は、2相アーム46,48とは反対側に設けられる2相の第2アーム92,94にそれぞれ設けられた2つのスイッチング素子Sa、Sbに接続されている。各相の第2アーム92,94は、それぞれ2つのスイッチング素子Sa、Sbを直列接続しており、各相の第2アーム92,94の中点である2つのスイッチング素子Sa、Sbの間に、各コイル16,18の一端が接続されている。各相の第2アーム92,94の正極側同士及び負極側同士はそれぞれバッテリ44の正極側と負極側とに接続されている。2相の第2アーム92,94の構成は、2相アーム46,48と同様である。2相の第2アーム92,94のスイッチング素子Sa、Sbのオンオフは、図示しない制御部で制御される。
【0063】
このような本実施形態によれば、2相コンバータ90は、昇降圧が双方向に可能となる。すなわち、本実施形態では、上記の図5に示した第1の実施形態のように、コンデンサ50両端間の電圧VHがバッテリ44の電圧Vbよりも高くなる場合だけでなく、バッテリ44の電圧Vbがコンデンサ50両端間の電圧VHよりも高くなる場合にも適用できる。バッテリ44の電圧Vbがコンデンサ50両端間の電圧VHよりも高くなる場合には、2相の第2アーム92,94のスイッチング素子Sa、Sbのスイッチングを用いて、バッテリ44の出力電圧Vbを降圧し、降圧した電圧をコンデンサ50両端間に出力したり、コンデンサ50両端間の入力電圧VHを昇圧し、昇圧した電圧をバッテリ44に出力することができる。このように本発明に係る2相コンバータ用リアクトルは、昇降圧が双方向に可能な構成に適用することもできる。その他の構成及び作用は、上記の図1〜図5、図6A、図6Bに示した第1の実施形態と同様である。なお、リアクトルとして、第1の実施形態のリアクトルの代わりに、上記の第2の実施形態から第4の実施形態のリアクトルのいずれか1を用いることもできる。
【0064】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
10 2相コンバータ用リアクトル、12 2相コンバータ、14 コア、16 第1コイル、18 第2コイル、20 環状部、22 十字形部、24 外側コア要素、26 ギャップ板、28 中間コア要素、30 外側基部、32 脚部要素、34 中間基部、36 脚部要素、38,40 脚部、42 渡り部、44 バッテリ、46,48 アーム、50 コンデンサ、56 リアクトル、58 コア、60 本体部、62 脚部、64 コイル、66 リアクトル、68 E型コア、70,72 コア要素,74 U字コア要素、76 I字コア要素、78 空間、80 コア、82 コイル巻回部分、84,86 コイル非巻回部分、88 リアクトル、90 2相コンバータ、92,94 第2アーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルであって、
環状部の内側に十字形部が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間が形成されるコアと、
それぞれ別の隣り合う2つの前記内部空間に配置されるように前記十字形部の反対側2個所位置に巻回された2相コイルとを備え、
前記2相コイルは、前記2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合に前記コア内で前記2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルは、前記十字形部の反対側2個所位置に同じ向きに巻かれ、かつ、前記2相コイルの内側に配置される一端同士が結線され、
互いに結線された前記2相コイルの一端は、入力側または出力側に設けられる直流電源に接続されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項3】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記コアは、楕円状に巻かれた磁性フィルムを2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素を、I字形状を有するI字コア要素にそれぞれの両端部を結合することにより形成され、
前記2相コイルは、前記コアの内側の反対側2個所位置に巻回されていることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記コアは、別の材料により形成され、互いに結合された複数のコア要素を含むことを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項5】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルは、互いに同じ外形寸法を有し、
前記コアは、前記2相コイルが巻回されるコイル巻回部分と、前記2相コイルが巻回されないコイル非巻回部分とを含み、
前記コイル非巻回部分は、前記各相コイルの外径寸法と同じ厚みを有することを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項6】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分により前記コアに生じる磁束である交流磁束の変動量が、2相コイル電流の合計により前記コアに生じる磁束である直流磁束の変動量よりも大きくなるように、前記2相コイルの磁気結合率が設定されていることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の2相コンバータ用リアクトルと、
前記2相コイルの他端にそれぞれ接続された少なくとも2つのスイッチング素子とを備え、
入力側と出力側との電圧比を調整するために使用されることを特徴とする2相コンバータ。
【請求項1】
2相コンバータに使用される2相コンバータ用リアクトルであって、
環状部の内側に十字形部が結合された形状を有し、内側に周方向に離れた4つの内部空間が形成されるコアと、
それぞれ別の隣り合う2つの前記内部空間に配置されるように前記十字形部の反対側2個所位置に巻回された2相コイルとを備え、
前記2相コイルは、前記2相コイルの一端側または他端側から同じ方向に同じ強さの電流が流れた場合に前記コア内で前記2相コイルにより形成される磁束が反発する方向に流れるように形成されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項2】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルは、前記十字形部の反対側2個所位置に同じ向きに巻かれ、かつ、前記2相コイルの内側に配置される一端同士が結線され、
互いに結線された前記2相コイルの一端は、入力側または出力側に設けられる直流電源に接続されることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項3】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記コアは、楕円状に巻かれた磁性フィルムを2つに分割し、U字形状とした4つのU字コア要素を、I字形状を有するI字コア要素にそれぞれの両端部を結合することにより形成され、
前記2相コイルは、前記コアの内側の反対側2個所位置に巻回されていることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記コアは、別の材料により形成され、互いに結合された複数のコア要素を含むことを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項5】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルは、互いに同じ外形寸法を有し、
前記コアは、前記2相コイルが巻回されるコイル巻回部分と、前記2相コイルが巻回されないコイル非巻回部分とを含み、
前記コイル非巻回部分は、前記各相コイルの外径寸法と同じ厚みを有することを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項6】
請求項1に記載の2相コンバータ用リアクトルにおいて、
前記2相コイルに流れる電流である2相コイル電流の差分により前記コアに生じる磁束である交流磁束の変動量が、2相コイル電流の合計により前記コアに生じる磁束である直流磁束の変動量よりも大きくなるように、前記2相コイルの磁気結合率が設定されていることを特徴とする2相コンバータ用リアクトル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の2相コンバータ用リアクトルと、
前記2相コイルの他端にそれぞれ接続された少なくとも2つのスイッチング素子とを備え、
入力側と出力側との電圧比を調整するために使用されることを特徴とする2相コンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−93921(P2013−93921A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232619(P2011−232619)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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