3次元造形装置、3次元造形方法及び造形物
【課題】長時間を要することなく高精細な造形物を形成することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びこれらにより形成された造形物を提供すること。
【解決手段】3次元造形装置100は、造形物を構成する主な材料である樹脂材料を造形ステージ15上に供給する供給ノズル17と、造形物全体の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にレーザ光を照射して硬化させる照射機構と、その断面画像データに基づき、樹脂材料の硬化層にカラーインクを吐出するインクジェットヘッド30とを備える。樹脂材料とは異なる材料であるインクが供給されるので、従来の装置のように例えば1層ごとの厚さの薄いUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。
【解決手段】3次元造形装置100は、造形物を構成する主な材料である樹脂材料を造形ステージ15上に供給する供給ノズル17と、造形物全体の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にレーザ光を照射して硬化させる照射機構と、その断面画像データに基づき、樹脂材料の硬化層にカラーインクを吐出するインクジェットヘッド30とを備える。樹脂材料とは異なる材料であるインクが供給されるので、従来の装置のように例えば1層ごとの厚さの薄いUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光等のエネルギー線の照射により硬化する材料を用いて3次元の物体を形成する3次元造形装置、3次元造形方法及びこれらにより形成された造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、3次元の造形物を形成する造形装置は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる装置として知られており、業務用として広く使われている。一般的には、3次元造形装置は、造形される対象物の所定の厚さごとの形状データ、つまり各層ごとの形状データに基づき、1層ずつ造形物を形成していく。
【0003】
3次元造形装置の主な方式の1つとして、例えばエネルギー線として光を利用する光造形方式は、光硬化性樹脂にレーザ光を部分選択的に照射することにより、樹脂の所望の部分を硬化させて描画し、造形物を形成する方式である。
【0004】
光造形方式の中には、例えば自由液面法及び規制液面法がある。自由液面法では、液体の光硬化性樹脂の液面が空中に露出しており、レーザ光が空気と液面の界面にフォーカスされることで描画される。規制液面法では、液体の光硬化性樹脂の液面がガラス等で規制され、そのガラスを通して光が光硬化性樹脂(とガラスとの界面)にフォーカスされることで描画される。
【0005】
そのほか、カラーに着色された造形物を形成する装置として、特許文献1に記載の三次元造形装置がある。この三次元造形装置は、熱可塑性樹脂を吐出するインクジェットヘッドを備えている。造形対象物の断面の形状データに応じて、1層ずつインクジェットヘッドが小滴の熱可塑性樹脂が吐出する。吐出された熱可塑性樹脂が放熱して冷えることで固まり、これにより造形物が形成される。インクジェットヘッドに設けられた着色用の吐出ノズルから着色された熱可塑性樹脂が吐出され、また、そのインクジェットヘッドに設けられた造形用の吐出ノズルから白色の熱可塑性樹脂が吐出される。これら着色用吐出ノズル及び造形用吐出ノズルから吐出される熱可塑性樹脂は、すべて造形物を構成する材料として用いられ、その違いは着色するか否か(白色は下地用)である(例えば、特許文献1の明細書段落[0030]−[0033]、[0053]、[0061]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−280356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の三次元造形装置では、熱可塑性樹脂あるいは光硬化性樹脂(UVインク)により造形物を形成する。したがって、造形物として積層される1層ごとの樹脂の厚さが10μmより小さく非常に薄いため、3次元の造形物の形成時間について実用的な速度が得られないという問題がある。
【0008】
また、3次元造形物を構成する材料として粉体を用いる方式もあるが、粉体の場合、材料として上記のような樹脂材料を用いる場合に比べ、造形物の形状が粗くなる、つまり高精細さに欠けるという問題もある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、長時間を要することなく高精細な造形物を形成することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びこれらにより形成された造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元造形装置は、支持体と、照射機構と、供給機構とを具備する。
前記支持体は、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が積層されて形成される造形物を支持する。
前記照射機構は、前記造形物を形成するために、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する。
前記供給機構は、前記断面画像データに基づき、前記照射機構により照射されて硬化した前記樹脂材料に、前記造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する。
【0011】
造形物の主な材料である樹脂材料とは異なる材料であって、造形物の一部を構成する要素である材料が供給機構から供給されるので、従来の装置のように例えばUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。また、粉体材料ではなく、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が、造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0012】
前記供給機構は、前記造形物を着色するために、前記樹脂材料とは異なる材料としてインクを吐出するインクジェットヘッドを有してもよい。これにより、造形物に白黒、グレースケール、またはカラー等で着色することができる。
【0013】
例えば、前記樹脂材料は、可視光を透過する材料、または白色系の材料である。
【0014】
前記供給機構は、前記樹脂材料とは異なる材料として、特定の性質を持つ機能性材料を供給してもよい。これにより、造形物の領域に応じて、磁性や導電性等の特性を持つ領域を形成することができる。
【0015】
前記供給機構は、少なくとも1層の前記樹脂材料が積層されるごとに前記樹脂材料とは異なる材料を供給してもよい。
【0016】
前記供給機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記樹脂材料とは異なる材料を供給してもよい。その場合、前記照射機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記エネルギー線を照射する。これにより、エネルギー線の使用のためのエネルギーを節約することができる。
【0017】
前記3次元造形装置は、規制体と、供給ノズルと、移動機構とをさらに具備してもよい。
前記規制体は、第1の方向に沿う直線状の領域を含む表面を有し、前記表面のうち前記直線状の領域が前記支持体に最も近くなるように、前記支持体に対面して配置される。
前記供給ノズルは、前記支持体側と前記直線状の領域との間の領域であるスリット領域に、前記樹脂材料を供給する。
前記移動機構は、1層分の前記樹脂材料の硬化層を形成するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って、前記規制体に相対的に前記支持体ジを移動させ、前記エネルギー線により前記材料の前記硬化層を積層するために、前記積層の方向に沿って前記規制体と前記支持体とを相対的に移動させる。
前記照射機構は、前記供給ノズルにより前記スリット領域に供給された前記樹脂材料に、前記規制体を介して前記エネルギー線を照射する。
【0018】
規制体の直線状の領域が支持体に最も近くなるように規制体が配置されるので、そのスリット領域またはその近傍の領域で材料にエネルギー線が照射され樹脂材料が硬化する。つまり実質的に支持体側と直線状の領域との間のスリット領域で材料が硬化し、規制体の下流側では、規制体の表面が支持体から離れていくように両者が移動機構によって相対的に移動していく。これにより、規制体から材料の硬化層をきれいに剥がすことができる。
【0019】
また、広い平面状の領域ではなく、規制体の直線状の領域によりスリット領域が形成されている。したがって、上述のように材料が規制体から剥がれやすい。また、材料が硬化するときの収縮力が規制体に加えられても、規制体に歪みや変形が生じることもない。これにより、各硬化層の平面度を高め、その各硬化層の厚さを高精度に制御することができる。
【0020】
本発明に係る3次元造形方法は、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させることを含む。
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料が供給される。
【0021】
造形物の主な材料である樹脂材料とは異なる材料であって、造形物の一部を構成する要素である材料が供給されるので、従来の装置のように例えばUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。また、粉体材料ではなく、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が、造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0022】
本発明に係る造形物は、上記の3次元造形方法により形成される造形物である。
【発明の効果】
【0023】
以上、本発明によれば、長時間を要することなく高精細な造形物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示した3次元造形装置の平面図であり、
【図3】図3は、その3次元造形装置の正面図である。
【図4】図4は、ドラムを支持する機構の例を説明するための図であり、ドラムの長手方向と直交する方向で見た図である。
【図5】図5は、3次元造形装置の動作を順に示す図である。
【図6】図6は、図5から続く、3次元造形装置の動作を順に示す図である。
【図7】図7は、スリット領域及びその周辺の状態を示す図である。
【図8】図8は、図5Cに示した、造形ステージ上の樹脂材料R及び硬化層を拡大して示した図である。
【図9】図9は、このようにカラーで着色された造形物が形成される過程を順に示した模式的な図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。
【図11】図11は、図10に示した3次元造形装置の平面図である。
【図12】図12は、別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【図13】図13は、さらに別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
【0027】
(3次元造形装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。図2は、図1に示した3次元造形装置100の平面図であり、図3はその正面図である。
【0028】
この3次元造形装置100は、規制液面法のうち、2次元領域で液面を規制する従来までの方法とは異なり、1次元領域で液面を規制する1次元規制液面法を採用している。
【0029】
3次元造形装置100は、ベース11と、ベース11上に配置された造形ステージ15と、上下方向(Z軸方向)で造形ステージ15に対面可能に配置されたドラム10とを備える。また、3次元造形装置100は、ドラム10の下方に配置され樹脂材料をドラム10の表面に供給する供給ノズル17と、供給ノズル17により供給された樹脂材料に、エネルギー線としてレーザ光を照射する照射機構20(図3参照)とを備える。図1及び2に示すように、ドラム10のY軸方向での隣には、造形物を構成する樹脂材料の硬化層に、カラーインクを吐出するインクジェットヘッド30が配置されている。
【0030】
ドラム10は実質的には円筒状に形成され、その中身は空洞となっている。ドラム10はその長手方向がX軸方向に沿って配置されている。規制体として機能するドラム10は、後述するように、供給ノズル17から造形ステージ15及びドラム10の間に供給された材料の高さ(厚さ)を上述のように1次元領域で規制する。1次元領域とは、図7に示すように、ドラム10の長手方向、つまりX軸方向に沿った1次元とみなせる直線状の領域A1である。
【0031】
ドラム10は、例えばガラス、アクリル、その他の透明樹脂で形成される。ドラム10は、必ずしもこれらの材料に限られず、照射機構20から照射されるエネルギー線を透過する材料であれば何でもよい。
【0032】
図4は、ドラム10を支持する機構の例を説明するための図であり、ドラム10の長手方向と直交するY軸方向で見た図である。
【0033】
図4に示すように、ドラム10の両側にはX軸の周りにドラム10を回転可能に支持する複数のガイドローラ6、7が設けられている。図4以外の図では、上記ガイドローラ6,7を示していない。これらのガイドローラ6、7は、ローラ支持部8に回転可能に支持されている。ガイドローラ7は、ドラム10の内周面を下方に押さえ、ガイドローラ6は、ドラム10の表面である外周面10aを下方から支持している。例えばガイドローラ6は、図4で見て奥行き方向に複数設けられていてもよい。このように、ドラム10は、ガイドローラ6、7により挟み込まれることで回転可能に支持される。
【0034】
ガイドローラ6、7は、造形ステージ15側とドラム10の外周面10aとの間に、後述するスリット領域S(図7参照)を形成するように、Z軸方向における所定の高さ位置でドラム10を支持している。すなわち、造形ステージ15の表面と、ドラム10の外周面10aの最下の部分(ドラム10のうち最も造形ステージ15に近い部分)である、上記直線状の領域A1とが対面することにより、スリット領域Sが形成される。
【0035】
なお、このようにガイドローラ6、7で支持される形態以外にも、X軸方向でのドラム10の端部に、回転軸を持つ支持部材がベアリングを介して接続されていてもよい。
【0036】
造形ステージ15は、1層の樹脂材料ごとに形成されていく造形物を支持する支持体として機能する。造形ステージ15は、昇降機構16により昇降可能に支持されている。図1に示すように、造形ステージ15及び昇降機構16は、Y軸移動機構14によってY軸方向に沿って移動可能とされている。
【0037】
Y軸移動機構14は、昇降機構16を搭載した移動ベース12と、図示しないモータと、ベース11上に敷設され、移動ベース12の移動をガイドするガイドレール13とを有する。ガイドレール13は、Y軸方向でドラム10及びインクジェットヘッド30をカバーするような長さに敷設されている。このY軸移動機構14により、造形ステージ15は、ドラム10及びインクジェットヘッド30のそれぞれの下方に配置されるように、Y軸方向に沿って連続的に移動可能となる。
【0038】
図1及び4に示すように、供給ノズル17は、例えばドラム10の下部であって、直線状の領域A1から離れた位置に配置されている。供給ノズル17として、その長手方向に沿って、樹脂材料Rを吐出するための図示を省略した複数の穴またはスリットが設けられている。これらの複数の穴またはスリットは、ドラム10側に向けて開口している。
【0039】
エネルギー線が光である場合には、樹脂材料Rとしては、典型的には光硬化性樹脂が用いられる。後述するように、本実施形態に係る3次元造形装置100は、カラーで着色された造形物を形成するので、樹脂材料Rとしては透明あるいは半透明、つまり、可視光(の実質的に全部または一部)を透過する材料が用いられる。例えば、アクリル系の光硬化性樹脂が用いられる。あるいは、樹脂材料Rとして白色系(白色あるいは乳白色等)の材料が用いられてもよい。
【0040】
図3に示すように、照射機構20は、レーザ光源22と、レーザ光源22から出射されたレーザ光を反射してスキャンさせるための、回転可能に設けられたポリゴンミラー21とを有する。また、照射機構20は、レーザ光源22から出射されたレーザ光をポリゴンミラー21に導く光学系23と、ポリゴンミラー21からのレーザ光を反射して上記スリット領域Sに導くミラー24とを有する。
【0041】
ミラー24は長尺形状を有し、ポリゴンミラー21からのスキャン光を下方へ反射するためにドラム10内に斜めに配置されている。レーザ光としては紫外線レーザが用いられる。ドラム10は紫外線を透過する材質、例えば上述したようにガラスである。ドラム10の内部からドラム10を介してドラム10の外部のスリット領域Sにある樹脂材料Rにレーザ光UVLが照射される(図7参照)。
【0042】
なお図1及び2等では、照射機構20の構成要素のうち、ドラム10内に配置されたミラー24のみを示している。
【0043】
インクジェットヘッド30は、樹脂材料Rとは異なる材料であるカラーインクを供給する供給機構として機能する。インクジェットヘッド30は、ライン型のヘッドであり、図2に示すようにX軸方向に沿って、造形ステージ15上の造形領域(造形物が形成される領域)をカバーするように長く形成されている。インクジェットヘッド30は、図示しないインクタンクに接続されている。インクジェットヘッド30は、典型的には、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の4色の顔料インクを吐出するヘッド31〜34を有する。これらの4つのヘッド31〜34は、Y軸方向に沿って配列され、それぞれのヘッド31〜34が、X軸方向に沿って配列された、インクを吐出する図示しない複数のノズルを有する。インクジェットヘッド30は、これら4つのヘッド31〜34に加え、白等のインクを吐出するヘッドを備えていてもよい。
【0044】
インクは、顔料インクのほか、UV硬化型インクでもよい。
【0045】
図示しないが、3次元造形装置100は、昇降機構16内のモータ、Y軸移動機構14内のモータ、ポリゴンミラー21を駆動するモータ及びレーザ光源22をそれぞれ駆動するドライバを備える。それらのドライバは、図示しないメインコントローラに接続され、メインコントローラにより各部の動作のタイミング等が制御される。また特に、メインコントローラは、図示しないメモリ等に記憶された、造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データ(典型的には断面の形状データ)に基づき、レーザ光源22のドライバ及びポリゴンミラー21を駆動するモータのドライバを制御する。
【0046】
あるいは、各部をそれぞれ制御するコントローラが設けられていてもよい。
【0047】
これらのドライバやコントローラは、ハードウェア、または、ハードウェア及びソフトウェア(つまり、コンピュータ)により構成される。
【0048】
(3次元造形装置の動作)
次に、以上のように構成された3次元造形装置100の動作を説明する。図5A〜Cはその動作を順に示す図である。
【0049】
図5Aは、3次元造形装置100の静止状態を示し、移動ベース12が初期位置にある状態を示している。実際に造形を実行する前に、樹脂材料Rである硬化層の1層分の厚さが上記メインコントローラを介して設定される。例えば昇降機構16の駆動により造形ステージ15が上昇する。そして、造形ステージ15がドラム10の最も低い部分である直線状の領域A1に接触した時の造形ステージ15の高さ位置が、Z軸方向での原点として設定される。
【0050】
なお、この原点の設定時における、造形ステージ15のY軸方向での位置は、適宜設定可能である。
【0051】
原点が設定されると、予め設定された、樹脂材料Rの1層の厚さ分、造形ステージ15が下降する。樹脂材料Rの1層分の厚さは、例えば10μ〜100μmである。
【0052】
造形ステージ15が下降した後、造形ステージ15はY軸移動機構14により、図5Bに示すような所定の位置である造形開始位置に移動する。この造形開始位置とは、造形ステージ15とドラム10の直線状の領域A1との間のスリット領域Sが形成することができるような造形ステージ15の位置である。この造形開始位置は、スリット領域Sが形成できるような造形ステージ15の位置であれば、形成される造形物のY軸方向での大きさにより適宜設定が変更され得る。
【0053】
造形ステージ15が造形開始位置に位置すると、供給ノズル17から液体の樹脂材料Rがドラム10の下面側に供給される。
【0054】
このようにしてドラム10に樹脂材料Rが転写されると、樹脂材料Rは自重によりドラム10の外周面10aを伝って下方の直線状の領域A1まで流れる。この時のスリット領域S及びその周辺の状態を図7に拡大して示す。このような状態から、照射機構20によるレーザ光UVLの樹脂材料Rへの照射、つまり露光が開始される。
【0055】
なお、ガイドローラ6または7(図4参照)がモータにより駆動するようになっていてもよい。これは、樹脂材料Rの粘性が高く、樹脂材料Rが自重により下方に流れない場合に、ガイドローラ6または7が回転し、樹脂材料Rが付着した部分が最下部となるようにドラム10が回転してもよい。
【0056】
図5Bに示すように、照射機構20によりレーザ光UVLが照射される。レーザ光源22から発生したレーザ光UVLが、ポリゴンミラー21によりX軸方向に沿ってスキャンされ、ドラム10を介してスリット領域Sの樹脂材料Rに入射する。この時、造形対象物の1層分の断面画像データのうち、X軸方向の1列分のデータに基づきレーザ光源22のパワーが制御され、樹脂材料Rの領域に応じて選択的に露光されていく。露光された樹脂材料Rの領域は硬化する。レーザ光UVLの照射による露光中は、ドラム10は停止している。
【0057】
樹脂材料RのX軸方向に沿った1列分の露光が終了すると、レーザ光の照射動作が停止し、Y軸移動機構14により造形ステージ15がY軸に沿った方向で後方側(図5Bにおける右側)へ所定のピッチ移動する。そして、1層目内における次の1列分(最初の1列に隣接する1列)の選択的な露光が上記と同様に行われる。
【0058】
3次元造形装置100は、以上のようなレーザ光のX軸方向に沿ったスキャン照射、及び、造形ステージ15のY軸方向に沿ったステップ送りを繰り返すことにより、図5Cに示すように、1層分の樹脂材料Rの選択的な硬化層、つまり1層分の造形物を形成する。造形ステージ15のこのようなY軸に沿った方向における間欠的な移動のピッチは、レーザビームのスポット径にもより、つまり、造形物を形成するときの分解能にもよるが、この移動のピッチは適宜設定可能である。
【0059】
図8は、図5Cに示した、造形ステージ15上の樹脂材料R及び硬化層R1を拡大して示した図である。図8では、1層分の硬化層R1を黒塗りで表している。
【0060】
ここで、X軸方向に沿った1列分の露光が終了し、造形ステージ15がY軸移動機構14によりY軸に沿った方向で移動する時、ドラム10と造形ステージ15側との摩擦力によりドラム10が引きずられて図8において反時計回りに回転する。
【0061】
樹脂材料Rの1列分の露光が終了し、造形ステージ15が所定の1ピッチ分移動する時、スリット領域Sより下流側(図7において例えばスリット領域Sより右側)では、ドラム10がZ軸方向において造形ステージ15から離れていくように、造形ステージ15が移動する。これにより、形成された直後の硬化層R1(ドラム10の外周面10aに付着した硬化層)をドラム10からきれいに剥がすことができる。
【0062】
また、本実施形態では、ドラム10の外周面10aの形状は曲面(円筒面)であり、直線状の領域A1で液面が規制される。したがって、樹脂材料Rが硬化するときの収縮力がドラム10に加えられても、ドラム10に変形や歪みが発生しにくく、また、露光前における樹脂材料Rの粘性によるドラム10の変形も防止できる。これにより、硬化層R1の平面度を高め、また、その厚さを高精度に制御することができる。
【0063】
1層分の樹脂材料Rへの露光が終了すると、図6Aに示すように、造形ステージ15上の硬化層R1がインクジェットヘッド30の下部の位置まで移動する。そして、そのまま造形ステージ15がY軸方向へ移動しながら、インクジェットヘッド30から、カラー情報を含む断面画像データに応じてカラーインクが吐出される。硬化層R1以外の部位、つまり未硬化部分にはインクは吐出されない。このようにして、硬化層R1にカラー印刷されるように着色される。
【0064】
1層分の硬化層R1のインクの吐出が終了すると、造形ステージ15が元の位置に戻り、昇降機構16により1層分の厚さ下降する。そして、3次元造形装置100は、図5A〜C、6A及びBの動作を順に行い、着色された2層目の硬化層R1が形成される。
【0065】
以上のような動作が繰り返されることにより、1層ごとに着色された造形物を形成することができる。
【0066】
なお、供給ノズル17からの樹脂材料Rの供給は、1層の露光処理ごと、複数層の露光処理ごと、定期的、あるいは常時行われてもよい。
【0067】
図9A〜Eは、このようにカラーインクIで着色された造形物が形成される過程を順に示した模式的な図である。なお、この例に係る造形物40は、複数の柱部41aを有するサポート層41と、造形物の本体42とで構成され、本体42は3層(R1、R2及びR3)まで形成されている例を示す。
【0068】
サポート層41は、造形物の完成後に造形物の本体42から切り離される。例えば本体42の最下面の形状が平坦でない場合に、このようなサポート層41を形成することにより、造形物の本体42の姿勢を造形ステージ15上で一定に維持するようにしてこれを支持することができる。
【0069】
このようにして形成された造形物40は、その内部まで着色されているため、ユーザは、例えば完成された造形物40を切断してもその内部の色を確認することができる。例えば、このような造形物40は医療分野(例えば、手術のシミュレーション用あるいは医療教育用)において臓器の模型として用いられる。
【0070】
典型的には、1層ごとの樹脂材料R(硬化層)の厚さが数十μmであり、1層分のインクIの厚さは10μm以下である。このような層厚の違いはあるが、巨視的には造形物40が全体的に着色されているように見える。
【0071】
本実施形態では、1層ごとにインクIが吐出されて着色される形態を説明したが、断面画像データに応じた領域であれば、複数層ごとあるいはランダムな領域に着色されてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、造形物を構成する主な材料である樹脂材料Rとは異なる材料であるインクが供給されるので、従来の装置のように例えば1層ごとの厚さの薄いUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。
【0073】
また、本実施形態では、粉体造形方式における粉体材料ではなく、光硬化性の樹脂材料、すなわち液体の樹脂材料が造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0074】
[第2の実施形態]
【0075】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。図11は、図10に示した3次元造形装置200の平面図である。これ以降の説明では、図1等に示した実施形態に係る3次元造形装置100が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0076】
上記第1の実施形態に係るインクジェットヘッド30はライン型であった。この第2の実施形態に係るインクジェットヘッド130は、X軸方向にスキャンされるタイプのものである。すなわち、この3次元造形装置200は、インクジェットヘッド130をX軸方向に沿ってスキャン駆動するX軸スキャン機構25を備える。例えば、インクジェットヘッド130はホルダ26によって保持され、このホルダ26がX軸スキャン機構25のガイド部27に沿って移動可能に接続されている。
【0077】
図11に示すように、インクジェットヘッド30は、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックのそれぞれのヘッド131〜134の長さ方向がY軸方向を向き、それらの図示しない複数の吐出ノズルがY軸方向に沿って配列される。
【0078】
典型的には、インクジェットヘッド130のX軸方向の移動と、造形物を構成する硬化層を支持した造形ステージ15のY軸方向の移動とを交互に繰り返すことで、1層分の断面画像データに応じた1層分の硬化層に着色される。つまり、いわゆるラスタースキャンの要領によって印刷される。インクジェットヘッド130は、X軸方向の往路及び復路の両方でインクを吐出してもよいし、そのうちいずれか一方でインクを吐出してもよい。
【0079】
[第3の実施形態]
【0080】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。図12Aは、形成途中の造形物の例を示し、図12Bは、完成された造形物の例を示す。図12Aに示すように、供給ノズル17(図1、10参照)により供給される樹脂材料により、所定のパターンを有する溝140aを有する平板状の造形物140が形成される。図12Bに示すように、この平板状の造形物140の材料とは異なる、特定の性質を持つ機能性材料141が、溝140aに供給される。この機能性材料141は、たとえば導電性材料である。機能性材料141は、インクジェットヘッド30や130と同様の構造を有するヘッドにより供給されてもよいし、それとは別の構造を有する供給機構により供給されてもよい。
【0081】
このように構成された造形物140’は、機能性材料141の部分が導電線である電気回路デバイスとして利用することができる。
【0082】
機能性材料141として、導電性のほか、磁性、ゴム等、親水性、疎水性の材料がある。また、図12にA及びB示した形状の造形物にも限られない。
【0083】
[第4の実施形態]
【0084】
図13は、さらに別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【0085】
この造形物では、樹脂材料(硬化層)の積層方向で見て、着色された部分A(図ではグレーの部分)が1層ごとに交互に入れ替わっている。
【0086】
まず、ある第1の層241では、着色された部分Aのみレーザ光が照射されて硬化し、白の部分Bはインクジェットヘッドから例えば光硬化性のインクが吐出される。このように構成された第1の層に隣接して形成される次の第2の層242では、レーザ光が照射される部分が入れ替わり、第1の層241におけるインクが吐出された領域にも第2の層242を介して光が届き、そのインクが硬化する。
【0087】
すなわち、インクジェットヘッドから、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互にインクが吐出され、同様に樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、レーザ光が照射される。
【0088】
このような形成されるチェック模様のドットが十分に細かい場合、これを巨視的に見ると、インクが吐出された領域とされていない領域とが混合された色に見える。
【0089】
このように、いわばインターレース方式でレーザ光の照射が行われることにより、積層方向における2層分の硬化層を1回のレーザ光の照射で形成することができ、造形物240の単位体積当りのレーザ光源の駆動のための電力量(すなわちエネルギー)を節約することができる。
【0090】
本実施形態では、インクの代わりに上記第3の実施形態のように機能性材料が用いられてもよい。
【0091】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0092】
インクジェットヘッド30及び130は、フルカラー用のインクジェットヘッドであった。しかし、白黒(2値)用、またはグレースケールで造形物が着色されてもよい。
【0093】
印刷を行うための材料を供給する供給機構として、上記実施形態では、非接触型のインクジェットヘッドが用いられた。しかし、非接触型として、昇華型の印刷ヘッドが用いられてもよい。あるいは、レーザプリンタのような接触型の印刷方式で硬化層に印刷されてもよい。
【0094】
造形物の材料は、光硬化性の樹脂材料に限られず、熱エネルギー、電子線、または超音波により硬化する材料が用いられてもよい。また、樹脂材料に、特定波長に対する、その樹脂材料の屈折率とは異なる屈折率を持つフィラーが混合された材料が用いられてもよい。
【0095】
また、その樹脂材料に応じて照射機構20から照射されるエネルギー線も適宜変更可能である。エネルギー線としては、紫外線のほか、赤外線、可視光、電子線、熱線または超音波等が挙げられる。熱線は赤外線でもよく、その場合赤外線レーザによるスポット加熱により硬化処理が行われる。熱線や超音波等は、比較的造形精度が低い造形物を形成する場合に用いられればよい。
【0096】
上記各実施形態に係る3次元造形装置は、硬化層に付着した未硬化の樹脂材料を除去する除去機構をさらに備えていてもよい。この除去機構は、例えばエアブロー、洗浄液による洗浄、あるいはこれらの組み合わせ等がある。また、この除去機構は、例えば造形ステージ15のY軸方向に沿った移動経路上で、ドラム10とインクジェットヘッド30(または130)との間に設けられていてもよい。あるいは、除去機構は、インクジェットヘッド30(または130)よりさらに下流側に設けられていてもよい。
【0097】
照射機構は上記実施形態に限られない。例えばポリゴンミラー21に代えて平面ミラーが設けられ、この平面ミラーがレーザ光源22をスキャンするように駆動されてもよい。あるいは照射機構は、ポリゴンミラー21によるスキャン機構に限られず、ドラム10内に配置された、光源ユニット及びこれをX軸方向でスキャン移動させる機構を有していてもよい。
【0098】
上記実施形態に係る造形方式として、1次元領域による規制液面方式が用いられたが、もちろん2次元領域による規制液面方式が用いられてもよい。あるいは規制液面方式に限られず、自由液面方式が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0099】
R…樹脂材料
A1…直線状の領域
S…スリット領域
R1(R2、R3)…硬化層
I…カラーインク
10…ドラム
10a…外周面
14…Y軸移動機構
15…造形ステージ
17…供給ノズル
20…照射機構
30、130…インクジェットヘッド
40、140、150…造形物
100、200…次元造形装置
141…機能性材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、光等のエネルギー線の照射により硬化する材料を用いて3次元の物体を形成する3次元造形装置、3次元造形方法及びこれらにより形成された造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、3次元の造形物を形成する造形装置は、ラピッドプロトタイピングと呼ばれる装置として知られており、業務用として広く使われている。一般的には、3次元造形装置は、造形される対象物の所定の厚さごとの形状データ、つまり各層ごとの形状データに基づき、1層ずつ造形物を形成していく。
【0003】
3次元造形装置の主な方式の1つとして、例えばエネルギー線として光を利用する光造形方式は、光硬化性樹脂にレーザ光を部分選択的に照射することにより、樹脂の所望の部分を硬化させて描画し、造形物を形成する方式である。
【0004】
光造形方式の中には、例えば自由液面法及び規制液面法がある。自由液面法では、液体の光硬化性樹脂の液面が空中に露出しており、レーザ光が空気と液面の界面にフォーカスされることで描画される。規制液面法では、液体の光硬化性樹脂の液面がガラス等で規制され、そのガラスを通して光が光硬化性樹脂(とガラスとの界面)にフォーカスされることで描画される。
【0005】
そのほか、カラーに着色された造形物を形成する装置として、特許文献1に記載の三次元造形装置がある。この三次元造形装置は、熱可塑性樹脂を吐出するインクジェットヘッドを備えている。造形対象物の断面の形状データに応じて、1層ずつインクジェットヘッドが小滴の熱可塑性樹脂が吐出する。吐出された熱可塑性樹脂が放熱して冷えることで固まり、これにより造形物が形成される。インクジェットヘッドに設けられた着色用の吐出ノズルから着色された熱可塑性樹脂が吐出され、また、そのインクジェットヘッドに設けられた造形用の吐出ノズルから白色の熱可塑性樹脂が吐出される。これら着色用吐出ノズル及び造形用吐出ノズルから吐出される熱可塑性樹脂は、すべて造形物を構成する材料として用いられ、その違いは着色するか否か(白色は下地用)である(例えば、特許文献1の明細書段落[0030]−[0033]、[0053]、[0061]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−280356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の三次元造形装置では、熱可塑性樹脂あるいは光硬化性樹脂(UVインク)により造形物を形成する。したがって、造形物として積層される1層ごとの樹脂の厚さが10μmより小さく非常に薄いため、3次元の造形物の形成時間について実用的な速度が得られないという問題がある。
【0008】
また、3次元造形物を構成する材料として粉体を用いる方式もあるが、粉体の場合、材料として上記のような樹脂材料を用いる場合に比べ、造形物の形状が粗くなる、つまり高精細さに欠けるという問題もある。
【0009】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、長時間を要することなく高精細な造形物を形成することができる3次元造形装置、3次元造形方法及びこれらにより形成された造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元造形装置は、支持体と、照射機構と、供給機構とを具備する。
前記支持体は、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が積層されて形成される造形物を支持する。
前記照射機構は、前記造形物を形成するために、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する。
前記供給機構は、前記断面画像データに基づき、前記照射機構により照射されて硬化した前記樹脂材料に、前記造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する。
【0011】
造形物の主な材料である樹脂材料とは異なる材料であって、造形物の一部を構成する要素である材料が供給機構から供給されるので、従来の装置のように例えばUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。また、粉体材料ではなく、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が、造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0012】
前記供給機構は、前記造形物を着色するために、前記樹脂材料とは異なる材料としてインクを吐出するインクジェットヘッドを有してもよい。これにより、造形物に白黒、グレースケール、またはカラー等で着色することができる。
【0013】
例えば、前記樹脂材料は、可視光を透過する材料、または白色系の材料である。
【0014】
前記供給機構は、前記樹脂材料とは異なる材料として、特定の性質を持つ機能性材料を供給してもよい。これにより、造形物の領域に応じて、磁性や導電性等の特性を持つ領域を形成することができる。
【0015】
前記供給機構は、少なくとも1層の前記樹脂材料が積層されるごとに前記樹脂材料とは異なる材料を供給してもよい。
【0016】
前記供給機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記樹脂材料とは異なる材料を供給してもよい。その場合、前記照射機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記エネルギー線を照射する。これにより、エネルギー線の使用のためのエネルギーを節約することができる。
【0017】
前記3次元造形装置は、規制体と、供給ノズルと、移動機構とをさらに具備してもよい。
前記規制体は、第1の方向に沿う直線状の領域を含む表面を有し、前記表面のうち前記直線状の領域が前記支持体に最も近くなるように、前記支持体に対面して配置される。
前記供給ノズルは、前記支持体側と前記直線状の領域との間の領域であるスリット領域に、前記樹脂材料を供給する。
前記移動機構は、1層分の前記樹脂材料の硬化層を形成するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って、前記規制体に相対的に前記支持体ジを移動させ、前記エネルギー線により前記材料の前記硬化層を積層するために、前記積層の方向に沿って前記規制体と前記支持体とを相対的に移動させる。
前記照射機構は、前記供給ノズルにより前記スリット領域に供給された前記樹脂材料に、前記規制体を介して前記エネルギー線を照射する。
【0018】
規制体の直線状の領域が支持体に最も近くなるように規制体が配置されるので、そのスリット領域またはその近傍の領域で材料にエネルギー線が照射され樹脂材料が硬化する。つまり実質的に支持体側と直線状の領域との間のスリット領域で材料が硬化し、規制体の下流側では、規制体の表面が支持体から離れていくように両者が移動機構によって相対的に移動していく。これにより、規制体から材料の硬化層をきれいに剥がすことができる。
【0019】
また、広い平面状の領域ではなく、規制体の直線状の領域によりスリット領域が形成されている。したがって、上述のように材料が規制体から剥がれやすい。また、材料が硬化するときの収縮力が規制体に加えられても、規制体に歪みや変形が生じることもない。これにより、各硬化層の平面度を高め、その各硬化層の厚さを高精度に制御することができる。
【0020】
本発明に係る3次元造形方法は、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させることを含む。
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料が供給される。
【0021】
造形物の主な材料である樹脂材料とは異なる材料であって、造形物の一部を構成する要素である材料が供給されるので、従来の装置のように例えばUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。また、粉体材料ではなく、エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が、造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0022】
本発明に係る造形物は、上記の3次元造形方法により形成される造形物である。
【発明の効果】
【0023】
以上、本発明によれば、長時間を要することなく高精細な造形物を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。
【図2】図2は、図1に示した3次元造形装置の平面図であり、
【図3】図3は、その3次元造形装置の正面図である。
【図4】図4は、ドラムを支持する機構の例を説明するための図であり、ドラムの長手方向と直交する方向で見た図である。
【図5】図5は、3次元造形装置の動作を順に示す図である。
【図6】図6は、図5から続く、3次元造形装置の動作を順に示す図である。
【図7】図7は、スリット領域及びその周辺の状態を示す図である。
【図8】図8は、図5Cに示した、造形ステージ上の樹脂材料R及び硬化層を拡大して示した図である。
【図9】図9は、このようにカラーで着色された造形物が形成される過程を順に示した模式的な図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。
【図11】図11は、図10に示した3次元造形装置の平面図である。
【図12】図12は、別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【図13】図13は、さらに別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
【0027】
(3次元造形装置の構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。図2は、図1に示した3次元造形装置100の平面図であり、図3はその正面図である。
【0028】
この3次元造形装置100は、規制液面法のうち、2次元領域で液面を規制する従来までの方法とは異なり、1次元領域で液面を規制する1次元規制液面法を採用している。
【0029】
3次元造形装置100は、ベース11と、ベース11上に配置された造形ステージ15と、上下方向(Z軸方向)で造形ステージ15に対面可能に配置されたドラム10とを備える。また、3次元造形装置100は、ドラム10の下方に配置され樹脂材料をドラム10の表面に供給する供給ノズル17と、供給ノズル17により供給された樹脂材料に、エネルギー線としてレーザ光を照射する照射機構20(図3参照)とを備える。図1及び2に示すように、ドラム10のY軸方向での隣には、造形物を構成する樹脂材料の硬化層に、カラーインクを吐出するインクジェットヘッド30が配置されている。
【0030】
ドラム10は実質的には円筒状に形成され、その中身は空洞となっている。ドラム10はその長手方向がX軸方向に沿って配置されている。規制体として機能するドラム10は、後述するように、供給ノズル17から造形ステージ15及びドラム10の間に供給された材料の高さ(厚さ)を上述のように1次元領域で規制する。1次元領域とは、図7に示すように、ドラム10の長手方向、つまりX軸方向に沿った1次元とみなせる直線状の領域A1である。
【0031】
ドラム10は、例えばガラス、アクリル、その他の透明樹脂で形成される。ドラム10は、必ずしもこれらの材料に限られず、照射機構20から照射されるエネルギー線を透過する材料であれば何でもよい。
【0032】
図4は、ドラム10を支持する機構の例を説明するための図であり、ドラム10の長手方向と直交するY軸方向で見た図である。
【0033】
図4に示すように、ドラム10の両側にはX軸の周りにドラム10を回転可能に支持する複数のガイドローラ6、7が設けられている。図4以外の図では、上記ガイドローラ6,7を示していない。これらのガイドローラ6、7は、ローラ支持部8に回転可能に支持されている。ガイドローラ7は、ドラム10の内周面を下方に押さえ、ガイドローラ6は、ドラム10の表面である外周面10aを下方から支持している。例えばガイドローラ6は、図4で見て奥行き方向に複数設けられていてもよい。このように、ドラム10は、ガイドローラ6、7により挟み込まれることで回転可能に支持される。
【0034】
ガイドローラ6、7は、造形ステージ15側とドラム10の外周面10aとの間に、後述するスリット領域S(図7参照)を形成するように、Z軸方向における所定の高さ位置でドラム10を支持している。すなわち、造形ステージ15の表面と、ドラム10の外周面10aの最下の部分(ドラム10のうち最も造形ステージ15に近い部分)である、上記直線状の領域A1とが対面することにより、スリット領域Sが形成される。
【0035】
なお、このようにガイドローラ6、7で支持される形態以外にも、X軸方向でのドラム10の端部に、回転軸を持つ支持部材がベアリングを介して接続されていてもよい。
【0036】
造形ステージ15は、1層の樹脂材料ごとに形成されていく造形物を支持する支持体として機能する。造形ステージ15は、昇降機構16により昇降可能に支持されている。図1に示すように、造形ステージ15及び昇降機構16は、Y軸移動機構14によってY軸方向に沿って移動可能とされている。
【0037】
Y軸移動機構14は、昇降機構16を搭載した移動ベース12と、図示しないモータと、ベース11上に敷設され、移動ベース12の移動をガイドするガイドレール13とを有する。ガイドレール13は、Y軸方向でドラム10及びインクジェットヘッド30をカバーするような長さに敷設されている。このY軸移動機構14により、造形ステージ15は、ドラム10及びインクジェットヘッド30のそれぞれの下方に配置されるように、Y軸方向に沿って連続的に移動可能となる。
【0038】
図1及び4に示すように、供給ノズル17は、例えばドラム10の下部であって、直線状の領域A1から離れた位置に配置されている。供給ノズル17として、その長手方向に沿って、樹脂材料Rを吐出するための図示を省略した複数の穴またはスリットが設けられている。これらの複数の穴またはスリットは、ドラム10側に向けて開口している。
【0039】
エネルギー線が光である場合には、樹脂材料Rとしては、典型的には光硬化性樹脂が用いられる。後述するように、本実施形態に係る3次元造形装置100は、カラーで着色された造形物を形成するので、樹脂材料Rとしては透明あるいは半透明、つまり、可視光(の実質的に全部または一部)を透過する材料が用いられる。例えば、アクリル系の光硬化性樹脂が用いられる。あるいは、樹脂材料Rとして白色系(白色あるいは乳白色等)の材料が用いられてもよい。
【0040】
図3に示すように、照射機構20は、レーザ光源22と、レーザ光源22から出射されたレーザ光を反射してスキャンさせるための、回転可能に設けられたポリゴンミラー21とを有する。また、照射機構20は、レーザ光源22から出射されたレーザ光をポリゴンミラー21に導く光学系23と、ポリゴンミラー21からのレーザ光を反射して上記スリット領域Sに導くミラー24とを有する。
【0041】
ミラー24は長尺形状を有し、ポリゴンミラー21からのスキャン光を下方へ反射するためにドラム10内に斜めに配置されている。レーザ光としては紫外線レーザが用いられる。ドラム10は紫外線を透過する材質、例えば上述したようにガラスである。ドラム10の内部からドラム10を介してドラム10の外部のスリット領域Sにある樹脂材料Rにレーザ光UVLが照射される(図7参照)。
【0042】
なお図1及び2等では、照射機構20の構成要素のうち、ドラム10内に配置されたミラー24のみを示している。
【0043】
インクジェットヘッド30は、樹脂材料Rとは異なる材料であるカラーインクを供給する供給機構として機能する。インクジェットヘッド30は、ライン型のヘッドであり、図2に示すようにX軸方向に沿って、造形ステージ15上の造形領域(造形物が形成される領域)をカバーするように長く形成されている。インクジェットヘッド30は、図示しないインクタンクに接続されている。インクジェットヘッド30は、典型的には、C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)及びK(ブラック)の4色の顔料インクを吐出するヘッド31〜34を有する。これらの4つのヘッド31〜34は、Y軸方向に沿って配列され、それぞれのヘッド31〜34が、X軸方向に沿って配列された、インクを吐出する図示しない複数のノズルを有する。インクジェットヘッド30は、これら4つのヘッド31〜34に加え、白等のインクを吐出するヘッドを備えていてもよい。
【0044】
インクは、顔料インクのほか、UV硬化型インクでもよい。
【0045】
図示しないが、3次元造形装置100は、昇降機構16内のモータ、Y軸移動機構14内のモータ、ポリゴンミラー21を駆動するモータ及びレーザ光源22をそれぞれ駆動するドライバを備える。それらのドライバは、図示しないメインコントローラに接続され、メインコントローラにより各部の動作のタイミング等が制御される。また特に、メインコントローラは、図示しないメモリ等に記憶された、造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データ(典型的には断面の形状データ)に基づき、レーザ光源22のドライバ及びポリゴンミラー21を駆動するモータのドライバを制御する。
【0046】
あるいは、各部をそれぞれ制御するコントローラが設けられていてもよい。
【0047】
これらのドライバやコントローラは、ハードウェア、または、ハードウェア及びソフトウェア(つまり、コンピュータ)により構成される。
【0048】
(3次元造形装置の動作)
次に、以上のように構成された3次元造形装置100の動作を説明する。図5A〜Cはその動作を順に示す図である。
【0049】
図5Aは、3次元造形装置100の静止状態を示し、移動ベース12が初期位置にある状態を示している。実際に造形を実行する前に、樹脂材料Rである硬化層の1層分の厚さが上記メインコントローラを介して設定される。例えば昇降機構16の駆動により造形ステージ15が上昇する。そして、造形ステージ15がドラム10の最も低い部分である直線状の領域A1に接触した時の造形ステージ15の高さ位置が、Z軸方向での原点として設定される。
【0050】
なお、この原点の設定時における、造形ステージ15のY軸方向での位置は、適宜設定可能である。
【0051】
原点が設定されると、予め設定された、樹脂材料Rの1層の厚さ分、造形ステージ15が下降する。樹脂材料Rの1層分の厚さは、例えば10μ〜100μmである。
【0052】
造形ステージ15が下降した後、造形ステージ15はY軸移動機構14により、図5Bに示すような所定の位置である造形開始位置に移動する。この造形開始位置とは、造形ステージ15とドラム10の直線状の領域A1との間のスリット領域Sが形成することができるような造形ステージ15の位置である。この造形開始位置は、スリット領域Sが形成できるような造形ステージ15の位置であれば、形成される造形物のY軸方向での大きさにより適宜設定が変更され得る。
【0053】
造形ステージ15が造形開始位置に位置すると、供給ノズル17から液体の樹脂材料Rがドラム10の下面側に供給される。
【0054】
このようにしてドラム10に樹脂材料Rが転写されると、樹脂材料Rは自重によりドラム10の外周面10aを伝って下方の直線状の領域A1まで流れる。この時のスリット領域S及びその周辺の状態を図7に拡大して示す。このような状態から、照射機構20によるレーザ光UVLの樹脂材料Rへの照射、つまり露光が開始される。
【0055】
なお、ガイドローラ6または7(図4参照)がモータにより駆動するようになっていてもよい。これは、樹脂材料Rの粘性が高く、樹脂材料Rが自重により下方に流れない場合に、ガイドローラ6または7が回転し、樹脂材料Rが付着した部分が最下部となるようにドラム10が回転してもよい。
【0056】
図5Bに示すように、照射機構20によりレーザ光UVLが照射される。レーザ光源22から発生したレーザ光UVLが、ポリゴンミラー21によりX軸方向に沿ってスキャンされ、ドラム10を介してスリット領域Sの樹脂材料Rに入射する。この時、造形対象物の1層分の断面画像データのうち、X軸方向の1列分のデータに基づきレーザ光源22のパワーが制御され、樹脂材料Rの領域に応じて選択的に露光されていく。露光された樹脂材料Rの領域は硬化する。レーザ光UVLの照射による露光中は、ドラム10は停止している。
【0057】
樹脂材料RのX軸方向に沿った1列分の露光が終了すると、レーザ光の照射動作が停止し、Y軸移動機構14により造形ステージ15がY軸に沿った方向で後方側(図5Bにおける右側)へ所定のピッチ移動する。そして、1層目内における次の1列分(最初の1列に隣接する1列)の選択的な露光が上記と同様に行われる。
【0058】
3次元造形装置100は、以上のようなレーザ光のX軸方向に沿ったスキャン照射、及び、造形ステージ15のY軸方向に沿ったステップ送りを繰り返すことにより、図5Cに示すように、1層分の樹脂材料Rの選択的な硬化層、つまり1層分の造形物を形成する。造形ステージ15のこのようなY軸に沿った方向における間欠的な移動のピッチは、レーザビームのスポット径にもより、つまり、造形物を形成するときの分解能にもよるが、この移動のピッチは適宜設定可能である。
【0059】
図8は、図5Cに示した、造形ステージ15上の樹脂材料R及び硬化層R1を拡大して示した図である。図8では、1層分の硬化層R1を黒塗りで表している。
【0060】
ここで、X軸方向に沿った1列分の露光が終了し、造形ステージ15がY軸移動機構14によりY軸に沿った方向で移動する時、ドラム10と造形ステージ15側との摩擦力によりドラム10が引きずられて図8において反時計回りに回転する。
【0061】
樹脂材料Rの1列分の露光が終了し、造形ステージ15が所定の1ピッチ分移動する時、スリット領域Sより下流側(図7において例えばスリット領域Sより右側)では、ドラム10がZ軸方向において造形ステージ15から離れていくように、造形ステージ15が移動する。これにより、形成された直後の硬化層R1(ドラム10の外周面10aに付着した硬化層)をドラム10からきれいに剥がすことができる。
【0062】
また、本実施形態では、ドラム10の外周面10aの形状は曲面(円筒面)であり、直線状の領域A1で液面が規制される。したがって、樹脂材料Rが硬化するときの収縮力がドラム10に加えられても、ドラム10に変形や歪みが発生しにくく、また、露光前における樹脂材料Rの粘性によるドラム10の変形も防止できる。これにより、硬化層R1の平面度を高め、また、その厚さを高精度に制御することができる。
【0063】
1層分の樹脂材料Rへの露光が終了すると、図6Aに示すように、造形ステージ15上の硬化層R1がインクジェットヘッド30の下部の位置まで移動する。そして、そのまま造形ステージ15がY軸方向へ移動しながら、インクジェットヘッド30から、カラー情報を含む断面画像データに応じてカラーインクが吐出される。硬化層R1以外の部位、つまり未硬化部分にはインクは吐出されない。このようにして、硬化層R1にカラー印刷されるように着色される。
【0064】
1層分の硬化層R1のインクの吐出が終了すると、造形ステージ15が元の位置に戻り、昇降機構16により1層分の厚さ下降する。そして、3次元造形装置100は、図5A〜C、6A及びBの動作を順に行い、着色された2層目の硬化層R1が形成される。
【0065】
以上のような動作が繰り返されることにより、1層ごとに着色された造形物を形成することができる。
【0066】
なお、供給ノズル17からの樹脂材料Rの供給は、1層の露光処理ごと、複数層の露光処理ごと、定期的、あるいは常時行われてもよい。
【0067】
図9A〜Eは、このようにカラーインクIで着色された造形物が形成される過程を順に示した模式的な図である。なお、この例に係る造形物40は、複数の柱部41aを有するサポート層41と、造形物の本体42とで構成され、本体42は3層(R1、R2及びR3)まで形成されている例を示す。
【0068】
サポート層41は、造形物の完成後に造形物の本体42から切り離される。例えば本体42の最下面の形状が平坦でない場合に、このようなサポート層41を形成することにより、造形物の本体42の姿勢を造形ステージ15上で一定に維持するようにしてこれを支持することができる。
【0069】
このようにして形成された造形物40は、その内部まで着色されているため、ユーザは、例えば完成された造形物40を切断してもその内部の色を確認することができる。例えば、このような造形物40は医療分野(例えば、手術のシミュレーション用あるいは医療教育用)において臓器の模型として用いられる。
【0070】
典型的には、1層ごとの樹脂材料R(硬化層)の厚さが数十μmであり、1層分のインクIの厚さは10μm以下である。このような層厚の違いはあるが、巨視的には造形物40が全体的に着色されているように見える。
【0071】
本実施形態では、1層ごとにインクIが吐出されて着色される形態を説明したが、断面画像データに応じた領域であれば、複数層ごとあるいはランダムな領域に着色されてもよい。
【0072】
以上のように、本実施形態によれば、造形物を構成する主な材料である樹脂材料Rとは異なる材料であるインクが供給されるので、従来の装置のように例えば1層ごとの厚さの薄いUVインクにより造形物を形成して着色等する場合に比べ、短時間で造形物を形成することができる。
【0073】
また、本実施形態では、粉体造形方式における粉体材料ではなく、光硬化性の樹脂材料、すなわち液体の樹脂材料が造形物の主な構成材料として用いられるので、高精細な造形物を形成することができる。
【0074】
[第2の実施形態]
【0075】
図10は、本発明の第2の実施形態に係る3次元造形装置を示す側面図である。図11は、図10に示した3次元造形装置200の平面図である。これ以降の説明では、図1等に示した実施形態に係る3次元造形装置100が含む部材や機能等について同様のものは説明を簡略化または省略し、異なる点を中心に説明する。
【0076】
上記第1の実施形態に係るインクジェットヘッド30はライン型であった。この第2の実施形態に係るインクジェットヘッド130は、X軸方向にスキャンされるタイプのものである。すなわち、この3次元造形装置200は、インクジェットヘッド130をX軸方向に沿ってスキャン駆動するX軸スキャン機構25を備える。例えば、インクジェットヘッド130はホルダ26によって保持され、このホルダ26がX軸スキャン機構25のガイド部27に沿って移動可能に接続されている。
【0077】
図11に示すように、インクジェットヘッド30は、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックのそれぞれのヘッド131〜134の長さ方向がY軸方向を向き、それらの図示しない複数の吐出ノズルがY軸方向に沿って配列される。
【0078】
典型的には、インクジェットヘッド130のX軸方向の移動と、造形物を構成する硬化層を支持した造形ステージ15のY軸方向の移動とを交互に繰り返すことで、1層分の断面画像データに応じた1層分の硬化層に着色される。つまり、いわゆるラスタースキャンの要領によって印刷される。インクジェットヘッド130は、X軸方向の往路及び復路の両方でインクを吐出してもよいし、そのうちいずれか一方でインクを吐出してもよい。
【0079】
[第3の実施形態]
【0080】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。図12Aは、形成途中の造形物の例を示し、図12Bは、完成された造形物の例を示す。図12Aに示すように、供給ノズル17(図1、10参照)により供給される樹脂材料により、所定のパターンを有する溝140aを有する平板状の造形物140が形成される。図12Bに示すように、この平板状の造形物140の材料とは異なる、特定の性質を持つ機能性材料141が、溝140aに供給される。この機能性材料141は、たとえば導電性材料である。機能性材料141は、インクジェットヘッド30や130と同様の構造を有するヘッドにより供給されてもよいし、それとは別の構造を有する供給機構により供給されてもよい。
【0081】
このように構成された造形物140’は、機能性材料141の部分が導電線である電気回路デバイスとして利用することができる。
【0082】
機能性材料141として、導電性のほか、磁性、ゴム等、親水性、疎水性の材料がある。また、図12にA及びB示した形状の造形物にも限られない。
【0083】
[第4の実施形態]
【0084】
図13は、さらに別の実施形態に係る造形物を示す斜視図である。
【0085】
この造形物では、樹脂材料(硬化層)の積層方向で見て、着色された部分A(図ではグレーの部分)が1層ごとに交互に入れ替わっている。
【0086】
まず、ある第1の層241では、着色された部分Aのみレーザ光が照射されて硬化し、白の部分Bはインクジェットヘッドから例えば光硬化性のインクが吐出される。このように構成された第1の層に隣接して形成される次の第2の層242では、レーザ光が照射される部分が入れ替わり、第1の層241におけるインクが吐出された領域にも第2の層242を介して光が届き、そのインクが硬化する。
【0087】
すなわち、インクジェットヘッドから、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互にインクが吐出され、同様に樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、レーザ光が照射される。
【0088】
このような形成されるチェック模様のドットが十分に細かい場合、これを巨視的に見ると、インクが吐出された領域とされていない領域とが混合された色に見える。
【0089】
このように、いわばインターレース方式でレーザ光の照射が行われることにより、積層方向における2層分の硬化層を1回のレーザ光の照射で形成することができ、造形物240の単位体積当りのレーザ光源の駆動のための電力量(すなわちエネルギー)を節約することができる。
【0090】
本実施形態では、インクの代わりに上記第3の実施形態のように機能性材料が用いられてもよい。
【0091】
[その他の実施形態]
本発明に係る実施形態は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態が実現される。
【0092】
インクジェットヘッド30及び130は、フルカラー用のインクジェットヘッドであった。しかし、白黒(2値)用、またはグレースケールで造形物が着色されてもよい。
【0093】
印刷を行うための材料を供給する供給機構として、上記実施形態では、非接触型のインクジェットヘッドが用いられた。しかし、非接触型として、昇華型の印刷ヘッドが用いられてもよい。あるいは、レーザプリンタのような接触型の印刷方式で硬化層に印刷されてもよい。
【0094】
造形物の材料は、光硬化性の樹脂材料に限られず、熱エネルギー、電子線、または超音波により硬化する材料が用いられてもよい。また、樹脂材料に、特定波長に対する、その樹脂材料の屈折率とは異なる屈折率を持つフィラーが混合された材料が用いられてもよい。
【0095】
また、その樹脂材料に応じて照射機構20から照射されるエネルギー線も適宜変更可能である。エネルギー線としては、紫外線のほか、赤外線、可視光、電子線、熱線または超音波等が挙げられる。熱線は赤外線でもよく、その場合赤外線レーザによるスポット加熱により硬化処理が行われる。熱線や超音波等は、比較的造形精度が低い造形物を形成する場合に用いられればよい。
【0096】
上記各実施形態に係る3次元造形装置は、硬化層に付着した未硬化の樹脂材料を除去する除去機構をさらに備えていてもよい。この除去機構は、例えばエアブロー、洗浄液による洗浄、あるいはこれらの組み合わせ等がある。また、この除去機構は、例えば造形ステージ15のY軸方向に沿った移動経路上で、ドラム10とインクジェットヘッド30(または130)との間に設けられていてもよい。あるいは、除去機構は、インクジェットヘッド30(または130)よりさらに下流側に設けられていてもよい。
【0097】
照射機構は上記実施形態に限られない。例えばポリゴンミラー21に代えて平面ミラーが設けられ、この平面ミラーがレーザ光源22をスキャンするように駆動されてもよい。あるいは照射機構は、ポリゴンミラー21によるスキャン機構に限られず、ドラム10内に配置された、光源ユニット及びこれをX軸方向でスキャン移動させる機構を有していてもよい。
【0098】
上記実施形態に係る造形方式として、1次元領域による規制液面方式が用いられたが、もちろん2次元領域による規制液面方式が用いられてもよい。あるいは規制液面方式に限られず、自由液面方式が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0099】
R…樹脂材料
A1…直線状の領域
S…スリット領域
R1(R2、R3)…硬化層
I…カラーインク
10…ドラム
10a…外周面
14…Y軸移動機構
15…造形ステージ
17…供給ノズル
20…照射機構
30、130…インクジェットヘッド
40、140、150…造形物
100、200…次元造形装置
141…機能性材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が積層されて形成される造形物を支持する支持体と、
前記造形物を形成するために、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する照射機構と、
前記断面画像データに基づき、前記照射機構により照射されて硬化した前記樹脂材料に、前記造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する供給機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記造形物を着色するために、前記樹脂材料とは異なる材料としてインクを吐出するインクジェットヘッドを有する
3次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元造形装置であって、
前記樹脂材料は、可視光を透過する材料、または白色系の材料である
3次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記樹脂材料とは異なる材料として、特定の性質を持つ機能性材料を供給する
3次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、少なくとも1層の前記樹脂材料が積層されるごとに前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記樹脂材料とは異なる材料を供給し、
前記照射機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記エネルギー線を照射する
3次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
第1の方向に沿う直線状の領域を含む表面を有し、前記表面のうち前記直線状の領域が前記支持体に最も近くなるように、前記支持体に対面して配置された規制体と、
前記支持体側と前記直線状の領域との間の領域であるスリット領域に、前記樹脂材料を供給する供給ノズルと
1層分の前記樹脂材料の硬化層を形成するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って、前記規制体に相対的に前記支持体を移動させ、前記エネルギー線により前記材料の前記硬化層を積層するために、前記積層の方向に沿って前記規制体と前記支持体とを相対的に移動させる移動機構とをさらに具備し、
前記照射機構は、前記供給ノズルにより前記スリット領域に供給された前記樹脂材料に、前記規制体を介して前記エネルギー線を照射する
3次元造形装置。
【請求項8】
造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させ、
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形方法。
【請求項9】
造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させ、
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形方法により形成された造形物。
【請求項1】
エネルギー線のエネルギーにより硬化する樹脂材料が積層されて形成される造形物を支持する支持体と、
前記造形物を形成するために、造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する照射機構と、
前記断面画像データに基づき、前記照射機構により照射されて硬化した前記樹脂材料に、前記造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する供給機構と
を具備する3次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記造形物を着色するために、前記樹脂材料とは異なる材料としてインクを吐出するインクジェットヘッドを有する
3次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元造形装置であって、
前記樹脂材料は、可視光を透過する材料、または白色系の材料である
3次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、前記樹脂材料とは異なる材料として、特定の性質を持つ機能性材料を供給する
3次元造形装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、少なくとも1層の前記樹脂材料が積層されるごとに前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形装置。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
前記供給機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記樹脂材料とは異なる材料を供給し、
前記照射機構は、樹脂材料の積層方向で重ならない領域に、1層ごとに交互に、前記エネルギー線を照射する
3次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のうちいずれか1項に記載の3次元造形装置であって、
第1の方向に沿う直線状の領域を含む表面を有し、前記表面のうち前記直線状の領域が前記支持体に最も近くなるように、前記支持体に対面して配置された規制体と、
前記支持体側と前記直線状の領域との間の領域であるスリット領域に、前記樹脂材料を供給する供給ノズルと
1層分の前記樹脂材料の硬化層を形成するために、前記第1の方向とは異なる第2の方向に沿って、前記規制体に相対的に前記支持体を移動させ、前記エネルギー線により前記材料の前記硬化層を積層するために、前記積層の方向に沿って前記規制体と前記支持体とを相対的に移動させる移動機構とをさらに具備し、
前記照射機構は、前記供給ノズルにより前記スリット領域に供給された前記樹脂材料に、前記規制体を介して前記エネルギー線を照射する
3次元造形装置。
【請求項8】
造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させ、
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形方法。
【請求項9】
造形の対象となる造形対象物の3次元データを構成する積層された断面画像データに基づき、樹脂材料にエネルギー線を照射することで、前記樹脂材料の領域に応じて選択的に前記樹脂材料を硬化させ、
断面画像データに基づき、前記エネルギー線の照射により硬化された前記樹脂材料に、造形物の一部を構成し前記樹脂材料とは異なる材料を供給する
3次元造形方法により形成された造形物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図10】
【図11】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−106437(P2012−106437A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257726(P2010−257726)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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