説明

2,2−ジメチル−3−(3,3,3−トリフルオル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸から誘導される新規のエステル、その製造方法及び害虫駆除剤としてのその使用

【課題】有用な有害生物駆除特性、特に殺虫特性を有する化合物を提供すること。
【解決手段】本発明の主題は、次式(I):


(式中、Rはピレスロイド群において用いられるある種のアルコールの残基を表わす)
の化合物にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2,2−ジメチル−3−(3,3,3−トリフルオル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸から誘導される新規のエステル、その製造方法及び害虫駆除剤としてのその使用に関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明の主題は、次式(I):
【化1】

(式中、Rは次の基:
【化2】

より成る群から選択される基を表わす)
の全ての可能な立体異性体及びその混合物の形の化合物にある。
【0003】
本発明の特定的な主題は、式(I)においてシクロプロパン部分が1R,cis構造である化合物及び二重結合の立体配置がEである化合物にある。
【0004】
より特定的には、本発明の主題は、下記の実験の部に製造を記載した化合物にあり、さらに特定的には、Rが1−(5−トリフルオルメチル−2−フリル)−2−プロピニル基である式(I)の化合物又はRがシアノ−(3−フェノキシ−4−フルオルフェニル)メチル基である式(I)の化合物にある。
【0005】
本発明の主題はまた、式(I)の化合物の製造方法にもあり、この方法は、次式(II):
【化3】

の酸又はこの酸の官能性誘導体に次式(III):
ROH (III)
(式中、Rは前記の意味を持つ)
のアルコール又はこのアルコールの官能性誘導体を作用させて式(I)の対応する化合物を得ることを特徴とする。
【0006】
用いられる酸の官能性誘導体は、酸塩化物であるのが好ましい。式(II)の酸と式(III)のアルコールとを反応させる場合には、ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在下で操作を実施するのが好ましい。
【0007】
[1R(1α,3α)]2,2−ジメチル−3−[(E)−2−メチル−3,3,3−トリフルオル−2−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸の製造は、下記の実験の部に与える。
【0008】
用いられる様々なアルコールは既知の物質である。α−エチニル−2−(トリフルオルメチル)−4−チアゾリルメタノールは、ヨーロッパ特許公開第0556123号に示されたようにして製造することができる。
【0009】
式(I)の化合物は有用な特性を有し、この特性によってこれら化合物は寄生虫の駆除に用いることができる。これは例えば植物の寄生虫、家屋の寄生虫及び温血動物の寄生虫の駆除であってよい。
従って、本発明の化合物は植物及び動物に寄生する昆虫、線虫及びダニを駆除するのに用いることができる。
本発明の特定的な主題は、植物の寄生虫、家屋の寄生虫及び温血動物の駆除に式(I)の化合物を使用することにある。
【0010】
式(I)の化合物はまた、土壌中の昆虫及び他の寄生虫、例えばジアブロチカ(Diabrotica)、コメツキムシ(click beetles)及びコフキコガネ(May beetle grubs)のような鞘翅目、スキュチゲリダエ(scutigeridae)及びブランジュール(blanjules)のような多足類、セシドミア(cecydomia)のような双翅目並びに夜蛾(owlet moths)のような鱗翅目に対して用いることもできる。
これらは、1ヘクタール当たりに活性成分10g〜300gの範囲から成る薬量で用いられる。
【0011】
式(I)の化合物はまた、家屋内の昆虫の駆除、特に蝿、蚊及びゴキブリの駆除に用いることもできる。
【0012】
式(I)の化合物はさらに、光に対して安定であり且つ哺乳動物に対する毒性が低い。
【0013】
これら全ての特性の結果として、式(I)の化合物は近代的農芸化学産業の要件に完全に対応する。これらは環境を保持しながら収穫物を保護することを可能にする。
【0014】
式(I)の化合物はまた、植物に寄生するダニ及び線虫の駆除に用いることもできる。
式(I)の化合物はさらに、動物に寄生するダニ、例えばマダニ(ticks)、特にオウシマダニ(Boophilus)種、イボマダニ(Hyalomnia)種、キララマダニ(Amblyomnia)種及びコイタマダニ(Rhipicephalus)種のマダニの駆除、又はそれ以外の全てのタイプのダニ(mites)、特にヒゼンダニ(sarcoptic mite)、キュウセンダニ(psoroptic mite)及びウシショクヒダニ(chorioptic mite)の駆除に用いることもできる。
【0015】
従って、本発明の主題はまた、前記式(I)の少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、植物の寄生虫、家屋の寄生虫及び温血動物の寄生虫の駆除用組成物にもある。
本発明の特定的な主題は、前記の少なくとも1種の化合物を活性成分として含有する殺虫剤組成物にある。
本発明のより特定的な主題は、ジアブロチカ及び他の土壌寄生虫の駆除用の前記の殺虫剤組成物にある。
【0016】
これらの組成物は、農芸化学産業、獣医学産業又は動物の飼料用に意図される製品の産業の通常の方法に従って製造される。
【0017】
農業的使用及び家屋内での使用を予定されるこれらの組成物においては、活性成分として、これらの化合物に1種以上の他の害虫駆除剤を随意に添加してもよい。これらの組成物は、粉剤、粒剤、懸濁液、乳剤、溶液、エーロゾル溶液、可燃性テープ、餌又はこの種の化合物の用途に通常用いられる他の製剤の形を取ることができる。
【0018】
これらの組成物には一般的に、活性成分に加えて、混合物を構成する物質の均一分散をさらに確保する非イオン系界面活性剤及び(又は)ビヒクルを含有させる。用いられるビヒクルは、水、アルコール、炭化水素若しくは他の有機溶剤、鉱油又は動物性若しくは植物性油のような液体;タルク、クレー、珪酸塩又は多孔質珪藻土のような粉末;或いは、可燃性固体であることができる。
【0019】
本発明に従う殺虫剤組成物には、0.005〜10重量%の活性成分を含有させるのが好ましい。
【0020】
家屋内で使用する場合の有利な操作方法に従えば、本発明に従う化合物は燻蒸用組成物の形で用いられる。
【0021】
この場合、本発明に従う組成物は、不活性部分が殺虫剤用可燃性渦巻体又は不燃性繊維質基材によって構成されているのが有利である。後者の場合、活性成分を配合した後に得られる燻蒸剤は、電気式気化機のような加熱装置上に置かれる。
【0022】
殺虫用渦巻体を用いる場合、不活性担体は、例えば、除虫菊の絞りかす、タブ(Tabu)粉末(即ちMachilus Thumbergiiの葉の粉末)、除虫菊の幹の粉末、ヒマラヤ杉の葉の粉末、おがくず(例えば松のおがくず)、澱粉及び椰子殻粉末であってよい。
この場合、活性物質の薬量は、例えば0.03〜1重量%とすることができる。
【0023】
不燃性繊維質担体を用いる場合、活性物質の薬量は、例えば0.03〜95重量%とすることができる。
【0024】
また、家屋内で用いるための本発明に従う組成物は、活性成分を主体とした噴霧可能な油状物を調製することによって得ることもでき、この油状物はランプの芯に含浸され、次いで燃焼される。
この油状物中に配合される活性成分の濃度は、0.03〜95重量%とするのが好ましい。
【0025】
本発明の主題はまた、前記の式(I)の少なくとも1種の化合物を活性成分として含有する殺ダニ及び殺線虫剤組成物にもある。
【0026】
殺ダニ剤及び殺線虫剤組成物としての本発明に従う殺虫剤組成物には、1種以上の他の害虫駆除剤を随意に添加することができる。これら殺ダニ剤及び殺線虫剤組成物は特に粉剤、粒剤、懸濁液、乳剤及び溶液の形を取ることができる。
【0027】
殺ダニ用途については、1〜80重量%の活性成分を含有する葉噴霧用の水和剤又は1〜500g/リットルの活性成分を含有する葉噴霧用の液体を用いるのが好ましい。また、0.05〜3%の活性物質を含有する葉散布用粉剤を用いることもできる。
【0028】
殺線虫用途については、300〜500g/リットルの活性成分を含有する土壌処理用液体を用いるのが好ましい。
【0029】
本発明に従う殺ダニ剤及び殺線虫剤配合物は、1ヘクタール当たりに活性成分1〜100gの範囲の薬量で用いるのが好ましい。
【0030】
本発明の化合物の生物学的活性を強めるために、このような場合に用いられる標準的な相乗剤、例えば1−(2,5,8−トリオキサドデシル)−2−プロピル−4,5−メチレンジオキシベンゼン(即ちピペロニルブトキシド)、N−(2−エチルヘプチル)ビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボキシイミド又はピペロニル−ビス−[2−(2’−n−ブトキシエトキシ)エチル]アセタール(即ちトロピタール)を添加することができる。
【0031】
式(I)の化合物は優れた一般的耐性を有し、従って本発明の主題はまた、特にマダニ及びそれ以外のダニによって引き起こされる人間及び動物の病気を防除するための式(I)の化合物にもある。
本発明の化合物は特に、シラミの予防的又は治療的防除及びダニの駆除に用いられる。
【0032】
本発明の化合物は、噴霧、シャンプー、入浴又は塗布によって外用的に投与することができる。
獣医学用途のための本発明に従う化合物はまた、いわゆる『ポア・オン(pour-on)法』に従って背中に塗布することによって投与することもできる。
【0033】
また、本発明に従う化合物は殺生物剤として又は生長制御剤として用いることができるということも言える。
【0034】
本発明はまた、活性成分として、一方で一般式(I)の少なくとも1種の化合物を、他方で
・菊酸とアレスロロン、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチルアルコール、5−ベンジル−3−フリルメチルアルコール、3−フェノキシベンジルアルコール又はα−シアノ−3−フェノキシベンジルアルコールとの各エステル;
・2,2−ジメチル−3−(2−オキソ−3−テトラヒドロチオフェニリデンメチル)シクロプロパンカルボン酸と5−ベンジル−3−フリルメチルアルコールとのエステル;
・2,2−ジメチル−3−(2,2−ジクロルビニル)シクロプロパンカルボン酸と3−フェノキシベンジルアルコール又はα−シアノ−3−フェノキシベンジルアルコールとの各エステル;
・2,2−ジメチル−3−(2,2−ジブロムビニル)シクロプロパンカルボン酸とα−シアノ−3−フェノキシベンジルアルコールとのエステル;
・2−p−クロルフェニル−2−イソプロピル酢酸と3−フェノキシベンジルアルコールとのエステル;
並びに
・2,2−ジメチル−3−(1,2,2,2−テトラハロエチル)シクロプロパン−1−カルボン酸(ここで、ハロは弗素、塩素又は臭素原子を表わす)とアレスロロン、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチルアルコール、5−ベンジル−3−フリルメチルアルコール、3−フェノキシベンジルアルコール又はα−シアノ−3−フェノキシベンジルアルコールとの各エステル:
より成る群から選択される少なくとも1種のピレスロイド系エステルを含有することを特徴とする、殺虫活性、殺ダニ活性又は殺線虫活性を有する組合せ物
(ここで、式(I)の化合物並びに上記のピレスロイド系エステルの酸及びアルコール部分は、全ての可能な立体異性体の形にあることができるものとする)
にもある。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は本発明を例示するものであり、これを何ら限定しない。
【0036】
例1(参考例):[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸(4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオルフェニル)メチル
[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸700mg、4−メチル−2,3,5,6−テトラフルオルベンジルアルコール673mg及び塩化メチレン10ミリリットルを含有させた溶液中に、0℃において、ジシクロヘキシルカルボジイミド650mg、4−ジメチルアミノピリジン10mg及び塩化メチレン3.3ミリリットルを含有させた溶液を導入した。
【0037】
温度を20℃に上げ、反応媒体を16時間撹拌し、ろ過し、塩化メチレンで洗浄し、減圧下で乾固させた。得られた生成物1.22gをシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はヘキサンとイソプロピルエーテルとの比95:5の混合物)にかけた。所望の化合物1.22gが単離された。Rf=0.2
【0038】
NMR(CDCl3、ppm)
1.26(s) 1.29(s) 対をなすメチルのH
1.84(d, J=1) 二重結合Cが有するメチルのH
1.80〜1.95(m) H1及びH3
2.29(t, J=アルファ) 4−メチルのH
5.19 C=Oのα位置におけるCH2のH
【0039】
対応するアルコールから出発して例1におけるように操作を行なって、以下の化合物が製造された。
【0040】
例2:[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸(2,6−ジフルオルフェニル)メチル
NMR(CDCl3、ppm)
1.24及び1.28 対をなすメチルのH
1.86(m) H1及びH3
1.84 ビニルメチルのH
5.19 C=Oのα位置におけるCH2のH
6.39 ビニルのH
6.92 フェニルの3及び5位置のH
7.32 フェニルの4位置のH
【0041】
例3:[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシ−4−フルオルフェニル)メチル
NMR(CDCl3、ppm)
1.13及び1.26 対をなすメチルのH
1.86 ビニルメチルのH
1.88 H1
2.00 H3
6.30 エチレンのH
6.35 −C(CN)H−のH
7.17;7.28;7.36 芳香族のH
【0042】
例4:[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸(5−トリフルオルメチル−2−フリル)−2−プロピニル
NMR(CDCl3、ppm)
1.26;1.27;1.28;1.30 対をなすメチルのH
1.82及び1.85 ビニルメチルのH
2.64 エチニルのH
6.38 ビニルのH
6.46及び6.50 三重結合のα位置のCHのH
【0043】
例5(参考例):[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸[4−(2−プロピン−1−イル)−2,3,5,6−テトラフルオルフェニル]メチル
NMR(CDCl3、ppm)
1.26及び1.28 対をなすメチルのH
1.83 ビニルメチルのH
1.86 H1及びH3
6.37 エチレンのH
3.64 三重結合のα位置のCH2のH
5.20 H
【0044】
例6:[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸1−(2−トリフルオルメチル−4−チアゾリル)−2−プロピニル
NMR(CDCl3、ppm)
1.26(s) 1.27(s) 対をなすメチルのH
1.28(s) 1.31(s)
1.82(d, J=1) ビニルメチル
1.84(d, J=1)
1.93(m) H1及びH3
2.68(d, J=2.5) 三重結合のH
2.70(d, J=2.5)
【0045】
例7:[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸3−(2−プロペニル)−2−メチル−4−オキソ−2−シクロペンテニル
NMR(CDCl3、ppm)
1.28; 1.30 対をなすメチルのH
1.84 ビニルメチル
1.87 H1−H3
1.99
2.00 アレスロロンのメチルのH
2.26; 2.87 O=C−CH2−CH
【0046】
例8:N−ヒドロキシメチル−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドの[1R[1α,3α(E)]]−2,2−ジメチル−3−(2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペン−1−イル)シクロプロパンカルボン酸エステル
融点102℃。
【0047】
製造例1:[1R(1α,3α)]−2,2−ジメチル−3−[(E)−2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸
【0048】
工程A:3−(2−オキソプロピル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸メチル
3−(2−オキソプロピル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸10gをアセトン100cm3中で酸性炭酸カリウム7.35g及び硫酸ジメチル5cm3の存在下で30℃〜34℃に加熱した。4時間撹拌した後に、硫酸ジメチル0.85cm3を添加し、この反応媒体を30℃〜34℃に20時間保った。ろ過した後に、得られた生成物をエチルエーテル中に取り出し、溶媒を蒸発させ、残渣をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はヘキサンと酢酸エチルとの比8:2の混合物)にかけて、所期の化合物10.43gが得られた。
【0049】
工程B:3−(2−メチル−2−トリメチルシリルオキシ−3,3,3−トリフルオルプロピル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸メチル
工程Aにおいて得られた生成物5g及びトリフルオルメチルトリメチルシラン8cm3をテトラヒドロフラン65cm3中に含有させた混合物に、0℃において、弗化テトラブチルアンモニウム0.5cm3を添加し、15分間撹拌を実施した。この反応媒体を酸性燐酸カリウムの氷冷水溶液中に注ぎ、エチルエーテルで抽出を実施し、抽出液を乾燥させ、溶媒を蒸発させた。所期の化合物7.57gが得られた。
【0050】
工程C:3−(2−メチル−2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオルプロピル)−2,2−ジメチルシクロプロパンカルボン酸メチル
工程Bにおいて得られた生成物500mgをメタノール5cm3中に含有させた混合物に、周囲温度において、弗化カリウム444mgを添加した。この反応媒体を3時間撹拌し、酸性燐酸カリウム水溶液25cm3中に注ぎ、エチルエーテルで抽出を実施し、抽出液を乾燥させ、溶媒を蒸発させた。所期の化合物360mgが得られた。
【0051】
工程D:2,2−ジメチル−3−[(E)−2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸メチル
工程Cにおいて得られた2,2−ジメチル−3−(2−メチル−2−ヒドロキシ−3,3,3−トリフルオルプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル80.5gに、0℃において、塩化チオニル160ミリリットルを添加した。この混合物を48時間加熱還流し、冷却し、氷冷水中に注ぎ、イソプロピルエーテルで抽出し、有機相を水で洗浄した。硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、蒸発乾固させた後に、粗生成物をシリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はヘキサンと酢酸エチルとの比9:1の混合物)にかけ、次いでもう一度シリカを用いたクロマトグラフィー(溶離剤はヘキサンとアセトンとの比99:1の混合物)にかけた。出発物質のアルコール22.02g、エキソ+Z異性体混合物11.71g及び所期の化合物23.31gが単離された。
【0052】
工程E:[1R(1α,3α)]−2,2−ジメチル−3−[(E)−2−メチル−3,3,3−トリフルオル−1−プロペニル]シクロプロパンカルボン酸
工程Dにおいて得られた生成物4.14gをメタノール52.6cm3中で1N苛性ソーダ19.3cm3の存在下で2時間30分間、次いで追加の1N苛性ソーダ2cm3の存在下で30分間、60℃に加熱した。この反応媒体を氷冷水中に注ぎ、イソプロピルエーテルで抽出を実施し、水相をKH2PO4によって酸性にし、これをイソプロピルエーテルで抽出した。これらの最後の相を乾燥させ、減圧下で蒸発させた。所期の化合物2.94gが得られた。
NMR
1.84(s) 二重結合のメチル
1.26及び1.22(s) 対をなすメチルのH
1.3 〜1.9(m) H1及びH3
6.43(m) ビニルのH
【0053】
例9:可溶性濃厚物の調製
次のものの均質混合物を作った。
例1の化合物 : 0.25g
ピペロニルブトキシド : 1.00g
トウィーン(Tween)80: 0.25g
トパノール(Topanol)A: 0.1g
水 :98.4g
【0054】
例10:乳化性濃厚物の調製
次のものを緊密に混合した。
例1の化合物 : 0.015g
ピペロニルブトキシド : 0.5g
トパノールA : 0.1g
トウィーン80 : 3.5g
キシレン : 95.885g
【0055】
生物学的研究
A)ジアブロチカに対する活性
被検昆虫は、ジアブロチカの最後の段階の幼虫である。
ペトリ皿の底部に置いた直径9cmの円形ろ紙を被検化合物のアセトン溶液2cm3で処理する。乾燥させた後に、各薬量について15匹の幼虫を置き、処理の24時間後に死亡率を検査する。
1ppmの薬量から、本発明の化合物群は良好な活性を示した。
【0056】
B)スポドプテラ・リットラリス(Spodoptera littoralis)の幼虫に対する致死効果の研究
試験は、アーノルド式マイクロマニピュレーターを用いて幼虫の背側胸部に被検化合物のアセトン溶液を局所適用することによって実施する。被検化合物の各薬量について15匹の幼虫を使用する。使用する幼虫は、第4幼虫期、即ち24℃且つ相対湿度65%において飼育した生後約10日の幼虫である。処理後に、各個体を人工飼育培地{ポアトゥ(Poitout)培地}上に置く。
処理の48時間後に死亡率を検査する。
本発明の化合物群、特に例3の化合物は、良好な活性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】

(式中、Rは次の基:
【化2】

より成る群から選択される基を表わす)
の全ての可能な立体異性体及びその混合物の形の化合物。
【請求項2】
Rが(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−N−イル)メチル基である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の少なくとも1種の化合物を活性成分として含有することを特徴とする、植物の寄生虫、家屋の寄生虫及び温血動物の寄生虫を駆除するための組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の少なくとも1種の化合物を活性成分として含有することを特徴とする、殺虫剤組成物。
【請求項5】
ジアブロチカ及びその他の土壌寄生虫を駆除するための請求項4記載の殺虫剤組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の少なくとも1種の化合物を活性成分として含有することを特徴とする、殺ダニ及び殺線虫剤組成物。

【公開番号】特開2007−262076(P2007−262076A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128349(P2007−128349)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【分割の表示】特願2006−151932(P2006−151932)の分割
【原出願日】平成6年8月5日(1994.8.5)
【出願人】(595042678)ヘキスト・シェリング・アグレボ・ソシエテ・アノニム (2)
【Fターム(参考)】