説明

3,3’−ジインドリルメタンの経口投与用医薬組成物

本発明は薬学分野に関する。本発明は、3,3’−ジインドリルメタン(DIM)を含有するブロック共重合体医薬組成物を開示する。本願の経口投与用医薬組成物は、活性成分としての3,3’−ジインドリルメタンおよび標的剤を包含し、該標的剤はオキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体であり、該ブロック共重合体の疎水性ブロック含有量は50質量%未満であり、親水性ブロックの分子量は2,250Da以上であり、該活性成分に対するブロック共重合体の比率は10:1〜2:1の範囲内である。この組成物は、経口投与した際の血流中への活性成分の吸収を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬学分野に関し、特に新規な3,3’−ジインドリルメタン(DIM)経口投与用医薬組成物およびその補助による疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3,3’−ジインドリルメタン(DIM)、その類似体および誘導体は、広い生物活性スペクトルを有し、それ故にDIMは非常に有望な薬理活性化合物であると考えられている。3,3−ジインドリルメタン(DIM)は、インドール−3−カルビノール(I3C)の主要なオリゴマー産物であり、様々な起源の悪性転換細胞に対して高い選択性を示すことが立証されている(Aggarwal B.B., Ichikawa H. (2005), Molecular Targets and Anticancer Potential of Indole-3-Carbinol and Its Derivatives, Cell Cycle, 4(9), 1201-1215)。胃の酸性媒体中では、経口投与したI3Cがほぼ瞬時にDIMに変換されることが薬理動態研究によって明らかとなった(Arneson D.W., Hurwitz A., McMahon L.M., Robaugh D. (1999), Presence of 3,3'-Diindolylmethane in Human Plasma after Oral Administration of Indole-3-Carbinol (Abstr.), Proc. Am. Assoc. Cancer Res., 40, 2833)。よって、I3Cの抗癌活性を研究している研究者の多くが、I3Cの投与によって生じる臨床効果の大部分が、実際はインドール−3−カルビノールの2量体、即ちDIM、によるものであることを認める傾向にある。
【0003】
I3Cによってin vitroおよびin vivoで誘導される複数の抗癌メカニズムのほぼ全てが、DIMにも固有のものであることが実験によって明示された(Chang X., Tou J.C., Hong C., et al. (2005), 3,3'-Diindolylmethane Inhibits Angiogenesis and the Growth of Transplantable Human Breast Carcinoma in Athymic Mice, Carcinogenesis, 264(4), 771-778;Firestone G.L., Bjeldanes L.F. (2003), Indole-3-Carbinol and 3,3'-Diindolylmethane Anti-Proliferative Signaling Pathways Control Cell Cycle Gene Transcription in Human Breast Cancer Cells by Regulating Promoter-Sp1 Transcription Factor Interactions, J. Nutr., 133, 2448S-2455S;Ge X., Yannai S., Rennert G., et al. (1996), 3,3'-Diindolylmethane Induces Apoptosis in Human Cancer Cells, Biochem. Biophys. Res. Commun., 228, 153-158;Hong C., Kim H.A., Firestone G.L., et al. (2002), 3,3'-Diindolylmethane (DIM) Induces a Cell Cycle Arrest in Human Breast Cancer Cells That Is Accompanied by Sp-1-Mediated Activation of p21 WAF1/CIP1 Expression, Carcinogenesis, 23, 1297-1305;Leibelt D.A., Hedstrom O.R,, Fisher K.A. (2003), Evaluation of Chronic Dietary Exposure to Indole-3-Carbinol and Absorption Enhanced 3,3'-Diindolylmethane in Sprague-Dawley Rats, Toxicol. Sci., 74, 10-21; Li Y., Li X., Sarkar F.H. (2003), Gene Expression Profiles of I3C- and DIM-Treated PC3 Human Prostate Cancer Cells Determined by cDNA Microarray Analysis, J. Nutr., 133, 1011-1019;Nachshon-Kedmi M., Yannai S., Haj A., Fares F.A. (2003), Indole-3-Carbinol and 3,3'-Diindolylmethane Induces Apoptosis in Human Prostate Cancer Cells, Food Chem. Toxicol., 41, 745-752)。この結論は、前立腺癌にも当てはまる。I3Cと同様に、DIMもin vitroおよびin vivoにおける前立腺癌細胞の増殖を阻害し(Li Y., Li X., Sarkar F.H. (2003), Gene Expression Profiles of I3C- and DIM-Treated PC3 Human Prostate Cancer Cells Determined by cDNA Microarray Analysis, J. Nutr., 133, 1011-1019;Nachshon-Kedmi M., Fares F.A., Yannai S. (2004), Therapeutic Activity of 3,3'-Diindolylmethane on Prostate Cancer in an in vivo Model, Prostate, 61 (2), 153-160)、そのアポトーシスを誘導する(Li Y., Li X., Sarkar F.H. (2003), Gene Expression Profiles of I3C- and DIM-Treated PC3 Human Prostate Cancer Cells Determined by cDNA Microarray Analysis, J. Nutr., 133, 1011-1019; Nachshon-Kedmi M., Yannai S., Fares F.A. (2004), Induction of Apoptosis in Human Prostate Cancer Cell Line, PC3, by 3,3'-Diindolylmethane Through the Mitochondrial Pathway, Br. J. Cancer, 91, 1358-1363)。この場合、I3Cと同様に、DIMは増殖過程、分化過程および生存過程に関与する遺伝子の発現を制御し(Li Y., Li X., Sarkar F.H. (2003), Gene Expression Profiles of I3C- and DIM-Treated PC3 Human Prostate Cancer Cells Determined by cDNA Microarray Analysis, J. Nutr., 133, 1011-1019)、細胞の過剰増殖に繋がる複数のシグナル伝達経路を阻害することによって、その活性をサブ分子レベルで提示する。
【0004】
ホルモン感受性の前立腺細胞(培養LNCaP)を用いて、DIMが複数のアンドロゲン受容体に同時的に結合することで、核へのトランスロケーションとそれに続く遺伝子転写の活性化、更には前立腺特異的PSA抗原をコードする遺伝子プロモーターの発現を抑制することが示された。PSAタンパク質(特異的前立腺プロテアーゼ)は、前立腺癌細胞によって大量に産生および分泌される、前立腺癌の古典的マーカーである。上記文献においては、構造研究を実施した後にDIMの分子幾何学が公知の合成抗アンドロゲンであるカソデックスと非常に類似していることを確立した(Le H.T,, Schaldach C.M., Bjeldanes L.F. (2003), Plant-Derived 3,3'-Diindolylmethane Is a Strong Androgen Antagonist in Human Prostate Cancer Cells, J. Biol. Chem., 278, 21136-21145)。しかしながら、DIMとは異なり、カソデックスはアンドロゲン受容体の核へのトランスロケーションを促進する(Masiello D., Cheng S., Bubley G.J., et al. (2002), Bicalutamide Functions as an Androgen Receptor Antagonist by Assembly of a Transcriptionally Inactive Receptor, J. Biol. Chem., 277, 26321-26326)。
【0005】
DIMが抗血管新生活性を提示する能力は近年発見されたばかりであるが、これは非常に重要な発展である。過形成性且つ腫瘍性の過程は、ほぼ確実に血管の病的な成長を伴う。直径が1〜2mmの新しい腫瘍に酸素と栄養を供給するための毛細血管のネットワークが形成されない限り、腫瘍はその成長を全く継続しないというのは常識である。In vitroにおけるマイクロモル濃度のDIMが内皮細胞の増殖と遊走、および内皮細胞の血管形成能を効果的に抑制することが示されている。In vivoにおいては、実験動物にDIM(毎日5mg/kg)を皮下注射したところ、74%において病的な血管新生を抑制する効果を示した(Chang X., Tou J.C., Hong C., et al. (2005), 3,3'-Diindolylmethane Inhibits Angiogenesis and the Growth of Transplantable Human Breast Carcinoma in Athymic Mice, Carcinogenesis, 264(4), 771-778;McCarty M.F., Block K.I. (2005), Multifocal Angiostatic Therapy: An Update, Integrative Cancer Therapies, 4(4), 301-314)。
【0006】
核転写因子NF−κBは、臨床診療用に開発され使用されている近年の標的製剤(直接製剤)が遮断することを意図した活性を提示する最も重要な分子標的である。この因子は、炎症性応答を仲介し、成長因子およびサイトカインの誘導するシグナル伝達経路の最終段階における、増殖性(抗アポトーシス性)、血管新生性、遊走性および浸潤性の細胞活性の制御において主要な役割を担うものであることが立証されている。更に、活性因子の核へのトランスロケーションおよびこれら過程を担う遺伝子の転写活性化は重要な事象である。In vitroで使用すると、DIM(Rahman K.M., Ali S., Aboukameel A., et al. (2007), Inactivation of NF-KappaB by 3,3'-Diindolylmethane Contributes to Increased Apoptosis Induced by Chemotherapeutic Agent in Breast Cancer Cells, Mol. Cancer Ther., 6(10), 2757-2765;Rahman K.M., Sarkar F.H. (2005), Inhibition of Nuclear Translocation of Nuclear Factor-κB Contributes to 3,3'-Diindolylmethane-Induced Apoptosis in Breast Cancer Cells, Cancer Res., 65, 364-371)およびその代謝先行物質であるI3Cは、NF−κBの核へのトランスロケーションおよびその活性の抑制に効果的であることが判明した。これは、その抗増殖性効果および抗血管新生効果に加えて、DIMに基づく製剤は、ホルモン依存性の臓器および組織における過形成性且つ腫瘍性の過程に頻繁に伴う局所的な炎症反応を抑制する能力を有することを意味している。
【0007】
プラセボ群を対照とした臨床研究の枠組み内で行われた、子宮頚部形成異常の退縮を示した患者に関する詳細な研究は、疾患の陽性動態とI3CのDIMへの変換効率との間に見られる直接的な繋がりをたどるための一助となった(Sepkovic D.W., Bradlow H.L., Bell M. (2001), Quantitative Determination of 3,3'-Diindolylmethane in the Urine of Individuals Receiving Indole-3-Carbinol, Natr. Cancer, 41, 57-63)。製剤を投与した患者の尿からは、高濃度のDIMが検出された。
【0008】
最近の実験の1つは、DIMがin vitroのヒト子宮頸部HPV感染ケラチノサイトに対してアポトーシスを誘導する能力について明らかにした。更に、研究した3種の子宮頸部癌細胞系の内の1種においては、DIMはI3Cよりも遥かに高い効率を示した。LD50値は、DIMでは50〜60μMであり、I3Cでは200μMであったが、その代謝先行物質(I3C)とは異なり、DIMは正常な(悪性転換していない)ケラチノサイトに対してアポトーシス性変化を誘導しなかった(Chen D.Z., Qi M., Auborn K., Carter T.H. (2001), Indole-3-Carbinol and Diindolylmethane Induce Apoptosis of Human Cervical Cancer Cells and in Murine HPV16-Transgenic Preneoplastic Cervical Epithelium, J. Nutrit., 131, 3294-3302)。
【0009】
最後に、DIMには近年新たに発見された特性、それも最も重要な利点の1つであると考えられる免疫調節活性がある。研究者によって、DIMをin vitroで使用すると、IFNγ受容体の発現や、他のIFN応答性調節タンパク質を活性化することで、腫瘍細胞内のIFNγ−依存性シグナル伝達経路を促進することが示された。
【0010】
DIMに基づく製剤を経口的に投薬する方法は、特に患者の快適さ、柔軟な治療手法および治療費の観点から他の投薬方法に比べて一連の長所を有するため、好ましい方法として選ばれるべきである。しかし、DIMの経口投与は、DIMの低い溶解性および小腸における低い吸収効率故に、その生物学的利用能を著しく制限することになる。典型的には、DIMは生理食塩水中で低い溶解性を示し、隔膜を透過する能力にも限界がある。更にこの化合物は、血液中の血漿タンパク質に結合し、血流内の様々な非特異的反応に関与することで、疾患幹部への送達効率が著しく低下することが知られている。
【0011】
上記問題を解決するための手段として、ペグ化ビタミンE(TPGS)に基づく数種の医薬が近年開発されている(Anderton M.J., Manson M.M., et al. (2004), Physiological Modeling of Formulated and Crystalline Diindolylmethane Pharmacokinetics Following Oral Administration in Mice, Drug Metabolism and Disposition, 32(6), 632-638)。ペグ化ビタミンEは、種々の物質の水に対する溶解性を高め(Constantinides P.P., Tustian A., Kessler D.R. (2004), Tocol Emulsions for Drug Solubilization and Parenteral Delivery, Adv. Drug Deliv. Rev., 56, 1243-1255)、経口投与した際に生物学的利用能を向上させる能力(Wu S.H.W., Hopkins W.K. (1999), Characteristics of d-α-Tocopheryl PEG 1000 Succinate for Applications as an Absorption Enhancer in Drug Delivery Systems, Pharm. Technol., 23, 52-68)を持つことで知られている。しかしながら、TPGSに基づく組成物は、DIMおよびその類似体や誘導体の生物学的利用能を有意に上昇させることはできないため(50%〜100%の増加のみである)(Zeligs, et al., US Patent 6,416,793, Formulation and Use of Controlled-Release Indole Alkaloids)、上記化合物の治療的潜在能力を完全に利用することができない。
【発明の概要】
【0012】
本発明の1つの目的は、DIMの送達を向上させることである。
【0013】
この目的は、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体に基づく、DIMの経口送達用の新規医薬組成物によって達成される。
【0014】
経口投与用の医薬組成物は、活性成分となる3,3'−ジインドリルメタンおよび標的剤を包含し、標的剤はオキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体であり、該ブロック共重合体の疎水性ブロック含有量は50質量%未満であり、親水性ブロックの分子量は2,250Da以上であり、該活性成分に対するブロック共重合体の比率は10:1〜2:1の範囲内であることを特徴とする医薬組成物である。
【0015】
医薬組成物は、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体として、プルロニックF127共重合体を包含することが好ましい。
【0016】
医薬組成物は、プルロニックL10を更に包含してもよい。
【0017】
医薬組成物は、薬学的に許容される担体を更に包含してもよい。
【0018】
医薬組成物は、錠剤、凍結乾燥粉末、懸濁液またはカプセル剤の剤形であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】DIM溶解能の動態(DIM濃度は、光学密度の変化から求めた)。組成物1:DIM(対照);組成物2:プルロニックF127およびDIM;組成物3:プルロニックF127、プルロニックL10およびDIM。
【図2】以下の組成物を投与したラットの血漿におけるDIMの薬理動態。組成物1:DIM(対照);組成物2:プルロニックF127およびDIM;組成物3:プルロニックF127、プルロニックL10およびDIMを含む溶液の凍結乾燥品;組成物4:プルロニックF127およびDIM;組成物5:プルロニックL10およびDIM。
【図3】前立腺腺腫(PGA)および前立腺上皮内腫瘍(PIN)の患者の、処置前および処置後の形態学的研究結果。グループI(患者18人)は、本発明のDIMに基づく医薬組成物を投与した。グループII(患者16人)は、結晶化DIMを含む医薬組成物を投与した。
【図4】製剤の投与前および投与後の、IGF成長因子、EGF成長因子およびTGF−β調節因子を用いた免疫組織化学的解析の結果。グループI(患者4人)は、請求の範囲で定義したDIMに基づく医薬組成物を投与した。グループII(患者4人)は、結晶化DIMを含む医薬組成物を投与した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体は、プルロニックおよびポロキサマの名称でも知られている。
【0021】
プルロニックの疎水性−親水性特性、およびプルロニックが非水溶性化合物を可溶化する能力は、そのポリオキシエチレン(親水性)ブロックとポリオキシプロピレン(疎水性)ブロックとの大きさおよび比率によって決まる。次の表(表1)に種々のプルロニックの構造的特徴をまとめた。
【0022】
【表1】

【0023】
上記のブロック共重合体は、例えば、疎水性の非水溶性化合物の溶解能の向上のために、医薬組成物および化粧用組成物に広く用いられているが(Foster B., Cosgrove T., Hammouda B. (2009), Pluronic Triblock Copolymer Systems and Their Interactions with Ibuprofen, Langmuir, 25(12), 6760-6766)、その使用方法については、個々の特定の薬剤のために個別の手法を考える必要がある。
【0024】
今日では、薬剤の生物学的利用能に何らかの影響を与えることが可能な50種を超えるATP依存性トランスポーターが知られている(Oostendorp R.L., Beijnen J.H., Schellens J.H. (2009), The Biological and Clinical Role of Drug Transporters at the Intestinal Barrier, Cancer Treat. Rev., 35(2), 137-147)。更に、これらトランスポーターの遺伝子多型も、種々の薬剤の生物学的利用能の変動性に有意に貢献している(Nakamura T., Yamamori M., Sakaeda T. (2008), Pharmacogenetics of Intestinal Absorption, Curr. Drug Deliv., 5(3), 153-169)。様々な薬剤の生物学的利用能を制限する、種々の界面活性ポリマー、種々のトランスポーターおよびそれらの組み合わせの間で生じる相互作用の正確なメカニズムは未だ確立されておらず、ある活性物質の生物学的利用能に対して正の効果を示す組成物が、別の活性物質に対しては効果的ではない場合や、その逆もまた起こりうる。
【0025】
オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体の使用によって向上する経口生物学的利用能は、P−糖タンパク活性と関連する。従って、これらブロック共重合体は、P−糖タンパク質の基質が活性物質である組成物(Kabanov A.V. et al., US Patent 6,277,410, Copolymer Compositions for Oral Delivery)や、数種のMRP処方(Miller D.W., Batrakova E.V., Kabanov A.V. (1999), Inhibition of Multidrug Resistance-Associated Protein (MRP) Functional Activity with Pluronic Copolymers, Pharm. Res., 16(3), 396-401)への添加が提案されている。同様の特性が他の界面活性ポリマー化合物についても示されている。特に、ソルトールH15は、非水溶性化合物に対する高い可溶化作用に加えて、P−糖タンパク質の活性制御能が確立されており(Coon J.S., Knudson W., Clodfelter K., et al. (1991), Solutol HS 15, Nontoxic Polyoxyethylene Esters of 12-Hydroxystearic Acid, Reverses Multidrug Resistance, Cancer Res., 51, 897-902)、それ故、経口医薬処方用の吸収増強剤となり得る。同様の性質が、クレモホールEL、トゥイーン80、上述したTPGSおよび他の類似化合物についても明らかになっている(Seelig A., Gerebtzoff G. (2006), Enhancement of Drug Absorption by Noncharged Detergents Through Membrane and P-Glycoprotein Binding, Expert Opinion on Drug Metabolism and Toxicology, 2(5), 733-752)。
【0026】
後述する実際の実験(実施例8)は、DIMはP−糖タンパク質を発現する細胞によるローダミン123の捕捉を増強しないことを示し、この結果は、DIMがこのトランスポーターの基質ではないことを示した。この知見は、DIMの生物学的利用能を向上させるためにTPGSを高活性P−糖タンパク質モジュレーターとして使用する上記試みの結果、即ち、このパラメーターを有意に向上させる試みが失敗したことと一致する。一方、本発明において使用する種々の界面活性ポリマーは、この薬剤の経口生物学的利用能の有意な向上をもたらした。
【0027】
疎水性ブロックと親水性ブロックを種々の比率で含有するプルロニックに対するDIMの溶解度の解析によって、親水性ブロックを50質量%以上含有するポリマーの方が、親水性ブロックの含有量が50質量%未満のポリマーよりも高い可溶化能を有することが明らかとなった。一定の分子量の親水性エレメントと種々の含量のオキシエチレン基を有する複数種のプルロニックの存在が知られている。
【0028】
意外にも、DIMの生物学的利用能は、親水性ブロックの分子量にも依存することを発見した。生物学的利用能の向上に、疎水性ブロックの含有量が50質量%未満であり、親水性ブロックの分子量が2,250Da以上である、オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体が寄与する。プルロニックF127が最も高い効率を示し、3mg/ml以上のDIMを含有する安定な水系分散液を得るために使用することができる。このDIM組成物をラットに経口投与したところ、その生物学的利用能は有意に上昇した(5倍を超えた)。活性成分に対するブロック共重合体の比率は、所望の放出時間に依存して変化するが、平均的には10:1〜2:1の範囲内である。プルロニックF127とDIMの最適な比率は、6:1である。
【0029】
意外にも、プルロニックL10(親水性ブロックを約40%含有し、総分子量が約3,200)は、水に対するDIMの溶解度およびラットに経口投与した際の生物学的利用能に対して僅かな効果しか示さなかったものの、プルロニックF127の効果を有意に増強し、DIM処方の生物学的利用能を対照に対して15倍に増加させた。プルロニックF127とプルロニックL10の最適な比率は、8:1〜1:1の範囲内であることが判明した。更に、親水性ブロックの含有量が50%未満の他のプルロニック、例えば、プルロニックP85やプルロニックL61、が同様の効果を示さなかったことも驚くべことである。
【0030】
本発明の組成物は、例えば、水、アルコール、または水−アルコール混合溶媒などの適切な溶媒に、構成成分を組み合わせてまたは個別に溶解し、続いて必要な比率になるように溶液を混合することで製造することができる。
【0031】
得られた溶液は、必ずしも乾燥して固体の剤形にしなくてもよい。溶液は、技術的に適切ないかなる方法またはそれらの組み合わせによって乾燥することが可能であり、乾燥方法としては、例えば、回転式蒸発器またはSpeedVacによる蒸発、凍結乾燥、または連続流下式乾燥が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
投与用製剤(Ready drug formulation)は、乾燥した組成物を、必要な賦形剤、例えば、ステアリン酸ナトリウム、乳糖、セルロース誘導体などと共に打錠することによって得ることができる。
【0033】
投与用製剤は、乾燥した組成物をカプセル、例えば、固体の殻からなるゼラチン製カプセルに詰めることによっても、得ることができる。
【0034】
有効量のDIMを含有する医薬組成物は、種々の疾患の治療に用いることができる。
【0035】
DIMの上述した分子標的、特にエストロゲンの代謝に対するプラスの効果、アポトーシス過程の復帰、抗増殖活性、抗腫瘍活性および抗血管新生活性を考慮すると、本願に記載した組成物は、子宮筋腫、腺筋症および過形成性前立腺疾患などの増殖性疾患の治療に適している。我々はトラコーマ病原体などの細胞内感染性病原体による尿路感染症の治療における、生物学的利用能の高いDIMの高い臨床効率を示した。これらの効果は、トラコーマ病原体に感染した上皮細胞のプログラムされた細胞死の誘導によって生じるものである可能性が最も高い。
【0036】
治療および発症予防に必要な3,3’−ジインドリルメタンの有効量は、疾患の種類とその重篤度および患者の年齢と状態に依存して変化するが、担当医師によってケースごとに決定することができる。投与量は1日当たり2mg〜2,000mgの範囲内である。
【0037】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0038】
種々のプルロニックの水系分散液におけるDIMの溶解度の決定
プルロニック溶液の調製
400mgのプルロニック、9.7mlの脱水エチルアルコールおよび0.3mlの蒸留水をガラス容器に入れた。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0039】
DIM溶液の調製
10mgのDIMをガラス容器に入れ、1.0mlの脱水エチルアルコールを添加した。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0040】
プルロニックおよびDIMを含有する分子分散液の調製
0.5mlのプルロニック溶液(20mg)および0.2mlのDIM溶液を2mlの試験管に入れた。得られた溶液を超音波処理に10分間付し、続いて1時間攪拌した。得られた混合物からエタノールを除去するために、回転式蒸発器(またはSpeedVac)による蒸発処理を真空で1晩実施した。これら処理の結果として得られた混合物を1.5mlの蒸留水に溶解して濾過し、得られた溶液のDIM濃度を分光測定によって求めた。以下の表(表2)に示した結果は、プルロニックF127を使用した際にDIMの溶解度が最大になることを示している。
【0041】
【表2】

【実施例2】
【0042】
プルロニックF127およびDIMを含む分子懸濁液の調製
プルロニックF127溶液の調製
400mgのプルロニックF127、9.7mlの脱水エチルアルコールおよび0.3mlの蒸留水をガラス容器に入れた。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0043】
DIM溶液の調製
10mgのDIMをガラス容器に入れ、1.0mlの脱水エチルアルコールを添加した。内容物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0044】
プルロニックF127およびDIMを含有する分子懸濁液の調製
0.5mlのプルロニックF127溶液(20mg)および0.2mlのDIM溶液を2mlの試験管に入れた。得られた溶液を超音波処理に10分間付し、続いて1時間攪拌した。得られた混合物からエタノールを除去するために、回転式蒸発器(またはSpeedVac)による蒸発処理を真空で1晩実施した。これら処理の結果として得られたワックス状の塊状体を、標的DIM濃度が3mgとなるように、1mlの蒸留水に溶解した。
【実施例3】
【0045】
プルロニックF127、プルロニックL10およびDIMを含む分子懸濁液の調製
プルロニックL10溶液の調製
250mgのプルロニックL10および10mlの脱水エチルアルコールをガラス容器に入れた。得られた混合物をマグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0046】
プルロニックF127溶液の調製
400mgのプルロニックF127、9.7mlの脱水エチルアルコールおよび0.3mlの蒸留水をガラス容器に入れた。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0047】
DIM溶液の調製
10mgのDIMをガラス容器に入れ、1.0mlの脱水エチルアルコールを添加した。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまで、マグネティックミキサーで丁寧に攪拌した。
【0048】
プルロニックF127、プルロニックL10およびDIMを含有する分子懸濁液の調製
0.5mlのプルロニックF127溶液(20mg)、0.2mlのDIM溶液および0.1mlのプルロニックL10溶液を2mlの試験管に入れた。得られた溶液を超音波処理に10分間付し、続いて1時間攪拌した。得られた混合物からエタノールを除去するために、回転式蒸発器(またはSpeedVac)による蒸発処理を真空で1晩実施した。これら処理の結果として得られたワックス状の塊状体を、標的DIM濃度が3mgとなるように、1mlの蒸留水に溶解した。
【実施例4】
【0049】
凍結乾燥による、水溶性DIM組成物の調製
1mlの蒸留水を、実施例1または2で得たプルロニックを含有するDIM溶液に添加した。得られた混合物を、透明な溶液が得られるまでミキサー攪拌した。この溶液は15時間にわたり安定だった。得られた溶液を凍結し、凍結乾燥機に入れた。凍結溶液の凍結乾燥によって無色の粉末が得られた。
【実施例5】
【0050】
噴霧乾燥による、DIM組成物の調製
200gのプルロニックF127、300mlの蒸留水および10リットルのエタノールを20リットルのガラス容器に入れた。プルロニックが完全に溶解し、透明な溶液が得られるまで攪拌した。得られた溶液に25gのプルロニックL10および20gのDIMを添加した。得られた混合物を透明な溶液が得られるまで攪拌し、その後、濾過した。得られた溶液を40℃の噴霧乾燥機で乾燥した。
【実施例6】
【0051】
DIMを溶融プルロニックに直接溶解する方法による組成物の調製
プルロニックF98およびプルロニックF127、または最適な比率でこれらが混合された混合物(F98:F127が約1:4)を混合して(60℃で)溶融した。結晶化DIMを溶融物に添加して激しく攪拌した。DIMが溶解した後に、溶液を+5℃まで急速に冷却した。得られた塊状体をすりつぶして粉末にした。
【実施例7】
【0052】
DIM含有組成物の溶解度に関する研究
実施例2および3で得たDIM組成物の水に対する溶解度を決定するために研究を実施した。このために、2mlの0.9%塩化ナトリウム水溶液を各組成物に添加し(それぞれのボタン状沈殿物は6mgのDIMを含有)、200回転/分の条件で回転する水平シェイカーに設置した。光学密度の変化からDIM濃度を求めるために、0.2mlのサンプルを経時的に抜き出した。実験結果を図面(図1)に示した。
【実施例8】
【0053】
膜P−糖タンパク質に対するDIMの阻害活性に関する研究
P−糖タンパク質(P−gp)を発現するMESSA/DX細胞によるローダミン(ローダミン123(R123))の吸収について、今後実施する実験のモデルとして研究した。P−gp陰性のMESSA/DX細胞を対照とした。96穴プレートに、40,000細胞/ウェルの濃度になるように細胞を加えた。24時間のインキュベーションの後、濃度が3μMのR123を細胞に添加し、37℃、種々の濃度のDIMおよびベラパミル(広く知られたP−gp阻害剤)の存在下で更にインキュベーションを1時間実施した。インキュベーションの最後には、溶液を除去し、細胞を冷たいリン酸緩衝液で3回すすいだ。次に、細胞サンプルのローダミン蛍光を測定した。全ての実験を3回繰り返した。予想通り、膜P−gpを発現するMESSA/DX細胞は、陰性のMESSA細胞と比べて有意にではないが、ローダミンを吸収した。広く知られたP−gp阻害剤であるベラパミルは用量依存的にMESSA/DX細胞によるR123の蓄積を増加させたものの、DIMはいずれの細胞系におけるR123蓄積にも影響することはなく、これはDIMがP−gpの基質ではないことを明らかに示している。
【実施例9】
【0054】
DIM組成物を投与した実験動物におけるDIMの薬理動態
実施例3〜4で調製したDIM組成物を本実験に用いた。結果はこの実施例の最後に記載した表に示した。
【0055】
組成物は、DIMの標的濃度が3mgとなる量の組成物を加えた1mlの溶媒からなる水系分散液の形状で、動物に経口投与した。結晶化DIMは、0.5%のメチルセルロースを含む蒸留水5mlに15mgのDIMを加えた懸濁液として投与した。
【0056】
体重が250〜350gの雌のSpraque-Dawleyラットを実験に用いた。全ての実験を、GLPの規則を厳守しながら実施した。体重1kg当たり60mgのDIM製剤を投与した。血液サンプルは、薬剤投与後の種々の時点(15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間および24時間)で採取した。血液サンプルは採血の直後に遠心分離し、血液から分離した血漿は凍結して−80℃で保存した。
【0057】
イソフルラン(カナダ国、オンタリオ州、ケンブリッジ、Bimeta-MTC, Animal Health Inc.製)。血液は、頸静脈から抜きだしてヘパリンの入った試験管に導入し、直ちに5〜10分間氷中に静置した。次に血液を遠心分離し、血漿を血液から分離した。血漿は凍結して−80℃で保存した。
【0058】
サンプルの抽出と分析
血漿サンプルを解凍し、遠心分離に付し、100μl等量をプラスチック製の試験管に詰めた。次にサンプルを、180℃で攪拌しながら、750μlのメチル三級ブチルエステルで2分間の抽出に2回付した。サンプルを10,000r.p.m.で10分の遠心分離に付した。上清を分離し、ガラス製の試験管に移送した。サンプルが完全に乾くまで、有機相を50℃の窒素ガスによって蒸発させた。乾燥したサンプルを−80℃で保存した。研究に用いるサンプルは15μlのアセトニトリルおよび85μlの移動相に溶解した。合計20μlの当量をHPLC法で分析した。
【0059】
HPLCの条件
С18逆相カラム50×4.6mm、Symmetery/shield 3.5μm(吸着剤、μmで表した粒径)、30℃、流速1.5ml/分、注入容量20μl、280nm。
【0060】
移動相:バッファーBの直線濃度勾配、0%〜100%、バッファーA:5%のアセトニトリル、0.1%のトリフルオロ酢酸、バッファーB:90%のアセトニトリル、0.1%のトリフルオロ酢酸、10分。
【0061】
DIM濃度は、ピーク面積(AUP)に基づき、検量曲線から求めた。曲線下面積(AUC)は、台形規則(特定の積分値を決定するために使用)から決定した。対照および組成物のCmax値およびAUC値を以下の表(表3)に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
データは、上記組成物を投与したラット血漿中のDIMの薬理動態を図解した添付の図面(図2を参照)に示した。
【実施例10】
【0064】
実施例2の医薬用DIM組成物の臨床効率に関する研究
研究目的
結晶化DIMを含む医薬組成物(50mgの結晶化DIMを含むカプセル剤)との比較による、新規な医薬用DIM組成物(50mgの3,3’−ジインドリルメタンを含むカプセル剤)の臨床効率、形態的効果および安全性を評価するために研究を実施した。
【0065】
本研究の主旨は
・前立腺腺腫患者における、下部尿路の機能不全症状の動態およびの生活の質に対する製剤の効果の評価、
・主要な尿動態因子である最大尿流量(Qmax)および残尿量(Vres)に対する製剤の効果の評価、
・PSAの動態に対する製剤の効果の評価、
・前立腺容量に対する製剤の効果の評価、
・プラセボとの比較による、前立腺組織に対する形態的効果の性質の評価、および
・血漿中の主要な生化学的パラメーターに生じる望ましくない事象の頻度、副作用の頻度および動態頻度に基づく、製剤の安全性の評価。
【0066】
試験は以下のように実施した
本発明のDIMを含有する医薬組成物(グループI)、2錠のカプセル剤/1日2回。
結晶化DIMを含有する医薬組成物(グループII)、2錠のカプセル剤/1日2回。
製剤の臨床効率、形態的効果および安全性を評価するために、前立腺腺腫(PGA)および前立腺上皮内腫瘍(PIN)の患者34人を検査し、処置した。グループI(18人の患者)は、DIM含有医薬組成物のカプセル剤2錠を1日2回摂取し、グループII(16人の患者)は、結晶化DIM含有医薬組成物のカプセル剤2錠を1日2回摂取した。
【0067】
治療のための患者は、以下の基準に従って選択した
・症候性および形態学特徴から、PGAおよびPINと確認された外来患者および入院患者であり、
・年齢が50歳以上であり、
・処方された治療に対して書面により同意し、医師の指示に従った患者であり、
・発病症状の尺度であるI−PSSに基づく評価が7を超え、
・Qmax値が5ml/秒を超え、15ml/秒未満であり、
・残尿量が200ml以下であり、
・前立腺容量が25cm3を超え、且つ
・PSA値が10ng/ml以下である。
【0068】
臨床病状に対する製剤の効果の評価
開始時点(V1)には、2種の形態学的特徴であるL−PINおよびH−PINを両方のグループについて記録した。製剤の効果によって、患者の病状は悪化したか、変化しないかまたは好転した。V1とV2の間に起こりうる臨床応答には、合計して7種の可能な変化が存在した。本実験においては、(V1とV2の間の)臨床変化を順序尺度に対して評価することができる。検討したグループの臨床変化を比較する上で最も感受性の高い方法はMann-Whitneyの基準である。
【0069】
グループIおよびIIにおいて研究過程で観察された形態学的特徴の変化を図解した図面(図3を参照)に、全ての患者の形態学的研究データに見られる変化を示した。
【0070】
治療効果の両側検定の有意水準に基づくと、(本発明のDIM含有医薬組成物を投与した)グループIおよび(結晶化DIM含有医薬組成物を投与した)グループIIの間には有意差が存在した(р=0.002)。
【0071】
悪性頻度の比較
研究したグループ間の悪性頻度の違いを検討するために、別の研究を行った。悪性度の兆候は、コアグループ(18人の患者に新規なDIM含有医薬組成物を投与した群)には見られなかった。4件の前立腺癌の兆候が、対照グループ(16人の患者に結晶化DIM含有医薬組成物を投与した群)では記録された。χ二乗推定の誤差の可能性を考慮し、より正確なFischer判定基準を用いた。
【0072】
考察
検討したグループには、悪性頻度の違いが見られ、その差は統計的有意差であった(p=0.039)。
【0073】
免疫組織化学的データに対する、請求の範囲で定義したDIM含有医薬組成物の効果の評価
免疫組織化学的解析を、新規処方のDIM含有医薬組成物を投与したグループIおよび結晶化DIM含有医薬組成物を投与したグループIIからそれぞれ選択した4人の患者からなる2つのグループに対して実施した。研究対象の組成物の投与前および投与後のIGF成長因子とEGF成長因子およびTGF−β制御因子について評価した。IGF、EGFおよびTGF−βの開始値は統計学的に均一であり、更に計測を続けることによって、これらパラメーターの水準に以下の差異が記録された。
【0074】
新処方のDIM含有医薬組成物を投与した患者群においては、成長因子であるIGF(p=0.004)およびEGF(p=0.002)について、統計的信頼性のある低下が記録され、更にはTGF−β(p=0.047)のレベルに増加が認められた。対照群については、信頼性のある動態は記録されなかった。得られたデータは、添付の図面に示した(図4を参照)。
【0075】
考察
得られたデータにおいては、請求の範囲で定義したDIM含有医薬組成物を摂取した患者群における、成長因子IGFおよびEGFの信頼性のある低下、ならびにTGF−β水準の増加が見られ、このことは、製剤の活性成分の、病的細胞増殖の主要なシグナル伝達機構対する効果を示し、また悪性転換細胞のアポトーシスを誘導する効果も示している。
【0076】
治療の最中に副作用や望ましくない事象が記録されることはなかった。
【0077】
新処方のDIM含有医薬組成物は、前立腺腺腫および前立腺上皮内腫瘍の患者において、抗増殖活性を発揮した。
【0078】
新処方のDIM含有医薬組成物は、治療期間中に副作用や望ましくない事象をもたらすことのない、PGAおよびPINの治療用の安全な薬剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としての3,3’−ジインドリルメタンおよび標的剤を包含する経口投与用医薬組成物であって、該標的剤はオキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体であり、該ブロック共重合体の疎水性ブロック含有量は50質量%未満であり、親水性ブロックの分子量は2,250Da以上であり、該活性成分に対するブロック共重合体の比率は10:1〜2:1の範囲内であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体としてプルロニックF127を包含する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
プルロニックL10を更に包含する、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
薬学的に許容される担体を更に包含する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
錠剤、凍結乾燥粉末、懸濁液またはカプセル剤の剤形であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505233(P2013−505233A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529708(P2012−529708)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【国際出願番号】PCT/RU2010/000487
【国際公開番号】WO2011/034465
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(512054193)ザクリトエ アクツィオネルノエ オブシェストヴォ “ヴェレス ファーマ” (1)
【氏名又は名称原語表記】ZAKRYTOE AKTSIONERNOE OBSCHESTVO  VELES FARMA
【Fターム(参考)】