説明

3次元データ処理装置及び該装置を内蔵したタイヤ情報監視システム

【課題】曲面の座標値の計算のみを実装して必要な値を取り出すことができ、制限されたメモリ使用量で目的とする値を得ること。
【解決手段】ECU10がトランスポンダ11から返信された返信信号を分析して圧力周波数及び温度周波数を取得し、測定された圧力周波数と温度周波数とから実際のタイヤ内の圧力値を求める。このとき、事前に複数回測定した温度周波数,圧力周波数,圧力値を用いてB-spline曲面S(u,v)を生成し、実際の温度周波数及び圧力周波数の測定値からパラメータ(u,v)を求め、パラメータ(u,v)に対応する圧力値を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元データ処理装置及び該装置を内蔵した、タイヤ内の圧力測定値をタイヤ内温度で補正するタイヤ情報監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの空気圧不足等を監視する装置としてTPMS(タイヤ空気圧監視装置)がある。TPMSでは、タイヤ側送信機(以下、「トランスポンダ」という)をタイヤに内蔵し、トランスポンダに設けたセンサ回路で空気圧と温度を計測する一方、車両側装置(以下、「ECU(Electronic Control Unit)」という)からトランスポンダにRF信号を送信し、RF信号を受けたトランスポンダがタイヤ空気圧、温度等のタイヤ情報を含んだRF信号をECUへ返信し、ECUが受信したRF信号からタイヤ空気圧、温度等のタイヤ情報を取り出してタイヤ状態を監視している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2000−517073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術においては、タイヤ空気圧は周囲の温度によって影響を受けるため、空気圧と温度をそれぞれ情報を取り出して、それらから真の圧力値を算出している。しかし、その補正はごく簡略に行われるので、精度が良くないという問題がある。
本発明のタイヤ情報監視システムは、かかる点に鑑みてなされたものであり、精度の高い圧力値の算出を提供するものであり、また、本発明のタイヤ情報監視システムに最適なかつ汎用性の高い3次元データ処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のタイヤ情報監視システムは、車両本体に設けられた車両側装置と、タイヤに設けられたトランスポンダとを備え、前記車両側装置が前記トランスポンダからタイヤ内の圧力情報を含んだ圧力周波数の返信信号とタイヤ内の温度情報を含んだ温度周波数の返信信号とを受信し、前記各返信信号から得られた圧力周波数及び温度周波数からタイヤ内の圧力値を算出するタイヤ情報監視システムにおいて、
予め複数回測定して得られた圧力周波数、温度周波数及び圧力値を、圧力周波数を「x」、温度周波数を「y」、圧力値を「z」とする3次元座標点群とみなし、離散的な前記点群を近似する(a)式で表わされるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数1】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
前記車両側装置は、監視動作開始後に温度周波数及び圧力周波数が測定されると、圧力周波数の測定値をx、温度周波数の測定値をyとし、x、y値と前記B-spline曲面S(u,v)から、インバージョン法を用いて(x,y)を想定するパラメーター(u,v)を算出し、圧力値zを求めることを特徴とする。
【0006】
これにより、予め測定して得られた圧力周波数、温度周波数及び圧力値のデータを3次元座標点群として補間し、連続する曲面としての3次元データとすることができるので、任意の圧力周波数と温度周波数から精度良く圧力値を算出できる。
【0007】
本発明のタイヤ情報監視システムは、車両本体に設けられた車両側装置と、タイヤに設けられたトランスポンダとを備え、前記車両側装置が前記トランスポンダからタイヤ内の圧力情報を含んだ圧力周波数の返信信号とタイヤ内の温度情報を含んだ温度周波数の返信信号とを受信し、前記各返信信号から得られた圧力周波数及び温度周波数からタイヤ内の圧力値を算出するタイヤ情報監視システムにおいて、予め複数回測定して得られた温度周波数、圧力周波数及び圧力値を、圧力周波数を「x」、温度周波数を「y」、圧力値を「z」とする3次元座標点群とみなし、離散的な前記点群を近似する(a)式で表わされるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数2】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
前記車両側装置は、監視動作開始後に温度周波数及び圧力周波数が測定されると、圧力周波数の測定値をx、温度周波数の測定値をy、この2つの測定値(x、y)及び任意の固定値gと仮定したz値からなる点をR´として、曲面S(u,v)のパラメータであるu,vパラメータを各方向にn等分するグリッド線を引き、グリッド線の交点に対応するパラメータ(ui,vj)を求め、パラメーター(ui,vj)に対応する曲面S(u,v)上の点群Qijを発生し、点群Qijの中で任意の点R’と最も近い点Qmnを求め、点Qmnのz値を制御点Pのz値に代入してR’’とし、点Qmnの接平面に対して前記R’’を射影した点R’’’を求め、差分値w(=R’’’−Qmn)を求め、
射影点R’’’が、点Qmnと曲面S(u,v)上の交点のうちの近傍点とで分けられる複数領域のうちどの領域に位置するか判定し、射影点R’’’が位置する領域を規定する点Qmnと第1及び第2の近傍点との差分ベクトルにより、R’’’のu,v各方向の方向ベクトルU,Vを決定し、射影点R’’’のパラメーター(u’m,v’n)を、(b)式に基づいて求め、
Δu=α/|U|、Δv=β/|V|、u’m=um+Δu、v’n=vn+Δv (b)
ただし、(um,vn)はQmnのu,vパラメータ
αは区間[Qmn、第1の近傍点]の長さを1としたときのwのu方向成分の割合
を表し、
βは区間[Qmn、第2の近傍点]の長さを1としたときのwのv方向成分の割合
を表す
wが、閾値よりも小さくなるまで、(u’m,v’n)を新たなQmnのパラメータとすると共に、射影点R’’’を新たなR’’として上記処理を繰り返し、差分値wが閾値よりも小さくなったところで、(b)式におけるu’m=u、v’n=vとして、測定値(x、y)に対応したu,vパラメータを特定し、
特定したu,vパラメータに対応した曲面S(u,v)上のz値を、測定値(x、y)に対応した圧力値として算出する。
【0008】
このように本発明によれば、曲面の座標値の計算のみを実装して必要な値を取り出すことができ、制限されたメモリ使用量で目的とする値を得ることができる。
【0009】
また本発明は、上記タイヤ情報監視システムにおいて、トランスポンダは、曲面S(u,v)の制御点(x,y,z)である補間係数をメモリに保管する場合、曲面S(u,v)において相対する境界線上の制御点については一方の境界線上の制御点から他方の境界線上の制御点への差分値ベクトルと、予測誤差とを用いて、他方の境界線上の制御点である補間係数のデータを保管することを特徴とする。
【0010】
これにより、曲面S(u,v)において相対する境界線であって他方の境界線上の制御点について圧縮することができ、補間係数のメモリ使用量の削減を図ることができる。
【0011】
また本発明は、上記タイヤ情報監視システムにおいて、トランスポンダは、曲面S(u,v)の制御点(x,y,z)である補間係数をメモリに保管する場合、曲面S(u,v)において境界線で囲まれた内部制御点については、内部制御点の制御点列をPi,j、Pq,jから点P0,jへの差分ベクトルをVj、点列{P0,0、P1,0、P2,0、P3,0、P4,0…Pq,0}の各点間の差分値を{d1,d2,d3,d4…dq}、各点間の距離の比を{k1,k2,k3,k4…kq}とし、但し、
【数3】

前記差分ベクトルVjと、各点間の距離の比{k1,k2,k3,k4}と、予測誤差とから前記内部制御点データを生成することを特徴とする。
【0012】
これにより、曲面S(u,v)において境界線で囲まれた内部制御点データを圧縮することができ、補間係数のメモリ使用量の削減を図ることができる。
【0013】
また本発明は、上記タイヤ情報監視システムにおいて、B-spline基底関数の相似形又は対称形を利用してB-spline基底関数データを圧縮したことを特徴とする。
これにより、B-spline基底関数データを圧縮することができ、ECU上のMPUのメモリ使用量の削減を図ることができる。
【0014】
また、上記タイヤ情報監視システムにおいて、B-spline基底関数データは、B-spline基底関数の相似形又は対称形を利用して圧縮されて前記車体側装置に保存されることが望ましい。
また、本発明の3次元データ処理装置は、初期入力データを3次元座標点群とみなし、点群を補間した3次元B-spline補間関数の制御点である補間係数を保管するメモリと、任意のデータ(x,y,z)を入力する入力部と、メモリから読み出した3次元B-spline補間関数から曲面における任意のデータが対応するu,vパラメータを算出する演算部とを備え、
前記演算部は、下記の3次元B-spline補間関数からなるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数4】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
曲面S(u,v)のパラメータであるu,vパラメータを各方向にn等分するグリッド線を引き、グリッド線の交点に対応するパラメータ(ui,vj)を求め、パラメーター(ui,vj)に対応する曲面S(u,v)上の点群Qijを発生し、
任意のデータをRとし、
点Qmnの接平面に対して前記Rを射影した点射影点R’を求め、差分値w(=R’−Qmn)を求め、
射影点R’が、点Qmnと曲面S(u,v)上の前記交点のうちの近傍点とで分けられる複数領域のうちどの領域に位置するか判定し、射影点R’が位置する領域を規定する点Qmnと第1及び第2の近傍点との差分ベクトルにより、射影点R’のu,v各方向の方向ベクトルU,Vを決定し、
射影点R’のパラメーター(u’m,v’n)を、(b)式に基づいて求め、
Δu=α/|U|、Δv=β/|V|、u’m=um+Δu、v’n=vn+Δv (b)
ただし、(um,vn)はQmnのu,vパラメータ
αは区間[Qmn、第1の近傍点]の長さを1としたときのR’−Qmnで表わされる差分値wのu方向成分の割合
を表し、
βは区間[Qmn、第2の近傍点]の長さを1としたときのR’−Qmnで表わされる差分値wのv方向成分の割合を表す
wが閾値よりも小さくなるまで、(u’m,v’n)を新たなQmnのパラメーターとすると共に、射影点R’を新たな点Rとして上記処理を繰り返し、差分値wが閾値よりも小さくなったところで、(b)式におけるu’m=u、v’n=vとして、任意のデータ(x、y、z)に対応したu,vパラメータを特定することを特徴とする。
これにより、曲面上の座標値を得る機能だけを利用して3次元座標値に対応するB-spline曲面上のu,vパラメータを近似できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤ情報監視装置によれば、圧力周波数、温度周波数及び圧力値を曲面上の3次元データとして扱うことができるので、精度良く圧力値を算出でき、また、曲面の座標値の計算のみを実装して必要な値を取り出すことができ、制限されたメモリ使用量で目的とする値を得ることができるタイヤ情報監視システムを提供できる。更に本発明の3次元データ処理装置によれば、曲面上の座標値を得る機能だけを利用して3次元座標値に対応するB-spline曲面上のu,vパラメータを近似できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るTPMSにおけるトランスポンダの機能ブロック図
【図2】本実施の形態に係るTPMSにおけるECUの機能ブロック図
【図3】Bスプライン基底関数によって対応付けられたパラメータ空間SとB-spline曲面との関係を示す図
【図4】曲面の境界曲線を表す点列を示す図
【図5】B-spline曲面の境界曲線と領域内の点群を示す図
【図6】点群補間手法で求めた点の評価結果を図
【図7】y方向についてのz値の誤差値を示す図
【図8】本発明のインバージョン手法を適用した場合のフロー図
【図9】曲面に発生させた点群を示す図
【図10】Qmnの接平面の法線ベクトルを示す概念図
【図11】Qmnと近傍点で分けられる領域と座標値評価関数によるパラメータとを示す図
【図12】境界曲線を表す制御点の圧縮方法を説明するための概念図
【図13】内部制御点の圧縮方法を説明するための概念図
【図14】内部制御点の圧縮過程を説明するための概念図
【図15】点P4,jから点P0,jの差分ベクトルVjを示す図
【図16】点間の差分値と距離比とを示す図
【図17】圧縮前のu方向の基底関数を示す図
【図18】圧縮前のv方向の基底関数を示す図
【図19】圧縮後のu方向の基底関数を示す図
【図20】圧縮後のv方向の基底関数を示す図
【図21】U2とV2の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態として、車両本体に設けられたECU10と、4つのタイヤのそれぞれに設けられたトランスポンダ11とから構成されるTPMSについて説明する。
本実施の形態は、ECU10がトランスポンダ11の圧力センサ回路から返信された返信信号を分析してタイヤ内の圧力情報を含んだ周波数(圧力周波数)を取得すると共に、温度センサ回路から返信された返信信号を分析してタイヤ内の温度情報を含んだ周波数(温度周波数)を取得し、測定された圧力周波数と温度周波数とから実際のタイヤ内の圧力値を求める。
【0018】
ところで、実際のトランスポンダ11を用いて圧力周波数,温度周波数,圧力値を複数回計測し、計測した圧力周波数,温度周波数,圧力値から3次元ベクトルを構成し、その3次元ベクトルを連続関数で適切に補間することができれば、任意の圧力周波数と温度周波数から精度よく圧力値を獲得することができる。
【0019】
本実施の形態では、圧力周波数と温度周波数の2つの実測値から、センサ温度特性を反映して正確な圧力値を求めるために、B-spline補間関数を利用する。
一般に、2つのパラメータであるu,vパラメータに対して三次元空間上の座標点(x,y,z)が対応する時、u、vパラメータをそれぞれ独立に無限に細かく変化させると点の広がりができる。これを「パラメトリック曲面」と呼ぶ。1つのパラメータ(u)又は2つのパラメータ(u,v)から点(x,y,z)を対応づける関数として「B-spline補間関数」を利用すると、1つのパラメータ(u)に対応させればB-spline曲線が生成され、2つのパラメータ(u,v)に対応させればB-spline曲面が生成される。
【0020】
図3はB-spline補間関数によって対応付けられた2つの(u,v)からなるパラメータ空間SとB-spline曲面との関係を示す図である。パラメータ空間Sでは、一方のパラメータ(u)が(0,0)から(1,0)まで変化し、他方のパラメータ(v)が(0,0)から(0,1)まで変化する。B-spline曲面S(u,v)は、圧力周波数(x)、温度周波数(y)、圧力値(z)からなる三次元空間座標(x,y,z)で規定することができる。B-spline曲面S(u,v)上の任意の点Q(x,y,z)はパラメータ空間S上の1点に対応する。B-spline曲面S(u,v)は、B-spline補間関数を利用すると、上記(a)式のように表せる。
【0021】
(a)式より、パラメータ(u,v)が判れば、Bスプライン曲面S(u,v)上の座標が求められることになる。逆に、B-spline曲面S(u,v)上の座標(x,y,z)からパラメータ(u,v)を求めることもできる。座標(x,y,z)からパラメータ(u,v)を求める過程を「インバージョン」という。本発明は、後述するようにインバージョン手法を改良してメモリ使用量を削減することに成功している。
【0022】
以下に、事前に複数回測定した温度周波数,圧力周波数,圧力値を用いてB-spline曲面S(u,v)を生成する工程と、温度周波数及び圧力周波数の測定値からパラメータ(u,v)を求める工程(インバージョン工程)とについて詳細に説明する。
【0023】
最初にB-spline曲面S(u,v)を生成する工程について説明する。
実際のトランスポンダにて事前に複数回測定して得た温度周波数,圧力周波数,圧力値の3つのデータを3次元座標点群とみなし、点群を補間する3次B-spline補間関数を生成する。以下の説明では、B-spline補間関数は、3次元空間のB-spline曲面とみなした処理とする。
【0024】
空間におかれている3次元座標点群を滑らかに近似する曲面の制御点を発生し、その(x、y、z)座標をB-spline補間関数の補間係数とする。
点群を近似するB-spline曲面を生成する一般的な手順は次の通りである。最初に境界を表す点群から境界のB-spline曲線を求め、次にB-spline曲面を生成する。以下の手順でB-spline曲線を近似する。
【0025】
(1−1) 実測した温度周波数,圧力周波数,圧力値の3次元座標点群が形成する閉領域(曲面)の境界に位置する点列を抽出する。図4に境界曲線を表す点列を示す。たとえば、Di,0(i=0,・・・,m)が1本の境界曲線を生成するときに利用する点列である。
【0026】
(1−2) 点列を近似するB-spline曲線を生成するためには、その点が曲線のパラメータと対応している必要がある。m+1個の点列Di,0(k=0,・・・,m)があるとき、各点における曲線のパラメータuを以下の式(1)のように決定する。
【数5】

【0027】
(1−3) 最小二乗法により曲線の制御点Pi,0を求める。次数3、制御点数n+1個のB-spline曲線は、次式のように表わされる。
【数6】

ここで、Ni,3(u)はB-spline基底関数である。
【0028】
(1−4) 手順(1−3)で得られたB-spline曲線と、元になった点列の距離を計算し、距離がしきい値以上となったパラメータに対応する区間に,その区間の平均値を新たなノットとして挿入する。例えば、ノットベクトルの初期値は[0,0,0,0,1,1,1,1]とし、区間(0,1)の間に、その平均値1/2を挿入する。その後、手順(1−3)に戻り、曲線を生成しなおす。これにより、元になった点列に予想される曲線から大きく逸脱する実測値が含まれていても、最終的には滑らかな曲線となる。本例では、手順(1−3)の曲線補間を4回繰り返している。
残りの3つの点列により、同様にして3本の境界曲線を生成する。
【0029】
次に、以上のようにして生成した4本の境界曲線と、これらの境界曲線で囲まれる領域内の点群とで、以下の手順でB-spline曲面を近似する。
【0030】
(2−1) 境界曲線を生成した点列以外の内部の各点が、曲面上でとるu、vのパラメータ値を推定する。具体的には、相対する2本のB-spline曲線からルールド曲面を生成し、その曲面に内部のサンプリング点を射影してu,vパラメータを得る。
【0031】
(2−2) 最小二乗法により曲面の制御点を求める。近似するB-spline曲面をS(u,v),曲面の制御点列をPij(iは0からn,jは0からm)とすると、曲面S(u,v)は、式(3)のように表すことができる。
【数7】

ここでNi,3(u),Nj,3(v)はB-spline基底関数である。
【0032】
以上の手順により、あらかじめ計測しておいた温度周波数、圧力周波数、圧力値の3つのデータから、以下のB-spline曲面S(u,v)を生成した。
【0033】
具体的には、測定した温度周波数,圧力周波数,圧力値の3つのデータを初期入力点として、u方向に5点,v方向に9点の合計45点の点群データから補間されたB-spline曲面を作った。B-spline曲線の生成に使用するノットは、最も良好に曲線を近似できることと、生成される補間係数の総数を考慮して、u方向(0,0,0,0,0.5,1,1,1,1)、v方向(0,0,0,0,0.25,0.5,0.75,1,1,1,1)とした。このノットで生成されるB-spline曲面の制御点はu方向に5点、v方向に7点の計35点である。求めたB-spline曲面の制御点を図5に示す。
【0034】
なお、生成した補間されたB-spline曲面を評価するために別途計測しておいた561点の点群を用いて、得られた形状を評価した。この561点の圧力値であるz値と、後述するインバージョン手法で求めた点のz値との誤差で評価した。評価結果を図6に示す。図6では誤差が2以下の点を白抜きドットで、誤差が2以上の点を黒ドットで示す。また、誤差値を図7に示す。評価点群はx方向に17点、y方向に33点の計561点配置されている(図6)。誤差値については、y方向3列毎の合計の平均値で示す。図6で左端の点群を1列目、右端の点群を33列目とする。
【0035】
評価の結果、ほとんど全ての点の誤差値が2以下で補間されており、誤差の平均値(図7)では1以下となった。点群のz値の最小値は100、最大値は500であるので、z値における点群のサイズは400である。誤差1というのは相対的に0.25%となり、非常に小さい値であると言える。
【0036】
個々のトランスポンダ11にはばらつきがあるため、温度周波数と圧力周波数はトランスポンダ11ごとに特性が異なる。つまり、トランスポンダ11毎に補間されたB-spline曲面は異なり、その相違は補間係数の相違として表される。そのため、ECU10において圧力値を計算するための補間係数はトランスポンダ11が保存しており、ECU10は各トランスポンダ11から固有の補間係数を取得して、決められた補間関数で圧力値を計算することが望ましい。本実施の形態では、タイヤに取り付けられたトランスポンダ11が、1秒に10回以上の頻度で温度周波数と圧力周波数を計測し、その結果を無線通信を利用してECU10へ送信する。ECU10では温度周波数と圧力周波数を検出し、トランスポンダ11から得られたB-spline補間係数を補間関数に適用して圧力値を計算する。
【0037】
個々のトランスポンダ11のメモリに保存されるB-spline補間係数は、上述した通り、予め計測しておいた温度周波数、圧力周波数、圧力値の3次元の離散データを利用して、B-spline曲面として補間したときの補間関数の係数である。
【0038】
次に、温度周波数及び圧力周波数の測定値からパラメータ(u,v)を求める工程(インバージョン工程)について説明する。
【0039】
本実施の形態では、圧力周波数をx、温度周波数をy、圧力値をzとして、実測されるx,y値から下記のインバージョン法を用いて、(x,y)を値とするパラメータ(u,v)を算出し、その(u,v)を用いてz値を計算する。
【0040】
一般に、3次元座標値に対応する曲面のu,vパラメータを得るためのインバージョン法は、偏微分ベクトル計算のコードを実装する必要があるので、メモリ量の増加をまねく。ECUでは2Kbyte程度のメモリ使用量を想定しているので、従来のインバージョン法をそのまま実装することはメモリ容量の制限上難しい。
【0041】
そこで、少ないメモリ使用量で目的とする値が得られるように、曲面の座標値の計算のみを実装し、必要な値を取り出すシステムを構築した。以下に、曲面上の座標値を得る機能だけを利用して、u,vパラメータを近似するインバージョン手法について述べる。
【0042】
図8は本発明のインバージョン手法を適用した場合のフロー図である。
(3−1) ループ回数カウンタを繰り返し回数c=1とし、実測値である初期入力データから生成したB-spline曲面S(u,v)について、u,v各方向にn等分したグリッド線を引き、その交点に対応するパラメータ(ui,vj)を求める。図9に示すように、パラメータ(ui,vj)に対応する曲面S(u,v)上の点群Qijを発生する。発生した点をQij(i=0,…,n,j=0,…,n)としたとき、各点におるu,vパラメータは、(ui,vj)となる。ui=i/n,vj=j/nであることから、パラメータの間隔は1/nである。又、点Qijはそれぞれ対応する点(x,y,z)を備えている。
【0043】
(3−2) 今、任意のx、y値とそれに対応するz値(求める圧力値)の組み合わせを持つ点をR(x,y,z)とする。このとき、z=0と仮定した仮定点R´(x,y,0)と最も近い面上の点Qmnを求める。この求めた面上の点Qmnのz値を代入した第2仮定点R”(x,y,z)を設定する。
【0044】
(3−3) 図10に示すように、Qmnの近傍の4点Qm-1,n、Qm+1,n、Qm,n-1、Qm,n+1、を取り出し、Qmnを中心に4つの三角形面を構成する。各三角形面の法線ベクトルの平均ベクトルを求め、点Qmnの接平面を表す法線ベクトルnmnとする。
【0045】
(3−4) Qmnの接平面に、点R”を射影し、射影した点を射影点R’’’とする。R’’’=R”+(r・n)nである。ただし、r=R”−Qmnであり、記号「・」は内積を表すこととする。
【0046】
(3−5) w=R'''−Qmnを算出する。同時に、射影した点R’’’が、Qmnと近傍の4点で分けられる領域AからDのどこに位置するのかを判定する。Qmnと近傍の4点で分けられる領域を図11に示す。AからDのどの領域にR’’’が位置するかに依存して、Qmnに隣接する点とQmnとの差分ベクトルにより,u,v各方向の方向ベクトルU,Vを決定する。例えば、Aの領域では、式(4),式(5)のようにU,Vベクトルが決定される。
U=Qm+1,n−Qmn (4)
V=Qm,n+1−Qmn (5)
【0047】
(3−6) 式(6)から、パラメータの差分値を求める。
w=αU+βV (6)
【0048】
図11は式(6)を表した図である。αは区間QmnとQm+1,nの長さを1としたときのwのu方向成分の割合を表し,βは区間QmnとQm,n+1の長さを1としたときのwのv方向成分の割合を表している。よって、R’’’を表すパラメータ値ui’,vi’は、式(7)から式(10)より求められる。
【数8】

ここで,um, vnは,面上の点Qmnに対応したu, vパラメータとする。
【0049】
(3−7) 先に求めたwが閾値以下であれば、R’’’を表すパラメータ値u’m, v’n を求めるu,vパラメータ値と決定し、(3)式からS(u,v)上の点を特定し、該点の(x、y、z)から、z値を求める。
(3−8) wが閾値以上である場合には、次にR’’’のu,vパラメータ値u’m, v’n を新たなQmnのパラメータ値とし、新たなQmnの近傍4点のパラメータ値を次式のように設定する。
【数9】

次に、R’’’を手順(3−2)におけるR’’に置き換えると共に、ループカウンタcに1を加えて、手順(3−3)から手順(3−7)を繰り返す。ここではループカウンタcは繰り返し回数となり、繰り返し回数が増加するごとに(11)〜(14)式に組み込まれたcが大きくなり、4近傍の点との区間が狭められる。
【0050】
手順(3−7)においてベクトルwの大きさが閾値より小さくなったところで、手順(3−7)の手順を完成して処理を終了する。本例では、反復回数を4回、つまりループ回数カウンタを4とした。
【0051】
以上のようにして、B-spline曲面の座標値の計算だけから、(x,y)を値とするパラメータ(u,v)を算出できたことになる。したがって、従来のインバージョン法をそのまま実装する場合に比べてメモリ使用量を削減できる。
【0052】
ところで、上記インバージョン法においては、B−spline曲面の発生及び最終的なz値の計算には、(3)式が使用されるが、計算の際には、補間係数とB−spline基幹関数を含めて逐次計算することは大変な負担がECUにかかることから、補間係数とB-spline基幹関数についてデータテーブルとして保管している。
補間係数は、トランスポンダ11の圧力センサ回路、温度センサ回路の特性がトランスポンダ11毎に異なることによって、トランスポンダ11毎に異なっており、そのためにそれぞれのトランスポンダ11内のメモリに格納される、トランスポンダ11に搭載されるメモリ容量のうちで、B-spline関数で表現される補間係数に割り当てられる容量は制限されている。たとえば、約500bitが補間係数に割り当てられる。したがって、補間係数を圧縮した状態でトランスポンダ11のメモリに格納することが望ましい。
【0053】
上記した通り、トランスポンダ11側に格納される補間係数は、(x,y,z)の3軸方向の数値で表現される。ECU10において、u方向のノットベクトルを(0,0,0,0,0.5,1,1,1,1)、v方向のノットベクトルを(0,0,0,0,0.25,0.5,0.75,1,1,1,1)と設定して、B-spline補間関数による曲面補間を行うものとする。この場合、制御点は35点だけ生成されるので、補間係数は105個の実数値となる。500bit以下に補間係数を抑えるためには、補間係数1個当りおよそ14bit以下であることが望ましい。
【0054】
また、トランスポンダ11が保存する補間係数情報は、ECU10へ送信されて利用されるが、ECU10の処理速度はそれほど高速でないため、データ圧縮・伸長アルゴリズムは,単純であることが要求される。
【0055】
以上の要件を満足する、補間係数のデータを圧縮するアルゴリズムを以下に示す。以下では、実際の圧力値の算出に用いたu方向に5個、v方向に7個の合計35個の制御点を持つB-spline曲面を例にして説明する。
【0056】
補間係数のデータの圧縮は、複数の制御点をより少ない数の制御点で表現することによって可能となる。このことを仮に制御点の圧縮と称する。圧縮は「境界線上の制御点(図12において点線で囲まれた両サイドの部分)」と、「内部制御点(図13において点線で囲まれた部分)」とについて分けておこなう。本手法では、境界曲線上の制御点は内部制御点の圧縮アルゴリズムより簡単な操作で圧縮できるため、別の手順で圧縮を行っている。
【0057】
まず、境界曲線を表す制御点の圧縮アルゴリズムについて説明する。
図12に示すような制御点が与えられているとき、u=0のときの制御点P0,j(j=0,1,・・・,6)が与えられているものとする。この7個の点P0,jと1個のベクトルVを用いて、図12の点線で囲まれた14個の制御点を表す。8個のデータから14個の制御点を表すことができれば、補間係数のデータ量はおよそ57%まで削減されることになる。
【0058】
境界線上の制御点を、以下の手順で圧縮する。
(4−1) 制御点列をPi,jとして、点P4,jから点P0,jの差分値ベクトルVBを求める。jを任意として1つのVBを使用する。差分値ベクトルVBは、式(15)のようにあらわされる。図14に差分値ベクトルVBの概念図を示す(j=1である)。
VB=P4,j−P0,j (15)
(4−2) 左端の制御点列P0,jに差分値ベクトルVBを足すことにより、右端の制御点列P4,jを表す。
P4,j=P0,j+VB+Dj (16)
ここで、j= 0,1,・・・, 6、Djは予測誤差である。
【0059】
圧縮データは、式(16)のように左側の制御点P0,jの補間係数,差分ベクトルVB,予測誤差Djで構成されるので、手順(4−1)で差分ベクトルVBを求めるときのjの選び方は,予測誤差Djが全体的に小さくなるものを選ぶ。
【0060】
次に、内部制御点の圧縮アルゴリズムについて説明する。
5つのベクトルVi(i=0,・・・,4)と制御点間の3つの比から、図13において点線で囲まれた21個の制御点を表す。5つのベクトルと3つの比で21個の制御点を表すことができれば、補間係数のデータ量はおよそ60%削減されることになる。
【0061】
内部の制御点列を以下の手順で圧縮する。
(5−1) 制御点P4,jから制御点P0,jの差分ベクトルVjを各行ごとに求める。制御点P4,jから制御点P0,jの差分ベクトルVjを、図15に示す。
Vj=P4,j−P0,j (17)
ここで、j = 0,1,・・・,6である。
【0062】
(5−2) 制御点列{P0,0、P1,0、P2,0、P3,0、P4,0}の各制御点間の差分値{d1,d2,d3,d4}を求める。
di=|Pi,0−Pi−1,0| (18)
ここで,i=1,2,3,4である。
【0063】
(5−3) 手順(5−2)で求めた各制御点間の差分値より、各制御点間の距離の比{k1,k2,k3,k4}を求める。
【数10】

ここで,i=1,2,3,4である。ただし、i=4のとき,k1=1となる。差分値diと比kiを図16に示す。
【0064】
(5−4) 差分ベクトルVjと各制御点間の比{k1,k2,k3}から、内部の制御点群Pij(i=1,2,3,j=0,1,・・・,4)を得る。以上の手順で、7つの差分ベクトルと各制御点間の比3つのデータから、内部制御点21点の値を得ることができる。
Pi,0=P0,0+kiV0+A0
Pi,1=P0,1+kiV1+A1
Pi,2=P0,2+kiV2+A2
...
Pi,6′=P0,6+kiV6+A6 (20)
ここで,i=1,2,3で,Aj(j=0,1・・・,6)は予測誤差である。予測誤差はほとんどの補間係数で3以下の誤差で表され、予測誤差を表すbit数は少なくてよい。
実際の圧力算定において補間係数の圧縮は、以下のように行われた。
【0065】
本実施の形態では、35点の制御点圧縮を行った。制御点の補間係数データは、x値が-2072〜10875、y値が-4351〜7610、z値が100〜500のエリアに図5のように分布している。
【0066】
境界線上の圧縮で使用する差分ベクトルVBは予測誤差Djが全体的に小さくなったj=4での値を使用した。圧縮結果は、ほとんどの点の予測誤差Djが±5以内となり、z値の予測誤差値は0に近い値となった。圧縮に必要なすべてのデータを合計した容量は、およそ740bitとなった。圧縮前のデータ量を、1データ16bitとして計算すると、データ容量は1680bitとなる。このデータ容量と比較すると、本実施の形態ではおよそ66%圧縮することができたと言える。
【0067】
本実施の形態では、B-spline曲線から圧力値zを求めるために、B-spline曲面S(u,v)(式(3))をECU10上のマイコンで計算する必要がある。しかし、基底関数N(u)の結果を逐一計算していたのではシステムのリアルタイム性が損なわれる。そこで、本実施の形態では、あらかじめ基底関数N(u)を計算機上で計算しておき、その結果を格納したテーブルをECU10のマイコン上のROMに格納する。B-Spline基底関数は連続関数であるが、マイコンのROM上に格納するためにはこれを離散化する必要がある。
【0068】
本実施の形態では、B-Spline基底関数を最大値512で正規化し、Δ=1として離散化した。ノットベクトルをu方向(0,0,0,0,0.5,1,1,1,1)、v方向(0,0,0,0,0.25,0.5,0.75,1,1,1,1)として離散化した結果をプロットすると、図17、図18のような曲線となる。同図から分かるように、u方向では5本(U1〜U5)、v方向では7本(V1〜V7)の基底関数データが必要である。これら12本の曲線データを格納するには、一点につき16bit(unsigned short int型)とすると16×513×12=98,496bit(約10KB)のROM容量が必要となり、マイコンROM(32KByte)の30%以上を消費してしまう。このため、テーブルサイズを圧縮する必要がある。
【0069】
本実施の形態では、基底関数の曲線U1とU5、U2とU4が相似形であることに着目し、曲線データの圧縮を図っている。具体的には、u方向の5本(U1〜U5)の基底関数については、図19に示すように、U1,U2とU3(半分のみ)の基底関数データのみから5本(U1〜U5)の基底関数データを生成するようにする。v方向の7本(V1〜V7)の基底関数についても、図20に示すようにV3,V4(半分のみ)の基底関数データのみから7本(V1〜V7)の基底関数データを生成する。
【0070】
たとえば、曲線U1とU5に着目すると、2つの曲線を連結すると左右対称になっている。そこで、曲線U1が必要なときは、配列の先頭から、また曲線U5が必要なときは曲線U1の配列の末尾から配列データを参照するようにインデックスを操作すれば、同一のデータで曲線U1とU5の両方を表すことができ、必要なROMサイズを1/2に圧縮することができる。
【0071】
また、曲線U3に着目すると、頂点を軸に左右対称となっていることが分かる。従って、軸から片側半分だけのデータを持っていれば曲線全体を表すことができ、必要なROMサイズは1/2となる。
【0072】
また、曲線V1とV7、V2とV6、V3とV5、V4についても同様のことが言える。さらに、曲線U2とV2の配列データを比較すると、V2の配列はU2の配列のインデックスが1個おきに抜き出してきたものと等しい、つまり、Δu=kΔv(k=1,2,3,・・・,n)であればV2の配列はU2の配列のインデックスが0,k,2k,・・・mkのものだけを抜き出したに等しいため曲線U2の配列データだけで曲線V2も表すことができる(図21)また、同様のことが曲線U4とV6にも言える。
【0073】
以上から、最終的に必要なROM容量は32,832bit(4KB)となり、元のデータサイズから57%まで圧縮することが出来る。ただし、配列インデックス操作などによって増加するプログラムROMサイズについてはここでは考慮していない。
【0074】
以下に、本実施の形態に係るTPMSの回路構成について説明する。
図1は本実施の形態に係るTPMSにおけるトランスポンダの機能ブロック図である。図1に示すように、トランスポンダ11は、第1のアンテナ31、アンテナ整合回路32及びミキサー回路33からなる送受信部、温度センサ回路34及び圧力センサ回路35からなるセンサ回路、センサ回路の補正データを記憶した補正データ送信回路36を備えている。
【0075】
アンテナ整合回路32は第1のアンテナ31と後段回路とのインピーダンスを整合させて高周波信号の信号損失を抑制するように作用する。ミキサー回路33は、受信した搬送波信号から所定周波数の励振信号を取り出して温度センサ回路34及び圧力センサ回路35へ供給する一方、温度センサ回路34及び圧力センサ回路35から出力される共振信号を搬送波信号と混合して第1のアンテナ31へ送出する部分である。
【0076】
補正データ送信回路36は、メモリ回路41にタイヤ及び又はセンサ回路に関する情報としての固有情報42を格納している。固有情報42には、上述した補間係数を含む補正データ42aと、当該トランスポンダ11を内蔵したタイヤの識別データ42bとが含まれている。メモリ回路41に対する固有情報の書き込み及び読み出しはコントロール回路43が行う。メモリ回路41及びコントロール回路43の電源は整流回路44が供給する。整流回路44はセンサ回路側の第1のアンテナ31とは別に設けた第2のアンテナ46で受信した搬送波信号の高周波受信信号を整流して蓄電する。第2のアンテナ46と整流回路44との間には第2のアンテナ46と後段回路とのインピーダンスを整合させアンテナ整合回路47が設けられている。変復調回路45は、第1のアンテナ31で受信したメモリ回路41へ書き込む固有情報42を復調する一方、メモリ回路41から読み出して第1のアンテナ31から送信するタイヤ情報42を変調する。補正データ送信回路36には、非接触ICカードまで含む広義のRFID(Radio Frequency IDentification)タグを用いることができるが、固有情報42を記憶できて必要に応じて無線送信できる機能を搭載していればRFID以外のものであっても良い。
また、トランスポンダ11の回路は補正データを保管して送信可能な送信回路と温度センサー回路、圧力センサー回路を備えていれば上記の構成に限定されず、例えば適宜な構成を加えればアンテナの数は1個でも良い。
【0077】
図2は本実施の形態に係るTPMSにおけるECUの機能ブロック図である。ECU10は、トランスポンダ11との間の無線通信を行う無線回路部71と、補正データ送信回路36の蓄電動作及びタイヤ情報取得動作を制御するコントロール部72とから構成されている。無線回路部71は、送信系回路73と受信系回路74とからなる。
【0078】
送信系回路73は、コントロール部72からの指示で搬送波信号(例えば、f0=2.45GHz)を発生させる発振器75、搬送波信号を変調する変調信号の周波数を可変できるDAコンバータ76、搬送波信号と変調信号を混合するミキサー回路77、ミキサー回路77から出力される搬送波信号を電力増幅する増幅回路78、及び受信系回路74と兼用するミキサー回路79、アンテナ80で構成される。
【0079】
受信系回路74は、タイヤ情報取得動作時に受信される共振信号を電力増幅する増幅回路81、補正データ受信動作時に受信される補正データ信号を電力増幅する増幅回路82、コントロール回路72から切替え信号に基づいて増幅回路81又は増幅回路82を切り替える切替スイッチ83、切替スイッチ83を介して取り込まれた共振信号又は補正データ信号をAD変換するADコンバータ84を備える。
【0080】
コントロール部72は、FPGA91,MPU92,EEPROM93,I/F94等で構成されている。MPU92のROMに上述した圧縮された基底関数データ(テーブル)が格納されている。本例ではトランスポンダ11から受信し、FPGA91で周波数が求められた圧力周波数xと温度周波数yから圧力値zを算出する処理をMPU92にて行っている。MPU92は送信トリガを発生すると共に搬送波信号の変調周波数を切り替え、さらに切替スイッチ83に対して切替え信号を与える。I/F94には外部装置が接続される。
【0081】
以上のように構成された実施の形態において、ECU10からはトランスポンダ11のコントロール回路43にコマンドを送付する。通常は、IDを問い合わせるコマンドを送信し、コントロール回路43はメモリ回路41の識別データ42bを読み出して返信する。ECU10がトランスポンダ11から識別データを受領し、その識別データが新規の場合には、ECU10は補間係数を問い合わせるコマンドを送信し、トランスポンダ11は補間係数を含む補正データ42aを読み出し返信する。ECU10は受信した補間係数をEEEROM93あるいはMPU上のROMに保管する。このとき、圧縮された補間係数を圧縮前の状態に戻して保管しているので、計算に供するときに応答性が良くなる。ECU10は、監視動作開始後にトランスポンダ11から圧力周波数と温度周波数を受信すると、ROMまたはEEPROM93から基底関数データと補間係数とを随時読み出し、上述した工程にて圧力値を計算する。
【0082】
また、以上に説明した実施例におけるインバージョン手法は、タイヤ情報監視システムのみならず、B-spline曲面上のu,vパラメータを近似することが要求される、例えば3次元図形処理システムなどの一般的なシステムにおいても適用が可能である。
【0083】
このインバージョン手法が適用される一般的なシステム、例えば3次元図形処理システムにおいては、3次元座標点群となる3次元のデータは圧力周波数、温度周波数、圧力値に相当する3次元図形データであり、初期の3次元図形データを入力する入力手段、例えばキーボードなどを備え、点群を保管した3次元B-spline補間係数を保管するメモリを備え、通常3次元図形処理システムに備えられている演算部がu,vパラメータを算出する演算部として機能する。
【0084】
この場合、3次元図形処理システムに備えられた演算部の演算能力やメモリの容量は、タイヤ情報監視システムのそれよりは格段に能力が高くまた容量が大きいので、上記のタイヤ情報監視システムの実施例で説明したような、補正係数や基幹関数の圧縮はしなくとも良い場合があるが、システムの小型化を図る場合には採用すべきである。
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【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、測定される圧力周波数と温度周波数とから圧力値を計算するタイヤ情報監視システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10…ECU、11…トランスポンダ、31…第1のアンテナ、32…アンテナ整合回路、33…ミキサー回路、34…温度センサ回路、35…圧力センサ回路、36…補正データ送信回路、37…アンテナスイッチ 41…メモリ回路、42…タイヤ情報、42a…補間係数、42b…タイヤ識別データ、 43…コントロール回路、44…整流回路、46…第2のアンテナ、47…アンテナ整合回路、71…無線回路部、72…コントロール部(ECU)、73…送信系回路、74…受信系回路、75…発振器、76…DAコンバータ(送信系回路)、77、79…ミキサー回路、78…増幅回路、80…アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に設けられた車両側装置と、タイヤに設けられたトランスポンダとを備え、前記車両側装置が前記トランスポンダからタイヤ内の圧力情報を含んだ圧力周波数の返信信号とタイヤ内の温度情報を含んだ温度周波数の返信信号とを受信し、前記各返信信号から得られた圧力周波数及び温度周波数からタイヤ内の圧力値を算出するタイヤ情報監視システムにおいて、
予め複数回測定して得られた圧力周波数、温度周波数及び圧力値を、圧力周波数を「x」、温度周波数を「y」、圧力値を「z」とする3次元座標点群とみなし、離散的な前記点群を近似する(a)式で表わされるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数1】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
前記車両側装置は、監視動作開始後に温度周波数及び圧力周波数が測定されると、圧力周波数の測定値をx、温度周波数の測定値をyとし、x、y値と前記B-spline曲面S(u,v)から、インバージョン法を用いて(x,y)を想定するパラメーター(u,v)を算出し、圧力値zを求めることを特徴とするタイヤ情報監視システム。
【請求項2】
車両本体に設けられた車両側装置と、タイヤに設けられたトランスポンダとを備え、前記車両側装置が前記トランスポンダからタイヤ内の圧力情報を含んだ圧力周波数の返信信号とタイヤ内の温度情報を含んだ温度周波数の返信信号とを受信し、前記各返信信号から得られた圧力周波数及び温度周波数からタイヤ内の圧力値を算出するタイヤ情報監視システムにおいて、
予め複数回測定して得られた圧力周波数、温度周波数及び圧力値を、圧力周波数を「x」、温度周波数を「y」、圧力値を「z」とする3次元座標点群とみなし、離散的な前記点群を近似する(a)式で表わされるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数2】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
前記車両側装置は、監視動作開始後に温度周波数及び圧力周波数が測定されると、圧力周波数の測定値をx、温度周波数の測定値をy、この2つの測定値x、y及び任意の固定値gと仮定したz値からなる点を仮定点R’とし、
曲面S(u,v)のパラメータであるu,vパラメータを各方向にn等分するグリッド線を引き、グリッド線の交点に対応するパラメータ(ui,vj)を求め、パラメーター(ui,vj)に対応する曲面S(u,v)上の点群Qijを発生し、
点群Qijの中で前記仮定点R’と最も近い点Qmnを求め、点Qmnのz値を制御点Pのz値に代入して第2仮定点R’’とし、点Qmnの接平面に対して前記R’’を射影した点射影点R’’’を求め、差分値w(=R’’’−Qmn)を求め、
射影点R’’’が、点Qmnと曲面S(u,v)上の前記交点のうちの近傍点とで分けられる複数領域のうちどの領域に位置するか判定し、射影点R’’’が位置する領域を規定する点Qmnと第1及び第2の近傍点との差分ベクトルにより、射影点R’’’のu,v各方向の方向ベクトルU,Vを決定し、
射影点R’’’のパラメーター(u’m,v’n)を、(b)式に基づいて求め、
Δu=α/|U|、Δv=β/|V|、u’m=um+Δu、v’n=vn+Δv (b)
ただし、(um,vn)はQmnのu,vパラメータ
αは区間[Qmn、第1の近傍点]の長さを1としたときのR’’’−Qmnで表わされる差分値wのu方向成分の割合
を表し、
βは区間[Qmn、第2の近傍点]の長さを1としたときのR’’’−Qmnで表わされる差分値wのv方向成分の割合
を表す
wが閾値よりも小さくなるまで、(u’m,v’n)を新たなQmnのパラメーターとすると共に、射影点R’’’を新たな第2仮定点R’’として上記処理を繰り返し、差分値wが閾値よりも小さくなったところで、(b)式におけるu’m=u、v’n=vとして、測定値(x、y)に対応したu,vパラメータを特定し、
特定したu,vパラメータに対応した曲面S(u,v)上のz値を、測定値(x、y)に対応した圧力値として算出する、
ことを特徴とするタイヤ情報監視システム。
【請求項3】
前記トランスポンダは、曲面S(u,v)の制御点の補間係数をメモリに保管する場合、曲面S(u,v)において相対する境界線上の制御点については、一方の境界線上の制御点から他方の境界線上の制御点への差分値ベクトルと、予測誤差とを用いて、他方の境界線上の制御点の補間係数データを保管することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタイヤ情報監視システム。
【請求項4】
前記トランスポンダは、曲面S(u,v)の制御点(x,y,z)である補間係数をメモリに保管する場合、曲面S(u,v)において境界線で囲まれた内部制御点については、内部制御点の制御点列をPi,j、Pq,jから点P0,jへの差分ベクトルをVj、点列{P0,0、P1,0、P2,0、P3,0、P4,0…Pq,0}の各点間の差分値を{d1,d2,d3,d4…dq}、各点間の距離の比を{k1,k2,k3,k4…kq}とし、但し、
【数3】

前記差分ベクトルVjと、各点間の距離の比{k1,k2,k3,k4}と、予測誤差とから前記内部制御点データを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のタイヤ情報監視システム。
【請求項5】
B-spline基底関数の相似形又は対称形を利用してB-spline基底関数データを圧縮したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタイヤ情報監視システム。
【請求項6】
B-spline基底関数データは、B-spline基底関数の相似形又は対称形を利用して圧縮されて前記車体側装置に保存されていることを特徴とする請求項5記載のタイヤ情報監視システム。
【請求項7】
初期入力データを3次元座標点群とみなし、点群を補間した3次元B-spline補間関数の制御点である係数を保管するメモリと、任意のデータ(x,y,z)を入力する入力部と、メモリから読み出した3次元B-spline補間関数から曲面における任意のデータが対応するu,vパラメータを算出する演算部とを備え、
前記演算部は、下記の3次元B-spline補間関数からなるB-spline曲面S(u,v)を生成し、
【数4】

ここで、Ni,3(u)、Nj,3(v)はB-spline基底関数、Pijは曲面S(u,v)の制御点列
曲面S(u,v)のパラメータであるu,vパラメータを各方向にn等分するグリッド線を引き、グリッド線の交点に対応するパラメータ(ui,vj)を求め、パラメーター(ui,vj)に対応する曲面S(u,v)上の点群Qijを発生し、
任意のデータをRとし、
点Qmnの接平面に対して前記Rを射影した点射影点R’を求め、差分値w(=R’−Qmn)を求め、
射影点R’が、点Qmnと曲面S(u,v)上の前記交点のうちの近傍点とで分けられる複数領域のうちどの領域に位置するか判定し、射影点R’が位置する領域を規定する点Qmnと第1及び第2の近傍点との差分ベクトルにより、射影点R’のu,v各方向の方向ベクトルU,Vを決定し、
射影点R’のパラメーター(u’m,v’n)を、(b)式に基づいて求め、
Δu=α/|U|、Δv=β/|V|、u’m=um+Δu、v’n=vn+Δv (b)
ただし、(um,vn)はQmnのu,vパラメータ
αは区間[Qmn、第1の近傍点]の長さを1としたときのR’−Qmnで表わされる差分値wのu方向成分の割合
を表し、
βは区間[Qmn、第2の近傍点]の長さを1としたときのR’−Qmnで表わされる差分値wのv方向成分の割合
を表す
wが閾値よりも小さくなるまで、(u’m,v’n)を新たなQmnのパラメーターとすると共に、射影点R’を新たな点Rとして上記処理を繰り返し、差分値wが閾値よりも小さくなったところで、(b)式におけるu’m=u、v’n=vとして、任意のデータ(x、y、z)に対応したu,vパラメータを特定することを特徴とする3次元データ処理装置。








【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−156663(P2010−156663A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−438(P2009−438)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】