説明

3極電源プラグ

【課題】3極電源プラグの3極のUバレルのカシメ作業を単純化し、カシメ設備も単純化し、コストを削減する。
【解決手段】3極電源プラグの構成として、2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジと、各Uバレルにカシメられた芯線と、前記3極ブリッジとカシメられた芯線を覆うように射出成形によって形成されたプラグ本体と、設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3極電源プラグおよび3極電源プラグの製造方法に関し、さらに、3極ブリッジ、および3極電源プラグの製造方法で用いるカシメ冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
図5および図6は、従来の3極電源プラグ(2つの極刃と1つのアースピンから成る)(なお、単に、電源プラグということもある)の製造過程で用いられる3極電源プラグ用ブリッジ(以下、単に3極ブリッジという)の2つの例を示す。
【0003】
3極電源プラグを製造する際、3極ブリッジを作成し射出成形してプラグの本体(ハウジング)を形成して電源プラグを製造することは、2つの極刃の各々とアースピンに対して導体(芯線)を予めカシメ(Fクリンプ)て、作業員がこれらをインサートバーに配置し、射出成形することによりプラグ本体を形成して電源プラグを製造することと比べて、作業員による配置のズレを生じさせない(規格外とならない)点で有利である。すなわち、それぞれの端子が3極ブリッジの支持体によって位置決めされて固着されるからである。
【0004】
図5は、各極がUバレル端子を持つ3極ブリッジを示すUバレル側から見た正面図である。図5において、3極ブリッジ10は、例えば、PP(ポリプロピレン)のような熱硬化性樹脂の支持体12に3つのUバレル14を持つ端子(2つの極刃と1つのアースピン)を固着して支持しているものである。上側の2つのUバレルは上方が開いた位置に配置されており、下側の1つのUバレルは横方向に開いた位置に配置されている。なお、上側の2つのUバレルと一体の極刃と下側の1つのUバレルと一体のアースピースは図面上支持体12の裏側に位置しているので、図示していない。
【0005】
図6は、各極が丸端子を持つ3極ブリッジを示す丸端子側から見た正面図である。図6において、3極ブリッジ10は、例えば、PP(ポリプロピレン)のような熱硬化性樹脂の支持体12に各々の丸端子16を持つ2つの極刃と1つのアースピンを固着して支持しているものである。
【0006】
3極ブリッジは、端子のピッチ間(JIS規格・ULCSA規格等)が狭いために、Uバレルに導体(芯線)を入れてカシメ(Fクリンプ)る場合、くるみしろ(包み込むスペース)がなく、Uバレルを有する端子を持つ3極ブリッジでは、図5に示すようなブリッジ(下部のバレルが横向き)が用いられていた。
【0007】
図7はこの3極ブリッジをカシメる従来例の方法を説明するための図である。図7において、下側カシメ冶具(通常アンビルと呼ばれる)30は、その上部に2つの並置したアンビル部分30a、30bを有し、固定されている。下側カシメ冶具(通常クリンパと呼ばれる)32は、その下部に2つの並置したクリンパ部分32a、32bを有し、矢印Aに示すように下方に動かされるようになっている。
【0008】
さらに、図7において、左側カシメ冶具(通常アンビルと呼ばれる)34は、その右部にアンビル部分34aを有し、固定されている。右側カシ冶具(通常クリンパと呼ばれる)36、その左側にクリンパ部分36aを有し、矢印Bに示すように左方に動かされるようになっている。
【0009】
図7に示すカシメ冶具を用いるカシメ工程は、上側および下側の一対のカシメ冶具又は左側および右側の一対のカシメ冶具のいずれか一方を最初に用い、次に他方を用いることによって、次のように行なわれる。例えば、上側および下側の一対のカシメ冶具30、32を最初に用いる場合には、3極ブリッジ10のそれぞれのUバレル14に芯線が配置されて下側カシメ冶具30上に配置される。次に、上側カシメ冶具32が矢印Aに示すように下降されて、3極ブリッジ10の並置した上部の2つのUバレルをこれらのカシメ冶具の間で圧着することによって、上部の2つのUバレルがカシメられる。次に、3極ブリッジの下部のUバレル14が左側カシメ冶具34のアンビル部分34aに当接されるように3極ブリッジ10が左側カシメ冶具34に対して配置され、右側カシメ冶具36が矢印Bで示すように移動され、3極ブリッジ10の下部のUバレル14をこれらのカシメ冶具の間で圧着することによって、下部のUバレル14がカシメられる。
【0010】
図6に示す3つの丸端子を持つ3極ブリッジのカシメ工程は、丸端子16内に芯線が挿入され、それぞれがその周囲を圧着されることによってカシメられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
Uバレルを持つ3極ブリッジは、前述のように、上部2つのUバレルのカシメを行なった後、別の工程で、下部のUバレルをカシメる工程が必要であり、工程が複数となり、また、カシメ設備が2台必要となる。また、時間差を設けた1台のカシメ設備を用いることも可能であるが、設備費用が大幅に増大し、メンテナンスが大変である等の問題がある。
【0012】
丸端子を持つ3極ブリッジは、芯線を挿入する作業が困難であり、また、カシメ時に割れの発生や芯線が見えないために、カシメ工程の管理が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の3極電源プラグは、2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジと、各Uバレルにカシメられた芯線と、前記3極ブリッジとカシメられた芯線を覆うように射出成形によって形成されたプラグ本体と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の3極電源プラグの製造方法は、2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジを作成し、各Uバレルに芯線を挿入してかしめ、前記3極ブリッジとカシメられた芯線を覆うようにプラグ本体を射出成形により形成することを特徴とする。
【0015】
本発明の3極ブリッジは、2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルと、これらを位置決めして支持する支持体とから成ることを特徴とする。
【0016】
本発明の2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジの各Uバレルを同時にカシメるための一対のカシメ冶具は、上部に並置したアンビル部と該アンビル部の間にクリンパ部を持つ下側カシメ冶具と、前記下側カシメ冶具のアンビル部とクリンパ部にそれぞれ対向するように下部に配置されたクリンパ部とアンビル部を持つ上側カシメ冶具とから成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、3極電源プラグの3極のUバレルを同時にカシメることができるので、カシメ作業が単純化でき、また、カシメ設備も単純化でき、この結果、コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面(図1〜図4)を参照して説明する。図1は、本発明の3極ブリッジを説明するための図であり、図1aは、3極ブリッジの側面図であり、図1bは、本発明の1つの実施形態の3極ブリッジの正面図であり、図1cは、本発明の他の実施形態の3極ブリッジの正面図である。図2は、3極ブリッジのカシメ工程を説明するために、3極ブリッジとともに一対のカシメ冶具を示す図である。図3は、3極ブリッジの拡大正面図である。図4は、一対のカシメ冶具の拡大図である。
【0019】
図1a、図1bおよび図3に示すように、3極ブリッジ10は、例えば、PP(ポリプロピレン)のような熱硬化性樹脂の支持体12に3つのUバレル14(14a、14b、14c)を持つ端子(2つの極刃20と1つのアースピン22)を固着して支持しているものである。上側の2つのUバレル14a、14bは上方が開いた位置に配置されており、下側の1つのUバレル14cは、従来例と異なり、下方に開いた位置に配置されている。また、図1cに示すように、下側の1つのUバレル14dは、部分的にカシメられている。
【0020】
次に、図2,図4を参照して、本発明のカシメ工程を説明する。本発明では、一対の下側カシメ冶具と上側カシメ冶具が用いられる。下側カシメ冶具40は、3極ブリッジのUバレル14aと14bをカシメるためのアンビル部40a、40bが上部に並置されており、3極ブリッジのUバレル14cをカシメるためのクランパ部40cがアンビル部40a、40bの間に配置されている。
【0021】
これらの一対のカシメ冶具によるカシメ工程は次のように行なわれる。3極ブリッジ10のそれぞれのUバレル14に芯線が配置されて下側カシメ冶具40上に配置される。次に、上側カシメ冶具42が矢印Aに示すように下降されて、3極ブリッジ10の3つのUバレル(14a、14b、14c)をこれらのカシメ冶具の間で同時に圧着することによって、3つのUバレルが同時にカシメられる。
【0022】
図1cに示す3極ブリッジの場合には、Uバレル14dが予め部分的にカシメられており、芯線を挿入した後、同様にカシメられる。
【0023】
Uバレルがカシメられた3極ブリッジは、その後、射出成形され、3極ブリッジ等を覆うようにプラグ本体(図示せず)が形成されて3極電源プラグが製造される。
(その他の実施形態)
前述の説明は、説明の便宜上、一対のカシメ冶具を上側カシメ冶具と下側カシメ冶具を例にとり説明したが、これらのカシメ冶具の配置は上下に限られず、一対のカシメ冶具が向き合っている限りは、任意の方向に配置されてもよいものである。例えば、90°回転させた位置(横方向)、場合によっては、180°回転させた位置であってもよい。従って、特許請求の範囲に記載の上側カシメ冶具および下側カシメ冶具は、「上側」、「下側」に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の3極ブリッジを説明するための図であり、図1aは、3極ブリッジの側面図であり、図1bは、本発明の1つの実施形態の3極ブリッジの正面図であり、図1cは、本発明の他の実施形態の3極ブリッジの正面図である。
【図2】3極ブリッジのカシメ工程を説明するために、3極ブリッジとともに一対のカシメ冶具を示す図である。
【図3】3極ブリッジの拡大正面図である。
【図4】一対のカシメ冶具の拡大図である。
【図5】各極がUバレル端子を持つ3極ブリッジを示すUバレル側から見た正面図である。
【図6】各極が丸端子を持つ3極ブリッジを示す丸端子側から見た正面図である。
【図7】3極ブリッジをカシメる従来例の方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0025】
10 3極ブリッジ
12 支持体
14(14a、14b、14c) Uバレル
20 極刃
22 アースピン
40 下側カシメ冶具
40a、40b 下側カシメ冶具のアンビル部
40c 下側カシメ冶具のクリンパ部
42 上側カシメ冶具
42a、40b 上側カシメ冶具のクリンパ部
42c 上側カシメ冶具のアンビル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジと、
各Uバレルにカシメられた芯線と、
前記3極ブリッジとカシメられた芯線を覆うように射出成形によって形成されたプラグ本体と、
を有することを特徴とする3極電源プラグ。
【請求項2】
請求項1記載の3極電源プラグにおいて、前記上部のUバレルはそれぞれ極刃と一体のものであり、前記下部のUバレルはアースピンと一体のものであることを特徴とする3極電源プラグ。
【請求項3】
2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジを作成し、
各Uバレルに芯線を挿入してかしめ、
前記3極ブリッジとカシメられた芯線を覆うようにプラグ本体を射出成形により形成する、
ことを特徴とする3極電源プラグの製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の電源プラグの製造方法において、前記下部のUバレルを予め部分的にカシメることを特徴とする3極電源プラグ。
【請求項5】
2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルと、これらを位置決めして支持する支持体と、から成ることを特徴とする3極ブリッジ。
【請求項6】
請求項5記載の3極ブリッジにおいて、前記上部のUバレルはそれぞれ極刃と一体のものであり、前記下部のUバレルはアースピンと一体のものであることを特徴とする3極ブリッジ。
【請求項7】
2つの並置した上方に開いた上部のUバレルおよび1つの下方に開いた下部のUバレルとこれらを位置決めして支持する支持体とから成る3極ブリッジの各Uバレルを同時にカシメるための一対のカシメ冶具において、
上部に並置したアンビル部と該アンビル部の間にクリンパ部を持つ下側カシメ冶具と、
前記下側カシメ冶具のアンビル部とクリンパ部にそれぞれ対向するように下部に配置されたクリンパ部とアンビル部を持つ上側カシメ冶具と、
から成ることを特徴とする一対のカシメ冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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