説明

3次元オブジェクトの3次元撮像の記録

歯学および関係する医学的(および適切な非医学的)応用例のために設計された、3次元ベースのモデリング方法およびシステム。データ捕捉手段は、オブジェクト(たとえば歯列弓)の3次元表面を表す、点群を生成する。隣接し重複する画像の高度に正確な組合せ(または「スティッチング」)を可能にするのに十分な、位置、角度、および向きの情報を、3次元画像処理ソフトウェアに提供するために、特に低い画像明瞭度を有する画像フィールド内のそれらの領域内に、および特に少なくとも2つの画像の重複部分内に現れるそれらの領域のそのような中に、3次元認識用オブジェクトが提供される。上顎および下顎弓など、配列させられる関連するオブジェクトまたはそのモデルの、配列および製作が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査された複数の画像内のオブジェクトおよびフィーチャの、相対位置を決定するための方法およびシステムに関し、特に、個々の患者の解剖学的構造によって決まる精密な寸法となるように外科および補綴装置を設計および製造することが必要な応用例を含めた、医学的および歯科応用例の該方法およびシステムに関する。より詳細には、患者の下顎および上顎、または、対応するそれらの模型もしくは印象のデジタル化された3次元走査画像を、可能な限り精密に記録する(registering)という問題を対象とする。
【背景技術】
【0002】
多くの外科手技は、非常に高度な精密度および正確度で患者の解剖学的構造に適合させることが要求される、補綴装置または別の人工装置を、患者の軟組織または骨組織内へと一時的または恒久的に挿入することに関係する。そのような応用例の1つは、インプラント歯学に関連し、その過程において、1つまたはそれ以上の(一般に金属の)インプラント・アンカーが、患者が失った1本またはそれ以上の生来の歯を模擬および置換するように設計された補綴構成要素を受容および支持するために、患者の顎骨内に外科的に配置される。完全に成功するために、インプラント手技は、既存の骨の構造および歯列によって決定された、非常に厳密な配置、向き、およびサイズ決め要求に忠実でなければならず、外科的に配置されたインプラント・アンカー上に嵌められる補綴構成要素は、好ましくは隣接する歯の位置、形状、サイズを含めた患者の精密な解剖学的ジオメトリと特に一致するように、設計、形状付け、およびサイズ決めされなければならず、また支持インプラント・アンカーの主軸の精密な向きに、高度な正確度で移行させなければならないことが、よく知られている。
【0003】
さらに、矯正歯科および修復歯科の分野において提供される多くの製品およびサービスの開発では、コンピュータ支援設計(CAD)およびコンピュータ支援製造(CAM)を利用する試みがなされている。たとえば、歯科医術では、必要とされる製品またはサービスを提供するために、患者の口腔の印象から作り出された歯科用石または石膏の模型が一般に使用され、また適切なジオメトリを表すデータを歯科用CADシステムに提供するために、患者の歯列または患者の歯列を表す模型の、3次元(3D)走査が使用される。ただし、そのような応用例では、歯科用CADモデリングのために、上顎(または上方複製模型)の画像と下顎(または下方複製模型)の画像との、非常に正確な配列が必要となる。
【0004】
これらの厳密な要求を満たすための従来の方法では、患者の顎および歯列のモデルの製作が行われ、該モデルの製作は、全歯列弓を構成する患者の口腔内の歯上および歯周に置かれる展性の物質を用いた、患者の歯列のいわゆる「印象」の採取を含む。インプラントおよび修復用構成要素の配置が一要素である場合、通常この印象を、インプラント・アンカーの外科的挿入後に採取する。通常、挿入したインプラント・アンカーの外部先端に、印象用コーピングと呼ばれる基準構成要素を固定し、アンカーの位置および角度向きの基準として用いる。続いて、前記印象に基づく型から製作したモデルに、いわゆる「類似」アンカー(analog anchor)を組み込み、患者の顎内のアンカーを型どり、該アンカーのための補綴装置を上記のように作り出されたモデルのジオメトリに基づいて設計および製造する。
【0005】
上述した従来の手技は、実際に実施する際に、数多くの困難および欠点を伴う。歯科開業医が、常に寸法および位置の誤差のない歯の印象の製作、したがってモデルを製作することは、不可能であることが証明されている。その結果、ミリメートル未満の寸法誤差、または1°もしくは2°の向きの誤差によってさえ、容認できないストレスおよび疾患を引き起こす補綴配置の結果になる、そのような応用例ではそれに伴なって幾何学的な厳密さが要求される。
【0006】
近年では、従来のインプラント歯科手技のよく知られたこれらの問題に対処するために、画像に基づくモデリング技術を用いる取組みが行われてきた。こうした取組みでは、患者の口腔の画像を撮り、いわゆる3次元画像処理技術およびソフトウェアを用いて、適切な領域の3次元モデルを再現する。1830年代の写真の発明後の10年間にその起源を遡る、写真測量法の分野は、「電磁放射エネルギーおよび他の現象の写真画像およびパターンを、記録、測定、および解釈する過程を通して、物理的なオブジェクトおよび環境についての信頼性のある情報を得る、技術、科学、および技法」である。(American Society of Photogrammetry and Remote Sensing、「Manual of Photogrammetry」、第4版、1980)。特に、迅速な処理速度および大きいメモリを有するコンピュータ、ならびに低コストのデジタル・カメラおよびその他の画像キャプチャ装置の出現に伴い、多種多様な仮想モデリング応用例に適用可能な既製の3次元画像処理ソフトウェアが、容易に入手可能になってきた。そのようなソフトウェアを使用すると、撮像されるサブジェクト・フィールドの適度に正確な3次元モデルを、入手可能な商業製品を用いて再構築することが可能になってきた。しかし、特に高度な正確性の要求、および人体の撮像という物理的な制約は、歯科医学の分野において、許容可能な3次元撮像技術の不在をもたらしてきた。特に問題であるのは、撮像された場面を、仮想モデルの形で正確に再構築する必要があることである。通常、オブジェクトは2つ以上の位置から撮像され、それによって、より複雑な3次元モデルが提供される。
【0007】
1998年12月22日発行の、Carlssonらの米国特許第5,851,115号は、歯科部品をそれから設計および製作することができる、患者の口腔の仮想モデルを作り出すための、口腔を撮像するための写真測量方法およびシステムを記載している。Carlssonらによるシステムでは、単一の露光で2つの異なる角度からの立体画像を具現化することを可能にする1組のミラーを備える、特殊なカメラが用いられる。Carlssonのシステムはさらに、ミラー・システムによって生み出される仮想「レンズ」の相対的なジオメトリが、精密に知られていることを必要とする。撮像されたフィーチャの配置および向き決めにおいて、ソフトウェアを補助するために、Carlssonは、撮像されたフィールド内の平坦な面に加えられた、円などの基準マークの使用を教示する。
【0008】
1999年1月12日発行のvan Niftericの米国特許第5,857,853号もまた、インプラント歯科において使用される歯科補綴部品の製造に必要とされる、寸法および向きのデータを捕捉するための、写真測量に基づく方法を開示する。写真測量ソフトウェアの三角測量によって必要とされる、少なくとも2つの視点を得るために、van Niftericらの方法は、精密に知られた相対位置を有する複数のカメラ、または正確に定義された別々の位置の間で動かすことができる旋回キャリッジ上に取り付けられた単一のカメラの、いずれかを用いる。van Niftericらは、撮像された場面のフィーチャを座標フレーム内で位置決めする際に、写真測量ソフトウェアによって使用される基準点として機能させるための、認識用オブジェクトおよび認識点の使用をさらに教示する。すなわち、van Niftericらは、測定スケールマーキングを備えるバー、およびピン上に取り付けられた2つの球面の、認識用オブジェクトとしての使用を記載する。
【0009】
Carlssonらおよびvan Niftericらの特許において記載された方法は、かなりの進歩を生じるが、これらの方法は依然、いくつかの重大な不利益および欠点を示し、それによりこれらの方法は、ほとんどのインプラント歯科開業医にとって非実用的なものとなる。前記方法ではいずれも、高度に特殊化されしたがって高価なカメラ装備の使用が必要であり、いずれも精密に知られた相対的なレンズ位置から複数の画像を捕捉するために、そのようなカメラ装備を精密に整列することが必要である。機能的には、両方法は、広い視野を正確に撮像するには不十分であり、特に無歯(歯がない)顎に典型的でありしたがってインプラント歯科診療において極めて一般的な状態である、フィーチャの鮮明度が非常に低いことによって特徴付けられる領域を含む、広い視野の正確な撮像には不十分である。本発明は先行技術のこれらの欠点に対処するものであり、そして本発明は特に医学および歯科応用例を対象とする3次元ベースの仮想モデリング方法を提供する。この方法は、非常に低コストであり、組み合わされた3次元画像の使用を必要とする応用例において特にフィーチャ再構築の正確度を向上させる。
【0010】
特に、上顎および下顎の相対位置をCADシステムに提供する問題に関して、先行技術の方法は、共通の特徴を有する2つの方法に依存してきた。第1の方法は、単一画面での上顎および下顎両方の顔面側表面の3次元画像の捕捉に依拠する。上顎および下顎の個別の走査画像を、上顎および下顎両方の顔面側表面の画像によって提供された共通のテンプレートとマッチングさせる。先行技術の第2の方法は、上歯および下歯両方の咬み合せまたは咬合面の、「バイト・レジストレーション(bite registration)」または印象の、捕捉に依拠する。下顎のジオメトリを捕捉した後に、バイト・レジストレーションを、下顎の表面上に配置し、それも同様に走査する。次いで、上顎の走査画像を、バイト・レジストレーションのマッチング表面の画像とマッチングさせる。
【0011】
上記パラグラフにおいて説明した先行技術の方法は双方とも、2つの根本的な問題を有する。1つの問題は計算複雑性であり、人間の操作者がマッチング画像の相対位置に関して最初にうまく推測することによって、より高度な計算複雑性さえも最低限に抑える必要性があることである。第2の、より重大な困難は、患者が部分的または完全に無歯状態であり、上顎と下顎の走査画像をマッチングさせるために必要な3次元情報が欠けている場合に生じる。また、前歯のジオメトリをバイト・レジストレーションから得ることも、困難である。
【非特許文献1】American Society of Photogrammetry and Remote Sensing、「Manual of Photogrammetry」、第4版、1980
【特許文献1】米国特許第5,851,115号
【特許文献2】米国特許第5,857,853号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ある先行技術では、走査するフィールドの3次元フィーチャを表すデータ点群を捕捉することができる、何らかの適切な走査手段を用いて、オブジェクトを走査する。そのような走査は通常、必要部分を網羅する画像フィールドを集合的にまたぐ、複数の重複する画像の撮影を必要とする。これらの別々の走査画像から完全な3次元モデルを再現するために、通常、様々な方法が用いられる。そのような先行技術の方法では、多数の画像を位置決めし、向きを決めるために、カメラに対するモデルの位置についての精密な情報が使用される。さらに、市販の3次元画像処理ソフトウェア製品はまた、画像の重複領域をマッチングさせることによって個別の走査画像を単一のモデルへと組み合わせるための、ツールを提供する。適切な画像処理ソフトウェアのよく知られた例は、Raindrop Geomagic,Inc.社により販売されている、Studioソフトウェアを含む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書では、歯学および関係する医学的(および適切な非医学的)応用例のために設計された、3次元ベースのモデリング方法およびシステムを開示する。本方法およびシステムの一側面は、特殊なカメラの必要をなくし、その代わりに、3次元表面を表す点群を生成する、任意のデータ捕捉手段の使用を可能にする。そのようなデータ捕捉手段は、たとえば、手持ちの、またはフレームに固定された3次元レーザ・スキャナ、一般的なデジタル・カメラ、または特定の医学的用途に実質的に適した別の任意の撮像手段とすることができる。
【0014】
本開示の別の側面は、3次元画像処理ソフトウェアにより、画像フィールド内のオブジェクトの位置および向きを、自動的に配置させ正確に決定させることを可能にするための、3次元認識用オブジェクトの使用である。
【0015】
本開示のさらに別の側面は、隣接し重複する画像の高度に正確な組合せ(または「スティッチング」)を可能にするのに十分な、位置、角度、および向きの情報を3次元画像処理ソフトウェアに提供するために、明瞭なトポグラフィーを有する認識用オブジェクトを、低い画像明瞭度を有する画像フィールド内のこれらの領域内、特に、少なくとも2つの画像の重複部分内に現れるこれらの領域内などに、位置決めすることである。
【0016】
本開示のさらに別の側面は、上顎および下顎の空間的関係を正確に捕捉するための方法を含み、該方法は、歯列の有無に依存せず、したがって、部分的または全体的に無歯状態である患者からでも、正確なCADモデリング・データを得るために十分に使用することができる。開示される方法では、精密かつ正確な幾何学的基準を提供するために、非生理的な認識用オブジェクトまたはジオメトリが、上顎および下顎、または患者の上顎および下顎の模型表現に加えられる。
【0017】
本発明の別の側面では、歯科モデルの上方および下方構成要素の相対位置を捕捉するための代替方法は、これらのモデル構成要素の、非歯科的平面3次元ジオメトリを利用する。この代替方法では、ソフトウェアは、3D走査データからのモデルの位置決定幾何学的フィーチャを記録し、すべての解剖学的および歯科的フィーチャを含めた、モデルに関連するすべてのトポグラフィー・フィーチャを精密かつ正確に配置するために、前記幾何学的フィーチャの知られている特徴を用いる。そのような位置決定幾何学的フィーチャは、各モデル構成要素上の3つの最小の交差平面であることができ、そのようなフィーチャは代わりに、モデル構成要素平面上に配置されもしくは塗られたディスク、球体、またははっきりとした位置データ(各オブジェクトにつき6つの自由度)を提供するような別の何らかの非歯科的オブジェクトなど、平面および/またはフィーチャの組合せを構成することができる。
【0018】
これらの方法では、正確に知られまたは決定可能な相対位置に配置された明瞭なフィーチャを含む、知られたジオメトリを有する認識オブジェクトが、画像フィールド内、特に低いフィーチャ鮮明度を有する画像フィールド内の領域内に、固定的に位置決めされる。認識用オブジェクトの例は、知られた半径を有する1つまたはそれ以上の球体ならびに知られたジオメトリおよび寸法の1つまたはそれ以上の平坦なオブジェクト、例えば錯体を含む。次いで、画像フィールドが走査され、そのような走査は、必要なジオメトリを提供するために、前記画像フィールドを網羅するよう画像フィールドを効果的に「パンする」。次いで、走査手段によって得られた3次元画像データを組み合わせ、かつ走査された画像フィールドのジオメトリを高度な正確度で再構築する仮想3次元モデルを決定するために、好ましくは本明細書において説明するアルゴリズムを含む、3次元画像処理ソフトウェアが用いられる。
【0019】
物理的に連結されジオメトリが知られたフィーチャを、認識用オブジェクトとして、目的の視野を集合的に網羅する個々の重複しまたは重複しない画像内で使用することによって、これらの画像の相対的な位置および向きを決定することができる。本発明のこの側面は、走査画像を配列するときのドリフト、ひずみ、および/またはその他の変形を生じる、知られている「スティッチング」方法の結果としてもたらされる不正確さの、原因を排除する働きをする。
【0020】
本発明のさらに別の側面は、上顎歯列弓および対向する下顎歯列弓の、3次元走査画像データを組み込み配列させる、3次元モデルを構築するための方法である。該方法は、 上顎および下顎の歯列弓のそれぞれの位置および向きの決定を可能にするのに十分な、それらの歯列弓の表面に隣接していくつかの認識用フィーチャを配置すること;上記それら歯列弓のトポグラフィー・フィーチャを包含し表す3次元画像データを得るために、かつ上記各歯列弓に関連する認識用フィーチャを捕捉するために、それら歯列弓を個別に3次元走査すること;上記上顎歯列弓および上記下顎歯列弓を咬合関係で配置し、上記各歯列弓に関して、上記個々の走査で捕捉された認識用フィーチャを包含する3次元画像データを得るために、上記それら歯列弓を3次元走査すること;および前記3次元画像データを処理し、3次元モデルを構築すること(ここで、対応する上顎歯列弓の標本を、対応する下顎歯列弓の標本と正確に配列させる);を含む。歯列弓は、患者の上顎および下顎弓の、印象または模型に形成することができる。少なくとも1つの認識用フィーチャを、前記歯列弓の少なくとも一方の外部に配置することができる。また、少なくとも1つの認識用フィーチャは、上記歯列弓の少なくとも一方の内部に配置される。上顎および下顎の歯列弓のそれぞれの位置および向きの決定を可能にするのに十分な、それらの歯列弓の表面に隣接していくつかの認識用フィーチャを配置することは、前記それら歯列弓の1つまたはそれ以上の歯科的フィーチャと一緒に撮られる場合は、少なくとも一方の歯列弓の位置および向きの前記決定を可能にするのに十分な、いくつかの認識用フィーチャを配置することを含むことができる。前記歯列弓の少なくとも一方が、無歯状態であることがあり、またはいずれの歯列弓も無歯状態ではないことがあり、または前記歯列弓の少なくとも一方が、無歯領域を有することがある。
【0021】
別の側面は、上方歯科モデル構成要素および対向する下方歯科モデル構成要素の、3次元走査画像データを組み込み配列させる、3次元モデルを構築するための方法である。該方法は、3次元スキャナを用いて、上方および下方歯科モデル構成要素をそれぞれ3次元走査すること(ここで、少なくとも1つの上記構成要素は平坦なフィーチャを有し、上記走査中に、上記構成要素の平坦なフィーチャを上記3次元スキャナの平坦な面に関係させるものであり、上記構成要素はまた、平坦な底部フィーチャと組み合わせた場合に、各構成要素の位置および向きを決定するのに十分な追加の認識用フィーチャを有する);上記上方歯科モデル構成要素および上記下方歯科モデル構成要素を、上記スキャナに対して咬合関係で配置すること;上記構成要素の画像の配列を可能にするために、(a)の動作において走査された上記上方歯科モデル構成要素および上記下方歯科モデル構成要素の、十分な数の認識フィーチャを包含する3次元画像データを得るために、上記上方および下方歯科モデル構成要素を3次元走査すること;および上記3次元画像データをプロセッシングし、そこから3次元画像モデルを構築すること(ここで上記上方歯科モデル構成要素の表現を上記下方歯科モデル構成要素の表現と正確に配列させる)を含む。上記追加の認識用フィーチャの少なくとも1つを、平坦なフィーチャとすることができ、走査の際に上記フィーチャを前記スキャナの記録マークに関係させることができる。いくつかの例では、記録マークが、前記スキャナの平坦な表面領域に対して垂直である。前記歯列弓の少なくとも一方が、無歯状態であることがあり、またはいずれの歯列弓も無歯状態ではないことがあり、または前記歯列弓の少なくとも一方が、無歯領域を有することがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、上述の方法およびシステムの様々な側面を提示する。これらの側面の提示において、そのような方法およびシステムの特徴を示すために、実施形態を用いる。当然ながら、これらの実施形態は例示のためだけに示され、決して限定を意図するものではない。本発明は、これら、および別の数多くの形態の両方において、具現することができる。これらの実施形態は、要素および動作の様々な組合せを示すが、当然ながらそのような要素または動作の一部またはすべてを、依然として本発明を実施しながら、さらに別の要素または動作を伴いまたは伴わずに、別の方法で組立てまたは実施することができる。
【0023】
本明細書で使用するいくつかの用語また表現は、文脈上の使用がそうでないと明示しない限り、以下の意味を有するものとして理解されるべきである。歯列弓の表面に「隣接して」とは、歯列弓上に直接、またはそこからわずかに間隔をおいて、配置することを含む。「内部に」および「外部に」とは、それぞれ、口腔の内部または外部へと向かうフィーチャに関し、歯列弓に関して内部にまたは外部にとは、それぞれ、歯列弓のU字形内側のまたはU字形歯列弓の外側に沿った領域に関する。無歯歯列弓とは、歯をもたない歯列弓である。無歯領域を有する歯列弓は、1本またはそれ以上の歯を有し、そして1本またはそれ以上の歯を欠いた部分を有する。
【0024】
本発明の一側面は、走査された視野の仮想3次元モデルを作り出すための方法およびシステムであり、この方法およびシステムは、捕捉された重複する画像の「スティッチング」における基準点として、非生理的なオブジェクトを用い、さらに、そのような認識オブジェクトを、フィーチャの明瞭度が低いことを特徴とする視野の領域内で、そのような領域の3次元モデリングの正確度を高めるために位置決めする。
【0025】
本発明のさらなる側面は、CADおよびCAM応用例において使用可能な、3次元データを得るための方法およびシステムであり、この方法およびシステムは、特に各構成要素からの3次元データを別々に走査しなければならない場合の、歯科患者の下顎および上顎など個々の構成要素の相対位置に関係する。
【0026】
説明されるシステムおよび方法は、医学的および歯学応用例に特に適しており、またそれを意図するものであり、インプラント歯科および関連する応用例の分野での使用に特に適している。歯科インプラントは、欠損した歯の修復物を支持するために使用される。インプラント固定具は、歯科医によって外科的に埋め込まれる。これらの歯科インプラントは、通常アバットメントおよびクラウンを用いて「修復」され、すなわち患者の顎内へのインプラント固定具の埋込みの成功に続き、アバットメントおよびクラウンを含む相補的な構成要素が、患者の生来の歯の修復を患者にもたらすために、埋め込まれた固定具に固定される。
【0027】
一側面では、本発明のいくつかの実施形態による方法およびシステムは、歯科用修復用構成要素の製造者が、周囲の口腔環境に対するインプラントの位置および向きを正確に測定し、それによって、患者の解剖学的構造および既存の歯列用にカスタマイズされた修復用構成要素を、非常に高度な精密度および正確度で設計および機械加工することを可能にする。
【0028】
歯学を対象とする応用例、および関連する医学的応用例では、そのような方法およびシステムにより、特殊化した(1つまたはそれ以上の)カメラおよびカメラ装備の必要がなくなる。その代わり、本方法およびシステムによって、3次元表面を表す点群を生成する任意のデータ捕捉手段の使用が可能になる。そのようなデータ捕捉手段は、たとえば手持ちのもしくはフレームに固定された3次元レーザ・スキャナ、一般的なデジタル・カメラ、または特定の医学的用途に実質的に適した別の任意の撮像手段とすることができる。本発明で使用可能な画像データ捕捉手段は、商業的な供給元から容易に入手可能であり、たとえば、Minolta Corporation社により市販されているVIVID900型スキャナなど、3次元レーザ・スキャナを含む。
【0029】
本発明の別の側面は、画像フィールド内のオブジェクトの位置および向きを、自動的に配置し正確に決定するために、3次元画像処理ソフトウェアを支援するための、図1〜図7に示すような認識用オブジェクト12〜26の使用である。
【0030】
本発明のさらに別の態様は、隣接し重複する画像の高度に正確な組合せ(または「スティッチング」)を可能にするのに十分な、位置および向きの情報をイメージング・ソフトウェアに提供するために、特に少なくとも2つの画像の重複部分内に現れる領域内など、低い画像明瞭度を有する画像フィールド内の領域内に、明瞭なトポグラフィーを有する認識用オブジェクトを位置決めすることである。フィーチャの明瞭度が低いそのような領域の存在は、無歯の歯科的疾患に典型的であり、したがって無歯状態の顎の撮像にとって慢性的な問題をもたらすが、本発明は、その対処に初めて成功した。
【0031】
本明細書で教示されるアプローチを実施するには、正確に知られまたは正確に決定可能な相対位置に配置された明瞭なフィーチャを含む、知られたジオメトリを有する認識用オブジェクトが、画像フィールド内、特に、低いフィーチャ鮮明度を有する画像フィールド内の領域内に、固定的に組み込まれる。この技術と共に使用するための、認識用オブジェクトのいくつかの実施形態は、図1に示されたオブジェクト12などのオブジェクトを含み、このオブジェクトは、それぞれ角をなすポスト13A、13B、および13C上の精密に知られた位置にて固定され、正確に知られた半径を有する3つの連結された球体12A、12B、12Cを含む。認識用オブジェクトの別の有用な形態は、知られた寸法の多角錘の一例を示す図3の、オブジェクト16の平面16Aおよび16Bによって示されるような、多数の平面の使用である。認識用オブジェクトのさらに別の有用な形態は、図4の18のような、固形直方体のオブジェクトを端部に有する棒、図5の22のような、間隔を置いた識別フィーチャを有する精密に湾曲させた針金、ならびにたとえば図5(フィーチャが球体である)〜図7および図9に示すような、半径が知られた単純な球体である。図8は、球体のオブジェクトが上顎に取り付けられ、印象が製作された後に製作された、印象を示す。図4および図5は、上顎および下顎弓のキャスティング(casting)40に隣接して配置された、認識用オブジェクトを示す。図6では、認識用オブジェクトは、上顎42および下顎44の印象の外部に配置された球体である。
【0032】
本明細書で教示される方法を実施するには、図1〜図7、図9に示す認識用オブジェクトを、画像フィールド内に組み込む。インプラント歯科の場合、1つまたはそれ以上の認識用オブジェクトを、患者の顎内に外科的に埋め込まれている歯科インプラントに固定することができる。好ましくは、そのような認識用オブジェクトはそれぞれ、歯科インプラントの界面フィーチャと相補的な、取り付けフィーチャを含む。認識用オブジェクトは、認識用オブジェクトのボア内に挿入可能なねじ式シャフトを有する締結具を用いて固定することができ、シャフトは、インプラント固定具の主軸に沿って向けることができる。視野が、患者の上顎および下顎の関節をなす模型を含む場合、認識用オブジェクトを、模型内にねじ固定するか別の方法で模型に固定された、ポストに固定することができる。
【0033】
別の側面によれば、本発明は、歯科修復フィールドの仮想3次元モデルを作成する(developing)ための、方法およびシステムを含む。一側面では、本発明は、3次元走査手段を用いて得られた1つまたは複数の走査画像内における、認識用オブジェクトと認識用オブジェクトのフィーチャとの相対位置を決定するための、ならびに3次元走査されたオブジェクト内の知られたフィーチャの位置および向きを検出するための、手段を提供する。
【0034】
別の側面では、本発明は、物体(すなわち上顎および下顎、または上顎および下顎の模型または印象表現)に位置決めされまたはそれに固定された、認識用オブジェクトを使用して、歯科患者の上顎および下顎など2つの別個の物体間の空間的関係を正確に捕捉するためのシステムおよび方法を含む。
【0035】
認識用オブジェクトは、本来のオブジェクト(またはオブジェクトの組)の、それに内在するが非解剖学的であるフィーチャとすることができると同時に、本来のオブジェクト・フィールドに加えられる人工物である。いずれの場合にも、認識用オブジェクトは、知られているジオメトリを有する。認識用オブジェクトの知られているジオメトリの情報を使用することで、ソフトウェアは、認識用オブジェクトの精密な位置および向きを、走査されたデータに関して識別することを可能にする。さらに、所与の視野の多数の走査画像を、「記録する」ことができ、それらの相対位置および/または向きを、人間による介入を伴わずに、精密に配列させる。同様に、上顎および下顎またはそれらを表す模型など、2つの別々に走査される構成要素からなる視野を特に含む、2つまたはそれ以上のオブジェクトの相対位置および向きは、各視野の多数の走査画像と、前記それぞれの視野からの認識用オブジェクトを包含する少なくとも1つの走査画像とを使用して、精密かつ高度に正確な寸法で正確に配列させることができる。
【0036】
したがって、走査される視野は、ジオメトリおよび寸法が知られた1つまたはそれ以上の認識フィーチャを有する、少なくとも1つのオブジェクトを含まなければならず、前記フィーチャは、位置および/または向きを完全に規定するのに十分である。これらのタイプのオブジェクトの非限定的な実施例を、図1〜図7に示す。認識(配置)用オブジェクトは、3次元スキャナを使用して走査され、走査されたデータは、順不同のASCIIテキストフォーマットとして収集されることが多いが、3次元点データのいかなる収集も適用可能である。
【0037】
走査されたデータから、(1つまたはそれ以上の)認識用オブジェクトがイメージング・ソフトウェアによって検出され、それぞれの位置および/または向きを(その知られたジオメトリを用いて)決定することにより、走査されたデータ内に捕捉された別のすべてのオブジェクトおよびフィーチャの、位置および向きの決定も可能になる。
【0038】
このプロセスは、効率的なコンピュータ・コードを用いた完全に自動化されたプロセスにおいて、迅速に実行することができる。たとえば、位置および向きを規定するために使用される3つの球体(図1参照)の例では、(直径および相互距離が知られた)3つの球体の中心が、ソフトウェアによって検出される。次いで、幾何的関係を利用して原点が計算され、原点の位置が、通常、データ・ポイント・トリプル(x、y、z)として出力される。ソフトウェアはまた、認識用オブジェクトの向きを、2つの単位ベクトルとして計算することができ、またデータ・ポイント・トリプルとして表現することができる。図1〜図7に示す球体、平面、多角形、円筒形、および別の形状など、サブジェクト・フィールド内のジオメトリが知られた別のオブジェクトによって規定される位置および向きを決定するために、同様の方法が用いられる。この方法において、各認識用オブジェクトの位置および向きを完全に規定する、1組のデータが得られる。
【0039】
3次元走査画像内の、ジオメトリが知られたオブジェクトの検出は、多くの潜在的な応用例を有する。本発明が主に対象とする、医学的および歯科応用例は、有機的な表面と製造された目標物の組合せを含み、これらの応用例では、解剖学的な視野内に位置決めされジオメトリが知られたオブジェクトの、位置および向きを高度な正確度まで検出するための能力によって、この解剖学的視野のトポグラフィーにカスタマイズされた構成要素部品を、設計する能力がもたらされる。
【0040】
特に歯科インプラントの場合、たとえば、図1〜図3に示す認識用オブジェクトのうちの1つを、製造された既存の部品(すなわちインプラント自体)の上に取り付けることによって、患者の歯列弓内のこの部品の厳密な位置および向きを、別の認識用オブジェクトに対して相対的に決定することができる。また、この決定は、患者の解剖学的状態の幾何学的要求を厳密に補完する置換および補足部品(すなわち置換歯)を選択し、次いで製造するために、走査された画像と、提案された置換および補足部品とを組み合わせる、仮想アセンブリの製作を可能にする。さらに、無歯領域または目立った解剖学的フィーチャをもたない別の領域内に、認識用オブジェクトを配置することによって、認識用オブジェクトを含む走査画像同士の、正確な記録が可能になる。
【0041】
(たとえばサイズまたは曖昧な視野の理由で)オブジェクトの多数の3次元画像が撮影される場合、捕捉された画像データを本来の視野の完全かつ正確な標本内へと再配列させるために、各画像の相対的な位置および向きを規定することが必要である。これを行うために、画像の組の中の各画像内に、その組の中の第2の画像内にも現れるジオメトリが知られた認識用オブジェクト(図1〜図7に示すものなど)を、捕捉しなければならない。次いで、本来の視野を再現するために、各画像内の知られたオブジェクトの位置および/または向きを使用して、画像を互いに位置決めすることができる。
【0042】
この方法はまた、現在行われている「スティッチング」または「記録」方法と連動して、およびそれを補助するためにも用いられる。これらの方法は、知られたジオメトリを使用せずに多数の走査画像を配列させるが、多くの応用例にとって正確度が不十分である。本発明による1つまたはそれ以上の認識用オブジェクトを視野に加えることによって、たとえば図1〜図6に示すように、隣接画像同士のスティッチングの正確度が大幅に向上する。さらに、低いフィーチャ鮮明度によって特徴付けられる何らかの視野領域内での、そのような認識用オブジェクトの位置決めは、所与の認識用オブジェクトをそれぞれ含む隣接画像間の相対的な基準点として働くことに加えて、そのような領域の3次元モデリングを、大幅に向上させる。
【0043】
特に、説明した本方法論によって、歯科患者の上顎および下顎のデジタル化された個々の走査画像の(または患者の上顎および下顎をそれぞれ表す模型の走査画像の)、精密な相関および記録が可能になる。これらの方法から作成される3次元モデルによって、咬合特徴を決定するトポグラフィー・アスペクトの精密な決定を含めた、上顎および下顎の位置および向きの正確な規定が可能になる。次いで、そのような3次元モデルを使用して、咬合接点および表面の最適な位置/向きを適切にもたらす、歯科修復材を作成することができる。
【0044】
上顎および下顎の相対位置の正確な記録を実行するための第1の方法は、図6に示す認識用構成要素を利用する。図6に示すように、半径が知られた3つの球体24の組が、それぞれ患者の上顎の模型および患者の下顎の模型の外部に固定される。別々に実行される上顎および下顎のデジタル化された走査に続き、図6に示すように上顎および下顎にかくして位置決めされたすべての球体を捕捉する、走査または1組の走査を使用して下顎および上顎ならびにそれらそれぞれの特徴部分の、それぞれの位置、向き、および寸法を正確に表す3次元モデルを構築することができる。
【0045】
本発明による第2の方法では、患者の上顎と下顎間の関節関係の、3次元モデルを作成するために、(好ましくは)3つの球体の、単一の組のみが使用される。図7に示すように、球体26の組は、患者の上顎もしくは下顎弓44、または図7に示すように、そのような歯列弓を表す模型の内部に位置決めされ、対向する顎要素内に配置された柔軟な材料上の、そのオブジェクトの組の嵌込(impact)の「印象」が採取される。次いで、認識用オブジェクトによって生み出された凹み46を撮像するために(図8に示したような)そのまま残された「嵌め込まれた」表面を用いて、またはより良好な照明のために、図9にあるような追加の寸分たがわずサイズ決めされた反射性の球体48を凹部内に配置した後、それぞれの顎の走査画像が撮影される。
【0046】
物理的に連結された、ジオメトリが知られたフィーチャを、認識用オブジェクトとして、目的の視野を集合的に網羅する個々の重複または非重複画像内で使用することによって、これらの画像の相対的な位置および向きを、決定することができる。本発明のこの側面は、走査画像を配列するときのずれ、ひずみ、および/またはその他の変形を引き起こす、知られている「スティッチング」方法の結果としてもたらされる不正確さの、原因を排除する働きをする。図4は、この解決法の一例を示し、この場合、歯列弓が走査される。同様に知られた寸法を有する棒によって連結された、寸法が知られた2つの多角形の形で走査画像内に導入された知られたジオメトリによって、歯の一部の走査画像の位置および/または向きの検出が可能になる。口腔内の走査は、各走査画像が歯列弓内の一部のみを捕捉することが可能になるように、小さいスキャナの使用を必要とする。
【0047】
本発明を実施するには、空間情報を、口腔内の走査を用いて直接得ることができ、次いで上記のように処理することができる。ただし上記のように、本発明は、従来の慣行と関連づけて使用することができ、それによって患者の歯列の印象が採取され、上記歯列は、前記印象から製作されるマスター模型の形で複製される。インプラントの場合、マスター模型は、歯科インプラントの類似物を含む。インプラントによって支持しようとする修復用構成要素部品を設計する目的で、これらのインプラント類似物の位置および向きを決定することができる正確度は、本発明による認識用オブジェクトの使用によって向上する。
【0048】
本発明の別の側面では、歯科モデルの上方および下方構成要素の相対位置を捕捉するための、またそれによって前記モデル構成要素を「配列させる」ための一代替方法は、これらのモデル構成要素の、非歯科的平面の3次元ジオメトリを利用する。この代替方法では、ソフトウェアは、走査画像データからのモデルの位置決定幾何学的フィーチャを記録し、そして該幾何学的フィーチャの知られている特徴を用いてすべての解剖学的および歯科的フィーチャを含めた、モデルに関連するすべてのトポグラフィー・フィーチャを精密かつ正確に位置決めする。そのような位置決定幾何学的フィーチャは、各モデル構成要素上の最小の3つの交差平面であることができ;そのようなフィーチャはモデル構成要素平面上に配置されもしくは塗られたディスク、球体、またははっきりとした位置データ(各オブジェクトにつき6つの自由度)を提供するような任意のその他の非歯科的オブジェクトなど、平面および/またはフィーチャの組合せを、代わりに含むことができる。
【0049】
図10、図11、および図12を参照すると、下方構成要素52(図11に個別に示す)および上方構成要素62(図12に個別に示す)を備える、典型的な歯科モデル50が示されている。図10〜図12に示すように、歯科モデルは一般に、その調製によって生じる多数の平坦な表面を有し(またはそのような平面を容易に加えることができる)、これらの平面は、モデルに関連するすべてのトポグラフィー・フィーチャを位置決めするための基礎の役割を果たすために、モデルの走査画像から抽出することができる、位置決定データの豊富な情報源を提供する。
【0050】
図11を参照すると、モデル50の下方構成要素52が示されている。下方構成要素52は、モデルの調製の人工物としての、またはモデルの調製に続いて作り出される、特に位置決定基準フィーチャとして働く複数の平坦な面を含む。前記平坦な面は、(図11に見ることはできないが下歯列弓55に対向する)底部平面54、後部平面56、第1の(たとえば右)側部平面58、および第2の(たとえば左)側面(図示せず)を備える。同様に、図12に別個に示す上方モデル構成要素62は、(図12に見ることはできないが上歯列弓65に対向する)底部平面64、後部平面66、第1の側部平面68A、および第2の平面68Bを備える。特に、各モデル構成要素の「底部」を形成する平坦な面を、基準フィーチャとして使用することができる(モデル構成要素の「底部」は、構成要素の歯列弓の表面に対向する平坦な表面である)。以下の例では、下方モデル構成要素52(図11に別個に示す)の底部平面54が、基準平面として使用されるが、いずれかのモデル構成要素の別の平坦な表面を、基準として代わりに使用することもできる。同様に、この実施例のために、3つの平面が選択されたが、3つまたはそれ以上の平面、あるいは平面と別の非歯科的フィーチャとの組合せを選択することもできる。(いくつかの例では、1つまたはそれ以上の歯科的フィーチャを、平坦なおよび/または別の非歯科的フィーチャによって増補された認識フィーチャとしてさらに使用することさえできる。)
【0051】
下方モデル構成要素と上方モデル構成要素との配列が、この実施例では各モデル構成要素からの3つの平面を利用することによって実施される。この配列を達成するために用いられる、こうしたそれぞれのモデル構成要素の特定の画像において、上方および下方モデルからの選択された平面は、上方および下方モデル構成要素の正確な配列を展開するために、特定のやりかたで配列する必要は何もないことに留意すべきである。(非平面フィーチャが、目的の平面上またはその付近に存在する場合、これらは、当技術分野で知られた適切な処理技術を用いて除去することができ、一般的にはそうすべきである。)
【0052】
組み立てられたモデル(図10)は、それぞれ下方モデル構成要素(図11)および上方モデル構成要素(図12)の個々の3D画像の組立てに必要とされる平面の、相対位置を提供する。各モデルからの3つの平面が選択される。組み立てられたモデルが、図10に示されるように、および下方モデル構成要素52が図11に示されるように、下方モデル52の底面54は見ることができず、同様に、図12では、上方モデル構成要素62の底面64は見ることができない。ただし、各モデル構成要素の底面は、走査時に3次元スキャナの基準平面上に載り、好ましくは、1つまたはそれ以上の基準マークと共に配列されるので、走査画像内のこれらの底面の幾何学的な向きが分かる。
【0053】
3つの画像(組立時、下方、上方)それぞれにおける底面が知られているので、上方および下方構成要素のそれぞれについて、その構成要素の精密なジオメトリを決定するために、ソフトウェアによって決定する必要があるのはその構成要素の別の画像および組立体の画像の両方においてそれぞれ見ることができる2つの追加平面だけである。同様に、完全に組み立てられたモデルのジオメトリ、ならびに上方および下方構成要素の配列を決定するためには、図10に示すような画像から、モデル構成要素のそれぞれから選択された2つの平面、および予め見ることができないが「知られている」、上方モデル構成要素62の底面64のみが、決定されなければならないものである。
【0054】
たとえば、下方モデル構成要素52のジオメトリは、その底面54(図11には見られない)の知識、ならびに下方構成要素の裏面56および下方構成要素の側面58の決定から、決定することができる。同様に、上方モデル構成要素62のジオメトリは、その底面64(図12には見られない)の知識、ならびに上方構成要素の裏面66および上方構成要素の側面68Aまたは68Bの決定から、決定することができる。上記平面の位置を与えられれば、個々の画像を、アセンブリ内の平面の位置にマッチするように組み立てることができる。
【0055】
すなわち、図10に示す組み立てられたモデルの画像から、モデル50の上方および下方モデル構成要素の配列を実施するためには、上記4つ(各モデル構成要素から2つずつ)の平面(すなわち上方構成要素裏面56および側面58、ならびに下方構成要素裏面66および側面68)の、この画像における向きを決定すること、さらに上方構成要素底面64の、図10に示すような向きを決定することのみが必要である。
【0056】
4つ以上の平面、ならびにモデル構成要素の位置への解を過度に制約する別のオブジェクトを、使用することもできる(過度に制約される場合、最小二乗または相似解が通常好ましいが)。場合により、追加の基準フィーチャを、位置決定基準フィーチャとしても働くように、モデル構成要素の表面の平坦な面上に取り付けることができる。たとえば、モデル表面の対照色である小さい円形ディスクを、何らかの表面上に塗布し、または別の方法で接着することができる。2つまたはそれ以上のそのようなディスクはまた、同一平面上で、精密に測定された間隔をおいた位置上に配置し、それによってスカラー尺度を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】開示された方法およびシステムに従って使用することができる、第1の認識用オブジェクトを示す斜視図である。
【図2】開示された方法およびシステムに従って使用することができる、第2の認識用オブジェクトを示す斜視図である。
【図3】開示された方法およびシステムに従って使用することができる、第3の認識用オブジェクトを示す斜視図である。
【図4】第3の認識用オブジェクトを含む、歯列弓を示す斜視図である。
【図5】第4の認識用オブジェクトを含む、歯列弓を示す斜視図である。
【図6】患者の上顎および下顎を表す模型の外部に配置された、認識用オブジェクトを示す斜視図である。
【図7】3つの内部に配置された認識用オブジェクトを含む、下顎の模型を示す図である。
【図8】図7の模型の3つの認識用オブジェクトによって製作された印象を示す、上顎の模型の図である。
【図9】ここでは図8に見られる印象内に配置された球体を含む、図8に示す模型の図である。
【図10】特徴的な平坦な面を示す、組み立てられた歯科モデルの斜視図である。
【図11】図10の歯科モデルの下方構成要素を示す斜視図である。
【図12】図10の歯科モデルの上方構成要素を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)上顎および下顎歯列弓のそれぞれの位置および向きの決定を可能にするのに十分な、それらの歯列弓の表面に隣接していくつかの認識用フィーチャを配置すること;
(b)上記歯列弓のトポグラフィー・フィーチャを包含し、表す3次元画像データを得るために、かつ上記各歯列弓に関連する認識用フィーチャを捕捉するために、上記歯列弓を個別に3次元走査すること;
(c)上記上顎歯列弓および上記下顎歯列弓を咬合関係で配置し、上記各歯列弓に関して、上記個々の走査で捕捉された認識用フィーチャを包含する3次元画像データを得るために、上記歯列弓を3次元走査すること;および
(d)上記3次元画像データをプロセッシングし、3次元モデルを構築すること(ここで対応する上顎歯列弓の表現を、対応する下顎歯列弓の表現と正確に配列させる)を含む、上顎歯列弓および対向する下顎歯列弓の3次元走査画像データを組み込み配列させる、3次元モデルを構築する方法。
【請求項2】
歯列弓が、患者の上顎および下顎弓の印象または模型内に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの認識用フィーチャが、歯列弓の少なくとも一方の外部に配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの認識用フィーチャが、歯列弓の少なくとも一方の内部に配置される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
上顎および下顎歯列弓のそれぞれの位置および向きの決定を可能にするのに十分な、上記歯列弓の表面に隣接していくつかの認識用フィーチャを配置することが、上記歯列弓の1つまたはそれ以上の歯科的フィーチャと一緒に撮影される場合、少なくとも一方の歯列弓の位置および向きの上記決定を可能にするのに十分な、いくつかの認識用フィーチャを配置することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
歯列弓の少なくとも一方が無歯状態である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
いずれの歯列弓も無歯状態ではない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
歯列弓の少なくとも一方が無歯領域を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
(a)3次元スキャナを用いて、上方および下方歯科モデル構成要素をそれぞれ、3次元走査すること(ここで少なくとも1つの上記構成要素が、平坦なフィーチャを有し、上記走査中に、上記構成要素の平坦なフィーチャを上記3次元スキャナの平坦な面に関係させるものであり、上記構成要素はまた、平坦な底部フィーチャと組み合わせた場合、各構成要素の位置および向きを決定するのに十分な追加の認識用フィーチャを有する);
(b)上記上方歯科モデル構成要素および上記下方歯科モデル構成要素を、上記スキャナに対して咬合関係で配置すること;
(c)上記構成要素の画像の配列を可能にするために、(a)の動作において走査された上記上方歯科モデル構成要素および上記下方歯科モデル構成要素の、十分な数の認識用フィーチャを包含する3次元画像データを得るために、上記上方および下方歯科モデル構成要素を3次元走査すること;および
(d)上記3次元画像データをプロセッシングし、そこから3次元画像モデルを構築すること(ここで上記上方歯科モデル構成要素の表現を上記下方歯科モデル構成要素の表現と正確に配列させる);
を含む、上方歯科モデル構成要素および対向する下方歯科モデル構成要素の3次元走査画像データを組み込み、配列させる、3次元モデルを構築するための方法。
【請求項10】
追加の認識用フィーチャの少なくとも1つが、平坦なフィーチャであり、動作(a)において、このフィーチャは、スキャナの記録マークに関係させる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
記録マークが、スキャナの平坦な表面領域に対して垂直である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
歯列弓の少なくとも一方が無歯状態である、請求項9または10に記載の方法。
【請求項13】
いずれの歯列弓も無歯状態ではない、請求項9または10に記載の方法。
【請求項14】
歯列弓の少なくとも一方が無歯領域を有する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−501616(P2009−501616A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522880(P2008−522880)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/027774
【国際公開番号】WO2007/011909
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(508202348)アストラ・テック・インク (3)
【Fターム(参考)】