3次元形状測定システムおよび3次元形状測定方法
【課題】簡単かつ小型な構成で測定対象物の3次元形状を測定することが可能な3次元形状測定システムを提供する。
【解決手段】3次元形状測定システムは、引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θx,θzをそれぞれ検出可能なワイヤ装置20A,20B,20Cを備える。各ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCは、3次元形状測定装置10の背面に接続されている。3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10による測定時におけるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび回転角θx,θzを用いて座標変換関数FPSを計算する。そして、各測定位置ごとに生成される3次元形状データを予め記憶している座標変換関数FCPと計算した座標変換関数FPSとを用いて座標変換する。
【解決手段】3次元形状測定システムは、引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θx,θzをそれぞれ検出可能なワイヤ装置20A,20B,20Cを備える。各ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCは、3次元形状測定装置10の背面に接続されている。3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10による測定時におけるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび回転角θx,θzを用いて座標変換関数FPSを計算する。そして、各測定位置ごとに生成される3次元形状データを予め記憶している座標変換関数FCPと計算した座標変換関数FPSとを用いて座標変換する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状測定装置により複数の異なる位置で測定した測定対象物の各座標系における3次元形状データ群を1つの基準座標系における3次元形状データ群に変換して、同測定対象物の3次元形状を任意の方向から見た形状に表示させることが可能な3次元形状測定システムおよび3次元形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象の物体に対し測定位置が移動される3次元形状測定装置により、測定対象物の3次元形状を複数の異なる位置から測定して各測定位置ごとの3次元形状データを合成し、測定対象物の立体形状を任意の方向から見て表示できるようにした3次元形状測定システムはよく知られている。例えば、下記特許文献1に記載の3次元形状測定システムにおいては、複数のアームを互いに可動的に連結して構成される支持機構の先端部に測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置が取り付けられている。そして、作業者は、支持機構の可動範囲内において3次元形状測定装置を複数の位置に移動させ、各位置ごとに測定対象物の測定を行う。
【特許文献1】特開2004−257927号公報
【0003】
この場合、各測定位置ごとに3次元形状測定装置によって測定された測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データは、支持機構の先端部に関する座標系を介して基準座標系による3次元形状データに座標変換される。支持機構の先端部に関する座標系は、支持機構の先端部に取り付けられた3次元形状測定装置の基準座標系に対する座標軸原点の位置および座標軸の向きを特定するための座標系である。この支持機構の先端部に関する座標系の基準座標系に対する原点の位置および座標軸の向きは、支持機構を構成する各アームの長さ、各アーム間の角度および各アーム間のねじれ角などを用いて検出される。
【0004】
しかしながら、このような3次元形状測定システムにおいては、3次元形状測定装置を支持する支持機構が大型かつ複雑な構成となっているため、3次元形状測定システムの構成を大型かつ複雑化するという問題がある。すなわち、3次元形状測定装置を支持する支持機構は、基準座標系に対する3次元形状測定装置の位置および向きを正確に特定するため精度よく製作する必要があるとともに、3次元形状測定装置を安定的に支持するための剛性を確保する必要があるため、構成が大型かつ複雑となる。また、3次元形状測定装置の可動範囲は測定対象物の大きさに応じて設定されるため、形状の大きな測定対象物を測定する場合には可動範囲の広い支持機構を用意しなければならない。この場合、可動範囲が広くなるほど支持機構の構成がより大型かつ複雑化して3次元形状測定システムの構成がさらに大型かつ複雑化するという問題がある。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、従来例のような支持機構に比べて、簡単かつ小型な構成で測定対象物の3次元形状を測定することが可能な3次元形状測定システムおよび3次元形状測定方法を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、測定対象物の3次元形状を測定して同測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを出力する3次元形状測定装置と、基端部にて支持装置により引出し量および引出し方向が自在に支持され、かつ先端部に3次元形状測定装置を接続する接続部材と、接続部材の支持装置に対する引出し量および引出し方向を用いて、所定の基準座標系に対する3次元形状測定装置の少なくとも位置を表す位置情報を取得する情報取得手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記取得した位置情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するデータ変換手段と、データ変換手段によって変換された複数組の3次元形状データを合成する合成手段とを備えたことにある。この場合、前記支持装置は、接続部材の引出し量および引出し方向を検出する検出器を備えるとよい。また、接続部材を、ワイヤにするとよい。
【0007】
この場合、前記所定の基準座標系の原点および座標軸の向きは、支持装置を基準に定められており、前記情報取得手段は、前記位置情報に加えて、前記所定の基準座標系に対する3次元形状測定装置の向きを表す向き情報も取得するとよい。この場合、前記接続部材は、少なくとも3つ用意するとよい。また、前記データ変換手段は、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記位置情報および前記向き情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するための第1の座標変換関数を計算する第1の座標変換関数計算手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、第1の座標変換関数を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに座標変換する座標変換手段とを備えるようにするとよい。この場合、第1の座標変換関数計算手段は、3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第2の座標変換関数と、接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第3の座標変換関数とを第1の座標変換関数として計算するようにするとよい。
【0008】
また、これに代えて、3次元形状測定装置は、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データに加え、3次元形状測定装置の測定対象空間内に配置された基準物体の3次元形状を表す3次元形状データも出力するものであり、前記所定の基準座標系の原点は支持装置を基準に定められ、かつ基準座標系の座標軸の向きは基準物体を基準に定められるものであり、データ変換手段は、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記取得した位置情報に加え基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するようにしてもよい。この場合、前記接続部材は、少なくとも1つ用意するとよい。また、前記データ変換手段は、基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて基準物体に関係した座標軸の向きを計算し、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記計算した座標軸の向きと同じ座標軸を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第4の座標変換関数を計算する第4の座標変換関数計算手段と、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記所定の基準座標系の原点と同じ原点を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第5の座標変換関数を計算する第5の座標変換関数計算手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記計算した第4および第5の座標変換関数を用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する座標変換手段とで構成するとよい。この場合、前記第4の座標変換関数は、3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換し、前記第5の座標変換関数は、接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに座標変換するとよい。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、支持装置から引き出される接続部材の先端部を3次元形状測定装置に接続している。そして、3次元形状測定装置によって測定対象物を測定する基準座標系における位置を接続部材の引出し量および引出し方向によって特定している。すなわち、基準座標系において3次元形状測定装置の位置が特定できる接続部材の先端部を3次元形状測定装置に接続した構成で測定対象物の3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、従来例のような大型かつ複雑な構成の支持機構を用いることなく、簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、測定対象物の大きさに応じて接続部材の長さを設定すればよいので、形状の大きな測定対象物を測定する場合であっても3次元形状測定システムを簡単かつ小型に構成することができる。
【0010】
また、上記3次元形状測定システムにおいて、さらに、前記所定の基準座標系は、前記支持装置の所定の位置に基づいて定められており、前記所定の基準座標系に対して支持装置を移動させる支持装置移動手段と、前記所定の基準座標系によって表された支持装置の位置を検出する支持装置位置検出手段とを備え、データ変換手段は、前記取得された位置情報に加え、支持装置位置検出手段によって検出される支持装置の位置を用いて、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するようにしてもよい。これによれば、基準座標系における支持装置の位置が検出されるため、測定対象物を複数の位置から測定する場合、3次元形状測定装置とともに支持装置も移動させることができ、3次元形状測定装置の移動範囲が拡大し測定対象物をより広範囲から測定することができる。したがって、例えば、3次元形状測定装置に対向する測定対象物の裏側の部分も3次元形状測定装置とともに支持装置を移動させることにより測定することができる。
【0011】
また、本発明は前記3次元形状測定システムに限定されるものではなく、3次元形状測定方法によっても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る3次元形状測定システムの基本構成を示す概略図である。この3次元形状測定システムは、測定対象物であるワークWKの3次元形状を測定する3次元形状測定装置10を備えている。
【0013】
3次元形状測定装置10は、箱型に形成されており、ワークWKに向けてレーザ光を出射するとともに同ワークWKからの反射光を受光して、ワークWKの3次元立体表面形状を測定して同測定結果を表す測定情報を出力する。この3次元形状測定装置10としては、ワークWKの3次元表面形状を測定するとともに同測定した3次元表面形状を表す信号を出力するものであれば、いかなる3次元形状測定装置をも利用できる。本実施形態においては、レーザ光を用いて3角測量法に従って物体の3次元表面形状を測定するものを簡単に紹介しておく。
【0014】
この3次元形状測定装置においては、レーザ光源から物体に向けて出射されるレーザ光の進行方向にほぼ垂直な仮想平面を想定するとともに、同仮想平面上にて互いに直交するX軸方向およびY軸方向に沿って分割した多数の微小エリアを想定する。そして、3次元形状測定装置は、前記多数の微小エリアにレーザ光を順次照射し、物体からの反射光によって前記微小エリアが規定する物体表面までの距離をZ軸方向距離として順次検出して、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX,Y,Z座標に関する情報を得て、同3次元形状測定装置に面した物体表面の形状を測定するものである。
【0015】
したがって、この3次元形状測定装置は、出射レーザ光の向きをX軸方向に変化させるX軸方向走査器と、出射レーザ光の向きをY軸方向に変化させるY軸方向走査器と、物体表面にて反射された反射レーザ光を受光して物体表面までの距離を検出する距離検出器とを備えている。X軸方向走査器およびY軸方向走査器としては、レーザ光源からの出射レーザ光の光路をX軸方向およびY軸方向に独立に変化させ得る機構であればよく、例えば、レーザ光源自体をX軸方向およびY軸方向の軸線回りに電動モータによって回転させたり、出射レーザ光の光路に設けられてその方向を変更するガルバノミラーをX軸方向およびY軸方向の軸線回りに電動モータによって回転させる機構を利用できる。距離検出器としては、前記出射レーザ光の光路に追従して回転し、物体表面にて反射された反射レーザ光を集光する結像レンズおよび同集光したレーザ光を受光するCCDなどの複数の受光素子を一列に配置させたラインセンサからなり、ラインセンサによる反射レーザ光の受光位置によって物体表面までの距離を検出する機構を利用できる。
【0016】
したがって、このような3次元形状測定装置は、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX,Y,Z座標に関する情報として、X軸方向走査器による出射レーザ光の基準方向に対するX軸方向への傾きθx、Y軸方向走査器による出射レーザ光の基準方向に対するY軸方向への傾きθy、および距離検出器による物体表面までの距離Lzとが、前記仮想したX軸方向およびY軸方向に沿って分割した多数の微小エリアごとに出力される。より具体的には、X軸およびY軸方向への傾きθx,θyは、電動モータの基準位置からの回転角である。また、物体表面までの距離Lzは、ラインセンサにおける反射レーザ光の受光位置である。
【0017】
この3次元形状測定装置10の底面には、円柱状の把持部11が設けられており、作業者による把持部11の把持により3次元形状測定装置10を任意の位置に移動させることができる。また、3次元形状測定装置10の背面、具体的には、3次元形状測定装置10におけるレーザ光が出射される側面に対向する側面には、3つのワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されたワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCがそれぞれ接続されている。具体的には、図2に示すように、3次元形状測定装置10の背面には、内周面が球面状に形成された3つの穴部12A(12B,12C)がそれぞれ設けられている。なお、図2は、穴部12Aを示しているが他の穴部12B,12Cも穴部12Aと同様である。これらの穴部12A(12B,12C)には、同穴部12A(12B,12C)の内径より小径の球体13A(13B,13C)が、その表面の一部を露出させた状態で、かつ摺動可能な状態で埋め込まれている。
【0018】
この球体13A(13B,13C)における3次元形状測定装置10の背面から露出した表面部には、球体13A(13B,13C)の中心部に向けて雌ネジ13aA(13aB,13aC)が設けられており、この雌ネジ13aA(13aB,13aC)に、ワイヤ21A(21B,21C)の各先端部21aA(21aB,21aC)に設けられた雄ネジ21bA(21bB,21bC)が螺合している。したがって、3次元形状測定装置10の背面に対するワイヤ21A(21B,21C)の向きに応じて球体13A(13B,13C)は、穴部12A(12B,12C)内において回転摺動する。なお、3次元形状測定装置10の背面に設けられた穴部12A,12B,12Cは、それぞれ同一直線上に位置しないように、すなわち、各穴部12A,12B,12Cがそれぞれ三角形の頂点を形成するように配置されている。
【0019】
ワイヤ装置20A,20B,20Cは、円筒状に形成された外筒22A,22B,22C内に収容された所定の長さのワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θX,θYを検出して、同引出し量Lおよび各回転角θX,θZを表す信号をそれぞれ出力する。これらのワイヤ装置20A,20B,20Cは、それぞれ同一の構成であるため、図3に示すワイヤ装置20Aについて説明する。外筒22A(22B,22C)は、ゼンマイバネによりロール状に巻かれたワイヤ21A(21B,21C)を収容する大径部22aA(22aB,22aC)と、同大径部22aA(22aB,22aC)より小径に形成された小径部22bA(22bB,22bC)とから構成されている。
【0020】
これらのうち、大径部22aA(22aB,22aC)の外周部における中央部には、その内部に収容されたワイヤ21A(21B,21C)を引き出すための孔部22cA(22cB,22cC)が設けられている。また、大径部22aA(22aB,22aC)内には、ワイヤ21A(21B,21C)の引出し量Lを検出して同引出し量Lを表す信号を出力するリニアエンコーダ23A(23B,23C)が組み込まれている。一方、小径部22bA(22bB,22bC)内には、外筒22A(22B,22C)の軸線方向の回転角θXを検出して同回転角θXを表す信号を出力するエンコーダ24A(24B,24C)が組み込まれている。この外筒22A(22B,22C)は、水平方向に配置された支持軸25A(25B,25C)に同支持軸25A(25B,25C)回りに回転可能な状態で支持されている。すなわち、小径部22bA(22bB,22bC)内に組み込まれるエンコーダ24A(24B,24C)は、大径部22aA(22aB,22aC)の孔部22cA(22cB,22cC)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の引き出される方向のうち、支持軸25A(25B,25C)回りの回転角を検出する。
【0021】
支持軸25A(25B,25C)の両端部は、略U字状に形成された支持アーム26A(26B,26C)の両端部にそれぞれ支持されている。この支持アーム26A(26B,26C)の中央部は、垂直方向に配置された回転軸27A(27B,27C)の上面に固定されている。回転軸27A(27B,27C)は、その軸線回りに回転可能な状態で基台28A(28B,28C)に支持されている。すなわち、ワイヤ21A(21B,21C)を収容する外筒22A(22B,22C)は、回転軸27A(27B,27C)の軸線回りにも回転するように構成されている。基台28A(28B,28C)内には、回転軸27A(27B,27C)の軸線回りの回転角θZを検出して同回転角θZを表す信号を出力するエンコーダ29A(29B,29C)が組み込まれている。すなわち、エンコーダ29A(29B,29C)は、大径部22aA(22aB,22aC)の孔部22cA(22cB,22cC)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の引き出される方向のうち、回転軸27A(27B,27C)回りの回転角を検出する。
【0022】
これらの引出し量Lおよび回転角θX,θZによって、ワイヤ装置20A(20B,20C)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の先端部21aA(21aB,21aC)の先端の位置、すなわち、同先端部に接続される3次元形状測定装置10の位置を特定することができる。この場合、ワイヤ21A(21B,21C)の先端部21aA(21aB,21aC)の先端の位置とは、ワイヤ21A(21B,21C)の軸線上における先端部21aA(21aB,21aC)の先端の点からワイヤ21A(21B,21C)の軸線方向に球体13A(13B,13C)の半径長さ分移動した点である。後述する3次元画像データ処理装置43のメモリ装置内に球体13A(13B,13C)の半径長さが記憶されたおり、検出した引出し量Lにこの半径長さを追加した量を引出し量Lとする。そして、この先端の位置は、回転軸27A(27B,27C)回りの回転角を0°とするときの支持軸25A(25B,25C)の軸線をX軸とし、回転軸27A(27B,27C)の軸線をZ軸とし、同X軸とZ軸との交点を通るとともに同X軸およびZ軸に直交する軸線をY軸とする3次元座標系(以後、「ワイヤ装置座標系WA(WB,WC)」という)による座標によって表される。
【0023】
ワイヤ装置20A,20B,20Cは、柱状のワイヤ装置支持脚30の上部にそれぞれ固定されている。ワイヤ装置支持脚30は、垂直方向に設けられた支柱31の上部にワイヤ装置20A,20B,20Cを載置して固定する載置台32A,32Bを備えるとともに、支柱31の下部に三方に延びる脚33A,33B,33Cを有する脚部34を備えている。したがって、ワイヤ装置20A,20B,20Cは、ワイヤ装置支持装置30を移動させることによって、任意の位置に移動させることができる。
【0024】
これらの3次元形状測定装置10およびワイヤ装置20A,20B,20Cには、コントローラ41が接続されている。コントローラ41は、キーボードからなる入力装置42からの指示に従って、3次元形状測定装置10の作動を制御する。また、コントローラ41は、入力装置42からの指示に従って3次元画像データ処理装置43の作動を制御するとともに、同入力装置42にて入力されたデータを3次元画像データ処理装置43に供給する。
【0025】
3次元画像データ処理装置43は、コンピュータ装置によって構成され図5,図6および図8に示す各プログラムを実行することにより座標変換関数を計算するとともに、図9に示すプログラムを実行することにより、3次元形状測定装置10からの3次元形状に関する情報(立体形状データ群)、ワイヤ装置20A,20B,20Cからワイヤ21A,21B,21Cの引出し量L、およびワイヤ21A,21B,21Cの引出される方向を表す回転角θX,θZを入力して、測定対象空間内に位置する物体の3次元画像を任意の方向から見て表示可能な3次元形状データを生成する。この3次元画像データ処理装置43には、表示装置44が接続されている。表示装置44は、液晶ディスプレイまたはCRTなどで構成され、3次元画像データ処理装置43から出力される3次元形状データに基づいて測定対象空間内に位置する物体の3次元画像を表示する。
【0026】
次に、このように構成した3次元形状測定システムの作動について説明する。作業者は、ワイヤ装置20A,20B,20Cに関する座標系であるの各ワイヤ装置座標系WA,WB,WCによって表された各座標値(ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCの先端の位置)を、1つの基準座標系Sによって表された座標値に変換するための座標変換関数FWSを計算する。本実施形態においては、ワイヤ装置20Aに関する座標系であるワイヤ装置座標系WAを基準座標系Sとする。
【0027】
まず、作業者は、図4に示すように、ワイヤ装置20Aから引き出されたワイヤ21Aの先端部21aAに、先端を尖らせて形成した触針50を取り付ける。この場合、先端部21aAに取り付けられる触針50の長さは、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置に予め記憶されており、検出した引出し量Lにこの触針50の長さを追加した量を引出し量Lとすることで、触針50の先端位置の座標を特定することができる。なお、触針50の先端を球状に形成し、同球の中心位置までの長さを記憶させておくようにしてもよい。次に、作業者は、ワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの先端が届く範囲に配置されたテーブル60上に基準物体70A,70B,70Cをそれぞれ配置する。基準物体70A,70B,70Cは、互いに直径の異なる3つの真球体で構成され、測定対象空間内において定点を定める機能を有する。なお、ワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの先端が届く範囲であれば、基準物体70A,70B,70Cを配置するばよく、必ずしもテーブル60を用意するとともに、同テーブル60上に基準物体70A,70B,70Cを配置する必要はない。
【0028】
次に、作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FWSの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して3次元画像データ処理装置43は、図5に示す、座標変換関数FWS計算プログラムの実行をステップS100にて開始して、ステップS102にて、基準物体の特徴の入力を待つ。ここで基準物体の特徴とは、基準物体70A,70B,70Cがそれぞれ球体であることを表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、基準物体70A,70B,70Cが球体であることを表すデータを3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS102の処理をスキップさせてもよい。
【0029】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS104にて、測定を行うワイヤ装置の識別番号の入力を待つ。作業者は、入力装置42を操作して、ワイヤ装置20Aを表す識別番号を3次元画像データ処理装置43に入力する。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS106にて、基準物体の測定情報の入力を待つ。作業者は、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70A,70B,70Cの各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報を入力する。この場合、ワイヤ21Aは、触針50の移動に応じて外筒22Aから引き出される。また、外筒22Aは、触針50の移動に応じて支持軸25A回りおよび回転軸27A回りに回転する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ装置20Aから引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに、それぞれ4つの接触点の各座標値(x、y,z)が計算される。
【0030】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS108にて、基準物体70A,70B,70Cごとに定点をそれぞれ計算する。具体的には、前記ステップS106にて計算した基準物体70A,70B,70Cごとの各4つの接触点の座標値(x、y,z)を、下記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、前記座標値(x、y,z)によって表された各基準物体70A,70B,70Cの中心座標を表す。なお、下記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS108の処理においては計算する必要はない。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとにそれぞれ球体中心座標が定点として計算される。
【数1】
【0031】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS110にて、各ワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行ったか否かを判定する。すなわち、この判定処理においては、すべてのワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行うまで、「No」と判定し続けてステップS104に戻る。ステップS104においては、前記したように、測定を行うワイヤ装置の識別番号の入力を待つ。この場合、作業者は、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられている触針50をワイヤ21B(またはワイヤ21C)の先端部21aB(または先端部21aC)に付け替えて、入力装置42からワイヤ装置20B(またはワイヤ装置20C)の識別番号を入力し、基準物体70A,70B,70Cの測定を繰り返し実行する。一方、すべてのワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行った場合には、この判定処理において「Yes」と判定してステップS112に進む。これにより、各ワイヤ装置20A,20B,20Cごとに、各基準物体70A,70B,70Cの定点がそれぞれ計算される。
【0032】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS112にて、座標変換関数FWSを計算する。この場合、座標変換関数FWSには、ワイヤ装置20Bに関する座標系であるワイヤ装置座標系WBによって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換する座標変換関数FWS1と、ワイヤ装置20Cに関する座標系であるワイヤ装置座標系WCによって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換する座標変換関数FWS2とがある。なお、ワイヤ装置20Aに関する座標系であるワイヤ装置座標系WAは基準座標系Sであるため、ワイヤ装置座標系WAによって表された座標値を基準座標系Sによって表された座標値に変換する座標変換関数FWSは計算する必要はない。
【0033】
このステップS112による座標変換係数FWSの計算処理に先立ち、座標変換について簡単に説明しておく。X,Y,Z座標からなる第1座標系と、同第1座標系をX軸、Y軸およびZ軸回りにそれぞれθx,θy,θzだけ回転させるとともに、同第1座標系の原点をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にそれぞれa,b,cだけ移動させた第2座標系を想定する。第1座標系における一点の座標値(x,y,z)とし、第2座標系における同一点の座標値を(x’,y’,z’)とすると、これらの座標値の間には下記式2が成立する。この場合、下記式2中のMは下記式3によって表される行列値である。
【数2】
【数3】
【0034】
このステップS112の座標変換関数FWSの計算は、前記式2および式3中の行列値M(g11,g12,g13,g21,g22,g23,g31,g32,g33)および行列値a,b,cを計算することを意味する。この場合、本実施形態のワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)が第1座標系に対応するとともに、基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)が第2座標系に対応する。したがって、各基準物体70A,70B,70Cのワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)における各定点(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)と、基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)における各定点(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)とを前記式2に適用すると、下記式4〜6の関係が成立する。
【数4】
【数5】
【数6】
【0035】
前記式4を変形すると、下記式7の連立方程式が成立する。
【数7】
【0036】
ここで、定点座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)を含む平面の法線ベクトルを(α,β,γ)とし、定点座標(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)を含む平面の法線ベクトルを(α’,β’,γ’)とすると、2つの法線ベクトルの大きさが同じであれば下記式8が成立する。同式8中の行列Mは、前記式3によって表される。
【数8】
【0037】
定点座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)を含む平面の法線ベクトルを(x2,y2,z2)から(x1,y1,z1)に向かうベクトルと、(x3,y3,z3)から(x2,y2,z2)に向かうベクトルとの外積により成立するベクトルとすると、前記法線ベクトル(α,β,γ)は下記式9によって表される。
【数9】
【0038】
同様に、前記ベクトル(α’,β’,γ’)は下記式10によって表される。
【数10】
【0039】
前記式9および前記式10を前記式8に代入すると、下記式11が成立する。
【数11】
【0040】
前記式11の1番目の式を前記式7に加えれば、下記式12の連立方程式となる。
【数12】
【0041】
この式12の連立方程式を解くことにより、行列値g11,g12,g13を計算することができる。また、前記式5および式6に関しても、前記式7の連立方程式のように変形し、前記式11の2番目の式および3番目の式をそれぞれ加えた連立方程式を解くことにより行列値g21,g22,g23および行列値g31,g32,g33を計算できる。そして、これらの計算した各行列値を前記式4〜6に代入すれば、行列値a,b,cを計算できる。これにより、ワイヤ装置20B(またはワイヤ装置20C)に関する座標系であるワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)によって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換するための座標変換関数FWS1(または座標変換関数FWS2)が計算される。なお、計算された座標変換関数FWSは、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置内に記憶される。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS114にて、この座標変換関数FWS計算プログラムの実行を終了する。
【0042】
次に、作業者は、3次元形状測定装置10に関する座標系(以後、「カメラ座標系C」という)によって表された3次元形状データを、基準座標系Sが設定されているワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの先端部21aAに関する座標系(以後、「ワイヤ先端座標系P」という)によって表された3次元形状データに変換するための座標変換関数FCPを計算する。ここで、カメラ座標系Cは、互いに直交する3つの座標軸(X軸,Y軸,Z軸)からなり、3次元形状測定装置10の特定点を原点とする3次元座標系である。また、ワイヤ先端座標系Pは、カメラ座標系Cに対応する3つの座標軸(X軸,Y軸,Z軸)からなり、基準座標系Sが設定されたワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの軸線上における先端部21aAの先端の点からワイヤ21Aの軸線方向に球体13Aの半径長さ分移動した点を原点とする3次元座標系である。この座標変換関数FCPの計算に際して作業者は、基準座標系Sが設定されたワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの先端部21aAに前記触針50を再度取り付ける。
【0043】
作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FCPの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して、3次元画像データ処理装置43は、図6に示す座標変換関数FCP計算プログラムの実行をステップS200にて開始して、ステップS202にて、基準物体の特徴の入力を待つ。この場合、基準物体の特徴とは、基準物体70A,70B,70Cがそれぞれ球体であることを表すデータおよび同各球体の直径を表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、基準物体70A,70B,70Cが球体であることを表すデータおよび同球体の直径を表すデータを3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS202の処理をスキップさせてもよい。
【0044】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS204にて、触針50による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、前記ステップS106と同様にして、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70A,70B,70Cの各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ装置20Aから引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに、それぞれ4つの接触点の各座標値(x、y,z)が計算される。
【0045】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS206にて、前記ステップS108と同様にして、基準物体70A,70B,70Cごとに定点をそれぞれ計算する。具体的には、前記ステップS204にて計算した基準物体70A,70B,70Cごとの各4つの接触点の座標値(x、y,z)を、前記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、前記座標値(x、y,z)によって表された各基準物体70A,70B,70Cの中心座標を表す。なお、前記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS206の処理においては計算する必要はない。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに各球体の中心座標が定点としてそれぞれ計算される。なお、このステップS206によって計算される基準物体70A,70B,70Cごとの各定点は、前記ステップS108にて計算される基準物体70A,70B,70Cごとの各定点と同じであるため、基準物体70A,70B,70Cの位置やワイヤ装置20A,20B,20Cの位置が変更されず前記ステップ106にて計算された基準物体70A,70B,70Cごとの各定点の座標値が記憶されていれば、ステップS204およびステップS206の処理は不要である。
【0046】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS208にて、3次元形状測定装置10による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、図7に示すように、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられている触針50を取り外して3次元形状測定装置10の背面に設けられている球体13Aに接続するとともに、他のワイヤ21B,21Cの各先端部21aB,21aCを同3次元形状測定装置10の背面に設けられている球体13B,13Cにそれぞれ接続する。そして、各ワイヤ21A,21B,21Cが接続された3次元形状測定装置10を3次元形状測定装置支持脚80に固定した後、入力装置42を操作して基準物体70A,70B,70Cの測定を行う。3次元形状測定装置支持脚80は、ワイヤ装置支持脚30と同様に3次元形状測定装置10を所定の位置に支持するものである。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。
【0047】
3次元形状測定装置10は、コントローラ41からの指示に応答して基準物体70A,70B,70Cの測定を開始して、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す情報を3次元画像データ処理装置43に出力する。すなわち、基準物体70A,70B,70Cの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)を3次元画像データ処理装置43にそれぞれ出力する。そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS208にて、3次元形状測定装置10から出力されたX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データは、3次元形状測定装置10に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。なお、この3次元形状データ中には、基準物体70A,70B,70Cのほかに同基準物体70A,70B,70Cの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0048】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS210にて、前記ステップS208にて生成された3次元形状データの中から、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データをそれぞれ抽出する。この基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データの抽出処理は、図示しない基準物体抽出サブプログラムによって実行される。基準物体抽出サブプログラムの処理内容を簡単に説明する。
【0049】
3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS202にて入力された基準物体の特徴のうち球体の直径を表すデータを用いて、単位ブロックおよび探索ブロックを設定する。単位ブロックは、基準物体70A,70B,70Cの存在位置を特定するために探索ブロックを移動させる最小のブロックであり、探索ブロックは、基準物体70A,70B,70Cをその内部に包含する位置を特定するために利用される単位ブロックの集まりである。3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10の測定対象空間内を単位ブロックの大きさで立体的に分割するとともに、探索ブロックを測定対象空間内で順次移動させて探索ブロック内に包含される単位ブロックのうち3次元形状データを含む単位ブロックの数をカウントする。このカウントした単位ブロックの数に応じて、探索ブロック内に含まれる3次元形状データがそれぞれ基準物体70A,70B,70C全体を含む3次元形状データであるか否かを判定し、基準物体70A,70B,70C全体を含む3次元形状データであると判定されたとき、探索ブロック内の3次元形状データを抽出する。なお、この技術は、既によく知られた技術であり、例えば特開2004−333371号公報に記載されている。
【0050】
また、前記説明した基準物体の抽出方法のほかに、基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量を用いて基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データを抽出することもできる。この場合、基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量を予め検出するとともに、同反射光の光量を3次元画像データ処理装置43に設定しておく。そして、3次元形状測定装置10は、X−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)に加えて基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量も検出して、前記設定した光量と一致する3次元形状データを抽出するようにする。
【0051】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS212にて、前記ステップS210にてそれぞれ抽出した基準物体70A,70B,70Cを表す3次元形状データを用いて基準物体70A,70B,70Cごとに定点座標をそれぞれ計算する。具体的には、前記抽出した3次元形状データを基準物体70A,70B,70Cごとに前記式1の左辺にそれぞれ代入し、最小2乗法を用いて未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、3次元形状データによって表された球体、すなわち各基準物体70A,70B,70Cの各中心座標を表す。なお、前記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS212の処理においては計算する必要はない。
【0052】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS214にて、基準座標系Sによって表された座標値をワイヤ先端座標系Pによって表された座標値に変換する座標変換関数FSPを計算する。この座標変換関数FSPの計算は、図8に示す座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行により行われる。
【0053】
3次元画像データ処理装置43は、ステップS300にて、座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行を開始して、ステップS302にて、ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCの先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS208にて基準物体70A,70B,70Cを測定した3次元形状測定装置10の位置における各ワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、各ワイヤ装置20A,20B,20Cごと、すなわちワイヤ装置座標系WA,WB,WCごとに各先端部21aA,21aB,21aCの先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0054】
そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS304にて、前記ステップS302にて計算した各先端部21aA,21aB,21aCの先端座標を、前記座標変換関数FWS計算プログラムの実行により計算された座標変換関数FWS(座標変換関数FWS1および座標変換関数FWS2)を用いて基準座標系Sによって表された座標値にそれぞれ座標変換する。この場合、ワイヤ装置座標系WAによって表された先端部21aAの先端座標は、ワイヤ装置座標系WAが基準座標系Sであるため、座標変換する必要はない。なお、このステップS304にて計算された3つの先端座標を、各先端部21aA,21aB,21aCに対応させてPA,PB,PCとする。
【0055】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS306にて、座標変換関数FSPを計算する。この座標変換関数FSPにおける座標軸の回転成分の計算は、前記ステップS304にて計算した基準座標系Sにおける3つの先端座標PA,PB,PCを用いて3つのベクトルA,B,Cを定義し、同3つのベクトルA,B,Cの基準座標系Sおよびワイヤ先端座標系Pにおける各ベクトルの成分を用いて計算する。具体的には、基準座標系Sにおける1つのベクトルの成分を(α,β,γ)とするとともに、ワイヤ先端座標系Pにおける前記1つのベクトルの成分を(α’,β’,γ’)とすると、前記式8が成立する。同式8中の行列値Mは、基準座標系Sの座標軸に対するワイヤ先端座標系Pの座標軸の相対的な回転成分を表しており、前記式3によって表される。この場合、ベクトル(α,β,γ)とベクトル(α’,β’,γ’)は、その大きさが同じとする。
【0056】
このステップS306の座標変換関数FSPにおける座標軸の回転成分の計算は、前記式8中の行列値M(M=g11,g12,g13,g21,g22,g23,g31,g32,g33)を計算することを意味する。すなわち、互いに同一方向でない3つのベクトルA,B,Cを想定し、この3つのベクトルのA,B,Cの基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、この3つのベクトルのA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、下記式13〜15の関係が成立する。
【数13】
【数14】
【数15】
【0057】
この前記式13〜15の連立方程式を解くことにより、行列値Mを計算することができる。本実施形態においては、前記先端座標PAから先端座標PB(または先端座標PC)に向かうベクトルの単位ベクトルを前記3つのベクトルA,B,CうちのベクトルAとし、先端座標PAから先端座標PC(または先端座標PB)に向かうベクトルと、前記ベクトルAとの外積により計算される単位ベクトルをベクトルBとし、前記ベクトルAとベクトルBとの外積により計算される単位ベクトルをベクトルCとする。この場合、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、これらのベクトルA,B,Cの向きと同一であるとして定義する。よって同ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分は(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)となる。そして、基準座標系Sにおける同ベクトルA,B,Cにおける各成分は、3つの先端座標PA,PB,PCを用いて計算される。したがって、これらのベクトルA,B,Cの基準座標系Sおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値Mを計算することができる。また、基準座標系Sの原点に対するワイヤ先端座標系Pの原点のずれ量は先端座標PAの座標値(a,b,c)となる。これらの行列値Mおよび先端座標PAの座標値(a,b,c)が座標変換関数FSPである。基準座標系Sによって表された座標値(XS,YS,ZS)とワイヤ先端座標系Pによって表された座標値(XP,YP,ZP)との関係を座標変換関数FSPを用いて表すと下記式16に示すようになる。
【数16】
【0058】
そして、3次元画像データ処理装置43は、前記計算した座標変換関数FSPを記憶した後、ステップS308にて、この座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行を終了してステップS216に戻る。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS216にて、前記ステップS206にて計算された基準物体70A,70B,70Cごとの各定点座標を、前記ステップS214にて計算した座標変換関数FSPを用いてワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。これにより、3つの基準物体70A,70B,70Cに対して、ワイヤ先端座標系Pによって表された3つの定点座標と、カメラ座標系Cによって表された3つの定点座標とが計算されたことになる。
【0059】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS218にて、座標変換関数FCPを計算する。この座標変換関数FCPの計算は、前記ステップS212にて計算されたカメラ座標系Cにおける3つの定点座標と、前記ステップS216にて計算されたワイヤ先端座標系Pにおける3つの定点座標とを用いて、前記座標変換関数FWSと同様な処理によって計算する。すなわち、前記第1座標系をカメラ座標系Cとし、前記第2座標系を基準座標系Sとして、カメラ座標系Cによって表された3つの定点(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)と、ワイヤ先端座標系Pによって表された3つの定点(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)とを前記式2にそれぞれ代入すれば、前記と同様にして座標変換関数FCPを計算することができる。そして、3次元画像データ処理装置43は、前記計算した座標変換関数FCPを記憶した後、ステップS220にて、この座標変換関数FCP計算プログラムの実行を終了する。
【0060】
この座標変換関数FCP計算プログラムの実行後、作業者は、テーブル60から基準物体70A,70B,70Cを取り除いて、同テーブル60上に測定対象物であるワークWKを配置する。そして、入力装置42を操作してワークWKの3次元立体形状の表示を指示する。これに応答して、3次元画像データ処理装置43は、図9に示す3次元形状表示プログラムの実行をステップS400にて開始して、ステップS402にてワークWKの3次元形状を表す測定情報の入力を待つ。
【0061】
作業者は、3次元形状測定装置10を3次元形状測定装置支持脚80上から取り外し、同3次元形状測定装置10を手で持って、ワイヤ装置20A,20B,20Cから引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび外筒22A,22B,22Cの回転角θx,θyの変化を伴いながら、ワークWKに対して3次元形状測定装置10を移動させてワークWKの3次元形状の測定を行う。
【0062】
3次元形状測定装置10によって測定されたワークWKの測定情報は、3次元画像データ処理装置43に出力される。すなわち、ワークWKの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)を3次元画像データ処理装置43に出力する。そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS402にて、3次元形状測定装置10から出力された1つのX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、1つの3次元形状データ(すなわち、1つの座標値)を計算する。この場合、3次元形状データは、3次元形状測定装置10に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。なお、この3次元形状データは、ワークWKや同ワークWKの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60)の表面形状を表す3次元形状データのいずれかのデータである。
【0063】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS404にて、ワイヤ先端座標系Pによって表された座標値を基準座標系Sによって表された座標値に変換する座標変換関数FPSを計算する。この座標変換関数FPSの計算は、前記座標変換関数FSPの逆関数として計算される。すなわち、3次元画像データ処理装置43は、前記図8に示す座標変換関数FSP計算サブプログラムを実行することにより座標変換関数FSPを計算した後、同計算した座標変換関数FSPの逆関数を座標変換関数FPSとして計算する。
【0064】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS406にて、前記ステップS402にて生成した3次元形状データを、前記座標変換関数FCP計算プログラムの実行によって計算された座標変換関数FCPを用いて、カメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS408にて、前記ワイヤ先端座標系Pに座標変換された3次元形状データを、前記ステップS404にて計算した座標変換関数FPSを用いて基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する。すなわち、これらのステップS406およびS408によって、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データが基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換される。
【0065】
なお、この場合、座標変換関数FCPと座標変換関数FPSとを乗算(FCP・FPS)した座標変換関数FCSを計算し、この座標変換関数FCSを用いてカメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換しても結果は同じである。すなわち、座標変換関数FCPが本発明に係る第2の座標変換関数に相当し、座標変換関数FPSが本発明に係る第3の座標変換関数に相当し、これらの座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSが本発明に係る第1の座標変換関数に相当する。この基準座標系Sに座標変換された3次元形状データは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0066】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS410にて、3次元形状測定が終了したか否かを判定する。具体的には、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が入力したときは、「Yes」と判定してステップS402に戻り、前述したように3次元形状データの計算と座標変換関数FPSを計算と、計算した3次元形状データの基準座標系Sの3次元形状データへの座標変換を行い、座標変換を行った3次元形状データを3次元画像データ処理装置43に記憶する。この処理は、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が入力する限り繰り返し行われる。一方、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が所定時間以上入力しないときは、同判定において「No」と判定してステップS412にて、ワークWKを別の測定位置から測定するか否かを判定する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、ワークWKの測定を続行するか否かを作業者に問い合わせ、作業者から測定終了の指示が入力されるまで、同判定において「Yes」と判定してステップS402に戻る。この場合、作業者はワークWKに対する3次元形状測定装置10の測定位置を変えて再度測定を行う。これにより、前記とは異なる測定位置からワークWKを測定した際の3次元形状データが3次元画像データ処理装置43に記憶される。なお、この場合、ワイヤ装置20A,20B,20Cの位置は固定である。一方、作業者から測定終了の指示が入力された場合には、同判定において「No」と判定してステップS414に進む。
【0067】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS414にて、各測定位置ごとに基準座標系Sによって表された3次元形状データを一組の3次元形状データ群に合成する。この合成においては、すべての測定位置における3次元形状データが同一座標系である基準座標系S上の座標値で表されているので、各測定位置によって測定されないワークWKの部分を表す3次元形状データが互いに補われるとともに、同一場所で複数の3次元形状データ群が存在する場合には、平均化の処理が行われ一組のデータ群とされる。
【0068】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS416にて、前記合成された3次元形状データ群を用いてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS418にて、3次元形状表示プログラムの実行を終了する。このワークWKの3次元形状の表示においては、作業者は入力装置42を操作することによりワークWKの表示方向を指示することができ、コントローラ41および3次元画像データ処理装置43は表示装置44にて表示されるワークWKの表示方向を変更する。これにより、ワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示させることができる。
【0069】
また、新たなワークWKをテーブル60上に置いて、前述のようにワークWKの表示を指示して3次元形状測定装置10による測定を行えば、前記3次元形状表示プログラムの実行により基準座標系Sによる3次元形状データの生成と3次元形状データの合成とが行われ、新たなワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示装置44に表示させることができる。すなわち、基準物体70A,70B,70Cを用いて座標変換関数FWSおよび座標変換関数FCPを一度だけ計算しておけば、ワイヤ装置20A,20B,20C(すなわち、基準座標系S)の位置を変位させない限り、ワークWKを次々に換えて表示装置44にてワークWKの立体形状を表示させることができる。
【0070】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、3次元画像データ処理装置43は、ワイヤ装置20A,20B,20Cによって検出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θX,θYを用いて、3次元形状測定装置10、具体的にはカメラ座標系Cの基準座標系Sにおける位置を特定して座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算している。これにより作業者は、基準座標系Sにおいて3次元形状測定装置10の位置が特定できるワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCを3次元形状測定装置10にそれぞれ接続した構成でワークWKの測定を行えば、3次元画像データ処理装置43は測定により得られた3次元形状データを基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換して合成し3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、従来例のように大型かつ複雑な構成の支持機構を用いることなく、簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、ワークWKの大きさに応じてワイヤ装置20A,20B,20Cに収容されているワイヤ21A,21B,21Cの長さを設定すればよいので、形状の大きなワークWKを測定する場合であっても3次元形状測定システムを簡単かつ小型に構成することができる。
【0071】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態においては、3次元形状測定装置10に3つのワイヤ装置20A,20B,20Cを接続した3次元形状測定システムについて説明した。しかし、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換するための座標変換関数(上記第1実施形態においては座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPS)を計算することができれば、これに限定されるものではない。図10は、1つのワイヤ装置20’を3次元形状測定装置10’に接続した3次元形状測定システムを示している。ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aは、上記第1実施形態と同様に、3次元形状測定装置10’の背面(3次元形状測定10’におけるレーザ光が出射される側面に対向する側面)に埋め込まれた球体13’に接続されている。なお、このワイヤ装置20’は、上記第1実施形態において座標変換関数FCPを計算するときと同様に、ワイヤ装置20’を所定の位置に支持するワイヤ装置支持脚30’上に固定されている。
【0072】
3次元形状測定装置10’は、上記第1実施形態における3次元形状測定装置10によって測定される測定情報、すなわち、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)に加えて、同各分割エリアごとの反射光量Rも検出する。したがって、3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10’が検出した反射光量Rを用いて、測定対象空間内に位置する物体表面の前記微小エリアごとの反射光量を計算する。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0073】
次に、このように構成した第2実施形態に係る3次元形状測定システムの作動について説明する。作業者は、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FPSを構成する座標軸の回転成分MPS、およびカメラ座標系Cによって表された3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FCPを構成する座標原点の原点ずれ成分GCPを計算する。
【0074】
まず、作業者は、図11に示すように、上記第1実施形態と同様に、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aに、先端を尖らせて形成した触針50を固定する。次に、作業者は、ワイヤ装置20A’から引き出されるワイヤ21’の先端が届く範囲に直方体状に形成されたテーブル60’を配置する。テーブル60’は、ワイヤ先端座標系Pを定義して座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算する際に用いられる基準物体を構成する物体であり、テーブル60’を構成する少なくとも2つの面60’a,60’bが3次元形状測定装置10’に対向するように配置される。テーブル60’における3次元形状測定装置10’に対向する2つの面60’a,60’bは、互いに異なる反射率となるように形成されている。図においては、これらの各面60’a,60’bの反射率の違いを各面上の模様の違いによって表している。また、これら2つの面60’a,60’bにそれぞれレーザ光を照射した場合における各面60’a,60’bからの反射光の光量は事前に作業者により認識されており、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置に予め記憶されている。
【0075】
次に、作業者は、テーブル60’上に1つの基準物体70’を配置する。基準物体70’は、上記第1実施形態と同様に、真球体で構成されており、測定対象空間内において定点を定める機能を有する。なお、基準物体70’は、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21A’の先端が届く範囲、かつ3次元形状測定装置10’によって前記テーブル60’の2つの面60’a,60’bと同時に測定できる位置関係に配置されていれば、必ずしもテーブル60’上に配置する必要はない。
【0076】
次に、作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FPSを構成する座標軸の回転成分MPS、および座標変換関数FCPを構成する座標原点の原点ずれ成分GCPの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して3次元画像データ処理装置43は、図12に示す回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行をステップS500にて開始して、ステップS502にて、基準物体の特徴の入力を待つ。この基準物体の特徴とは、基準物体が1つの球体と2つの平面とからなることを表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、これらの情報を3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、前記と同様に、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS502の処理をスキップさせてもよい。
【0077】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS504にて、基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、上記第1実施形態と同様に、ワイヤ21’の先端部21’aに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70’の各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70’に対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70’に対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70’に対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。
【0078】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS506にて、面の識別番号の入力を待つ。この場合、作業者は、テーブル60’の2つの面60’a,60’bを識別するためにそれぞれ予め付けられた番号を入力する。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS508にて、面の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端をテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面における互いに異なる3つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の面60’a,60’bに対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の面60’a,60’bに対する各接触を表す情報ごとに、ワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の面60’a,60’bに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。
【0079】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS510にて、基準物体70’の中心座標を定点として計算する。具体的には、上記第1実施形態における前記ステップ106と同様に、前記ステップS504にて計算した基準物体70’の各4つの接触点の座標値を、前記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この計算された定点は、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0080】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS512にて、テーブル60’の2つの面60’a,60’bにおける各法線ベクトルαS60’,βS60’を計算する。具体的には、前記ステップS508にて計算した各面60’a,60’bごとの各3つの接触点の座標値を下記式17の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、c、dをそれぞれ計算する。各面60’a,60’bごとに計算した未知数a、b、c、dのうち、未知数a、b、cが各面60’a,60’bに対応する各法線ベクトルαS60’,βS60’のベクトル成分を表す。
【数17】
【0081】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS514にて、回転成分MPSを計算する。具体的には、前記ステップS512にて計算した2つの法線ベクトルαS60’,βS60’のうち、一方の法線ベクトルαS60’(または法線ベクトルβS60’)の単位ベクトルをベクトルAとし、同2つの法線ベクトルαS60’,βS60’の外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルBとし、これらのベクトルA,Bの外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルCとしてそれぞれ計算し、同計算したこれら3つのベクトルA,B,Cの方向をそれぞれ座標軸とする座標系をワイヤ先端座標系Pと定義する。
【0082】
そして、ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各ベクトル成分AP,BP,CPを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、同ベクトルのA,B,Cの基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pおよび基準座標系Sにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MPSを計算することができる。この場合、ワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPである(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)は、それぞれ(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)であり、基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSである(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)は、2つの法線ベクトルαS60,βS60の各成分から前述のように既に計算されている。これにより、座標変換関数FPSにおける回転成分MPSが計算される。この計算された回転成分MPSは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0083】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS516にて、3次元形状測定装置10’による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、図13に示すように、上記第1実施形態と同様にして、ワイヤ21’の先端部21a’に取り付けられている触針50を取り外して3次元形状測定装置10’の背面に設けられている球体12’に接続する。そして、ワイヤ21’が接続された3次元形状測定装置10’を3次元形状測定装置支持脚80に固定した後、入力装置42を操作して基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの測定を行う。
【0084】
3次元形状測定装置10’は、コントローラ41からの指示に応答して基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの測定を開始して、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各3次元形状を表す情報、および基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光の光量を表す情報を3次元画像データ処理装置43に出力する。すなわち、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)、および基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光に関する情報(具体的には、反射光量R)を3次元画像データ処理装置43にそれぞれ出力する。
【0085】
そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS516にて、3次元形状測定装置10’から出力されたX−Y−Z座標に関する情報および反射光に関する情報に基づいて、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データには、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面をそれぞれ微小エリアごとに表す3次元形状データに、各エリア位置に対応する反射光量Rを表す反射光量データが付加されている。なお、3次元形状データは、3次元形状測定装置10’に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。また、この3次元形状データ中には、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bのほかに同基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60’の上面)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0086】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS518にて、ワイヤ21’の先端部21a’の先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS512にて基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bを測定した3次元形状測定装置10’の位置におけるワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、ワイヤ装置座標系W、すなわち基準座標系Sにおける先端部21a’の先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0087】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS520にて、前記ステップS516にて生成された3次元形状データの中から、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す各3次元形状データをそれぞれ抽出する。これらのうち、基準物体70’の3次元形状を表す3次元形状データの抽出処理は、上記第1実施形態と同様に、図示しない基準物体抽出サブプログラムによって実行される。また、テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データは、前記ステップS516にて生成された3次元形状データにおける反射光量データを用いてそれぞれ抽出する。すなわち、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているテーブル60’の2つの面60’a,60’bからの各反射光の光量に一致する、または所定の判別値内に含まれる前記反射光量データに対応する3次元形状データを各面60’a,60’bごとに抽出する。
【0088】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS522にて、前記ステップS520にて抽出した基準物体70’を表す3次元形状データを用いて定点座標を算する。具体的には、上記第1実施形態と同様に、前記抽出した3次元形状データを前記式1の左辺にそれぞれ代入し、最小2乗法を用いて未知数a、b、cを定点として計算する。これにより、カメラ座標系Cにおける基準物体70’の中心座標が定点として計算される。なお、前記式1においてdは、基準物体70’の半径を表すが、このステップS518の処理においては計算する必要はない。
【0089】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS524にて、前記ステップS520にて抽出したテーブル60’の2つの面60’a,60’bをそれぞれ表す各3次元形状データを用いて各面60’a,60’bごとに各法線ベクトルαC60’,βC60’を計算する。具体的には、上記第1実施形態と同様に、前記ステップS520にて生成した各面60’a,60’bごとの各3次元形状データを前記式17の左辺にそれぞれ代入して、最小2乗法を用いて未知数a、b、c、dをそれぞれ計算する。各面60’a,60’bごとに計算した未知数a、b、c、dのうち、未知数a、b、cが各面60’a,60’bに対応する法線ベクトルαC60’,βC60’のベクトル成分を表す。
【0090】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS526にて、前記ステップS510にて計算した基準座標系Sによって表された定点座標を、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。具体的には、前記ステップS514にて計算した回転成分MPSの逆関数MSPと、前記ステップS518にて検出したワイヤ21’の先端座標、すなわちワイヤ先端座標系Pと基準座標系Sとの原点ずれ(座標値)とから構成される座標変換関数FSPを用いて、前記ステップS510にて計算した基準座標系Sによって表された定点座標を、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。これにより、基準物体70’に対して、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標と、カメラ座標系Cによって表された定点座標とが計算されたことになる。
【0091】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS528にて、原点ずれ成分GCPを計算する。具体的には、前記ステップS524にて計算した2つの法線ベクトルαC60’,βC60’のうち、一方の法線ベクトルαC60’(または法線ベクトルβC60’)の単位ベクトルをベクトルAとし、同2つの法線ベクトルαC60’,βC60’の外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルBとし、これらのベクトルA,Bの外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルCとしてそれぞれ計算する。これら3つのベクトルA,B,Cは、前述したベクトルA,B,Cと同一である。
【0092】
したがって、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cにおける各ベクトル成分AC,BC,CCを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、同ベクトルのA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MCPを計算することができる。この場合、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、ベクトルA,B,Cの向きと同一である。よって、ワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPである(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)は、それぞれ(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)であり、カメラ座標系Cにおける各成分AC,BC,CCである(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)は、2つの法線ベクトルαC60’,βC60’の各成分から前述のように既に計算されている。
【0093】
そして、計算した回転成分MCPを前記式2におけるMに代入し、カメラ座標系Cによって表された定点座標を同式2におけるx、y、zに代入し、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標を同式2におけるx’、y’、z’にそれぞれ代入すれば、両座標系における原点ずれ成分GCPが同式2におけるa,b,cとして計算される。この原点ずれ成分GCPは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS530にて、回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行を終了する。
【0094】
この回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行後、作業者は、図10に示すように、テーブル60’から基準物体70’を取り除いて、同テーブル60’上に測定対象物であるワークWKを配置する。そして、入力装置42を操作してワークWKの3次元立体形状の表示を指示する。この指示に応答して、3次元画像データ処理装置43は、図14に示す3次元形状表示プログラムの実行をステップS600にて開始して、ステップS602にてワークWKの3次元形状を表す測定情報の入力を待つ。
【0095】
作業者は、3次元形状測定装置10’が取り付けられた3次元形状測定装置支持脚80を移動させることにより、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の引出し量Lの変化を伴いながら、ワークWKに対して3次元形状測定装置10’を移動させて3次元形状測定装置支持脚80を固定させて3次元形状の測定を行う。この場合、作業者は、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内にワークWKとともにテーブル60’の2つの面60’a,60’bが位置するように3次元形状測定装置支持脚80、すなわち3次元形状測定装置10’を位置決めする。したがって、3次元画像データ処理装置43には、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内に存在するワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bに関する測定情報が出力される。すなわち、前記ステップS512と同様に、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)、およびワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光に関する情報(具体的には、反射光量R)がそれぞれ出力される。
【0096】
そして、3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10’からのX−Y−Z座標に関する情報の入力が終了すると、同ステップS602にて、3次元形状測定装置10’から出力されたX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データには、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面をそれぞれ微小エリアごとに表す3次元形状データに、各エリア位置に対応する反射光量Rを表す反射光量データが付加されている。なお、3次元形状データは、3次元形状測定装置10’に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。また、この3次元形状データ中には、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bのほかに同基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60’の上面)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0097】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS604にて、ワイヤ21’の先端部21a’の先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS602にてワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bを測定した3次元形状測定装置10’の位置におけるワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、ワイヤ装置座標系W、すなわち基準座標系Sにおける先端部21a’の先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0098】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS606にて、前記ステップS602にて生成された3次元形状データの中から、テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データをそれぞれ抽出する。テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データは、前記ステップS516と同様に、3次元形状データにおける反射光量データを用いてそれぞれ抽出される。すなわち、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているテーブル60’の2つの面60’a,60’bからの各反射光の光量に一致する、または所定の判別値内に含まれる前記反射光量データに対応する3次元形状データを各面60’a,60’bごとに抽出する。
【0099】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS608にて、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FCPを計算する。この場合、座標変換関数FCPにおける原点ずれ成分GCPは、前記回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行により3次元画像処理装置43に記憶されているため、座標変換関数FCPにおける座標軸の回転成分MCPを計算する。この回転成分MCPの計算は、前記ステップS514およびステップS528における回転成分MCPの計算と同様の処理によって行われる。
【0100】
すなわち、前記ステップS606にて抽出したテーブル60’の2つの面60’a,60’bをそれぞれ表す各3次元形状データを用いて各面60’a,60’bごと各法線ベクトルαC60’,βC60’を計算し、ベクトルA,B,Cを計算する。そして、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MCPを計算する。この計算された回転成分MCPと前記記憶した原点ずれ成分GCPとによって座標変換関数FCPが計算される。
【0101】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS610にて、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FPSを計算する。この場合、座標変換関数FPSにおける回転成分MPSは、前記回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行により3次元画像処理装置43に記憶されているため、座標変換関数FPSにおける原点ずれ成分GPSを計算する。具体的には、前記ステップS604にて検出したワイヤ21’の先端部21a’の先端座標が原点ずれ成分GPSとなる。したがって、この原点ずれ成分GPSと前記記憶した回転成分MPSとによって座標変換関数FPSを計算することができる。すなわち、前記ステップS604にて検出したワイヤ21’の先端部21a’の先端座標は、基準座標系Sにおける3次元形状測定装置10’の位置、より具体的には、カメラ座標系Cの位置を特定するために用いられる。
【0102】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS612にて、前記ステップS602にて生成されカメラ座標系Cによって表された3次元形状データを、前記ステップS608にて計算した座標変換関数FCPを用いて、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS614にて、前記ワイヤ先端座標系Pに座標変換された3次元形状データを、前記ステップS610にて計算した座標変換関数FPSを用いて基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する。すなわち、これらのステップS612およびS614によって、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データが基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換される。
【0103】
なお、この場合、座標変換関数FCPと座標変換関数FPSとを乗算(FCP・FPS)した座標変換関数FCSを計算し、この座標変換関数FCSを用いてカメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換しても結果は同じである。すなわち、座標変換関数FCPが本発明に係る第4の座標変換関数に相当し、座標変換関数FPSが本発明に係る第5の座標変換関数に相当する。この基準座標系Sに座標変換された3次元形状データは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0104】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS616にて、ワークWKを別の測定位置から測定するか否かを判定する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、ワークWKの測定を続行するか否かを作業者に問い合わせ、作業者から測定終了の指示が入力されるまで、同判定において「Yes」と判定してステップS602に戻る。この場合、作業者はワークWKに対する3次元形状測定装置10’の測定位置を変えて再度測定を行う。これにより、前記とは異なる測定位置からワークWKを測定した際の3次元形状データが3次元画像データ処理装置43に記憶される。一方、作業者から測定終了の指示が入力された場合には、同判定において「No」と判定してステップS618に進む。
【0105】
なお、異なる位置からワークWKを測定する場合、各測定位置ごとに座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSが計算される。これは、座標変換関数FCPにおける回転成分MCPと座標変換関数FPSにおける原点ずれ成分GPSが、3次元形状測定装置10’の測定位置に応じて変化するためである。すなわち、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、テーブル60’の2つの面60’a,60’bによって3次元形状測定装置10’の向きとは無関係に固定的に定義されるため、3次元形状測定装置10’の向きが変化するごとにカメラ座標系Cに対するワイヤ先端座標系Pの回転成分MCPを計算する必要があり、ワイヤ先端座標系Pの座標軸原点は3次元形状測定装置10’の位置により変化するため、3次元形状測定装置10’の位置が変化するごとに基準座標系Sに対するワイヤ先端座標系Pの原点ずれ成分GPSを計算する必要があるためである。
【0106】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS618にて、各測定位置ごとに基準座標系によって表された3次元形状データを一組の3次元形状データ群に合成する。この合成においては、すべての測定位置における3次元画像データが同一座標系である基準座標系S上の座標値で表されているので、各測定位置によって測定されないワークWKの部分を表す3次元形状データが互いに補われるとともに、同一場所で複数の3次元形状データ群が存在する場合には、平均化の処理が行われ一組のデータ群とされる。
【0107】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS620にて、前記合成された3次元形状データ群を用いてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS622にて、3次元形状表示プログラムの実行を終了する。このワークWKの3次元形状の表示においては、作業者は入力装置42を操作することによりワークWKの表示方向を指示することができ、コントローラ41および3次元画像データ処理装置43は表示装置44にて表示されるワークWKの表示方向を変更する。これにより、ワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示させることができる。
【0108】
また、新たなワークWKをテーブル60上に置いて、前述のようにワークWKの表示を指示して3次元形状測定装置10’による測定を行えば、前記3次元形状表示プログラムの実行により基準座標系Sによる3次元形状データの生成と3次元形状データの合成とが行われ、新たなワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示装置44に表示させることができる。すなわち、基準物体70’およびテーブル60’を用いて座標変換関数FPSの回転成分MPSおよび座標変換関数FCPの原点ずれ成分GCPを一度だけ計算しておけば、ワイヤ装置20’(すなわち、基準座標系S)やテーブル60の位置を変位させない限り、ワークWKを次々に換えて表示装置44にて立体形状を表示させることができる。
【0109】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、ワイヤ装置20’によって検出されるワイヤ21’の引出し量Lおよび同ワイヤ21’の引き出される方向を表す回転角θX,θYを用いて、基準座標系Sにおける3次元形状測定装置10’の位置、より具体的にはカメラ座標系Cの位置を特定するとともに、テーブル60’の2つの面60’a,60’bを用いて、基準座標系Sに対する前記ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きを特定して、座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算している。これにより作業者は、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内にワークWKとともにテーブル60’を配置するようにし、基準座標系Sにおいて位置が特定できるワイヤ21’の先端部21’aを同3次元形状測定装置10’に接続した構成で測定を行えば、3次元画像データ処理装置43は測定により得られた3次元形状データを基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換して合成し、ワークWKの3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、上記第1実施形態と同様に、従来例における支持機構に比べて簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、この第2実施形態においては、1つのワイヤ装置20’を用いて3次元形状測定システムを構成しているため、上記第1実施形態と比べてより簡単に3次元形状測定システムを構成することができる。
【0110】
なお、上記第2実施形態においては、ワークWKの3次元立体形状の測定に際して3次元形状測定装置10’を3次元形状測定装置支持脚80上に固定した。これは、前記ステップS610およびステップS612にて計算される座標変換関数FPSおよび座標変換関数FCPは、3次元形状測定装置10’の測定位置固有の座標変換関数であるため、ワークWKの測定中(レーザ光の走査中)における3次元形状測定装置10’の位置を固定するためである。したがって、ワークWKの測定中(レーザ光の走査中)における3次元形状測定装置10’の位置を変化させなければ、上記第1実施形態と同様に3次元形状測定装置10’を手で持って測定するようにしてもよい。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0111】
また、上記第2実施形態においては、座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSの計算に用いる2つのベクトルα60’a,β60’bを、テーブル60’を構成する2つの面60’a,60’bを用いてそれぞれ定義した。しかし、基準物体70’およびワークWKと同時に測定できるとともに、互いに平行でない2つのベクトルが定義できれば、これに限定されるものではない。例えば、図15(A)〜(D)に示すように、ワークWK(および基準物体70’)の近傍に互いに平行でない2つの平面90a,90bを設けるようにすればよい。
【0112】
また、図16(A)に示すように、1つの平面90a上に同平面90aとは異なる反射率によって形成された直線91aを設けるようにしてもよい。この場合、3次元画像データ処理装置43は、上記第2実施形態と同様にして、平面90aを表す3次元形状データに基づいて1つのベクトルを計算するとともに、3次元形状測定装置10’から出力される測定情報の中から反射光量データに基づいて直線91aに関する3次元形状データを抽出し、同抽出した3次元形状データに基づいてもう1つのベクトルを計算する。また、図16(B)に示すように、1つの平面90a上に互いに異なる反射率によって形成された2つの直線91a,91bを設け、これら2つの直線91a,91bを用いて2つのベクトルを定義するようにしてもよい。図においては、これらの各直線91a,91bの反射率の違いを各直線上の模様の違いによって表している。これらによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0113】
また、上記第2実施形態においては、1つの定点を定義するための基準物体70’と2つのベクトルα60’a,β60’bを定義するための2つの面60’a,60’bを備えるテーブル60’とをそれぞれ用意した。しかし、ワークWKの測定時に障害にならなければ基準物体70’を2つの面60’a,60’bと一体的に構成してもよい。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0114】
また、上記第2実施形態においては、2つのベクトルα60’a,β60’bを定義するための2つの面60’a,60’bを互いに直交するように構成した。しかし、互いに平行でない2つのベクトルをそれぞれ定義できれば、2つの面60’a,60’bは必ずしも直交する必要はない。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0115】
また、上記第2実施形態においては、基準座標系Sをワイヤ装置20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系W’とした。しかし、これに代えて、基準座標系Sの原点をワイヤ装置座標系W’と同一とし、基準座標系Sの座標軸の向きをワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きと同一とした座標系を基準座標系Sとしてもよい。これによれば、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに変換する座標変換関数FPSのうち、回転成分MPSが不要となる。このため、座標変換関数FPSは、原点ずれ成分GPSとなり、座標変換関数FPSの計算を簡単にすることができる。
【0116】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1実施形態および第2実施形態およびこれらの変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0117】
上記第1実施形態および第2実施形態においては、ワイヤ装置20A,20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系WA,Wを基準座標系Sに設定した。しかし、この基準座標系Sは、ワイヤ装置20A,20B,20C,20’から引き出されるワイヤ21A,21B,21C,21’の各先端部ワイヤ21aA,21aB,21aC,21a’の位置が特定できれば、これに限定されるものではない。例えば、ワイヤ装置20A,20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系WA,W’によって特定することができるワイヤ装置支持脚30,30’上のいずれかの位置に基準座標系Sの原点を設定してもよい。また、図17に示すように、基準座標系Sに対するワイヤ装置座標系WAの原点位置と座標軸の向きとを検出する機構を設けるようにしてもよい。図17は、ワイヤ装置座標系WA以外の位置に基準座標系Sの原点を設定した3次元形状測定システムを示している。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。
【0118】
この3次元形状測定システムにおいては、リング状に設けられたレール100に沿って摺動可能な移動体101上にワイヤ装置支持脚31’が固定されている。ワイヤ装置支持脚31’上には、上記第1実施形態と同様に3つのワイヤ装置20A,20B,20Cがそれぞれ設けられているとともに、同3つのワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCに3次元形状測定装置10が接続されている。リング状に形成されたレール100の中心位置は既知であり、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されている。このレール100の所定の位置(例えば、図示矢印の示す位置)における断面中心に基準座標系Sの原点が設定されている。また、レール100には、基準座標系Sが設定された位置に対する移動体101のレール100上の位置を検出する位置検出器(図示せず)が設けられており、検出した移動体101の位置を表す信号が3次元画像データ処理装置43に出力されるようになっている。
【0119】
そして、移動体101の検出位置を原点とし、座標軸の向きが移動体101の検出位置からレール100の中心に向かうベクトルとレール100の接線方向のベクトルと、この2つのベクトルに垂直なベクトルの3つのベクトルの向きと同一である座標軸を設定した場合、移動体101の検出位置からワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の原点に向かうベクトルは常に同一であり、前記座標軸の向きに対するワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の座標軸の向きも常に同一であり、このベクトル成分および前記座標軸の向きをワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の座標軸の向きにするための座標変換関数の回転成分は3次元画像データ処理装置43に予め記憶されている。そして、基準座標系Sにおける移動体101の検出位置から基準座標系Sの原点に向かうベクトルは計算でき、前述のようにレール100の中心位置は既知であるので、移動体101の検出位置からレール100の中心に向かうベクトルと、レール100の接線方向のベクトルは移動体101の位置を検出すれば計算できる。すなわち、ワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による座標値を移動体101の検出位置を原点とした座標軸による座標値に変換するための座標変換関数は記憶されており、移動体101の検出位置を原点とした座標軸による座標値を基準座標系Sの座標値に変換するための座標変換関数は、移動体101の検出位置を検出すれば計算できる。すなわち、移動体101の検出位置を検出すれば、ワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による3次元形状データは基準座標系Sによる3次元形状データに変換することができる。
【0120】
ワークWKの測定に先立って作業者は、リング状に形成されたレール100の内側に基準物体70A,70B,70Cを配置(図示せず)して、上記第1形態と同様にして座標変換関数FSPおよび座標変換関数FCPを計算する。そして、レール100の内側に基準物体70A,70B,70Cに代えてワークWKを配置(図示せず)してワークWKの測定を行う。この場合、移動体101をレール100に沿って移動させることにより、ワークWKを全周に亘って測定することができる。3次元形状測定装置10によって測定され3次元画像データ処理装置43によって生成された3次元形状データは、座標変換関数FCPによりワイヤ先端座標系Pによる3次元形状データに座標変換された後、座標変換関数FPSによりワイヤ装置座標系WAによる3次元形状データに座標変換される。
【0121】
そして、このワイヤ装置座標系WAによって表された3次元形状データは、前記位置検出器によって検出される移動体101の位置から計算される移動体101の検出位置を座標軸原点とした座標値を基準座標系Sの座標値に変換するための座標変換関数と、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による座標値を、移動体101の検出位置を座標軸原点とした座標値に変換するための座標変換関数により、基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換される。3次元画像処理装置43は、この基準座標系Sによって表された3次元画像データに基づいてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。これによれば、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が期待できるとともに、上記第1実施形態および第2実施形態に比べてワークWKをより広い範囲、例えば、3次元形状測定装置10に対向する測定対象物の裏側の部分から測定することができる。なお、この場合、ワイヤ装置支持脚31’の図示上下方向の長さを変化させることができる構成にすれば、3次元形状測定装置10を移動させることができる範囲を更に広くすることができ、高さのあるワークWKも測定することができる。また、いかなる測定方向からも共通の互いに平行でない2つのベクトルが定義できれば、上記第2実施形態に示したように、1つのワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aを3次元形状測定装置10’に接続した構成としてもよい。
【0122】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、3次元形状測定装置10,10’とワイヤ装置20A,20B,20C,20’とをワイヤ21A,21B,21C,21’で接続した。しかし、ワイヤ装置20A,20B,20C,20’、すなわち、本発明に係る支持装置から引き出される量、引き出される方向が特定できる部材であれば、ワイヤに限定されるものではない。例えば、互いに外径が異なる複数の筒体を同心円状に配置して、各筒体がより大きな外径の筒体内から出没することにより長さが伸縮自在の部材を接続部材として用いるようにしてもよい。この場合、接続部材の引き出される量および引き出される方向を上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様にして検出する検出器を、接続部材を支持する支持装置に設ける。これによっても、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
【0123】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、基準物体70A,70B,70C,70’として球体を用いたが、3次元形状測定装置10による測定によって生成される3次元形状データにより所定の位置を定点として定義できるものであれば、基準物体70A,70B,70C,70’の大きさおよび形状等は特に限定されるものではない。例えば、楕円状の球体、角柱、角錐、円柱、円錐および多面体などの形状により形成された基準物体70A,70B,70C,70’、またはこれらの形状を含む形状に形成された基準物体70A,70B,70C,70’を用いてもよい。また、基準物体70A,70B,70C,70’の表面に同表面と識別可能なマークを形成し同マークを抽出して定点を計算するようにしてもよい。これによっても、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元形状測定システムの全体を示す概略図である。
【図2】図1の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置とワイヤとの接続状態を説明するための断面図である。
【図3】図1の3次元形状測定システムにおけるワイヤ装置を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態において触針によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図5】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FWS計算プログラムのフローチャートである。
【図6】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FCP計算プログラムのフローチャートである。
【図7】図1の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図8】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FSP計算プログラムのフローチャートである。
【図9】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される3次元形状表示プログラムのフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る3次元形状測定システムの全体を示す概略図である。
【図11】第2実施形態において触針によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図12】図10の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムのフローチャートである。
【図13】図10の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図14】図10の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される3次元形状表示プログラムのフローチャートである。
【図15】(A)〜(D)は第2実施形態における変形例を示す斜視図である。
【図16】(A),(B)は第2実施形態における他の変形例を示す斜視図である。
【図17】第1実施形態における変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0125】
WK…ワーク、10…3次元形状測定装置、13…球体、20A,20B,20C…ワイヤ装置、21A,21B,21C…ワイヤ、21aA,21aB,21aB…先端部、22A,22B,22C…外筒、30…ワイヤ装置支持脚、41…コントローラ、42…入力装置、43…3次元画像データ処理装置、44…表示装置、50…触針、60…テーブル、70A,70B,70C…基準物体、80…3次元形状測定装置支持脚
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元形状測定装置により複数の異なる位置で測定した測定対象物の各座標系における3次元形状データ群を1つの基準座標系における3次元形状データ群に変換して、同測定対象物の3次元形状を任意の方向から見た形状に表示させることが可能な3次元形状測定システムおよび3次元形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定対象の物体に対し測定位置が移動される3次元形状測定装置により、測定対象物の3次元形状を複数の異なる位置から測定して各測定位置ごとの3次元形状データを合成し、測定対象物の立体形状を任意の方向から見て表示できるようにした3次元形状測定システムはよく知られている。例えば、下記特許文献1に記載の3次元形状測定システムにおいては、複数のアームを互いに可動的に連結して構成される支持機構の先端部に測定対象物の3次元形状を測定する3次元形状測定装置が取り付けられている。そして、作業者は、支持機構の可動範囲内において3次元形状測定装置を複数の位置に移動させ、各位置ごとに測定対象物の測定を行う。
【特許文献1】特開2004−257927号公報
【0003】
この場合、各測定位置ごとに3次元形状測定装置によって測定された測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データは、支持機構の先端部に関する座標系を介して基準座標系による3次元形状データに座標変換される。支持機構の先端部に関する座標系は、支持機構の先端部に取り付けられた3次元形状測定装置の基準座標系に対する座標軸原点の位置および座標軸の向きを特定するための座標系である。この支持機構の先端部に関する座標系の基準座標系に対する原点の位置および座標軸の向きは、支持機構を構成する各アームの長さ、各アーム間の角度および各アーム間のねじれ角などを用いて検出される。
【0004】
しかしながら、このような3次元形状測定システムにおいては、3次元形状測定装置を支持する支持機構が大型かつ複雑な構成となっているため、3次元形状測定システムの構成を大型かつ複雑化するという問題がある。すなわち、3次元形状測定装置を支持する支持機構は、基準座標系に対する3次元形状測定装置の位置および向きを正確に特定するため精度よく製作する必要があるとともに、3次元形状測定装置を安定的に支持するための剛性を確保する必要があるため、構成が大型かつ複雑となる。また、3次元形状測定装置の可動範囲は測定対象物の大きさに応じて設定されるため、形状の大きな測定対象物を測定する場合には可動範囲の広い支持機構を用意しなければならない。この場合、可動範囲が広くなるほど支持機構の構成がより大型かつ複雑化して3次元形状測定システムの構成がさらに大型かつ複雑化するという問題がある。
【発明の開示】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、従来例のような支持機構に比べて、簡単かつ小型な構成で測定対象物の3次元形状を測定することが可能な3次元形状測定システムおよび3次元形状測定方法を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、測定対象物の3次元形状を測定して同測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを出力する3次元形状測定装置と、基端部にて支持装置により引出し量および引出し方向が自在に支持され、かつ先端部に3次元形状測定装置を接続する接続部材と、接続部材の支持装置に対する引出し量および引出し方向を用いて、所定の基準座標系に対する3次元形状測定装置の少なくとも位置を表す位置情報を取得する情報取得手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記取得した位置情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するデータ変換手段と、データ変換手段によって変換された複数組の3次元形状データを合成する合成手段とを備えたことにある。この場合、前記支持装置は、接続部材の引出し量および引出し方向を検出する検出器を備えるとよい。また、接続部材を、ワイヤにするとよい。
【0007】
この場合、前記所定の基準座標系の原点および座標軸の向きは、支持装置を基準に定められており、前記情報取得手段は、前記位置情報に加えて、前記所定の基準座標系に対する3次元形状測定装置の向きを表す向き情報も取得するとよい。この場合、前記接続部材は、少なくとも3つ用意するとよい。また、前記データ変換手段は、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記位置情報および前記向き情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するための第1の座標変換関数を計算する第1の座標変換関数計算手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、第1の座標変換関数を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに座標変換する座標変換手段とを備えるようにするとよい。この場合、第1の座標変換関数計算手段は、3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第2の座標変換関数と、接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第3の座標変換関数とを第1の座標変換関数として計算するようにするとよい。
【0008】
また、これに代えて、3次元形状測定装置は、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データに加え、3次元形状測定装置の測定対象空間内に配置された基準物体の3次元形状を表す3次元形状データも出力するものであり、前記所定の基準座標系の原点は支持装置を基準に定められ、かつ基準座標系の座標軸の向きは基準物体を基準に定められるものであり、データ変換手段は、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記取得した位置情報に加え基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するようにしてもよい。この場合、前記接続部材は、少なくとも1つ用意するとよい。また、前記データ変換手段は、基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて基準物体に関係した座標軸の向きを計算し、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記計算した座標軸の向きと同じ座標軸を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第4の座標変換関数を計算する第4の座標変換関数計算手段と、測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記所定の基準座標系の原点と同じ原点を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第5の座標変換関数を計算する第5の座標変換関数計算手段と、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記計算した第4および第5の座標変換関数を用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する座標変換手段とで構成するとよい。この場合、前記第4の座標変換関数は、3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換し、前記第5の座標変換関数は、接続部材の先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに座標変換するとよい。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、支持装置から引き出される接続部材の先端部を3次元形状測定装置に接続している。そして、3次元形状測定装置によって測定対象物を測定する基準座標系における位置を接続部材の引出し量および引出し方向によって特定している。すなわち、基準座標系において3次元形状測定装置の位置が特定できる接続部材の先端部を3次元形状測定装置に接続した構成で測定対象物の3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、従来例のような大型かつ複雑な構成の支持機構を用いることなく、簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、測定対象物の大きさに応じて接続部材の長さを設定すればよいので、形状の大きな測定対象物を測定する場合であっても3次元形状測定システムを簡単かつ小型に構成することができる。
【0010】
また、上記3次元形状測定システムにおいて、さらに、前記所定の基準座標系は、前記支持装置の所定の位置に基づいて定められており、前記所定の基準座標系に対して支持装置を移動させる支持装置移動手段と、前記所定の基準座標系によって表された支持装置の位置を検出する支持装置位置検出手段とを備え、データ変換手段は、前記取得された位置情報に加え、支持装置位置検出手段によって検出される支持装置の位置を用いて、3次元形状測定装置から出力される3次元形状データを、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するようにしてもよい。これによれば、基準座標系における支持装置の位置が検出されるため、測定対象物を複数の位置から測定する場合、3次元形状測定装置とともに支持装置も移動させることができ、3次元形状測定装置の移動範囲が拡大し測定対象物をより広範囲から測定することができる。したがって、例えば、3次元形状測定装置に対向する測定対象物の裏側の部分も3次元形状測定装置とともに支持装置を移動させることにより測定することができる。
【0011】
また、本発明は前記3次元形状測定システムに限定されるものではなく、3次元形状測定方法によっても実施できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る3次元形状測定システムの基本構成を示す概略図である。この3次元形状測定システムは、測定対象物であるワークWKの3次元形状を測定する3次元形状測定装置10を備えている。
【0013】
3次元形状測定装置10は、箱型に形成されており、ワークWKに向けてレーザ光を出射するとともに同ワークWKからの反射光を受光して、ワークWKの3次元立体表面形状を測定して同測定結果を表す測定情報を出力する。この3次元形状測定装置10としては、ワークWKの3次元表面形状を測定するとともに同測定した3次元表面形状を表す信号を出力するものであれば、いかなる3次元形状測定装置をも利用できる。本実施形態においては、レーザ光を用いて3角測量法に従って物体の3次元表面形状を測定するものを簡単に紹介しておく。
【0014】
この3次元形状測定装置においては、レーザ光源から物体に向けて出射されるレーザ光の進行方向にほぼ垂直な仮想平面を想定するとともに、同仮想平面上にて互いに直交するX軸方向およびY軸方向に沿って分割した多数の微小エリアを想定する。そして、3次元形状測定装置は、前記多数の微小エリアにレーザ光を順次照射し、物体からの反射光によって前記微小エリアが規定する物体表面までの距離をZ軸方向距離として順次検出して、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX,Y,Z座標に関する情報を得て、同3次元形状測定装置に面した物体表面の形状を測定するものである。
【0015】
したがって、この3次元形状測定装置は、出射レーザ光の向きをX軸方向に変化させるX軸方向走査器と、出射レーザ光の向きをY軸方向に変化させるY軸方向走査器と、物体表面にて反射された反射レーザ光を受光して物体表面までの距離を検出する距離検出器とを備えている。X軸方向走査器およびY軸方向走査器としては、レーザ光源からの出射レーザ光の光路をX軸方向およびY軸方向に独立に変化させ得る機構であればよく、例えば、レーザ光源自体をX軸方向およびY軸方向の軸線回りに電動モータによって回転させたり、出射レーザ光の光路に設けられてその方向を変更するガルバノミラーをX軸方向およびY軸方向の軸線回りに電動モータによって回転させる機構を利用できる。距離検出器としては、前記出射レーザ光の光路に追従して回転し、物体表面にて反射された反射レーザ光を集光する結像レンズおよび同集光したレーザ光を受光するCCDなどの複数の受光素子を一列に配置させたラインセンサからなり、ラインセンサによる反射レーザ光の受光位置によって物体表面までの距離を検出する機構を利用できる。
【0016】
したがって、このような3次元形状測定装置は、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX,Y,Z座標に関する情報として、X軸方向走査器による出射レーザ光の基準方向に対するX軸方向への傾きθx、Y軸方向走査器による出射レーザ光の基準方向に対するY軸方向への傾きθy、および距離検出器による物体表面までの距離Lzとが、前記仮想したX軸方向およびY軸方向に沿って分割した多数の微小エリアごとに出力される。より具体的には、X軸およびY軸方向への傾きθx,θyは、電動モータの基準位置からの回転角である。また、物体表面までの距離Lzは、ラインセンサにおける反射レーザ光の受光位置である。
【0017】
この3次元形状測定装置10の底面には、円柱状の把持部11が設けられており、作業者による把持部11の把持により3次元形状測定装置10を任意の位置に移動させることができる。また、3次元形状測定装置10の背面、具体的には、3次元形状測定装置10におけるレーザ光が出射される側面に対向する側面には、3つのワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されたワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCがそれぞれ接続されている。具体的には、図2に示すように、3次元形状測定装置10の背面には、内周面が球面状に形成された3つの穴部12A(12B,12C)がそれぞれ設けられている。なお、図2は、穴部12Aを示しているが他の穴部12B,12Cも穴部12Aと同様である。これらの穴部12A(12B,12C)には、同穴部12A(12B,12C)の内径より小径の球体13A(13B,13C)が、その表面の一部を露出させた状態で、かつ摺動可能な状態で埋め込まれている。
【0018】
この球体13A(13B,13C)における3次元形状測定装置10の背面から露出した表面部には、球体13A(13B,13C)の中心部に向けて雌ネジ13aA(13aB,13aC)が設けられており、この雌ネジ13aA(13aB,13aC)に、ワイヤ21A(21B,21C)の各先端部21aA(21aB,21aC)に設けられた雄ネジ21bA(21bB,21bC)が螺合している。したがって、3次元形状測定装置10の背面に対するワイヤ21A(21B,21C)の向きに応じて球体13A(13B,13C)は、穴部12A(12B,12C)内において回転摺動する。なお、3次元形状測定装置10の背面に設けられた穴部12A,12B,12Cは、それぞれ同一直線上に位置しないように、すなわち、各穴部12A,12B,12Cがそれぞれ三角形の頂点を形成するように配置されている。
【0019】
ワイヤ装置20A,20B,20Cは、円筒状に形成された外筒22A,22B,22C内に収容された所定の長さのワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θX,θYを検出して、同引出し量Lおよび各回転角θX,θZを表す信号をそれぞれ出力する。これらのワイヤ装置20A,20B,20Cは、それぞれ同一の構成であるため、図3に示すワイヤ装置20Aについて説明する。外筒22A(22B,22C)は、ゼンマイバネによりロール状に巻かれたワイヤ21A(21B,21C)を収容する大径部22aA(22aB,22aC)と、同大径部22aA(22aB,22aC)より小径に形成された小径部22bA(22bB,22bC)とから構成されている。
【0020】
これらのうち、大径部22aA(22aB,22aC)の外周部における中央部には、その内部に収容されたワイヤ21A(21B,21C)を引き出すための孔部22cA(22cB,22cC)が設けられている。また、大径部22aA(22aB,22aC)内には、ワイヤ21A(21B,21C)の引出し量Lを検出して同引出し量Lを表す信号を出力するリニアエンコーダ23A(23B,23C)が組み込まれている。一方、小径部22bA(22bB,22bC)内には、外筒22A(22B,22C)の軸線方向の回転角θXを検出して同回転角θXを表す信号を出力するエンコーダ24A(24B,24C)が組み込まれている。この外筒22A(22B,22C)は、水平方向に配置された支持軸25A(25B,25C)に同支持軸25A(25B,25C)回りに回転可能な状態で支持されている。すなわち、小径部22bA(22bB,22bC)内に組み込まれるエンコーダ24A(24B,24C)は、大径部22aA(22aB,22aC)の孔部22cA(22cB,22cC)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の引き出される方向のうち、支持軸25A(25B,25C)回りの回転角を検出する。
【0021】
支持軸25A(25B,25C)の両端部は、略U字状に形成された支持アーム26A(26B,26C)の両端部にそれぞれ支持されている。この支持アーム26A(26B,26C)の中央部は、垂直方向に配置された回転軸27A(27B,27C)の上面に固定されている。回転軸27A(27B,27C)は、その軸線回りに回転可能な状態で基台28A(28B,28C)に支持されている。すなわち、ワイヤ21A(21B,21C)を収容する外筒22A(22B,22C)は、回転軸27A(27B,27C)の軸線回りにも回転するように構成されている。基台28A(28B,28C)内には、回転軸27A(27B,27C)の軸線回りの回転角θZを検出して同回転角θZを表す信号を出力するエンコーダ29A(29B,29C)が組み込まれている。すなわち、エンコーダ29A(29B,29C)は、大径部22aA(22aB,22aC)の孔部22cA(22cB,22cC)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の引き出される方向のうち、回転軸27A(27B,27C)回りの回転角を検出する。
【0022】
これらの引出し量Lおよび回転角θX,θZによって、ワイヤ装置20A(20B,20C)から引き出されるワイヤ21A(21B,21C)の先端部21aA(21aB,21aC)の先端の位置、すなわち、同先端部に接続される3次元形状測定装置10の位置を特定することができる。この場合、ワイヤ21A(21B,21C)の先端部21aA(21aB,21aC)の先端の位置とは、ワイヤ21A(21B,21C)の軸線上における先端部21aA(21aB,21aC)の先端の点からワイヤ21A(21B,21C)の軸線方向に球体13A(13B,13C)の半径長さ分移動した点である。後述する3次元画像データ処理装置43のメモリ装置内に球体13A(13B,13C)の半径長さが記憶されたおり、検出した引出し量Lにこの半径長さを追加した量を引出し量Lとする。そして、この先端の位置は、回転軸27A(27B,27C)回りの回転角を0°とするときの支持軸25A(25B,25C)の軸線をX軸とし、回転軸27A(27B,27C)の軸線をZ軸とし、同X軸とZ軸との交点を通るとともに同X軸およびZ軸に直交する軸線をY軸とする3次元座標系(以後、「ワイヤ装置座標系WA(WB,WC)」という)による座標によって表される。
【0023】
ワイヤ装置20A,20B,20Cは、柱状のワイヤ装置支持脚30の上部にそれぞれ固定されている。ワイヤ装置支持脚30は、垂直方向に設けられた支柱31の上部にワイヤ装置20A,20B,20Cを載置して固定する載置台32A,32Bを備えるとともに、支柱31の下部に三方に延びる脚33A,33B,33Cを有する脚部34を備えている。したがって、ワイヤ装置20A,20B,20Cは、ワイヤ装置支持装置30を移動させることによって、任意の位置に移動させることができる。
【0024】
これらの3次元形状測定装置10およびワイヤ装置20A,20B,20Cには、コントローラ41が接続されている。コントローラ41は、キーボードからなる入力装置42からの指示に従って、3次元形状測定装置10の作動を制御する。また、コントローラ41は、入力装置42からの指示に従って3次元画像データ処理装置43の作動を制御するとともに、同入力装置42にて入力されたデータを3次元画像データ処理装置43に供給する。
【0025】
3次元画像データ処理装置43は、コンピュータ装置によって構成され図5,図6および図8に示す各プログラムを実行することにより座標変換関数を計算するとともに、図9に示すプログラムを実行することにより、3次元形状測定装置10からの3次元形状に関する情報(立体形状データ群)、ワイヤ装置20A,20B,20Cからワイヤ21A,21B,21Cの引出し量L、およびワイヤ21A,21B,21Cの引出される方向を表す回転角θX,θZを入力して、測定対象空間内に位置する物体の3次元画像を任意の方向から見て表示可能な3次元形状データを生成する。この3次元画像データ処理装置43には、表示装置44が接続されている。表示装置44は、液晶ディスプレイまたはCRTなどで構成され、3次元画像データ処理装置43から出力される3次元形状データに基づいて測定対象空間内に位置する物体の3次元画像を表示する。
【0026】
次に、このように構成した3次元形状測定システムの作動について説明する。作業者は、ワイヤ装置20A,20B,20Cに関する座標系であるの各ワイヤ装置座標系WA,WB,WCによって表された各座標値(ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCの先端の位置)を、1つの基準座標系Sによって表された座標値に変換するための座標変換関数FWSを計算する。本実施形態においては、ワイヤ装置20Aに関する座標系であるワイヤ装置座標系WAを基準座標系Sとする。
【0027】
まず、作業者は、図4に示すように、ワイヤ装置20Aから引き出されたワイヤ21Aの先端部21aAに、先端を尖らせて形成した触針50を取り付ける。この場合、先端部21aAに取り付けられる触針50の長さは、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置に予め記憶されており、検出した引出し量Lにこの触針50の長さを追加した量を引出し量Lとすることで、触針50の先端位置の座標を特定することができる。なお、触針50の先端を球状に形成し、同球の中心位置までの長さを記憶させておくようにしてもよい。次に、作業者は、ワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの先端が届く範囲に配置されたテーブル60上に基準物体70A,70B,70Cをそれぞれ配置する。基準物体70A,70B,70Cは、互いに直径の異なる3つの真球体で構成され、測定対象空間内において定点を定める機能を有する。なお、ワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの先端が届く範囲であれば、基準物体70A,70B,70Cを配置するばよく、必ずしもテーブル60を用意するとともに、同テーブル60上に基準物体70A,70B,70Cを配置する必要はない。
【0028】
次に、作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FWSの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して3次元画像データ処理装置43は、図5に示す、座標変換関数FWS計算プログラムの実行をステップS100にて開始して、ステップS102にて、基準物体の特徴の入力を待つ。ここで基準物体の特徴とは、基準物体70A,70B,70Cがそれぞれ球体であることを表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、基準物体70A,70B,70Cが球体であることを表すデータを3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS102の処理をスキップさせてもよい。
【0029】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS104にて、測定を行うワイヤ装置の識別番号の入力を待つ。作業者は、入力装置42を操作して、ワイヤ装置20Aを表す識別番号を3次元画像データ処理装置43に入力する。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS106にて、基準物体の測定情報の入力を待つ。作業者は、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70A,70B,70Cの各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報を入力する。この場合、ワイヤ21Aは、触針50の移動に応じて外筒22Aから引き出される。また、外筒22Aは、触針50の移動に応じて支持軸25A回りおよび回転軸27A回りに回転する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ装置20Aから引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに、それぞれ4つの接触点の各座標値(x、y,z)が計算される。
【0030】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS108にて、基準物体70A,70B,70Cごとに定点をそれぞれ計算する。具体的には、前記ステップS106にて計算した基準物体70A,70B,70Cごとの各4つの接触点の座標値(x、y,z)を、下記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、前記座標値(x、y,z)によって表された各基準物体70A,70B,70Cの中心座標を表す。なお、下記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS108の処理においては計算する必要はない。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとにそれぞれ球体中心座標が定点として計算される。
【数1】
【0031】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS110にて、各ワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行ったか否かを判定する。すなわち、この判定処理においては、すべてのワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行うまで、「No」と判定し続けてステップS104に戻る。ステップS104においては、前記したように、測定を行うワイヤ装置の識別番号の入力を待つ。この場合、作業者は、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられている触針50をワイヤ21B(またはワイヤ21C)の先端部21aB(または先端部21aC)に付け替えて、入力装置42からワイヤ装置20B(またはワイヤ装置20C)の識別番号を入力し、基準物体70A,70B,70Cの測定を繰り返し実行する。一方、すべてのワイヤ装置20A,20B,20Cによって基準物体70A,70B,70Cの測定を行った場合には、この判定処理において「Yes」と判定してステップS112に進む。これにより、各ワイヤ装置20A,20B,20Cごとに、各基準物体70A,70B,70Cの定点がそれぞれ計算される。
【0032】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS112にて、座標変換関数FWSを計算する。この場合、座標変換関数FWSには、ワイヤ装置20Bに関する座標系であるワイヤ装置座標系WBによって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換する座標変換関数FWS1と、ワイヤ装置20Cに関する座標系であるワイヤ装置座標系WCによって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換する座標変換関数FWS2とがある。なお、ワイヤ装置20Aに関する座標系であるワイヤ装置座標系WAは基準座標系Sであるため、ワイヤ装置座標系WAによって表された座標値を基準座標系Sによって表された座標値に変換する座標変換関数FWSは計算する必要はない。
【0033】
このステップS112による座標変換係数FWSの計算処理に先立ち、座標変換について簡単に説明しておく。X,Y,Z座標からなる第1座標系と、同第1座標系をX軸、Y軸およびZ軸回りにそれぞれθx,θy,θzだけ回転させるとともに、同第1座標系の原点をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向にそれぞれa,b,cだけ移動させた第2座標系を想定する。第1座標系における一点の座標値(x,y,z)とし、第2座標系における同一点の座標値を(x’,y’,z’)とすると、これらの座標値の間には下記式2が成立する。この場合、下記式2中のMは下記式3によって表される行列値である。
【数2】
【数3】
【0034】
このステップS112の座標変換関数FWSの計算は、前記式2および式3中の行列値M(g11,g12,g13,g21,g22,g23,g31,g32,g33)および行列値a,b,cを計算することを意味する。この場合、本実施形態のワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)が第1座標系に対応するとともに、基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)が第2座標系に対応する。したがって、各基準物体70A,70B,70Cのワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)における各定点(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)と、基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)における各定点(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)とを前記式2に適用すると、下記式4〜6の関係が成立する。
【数4】
【数5】
【数6】
【0035】
前記式4を変形すると、下記式7の連立方程式が成立する。
【数7】
【0036】
ここで、定点座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)を含む平面の法線ベクトルを(α,β,γ)とし、定点座標(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)を含む平面の法線ベクトルを(α’,β’,γ’)とすると、2つの法線ベクトルの大きさが同じであれば下記式8が成立する。同式8中の行列Mは、前記式3によって表される。
【数8】
【0037】
定点座標(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)を含む平面の法線ベクトルを(x2,y2,z2)から(x1,y1,z1)に向かうベクトルと、(x3,y3,z3)から(x2,y2,z2)に向かうベクトルとの外積により成立するベクトルとすると、前記法線ベクトル(α,β,γ)は下記式9によって表される。
【数9】
【0038】
同様に、前記ベクトル(α’,β’,γ’)は下記式10によって表される。
【数10】
【0039】
前記式9および前記式10を前記式8に代入すると、下記式11が成立する。
【数11】
【0040】
前記式11の1番目の式を前記式7に加えれば、下記式12の連立方程式となる。
【数12】
【0041】
この式12の連立方程式を解くことにより、行列値g11,g12,g13を計算することができる。また、前記式5および式6に関しても、前記式7の連立方程式のように変形し、前記式11の2番目の式および3番目の式をそれぞれ加えた連立方程式を解くことにより行列値g21,g22,g23および行列値g31,g32,g33を計算できる。そして、これらの計算した各行列値を前記式4〜6に代入すれば、行列値a,b,cを計算できる。これにより、ワイヤ装置20B(またはワイヤ装置20C)に関する座標系であるワイヤ装置座標系WB(またはワイヤ装置座標系WC)によって表された座標値を基準座標系S(ワイヤ装置座標系WA)によって表された座標値に変換するための座標変換関数FWS1(または座標変換関数FWS2)が計算される。なお、計算された座標変換関数FWSは、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置内に記憶される。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS114にて、この座標変換関数FWS計算プログラムの実行を終了する。
【0042】
次に、作業者は、3次元形状測定装置10に関する座標系(以後、「カメラ座標系C」という)によって表された3次元形状データを、基準座標系Sが設定されているワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの先端部21aAに関する座標系(以後、「ワイヤ先端座標系P」という)によって表された3次元形状データに変換するための座標変換関数FCPを計算する。ここで、カメラ座標系Cは、互いに直交する3つの座標軸(X軸,Y軸,Z軸)からなり、3次元形状測定装置10の特定点を原点とする3次元座標系である。また、ワイヤ先端座標系Pは、カメラ座標系Cに対応する3つの座標軸(X軸,Y軸,Z軸)からなり、基準座標系Sが設定されたワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの軸線上における先端部21aAの先端の点からワイヤ21Aの軸線方向に球体13Aの半径長さ分移動した点を原点とする3次元座標系である。この座標変換関数FCPの計算に際して作業者は、基準座標系Sが設定されたワイヤ装置20Aから引き出されるワイヤ21Aの先端部21aAに前記触針50を再度取り付ける。
【0043】
作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FCPの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して、3次元画像データ処理装置43は、図6に示す座標変換関数FCP計算プログラムの実行をステップS200にて開始して、ステップS202にて、基準物体の特徴の入力を待つ。この場合、基準物体の特徴とは、基準物体70A,70B,70Cがそれぞれ球体であることを表すデータおよび同各球体の直径を表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、基準物体70A,70B,70Cが球体であることを表すデータおよび同球体の直径を表すデータを3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS202の処理をスキップさせてもよい。
【0044】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS204にて、触針50による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、前記ステップS106と同様にして、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70A,70B,70Cの各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ装置20Aから引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70A,70B,70Cに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに、それぞれ4つの接触点の各座標値(x、y,z)が計算される。
【0045】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS206にて、前記ステップS108と同様にして、基準物体70A,70B,70Cごとに定点をそれぞれ計算する。具体的には、前記ステップS204にて計算した基準物体70A,70B,70Cごとの各4つの接触点の座標値(x、y,z)を、前記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、前記座標値(x、y,z)によって表された各基準物体70A,70B,70Cの中心座標を表す。なお、前記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS206の処理においては計算する必要はない。これにより、各基準物体70A,70B,70Cごとに各球体の中心座標が定点としてそれぞれ計算される。なお、このステップS206によって計算される基準物体70A,70B,70Cごとの各定点は、前記ステップS108にて計算される基準物体70A,70B,70Cごとの各定点と同じであるため、基準物体70A,70B,70Cの位置やワイヤ装置20A,20B,20Cの位置が変更されず前記ステップ106にて計算された基準物体70A,70B,70Cごとの各定点の座標値が記憶されていれば、ステップS204およびステップS206の処理は不要である。
【0046】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS208にて、3次元形状測定装置10による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、図7に示すように、ワイヤ21Aの先端部21aAに取り付けられている触針50を取り外して3次元形状測定装置10の背面に設けられている球体13Aに接続するとともに、他のワイヤ21B,21Cの各先端部21aB,21aCを同3次元形状測定装置10の背面に設けられている球体13B,13Cにそれぞれ接続する。そして、各ワイヤ21A,21B,21Cが接続された3次元形状測定装置10を3次元形状測定装置支持脚80に固定した後、入力装置42を操作して基準物体70A,70B,70Cの測定を行う。3次元形状測定装置支持脚80は、ワイヤ装置支持脚30と同様に3次元形状測定装置10を所定の位置に支持するものである。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。
【0047】
3次元形状測定装置10は、コントローラ41からの指示に応答して基準物体70A,70B,70Cの測定を開始して、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す情報を3次元画像データ処理装置43に出力する。すなわち、基準物体70A,70B,70Cの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)を3次元画像データ処理装置43にそれぞれ出力する。そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS208にて、3次元形状測定装置10から出力されたX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データは、3次元形状測定装置10に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。なお、この3次元形状データ中には、基準物体70A,70B,70Cのほかに同基準物体70A,70B,70Cの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0048】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS210にて、前記ステップS208にて生成された3次元形状データの中から、基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データをそれぞれ抽出する。この基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データの抽出処理は、図示しない基準物体抽出サブプログラムによって実行される。基準物体抽出サブプログラムの処理内容を簡単に説明する。
【0049】
3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS202にて入力された基準物体の特徴のうち球体の直径を表すデータを用いて、単位ブロックおよび探索ブロックを設定する。単位ブロックは、基準物体70A,70B,70Cの存在位置を特定するために探索ブロックを移動させる最小のブロックであり、探索ブロックは、基準物体70A,70B,70Cをその内部に包含する位置を特定するために利用される単位ブロックの集まりである。3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10の測定対象空間内を単位ブロックの大きさで立体的に分割するとともに、探索ブロックを測定対象空間内で順次移動させて探索ブロック内に包含される単位ブロックのうち3次元形状データを含む単位ブロックの数をカウントする。このカウントした単位ブロックの数に応じて、探索ブロック内に含まれる3次元形状データがそれぞれ基準物体70A,70B,70C全体を含む3次元形状データであるか否かを判定し、基準物体70A,70B,70C全体を含む3次元形状データであると判定されたとき、探索ブロック内の3次元形状データを抽出する。なお、この技術は、既によく知られた技術であり、例えば特開2004−333371号公報に記載されている。
【0050】
また、前記説明した基準物体の抽出方法のほかに、基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量を用いて基準物体70A,70B,70Cの3次元形状を表す3次元形状データを抽出することもできる。この場合、基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量を予め検出するとともに、同反射光の光量を3次元画像データ処理装置43に設定しておく。そして、3次元形状測定装置10は、X−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)に加えて基準物体70A,70B,70Cからの反射光の光量も検出して、前記設定した光量と一致する3次元形状データを抽出するようにする。
【0051】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS212にて、前記ステップS210にてそれぞれ抽出した基準物体70A,70B,70Cを表す3次元形状データを用いて基準物体70A,70B,70Cごとに定点座標をそれぞれ計算する。具体的には、前記抽出した3次元形状データを基準物体70A,70B,70Cごとに前記式1の左辺にそれぞれ代入し、最小2乗法を用いて未知数a、b、cを定点として計算する。この場合、a,b、cは、3次元形状データによって表された球体、すなわち各基準物体70A,70B,70Cの各中心座標を表す。なお、前記式1においてdは、各基準物体70A,70B,70Cの半径を表すが、このステップS212の処理においては計算する必要はない。
【0052】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS214にて、基準座標系Sによって表された座標値をワイヤ先端座標系Pによって表された座標値に変換する座標変換関数FSPを計算する。この座標変換関数FSPの計算は、図8に示す座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行により行われる。
【0053】
3次元画像データ処理装置43は、ステップS300にて、座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行を開始して、ステップS302にて、ワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCの先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS208にて基準物体70A,70B,70Cを測定した3次元形状測定装置10の位置における各ワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、各ワイヤ装置20A,20B,20Cごと、すなわちワイヤ装置座標系WA,WB,WCごとに各先端部21aA,21aB,21aCの先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0054】
そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS304にて、前記ステップS302にて計算した各先端部21aA,21aB,21aCの先端座標を、前記座標変換関数FWS計算プログラムの実行により計算された座標変換関数FWS(座標変換関数FWS1および座標変換関数FWS2)を用いて基準座標系Sによって表された座標値にそれぞれ座標変換する。この場合、ワイヤ装置座標系WAによって表された先端部21aAの先端座標は、ワイヤ装置座標系WAが基準座標系Sであるため、座標変換する必要はない。なお、このステップS304にて計算された3つの先端座標を、各先端部21aA,21aB,21aCに対応させてPA,PB,PCとする。
【0055】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS306にて、座標変換関数FSPを計算する。この座標変換関数FSPにおける座標軸の回転成分の計算は、前記ステップS304にて計算した基準座標系Sにおける3つの先端座標PA,PB,PCを用いて3つのベクトルA,B,Cを定義し、同3つのベクトルA,B,Cの基準座標系Sおよびワイヤ先端座標系Pにおける各ベクトルの成分を用いて計算する。具体的には、基準座標系Sにおける1つのベクトルの成分を(α,β,γ)とするとともに、ワイヤ先端座標系Pにおける前記1つのベクトルの成分を(α’,β’,γ’)とすると、前記式8が成立する。同式8中の行列値Mは、基準座標系Sの座標軸に対するワイヤ先端座標系Pの座標軸の相対的な回転成分を表しており、前記式3によって表される。この場合、ベクトル(α,β,γ)とベクトル(α’,β’,γ’)は、その大きさが同じとする。
【0056】
このステップS306の座標変換関数FSPにおける座標軸の回転成分の計算は、前記式8中の行列値M(M=g11,g12,g13,g21,g22,g23,g31,g32,g33)を計算することを意味する。すなわち、互いに同一方向でない3つのベクトルA,B,Cを想定し、この3つのベクトルのA,B,Cの基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、この3つのベクトルのA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、下記式13〜15の関係が成立する。
【数13】
【数14】
【数15】
【0057】
この前記式13〜15の連立方程式を解くことにより、行列値Mを計算することができる。本実施形態においては、前記先端座標PAから先端座標PB(または先端座標PC)に向かうベクトルの単位ベクトルを前記3つのベクトルA,B,CうちのベクトルAとし、先端座標PAから先端座標PC(または先端座標PB)に向かうベクトルと、前記ベクトルAとの外積により計算される単位ベクトルをベクトルBとし、前記ベクトルAとベクトルBとの外積により計算される単位ベクトルをベクトルCとする。この場合、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、これらのベクトルA,B,Cの向きと同一であるとして定義する。よって同ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分は(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)となる。そして、基準座標系Sにおける同ベクトルA,B,Cにおける各成分は、3つの先端座標PA,PB,PCを用いて計算される。したがって、これらのベクトルA,B,Cの基準座標系Sおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値Mを計算することができる。また、基準座標系Sの原点に対するワイヤ先端座標系Pの原点のずれ量は先端座標PAの座標値(a,b,c)となる。これらの行列値Mおよび先端座標PAの座標値(a,b,c)が座標変換関数FSPである。基準座標系Sによって表された座標値(XS,YS,ZS)とワイヤ先端座標系Pによって表された座標値(XP,YP,ZP)との関係を座標変換関数FSPを用いて表すと下記式16に示すようになる。
【数16】
【0058】
そして、3次元画像データ処理装置43は、前記計算した座標変換関数FSPを記憶した後、ステップS308にて、この座標変換関数FSP計算サブプログラムの実行を終了してステップS216に戻る。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS216にて、前記ステップS206にて計算された基準物体70A,70B,70Cごとの各定点座標を、前記ステップS214にて計算した座標変換関数FSPを用いてワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。これにより、3つの基準物体70A,70B,70Cに対して、ワイヤ先端座標系Pによって表された3つの定点座標と、カメラ座標系Cによって表された3つの定点座標とが計算されたことになる。
【0059】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS218にて、座標変換関数FCPを計算する。この座標変換関数FCPの計算は、前記ステップS212にて計算されたカメラ座標系Cにおける3つの定点座標と、前記ステップS216にて計算されたワイヤ先端座標系Pにおける3つの定点座標とを用いて、前記座標変換関数FWSと同様な処理によって計算する。すなわち、前記第1座標系をカメラ座標系Cとし、前記第2座標系を基準座標系Sとして、カメラ座標系Cによって表された3つの定点(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),(x3,y3,z3)と、ワイヤ先端座標系Pによって表された3つの定点(x’1,y’1,z’1),(x’2,y’2,z’2),(x’3,y’3,z’3)とを前記式2にそれぞれ代入すれば、前記と同様にして座標変換関数FCPを計算することができる。そして、3次元画像データ処理装置43は、前記計算した座標変換関数FCPを記憶した後、ステップS220にて、この座標変換関数FCP計算プログラムの実行を終了する。
【0060】
この座標変換関数FCP計算プログラムの実行後、作業者は、テーブル60から基準物体70A,70B,70Cを取り除いて、同テーブル60上に測定対象物であるワークWKを配置する。そして、入力装置42を操作してワークWKの3次元立体形状の表示を指示する。これに応答して、3次元画像データ処理装置43は、図9に示す3次元形状表示プログラムの実行をステップS400にて開始して、ステップS402にてワークWKの3次元形状を表す測定情報の入力を待つ。
【0061】
作業者は、3次元形状測定装置10を3次元形状測定装置支持脚80上から取り外し、同3次元形状測定装置10を手で持って、ワイヤ装置20A,20B,20Cから引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび外筒22A,22B,22Cの回転角θx,θyの変化を伴いながら、ワークWKに対して3次元形状測定装置10を移動させてワークWKの3次元形状の測定を行う。
【0062】
3次元形状測定装置10によって測定されたワークWKの測定情報は、3次元画像データ処理装置43に出力される。すなわち、ワークWKの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)を3次元画像データ処理装置43に出力する。そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS402にて、3次元形状測定装置10から出力された1つのX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、1つの3次元形状データ(すなわち、1つの座標値)を計算する。この場合、3次元形状データは、3次元形状測定装置10に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。なお、この3次元形状データは、ワークWKや同ワークWKの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60)の表面形状を表す3次元形状データのいずれかのデータである。
【0063】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS404にて、ワイヤ先端座標系Pによって表された座標値を基準座標系Sによって表された座標値に変換する座標変換関数FPSを計算する。この座標変換関数FPSの計算は、前記座標変換関数FSPの逆関数として計算される。すなわち、3次元画像データ処理装置43は、前記図8に示す座標変換関数FSP計算サブプログラムを実行することにより座標変換関数FSPを計算した後、同計算した座標変換関数FSPの逆関数を座標変換関数FPSとして計算する。
【0064】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS406にて、前記ステップS402にて生成した3次元形状データを、前記座標変換関数FCP計算プログラムの実行によって計算された座標変換関数FCPを用いて、カメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS408にて、前記ワイヤ先端座標系Pに座標変換された3次元形状データを、前記ステップS404にて計算した座標変換関数FPSを用いて基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する。すなわち、これらのステップS406およびS408によって、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データが基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換される。
【0065】
なお、この場合、座標変換関数FCPと座標変換関数FPSとを乗算(FCP・FPS)した座標変換関数FCSを計算し、この座標変換関数FCSを用いてカメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換しても結果は同じである。すなわち、座標変換関数FCPが本発明に係る第2の座標変換関数に相当し、座標変換関数FPSが本発明に係る第3の座標変換関数に相当し、これらの座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSが本発明に係る第1の座標変換関数に相当する。この基準座標系Sに座標変換された3次元形状データは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0066】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS410にて、3次元形状測定が終了したか否かを判定する。具体的には、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が入力したときは、「Yes」と判定してステップS402に戻り、前述したように3次元形状データの計算と座標変換関数FPSを計算と、計算した3次元形状データの基準座標系Sの3次元形状データへの座標変換を行い、座標変換を行った3次元形状データを3次元画像データ処理装置43に記憶する。この処理は、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が入力する限り繰り返し行われる。一方、3次元形状測定装置10からX−Y−Z座標に関する情報が所定時間以上入力しないときは、同判定において「No」と判定してステップS412にて、ワークWKを別の測定位置から測定するか否かを判定する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、ワークWKの測定を続行するか否かを作業者に問い合わせ、作業者から測定終了の指示が入力されるまで、同判定において「Yes」と判定してステップS402に戻る。この場合、作業者はワークWKに対する3次元形状測定装置10の測定位置を変えて再度測定を行う。これにより、前記とは異なる測定位置からワークWKを測定した際の3次元形状データが3次元画像データ処理装置43に記憶される。なお、この場合、ワイヤ装置20A,20B,20Cの位置は固定である。一方、作業者から測定終了の指示が入力された場合には、同判定において「No」と判定してステップS414に進む。
【0067】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS414にて、各測定位置ごとに基準座標系Sによって表された3次元形状データを一組の3次元形状データ群に合成する。この合成においては、すべての測定位置における3次元形状データが同一座標系である基準座標系S上の座標値で表されているので、各測定位置によって測定されないワークWKの部分を表す3次元形状データが互いに補われるとともに、同一場所で複数の3次元形状データ群が存在する場合には、平均化の処理が行われ一組のデータ群とされる。
【0068】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS416にて、前記合成された3次元形状データ群を用いてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS418にて、3次元形状表示プログラムの実行を終了する。このワークWKの3次元形状の表示においては、作業者は入力装置42を操作することによりワークWKの表示方向を指示することができ、コントローラ41および3次元画像データ処理装置43は表示装置44にて表示されるワークWKの表示方向を変更する。これにより、ワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示させることができる。
【0069】
また、新たなワークWKをテーブル60上に置いて、前述のようにワークWKの表示を指示して3次元形状測定装置10による測定を行えば、前記3次元形状表示プログラムの実行により基準座標系Sによる3次元形状データの生成と3次元形状データの合成とが行われ、新たなワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示装置44に表示させることができる。すなわち、基準物体70A,70B,70Cを用いて座標変換関数FWSおよび座標変換関数FCPを一度だけ計算しておけば、ワイヤ装置20A,20B,20C(すなわち、基準座標系S)の位置を変位させない限り、ワークWKを次々に換えて表示装置44にてワークWKの立体形状を表示させることができる。
【0070】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、3次元画像データ処理装置43は、ワイヤ装置20A,20B,20Cによって検出されるワイヤ21A,21B,21Cの引出し量Lおよび同ワイヤ21A,21B,21Cの引き出される方向を表す回転角θX,θYを用いて、3次元形状測定装置10、具体的にはカメラ座標系Cの基準座標系Sにおける位置を特定して座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算している。これにより作業者は、基準座標系Sにおいて3次元形状測定装置10の位置が特定できるワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCを3次元形状測定装置10にそれぞれ接続した構成でワークWKの測定を行えば、3次元画像データ処理装置43は測定により得られた3次元形状データを基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換して合成し3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、従来例のように大型かつ複雑な構成の支持機構を用いることなく、簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、ワークWKの大きさに応じてワイヤ装置20A,20B,20Cに収容されているワイヤ21A,21B,21Cの長さを設定すればよいので、形状の大きなワークWKを測定する場合であっても3次元形状測定システムを簡単かつ小型に構成することができる。
【0071】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態においては、3次元形状測定装置10に3つのワイヤ装置20A,20B,20Cを接続した3次元形状測定システムについて説明した。しかし、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換するための座標変換関数(上記第1実施形態においては座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPS)を計算することができれば、これに限定されるものではない。図10は、1つのワイヤ装置20’を3次元形状測定装置10’に接続した3次元形状測定システムを示している。ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aは、上記第1実施形態と同様に、3次元形状測定装置10’の背面(3次元形状測定10’におけるレーザ光が出射される側面に対向する側面)に埋め込まれた球体13’に接続されている。なお、このワイヤ装置20’は、上記第1実施形態において座標変換関数FCPを計算するときと同様に、ワイヤ装置20’を所定の位置に支持するワイヤ装置支持脚30’上に固定されている。
【0072】
3次元形状測定装置10’は、上記第1実施形態における3次元形状測定装置10によって測定される測定情報、すなわち、物体の表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)に加えて、同各分割エリアごとの反射光量Rも検出する。したがって、3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10’が検出した反射光量Rを用いて、測定対象空間内に位置する物体表面の前記微小エリアごとの反射光量を計算する。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0073】
次に、このように構成した第2実施形態に係る3次元形状測定システムの作動について説明する。作業者は、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FPSを構成する座標軸の回転成分MPS、およびカメラ座標系Cによって表された3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FCPを構成する座標原点の原点ずれ成分GCPを計算する。
【0074】
まず、作業者は、図11に示すように、上記第1実施形態と同様に、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aに、先端を尖らせて形成した触針50を固定する。次に、作業者は、ワイヤ装置20A’から引き出されるワイヤ21’の先端が届く範囲に直方体状に形成されたテーブル60’を配置する。テーブル60’は、ワイヤ先端座標系Pを定義して座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算する際に用いられる基準物体を構成する物体であり、テーブル60’を構成する少なくとも2つの面60’a,60’bが3次元形状測定装置10’に対向するように配置される。テーブル60’における3次元形状測定装置10’に対向する2つの面60’a,60’bは、互いに異なる反射率となるように形成されている。図においては、これらの各面60’a,60’bの反射率の違いを各面上の模様の違いによって表している。また、これら2つの面60’a,60’bにそれぞれレーザ光を照射した場合における各面60’a,60’bからの反射光の光量は事前に作業者により認識されており、3次元画像データ処理装置43のメモリ装置に予め記憶されている。
【0075】
次に、作業者は、テーブル60’上に1つの基準物体70’を配置する。基準物体70’は、上記第1実施形態と同様に、真球体で構成されており、測定対象空間内において定点を定める機能を有する。なお、基準物体70’は、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21A’の先端が届く範囲、かつ3次元形状測定装置10’によって前記テーブル60’の2つの面60’a,60’bと同時に測定できる位置関係に配置されていれば、必ずしもテーブル60’上に配置する必要はない。
【0076】
次に、作業者は、入力装置42を操作して、座標変換関数FPSを構成する座標軸の回転成分MPS、および座標変換関数FCPを構成する座標原点の原点ずれ成分GCPの計算を3次元画像データ処理装置43に指示する。この指示に応答して3次元画像データ処理装置43は、図12に示す回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行をステップS500にて開始して、ステップS502にて、基準物体の特徴の入力を待つ。この基準物体の特徴とは、基準物体が1つの球体と2つの平面とからなることを表すデータである。したがって、作業者は、入力装置42を操作して、これらの情報を3次元画像データ処理装置43に入力する。なお、前記と同様に、以前に入力された基準物体の特徴が変更されない場合には、このステップS502の処理をスキップさせてもよい。
【0077】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS504にて、基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、上記第1実施形態と同様に、ワイヤ21’の先端部21’aに取り付けられた触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端を基準物体70’の各表面における互いに異なる4つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の基準物体70’に対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の基準物体70’に対する接触を表す情報ごとに、ワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の基準物体70’に対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。
【0078】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS506にて、面の識別番号の入力を待つ。この場合、作業者は、テーブル60’の2つの面60’a,60’bを識別するためにそれぞれ予め付けられた番号を入力する。次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS508にて、面の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、触針50を手で持って移動させることにより、触針50の先端をテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面における互いに異なる3つの位置にそれぞれ接触させるとともに、各接触ごとに入力装置42を操作することにより触針50の面60’a,60’bに対する接触を表す情報を入力する。3次元画像データ処理装置43は、作業者から入力される触針50の面60’a,60’bに対する各接触を表す情報ごとに、ワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、触針50の面60’a,60’bに対する各接触点の座標値をそれぞれ計算する。
【0079】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS510にて、基準物体70’の中心座標を定点として計算する。具体的には、上記第1実施形態における前記ステップ106と同様に、前記ステップS504にて計算した基準物体70’の各4つの接触点の座標値を、前記式1の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、cを定点として計算する。この計算された定点は、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0080】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS512にて、テーブル60’の2つの面60’a,60’bにおける各法線ベクトルαS60’,βS60’を計算する。具体的には、前記ステップS508にて計算した各面60’a,60’bごとの各3つの接触点の座標値を下記式17の左辺にそれぞれ代入することで成立する連立方程式を解くことで未知数a、b、c、dをそれぞれ計算する。各面60’a,60’bごとに計算した未知数a、b、c、dのうち、未知数a、b、cが各面60’a,60’bに対応する各法線ベクトルαS60’,βS60’のベクトル成分を表す。
【数17】
【0081】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS514にて、回転成分MPSを計算する。具体的には、前記ステップS512にて計算した2つの法線ベクトルαS60’,βS60’のうち、一方の法線ベクトルαS60’(または法線ベクトルβS60’)の単位ベクトルをベクトルAとし、同2つの法線ベクトルαS60’,βS60’の外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルBとし、これらのベクトルA,Bの外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルCとしてそれぞれ計算し、同計算したこれら3つのベクトルA,B,Cの方向をそれぞれ座標軸とする座標系をワイヤ先端座標系Pと定義する。
【0082】
そして、ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各ベクトル成分AP,BP,CPを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、同ベクトルのA,B,Cの基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、ベクトルA,B,Cのワイヤ先端座標系Pおよび基準座標系Sにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MPSを計算することができる。この場合、ワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPである(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)は、それぞれ(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)であり、基準座標系Sにおける各成分AS,BS,CSである(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)は、2つの法線ベクトルαS60,βS60の各成分から前述のように既に計算されている。これにより、座標変換関数FPSにおける回転成分MPSが計算される。この計算された回転成分MPSは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0083】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS516にて、3次元形状測定装置10’による基準物体の測定情報の入力を待つ。この場合、作業者は、図13に示すように、上記第1実施形態と同様にして、ワイヤ21’の先端部21a’に取り付けられている触針50を取り外して3次元形状測定装置10’の背面に設けられている球体12’に接続する。そして、ワイヤ21’が接続された3次元形状測定装置10’を3次元形状測定装置支持脚80に固定した後、入力装置42を操作して基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの測定を行う。
【0084】
3次元形状測定装置10’は、コントローラ41からの指示に応答して基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの測定を開始して、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各3次元形状を表す情報、および基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光の光量を表す情報を3次元画像データ処理装置43に出力する。すなわち、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)、および基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光に関する情報(具体的には、反射光量R)を3次元画像データ処理装置43にそれぞれ出力する。
【0085】
そして、3次元画像データ処理装置43は、同ステップS516にて、3次元形状測定装置10’から出力されたX−Y−Z座標に関する情報および反射光に関する情報に基づいて、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データには、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面をそれぞれ微小エリアごとに表す3次元形状データに、各エリア位置に対応する反射光量Rを表す反射光量データが付加されている。なお、3次元形状データは、3次元形状測定装置10’に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。また、この3次元形状データ中には、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bのほかに同基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60’の上面)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0086】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS518にて、ワイヤ21’の先端部21a’の先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS512にて基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bを測定した3次元形状測定装置10’の位置におけるワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、ワイヤ装置座標系W、すなわち基準座標系Sにおける先端部21a’の先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0087】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS520にて、前記ステップS516にて生成された3次元形状データの中から、基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す各3次元形状データをそれぞれ抽出する。これらのうち、基準物体70’の3次元形状を表す3次元形状データの抽出処理は、上記第1実施形態と同様に、図示しない基準物体抽出サブプログラムによって実行される。また、テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データは、前記ステップS516にて生成された3次元形状データにおける反射光量データを用いてそれぞれ抽出する。すなわち、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているテーブル60’の2つの面60’a,60’bからの各反射光の光量に一致する、または所定の判別値内に含まれる前記反射光量データに対応する3次元形状データを各面60’a,60’bごとに抽出する。
【0088】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS522にて、前記ステップS520にて抽出した基準物体70’を表す3次元形状データを用いて定点座標を算する。具体的には、上記第1実施形態と同様に、前記抽出した3次元形状データを前記式1の左辺にそれぞれ代入し、最小2乗法を用いて未知数a、b、cを定点として計算する。これにより、カメラ座標系Cにおける基準物体70’の中心座標が定点として計算される。なお、前記式1においてdは、基準物体70’の半径を表すが、このステップS518の処理においては計算する必要はない。
【0089】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS524にて、前記ステップS520にて抽出したテーブル60’の2つの面60’a,60’bをそれぞれ表す各3次元形状データを用いて各面60’a,60’bごとに各法線ベクトルαC60’,βC60’を計算する。具体的には、上記第1実施形態と同様に、前記ステップS520にて生成した各面60’a,60’bごとの各3次元形状データを前記式17の左辺にそれぞれ代入して、最小2乗法を用いて未知数a、b、c、dをそれぞれ計算する。各面60’a,60’bごとに計算した未知数a、b、c、dのうち、未知数a、b、cが各面60’a,60’bに対応する法線ベクトルαC60’,βC60’のベクトル成分を表す。
【0090】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS526にて、前記ステップS510にて計算した基準座標系Sによって表された定点座標を、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。具体的には、前記ステップS514にて計算した回転成分MPSの逆関数MSPと、前記ステップS518にて検出したワイヤ21’の先端座標、すなわちワイヤ先端座標系Pと基準座標系Sとの原点ずれ(座標値)とから構成される座標変換関数FSPを用いて、前記ステップS510にて計算した基準座標系Sによって表された定点座標を、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標に座標変換する。これにより、基準物体70’に対して、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標と、カメラ座標系Cによって表された定点座標とが計算されたことになる。
【0091】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS528にて、原点ずれ成分GCPを計算する。具体的には、前記ステップS524にて計算した2つの法線ベクトルαC60’,βC60’のうち、一方の法線ベクトルαC60’(または法線ベクトルβC60’)の単位ベクトルをベクトルAとし、同2つの法線ベクトルαC60’,βC60’の外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルBとし、これらのベクトルA,Bの外積により計算されるベクトルの単位ベクトルをベクトルCとしてそれぞれ計算する。これら3つのベクトルA,B,Cは、前述したベクトルA,B,Cと同一である。
【0092】
したがって、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cにおける各ベクトル成分AC,BC,CCを(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)とし、同ベクトルのA,B,Cのワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPを(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)とすれば、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MCPを計算することができる。この場合、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、ベクトルA,B,Cの向きと同一である。よって、ワイヤ先端座標系Pにおける各成分AP,BP,CPである(α’1,β’1,γ’1),(α’2,β’2,γ’2),(α’3,β’3,γ’3)は、それぞれ(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)であり、カメラ座標系Cにおける各成分AC,BC,CCである(α1,β1,γ1),(α2,β2,γ2),(α3,β3,γ3)は、2つの法線ベクトルαC60’,βC60’の各成分から前述のように既に計算されている。
【0093】
そして、計算した回転成分MCPを前記式2におけるMに代入し、カメラ座標系Cによって表された定点座標を同式2におけるx、y、zに代入し、ワイヤ先端座標系Pによって表された定点座標を同式2におけるx’、y’、z’にそれぞれ代入すれば、両座標系における原点ずれ成分GCPが同式2におけるa,b,cとして計算される。この原点ずれ成分GCPは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS530にて、回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行を終了する。
【0094】
この回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行後、作業者は、図10に示すように、テーブル60’から基準物体70’を取り除いて、同テーブル60’上に測定対象物であるワークWKを配置する。そして、入力装置42を操作してワークWKの3次元立体形状の表示を指示する。この指示に応答して、3次元画像データ処理装置43は、図14に示す3次元形状表示プログラムの実行をステップS600にて開始して、ステップS602にてワークWKの3次元形状を表す測定情報の入力を待つ。
【0095】
作業者は、3次元形状測定装置10’が取り付けられた3次元形状測定装置支持脚80を移動させることにより、ワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の引出し量Lの変化を伴いながら、ワークWKに対して3次元形状測定装置10’を移動させて3次元形状測定装置支持脚80を固定させて3次元形状の測定を行う。この場合、作業者は、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内にワークWKとともにテーブル60’の2つの面60’a,60’bが位置するように3次元形状測定装置支持脚80、すなわち3次元形状測定装置10’を位置決めする。したがって、3次元画像データ処理装置43には、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内に存在するワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bに関する測定情報が出力される。すなわち、前記ステップS512と同様に、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの表面を微小エリアずつに分割した各分割エリア位置を表すX−Y−Z座標に関する情報(具体的には、傾きθx,θyおよび距離Lz)、およびワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面からの反射光に関する情報(具体的には、反射光量R)がそれぞれ出力される。
【0096】
そして、3次元画像データ処理装置43は、3次元形状測定装置10’からのX−Y−Z座標に関する情報の入力が終了すると、同ステップS602にて、3次元形状測定装置10’から出力されたX−Y−Z座標に関する情報に基づいて、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す立体形状データ群からなる3次元形状データを生成する。この場合、3次元形状データには、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの各表面をそれぞれ微小エリアごとに表す3次元形状データに、各エリア位置に対応する反射光量Rを表す反射光量データが付加されている。なお、3次元形状データは、3次元形状測定装置10’に関する座標系、すなわちカメラ座標系Cによって表されている。また、この3次元形状データ中には、ワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bのほかに同基準物体70’およびテーブル60’の2つの面60’a,60’bの周辺に存在する他の物体(例えば、テーブル60’の上面)の表面形状を表す3次元形状データも含まれている。
【0097】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS604にて、ワイヤ21’の先端部21a’の先端座標を検出する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、前記ステップS602にてワークWKおよびテーブル60’の2つの面60’a,60’bを測定した3次元形状測定装置10’の位置におけるワイヤ21’の引出し量Lおよび回転角θX,θZを入力して、ワイヤ装置座標系W、すなわち基準座標系Sにおける先端部21a’の先端の位置(座標値)を先端座標として計算する。
【0098】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS606にて、前記ステップS602にて生成された3次元形状データの中から、テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データをそれぞれ抽出する。テーブル60’の2つの面60’a,60’bの3次元形状を表す3次元形状データは、前記ステップS516と同様に、3次元形状データにおける反射光量データを用いてそれぞれ抽出される。すなわち、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているテーブル60’の2つの面60’a,60’bからの各反射光の光量に一致する、または所定の判別値内に含まれる前記反射光量データに対応する3次元形状データを各面60’a,60’bごとに抽出する。
【0099】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS608にて、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データをワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FCPを計算する。この場合、座標変換関数FCPにおける原点ずれ成分GCPは、前記回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行により3次元画像処理装置43に記憶されているため、座標変換関数FCPにおける座標軸の回転成分MCPを計算する。この回転成分MCPの計算は、前記ステップS514およびステップS528における回転成分MCPの計算と同様の処理によって行われる。
【0100】
すなわち、前記ステップS606にて抽出したテーブル60’の2つの面60’a,60’bをそれぞれ表す各3次元形状データを用いて各面60’a,60’bごと各法線ベクトルαC60’,βC60’を計算し、ベクトルA,B,Cを計算する。そして、ベクトルA,B,Cのカメラ座標系Cおよびワイヤ先端座標系Pにおける各成分を前記式13〜15に代入して連立方程式を解くことにより、行列値M、すなわち回転成分MCPを計算する。この計算された回転成分MCPと前記記憶した原点ずれ成分GCPとによって座標変換関数FCPが計算される。
【0101】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS610にて、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する座標変換関数FPSを計算する。この場合、座標変換関数FPSにおける回転成分MPSは、前記回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムの実行により3次元画像処理装置43に記憶されているため、座標変換関数FPSにおける原点ずれ成分GPSを計算する。具体的には、前記ステップS604にて検出したワイヤ21’の先端部21a’の先端座標が原点ずれ成分GPSとなる。したがって、この原点ずれ成分GPSと前記記憶した回転成分MPSとによって座標変換関数FPSを計算することができる。すなわち、前記ステップS604にて検出したワイヤ21’の先端部21a’の先端座標は、基準座標系Sにおける3次元形状測定装置10’の位置、より具体的には、カメラ座標系Cの位置を特定するために用いられる。
【0102】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS612にて、前記ステップS602にて生成されカメラ座標系Cによって表された3次元形状データを、前記ステップS608にて計算した座標変換関数FCPを用いて、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データに座標変換する。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS614にて、前記ワイヤ先端座標系Pに座標変換された3次元形状データを、前記ステップS610にて計算した座標変換関数FPSを用いて基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換する。すなわち、これらのステップS612およびS614によって、カメラ座標系Cによって表された3次元形状データが基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換される。
【0103】
なお、この場合、座標変換関数FCPと座標変換関数FPSとを乗算(FCP・FPS)した座標変換関数FCSを計算し、この座標変換関数FCSを用いてカメラ座標系Cによって表された前記3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに座標変換しても結果は同じである。すなわち、座標変換関数FCPが本発明に係る第4の座標変換関数に相当し、座標変換関数FPSが本発明に係る第5の座標変換関数に相当する。この基準座標系Sに座標変換された3次元形状データは、3次元画像データ処理装置43に記憶される。
【0104】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS616にて、ワークWKを別の測定位置から測定するか否かを判定する。具体的には、3次元画像データ処理装置43は、ワークWKの測定を続行するか否かを作業者に問い合わせ、作業者から測定終了の指示が入力されるまで、同判定において「Yes」と判定してステップS602に戻る。この場合、作業者はワークWKに対する3次元形状測定装置10’の測定位置を変えて再度測定を行う。これにより、前記とは異なる測定位置からワークWKを測定した際の3次元形状データが3次元画像データ処理装置43に記憶される。一方、作業者から測定終了の指示が入力された場合には、同判定において「No」と判定してステップS618に進む。
【0105】
なお、異なる位置からワークWKを測定する場合、各測定位置ごとに座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSが計算される。これは、座標変換関数FCPにおける回転成分MCPと座標変換関数FPSにおける原点ずれ成分GPSが、3次元形状測定装置10’の測定位置に応じて変化するためである。すなわち、ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きは、テーブル60’の2つの面60’a,60’bによって3次元形状測定装置10’の向きとは無関係に固定的に定義されるため、3次元形状測定装置10’の向きが変化するごとにカメラ座標系Cに対するワイヤ先端座標系Pの回転成分MCPを計算する必要があり、ワイヤ先端座標系Pの座標軸原点は3次元形状測定装置10’の位置により変化するため、3次元形状測定装置10’の位置が変化するごとに基準座標系Sに対するワイヤ先端座標系Pの原点ずれ成分GPSを計算する必要があるためである。
【0106】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS618にて、各測定位置ごとに基準座標系によって表された3次元形状データを一組の3次元形状データ群に合成する。この合成においては、すべての測定位置における3次元画像データが同一座標系である基準座標系S上の座標値で表されているので、各測定位置によって測定されないワークWKの部分を表す3次元形状データが互いに補われるとともに、同一場所で複数の3次元形状データ群が存在する場合には、平均化の処理が行われ一組のデータ群とされる。
【0107】
次に、3次元画像データ処理装置43は、ステップS620にて、前記合成された3次元形状データ群を用いてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。そして、3次元画像データ処理装置43は、ステップS622にて、3次元形状表示プログラムの実行を終了する。このワークWKの3次元形状の表示においては、作業者は入力装置42を操作することによりワークWKの表示方向を指示することができ、コントローラ41および3次元画像データ処理装置43は表示装置44にて表示されるワークWKの表示方向を変更する。これにより、ワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示させることができる。
【0108】
また、新たなワークWKをテーブル60上に置いて、前述のようにワークWKの表示を指示して3次元形状測定装置10’による測定を行えば、前記3次元形状表示プログラムの実行により基準座標系Sによる3次元形状データの生成と3次元形状データの合成とが行われ、新たなワークWKを任意の方向から見た立体形状を表示装置44に表示させることができる。すなわち、基準物体70’およびテーブル60’を用いて座標変換関数FPSの回転成分MPSおよび座標変換関数FCPの原点ずれ成分GCPを一度だけ計算しておけば、ワイヤ装置20’(すなわち、基準座標系S)やテーブル60の位置を変位させない限り、ワークWKを次々に換えて表示装置44にて立体形状を表示させることができる。
【0109】
上記作動説明からも理解できるように、上記第2実施形態によれば、ワイヤ装置20’によって検出されるワイヤ21’の引出し量Lおよび同ワイヤ21’の引き出される方向を表す回転角θX,θYを用いて、基準座標系Sにおける3次元形状測定装置10’の位置、より具体的にはカメラ座標系Cの位置を特定するとともに、テーブル60’の2つの面60’a,60’bを用いて、基準座標系Sに対する前記ワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きを特定して、座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSを計算している。これにより作業者は、3次元形状測定装置10’の測定対象空間内にワークWKとともにテーブル60’を配置するようにし、基準座標系Sにおいて位置が特定できるワイヤ21’の先端部21’aを同3次元形状測定装置10’に接続した構成で測定を行えば、3次元画像データ処理装置43は測定により得られた3次元形状データを基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換して合成し、ワークWKの3次元形状を任意の方向から表示可能な3次元形状データを生成することができる。このため、上記第1実施形態と同様に、従来例における支持機構に比べて簡単かつ小型に3次元形状測定システムを構成することができる。また、この第2実施形態においては、1つのワイヤ装置20’を用いて3次元形状測定システムを構成しているため、上記第1実施形態と比べてより簡単に3次元形状測定システムを構成することができる。
【0110】
なお、上記第2実施形態においては、ワークWKの3次元立体形状の測定に際して3次元形状測定装置10’を3次元形状測定装置支持脚80上に固定した。これは、前記ステップS610およびステップS612にて計算される座標変換関数FPSおよび座標変換関数FCPは、3次元形状測定装置10’の測定位置固有の座標変換関数であるため、ワークWKの測定中(レーザ光の走査中)における3次元形状測定装置10’の位置を固定するためである。したがって、ワークWKの測定中(レーザ光の走査中)における3次元形状測定装置10’の位置を変化させなければ、上記第1実施形態と同様に3次元形状測定装置10’を手で持って測定するようにしてもよい。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0111】
また、上記第2実施形態においては、座標変換関数FCPおよび座標変換関数FPSの計算に用いる2つのベクトルα60’a,β60’bを、テーブル60’を構成する2つの面60’a,60’bを用いてそれぞれ定義した。しかし、基準物体70’およびワークWKと同時に測定できるとともに、互いに平行でない2つのベクトルが定義できれば、これに限定されるものではない。例えば、図15(A)〜(D)に示すように、ワークWK(および基準物体70’)の近傍に互いに平行でない2つの平面90a,90bを設けるようにすればよい。
【0112】
また、図16(A)に示すように、1つの平面90a上に同平面90aとは異なる反射率によって形成された直線91aを設けるようにしてもよい。この場合、3次元画像データ処理装置43は、上記第2実施形態と同様にして、平面90aを表す3次元形状データに基づいて1つのベクトルを計算するとともに、3次元形状測定装置10’から出力される測定情報の中から反射光量データに基づいて直線91aに関する3次元形状データを抽出し、同抽出した3次元形状データに基づいてもう1つのベクトルを計算する。また、図16(B)に示すように、1つの平面90a上に互いに異なる反射率によって形成された2つの直線91a,91bを設け、これら2つの直線91a,91bを用いて2つのベクトルを定義するようにしてもよい。図においては、これらの各直線91a,91bの反射率の違いを各直線上の模様の違いによって表している。これらによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0113】
また、上記第2実施形態においては、1つの定点を定義するための基準物体70’と2つのベクトルα60’a,β60’bを定義するための2つの面60’a,60’bを備えるテーブル60’とをそれぞれ用意した。しかし、ワークWKの測定時に障害にならなければ基準物体70’を2つの面60’a,60’bと一体的に構成してもよい。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0114】
また、上記第2実施形態においては、2つのベクトルα60’a,β60’bを定義するための2つの面60’a,60’bを互いに直交するように構成した。しかし、互いに平行でない2つのベクトルをそれぞれ定義できれば、2つの面60’a,60’bは必ずしも直交する必要はない。これによっても、上記第2実施形態と同様の効果が期待できる。
【0115】
また、上記第2実施形態においては、基準座標系Sをワイヤ装置20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系W’とした。しかし、これに代えて、基準座標系Sの原点をワイヤ装置座標系W’と同一とし、基準座標系Sの座標軸の向きをワイヤ先端座標系Pの座標軸の向きと同一とした座標系を基準座標系Sとしてもよい。これによれば、ワイヤ先端座標系Pによって表された3次元形状データを基準座標系Sによって表された3次元形状データに変換する座標変換関数FPSのうち、回転成分MPSが不要となる。このため、座標変換関数FPSは、原点ずれ成分GPSとなり、座標変換関数FPSの計算を簡単にすることができる。
【0116】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記第1実施形態および第2実施形態およびこれらの変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0117】
上記第1実施形態および第2実施形態においては、ワイヤ装置20A,20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系WA,Wを基準座標系Sに設定した。しかし、この基準座標系Sは、ワイヤ装置20A,20B,20C,20’から引き出されるワイヤ21A,21B,21C,21’の各先端部ワイヤ21aA,21aB,21aC,21a’の位置が特定できれば、これに限定されるものではない。例えば、ワイヤ装置20A,20’に関する座標系であるワイヤ装置座標系WA,W’によって特定することができるワイヤ装置支持脚30,30’上のいずれかの位置に基準座標系Sの原点を設定してもよい。また、図17に示すように、基準座標系Sに対するワイヤ装置座標系WAの原点位置と座標軸の向きとを検出する機構を設けるようにしてもよい。図17は、ワイヤ装置座標系WA以外の位置に基準座標系Sの原点を設定した3次元形状測定システムを示している。なお、図において、コントローラ41、入力装置42、3次元画像データ処理装置43および表示装置44の各図は省略されている。
【0118】
この3次元形状測定システムにおいては、リング状に設けられたレール100に沿って摺動可能な移動体101上にワイヤ装置支持脚31’が固定されている。ワイヤ装置支持脚31’上には、上記第1実施形態と同様に3つのワイヤ装置20A,20B,20Cがそれぞれ設けられているとともに、同3つのワイヤ装置20A,20B,20Cからそれぞれ引き出されるワイヤ21A,21B,21Cの各先端部21aA,21aB,21aCに3次元形状測定装置10が接続されている。リング状に形成されたレール100の中心位置は既知であり、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されている。このレール100の所定の位置(例えば、図示矢印の示す位置)における断面中心に基準座標系Sの原点が設定されている。また、レール100には、基準座標系Sが設定された位置に対する移動体101のレール100上の位置を検出する位置検出器(図示せず)が設けられており、検出した移動体101の位置を表す信号が3次元画像データ処理装置43に出力されるようになっている。
【0119】
そして、移動体101の検出位置を原点とし、座標軸の向きが移動体101の検出位置からレール100の中心に向かうベクトルとレール100の接線方向のベクトルと、この2つのベクトルに垂直なベクトルの3つのベクトルの向きと同一である座標軸を設定した場合、移動体101の検出位置からワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の原点に向かうベクトルは常に同一であり、前記座標軸の向きに対するワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の座標軸の向きも常に同一であり、このベクトル成分および前記座標軸の向きをワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)の座標軸の向きにするための座標変換関数の回転成分は3次元画像データ処理装置43に予め記憶されている。そして、基準座標系Sにおける移動体101の検出位置から基準座標系Sの原点に向かうベクトルは計算でき、前述のようにレール100の中心位置は既知であるので、移動体101の検出位置からレール100の中心に向かうベクトルと、レール100の接線方向のベクトルは移動体101の位置を検出すれば計算できる。すなわち、ワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による座標値を移動体101の検出位置を原点とした座標軸による座標値に変換するための座標変換関数は記憶されており、移動体101の検出位置を原点とした座標軸による座標値を基準座標系Sの座標値に変換するための座標変換関数は、移動体101の検出位置を検出すれば計算できる。すなわち、移動体101の検出位置を検出すれば、ワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による3次元形状データは基準座標系Sによる3次元形状データに変換することができる。
【0120】
ワークWKの測定に先立って作業者は、リング状に形成されたレール100の内側に基準物体70A,70B,70Cを配置(図示せず)して、上記第1形態と同様にして座標変換関数FSPおよび座標変換関数FCPを計算する。そして、レール100の内側に基準物体70A,70B,70Cに代えてワークWKを配置(図示せず)してワークWKの測定を行う。この場合、移動体101をレール100に沿って移動させることにより、ワークWKを全周に亘って測定することができる。3次元形状測定装置10によって測定され3次元画像データ処理装置43によって生成された3次元形状データは、座標変換関数FCPによりワイヤ先端座標系Pによる3次元形状データに座標変換された後、座標変換関数FPSによりワイヤ装置座標系WAによる3次元形状データに座標変換される。
【0121】
そして、このワイヤ装置座標系WAによって表された3次元形状データは、前記位置検出器によって検出される移動体101の位置から計算される移動体101の検出位置を座標軸原点とした座標値を基準座標系Sの座標値に変換するための座標変換関数と、3次元画像データ処理装置43に予め記憶されているワイヤ装置座標系WA(またはワイヤ装置座標系WB,WC)による座標値を、移動体101の検出位置を座標軸原点とした座標値に変換するための座標変換関数により、基準座標系Sによる3次元形状データに座標変換される。3次元画像処理装置43は、この基準座標系Sによって表された3次元画像データに基づいてワークWKの3次元形状を表示装置44に表示させる。これによれば、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の効果が期待できるとともに、上記第1実施形態および第2実施形態に比べてワークWKをより広い範囲、例えば、3次元形状測定装置10に対向する測定対象物の裏側の部分から測定することができる。なお、この場合、ワイヤ装置支持脚31’の図示上下方向の長さを変化させることができる構成にすれば、3次元形状測定装置10を移動させることができる範囲を更に広くすることができ、高さのあるワークWKも測定することができる。また、いかなる測定方向からも共通の互いに平行でない2つのベクトルが定義できれば、上記第2実施形態に示したように、1つのワイヤ装置20’から引き出されるワイヤ21’の先端部21’aを3次元形状測定装置10’に接続した構成としてもよい。
【0122】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、3次元形状測定装置10,10’とワイヤ装置20A,20B,20C,20’とをワイヤ21A,21B,21C,21’で接続した。しかし、ワイヤ装置20A,20B,20C,20’、すなわち、本発明に係る支持装置から引き出される量、引き出される方向が特定できる部材であれば、ワイヤに限定されるものではない。例えば、互いに外径が異なる複数の筒体を同心円状に配置して、各筒体がより大きな外径の筒体内から出没することにより長さが伸縮自在の部材を接続部材として用いるようにしてもよい。この場合、接続部材の引き出される量および引き出される方向を上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様にして検出する検出器を、接続部材を支持する支持装置に設ける。これによっても、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
【0123】
また、上記第1実施形態および第2実施形態においては、基準物体70A,70B,70C,70’として球体を用いたが、3次元形状測定装置10による測定によって生成される3次元形状データにより所定の位置を定点として定義できるものであれば、基準物体70A,70B,70C,70’の大きさおよび形状等は特に限定されるものではない。例えば、楕円状の球体、角柱、角錐、円柱、円錐および多面体などの形状により形成された基準物体70A,70B,70C,70’、またはこれらの形状を含む形状に形成された基準物体70A,70B,70C,70’を用いてもよい。また、基準物体70A,70B,70C,70’の表面に同表面と識別可能なマークを形成し同マークを抽出して定点を計算するようにしてもよい。これによっても、上記各実施形態と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第1実施形態に係る3次元形状測定システムの全体を示す概略図である。
【図2】図1の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置とワイヤとの接続状態を説明するための断面図である。
【図3】図1の3次元形状測定システムにおけるワイヤ装置を示す斜視図である。
【図4】第1実施形態において触針によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図5】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FWS計算プログラムのフローチャートである。
【図6】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FCP計算プログラムのフローチャートである。
【図7】図1の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図8】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される座標変換関数FSP計算プログラムのフローチャートである。
【図9】図1の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される3次元形状表示プログラムのフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る3次元形状測定システムの全体を示す概略図である。
【図11】第2実施形態において触針によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図12】図10の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される回転成分MPS,原点ずれ成分GCP計算プログラムのフローチャートである。
【図13】図10の3次元形状測定システムにおける3次元形状測定装置によって基準物体を測定する様子を示した斜視図である。
【図14】図10の3次元形状測定システムにおける3次元画像データ処理装置によって実行される3次元形状表示プログラムのフローチャートである。
【図15】(A)〜(D)は第2実施形態における変形例を示す斜視図である。
【図16】(A),(B)は第2実施形態における他の変形例を示す斜視図である。
【図17】第1実施形態における変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0125】
WK…ワーク、10…3次元形状測定装置、13…球体、20A,20B,20C…ワイヤ装置、21A,21B,21C…ワイヤ、21aA,21aB,21aB…先端部、22A,22B,22C…外筒、30…ワイヤ装置支持脚、41…コントローラ、42…入力装置、43…3次元画像データ処理装置、44…表示装置、50…触針、60…テーブル、70A,70B,70C…基準物体、80…3次元形状測定装置支持脚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の3次元形状を測定して同測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを出力する3次元形状測定装置と、
基端部にて支持装置により引出し量および引出し方向が自在に支持され、かつ先端部に前記3次元形状測定装置を接続する接続部材と、
前記接続部材の前記支持装置に対する引出し量および引出し方向を用いて、所定の基準座標系に対する前記3次元形状測定装置の少なくとも位置を表す位置情報を取得する情報取得手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記取得した位置情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するデータ変換手段と、
前記データ変換手段によって変換された複数組の3次元形状データを合成する合成手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記支持装置は、前記接続部材の引出し量および引出し方向を検出する検出器を備える3次元形状測定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記所定の基準座標系の原点および座標軸の向きは、前記支持装置を基準に定められており、
前記情報取得手段は、前記位置情報に加えて、前記所定の基準座標系に対する前記3次元形状測定装置の向きを表す向き情報も取得する3次元形状測定システム。
【請求項4】
請求項3に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、少なくとも3つである3次元形状測定システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記データ変換手段は、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記位置情報および前記向き情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するための第1の座標変換関数を計算する第1の座標変換関数計算手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記第1の座標変換関数を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに座標変換する座標変換手段とを備えた3次元形状測定システム。
【請求項6】
請求項5に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記第1の座標変換関数計算手段は、前記3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第2の座標変換関数と、前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第3の座標変換関数とを前記第1の座標変換関数として計算する3次元形状測定システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の3次元形状測定システムにおいて、
前記3次元形状測定装置は、前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データに加え、前記3次元形状測定装置の測定対象空間内に配置された基準物体の3次元形状を表す3次元形状データも出力するものであり、
前記所定の基準座標系の原点は前記支持装置を基準に定められ、かつ前記所定の基準座標系の座標軸の向きは前記支持装置または前記基準物体を基準に定められるものであり、
前記データ変換手段は、前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記取得した位置情報に加え前記基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する3次元形状測定システム。
【請求項8】
請求項7に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、少なくとも1つである3次元形状測定システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記データ変換手段は、
前記基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて前記基準物体に関係した座標軸の向きを計算し、
前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記計算した座標軸の向きと同じ座標軸を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第4の座標変換関数を計算する第4の座標変換関数計算手段と、
前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記所定の基準座標系の原点と同じ原点を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第5の座標変換関数を計算する第5の座標変換関数計算手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記計算した第4および第5の座標変換関数を用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する座標変換手段とを備えた3次元形状測定システム。
【請求項10】
請求項9に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記第4の座標変換関数は、前記3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換し、
前記第5の座標変換関数は、前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに座標変換する3次元形状測定システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、さらに、
前記所定の基準座標系は、前記支持装置の所定の位置に基づいて定められており、
前記所定の基準座標系に対して前記支持装置を移動させる支持装置移動手段と、
前記所定の基準座標系によって表された前記支持装置の位置を検出する支持装置位置検出手段とを備え、
前記データ変換手段は、前記取得された位置情報に加え、前記支持装置位置検出手段によって検出される前記支持装置の位置を用いて、前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する3次元形状測定システム。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、ワイヤである3次元形状測定システム。
【請求項1】
測定対象物の3次元形状を測定して同測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを出力する3次元形状測定装置と、
基端部にて支持装置により引出し量および引出し方向が自在に支持され、かつ先端部に前記3次元形状測定装置を接続する接続部材と、
前記接続部材の前記支持装置に対する引出し量および引出し方向を用いて、所定の基準座標系に対する前記3次元形状測定装置の少なくとも位置を表す位置情報を取得する情報取得手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記取得した位置情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するデータ変換手段と、
前記データ変換手段によって変換された複数組の3次元形状データを合成する合成手段とを備えたことを特徴とする3次元形状測定システム。
【請求項2】
請求項1に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記支持装置は、前記接続部材の引出し量および引出し方向を検出する検出器を備える3次元形状測定システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記所定の基準座標系の原点および座標軸の向きは、前記支持装置を基準に定められており、
前記情報取得手段は、前記位置情報に加えて、前記所定の基準座標系に対する前記3次元形状測定装置の向きを表す向き情報も取得する3次元形状測定システム。
【請求項4】
請求項3に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、少なくとも3つである3次元形状測定システム。
【請求項5】
請求項3または請求項4のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記データ変換手段は、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記位置情報および前記向き情報を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換するための第1の座標変換関数を計算する第1の座標変換関数計算手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記第1の座標変換関数を用いて前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに座標変換する座標変換手段とを備えた3次元形状測定システム。
【請求項6】
請求項5に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記第1の座標変換関数計算手段は、前記3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第2の座標変換関数と、前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに変換するための第3の座標変換関数とを前記第1の座標変換関数として計算する3次元形状測定システム。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の3次元形状測定システムにおいて、
前記3次元形状測定装置は、前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データに加え、前記3次元形状測定装置の測定対象空間内に配置された基準物体の3次元形状を表す3次元形状データも出力するものであり、
前記所定の基準座標系の原点は前記支持装置を基準に定められ、かつ前記所定の基準座標系の座標軸の向きは前記支持装置または前記基準物体を基準に定められるものであり、
前記データ変換手段は、前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記取得した位置情報に加え前記基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する3次元形状測定システム。
【請求項8】
請求項7に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、少なくとも1つである3次元形状測定システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記データ変換手段は、
前記基準物体の3次元形状を表す3次元形状データを用いて前記基準物体に関係した座標軸の向きを計算し、
前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記計算した座標軸の向きと同じ座標軸を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第4の座標変換関数を計算する第4の座標変換関数計算手段と、
前記測定対象物の3次元形状を表す3次元形状データを、前記所定の基準座標系の原点と同じ原点を有する3次元座標系によって表された3次元形状データに変換するための第5の座標変換関数を計算する第5の座標変換関数計算手段と、
前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記計算した第4および第5の座標変換関数を用いて、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する座標変換手段とを備えた3次元形状測定システム。
【請求項10】
請求項9に記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記第4の座標変換関数は、前記3次元形状測定装置に関する座標系によって表された3次元形状データを前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データに変換し、
前記第5の座標変換関数は、前記接続部材の前記先端部に関する座標系によって表された3次元形状データを前記所定の基準座標系に関する座標系によって表された3次元形状データに座標変換する3次元形状測定システム。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、さらに、
前記所定の基準座標系は、前記支持装置の所定の位置に基づいて定められており、
前記所定の基準座標系に対して前記支持装置を移動させる支持装置移動手段と、
前記所定の基準座標系によって表された前記支持装置の位置を検出する支持装置位置検出手段とを備え、
前記データ変換手段は、前記取得された位置情報に加え、前記支持装置位置検出手段によって検出される前記支持装置の位置を用いて、前記3次元形状測定装置から出力される前記3次元形状データを、前記所定の基準座標系によって表された3次元形状データに変換する3次元形状測定システム。
【請求項12】
請求項1ないし請求項11のうちのいずれか1つに記載した3次元形状測定システムにおいて、
前記接続部材は、ワイヤである3次元形状測定システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−256188(P2007−256188A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83430(P2006−83430)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000112004)パルステック工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】
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