説明

3−シアノグルタル酸モノエステル類及びその製造方法

【課題】 光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類の提供。
【解決手段】 下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類。


[式中、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、アルキル基、トリアルキルシリルオキシ基、水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子はアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品を製造する際の中間体化合物等として有用である3−シアノ−グルタル酸モノエステル類及びその製造方法、並びに、該3−シアノ−グルタル酸モノエステル類から誘導される化合物又はその塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸類が医薬品の中間体として有用であることが記載されている。また、特許文献2には、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類が医薬品の中間体として有用であることが記載されている。
そして、特許文献2には、上述した酢酸エステル類の製造法として、3−シアノグルタル酸ジエステル類を、還元・環化してラセミの(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法が記載されている。
一方、カルボン酸の光学活性体の製造については、次の(i)及び(ii)の方法が知られている。
(i)イタコン酸に光学活性1−メチルベンジルアミンを付加させた後、環化させて、N−(1−メチルベンジル)−(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法(非特許文献1参照)

(ii)光学活性な1−メチルベンジルアミンと4−ブロモ−2−ブテン酸エステルから出発して、N−(1−メチルベンジル)−(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸エステル類を製造する方法(非特許文献2参照)


上記のように、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸類の光学活性体を得るためには、得られた化合物におけるピロリジン環の窒素原子に結合する1−メチルベンジル基を脱離させることが必要である。しかしながら、上述した1−メチルベンジル基を脱離させる方法は、特許文献1、特許文献2、非特許文献1や非特許文献2には記載されていない。
【0003】
【特許文献1】特表2002−501503号公報
【特許文献2】US2001−034343号明細書
【非特許文献1】Journal of Medicinal Chemistry,33(1),71,1990
【非特許文献2】Tetrahedron Asymmetry,7(1),79,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、医薬品を製造する際の原料化合物等として有用である新規な3−シアノ−グルタル酸モノエステル類及び中間体化合物として有用な(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類を効率よく製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の(イ)は、下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類を提供するものである。

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、トリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0006】
また、本発明の(ロ)は、下式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を加水分解することを特徴とする上記(イ)記載の式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法を提供するものである。

[式中、R及びRは、それぞれ上記と同じ定義である。]
【0007】
さらに、本発明の(ハ)は、上記(イ)記載の式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類を、還元・環化させることを特徴とする光学活性な又はラセミ体の下式(3)で示される(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法を提供するものである。

[式中、Rは上記と同じ定義である。]
【発明の効果】
【0008】
本発明の(イ)によれば、医薬品を製造する際の中間体化合物等として有用である上記光学活性な又はラセミ体の3−シアノ−グルタル酸モノエステル類(1)が提供される。
また、本発明の(ロ)によれば、上記の3−シアノ−グルタル酸モノエステル類(1)を効率よく製造することができる。
さらに、本発明の(ハ)によれば、上記の光学活性な又はラセミ体の(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類(3)又はその塩が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明(イ)において、上式(1)におけるRは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子又は臭素原子)及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子)からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。該炭素数1〜4のアルキル基の水素原子はフェニル基で置換されていてもよい。また、該フェニル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びニトロ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。
【0010】
本発明(ロ)における3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)は、例えば下記反応式で示すように、ブロモ酢酸エステル類とアリール置換アセトニトリル類を縮合させることによって、製造することができる(特表2002−512596号公報を参照)。

また、3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)は、例えば下記反応式で示すように、3−tert−ブトキシカルボニル−3−シアノグルタル酸ジエステル類を酸の存在下に脱炭酸反応させることによっても製造することができる(Angewandte Chemie, 72,960 (1960)を参照)。

【0011】
3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)における好ましいRとしては、水素原子、ビニル基やアリル基等のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基等が挙げられる。
上記フェニル基やナフチル基における水素原子は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基やt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基や水酸基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基やtert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子や沃素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等で置換されていてもよい。
上記のピリジル基における水素原子は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基、i−ブチル基やt−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基やtert−ブトキシ基等の炭素数1〜4のアルコキシ基;又はフッ素原子、塩素原子、臭素原子や沃素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0012】
3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)における好ましいRとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−プロピル基やi−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0013】
光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
3−シアノグルタル酸ジメチル、3−シアノグルタル酸ジエチル、3−シアノグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノグルタル酸ジi−ブチル等のジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−ビニルグルタル酸ジi−ブチル等のアルケニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−フェニルグルタル酸ジi−ブチル等のフェニル置換ジアルキルエステル類;
【0014】
3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(2−ナフチル)グルタル酸ジi−ブチル等のナフチル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3−メチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のメチルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−i−プロピルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のi−プロピルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4−ジメチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジアルキルフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−ヒドロキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のヒドロキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
【0015】
3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−t−ブチルジメチルシリルオキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のトリアルキルシリルオキシ基置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3−メトキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のアルコキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
【0016】
3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4−ジメトキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジアルコキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4,5−トリメトキシフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のトリアルコキシフェニル置換ジアルキルエステル類;
【0017】
3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−フルオロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のフルオロフェニル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−クロロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のクロロフェニル置換ジアルキルエステル類;
【0018】
3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(2,4−ジフルオロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジフルオロ置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のジクロロ置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(4−トリフルオロメチルフェニル)グルタル酸ジi−ブチル等のトリフルオロ置換ジアルキルエステル類;
【0019】
3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(ピリジン−2−イル)グルタル酸ジi−ブチル等のピリジン−2−イル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(ピリジン−3−イル)グルタル酸ジi−ブチル等のピリジン−3−イル置換ジアルキルエステル類;
3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジメチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジエチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジn−プロピル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジn−ブチル、3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジi−プロピルや3−シアノ−3−(チオフェン−2−イル)グルタル酸ジi−ブチル等のチオフェン−2−イル置換ジアルキルエステル類;
【0020】
本発明の(ロ)においては、3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)を加水分解することにより、光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類(1)が製造される。この加水分解反応は、好ましくはアルカリの存在下に行われる。
アルカリとしては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化バリウムや水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
上記の加水分解反応におけるジカルボン酸の副生を抑制する観点から、アルカリの使用量は、3−シアノグルタル酸ジエステル類(2)に対して等モル以下であることが好ましい。しかしながら、上記ジカルボン酸の副生を抑制する目的でアルカリの使用量を極端に減らすことは、3−シアノグルタル酸モノエステル類(1)の収率の低下をきたすので、好ましくない。
【0021】
本発明(ロ)における反応温度は、通常は−100〜100℃の範囲であり、好ましくは−80〜50℃の範囲である。
加水分解反応は、好ましくは溶媒の存在下に行われる。加水分解反応における溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールや2−プロパノール等のアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドやN−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;トルエンやベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサンやヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラフラン、ジオキサンやポリエチレングリコール等のエーテル系溶媒;アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;ピリジン、2−メチル−5−エチルピリジンやトリエチルアミン等のアミン系溶媒;又は上記溶媒の混合物が挙げられる。
【0022】
本発明(ロ)における反応は、加水分解する能力を有する酵素の存在下に行ってもよい。加水分解する能力を有する酵素としては、例えば微生物や動植物由来のリパーゼ、エステラーゼやプロテアーゼ等が挙げられる。
微生物や動植物由来のリパーゼ、エステラーゼやプロテアーゼとしては、例えば、Achromobacter属、Alcaligenes属、Arthrobacter属、Aspergillus属、Bacillus属、Burkholderia属、Candida属、Chromobacterium属、Escherichia属、Geotrichuf属、Humicola属、Mucor属、Penicillium属、Phycomyces属、Pseudomonas属、Rhizopus属、Rhizomucor属、Saccharomyces属、Streptomyces属、Thermoanaerobium属やThermus属の酵素;又は、豚、牛、羊、ウサギ、ヒトや小麦等から由来する酵素が挙げられる。
好ましい酵素としては、例えば豚肝臓由来のリパーゼ(PLE);Alcalase 2.4L、Bacillus属由来のプロテアーゼ;好熱菌由来のエステラーゼ;Chromobacterium属由来のエステラーゼ;Arthrobacter属由来のエステラーゼ等が挙げられる。
【0023】
本発明(ロ)において立体選択性を有する酵素を使用した場合は、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類が得られる。3−シアノグルタル酸ジエステル類はプロキラルな化合物であり、理論的には転化率100%まで反応させることができる。上述した酵素の好ましい例としては、Chromobacterium属由来の酵素、具体的には Chromobacterium SC−YM−1(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERM P−14009)由来の酵素等が挙げられる。特に好ましい酵素としては、下記(e)、(f)又は(g)のいずれかのDNAによってコードされるアミノ酸配列からなる酵素を挙げることができる。
(e)配列番号1で示される塩基配列。
(f)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のアミノ酸からなるB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)前記(f)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(f)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン
配列番号1で示される塩基配列を有するDNAは、例えば、クロモバクテリウム(Chromobacterium)SC−YM−1株(FERM P−14009)等の微生物から通常の方法でDNAライブラリーを作製し、このDNAライブラリーを鋳型に用いてPCRを行うことによって得ることができる。
【0024】
このようにして得られたDNAに上記A群又はB群の部位特異的変異を導入するには、原型のDNA(ここでは野生型の遺伝子である)が組み込まれたプラスミドの1本鎖DNAを鋳型にして、変異を導入する塩基配列を含む合成オリゴヌクレオシドをプライマーとして変異型の遺伝子を合成すればよい。例えば、Smithら(Genetic Engineering 31 Setlow,J. and Hollaender,A Plenum: New York)、Vlasukら(Experimental Manipulation of Gene Expression, Inouye,M :Academic Press, New York)、Hos.N.Huntら(Gene, 77,51,1989)の方法等をあげることができる。
【0025】
本発明では、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目及び189番目のアミノ酸がグリシン以外のアミノ酸で置換されるように変異プライマーを調製し、PCR法による増幅を行えばよい。好ましくは、160番目のアミノ酸が上記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が上記のB群から選ばれるアミノ酸に置換されるような特異的変異を導入することが好ましい。
なお、配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において、160番目及び189番目のアミノ酸に同時に部位特異的変異を導入してもよい。
【0026】
本発明において、あるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとは、例えば「クローニングとシークエンス」(渡辺格監修、杉浦昌弘編集、1989、農村文化社発行)等に記載されるサザンハイブリダイゼーション方法において、(1)高イオン条件下[例えば、6XSSC(900mMの塩化ナトリウム、90mMのクエン酸ナトリウム)等が挙げられる。]に65℃の温度条件でハイブリダイズさせることによりあるDNAとDNA−DNAハイブリッドを形成し、(2)低イオン濃度下[例えば、0.1X SSC(15mMの塩化ナトリウム、1.5mMのクエン酸ナトリウム)等が用いられる。]に65℃の温度条件で30分保温した後でも該ハイブリッドが維持されるようなDNAをいう。
【0027】
加水分解反応に供する酵素の形態は特に制限を受けるものではなく、単離されたものか、又は担体に固定化されたものであってもよく、上記の酵素を産生する微生物そのものやその培養液等の形であってもよい。
反応温度は、酵素の性質によって異なるが、おおむね0〜50℃の範囲である。好熱菌等のように高温を好む微生物又は微生物由来の酵素を使用するときには、50℃以上が好ましい場合もある。
加水分解反応は、通常は水の存在下に行われるが、有機溶媒を併用してもよい。このような有機溶媒の例としては、アルカリ加水分解の場合に例示した溶媒と同様の有機溶媒が挙げられる。水中での基質の安定性が良くない場合は、自然水解抑制の観点から、有機溶媒共存下に反応を行うことが望ましい。また、反応の進行に伴い水層のpH値が変化するのを防ぐため、リン酸等のバッファー中で反応を行ってもよく、水層のpHを一定に保つために反応中に酸又はアルカリを添加してもよい。
【0028】
加水分解反応終了後、必要に応じて酵素等の不溶物を濾別した後、反応混合物を酸性にすることにより、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類を有機層に抽出するか、又は、結晶として単離することができる。
また、必要に応じて、水層をアルカリ性にすることにより、生成した3−シアノグルタル酸モノエステル類を水層に抽出し、未反応の3−シアノグルタル酸ジエステル類から分離することができる。
上記で得た分液後の水層を酸性にすることにより、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類を有機層に抽出するか、又は結晶として単離することができる。得られた光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類は、晶析等の操作により更に精製してもよい。
【0029】
このようにして得られる3−シアノグルタル酸モノエステル類としては、例えば、3−シアノグルタル酸ジエステル類として上述した例示化合物の一方のエステル基のみが加水分解された化合物を挙げることができる。
上記の3−シアノグルタル酸モノエステル類は、3−シアノグルタル酸ジエステル類の場合と同様に特許文献2等に記載の条件によって還元・環化することによって、(2−オキソ−ピロリジン−4−イル)酢酸類又はその塩に変換することができる(下記反応式参照)。
【0030】

【実施例】
【0031】
以下、実施例等により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0032】
調製例1
[3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチルの合成]
(3,4−ジクロロフェニル)アセトニトリル 15.9gの無水テトラハイドロフラン(100ml)溶液中に、窒素雰囲気下、1M ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドのテトラハイドロフラン溶液171mlを−78℃で滴下した。得られた混合物を徐々に室温まで昇温後、−78℃に冷却した。冷却後の混合物中に、ブロモ酢酸エチル(19.1ml)を−78℃で滴下した。滴下終了後、得られた混合物を徐々に室温まで昇温後、室温で14時間攪拌した。得られた反応混合物中に、飽和塩化アンモニウム水溶液(200ml)を加えた後、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、硫酸マグネシウムを濾別した。濾液を減圧下に濃縮し、濃赤褐色の油状物(34.2g)を得た。
上記の濃赤褐色の油状物34.2gを、(3,4−ジクロロフェニル)アセトニトリル 55.7gから上記と同様にして得た濃赤褐色の油状物107.2gと併せた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液はヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒を使用した。また、上記溶出液の比率は容積比で3/1〜3/2の範囲とした)により精製し、淡黄色油状の3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル60.1g(収率44%)を得た。
【0033】
調製例2
[Chromobacterium SC−YM−1(FERM P−14009)由来の酵素液の調製]
下記実施例で使用したChromobacterium SC−YM−1株由来のエステラーゼ遺伝子導入大腸菌E.coli JM105/pCC160S189Y363term株は、特開平7−213280号公報記載の方法に準じて調製した。上記E.coli JM105/pCC160S189Y363term株が産生するエステラーゼとは、前述した配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸がセリンに置換され、且つ189番目のアミノ酸がチロシンに置換される特異的変異が導入された耐熱性酵素である。
試験管に、L−Broth培地(SIGMA社製)10mlを入れて、滅菌した。ここにアンピシリンを50μg/mlとなるように加え、さらにE.coli JM105/pCC160S189Y363term株のグリセロールストック0.1mlを加え、30℃で16時間振盪培養した。
容積500mlのバッフル付三角フラスコにL−Broth培地(SIGMA社製)100mlを入れて滅菌した。滅菌後、アンピシリンを50μl/mlとなるように加えた後、上記の試験管で培養した培養液を1ml加え、30℃で攪拌下に培養した。培養開始から4時間後に、IPTG[イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド]を1mMとなるように加えた。12時間培養後の培養液を、酵素液とした。
【0034】
実施例1
[ラセミ体の3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル・Na塩の合成]
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル2.00gのエタノール(6ml)溶液中に、10%水酸化ナトリウム水溶液2.12gを1℃で約2時間かけて滴下し、同温度で23時間保温した。析出した固体を濾別し、20mlのアセトンで洗浄した後、減圧乾燥して0.34gの白色固体を得た。高速液体クロマトグラフ(HPLC)による分析の結果、92%が3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸・2Na塩であった。
一方、上記で得た濾液と洗液を併せた濾洗液中にアセトン16.2gを0℃で滴下し、滴下終了後、同温度で1時間保温した。生じた結晶を濾過し、約20mlのアセトンで洗浄後、濾上物を減圧下に乾燥して、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル・Na塩の1.02g(収率52%)を得た。
【0035】
実施例2
[光学活性な3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチルの合成]
0.1mlの3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチルのメチル−t−ブチルエーテル溶液[32.4%(w/v)]を、6mlの0.1Mリン酸バッファー溶液(pH7.0)とChromobacterium SC−YM−1(FERM P−14009)由来の酵素液(100mg)の混合物中に加えた後、38℃で約20時間攪拌した。得られた反応混合物をHPLCで分析した。分析結果は、次のとおりであった。
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸ジエチル 1.6%
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチル 93.9%
3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸 2.9%
【0036】
上記の反応混合物に、メチル−t−ブチルエーテルを加えて、分液した。分液により得た水層にリン酸を加えてpH2に調整した後、メチル−t−ブチルエーテルで抽出した。分液により得た油層より、3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチルを得た。これを、CHIRALCEL OD−RH(4.6mm径×15cm、充填物の径は5μm、溶離液は0.1M過塩素酸ナトリウム/アセトニトリル)を用いてHPLC分析した。その結果、得られた3−シアノ−3−(3,4−ジクロロフェニル)グルタル酸モノエチルは、93.3%e.e.であった。
【0037】
実施例3〜7
実施例2で用いた酵素液の代わりに下表1記載の酵素又は酵素液を用いても、反応が進行する。
【0038】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明(イ)の光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類は、医薬品の中間体化合物として有用である。
また、本発明(ロ)によれば、上記光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類が提供される。
さらに、本発明の(ハ)によれば、上記の光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類を還元・環化することによって、(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩が提供され、該(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩は医薬品の前駆体化合物として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類。

[式中、Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、ピリジル基、チオフェン−2−イル基又はチオフェン−3−イル基を表す。該フェニル基及びナフチル基の水素原子は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜12のトリアルキルシリルオキシ基、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。また、該ピリジル基の水素原子は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。該炭素数1〜4のアルキル基の水素原子はフェニル基で置換されていてもよい。また、該フェニル基の水素原子は、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基及びニトロ基からなる群より選ばれる置換基で置換されていてもよい。]
【請求項2】
下式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を加水分解することを特徴とする請求項1記載の式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。

[式中、R及びRは、それぞれ請求項1記載と同じ定義である。]
【請求項3】
式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を酵素の存在下に加水分解することを特徴とする請求項2記載の式(1)で示される光学活性な又はラセミ体の3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
【請求項4】
請求項2記載の式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素の存在下に不斉加水分解することを特徴とする下式(1’)で示される光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。

[式中、R及びRは、それぞれ請求項1記載と同じ定義である。*印は不斉炭素原子であることを示す。]
【請求項5】
式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Arthrobacter 属由来の酵素、Bacillus 属由来の酵素又は豚由来の酵素である請求項4に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
【請求項6】
式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Chromobacterium 属由来の酵素である請求項4に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
【請求項7】
式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、Chromobacterium SC-YM-1(工業技術院 生命工学技術研究所 寄託番号 FERM P−14009)由来の酵素である請求項6に記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
【請求項8】
式(2)で示される3−シアノグルタル酸ジエステル類を不斉加水分解する能力を有する酵素が、下記(e)、(f)又は(g)のいずれかのDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるものである請求項3〜7のいずれかに記載の光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類の製造方法。
(e)配列番号1で示される塩基配列。
(f)配列番号1で示される塩基配列に併記されるアミノ酸配列において160番目のアミノ酸が下記のA群から選ばれるアミノ酸に置換され、且つ189番目のアミノ酸が下記のアミノ酸からなるB群から選ばれるアミノ酸に置換されてなるアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(g)前記(f)からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAの塩基配列であって、且つ前記(f)によりコードされるアミノ酸配列からなる酵素と同等な触媒機能を有する酵素のアミノ酸配列をコードする塩基配列。
(A群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン及びセリン
(B群)
アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン及びアルギニン
【請求項9】
請求項1記載の式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類を、還元・環化させることを特徴とする光学活性な又はラセミ体の下式(3)で示される(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法。

[式中、Rは請求項1記載と同じ定義である。]
【請求項10】
式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類として、光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステル類を用いることを特徴とする請求項9記載の光学活性な(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法。
【請求項11】
式(1)で示される3−シアノグルタル酸モノエステル類として、請求項2〜8のいずれかに記載の製造方法により得た光学活性な3−シアノグルタル酸モノエステルを、還元・環化させることを特徴とする請求項10記載の光学活性な(2−オキソ−ピロリジン−3−イル)酢酸類又はその塩の製造方法。

【公開番号】特開2006−1862(P2006−1862A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178149(P2004−178149)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】