説明

3次元成形品およびその製造方法

a)単配向ポリマーからなる複数の一体化したフィルムまたはテープを含む構造体を提供する工程、b)配向ポリマーの融点未満の温度で圧力を加えることにより、構造体を3次元成形製品に成形する工程を含む3次元成形製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、3次元成形品、好ましくは、ポリマー、好ましくは単配向ポリマーのフィルムまたはテープを含む一体化した複数の単層体または2層構造体を含む3次元成形品の製造方法に関する。本発明はまた、その方法により得られる3次元成形品に関する。
【0002】
このような方法、およびこのような成形品は、例えば欧州特許出願公開第A−1627719号明細書に開示されている。この特許出願には、実質的に超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)からなり、実質的に接着マトリックスを含まない、複数の単配向単層体を含み、各単層体の方向が隣接する一方向単層体の方向に対してある角度だけ回転している構造体が記載されている。この構造体は下記の異なる工程で製造される。
− 第1の工程で、複数の一方向UHMwPEテープを、隣接するテープが部分的に重なり合うようにして、方向を揃えて並べ、次いで、高温でしばらくの間テープを共にプレスして単層体を得ることにより、単層体を製造する。
− その後、第2の工程で、単層体の上に複数のテープを、単層体について上で記載したのと同様の方法ではあるが、配向が異なる方向となるように置き、次いで、高温でしばらくの間テープと単層体を共にプレスして一体化した2層構造体を形成することにより、2層構造体を製造する。
− 最後に、第3の工程で、複数の2層構造体を積層し、次いで、高温でしばらくの間共にプレスして前記複数体を一体化し、一体化した単層体を含む成形品を形成する。
【0003】
形成された成形品は、フラットであっても凹凸があってもよい。このようにして得られた成形品は弾丸を防御する防弾製品としての使用に適しているが、それはまた、ナイフまたは他の鋭利な物体による穿刺に対しても抵抗性を示す。したがって、成形品は、例えば防弾チョッキのインサートとして使用することができるが、稼働中のエンジンなどのカバーとしても使用し得る。
【0004】
しかしながら、2層構造体を積層し、これらの2層構造体を共にプレスして、凹凸を有する、すなわち3次元の成形品を形成することにより、凹凸を有する物品を製造することは容易ではない。
【0005】
上記の第3の工程、すなわち加熱しながら2層構造体をプレスし一体化する工程では、前記2層構造体は互いに自由に滑り、最終3次元成形品でウイークスポットとなる折り目や皺が2層構造体中に生成する。このことは、3次元成形品が平面的な2次元構造から大きく変化させられる場合に特に言えることである。こうした方法で3次元製品を形成する型もまた複雑で、それ故、コスト高にもなる。
【0006】
本発明の目的は、このような欠点がないか、またはこのような欠点の程度がより低減された3次元成形品の製造方法を提供することにある。
【0007】
驚いたことに、これは、
a)一体化された複数の単層体または2層構造体を含む構造体であって、前記単層体または前記2層構造体がポリマー繊維またはポリマーフィルムまたはポリマーテープまたはこれらの組み合わせを含み、好ましくは前記単層体または前記2層構造体が単配向ポリマーのフィルムまたはテープを含む構造体を提供する工程;および
b)前記繊維、フィルムまたはテープが含有するポリマーの融点未満の温度で圧力を加えることにより、その構造体を3次元成形品に成形する工程
を含む3次元成形品の製造方法を提供することにより達成される。
【0008】
一体化した複数の単層体、または一体化した複数の2層構造体とは、本明細書では、前記単層体または前記2層構造体が積層され、高温でしばらくの間、共にプレスされていると理解される。一体化の後は、単層体または2層構造体は、一体化した積層体中で、互いに隣接する層に対して自由に滑ることができず、好ましくは2つの隣接する単層体または2層構造体の対向する面が全体に互いに結合する。複数とは、本明細書では、前記単層体または2層構造体の数が、それらを含む積層体に、好ましくは防刃特性および/または防弾特性を提供するのに十分な数であることと理解される。良好な防刃性および/または防弾性を得るためには、好ましくは少なくとも4枚、より好ましくは少なくとも50枚、最も好ましくは少なくとも100枚の単層体または2層構造体が使用される。単層体または2層構造体数の上限は、実用性、例えば最終製品の目的とする厚さなどによってのみ決定され、高速発射体からの衝撃に耐えることを目的とする製品では、好ましくは100,000枚以下であり、通常の脅威からの衝撃に耐えることを目的とする製品では好ましくは10,000枚以下である。
【0009】
この方法の工程a)で提供される構造体は、予備成形構造体としても知られているが、容易に形成されて、明確な寸法と均一な特性を有する構造体または製品が得られる。そのような構造体としては、例えばパネルや一体化した飾り板が挙げられる。
【0010】
驚いたことに、工程b)において、繊維、フィルム、またはテープの一体性は、3次元成形品形成後、大きく変形した部分でさえも、良好に維持されている。
【0011】
工程b)ではさらに、複雑な型を必ずしも使用する必要はなく、例えば簡単な曲げ装置などを使用することができる。
【0012】
本発明の方法で使用される単層体は、複数のポリマー繊維、ポリマーテープ、またはポリマーフィルムを含んでいることが好ましい。複数のポリマー繊維を含む単層体の場合、前記繊維は一方向に配置し得る。すなわち、繊維の大半、すなわち全繊維の少なくとも90%、好ましくは全繊維が、同じ方向に並べられる。そのような単層体により、それらを含む構造体に良好な防弾特性が提供される。あるいは、単層体中のポリマー繊維は、織物、編物、または例えばフェルト様などの不織布とすることができる。複数のポリマーテープを含む単層体の場合、前記テープは織ってテープ織り単層体を形成することが好ましく、テープを平織りに織ることがより好ましい。そのようなテープ織り単層体は良好な形状安定性を有し、取り扱いが容易である。ポリマーテープを含む単層体の他の実施形態では、前記テープは一方向に配置される。すなわち、全テープの少なくとも90%、好ましくは全テープが、同じ方向に並べられる。そこでは、前記テープは、共通の走行方向に沿って、互いに隣接するか、または重なり合う。前記テープが重なり合う場合、重なり合う面積は、好ましくは最も狭いテープ表面の少なくとも0.1%であり、より好ましくは少なくとも0.5%であり、最も好ましくは少なくとも1%である。前記の重なり合う面積は、最も狭いテープ表面の好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、最も好ましくは2%以下である。
【0013】
フィルムまたはテープにおいては、ポリマーとして、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリアミド(特に、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド(teraphthalamide))、液晶ポリマー、および梯子型ポリマー(ポリベンズイミダゾール、またはポリベンゾオキサゾール、特に、ポリ(1,4−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)、またはポリ(2,6−ジイミダゾ[4,5−b−4’,5’−e]ピリジニレン−1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン)など)からなる群より選択されるポリマーを使用することができる。上記ポリマーのモノマーを含むコポリマーも使用し得る。結晶性もしくは半結晶性のポリマー、特にポリオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、およびポリアミドを使用すると、非常に良好な結果が得られる。ポリオレフィンは、ポリエチレンが好ましい。最も好ましいのは、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)の使用であり、それはこの方法により非常に良好な防弾性を有する3次元成形品が得られ、同時に本発明の方法が円滑に実施されるからである。超高分子量ポリエチレンは、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状ポリエチレンを使用することが好ましい。直鎖状ポリエチレンは、本明細書では、炭素原子100個当たり1個未満の側鎖を有し、および好ましくは炭素原子300個当たり1個未満の側鎖を有するポリエチレンを意味すると理解され、側鎖または分岐は、通常、少なくとも10個の炭素原子を有する。側鎖は、例えば欧州特許第0269151号明細書に記載されているように、2mm厚さの圧縮成型フィルムについて、FTIRにより適切に測定することができる。直鎖状ポリエチレンは、さらに、これと共重合可能な1種以上の他のアルケン、例えばプロペン、ブテン、ペンテン、4−メチルペンテン、オクテンなどを、5mol%まで含有してもよい。直鎖状ポリエチレンは、少なくとも4dl/gの固有粘度(IV、135℃でデカリン溶液について測定)を有する高モル質量のものが好ましく、より好ましくは少なくとも8dl/gであり、最も好ましくは少なくとも10dl/gである。そのようなポリエチレンは、超高分子量ポリエチレンとも呼ばれる。固有粘度は、MnやMwのような実際のモル質量パラメータより容易に測定することができる分子量の尺度である。
【0014】
ポリマー繊維を製造するには、上に示したポリマーと同じものを使用してもよい。当業者であれば、上記ポリマーから繊維を製造する方法を知っていよう。広く知られた方法を例示すると、ポリマーを溶融紡糸して繊維にする方法、およびポリマーをゲル紡糸して繊維にする方法が挙げられる。そのような方法には、また、高強度繊維、すなわちASTM D2256−02(2008)による測定で少なくとも0.5GPaの強度を有する繊維を製造するために、紡糸後に前記繊維を延伸することが含まれる。そのような高強度繊維により、それを含有する構造体に良好な防刃特性および/または防弾特性が付与される。
【0015】
上記ポリマーのテープまたはフィルムは、ポリマーを押出機に供給し、それらの融点を超える温度でテープまたはフィルムを押出し、押出されたポリマーテープまたはフィルムを延伸することによって製造してもよい。必要ならば、ポリマーを押出機に供給する前に、ポリマーに適当な液状の有機化合物を、例えばゲルを生成するために混合するようにしてもよい。これはUHMwPEを使用する場合などに好適である。
【0016】
UHMwPEを使用する場合、そのようなフィルムまたはテープを形成するための好ましい方法は、UHMwPE粉末を凝集してフィルムまたはテープとし、次いで、延伸することを含む。例えば、一組みのエンドレスベルトの間にUHMwPE粉末を供給し、ポリマー粉末をその融点未満の温度で圧縮成型し、そして得られた圧縮成型ポリマーをローラで延ばし、その後、延伸することが可能である。そのような方法は、例えば、米国特許第5,031,133A号明細書に記載されており、これを参照により本明細書に組み込むこととする。そのようなUHMWPEは、例えば米国特許第5,773,547号明細書に記載されているように、固体状態で延伸可能なものであるべきである。製造されたテープまたはフィルムの延伸はこの分野で知られた手段で行ってもよい。
【0017】
そのような手段は、適切な延伸装置による押出延伸および引張延伸を含む。延伸は2方向に行ってもよいが、1つの方向により速い延伸速度で延伸して、その方向にポリマーを配向させるようにしてもよい。延伸は、いわゆる一軸延伸のように、1方向に行うことが好ましく、そのような一軸延伸により、単配向ポリマーを含むテープまたはフィルムが製造される。機械的強度および剛性を向上させるために、延伸を多段で行ってもよい。好ましい超高分子量ポリエチレンのテープまたはフィルムの場合、延伸は通常、多段延伸工程で軸方向に行う。第1の延伸工程は、例えば延伸係数3に延伸することを含み得る。通常、多段延伸では、延伸温度120℃までは延伸係数9、延伸温度140℃までは延伸係数25、延伸温度150℃までおよびそれを超えるときは延伸係数50となり得る。高温での多段延伸により、約50以上の延伸係数を達成し得る。これにより高強度のテープまたはフィルムが得られ、そのため超高分子量ポリエチレンのテープでは、1.5GPa〜1.8GPa以上の強度を得ることができる。
【0018】
テープは延伸したフィルムを延伸方向に切断または引裂いて製造してもよく、あるいは上記の方法により直接得てもよい。フィルムを限定した幅で製造し、延伸することが好ましい。この延伸プロセスの間に、フィルムの幅は減少し、最終的にテープが得られる。幅が450mm未満であれば、その製品はテープであるとされる。テープは10〜400mmの幅を有することが好ましく、20〜350mmであるとより好ましく、25〜250mmであるとより好ましい。
【0019】
単層体を製造するために使用する最終のフィルムまたはテープの面密度は、例えば5〜200g/mと広範囲にわたって変化し得る。面密度は、好ましくは10〜120g/mであり、より好ましくは15〜80g/mであり、最も好ましくは20〜60g/mである。
【0020】
一体化した複数のフィルムまたはテープを含む構造体は、フィルムまたはテープの積層体を作り、この積層体を共に、配向ポリマーの融点未満の温度で圧縮することにより製造してもよく、あるいは第1の工程でフィルムまたはテープを含む単層体または2層体を製造し、第2の工程で単層体または2層体を一体化してパネルなどの構造体とすることにより製造してもよい。
【0021】
単層体および2層体は様々な方法で製造することができる。これらのプロセスの1つである、欧州特許出願公開第A−1627719号明細書に開示されている方法では、複数の一方向のテープを、各テープが同じ方向に整列するように並べ(隣接するテープが部分的に重なり合うようにしてもよい)、前記複数の一方向テープをある一定の圧力、高温で一定時間圧縮し、これにより、一体化した一方向単層体としても知られる、一方向単層体を形成する。好ましくは、そのような単層体の2つを、互いに、1つの単層体の配向方向がもう一方の単層体とある角度、好ましくは90度回転した状態となるように配置し、同じ条件で共にプレスして、一体化した2層構造体としても知られる2層構造体を形成する。
【0022】
欧州特許出願公開第A−1627719号明細書で開示されている他の方法では、第1工程において、上で定義した単層体を提供し、第2工程で、複数の一方向テープを、各テープが同一方向で、隣接するテープが部分的に重なり合うように並べ、前記複数のテープを第1工程で提供された単層体の上に載せる。このとき、第2工程で提供された前記複数のテープの配向方向を、第1工程で提供された単層体の配向方向に対してある角度、好ましくは90度回転させる。その後、複数のテープを単層体と共に、ある圧力、高温で、一定時間圧縮し、一体化した2層構造体を形成する。
【0023】
上記プロセスは隣接するテープを重ね合わせずに行うことが好ましい。このようにして、最終の3次元成形品の防弾特性が改善されてきた。これにより単層体を均一な厚さにすることができる。単層体を一体化するために、隣接するテープをバインダーで接着してもよい。適切なバインダーは、例えば、欧州特許第0191306B1号明細書、欧州特許出願公開第1170925A1号明細書、欧州特許第0683374B1号明細書および欧州特許出願公開第1144740A1号明細書に記載されている。バインダーは、例えば、横断接着テープ(一方向テープに対して横方向)、少なくとも部分的なテープのコーティング、またはポリマー担体といった様々な形態および方法で適用することができる。単層体形成時にバインダーを適用すれば、テープを安定化させるのに有利であり、それによって隣接するテープが重なり合うのを回避しつつ、生産サイクルをより速くすることができる。
【0024】
バインダーは、可能な限り少量使用することが好ましい。これにより、最終製品は高い防弾保護性と軽量性を併せ持つ。さらに、本発明の方法では非常に良好な結果が得られる。製品中の単層体の一体化を維持しながら、大きな変形が可能である。工程a)で提供される構造体が10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、より一層好ましくは2重量%未満のバインダーを含有する場合に、良好な結果が得られる。構造体はバインダーを含有しないことが最も好ましい。これは、例えば、隣り合うテープの隣接する縦方向の端面に超音波溶接を使用するなどの代替接着手段を使用すれば可能である。他の好ましい一実施形態では、単層体は、延伸ポリマーからなる複数の単方向テープを、織物構造体を形成するように並べることにより作られる。そのような単層体は、繊維の代わりに延伸ポリマーからなるテープを、織る、編むなどの、通常行われている織物技術を適用することによって製造することができる。本発明の3次元成形品は非常に好ましい防弾特性を示す。
【0025】
繊維を含む単層体または2層構造体もまたバインダーを含有してもよい。特に、繊維を含む単層体または2層構造体では、バインダーの含有率が15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、最も好ましくは前記単層体または2層構造体がバインダーを含まないとき、良好な結果が得られた。
【0026】
重なり合っていないテープを含む単層体および2層体を製造するさらに別の方法については、本明細書に、国際公開第2007/122009号パンフレットが参照される。
【0027】
単層体および2層体へのテープの一体化は、高温で、好ましくはポリマーの融点より2〜40℃低い温度、より好ましくはポリマーの融点より5〜30℃低い温度で行うことができる。
【0028】
UHMwPEテープの場合、一体化は、欧州特許出願公開第A−1627719号明細書に示されているような温度、圧力および時間で行うことができる。この開示は参照により本明細書に組み込むものとする。良好な結果は、温度100〜150℃、圧力10〜100N/cmで得られる。これらの条件を適用する時間は当業者であれば容易に決定することができるが、数秒〜数分の変動があり得、テープの厚さとともに長くなり、温度の上昇および圧力の上昇とともに短くなる。
【0029】
単配向ポリマーからなるフィルムまたはテープを1枚以上含む一体化した単層体を複数枚含む構造体は、一方向単層体を、好ましくは少なくとも4枚、好ましくは少なくとも8枚、より好ましくは少なくとも16枚、より一層好ましくは少なくとも32枚含む。本発明の多層材料シート中の一方向単層体の数を増加させれば、より頑丈でより防弾性が高い3次元成形品が提供される。この点で、本発明の3次元成形品の好ましい厚さの範囲は3〜75mmであり、より好ましくは5〜50mmである。
【0030】
この構造体は一体化した構造体であって、例えば、単配向ポリマーからなる複数の一体化したフィルムまたはテープを圧縮することにより製造してもよい。構造体を製造するそのような方法は、例えば、欧州特許第1627719号明細書に記載されている。原則として、単層体または2層体の積層体が形成され、構造体へと一体化される。この方法のさらに他の実施形態は、国際公開第2007/122009号パンフレットに記載されている。単配向ポリマーからなるフィルムまたはテープを1枚以上含む複数の一体化した単層体を含む構造体への、単層体または2層体の一体化は、水圧プレスにより適切に行ってもよい。一体化は、単層体が互いに比較的強固に接着して1つのユニットを形成することを意味することを意図するものである。一体化中の温度は、一般にプレスの温度により制御される。一般に、最低温度は、妥当な一体化速度が得られるように選択される。この点で、80℃が適切な下限温度であり、この下限は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、最も好ましくは140℃以上である。最高温度は、延伸ポリマー単層体が、例えば溶融によりその優れた機械的特性を失う温度未満で選択される。その温度は、延伸ポリマー単層体の融点より、好ましくは少なくとも2℃、好ましくは少なくとも5℃、より一層好ましくは少なくとも10℃低い温度である。延伸ポリマーの単層体が明確な融点を示さない場合、延伸ポリマー単層体が機械的特性を失い始める温度を、融点の代わりに読み取らなければならない。好ましい超高分子量ポリエチレンの場合、145℃未満の温度が一般に選択されるであろう。一体化中の圧力は、好ましくは少なくとも7MPa、より好ましくは少なくとも15MPa、より一層好ましくは少なくとも20MPa、最も好ましくは少なくとも35MPaである。この方法によれば、剛性の高い防弾製品が得られる。一体化に最適な時間は、温度、圧力および部品の厚さなどの条件により異なるが、一般に5〜120分の範囲であり、ルーチンの実験機より検証することができる。
【0031】
高い防弾性を達成するために、高温で圧縮成型した後の冷却も、加圧下で行うことが好ましい。圧力は、少なくとも温度が十分に低くなって緩みが生じなくなるまで維持することが好ましい。この温度は当業者であれば決定することができる。
【0032】
好ましくはないが、工程a)で提供される構造体が既に3次元構造を有するようにすることは可能である。例えば、構造体を1方向に湾曲させたり、あるいは2次元構造からごく僅かにそらせることができる。工程a)で提供される構造体は、好ましくはフィルムまたはテープを含む一体化した複数の単層体または2層構造体を含む平面パネルであることが好ましい。そのような平面パネルは、2層体の積層体から、または単層体の積層体からでさえも、簡単な平面型を使用して、フィルムおよびテープに、または単層体もしくは2層体に(これらがこの構造体を製造するために使用されているなら)、折り目または皺を作らずに容易に製造することができる。
【0033】
工程b)の成形は、室温からポリマーの融点より数度低い温度までの間で行われることが可能である。工程b)の温度は、好ましくは室温である。この温度では、構造体をさらに加熱する必要はなく、容易に成形することができる。
【0034】
工程b)では、一段工程で、単層体の配向ポリマーの融点未満の温度で力を加えて、3次元成形品を成形することができる。工程a)で提供された構造体の成形を、工程b)において、2つ以上の副工程で行うことも可能である。その場合、各工程では部分的な成形が行われ、全工程の後に最終的に所望の形状の3次元成形品を得る。この手順は、完成したデザインを得る必要がある場合、または3次元成形品が2次元の形状から大きく変わる場合に行われ得る。この場合、各工程では、製品の成形用として比較的簡単な型を使用することができる。工程a)で提供される構造体をプレフォームに成形しておくことも可能である。プレフォームの形状は、最終の3次元成形品の形状に対応させることが好ましく、これにより、最終的に必要な正確な形状を得るために機械加工で切除する必要がある余分な材料の量が、ゼロまたは非常に限られたものになる。プレフォームは、フラットパネルから容易に、切断、打抜き、または他の任意の方法により機械加工することができる。工程b)における成形方法の好ましい例としては、折る、または曲げるなどが挙げられる。
【0035】
工程b)のプロセスを実施する機器は、金属の冷間加工を行う金属工業から知られる。例えば、ヒンジ付ベンダー、折り曲げ支持具などを使用して、フラットパネルを折ることができる。また、3本ロールミルにパネルを1回(ones)または数回通して曲げることができる。
【0036】
折り目は直線であることが多いであろう。しかしながら、より複雑に折ることも可能である。例えば、製品は、曲線からなる折り目を含んでいてもよく、あるいは互いに横切る数本の折り目、すなわち交差する折り目さえも同様に含んでいてもよい。
【0037】
本発明は、また、本発明の方法により得られる3次元成形品に関する。
【0038】
そのような3次元成形品の用途の好ましい例としては、装甲車製造用のパネルが挙げられる。パネルは3次元構造体であるため、それ自身全体的に高い剛性を有する場合に、パネルを支持するための重くて複雑な金属フレームの使用を必要とせずに、車両を製造することができる。
【0039】
本発明は、また、本発明のプロセスにより得られる3次元成形品のレードームとしての使用に関する。本発明は、さらに、レーダーアンテナ、特に航空機に装備されるタイプのものを、包囲し、かつ保護するためのレードームであって、前記レードームが本発明の方法により得られる3次元成形品を含むレードームに関する。本明細書では、レードームは、電磁放射装置、例えば航空機、地上または船舶用の、例えばレーダーなどを保護するために使用される任意の構造体であると理解される。レードームが航空機に装備される場合、レードームは、航空機のノーズ、翼または胴体の1部もしくは航空機のテールとして形成し、配置することができる。本発明のレードームの利点は、良好な剛性分布を有することである。さらなる利点は、本発明のレードームが良好なE−フィールド分布を有することであるということができる。
【0040】
本発明のレードームのさらに重要な利点は、前記レードームが、特に超高分子量ポリエチレンのゲル紡糸繊維を使用した場合に、類似の構造を有する公知のレードームよりも軽量で、しかも、構造的および/または電磁的機能が向上することである。驚いたことに、本発明のレードームは公知のレードームと比較して狭い周波数帯に同調しないことがわかった。本発明のレードームのさらに重要な利点は、例えば軍用航空機の場合に、発射体や、鳥との衝突、雹などに対する抵抗性が向上することにある。
【0041】
[本出願にある試験方法は以下の通り]
・ 固有粘度(IV)は、PTC−179法(Hercules Inc.Rev.4月29日、1982年)に従い、酸化防止剤としてDBPCを2g/l−溶液の量で含むデカリン中(溶解時間は16時間)、135℃で、異なる濃度で測定した粘度をゼロ濃度に外挿することにより測定される;
・ ポリマーの融点は、インジウムおよびスズにより較正した電力補償PerkinElmer DSC−7装置を用い、DSCにより、10℃/分の加熱速度で測定される。DSC−7装置の較正(2点温度較正)には、約5mgのインジウムおよび約5mgのスズを、両者とも少なくとも小数点2桁まで秤量して使用する。インジウムは温度および熱流量の両方の較正に使用し、スズは温度の較正のみに使用する。
【0042】
ここで本発明を以下の実施例および比較例によってさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
[実施例]
22dl/gのIVを有するUHMwPEの粉末を135℃の温度で凝集させ圧縮してフィルムとし、次いで、140℃でローラにかけて厚さを25%まで減少させ、その後、フィルムを35回延伸してテープとすることにより、幅50mm、厚さ40μmを有するUHMwPEテープを製造した。
【0044】
平織り法でテープを織って単層体を製造した。織った単層体40枚の積層体を、135℃で60分間、圧力100barで一体化して、面密度が4kg/mを僅かに下回るフラットパネルを得た。半径が最小となる位置で測定したパネル厚さの5倍の半径で、20℃で90℃の角度以上にパネルを折り曲げた。折り曲げは3点曲げ器を使用して行った。折り曲げ後、3次元成形構造体の単層体の一体性は十分に保持されていた。層間剥離は見られなかった。
【0045】
[比較例A]
単層体の積層体を折り部を含む3次元成形品用の型に置く点で異なる以外は、実施例と同じ手順で行い、型内で、135℃で60分間、圧力100barを加えて、90°の角度を有する製品を製造した。緩い単層体積層物の取り扱いや型内への配置は困難であり、層はその位置が互いにずれる傾向にあった。さらに、複雑で高価な型を使用しなければならなかった。
【0046】
[比較例B]
単層体としてDyneema(登録商標)HB2(DSM Dyneema、オランダ(the Netherlands))を使用し、実施例と同じ手順で、面密度が約4kg/mのパネルを成形した。Dyneema(登録商標)HB2は、約80重量%のUHMwPE繊維と、約20重量%のマトリックスポリマーを含む。工程b)で曲げた際、僅かに曲げたところで既に座屈や繊維層間に剥離が観察され、さらに曲げると重大な層間剥離が生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一体化された複数の単層体または2層構造体を含む構造体であって、前記単層体または前記2層構造体がポリマー繊維またはポリマーフィルムまたはポリマーテープまたはこれらの組み合わせを含み、好ましくは前記単層体または前記2層構造体が単配向ポリマーのフィルムまたはテープを含む構造体を提供する工程;および
b)前記繊維、フィルムまたはテープが含有する前記ポリマーの融点未満の温度で圧力を加えることにより、前記構造体を3次元成形品に成形する工程
を含む3次元成形品の製造方法。
【請求項2】
前記ポリマーは、UHMwPEである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テープまたはフィルムは、ポリマー粉末としてUHMwPEを凝集させてフィルムまたはテープとし、次いで、前記フィルムまたはテープを延伸することによって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)で提供される前記構造体は、10重量%未満のバインダーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)で提供される前記構造体は、バインダーを含まない、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程a)で提供される前記構造体は、フラットパネルである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成形工程b)は、室温で行われる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記成形工程b)は、折り工程である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られる製品。
【請求項10】
装甲車製造用パネルである請求項9に記載の製品。
【請求項11】
請求項9または10に記載の製品の、防弾製品または装甲車の製造における使用。
【請求項12】
請求項9に記載の製品を含むレードーム。

【公表番号】特表2012−512764(P2012−512764A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541434(P2011−541434)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067369
【国際公開番号】WO2010/070027
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】