2粒子複合体を用いた生物学的分子の検出のための方法及び組成物
本発明は、電気発生性の化学発光を用いて、試料における対象の分析物を検出する方法を提供する。本発明は、電気発生性の化学発光部分を捕捉し、又は含む、少なくとも1つの固体支持体を含む組成物も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書に参照により組み入れられる、2004年6月23日出願の米国仮特許出願第60/581719号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般的には、試料における対象の分析物を検出するための方法及び組成物に関する。対象の分析物は、ヒト又は他の生物に影響を及ぼす疾患又は病状に関連し得る。対象の分析物には、毒素、化学若しくは生物兵器物質、及び環境汚染物質が含まれる。ある実施形態において、本発明は、特に、第1及び第2の担体、試料中に含まれる対象の分析物、第1の担体を通じて捕捉され又は含有される電気化学発光(ECL)部分、並びに第1及び第2の担体の少なくとも1つに連結される対象の分析物の少なくとも1つの特異的結合パートナーを含む組成物に関する。ある実施形態において、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための、これらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学的、生化学的、及び生物学的物質などの分析物を、検出し、定量する、迅速で高度に特異的な方法が、引き続き、ますます必要とされている。特に、少量の、薬剤、代謝物、生物学的マーカー、微生物、ウィルス、及び他の病原体を測定するための方法が望まれている。これらの材料の存在は、多くの生物学的システムを特徴づける高度の特異性を利用する結合方法により決定できることが多い。試料に存在する対象の分子を検出するために結合に頼っている既知の方法には、核酸ハイブリダイゼーション技術、及び、抗体−抗原結合などのタンパク質−リガンド相互作用が含まれる。これらの方法では、診断的価値のある複合体の存在が、通常、複合体を含む1つ又は複数の材料に付着している観察可能な標識の存在/活性化、又は非存在/非活性化により示される。
【0004】
感度及び選択性は双方とも、多数の構成成分からなる試料に存在する対象の特異的分子を検出するためのあらゆるシステムの望ましい特質である。対象の生物学的分子を検出するためのDNAハイブリダイゼーション及び他のバイオアッセイでは、感度は、臨床上の診断(Liron and Fisher編集、Novel Approaches in Biosensors and Rapid Diagnostic Assays、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Kentonら、1992年、Clin.Chem.、38巻、873頁;Chistodoulidesら、2002年、Anal.Chem.、74巻、3030頁)、法化学(Heller、2002年、Annu.Rev.Biomed.Eng.、4巻、129頁;Nelsonら、1996年、J.Forensic Sci.、41巻、557頁)、環境調査(Lucarelliら、2002年、Talanta、56巻、949頁;Minら、2002年、Anal.Biochem.、303巻、186頁)、薬学研究(Heller、2002年、Annu.Rev.Biomed.Eng.、4巻、129頁;Polliceら、1985年、Clin.Lab.Med.、5巻、463頁)、及び生物兵器物質の検出(Smith、2002年、Anal.Chem.、74巻、462A頁;Miao及びBard、2003年、Anal.Chem.、75巻、5825頁)において重要である。したがって、対象分子の感度のある、選択的な検出を提供するあらゆるシステムは、これらの分野全てで広範囲の適用性を有する。
【0005】
電気化学発光(ECL)法は、感度が高く、ダイナミックレンジが広く、選択的であるので、結合試験(binding study)で広く使われている(米国特許第6316607号;Bard,A.J.編集、Electrogenerated Chemiluminescence、Marcel Dekker、New York、2004年)。例えば、DNAの検出に様々な技術が使用可能であり、その場合、標的の1本鎖DNA(t−ssDNA)に結合している電気化学的標識、蛍光標識、及びECL活性標識が、分析過程で測定可能なシグナルを生成する(Liron及びFisher編集、Novel Approaches in Biosensors and Rapid Diagnostic Assays、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Yang及びNgo編集、Biosensors and Their Applications、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Cunningham、Introduction to Bioanalytical Sensors、J.Wiley & Sons社、New York、1998年)。測定されるシグナルの強度は概ねt−ssDNAの量に比例するので、これらの方法の感度は制限されることが多く、伝統的に、たった1つ又は少数の標識が1つのt−ssDNAに結合することができる。より高感度を実現することができるように、1つのDNAをより多数の標識で標識することができる幾つかの方法が開発されている(Wang及びMerkoci、2003年、Langmuir、19巻、989頁;Zhaoら、2003年、J.Am.Chem.Soc.、125巻、11474頁)。これらの方法は、フェムトモル(fmol)範囲の量を検出するのに必要とされる感度はもたらさない。また、これらは相補的なハイブリダイゼーションと、2塩基対のミスマッチ又は多重測定とを区別する能力である、低い非特異的結合ももたらさない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、高い選択性及び低い非特異的結合をもたらす、高感度の(例えば、fmol範囲の)検出システムが依然として必要とされている。少なくとも1つの他の分子(例えば、特異的結合パートナー)に結合し、又はそれと相互作用することができるのであれば、このシステムは広範囲の適用性を有するはずであり、実質的にあらゆる対象の分子を検出するのに用いることができる。対象の分子が核酸、例えばDNAである場合には、このシステムは、相補的なハイブリダイゼーション、少なくとも2塩基対のミスマッチのハイブリダイゼーション、及び非相補的なDNAハイブリダイゼーションの各々を区別することができなければならない。
【0007】
理想的には、検出システムは、ECL標識の非特異的な結合を除外する単純な処理と、ECL標識の高い安定性とを提供し、その結果、シグナルを失わずに、多重測定を取り込む可能性を考慮するものである。これらの必要性はそれぞれ、少なくとも、開示する発明の、ある実施形態により満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための、迅速で、感度がよく、選択的な方法及び組成物を提供する。即ち、本発明は、試料中に含まれる、少量(例えば、1fmol)の対象の分析物を正確に検出する(例えば、偽陽性のシグナルの出現率が低い)ための方法及び組成物に関する。この望ましい感度は、少なくとも部分的に、第1の担体中に捕捉され、又は含まれている多数のECL分子を提供することにより実現される。
【0009】
ある実施形態では、本発明は、
BとDの両方が対象の分析物に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結してあり、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のを含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のを検出する方法を提供する。
【0010】
ある実施形態において、本発明は、
BとDの両方が対象の生物学的分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを捕足若しくは含む第1の固体支持体であり、Bは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の生物学的分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の固体支持体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の生物学的分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより生物学的分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の生物学的分子を検出する方法を提供する。
【0011】
本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子はタンパク質であることができる。本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子は核酸であることができる。
【0012】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは、対象の分析物を含むことがある試料であり、Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0013】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の固体支持体であり、Bは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の生物学的分子を含むことがある試料であり、Dは対象の生物学的分子に直接連結するか、又は対象の生物学的分子の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の固体支持体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における生物学的分子を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子はタンパク質であることができる。本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子は核酸であることができる。
【0015】
ある実施形態では、本発明は、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
Bは、Aを含む、有機溶剤に可溶のビーズ、例えばポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に結合しているか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに結合しており、
Cは、対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、他の組成物の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法を提供する。
【0016】
ある実施形態において、対象の核酸分子はデオキシリボ核酸(DNA)である。一部の実施形態では、対象の核酸分子はリボ核酸(RNA)である。
【0017】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るRu(bpy)3[B(C6F5)4]2部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0018】
ある実施形態において、本発明は
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結するか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結し、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子に連結するか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物を提供する。
【0019】
ある実施形態においては、本発明は、
BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結することができる磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法を提供する。
【0020】
ある実施形態において、対象のタンパク質の第1及び/又は第2の結合パートナーは、抗体、又は特異的結合タンパク質であることができる。
【0021】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象のタンパク質分子を含むことがある試料であり、Dは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質分子に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結している磁化ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいない。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物を提供する。
【0022】
ある実施形態では、対象のタンパク質分子の第1及び/又は第2の結合パートナーは、抗体、又は特異的結合タンパク質であることができる。
【0023】
本発明は、対象の分析物を検出する競合的結合アッセイを行うための方法も提供する。ある実施形態において、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象の分析物の結合パートナーに連結しており、Bが対象の分析物の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の分析物の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは、対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、Dを含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法を提供する。
【0024】
関連の実施形態において、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象の核酸の類似体に連結し、Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法を提供する。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合は、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは、対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法を提供する。
【0026】
一部の実施形態において、本発明は、対象の分析物を検出するための競合的結合アッセイを行うための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、Dは対象の分析物の類似体に連結することができるか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物を提供する。
【0027】
この組成物のある実施形態では、対象の分析物は核酸である。この組成物の一部の実施形態では、対象の分析物はタンパク質である。
【0028】
関連の実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象の核酸分子の類似体に連結し、Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物を提供する。
【0029】
ある実施形態では、対象の核酸分子はデオキシリボ核酸(DNA)である。ある実施形態では、対象の核酸分子はリボ核酸(RNA)である。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、Dは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物を提供する。
【0031】
更なる実施形態は、本発明のある方法を行い、本発明のある組成物を形成するのに有用なキットを提供する。一部の実施形態において、本発明は、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分と;このECL部分を含む第1の担体であって、対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結する第1の担体と;対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結する第2の担体とを含む、試料における対象の分析物を検出するためのキットを提供する。
【0032】
当業者であれば、ECL部分の各々が異なる波長の光を放射するのであれば、上記に記載した方法、組成物、及びキットを含むあらゆる実施形態は、1つより多いECL部分を含むこともできることを理解するであろう。例えば、試料における1つより多い分析物を検出するために、2つ以上のECL部分を含む組成物、方法、及びキットを用いることができる。
【0033】
当業者であれば、ECL部分の各々が異なる波長の光を放射するのであれば、上記に記載した方法、組成物、及びキットを含むあらゆる実施形態は、1つより多いECL部分を含むこともできることを理解するであろう。1つより多いECL部分は、例えば、1つより多い分析物を検出することができる場合に有用である。
【0034】
本発明のさらなる目的及び利点は以下の記載において一部述べられ、一部はその記載から自明であり、又は本発明の実施により習得することができる。本発明の目的及び利点は、添付する特許請求の範囲で特に指摘される成分及び組合せにより、実現され、達成されるであろう。
【0035】
前述の全般的な記載も、以下の詳細な記載も、例示的及び説明的なものにすぎず、請求されるように本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
A.定義
本明細書で用いられる「抗体」は、免疫グロブリン又はその一部分を意味し、起源、製造方法、又はその他の特徴に関係なく、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。この語は、例えば、ポリクローナルの、モノクローナルの、単一特異性の、多特異性の、ヒト化の、単鎖の、キメラの、合成の、リコンビナントの、ハイブリッドの、変異の、及びCDR移植の抗体を含む。抗体の一部分は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFvなど、抗原と結合することができるあらゆるフラグメントを含むことができる。
【0037】
本明細書で用いられる「対象の分析物」は、試料に見出される、ウィルスの細胞若しくは細胞の構成要素を含む、あらゆる分子、又は分子の集合体を意味する。試料に見出されるあらゆる分子のフラグメントも含まれる。対象の分析物は、有機化合物、有機金属化合物、又は無機化合物であってもよい。対象の分析物は、核酸(例えば、DNA、RNA、プラスミド、ベクター、若しくはオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、抗原、受容体、受容体リガンド、若しくはペプチド)、リポタンパク質、糖タンパク、リボ−若しくはデオキシリボ核タンパク質、ペプチド、多糖類、リポ多糖類、脂質、脂肪酸、ビタミン、アミノ酸、薬剤化合物(例えば、トランキライザー、バルビツレート類、アヘン剤、アルコール、3環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン類、抗ウィルス薬、抗真菌抗生物質、ステロイド類、強心配糖体、若しくは前記のあらゆるものの代謝物)、ホルモン、成長因子、酵素、補酵素、アポ酵素、ハプテン、レシチン、基質、細胞代謝物、細胞の構成要素又は細胞小器官(例えば、膜、細胞壁、リボソーム、染色体、ミトコンドリア、若しくは細胞骨格成分)でもよい。毒素、殺虫剤、除草剤、及び環境汚染物質もこの定義に含まれる。この定義は、この定義内に述べた例の任意の1つ又は複数を含む複合体を更に含む。
【0038】
本明細書で用いられる「対象の分析物の類似体」は、特異的結合パートナーに結合するのに、対象の分析物と競合する物質を意味する。対象の分析物の類似体は、試料に存在する対象の分析物と特異的結合パートナーに結合するのに競合するために添加されている、既知量の対象の分析物それ自体であってもよい。
【0039】
本明細書で用いられる「担体」は、1つ又は複数の固体又は液体の封入物質を意味する。担体は、有機又は無機の化合物を含むことができ、試料を提示するため、特異的結合パートナーを提示するため、又はECL部分を含む又は捕捉するための少なくとも1つのために用いることができる。担体は、後に更に詳しく記載する。
【0040】
本明細書で用いられる「含む(containing)」又は「含まれる(contained)」は、ECL部分と担体とが相互に物理的に接触しているが必ずしも相互に付着しているとは限らないような、担体の内部とECL部分との間の非特異的な関係を意味する。本発明のある実施形態では、担体内に含まれているECL部分は、担体に連結することができる。ある実施形態では、担体内に含まれているECL部分は、担体に連結しない。含む/含まれるは、「包まれる(encased)/包む(encasing)」及び「捕捉される(entrapped)/捕捉する(entrapping)」と交換可能に用いられる。
【0041】
本明細書で用いられる「ハイブリダイズする」は、適切な条件下での第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間での2本鎖の形成を意味する。一部の実施形態では、適切な条件は、厳密な条件であることができる。厳密な条件は、配列依存であり、異なる状況では異なる。配列が長くなるほど、より高温で特異的にハイブリダイズする(例えば、Sambrookら、1989年、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.、及びAusubelら、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.を参照されたい)。一般的には、厳密な条件は、規定されたイオン強度及びpHでの特異的配列に対する熱融解点(Tm)よりも低い約5℃が選択される。Tmは、標的の配列に相補的なポリヌクレオチドの50%が、(規定されたイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。典型的には、厳密な条件は、pH7.0から8.3において、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオンより低く、典型的には約0.05から10Mナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度は、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを超える)では少なくとも約60℃である。厳密な条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加でも実現することができる。溶液のホルムアミド濃度が1%上昇するごとに、DNA2本鎖のTmは約0.7℃低下する。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、100%相補的であるポリヌクレオチド間で、即ち、2本鎖の核酸の2本の鎖間にミスマッチがない場合に起こることができる。ハイブリダイゼーションは、2本鎖の核酸の2本の鎖間にミスマッチがある場合にも起こることができる。本明細書で用いられる相補的なハイブリダイゼーションは、2本鎖の核酸の2本のハイブリダイズした鎖間にせいぜい1つのミスマッチが存在する場合の、2本の鎖の核酸の間のハイブリダイゼーションを意味する。
【0043】
本明細書で用いられる「連結した(linked)」は、2つの部分の間の直接の共有結合(direct covalent connections)、2つの部分の間の直接の非共有結合(direct noncovalent connections)、及び1つ若しくは複数の更なる部分により媒介される2つの部分の間の間接的総合を包含する。例えば、2つの部分の間の直接の共有結合は、2つのアミノ酸の間のアミド結合を含むことができ、2つの部分の間の直接の非共有結合は、塩を形成する金属と塩基との間のイオン性相互作用、又は2つの水分子間の水素結合を含むことができる。1つ若しくは複数の更なる部分により媒介される2つの部分の間の間接的結合は、Ig融合タンパク質などの融合タンパク質、及びTNV受容体などの受容体を含むことができ、この場合、IgとTNF受容体との間の結合は、IgにもTNF受容体にも元来存在しない短いアミノ酸配列などのリンカーにより媒介される。
【0044】
「連結した(linked)」は、対象の分析物により媒介される結合(connections)を包含しない。
【0045】
本明細書で用いられる「磁化」は、物質の透磁性が自由空間のものと異なる場合の物質の特性を意味する。この語は常磁化、及び超常磁化を含む。
【0046】
本明細書で用いられる「核酸」は、1本鎖又は2本鎖の形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドから構成されるポリマーを意味する。典型的には、1本鎖の核酸は100を超える塩基を含み、2本鎖の核酸は100を超える塩基対を含む。「核酸」は、天然に存在するヌクレオチドを含む核酸、及び基準の核酸に類似の結合特性を有する天然のヌクレオチドの類似体を含む核酸を包含する。核酸は、遺伝子によりコードされるcDNA又はmRNAも含む。核酸は、相補的塩基対形成により、例えば、水素結合により、その相補体にハイブリダイズすることができる。
【0047】
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド」は、通常100塩基長以下の1本鎖の核酸を意味する。勿論、相補的なオリゴヌクレオチドをアニールして2本鎖のポリヌクレオチドを形成することができる。本明細書で用いられるように、オリゴヌクレオチドは、天然の(即ち、A、G、C、T、若しくはU)又は修飾された塩基を含むことができる。更に、オリゴヌクレオチドにおける塩基は、鎖間の塩基対形成を妨害しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合により結びつけられることができる。したがって、例えば、オリゴヌクレオチドは、成分の塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合により結びついているペプチド−核酸であることができる。(例えば、Nielson、2001年、Current Opinion in Biotechnology12巻、16頁を参照されたい)。当業者であれば、オリゴヌクレオチドは、プローブ配列との完全な相補性を欠く配列とハイブリダイズすることができ、本明細書に記載する方法を用いて完全に相補的である結合と完全に至らない相補的な結合とを区別することができることを理解するであろう。場合により、オリゴヌクレオチドは、放射性同位元素、発色団、ルミフォア(lumiphore)、色素原、又はECL部分で直接標識することができ、又は、例えば、それに対してストレプトアビジン又はアビジン複合体が後で結合することができるビオチンで間接的に標識することができる。
【0048】
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」は、2ヌクレオチドより多く、100ヌクレオチドよりも少ないヌクレオチドで構成されるポリマーを意味する。
【0049】
本明細書で用いられる「試料」は、生物系に由来し、又はそれを起源とするあらゆる検体を意味する。生物系は、生態系(例えば、水、空気、若しくは土壌の検体)、又は生物体(例えば、植物、動物、菌類、細菌、他の原核生物若しくは真核生物)、又はウィルス、又はプリオンを含む。試料は、対象の分析物を含むことができる。試料は、単離された、例えば、精製された、対象の分析物も含むことができる。
【0050】
本明細書で用いられる「特異的結合パートナー」は、生理学的条件下で第2の分子と比較的安定な複合体を形成することができる第1の分子を意味する。一般的に、特異的結合は、相対的に高い親和性と、相対的に低度から中等度の受容能力(capacity)とを特徴とする。非特異的結合は、通常、中等度から高度の受容能力と共に、低い親和性を有する。通常、親和性定数Kaが約106M−1より高く、又は、108M−1より高い場合に、結合が特異的とみなされる。結合定数が高くなるほど親和性が大きくなることが示され、したがって特異性が大きくなる。抗体は、通常、106M−1から109M−1又はより高い親和性定数で抗原に結合する。必要に応じて、非特異的結合は、結合条件を変化させることにより、特異的な結合に実質的に影響を及ぼさないで減少させることができる。このような条件は当技術分野では知られており、当業者であればルーチンの技術を用いて好適な条件を選択することができる。この条件は、例えば、分子濃度、溶液のイオン強度、温度、結合に与えられる時間、非関連の分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して、規定することができる。
【0051】
特異的結合パートナーの例には、相補的な核酸配列(例えば、相互にハイブリダイズする2つのDNA配列、相互にハイブリダイズする2つのRNA配列、又は相互にハイブリダイズするDNA及びRNAの配列)、抗体と抗原、受容体とリガンド(例えば、TNFとTNFr−1、CD142とVIIa因子、B7−2とCD28、HIV−1とCD4と、ATR/TEM8若しくはCMGと炭疽菌毒素の防御抗原部分)、酵素と基質、又は分子と結合タンパク質(例えば、ビタミンB12と内性因子、葉酸と葉酸結合タンパク質)が含まれる。特異的結合パートナーは、天然に存在する特異的結合パートナーの類似体であることもできる。類似体の例には、HIVの逆転写酵素に結合するヌクレオチドの類似体であるアジドチミジン(AZT)、アミノアシル−tRNAの末端のアミノアシルアデノシンの類似体であるピューロマイシン、及びテトラヒドロ葉酸の類似体であるメトトレキセートが含まれる。他の類似体は、対象の分析物の誘導体であることができる。
【0052】
B.電気化学発光物質
ある実施形態では、本発明は、ECLを用いて試料における対象の分析物の検出をもたらす。ECL部分は、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射の繰り返し放射が引き起こされ得る、あらゆる化合物であることができる。一部の実施形態では、ECL部分は、共反応化合物の存在下で電磁放射の繰り返し放射が引き起こされ得る。一部の実施形態では、ECL部分は、金属が、例えば、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、モリブデン、及びテクネチウムから選択される金属含有有機化合物を含むことができる。本発明の一部の実施形態では、金属はルテニウム又はオスミウムである。金属は、例えば、それだけには限定されない、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、テルビウム、ツリウム、及びイッテルビウムを含む希土類金属から選択することもできる。本発明のいくつかの実施形態では、金属はセリウム、ユーロピウム、テルビウム、又はイッテルビウムである。
【0053】
本発明のある実施形態によると、本発明による金属含有ECL部分は、式M(P)m(L1)n(L2)o(L3)p(L4)q(L5)r(L6)sを有し、式中、Mは金属であり、PはMの多座配位子であり、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6はMの配位子であり、その各々が互いの配位子と同一でも異なってもよく、mは1以上の整数であり、n、o、p、q、r、及びsは、ゼロ以上の整数であり、P、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6はECL部分を誘発して電磁放射を放射する組成物及び番号であり、Mの配位子により提供される結合の総数はMの配位数に等しい。
【0054】
本発明の一部の実施形態では、Mはルテニウムである。本発明の一部の実施形態では、Mはオスミウムである。
【0055】
本発明のある実施形態では、ECL部分は、Mの1つの多座配位子を有する。一部の実施形態では、ECL部分は、1つより多い多座配位子を有する。1つより多いMの多座配位子を含む実施形態では、多座配位子は同一でも異なってもよい。多座配位子は、芳香族及び脂肪族の配位子を含む。適切な芳香族の多座配位子は、芳香族複素環配位子を含み、例えば、ビピリジル、ビピラジル(bipyrazyl)、ターピリジル(terpyridyl)、1,10フェナントロリン、及びポルフィリンなどの含窒素でもよい。
【0056】
適切な多座配位子は、非置換でもよく、当技術分野で知られている多数の置換基のあらゆるものにより置換されていてもよい。適切な置換基には、例えば、アルキル、置換されているアルキル、アリール、置換されているアリール、アラルキル、置換されているアラルキル、カルボキシレート、カルボキサルデヒド、カルボキサミド、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、アミジン、グアニジウム、ウレイド、マレイミド、イオウ含有基、リン含有基、及びN−ヒドロキシスクシンイミドのカルボキシレートエステルが含まれる。
【0057】
更に、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6の少なくとも1つは、多座の芳香族複素環配位子であることができる。更に、これらの多座の芳香族複素環配位子の少なくとも1つは、窒素を含むことができる。適切な多座配位子には、それだけには限定されないが、ビピリジル、ビピラジル、ターピリジル、1,10フェナントロリン、ポルフィリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、置換されている1,10フェナントロリン、又は置換されているポルフィリンが含まれる。これらの置換されている多座配位子は、アルキル、置換されているアルキル、アリール、置換されているアリール、アラルキル、置換されているアラルキル、カルボキシレート、カルボキサルデヒド、カルボキサミド、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノアルボニル(aminoarbonyl)、アミジン、グアニジウム、ウレイド、マレイミド、イオウ含有基、リン含有基、又はN−ヒドロキシスクシンイミドのカルボキシレートエステルで置換されていてもよい。
【0058】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、その各々がビピリジル、ビピラジル、タービリジル、1,10フェナントロリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、又は置換されている1,10フェナントロリンであることができる2つの二座配位子を含むことができる。
【0059】
本発明のある実施形態では、ECL部分は、その各々がビピリジル、ビピラジル、ターピリジル、1,10フェナントロリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、又は置換されている1,10フェナントロリンであることができる3つの二座配位子を含むことができる。ECL部分は、ルテニウムを含むことができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分はルテニウム、2つの二座ビピリジル配位子、及び1つの置換されている二座ビピリジル配位子を含むことができる。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ポルフィリン又は置換されているポルフィリンなどの四座配位子を含むことができる。
【0061】
ECL部分は、1つ又は複数の単座配位子を有することができるが、様々な単座配位子が当技術分野では知られている。適切な単座配位子には、例えば、一酸化炭素、シアン化物、イソシアン化物、ハロゲン化物、並びに、脂肪族、芳香族、及び複素環の、ホスフィン、アミン、スチビン、及びアルシンが含まれる。
【0062】
このECL部分のある実施形態は、ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)、及びトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)を含む。
【0063】
1つ又は複数のMの配位子が、例えば、放射性同位元素、蛍光の構成成分、又は更なる蛍光のルテニウム若しくはオスミウム含有中心などの、更なる化学標識に付着していることは、本発明の範囲内である。
【0064】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス[(4,4’−カルボメトキシ)−2,2’−ビピリジン]2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)プロピル]−1,3−ジオキソランルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’ビピリジン)[4−(ブタン−1−アル)−4’−メチル−2,2’−ビピリジン]ルテニウム(II)である。本発明の更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)[4−(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)−酪酸]ルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、(2,2’−ビピリジン)(シス−ビス(1,2−ジフェニルホスフィノ)エチレネル){2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)プロピル]−1,3−ジオキソラン}オスミウム(II)である。本発明のまた更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ジピリジン)[4−(4’メチル−2,2’−ビピリジン)−ブチルアミン]ルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)[1−ブロモ−4(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)ブタン]ルテニウム(II)である。本発明のまた更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)マレイミドヘキサン酸、4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−ブチルアミドルテニウム(II)である。
【0065】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は金属を含まず、例えば、ルブレン、又は9,10−ジフェニルアントラセンであることができる。
【0066】
一部の実施形態では、ECL部分は、担体に含まれていてもよく、包まれていてもよい。担体に包まれ、又は吸着されているECL分子の数は、ECL分子のサイズ、及び担体のサイズによる。担体は、ECL分子を、1×102〜1×1020、1×102〜1×1015、1×104〜1×1012、1×102〜1×1010、1×106〜1×1010、又は1×106〜1×109個含むことができる。一部の実施形態では、ECL部分は、担体に含まれ、又は包まれ、例えば、共有結合若しくは非共有の相互作用により、担体の表面に結合していることができる。
【0067】
本明細書で用いられる「ECL共反応化合物」は、本発明では、それ自体、又はその電気化学的還元酸化生成物のいずれかによりECL反応系列で役割を果たす化学化合物に関係する。
【0068】
ECL共反応化合物は、しばしばECLを産生するためのより簡単な手段の使用(例えば、2段階の酸化−還元サイクルの半分だけの使用)、及び/又はECL強度の向上を可能にする。一部の実施形態では、共反応化合物は、電気化学的酸化/還元の際に、直接又は更なる反応の際のいずれかに、溶液に強力な酸化種又は還元種を生じる化学化合物であってよい。共反応化合物は、不可逆的に電解還元されて酸化性のSO4・−イオンを形成するペルオキソ二硫酸塩(即ち、S2O82−、過硫酸塩)であってよい。共反応化合物は、不可逆的に電解酸化されて還元性のCO2・−イオンを形成するシュウ酸塩(即ち、C2O42−)であってもよい。還元性物質として働くことができる共反応化合物のクラスは、アミン、又はアミン基を含む化合物であり、例えば、トリ−n−プロピルアミン(即ち、N(CH2CH2CH2)3、TPrA)を含む。一部の実施形態では、四級アミンは二級アミンよりも良好な共反応化合物であることができる。一部の実施形態では、二級アミンは一級アミンよりも良好な共反応化合物であることができる。
【0069】
共反応化合物には、それだけには限定されない、リンコマイシン、クリンダマイシン−2−リン酸、エリスロマイシン、1−メチルピロリドン、ジフェニドール、アトロピン、トラゾドン、ヒドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、レセルピン、トリメチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、フェニラミン、ブロモフェニラミン、クロロフェニラミン、ジフェニルヒドラミン、2−ジメチルアミノピリジン、ピリラミン、2−ベンジルアミノピリジン、ロイシン、バリン、グルタミン酸、フェニルアラニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、チロシン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン、メチオニン、スレオニン、セリン、シクロチアジド、トリクロルメチアジド、1,3−ジアミノプロパン、ピペラジン、クロロチアジド、ヒドラジノタラジン(hydrazinothalazine)、バルビツール酸、過硫酸、ペニシリン、1−ピペリジニルエタノール、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、エチレンジアミン、ベンゼンスルホンアミド、テトラメチルスルホン、エチルアミン、ジ−エチルアミン、トリ−エチルアミン、トリ−イソ−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソ−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソ−ブチルアミン、ビ−イソ−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、硫酸ヒドラジン、グルコース、n−メチルアセトアミド、ホスホノ酢酸、及び/又はそれらの塩が含まれる。
【0070】
共反応化合物には、それだけには限定されないが、N−エチルモルホリン、スパルテイン、トリ−n−ブチルアミン、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1,4−ジアゾビシクロ(2.2.2)オクタン、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、1−エチルピペリジン、ジ−n−プロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,3−ジアミノプロパン;DAB−AM−4、ポリプロピレンイミンテトラアミンデンドリマー;DAB−AM−8、ポリプロピレンイミンオクタアミンデンドリマー;DAB−AM−16、ポリプロピレンイミンヘキサデカアミンデンドリマー;DAB−AM−32、ポリプロピレンイミンドトリアコンタアミンデンドリマー;DAB−AM−64、ポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタアミンデンドリマー;3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、グリシル−グリシン、2−モルホリノエタンスルホン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)タウリン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)水和物、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)二水和物、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(4−ブタンスルホン酸)、及び/又はこれらの塩も含まれる。
【0071】
本発明によるECL測定は、アセトニトリルなどの有機溶剤で、部分的な水系で、又は水系で行うことができる。ECL部分の電気化学的還元に適する電極は、例えば、Pt電極、又はPtとIrとの合金からなる電極であることができる。
【0072】
C.担体
ある実施形態において、本発明は、対象の分析物の検出に用いることができる、第1及び第2の担体を提供する。第1及び第2の担体は、試料の提示、特異的結合パートナーの提示、ECL部分の包み込み又は捕捉、及び対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を組成物の他の構成成分から分離するための手段の提供を含む、いくつかの機能の少なくとも1つを果たすことができる。
【0073】
第1及び第2の担体のいずれかは、ECL部分を含むことができる。ある実施形態では、ECL部分は担体に含まれ得る。ECL部分は担体中に含まれるので、本発明は、例えば、溶剤の性質など、ある一定の条件を変えることにより、ECL部分の担体からの容易な放出をもたらす。ある実施形態、例えば、担体がプラスチックなどの材料から構成されている固体支持体である場合には、ECL部分は担体中に配合されない。一部の実施形態では、ECL部分は担体の表面に共有結合し、担体中に含まれ得る。一部の実施形態では、ECL部分は担体中に含まれ、担体の表面に吸着され得る。第1の担体は、任意選択で、対象の分析物を含む試料から構成され得る。ある実施形態では、試料は第1の担体の表面に結合することができ、したがって、第1の担体を特異的結合パートナーに対し結合可能にする。しかし、ある実施形態では、試料は第1又は第2の担体のいずれにも結合することができない。この実施形態では、試料は溶液中であることができる。
【0074】
ある実施形態では、第1の担体又は第2の担体のいずれかは、対象の分析物の特異的結合パートナーを含むことができる。特異的結合パートナーは、第1の担体の表面に結合することができ、それにより、第1の担体を対象の分析物への結合に対し到達可能にしている。
【0075】
第2の担体を含む本発明の実施形態では、第2の担体は対象の分析物の特異的結合パートナーを含むことができる。特異的結合パートナーは、第2の担体の表面に結合することができ、それにより第2の担体を対象の分析物への結合に対し到達可能にしている。第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を分離するための手段を含むことができる。ある実施形態では、第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を、組成物の他の構成成分から分離する手段を提供することができる。例えば、第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体をマグネットを用いて組成物の他の構成成分から分離できるように磁性であることができる。本発明のある実施形態では、複合体を組成物の他の構成成分から分離するのに用いられるマグネットは、例えば、米国特許第5935779号及び第6325973号に記載されているように、電気化学的エネルギーをシステム中に導入するのに用いることができる電極に隣接して位置させることができる。
【0076】
ある実施形態では、第1及び第2の担体の少なくとも1つは、固体支持体であってよい。一部の実施形態では、第1の担体と第2の担体の両方が固体支持体である。固体支持体は、粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1000マイクロメートルを超えるポリマー)、ナノ粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1〜1000ナノメートルの範囲の長さであるポリマー)、又はミクロ粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1000ナノメートルを超えるが1000マイクロメートル以下であるポリマー)を含むことができる。ある実施形態では、固体支持体は、例えば、球形、立方体、円錐形などの、不規則な形状及び規則的な形状の両方を含む3次元の形状を有することができる。
【0077】
固体支持体は、ビーズ、ゲル、又は膜を含むことができる。膜は、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はカルボキシル化ポリビニリデン(米国特許第6037124号)を含むことができる。膜は、塩化ポリビニルベンジルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルベンゾイルアミノエチルジメチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルトリヘキシルアンモニウムと塩化ポリビニルベンジルトリブチルアンモニウムとの共重合体、塩化ポリビニルベンジルベンジルジメチルアンモニウムと塩化ポリビニルアミノエチルジメチルアンモニウムとの共重合体、及び塩化ポリビニルベンジルフェニルウレイドエチルジメチルアンモニウムと塩化ポリビニルベンジルベンジルジメチルアンモニウムとの共重合体(米国特許第5336596号)でコーティングされていてもよい。固体支持体は、対象の分析物の特異的結合パートナー及び/又は試料に結合していることができ(例えば、ポリスチレン、セファロース、セファデックス)、並びに/或いはECL部分を含み、又は捕捉することができるあらゆる材料を含むことができる。固体支持体は、ポリアクリリック、ビニルポリマー、アクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアシロニトリル(polyacylonitrile)、及びポリオレフィンなどの、あらゆる合成の有機ポリマーを含むことができる。固体支持体は、炭水化物ポリマー、例えば、アガロース、セルロース、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)を含むこともできる。固体支持体は、シリカ、ジルコニア、例えば、カーボン被覆ジルコニア(米国特許第5182016号)、チタニア、セリア、アルミナ、マンガン、マグネシア(即ち、酸化マグネシウム)、酸化カルシウム、細孔性ガラス(CPG)などの無機酸化物を含むことができる。固体支持体は、それだけには限定されないが、デキストラン−アクリルアミドを含む上記に記載した支持体のいくつかの組合せも含むことができる。固体支持体は、特異的結合パートナー及び/又は対象の分析物との非特異的な相互作用を最小にするように調製することができる。
【0078】
第1又は第2の担体の少なくとも1つが固体支持体であるある実施形態では、固体支持体は、水性の環境に不溶であるが、有機の環境、例えば、アセトニトリル、エーテル、クロロホルム、ベンゼンに可溶であることができる。ECL部分が捕捉され、又は別の方法でそのような固体支持体に結びつけられる実施形態では、ECL部分は、有機の環境に固体支持体を置くことにより放出されることができ、その結果、ECL部分の検出を促進する。有機の環境は、有機溶剤70〜100%、80〜100%、90〜99%、99〜99.9%(容積/容積)である溶剤を含むことができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、第1又は第2の担体の少なくとも1つは、融点の範囲が30℃〜60℃であるゲル、例えば低融点アガロースである。これらの実施形態では、ECL部分を含む担体の融点を超えて複合体を加熱することにより、ECL部分を放出し、それにより検出が促進される。
【0080】
ある実施形態では、固体支持体はビーズ、例えばポリスチレンビーズである。第1の担体も第2の担体もビーズである実施形態では、第1の担体は、その中に含まれ、又は捕捉されているECL部分を有することができ、第2の担体は、磁化ビーズであることができる。ECL含有ビーズも磁化ビーズも、直径が0.1μm〜100μm、0.5μm〜50μm、1μm〜20μm、又は0.5μm〜10μmの範囲であることができる。一部の実施形態では、第1の担体の直径は10μmであり、第2の担体の直径は1μmであってよい。一部の実施形態では、第1の担体の直径は10μmであり、第2の担体の直径は2.8μmであることができる。
【0081】
本発明のある実施形態では、担体の少なくとも1つは、液体を含むことができる。液体は、少なくとも1つの両親媒性の分子を含むことができる。両親媒性の分子は、極性の部分も非極性の部分も有し、水性の環境でミセルなどの凝集体を形成することができるものである。したがって、ミセルは、パルミテート又はオレエートなどのあらゆる脂肪酸のイオンから構成され得る。ミセルは、1つ又は複数の非イオン性界面活性剤、例えば、TritonX−100、又はオクチル−β−グルコシドを含むことができる。ミセルは、1つ又は複数のイオン性界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコレート、リゾレシチンを含むことができる。一部の実施形態では、ミセルは、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の両方を含むことができる。
【0082】
したがって、ある実施形態では、第1及び第2の担体の少なくとも1つはミセルであることができる。ミセルでは、対象の分析物がミセルの表面に曝され、したがって、特異的結合パートナーが対象の分析物と接触できるように試料に結合することができる。ECL部分は、ミセルの内部中に含まれ得る。従って、例えば、撹拌若しくは超音波処理、又は酸化若しくは還元により、ミセルを破壊することで、ECLを放出し、対象の分析物の検出を促進する手段が提供されるであろう。
【0083】
ある実施形態では、担体はリポソームであることができる。リポソームは、リン脂質を水和した際に形成する微小な球状の粒子である。リン脂質を、低いせん断条件下、水中で混合すると、リン脂質はそれ自体をシート状に配列し、分子は「頭」を上に「尻尾」を下にした配向のように並んで整列する。次いで、これらのシートは、尻尾同士で結びついて、中心が水性で表面がリン脂質の、2重層膜を形成する。リポソームは、均一のサイズ、例えば直径200nmを有することができる。リポソームは、界面活性剤又は他の乳化剤を使用しないで、水溶性の物質と水不溶性の物質とを、配合物で一緒に用いることを可能にしている。水溶性の材料を、リン脂質が水和している水に溶解し、リポソームが形成するとこれらの材料が水性の中心に捕捉される。リポソーム壁はリン脂質の膜であり、油などの脂溶性の材料を保持している。リポソームは、安定化した天然リン脂質の混合物、合成の同一鎖のリン脂質、糖脂質含有リポソーム、2極性の脂肪酸、x−結合した、リポタンパク質コーティングした、又は炭水化物コーティングしたメチル/メチレンから構成され得る。試料を、リポソームの表面上に提示して、特異的結合パートナー又は試料の結合を促進することができる。リポソームは、その中に(即ち、水性の中心に、又は周囲の脂質に)ECL部分を含むことができる。例えば、米国特許第6706861号を参照されたい。
【0084】
D.試料又は特異的結合パートナーを担体に連結する方法
対象の分析物又は特異的結合パートナーを含む試料を、当技術分野では知られている手段により担体に連結することができる。例えば、タンパク質及び核酸には、架橋試薬を用いることができる(Lundら、1988年、Nucleic Acids Res.、16巻、10861頁)。同様に、核酸及びタンパク質の両者には、光反応性の架橋試薬が用いられている(Penchovskyら、2000年、Nucleic Acids Res.、28巻(22)、98頁;Harrisonら、1989年、Biochemistry、28巻、6023頁)。好適な手段の選択は、試料の性質、及び担体の性質による。結合は、例えば、共有結合、非共有の相互作用、例えば、静電気相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又は水素結合によることができる。試料を担体に結合する方法の選択は、当業者の通常の技能の範囲内にある。
【0085】
ある実施形態では、配位子は、配位子上の特別な官能基(例えば、一級アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、アルデヒド)と担体上の反応基との間に共有化学結合を形成することにより、担体に固定、又は直接「連結」する。
【0086】
それだけには限定されないが、リンカーとしてアビジン又はストレプトアビジンと共にビオチンを用いることを含む、他の結合方法も可能である。リンカーとして、ビオチン/アビジン ストレプトアビジンを用いる方法は、当技術分野では知られている(Wilchek及びBayer編集、Methods in Enzymology、184巻、Academic Press、San Diego、1990年を参照されたい)。ある実施形態では、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてビオチンのNHSエステルを形成することができる。ビオチン残基を、それだけには限定されないが、リシン残基上の一級アミン、グルタミン酸残基若しくはアスパラギン酸残基上のカルボキシル部分、又はシステイン残基上のスルフヒドリル部分を含む様々な官能基に連結することができる。アビジンを、臭化シアン(CNBr)で担体を活性化した後、リジン上のアミノ基を介して担体に共有結合することができる。
【0087】
ある実施形態では、試料又は結合パートナーは、担体の表面上に吸着されているにすぎないことがある。例えば、抗体は、ポリスチレンミクロスフェアの表面に吸着されていることがある。タンパク質が担体の表面に吸着しているのが望まれる実施形態では、最大の表面被覆面積(単層まで)を得るために、溶液のpHを、タンパク質の等電点に、又はそれよりもわずかに塩基性に調節することができる。希釈したミクロスフェア懸濁液(固体約1%)を用いると、確実に単一ミクロスフェアがコーティングされる。最終タンパク質濃度約0.1mg/mlはタンパク質の単層を実現するのに通常十分であるが、その量の約3から約10倍を添加することにより、好ましい化学量論、及び良好な結合のための推進力を確実にする。
【0088】
担体の表面を修飾して、試料又は特異的結合パートナーの共有結合を促進することができる。表面が修飾されたポリマーミクロスフェアは、アクリル酸などの機能性モノマーの少量(約5%未満)でスチレンを共重合することにより作成されることが多く、これにより−COOH基で覆われたミクロスフェアが得られる。他のモノマーを用いて、表面の化学的性質が異なる微粒子を調製することができ、例えば、米国特許第5599889号を参照されたい。
【0089】
シリカミクロスフェアの表面上の天然のシラノール基は、水性の、又は溶剤ベースのシラン結合性物質と反応して、様々な表面官能基を有する、予め活性化されたシリカミクロスフェアを生じることができる。例として、クロロメチル、カルボキシル、及びアミノ基が含まれる。DNA及びRNAは、カオトロピック剤の存在下でシリカ上に吸着することができる。オリゴヌクレオチドは、表面を修飾されたシリカにその5’−アミノ末端を介して共有結合することができる。Boomら、1990年、J.Clin.Microbiol.、28巻、495頁に記載されているように、脂質は、脂肪酸鎖上のカルボキシル基、及びシリカ上のプロピルアミン表面基により結合することができる。
【0090】
対象の分析物、又は特異的結合パートナーは、ミセル中に組み込まれることができ、例えば、Savicら、2003年、Science、300巻、615頁;Maysingerら、2001年、Biochim.Biophys.Acta.、1539巻(3)、205頁を参照されたい。タンパク質の、界面活性剤ミセル中への可溶化及び再構成は、例えば、6M塩酸グアニジン(Gdn・HCl)のタンパク質溶液を過剰のリフォールディングバッファー(例えば、3%ジヘキサノイルホスファチジルコリン 20mM Tris−HCl/5mM EDTA/0.6M L−アルギニン、pH8.5)にゆっくりと希釈することにより、行うことができる。残余のGdn−HClを除去した後、例えば、透析により、溶液を、限外ろ過を含む様々な技術により濃縮することができる。例えば、Fernandezら、2001年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98巻、2358頁を参照されたい。
【0091】
対象の分析物、又は特異的結合パートナーを、リポソーム中に組み入れることができる。タンパク質をリポソーム中に組み入れる多くの方法が知られている(例えば、Rigaudら、Liposomes as Tools in Basic Research and Industry、71〜88頁、Liposomes as Tools for the Reconstitution of Biological Systems、Philippot,J.R.及びSchuber編集、CRC Press、フロリダ州、Boca Raton(1995年)を参照されたい)。一例として、超音波処理器又はフレンチプレスなどの機械的手段を用いて、過剰のバッファーでリン脂質のフィルムを膨張させ、乾燥させることにより単層の粒子を生成することができる(Lelkesら、1985年、J.Biol.Chem.、260巻、1796頁)。或いは、低濃度のコール酸塩又はリゾレシチンの触媒により、タンパク質を、予め形成されたリポソーム中に、自発的に組み入れることができる(Wrigglesworthら、1987年、Biochem J.、246巻(3)、737頁)。タンパク質は、また、リン脂質及び界面活性剤の存在下で、ともに可溶化されてミセルを形成することができ、その後、引き続き界面活性剤を除去する。大型のリポソームは、逆相の蒸発により調製し、様々な量のTritonX−100、オクチルグルコシド、又はコール酸ナトリウムなどの界面活性剤で処理することができる。可溶化プロセスの各ステップで、タンパク質を加えることができる。タンパク質−リン脂質界面活性剤混合物を、次いで、SM2 Bio−Beads処理に供して、界面活性剤を除去することができる(Rigaudら、1988年、Biochemistry、27巻(8)、2677頁)。溶液中の膜タンパク質を準備し、予め形成したリポソームの溶液を準備し、混合物をインキュベートすることにより、膜タンパク質をリポソーム中に組み入れることができる。予め形成したリポソームの溶液を提供するステップの前に、リン脂質の混合物を、少なくとも1タイプの不飽和脂肪酸の溶液と組み合わせることによりリポソームを形成する(米国特許第6706861号)。当業者であれば、試料を担体に連結する、多くの更なる方法が存在することを理解するであろう。
【0092】
E.ECL部分を担体に装填する方法
ある実施形態では、ECL部分は担体の表面に連結することができる。試料を担体に連結することに関して上記に記載した方法を、同様に、ECL部分を担体に連結するのに用いることができる。担体が固体支持体、例えばビーズである場合は、ECL部分は、例えば、共有結合、非共有の相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又は水素結合により、担体の表面に結合することができる。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は有機溶剤に可溶であるが、水性溶剤に不溶である。ECL部分を有機溶剤に溶解し、次いで、多数の担体粒子、例えば、ポリスチレンなどの疎水性材料で構成されているビーズと混合することができる。ECL部分を含んでいる有機溶剤は、担体の孔を浸透し、有機溶剤が蒸発する際に、ECL部分は担体の内部に捕捉され、又は包まれるようになる。ビーズが水性溶剤に溶媒和する場合は、殆ど又は全てのECL部分は、担体中に包まれたままである。ある実施形態では、担体はポリスチレンビーズである。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でゲルを形成することにより、ECL部分をゲル中に組み入れることができる。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でミセルを形成することにより、ECL部分をミセル中に組み入れることができる。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でリポソームを形成することにより、ECL部分をリポソーム中に組み入れることができる。
【0094】
一部の実施形態では、ECL部分を、周囲の媒体への実質的な損失なしに、担体の内側に捕捉させることができる。ECL部分の周囲の液相への損失は、調製中及び使用中に望まれないことがある。ECL部分を捕捉する担体の能力は、分配係数と呼ばれる重要な物理的定数により本質的に表すことができる。分配係数は、K=C担体/C液体であり、この場合C担体は、担体で吸収された部分の濃度であり、C液体は、吸収されない部分の濃度である。
【0095】
2相の系(担体と液体と)では、分配係数が1を超える部分は、担体相を優先することを示している。分配係数の値が高いということは、担体相を強く優先することを示している。それとは反対に、分配係数が1未満である部分は液相を優先する。初期に担体中に高レベルのECL部分のあった分配係数の低い系は、周囲の液相に部分を失うであろう。
【0096】
一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約2を超える。一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約10を超える。一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約100を超える。高い分配係数を実現するために、いくつかの化学的及び物理的デザインが存在する。(1)部分が担体にクーロン引力により保持され得る。このような場合には、ECL部分は正味の正の電荷を有し、担体は正味の負の電荷を有する。(2)一部の実施形態では、ECL部分の可溶性は、担体相においてずっと大きいことがある。例えば、ECL部分は水に可溶ではなく、親油性のポリスチレンの担体に可溶である。(3)一部の実施形態では、顕微鏡的で見た担体の多孔性は部分の直径よりも小さいので、ECL部分は担体中に捕捉されることができる。(4)一部の実施形態では、部分は共有結合により担体に結合され得る。
【0097】
F.対象の分析物を検出する方法
本発明は、試料中に含まれている対象の分析物を検出する様々な方法を提供する。本発明の一部の実施形態では、対象の分析物は、第1の担体などの担体に連結することができる。対象の分析物は担体の表面上に存在し、したがって特異的結合パートナーへのその接近を促進する。一部の実施形態では、対象の分析物は、いかなる担体とも連結することができない。一部の実施形態では、対象の分析物は溶液に存在することができる。
【0098】
本発明の方法は、対象の分析物に特異的に結合することができる少なくとも1つの特異的結合パートナーを提供する。一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0099】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、対象の分子に特異的に結合することができる結合タンパク質であることができる。結合パートナーは担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0100】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、対象の分析物に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチド又は核酸であることができる。結合パートナーは、担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0101】
一部の実施形態では、本発明は、2つの特異的結合パートナー、即ち、そのどちらも対象の分析物に特異的に結合する第1及び第2の特異的結合パートナーを提供する。2つの特異的結合パートナーは、どちらも担体に連結することができる。したがって、ある実施形態では、第1の特異的結合パートナーは第1の担体に連結することができ、第2の特異的結合パートナーは第2の担体に連結することができる。この実施形態では、試料はいかなる担体にも連結することができない。同一の特異的結合パートナーが第1の担体にも第2の担体にも連結することができることも企図される。一部の実施形態では、対象の分析物に特異的に結合しているポリクローナル抗体は、第1の担体にも第2の担体にも連結することができる。一部の実施形態では、対象の分析物は、モノクローナル抗体が認識するエピトープの複数のコピー(Multiple copies)を含むことがあり、又は、分析物が核酸である場合には、第1の担体にも第2の担体にも連結するプローブが認識する配列の複数の反復を含むことがある。ある実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、抗体とすることができる。特異的結合パートナーは両者とも抗体とすることも企図される。本発明は、1つの特異的結合パートナーが抗体であり、第2の特異的結合パートナーが特異的結合タンパク質である実施形態も包含する。
【0102】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、試料における対象の分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとすることができる。抗体と同様に、特異的結合パートナーを両者とも、試料における対象の分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又は他の核酸とすることが企図される。
【0103】
ECL部分は、例えば、紫外吸収、赤外吸収、及び蛍光発光などの、発光及び吸光の分光光度法;原子吸光、アノーディックストリッピングボルタメトリーなどの電気化学的方法;中性子放射化、及び化学的方法を含めた、当技術分野ではよく知られている方法により検出することができる。ある実施形態では、光ルミネセンス、化学ルミネセンス、及び電気化学ルミネセンスの方法を用いる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して電磁放射を放射させ、放射された電磁線を検出することにより、化学的部分の存在を検出することができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して、試薬の混合物を電磁的、化学的、又は電気化学的エネルギーに曝すことにより電磁放射を放射させることができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して、試薬の混合物を化学的又は電気化学的エネルギーに曝すことにより、電磁放射を放射させることができる。ある実施形態では、ECL部分を検出する助けに、共反応化合物、例えばTPrAを加える。
【0104】
発光技術を用いて、非常に低濃度のRu(bpy)32+を測定することができる。酸化還元法を用いると、5×10−8Mの濃度のRu(bpy)32+を検出することが可能である。シュウ酸ナトリウム(1mM)のリン酸バッファー溶液pH5.0を0から+1.4ボルトのパルスのポテンシャル対5から10秒の間隔の飽和カロメル基準電極とともに用いることができる。18mM Na2S2O8及び0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのCH3CN:H2O(1:1v/v)溶液を用いると、10−13Mほどに低い濃度のRu(bpy)32を検出することができる(例えば、米国特許第6140138号、第5731089号、第5714089号を参照されたい)。
【0105】
本発明は、
(a)式
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、Bは、Aと関連している(対象の分析物の特異的結合パートナーに連結する)第1の担体であり、Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、Bは対象の分析物の結合パートナーにより対象の分析物に連結し、Dは対象の分析物に直接連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーを介して対象の分析物に連結する第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]を有する複合体を形成するステップと、
(b)(a)で形成された複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、対象の分析物を検出するためのアッセイにおいて、ECL部分を使用するための方法も提供する。
【0106】
ある実施形態では、本発明の方法は、競合的結合アッセイ、例えば、競合的阻害アッセイであることができる(例えば、Janewayら、Immunobiology、Gerland Publishing、New York、2001年を参照されたい)。このアッセイの一部の実施形態では、既知量の対象の分析物又は対象の分析物の類似体を、ECL部分を含まない担体、例えば磁性ビーズと連結することができる(「連結する」は、共有結合も非共有結合も含む)。対象の分析物に対する結合パートナーは、第2の担体、例えば、ECL部分を含まないポリスチレンビーズと連結することができる。追加した対象の分析物の非存在下では、第1の担体に連結する対象の分析物と、第2の担体に連結する対象の分析物に対する結合パートナーとの間に複合体が形成され、第1の担体を第2の担体に効果的に連結する。この複合体に関連しているECL部分の量を、当技術分野では周知の技術により測定することができる。次いで、第2の担体が連結する結合パートナーに対する結合について、担体が連結した対象の分子と競合させることにより、試料における対象の分析物の存在を、形成される複合体の量を減少させるその能力により検出することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量を、既知量の対象の分子を含む試料を用いて、検量線と比べて定量することができる。
【0107】
一部の実施形態では、本発明は、対象の分析物を検出するための、サンドイッチ型の結合アッセイを提供する。本アッセイの一部の実施形態では、対象の分析物の第1の結合パートナーは、第1の担体、例えば磁性ビーズに連結することができる。対象の分析物の第2の結合パートナーは、第2の担体、例えばECL部分を含むことができるポリスチレンビーズに連結することができる。対象の分析物を含む試料の存在下では、第1の担体も第2の担体も含む複合体を形成することができる。この複合体と関連するECL部分の量は、試料における対象の生物学的材料の量と比例し、当技術分野で知られている技術により測定することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量は、既知量の対象の分子を含む試料を用いて検量線で比べて定量することができる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための直接結合方法を提供する。本方法の一部の実施形態では、試料における分子は、第1の担体、例えば磁性ビーズに連結することができる。対象の分析物の結合パートナーは、第2の担体、例えばECL部分を含むことができるポリスチレンビーズに連結することができる。試料が対象の分析物を含む場合は、第1の担体も第2の担体も含む複合体を形成することができる。この複合体と関連するECL部分の量は、試料における対象の生物学的材料の量と比例し、当技術分野では知られている技術により測定することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量は、既知量の対象の分子を含む試料を用いて検量線で比べて定量することができる。
【0109】
これらのタイプの結合アッセイに対する多くの変形は、当業者には知られており、本発明の方法と互換性がある。
【0110】
存在するECL部分の量を定量するための方法は多く存在する。システムへのエネルギー投入量の割合により、ECL部分の測定をもたらすことができる。適切な測定には、例えば、ECL部分が電気化学的に励起された場合の電流の測定、ECL部分が化学的に励起された場合の還元剤又は酸化剤の利用の割合、又は光ルミネセンス技術における電磁エネルギーの吸収の測定が含まれる。ECL部分は、放射された電磁放射を測定することにより検出することもできる。これらの測定は全て、継続的な、レートベースの(rate−based)測定として、又は長時間にわたりシグナルを蓄積する累加法として行うことができる。レートベースの測定は、光電子増倍管、フォトダイオード、又は入射光強度に対する大きさに比例する電流を生成するフォトトランジスターを用いて行うことができる。累加法は、レートベースのデータの積分、又は蓄積性のデータを直接提供する写真フィルムの使用を伴うことがある。
【0111】
本発明は、対象の分析物、少なくとも1つの担体、及びECL部分を含む複合体の単離も提供する。一部の実施形態では、例えば、少なくとも1つの担体が磁性ビーズである場合は、磁場を用いて複合体を分離することができる。一部の実施形態では、複合体の分離は、沈殿により、例えば、複合体の質量が個々の構成成分の質量を超える場合には重力の力により実現することができる。一部の実施形態では、フィルターを用いて、複合体を組成物の他の構成成分から分離することができる。フィルターは、例えば、複合体を保持するのに十分小さいが、非複合の材料を通過させるのに十分大きい孔のサイズを有する。一部の実施形態では、サイズ排除カラムを用いて、複合体を分離することができる。複合体を、組成物の他の構成成分から区別する他の性質、例えば、疎水性、又は他の結合パートナーに対する親和性も用いることができる。
【0112】
G.疾患及び病状
ある実施形態では、対象の分析物は、疾患又は病状に関連するマーカーであることができる。本発明は、したがって、疾患又は病状に関連するマーカーを検出し、それにより、疾患又は病状を有する対象を診断する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、疾患又は病状に関連するマーカーの存在又は量をモニターすることにより、疾患又は病状の進行をモニターする方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は疾患又は病状に関連するマーカーの存在又は量をモニターすることにより疾患又は病状を処置するのに用いられる治療法の有効性をモニターするための方法を提供する。
【0113】
疾患又は病状には、感染性物質(例えば、細菌、真菌、寄生体、ウィルス、又はプリオン)により引き起こされる感染性疾患が含まれ得る。細菌の病原体の例には、炭疽菌(B.anthracis)、大腸菌(E.coli)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・ボビス(S.bovis)、B群溶血レンサ球菌(S.agalactiae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、結核菌(M.tuberculosis)が含まれる。ウィルス感染の例には、天然痘、重症急性呼吸器症候群(SARS)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、エプスタイン・バーウィルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、ライノウィルス、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)、麻疹、ポリオ、単純ヘルペスウィルス1型(HSV−1)、及び単純ヘルペスウィルス2型(HSV−2)が含まれる。寄生体の例には、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malaria)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)が含まれる。
【0114】
疾患は、癌、又は自己免疫疾患であってもよい。対象の分析物であることができる様々な癌に関連するマーカーには、メラノーマの変異体サイクリン依存性キナーゼ4、メラノーマのp17タンパク質、メラノーマのgp100、メラノーマのメラノーマ関連抗原1(MART−1)(Melan−A)(PCT公開WO第94/21126号)、メラノーマのp15タンパク質、メラノーマのチロシナーゼ(PCT公開WO第94/14459号)、メラノーマのメラノーマ関連抗原(MAGE)1、2、及び3、甲状腺髄様、小細胞肺癌、結腸及び/又は気管支の扁平上皮細胞癌(PCT/US第92/04354号)、メラノーマ関連抗原−Xp(MAGE−Xp)(米国特許第5587289号)、膀胱、メラノーマ、乳房、及び扁平上皮細胞の癌腫のBメラノーマ抗原(BAGE)(米国特許第5571711号及びPCT公開第WO95/00159号)、G抗原(GAGE)(米国特許第5610013号及びPCT公開第WO95/03422号)、腎臓腫抗原(RAGE)ファミリー(米国特許第5939526号)、メラノーマで優先的に発現される抗原(PRAME)(以前のDAGE、PCT公開第WO96/10577号)、メラノーマユビキトス変異タンパク質(melanoma ubiquitous mutated protein)(MUM−1/LB−33B)(米国特許第5589334号)、神経芽細胞腫増幅タンパク質(NAG)(米国特許第5821122号)、FB5(エンドシアリン(endosialin))(米国特許第6217868号)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)(米国特許第5935818号)、メラノーマのgp75、メラノーマの癌胎児性抗原、乳房、膵臓、及び卵巣癌のムチンなどの炭水化物/脂質、メラノーマのGM2及びGD2ガングリオシド、癌腫の変異型p53などの癌遺伝子、結腸癌の変異型ras、赤芽球性白血病ウィルス性癌遺伝子ホモログ2(HER2/neu)、乳癌のプロトオンコジーン、並びに子宮頸及び食道の扁平上皮細胞癌のヒトパローマウィルスタンパク質などのウィルス生成物が含まれる。自己免疫疾患に関連するマーカーには、全身性エリテマトーデスに関連するクロマチンに特異的に結合する抗体、ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子DR2(多発性硬化症に関連する)の存在、DR3(グレーブス病に関連する)又はリウマチ性関節炎に関連するDR4(Janewayら、Immunobiology、Garland Publishing、New York、2001年)が含まれる。
【0115】
H.キット
ある実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するためのキットを提供する。キットは、少なくとも1つのECL部分を含む第1の担体と、第2の担体と、第1及び第2の担体の少なくとも1つに連結する対象の分析物の特異的結合パートナーの少なくとも1つと、少なくとも1つの容器と、場合により指示書とを含むことができる。ある実施形態では、キットは2つ又はそれを超えるECL部分を含むことができる。
【実施例】
【0116】
化学物質及び材料:
Aldrich(ウィスコンシン州、Milwaukee)より入手した、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)二塩化物六水和物(Ru(bpy)3Cl2・6H2O)、トリフルオロ酢酸(TFAA、99%)、テトラフルオロホウ素銀(AgBF4、98%)、及びトリ−n−プロピルアミン(TPrA、99+%);Boulder Scientific社(コロラド州、Mead)より入手した、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(Li[(B(C6F5)4)]nEt2O、n=2〜3);Fluka(ウィスコンシン州、Milwaukee)から入手した、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート((TBA)BF4、電気化学グレード);Life Technologies(メリーランド州、Rockville)から入手した、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris、超高純度);Sigma(ミズーリ州、St.Louis)より入手した、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC、SigmaUltra)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、フルオレセインビオチン(90%)、1−メチルイミダゾール、及びDNAハイブリダイゼーションバッファー(PerfectHyb(登録商標)プラス);EM(ニュージャージー州、Gibbstown)より入手した、水酸化ナトリウム(GR)、塩酸(GR)、塩化ナトリウム(GR)、エチルエーテル(無水)、アセトニトリル(HPLC)、テトラヒドロフラン(THF、GR)、及びエチレンジニトリロテトラ酢酸(EDTA)、Pierce(イリノイ州、Rockford)より入手した、アビジン(NeutrAvidin)、D−ビオチン(Immunopure(登録商標))、及びビオチン−PEO−LC−アミン;並びにFisher(ニュージャージー州、Fairlawn)より入手した、メタノール(分光分析用グレード)は、別段の記載がなければ更に精製しないで使用した。ポリスチレンカルボキシレート微粒子/ビーズ(PSB、直径10μm、ビーズ6.5×104個/μLの2.6%(w/w)水性懸濁液)、及びストレプトアビジンコーティングした超常磁性ポリスチレンビーズ(磁性ビーズ又はMBと呼ぶ、(a)直径1.0μm、約9.5×106ビーズ/μLで10mg/mLの水性懸濁液、(b)直径2.8μm、約6.5×105ビーズ/μLで10mg/mLの水性懸濁液)を、それぞれPolySciences社(ペンシルベニア州、Warington)及びDynalBiotech社(ニューヨーク州、Lake Success)から購入した。炭疽菌(Bacillus anthacis)(Ba813)に由来する合成の23−mer1本鎖DNA(ssDNA)オリゴヌクレオチドは、Qiagen Operon(カリフォルニア州、Alameda)から入手し、以下の配列を有しており、:(a)プローブ、5’−[ビオチン−TEG]−AACGA TAGCT CCTAC ATTTG GAG−3’(p−ss−DNA、M.W.=7617g/mol;配列番号:1);(b)標的又は相補的、5’−[ビオチン−TEG]−CTCCA AATGT AGGAG CTATC GTT−3’(t−ssDNA、M.W.=7608g/mol;配列番号:2);(c)非相補的、5’−[ビオチン−TEG]−TTAAC ACCTT AGCGA CGGCT AGT−3’(nc−ssDNA、M.W.=7593g/mol;配列番号:3)、及び(d)2塩基対ミスマッチのオリゴマー配列、5’−[ビオチン−TEG]−CTCCA AACGT AGGAG TTATC GTT−3’(2−bp−m−ssDNA;配列番号:4)、この場合、ビオチンTEGはトリエチレングリコールをベースにした16原子混合の極性スペーサーを含み、ビオチン化したDNAと、表面を制限されたアビジン/ストレプトアビジン相互作用との間の立体障害を減少させるために用いられた。別段の記載がなければ、溶液は全て、18MΩ−cm脱イオン化Mill−Q水(Millipore Corp.、マサチューセッツ州、Bedford)で新たに調製した。
【0117】
ECL及び電気化学的測定
直径2.2mmのPtディスク、作用電極として直径2.0mmのAu又は直径3.0mmのグラッシーカーボン(GC)ディスク、対電極としてPtワイヤー、及び基準電極としてAg/Ag+(10mM AgBF4及び50mM TBABF4のMeCN溶液)の、3電極セルシステムを用いた。各実験の前に、電極は全て慎重に清浄にした。清浄ステップには、作用電極をコーミック(chomic)酸溶液中に浸すステップと、0.05μmアルミナスラリー(Buehler Ltd.、イリノイ州、Lake Bluff)で磨くステップと、大量の水で洗浄するステップと、MeCNですすぐステップと、多孔性のVycorチップとガラスチューブとを基準電極に置き換えるステップが含まれる。5mLの使い捨てのガラスバイアルを、電気化学的セルとした。ECLシグナルがRu(bpy)32+の汚染されたシステムから生成される可能性を除外するために、必要に応じて真新しいガラス器具及び電極を用いた。サイクリックボルタモグラム(CV)とともにECL強度を、電気化学的セルの下に設置した光電子増倍管(PMT、HamamatsuR4220p、日本)と組み合わせた自家製のポテンシオスタットで同時に測定した。高電圧供給電力(Bertan High Voltage Corp.、Series225、ニューヨーク州、Hicksville)で、PMTに750Vの電圧を供給した。
【0118】
別段の記載がなければ、測定は全て、20±2℃の温度で行った。
【0119】
(実施例1)
Ru(bpy)32+含有ECL標識の合成
本試験では、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2)をECL標識として用いた、というのは、次項で示すように、この複合体は適切な有機溶液を用いてポリスチレンビーズ中に効果的に充填することができ、水性溶液におけるビーズの一連の修飾の間中ビーズ中の捕捉を維持することができるからである。換言すれば、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2は、有機溶剤に十分可溶であるが、水性溶液には完全に不溶である。ECL標識としてRu(bpy)3[B(C6F5)4]2を選択した別の理由は、複合体のRu(bpy)32+部分のECL効率は非常に高いという事実であった。Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2は、水中でRu(bpy)3Cl2とLi[B(C6F5)4]nEt2O(n=2〜3)との間のメタセシス反応により調製される。沈殿物を水で洗浄し、アセトニトリル/水溶液から再結晶し、真空下で乾燥させる。
【0120】
(実施例2)
共反応化合物としてTPrAを用いた、MeCNにおけるRu(bpy)32+の電気化学的及びECLの挙動
0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の、0.10M(TBA)BF4電解質−0.10M TPrA共反応化合物含有MeCN溶液の、Pt電極での、スキャン速度50mV/sでのサイクリックボルタンメトリー及びECLの応答を、図4に示す。TPrAは、約0.5VvsAg/Ag+のポテンシャルで酸化し始め、約0.75VvsAg/Ag+で最大の酸化のピークを示す(図4a)。電極が、Ru(bpy)32+がRu(bpy)33+に酸化される1.1VvsAg/Ag+よりも陽性のポテンシャルをスキャンされる場合に(図4c)、ECLが生成される(図4b)。ECL強度は、ポテンシャルの上昇とともに継続的に上昇し、最終的に、約700mVの半波長幅の幅広いピーク及び約1.6VvsAg/Ag+のピークポテンシャルを形成する。リバーススキャンの際は、より大きいECL強度、及び同様のピーク位置が観察される。ECLのピークポテンシャルは、TPrAの非存在下でのRu(bpy)32+の酸化ポテンシャルと比べるとよりポジティブであるので、Ru(bpy)32+の酸化ポテンシャルは、TPrAの存在下でポジティブにわずかにシフトすることができることを留意されたい(図4b及びc)。予想通り、Ru(bpy)32+複合体の対イオンにおける変化、例えば、B(C6F5)4−からClO4−への変化は、ECLの挙動を変化させなかった。aμMレベルのRu(bpy)32+を用いた場合にTPrA・+とRu(bpy)3+との反応時の励起状態のRu(bpy)32+・の形成により(Ru(bpy)32+とTPrA・との反応により形成された)TPrA酸化のポテンシャル領域に前値波のECLが現れる水溶液の場合とは対照的に(Miao、Choi、及びBard、2002年、J.Am.Chem.Soc.、124巻、14478頁)、顕著な対応するECLシグナルはMeCNにおいては見られなかった。これが示唆するのは、本実験条件下では、MeCNにおけるTPrA・+の寿命は中性の水溶液におけるよりも短く、又はTPrA・+は、Ru(bpy)3+をRu(bpy)32+*に酸化するほどエネルギー的に十分強力ではないということのいずれかである。これとは別に、我々の結論は、共反応化合物としてTPrAを用いて水溶液で展開したECLのメカニズムは、MeCNにおいて効果があるということである。
【0121】
TPrAの濃度の関数としてのECL強度を図5aに示すが、この場合ECL強度の最も高い領域は、TPrA濃度30mMに対応する。予測されるように、水性溶液におけるECL−pH依存性の試験に基づいて(Lelandら、1990年、J.Electrochem.Soc.、137巻、3127頁)、トリフルオロ酢酸(TFAA)をRu(bpy)32+/TPrA/MeCN溶液中に添加すると、溶液の酸度が変化するので、ECL強度が変化する(図5b)。100mM TPrAを55mM TFAAと組み合わせると、最大のECL応答が得られた。
【0122】
用いた電極の材料によっても、ECL強度及び安定性も影響を受けた。Pt及びAu電極は、同様の応答を示し、ECLはいくつかのポテンシャルサイクル(potential cycles)にわたり安定で、Au電極に比べると、Pt電極では見られた光電流密度はわずかに小さかった。しかし、GC電極では、第1のポテンシャルサイクルのフォワードスキャンのみが光を生成した。GC電極を磨いた後で、光は再び発生し、このことは電極の表面が何かの種類のフィルムにより阻止されていたことを示唆していた。0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2−0.10μM TprA−0.055M TFAA−0.1M(TBA)BF4を含むMeCNから、スキャン速度50mV/sで0と3.0VvsAg/Ag+の間の第1ポテンシャルサイクルの間中、Au、Pt、及びGC電極で得られた相対的ECL強度の比率は、100:93:61であった。
【0123】
興味深いことに、Ru(bpy)32+が非存在であっても、0.10M(TBA)BF4を含むTPrAのアセトニトリル溶液も、ECLシグナルを生成することができる(図6a)。蒸留によるTPrA及びMeCNの精製、(TBA)BF4から(TBA)ClO4への電解質の変更、又は新たに開封した電気化学グレードの電極の使用、真新しいガラス器具及び電極の使用、並びにPt対電極を黒色プラスチックの層のコーティング又はそれなしのガラスチューブでの被覆では、結果は変わらなかった。ECLのピークポテンシャル値は、2.1VvsAg/Ag+であり、0.10μM Ru(bpy)32+の存在下で得られた値に比べると500mVのシフトである(図4b)。先に図5aで示したように、TPrAの非存在下では、0.10M(TBA)BF4を含むTRu(bpy)32+のMeCN溶液は、ポジティブのポテンシャルのみに対してのスキャンでは同じ強度スケールに対して観察可能なECL応答は得られなかった。したがって、図6aに示すECLシグナルは、TPrAを起源とするに違いなく、おそらくはTPrA・のフリーラジカルに関連する電荷移行反応逆光電子放出(CTRIP)によるものである(Murakoshiら、1992年、J.Phys.Chem.、96巻、4593頁;Uosakiら、1991年、J.Phys.Chem.、95巻、779頁;Uosakiら、1990年、Chem.Lett.、7巻、1159頁:Mclntyreら、1987年、J.Electroanal.Chem.Interfac.Electrochem.、228巻、293頁;Mclntyreら、1986年、Rev.Lett.、56巻、651頁;Mclntyreら、1985年、J.Electroanal.Chem.Interfac.Electrochem.、196巻、199頁;Murakoshiら、1993年、Conden Mar Mater.Phys.、47巻、2278頁;Ouyang及びBard、1988年、J.Phys.Chem.、92巻、5201頁;Ouyang及びBard、1987年、J.Phys.Chem.、91巻、4058頁)。図6aから得られた、積分したECL強度は、図4bから得られたものの約12%であり、TPrAの非存在下で0.10M(TBA)BF4/MeCN溶液から測定した残余の光電流は有意に少ないので、意義深いものである(図6d)。バックグラウンドのTPrA関連のECLシグナルは、TFAAを溶液に加えることにより劇的に抑制され(図6b)、「不要な」シグナルの更なる消失は、1%(v/v)H2Oの0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液中への添加により実現した(図6c)。図6eは、図6aからdまでから得られた相対的なECL強度を示している。
【0124】
(実施例3)
ECL標識のポリスチレンビーズ中への充填
直径10μmのポリスチレンカルボキシレートビーズをEppendorf5415D遠心機(Brinkmann Instruments,Inc、ニューヨーク州、Westbury)10krpm5分間で、好適な容積(0.10〜1.0mL)の2.6%(w/w)ポリスチレンビーズ懸濁液から分離し、次いで、水1mLで1回洗浄した。
【0125】
ビーズを、60℃の真空下で1時間乾燥し、その後1.5mLのECL標識Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2−飽和(0.7mM)5%THF−95%MeOH(v/v)溶液を、PSBを含む2mLの微小遠心管中に加えた。混合物を、Dynalサンプルミキサー(Dynal Biotech Inc.)で20rpmで2時間回転させ、その後遠心分離し、50%MeOH−50%H2O(v/v)で2回洗浄した。得られた、Ru(II)⊂PSBと呼ばれる、ECL標識含有の黄色がかったポリスチレンビーズを、60℃の真空下で1時間更に乾燥した。上記の処理の経過中、ポリスチレンビーズは、5%THF−95%MeOHの有機溶剤を含むECL標識でまず膨張し、水不溶のECL標識をポリマーのマトリックス中に拡散させ、そこで有機溶剤が真空蒸発によりビーズから除去されるときに捕捉された。ECL標識のポリスチレンビーズ中への効果的な充填は、Magnafire−Model S99806 Olympus America CCDカメラ(Olympus America、ニューヨーク州、Melville)と組み合わせたNikon Eclipse TE300倒立顕微鏡(Nikon Instruments Inc.、ニューヨーク州、Melville)で撮影した蛍光画像(図2a)により視覚的に証明することができる。ビーズ1個あたりRu(bpy)3[B(C6F5)4]2分子7.5×109個という典型的なローディングキャパシティー(loading capacity)は、TPrAを共反応化合物として用いて、Ru(II)⊂PSBをMeCN及び標準のRu(bpy)3[B(C6F5)4]2溶液に溶解して得たECLのデータ、に基づいて概算された。
【0126】
(実施例4)
Ru(II)⊂PSBの表面上へのアビジンの固定化
ビーズを0.10M EDAC及び0.10M NHSを含む、調製してすぐの25μMアビジンの0.10M 1−メチル−イミダゾールバッファー(pH7)溶液1.5mLに浸漬し、混合物を約40rpmで1時間回転することにより、Ru(II)⊂PSB−CO−NH−アビジンの形成により、アビジンの層を、Ru(II)⊂PSBの表面に共有結合させた。Ru(II)⊂PSB/アビジンと呼ばれる、新たに形成された、アビジンでコーティングしたRu(II)⊂PSBを、5〜10krpmで5分間反応溶液から遠心分離し、1mLの「1×B&Wバッファー」(1×バッファー&洗浄溶液、5mM Tris−HCl(pH7.5)+0.5mM EDTA+1.0M NaCl)で3回洗浄した。最終のRu(II)⊂PSB/アビジン生成物を、出発のPSB懸濁液(0.10〜1.0mL)と同じ容積を有し、使用まで約4℃に保っていた1×B&Wバッファー溶液に再懸濁した。このようにして、Ru(II)⊂PSB/アビジンの調製中のビーズの損失はないと仮定して、約6.5×104Ru(II)⊂PSB/アビジンビーズ/μLを概算することができる。図2bは、ビーズをフルオレセインビオチンと反応させた後のRu(II)⊂PSB/アビジンの明緑色蛍光画像を示しており、高品質のアビジンの層がRu(II)⊂PSBの表面上に形成されたことを示唆している。これとは対照的に、「裸の」Ru(II)⊂PSB上に非特異的に吸着されたフルオレセインビオチンは、非常に弱い蛍光画像を生成するにすぎない。Ru(II)⊂PSB/アビジンのビオチン化23−mer ssDNA(p−ssDNA)に対する結合能力は、フルオレセインビオチン滴定実験に基づくと、0.565nmol(p−ssDNA)/mgPSB又は1.4×108p−ssDNA分子/ビーズの値を有することが見出された(図10及び以下の表1を参照されたい)。
【0127】
(実施例5)
MB及びRu(II)⊂PSB/アビジンビーズの表面へのssDNAの結合
プローブDNA−MB複合体
プローブDNAの担体として、直径1.0μm又は2.8μmのストレプトアビジンでコーティングした磁性ビーズ(MB)を用いた。プローブDNA−MB複合体を形成するために、5.0μLの1.0μmMB、又は10.0μLの2.8μmMBを、最初に2mLの微小遠心管中に移し、次いで、マグネット(Dynal MPC(登録商標)−S)でオリジナルの懸濁液から分離し、その後200μLの「2×B&Wバッファー」(バッファー&洗浄溶液:10mM Tris−HCL(pH7.5)、1.0mM EDTA、2.0M NaCl)で1回、200μLの1×B&Wバッファーで2回洗浄した後、ビーズを2.5μMのビオチン化p−ssDNA100μLに浸漬し、40rpmで穏やかに回転しながら30から60分間インキュベートした。形成したプローブDNA−MB複合体を、引き続き分離し、200μLのB&Wバッファーで3回洗浄し、以前の遠心管の壁面上への可能なプローブDNAの吸着を避けるために新しい2mLの微小遠心管に移し、20μLのハイブリダイゼーションバッファーに再懸濁した。この方法で生成された複合体は、直径1.0μm及び2.8μmのMBに対してそれぞれ、約2.53及び1.1nmole(p−ssDNA)/mg(ビーズ)、又はビーズ1個あたり1.6×106及び10×107個のp−ssDNA分子の飽和プローブのDNA付着量を有していた(図10及び表1を参照されたい)。
【表1】
【0128】
標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン複合体
好適な濃度のビオチン化t−ssDNA(1.0×10−8から1.0×10−15M)100μL、又は1.0×10−9Mの非相補的−ssDNA(nc−ssDNA)及び2塩基対ミスマッチのssDNA(2−bp−m−ssDNA)を、約6.5×104ビーズ/μL Ru(II)⊂PSB/アビジンの1×B&Wバッファー溶液25μLに加え、20rpmの回転速度で穏やかに混合しながら1時間インキュベートし、1×B&Wバッファー200μLで2回洗浄し、3k−5k−10krpmで5分間遠心分離し、ハイブリダイゼーションバッファー50μLに再懸濁した。
【0129】
(実施例6)
DNAハイブリダイゼーション及びECL検出
新たに調製した標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン複合体(実施例5)を、先に形成したプローブDNA−MB複合体(実施例5)を含む2mL遠心分離管に移した。好適な容積のハイブリダイゼーションバッファーを分離管中に加えて、ハイブリダイゼーション溶液の全容積を200μLにした。20rpmで1時間穏やかに混合した後、プローブDNA−MB−標的DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン凝集物を、遊離の非結合のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズを含む「溶液」から磁気的に分離し、200μLの1×B&Wバッファーで3回穏やかに洗浄し、分離管の壁面上への遊離のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズの可能な吸着を最小にするために新しい遠心分離管中に慎重に移した。DNAハイブリダイゼーションの凝集物とともに、壁面上の遊離のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズがMeCNに溶解することもあるので、この種の非特異的な吸着により、著しく高レベルのバックグラウンドのECLが生成され得る。凝集物は、最終的に水200μLで洗浄し、後にECLを測定するために0.50mLの0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液に溶解した。DNAハイブリダイゼーションの後、プローブDNA−MB−標的DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン凝集物の形成は、図3に示すSEM画像により明らかに証明することができ、この場合、プローブDNAも相補的なDNAも濃度は5μMであり、MB/PSBの初期比率=29であり、MB及びPSBのサイズは、それぞれ1.0μm及び10μmであった。
【0130】
ECL強度と、10nMから1.0μMの濃度範囲のRu(bpy)3[B(C6F5)4]2との間の線形の関係は、1%の水を加えた0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10(TBA)BF4MeCNで見られた。同じ実験条件下で、ECL強度と、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填した直径10μmのポリスチレンビーズの数との間にも、良好な相関が見られた(図7b)。ビーズを0.50mLの電解質溶液に溶解して、ポリスチレンがECLシグナルを生成せず、又はECLシグナルに影響を及ぼさないことを実証した。図7bを7aと比べると、20のRu(bpy)32+を充填したビーズから生成される光の強度は、0.5nMのRu(bpy)32+からの強度と等しい。ビーズのローディングキャパシティーは、このようにして、ビーズ1個あたり7.5×109Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2分子であると決定された。この結果は、「大量のビーズ」のECL測定に基づいて得られたデータと一致していた。
【0131】
DNAハイブリダイゼーションのECL検出のために、2セットの実験を計画した。第1の実験では、直径1.0μmのMBを、MB対PSBビーズ比率29で用いた。図8aに示すように、この場合、ECL強度は、10pMから10nMの範囲にわたり標的のDNA濃度に比例し、2塩基ミスマッチの2−bp−m−ssDNA及び非相補的なnc−ssDNAは、相補的なDNAハイブリダイゼーションから容易に区別することができる。図7に示す実施例と異なり、電解質溶液に水を加えなかったことを留意されたい、というのは新たに形成されたMB−PSB複合体及び微小遠心管はすでに十分な水を含んでいたからである。図8に示すECL強度に対して、バックグラウンドを差し引かなかったことも留意されたい。MB対PSBの比率を低下させることにより、したがってRu(bpy)32+のt−ssDNAに対する増幅定数を増大することにより、ずっと低い濃度の標的DNA濃度でのDNAハイブリダイゼーションが検出可能でなければならない。以下に実証するように、直径10μmのPSB1個を、直径2.8μmのMB1個とともに引き出すことができる。その結果、DNAハイブリダイゼーションに関連するECLシグナルは非常に低い標的DNA濃度で生じ、したがって、2.8μmのMBと10μmのPSBとが低い比率で存在する場合に検出可能であり得る。図8bは、2.8μmMB/10μmPSBの比率=4であるような例の結果を示している。t−ssDNAは、1.0fmolほどに低い濃度で検出することができる。このような条件下でさえ、得られたECL強度は、2−bp−m−ssDNA及びnc−ssDNAのそれぞれの種の1.0nMを用いた場合に、それらのDNAハイブリダイゼーションから得られるものよりも大きく、したがってそれらと区別することができる。
【0132】
(実施例7)
ビオチン−PEO−LC−アミンのポリスチレンカルボキシレートビーズへの付着、及びポアソン分布検定
ビオチン−PEO−LC−アミン(M.W.=418.6g/mol)は、水に可溶性の架橋剤であり、22.9Åのポリエチレンオキシド(PEO)ベースのスペーサーアームを用いて、ビオチンとアビジンとの相互作用の立体障害を低下させている(2003〜2004年、Applications Handbook&Catalog;Pierce Biotechnology,Inc.、2003年)。ビオチン−PEO−LC−アミン分子は、0.10M EDAC−0.10M NHSの0.10M 1−メチル−イミダゾールバッファー溶液(pH7)の存在下でポリスチレンカルボキシレートビーズの表面に、架橋剤の第1級アミン基とビーズのカルボキシル基との間にアミド結合を形成することにより、共有結合している。5mMビオチン−PEO−LC−アミンの1mLを用いて、2.6%PSB懸濁液の250μLから分離したPSBと反応させる。反応は、回転速度40rpmで2時間行った。架橋剤が修飾したPSBは、PSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンと呼ばれ、引き続き分離され、1×B&Wバッファー400μLで3回洗浄し、1×B&Wバッファー250μLに再懸濁し、次いで使用するまで4℃に保った。
【0133】
直径10μmのPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを用いて、2つの異なるサイズのストレプトアビジン/ポリスチレンコーティング磁性ビーズ(直径1.0及び2.8μmのDynalビーズ)で、ポアソン分布の測定を行った。何万個ものPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを、同一の、又はより大きい数の1.0又は2.8μmの磁性ビーズのいずれかと溶液で十分に混合する場合に、PSBのビオチンとMBのストレプトアビジンとの間の非可逆的な反応により、PSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズが粘着する確率を観察することができ、ポアソン分布に対して予測されるものと比較することができる。実験上は、約6.5×104ビーズ/μLのPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズ50μL(全部で3.3×106PSB)を1×B&Wバッファー175μLで希釈し、製造元のオリジナルの懸濁液から磁気的に分離し2×B&Wバッファー200μLで1回洗浄した既知数のストレプトアビジンコーティング磁性ビーズ(直径1.0μm)を含む2.0mL微小遠心管に移した。混合物を直ちに振とうし、40rpmで1時間回転した後、PSB−MB凝集物を磁気的に混合物から分離した。得られた上清は非結合の遊離のPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを含んでおり、上清におけるPSBの数は、倒立顕微鏡で肉眼的検査により決定した。同様の手順を用いて、2.8μmMBのポアソン分布を試験した。しかし、この場合は、半分の量のPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズ、即ち1.6×106ビーズのみを、既知量のMBとの反応に用いた。
【0134】
非常に多数の磁性ビーズとポリスチレンビーズとを一緒に混合する場合は、これら2種類のビーズが衝突し、非可逆的に反応する確率P(m,n)は、ポアソン分布に従うはずであり、以下の2つのパラメータに従うはずである:(a)磁性ビーズのポリスチレンビーズに対する最初の比率m、及び(b)各ポリスチレンビーズに結合している磁性ビーズの数n。例えば、等しい数のMB及びPSビーズを混合した場合(m=1)、PSに結合するMBの平均数は1であるはずである。しかし、この平均値をもたらすには、n=1、2、・・・・の分布が存在する。P(m,n)、mとnとの間の関係は、以下のようにポアソン分布により述べることができる。
【0135】
P(m,n)=e−m[mn/n!] n=0、1、2、・・・
(Haight、Handbook of the Poisson Distribution、John Willey&Sons,Inc.、ニューヨーク、1967年を参照されたい。)
【0136】
表2は、m及びnの様々な値に対するP(m,n)の値を列挙している。この表及びポアソン分布の試験データ(上記に提供)で、1個のポリスチレンビーズに結合し、反応溶液から引き出すのに必要とされる磁性ビーズの最小数を概算することができる。例えば、上清から回収されたPSBの数から、MBに結合し、反応混合液から磁気的に引き出されるPSBのパーセント値を計算することができる。m値が既知数、例えば、m=1、2、3、4、5、・・・である1セットの「結合PSB%」のデータを、次いで、実験的に得ることができる。データがP(m、n>j)の理論値に当てはまる場合(表2)、mは行った実験から既知であり、j=0、1、2、3、・・・であり、
【数1】
である場合は、1個のポリスチレンビーズに結合し、それを引き出すのに必要とされる磁性ビーズの最小数は、j+1でなければならない。
【表2】
【0137】
図9は、このような試験の2つの例を示している。第1の例(図9a)では、2.8μmMBと10μmPSBとを用い、最小の結合比率であるMB/PSB=1を導き出すことができる。第2の例(図9b)では、2.8μmMBの代わりに1.0μmMBを用いて10μmPSBと反応させた。この場合、MBのPSBに対する、より高い最小の結合比率である3が得られた。これらの結合比率を利用して、MBとPSBとの間のDNAハイブリダイゼーションに対する実験条件を最適化することができ、その結果標的DNAの最小濃度を検出することができる。
【0138】
(実施例8)
2つの芳香族炭化水素であるDPA及びルブレンのポリスチレンビーズ中への充填
Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の他に、芳香族炭化水素、例えば、9,10−ジフェニルアントラセン(DPA、図11a)及びルブレン(RUB、図11b)も、ポリスチレンビーズ(PSB)中に充填した。その結果、発光波長の様々なECL標識が得られた。充填の手順は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の捕捉に用いた手順と同様であったが、5%THF−95%MeOHの「膨張溶剤」を5%ベンゼン−95%MeOHに置き換えたので、2つの芳香族炭化水素はベンゼンを含んだ溶剤に十分に可溶である。図12は、充填手順を要約したものである。
【0139】
PSB中へのDPA及びRUBの捕捉は、UV光線で励起した蛍光画像を用いて肉眼的に検証した。図13a及びbに示すように、DPA及びRUBを充填したPSBに対してそれぞれ強烈な青色、及び黄色から橙色の蛍光画像が観察された。これとは対照的に、芳香族炭化水素のないPSBは、弱い緑色の蛍光を示した(図13c)。
【0140】
ビーズ1個あたりDPA分子7.5×109、又はビーズ1個あたりRUB分子4.8×108というローディングキャパシティーを、MeCNに溶解したPSBを充填したDPA又はRUB、及び共反応化合物としてトリプロピルアミン(TPrA)を用いた標準のDPA又はRUB溶液から得たECLのデータに基づいて概算した。図14は、(a)DPAを充填したPSBをMeCNに溶解したもの、及び(b)共反応化合物としてTpRAを用いた0.25mMDPAのアセトニトリル溶液のCV及びECLの挙動である。RUBを充填したPSBをMeCNに溶解したもの、及び共反応化合物としてTPrAを用いた35μM RUBのアセトニトリル溶液のCV及びECLの挙動を、それぞれ図15a及び15bに示す。
【0141】
(実施例9)
C反応性タンパク質(CRP)のECL検出
Ru(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP複合体を、以下のように調製した:0.100〜0.500mLのRu(II)⊂PSB/アビジン(6.5×104ビーズ/μL)(実施例4を参照されたい)を、2.0mg/mLビオチン化抗−CRP(Miao及びBard、2003年、Anal.Chem.、75巻、5825頁)の0.10M PBSバッファー(0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム)(pH7.2)(Pierce、イリノイ州、Rockford)溶液の1mLと、室温で1時間、回転速度25rpmで混合した。新たに形成した複合体を遠心分離により回収し、1×B&Wバッファーで3回洗浄し(実施例4を参照されたい)、2%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.10M PBS(pH7.2)溶液1mLに30分間再懸濁した。遠心分離及び洗浄後(上記の通り)、複合体を適切な容積(0.100〜0.500mL)の0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液に懸濁し、使用するまで4℃に保った。
【0142】
MB←抗−CRP複合体を、以下のように調製した:直径2.8μmのストレプトアビジンでコーティングした磁性ビーズ0.100〜0.500mL(MB、6.5×105ビーズ/μL)を磁気的に分離し、2×B&Wバッファー1mLで1回、1×B&Wバッファー1mLで2回洗浄し、その後2.0mg/mLビオチン化抗−CRPの0.10M PBSバッファー溶液(pH7.2)の1.5mLと、室温で1時間、25rpmの回転速度で混合した。新たに形成したMB←抗−CRP複合体を、1×B&Wバッファー1mLで3回洗浄し、適切な容積(0.100〜0.500mL)の0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液に再懸濁し、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0143】
サンドイッチタイプのRu(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP<CRP>MB←抗−CRP複合体を以下のように形成した:Ru(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP複合体(全部で1.3×106PSB)20μL及びMB←抗−CRP複合体(全部で1.3×107PSB)20μLを、0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液200μL中のCRP試料と、室温で2時間穏やかに混合した。サンドイッチタイプの複合体を混合溶液から磁気的に分離し、1×B&Wバッファー200μLで3回洗浄した。次いで、遊離のRu(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRPの古い遠心管の壁面上への可能な吸着が最小になるように、複合体を少容積のPBSバッファーで、新しい2mLの遠心管に移した(実施例6を参照されたい)。最後に「磁性の複合体」をマグネットで溶液から分離した。
【0144】
ECLによりCRPを検出した。得られたサンドイッチ型の複合体を、0.10M TPrA−0.055TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液0.500mLに溶解し、直径2.2mmのPt電極で、スキャンスピード50mV/sで、0〜2.8V vs.Ag/Ag+(0.10M(TBA)BF4MeCN中の10mM AgBF4)の走査電位窓でサイクリックボルタンメトリーを用いてECL実験を行った。予想通り、サンドイッチタイプの複合体から得られたCV及びECLのプロファイルは、両方の場合とも「反応種」、Ru(bpy)32+及びTPrAが同一であったので、図4a及びcに示したものと非常に類似していた。図16に示すように、ECL強度(フォワードスキャンピーク強度とリバーススキャンピーク強度との平均)は、0.010〜10μg/mLの範囲にわたるCRP濃度に対して線形に比例している。
【0145】
本明細書に引用される参照は全て、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。参照として組み入れられる出版物、及び特許、又は特許出願が本明細書に含まれている開示と矛盾する範囲では、本明細書は、そのような矛盾する材料のあらゆるものに取って代わり、及び/又は優先することが意図される。
【0146】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる、成分、反応条件などの量を表す数値は全て、全ての場合において「約」という語により修飾されるものであることを理解されたい。したがって、逆を示さなければ、本明細書及び添付する特許請求の範囲で述べた数のパラメータは、本発明により得られることが求められている、望ましい性質に応じて変化することができる近似値である。控えめに言っても、且つ、特許請求の範囲の同等物の学説の適用を制限しようとするものではないが、数値のパラメータはそれぞれ、有効数字の数、及び通常の数字を丸める取組みを考慮して解釈されたい。
【0147】
当業者であれば明らかであるが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの変更形態及び変形形態を行うことは可能である。本明細書に記載した特異的実施形態は、例として提供されるにすぎず、決して限定的なものを意味するものではない。明細書及び実施例は、例示的なものにすぎないとみなすべきであり、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲により示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】対象の分析物が、ECL標識を含む第1の担体としても働くポリスチレンビーズに連結するDNA分子である、本発明のある実施形態の概略図である。磁性であり、ポリスチレンビーズに連結するDNA分子に相補的なDNA分子に連結する第2の担体として働く第2のビーズも示してある。2つのDNA分子は結合して複合体を形成する。磁場を複合体に適用することにより、対象の分析物(例えばDNA)を単離する手段がもたらされ、ECL標識を検出することにより、対象の分析物を検出する手段がもたらされる。
【図2】直径10μmのポリスチレンカルボキシレートビーズの蛍光画像を示す図である。図2(a)は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の捕捉後のビーズを示し、図2(b)は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填したビーズの表面上にアビジンが共有結合した後のビーズを示している。使用した暴露時間は30秒であった。検体は、λex490nmで励起した。
【図3】プローブDNA−磁性ビーズ複合体(DNA−MB)と、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を含むアビジンでコーティングしたポリスチレンビーズ(DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジンで表してある)に複合した相補的なDNAとの間のDNAハイブリダイゼーション後に得られた走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。両方のDNA分子に用いた濃度は5μMであり、PSB及びMBのサイズは、それぞれ10μm及び1.0μmであった。
【図4】0.10M(TBA)BF4電解質−0.10Mトリプロピルアミン(TPrA)共反応化合物を含む0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2のアセトニトリル(MeCN)から得られた(a)サイクリックボルタンメトリーの(CV)、及び(b)ECLの、直径2.2mmのPt電極でスキャン速度50mV/sでの応答を示す図である。比較のために、(c)に、TPrAの非存在下で0.10M(TBA)BF4を含む1.0mM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2のMeCNのCVを示す。(c)の実験条件は、(a)及び(b)と同じであるが、CV電流は10倍であった。
【図5】ECL強度に対する(a)TPrA、及び(b)TPrA−トリフルオロ酢酸(TFAA)の濃度の効果を示す図である。試料は全て、0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2及び0.10M(TBA)BF4のMeCNを含んでいた。作用電極は、直径2.2mmのPt電極であった。スキャン速度は50mV/sであった。
【図6】TPrA−MeCNシステムに対するECLバックグラウンドの消失を示す図である。(a)では、0.10M TPrA及び0.10M(TBA)BF4−MeCNを用いた。(b)では、0.055M TFAAを添加し、(a)と同じ条件を用いた。(c)では、1.0%(v/v)H2Oを添加し、(b)と同じ条件を用いた。(d)では、0.10M(TBA)BF4−MeCNを用いた。図6(e)は、(a)〜(d)に示した相対的なECL強度を示している。
【図7】Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2濃度の関数としてのECL強度(a)、及びRu(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填した直径10μmのポリスチレンビーズの数(b)を示す図である。
【図8】DNAハイブリダイゼーションのECL検出を示す図である。図8(a)は、MB/PSB=29の比率で、プローブDNA−MB(1.0μm)と、標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン(10μm)との間でDNAハイブリダイゼーションが起こったことを示す。図8(b)は、MB/PSB=4の比率で、プローブDNA−MB(2.8μm)と標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン(10μm)との間でDNAハイブリダイゼーションが起こったことを示す。
【図9】直径10μmのビオチン化PSBと反応した直径(a)2.8μm、及び(b)1.0μmのストレプトアビジンコーティングしたMBを用いた、ポアソン分布の検定を示す図である。「結合しているPSB%」は、反応媒体からMB−PSB複合体を磁気的に分離した後、上清に見られたPSBの数から計算した。
【図10】フルオレセインビオチン滴定実験で得られた、ビオチン化した23−mer−ssDNA(p−ssDNA)に対する(a)Ru(bpy)32+で捕捉されたストレプトアビジンでコーティングした直径10μmのポリスチレンビーズ、(b)ストレプトアビジンでコーティングした直径1.0μmの磁性ビーズ、及び(c)ストレプトアビジンでコーティングした直径2.8μmの磁性ビーズの結合能力を示す図である。
【図11】DPA(a)及びRUB(b)の分子構造を示す図である。
【図12】芳香族炭化水素をポリスチレンビーズ中に充填するための手順におけるステップを表すフローチャートである。
【図13】(a)DPAを充填したPSB、(b)RUBを充填したPSB、及び(c)PSBのみの蛍光画像を示す図である。
【図14】(a)MeCNに溶解した、DPAを充填したPSB、及び(b)共反応化合物としてTPrAを用いた0.25mM DPAのアセトニトリル溶液の、CV及びECLの挙動を示す図である。
【図15】(a)MeCNに溶解した、RUBを充填したPSB、及び(b)共反応化合物としてTPrAを用いた35μM RUBのアセトニトリル溶液の、CV及びECLの挙動を示す図である。
【図16】ECLシグナルとC反応性タンパク質(CRP)の濃度との間の関係を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、本明細書に参照により組み入れられる、2004年6月23日出願の米国仮特許出願第60/581719号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般的には、試料における対象の分析物を検出するための方法及び組成物に関する。対象の分析物は、ヒト又は他の生物に影響を及ぼす疾患又は病状に関連し得る。対象の分析物には、毒素、化学若しくは生物兵器物質、及び環境汚染物質が含まれる。ある実施形態において、本発明は、特に、第1及び第2の担体、試料中に含まれる対象の分析物、第1の担体を通じて捕捉され又は含有される電気化学発光(ECL)部分、並びに第1及び第2の担体の少なくとも1つに連結される対象の分析物の少なくとも1つの特異的結合パートナーを含む組成物に関する。ある実施形態において、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための、これらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
化学的、生化学的、及び生物学的物質などの分析物を、検出し、定量する、迅速で高度に特異的な方法が、引き続き、ますます必要とされている。特に、少量の、薬剤、代謝物、生物学的マーカー、微生物、ウィルス、及び他の病原体を測定するための方法が望まれている。これらの材料の存在は、多くの生物学的システムを特徴づける高度の特異性を利用する結合方法により決定できることが多い。試料に存在する対象の分子を検出するために結合に頼っている既知の方法には、核酸ハイブリダイゼーション技術、及び、抗体−抗原結合などのタンパク質−リガンド相互作用が含まれる。これらの方法では、診断的価値のある複合体の存在が、通常、複合体を含む1つ又は複数の材料に付着している観察可能な標識の存在/活性化、又は非存在/非活性化により示される。
【0004】
感度及び選択性は双方とも、多数の構成成分からなる試料に存在する対象の特異的分子を検出するためのあらゆるシステムの望ましい特質である。対象の生物学的分子を検出するためのDNAハイブリダイゼーション及び他のバイオアッセイでは、感度は、臨床上の診断(Liron and Fisher編集、Novel Approaches in Biosensors and Rapid Diagnostic Assays、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Kentonら、1992年、Clin.Chem.、38巻、873頁;Chistodoulidesら、2002年、Anal.Chem.、74巻、3030頁)、法化学(Heller、2002年、Annu.Rev.Biomed.Eng.、4巻、129頁;Nelsonら、1996年、J.Forensic Sci.、41巻、557頁)、環境調査(Lucarelliら、2002年、Talanta、56巻、949頁;Minら、2002年、Anal.Biochem.、303巻、186頁)、薬学研究(Heller、2002年、Annu.Rev.Biomed.Eng.、4巻、129頁;Polliceら、1985年、Clin.Lab.Med.、5巻、463頁)、及び生物兵器物質の検出(Smith、2002年、Anal.Chem.、74巻、462A頁;Miao及びBard、2003年、Anal.Chem.、75巻、5825頁)において重要である。したがって、対象分子の感度のある、選択的な検出を提供するあらゆるシステムは、これらの分野全てで広範囲の適用性を有する。
【0005】
電気化学発光(ECL)法は、感度が高く、ダイナミックレンジが広く、選択的であるので、結合試験(binding study)で広く使われている(米国特許第6316607号;Bard,A.J.編集、Electrogenerated Chemiluminescence、Marcel Dekker、New York、2004年)。例えば、DNAの検出に様々な技術が使用可能であり、その場合、標的の1本鎖DNA(t−ssDNA)に結合している電気化学的標識、蛍光標識、及びECL活性標識が、分析過程で測定可能なシグナルを生成する(Liron及びFisher編集、Novel Approaches in Biosensors and Rapid Diagnostic Assays、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Yang及びNgo編集、Biosensors and Their Applications、Kluwer Academic/Plenum Publishers:New York、2000年;Cunningham、Introduction to Bioanalytical Sensors、J.Wiley & Sons社、New York、1998年)。測定されるシグナルの強度は概ねt−ssDNAの量に比例するので、これらの方法の感度は制限されることが多く、伝統的に、たった1つ又は少数の標識が1つのt−ssDNAに結合することができる。より高感度を実現することができるように、1つのDNAをより多数の標識で標識することができる幾つかの方法が開発されている(Wang及びMerkoci、2003年、Langmuir、19巻、989頁;Zhaoら、2003年、J.Am.Chem.Soc.、125巻、11474頁)。これらの方法は、フェムトモル(fmol)範囲の量を検出するのに必要とされる感度はもたらさない。また、これらは相補的なハイブリダイゼーションと、2塩基対のミスマッチ又は多重測定とを区別する能力である、低い非特異的結合ももたらさない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、高い選択性及び低い非特異的結合をもたらす、高感度の(例えば、fmol範囲の)検出システムが依然として必要とされている。少なくとも1つの他の分子(例えば、特異的結合パートナー)に結合し、又はそれと相互作用することができるのであれば、このシステムは広範囲の適用性を有するはずであり、実質的にあらゆる対象の分子を検出するのに用いることができる。対象の分子が核酸、例えばDNAである場合には、このシステムは、相補的なハイブリダイゼーション、少なくとも2塩基対のミスマッチのハイブリダイゼーション、及び非相補的なDNAハイブリダイゼーションの各々を区別することができなければならない。
【0007】
理想的には、検出システムは、ECL標識の非特異的な結合を除外する単純な処理と、ECL標識の高い安定性とを提供し、その結果、シグナルを失わずに、多重測定を取り込む可能性を考慮するものである。これらの必要性はそれぞれ、少なくとも、開示する発明の、ある実施形態により満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための、迅速で、感度がよく、選択的な方法及び組成物を提供する。即ち、本発明は、試料中に含まれる、少量(例えば、1fmol)の対象の分析物を正確に検出する(例えば、偽陽性のシグナルの出現率が低い)ための方法及び組成物に関する。この望ましい感度は、少なくとも部分的に、第1の担体中に捕捉され、又は含まれている多数のECL分子を提供することにより実現される。
【0009】
ある実施形態では、本発明は、
BとDの両方が対象の分析物に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結してあり、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のを含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のを検出する方法を提供する。
【0010】
ある実施形態において、本発明は、
BとDの両方が対象の生物学的分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを捕足若しくは含む第1の固体支持体であり、Bは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の生物学的分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の固体支持体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の生物学的分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより生物学的分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の生物学的分子を検出する方法を提供する。
【0011】
本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子はタンパク質であることができる。本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子は核酸であることができる。
【0012】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは、対象の分析物を含むことがある試料であり、Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0013】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の固体支持体であり、Bは対象の生物学的分子に連結しているか、又は対象の生物学的分子の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の生物学的分子を含むことがある試料であり、Dは対象の生物学的分子に直接連結するか、又は対象の生物学的分子の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の固体支持体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における生物学的分子を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子はタンパク質であることができる。本発明の一部の実施形態では、対象の生物学的分子は核酸であることができる。
【0015】
ある実施形態では、本発明は、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
Bは、Aを含む、有機溶剤に可溶のビーズ、例えばポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に結合しているか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに結合しており、
Cは、対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、他の組成物の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法を提供する。
【0016】
ある実施形態において、対象の核酸分子はデオキシリボ核酸(DNA)である。一部の実施形態では、対象の核酸分子はリボ核酸(RNA)である。
【0017】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るRu(bpy)3[B(C6F5)4]2部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するのに有用な組成物を提供する。
【0018】
ある実施形態において、本発明は
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結するか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結し、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子に連結するか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物を提供する。
【0019】
ある実施形態においては、本発明は、
BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結することができる磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法を提供する。
【0020】
ある実施形態において、対象のタンパク質の第1及び/又は第2の結合パートナーは、抗体、又は特異的結合タンパク質であることができる。
【0021】
ある実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象のタンパク質分子を含むことがある試料であり、Dは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質分子に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結している磁化ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいない。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物を提供する。
【0022】
ある実施形態では、対象のタンパク質分子の第1及び/又は第2の結合パートナーは、抗体、又は特異的結合タンパク質であることができる。
【0023】
本発明は、対象の分析物を検出する競合的結合アッセイを行うための方法も提供する。ある実施形態において、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象の分析物の結合パートナーに連結しており、Bが対象の分析物の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の分析物の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは、対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、Dを含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法を提供する。
【0024】
関連の実施形態において、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象の核酸の類似体に連結し、Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法を提供する。
【0025】
一部の実施形態では、本発明は、
B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合は、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは、対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法を提供する。
【0026】
一部の実施形態において、本発明は、対象の分析物を検出するための競合的結合アッセイを行うための組成物を提供する。一部の実施形態では、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、Dは対象の分析物の類似体に連結することができるか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物を提供する。
【0027】
この組成物のある実施形態では、対象の分析物は核酸である。この組成物の一部の実施形態では、対象の分析物はタンパク質である。
【0028】
関連の実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象の核酸分子の類似体に連結し、Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物を提供する。
【0029】
ある実施形態では、対象の核酸分子はデオキシリボ核酸(DNA)である。ある実施形態では、対象の核酸分子はリボ核酸(RNA)である。
【0030】
一部の実施形態において、本発明は、
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、Dは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。但し、B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物を提供する。
【0031】
更なる実施形態は、本発明のある方法を行い、本発明のある組成物を形成するのに有用なキットを提供する。一部の実施形態において、本発明は、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分と;このECL部分を含む第1の担体であって、対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結する第1の担体と;対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結する第2の担体とを含む、試料における対象の分析物を検出するためのキットを提供する。
【0032】
当業者であれば、ECL部分の各々が異なる波長の光を放射するのであれば、上記に記載した方法、組成物、及びキットを含むあらゆる実施形態は、1つより多いECL部分を含むこともできることを理解するであろう。例えば、試料における1つより多い分析物を検出するために、2つ以上のECL部分を含む組成物、方法、及びキットを用いることができる。
【0033】
当業者であれば、ECL部分の各々が異なる波長の光を放射するのであれば、上記に記載した方法、組成物、及びキットを含むあらゆる実施形態は、1つより多いECL部分を含むこともできることを理解するであろう。1つより多いECL部分は、例えば、1つより多い分析物を検出することができる場合に有用である。
【0034】
本発明のさらなる目的及び利点は以下の記載において一部述べられ、一部はその記載から自明であり、又は本発明の実施により習得することができる。本発明の目的及び利点は、添付する特許請求の範囲で特に指摘される成分及び組合せにより、実現され、達成されるであろう。
【0035】
前述の全般的な記載も、以下の詳細な記載も、例示的及び説明的なものにすぎず、請求されるように本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
A.定義
本明細書で用いられる「抗体」は、免疫グロブリン又はその一部分を意味し、起源、製造方法、又はその他の特徴に関係なく、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを包含する。この語は、例えば、ポリクローナルの、モノクローナルの、単一特異性の、多特異性の、ヒト化の、単鎖の、キメラの、合成の、リコンビナントの、ハイブリッドの、変異の、及びCDR移植の抗体を含む。抗体の一部分は、Fab、F(ab’)2、Fv、scFvなど、抗原と結合することができるあらゆるフラグメントを含むことができる。
【0037】
本明細書で用いられる「対象の分析物」は、試料に見出される、ウィルスの細胞若しくは細胞の構成要素を含む、あらゆる分子、又は分子の集合体を意味する。試料に見出されるあらゆる分子のフラグメントも含まれる。対象の分析物は、有機化合物、有機金属化合物、又は無機化合物であってもよい。対象の分析物は、核酸(例えば、DNA、RNA、プラスミド、ベクター、若しくはオリゴヌクレオチド)、タンパク質(例えば、抗体、抗原、受容体、受容体リガンド、若しくはペプチド)、リポタンパク質、糖タンパク、リボ−若しくはデオキシリボ核タンパク質、ペプチド、多糖類、リポ多糖類、脂質、脂肪酸、ビタミン、アミノ酸、薬剤化合物(例えば、トランキライザー、バルビツレート類、アヘン剤、アルコール、3環系抗うつ薬、ベンゾジアゼピン類、抗ウィルス薬、抗真菌抗生物質、ステロイド類、強心配糖体、若しくは前記のあらゆるものの代謝物)、ホルモン、成長因子、酵素、補酵素、アポ酵素、ハプテン、レシチン、基質、細胞代謝物、細胞の構成要素又は細胞小器官(例えば、膜、細胞壁、リボソーム、染色体、ミトコンドリア、若しくは細胞骨格成分)でもよい。毒素、殺虫剤、除草剤、及び環境汚染物質もこの定義に含まれる。この定義は、この定義内に述べた例の任意の1つ又は複数を含む複合体を更に含む。
【0038】
本明細書で用いられる「対象の分析物の類似体」は、特異的結合パートナーに結合するのに、対象の分析物と競合する物質を意味する。対象の分析物の類似体は、試料に存在する対象の分析物と特異的結合パートナーに結合するのに競合するために添加されている、既知量の対象の分析物それ自体であってもよい。
【0039】
本明細書で用いられる「担体」は、1つ又は複数の固体又は液体の封入物質を意味する。担体は、有機又は無機の化合物を含むことができ、試料を提示するため、特異的結合パートナーを提示するため、又はECL部分を含む又は捕捉するための少なくとも1つのために用いることができる。担体は、後に更に詳しく記載する。
【0040】
本明細書で用いられる「含む(containing)」又は「含まれる(contained)」は、ECL部分と担体とが相互に物理的に接触しているが必ずしも相互に付着しているとは限らないような、担体の内部とECL部分との間の非特異的な関係を意味する。本発明のある実施形態では、担体内に含まれているECL部分は、担体に連結することができる。ある実施形態では、担体内に含まれているECL部分は、担体に連結しない。含む/含まれるは、「包まれる(encased)/包む(encasing)」及び「捕捉される(entrapped)/捕捉する(entrapping)」と交換可能に用いられる。
【0041】
本明細書で用いられる「ハイブリダイズする」は、適切な条件下での第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間での2本鎖の形成を意味する。一部の実施形態では、適切な条件は、厳密な条件であることができる。厳密な条件は、配列依存であり、異なる状況では異なる。配列が長くなるほど、より高温で特異的にハイブリダイズする(例えば、Sambrookら、1989年、Molecular Cloning A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.、及びAusubelら、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.を参照されたい)。一般的には、厳密な条件は、規定されたイオン強度及びpHでの特異的配列に対する熱融解点(Tm)よりも低い約5℃が選択される。Tmは、標的の配列に相補的なポリヌクレオチドの50%が、(規定されたイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。典型的には、厳密な条件は、pH7.0から8.3において、塩濃度が約1.0Mナトリウムイオンより低く、典型的には約0.05から10Mナトリウムイオン濃度(又は他の塩)であり、温度は、短いプローブ(例えば、10から50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50ヌクレオチドを超える)では少なくとも約60℃である。厳密な条件は、ホルムアミドなどの不安定化剤の添加でも実現することができる。溶液のホルムアミド濃度が1%上昇するごとに、DNA2本鎖のTmは約0.7℃低下する。
【0042】
ハイブリダイゼーションは、100%相補的であるポリヌクレオチド間で、即ち、2本鎖の核酸の2本の鎖間にミスマッチがない場合に起こることができる。ハイブリダイゼーションは、2本鎖の核酸の2本の鎖間にミスマッチがある場合にも起こることができる。本明細書で用いられる相補的なハイブリダイゼーションは、2本鎖の核酸の2本のハイブリダイズした鎖間にせいぜい1つのミスマッチが存在する場合の、2本の鎖の核酸の間のハイブリダイゼーションを意味する。
【0043】
本明細書で用いられる「連結した(linked)」は、2つの部分の間の直接の共有結合(direct covalent connections)、2つの部分の間の直接の非共有結合(direct noncovalent connections)、及び1つ若しくは複数の更なる部分により媒介される2つの部分の間の間接的総合を包含する。例えば、2つの部分の間の直接の共有結合は、2つのアミノ酸の間のアミド結合を含むことができ、2つの部分の間の直接の非共有結合は、塩を形成する金属と塩基との間のイオン性相互作用、又は2つの水分子間の水素結合を含むことができる。1つ若しくは複数の更なる部分により媒介される2つの部分の間の間接的結合は、Ig融合タンパク質などの融合タンパク質、及びTNV受容体などの受容体を含むことができ、この場合、IgとTNF受容体との間の結合は、IgにもTNF受容体にも元来存在しない短いアミノ酸配列などのリンカーにより媒介される。
【0044】
「連結した(linked)」は、対象の分析物により媒介される結合(connections)を包含しない。
【0045】
本明細書で用いられる「磁化」は、物質の透磁性が自由空間のものと異なる場合の物質の特性を意味する。この語は常磁化、及び超常磁化を含む。
【0046】
本明細書で用いられる「核酸」は、1本鎖又は2本鎖の形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドから構成されるポリマーを意味する。典型的には、1本鎖の核酸は100を超える塩基を含み、2本鎖の核酸は100を超える塩基対を含む。「核酸」は、天然に存在するヌクレオチドを含む核酸、及び基準の核酸に類似の結合特性を有する天然のヌクレオチドの類似体を含む核酸を包含する。核酸は、遺伝子によりコードされるcDNA又はmRNAも含む。核酸は、相補的塩基対形成により、例えば、水素結合により、その相補体にハイブリダイズすることができる。
【0047】
本明細書で用いられる「オリゴヌクレオチド」は、通常100塩基長以下の1本鎖の核酸を意味する。勿論、相補的なオリゴヌクレオチドをアニールして2本鎖のポリヌクレオチドを形成することができる。本明細書で用いられるように、オリゴヌクレオチドは、天然の(即ち、A、G、C、T、若しくはU)又は修飾された塩基を含むことができる。更に、オリゴヌクレオチドにおける塩基は、鎖間の塩基対形成を妨害しない限り、ホスホジエステル結合以外の結合により結びつけられることができる。したがって、例えば、オリゴヌクレオチドは、成分の塩基がホスホジエステル結合ではなくペプチド結合により結びついているペプチド−核酸であることができる。(例えば、Nielson、2001年、Current Opinion in Biotechnology12巻、16頁を参照されたい)。当業者であれば、オリゴヌクレオチドは、プローブ配列との完全な相補性を欠く配列とハイブリダイズすることができ、本明細書に記載する方法を用いて完全に相補的である結合と完全に至らない相補的な結合とを区別することができることを理解するであろう。場合により、オリゴヌクレオチドは、放射性同位元素、発色団、ルミフォア(lumiphore)、色素原、又はECL部分で直接標識することができ、又は、例えば、それに対してストレプトアビジン又はアビジン複合体が後で結合することができるビオチンで間接的に標識することができる。
【0048】
本明細書で用いられる「ポリヌクレオチド」は、2ヌクレオチドより多く、100ヌクレオチドよりも少ないヌクレオチドで構成されるポリマーを意味する。
【0049】
本明細書で用いられる「試料」は、生物系に由来し、又はそれを起源とするあらゆる検体を意味する。生物系は、生態系(例えば、水、空気、若しくは土壌の検体)、又は生物体(例えば、植物、動物、菌類、細菌、他の原核生物若しくは真核生物)、又はウィルス、又はプリオンを含む。試料は、対象の分析物を含むことができる。試料は、単離された、例えば、精製された、対象の分析物も含むことができる。
【0050】
本明細書で用いられる「特異的結合パートナー」は、生理学的条件下で第2の分子と比較的安定な複合体を形成することができる第1の分子を意味する。一般的に、特異的結合は、相対的に高い親和性と、相対的に低度から中等度の受容能力(capacity)とを特徴とする。非特異的結合は、通常、中等度から高度の受容能力と共に、低い親和性を有する。通常、親和性定数Kaが約106M−1より高く、又は、108M−1より高い場合に、結合が特異的とみなされる。結合定数が高くなるほど親和性が大きくなることが示され、したがって特異性が大きくなる。抗体は、通常、106M−1から109M−1又はより高い親和性定数で抗原に結合する。必要に応じて、非特異的結合は、結合条件を変化させることにより、特異的な結合に実質的に影響を及ぼさないで減少させることができる。このような条件は当技術分野では知られており、当業者であればルーチンの技術を用いて好適な条件を選択することができる。この条件は、例えば、分子濃度、溶液のイオン強度、温度、結合に与えられる時間、非関連の分子(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度などに関して、規定することができる。
【0051】
特異的結合パートナーの例には、相補的な核酸配列(例えば、相互にハイブリダイズする2つのDNA配列、相互にハイブリダイズする2つのRNA配列、又は相互にハイブリダイズするDNA及びRNAの配列)、抗体と抗原、受容体とリガンド(例えば、TNFとTNFr−1、CD142とVIIa因子、B7−2とCD28、HIV−1とCD4と、ATR/TEM8若しくはCMGと炭疽菌毒素の防御抗原部分)、酵素と基質、又は分子と結合タンパク質(例えば、ビタミンB12と内性因子、葉酸と葉酸結合タンパク質)が含まれる。特異的結合パートナーは、天然に存在する特異的結合パートナーの類似体であることもできる。類似体の例には、HIVの逆転写酵素に結合するヌクレオチドの類似体であるアジドチミジン(AZT)、アミノアシル−tRNAの末端のアミノアシルアデノシンの類似体であるピューロマイシン、及びテトラヒドロ葉酸の類似体であるメトトレキセートが含まれる。他の類似体は、対象の分析物の誘導体であることができる。
【0052】
B.電気化学発光物質
ある実施形態では、本発明は、ECLを用いて試料における対象の分析物の検出をもたらす。ECL部分は、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射の繰り返し放射が引き起こされ得る、あらゆる化合物であることができる。一部の実施形態では、ECL部分は、共反応化合物の存在下で電磁放射の繰り返し放射が引き起こされ得る。一部の実施形態では、ECL部分は、金属が、例えば、ルテニウム、オスミウム、レニウム、イリジウム、ロジウム、白金、パラジウム、モリブデン、及びテクネチウムから選択される金属含有有機化合物を含むことができる。本発明の一部の実施形態では、金属はルテニウム又はオスミウムである。金属は、例えば、それだけには限定されない、セリウム、ジスプロシウム、エルビウム、ユーロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、ランタン、ルテチウム、ネオジム、プラセオジム、プロメチウム、テルビウム、ツリウム、及びイッテルビウムを含む希土類金属から選択することもできる。本発明のいくつかの実施形態では、金属はセリウム、ユーロピウム、テルビウム、又はイッテルビウムである。
【0053】
本発明のある実施形態によると、本発明による金属含有ECL部分は、式M(P)m(L1)n(L2)o(L3)p(L4)q(L5)r(L6)sを有し、式中、Mは金属であり、PはMの多座配位子であり、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6はMの配位子であり、その各々が互いの配位子と同一でも異なってもよく、mは1以上の整数であり、n、o、p、q、r、及びsは、ゼロ以上の整数であり、P、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6はECL部分を誘発して電磁放射を放射する組成物及び番号であり、Mの配位子により提供される結合の総数はMの配位数に等しい。
【0054】
本発明の一部の実施形態では、Mはルテニウムである。本発明の一部の実施形態では、Mはオスミウムである。
【0055】
本発明のある実施形態では、ECL部分は、Mの1つの多座配位子を有する。一部の実施形態では、ECL部分は、1つより多い多座配位子を有する。1つより多いMの多座配位子を含む実施形態では、多座配位子は同一でも異なってもよい。多座配位子は、芳香族及び脂肪族の配位子を含む。適切な芳香族の多座配位子は、芳香族複素環配位子を含み、例えば、ビピリジル、ビピラジル(bipyrazyl)、ターピリジル(terpyridyl)、1,10フェナントロリン、及びポルフィリンなどの含窒素でもよい。
【0056】
適切な多座配位子は、非置換でもよく、当技術分野で知られている多数の置換基のあらゆるものにより置換されていてもよい。適切な置換基には、例えば、アルキル、置換されているアルキル、アリール、置換されているアリール、アラルキル、置換されているアラルキル、カルボキシレート、カルボキサルデヒド、カルボキサミド、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノカルボニル、アミジン、グアニジウム、ウレイド、マレイミド、イオウ含有基、リン含有基、及びN−ヒドロキシスクシンイミドのカルボキシレートエステルが含まれる。
【0057】
更に、L1、L2、L3、L4、L5、及びL6の少なくとも1つは、多座の芳香族複素環配位子であることができる。更に、これらの多座の芳香族複素環配位子の少なくとも1つは、窒素を含むことができる。適切な多座配位子には、それだけには限定されないが、ビピリジル、ビピラジル、ターピリジル、1,10フェナントロリン、ポルフィリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、置換されている1,10フェナントロリン、又は置換されているポルフィリンが含まれる。これらの置換されている多座配位子は、アルキル、置換されているアルキル、アリール、置換されているアリール、アラルキル、置換されているアラルキル、カルボキシレート、カルボキサルデヒド、カルボキサミド、シアノ、アミノ、ヒドロキシ、イミノ、ヒドロキシカルボニル、アミノアルボニル(aminoarbonyl)、アミジン、グアニジウム、ウレイド、マレイミド、イオウ含有基、リン含有基、又はN−ヒドロキシスクシンイミドのカルボキシレートエステルで置換されていてもよい。
【0058】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、その各々がビピリジル、ビピラジル、タービリジル、1,10フェナントロリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、又は置換されている1,10フェナントロリンであることができる2つの二座配位子を含むことができる。
【0059】
本発明のある実施形態では、ECL部分は、その各々がビピリジル、ビピラジル、ターピリジル、1,10フェナントロリン、置換されているビピリジル、置換されているビピラジル、置換されているターピリジル、又は置換されている1,10フェナントロリンであることができる3つの二座配位子を含むことができる。ECL部分は、ルテニウムを含むことができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分はルテニウム、2つの二座ビピリジル配位子、及び1つの置換されている二座ビピリジル配位子を含むことができる。
【0060】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ポルフィリン又は置換されているポルフィリンなどの四座配位子を含むことができる。
【0061】
ECL部分は、1つ又は複数の単座配位子を有することができるが、様々な単座配位子が当技術分野では知られている。適切な単座配位子には、例えば、一酸化炭素、シアン化物、イソシアン化物、ハロゲン化物、並びに、脂肪族、芳香族、及び複素環の、ホスフィン、アミン、スチビン、及びアルシンが含まれる。
【0062】
このECL部分のある実施形態は、ビス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)、及びトリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)を含む。
【0063】
1つ又は複数のMの配位子が、例えば、放射性同位元素、蛍光の構成成分、又は更なる蛍光のルテニウム若しくはオスミウム含有中心などの、更なる化学標識に付着していることは、本発明の範囲内である。
【0064】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス[(4,4’−カルボメトキシ)−2,2’−ビピリジン]2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)プロピル]−1,3−ジオキソランルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’ビピリジン)[4−(ブタン−1−アル)−4’−メチル−2,2’−ビピリジン]ルテニウム(II)である。本発明の更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)[4−(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)−酪酸]ルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、(2,2’−ビピリジン)(シス−ビス(1,2−ジフェニルホスフィノ)エチレネル){2−[3−(4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−イル)プロピル]−1,3−ジオキソラン}オスミウム(II)である。本発明のまた更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ジピリジン)[4−(4’メチル−2,2’−ビピリジン)−ブチルアミン]ルテニウム(II)である。本発明の一部の実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)[1−ブロモ−4(4’−メチル−2,2’−ビピリジン−4−イル)ブタン]ルテニウム(II)である。本発明のまた更なる実施形態では、ECL部分は、ビス(2,2’−ビピリジン)マレイミドヘキサン酸、4−メチル−2,2’−ビピリジン−4’−ブチルアミドルテニウム(II)である。
【0065】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は金属を含まず、例えば、ルブレン、又は9,10−ジフェニルアントラセンであることができる。
【0066】
一部の実施形態では、ECL部分は、担体に含まれていてもよく、包まれていてもよい。担体に包まれ、又は吸着されているECL分子の数は、ECL分子のサイズ、及び担体のサイズによる。担体は、ECL分子を、1×102〜1×1020、1×102〜1×1015、1×104〜1×1012、1×102〜1×1010、1×106〜1×1010、又は1×106〜1×109個含むことができる。一部の実施形態では、ECL部分は、担体に含まれ、又は包まれ、例えば、共有結合若しくは非共有の相互作用により、担体の表面に結合していることができる。
【0067】
本明細書で用いられる「ECL共反応化合物」は、本発明では、それ自体、又はその電気化学的還元酸化生成物のいずれかによりECL反応系列で役割を果たす化学化合物に関係する。
【0068】
ECL共反応化合物は、しばしばECLを産生するためのより簡単な手段の使用(例えば、2段階の酸化−還元サイクルの半分だけの使用)、及び/又はECL強度の向上を可能にする。一部の実施形態では、共反応化合物は、電気化学的酸化/還元の際に、直接又は更なる反応の際のいずれかに、溶液に強力な酸化種又は還元種を生じる化学化合物であってよい。共反応化合物は、不可逆的に電解還元されて酸化性のSO4・−イオンを形成するペルオキソ二硫酸塩(即ち、S2O82−、過硫酸塩)であってよい。共反応化合物は、不可逆的に電解酸化されて還元性のCO2・−イオンを形成するシュウ酸塩(即ち、C2O42−)であってもよい。還元性物質として働くことができる共反応化合物のクラスは、アミン、又はアミン基を含む化合物であり、例えば、トリ−n−プロピルアミン(即ち、N(CH2CH2CH2)3、TPrA)を含む。一部の実施形態では、四級アミンは二級アミンよりも良好な共反応化合物であることができる。一部の実施形態では、二級アミンは一級アミンよりも良好な共反応化合物であることができる。
【0069】
共反応化合物には、それだけには限定されない、リンコマイシン、クリンダマイシン−2−リン酸、エリスロマイシン、1−メチルピロリドン、ジフェニドール、アトロピン、トラゾドン、ヒドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、クリンダマイシン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、レセルピン、トリメチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、フェニラミン、ブロモフェニラミン、クロロフェニラミン、ジフェニルヒドラミン、2−ジメチルアミノピリジン、ピリラミン、2−ベンジルアミノピリジン、ロイシン、バリン、グルタミン酸、フェニルアラニン、アラニン、アルギニン、ヒスチジン、システイン、トリプトファン、チロシン、ヒドロキシプロリン、アスパラギン、メチオニン、スレオニン、セリン、シクロチアジド、トリクロルメチアジド、1,3−ジアミノプロパン、ピペラジン、クロロチアジド、ヒドラジノタラジン(hydrazinothalazine)、バルビツール酸、過硫酸、ペニシリン、1−ピペリジニルエタノール、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、エチレンジアミン、ベンゼンスルホンアミド、テトラメチルスルホン、エチルアミン、ジ−エチルアミン、トリ−エチルアミン、トリ−イソ−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−イソ−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−イソ−ブチルアミン、ビ−イソ−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、硫酸ヒドラジン、グルコース、n−メチルアセトアミド、ホスホノ酢酸、及び/又はそれらの塩が含まれる。
【0070】
共反応化合物には、それだけには限定されないが、N−エチルモルホリン、スパルテイン、トリ−n−ブチルアミン、ピペラジン−1,4−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、トリエタノールアミン、ジヒドロニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1,4−ジアゾビシクロ(2.2.2)オクタン、エチレンジアミン四酢酸、シュウ酸、1−エチルピペリジン、ジ−n−プロピルアミン、N,N,N’,N’−テトラプロピル−1,3−ジアミノプロパン;DAB−AM−4、ポリプロピレンイミンテトラアミンデンドリマー;DAB−AM−8、ポリプロピレンイミンオクタアミンデンドリマー;DAB−AM−16、ポリプロピレンイミンヘキサデカアミンデンドリマー;DAB−AM−32、ポリプロピレンイミンドトリアコンタアミンデンドリマー;DAB−AM−64、ポリプロピレンイミンテトラヘキサコンタアミンデンドリマー;3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、グリシル−グリシン、2−モルホリノエタンスルホン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2”−ニトリロトリエタノール、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)タウリン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(2−エタンスルホン酸)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、4−(N−モルホリノ)ブタンスルホン酸、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)水和物、ピペラジン−1,4−ビス(2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)二水和物、4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−プロパンスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−N’−(4−ブタンスルホン酸)、及び/又はこれらの塩も含まれる。
【0071】
本発明によるECL測定は、アセトニトリルなどの有機溶剤で、部分的な水系で、又は水系で行うことができる。ECL部分の電気化学的還元に適する電極は、例えば、Pt電極、又はPtとIrとの合金からなる電極であることができる。
【0072】
C.担体
ある実施形態において、本発明は、対象の分析物の検出に用いることができる、第1及び第2の担体を提供する。第1及び第2の担体は、試料の提示、特異的結合パートナーの提示、ECL部分の包み込み又は捕捉、及び対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を組成物の他の構成成分から分離するための手段の提供を含む、いくつかの機能の少なくとも1つを果たすことができる。
【0073】
第1及び第2の担体のいずれかは、ECL部分を含むことができる。ある実施形態では、ECL部分は担体に含まれ得る。ECL部分は担体中に含まれるので、本発明は、例えば、溶剤の性質など、ある一定の条件を変えることにより、ECL部分の担体からの容易な放出をもたらす。ある実施形態、例えば、担体がプラスチックなどの材料から構成されている固体支持体である場合には、ECL部分は担体中に配合されない。一部の実施形態では、ECL部分は担体の表面に共有結合し、担体中に含まれ得る。一部の実施形態では、ECL部分は担体中に含まれ、担体の表面に吸着され得る。第1の担体は、任意選択で、対象の分析物を含む試料から構成され得る。ある実施形態では、試料は第1の担体の表面に結合することができ、したがって、第1の担体を特異的結合パートナーに対し結合可能にする。しかし、ある実施形態では、試料は第1又は第2の担体のいずれにも結合することができない。この実施形態では、試料は溶液中であることができる。
【0074】
ある実施形態では、第1の担体又は第2の担体のいずれかは、対象の分析物の特異的結合パートナーを含むことができる。特異的結合パートナーは、第1の担体の表面に結合することができ、それにより、第1の担体を対象の分析物への結合に対し到達可能にしている。
【0075】
第2の担体を含む本発明の実施形態では、第2の担体は対象の分析物の特異的結合パートナーを含むことができる。特異的結合パートナーは、第2の担体の表面に結合することができ、それにより第2の担体を対象の分析物への結合に対し到達可能にしている。第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を分離するための手段を含むことができる。ある実施形態では、第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体を、組成物の他の構成成分から分離する手段を提供することができる。例えば、第2の担体は、対象の分析物と特異的結合パートナーとの間に形成された複合体をマグネットを用いて組成物の他の構成成分から分離できるように磁性であることができる。本発明のある実施形態では、複合体を組成物の他の構成成分から分離するのに用いられるマグネットは、例えば、米国特許第5935779号及び第6325973号に記載されているように、電気化学的エネルギーをシステム中に導入するのに用いることができる電極に隣接して位置させることができる。
【0076】
ある実施形態では、第1及び第2の担体の少なくとも1つは、固体支持体であってよい。一部の実施形態では、第1の担体と第2の担体の両方が固体支持体である。固体支持体は、粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1000マイクロメートルを超えるポリマー)、ナノ粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1〜1000ナノメートルの範囲の長さであるポリマー)、又はミクロ粒子(即ち、少なくとも1つの寸法が長さ1000ナノメートルを超えるが1000マイクロメートル以下であるポリマー)を含むことができる。ある実施形態では、固体支持体は、例えば、球形、立方体、円錐形などの、不規則な形状及び規則的な形状の両方を含む3次元の形状を有することができる。
【0077】
固体支持体は、ビーズ、ゲル、又は膜を含むことができる。膜は、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はカルボキシル化ポリビニリデン(米国特許第6037124号)を含むことができる。膜は、塩化ポリビニルベンジルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルベンゾイルアミノエチルジメチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルトリブチルアンモニウム、塩化ポリビニルベンジルトリヘキシルアンモニウムと塩化ポリビニルベンジルトリブチルアンモニウムとの共重合体、塩化ポリビニルベンジルベンジルジメチルアンモニウムと塩化ポリビニルアミノエチルジメチルアンモニウムとの共重合体、及び塩化ポリビニルベンジルフェニルウレイドエチルジメチルアンモニウムと塩化ポリビニルベンジルベンジルジメチルアンモニウムとの共重合体(米国特許第5336596号)でコーティングされていてもよい。固体支持体は、対象の分析物の特異的結合パートナー及び/又は試料に結合していることができ(例えば、ポリスチレン、セファロース、セファデックス)、並びに/或いはECL部分を含み、又は捕捉することができるあらゆる材料を含むことができる。固体支持体は、ポリアクリリック、ビニルポリマー、アクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアシロニトリル(polyacylonitrile)、及びポリオレフィンなどの、あらゆる合成の有機ポリマーを含むことができる。固体支持体は、炭水化物ポリマー、例えば、アガロース、セルロース、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)を含むこともできる。固体支持体は、シリカ、ジルコニア、例えば、カーボン被覆ジルコニア(米国特許第5182016号)、チタニア、セリア、アルミナ、マンガン、マグネシア(即ち、酸化マグネシウム)、酸化カルシウム、細孔性ガラス(CPG)などの無機酸化物を含むことができる。固体支持体は、それだけには限定されないが、デキストラン−アクリルアミドを含む上記に記載した支持体のいくつかの組合せも含むことができる。固体支持体は、特異的結合パートナー及び/又は対象の分析物との非特異的な相互作用を最小にするように調製することができる。
【0078】
第1又は第2の担体の少なくとも1つが固体支持体であるある実施形態では、固体支持体は、水性の環境に不溶であるが、有機の環境、例えば、アセトニトリル、エーテル、クロロホルム、ベンゼンに可溶であることができる。ECL部分が捕捉され、又は別の方法でそのような固体支持体に結びつけられる実施形態では、ECL部分は、有機の環境に固体支持体を置くことにより放出されることができ、その結果、ECL部分の検出を促進する。有機の環境は、有機溶剤70〜100%、80〜100%、90〜99%、99〜99.9%(容積/容積)である溶剤を含むことができる。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、第1又は第2の担体の少なくとも1つは、融点の範囲が30℃〜60℃であるゲル、例えば低融点アガロースである。これらの実施形態では、ECL部分を含む担体の融点を超えて複合体を加熱することにより、ECL部分を放出し、それにより検出が促進される。
【0080】
ある実施形態では、固体支持体はビーズ、例えばポリスチレンビーズである。第1の担体も第2の担体もビーズである実施形態では、第1の担体は、その中に含まれ、又は捕捉されているECL部分を有することができ、第2の担体は、磁化ビーズであることができる。ECL含有ビーズも磁化ビーズも、直径が0.1μm〜100μm、0.5μm〜50μm、1μm〜20μm、又は0.5μm〜10μmの範囲であることができる。一部の実施形態では、第1の担体の直径は10μmであり、第2の担体の直径は1μmであってよい。一部の実施形態では、第1の担体の直径は10μmであり、第2の担体の直径は2.8μmであることができる。
【0081】
本発明のある実施形態では、担体の少なくとも1つは、液体を含むことができる。液体は、少なくとも1つの両親媒性の分子を含むことができる。両親媒性の分子は、極性の部分も非極性の部分も有し、水性の環境でミセルなどの凝集体を形成することができるものである。したがって、ミセルは、パルミテート又はオレエートなどのあらゆる脂肪酸のイオンから構成され得る。ミセルは、1つ又は複数の非イオン性界面活性剤、例えば、TritonX−100、又はオクチル−β−グルコシドを含むことができる。ミセルは、1つ又は複数のイオン性界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、デオキシコレート、リゾレシチンを含むことができる。一部の実施形態では、ミセルは、イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の両方を含むことができる。
【0082】
したがって、ある実施形態では、第1及び第2の担体の少なくとも1つはミセルであることができる。ミセルでは、対象の分析物がミセルの表面に曝され、したがって、特異的結合パートナーが対象の分析物と接触できるように試料に結合することができる。ECL部分は、ミセルの内部中に含まれ得る。従って、例えば、撹拌若しくは超音波処理、又は酸化若しくは還元により、ミセルを破壊することで、ECLを放出し、対象の分析物の検出を促進する手段が提供されるであろう。
【0083】
ある実施形態では、担体はリポソームであることができる。リポソームは、リン脂質を水和した際に形成する微小な球状の粒子である。リン脂質を、低いせん断条件下、水中で混合すると、リン脂質はそれ自体をシート状に配列し、分子は「頭」を上に「尻尾」を下にした配向のように並んで整列する。次いで、これらのシートは、尻尾同士で結びついて、中心が水性で表面がリン脂質の、2重層膜を形成する。リポソームは、均一のサイズ、例えば直径200nmを有することができる。リポソームは、界面活性剤又は他の乳化剤を使用しないで、水溶性の物質と水不溶性の物質とを、配合物で一緒に用いることを可能にしている。水溶性の材料を、リン脂質が水和している水に溶解し、リポソームが形成するとこれらの材料が水性の中心に捕捉される。リポソーム壁はリン脂質の膜であり、油などの脂溶性の材料を保持している。リポソームは、安定化した天然リン脂質の混合物、合成の同一鎖のリン脂質、糖脂質含有リポソーム、2極性の脂肪酸、x−結合した、リポタンパク質コーティングした、又は炭水化物コーティングしたメチル/メチレンから構成され得る。試料を、リポソームの表面上に提示して、特異的結合パートナー又は試料の結合を促進することができる。リポソームは、その中に(即ち、水性の中心に、又は周囲の脂質に)ECL部分を含むことができる。例えば、米国特許第6706861号を参照されたい。
【0084】
D.試料又は特異的結合パートナーを担体に連結する方法
対象の分析物又は特異的結合パートナーを含む試料を、当技術分野では知られている手段により担体に連結することができる。例えば、タンパク質及び核酸には、架橋試薬を用いることができる(Lundら、1988年、Nucleic Acids Res.、16巻、10861頁)。同様に、核酸及びタンパク質の両者には、光反応性の架橋試薬が用いられている(Penchovskyら、2000年、Nucleic Acids Res.、28巻(22)、98頁;Harrisonら、1989年、Biochemistry、28巻、6023頁)。好適な手段の選択は、試料の性質、及び担体の性質による。結合は、例えば、共有結合、非共有の相互作用、例えば、静電気相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又は水素結合によることができる。試料を担体に結合する方法の選択は、当業者の通常の技能の範囲内にある。
【0085】
ある実施形態では、配位子は、配位子上の特別な官能基(例えば、一級アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、アルデヒド)と担体上の反応基との間に共有化学結合を形成することにより、担体に固定、又は直接「連結」する。
【0086】
それだけには限定されないが、リンカーとしてアビジン又はストレプトアビジンと共にビオチンを用いることを含む、他の結合方法も可能である。リンカーとして、ビオチン/アビジン ストレプトアビジンを用いる方法は、当技術分野では知られている(Wilchek及びBayer編集、Methods in Enzymology、184巻、Academic Press、San Diego、1990年を参照されたい)。ある実施形態では、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いてビオチンのNHSエステルを形成することができる。ビオチン残基を、それだけには限定されないが、リシン残基上の一級アミン、グルタミン酸残基若しくはアスパラギン酸残基上のカルボキシル部分、又はシステイン残基上のスルフヒドリル部分を含む様々な官能基に連結することができる。アビジンを、臭化シアン(CNBr)で担体を活性化した後、リジン上のアミノ基を介して担体に共有結合することができる。
【0087】
ある実施形態では、試料又は結合パートナーは、担体の表面上に吸着されているにすぎないことがある。例えば、抗体は、ポリスチレンミクロスフェアの表面に吸着されていることがある。タンパク質が担体の表面に吸着しているのが望まれる実施形態では、最大の表面被覆面積(単層まで)を得るために、溶液のpHを、タンパク質の等電点に、又はそれよりもわずかに塩基性に調節することができる。希釈したミクロスフェア懸濁液(固体約1%)を用いると、確実に単一ミクロスフェアがコーティングされる。最終タンパク質濃度約0.1mg/mlはタンパク質の単層を実現するのに通常十分であるが、その量の約3から約10倍を添加することにより、好ましい化学量論、及び良好な結合のための推進力を確実にする。
【0088】
担体の表面を修飾して、試料又は特異的結合パートナーの共有結合を促進することができる。表面が修飾されたポリマーミクロスフェアは、アクリル酸などの機能性モノマーの少量(約5%未満)でスチレンを共重合することにより作成されることが多く、これにより−COOH基で覆われたミクロスフェアが得られる。他のモノマーを用いて、表面の化学的性質が異なる微粒子を調製することができ、例えば、米国特許第5599889号を参照されたい。
【0089】
シリカミクロスフェアの表面上の天然のシラノール基は、水性の、又は溶剤ベースのシラン結合性物質と反応して、様々な表面官能基を有する、予め活性化されたシリカミクロスフェアを生じることができる。例として、クロロメチル、カルボキシル、及びアミノ基が含まれる。DNA及びRNAは、カオトロピック剤の存在下でシリカ上に吸着することができる。オリゴヌクレオチドは、表面を修飾されたシリカにその5’−アミノ末端を介して共有結合することができる。Boomら、1990年、J.Clin.Microbiol.、28巻、495頁に記載されているように、脂質は、脂肪酸鎖上のカルボキシル基、及びシリカ上のプロピルアミン表面基により結合することができる。
【0090】
対象の分析物、又は特異的結合パートナーは、ミセル中に組み込まれることができ、例えば、Savicら、2003年、Science、300巻、615頁;Maysingerら、2001年、Biochim.Biophys.Acta.、1539巻(3)、205頁を参照されたい。タンパク質の、界面活性剤ミセル中への可溶化及び再構成は、例えば、6M塩酸グアニジン(Gdn・HCl)のタンパク質溶液を過剰のリフォールディングバッファー(例えば、3%ジヘキサノイルホスファチジルコリン 20mM Tris−HCl/5mM EDTA/0.6M L−アルギニン、pH8.5)にゆっくりと希釈することにより、行うことができる。残余のGdn−HClを除去した後、例えば、透析により、溶液を、限外ろ過を含む様々な技術により濃縮することができる。例えば、Fernandezら、2001年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、98巻、2358頁を参照されたい。
【0091】
対象の分析物、又は特異的結合パートナーを、リポソーム中に組み入れることができる。タンパク質をリポソーム中に組み入れる多くの方法が知られている(例えば、Rigaudら、Liposomes as Tools in Basic Research and Industry、71〜88頁、Liposomes as Tools for the Reconstitution of Biological Systems、Philippot,J.R.及びSchuber編集、CRC Press、フロリダ州、Boca Raton(1995年)を参照されたい)。一例として、超音波処理器又はフレンチプレスなどの機械的手段を用いて、過剰のバッファーでリン脂質のフィルムを膨張させ、乾燥させることにより単層の粒子を生成することができる(Lelkesら、1985年、J.Biol.Chem.、260巻、1796頁)。或いは、低濃度のコール酸塩又はリゾレシチンの触媒により、タンパク質を、予め形成されたリポソーム中に、自発的に組み入れることができる(Wrigglesworthら、1987年、Biochem J.、246巻(3)、737頁)。タンパク質は、また、リン脂質及び界面活性剤の存在下で、ともに可溶化されてミセルを形成することができ、その後、引き続き界面活性剤を除去する。大型のリポソームは、逆相の蒸発により調製し、様々な量のTritonX−100、オクチルグルコシド、又はコール酸ナトリウムなどの界面活性剤で処理することができる。可溶化プロセスの各ステップで、タンパク質を加えることができる。タンパク質−リン脂質界面活性剤混合物を、次いで、SM2 Bio−Beads処理に供して、界面活性剤を除去することができる(Rigaudら、1988年、Biochemistry、27巻(8)、2677頁)。溶液中の膜タンパク質を準備し、予め形成したリポソームの溶液を準備し、混合物をインキュベートすることにより、膜タンパク質をリポソーム中に組み入れることができる。予め形成したリポソームの溶液を提供するステップの前に、リン脂質の混合物を、少なくとも1タイプの不飽和脂肪酸の溶液と組み合わせることによりリポソームを形成する(米国特許第6706861号)。当業者であれば、試料を担体に連結する、多くの更なる方法が存在することを理解するであろう。
【0092】
E.ECL部分を担体に装填する方法
ある実施形態では、ECL部分は担体の表面に連結することができる。試料を担体に連結することに関して上記に記載した方法を、同様に、ECL部分を担体に連結するのに用いることができる。担体が固体支持体、例えばビーズである場合は、ECL部分は、例えば、共有結合、非共有の相互作用、静電相互作用、疎水性相互作用、親水性相互作用、ファンデルワールス相互作用、又は水素結合により、担体の表面に結合することができる。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、ECL部分は有機溶剤に可溶であるが、水性溶剤に不溶である。ECL部分を有機溶剤に溶解し、次いで、多数の担体粒子、例えば、ポリスチレンなどの疎水性材料で構成されているビーズと混合することができる。ECL部分を含んでいる有機溶剤は、担体の孔を浸透し、有機溶剤が蒸発する際に、ECL部分は担体の内部に捕捉され、又は包まれるようになる。ビーズが水性溶剤に溶媒和する場合は、殆ど又は全てのECL部分は、担体中に包まれたままである。ある実施形態では、担体はポリスチレンビーズである。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でゲルを形成することにより、ECL部分をゲル中に組み入れることができる。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でミセルを形成することにより、ECL部分をミセル中に組み入れることができる。一部の実施形態では、ECL部分を含む溶液でリポソームを形成することにより、ECL部分をリポソーム中に組み入れることができる。
【0094】
一部の実施形態では、ECL部分を、周囲の媒体への実質的な損失なしに、担体の内側に捕捉させることができる。ECL部分の周囲の液相への損失は、調製中及び使用中に望まれないことがある。ECL部分を捕捉する担体の能力は、分配係数と呼ばれる重要な物理的定数により本質的に表すことができる。分配係数は、K=C担体/C液体であり、この場合C担体は、担体で吸収された部分の濃度であり、C液体は、吸収されない部分の濃度である。
【0095】
2相の系(担体と液体と)では、分配係数が1を超える部分は、担体相を優先することを示している。分配係数の値が高いということは、担体相を強く優先することを示している。それとは反対に、分配係数が1未満である部分は液相を優先する。初期に担体中に高レベルのECL部分のあった分配係数の低い系は、周囲の液相に部分を失うであろう。
【0096】
一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約2を超える。一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約10を超える。一部の実施形態では、担体と水性溶剤との間の分配係数は約100を超える。高い分配係数を実現するために、いくつかの化学的及び物理的デザインが存在する。(1)部分が担体にクーロン引力により保持され得る。このような場合には、ECL部分は正味の正の電荷を有し、担体は正味の負の電荷を有する。(2)一部の実施形態では、ECL部分の可溶性は、担体相においてずっと大きいことがある。例えば、ECL部分は水に可溶ではなく、親油性のポリスチレンの担体に可溶である。(3)一部の実施形態では、顕微鏡的で見た担体の多孔性は部分の直径よりも小さいので、ECL部分は担体中に捕捉されることができる。(4)一部の実施形態では、部分は共有結合により担体に結合され得る。
【0097】
F.対象の分析物を検出する方法
本発明は、試料中に含まれている対象の分析物を検出する様々な方法を提供する。本発明の一部の実施形態では、対象の分析物は、第1の担体などの担体に連結することができる。対象の分析物は担体の表面上に存在し、したがって特異的結合パートナーへのその接近を促進する。一部の実施形態では、対象の分析物は、いかなる担体とも連結することができない。一部の実施形態では、対象の分析物は溶液に存在することができる。
【0098】
本発明の方法は、対象の分析物に特異的に結合することができる少なくとも1つの特異的結合パートナーを提供する。一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0099】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、対象の分子に特異的に結合することができる結合タンパク質であることができる。結合パートナーは担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0100】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、対象の分析物に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチド又は核酸であることができる。結合パートナーは、担体に連結することができる。この実施形態では、試料は第2の担体に連結することができる。
【0101】
一部の実施形態では、本発明は、2つの特異的結合パートナー、即ち、そのどちらも対象の分析物に特異的に結合する第1及び第2の特異的結合パートナーを提供する。2つの特異的結合パートナーは、どちらも担体に連結することができる。したがって、ある実施形態では、第1の特異的結合パートナーは第1の担体に連結することができ、第2の特異的結合パートナーは第2の担体に連結することができる。この実施形態では、試料はいかなる担体にも連結することができない。同一の特異的結合パートナーが第1の担体にも第2の担体にも連結することができることも企図される。一部の実施形態では、対象の分析物に特異的に結合しているポリクローナル抗体は、第1の担体にも第2の担体にも連結することができる。一部の実施形態では、対象の分析物は、モノクローナル抗体が認識するエピトープの複数のコピー(Multiple copies)を含むことがあり、又は、分析物が核酸である場合には、第1の担体にも第2の担体にも連結するプローブが認識する配列の複数の反復を含むことがある。ある実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、抗体とすることができる。特異的結合パートナーは両者とも抗体とすることも企図される。本発明は、1つの特異的結合パートナーが抗体であり、第2の特異的結合パートナーが特異的結合タンパク質である実施形態も包含する。
【0102】
一部の実施形態では、少なくとも1つの特異的結合パートナーは、試料における対象の分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとすることができる。抗体と同様に、特異的結合パートナーを両者とも、試料における対象の分子とハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又は他の核酸とすることが企図される。
【0103】
ECL部分は、例えば、紫外吸収、赤外吸収、及び蛍光発光などの、発光及び吸光の分光光度法;原子吸光、アノーディックストリッピングボルタメトリーなどの電気化学的方法;中性子放射化、及び化学的方法を含めた、当技術分野ではよく知られている方法により検出することができる。ある実施形態では、光ルミネセンス、化学ルミネセンス、及び電気化学ルミネセンスの方法を用いる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して電磁放射を放射させ、放射された電磁線を検出することにより、化学的部分の存在を検出することができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して、試薬の混合物を電磁的、化学的、又は電気化学的エネルギーに曝すことにより電磁放射を放射させることができる。本発明の一部の実施形態では、ECL部分を誘発して、試薬の混合物を化学的又は電気化学的エネルギーに曝すことにより、電磁放射を放射させることができる。ある実施形態では、ECL部分を検出する助けに、共反応化合物、例えばTPrAを加える。
【0104】
発光技術を用いて、非常に低濃度のRu(bpy)32+を測定することができる。酸化還元法を用いると、5×10−8Mの濃度のRu(bpy)32+を検出することが可能である。シュウ酸ナトリウム(1mM)のリン酸バッファー溶液pH5.0を0から+1.4ボルトのパルスのポテンシャル対5から10秒の間隔の飽和カロメル基準電極とともに用いることができる。18mM Na2S2O8及び0.1Mテトラ−n−ブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのCH3CN:H2O(1:1v/v)溶液を用いると、10−13Mほどに低い濃度のRu(bpy)32を検出することができる(例えば、米国特許第6140138号、第5731089号、第5714089号を参照されたい)。
【0105】
本発明は、
(a)式
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、Bは、Aと関連している(対象の分析物の特異的結合パートナーに連結する)第1の担体であり、Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、Bは対象の分析物の結合パートナーにより対象の分析物に連結し、Dは対象の分析物に直接連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーを介して対象の分析物に連結する第2の担体であり、k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]を有する複合体を形成するステップと、
(b)(a)で形成された複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、対象の分析物を検出するためのアッセイにおいて、ECL部分を使用するための方法も提供する。
【0106】
ある実施形態では、本発明の方法は、競合的結合アッセイ、例えば、競合的阻害アッセイであることができる(例えば、Janewayら、Immunobiology、Gerland Publishing、New York、2001年を参照されたい)。このアッセイの一部の実施形態では、既知量の対象の分析物又は対象の分析物の類似体を、ECL部分を含まない担体、例えば磁性ビーズと連結することができる(「連結する」は、共有結合も非共有結合も含む)。対象の分析物に対する結合パートナーは、第2の担体、例えば、ECL部分を含まないポリスチレンビーズと連結することができる。追加した対象の分析物の非存在下では、第1の担体に連結する対象の分析物と、第2の担体に連結する対象の分析物に対する結合パートナーとの間に複合体が形成され、第1の担体を第2の担体に効果的に連結する。この複合体に関連しているECL部分の量を、当技術分野では周知の技術により測定することができる。次いで、第2の担体が連結する結合パートナーに対する結合について、担体が連結した対象の分子と競合させることにより、試料における対象の分析物の存在を、形成される複合体の量を減少させるその能力により検出することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量を、既知量の対象の分子を含む試料を用いて、検量線と比べて定量することができる。
【0107】
一部の実施形態では、本発明は、対象の分析物を検出するための、サンドイッチ型の結合アッセイを提供する。本アッセイの一部の実施形態では、対象の分析物の第1の結合パートナーは、第1の担体、例えば磁性ビーズに連結することができる。対象の分析物の第2の結合パートナーは、第2の担体、例えばECL部分を含むことができるポリスチレンビーズに連結することができる。対象の分析物を含む試料の存在下では、第1の担体も第2の担体も含む複合体を形成することができる。この複合体と関連するECL部分の量は、試料における対象の生物学的材料の量と比例し、当技術分野で知られている技術により測定することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量は、既知量の対象の分子を含む試料を用いて検量線で比べて定量することができる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するための直接結合方法を提供する。本方法の一部の実施形態では、試料における分子は、第1の担体、例えば磁性ビーズに連結することができる。対象の分析物の結合パートナーは、第2の担体、例えばECL部分を含むことができるポリスチレンビーズに連結することができる。試料が対象の分析物を含む場合は、第1の担体も第2の担体も含む複合体を形成することができる。この複合体と関連するECL部分の量は、試料における対象の生物学的材料の量と比例し、当技術分野では知られている技術により測定することができる。ある実施形態では、試料における対象の分析物の量は、既知量の対象の分子を含む試料を用いて検量線で比べて定量することができる。
【0109】
これらのタイプの結合アッセイに対する多くの変形は、当業者には知られており、本発明の方法と互換性がある。
【0110】
存在するECL部分の量を定量するための方法は多く存在する。システムへのエネルギー投入量の割合により、ECL部分の測定をもたらすことができる。適切な測定には、例えば、ECL部分が電気化学的に励起された場合の電流の測定、ECL部分が化学的に励起された場合の還元剤又は酸化剤の利用の割合、又は光ルミネセンス技術における電磁エネルギーの吸収の測定が含まれる。ECL部分は、放射された電磁放射を測定することにより検出することもできる。これらの測定は全て、継続的な、レートベースの(rate−based)測定として、又は長時間にわたりシグナルを蓄積する累加法として行うことができる。レートベースの測定は、光電子増倍管、フォトダイオード、又は入射光強度に対する大きさに比例する電流を生成するフォトトランジスターを用いて行うことができる。累加法は、レートベースのデータの積分、又は蓄積性のデータを直接提供する写真フィルムの使用を伴うことがある。
【0111】
本発明は、対象の分析物、少なくとも1つの担体、及びECL部分を含む複合体の単離も提供する。一部の実施形態では、例えば、少なくとも1つの担体が磁性ビーズである場合は、磁場を用いて複合体を分離することができる。一部の実施形態では、複合体の分離は、沈殿により、例えば、複合体の質量が個々の構成成分の質量を超える場合には重力の力により実現することができる。一部の実施形態では、フィルターを用いて、複合体を組成物の他の構成成分から分離することができる。フィルターは、例えば、複合体を保持するのに十分小さいが、非複合の材料を通過させるのに十分大きい孔のサイズを有する。一部の実施形態では、サイズ排除カラムを用いて、複合体を分離することができる。複合体を、組成物の他の構成成分から区別する他の性質、例えば、疎水性、又は他の結合パートナーに対する親和性も用いることができる。
【0112】
G.疾患及び病状
ある実施形態では、対象の分析物は、疾患又は病状に関連するマーカーであることができる。本発明は、したがって、疾患又は病状に関連するマーカーを検出し、それにより、疾患又は病状を有する対象を診断する方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は、疾患又は病状に関連するマーカーの存在又は量をモニターすることにより、疾患又は病状の進行をモニターする方法を提供する。一部の実施形態では、本発明は疾患又は病状に関連するマーカーの存在又は量をモニターすることにより疾患又は病状を処置するのに用いられる治療法の有効性をモニターするための方法を提供する。
【0113】
疾患又は病状には、感染性物質(例えば、細菌、真菌、寄生体、ウィルス、又はプリオン)により引き起こされる感染性疾患が含まれ得る。細菌の病原体の例には、炭疽菌(B.anthracis)、大腸菌(E.coli)、肺炎球菌(S.pneumoniae)、化膿レンサ球菌(S.pyogenes)、ストレプトコッカス・ボビス(S.bovis)、B群溶血レンサ球菌(S.agalactiae)、黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、結核菌(M.tuberculosis)が含まれる。ウィルス感染の例には、天然痘、重症急性呼吸器症候群(SARS)、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、エプスタイン・バーウィルス(EBV)、B型肝炎、C型肝炎、ライノウィルス、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウィルス(RSV)、麻疹、ポリオ、単純ヘルペスウィルス1型(HSV−1)、及び単純ヘルペスウィルス2型(HSV−2)が含まれる。寄生体の例には、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(P.vivax)、四日熱マラリア原虫(P.malaria)、トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、及びランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)が含まれる。
【0114】
疾患は、癌、又は自己免疫疾患であってもよい。対象の分析物であることができる様々な癌に関連するマーカーには、メラノーマの変異体サイクリン依存性キナーゼ4、メラノーマのp17タンパク質、メラノーマのgp100、メラノーマのメラノーマ関連抗原1(MART−1)(Melan−A)(PCT公開WO第94/21126号)、メラノーマのp15タンパク質、メラノーマのチロシナーゼ(PCT公開WO第94/14459号)、メラノーマのメラノーマ関連抗原(MAGE)1、2、及び3、甲状腺髄様、小細胞肺癌、結腸及び/又は気管支の扁平上皮細胞癌(PCT/US第92/04354号)、メラノーマ関連抗原−Xp(MAGE−Xp)(米国特許第5587289号)、膀胱、メラノーマ、乳房、及び扁平上皮細胞の癌腫のBメラノーマ抗原(BAGE)(米国特許第5571711号及びPCT公開第WO95/00159号)、G抗原(GAGE)(米国特許第5610013号及びPCT公開第WO95/03422号)、腎臓腫抗原(RAGE)ファミリー(米国特許第5939526号)、メラノーマで優先的に発現される抗原(PRAME)(以前のDAGE、PCT公開第WO96/10577号)、メラノーマユビキトス変異タンパク質(melanoma ubiquitous mutated protein)(MUM−1/LB−33B)(米国特許第5589334号)、神経芽細胞腫増幅タンパク質(NAG)(米国特許第5821122号)、FB5(エンドシアリン(endosialin))(米国特許第6217868号)、PSMA(前立腺特異的膜抗原)(米国特許第5935818号)、メラノーマのgp75、メラノーマの癌胎児性抗原、乳房、膵臓、及び卵巣癌のムチンなどの炭水化物/脂質、メラノーマのGM2及びGD2ガングリオシド、癌腫の変異型p53などの癌遺伝子、結腸癌の変異型ras、赤芽球性白血病ウィルス性癌遺伝子ホモログ2(HER2/neu)、乳癌のプロトオンコジーン、並びに子宮頸及び食道の扁平上皮細胞癌のヒトパローマウィルスタンパク質などのウィルス生成物が含まれる。自己免疫疾患に関連するマーカーには、全身性エリテマトーデスに関連するクロマチンに特異的に結合する抗体、ヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子DR2(多発性硬化症に関連する)の存在、DR3(グレーブス病に関連する)又はリウマチ性関節炎に関連するDR4(Janewayら、Immunobiology、Garland Publishing、New York、2001年)が含まれる。
【0115】
H.キット
ある実施形態では、本発明は、試料における対象の分析物を検出するためのキットを提供する。キットは、少なくとも1つのECL部分を含む第1の担体と、第2の担体と、第1及び第2の担体の少なくとも1つに連結する対象の分析物の特異的結合パートナーの少なくとも1つと、少なくとも1つの容器と、場合により指示書とを含むことができる。ある実施形態では、キットは2つ又はそれを超えるECL部分を含むことができる。
【実施例】
【0116】
化学物質及び材料:
Aldrich(ウィスコンシン州、Milwaukee)より入手した、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)二塩化物六水和物(Ru(bpy)3Cl2・6H2O)、トリフルオロ酢酸(TFAA、99%)、テトラフルオロホウ素銀(AgBF4、98%)、及びトリ−n−プロピルアミン(TPrA、99+%);Boulder Scientific社(コロラド州、Mead)より入手した、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(Li[(B(C6F5)4)]nEt2O、n=2〜3);Fluka(ウィスコンシン州、Milwaukee)から入手した、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート((TBA)BF4、電気化学グレード);Life Technologies(メリーランド州、Rockville)から入手した、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris、超高純度);Sigma(ミズーリ州、St.Louis)より入手した、塩酸1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDAC、SigmaUltra)、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、フルオレセインビオチン(90%)、1−メチルイミダゾール、及びDNAハイブリダイゼーションバッファー(PerfectHyb(登録商標)プラス);EM(ニュージャージー州、Gibbstown)より入手した、水酸化ナトリウム(GR)、塩酸(GR)、塩化ナトリウム(GR)、エチルエーテル(無水)、アセトニトリル(HPLC)、テトラヒドロフラン(THF、GR)、及びエチレンジニトリロテトラ酢酸(EDTA)、Pierce(イリノイ州、Rockford)より入手した、アビジン(NeutrAvidin)、D−ビオチン(Immunopure(登録商標))、及びビオチン−PEO−LC−アミン;並びにFisher(ニュージャージー州、Fairlawn)より入手した、メタノール(分光分析用グレード)は、別段の記載がなければ更に精製しないで使用した。ポリスチレンカルボキシレート微粒子/ビーズ(PSB、直径10μm、ビーズ6.5×104個/μLの2.6%(w/w)水性懸濁液)、及びストレプトアビジンコーティングした超常磁性ポリスチレンビーズ(磁性ビーズ又はMBと呼ぶ、(a)直径1.0μm、約9.5×106ビーズ/μLで10mg/mLの水性懸濁液、(b)直径2.8μm、約6.5×105ビーズ/μLで10mg/mLの水性懸濁液)を、それぞれPolySciences社(ペンシルベニア州、Warington)及びDynalBiotech社(ニューヨーク州、Lake Success)から購入した。炭疽菌(Bacillus anthacis)(Ba813)に由来する合成の23−mer1本鎖DNA(ssDNA)オリゴヌクレオチドは、Qiagen Operon(カリフォルニア州、Alameda)から入手し、以下の配列を有しており、:(a)プローブ、5’−[ビオチン−TEG]−AACGA TAGCT CCTAC ATTTG GAG−3’(p−ss−DNA、M.W.=7617g/mol;配列番号:1);(b)標的又は相補的、5’−[ビオチン−TEG]−CTCCA AATGT AGGAG CTATC GTT−3’(t−ssDNA、M.W.=7608g/mol;配列番号:2);(c)非相補的、5’−[ビオチン−TEG]−TTAAC ACCTT AGCGA CGGCT AGT−3’(nc−ssDNA、M.W.=7593g/mol;配列番号:3)、及び(d)2塩基対ミスマッチのオリゴマー配列、5’−[ビオチン−TEG]−CTCCA AACGT AGGAG TTATC GTT−3’(2−bp−m−ssDNA;配列番号:4)、この場合、ビオチンTEGはトリエチレングリコールをベースにした16原子混合の極性スペーサーを含み、ビオチン化したDNAと、表面を制限されたアビジン/ストレプトアビジン相互作用との間の立体障害を減少させるために用いられた。別段の記載がなければ、溶液は全て、18MΩ−cm脱イオン化Mill−Q水(Millipore Corp.、マサチューセッツ州、Bedford)で新たに調製した。
【0117】
ECL及び電気化学的測定
直径2.2mmのPtディスク、作用電極として直径2.0mmのAu又は直径3.0mmのグラッシーカーボン(GC)ディスク、対電極としてPtワイヤー、及び基準電極としてAg/Ag+(10mM AgBF4及び50mM TBABF4のMeCN溶液)の、3電極セルシステムを用いた。各実験の前に、電極は全て慎重に清浄にした。清浄ステップには、作用電極をコーミック(chomic)酸溶液中に浸すステップと、0.05μmアルミナスラリー(Buehler Ltd.、イリノイ州、Lake Bluff)で磨くステップと、大量の水で洗浄するステップと、MeCNですすぐステップと、多孔性のVycorチップとガラスチューブとを基準電極に置き換えるステップが含まれる。5mLの使い捨てのガラスバイアルを、電気化学的セルとした。ECLシグナルがRu(bpy)32+の汚染されたシステムから生成される可能性を除外するために、必要に応じて真新しいガラス器具及び電極を用いた。サイクリックボルタモグラム(CV)とともにECL強度を、電気化学的セルの下に設置した光電子増倍管(PMT、HamamatsuR4220p、日本)と組み合わせた自家製のポテンシオスタットで同時に測定した。高電圧供給電力(Bertan High Voltage Corp.、Series225、ニューヨーク州、Hicksville)で、PMTに750Vの電圧を供給した。
【0118】
別段の記載がなければ、測定は全て、20±2℃の温度で行った。
【0119】
(実施例1)
Ru(bpy)32+含有ECL標識の合成
本試験では、トリス(2,2’−ビピリジル)ルテニウム(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2)をECL標識として用いた、というのは、次項で示すように、この複合体は適切な有機溶液を用いてポリスチレンビーズ中に効果的に充填することができ、水性溶液におけるビーズの一連の修飾の間中ビーズ中の捕捉を維持することができるからである。換言すれば、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2は、有機溶剤に十分可溶であるが、水性溶液には完全に不溶である。ECL標識としてRu(bpy)3[B(C6F5)4]2を選択した別の理由は、複合体のRu(bpy)32+部分のECL効率は非常に高いという事実であった。Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2は、水中でRu(bpy)3Cl2とLi[B(C6F5)4]nEt2O(n=2〜3)との間のメタセシス反応により調製される。沈殿物を水で洗浄し、アセトニトリル/水溶液から再結晶し、真空下で乾燥させる。
【0120】
(実施例2)
共反応化合物としてTPrAを用いた、MeCNにおけるRu(bpy)32+の電気化学的及びECLの挙動
0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の、0.10M(TBA)BF4電解質−0.10M TPrA共反応化合物含有MeCN溶液の、Pt電極での、スキャン速度50mV/sでのサイクリックボルタンメトリー及びECLの応答を、図4に示す。TPrAは、約0.5VvsAg/Ag+のポテンシャルで酸化し始め、約0.75VvsAg/Ag+で最大の酸化のピークを示す(図4a)。電極が、Ru(bpy)32+がRu(bpy)33+に酸化される1.1VvsAg/Ag+よりも陽性のポテンシャルをスキャンされる場合に(図4c)、ECLが生成される(図4b)。ECL強度は、ポテンシャルの上昇とともに継続的に上昇し、最終的に、約700mVの半波長幅の幅広いピーク及び約1.6VvsAg/Ag+のピークポテンシャルを形成する。リバーススキャンの際は、より大きいECL強度、及び同様のピーク位置が観察される。ECLのピークポテンシャルは、TPrAの非存在下でのRu(bpy)32+の酸化ポテンシャルと比べるとよりポジティブであるので、Ru(bpy)32+の酸化ポテンシャルは、TPrAの存在下でポジティブにわずかにシフトすることができることを留意されたい(図4b及びc)。予想通り、Ru(bpy)32+複合体の対イオンにおける変化、例えば、B(C6F5)4−からClO4−への変化は、ECLの挙動を変化させなかった。aμMレベルのRu(bpy)32+を用いた場合にTPrA・+とRu(bpy)3+との反応時の励起状態のRu(bpy)32+・の形成により(Ru(bpy)32+とTPrA・との反応により形成された)TPrA酸化のポテンシャル領域に前値波のECLが現れる水溶液の場合とは対照的に(Miao、Choi、及びBard、2002年、J.Am.Chem.Soc.、124巻、14478頁)、顕著な対応するECLシグナルはMeCNにおいては見られなかった。これが示唆するのは、本実験条件下では、MeCNにおけるTPrA・+の寿命は中性の水溶液におけるよりも短く、又はTPrA・+は、Ru(bpy)3+をRu(bpy)32+*に酸化するほどエネルギー的に十分強力ではないということのいずれかである。これとは別に、我々の結論は、共反応化合物としてTPrAを用いて水溶液で展開したECLのメカニズムは、MeCNにおいて効果があるということである。
【0121】
TPrAの濃度の関数としてのECL強度を図5aに示すが、この場合ECL強度の最も高い領域は、TPrA濃度30mMに対応する。予測されるように、水性溶液におけるECL−pH依存性の試験に基づいて(Lelandら、1990年、J.Electrochem.Soc.、137巻、3127頁)、トリフルオロ酢酸(TFAA)をRu(bpy)32+/TPrA/MeCN溶液中に添加すると、溶液の酸度が変化するので、ECL強度が変化する(図5b)。100mM TPrAを55mM TFAAと組み合わせると、最大のECL応答が得られた。
【0122】
用いた電極の材料によっても、ECL強度及び安定性も影響を受けた。Pt及びAu電極は、同様の応答を示し、ECLはいくつかのポテンシャルサイクル(potential cycles)にわたり安定で、Au電極に比べると、Pt電極では見られた光電流密度はわずかに小さかった。しかし、GC電極では、第1のポテンシャルサイクルのフォワードスキャンのみが光を生成した。GC電極を磨いた後で、光は再び発生し、このことは電極の表面が何かの種類のフィルムにより阻止されていたことを示唆していた。0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2−0.10μM TprA−0.055M TFAA−0.1M(TBA)BF4を含むMeCNから、スキャン速度50mV/sで0と3.0VvsAg/Ag+の間の第1ポテンシャルサイクルの間中、Au、Pt、及びGC電極で得られた相対的ECL強度の比率は、100:93:61であった。
【0123】
興味深いことに、Ru(bpy)32+が非存在であっても、0.10M(TBA)BF4を含むTPrAのアセトニトリル溶液も、ECLシグナルを生成することができる(図6a)。蒸留によるTPrA及びMeCNの精製、(TBA)BF4から(TBA)ClO4への電解質の変更、又は新たに開封した電気化学グレードの電極の使用、真新しいガラス器具及び電極の使用、並びにPt対電極を黒色プラスチックの層のコーティング又はそれなしのガラスチューブでの被覆では、結果は変わらなかった。ECLのピークポテンシャル値は、2.1VvsAg/Ag+であり、0.10μM Ru(bpy)32+の存在下で得られた値に比べると500mVのシフトである(図4b)。先に図5aで示したように、TPrAの非存在下では、0.10M(TBA)BF4を含むTRu(bpy)32+のMeCN溶液は、ポジティブのポテンシャルのみに対してのスキャンでは同じ強度スケールに対して観察可能なECL応答は得られなかった。したがって、図6aに示すECLシグナルは、TPrAを起源とするに違いなく、おそらくはTPrA・のフリーラジカルに関連する電荷移行反応逆光電子放出(CTRIP)によるものである(Murakoshiら、1992年、J.Phys.Chem.、96巻、4593頁;Uosakiら、1991年、J.Phys.Chem.、95巻、779頁;Uosakiら、1990年、Chem.Lett.、7巻、1159頁:Mclntyreら、1987年、J.Electroanal.Chem.Interfac.Electrochem.、228巻、293頁;Mclntyreら、1986年、Rev.Lett.、56巻、651頁;Mclntyreら、1985年、J.Electroanal.Chem.Interfac.Electrochem.、196巻、199頁;Murakoshiら、1993年、Conden Mar Mater.Phys.、47巻、2278頁;Ouyang及びBard、1988年、J.Phys.Chem.、92巻、5201頁;Ouyang及びBard、1987年、J.Phys.Chem.、91巻、4058頁)。図6aから得られた、積分したECL強度は、図4bから得られたものの約12%であり、TPrAの非存在下で0.10M(TBA)BF4/MeCN溶液から測定した残余の光電流は有意に少ないので、意義深いものである(図6d)。バックグラウンドのTPrA関連のECLシグナルは、TFAAを溶液に加えることにより劇的に抑制され(図6b)、「不要な」シグナルの更なる消失は、1%(v/v)H2Oの0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液中への添加により実現した(図6c)。図6eは、図6aからdまでから得られた相対的なECL強度を示している。
【0124】
(実施例3)
ECL標識のポリスチレンビーズ中への充填
直径10μmのポリスチレンカルボキシレートビーズをEppendorf5415D遠心機(Brinkmann Instruments,Inc、ニューヨーク州、Westbury)10krpm5分間で、好適な容積(0.10〜1.0mL)の2.6%(w/w)ポリスチレンビーズ懸濁液から分離し、次いで、水1mLで1回洗浄した。
【0125】
ビーズを、60℃の真空下で1時間乾燥し、その後1.5mLのECL標識Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2−飽和(0.7mM)5%THF−95%MeOH(v/v)溶液を、PSBを含む2mLの微小遠心管中に加えた。混合物を、Dynalサンプルミキサー(Dynal Biotech Inc.)で20rpmで2時間回転させ、その後遠心分離し、50%MeOH−50%H2O(v/v)で2回洗浄した。得られた、Ru(II)⊂PSBと呼ばれる、ECL標識含有の黄色がかったポリスチレンビーズを、60℃の真空下で1時間更に乾燥した。上記の処理の経過中、ポリスチレンビーズは、5%THF−95%MeOHの有機溶剤を含むECL標識でまず膨張し、水不溶のECL標識をポリマーのマトリックス中に拡散させ、そこで有機溶剤が真空蒸発によりビーズから除去されるときに捕捉された。ECL標識のポリスチレンビーズ中への効果的な充填は、Magnafire−Model S99806 Olympus America CCDカメラ(Olympus America、ニューヨーク州、Melville)と組み合わせたNikon Eclipse TE300倒立顕微鏡(Nikon Instruments Inc.、ニューヨーク州、Melville)で撮影した蛍光画像(図2a)により視覚的に証明することができる。ビーズ1個あたりRu(bpy)3[B(C6F5)4]2分子7.5×109個という典型的なローディングキャパシティー(loading capacity)は、TPrAを共反応化合物として用いて、Ru(II)⊂PSBをMeCN及び標準のRu(bpy)3[B(C6F5)4]2溶液に溶解して得たECLのデータ、に基づいて概算された。
【0126】
(実施例4)
Ru(II)⊂PSBの表面上へのアビジンの固定化
ビーズを0.10M EDAC及び0.10M NHSを含む、調製してすぐの25μMアビジンの0.10M 1−メチル−イミダゾールバッファー(pH7)溶液1.5mLに浸漬し、混合物を約40rpmで1時間回転することにより、Ru(II)⊂PSB−CO−NH−アビジンの形成により、アビジンの層を、Ru(II)⊂PSBの表面に共有結合させた。Ru(II)⊂PSB/アビジンと呼ばれる、新たに形成された、アビジンでコーティングしたRu(II)⊂PSBを、5〜10krpmで5分間反応溶液から遠心分離し、1mLの「1×B&Wバッファー」(1×バッファー&洗浄溶液、5mM Tris−HCl(pH7.5)+0.5mM EDTA+1.0M NaCl)で3回洗浄した。最終のRu(II)⊂PSB/アビジン生成物を、出発のPSB懸濁液(0.10〜1.0mL)と同じ容積を有し、使用まで約4℃に保っていた1×B&Wバッファー溶液に再懸濁した。このようにして、Ru(II)⊂PSB/アビジンの調製中のビーズの損失はないと仮定して、約6.5×104Ru(II)⊂PSB/アビジンビーズ/μLを概算することができる。図2bは、ビーズをフルオレセインビオチンと反応させた後のRu(II)⊂PSB/アビジンの明緑色蛍光画像を示しており、高品質のアビジンの層がRu(II)⊂PSBの表面上に形成されたことを示唆している。これとは対照的に、「裸の」Ru(II)⊂PSB上に非特異的に吸着されたフルオレセインビオチンは、非常に弱い蛍光画像を生成するにすぎない。Ru(II)⊂PSB/アビジンのビオチン化23−mer ssDNA(p−ssDNA)に対する結合能力は、フルオレセインビオチン滴定実験に基づくと、0.565nmol(p−ssDNA)/mgPSB又は1.4×108p−ssDNA分子/ビーズの値を有することが見出された(図10及び以下の表1を参照されたい)。
【0127】
(実施例5)
MB及びRu(II)⊂PSB/アビジンビーズの表面へのssDNAの結合
プローブDNA−MB複合体
プローブDNAの担体として、直径1.0μm又は2.8μmのストレプトアビジンでコーティングした磁性ビーズ(MB)を用いた。プローブDNA−MB複合体を形成するために、5.0μLの1.0μmMB、又は10.0μLの2.8μmMBを、最初に2mLの微小遠心管中に移し、次いで、マグネット(Dynal MPC(登録商標)−S)でオリジナルの懸濁液から分離し、その後200μLの「2×B&Wバッファー」(バッファー&洗浄溶液:10mM Tris−HCL(pH7.5)、1.0mM EDTA、2.0M NaCl)で1回、200μLの1×B&Wバッファーで2回洗浄した後、ビーズを2.5μMのビオチン化p−ssDNA100μLに浸漬し、40rpmで穏やかに回転しながら30から60分間インキュベートした。形成したプローブDNA−MB複合体を、引き続き分離し、200μLのB&Wバッファーで3回洗浄し、以前の遠心管の壁面上への可能なプローブDNAの吸着を避けるために新しい2mLの微小遠心管に移し、20μLのハイブリダイゼーションバッファーに再懸濁した。この方法で生成された複合体は、直径1.0μm及び2.8μmのMBに対してそれぞれ、約2.53及び1.1nmole(p−ssDNA)/mg(ビーズ)、又はビーズ1個あたり1.6×106及び10×107個のp−ssDNA分子の飽和プローブのDNA付着量を有していた(図10及び表1を参照されたい)。
【表1】
【0128】
標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン複合体
好適な濃度のビオチン化t−ssDNA(1.0×10−8から1.0×10−15M)100μL、又は1.0×10−9Mの非相補的−ssDNA(nc−ssDNA)及び2塩基対ミスマッチのssDNA(2−bp−m−ssDNA)を、約6.5×104ビーズ/μL Ru(II)⊂PSB/アビジンの1×B&Wバッファー溶液25μLに加え、20rpmの回転速度で穏やかに混合しながら1時間インキュベートし、1×B&Wバッファー200μLで2回洗浄し、3k−5k−10krpmで5分間遠心分離し、ハイブリダイゼーションバッファー50μLに再懸濁した。
【0129】
(実施例6)
DNAハイブリダイゼーション及びECL検出
新たに調製した標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン複合体(実施例5)を、先に形成したプローブDNA−MB複合体(実施例5)を含む2mL遠心分離管に移した。好適な容積のハイブリダイゼーションバッファーを分離管中に加えて、ハイブリダイゼーション溶液の全容積を200μLにした。20rpmで1時間穏やかに混合した後、プローブDNA−MB−標的DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン凝集物を、遊離の非結合のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズを含む「溶液」から磁気的に分離し、200μLの1×B&Wバッファーで3回穏やかに洗浄し、分離管の壁面上への遊離のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズの可能な吸着を最小にするために新しい遠心分離管中に慎重に移した。DNAハイブリダイゼーションの凝集物とともに、壁面上の遊離のRu(II)⊂PSB/アビジンビーズがMeCNに溶解することもあるので、この種の非特異的な吸着により、著しく高レベルのバックグラウンドのECLが生成され得る。凝集物は、最終的に水200μLで洗浄し、後にECLを測定するために0.50mLの0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液に溶解した。DNAハイブリダイゼーションの後、プローブDNA−MB−標的DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン凝集物の形成は、図3に示すSEM画像により明らかに証明することができ、この場合、プローブDNAも相補的なDNAも濃度は5μMであり、MB/PSBの初期比率=29であり、MB及びPSBのサイズは、それぞれ1.0μm及び10μmであった。
【0130】
ECL強度と、10nMから1.0μMの濃度範囲のRu(bpy)3[B(C6F5)4]2との間の線形の関係は、1%の水を加えた0.10M TPrA−0.055M TFAA−0.10(TBA)BF4MeCNで見られた。同じ実験条件下で、ECL強度と、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填した直径10μmのポリスチレンビーズの数との間にも、良好な相関が見られた(図7b)。ビーズを0.50mLの電解質溶液に溶解して、ポリスチレンがECLシグナルを生成せず、又はECLシグナルに影響を及ぼさないことを実証した。図7bを7aと比べると、20のRu(bpy)32+を充填したビーズから生成される光の強度は、0.5nMのRu(bpy)32+からの強度と等しい。ビーズのローディングキャパシティーは、このようにして、ビーズ1個あたり7.5×109Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2分子であると決定された。この結果は、「大量のビーズ」のECL測定に基づいて得られたデータと一致していた。
【0131】
DNAハイブリダイゼーションのECL検出のために、2セットの実験を計画した。第1の実験では、直径1.0μmのMBを、MB対PSBビーズ比率29で用いた。図8aに示すように、この場合、ECL強度は、10pMから10nMの範囲にわたり標的のDNA濃度に比例し、2塩基ミスマッチの2−bp−m−ssDNA及び非相補的なnc−ssDNAは、相補的なDNAハイブリダイゼーションから容易に区別することができる。図7に示す実施例と異なり、電解質溶液に水を加えなかったことを留意されたい、というのは新たに形成されたMB−PSB複合体及び微小遠心管はすでに十分な水を含んでいたからである。図8に示すECL強度に対して、バックグラウンドを差し引かなかったことも留意されたい。MB対PSBの比率を低下させることにより、したがってRu(bpy)32+のt−ssDNAに対する増幅定数を増大することにより、ずっと低い濃度の標的DNA濃度でのDNAハイブリダイゼーションが検出可能でなければならない。以下に実証するように、直径10μmのPSB1個を、直径2.8μmのMB1個とともに引き出すことができる。その結果、DNAハイブリダイゼーションに関連するECLシグナルは非常に低い標的DNA濃度で生じ、したがって、2.8μmのMBと10μmのPSBとが低い比率で存在する場合に検出可能であり得る。図8bは、2.8μmMB/10μmPSBの比率=4であるような例の結果を示している。t−ssDNAは、1.0fmolほどに低い濃度で検出することができる。このような条件下でさえ、得られたECL強度は、2−bp−m−ssDNA及びnc−ssDNAのそれぞれの種の1.0nMを用いた場合に、それらのDNAハイブリダイゼーションから得られるものよりも大きく、したがってそれらと区別することができる。
【0132】
(実施例7)
ビオチン−PEO−LC−アミンのポリスチレンカルボキシレートビーズへの付着、及びポアソン分布検定
ビオチン−PEO−LC−アミン(M.W.=418.6g/mol)は、水に可溶性の架橋剤であり、22.9Åのポリエチレンオキシド(PEO)ベースのスペーサーアームを用いて、ビオチンとアビジンとの相互作用の立体障害を低下させている(2003〜2004年、Applications Handbook&Catalog;Pierce Biotechnology,Inc.、2003年)。ビオチン−PEO−LC−アミン分子は、0.10M EDAC−0.10M NHSの0.10M 1−メチル−イミダゾールバッファー溶液(pH7)の存在下でポリスチレンカルボキシレートビーズの表面に、架橋剤の第1級アミン基とビーズのカルボキシル基との間にアミド結合を形成することにより、共有結合している。5mMビオチン−PEO−LC−アミンの1mLを用いて、2.6%PSB懸濁液の250μLから分離したPSBと反応させる。反応は、回転速度40rpmで2時間行った。架橋剤が修飾したPSBは、PSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンと呼ばれ、引き続き分離され、1×B&Wバッファー400μLで3回洗浄し、1×B&Wバッファー250μLに再懸濁し、次いで使用するまで4℃に保った。
【0133】
直径10μmのPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを用いて、2つの異なるサイズのストレプトアビジン/ポリスチレンコーティング磁性ビーズ(直径1.0及び2.8μmのDynalビーズ)で、ポアソン分布の測定を行った。何万個ものPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを、同一の、又はより大きい数の1.0又は2.8μmの磁性ビーズのいずれかと溶液で十分に混合する場合に、PSBのビオチンとMBのストレプトアビジンとの間の非可逆的な反応により、PSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズが粘着する確率を観察することができ、ポアソン分布に対して予測されるものと比較することができる。実験上は、約6.5×104ビーズ/μLのPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズ50μL(全部で3.3×106PSB)を1×B&Wバッファー175μLで希釈し、製造元のオリジナルの懸濁液から磁気的に分離し2×B&Wバッファー200μLで1回洗浄した既知数のストレプトアビジンコーティング磁性ビーズ(直径1.0μm)を含む2.0mL微小遠心管に移した。混合物を直ちに振とうし、40rpmで1時間回転した後、PSB−MB凝集物を磁気的に混合物から分離した。得られた上清は非結合の遊離のPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズを含んでおり、上清におけるPSBの数は、倒立顕微鏡で肉眼的検査により決定した。同様の手順を用いて、2.8μmMBのポアソン分布を試験した。しかし、この場合は、半分の量のPSB−CO−NH−LC−PEO−ビオチンビーズ、即ち1.6×106ビーズのみを、既知量のMBとの反応に用いた。
【0134】
非常に多数の磁性ビーズとポリスチレンビーズとを一緒に混合する場合は、これら2種類のビーズが衝突し、非可逆的に反応する確率P(m,n)は、ポアソン分布に従うはずであり、以下の2つのパラメータに従うはずである:(a)磁性ビーズのポリスチレンビーズに対する最初の比率m、及び(b)各ポリスチレンビーズに結合している磁性ビーズの数n。例えば、等しい数のMB及びPSビーズを混合した場合(m=1)、PSに結合するMBの平均数は1であるはずである。しかし、この平均値をもたらすには、n=1、2、・・・・の分布が存在する。P(m,n)、mとnとの間の関係は、以下のようにポアソン分布により述べることができる。
【0135】
P(m,n)=e−m[mn/n!] n=0、1、2、・・・
(Haight、Handbook of the Poisson Distribution、John Willey&Sons,Inc.、ニューヨーク、1967年を参照されたい。)
【0136】
表2は、m及びnの様々な値に対するP(m,n)の値を列挙している。この表及びポアソン分布の試験データ(上記に提供)で、1個のポリスチレンビーズに結合し、反応溶液から引き出すのに必要とされる磁性ビーズの最小数を概算することができる。例えば、上清から回収されたPSBの数から、MBに結合し、反応混合液から磁気的に引き出されるPSBのパーセント値を計算することができる。m値が既知数、例えば、m=1、2、3、4、5、・・・である1セットの「結合PSB%」のデータを、次いで、実験的に得ることができる。データがP(m、n>j)の理論値に当てはまる場合(表2)、mは行った実験から既知であり、j=0、1、2、3、・・・であり、
【数1】
である場合は、1個のポリスチレンビーズに結合し、それを引き出すのに必要とされる磁性ビーズの最小数は、j+1でなければならない。
【表2】
【0137】
図9は、このような試験の2つの例を示している。第1の例(図9a)では、2.8μmMBと10μmPSBとを用い、最小の結合比率であるMB/PSB=1を導き出すことができる。第2の例(図9b)では、2.8μmMBの代わりに1.0μmMBを用いて10μmPSBと反応させた。この場合、MBのPSBに対する、より高い最小の結合比率である3が得られた。これらの結合比率を利用して、MBとPSBとの間のDNAハイブリダイゼーションに対する実験条件を最適化することができ、その結果標的DNAの最小濃度を検出することができる。
【0138】
(実施例8)
2つの芳香族炭化水素であるDPA及びルブレンのポリスチレンビーズ中への充填
Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の他に、芳香族炭化水素、例えば、9,10−ジフェニルアントラセン(DPA、図11a)及びルブレン(RUB、図11b)も、ポリスチレンビーズ(PSB)中に充填した。その結果、発光波長の様々なECL標識が得られた。充填の手順は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の捕捉に用いた手順と同様であったが、5%THF−95%MeOHの「膨張溶剤」を5%ベンゼン−95%MeOHに置き換えたので、2つの芳香族炭化水素はベンゼンを含んだ溶剤に十分に可溶である。図12は、充填手順を要約したものである。
【0139】
PSB中へのDPA及びRUBの捕捉は、UV光線で励起した蛍光画像を用いて肉眼的に検証した。図13a及びbに示すように、DPA及びRUBを充填したPSBに対してそれぞれ強烈な青色、及び黄色から橙色の蛍光画像が観察された。これとは対照的に、芳香族炭化水素のないPSBは、弱い緑色の蛍光を示した(図13c)。
【0140】
ビーズ1個あたりDPA分子7.5×109、又はビーズ1個あたりRUB分子4.8×108というローディングキャパシティーを、MeCNに溶解したPSBを充填したDPA又はRUB、及び共反応化合物としてトリプロピルアミン(TPrA)を用いた標準のDPA又はRUB溶液から得たECLのデータに基づいて概算した。図14は、(a)DPAを充填したPSBをMeCNに溶解したもの、及び(b)共反応化合物としてTpRAを用いた0.25mMDPAのアセトニトリル溶液のCV及びECLの挙動である。RUBを充填したPSBをMeCNに溶解したもの、及び共反応化合物としてTPrAを用いた35μM RUBのアセトニトリル溶液のCV及びECLの挙動を、それぞれ図15a及び15bに示す。
【0141】
(実施例9)
C反応性タンパク質(CRP)のECL検出
Ru(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP複合体を、以下のように調製した:0.100〜0.500mLのRu(II)⊂PSB/アビジン(6.5×104ビーズ/μL)(実施例4を参照されたい)を、2.0mg/mLビオチン化抗−CRP(Miao及びBard、2003年、Anal.Chem.、75巻、5825頁)の0.10M PBSバッファー(0.1Mリン酸ナトリウム、0.15M塩化ナトリウム)(pH7.2)(Pierce、イリノイ州、Rockford)溶液の1mLと、室温で1時間、回転速度25rpmで混合した。新たに形成した複合体を遠心分離により回収し、1×B&Wバッファーで3回洗浄し(実施例4を参照されたい)、2%ウシ血清アルブミン(BSA)/0.10M PBS(pH7.2)溶液1mLに30分間再懸濁した。遠心分離及び洗浄後(上記の通り)、複合体を適切な容積(0.100〜0.500mL)の0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液に懸濁し、使用するまで4℃に保った。
【0142】
MB←抗−CRP複合体を、以下のように調製した:直径2.8μmのストレプトアビジンでコーティングした磁性ビーズ0.100〜0.500mL(MB、6.5×105ビーズ/μL)を磁気的に分離し、2×B&Wバッファー1mLで1回、1×B&Wバッファー1mLで2回洗浄し、その後2.0mg/mLビオチン化抗−CRPの0.10M PBSバッファー溶液(pH7.2)の1.5mLと、室温で1時間、25rpmの回転速度で混合した。新たに形成したMB←抗−CRP複合体を、1×B&Wバッファー1mLで3回洗浄し、適切な容積(0.100〜0.500mL)の0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液に再懸濁し、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0143】
サンドイッチタイプのRu(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP<CRP>MB←抗−CRP複合体を以下のように形成した:Ru(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRP複合体(全部で1.3×106PSB)20μL及びMB←抗−CRP複合体(全部で1.3×107PSB)20μLを、0.10M PBS(pH7.2)バッファー溶液200μL中のCRP試料と、室温で2時間穏やかに混合した。サンドイッチタイプの複合体を混合溶液から磁気的に分離し、1×B&Wバッファー200μLで3回洗浄した。次いで、遊離のRu(II)⊂PSB/アビジン←抗−CRPの古い遠心管の壁面上への可能な吸着が最小になるように、複合体を少容積のPBSバッファーで、新しい2mLの遠心管に移した(実施例6を参照されたい)。最後に「磁性の複合体」をマグネットで溶液から分離した。
【0144】
ECLによりCRPを検出した。得られたサンドイッチ型の複合体を、0.10M TPrA−0.055TFAA−0.10M(TBA)BF4MeCN溶液0.500mLに溶解し、直径2.2mmのPt電極で、スキャンスピード50mV/sで、0〜2.8V vs.Ag/Ag+(0.10M(TBA)BF4MeCN中の10mM AgBF4)の走査電位窓でサイクリックボルタンメトリーを用いてECL実験を行った。予想通り、サンドイッチタイプの複合体から得られたCV及びECLのプロファイルは、両方の場合とも「反応種」、Ru(bpy)32+及びTPrAが同一であったので、図4a及びcに示したものと非常に類似していた。図16に示すように、ECL強度(フォワードスキャンピーク強度とリバーススキャンピーク強度との平均)は、0.010〜10μg/mLの範囲にわたるCRP濃度に対して線形に比例している。
【0145】
本明細書に引用される参照は全て、その全文が参照として本明細書に組み入れられる。参照として組み入れられる出版物、及び特許、又は特許出願が本明細書に含まれている開示と矛盾する範囲では、本明細書は、そのような矛盾する材料のあらゆるものに取って代わり、及び/又は優先することが意図される。
【0146】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる、成分、反応条件などの量を表す数値は全て、全ての場合において「約」という語により修飾されるものであることを理解されたい。したがって、逆を示さなければ、本明細書及び添付する特許請求の範囲で述べた数のパラメータは、本発明により得られることが求められている、望ましい性質に応じて変化することができる近似値である。控えめに言っても、且つ、特許請求の範囲の同等物の学説の適用を制限しようとするものではないが、数値のパラメータはそれぞれ、有効数字の数、及び通常の数字を丸める取組みを考慮して解釈されたい。
【0147】
当業者であれば明らかであるが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の多くの変更形態及び変形形態を行うことは可能である。本明細書に記載した特異的実施形態は、例として提供されるにすぎず、決して限定的なものを意味するものではない。明細書及び実施例は、例示的なものにすぎないとみなすべきであり、本発明の真の範囲及び精神は、以下の特許請求の範囲により示されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】対象の分析物が、ECL標識を含む第1の担体としても働くポリスチレンビーズに連結するDNA分子である、本発明のある実施形態の概略図である。磁性であり、ポリスチレンビーズに連結するDNA分子に相補的なDNA分子に連結する第2の担体として働く第2のビーズも示してある。2つのDNA分子は結合して複合体を形成する。磁場を複合体に適用することにより、対象の分析物(例えばDNA)を単離する手段がもたらされ、ECL標識を検出することにより、対象の分析物を検出する手段がもたらされる。
【図2】直径10μmのポリスチレンカルボキシレートビーズの蛍光画像を示す図である。図2(a)は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2の捕捉後のビーズを示し、図2(b)は、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填したビーズの表面上にアビジンが共有結合した後のビーズを示している。使用した暴露時間は30秒であった。検体は、λex490nmで励起した。
【図3】プローブDNA−磁性ビーズ複合体(DNA−MB)と、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2を含むアビジンでコーティングしたポリスチレンビーズ(DNA−Ru(II)⊂PSB/アビジンで表してある)に複合した相補的なDNAとの間のDNAハイブリダイゼーション後に得られた走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。両方のDNA分子に用いた濃度は5μMであり、PSB及びMBのサイズは、それぞれ10μm及び1.0μmであった。
【図4】0.10M(TBA)BF4電解質−0.10Mトリプロピルアミン(TPrA)共反応化合物を含む0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2のアセトニトリル(MeCN)から得られた(a)サイクリックボルタンメトリーの(CV)、及び(b)ECLの、直径2.2mmのPt電極でスキャン速度50mV/sでの応答を示す図である。比較のために、(c)に、TPrAの非存在下で0.10M(TBA)BF4を含む1.0mM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2のMeCNのCVを示す。(c)の実験条件は、(a)及び(b)と同じであるが、CV電流は10倍であった。
【図5】ECL強度に対する(a)TPrA、及び(b)TPrA−トリフルオロ酢酸(TFAA)の濃度の効果を示す図である。試料は全て、0.10μM Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2及び0.10M(TBA)BF4のMeCNを含んでいた。作用電極は、直径2.2mmのPt電極であった。スキャン速度は50mV/sであった。
【図6】TPrA−MeCNシステムに対するECLバックグラウンドの消失を示す図である。(a)では、0.10M TPrA及び0.10M(TBA)BF4−MeCNを用いた。(b)では、0.055M TFAAを添加し、(a)と同じ条件を用いた。(c)では、1.0%(v/v)H2Oを添加し、(b)と同じ条件を用いた。(d)では、0.10M(TBA)BF4−MeCNを用いた。図6(e)は、(a)〜(d)に示した相対的なECL強度を示している。
【図7】Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2濃度の関数としてのECL強度(a)、及びRu(bpy)3[B(C6F5)4]2を充填した直径10μmのポリスチレンビーズの数(b)を示す図である。
【図8】DNAハイブリダイゼーションのECL検出を示す図である。図8(a)は、MB/PSB=29の比率で、プローブDNA−MB(1.0μm)と、標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン(10μm)との間でDNAハイブリダイゼーションが起こったことを示す。図8(b)は、MB/PSB=4の比率で、プローブDNA−MB(2.8μm)と標的のDNA−Ru(II)⊂PSB/アビジン(10μm)との間でDNAハイブリダイゼーションが起こったことを示す。
【図9】直径10μmのビオチン化PSBと反応した直径(a)2.8μm、及び(b)1.0μmのストレプトアビジンコーティングしたMBを用いた、ポアソン分布の検定を示す図である。「結合しているPSB%」は、反応媒体からMB−PSB複合体を磁気的に分離した後、上清に見られたPSBの数から計算した。
【図10】フルオレセインビオチン滴定実験で得られた、ビオチン化した23−mer−ssDNA(p−ssDNA)に対する(a)Ru(bpy)32+で捕捉されたストレプトアビジンでコーティングした直径10μmのポリスチレンビーズ、(b)ストレプトアビジンでコーティングした直径1.0μmの磁性ビーズ、及び(c)ストレプトアビジンでコーティングした直径2.8μmの磁性ビーズの結合能力を示す図である。
【図11】DPA(a)及びRUB(b)の分子構造を示す図である。
【図12】芳香族炭化水素をポリスチレンビーズ中に充填するための手順におけるステップを表すフローチャートである。
【図13】(a)DPAを充填したPSB、(b)RUBを充填したPSB、及び(c)PSBのみの蛍光画像を示す図である。
【図14】(a)MeCNに溶解した、DPAを充填したPSB、及び(b)共反応化合物としてTPrAを用いた0.25mM DPAのアセトニトリル溶液の、CV及びECLの挙動を示す図である。
【図15】(a)MeCNに溶解した、RUBを充填したPSB、及び(b)共反応化合物としてTPrAを用いた35μM RUBのアセトニトリル溶液の、CV及びECLの挙動を示す図である。
【図16】ECLシグナルとC反応性タンパク質(CRP)の濃度との間の関係を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BとDの両方が対象の分析物に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の分析物を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法。
【請求項2】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象の分析物がDに直接連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象の分析物の第2の結合パートナーがDに連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象の分析物がBにもDにも連結しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが、B及びDの少なくとも1つに連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
同一の特異的結合パートナーがBとDに連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の分析物が核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸がDNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ECL部分が前記第1の担体に含まれており、該第1の担体の表面に連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ECL部分に電気化学的ポテンシャルを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記放射された電磁放射を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の担体が、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の担体が、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、リン脂質、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)、及び界面活性剤から選択される化合物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の担体がビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(a)で形成された複合体が、電磁場を適用することにより前記組成物の他の構成成分から単離される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
Bを有機溶剤に溶解するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記有機溶剤がアセトニトリルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料における前記対象の分析物の量が定量される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記試料における前記対象の分析物の量を、既知量の対象の分析物を含む試料Cを用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法。
【請求項35】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Dが前記対象の核酸分子の前記第2の特異的結合パートナーに連結しており、更に該第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
Bが前記対象の核酸分子の前記第1の特異的結合パートナーに連結しており、Dが前記対象の核酸分子の前記第2の特異的結合に連結している、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記第1及び前記第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記試料における前記対象の核酸の量が定量される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記試料における前記対象の核酸の量を、既知量の対象の核酸を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物。
【請求項49】
前記対象の分析物がBに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記対象の分析物がDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
前記対象の分析物がBにもDにも連結していない、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項48に記載の組成物。
【請求項53】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記第1の特異的結合パートナーがBに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項55】
前記第2の特異的結合パートナーがDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項56】
前記第1の特異的結合パートナーがBに連結しており、前記第2の特異的結合パートナーがDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項57】
2つの特異的結合パートナーを含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項58】
前記2つの特異的結合パートナーが、前記第1及び第2の担体に独立して連結している、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記対象の分析物が核酸である、請求項48に記載の組成物。
【請求項60】
前記核酸がDNAである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項48に記載の組成物。
【請求項62】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項48に記載の組成物。
【請求項63】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項48に記載の組成物。
【請求項64】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項65】
B及びDが、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、又はミセルである、請求項48に記載の組成物。
【請求項66】
前記第1及び第2の固体支持体が、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、及びカルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物から独立して構成される、請求項53に記載の組成物。
【請求項67】
前記第1及び第2の固体支持体の少なくとも1つがビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項68】
前記第2の固体支持体が磁化ビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項69】
前記第1の固体支持体がポリスチレンビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項70】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結し、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、及び
Dは対象の核酸分子に連結し、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない]。
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物。
【請求項71】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
Bが対象の核酸分子の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、更に該第1の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項70に記載の組成物。
【請求項75】
Dが対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結し、更に該第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項70に記載の組成物。
【請求項76】
Bが対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Dが対象の核酸分子の第2の特異的結合に連結する、請求項70に記載の組成物。
【請求項77】
前記第1及び前記第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項70に記載の組成物。
【請求項79】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいない。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物。
【請求項80】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項79に記載の組成物。
【請求項82】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結しており、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項79に記載の組成物。
【請求項84】
Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結しており、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項79に記載の組成物。
【請求項85】
前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナー、及び前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーが抗体である、請求項79に記載の組成物。
【請求項86】
但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第1の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質に、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結することができる磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法。
【請求項87】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記ECL部分を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、更に該第1の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項86に記載の方法。
【請求項92】
Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結し、更に該第2の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項86に記載の方法。
【請求項93】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結している、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記第1及び第2の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はそれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項86に記載の方法。
【請求項96】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項86に記載の方法。
【請求項97】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記試料における前記対象のタンパク質の量が定量される、請求項86に記載の方法。
【請求項100】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を、既知量の対象のタンパク質を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
B及びDの1つのみが対象の分析物の類似体に連結し、
Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象の分析物の結合パートナーに連結しており、Bが対象の分析物の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の分析物の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、Dを含む複合体を、該組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)該複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法。
【請求項102】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記特異的結合パートナーが抗体である、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記対象の分析物が核酸である、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記特異的結合パートナーが核酸である、請求項101に記載の方法。
【請求項107】
前記対象の核酸分子がDNAである、請求項101に記載の方法。
【請求項108】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項101に記載の方法。
【請求項109】
前記ECL部分が第1の担体に含まれている、請求項101に記載の方法。
【請求項110】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項101に記載の方法。
【請求項111】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項101に記載の方法。
【請求項112】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項113】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項114】
前記ECL部分に電気化学的ポテンシャルを適用することを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項115】
前記放射された電磁放射を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項116】
前記第1及び第2の担体が、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルから選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項117】
B及びDが、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、及びポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物を独立に含む、請求項103に記載の方法。
【請求項118】
前記第1及び第2の担体がビーズである、請求項101に記載の方法。
【請求項119】
前記第2の担体が磁化ビーズである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
A、B、Dを含む複合体が、電磁場を適用することにより前記組成物の他の構成成分から単離される、請求項118に記載の方法。
【請求項122】
Bを有機溶剤に溶解するステップを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項123】
前記有機溶剤がアセトニトリルである、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項125】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記試料における前記対象の分析物の量を定量する、請求項101に記載の方法。
【請求項128】
前記試料における前記対象の分析物の量を、既知量の対象の分析物を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
B及びDの1つのみが、対象の核酸の類似体に連結し、
Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法。
【請求項130】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
Bが前記対象の核酸分子の類似体に連結しており、更に該類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
Dが前記対象の核酸分子の類似体に連結し、更に該類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項135】
前記対象の核酸分子の類似体と、前記対象の核酸分子の特異的結合パートナーの両方が、オリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項136】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項129に記載の方法。
【請求項137】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項129に記載の方法。
【請求項138】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項129に記載の方法。
【請求項139】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項129に記載の方法。
【請求項140】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項129に記載の方法。
【請求項141】
前記試料における前記対象の核酸の量を定量する、請求項129に記載の方法。
【請求項142】
前記試料における前記対象の核酸の量を、既知量の対象の核酸を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結して、
Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーのいずれかに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法。
【請求項144】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項143に記載の方法。
【請求項147】
前記ECL部分を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
前記Bが前記対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項143に記載の方法。
【請求項149】
Dが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項143に記載の方法。
【請求項150】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項143に記載の方法。
【請求項151】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項143に記載の方法。
【請求項152】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を定量する、請求項143に記載の方法。
【請求項155】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を、既知量の対象のタンパク質を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物の類似体に連結することができるか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、
Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物。
【請求項157】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項156に記載の組成物。
【請求項158】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項157に記載の組成物。
【請求項159】
前記特異的結合パートナーがBに連結している、請求項156に記載の組成物。
【請求項160】
前記特異的結合パートナーがDに連結している、請求項156に記載の組成物。
【請求項161】
前記対象の分析物が核酸である、請求項156に記載の組成物。
【請求項162】
前記核酸がDNA又はRNAである、請求項161に記載の組成物。
【請求項163】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項156に記載の組成物。
【請求項164】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項156に記載の組成物。
【請求項165】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項156に記載の組成物。
【請求項166】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項156に記載の組成物。
【請求項167】
B及びDが、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルである、請求項156に記載の組成物。
【請求項168】
B及びDが、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、及びカルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物から独立に構成される、請求項157に記載の組成物。
【請求項169】
前記固体支持体がビーズである、請求項157に記載の組成物。
【請求項170】
前記第2の固体支持体が磁化ビーズである、請求項158に記載の組成物。
【請求項171】
前記第1の固体支持体がポリスチレンビーズである、請求項158に記載の組成物。
【請求項172】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象の核酸分子の類似体に連結し、
Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結している]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物。
【請求項173】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項172に記載の組成物。
【請求項174】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項172に記載の組成物。
【請求項175】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項174に記載の組成物。
【請求項176】
Bが前記対象の核酸分子の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項177】
Dが前記対象の核酸分子の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項178】
前記対象の核酸分子の類似体、及び前記特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項179】
前記対象の核酸がDNA又はRNAである、請求項172に記載の組成物。
【請求項180】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、
Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物。
【請求項181】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項180に記載の組成物。
【請求項182】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項180に記載の組成物。
【請求項183】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項182に記載の組成物。
【請求項184】
Bが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項180に記載の組成物。
【請求項185】
Dが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項180に記載の組成物。
【請求項186】
電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得る少なくとも1つのECL部分と、
該ECL部分を含む第1の担体であって、対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結する、第1の担体と、
対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結する、第2の担体と
を含む、試料における対象の分析物を検出するためのキット。
【請求項187】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項186に記載のキット。
【請求項188】
前記第1及び第2の担体が固体支持体である、請求項186に記載のキット。
【請求項189】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項190】
前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項191】
前記第1の担体がポリスチレンビーズであり、前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項192】
前記対象の分析物が核酸である、請求項186に記載のキット。
【請求項193】
前記対象の分析物の前記第1及び第2の結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項192に記載のキット。
【請求項194】
前記対象の分析物の類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項192に記載のキット。
【請求項195】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項186に記載のキット。
【請求項196】
前記対象の分析物の前記第1及び第2の結合パートナーが抗体又は特異的結合タンパク質である、請求項195に記載のキット。
【請求項197】
芳香族炭化水素を含有するポリスチレンビーズを含む組成物。
【請求項198】
前記芳香族炭化水素がジフェニルアントラセン及びルブレンから選択される、請求項197に記載の組成物。
【請求項199】
前記ポリスチレンビーズが約7.5×109個のジフェニルアントラセン分子を含む、請求項197に記載の組成物。
【請求項200】
前記ポリスチレンビーズが約4×108個のルブレン分子を含む、請求項197に記載の組成物。
【請求項201】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項13、86、108、又は143に記載の方法。
【請求項202】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項61、79、163、又は180に記載の組成物。
【請求項203】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項195に記載のキット。
【請求項204】
kが2以上の整数である、請求項1、34、86、101、129、又は143に記載の方法。
【請求項205】
kが2以上の整数である、請求項48、70、79、156、172、又は180に記載の組成物。
【請求項206】
少なくとも2つのECL部分を更に含む、請求項186に記載のキット。
【請求項1】
BとDの両方が対象の分析物に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の分析物を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法。
【請求項2】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記対象の分析物がDに直接連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記対象の分析物の第2の結合パートナーがDに連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
対象の分析物がBにもDにも連結しない、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが、B及びDの少なくとも1つに連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
同一の特異的結合パートナーがBとDに連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の分析物が核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの特異的結合パートナーが核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記核酸がDNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ECL部分が前記第1の担体に含まれており、該第1の担体の表面に連結する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ECL部分に電気化学的ポテンシャルを適用することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記放射された電磁放射を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1及び第2の担体が、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の担体が、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、リン脂質、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)、及び界面活性剤から選択される化合物を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の担体がビーズである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
(a)で形成された複合体が、電磁場を適用することにより前記組成物の他の構成成分から単離される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
Bを有機溶剤に溶解するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記有機溶剤がアセトニトリルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記試料における前記対象の分析物の量が定量される、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記試料における前記対象の分析物の量を、既知量の対象の分析物を含む試料Cを用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子に連結しているか、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法。
【請求項35】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Dが前記対象の核酸分子の前記第2の特異的結合パートナーに連結しており、更に該第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
Bが前記対象の核酸分子の前記第1の特異的結合パートナーに連結しており、Dが前記対象の核酸分子の前記第2の特異的結合に連結している、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記第1及び前記第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項34に記載の方法。
【請求項45】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項34に記載の方法。
【請求項46】
前記試料における前記対象の核酸の量が定量される、請求項34に記載の方法。
【請求項47】
前記試料における前記対象の核酸の量を、既知量の対象の核酸を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量される、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物に連結しているか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象の分析物に連結してはいない。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物。
【請求項49】
前記対象の分析物がBに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記対象の分析物がDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項51】
前記対象の分析物がBにもDにも連結していない、請求項48に記載の組成物。
【請求項52】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項48に記載の組成物。
【請求項53】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項52に記載の組成物。
【請求項54】
前記第1の特異的結合パートナーがBに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項55】
前記第2の特異的結合パートナーがDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項56】
前記第1の特異的結合パートナーがBに連結しており、前記第2の特異的結合パートナーがDに連結している、請求項48に記載の組成物。
【請求項57】
2つの特異的結合パートナーを含む、請求項48に記載の組成物。
【請求項58】
前記2つの特異的結合パートナーが、前記第1及び第2の担体に独立して連結している、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
前記対象の分析物が核酸である、請求項48に記載の組成物。
【請求項60】
前記核酸がDNAである、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項48に記載の組成物。
【請求項62】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項48に記載の組成物。
【請求項63】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項48に記載の組成物。
【請求項64】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項48に記載の組成物。
【請求項65】
B及びDが、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、又はミセルである、請求項48に記載の組成物。
【請求項66】
前記第1及び第2の固体支持体が、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、及びカルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物から独立して構成される、請求項53に記載の組成物。
【請求項67】
前記第1及び第2の固体支持体の少なくとも1つがビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項68】
前記第2の固体支持体が磁化ビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項69】
前記第1の固体支持体がポリスチレンビーズである、請求項53に記載の組成物。
【請求項70】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子に連結し、又は対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、及び
Dは対象の核酸分子に連結し、又は対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象の核酸分子に連結してはいない]。
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物。
【請求項71】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項72に記載の組成物。
【請求項74】
Bが対象の核酸分子の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、更に該第1の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項70に記載の組成物。
【請求項75】
Dが対象の核酸分子の第2の特異的結合パートナーに連結し、更に該第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項70に記載の組成物。
【請求項76】
Bが対象の核酸分子の第1の特異的結合パートナーに連結しており、Dが対象の核酸分子の第2の特異的結合に連結する、請求項70に記載の組成物。
【請求項77】
前記第1及び前記第2の特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項76に記載の組成物。
【請求項78】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項70に記載の組成物。
【請求項79】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質に連結しているか、又は対象のタンパク質の第2の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいない。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物。
【請求項80】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項79に記載の組成物。
【請求項81】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項79に記載の組成物。
【請求項82】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項81に記載の組成物。
【請求項83】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結しており、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項79に記載の組成物。
【請求項84】
Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結しており、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項79に記載の組成物。
【請求項85】
前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナー、及び前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーが抗体である、請求項79に記載の組成物。
【請求項86】
但し、BとDの両方が対象のタンパク質に連結してはいないという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質に、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第1の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質に、又は対象のタンパク質に特異的に結合している第2の特異的結合パートナーに連結することができる磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法。
【請求項87】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項86に記載の方法。
【請求項89】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項86に記載の方法。
【請求項90】
前記ECL部分を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項86に記載の方法。
【請求項91】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、更に該第1の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項86に記載の方法。
【請求項92】
Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結し、更に該第2の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項86に記載の方法。
【請求項93】
Bが前記対象のタンパク質の前記第1の特異的結合パートナーに連結し、Dが前記対象のタンパク質の前記第2の特異的結合パートナーに連結している、請求項86に記載の方法。
【請求項94】
前記第1及び第2の特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はそれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項86に記載の方法。
【請求項96】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項86に記載の方法。
【請求項97】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項96に記載の方法。
【請求項99】
前記試料における前記対象のタンパク質の量が定量される、請求項86に記載の方法。
【請求項100】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を、既知量の対象のタンパク質を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
B及びDの1つのみが対象の分析物の類似体に連結し、
Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象の分析物の結合パートナーに連結しており、Bが対象の分析物の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の分析物の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の特異的結合パートナーに連結している第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、Dを含む複合体を、該組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)該複合体におけるECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の分析物の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の分析物を検出する方法。
【請求項102】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項101に記載の方法。
【請求項104】
前記特異的結合パートナーが抗体である、請求項101に記載の方法。
【請求項105】
前記対象の分析物が核酸である、請求項101に記載の方法。
【請求項106】
前記特異的結合パートナーが核酸である、請求項101に記載の方法。
【請求項107】
前記対象の核酸分子がDNAである、請求項101に記載の方法。
【請求項108】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項101に記載の方法。
【請求項109】
前記ECL部分が第1の担体に含まれている、請求項101に記載の方法。
【請求項110】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項101に記載の方法。
【請求項111】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項101に記載の方法。
【請求項112】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項101に記載の方法。
【請求項113】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項114】
前記ECL部分に電気化学的ポテンシャルを適用することを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項115】
前記放射された電磁放射を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項116】
前記第1及び第2の担体が、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルから選択される、請求項101に記載の方法。
【請求項117】
B及びDが、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カルボキシメチルキチン、及びポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物を独立に含む、請求項103に記載の方法。
【請求項118】
前記第1及び第2の担体がビーズである、請求項101に記載の方法。
【請求項119】
前記第2の担体が磁化ビーズである、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項118に記載の方法。
【請求項121】
A、B、Dを含む複合体が、電磁場を適用することにより前記組成物の他の構成成分から単離される、請求項118に記載の方法。
【請求項122】
Bを有機溶剤に溶解するステップを更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項123】
前記有機溶剤がアセトニトリルである、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項101に記載の方法。
【請求項125】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項124に記載の方法。
【請求項127】
前記試料における前記対象の分析物の量を定量する、請求項101に記載の方法。
【請求項128】
前記試料における前記対象の分析物の量を、既知量の対象の分析物を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
B及びDの1つのみが、対象の核酸の類似体に連結し、
Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象の核酸分子を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)Bを有機溶剤に溶解するステップと、
(d)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(e)放射された電磁放射を検出し、それにより対象の核酸分子の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象の核酸分子を検出する方法。
【請求項130】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
Bが前記対象の核酸分子の類似体に連結しており、更に該類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
Dが前記対象の核酸分子の類似体に連結し、更に該類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項135】
前記対象の核酸分子の類似体と、前記対象の核酸分子の特異的結合パートナーの両方が、オリゴヌクレオチドである、請求項129に記載の方法。
【請求項136】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項129に記載の方法。
【請求項137】
前記対象の核酸分子がDNA又はRNAである、請求項129に記載の方法。
【請求項138】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項129に記載の方法。
【請求項139】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項129に記載の方法。
【請求項140】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項129に記載の方法。
【請求項141】
前記試料における前記対象の核酸の量を定量する、請求項129に記載の方法。
【請求項142】
前記試料における前記対象の核酸の量を、既知量の対象の核酸を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項141に記載の方法。
【請求項143】
B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結して、
Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結しているという条件で、
(a)(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質の類似体、又は対象のタンパク質に特異的に結合している特異的結合パートナーのいずれかに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である]
を含む組成物を形成するステップと、
(b)A、B、D、及び対象のタンパク質を含む複合体を、組成物の他の構成成分から分離するステップと、
(c)ECL部分を電気化学的エネルギーに直接曝すことにより、ECL部分に電磁放射の繰り返し放射を引き起こすステップと、
(d)放射された電磁放射を検出し、それにより対象のタンパク質の存在を検出するステップと
を含む、試料における対象のタンパク質を検出する方法。
【請求項144】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項143に記載の方法。
【請求項147】
前記ECL部分を光電子増倍管で検出することを更に含む、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
前記Bが前記対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項143に記載の方法。
【請求項149】
Dが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体、抗体の一部分、又は結合タンパク質である、請求項143に記載の方法。
【請求項150】
Bが、アセトニトリル、THF、ベンゼン、又はこれらの混合物から選択される有機溶剤に溶解している、請求項143に記載の方法。
【請求項151】
共反応化合物の添加を更に含む、請求項143に記載の方法。
【請求項152】
前記共反応化合物がアミン又はアミン部分である、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記共反応化合物がトリ−n−プロピルアミン(TPrA)である、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を定量する、請求項143に記載の方法。
【請求項155】
前記試料における前記対象のタンパク質の量を、既知量の対象のタンパク質を含む試料(C)を用いる方法を実行することにより調製した検量線と、放射された電磁放射の量を比較することにより定量する、請求項154に記載の方法。
【請求項156】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含む第1の担体であり、Bは対象の分析物の類似体に連結しているか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の分析物を含むことがある試料であり、
Dは対象の分析物の類似体に連結することができるか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結することができる第2の担体であり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象の分析物の類似体に連結し、
Bが対象の分析物の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象の分析物を検出するための組成物。
【請求項157】
B及びDの少なくとも1つが固体支持体である、請求項156に記載の組成物。
【請求項158】
Bが第1の固体支持体であり、Dが第2の固体支持体である、請求項157に記載の組成物。
【請求項159】
前記特異的結合パートナーがBに連結している、請求項156に記載の組成物。
【請求項160】
前記特異的結合パートナーがDに連結している、請求項156に記載の組成物。
【請求項161】
前記対象の分析物が核酸である、請求項156に記載の組成物。
【請求項162】
前記核酸がDNA又はRNAである、請求項161に記載の組成物。
【請求項163】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項156に記載の組成物。
【請求項164】
前記ECL部分が有機溶剤に可溶である、請求項156に記載の組成物。
【請求項165】
前記ECL部分が水性溶剤に不溶である、請求項156に記載の組成物。
【請求項166】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項156に記載の組成物。
【請求項167】
B及びDが、ビーズ、ゲル、膜、リポソーム、及びミセルである、請求項156に記載の組成物。
【請求項168】
B及びDが、ポリスチレン、ポリプロピレン、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、PVDF、セファロース、セファデックス、ヒアルロン酸、キチン、アシルジェラン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、及びカルボキシメチルキチン、ポリ(ラクチド−co−エチレングリコール)から選択される化合物から独立に構成される、請求項157に記載の組成物。
【請求項169】
前記固体支持体がビーズである、請求項157に記載の組成物。
【請求項170】
前記第2の固体支持体が磁化ビーズである、請求項158に記載の組成物。
【請求項171】
前記第1の固体支持体がポリスチレンビーズである、請求項158に記載の組成物。
【請求項172】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結しており、
Cは対象の核酸分子を含むことがある試料であり、
Dは対象の核酸分子の類似体に連結しているか、又は対象の核酸分子の特異的結合パートナーに連結している磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象の核酸分子の類似体に連結し、
Bが対象の核酸分子の類似体に連結している場合には、Dは対象の核酸分子の結合パートナーに連結しており、Bが対象の核酸分子の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象の核酸分子の類似体に連結している]
を含む、試料における対象の核酸分子を検出するための組成物。
【請求項173】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項172に記載の組成物。
【請求項174】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項172に記載の組成物。
【請求項175】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項174に記載の組成物。
【請求項176】
Bが前記対象の核酸分子の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項177】
Dが前記対象の核酸分子の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項178】
前記対象の核酸分子の類似体、及び前記特異的結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項172に記載の組成物。
【請求項179】
前記対象の核酸がDNA又はRNAである、請求項172に記載の組成物。
【請求項180】
(A)k、(B)u、(C)、(D)x
[式中、
Aは、電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得るECL部分であり、
BはAを含むポリスチレンビーズであり、Bは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結し、
Cは対象のタンパク質を含むことがある試料であり、
Dは対象のタンパク質の類似体に連結するか、又は対象のタンパク質の特異的結合パートナーに連結する磁性ビーズであり、
k、u、及びxは、各々、1以上の整数である。
但し、B及びDの1つのみが、対象のタンパク質の類似体に連結し、
Bが対象のタンパク質の類似体に連結している場合には、Dは対象のタンパク質の結合パートナーに連結しており、Bが対象のタンパク質の結合パートナーに連結している場合には、Dは対象のタンパク質の類似体に連結している。]
を含む、試料における対象のタンパク質を検出するための組成物。
【請求項181】
前記ECL部分がオスミウム及びルテニウムから選択される金属イオンを含む、請求項180に記載の組成物。
【請求項182】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項180に記載の組成物。
【請求項183】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2である、請求項182に記載の組成物。
【請求項184】
Bが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項180に記載の組成物。
【請求項185】
Dが前記対象のタンパク質の前記特異的結合パートナーに連結し、更に該特異的結合パートナーが抗体又は結合タンパク質である、請求項180に記載の組成物。
【請求項186】
電気化学的エネルギー源に直接曝すことにより電磁放射を繰り返し放射することが引き起こされ得る少なくとも1つのECL部分と、
該ECL部分を含む第1の担体であって、対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第1の特異的結合パートナーに連結する、第1の担体と、
対象の分析物の類似体に連結するか、又は対象の分析物の第2の特異的結合パートナーに連結する、第2の担体と
を含む、試料における対象の分析物を検出するためのキット。
【請求項187】
前記ECL部分が、Ru(bpy)3[B(C6F5)4]2、ルブレン、及び9,10−ジフェニルアントラセンから選択される、請求項186に記載のキット。
【請求項188】
前記第1及び第2の担体が固体支持体である、請求項186に記載のキット。
【請求項189】
前記第1の担体がポリスチレンビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項190】
前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項191】
前記第1の担体がポリスチレンビーズであり、前記第2の担体が磁性ビーズである、請求項186に記載のキット。
【請求項192】
前記対象の分析物が核酸である、請求項186に記載のキット。
【請求項193】
前記対象の分析物の前記第1及び第2の結合パートナーがオリゴヌクレオチドである、請求項192に記載のキット。
【請求項194】
前記対象の分析物の類似体がオリゴヌクレオチドである、請求項192に記載のキット。
【請求項195】
前記対象の分析物がタンパク質である、請求項186に記載のキット。
【請求項196】
前記対象の分析物の前記第1及び第2の結合パートナーが抗体又は特異的結合タンパク質である、請求項195に記載のキット。
【請求項197】
芳香族炭化水素を含有するポリスチレンビーズを含む組成物。
【請求項198】
前記芳香族炭化水素がジフェニルアントラセン及びルブレンから選択される、請求項197に記載の組成物。
【請求項199】
前記ポリスチレンビーズが約7.5×109個のジフェニルアントラセン分子を含む、請求項197に記載の組成物。
【請求項200】
前記ポリスチレンビーズが約4×108個のルブレン分子を含む、請求項197に記載の組成物。
【請求項201】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項13、86、108、又は143に記載の方法。
【請求項202】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項61、79、163、又は180に記載の組成物。
【請求項203】
前記タンパク質がC反応性タンパク質である、請求項195に記載のキット。
【請求項204】
kが2以上の整数である、請求項1、34、86、101、129、又は143に記載の方法。
【請求項205】
kが2以上の整数である、請求項48、70、79、156、172、又は180に記載の組成物。
【請求項206】
少なくとも2つのECL部分を更に含む、請求項186に記載のキット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図11a】
【図11b】
【図12】
【図14a】
【図14b】
【図15a】
【図15b】
【図16】
【図13】
【公表番号】特表2008−504528(P2008−504528A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518295(P2007−518295)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022388
【国際公開番号】WO2006/083305
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500068049)ザ、ユニバーシティ、オブ、テキサス、システム (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/022388
【国際公開番号】WO2006/083305
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(500068049)ザ、ユニバーシティ、オブ、テキサス、システム (1)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]