説明

3Dオブジェクトのモデル化を支援する方法と装置

本発明は、一つの3Dオブジェクトの一般モデル(210)及び第2オブジェクトの特定モデル(200)(少なくとも前記第1モデルの1部bんを含む)から、パラメータ化可能な具体化モデル(220)の取得を可能にする3Dオブジェクトのモデル化装置と方法である。本発明によれば、第1の3D一般モデルのパラメータに基づいて、所定特性データが第2の3Dオブジェクトから抽出される。パラメータ化可能な具体的モデルは第1の3D一般モデルから前記抽出データに前記モデルを適合させて、生成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元(3D)オブジェクトの設計に関する。特に、このオブジェクトの一般モデル(un modele generique)及びこのオブジェクトの要素の特定モデル(un modele specifique)又はこのオブジェクトの一部分を含む第2オブジェクトの特定モデルから具体化モデル(un modele instancie)を得ることを可能にする3Dオブジェクトのモデル化を支援する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機のような複合体の設計に際して、複数の要素に関して位置決めをしなければならない。第2要素に対する第1要素の位置決めは、種々の専門家集団(corps de metier)に関係する。例えば、航空機の翼にエンジンを配置する場合、エンジンの専門家、機械技術者、航空力学専門家、音響技術者、その他の専門家の意見を必要とする。
【0003】
従来、位置決めについてのスタディは、連続的・部分的解析の形で行われていた。位置決めの選択に関係した前記複数専門家の結論が重要である場合、前記複数専門家には、予め定められた基準に基づいて、スタディを開始し、第1の位置についての案を提案する責務がある。前記スタディ結果は別の専門家集団の専門家に渡され、それが補充される、これが繰り返される。全専門家集団がそのスタディに参加するときに、一般的に書類が各人に送付され、結果が確定される。仮に、スタディ中に配置が修正され、所定数の基準が特定の専門家集団にとって満足できないものであるならば、その配置は変えられ、部分改正が継続され、新規な配置が確定される。
【0004】
一般に、これらスタディは、実際の3Dオブジェクトの3D数値モデルに基づいて行われる。しかしながら、このプロセスにおいて、通常、例えば、位置決めするオブジェクトの形状が変形されるとかの条件が課されることがある。このオブジェクトが第3者により設計される場合には、この第3者に対し、このオブジェクトの数値モデルの特定バージョンについて要求を行う必要がある。この場合、解析は、新規モデルを受け取るまで中止される。もしオブジェクトの形状が複数回修正されると、重大な遅延が発生する。
【0005】
更に、第3者から受け取る特定モデルは、一般に、複数のタスク、又は、複数回のスタディのために行う計算を自動化することのできない静的モデル(model statique)である。
【0006】
ある条件下では、一般モデルの利用は予備的スタディを可能にするが、一般モデルは正確性を欠くので、結局、正確なスタディにならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、特に、別のオブジェクトに関係するオブジェクトの位置決めをスタディするために、具体化モデル(現実的で、パラメータ化される)を生成する必要性がある。
【0008】
本発明は少なくとも、前記の複数課題のうちの少なくとも一つを解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1オブジェクトの一般的モデルから、及び、少なくとも一つの第2オブジェクトの特定モデル(前記第1オブジェクトの少なくとも一部分を含む)から、第1オブジェクトの幾何学的なモデル化を支援する方法であって、次のステップを有することを特徴とする方法を対象とする。
― 第1オブジェクトの一般モデル(210)を取得すること;
― 少なくとも一つの第2オブジェクトから少なくとも一つの特定モデル(200)を取得すること;
― 一般モデル(205)の少なくとも一つのパラメータに基づいて少なくとも一つの特定モデルから少なくとも一つのデータを抽出すること;
− 一般モデル及び少なくとも一つの特定モデルから抽出された少なくとも一つの前記データから第1オブジェクトの具体化モデルを構成すること(215)
【0010】
前記具体化モデルを構成するために、一般モデルの少なくとも一つのパラメータが、少なくとも一つの特定モデルから抽出された少なくとも一つのデータに適合されると有利である。
【0011】
一般モデルはダイナミックモデルであり、特定モデルは静的モデル(modele statique)であることが好ましい。
【0012】
一般モデルから3Dオブジェクトの具体化モデルを作成することにより、デザインソフトウェア(logiciel de conception)と相互に影響しあうように構成されるダイナミックモデルを取得することができる。特に、具体化モデルにより、該モデルのパラメータを変更することができ、例えば、計算と表面又は曲線の推定のような演算を自動化することができる。
【0013】
特定の実施例によれば、少なくとも一つの抽出データは、モデル化を行うオブジェクトの一部分(直接的に又はデザインソフトウェアを介して、少なくとも一つの特定モデルから容易に抽出される)を特徴づける曲線の一部分である。曲線のこの部分は、例えば、所定の平面と第2オブジェクトの一部分との交差である。
【0014】
特定の実施例によれば、常に、本方法は、少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線部分に一般モデルの曲線部分を迅速、正確に適合するために、次のステップを含んでいる。
− 少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線の一部分の極点(extrema)の決定;
− 少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線部分に対応する一般モデルの曲線部分の適合(adaptation)(その結果、一般モデルの曲線部分の極点は、少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線部分の極点に類似することになる)。
【0015】
前記適合ステップは、更に、少なくとも一般モデルの曲線の位置の複数極点の間に位置する少なくとも一つの中間点の適合ステップを含み、少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線の位置に一般モデルの曲線の位置を正確に適合させることが好ましい。
【0016】
又、少なくとも一つの特定モデルから抽出した曲線の部分において、一般モデルの曲線の1部分の適合を整えるために、前記適合ステップは、更に、一般モデルの少なくとも一部分の点における、少なくとも一つの特定モデルから抽出した曲線の前記部分における少なくとも一つの接線を決定するステップを含むことが好ましい。
【0017】
特定の実施例によれば、少なくとも第2のオブジェクトは第1のオブジェクトに対応する、又は、前記オブジェクト又は前記オブジェクトの1つ又は複数の構成要素の特定モデルから一つのオブジェクトの具体化モデルを生成することのできる第1オブジェクトの一部分である。
【0018】
特定の実施例によれば、常に、本発明のプロセスは更に、少なくとも一つのデータをインポートするステップを含む。前記インポートされるデータは具体化モデルのパラメータ(複数の具体化モデルの間でのデータ交換を可能にする)として記憶される。
【0019】
特定の実施例によれば、常に、第1オブジェクトはエンジンナセル(nacelle)、エンジン又は推進部全体(ensemble propulsif)のような3Dオブジェクトである。
【0020】
本発明は前記方法の各ステップを実施するように構成された手段を含む装置を対象とする。
【0021】
本発明は、又、前記方法の各ステップを実施するように構成された命令を含むコンピュータプログラムを対象とする。
【0022】
本発明のその他の有利な点、目的及び特徴は、図面を参照しながら、以下の詳細な説明で説明するが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を実施する航空機の例を示す。
【図2】エンジンナセル(nacelle)の特定モデルとエンジンナセルの一般モデルからエンジンナセルの具体化なモデルを取得するための、本発明を実行するステップを示す。
【図3】一般モデルに記憶されたプロフィールから3Dオブジェクトの特定モデルに記憶されたプロフィールを適合させるためのアルゴリズムの実施例の概要を示す。
【図4】具体化モデルから一般的モデルを具体化すること可能にするメカニズムを示す。
【図5】エンジン推進部全体の一般モデル、エンジンナセル特定モデル、及びエンジンの特定モデルから推進部全体の具体化モデルを取得するために本発明により実施される複数ステップを示す。
【図6】エンジンナセルの具体化モデル、エンジンの具体化モデル、推進部全体の具体化モデルが、推進部全体の特定モデルから取得される別の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による方法と装置は、3Dオブジェクトの一般的モデル及び3Dオブジェクトの構成要素の特定モデル又は、前記オブジェクトの一部分を含む他の複数オブジェクトの複数特定モデルから3Dオブジェクトのモデル化を支援する道具である。特に、従来の又はその他の航空機にエンジンを設置するためのスタディを行うためのものである。特定の実施例においては、本発明の方法はデザインソフトウェア 3D CATIAを使う。以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこの特定の実施例に限定されるものではない。
【0025】
Catiaはフランスの企業Dassault Systemesにより開発され、IBMにより販売されているもので、コンピュータを使ったデザインソフトウェア(CAO)である。これは3Dを志向しており、その製品開発ステップを管理することができるものである。
【0026】
図1は本発明を実施する装置100の例を示している。例えば、マイクロコンピュータ又はワークステーションである。
【0027】
装置100は通信バス102を有していることが好ましい。この通信バスは次のものに接続している。
・ マイクロプロセッサコンピュータのような中央処理装置CPU103;
・ 固定メモリ104、即ち、ROM(1又は複数のプログラム"Prog", "Prog1"、"Prog2"を含む)
・ 書き換え可能メモリ106、即ちRAM(前記プログラムを実行するときに生成され、変更される変数、パラメータを記憶するように構成されたレジスタを含む);
・ 通信網120(例えば、インターネット)に接続する通信インターフェース118(インターフェースはデータを送受信するように構成されている);
【0028】
装置100は、次の装置の1つ、又は、複数の、又は、全部を選択的に使うことができる。
・ データを視覚化でき、及び/又は、ユーザとのグラフィックインターフェースとして使用できるディスプレイ108(キー110、ポインター装置のような他の手段、例えば、マウス111又は光学ペン、タッチパネルスクリーン又はリモコンを使って);
・ プログラム及び/又はデータ(特に、本発明により処理されるデータ又は処理すべきデータ)を格納するハードディスク112;
・ ディスケット読取装置114(ディスケット116を受け入れ、本発明により処理されるデータ又は処理すべきデータを読み取り、書き込みするように構成される);
・ メモリカード読み取り装置(本発明により処理されるデータ又は処理すべきデータを読み取り、書き込みするように構成される)。
【0029】
通信バスは通信を可能にし、装置100に含まれる又は接続されている種々の構成要素の間のインターオペラビリティを可能にする。バスの表示は制限的なものではない。特にCPUは、装置100の全部の構成要素に命令を、直接的に又は装置100の別の構成要素を介して伝達することができる。
【0030】
装置100が本発明によるプロセスの実行を可能にする実行可能なコード又はプログラムは、例えば、ハードディスク112又は固定メモリ104に格納されることができる。
【0031】
本発明の変形によれば、ディスケット116はデータ及び前記プログラム実行可能なコードを格納されることができる。一旦、前記プログラムが装置100により読み出されると、ハードディスク112に格納されることができる。
【0032】
又は、プログラム実行可能コードは、インターフェース118を通じて通信網120を介して受け取り、前記と同一の方法で格納されることができる。
【0033】
ディスケットは、例えばコンパクトディスク(CD)又はメモリカードのような情報記録媒体で置換することができる。一般的に、情報格納手段は、装置と一体化しているコンピュータ又はマイクロプロセッサにより読み取り可能であり、取り外し可能であり、1つ又は複数のプログラムを記憶するように構成されている。該プログラムの実行により本発明による方法が実行される。
【0034】
一般的に、1つ又は複数のプログラムは、実行の前に装置100の格納手段にロードされる。
【0035】
本発明により、CPU103は複数の命令又はプログラムのコードの複数部分の実行を制御する。前記命令はハードディスク、固定メモリ104、又は前記記憶要素に格納されている。電圧が加えられると、不揮発性メモリ(例えば、ハードディスク112又は固定メモリ104)に格納された1の又は複数のプログラムは、RAM106並びに本発明を実行するのに必要な変数及びパラメータを記憶するレジスタに転送される。RAMは本発明によるプログラムの実行可能コードを記憶するものである。
【0036】
本発明による装置は、プログラムされた装置であることに留意すべきである。本発明を実行する複数命令又は複数プログラムは、例えば、ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)において実行される。
【0037】
設計時に、スタディチーム(le bureau d'etude)は、供給側から提案された、‘エンジンナセル、エンジン及び推進装置全体の一般的モデルの一部分’及び‘エンジンナセル、エンジン及び推進装置全体の特定のモデルの他の部分’を扱う。一般モデルは、正確なデータが無いために使われないが、特定モデルには《ダイナミック》でない、つまり、簡単に変更できず、計算(大量計算または評価(cotation))を自動化することができないし、エンジンの爆発コーン(les cones d'eclatement du moteur)等の推定を行うことができないという欠点がある。従って、本発明によれば、特定モデルの主要特性が抽出され、一般モデルに追加され、具体化、パラメータ化されたダイナミックなモデルが得られ、航空機の翼の上の推進部全体の取り付け位置のスタディに使うことができる。
【0038】
供給側から受け取る特定モデルは一般的には特定のCAOソフトウェアに関係するファイルである。即ち、点、曲線、ボリュームを記述するファイルである。従って、供給側が提案する特定モデルの幾何学的特性は取得可能である。特にCATIAソフトウェアを介して取得可能である。
【0039】
モデル化するオブジェクトの一般的モデルはテンプレートの形態で記憶されていることが好ましい。つまり、部品又は部品全体の3D幾何学に関係するパラメータモデルを使うと、ユーザ(コンピュータ支援のデザインソフトウェア(logiciel de conception)のスペシャリストではない)が、自分が望むものしか知らなくても、容易にパラメータを見つけ、変更することができる。
従って、パラメータモデルを使うことにより、ソースコードを変更することなく、パラメータを修正するために簡素化されたインターフェースを得ることができる。
この簡素化されたインターフェースは、例えば、所定フィールドにおけるパラメータの視覚化及び変更を可能にする対話ウィンドウの形であってよい。パラメータモデルを使うことにより、自動的大きさ測定(cotation:dimensioning)又は重量計算(calcul de masses)のような、計算又はタスクを自動化することができる。
【0040】
エンジンナセルのパラメータモデルにより、例えば、次を定義することができる。
−エンジンナセルの外形;
−パイプの形状;
−パイプの中央部
−エンジンカウル(les capots de moteur:エンジンの覆い)及び回転軸;
−推力反転装置及びその回転軸
【0041】
これらデータは、例えば、複数点及び複数プロフィールの形で記憶されてよい。複数プロフィールは、点及び点における接線全体(曲線により連結することができる)で決定されることが好ましい。各プロフィールは、モデルに関係するオブジェクトの要素を表す曲線と予め決められた平面との交差に対応する。
【0042】
各パラメータモデルは、更に、第2オブジェクトに対する一つのオブジェクトの位置決めを可能にするレファレンスを含むことが好ましい。例えば、エンジンナセルのレファレンスは、基点が、エンジンナセルの前側の点から所定距離だけ離れたエンジンナセル軸上にある基準点(repere)であることができる。X軸はエンジンナセル軸であってよく、Y軸は、水平面において、X軸に垂直な軸であってよく、Z軸は垂直平面において、X軸の垂直な軸であってよい。
【0043】
従って、エンジンナセルのプロフィールはX−Y平面及びX−Z平面に基づいて決められる。好ましいモードにおいて、2つのプロフィール(低いプロフィールと高いプロフィール)はX−Z平面において決められる。航空機のエンジンは一般的にはX−Y平面に対称ではない。
【0044】
3Dオブジェクトの複数のパラメータモデルの作成はスタディにとって必要性である。例えば、1つのパラメータモデルがエンジンナセルの重要な全情報を使って作成される。他方、別のパラメータモデルが、大量計算の公式及び配置に関係するリスクを含む、エンジンナセルの重要な全情報を使って作成される。
【0045】
同様に、パラメータモデルは1つ又は複数の3Dオブジェクトに関係することができる。例えば、1つのパラメータモデルはエンジンナセルに利用できるし、別のモデルはエンジンに利用できる。又は、パラメータモデルはエンジンナセル及びエンジンを含む推進部全体のモデル化に使うことができる。
【0046】
以下の説明において、特定モデルは3Dオブジェクトの《静的》モデルに関係している。このモデルは点、線、面全体で決められるベクトル図としてみなすことができる。特定モデルは、通常、供給側から受け取ったオブジェクトを表現するものである。
【0047】
一般モデルはパラメータ化可能なモデルである。その数値は、デフォールト値で初期化されていたり、いなかったりしている。一般モデルのパラメータ値はどのような数値でもよい、又は、特定モデルに可能な限りなく近いやり方で予め決めてもよい。具体化モデルは、所定の値が初期化された一般的モデルである。具体化モデルは、所定のタスク又は所定の計算を自動化することのできる《ダイナミック》モデルである(そのパラメータは変更される)。具体化モデルは、例えば、計算を自動化し、数値(特に評価の数値)をアップデートするために、別の具体化モデルにダイナミックに関係する。一般モデルは具体化モデルのスケルトンとして考えることができる。
【0048】
図2は、エンジンナセルの特定モデルおよびエンジンナセルの一般モデルから、エンジンナセルの具体化モデルを得るために、本発明に基づいて実施されるステップを表している。製造業者から受け取った特定モデル(200)が解析され、重要データが抽出される(ステップ205)。この例では、重要データは、特に予め決められた平面に基づくエンジンナセルのプロフィールを含んでいる。これらプロフィールに直接的に特定モデルから入手できない場合、プロフィールはデザインソフトウェアの標準機能に基づいて抽出することができる。重要データは一般モデルのパラメータの特性により決められる。これらデータの抽出は、使用される一般モデルに基づいて自動的に又はマニュアルで行われる。
【0049】
特定モデルから抽出されたデータは、以下の説明に記載した適合アルゴリズムに基づいて(215)、3Dオブジェクトの一般モデル(210)のパラメータを適合させるために使用される。一般モデルは、特定モデルから抽出したデータに基づいて適合され、具体化モデルが形成される(220)。具体化モデルはデザインソフトウェアにおけるものとして使うことができる。具体化モデルの値は、同様に複合的な具体化モデルを作成するために使われる(225)。例えば、エンジンナセルの具体化モデルの数値(複数)は、推進部全体の一般モデルを具体化するために使われる。エンジンに関係する一般モデルの数値は同じ方法で具体化される。
【0050】
図3は一般モデルに記憶されたプロフィールを3Dオブジェクトの特定モデルに記憶されたプロフィールへ適応させる適応アルゴリズムの例を示す。図3aはエンジンナセルの一般モデルの所定のプロフィール(300)を示す。これに対して、図3bは、一般モデルのプロフィール(300)に対応する特定モデルのプロフィール(305)を示す。この実施例では、適応曲線はエンジンナセルの上部プロフィール、即ち、エンジンナセルとX軸及びZ軸により決められる平面との交差により形成される曲線である。一般モデルのプロフィール300は、ここでは、プロフィールの切断面に直交する平面に基づいて決められる5つの極点(extrema;E−E)と6つの中間点(I1−I6)により特徴付けられる、並びに、これらの点の各点における接線の角度により特徴付けられる。従って、プロフィール300は、一般モデルにおけるものとして記憶されない。しかしながら、上記の接線の点及び角度が記憶される。
特定モデルのプロフィール(305)の極点(E′−E′)は、デザインソフトウェアにより自動的に決定されることが好ましい。特定モデルから抽出されたプロフィールの極点が見出されるときに、幾何学的変換が一般モデルのプロフィール300に行われる(図3cに示す)。結果、一般モデルのプロフィールの極点は特定モデルのプロフィールの極点に対応する。異なる幾何学的変換が2つの隣接する極点により定義されるプロフィールの各部分に対して行われる。
【0051】
このようにして図3cで示す実施例において、極点E1とE2(これら点の座標は(xE1;zE1),(xE2;zE2))は、それぞれ、座標(xE′1;zE′1)及び(xE′2;zE′2)をもつ極点E′1、E′2の値を取る。中間点Iの新しい座標が、極点の位置、これら点の接線の角度およびこれら点の接線のtensionに基づいて自動的に計算される(接線のtensionは、接線が存在する点の周辺の点の接線の影響を決める)。この曲線を変形する機能はコンピュータ支援されるデザインソフトウェアにおいて、よく使われているが、ここでは詳述しない。
【0052】
図3dは、極点の重畳に関する第1適合後のプロフィール300及び305の重ね合わせを示す。
【0053】
一般モデルの適合プロフィールの中間点が特定モデルのプロフィールの位置に存在しないとき、又は特定モデルのプロフィールの近傍の位置に存在しないとき、ユーザはこれら中間点を移動させることができる。特別な実施例によると、中間点の移動は、単純な増加、減少(一般モデルのプロフィールに沿って選択された中間点を移動させる、つまり、中間点に関係する平面を一つの方向又は別の方向に移動させる)により実行される。同様に、ユーザは、極点及び中間点の接線の角度と張り具合(tension)を変化させ、特定モデルのプロフィールの上への、一般モデルの適応プロフィールの重ね合わせを改善することができる。例えば、ユーザは、極点E-EとE′−E′との間の曲線部分を近づけるようにして、点Iを移動させ、この点における接線(角度及び張り具合)を調整することができる。
【0054】
図3eは、極点、中間点、接線の角度及び張り具合の適合の後のプロフィール300及び305の重ね合わせを示す。
【0055】
図3eを参照しつつ、上記説明した方法が、一般モデルと特定モデルの共通プロフィール全部に対して繰り返される。別の方法として、この方法は選択されたプロフィール全体に対して繰り返される。例えば、エンジンナセルのモデルに対して、この方法はエンジンナセルの外部の異なる3つのプロフィールに対して繰り返し行われる。パイプのプロフィールに対して、パイプの中央部のプロフィールに対して、及び、エンジンカウル(capots du motor)及び回転軸のプロフィールのプロフィール及び推力反転装置とその回転軸のプロフィールに対してである。
【0056】
一般モデルの全てのプロフィール又は全ての選択されたプロフィールが適合されたときに、一般モデルは具体化モデルになる。
【0057】
具体化モデルはデザインソフトウェアにおいて直接的に使用される。又、それは、具体化モデル及び一般モデルに共通した変数値をコピーしながら、異なる一般モデル(例えば、更に複雑な一般モデル)を具体化するために使用される。
【0058】
異なる具体化モデルから一般モデルを具体化するための方法は、具体化モデル(具体化モデル及び一般モデルの共通変数に対応している)からデータ(又はデータの一部分)をテキストの形でエクスポートし、具体化する前にそれを一般モデルにインポートすることである。図4はこのメカニズムを表している。具体化モデル(220)のデータはテキストの形(例えば、テクストファイル(405)の形で)でエクスポートされる。エクスポートされたデータ(405)は次にインポートされ(ステップ410)、別の一般モデル(複合一般モデル(415))に記憶され、最初の一般モデルと区別され、複合化された具体化モデル(425)が作成される。同一のメカニズムに基づいて、複合化された具体化モデルのデータをより単純な一般モデルにインポートすることができる。ユーザはエクスポート及びインポートするための複数パラメータ又は複数プロフィールを選ぶことができる。
【0059】
このようにして、オブジェクトの具体化モデルは、このオブジェクトの構成要素の複数の特定モデルから生成することができる。例えば、推進部全体の具体化モデルは、図5に示されているように、推進部全体の一般モデル、エンジンナセルの特定モデル、エンジンの特定モデルから生成することができる。
【0060】
エンジンのパラメータモデルにより、例えば、次のように定義することができる。
−タービン;
−燃焼室;
−空気吸入コーン;
−前後の接続点(points d’attache)
【0061】
エンジンナセルとエンジンのパラメータモデル(複数)の基準並びにこれらモデルに含まれるパラメータを使うことにより、対応する一般モデル(複数)が具体化されるときに、即ち、位置決めパラメータに数値(複数)を与えるときに、エンジンナセルに対するエンジンの位置を決めることができる。
【0062】
図5は、エンジン推進部全体の一般的モデル、エンジンナセルの特定モデル及びエンジンの特定モデルから推進部全体の具体化モデルを得るための、本発明に基づいて実施されるステップを示す。
【0063】
ステップ500によると、エンジンナセルの曲線又はプロフィール及び特性点がエンジンナセルの特定モデルから抽出される。エンジンナセルの曲線及び特性点については、推進部の一般モデルのパラメータに基づいてユーザが決めることができ、データベース505からユーザが選択することができる。又は、ユーザが選択する一般モデルのパラメータに基づいて自動的に決められることができる。選択された一般モデルは、次にエンジンナセルの特定モデルから抽出される特性データに適合される(ステップ510)。このステップにおいては、エンジンナセルに関係するパラメータだけが変更される。一般モデルを、エンジンナセルの特定モデルから抽出した曲線へ適合させる場合は、図3に基づく前記の方法に基づいて実行されることが好ましい。同様に、ステップ515によれば、エンジンの曲線又はプロフィール及び特性点がエンジンの特定モデルから抽出される。再度、エンジンの曲線と特性点については、選択された一般モデルのパラメータに基づいてユーザにより決めることができる。又は、このモデルに基づいて自動的に決めることができる。一般モデル(エンジンナセルの特性に基づいて予め部分的に具体化されている)は、次に、エンジンの特定モデルから抽出された特性データに基づいて構成される(ステップ520)。ここでは、エンジンの特定モデルから抽出された曲線の適合は前述した方法に基づいて実行されることが好ましい。このステップにおいては、エンジンに関係するパラメータだけが変更される。
【0064】
ステップ515と520は、ステップ500と510の前又は後で実行することができる。また、得られる具体化モデルの利用に関する必要性に基づいて、ステップ500と510、又は、ステップ515と520だけを実行することができる。
【0065】
推進部全体から得られる具体化モデルは、エンジンナセル及びエンジンの特定モデルから抽出されるデータにより特徴付けられる。
【0066】
この具体化モデルは、Catia ようなデザインソフトウェアにおいて使用されることができる。
【0067】
図6は、エンジンナセルの具体化モデル、エンジンの具体化モデル及び推進部全体の具体化モデルが推進部全体の特定モデルから得られる別の実施例を示す。
ステップ600によれば、エンジンナセルの曲線、又はプロフィール及び特徴点は推進部全体の特定モデルから抽出される。エンジンナセルの曲線と特徴点については、ユーザが、エンジンナセルの一般モデルのパラメータ(データベース605からユーザにより選択された)に基づいて、又は前記モデルに基づいて自動的に決めることができる。選択されたエンジンナセルの一般的モデルは、次に、推進部全体の特定モデルから抽出された特性データに適合される(ステップ610)。推進部全体の特定モデルから抽出された曲線に一般モデルを適合させる場合、図3を参照して説明した方法により実行されることが好ましい。エンジンナセルの一般モデルに推進部全体の特定モデルから抽出されたデータを適合させ、エンジンナセルの具体化モデルが与えられる。
【0068】
同様にして、ステップ615によれば、エンジンの曲線、又はプロフィール及び特徴点は推進部全体の特定モデルから抽出される。エンジンの曲線と特徴点については、ユーザが、エンジンの一般モデル(データベース620からユーザにより選択された)のパラメータに基づいて、又は前記モデルに基づいて、自動的に決めることができる。選択されたエンジンの一般モデルは、次に、推進部全体の特定モデルから抽出された特性データに適合される(ステップ625)。推進部全体の特定モデルから抽出された曲線に一般モデルを適合することは図3を使って説明した前記方法により実行されることが好ましい。推進部全体の特定モデルから抽出されたデータとエンジンの一般モデルとの適合により、エンジンの具体化モデルが与えられる。
【0069】
エンジンナセル及びエンジンの具体化モデルのデータはエクスポートされ、別の一般モデルで使用される。したがって、ユーザはデータベース630から推進部全体の一般モデルを選択し、予め決めたエンジンナセルとエンジンの具体化モデルのデータをインポートし、推進部全体の一般モデルを具体化モデルにすることができる(ステップ635)。
【0070】
特別な必要性を満たすために、本発明の技術分野の当業者はこれまでの説明に当然、変更を行うことができる。
【受託番号】
【0071】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1オブジェクトの一般的モデルから、及び、少なくとも1つの第2オブジェクトの特定モデル(前記第1オブジェクトの少なくとも一部分を含む)から、第1オブジェクトの幾何学的なモデル化を支援する方法であって、次のステップを有することを特徴とする方法。
― 第1オブジェクトの一般モデル(210)を取得すること;
― 少なくとも一つの第2オブジェクトから少なくとも1つの特定モデル(200)を取得すること;
― 一般モデル(205)の少なくとも一つのパラメータに基づいて、少なくとも1つの特定モデルから少なくとも1つのデータを抽出すること;
− 一般モデル及び少なくとも一つの特定モデルから抽出された少なくとも1つの前記データから第1オブジェクトの具体化モデルを構成すること(215)。
【請求項2】
前記具体化モデルを構成するために、一般モデルの少なくとも一つのパラメータが、少なくとも一つの特定モデルから抽出された少なくとも1つのデータに適合されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一般モデルはダイナミックモデルであり、少なくとも1つの特定モデルは静的モデルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの抽出データが曲線(305)の一部分であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
− 少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線の一部分の極点(E′−E′)の決定;
− 少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線部分(305)に対応する一般モデルの曲線部分の適合(300)(その結果、一般モデルの曲線部分の極点(E−E)は、少なくとも一つの特定モデルから抽出された曲線部分の極点(E′−E′)に類似している);
を含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記適合ステップは、更に、少なくとも一般モデルの曲線の位置の複数極点(E−E)の間に位置する少なくとも一つの中間点(l−l)の適合ステップを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記適合ステップは、更に、一般モデルの少なくとも一部分の点における、少なくとも一つの特定モデルから抽出した曲線の前記部分における少なくとも一つの接線を決定するステップを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つの第2オブジェクトは前記第1オブジェクトに対応する、又は。前記第1オブジェクトの一部分であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
更に、少なくとも一つのデータをインポートするステップ(410)を含み、前記インポートされるデータは具体化モデルのパラメータとして記憶されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1オブジェクトは3Dオブジェクトであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1オブジェクトはエンジンナセル、エンジン又は推進部全体であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の方法の各ステップを実施するように構成された手段を含む装置。
【請求項13】
請求項1乃至11の方法の各ステップを実施するように構成された命令を含むコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図3d】
image rotate

【図3e】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2010−507849(P2010−507849A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533898(P2009−533898)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001755
【国際公開番号】WO2008/056054
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(506355257)エアバス フランス (117)
【Fターム(参考)】