説明

3−置換チオフェンの臭気剤又は香味剤としての使用

臭気剤又は香味剤、又は香味増強剤としての、一般式1の化合物の使用について記載する:
【化1】


(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す)。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、3-(アルキルチオメチル)チオフェン又は3-(アシルチオメチル)チオフェンの臭気剤又は香味剤としての使用に関する。本発明は、また、本発明の又は本発明で使用される該チオフェンを含む調製物、半製品及び臭気剤、香味及び味覚組成物に関する。
加熱調理した肉類、主に牛肉、ラム肉、鶏肉及び豚肉の味覚的特徴は、一連の置換チアゾリン、チアゾール、チアピラン及びチオフェンにより特徴付けられる。これらの化合物は、調理過程で発生する。これらのヘテロ環状化合物の形成については、脂肪又は脂肪分解物とアミノ酸とのメイラード様反応について主に記載すべきである(ACS Symposium Series 2002, 826, 93-101)。
脂肪酸(例えば、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸など)が、好ましくは含硫アミノ酸(システイン又はメチオニン)と反応する工程の臭い(process flavours)も、上記の部類の化合物を生じる。
チアピラン及びチオフェンでは、不飽和脂肪酸の自動酸化の結果及びチアピラン及びチオフェン形成メカニズムの結果として、実質的には2位アルキル化誘導体が得られる。従って、加熱調理した種々の肉類の中には、これらのヘテロ環状化合物の2-エチル-、2-プロピル-、2-ブチル-、2-ペンチル-及び2-ヘキシル誘導体が異なる濃度で検出される(ACS Symposium Series 2002, 826, 93-101参照)。
【0002】
2位の置換基が硫黄原子を有するチオフェン誘導体にも、官能検査(sensory investigation)を行った。J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 3629-3635を例として記載してもよい。この著者は、2-チオフェニルメタンチオールを肉類を焼いたり炙ったりしたような特性(attributes)だと述べ、一方で3-メチル-2-チオフェニルメタンチオールを炒った風味及びコーヒーの風味と述べている。どちらの化合物も、システインとチオフェン-2-カルボアルデヒドとの共役(conjugate)又はシステインと3-メチルチオフェン-2-カルボアルデヒドの共役をパン酵母と反応させることによって得た。
物質としての3-(メチルチオメチル)チオフェンは、Can. J. of Chem. 1999, 77(4), 463-471に記載されている。J. Am. Chem. Soc. 1993, 115(24), 11608-11609によると、3-メチルチオメチルチオフェンの対応するリチウム化(lithiated)アニオンは、2-ブロモ-3-(メチルチオメチル)チオフェンから金属−ハロゲン交換で得られ、これは更に反応してチオフェンポリマーを形成した。3-(メチルチオメチル)チオフェンの官能特性については、これらの文献のいずれにも記載されていない。
【0003】
社内調査(in-house investigation)において、驚くべきことに、3-(メチルチオメチル)チオフェン及び構造的に類似した以下の化学式の3-(アルキルチオメチル)チオフェン又は3-(アシルチオメチル)チオフェンが、上記の2位置換チオフェン(J. Agric. Food Chem.前掲箇所参照)と全く異なる特性を示すことがわかった。
従って、本発明は、主に、一般式1の3-(アルキルチオメチル)チオフェン又は3-(アシルチオメチル)チオフェンの、臭気剤又は香味剤としての使用に関する。
【化1】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す)。
本発明はまた、上記一般式1の式中RがC2 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す新規化合物にも関する。
以下の表は、本発明の又は本発明で使用される好ましいチオフェン誘導体の官能特性を示し、これらは社内調査によって確立された。以下の条件は社内テイスティング用(tasting)に選ばれた:テイスティングする物質はそれぞれ5%の砂糖溶液又は0.5%の食塩溶液中、約300ppbから100ppbであること。
【0004】
それぞれの効果(impression)の強度を、1(非常に弱い)から9(非常に強い)に評価する:

【0005】
長鎖アルキル又はアシル残基(C4-アルキル又はC4-C5アシル残基)を有する化合物は、短鎖のアルキル又はアシル残基を有する化合物と似通った官能特性を示すが、焼いたベーコン及び脂肪質の匂い(notes)も示す(特には、イソブチル及びイソブチリル又は3-メチルブチリル残基を有する化合物)。
適したアルキル残基Rは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチル-1-プロピル-及び2-メチル-2-プロピルである。このメチル、エチル、1-プロピル及び2-プロピル残基が好ましく、更にメチル残基が特に好ましい。
有利なアシル残基Rは、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、2-メチルプロピオニル、バレリル、2-メチルブチリル、3-メチルブチリルである。このホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル及び2-メチルプロピオニル残基が好ましく、更にアセチル残基が特に好ましい。
3-(メチルチオメチル)チオフェン(一般式1のR = CH3の化合物)は特に好ましく、これは特別この化合物がネギ及びクレスの独特で十分に刺激性のある匂いを有するだけでなく、強烈な西洋わさび及びマスタードの特徴のみならず強いしいたけとたまねぎの匂いも合わせ持っているからである。この化合物は非常に複雑な官能特性を有し、特に用途が広い。
【0006】
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンは、他の香味剤と組み合わせることによる香味組成物の生産用に有利に用いることができる。本発明の又は本発明で使用されるチオフェンの混合物及び組み合わせはまた、香味組成物に使用することもできる。本発明の又は本発明で使用されるチオフェンの、食料品部門での使用には新規性がある。
本発明の香味組成物は以下の物を含む。
−官能的に活性な量の1つ又はそれ以上の異なる一般式1の化合物、
【化2】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す。)、及び
−官能的に活性な量の1つ以上の他の香味剤、
(ここで、官能的に活性な量の一般式1の該1つ又はそれ以上の化合物は、官能的に活性な量の該一つ又はそれ以上の他の香味剤によって得られる官能効果が増強及び/又は改質及び/又は仕上げられるように選ばれる。)。
【0007】
本発明の香味組成物は、一つ以上の本発明の又は本発明で使用されるチオフェンに加え、例えば合成、天然又は天然に等しい(nature-identical)香味剤又は植物エキスのようなその他の官能的に活性な量の物質を1つ以上含む。本発明の又は本発明で使用されるチオフェンとその他の香味組成物成分との数量比は、望ましい香味組成物の全体的な官能効果に必然的に強く依存する。
本発明はまた、栄養摂取又は嗜好用に摂取される、以下を含む調製物に関する。
(a)官能的に活性な量の1つ又はそれ以上の異なる一般式1の化合物
【化3】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す)、又は、
(b)本発明の香味組成物。
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンの結果として、これらの化合物を含む香味組成物及び調製物は驚くほど添加剤や、よりバランスの取れた味覚効果を経験し、追加のボディを得、より自然で複雑で本物の味覚特徴を得る。
更に、本発明の又は本発明で使用されるチオフェンが、大抵並外れて強烈で、粘り強く複雑であることは大きな利点である。つまりこれらは、非常に少ない投与量で済み(調製物中にppb程度で済む場合もある)、長時間効果が続くので大変役立つ。
【0008】
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンが、有用で特別な風味(taste note)を香味組成物に加えることができるだけでないことも分かった。多くの場合、本発明の又は本発明で使用されるチオフェンを含む香味組成物中では、香味増強効果(ブースター又はエンハンサー)が観測され、これはそれ自身を一般的に強くし、しばしばより洗練された味覚効果を示す。
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンは、肉、魚又はシーフード、特には豚肉、牛肉、ラム肉、鶏肉、エビ、カニ及びイカなどの系統の匂いを有する香味組成物及び調製物への組み込みに特に適している。これらの使用は、ネギ、エシャロット、たまねぎ、ニンニク、クレス、西洋わさび及び/又はマスタードの匂いなどの、刺激性の辛い匂いが特別な役割を果たす香味組成物及び調製物において特に有利である。
【0009】
栄養摂取又は嗜好用に摂取される本発明の調製物は、一般的に調製物の総重量に対し0.0000001wt%(0.001ppm=1ppb)から0.05wt%(500ppm)、好ましくは0.0000001wt%(0.001ppm=1ppb)から0.005wt%(50ppm)、特に好ましくは0.0000002wt%(0.002ppm=2ppb)から0.001wt%(10ppm)の本発明の又は本発明で使用されるチオフェンを含む。食品、飲料又はタバコ用のその他の従来の基本(basic)、補助的又は添加的物質は、調製物の総重量に対し最高で99.999999wt%、好ましくは10から80wt%含まれていてもよい。更にこの調製物は、総重量に対して水を最高で99.999999wt%、好ましくは5から80wt%含んでいてもよい。
【0010】
本発明の範囲内の栄養摂取又は嗜好用に摂取される調製物は、例えば、焼いた物(例えば、パン、ドライビスケット、ケーキ、その他の焼いた製品)、菓子類(例えば、チョコレート、フルーツグミ、ハード及びソフトトフィー、チューインガム、甘草(liquorice))、アルコール又はノンアルコール飲料(例えば、コーヒー、紅茶、ワイン、ワイン含有飲料、ビール、ビール含有飲料、リキュール、蒸留酒、ブランデー、フルーツ含有発泡性清涼飲料、アイソトニック飲料、ソフトドリンク、ネクター、フルーツ及び野菜ジュース、フルーツ又は野菜ジュース調製品)、インスタント飲料、肉製品(例えば、ハム、フレッシュソーセージ又はドライソーセージ調製品)、卵又は卵製品(乾燥卵、卵白、卵黄)、シリアル製品(例えば、ブレックファストシリアル、ミューズリバー(muesli bar))、乳製品(例えば、乳飲料、ミルクアイス、ヨーグルト、ケフィール、カードチーズ、ソフトチーズ、ハードチーズ、乾燥粉ミルク、乳漿、バター、バターミルク)、フルーツ調製品(例えば、ジャム、フルーツアイス、フルーツソース)、野菜調製品(例えば、ケチャップ、ソース、乾燥野菜)、軽食品(例えば、ベイクド又はフライドポテトチップス又はジャガイモ生地の製品、コーン又はピーナッツベースの押し出し物(extrudates))、脂肪又は油製品又はそれらの乳濁物(例えば、マヨネーズ、レムラード、ドレッシング)、即席食品(ready meal)及びスープ、スパイス、混合調味料及びスナックに特に用いられる調味料がある。本発明の範囲内の調製品は、栄養摂取又は嗜好用に摂取される他の製品の産生用の半製品として用いることもできる。本発明の範囲内の調製品は、カプセル、錠剤(例えば腸溶性コーティングなどのコーティングした錠剤だけでなくコーティングを施していない錠剤も)、糖衣錠、顆粒、小丸薬、固体の混合物、液相に分散させた形態、乳液、粉状、溶液状、ペースト状又は嚥下又は噛む栄養補助食品の形態で摂取してもよい。
【0011】
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンを含む栄養摂取又は嗜好用に摂取されるのに好ましい調製物は、スープ(たまねぎ、ネギ、アスパラガス、豆、ニンジン、トマト、鶏肉、牛肉、キノコ、魚、エビ及びカニのスープなどのインスタントスープと同様に、これらの風味を持つ缶入りスープでもよい)、ソース(牛肉、豚肉、ラム肉、魚、カニ、エビ、キノコ、アスパラガス、たまねぎ及びネギなどの風味を持つインスタントソース)、調味料(牛肉、豚肉、鶏肉、ラム肉、野菜などの風味を持つブイヨンと同様に様々なタイプの調味料の混合物、及び食卓塩)、スナック食品(ベイクド又はフライドポテトチップス又はジャガイモ生地の製品、コーン又はピーナッツベースの押し出し物)、脂肪又は油製品(マヨネーズ、レムラード及びドレッシング)及び即席食品がある。
本発明の調製物は、好ましくは調味料に使用することもできる。適当な調味料には、例えばマルトデキストリンのような担体、一般的な塩などの塩、パプリカやこしょうなどのスパイス、糖類又は砂糖の代用品又はサッカリンのような甘味料及びグルタミン酸1ナトリウム及び/又はイノシン1リン酸塩などの香味増強剤に加えて、例えば合成、天然又は天然に等しい香味剤も含まれる。
【0012】
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンを含む本発明の調製物は、本発明の又は本発明で使用されるチオフェンを溶液の形態又は固体又は液体担体との混合物の形態で、栄養摂取又は嗜好用に摂取される又は口腔衛生用に使用されるのに好ましい調製物に組み込むことでも製造できる。有利なことには、本発明の香味組成物を含む溶液として示される本発明の調製物は、噴霧乾燥によって固体調製物に転換することができる。
他の実施態様における調製物を製造するために、本発明の香味組成物及び任意に本発明の調製物の他の成分を、食料品、飲料及びタバコに適した基質(デンプン、デンプン誘導体、他の多糖類、天然脂肪、天然ワックス又はゼラチンなどのたんぱく質)からなる乳濁液、例えば、ホスファチジルコリンから出発するリポソーム、マイクロスフィア、ナノスフィア又はカプセルに前もって組み込んでもいい。その他の実施態様は、本発明の香味組成物が前もって適した錯化剤(シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体、好ましくはβ−シクロデキストリン)と複合体を形成し、この形態で使用されるという事実にある。
【0013】
食料品、飲料又はタバコ用の他の従来のベース、補助的又は添加的物質は、例えば、水、生又は調理した野菜又は動物、ベース又は粗原料(例えば、生、揚げ、乾燥、発酵、燻製、及び/又は調理済みの肉、卵、骨、軟骨、魚、甲殻類及び軟体動物、野菜、果物、ナッツ、野菜又はフルーツジュース又はペースト又はそれらの混合物)、消化可能な又は消化不可能な炭水化物(例えば、スクロース、マルトース、フルクトース、グルコース、デキストリン、アミロース、アミロペクチン、イヌリン、キシラン、セルロース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)、天然又は硬化油脂(例えば、獣脂、ラード、パーム油脂、ココナッツ油脂、硬化植物性油脂)、脂肪油(例えば、サンフラワーオイル、挽いたナッツオイル、コーン油、アザミ油、オリーブ油、くるみ油、魚油、大豆油、ごま油)、脂肪酸又はそれらの塩(例えば、カリウムステアリン酸塩、カリウムパルミチン酸塩)、プロテイノジェニック(proteinogenic)又はノンプロテイノジェニック(non-proteinogenic)アミノ酸及び関連化合物(例えば、タウリン、クレアチン、クレアチニン)、ペプチド、天然又は加工たんぱく質(例えば、ゼラチン)、酵素(例えば、ペプチダーゼ、グルコシダーゼ、リパーゼ)、核酸、ヌクレオチド(イノシトールホスフート)、香味増強剤(例えば、グルタミン酸ナトリウム、2−フェノキシプロピオン酸)、乳化剤(レシチン、ジアシルギリセロール)、安定剤(例えば、カラゲナン、アルギナート、、ローカストビーンガム、グアールガム)、防腐剤(例えば、安息香酸及びソルビン酸)、酸化防止剤(例えば、トコフェノール、アスコルビン酸)、キレート剤(例えば、クエン酸)、有機又は無機酸味料(例えば、リンゴ酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸)、苦味物質(例えば、キニーネ、カフェイン、リモニン、甘味料(例えば、サッカリン、シクラメート、アスパルテーム、ネオテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルショーネ(neohesperidine dihydrochalcone)、鉱物塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウム)、酵素褐変防止剤(例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸)、エッセンシャルオイル、植物エキス、天然又は合成色素又は着色顔料(例えば、カロチノイド、フラボノイド、アントシアン、クロロフィル及びそれらの誘導体)、スパイス及び臭気剤、合成、天然又は天然に等しい香味剤及びテイスタント(tastants)などの栄養摂取または嗜好用に摂取される本発明の調製物の付加的な成分として使用することができる。
【0014】
本発明の調製物は、最終製品として調製物の香味剤を作るための半製品として使用するのが好ましい。
本発明は、更に本発明の又は本発明で使用される一般式1のチオフェンを以下の工程で製造する方法を提供する。
一般式2の化合物と
【化4】

(式中、Xは球核置換反応における脱離基を示し、好ましくはCl、Br、I、O-トシル又はO-メチル、特に好ましくはClを示す。)
(a)塩基、好ましくは水酸化アルカリ又はアルカリ土類、特に好ましくはLiOH、NaOH又はKOH存在下、C1又はC2 - C4アルカンチオール又はC1 - C5チオアルカン酸との反応、又は
(b)アルカリ又はアルカリ土類塩、好ましくはC1又はC2 - C4アルカンチオール又はC1 - C5チオアルカン酸のLi、Na又はK塩との反応。
【0015】
本発明の又は本発明で使用されるチオフェンは、純物質又は溶液の形態で用いることができる。溶媒として、好ましくは水、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ヘキサン、ヘプタン、トリアセチン、例えば植物トリグリセリド(コーシャ(kosher)又はコーシャでない)などの植物油又は油脂、超臨界二酸化炭素又は上記の溶媒の混合物が用いられる。純物質の貯蔵寿命は、12ヶ月と既に長いが、溶液の状態ではさらに最低24ヶ月は長くなる。
実施例
特に明記しない限り、データは重量を示す。
一般式1の化合物の合成
前駆体:3−クロロメチルチオフェン(一般式2のX=Clの化合物)の合成
86gの塩化チオニルを測りとり、65gのチオフェン−3−イルメタノール(市販品)を含む325mlのクロロホルム溶液に室温で加えた。1時間攪拌した後、その混合物を400mlの氷水で加水分解し、相を分離した後に水相を更に2回クロロホルムで抽出した。組み合わせた有機相を重炭酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過し、溶液を減圧留去した後、75gの3−クロロメチルチオフェンの粗製品が得られた(純度>95%)。
【0016】
a)一般式1のアルキル誘導体の代表的な調製方法
あらかじめ11gのナトリウム及び62gのメタンチオールを含む500mlのエタノールから調製したナトリウムチオメチラート溶液を、75gのクロロメチルチオフェン(前駆体より)を含む600mlのエタノールに40℃で滴下した。
1時間還流した後、その溶液を室温で一晩攪拌した。溶媒はその後減圧下でできるだけ取り除き、400mlのジエチルエーテル及び400mlの水を加えた。相を分離した後、水相をエーテルで一回抽出した。組み合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した後に溶媒を減圧留去した。残渣を少し蒸留し、50gの3-(メチルチオメチル)チオフェン(一般式1のR=CH3の化合物)(純度>98%)を得た。
b)一般式1のアシル誘導体の代表的な調製方法
9gのチオ酢酸カリウムを25mlのジメチルホルムアミドに溶解し、12gのクロロメチルチオフェン(前駆体より)を室温で加える。この混合物を室温で一晩、さらに100℃で2時間攪拌した後、これを冷まし、25mlの水を加え、MTBEで三度抽出した。有機相を重炭酸ナトリウム溶液及び水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。ろ過した後、溶媒を減圧留去し、残渣を少し蒸留する。7gのチオ酢酸-S-チオフェン-3-イルメチルエステル(一般式1のR=C(O)CH3の化合物)を得た(純度>95%)。
【0017】
香味組成物及び調製品への応用例
応用例1:マスタード風味
典型的なマスタード風味は、以下の組成物で調製できる:
マスタードオイル(100g)、植物トリグリセリド(900g)
1.1驚くべきことに、20ppmの3-(メチルチオメチル)チオフェンを加えることで、マスタード風味は強く、辛い西洋わさびの味を得、これは更に西洋わさびの刺激性の特徴をも示す。加えて、香味増強効果(ブースター効果)が観測され、全体として強い風味を示す。
1.2初期に穏やかな強度を示す類似の効果は、10ppmの3-(メチルチオメチル)チオフェン及び10ppmのチオ酢酸-S-チオフェン-3-イルメチルエステルの混合物を加えることで得られる。
上記の香味組成物はマヨネーズに組み込むことができ、例えば30gの香味組成物を100kgのベースマヨネーズ調製物に対して添加する。
【0018】
応用例2:ニンニク風味
典型的なニンニク風味は、以下の組成物で調製できる:
ニンニク油(8.00g)、硫化ジアリル(0.30g)、二硫化ジアリル(0.05g)、イソチオシアン酸アリル(1.00g)、アリルメルカプタン(0.10g)及び植物トリグリセリド(990.55g)。
2.1驚くべきことに、20ppmの3-(メチルチオメチル)チオフェンを加えることで、ニンニク風味がよりインパクトを増し、さらに新鮮味が出る。生のニンニク片の特徴がより本物らしくなり、さらに油っぽい感じが抑えられる。
2.2穏やかな強度を示す類似の効果は、チオ酢酸-S-チオフェン-3-イルメチルエステルを加えることで得られる。
上記の香味組成物はサラダドレッシングに組み込むことができ、例えば30gの香味組成物を100kgのベースサラダドレッシング調製物に対して添加する。
【0019】
応用例3:ネギ風味
典型的なネギ風味は、以下の組成物で調製できる:
オニオン油(1.00g)、二硫化ジプロピル(0.10g)、二硫化ジアリル(0.10g)、3−イソプロピル-2-メトキシ-ピラジンをトリアセチン中で0.1%(0.20g)、ヘキサナル(0.30g)、ヘキサノール(0.30g)、シス-3-ヘキセノール(0.50g)、トランス-2-ヘキサナール(0.20g)及び植物トリグリセリド(997.30g)。
驚くべきことに、20ppmの3-(メチルチオメチル)チオフェンを加えることで、ネギ風味がより新鮮に、かすかに辛い風味のあるより青々した特徴及び新鮮なたまねぎのような風味を得る。
3-(メチルチオメチル)チオフェンを含む香味組成物は、ネギスープのクリームに組み込むことができ、例えば30gの香味組成物を100kgのネギスープ調製物のベースとなるクリームに対して添加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気剤又は香味剤、又は香味増強剤としての、一般式1の化合物の使用。
【化1】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す。)
【請求項2】
式中Rが、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、2−メチル−1−プロピル、2−メチル−2−プロピル、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、2−メチルプロピオニル、バレリル、2−メチルブチリル及び3−メチルブチリルからなる基から選ばれる請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式中Rがメチルである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
一般式1の化合物。
【化2】

(式中、RはC2 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す。)
【請求項5】
ベース組成物の臭気及び/又は風味特性の産生、増強又は改質方法であって、以下の工程を含む方法。
−ベース組成物を調製すること、
−一般式1の1つ又はそれ以上の異なる化合物を調製すること、
【化3】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す);及び、
−官能的に活性な量の一般式1の該1つ又はそれ以上の異なる化合物と、ベース組成物を混合すること。
【請求項6】
−官能的に活性な量の一般式1の1つ又はそれ以上の異なる化合物
【化4】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す);及び
−官能的に活性な量の1つ又はそれ以上の他の香味料を含む香味組成物であって、
ここで、官能的に活性な量の一般式1の該1つ又はそれ以上の化合物は、官能的に活性な量の該一つ又はそれ以上の他の香味剤によって得られる官能効果が増強及び/又は改質及び/又は仕上げられるように選ばれる、該香味組成物。
【請求項7】
(a)官能的に活性な量の一般式1の1つ又はそれ以上の化合物
【化5】

(式中、RはC1 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示す);又は、
(b)請求項6に記載の香味組成物を含み、及び任意に1つ又はそれ以上の従来のベース、補助的又は添加的物質を含んでもよい栄養摂取又は嗜好用に摂取される調製物。
【請求項8】
一般式1の化合物を調製する方法であって、
【化6】

(式中、RはC1又はC2 - C4アルキル又はC1 - C5アシル残基を示し、以下の工程を含む:
一般式2の化合物を、
【化7】

(式中、Xは球核置換反応における脱離基を示す。)
(a)塩基存在下、C1又はC2 - C4アルカンチオール又はC1 - C5チオアルカン酸と
(b)C1又はC2 - C4アルカンチオール又はC1 - C5チオアルカン酸のアルカリ又はアルカリ土類塩と、
反応させる工程を含む前記方法。

【公表番号】特表2008−512536(P2008−512536A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530703(P2007−530703)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/054375
【国際公開番号】WO2006/027350
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(503236223)シムライズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンジツト・ゲゼルシヤフト (51)
【Fターム(参考)】